説明

光学用フィルム積層体

【課題】 熱膨張係数の低いフィルムを用いることで、カールの発生を抑えガスバリア性に優れた高耐熱の光学用フィルム積層体を提供すること。
【解決手段】 高分子を含むフィルムの少なくとも一方の側に無機化合物を含む層が形成された積層体であって、前記フィルムについて30〜100℃の熱膨張係数が−15ppm/℃以上50ppm/℃以下となるフィルム面内の方向が少なくとも一つ存在し、かつ積層体の450nmから700nmの全ての波長の光の光線透過率が80%以上100%以下である積層体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学用フィルムに関し、特にガスバリア性に優れた表示材料用基材としてガラスの代わりに好適に使用可能な光学用フィルム積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より有機ELディスプレイや液晶ディスプレイの基材としてはガラスが用いられてきたが、近年、軽量である、薄型化が可能である、大面積化が容易である、割れない、加工性が優れている、という性質を持つフィルムで代用する方法が提案されている。また同様に薄型化や軽量化を狙って、電子ペーパーやフィールドエミッションディスプレイ、太陽電池の基材としてもフィルムの利用が提案されている。
【0003】
このようにフレキシブルディスプレイや太陽電池などに使用されるガラス部材の代替としてフィルムを使用する場合、高透明性であることはもちろんのこと、高い水蒸気バリア性も必須の特性である。有機高分子化合物は無機化合物よりもガスバリア性が悪く、そのため有機高分子からなるフィルムは無機化合物からなるガラスと比較してガスバリア性が低く、長期間ディスプレイ素子の性能を維持させることは困難である。例えば、有機EL素子の発光層は、水分や酸素によって劣化することが知られており、有機ELディスプレイにフィルムを用いる場合、フィルム上にガスバリア層を設ける必要がある。このガスバリア層は低温で形成することが可能であるが、低温で形成した場合、ディスプレイ用途に十分なガスバリア性は得られない。そのため優れたガスバリア性を有する層を形成するためには高温での加工が必要となる。同様にフレキシブルディスプレイにおいて必要とされる透明導電層についても、低温で形成することが可能なものの、低抵抗性の層とするためには高温の加工が必要となる。これらのことからフィルムは加工時の高温工程に耐えうる耐熱性が必要となる。
【0004】
特許文献1には、ポリエステルとエポキシの混合物から成る樹脂に金属酸化物を積層したガスバリア層付きフィルムの記載がある。しかしこのフィルムは食品などの包装用に使用する場合には十分なバリア性を有すものの、ディスプレイ用途として使用するに際しては、十分な品質のものではない。
【0005】
特許文献2にはガスバリア層付きフィルム積層体の記載がある。この実施例には、基材にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いている。しかしポリエチレンテレフタレート(PET)は、ガラス転移温度が80℃程度であり、耐熱性に劣る問題がある。また、耐熱性に劣るフィルムにガスバリア層を形成する場合、加工温度を低くする必要があるが、バリア性に優れる無機化合物を低温で製膜する場合、緻密な膜の形成が困難で、ガスバリア性を高めることができない。またこの文献にはフィルムとして、ポリエチレンテレフタレート以外のフィルムについての記載もあり、耐熱性の高い樹脂にも適用可能な旨記載がある。しかし高いガラス転移温度を有するこれらの樹脂であっても、30℃〜100℃の熱膨張係数は通常であれば50ppm/℃を超える大きな値となるため、熱膨張係数の小さな無機物を積層した際に、積層体はカールを生じてしまう。
【0006】
ガスバリア層を粗面に形成する場合、形成した層に欠陥が生じることがある。特許文献3にはガスバリア層に欠陥が生じることを防ぐ目的で、フィルムの上に平坦化層を設け、その上にガスバリア層を形成した積層体の記載がある。平坦化層を設けることで、表面平滑性に劣るフィルムに対しても、緻密なガスバリア層を形成している。しかし、積層体の実施例にはアクリルとポリカーボネートをフィルムとして用いているのに対して、有機ELディスプレイ用積層体の実施例としては、フィルムではなくガラスを用いている。このため有機ELディスプレイの軽量化やフレキシブル化を達成できない問題がある。有機ELディスプレイ用積層体の基材にガラスを用いている理由は、アクリルやポリカーボネートでは耐熱性、熱膨張性、表面平滑性等の点で十分でないからである。
【特許文献1】特開平8−164595号公報
【特許文献2】特開2004−114645号公報
【特許文献3】特開2004−299230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来技術における問題点を課題として検討した結果達成されたものである。すなわち本発明の目的は、フィルムと無機化合物を含む層を積層した際の、これらの熱膨張係数の差に起因するカールの発生を抑えた、高ガスバリア性、高耐熱性の光学用フィルム積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、高分子を含むフィルムの少なくとも一方の側に無機化合物を含む層が形成された積層体であって、前記フィルムについて30〜100℃の熱膨張係数が−15ppm/℃以上50ppm/℃以下となるフィルム面内の方向が少なくとも一つ存在し、かつ積層体の450nmから700nmの全ての波長の光の光線透過率が80%以上100%以下である積層体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば以下に説明するとおり、熱膨張係数の低いフィルムに無機化合物を含む層を形成しているので、表示材料用基材等のガスバリア性を要求される用途に好適に使用可能であり、かつカールが少なくガスバリア性に優れた高耐熱の光学用フィルム積層体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の例を説明する。
【0011】
一般的に、ガスバリア層や透明導電層には無機化合物が使用されることが多いが、無機化合物の熱膨張係数は、一般的な高分子フィルムの熱膨張係数よりも小さい。例えば酸化珪素の場合3ppm/℃〜10ppm/℃であり、一般的な高分子フィルムの1/10の値である。よって高分子フィルムに無機化合物の層を形成すると、層形成時の熱によって膨張した状態で膜が形成され、これが室温まで冷却されると無機化合物に比べて高分子フィルムは収縮が大きいため、積層体にカールが発生することがある。カールが激しくなると、層や基材に破れ等を生じることがあるために好ましくない。本発明の積層体に用いる、高分子を含むフィルムは、30〜100℃の熱膨張係数が−15ppm/℃以上50ppm/℃以下となるフィルム面内の方向が少なくとも一つ存在していることが好ましい。熱膨張係数をこの範囲とすることで、ガスバリア層等を形成する際の高温処理時に、フィルムの寸法変化を抑えることができ、積層体にカールが発生することを防ぐことができる。この熱膨張係数の値はより好ましくは、−10ppm/℃以上30ppm/℃以下であり、さらに好ましくは−10ppm/℃以上15ppm/℃以下である。この範囲とすることで、フィルム上に形成するガスバリア層等の無機化合物を含む層とフィルムの熱膨張係数の差を小さくすることができ、カールのない積層体とできるため好ましい。特に好ましくは−10ppm/℃以上15ppm/℃以下でありかつ100〜200℃において−10ppm/℃以上20ppm/℃以下の場合である。100℃〜200℃における熱膨張係数も制御することで、高い温度の加工が可能となり、そのためカールのない緻密なガスバリア膜を得ることができる為に好ましい。上記の好ましい熱膨張係数の範囲は、フィルム面内(面方向)の少なくとも一つの方向に対して適用されるが(範囲内の値であればよいが)、好ましくはフィルムの面方向において直交する二方向のいずれに対しても適用される(直交するいずれの方向についても上記範囲を満足している)。より好ましくは、上記の「少なくとも一つの方向」や「直交する二方向」のうちの一方がフィルムの製膜方向と一致していることである。また、特に好ましくは、フィルム面内における全ての方向について、熱膨張係数の値が上記の好ましい範囲を満足していることである。
【0012】
熱膨張係数は、非等方にフィルムを延伸することにより、その方向と他の方向の値を大きく変えることができる。よって特定方向のみ小さな値とすることが可能であるが、この方向と直交する方向の熱膨張係数は大きくなる問題がある。非等方延伸によらず、熱膨張係数を小さくすれば、二方向もしくは全ての方向の熱膨張係数を小さく抑えることができ、高温加工時に生じる寸法変化を抑えることができる。
【0013】
本発明の積層体は、フィルムの少なくとも一方の側に無機化合物を含む層が形成されている。この無機化合物を含む層は、フィルムのうえに直接形成されていてもよいし、何らかの他の層を介して設けられていても構わない。
【0014】
本発明の積層体は、無機化合物を含む層を形成することで、積層体に防汚性、酸化防止、耐スクラッチ性、ガスバリア性、等の機能を付与することが可能となる。特にガスバリア性を高めた場合、積層体を表示材料用に用いられるガラスの代替として好適に使用可能となる点で好ましい。
【0015】
無機化合物としては特に限定は無く、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素等の珪素の酸化物や窒化物、またはアルミニウムの酸化物や窒化物、マグネシウムの酸化物、亜鉛の酸化物、ジルコニウムの酸化物等、種々の無機化合物が好適に使用される。
【0016】
無機化合物を含む層の形成には特に限定は無く、プラズマCVD法、触媒CVD法、熱CVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、反応蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、等を用いることができる。
これら無機化合物を含む層は、多層構造の場合も好ましい。この時の層の厚みは、層が単層の場合は5nm以上500nm以下の厚みを有していることが好ましく、層が多層の場合は、各単層部分が5nm以上であり、かつ各単層部分の合計(多層中の無機化合物を含む層の全厚)が10nm以上500nm以下で形成されることが好ましい。単層部分が5nm未満の場合、無機化合物を含む層がフィルムの全面を覆うことができない場合があり、ガスバリア性に劣ることがある。単層若しくは多層の合計厚みが500nmを超える場合、透明性が低下することがあり、またクラックやカールが発生しやすい傾向がある。
なお、無機化合物を含む層を単層で構成する場合、その厚みは好ましくは20nm以上300nm以下であり、より好ましくは30nm以上100nm以下である。
また、無機化合物を含む層を多層で構成する場合、好ましくは各単層部分が10nm以上であり、かつ各単層部分の合計が20nm以上350nm以下、より好ましくは各単層部分が15nm以上であり、かつ各単層部分の合計が30nm以上200nm以下である。
【0017】
上述の無機化合物を含む層の他に高分子化合物を含む層が形成されていてもよい。形成する場所は、フィルム上でも構わないし、後述する平坦化層の上でも構わない。また、無機化合物を含む層と高分子化合物を含む層とを少なくとも1層づつ積層した多層構造としてもよい。この多層構造における高分子化合物を含む層を以下、中間層とする。
無機化合物を含む層と中間層のガスバリア性を比較すると、一般に無機化合物を含む層の方がガスバリア性に優れる。しかし無機化合物を含む層は、ピンホール等の欠陥が生じやすい問題がある。欠陥部位があると、欠陥部位を通じてガスが透過しやすいために、無機化合物の本来有する高いガスバリア性を発揮できない問題がある。無機化合物を含む層に中間層を積層した多層構造とすることで、無機化合物を含む層に生じた欠陥部位を中間層の高分子化合物が埋めて平滑化することによって、欠陥部位からガスが透過するのを抑える効果を生じる。また欠陥部位を有す層上に、さらに無機化合物を含む層を形成する場合、その新たに形成した層にも欠陥が生じやすいが、中間層が欠陥部位を平滑化することによって、中間層の上に形成する無機化合物を含む層に、欠陥を生じにくくする効果を生じる。これらの効果により、中間層を設けることで無機化合物を含む層のバリア性を損なわない利点がある。
【0018】
中間層を形成する高分子化合物としては、ポリシラザン又はゾル・ゲル法による金属酸化物等の無機高分子化合物、芳香族ポリアミド、ポリアミック酸、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂ポリ尿素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、変性アクリル樹脂、マレイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、エポキシ樹脂等の有機高分子化合物を用いることができる。
【0019】
これら高分子化合物層は、スパッタリング法、真空蒸着、イオンプレーティング法、化学気相蒸着法などのドライ形成法、ロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、スリットコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート、ダイコート、スピンコート等の方法によって形成することができる。
【0020】
また本発明の積層体は、フィルムの表面平滑性が劣る場合には、フィルムと無機化合物を含む層との間に平坦化層を設けることも好ましい。ここで平坦化層とは、フィルムそのもののよりも表面平滑性に優れた表面を与える機能を有する層である。高分子を含むフィルムにピンホールや突起がある場合、その上に形成した無機化合物を含む層にも欠陥が生じやすく、ガスバリア性能に劣ることがある。平坦化層を形成することによって、フィルムの表面平滑性を改善すれば、平坦化層上に形成する無機化合物を含む層の欠陥を減らすことが可能となる。
平坦化層としては、ポリシラザン又はゾル・ゲル法による金属酸化物等の無機高分子化合物、芳香族ポリアミド、ポリアミック酸、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂ポリ尿素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、変性アクリル樹脂、マレイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、エポキシ樹脂等の有機高分子化合物を使用することが可能である。また、フィルムと同一の高分子や、同一種類で異組成の高分子を用いることも好ましい。フィルムと同一の高分子や、同一種類で異組成の高分子を平坦化層に用いることで、平坦化層とフィルムの間に剥離が生じにくくなりカール等が問題となりにくく、またフィルムと平坦化層の屈折率が等しいまたは近いために、積層界面の光の反射も問題となりにくくなるため好ましい。また平坦化層には、フィルムよりも屈折率の低いものを、薄膜として積層することも好ましい。低屈折率層として積層することで、反射防止層としての効果も生ぜしめることができるからである。
【0021】
本発明の積層体の水蒸気透過率は1.0×10−1g/m/day以下であることが好ましく、より好ましくは5.0×10−2g/m/day以下であり、特に好ましくは1.0×10−2g/m/day以下である。水蒸気透過率を1.0×10−1g/m/day以下とすることで、従来の食品などの包装用途以上に水蒸気バリア性の必要な分野への使用が可能となる。例えば、液晶ディスプレイ用や有機ELディスプレイ用の支持基材等に本発明の積層体を使用することが可能となる。
また本発明の積層体は、450nmから700nmの全ての波長の光の光線透過率が80%以上100%以下であることが好ましい。450nmから700nmの波長域において一部でも光線透過率が80%未満である波長が存在する場合、透過率に劣るため表示材料用等各種光学部材として積層体を利用した際にディスプレイの表示性能に劣ることがある。透明性が向上することから、より好ましくは450から700nmの全波長の光線透過率は85%以上100%以下である。
【0022】
本発明のフィルムに用いる高分子としては、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリノルボルネン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0023】
また本発明の積層体に用いられるフィルムは、ガラス転移温度が120℃以上であるか、またはガラス転移温度を示さないことが好ましい。ガラス転移温度が120℃未満の場合、高温での使用時や加工時に、フィルムが形状を保てず変形することがある。ガラス転移温度が120℃以上またはガラス転移温度を示さない高分子をフィルムとして用いることで、ガスバリア層や透明導電層の形成など高温加工が可能となるため好ましい。ガラス転移温度は、透明導電膜やTFT(薄膜トランジスター)形成の観点から好ましくは150℃以上であり、より好ましくは200℃以上である。TFTとしてはアモルファスシリコンやポリシリコンが用いられる。アモルファスシリコンTFTは低温で形成が可能なものの、電子の移動速度が遅いために、ポリシリコンTFTに比べてトランジスタとしての性能に劣る。しかしトランジスタとして優れたポリシリコンTFTの場合、電子移動速度は早いものの、TFT形成に高温が必要な問題がある。低温でのポリシリコンTFT形成の研究が進められており、ポリシリコンTFTは250℃で形成した報告例がある。このためガラス転移温度としては、更に好ましくは250℃以上であり、また高温で形成した場合ほど電子移動速度に優れるため、最も好ましくは280℃以上である。
【0024】
本発明の積層体に用いられるフィルムは、厚みが10〜300μmであることが好ましい。厚みが10μm未満の場合、腰の強さがなく、剛性に劣るため、加工時の取扱性が劣る傾向にある。また300μmを超える場合、フィルムの巻き取りが困難になることがあり、また溶液製膜法によってフィルムを製膜する場合には、溶媒除去に長時間が必要となり、生産性が低下しやすい。また、フィルムの透明性が低下することもある。上記のような観点から、フィルムの厚みは、より好ましくは15〜150μm、特に好ましくは30〜70μmである。
【0025】
本発明の積層体に使用されるフィルムの一方の面の表面粗さをRa1、他方の面の表面粗さをRa2としたとき、Ra1とRa2とが次式(1)〜(3)を満足しているフィルムを用いることが好ましい。
【0026】
Ra1<Ra2 (1)
0nm<Ra1≦2nm (2)
0nm<Ra2≦3nm (3)
フィルムにピンホールや突起がある場合、その上に形成した無機化合物を含む層にも欠陥が生じやすく、無機化合物を含む層の各種物性、特にガスバリア性能に劣ることがある。そこで、フィルムの表面粗さを上記範囲とすることで、フィルムにピンホールや突起等の欠陥が少ないものとできるため、上述した平坦化層を設けなくても、フィルム上に形成した無機化合物を含む層に欠陥が生じにくく、優れたガスバリア性能を有する積層体とすることができる。もちろん上記のRa値を満足している場合でも平坦化層を設けてもよい。
【0027】
また表面粗さが上記範囲の場合、フィルムの外部ヘイズを抑制するため表示材料用積層体として使用した際に、ディスプレイの品位を向上することができるため好ましい。
【0028】
なお、表面粗さについては
Ra1<Ra2
0nm<Ra1≦1.0nm
0nm<Ra2≦2.0nm
を全て満足することがより好ましく、
Ra1<Ra2
0nm<Ra1≦0.8nm
0nm<Ra2≦1.5nm
を全て満足することがさらに好ましい。これらの関係を満たしていることにより、形成した無機化合物を含む層の剥がれやガスバリア性の低下が少なく、さらに両面への無機化合物を含む層の形成が可能となる。
本発明の積層体に使用されるフィルムの黄色度(YI)は、0以上4.5以下であることが好ましい。フィルムの黄色度(YI)が4.5より大きい場合に、該フィルムから構成した積層体を表示材料用積層体としてガラス基材の代わりに使用すると、ディスプレイが黄色く着色して品位が低下することがある。黄色度の値を0以上4.5以下とすることで、表示材料用積層体として使用した際に、ディスプレイの着色を防ぎ、高品位の画像を提供することができる。ここで黄色度は、試験片を透過した三刺激値(X、Y、Z)により求められる値である。フィルムの黄色度を低下させるには、可視光領域の短波長側の光を吸収しない分子構造とすることが重要である。またフィルム製膜時の加熱温度や加熱時間、高分子溶液の溶媒選択、アルゴンや窒素等不活性ガス雰囲気下での製膜、等により黄色度を低下できる。より好ましくは黄色度(YI)は0以上3.0以下であり、さらに好ましくは0以上2.5以下、特に好ましくは0以上2.0以下である。
黄色度を低下させる分子構造としては芳香族部位を有さないことが好ましい。具体的には積層体に用いるフィルムとして、ポリノルボルネン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂等を用いることで無色性に優れたフィルムを得ることができ、黄色度を低下することができる。しかしこれらの化合物と比較して、主鎖に芳香族化合物を有する高分子は、一般に熱膨張係数や耐熱性、機械物性等に非常に優れたフィルムとなる。そこで本発明の積層体では、主鎖に芳香族化合物を有すものであり、かつ共役構造が分子全体に広がることを抑えて黄色度を低下した、高分子であることがより好ましい。電子雲の広がりを抑えて共役構造を広げないためには、立体的に電子雲を断ち切ることが可能な構造や、電子吸引性の置換基を有することで電子雲の広がりを抑えた構造とすることが好ましい。また使用する溶媒としては、高分子の種類に合わせて、耐熱性の低い高分子にはそれに合った沸点の溶媒を使用して、溶媒を除去する際に、高分子に大きな負荷をかけないような溶媒を選択することが重要である。例えば、アクリル樹脂に沸点200℃のN−メチル−2−ピロリドンを使用した場合、高分子のガラス転移温度以上の高温で長時間加熱しないと溶媒を除去できないために、その溶媒除去工程において熱により高分子が着色して、黄色度が増加する場合がある。加熱温度は高分子種々の耐熱性によって異なるため、条件を変えて検討を行うことで決定される。また酸素を断った条件で加熱製膜を行った場合、高分子の酸化反応を抑えることができるために、酸化反応を生じうる高分子の場合には不活性ガス雰囲気下での製膜も好ましい。芳香族ポリアミドやポリイミド等の高分子主鎖末端にアミノ基を有する高分子は、アミノ基が酸化により着色して黄色度が増加する場合がある。この場合、上述した不活性ガス雰囲気下で製膜する事が好ましいが、アミノ基を酸クロライドや酸無水物、カルボン酸、クロルギ酸エステル等と反応させることも、高分子主鎖末端のアミノ基を減少若しくは消失させて、酸素雰囲気下でもアミノ基の着色による黄色度の増加を抑えるために好ましい。
【0029】
本発明の積層体は120℃で3時間加熱した際に生じる端部の浮きの高さが0.5cm以下であることが好ましい。フィルムに、ガスバリア膜として無機化合物を積層する場合、有機高分子と無機化合物は熱膨張係数が異なるため、加工時の熱によって、フィルムがカールする場合がある。カールが激しくなると、膜や基材に破れ等も生じることがある。より好ましくは200℃で3時間加熱後もカールが発生しない場合(上記の端部の浮きの高さが認められない場合)が、フィルムを高温で加工できるため好ましい。高温の加工処理によってもカールを生じないようにするためには、フィルムの熱膨張係数が低いことが好ましい。
【0030】
本発明の積層体は温度60℃、湿度90%RHの条件下で7日間(7×24時間)保管した後も、積層体端部の浮きの高さが0.5cm以下であることが好ましい。高分子を含むフィルムは、水を吸うことにより膨張することがある。このため使用中に空気中の水分を吸うことで膨張を生じ、積層体にカールを生じる場合(上記の端部に浮きが認められる場合)がある。カールが激しくなると、膜や基材に破れ等も生じることがある。高湿環境下でカールを生じないようにするためには、フィルムの湿度膨張係数を低く抑えることが好ましい。
また本発明の積層体は、高湿度下においてカールを生じないのと同時に、積層体の各層の間に剥がれが生じないことが好ましい。高分子を含むフィルムは、水を吸うことで積層体各層間の接着力が低下し、剥がれが生じることがある。温度60℃、湿度90%RHの条件下で7日間(7×24時間)保管後にこのような欠陥が生じなければ、積層体を高湿度下で使用することが可能となるため好ましい。
【0031】
本発明の積層体に用いられるフィルムは、芳香族ポリアミドを含むことが好ましい。芳香族ポリアミドを含むことで、フィルムのヤング率、透明性、耐熱性を向上でき、熱膨張係数を低下できる。
【0032】
また芳香族ポリアミドの構造が、化学式(I)、化学式(II)で示される構造単位を含み、それぞれの構造単位のモル分率をl、mとしたとき、50≦l≦100、0≦m≦50であることが好ましい。
【0033】
【化1】

【0034】
:−CF、−CCl、−CBr、−F、−Cl、−Br、−OH、−OCH(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
:任意の芳香族基
:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
【0035】
【化2】

【0036】
:任意の芳香族基
:任意の芳香族基
化学式(I)、(II)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、mとした時、l≧50であることが好ましい様態である。さらに好ましくはl≧80であり、最も好ましくはl=100である。l<50の場合は、芳香族ポリアミドの透過率が劣ることがあり、さらにYI値や熱膨張係数が大きな値となることもある。芳香族ポリアミドは分子内および分子間の電荷移動錯体により着色すると考えられているが、化学式(I)はいずれも芳香族ポリアミド分子内および分子間の電荷移動錯体の形成を阻害し、芳香族ポリアミドフィルムの光線透過率を向上させると考えられる。さらに化学式(I)はパラ結合から成る剛直な分子構造を有しており、この構造に起因して熱膨張係数を低下できる。
【0037】
ここで化学式(I)の、Rは、−CF、−CCl、−CBr、−F、−Cl、−Br、−OH、−OCH(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)などが好適に用いられるが、光線透過率の点から、−CF、−CCl、−CBr、−F、−Clが特に好ましく、また最も好ましくは−CFである。
また化学式(I)、化学式(II)で示される構造単位のモル分率をl、mとしたとき、50≦l≦100、0≦m≦50である芳香族ポリアミドとすることで、熱膨張係数を小さくすることができるので好ましい。熱膨張係数を小さくするためには、熱膨張係数を小さくするためには、高分子主鎖が芳香族部位であることが好ましく、さらにその芳香族部位は、オルト結合やメタ結合よりも、パラ結合を含む場合が好ましい。主鎖がパラ結合で連結された芳香族部位を有することで、主鎖を剛直構造とすることができ、高温を与えても膨張を抑えることができるために好ましい。化学式(I)はジアミンが屈曲成分を有さない剛直構造であり、そのため高温下においても膨張を抑えることができるために好ましい。
本発明の積層体は、太陽電池用基板、タッチパネル用基板、医薬品用包装材料、食品用包装材料、飲料用包装材料などとして使用することが可能であるが、特に本発明の積層体は、ガスバリア性が高く、透明性に優れるため、表示材料用積層体とした場合に好適に使用可能である。本発明の積層体を使用可能な表示材料としては、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、液晶表示ディスプレイ、電子ペーパー、フィールドエミッションディスプレイ、等が挙げられる。
【0038】
これらの用途として使用する場合、本発明の表示材料用積層体には透明導電膜を設けて用いることができる。本発明の積層体に用いるフィルムは、熱膨張係数が−15ppm/℃以上50ppm/℃以下に低減した基材のため、ガスバリア膜や透明導電膜等の無機化合物の膜を形成した場合であっても、カール等が生じ難い。また耐熱性が高いため、透明導電膜を付与する際等に高温での加工が可能となる。
【0039】
以下に芳香族ポリアミドを用いた場合についての、本発明の積層体の製造方法を例示するが、これに限定されるものではない。
【0040】
芳香族ポリアミド溶液、すなわち製膜原液を得る方法は種々の方法が利用可能であり、例えば、低温溶液重合法、界面重合法、溶融重合法、固相重合法などを用いることができるが、重合時の溶液をそのまま製膜に用いることが可能で生産性に優れる点から、低温溶液重合法が好ましい。
【0041】
また2種類以上のジアミンを用いて重合を行う場合、溶媒中にジアミンは1種類づつ添加し、該ジアミンに対し10〜99モル%の酸ジクロライドを添加して反応させ、この後に他のジアミンを添加して、さらに酸ジクロライドを添加して反応させる段階的な反応方法、および全てのジアミンを混合して添加し、この後に酸ジクロライドを添加して反応させる方法などが利用可能である。
【0042】
さらに2種類以上の酸ジクロライドを利用する場合も同様に、段階的な方法、同時に添加する方法などが利用できる。いずれの場合においても全ジアミンと全酸ジクロライドのモル比は95〜105:105〜95が好ましい。さらに好ましくは97〜103:103〜97、特に好ましくは98.5〜101.5:101.5〜98.5である。この値を外れた場合、得られる高分子の分子量が低くなり、フィルムの伸度及び靭性、耐熱性が低下することがある。またこの値を外れた場合、高分子の分子量分布が広くなりオリゴマーが生成する場合がある。オリゴマー生成量が増えた場合、製膜中にオリゴマーが凝集して内部異物となったり、表面に吹き出すことがある。このような場合、フィルムの表面平滑性が悪化することとなり、無機化合物を含む層の形成時に欠陥が生じやすく、高品位の表示材料用積層体が得られにくい。
またジアミンと酸ジクロライドを反応させる際には、ジアミンを溶解した溶液を10℃以下に冷却しながら酸ジクロライドを添加することが好ましい。ジアミンと酸ジクロライドの反応は発熱反応であり、十分に溶液を冷却しない場合高分子の重合度が上がりにくく、また分子量分布が広がることがある。これによりオリゴマー生成量が増えると、表面欠点の増加となり、無機化合物を含む層に欠陥が生じやすくなる。
【0043】
本発明の芳香族ポリアミドの製造において使用する溶媒は、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどの非プロトン性極性溶媒を挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。溶解度の点から好ましくはN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトンを挙げることができる。重合反応における反応の進みやすさの点からはN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドが好ましく、高温で加熱しても溶媒が着色することが少ないためにフィルムの黄色度を低下できる点から、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドが特に好ましい。
【0044】
原料の酸ジクロライドとしては、テレフタル酸ジクロライド、2クロロ−テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、ナフタレンジカルボニルクロライド、ビフェニルジカルボニルクロライド、ターフェニルジカルボニルクロライド等が挙げられるが、特に好ましくはテレフタル酸ジクロライド、2クロロ−テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライドである。
酸ジクロライドとジアミンから得た芳香族ポリアミド溶液は、副生物として塩化水素が混入しているが、これを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム等の無機の中和剤、またはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の有機の中和剤が使用される。しかし溶解度の低い高分子の場合、製膜時の加熱乾燥中に高分子が急激に析出して透明性あるフィルムにできない場合がある。そのような高分子の場合、中和によって溶解助剤として機能する無機塩が生成する、無機系中和剤を用いることが好ましい。
【0045】
またフィルムの表面平滑性を高めるためには、高分子溶液にレベリング剤を添加することも好ましい。表面欠点の原因の多くは、溶媒蒸発による対流現象、ゴミなどの付着、泡・異物の表面への移動、などがある。レベリング剤は表面張力を制御することで、フィルムの表面平滑性を高める働きがある。
【0046】
さらに、表面形成、加工性改善などを目的として高分子100重量部に対して10重量部以下の無機または有機の添加剤を含有させてもよい。表面形成を目的とした添加剤は、例えば、無機粒子ではSiO、TiO、Al、CaSO、BaSO、CaCO、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、ゼオライト、その他の金属微粉末等が挙げられる。また、好ましい有機粒子としては、例えば、架橋ポリビニルベンゼン、架橋アクリル、架橋ポリスチレン、ポリエステル粒子、ポリイミド粒子、ポリアミド粒子、フッ素樹脂粒子等の有機高分子からなる粒子、あるいは、表面に上記有機高分子で被覆等の処理を施した無機粒子が挙げられる。
【0047】
また他の添加剤としては、耐熱性、寸法安定性向上の目的で、ガラス繊維やガラスパウダー等の無機系充填材を添加することも好ましい。ガラス繊維やガラスパウダーの添加により、芳香族ポリアミドフィルムの耐熱性や寸法安定性をさらに高めることができるために好ましい。無機系充填材は芳香族ポリアミド100重量部に対して、1〜90重量部が好ましく、より好ましくは30〜70重量部である。無機充填材の量がこれより少ない場合、芳香族ポリアミドと無機材料との複合化による寸法安定化の効果が生じにくい。一方で、これより多いと、樹脂と無機充填材の熱膨張係数の差により成形体表面に無機充填材由来の凹凸が発生して、その外観が悪化しやすい。1〜90重量部とすることで外観の悪化なく、物性を向上できるために好ましい。
さらに、紫外線に対する劣化を防いで耐光性を向上する目的で、芳香族ポリアミド100重量部に対して10重量部以下の紫外線吸収剤を含有させてもよい。紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ベンゾエート系などの化合物が挙げられる。
【0048】
また高分子の溶解を促進する目的で溶媒には高分子100重量部に対して50重量部以下のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の塩を添加することもできる。
【0049】
次にフィルム化について説明する。本発明で用いるフィルムは、溶融製膜法と溶液製膜法のどちらの方法によっても得ることが可能であるが、溶液製膜法によりフィルム化することがより好ましい。一般的に溶融製膜法は、ダイライン(すじ)が発生しやすく、また押出し機中の樹脂の滞留が生じやすいために異物が発生しやすい問題があるのに対し、溶液製膜法ではそのような問題はなく、溶融製膜法に比べて優れた表面性を得ることができる点で好ましい。溶液製膜法では乾湿式法、乾式法、湿式法など、いずれの方法で製膜しても差し支えないが、好ましくは乾湿式法が用いられる。以下に乾湿式法による製膜を例にとって説明する。
乾湿式法で製膜する場合、製膜原液を口金から押し出す前に、製膜原液を精密濾過することが、微細異物を除去して表面平滑化できることから好ましい。使用する濾過フィルターは、保留粒子径45.0μm以下のフィルターを使用することが好ましく、より好ましくは5.0μm以下、特に好ましくは1.0μm以下である。また使用するフィルターの材質としては、無機物からなるフィルターや有機物からなるフィルターが使用される。同等の濾過精度であってもフィルターの材質によって捕捉性能が異なるため、無機物からなるフィルターと有機物からなるフィルターを併用することも好ましい。未濾過の場合、重合中に混入した異物等がフィルムに突起を形成することがあり、無機化合物を含む層を設けた積層体のガスバリア性が低下することがある。
【0050】
また濾過後の製膜環境のクリーン度についてはクラス10,000以下が好ましく、より好ましくはクラス1,000以下のクリーン度に制御した場所である。クリーン度に劣る環境で製膜を行う場合、フィルム中に塵埃が混入しやすくなり、その場合表面平滑性に劣ることがあるため、無機化合物を含む層の形成に不利となることがある。
【0051】
製膜原液を口金からドラム、エンドレスベルト、製膜基材フィルム、ガラス等の支持体上に押し出す場合、該支持体の表面平滑性を制御することが好ましく、傷等が入った支持体を使用すると、傷がフィルムに転写して表面平滑性に劣ることがある。
【0052】
支持体上に押し出した製膜原液は、加熱により溶媒を飛散させ、膜が自己保持性をもつまで乾燥する。この時に乾燥温度を高く設定すると、溶媒の蒸発が急激に進み表面平滑性が悪くなることがあり、また支持体に貼り付いてしまい剥離する際に欠点となることがある。また高温の場合、フィルム表面のみ乾燥が進みやすく、フィルムとして使用可能な厚膜を製膜する場合、フィルム表面と内部に乾燥状態に差が生じることがある。この場合、内部が不完全な乾燥状態のため、次の湿式工程に導入した際にフィルムが白濁することがある。よって乾燥初期は、溶媒沸点より20℃程度は低い温度で乾燥を行うことが好ましい。製膜時間を短縮する目的で、段階的に乾燥温度を上げていく方法は好ましい。
【0053】
支持体からの剥離を容易にして、次の湿式工程で水の急激な浸透による表面平滑性の低下を抑制するためには、支持体から剥離直後で湿式工程に導入される際の高分子濃度が47重量%以上63重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは50重量%以上60重量%以下である。支持体から剥離直後で湿式工程に導入される際の高分子濃度とは、湿式工程に導入されるまでに加熱乾燥により溶媒が減少した後のフィルムの高分子濃度であり、(最終フィルム中固形分重量/湿式工程に導入される際のフィルム中全重量)×100%、で決定される。支持体から剥離直後で湿式工程に導入される際の高分子濃度が47重量%未満の場合、乾燥が不十分のためにフィルムの剥離が困難で、また剥離時に伸びる場合がある。さらに湿式工程において、水の急激な浸透により表面平滑性が悪化することがある。厚みが10μm未満の薄膜では、剥離時高分子濃度は40重量%程度が最適だが、それ以上の厚膜の場合、乾燥中のフィルム表面構造と内部構造に差があり、表面のみ乾燥が進み、内部は未乾燥の状態となりやすい。そのような場合、表面は固まっているために剥離性は問題ないが、湿式槽でフィルム内部に水が急激に浸透してフィルムが白濁することもある。また支持体から剥離直後で湿式工程に導入される際の高分子濃度が63重量%より大きい場合、加熱乾燥に長時間を要し生産性に劣る上、フィルム表面のみが固まり過ぎて湿式槽において水が浸透しにくくなり、水による抽出時にフィルム内部の溶媒を除去することが困難となる。また加熱乾燥中に、溶媒の揮発とともに塩が表面に析出して、フィルム表面性が悪化することもある。
【0054】
支持体から剥離されて湿式工程に導入されたフィルムは、湿式槽中で脱塩、脱溶媒が行なわれる。しかし常温の水でフィルムを洗浄する場合、フィルム膜厚が10μm以上ではフィルム中の残留溶媒の低減が難しく、また塩化リチウム等無機塩の溶解助剤もフィルム内部に残留することがある。フィルム中の残留溶媒量を効率的に低減するには、水温度を35℃以上90℃以下とした水溶液を含んだ湿式槽を用いることが重要である。しかし支持体から剥離直後のフィルムを35℃以上90℃以下の湿式槽に入れると、急激に溶媒の抽出が進むために表面性が悪化することがある。
表面を平滑化しながら、残留溶媒量を低減するためには、支持体から剥離後、最初の湿式槽の温度を0℃以上35℃未満とした第1の湿式槽で脱塩、脱溶媒を進めた後、35℃以上90℃以下の第2の湿式槽に導入する方法、つまり段階的に湿式槽の水温を上げていく方法が好ましい。
ここで、第1の湿式槽とは、温度が0℃以上35℃未満の水溶液を含む槽をいい、単独の槽で構成しても、複数の槽で構成しても構わない。
第1の湿式槽を単独槽で構成する場合、水溶液の循環設備が不充分であれば、湿式槽中にフィルムから抜けた溶媒や塩が蓄積されやすく、経時で脱塩性、脱溶媒性が低下する。そのような場合、単独の湿式槽に長時間通すのは好ましくなく、第1の湿式槽を複数の槽で構成することが好ましい。この場合、最初の湿式槽より後段の槽の温度を、最初の槽と同じかもしくは少し高温度とすることが好ましい。これにより、最初の湿式槽に集中的に塩や溶媒が蓄積されることがなく、水溶液の循環設備が低い場合でも問題が生じにくい。また、第2の湿式槽とは、温度が35℃以上90℃以下の水溶液を含む槽をいい、単独の槽で構成しても、複数の槽で構成しても構わない。このとき、第2の湿式槽に導入する際の高分子濃度は80重量%以上であることが好ましい。第2の湿式槽の水溶液温度が35℃よりも低い場合、最終的に得られるフィルムに塩が残ることがあり、フィルム表面に吹き出た場合には無機化合物を含む膜の形成で不利になる。また残留溶媒となることもあり、この場合使用中や加工中に溶媒が噴出すことがある。第2の湿式槽の水溶液温度が90℃より高い場合、一部発生した水蒸気によりフィルム表面が荒れることがある。35〜90℃の湿式槽を用いることで、効率的に脱塩、脱溶媒を進めることができるため好ましい。
【0055】
35℃以上90℃以下の水溶液を含んだ第2の湿式槽に導入する際には、フィルムの高分子濃度を80%重量以上とすることが好ましい。この高分子濃度は、35℃以上90℃以下の水溶液を含んだ湿式槽に導入する直前までに溶媒が減少した後のフィルムの高分子濃度であり、(最終フィルム中固形分重量/35℃以上90℃以下の水溶液を含んだ湿式槽に導入される前までのフィルム中全重量)×100%である。高分子濃度が80重量%より低い場合、35℃以上90℃以下の湿式槽中でフィルム表面性が低下することがある。濃度の上限は特になく100重量%であれば問題ないが、高分子濃度が96重量%より高い場合、特に10μm以上のフィルムにおいては、湿式工程のみでこの濃度とすることは、長時間が必要となり生産性に劣ることがある。
【0056】
湿式槽中の水溶液は、水のみのであってもよいが、水にN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒を入れて混合系にして使用することも可能である。有機溶媒との混合系にすることで、溶媒除去速度は低下するものの、オリゴマーの除去が効果的に進み、内部や表面へのオリゴマー付着を防ぐことができる。
【0057】
また湿式槽中の水は、金属分を含まない純水を使用することが好ましい。金属分を多量に含んだ水道水等がフィルム表面に付着した状態で加熱処理を行うと、金属分が欠点として表面に残り、積層体とした際にガスバリア性に劣ることがある。
【0058】
なお、上記において、湿式工程には少なくとも第1と第2の湿式槽を設けることを説明したが、第2の湿式槽の次にさらに第3の湿式槽を設けてもよい。この場合、第3の湿式槽とは35℃未満の温度の溶液を含む槽であり、単独の槽であっても複数の槽で構成しても構わない。
上記した湿式工程の後、さらに延伸、熱処理が行なわれてフィルムとするが、この湿式工程の終了時の高分子濃度は96重量%以上100重量%以下であることが好ましい。ここで湿式工程終了時の高分子濃度は、湿式槽で溶媒が減少した後のフィルムの高分子濃度であり、(最終フィルム中固形分重量/湿式工程終了時のフィルム中全重量)×100%である。湿式工程終了時の高分子濃度が96重量%以下の場合、湿式工程後の熱処理でフィルム中に溶媒が残留しやすい。
また上記の芳香族ポリアミドフィルムは未延伸フィルムとしても好適に使用可能である。
熱処理としては、200℃〜500℃で数秒から数分間実施することが好ましい。200℃未満では熱処理が十分でなく、フィルムの表面硬度やヤング率が低下することがあり、またフィルム中に溶媒が残留することがある。また500℃を超えると、フィルムが着色することがある。
上述のように、高分子フィルム、特に芳香族ポリアミドフィルムは乾湿式製膜法で製膜され、かつ以下の工程を含む場合、溶媒が残留し難く、かつフィルム表面が平滑化しやすいために好ましい。
【0059】
(1)湿式工程に導入される際の高分子濃度が47重量%以上63重量%以下である。
【0060】
(2)湿式工程に用いる湿式槽が、0℃以上35℃未満の水溶液を含んだ第1の湿式槽と35℃以上90℃以下の水溶液を含んだ第2の湿式槽とを少なくとも備えている。
【0061】
(3)第2の湿式槽に搬送されるときのフィルムの高分子濃度が80重量%以上である。
【0062】
(4)最終の湿式槽から加熱工程に搬送されるときのフィルムの高分子濃度が96重量%以上である。
【0063】
本発明では、平坦化層や無機化合物を含む層との密着性を向上する目的で、フィルムの片面若しくは両面に対して、従来公知の表面処理を施すことができる。表面処理としては、プラズマ処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理などを挙げることができるが、これに限定されない。
【0064】
次に平坦化層の形成について述べる。フィルム表面が平滑性に劣る場合、平坦化層を形成することが好ましい。平坦化層としては、ポリシラザン又はゾル・ゲル法による金属酸化物等の無機高分子化合物、芳香族ポリアミド、ポリアミック酸、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂ポリ尿素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、変性アクリル樹脂、マレイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、エポキシ樹脂等や、フィルムと同一の高分子や、同一種類で異組成の高分子を用いることが可能である。例えば芳香族ポリアミドフィルムに対しては、平坦化層にも同組成の芳香族ポリアミド溶液や別組成の芳香族ポリアミド溶液を塗布して形成することが好ましい。樹脂溶液を塗布するためには、スピンコーター、ロールコーター、グラビアコーター、メタバーなどの方法を用いることができる。
【0065】
平坦化層を形成する際に用いる樹脂溶液の溶媒としては、フィルムに対する溶解度が比較的低いものが好ましい。フィルムに対して溶解度が高い溶媒の場合、平坦化層を形成する際にフィルムの表面も溶かしてしまい、フィルムの表面性が悪化して、フィルムと平坦化層の界面に凹凸が生じ、平坦化できないことがある。芳香族ポリアミドフィルムに対して、芳香族ポリアミドによる平坦化層を設ける場合、平坦化層形成用溶液には、塩化リチウム等の塩は添加しないことが好ましい。塩を含有する場合、芳香族ポリアミドフィルムの溶解度も上がり、そのためフィルム表面も溶解することがあるからである。また塩を除去するために、水洗工程が必要となる点からも、塩を含まない方が好ましい。塩を含有しないことで、水洗工程を設けずに平坦化層を形成できるため好ましい。
【0066】
次にガスバリア層の形成について述べる。
ガスバリア層として無機化合物を含む層を形成する場合、プラズマCVD法、触媒CVD法、熱CVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、反応蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、などを用いることができる。無機化合物としては、珪素、アルミニウム、インジウム、錫、亜鉛、チタン、タンタル、等の金属の酸化物、窒化物、酸窒化物、これらの混合物を用いることが好ましい。
【0067】
高分子化合物を含む層を設けて多層構造を有するガスバリア層とする場合、高分子化合物を含む層は、スパッタリング法、真空蒸着、イオンプレーティング法、化学気相蒸着法などのドライ形成法、ロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、スリットコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート、ダイコート等の方法によって形成することができる。好ましくは、無機化合物から成る層のピンホール等の欠陥部位を、容易に高分子化合物が埋めることができる点で、コーティングとその後の溶媒乾燥によって高分子化合物層を形成することが好ましい。高分子化合物を含む層としては、ポリシラザン又はゾル・ゲル法による金属酸化物等の無機高分子化合物、芳香族ポリアミド、ポリアミック酸、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂ポリ尿素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、変性アクリル樹脂、マレイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、エポキシ樹脂、等を用いることができるが、耐熱性の高い化合物を用いることで成形・加工時に高温熱処理が可能となるため、ポリシラザン、芳香族ポリアミド、ポリアミック酸、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等が好ましく用いられる。ポリシラザンを用いる場合は、例えば、ジブチルエーテル等に溶解して塗布し、所定温度で乾燥して塗膜を形成する。
【実施例】
【0068】
以下、実施例によって本発明を説明する。なお、特性は以下の方法により測定評価した。
【0069】
(1)光線透過率
UV測定器、U−3410(日立計測社製)を用いて、積層体の波長450〜700nmの光に対応する透過率を測定し、以下の方法で評価した。
【0070】
透過率(%)=(T3/T2)×100
ただしT3は試料を通過した光の強度、T2は試料を通過しない以外は同一の距離の空気中を通過した光の強度である。また装置起動後30分置いて、光源を安定化した後に測定を行った。
【0071】
測定波長:450〜700nm
測定モード:透過
○:450nm〜700nmの全波長域において透過率が80%以上100%以下
×:450nm〜700nmの一部の波長において透過率が0%以上80%未満の波長が有る
(2)熱膨張係数
TMA、SS6000(セイコーインスツルメンツ(株)製)を用いて、下記条件でフィルムの測定を行い、2度目の昇温工程における30℃〜100℃の範囲から熱膨張係数を求めた。なお、下記降温工程(120℃〜25℃)では液体窒素を使用して温度を下げた。
【0072】
1.範囲:25℃〜120℃、速度:5℃/min、保持時間:5分
2.範囲:120℃〜25℃、速度:5℃/min、保持時間:5分
3.範囲:25℃〜120℃、速度:5℃/min、保持時間:5分
4.範囲:120℃〜25℃、速度:10℃/min、保持時間:5分
また高温におけるフィルムの使用可能性を評価するために、100℃〜200℃の範囲についても熱膨張係数を求めた。
【0073】
1.範囲:25℃〜250℃、速度:5℃/min、保持時間:5分
2.範囲:250℃〜25℃、速度:5℃/min、保持時間:5分
3.範囲:25℃〜250℃、速度:5℃/min、保持時間:5分
4.範囲:250℃〜25℃、速度:10℃/min、保持時間:5分
(3)ガラス転移温度
DMA、DMS6100(セイコーインスツルメンツ(株)製)を用いて、下記条件でフィルムの測定を行い、tanδの極大値をガラス転移温度とした。
【0074】
周波数1Hz、測定温度25℃〜360℃、昇温速度2℃/分
(4)表面粗さ
AFM、MM−SPM(デジタルインスツルメンツ社製)を用いて、下記条件でフィルムのRaを測定した。測定は23℃、65%RHの環境で行った。なお、カットオフは設定しなかった。
【0075】
測定面積:30μm×30μm
測定速度:0.5Hz
(5)黄色度(YI値)
SPECTRO COLOR METER SE 2000(日本電色工業(株))を用いて、下式に従いフィルムの黄色度を測定した(X、Y、Zは試験片を透過した三刺激値)。なお装置起動後30分置いて、光源を安定化した後に測定を行った。測定は23℃、65%RHの環境で行った。
YI値 :YI=〔100(1.28X−1.06Z)/Y〕
測定モード:透過
(6)水蒸気透過率
透湿度測定装置PERMATRAN−W3/30(モコン社製)を用いて、積層体の水蒸気透過率を測定した。ここで装置の測定下限は0.01g/m/dayである。
【0076】
測定温度:40℃
測定湿度:90%RH
測定面積:5cm(アルミマスクホイル(MC025−493(日立計測器サービス(株))使用)
(7)高分子濃度
高分子濃度は、(固形分重量/全重量)×100%、で定義される。支持体から剥離直後で湿式工程に導入される際の高分子濃度(PC1とする)は、湿式工程に導入されるまでに加熱乾燥により溶媒が減少した後の高分子濃度であり、(最終フィルム中固形分重量/湿式工程に導入される際のフィルム中全重量)×100%、で決定される。PC1の測定法を記す。基材から剥離直後のフィルム重量(W1)を測定する。続いて80℃の水を含んだ湿式槽で60分洗浄後、340℃で1分の加熱処理を行い、再び重量(W2)を測定する。下記式に従い支持体から剥離直後で湿式工程に導入される際の高分子濃度PC1とした。
【0077】
PC1=(W2/W1)×100(%)
35℃以上90℃以下の水溶液を含んだ第2の湿式槽に導入する際の高分子濃度(PC2とする)は、35℃以上90℃以下の水溶液を含んだ湿式槽に導入する直前までに溶媒が減少した後のフィルムの高分子濃度であり、(最終フィルム中固形分重量/35℃以上90℃以下の水溶液を含んだ湿式槽に導入される前までのフィルム中全重量)×100%で決定される。湿式工程終了時の高分子濃度(PC3とする)は、湿式槽で溶媒が減少した後のフィルムの高分子濃度であり、(最終フィルム中固形分重量/湿式工程終了時のフィルム中全重量)×100%で決定される。PC2とPC3の測定法を記す。熱重量測定装置TGA−50(島津製作所製)、熱分析システムTA−50(島津製作所製)を用いて、50ml/分の窒素気流下、室温(22℃〜24℃)から10℃/分の昇温速度によって測定を開始し、室温〜110℃までの重量減少(W3)を湿式槽で付着した水分、110℃〜340℃までの重量減少(W4)を溶媒量として下記式に従いPC2、PC3とした。
【0078】
PC2、PC3=((100−W3−W4)/(100−W3))×100(%)
(8)積層体の着色評価
上記(1)と同様の方法により、積層体の透過率YI値を測定して、以下の方法により評価した。
【0079】
○:YI値≦3.5
△:3.5<YI値≦5.0
×:5.0<YI値
(9)積層体の耐熱評価
10cm×10cmサイズの積層体を、120℃に設定したオーブン中で3時間加熱した。続いて室温で15分間静置した後、上が凹、下が凸となるように、水平な平面上に置いて広げる。これらの場合に、水平面から積層体端部(4角)の浮き上がった最も高い位置の距離を測定して、4点の平均距離を求めた。この平均距離を以下の基準で判定した。ここで、積層体の対面する2辺が重なるまでカールした場合、以下の基準において×とした。
【0080】
○:0cm(浮き上がりなし)
△:0cmより大きく0.5cm以下の範囲で浮き上がる
×:0.5cmより高く浮き上がる
(10)積層体の耐湿評価
10cm×10cmサイズの積層体を、温度60℃、湿度90%RHに設定した恒温恒湿槽LH31−14P((株)ナガノ科学機械製作所)中に7日間保管した。続いて室温で15分間静置した後、上が凹、下が凸となるように、水平な平面上に置いて広げる。これらの場合に、水平面から積層体端部(4角)の浮き上がった最も高い位置の距離を測定して、4点の平均距離を求めた。この平均距離を以下の基準で判定した。ここで、積層体の対面する2辺が重なるまでカールした場合、以下の基準において×とした。
【0081】
○:0cm(浮き上がりなし)
△:0cmより大きく0.5cm以下の範囲で浮き上がる
×:0.5cmより高く浮き上がる
(11)ガスバリア性評価
上記(7)に示す方法によって測定した水蒸気透過率を、下記に従い判定した。水蒸気透過率を1.0×10−1g/m/day以下とすることで、従来の食品などの包装用途以上に水蒸気バリア性の必要な分野への使用が可能となる点、1.0×10−2g/m/day未満とすることで表示材料用途に使用できる点から、下記判定基準を設けた。
【0082】
○:1.0×10−2g/m/day未満
△:1.0×10−2g/m/day以上、1.0×10−1g/m/day以下
×:1.0×10−1g/m/dayより大きい
(実施例1)
[フィルム用の高分子の重合]
脱水したN,N−ジメチルアセトアミドに、酸ジクロライドに対して100モル%に相当する2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルを溶解させ十分に氷冷した後、ジアミンと同量である100モル%に相当する2−クロルテレフタル酸クロライドを添加し、2時間撹拌により重合した。そして発生塩化水素に対して100モル%の炭酸リチウムを用いて中和を行った。得られた溶液は、高分子濃度が10重量%の芳香族ポリアミド溶液であった。
【0083】
得られた高分子溶液を保留粒子径45μmのフィルターで濾過した後、保留粒子径1μmのフィルターにより濾過して製膜原液を得た。
【0084】
[フィルムの製膜]
得られた高分子濃度10重量%の芳香族ポリアミド溶液を、クリーン度をクラス1,000に保った環境で、バーコーターでガラス板上に流延し、120℃のオーブンで15分間乾燥して溶媒を蒸発させ、自己支持性を発現した重合体シートを支持体から剥離した。続いて剥離したシートを、15℃の純水を含んだ湿式槽に5分間通し、さらに70℃に加温した純水を含む湿式槽へ15分間通し、残存溶媒と中和で生じた無機塩の水による抽出を行った。この後、温度280℃のオーブン中でフィルムの両幅を一定に保ったまま1分間の熱処理を行い、実施例1のフィルムである厚み51μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0085】
この時のPC1=56重量%、PC2=89重量%、PC3=99重量%であった。また表面平滑性、ガラス転移温度、熱膨張係数に優れた透明なフィルムとなった。
【0086】
[無機化合物を含む層の形成]
フィルムに対して、スパッタリング装置を用いて一層目の無機化合物を含む層を付与した。無機化合物を含む層はフィルムの表面平滑性に優れる側に形成した。ターゲットとなる無機化合物としては酸化珪素を用い、導入ガスにアルゴン、スパッタ真空度は2.0×10−3Torr、投入電力2.5kW、基板温度200℃として30nmの無機化合物を含む層を形成した。
【0087】
続いて無機化合物を含む層上に高分子膜を形成した。ペルヒドロポリシラザンのジブチルエーテル溶液をメタバーを用いて塗布し、50℃で5分加熱後、150℃で1時間の加熱により高分子化合物を含む層を形成した。
【0088】
続いて、一層目の無機化合物を含む層の形成と同条件で、スパッタリングにより30nmの酸化珪素膜を形成して、実施例1の積層体を得た。
【0089】
得られた積層体は、透明性、水蒸気バリア性に優れ、カールの発生もない高品位の積層体となった。
【0090】
(実施例2)
実施例1によるフィルムの両面に、実施例1と同様の方法により無機化合物を含む層、高分子化合物を含む層、無機化合物を含む層を順に形成して、実施例2の積層体を得た。
【0091】
得られた積層体は、透明性に優れ、カールの発生もなく、水蒸気バリア性に優れる積層体となった。
【0092】
(実施例3)
実施例1において、酸ジクロライドとして25モル%のイソフタル酸ジクロライド、75モル%の2−クロルテレフタル酸クロライド、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いる以外は、実施例1と同様にして芳香族ポリアミド溶液を得た。
【0093】
さらに実施例1の製膜法において、120℃の乾燥を45分、70℃の湿式槽を40分とする点を除いては実施例1と同様にして、実施例3の50μmのフィルムを得た。
【0094】
この時のPC1=55重量%、PC2=90重量%、PC3=99重量%であった。また熱膨張係数は実施例1に多少劣るものの、ガラス転移温度に優れ、表面粗さの低い、透明性に優れたフィルムとなった。
【0095】
この芳香族ポリアミドフィルムを用いて、実施例1と同様にして、無機化合物を含む層、高分子化合物を含む層、無機化合物を含む層を順に形成して、実施例3の積層体を得た。
【0096】
得られた積層体は、透明性、カールの発生もなく、また水蒸気バリア性は実施例1に比べて少し劣るものの、十分な値を有す積層体となった。
【0097】
(実施例4)
実施例1において、高分子溶液の濾過を45μmのフィルターのみで行ったことを除いては、同様の方法により高分子溶液を得た。さらに実施例1の製膜法において、クラス10,000の環境で製膜する以外は同様にして、実施例4の50μmのフィルムを得た。
【0098】
この時のPC1=54重量%、PC2=88重量%、PC3=99重量%であった。また表面平滑性は実施例1に多少劣るものの、ガラス転移温度、熱膨張係数の高い、透明性に優れたフィルムとなった。
【0099】
続いて実施例1と同様にして、無機化合物を含む層、高分子化合物を含む層、無機化合物を含む層を順に形成して、実施例4の積層体を得た。
【0100】
得られた積層体は、透明性に優れ、カールの発生もなく、また水蒸気バリア性は実施例1に比べて少し劣るものの、十分な値を有す積層体となった。
【0101】
(実施例5)
高分子溶液を保留粒子径45μmのフィルターのみで濾過した点を除いては実施例1と同様に重合を行い、実施例5の製膜原液を得た。
【0102】
続いてクリーン度を特に制御していない場所で製膜する点を除いては、実施例1と同様に製膜を行い、実施例5のフィルムを得た。
【0103】
この時のPC1=55重量%、PC2=88重量%、PC3=99重量%であった。熱膨張係数、光線透過率、ガラス転移温度に優れるものの、表面粗さの大きなフィルムとなった。
【0104】
次に平坦化層用の樹脂溶液の調整を行った。ポリメチルメタクリレートに塩化メチレンを加え溶解させ、高分子濃度が2.3重量%の平坦化層形成用溶液を得た。
【0105】
続いて平坦化層を形成した。フィルムの表面粗さの低い側に、メタバーを用いて平坦化層形成用溶液を塗布し、50℃で1分の加熱により平坦化層を形成した。この際、高屈折率の芳香族ポリアミドに対して低屈折率のポリメチルメタクリレート薄膜を形成したことにより、平坦化層が反射防止層としての効果も発揮し、目視による透明性が向上した。
【0106】
このフィルムに、基板温度を100℃とする点を除いては実施例1と同様にして、無機化合物を含む層を形成し、続いて50℃で5分加熱後、100℃で3時間加熱する点を除いては実施例1と同様にして高分子化合物を含む層を形成した。さらに基板温度を100℃として無機化合物を含む層を形成して、実施例5の積層体を得た。
【0107】
得られた積層体は、透明性に優れ、カールの発生もないものの、水蒸気バリア性に劣る積層体となった。
【0108】
(実施例6)
脱水したN,N−ジメチルアセトアミドに、100モル%に相当する9,9ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオレンを溶解させ十分に氷冷後、これに100モル%に相当する2−クロロテレフタル酸ジクロライドを添加し、2時間撹拌により重合した。再び氷冷した後、0.2モル%に相当する塩化ベンゾイルを添加し、さらに1時間攪拌した。攪拌後、発生塩化水素に対して100モル%の炭酸リチウムを用いて中和を行った。得られた溶液は、高分子濃度が20重量%の芳香族ポリアミド溶液であった。
【0109】
得られた溶液を実施例1と同様に濾過を行い、実施例6の製膜原液を得た。
【0110】
続いて得られた製膜原液を用いて実施例1と同様に製膜を行い、実施例6のフィルムを得た。
【0111】
この時のPC1=53重量%、PC2=86重量%、PC3=99重量%であり、表面粗さ、ガラス転移温度に優れるものとなった。また熱膨張係数、光線透過率に劣るものの、実用に問題とならない程度であった。
【0112】
このフィルムに対して、実施例1と同様に、無機化合物を含む層、高分子化合物を含む層、無機化合物を含む層を順に形成して、実施例6の積層体を得た。
【0113】
得られた積層体は水蒸気バリア性に優れるものの、実施例1に比べ透明性、平坦性に少し劣るが、十分な値を有す積層体となった。
【0114】
(比較例1)
平坦化層やガスバリア層を有さない、実施例1のフィルムを比較例1のフィルムとした。
【0115】
得られたフィルムは、透明性に優れ、カールの発生もなかったものの、水蒸気バリア性は悪いものとなった。
【0116】
(比較例2)
実施例1の高分子溶液を、15℃の純水を含んだ湿式槽に15分通す工程を省略した点を除いては、実施例1と同様に製膜を行い、比較例2である51μmのフィルムを得た。
【0117】
この時のPC1=56重量%、PC3=99重量%であった。熱膨張係数、光線透過率、ガラス転移温度に優れるものの、表面粗さの高いフィルムとなった。これは、120℃で乾燥直後に、70℃の湿式槽に導入したため、溶媒抽出が急激に進んだためにフィルムの表面粗さが悪いフィルムとなったと考えられる。
【0118】
このフィルムに、実施例1と同様にして、無機化合物を含む層、高分子化合物を含む層、無機化合物を含む層を順に形成して、比較例2の積層体を得た。
【0119】
得られた積層体は、透明性に優れ、カールの発生もないものの、水蒸気バリア性に劣る積層体となった。
【0120】
(比較例3)
実施例1の高分子溶液を、未濾過のまま実施例1の製膜法に従って製膜して、比較例3のフィルムを得た。
【0121】
この時のPC1=56重量%、PC2=86重量%、PC3=99重量%であった。熱膨張係数、光線透過率、ガラス転移温度に優れるものの、表面粗さの高いフィルムとなった。これは、未濾過のためと考えられる。
【0122】
このフィルムに、実施例1と同様にして、無機化合物を含む層、高分子化合物を含む層、無機化合物を含む層を順に形成して、比較例3の積層体を得た。
【0123】
得られた積層体は、透明性に優れ、カールの発生もないものの、水蒸気バリア性に劣る積層体となった。
【0124】
(比較例4)
実施例1において、120℃の乾燥時間を9分にして行う点を除いては実施例1の製膜法に従って、比較例4のフィルムを得た。
【0125】
この時のPC1=44重量%、PC2=86重量%、PC3=99重量%であった。熱膨張係数、光線透過率、ガラス転移温度に優れるものの、表面粗さの高いフィルムとなった。これは、120℃の乾燥後不完全な状態で湿式槽に導入したためと考えられる。
【0126】
このフィルムに、実施例1と同様にして、平坦化層、無機化合物を含む層、高分子化合物を含む層、無機化合物を含む層を順に形成して、比較例4の積層体を得た。
【0127】
得られた積層体は、透明性に優れ、カールの発生もないものの、水蒸気バリア性に劣る積層体となった。
【0128】
(比較例5)
実施例3において、芳香族ポリアミド溶液を未濾過で用い、またクリーン度を特に制御していない場所で製膜をした点を除いては、実施例3と同様に行うことで、比較例5のフィルムを得た。
【0129】
この時のPC1=53重量%、PC2=88重量%、PC3=99重量%であった。熱膨張係数、光線透過率、ガラス転移温度に優れるものの、少し表面粗さの大きいフィルムとなった。
【0130】
このフィルムに、実施例1と同様にして、平坦化層、無機化合物を含む層、高分子化合物を含む層、無機化合物を含む層を順に形成して、比較例5の積層体を得た。
【0131】
得られた積層体は、透明性に優れ、カールの発生もないものの、水蒸気バリア性に劣る積層体となった。
【0132】
(比較例6)
ジアミンとして35モル%に相当する2−クロロパラフェニレンジアミン、65モル%に相当する4、4’−ジアミノジフェニルエーテル、酸ジクロライドとして100モル%に相当する2−クロルテレフタル酸クロライドを用いる以外は実施例3と同様にして、厚み53μmの比較例6のフィルムを得た。
【0133】
この時のPC1=53重量%、PC2=88重量%、PC3=99重量%であった。熱膨張係数、光線透過率、ガラス転移温度、表面粗さに優れるものの、透明性に劣るフィルムとなった。
【0134】
このフィルムに、実施例1と同様にして、平坦化層、無機化合物を含む層、高分子化合物を含む層、無機化合物を含む層を順に形成して、比較例6の積層体を得た。
【0135】
得られた積層体は、カールの発生もなく、水蒸気バリア性に優れるものの、透明性に劣る積層体となった。
【0136】
(比較例7)
実施例5のフィルムに平坦化層を設けずに、無機化合物を含む層、高分子化合物を含む層、無機化合物を含む層を形成した点を除いては実施例5と同様にして、比較例7の積層体を得た。
【0137】
得られた積層体は、透明性に優れ、カールの発生もないものの、平坦化層を設けなかったためにガスバリア膜の物性に劣り、水蒸気バリア性に劣る積層体となった。
【0138】
(比較例8)
ポリプラスチックス(株)製のTOPASをメチルエチルケトンに溶解して、高分子濃度20重量%の高分子溶液を得た。
【0139】
続いて、フィルムの製膜を行った。得られた高分子濃度20重量%の高分子溶液を、クリーン度をクラス1,000に保った環境で、バーコーターでガラス板上に流延し、50℃のオーブンで15分間乾燥して溶媒を蒸発させ、自己支持性を発現した重合体シートを支持体から剥離した。続いて剥離したシートを、80℃のオーブンで15分、100℃のオーブンで20分、120℃のオーブンで20分、170℃のオーブンで30分加熱して、比較例8の厚み49μmのフィルムを得た。
【0140】
表面平滑性に優れた透明フィルムとなったが、熱膨張係数の高いフィルムとなった。
【0141】
このフィルムに、基板温度を100℃とする点を除いては実施例1と同様にして、無機化合物を含む層を形成し、続いて50℃で5分加熱後、100℃で3時間加熱する点を除いては実施例1と同様にして高分子化合物を含む層を形成した。さらに基板温度を100℃として無機化合物を含む層を形成して、比較例8の積層体を得た。
【0142】
得られた積層体は透明性に優れるものの、カールしたものとなった。
【0143】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子を含むフィルムの少なくとも一方の側に無機化合物を含む層が形成された積層体であって、前記フィルムについて30〜100℃の熱膨張係数が−15ppm/℃以上50ppm/℃以下となるフィルム面内の方向が少なくとも一つ存在し、かつ積層体の450nmから700nmの全ての波長の光の光線透過率が80%以上100%以下である積層体。
【請求項2】
フィルムのガラス転移温度が120℃以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
フィルムがガラス転移温度を示さない、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
フィルムについて、フィルム面内の直交する二方向のいずれの方向についても、30〜100℃の熱膨張係数が−15ppm/℃以上50ppm/℃以下となる当該二方向が少なくとも一つ存在する、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
フィルムの厚みが10〜300μmである、請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
フィルムと無機化合物を含む層との間に平坦化層が設けられている、請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
高分子化合物を含む層が設けられている、請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
フィルムの一方の面の表面粗さをRa1とし、他方の面の表面粗さをRa2としたとき、Ra1とRa2とが次式(1)〜(3)を満足している、請求項1〜7のいずれかに記載の積層体。
Ra1<Ra2 (1)
0nm<Ra1≦2nm (2)
0nm<Ra2≦3nm (3)
【請求項9】
フィルムの黄色度(YI)が0以上4.5以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
積層体を120℃で3時間加熱した際に生じる端部の浮きの高さが0.5cm以下である、請求項1〜9のいずれかに記載の積層体。
【請求項11】
積層体を60℃、90%RH下で7日間保管後に生じる端部の浮きの高さが0.5cm以下である、請求項1〜10のいずれかに記載の積層体。
【請求項12】
フィルムが芳香族ポリアミドを含んでいる、請求項1〜11のいずれかに記載の積層体。
【請求項13】
芳香族ポリアミドが、化学式(I)および化学式(II)で示される構造単位を含み、それぞれの構造単位のモル分率をl、mとしたとき、50≦l≦100、0≦m≦50である、請求項12に記載の積層体。
【化1】

:−CF、−CCl、−CBr、−F、−Cl、−Br、−OH、−OCH(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
:任意の芳香族基
:水素、ハロゲンまたは炭素数1〜3の炭化水素基
【化2】

:任意の芳香族基
:任意の芳香族基
【請求項14】
水蒸気透過率が1.0×10−1g/m/day以下である、請求項1〜13のいずれかに記載の積層体。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の積層体を用いた表示材料。
【請求項16】
フィルムが乾湿式溶液製膜法で製膜され、かつ以下の工程を含んでいる、請求項1〜14のいずれかに記載の積層体の製造方法。
(1)湿式工程に導入される際の高分子濃度が47重量%以上63重量%以下である。
(2)湿式工程に用いる湿式槽が、0℃以上35℃未満の水溶液を含んだ第1の湿式槽と35℃以上90℃以下の水溶液を含んだ第2の湿式槽とを少なくとも備えている。
(3)第2の湿式槽に搬送されるときのフィルムの高分子濃度が80重量%以上である。
(4)最終の湿式槽から加熱工程に搬送されるときのフィルムの高分子濃度が96重量%以上である。

【公開番号】特開2006−255918(P2006−255918A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72669(P2005−72669)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】