説明

光学素子の製造方法、微細構造形成用型、および微細構造形成用型組立体

【課題】光学素子の製造方法において、曲率を有する光学面を有する光学素子の光学面に複数の凹凸形状による微細構造を精度よく形成することができるようにする。
【解決手段】凸レンズ面1aに沿って配置された複数の凹凸形状による反射防止部を備える光学素子の製造方法であって、弾性体からなる基体部5Aの一表面に、反射防止部の凹凸形状を凸レンズ面1aの接線方向に沿って伸長または圧縮し反転させた形状からなる成形面部を形成して、微細構造形成用型5を製作する型製作工程と、微細構造用形成用型5を湾曲させて、一表面を凸レンズ面1aに実質的に沿う形状に変形させることにより、成形面部を反射防止部が反転した形状に変形させる型変形工程と、凸レンズ面1aを有するレンズ本体1の凸レンズ面1aに成形用樹脂を塗布し、型変形工程で変形された成形面部5c’を凸レンズ面1aに押圧し、成形用樹脂を硬化させる成形工程と、を備える方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の製造方法、微細構造形成用型、および微細構造形成用型組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばカメラ等の撮像レンズのレンズ面には、ゴーストやフレアなどの不要光の映り込みを防止するため、反射防止膜が設けられている。
このようなレンズ等の光学素子の表面に設けられる反射防止膜としては、例えば、反射防止する光の波長に応じて高屈折率層と低屈折率層とを交互に適宜重ね合わせた多層薄膜が知られている。このような多層の反射防止膜は、真空蒸着やスパッタ等の真空プロセスによって形成されるが、膜厚が管理された薄膜を多層に設ける必要があるため、処理時間が長くなっていた。また真空プロセスは指向性が高いため、レンズ形状により、例えば中心部に対する外周部の凹凸量が大きくなるレンズの場合、中心部と外周部とで膜厚が変化する。このため、レンズ面全体にわたって均一な反射防止特性を有する反射防止膜を得ることができず、例えば、中心部に比べて外周部の反射防止特性が劣る反射防止膜になってしまう。
このような多層薄膜によらない反射防止構造体として、例えば、特許文献1に記載されたように、レンズ表面に三角錐や四角錐などを単位とする微細構造を形成し、レンズ表面の近傍で屈折率変化が生じるようにした反射防止構造体が知られている。
特許文献1では、三角柱が微小ピッチをあけて配列されたX線マスクを形成し、このX線マスクを介してレンズ上に塗布されたレジストにX線を露光して、レンズ表面に三角錐の微細構造を形成し、さらにRFドライエッチングを行うことにより、三角錐の微細構造をレンズ表面に転写して反射防止構造体を表面に有するマスタを形成する。次にこのマスタの形状を転写して電鋳プロセスによりNi複製型を製造し、このNi複製型を用いた成形によって、反射防止構造体を表面に有するレンズを製造する技術が記載されている。
また、光学素子の表面に微細構造を形成する技術ではないが、特許文献2には、ナノインプリント用スタンパ(微細構造形成用型)であって、光透過性硬質基板と、光透過性弾性体プレートと、光透過性で可撓性の硬質スタンパベースと、光透過性スタンパ緩衝層と、光透過性スタンプパターン層とから構成されており、前記スタンパ緩衝層のヤング率が前記スタンプパターン層のヤング率よりも低いことを特徴とするナノインプリント用スタンパが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−317807号公報
【特許文献2】特開2010−036514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術には、以下の問題があった。
特許文献1に記載の技術では、反射防止構造体となる多数の突起を有する微細構造の形状が反転された成形型を用いて、反射防止構造を有するレンズを形成するため、多層薄膜を形成する場合に比べて、製造時間が短縮されるとともにレンズの表面に均一性の高い反射防止構造を作りやすい。
ところが、特許文献1の成形型は、光学素子を一体成形する金型であり、硬質のNi複製型である。このため、予め曲率を有する光学面が形成された光学素子本体の光学面に微細構造を形成しようとすると、金型の製作誤差または光学面の加工誤差によって、金型が光学面に密着しない部分が発生して、反射防止構造体の形状が変化するため、反射防止特性が不均一になってしまうという問題がある。
一方、特許文献2に記載の技術のように、スタンパパターン層のヤング率よりも低いヤング率を有するスタンパ緩衝層を設けることで、スタンパパターン層が被転写基板の凹凸に追従して密着させることも考えられる。
しかし、特許文献2に記載の技術は、微小な反りや局所的な凹凸部を有するものの全体として略平面からなる被転写基板に微細構造を形成する技術であり、例えば、レンズのように、被転写対象となる光学面が全体として曲率を有している場合に適用すると、スタンパ緩衝層およびスタンパパターン層の変形量が大きくなり、スタンパパターン層が歪んだり破損したりするおそれがある。
また、スタンパの押圧時には、光学面の凹凸形状に応じて、スタンパパターン層が外周側(凹面の場合)または中心側(凸面の場合)から当たっていく。したがって、スタンパ緩衝層内に発生するひずみも外周部と中心部とでは異なるため、スタンパパターン層の変形量が外周部と中心部とでは異なるものである。このため、微細構造の形状やピッチが、光学面の外周部と中心部とで、変化し、これにより、反射防止特性が不均一になってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、曲率を有する光学面を有する光学素子の光学面に複数の凹凸形状による微細構造を精度よく形成することができる光学素子の製造方法、微細構造形成用型、および微細構造形成用型組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の光学素子の製造方法は、曲率を有する光学面に沿って配置された複数の凹凸形状による微細構造を備える光学素子の製造方法であって、弾性体からなる基体の一表面に、前記複数の凹凸形状を前記光学面の接線方向に沿って伸長または圧縮し反転させた形状からなる成形面部を形成して、微細構造形成用型を製作する型製作工程と、前記微細構造用形成用型を湾曲させて、前記基体の一表面を前記光学面に実質的に沿う形状に変形させることにより、前記成形面部を前記複数の凹凸形状が反転した形状に変形させる型変形工程と、前記光学面を有する光学素子本体の前記光学面に成形用樹脂を塗布し、前記型変形工程で変形された前記成形面部を前記光学面に押圧し、前記成形用樹脂を硬化させる成形工程と、を備える方法とする。
【0007】
また、本発明の光学素子の製造方法では、前記凹凸形状は、前記光学面において均一に分布していることが可能である。
【0008】
また、本発明の光学素子の製造方法では、前記型製作工程では、前記基体の一表面が平面からなることが可能である。
【0009】
また、本発明の光学素子の製造方法では、前記型変形工程では、前記微細構造形成用型を湾曲させる際に、前記基体の前記一表面と対向する反対側の表面の変形を規制するガイド面に、前記反対側の表面を密着させることにより湾曲させることが可能である。
【0010】
また、本発明の光学素子の製造方法では、前記微細構造形成用型の前記基体は、厚さが一定の平板状部材からなり、前記ガイド面は、前記光学面と相似形状の湾曲面からなることが可能である。
【0011】
また、本発明の光学素子の製造方法では、前記微細構造は、錘体が集合した反射防止構造であることが可能である。
【0012】
本発明の微細構造形成用型は、曲率を有する被加工面に複数の凹凸形状からなる微細構造を形成する微細構造形成用型であって、弾性体からなる基体と、該基体の一表面に、前記複数の凹凸形状を前記光学面の接線方向に沿って伸長または圧縮し反転させた形状からなる成形面部と、を備える構成とする。
【0013】
また、本発明の微細構造形成用型では、前記基体の前記一表面が平面からなることが可能である。
【0014】
また、本発明の微細構造形成用型では、前記微細構造は、錘体が集合した反射防止構造であることが可能である。
【0015】
本発明の微細構造形成用型組立体は、本発明の微細構造形成用型と、該微細構造形成用型の前記基体の前記一表面と対向する反対側の表面の変形を規制するガイド面を有し、該ガイド面に前記反対側の表面を密着させた状態で、前記微細構造形成用型を保持する型保持部材と、を備える構成とする。
【0016】
また、本発明の微細構造形成用型組立体では、前記ガイド面は、前記光学面と相似形状の湾曲面からなる構成とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光学素子の製造方法、微細構造形成用型、および微細構造形成用型組立体によれば、微細構造形成用型を湾曲させて基体の一表面を光学面に実質的に沿う形状に変形させた際に、成形面部が複数の凹凸形状が反転した形状に変形されるため、曲率を有する光学面を有する光学素子の光学面に複数の凹凸形状による微細構造を精度よく形成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法によって製造された光学素子の構成の一例を示す模式的な平面図、そのA−A断面図、B部詳細図、およびC部詳細図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の微細構造形成用型、微細構造形成用型組立体を含む表面加工装置の模式的な構成図、そのD部詳細図、およびE部詳細図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の微細構造形成用型組立体の分解図、およびそのF視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の微細構造形成用型の変形前(自然状態)の形状を示す中心軸を含む模式的な断面図、模式的な平面図、そのG部詳細図、およびH部詳細図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の微細構造形成用型の変形率について説明する模式説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の微細構造形成用型の自然状態と変形状態との模式的な断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の微細構造形成用型の型製作工程を示す模式的な工程説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の微細構造形成用型の型変形工程を示す模式的な工程説明図である。
【図9】本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法の成形工程の模式的な工程説明図である。
【図10】本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法の成形工程の図9に続く模式的な工程説明図である。
【図11】本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法の成形工程の図10に続く模式的な工程説明図である。
【図12】本発明の第2の実施形態の光学素子の製造方法に用いる光学素子の表面加工装置の主要部の構成を示す模式的な断面図、および微細構造形成用型組立体の模式的な分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0020】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法に用いる光学素子の表面加工装置について説明する。
図1(a)は、本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法によって製造された光学素子の構成の一例を示す模式的な平面図である。図1(b)は、それぞれ図1(a)におけるA−A断面図である。図1(c)、(d)は、図1(b)におけるB部詳細図、およびC部詳細図である。図2(a)は、本発明の第1の実施形態の微細構造形成用型、微細構造形成用型組立体を含む表面加工装置の模式的な構成図である。図2(b)、(c)は、図2(a)におけるD部詳細図、およびE部詳細図である。図3(a)は、本発明の第1の実施形態の微細構造形成用型組立体の分解図である。図3(b)は、図3(a)におけるF視図である。図4(a)、(b)は、それぞれ、本発明の第1の実施形態の微細構造形成用型の変形前(自然状態)の形状を示す中心軸を含む模式的な断面図、および模式的な平面図である。図4(c)、(d)は、それぞれ、図4(a)におけるG部詳細図、およびH部詳細図である。
【0021】
本実施形態の光学素子の製造方法は、曲率を有する光学面に沿って配置された複数の凹凸形状による微細構造を備える光学素子の製造方法である。
光学素子の種類は、曲率を有する(曲率が0でない)光学面に沿って配置された複数の凹凸形状による微細構造を備えるものであれば、特に限定されない。
以下では、一例として、図1(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、被加工体がレンズ本体1(光学素子本体)であり、微細構造が反射防止部2による反射防止構造の場合の例で説明する。
すなわち、本実施形態では、レンズ本体1に反射防止部2を形成して、光学素子であるレンズ1Aを製造する場合の例で説明する。
【0022】
レンズ本体1は、球面の凸レンズ面1a(曲率を有する光学面)と、球面の凸レンズ面1b(曲率を有する光学面)とを備える単玉の両凸レンズであり、これら凸レンズ面1a、1bの外周にフランジ部1cが形成されている。
フランジ部1cにおいて、凸レンズ面1a、1bの外周に隣接する面は、それぞれレンズ本体1の光軸Oに直交する平面からなり、レンズ本体1の光軸方向の位置決めが可能となる位置決め面1d、1eを構成している。
凸レンズ面1a、1bは、反射防止部2を形成する前に、レンズの設計仕様に基づく面形状、面精度に加工されている。以下では、凸レンズ面1a、1bの曲率半径をそれぞれR、R、凸レンズ面1a、1bの外径をそれぞれD、Dで表す(図1(b)参照)。
レンズ本体1の材質は、ガラスでも合成樹脂でもよい。また、凸レンズ面1a、1bの形成方法は、研磨でもよいし成形でもよい。
以下では、重複する説明を避けるため、反射防止部2に関しては、凸レンズ面1aに形成された反射防止部2を中心として説明する。特に断らない限り、凸レンズ面1aの反射防止部2に関する説明は、必要に応じて凸レンズ面1bの形状に応じた変更を加えれば、凸レンズ面1bにおける反射防止部2にも同様に適用することができる。
【0023】
反射防止部2は、図1(c)、(d)に示すように、凸レンズ面1a上に密集して配置された円錐状の突起2aの集合体である。
各突起2aの中心軸は、本実施形態では、各突起2aが設けられた位置における凸レンズ面1aの法線Nの方向に一致されている。ただし、突起2aの中心軸の方向は、反射率が許容できる範囲であれば法線Nから傾斜した方向に設定してもよく、法線Nの方向に厳密に一致させる必要はない。
また、各突起2aは、本実施形態では、UV硬化樹脂によって形成されている。UV硬化樹脂の種類は、レンズ本体1の材質の屈折率に応じて、屈折率差がなるべく少なくなる材質を選定する。例えば、本実施形態では、レンズ本体1がCOP(シクロオレフィンポリマー)樹脂(屈折率1.5)である場合に、UV硬化樹脂は、PAK−02(商品名;東洋合成工業(株)製、屈折率1.5)を採用している。
突起2aの形状は、反射防止する波長や反射率の目標値に応じて適宜設定することができる。本実施形態では、一例として、波長380nm〜780nmの入射光の凸レンズ面1aでの反射率を1%以下にするために、底面の直径dが200nm、高さhが200nmとされた突起2aを、隣接ピッチpを200nmで凸レンズ面1a上に均一に分布させている。ここで分布が均一であるとは、凸レンズ面1a上での平均的な隣接ピッチpが一定であることを意味し、個々の隣接ピッチpは、例えば、製作誤差などによるバラツキを有していてもよい。
このような構成により、凸レンズ面1a上では、高さ200nmの範囲で、屈折率が1から1.5に連続的に変化するため、入射光の反射が抑制される。
【0024】
このようなレンズ1Aは、本実施形態では、図2(a)に示す表面加工装置50を用いて製造される。以下では、表面加工装置50により、凸レンズ面1aに反射防止部2を形成する場合の例を中心に説明するが、後述する微細構造形成用型組立体10を、凸レンズ面1bの曲率半径に合わせた微細構造形成用型組立体に代えることで、同様にして凸レンズ面1bにも反射防止部2を形成することができる。
【0025】
表面加工装置50の概略構成は、保持部3、UV光源4、微細構造形成用型組立体10、型移動部7、吸着部8、および型移動制御部9を備える。
【0026】
保持部3は、反射防止部2を形成する表面加工を行う際にレンズ本体1を保持するものである。本実施形態では、保持部3は、レンズ本体1の光軸Oを鉛直軸に整列させて凸レンズ面1aを上方に向けた状態で、フランジ部1cの側面および位置決め面1eを保持することができるようになっている。
保持部3の中心部には、レンズ1Aのレンズ有効径よりも大きく開口した孔部3aが貫通して設けられている。
孔部3aの中心軸は、保持部3に保持されたレンズ本体1の光軸Oと整列する位置関係にある。
【0027】
UV光源4は、紫外光(UV光)をレンズ本体1に照射する光源であり、凸レンズ面1aに塗布されたUV硬化樹脂を硬化させるために用いられる。本実施形態では、UV光源4は、保持部3の下方において、孔部3aの中心に重なる位置に配置されている。このため、UV光源4から上方に照射されたUV光は、孔部3aを通過して、レンズ本体1に入射し、凸レンズ面1aの全面に照射される。
【0028】
微細構造形成用型組立体10は、型保持部材6と、型保持部材6の下面側において、変形された状態で保持された微細構造形成用型5とからなる。
【0029】
型保持部材6は、図3(a)、(b)に示すように、レンズ本体1の外径と同程度の外径を有する円柱状の外形を有し、中心軸線Zが鉛直軸と平行になるように配置されている。
型保持部材6の上面6fの中心部には、後述する型移動部7の昇降アーム7aの下端部が連結されている。このため、型保持部材6は、昇降アーム7aによって、鉛直方向に移動可能に保持されている。
型保持部材6の下面6cは中心軸線Zと直交する平面からなり、下面6cの中心部には微細構造形成用型5を変形した状態に保持する保持穴6aが形成されている。
保持穴6aは、凸レンズ面1aの外径Dに等しい内径を有し中心軸線Zと同軸に形成された円筒面からなる内壁面6eの奥側に穴底面6bが形成されたものである。
保持穴6aの形状は、凸レンズ面1aおよび後述する微細構造形成用型5の形状によって決まり、本実施形態では、内壁面6eの奥行き寸法は、Hとされ、穴底面6bは曲率半径のRの凹球面である(図3(a)参照)。
【0030】

穴底面6bの中心部には、穴底面6bから上面6fまでの間に貫通して設けられ、保持穴6a内の空気を上方に吸気するための吸引孔部6dが設けられている。本実施形態では、吸引孔部6dは、穴底面6b側の開口径を最大径として上面6f側に向かうにつれて内径が縮径し、上面6fの近傍では内径一定の管状部が形成された漏斗状の形状を有している。
【0031】
型保持部材6の材質は、微細構造形成用型5を湾曲させた状態で保持できる剛性を有していれば、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼などの金属や、微細構造形成用型5の材料の縦弾性係数よりも大きな縦弾性係数を有する合成樹脂などを採用することができる。
【0032】
微細構造形成用型5は、被加工面である凸レンズ面1a上に反射防止部2を形成するためのもので、型保持部材6に比べて縦弾性係数の小さな弾性体で構成された基体部5Aに、反射防止部2の凹凸形状を転写するための形状を有する成形面部5aが形成されたものである。
基体部5Aの材質は、例えば、ゴムやエラストマーなどの弾性材料が好適である。本実施形態では、一例として、シリコン混和物からなるゴム(縦弾性係数;6.3(MPa))を採用している。
基体部5Aは、外力による変形を受けない状態(以下、自然状態と称する)では、図4(a)、(b)に示すように、略円板状の外形、詳しく言えば側面5eがテーパ面である円錐台状の外形を有する。
ただし、図2(a)に示すように、基体部5Aが型保持部材6の保持穴6aに保持される際には、穴底面6bに沿って湾曲されるとともに内壁面6eに密着された変形状態(以下、単に、変形状態と称する)に保持される。
以下では、自然状態の形状と変形状態の形状とを区別するために、変形状態の部位を表す場合、部位を示す符号に「’」を付けることにする。
【0033】
基体部5Aの自然状態における外形は、図4(a)、(b)に示すように、厚さが2・hの円錐台状であり、厚さ方向の一方の表面5c(一表面)は直径dの円からなる平面、表面5cと反対側の表面5d(一表面に対向する反対側の表面)は直径d(ただし、d<d)の円からなる平面で構成されている。
基体部5Aの側面5eは、表面5c、5dに共通する中心軸線Cと同軸のテーパ面から構成されている。
符号Mで示す面は、基体部5Aの厚さ方向の仮想的な中心面であり、後述する変形時の曲げの中立面を構成する。この中立面Mは、自然状態では、直径dが、d=(d+d)/2の円からなる仮想的な平面である。
【0034】
表面5cには、反射防止部2の凹凸形状を凸レンズ面1aの接線方向に圧縮し反転させた形状からなる成形面部5aが形成されている。
ここで、反転させた形状とは、反転対象形状の凹凸を逆転した形状を意味する。
本実施形態の成形面部5aは、図4(c)、(d)に示すように、表面5cに、反射防止部2の各突起2aに対応する凹穴部5bが形成されたものである。ただし、凹穴部5bの形状および位置は、微細構造形成用型5の変形状態における成形面部5a’が、反射防止部2を反転させた形状となるように設定される。
このため、表面5cに沿う中心軸線Cからの距離がxである位置に穴中心軸nが位置する凹穴部5bの場合、形状は、開口径d(x)、深さh=hの円錐穴であり、隣り合う他の凹穴部5bとの隣接ピッチは、p(x)である。また、凹穴部5cの穴中心軸nは、表面5cの法線に整列している。
ここで、開口径d(x)、隣接ピッチp(x)は、反射防止部2の突起2aの形状および配置と、基体部5Aが受ける変形とによって異なり、一般には、xの関数となる。
ただし、本実施形態では、反射防止部2の突起2aの底面の直径dおよび隣接ピッチpが定数であり、かつ、xにおける変形率δ(x)が定数となるため、開口径d(x)、隣接ピッチp(x)は、xによらない定数dh0、ph0になる。
【0035】
また、図2(b)、(c)に示すように、変形状態の基体部5Aでは、自然状態の成形面部5aが、成形面部5a’に変化する。成形面部5a’では、成形面部5aの表面5cが、凸レンズ面1aに倣う凹球面である表面5c’に変化し、この変形による変形率δ(x)に応じて、各凹穴部5bの形状および位置が変化し、それぞれ対応する凹穴部5b’が形成される。
表面5cにおいてxで表される位置が、表面5c’において、中心軸線Cを含む平面と交差する経路に沿う長さがx’となる位置に移動したとすると、表面5c上のxの変形率δ(x)(x=0は除く)は、次式(1)で表される。
【0036】
δ(x)=x’/x ・・・(1)
【0037】
この変形率δ(x)を用いると、変形状態の凹穴部5b’の開口径d’(x’)、隣接ピッチp’(x’)と、自然状態の凹穴部5bの開口径d(x)、隣接ピッチp(x)とは、次式(2)、(3)の関係にある。
【0038】
【数1】

【0039】
したがって、表面5c’の形状と、凹穴部5b’の開口径d(x’)、隣接ピッチp’(x’)とが決まると、凹穴部5bの開口径d(x)、隣接ピッチp(x)が決まる。
【0040】
型移動部7は、図2(a)に示すように、型保持部材6の上方に配置されている。型移動部7の概略構成は、下端部がそれぞれ型保持部材6の上面6fの中心部に接続され、鉛直軸に平行に配置された移動軸7aと、移動軸7aの上端部を保持し、移動軸7aを鉛直軸に沿って進退させる軸移動機構7bとを備える。
【0041】
移動軸7aの内部には、型保持部材6の吸引孔部6dの上端部と接続され、吸引孔部6dに連通する管路7cが設けられている。管路7cの他端部は、軸移動機構7bの側方において、チューブ8aを介して吸着部8と接続されている。
【0042】
軸移動機構7bは、図示略の支持部材によって保持部3の上方に固定されている。
また、軸移動機構7bは、移動軸7aの進退量を制御する型移動制御部9と電気的に接続されている。
軸移動機構7bの具体的な構成としては、モータ等の駆動機構を用いたアクチュエータや、エアシリンダなどの流体駆動によるアクチュエータなどの構成を採用することができる。
【0043】
吸着部8は、管路7cに連結されたチューブ8aを介して、保持穴6a内から排気したり、保持穴6a内に給気したりするポンプを備え、保持穴6aの空気圧を調整することにより、微細構造形成用型5の着脱を補助するとともに、微細構造形成用型5を吸着保持するものである。
【0044】
次に、表面加工装置50を用いたレンズ1Aの製造方法の一例について説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態の微細構造形成用型の変形率について説明する模式説明図である。図6(a)、(b)は、それぞれ本発明の第1の実施形態の微細構造形成用型の自然状態と変形状態との模式的な断面図である。図7(a)、(b)、(c)、(d)は、本発明の第1の実施形態の微細構造形成用型の型製作工程を示す模式的な工程説明図である。図8は、本発明の第1の実施形態の微細構造形成用型の型変形工程を示す模式的な工程説明図である。図9は、本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法の成形工程の模式的な工程説明図である。図10は、本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法の成形工程の図9に続く模式的な工程説明図である。図11は、本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法の成形工程の図10に続く模式的な工程説明図である。
【0045】
本実施形態の光学素子の製造方法は、型製作工程、型変形工程、および成形工程を備える。ここで、型製作工程および型変形工程は、同じ微細構造形成用型5を用いて複数回の成形を行う場合には、成形工程に先立ってそれぞれ1回行えばよい。
【0046】
型製作工程は、自然状態の微細構造形成用型5を製作する工程である。
微細構造形成用型5を製作するには、まず、反射防止部2の形状から、変形状態における成形面部5a’の形状を求め、微細構造形成用型5が型保持部材6の保持穴6aに保持された際の変形率δ(x)から、自然状態における成形面部5aの形状を決定する。
変形率δ(x)は、自然状態の基体部5Aの形状および材料定数と、変形状態の形状により決まる。
基体部5Aの形状が複雑な場合には、変形率δ(x)は、例えば、数値シミュレーションなどによって求めることができる。
本実施形態では、基体部5Aが厚さ2hの円板状の弾性体であるため、弾性板の曲げ理論に基づいて、変形率δ(x)を求めることが可能である。以下、本実施形態における変形率δ(x)の求め方の一例について説明する。
【0047】
図5に示すように、弾性円板の曲げの前後の形状を、弾性円板の中心軸線Cを通る断面で表すと、自然状態(図5の実線参照)における矩形BOCEOFが、変形状態(図5の二点鎖線参照)では弓形のB’O’C’E’O’F’に変化する。ここで、点O、Oは、それぞれ線分BC、FEの中点であり、点O’、O’は、それぞれ円弧B’C’、F’E’の中点である。点O、O、O’、O’は、いずれも中心軸線C上の点である。
本実施形態の場合、変形状態における円弧F’E’は、凸レンズ面1aの半径Rの円弧に対応する。
このとき、自然状態において中心軸線Cから距離xにある曲げ断面Xを考えると、せん断変形を無視できる場合には、曲げ断面Xは、中心軸線C上の点Qを中心として曲げの中立面に直交するように角度θ(x)だけ回転する。
このため、図5に示す断面では、線分BFおよびCEの中点A、Dを結んだ線分で表される曲げの中立面AODは、変形状態では、線分AOD上の各点が伸縮することなく線分AODと同じ長さの弧長を有する半径(R+h)の円弧A’O’D’に変形する。ここで、点Oは、線分ADの中点、点O’は、円弧A’D’の中点であり、いずれも中心軸線C上に位置する。
一方、自然状態の線分FOEは、曲げ変形するにつれて接線方向に圧縮されることで、半径Rの円弧F’O’E’に変形する。
また、自然状態の線分BOCは、曲げ変形するにつれて接線方向に伸長されることで、半径(R+2h)の円弧B’O’C’に変形する。
【0048】
このような変形では、中心軸線Cを含む断面の扇形O’QX’、O’QX’、O’QX’が相似であることから、各円弧の弧長の連比O’QX’:O’QX’:O’QX’は、対応する半径の連比R:(R+h):(R+2h)の連比に等しい。
したがって、上記式(1)による変形率δ(x)は、本実施形態の例では、次式(4)のように、x(ただし、x=0を除く)によらず一定値をとる。
【0049】
δ(x)=R/(R+h) ・・・(4)
【0050】
式(4)を式(2)、(3)に代入して、d(x)、p(x)について解くと、次式(5)、(6)が得られる。
【0051】
(x)=d’(x)・{(R+h)/R} ・・・(5)
(x)=p’(x)・{(R+h)/R} ・・・(6)
【0052】
また、本実施形態では、d’(x)、p’(x)に対応する反射防止部2の突起2aの底面の直径dおよび隣接ピッチpが定数であるため、d(x)、p(x)は次式(7)、(8)で表される定数dh0、ph0になる。
【0053】
h0=d・{(R+h)/R} ・・・(7)
h0=p・{(R+h)/R} ・・・(8)
【0054】
また、この曲げ変形は、接線方向の伸縮によって起こるため、凹穴部5c’の深さhは、突起2aの高さhを用いて、次式(9)で表される。
【0055】
=h ・・・(9)
【0056】
以上、簡単のため、中心軸線Cを含む断面が矩形であるとして説明したが、本実施形態の微細構造形成用型5は、変形状態で、上面5d’が保持穴6aの穴底面6bに密着し、側面5e’が内壁面6eと密着するように、自然状態の側面5eをテーパ面とする。
このため、微細構造形成用型5の自然状態の外形寸法と、保持穴6aの各寸法とは、次式(10)〜(16)の関係を満すように設定する。
【0057】
【数2】

【0058】
ここで、θ、θ、θは、それぞれ表面5c’の外縁部の点x’(図6(b)参照)、中立面M’の外縁部の点x’(図6(b)参照)、上面5d’の外縁部の点x’(図6(b)参照)を通る各法線と中心軸線Cとのなす角度である。
式(10)〜(16)において、R、Dは凸レンズ面1aの形状から決まる定数であるから、hの値を適宜設定することにより、d、d、d、θ、θ、θ、およびRが決まる。また、内壁面6eの奥行き寸法Hは、次式(17)の関係を満たす範囲で設定すればよい。
このようにして、微細構造形成用型5の自然状態の外形寸法と、保持穴6aの各寸法とが決定される。
【0059】
【数3】

【0060】
このように決定される成形面部5aの形状は、弾性板の曲げ理論を仮定しているため、基体部5Aの外形や材料定数によっては誤差が生じるおそれがある。ただし、後述する成形工程で成形面部5a’を凸レンズ面1aに押圧する際に、基体部5Aが厚さ方向に弾性変形することによって表面5c’が凸レンズ面1aに密着すれば、成形には支障はない。したがって、微細構造形成用型5の変形状態では、表面5c’は、凸レンズ面1aに実質的に沿う形状であればよい。なお、「実質的に沿う」とは、完全に沿う場合と、ほぼ沿う場合とをいう。完全に沿う場合とは、凸レンズ面1a上に形成される反射防止部2の膜厚分布が均一であることをいう。また、ほぼ沿う場合とは、反射防止部2の膜厚分布が、例えば±5.0%以内で異なることをいう。
例えば、表面5c’の曲率半径が、凸レンズ面1aよりもわずかに大きくなる形状としてもよい。この場合、微細構造形成用型5を凸レンズ面1aに押圧した際に、中心部の基体部5Aが厚さ方向に圧縮されることによって、表面5c’の全体を凸レンズ面1aと密着させることができる。また、表面5c’が凸レンズ面1aの中心部から外周側に向かって順次密着していくため、後述する成形工程で、UV硬化樹脂20を中心部から外周部に向かって押し出しながら、表面5c’を凸レンズ面1aに密着させることができる。
【0061】
このように微細構造形成用型5の外形および成形面部5aの形状を決定したら、微細構造形成用型5の製作を開始する。
まず、図7(a)に示すように、例えばシリコンからなる平板部材からなるマスター基材11を用意し、このマスター基材11の一方の板面である基材表面11a上に、上記式(7)、(8)、(9)を満たす複数の凹穴部12aからなる反転微細構造体12を形成する。
ここで、本実施形態の場合には、d(x)、p(x)は定数となるが、xにより変化してよいことを示すため、図6(a)(図6(b)、(c)、(d)も同様)では、突起12aの形状や隣接ピッチがxにより異なる場合の様子を誇張して模式的に描いている。
このような反転微細構造体12は、基材表面11a上にレジストを塗布し、例えば電子線描画装置によって形状パターンを露光した後、露光部を除去することにより形成することができる。
【0062】
次に、図6(b)に示すように、ドライエッチング装置13から基材表面11aの法線方向に沿ってエッチングビーム14を照射し、反転微細構造体12が除去されるまで異方性エッチングを行う。
これにより、基材表面11aの各位置において、反転微細構造体12の外形に沿って、基材表面11aの法線方向にエッチングが進行し、反転微細構造体12の形状がマスター基材11に転写される。これによりマスター基材11の反転微細構造部11bが形成される。
以下、反転微細構造部11bが形成されたマスター基材11をマスター型11Aと称する。
【0063】
次に、図6(c)に示すように、マスター型11Aを母型として、反転型13を形成する。例えば、ガラス等の透明な平面基板上にUV硬化樹脂を塗布し、UVインプリントを用いて微細構造転写を行うことにより、反転型13を形成する。また、反転型13の製作方法は、樹脂フィルムに加熱下でマスター型11Aを押し付けることによっても製作可能である。
これにより、反転微細構造部11bの形状を反転した微細構造部13aを表面に有する全体として平板状の反転型13が得られる。微細構造部13aの形状は、反転微細構造部11bを反転した形状であるため、反射防止部2と同様の円錐状の突起が密集して配置された、全体として凸型の形状である。
マスター型11Aの製作を省略して反転型13から製作を行ってもよいが、エッチングでは、凹型の形状を製作する方が凸型の形状を製作するよりも容易であり、形状精度も良好となる。このため、本実施形態では、凹型の形状のマスター型11Aを作成する製造方法を採用している。
【0064】
次に反転型13を成形面部5aの母型とし、微細構造形成用型5の外形を形成する図示略の型枠を形成し、この型枠に液体状のシリコン混和物からなるゴムを導入して硬化させて、微細構造形成用型5を形成する。硬化手段としては、熱方式や光硬化方式を挙げることができる。本実施形態では、UV光による光硬化方式を採用している。
このようにして、成形面部5aを有する微細構造形成用型5が製作される。
以上で、型製作工程が終了する。
【0065】
なお、上記の微細構造形成用型5の製作方法は、一例であって、適宜変形することができる。
例えば、マスター型11Aを形成する場合に、ドライエッチングの代わりに、アルミ陽極酸化等の選択的なエッチングを採用してもよい。
【0066】
次に、型変形工程を行う。
本工程は、微細構造用形成用型5を湾曲させることにより、基体部5Aの表面5cをレンズ本体1の凸レンズ面1aに実質的に沿う形状に変形させるとともに、自然状態の成形面部5aを凸レンズ面1aの接線方向に変形させて成形面部5a’を形成し、反射防止部2の凹凸形状が反転した形状に変形する工程である。
本工程は、本実施形態では、型保持部材6の保持穴6a内に微細構造形成用型5を挿入することにより微細構造形成用型5を変形させる。
【0067】
本工程では、図8に示すように、自然状態の微細構造形成用型5を上面5d側から型保持部材6の保持穴6aの開口近傍に配置し、保持穴6a内に挿入する。このとき、本実施形態では、並行して吸着部8を起動し、保持穴6a内の空気を吸引孔6dから排気する。
微細構造形成用型5の側面5eが保持穴6aに内接したら、例えば治具などを用いて表面5c寄りの側面5eを中心に向けて押圧する。このとき、吸着部8の排気により保持穴6a内の圧力が低下するため、微細構造形成用型5は、穴底面6bに向かって吸引される。これにより、成形面部5aを型保持部材6の方に押圧することなく、微細構造形成用型5が保持穴6a内に挿入される。
【0068】
このようにして微細構造形成用型5を保持穴6a内への挿入を続けると、側面5eが保持穴6aの内壁面6bに倣って密着しつつ変形し、中心軸線Cを含む断面内で、側面5eが回転する。このような強制変位により、微細構造形成用型5は外縁部に曲げモーメントを受けている状態となる。このため、上面5cが伸長し、表面5cが圧縮されて成形面部5aが凹面となるように変形する。
湾曲された上面5d’が保持穴6aの穴底面6bに当接し、上面5d’と穴底面6bの間の空気が排気されて上面5d’と穴底面6bとが密着したら、吸着部8による排気を停止する。
このようにして、微細構造形成用型5が保持穴6a内に挿入され、保持穴6aの穴底面6b、内壁面6eに、それぞれ微細構造形成用型5の上面5d’、側面5e’が密着し、変形状態の微細構造形成用型5が型保持部材6に吸着保持され、微細構造形成用型組立体10が形成される。これにより、微細構造形成用型5の表面5c’が、凸レンズ面1aに実質的に沿う形状に変形される。
以上で、型変形工程が終了する。
このように、本実施形態の型保持部材6の穴底面6bは、微細構造形成用型5の表面5cと対向する反対側の表面5dの変形を規制するガイド面を構成しており、型保持部材6は、ガイド面に表面5d’を密着させた状態で、微細構造形成用型を保持する部材を構成している。
【0069】
次に、成形工程を行う。
本工程は、レンズ本体1の凸レンズ面1aにUV硬化樹脂20(成形用樹脂、図9参照)を塗布し、型変形工程で変形された成形面部5a’を凸レンズ面1aに押圧し、UV硬化樹脂20を硬化させる工程である。
【0070】
本工程は、微細構造形成用型組立体10を備える表面加工装置50を用いて行う。
まず、図9に示すように、例えば、切削・研磨、ガラスモールド成形、樹脂成形等の適宜の加工を行って製作したレンズ本体1を、凸レンズ面1aが微細構造形成用型5の方に向いた姿勢で、表面加工装置50の保持部3に保持させる。
このとき、微細構造形成用型組立体10は、保持部3の上方の退避位置に退避させておく。
次に、凸レンズ面1a上に、UV硬化樹脂20を塗布する。UV硬化樹脂20の種類は、本実施形態では、一例として、PAK−02(商品名)を採用している。
UV硬化樹脂20は、図9に示すように、中心部に塊状に塗布して、後述するように微細構造形成用型5を押圧する際に、外周部に塗り拡げられるようにしてもよいし、例えば、スピンコート等によって、予め凸レンズ面1aの全体にわたって層状に塗布しておいてもよい。
【0071】
次に、型移動制御部9は軸移動機構7bに制御信号を送出して、図10に示すように、移動軸7aを鉛直下方に移動し、微細構造形成用型組立体10を下降させる。
このため、微細構造形成用型5の成形面部5a’は、UV硬化樹脂20を挟んで凸レンズ面1aに押圧され、成形面部5a’の表面5c’が凸レンズ面1aに密着する。
表面5c’と凸レンズ面1aとが密着するまで、微細構造形成用型5が下降されたら、型移動制御部9は、軸移動機構7bによる微細構造形成用型組立体10の下降を停止する。本実施形態では、型保持部材6の下面6cが位置決め面1dに当接すると、表面5c’と凸レンズ面1aとが密着するようになっている。
これにより、UV硬化樹脂20は、成形面部5a’と凸レンズ面1aとの間に形成される成形空間に充填される。
【0072】
次に、UV光源4を点灯する。これにより、孔部3aからレンズ本体1に紫外光が入射し、レンズ本体1の内部から凸レンズ面1aにUV光が照射される。
この結果、凸レンズ面1aと成形面部5a’とで挟まれた成形空間に充填されたUV硬化樹脂20が光硬化し、凸レンズ面1a上に反射防止部2が形成される。
UV硬化樹脂20の硬化が終了したら、UV光源4を消灯する。
【0073】
次に、図11に示すように、型移動制御部9により、微細構造形成用型組立体10を上昇させて、凸レンズ面1aから微細構造形成用型5を離型させる。
これにより、凸レンズ面1a上に反射防止部2が形成されたレンズ1Aが製造される。
以上で、凸レンズ面1aに反射防止部2を形成する成形工程が終了する。
【0074】
さらに、凸レンズ面1bに反射防止部2を形成する場合には、必要に応じて微細構造形成用型組立体10を、凸レンズ面1bを成形するための他の微細構造形成用型組立体10を装着して、上記と同様の成形工程を行う。
このようにして、レンズ1Aを製造することができる。
【0075】
本実施形態の光学素子の製造方法によれば、型製作工程において、基体部5Aの表面5cに反射防止部2の形状を凸レンズ面1aの接線方向に伸長し反転させた形状からなる成形面部5aを形成するため、型変形工程において、基体部5Aの変形に伴って圧縮された成形面部5a’の形状が、反射防止部2が反転した形状になる。
また、型変形工程において、基体部5Aを成形面部5a’が凸レンズ面1aに実質的に沿う形状に変形させるため、成形面部5a’の表面5c’の形状が凸レンズ面1aとずれているとしても、基体部5Aが厚さ方向に変形して、保湯面5c’を凸レンズ面1aに密着させることができる。その際の変形は、形状誤差に対応して法線方向への変形が支配的となり、かつ変形ひずみは、基体部5Aの厚さ方向にわたって分散される。このため、成形面部5a’における凹穴部5b’の形状や接線方向の位置がほとんど変化しない状態で、表面5c’を凸レンズ面1aに密着させることができる。
このようにして、微細構造形成用型5により、反射防止部2を精度よく形成することができる。例えば、微細構造形成用型5による微細構造が反射防止構造である場合に、反射特性のバラツキを低減することができる。
【0076】
また、型製作工程では、成形面部5aを形成する表面5cが平面であるため、例えば異方性エッチングなどによって一方向から、全面を加工することができる。この結果、曲面に形成する場合に比べて、成形面部5aを容易、かつ効率的に形成することができる。また、曲面に形成する場合に比べて、加工精度を向上することが可能である。
さらに、本実施形態では、基体部5Aも厚さ一定の平板状部材であるため、基体部5Aの製造が容易である。
【0077】
また、本実施形態の表面加工装置50によれば、微細構造形成用型5の基体部5Aおよび成形面部5aが、縦弾性係数が低く変形容易な弾性体から形成されるため、成形面部5aの凸面5bの曲率が、凸レンズ面1aの曲率と異なっていても、成形面部5aをレンズ1Aに押圧することで、基体部5Aおよび成形面部5aが変形して、凸レンズ面1aに密着することができるため、例えば、成形面部5aや凸レンズ面1aの形状に製作誤差がある場合でも、安定した形状の反射防止部2を形成することができる。
また、表面加工装置50では、型保持部材6の穴底面6bに表面5d’を密着させて保持させるだけで、微細構造形成用型5を変形状態とすることができるため、成形面部5a’の形状の再現性が良好となる。また、微細構造形成用型組立体10の製作が容易となる。
さらに、表面加工装置50は、吸着部8を備えることにより、型変形工程の変形の補助を行うことができ、成形面部5aを押圧することなく容易に微細構造形成用型5を変形することができるため、作業効率を向上することができる。
【0078】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態の光学素子の製造方法に用いる光学素子の表面加工装置について説明する。
図12(a)は、本発明の第2の実施形態の光学素子の製造方法に用いる光学素子の表面加工装置の主要部の構成を示す模式的な断面図である。図12(b)は、本発明の第2の実施形態の光学素子の製造方法に用いる微細構造形成用型組立体の模式的な分解図である。
【0079】
本実施形態の表面加工装置50Aは、図12(a)に主要部の構成を示すように、上記第1の実施形態の表面加工装置50の微細構造形成用型組立体10に代えて、微細構造形成用型組立体10Aを備える。
微細構造形成用型組立体10Aは、上記第1の実施形態の微細構造形成用型組立体10と同様に、レンズ本体1の凸レンズ面1aに反射防止部2を形成するためのもので、上記第1の実施形態の型保持部材6、微細構造形成用型5に代えて、型保持部材26、微細構造形成用型25を備える。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0080】
型保持部材26は、図12(b)に示すように、型保持部材6の保持穴6aに代えて、微細構造形成用型25を変形した状態に保持する保持穴26aを備える。
保持穴26aは、上記第1の実施形態の保持穴6aの穴底面6bに代えて、中心軸線Zに直交する平面からなり、穴底面6bと同様の吸引孔6dが設けられた穴底面26bを備える。
【0081】
微細構造形成用型25は、型保持部材26に比べて縦弾性係数の小さな弾性体で構成された基体部25Aに、反射防止部2の凹凸形状を転写する形状ための成形面部25aが形成されたものである。
基体部25Aの材質は、上記第1の実施形態の基体部5Aと同様の材質を採用することができる。
基体部25Aは、外力による変形を受けない状態(以下、自然状態と称する)では、図12(b)に示すように、側面25eがテーパ面である略円錐台状の外形を有する。基体部25Aの中心軸線Cと交差する表面は、側面25eが拡径する方の表面である表面25c(一表面)が中心軸線Cに直交する平面からなり、側面25eが縮径する方の表面である表面25d(一表面に対向する反対側の表面)が中心軸線C上に中心を有する曲率半径R(y)の軸対称の凹面からなる。ここで、yは、中心軸線Cからの距離である。
ただし、図12(a)に示すように、基体部25Aが型保持部材26の保持穴26aに保持される際には、穴底面26bに沿って湾曲された変形状態(以下、単に、変形状態と称する)に保持される。
以下では、自然状態の形状と変形状態の形状と区別するために、変形状態の部位を表す場合、部位を示す符号に「’」を付けることにする。
【0082】
基体部25Aの表面25dの形状は、保持穴26aに挿入する際、図12(b)に示すように、表面25dが穴底面26bに密着する平面である表面25d’に変形したときに、曲率半径Rの表面25c’となるように設定される。ただし、上記第1の実施形態の表面5c’の場合と同様に、表面25c’は、凸レンズ面1aに実質的に沿う形状であればよい。
基体部25Aは、中心部から外周部に向かって厚さが増大する板状部材であるため、曲げの中立面は、自然状態では表面25c側に凸の凸面であり、変形状態では、表面25d’側に凸の凸面である。また、表面25c’における変形率は、上記第1の実施形態の場合とは異なり、中心部から外周部に向かって増大する変化を示す。
このような変形状態が得られる表面25dの曲率半径R(y)の条件は、例えば、半径Rの凹球面を採用することができる。ただし、例えば、基体部25Aの材料定数の影響などによって理想的な曲げ変形からの誤差が大きくなる場合には、具体的な材料定数に基づいて曲げ変形の数値シミュレーションを行うなどして最適な曲面形状を求めることができる。
【0083】
表面25cには、反射防止部2の凹凸形状を凸レンズ面1aの接線方向に圧縮し反転させた形状からなる成形面部25aが形成されている。
本実施形態では、表面25cの変形率は、中心軸線Cからの距離xに応じて異なる。このため、予め、表面25c上での変形率δ(x)を数値シミュレーション等によって求めておき、変形率δ(x)から逆算して、変形状態の成形面部25a’が反射防止部2を反転した形状となるように、自然状態の成形面部25aの形状を設定する。
すなわち、成形面部25aは、上記第1の実施形態の成形面部5aと同様に、開口径d(x)、深さh=hの円錐穴が、隣接ピッチp(x)で配列された凹穴部25bの集合体からなり、これら開口径d(x)、隣接ピッチp(x)がxの関数になる点のみが異なる。
【0084】
本実施形態の光学素子の製造方法は、上記第1の実施形態と同様に、型製作工程、型変形工程、および成形工程を備える。
【0085】
型製作工程は、自然状態の微細構造形成用型25を製作する工程であり、上記第1の実施形態の微細構造形成用型5と、外形および成形面部25aの形状が異なるのみで、略同様にして製作することができる。
すなわち、成形によって、成形面部25aを除く形状の基体部25Aを成形によって形成し、xの関数として求められた開口径d(x)、隣接ピッチp(x)の凹穴部を、基体部25Aの表面25c上に上記第1の実施形態と同様にして形成する。
以上で型製作工程が終了する。
【0086】
次に、型変形工程を行う。
本工程は、微細構造用形成用型25を曲げ変形させることにより保持穴26aに挿入して、表面25d’を穴底面26bに密着して保持させる工程であり、上記第1の実施形態の型変形工程と同様にして行うことができる。
これにより、微細構造形成用型組立体10Aが形成される。これにより、微細構造形成用型25の表面25c’が、凸レンズ面1aに実質的に沿う形状に変形される。
以上で、型変形工程が終了する。
【0087】
次に、上記第1の実施形態と同様にして成形工程を行うことにより、レンズ1Aを製造することができる。
【0088】
本実施形態の光学素子の製造方法によれば、上記第1の実施形態と同様に、反射防止部2を精度よく形成することができ、例えば、微細構造形成用型25による微細構造が反射防止構造である場合に、反射特性のバラツキを低減することができる。
また、本実施形態表面加工装置50Aによれば、上記第1の実施形態の表面加工装置50と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態では、型保持部材26の保持穴26aの穴底面26bが平面からなるため、型保持部材26を安価かつ高精度に形成することができる。
【0089】
なお、上記の各実施形態の説明では、一例として、光学素子の光学面が凸球面の場合の例で説明したが、凸球面には限定されず、非球面でもよい。また、凹面でもよい。
光学面が凹面の場合、上記の説明と異なる点は、当業者であれば容易に理解される。例えば、光学面が凹面の場合、微細構造形成用型の成形面部が凸面になるように曲げられるため、表面における変形率は1以上となり、表面は接線方向の伸長されることになる。
また、非球面の場合、上記第1の実施形態では、穴底面6bの形状を非球面の相似形状にすればよい。また、曲げ変形の誤差が大きくなると予想される場合には、上記第2の実施形態と同様に、変形の数値シミュレーションを行うなどして、基体の外形や穴底面の形状の補正を行えばよい。
また、非球面の場合、非球面形状を径方向に分割して、変形後の表面の形状の誤差が許容範囲内となるような曲率半径の異なる複数の近似球面の組合せで表し、曲率半径が一定の球面部分ごとに、上記第1の実施形態に示したのと同様な計算を行って、穴底面6bの形状を決定することも可能である。
【0090】
また、上記各実施形態の説明では、成形面部を形成する表面の形状が平面の場合の例で説明したが、成形面部を形成する一表面は曲率を有する湾曲面とすることが可能である。この場合、成形面部の形成に異方性エッチングを用いる場合でも、反射防止部を構成する突起の突出方向を適宜制御することが可能となる。
【0091】
また、上記の各実施形態の説明では、光学素子がレンズの場合の例で説明したが、本発明の光学素子の製造方法によって製造される光学素子は、レンズには限定されない。例えば、ミラー、プリズム、フィルタなどの光学素子でもよい。
【0092】
また、上記の各実施形態の説明では、微細構造が、円錐状の突起2aによる反射防止部2である場合の例で説明したが、反射防止構造を形成するには、レンズ表面の近傍で屈折率が変化する形状であればよく、円錐状に限らず、三角錐状、四角錐状等の錘体を好適に採用することができる。
【0093】
また、上記の各実施形態の説明では、微細構造が反射防止構造の場合の例で説明したが、微細構造は、ナノインプリント技術によって形成される凹凸形状であれば、錘体には限定されず、例えば、円柱、円柱穴、錘体の反転した穴形状、釣り鐘型等の凹凸形状を採用することができる。
このため、微細構造は、反射防止構造には限定されない
【0094】
また、上記の各実施形態の説明では、成形面部が、基体の表面に形成された場合の例で説明したが、基体の変形に応じて成形面部の形状が、反射防止部の形状に変形することができれば、基体の表面に、成形面部の形状を基体と異なる材料で形成してもよい。
例えば、成形面部の形状が、突起の集合体で構成されるような場合に、成形面部を基体の材料よりも硬質の材料で形成し、基体の変形によって、成形面部の各突起の隣接ピッチが変化することにより、光学素子に形成すべき微細構造の形状が形成されるようにしてもよい。
【0095】
また、上記の各実施形態の説明では、微細構造形成用型を離型する際、微細構造形成用型組立体ごと離型する場合の例で説明したが、離型時に、吸着部8からわずかに給気して、微細構造形成用型に対する吸引力を弱め、微細構造形成用型の変形が可能となるようにしてもよい。
このようにすることで、型保持部材の上昇に同期して、成形面部の中心部側から、変形状態の曲率から自然状態の曲率に近づく変形が可能となるため、成形面部を外周部から中心部に向かって徐々に離型させることが可能である。これにより、より円滑な離型が可能となる。このため、離型時に反射防止部2が損傷するおそれを格段に低減することができる。
【0096】
また、上記の各実施形態の説明では、微細構造形成用型を型保持部材の保持穴内に挿入する間に、微細構造形成用型が変形する場合の例で説明したが、微細構造形成用型は、挿入前に変形させてから、保持穴内に挿入するようにしてもよい。
例えば、微細構造形成用型を変形させる変形治具を用いて変形させた状態で、保持穴内に挿入し、挿入後に変形治具を外して撤去すればよい。
また、型保持部材の保持穴の大きさを調整可能に設けておき、自然状態の微細構造形成用型を拡大された保持穴に装着し、型保持部材を縮小することによって、微細構造形成用型を変形させてもよい。
【0097】
また、上記の各実施形態の説明では、微細構造形成用型を型保持部材の保持穴内に挿入する間に、吸着部によって、微細構造形成用型の変形や挿入を補助する場合の構成を有する場合の例で説明したが、吸着部を有しない構成としてもよい。
【0098】
また、上記の各実施形態の説明では、型保持部材の保持穴の穴底面と内壁面とによって、微細構造形成用型の変形が規制される場合の例で説明したが、微細構造形成用型が板状部材の場合には、成形面部の変形は、外周部近傍の範囲を除くと、成形面部に対向する穴底面の形状によって規定される。したがって、変形状態の成形面部の形状が許容範囲にあれば、微細構造形成用型の側面の変形を内壁面によって規制しない構成としてもよい。
【0099】
また、上記の各実施形態の説明では、表面加工装置のUV光源4がレンズ1Aを挟んで、微細構造形成用型と反対側に配置された場合の例で説明したが、微細構造形成用型や微細構造形成用型組立体を光透過性の材料で形成し、これらを通して、UV光を照射できる位置にUV光源4を配置することが可能である。
【0100】
また、上記各実施形態の説明では、光学素子を固定して微細構造形成用型を移動させる場合の例で説明したが、移動軸7aを固定軸に置き換え、保持部3を微細構造形成用型に対して進退する移動機構を設けてもよい。
また、微細構造形成用型5および保持部3をそれぞれ移動可能に支持し、これら両方が移動する構成としてもよい。
【0101】
また、上記の実施形態で説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせたり、削除したりして実施することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 レンズ本体(光学素子本体)
1A レンズ(光学素子)
1a、1b 凸レンズ面(曲率を有する光学面、曲率を有する被加工面)
2 反射防止部(微細構造、反射防止構造)
2a 突起(錘体)
3 保持部
4 UV光源
5、25 微細構造形成用型
5A 基体部(基体、平板状部材)
5a 成形面部
5a’ 成形面部(複数の凹凸形状が反転した形状)
5b、5b’ 凹穴部
5c、5c’ 表面(一表面)
5d、5d’ 表面(反対側の表面)
6 型保持部材
6a、26a 保持穴
6b 穴底面(ガイド面、光学面と相似形状の湾曲面)
6d 吸引孔部
6e 内壁面
7 型移動部
8 吸着部
10、10A 微細構造形成用型組立体
25A 基体部(基体)
26b 穴底面(ガイド面)
50、50A 表面加工装置
20 UV硬化樹脂(成形用樹脂)
C、C、Z 中心軸線
M 中立面
N 法線
O 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲率を有する光学面に沿って配置された複数の凹凸形状による微細構造を備える光学素子の製造方法であって、
弾性体からなる基体の一表面に、前記複数の凹凸形状を前記光学面の接線方向に沿って伸長または圧縮し反転させた形状からなる成形面部を形成して、微細構造形成用型を製作する型製作工程と、
前記微細構造用形成用型を湾曲させて、前記基体の一表面を前記光学面に実質的に沿う形状に変形させることにより、前記成形面部を前記複数の凹凸形状が反転した形状に変形させる型変形工程と、
前記光学面を有する光学素子本体の前記光学面に成形用樹脂を塗布し、前記型変形工程で変形された前記成形面部を前記光学面に押圧し、前記成形用樹脂を硬化させる成形工程と、を備える
ことを特徴とする、光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記凹凸形状は、前記光学面において均一に分布している
ことを特徴とする、請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項3】
前記型製作工程では、
前記基体の一表面が平面からなる
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の光学素子の製造方法。
【請求項4】
前記型変形工程では、
前記微細構造形成用型を湾曲させる際に、前記基体の前記一表面と対向する反対側の表面の変形を規制するガイド面に、前記反対側の表面を密着させることにより湾曲させる
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
【請求項5】
前記微細構造形成用型の前記基体は、厚さが一定の平板状部材からなり、
前記ガイド面は、前記光学面と相似形状の湾曲面からなる
ことを特徴とする、請求項4に記載の光学素子の製造方法。
【請求項6】
前記微細構造は、錘体が集合した反射防止構造である
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
【請求項7】
曲率を有する被加工面に複数の凹凸形状からなる微細構造を形成する微細構造形成用型であって、
弾性体からなる基体と、
該基体の一表面に、前記複数の凹凸形状を前記光学面の接線方向に沿って伸長または圧縮し反転させた形状からなる成形面部と、を備える
ことを特徴とする、微細構造形成用型。
【請求項8】
前記基体の前記一表面が平面からなる
ことを特徴とする、請求項7に記載の微細構造形成用型。
【請求項9】
前記基体は、厚さが一定の平板状部材からなる
ことを特徴とする、請求項8に記載の微細構造形成用型。
【請求項10】
前記微細構造は、錘体が集合した反射防止構造である
ことを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の微細構造形成用型。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1項に記載の微細構造形成用型と、
該微細構造形成用型の前記基体の前記一表面と対向する反対側の表面の変形を規制するガイド面を有し、該ガイド面に前記反対側の表面を密着させた状態で、前記微細構造形成用型を保持する型保持部材と、を備える
ことを特徴とする、微細構造形成用型組立体。
【請求項12】
前記ガイド面は、前記光学面と相似形状の湾曲面からなる
ことを特徴とする、請求項11に記載の微細構造形成用型組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−105140(P2013−105140A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250683(P2011−250683)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】