光学素子の製造方法及び光学素子
【課題】離型のためにコア部を突き出して成形品を取り出す際に、フランジ端面の機能を保ちつつ、光学面の変形や傷を低減できる光学素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】型開き工程において、比較的浅い第2光学面OS2を成形する第2金型42にレンズ10を残しており、第2金型42の型開き後の突き出し工程とその後の成形品取り出し工程とにおいて、レンズ10に設けられたゲート部GPが変形することを防ぐことができる。また、第1光学面OS1を成形する第1金型41を型開き時にレンズ10が残らない金型とするため、第1金型41によって形成されるフランジ部12の部分厚さが小さくなることで第1転写面S1とパーティング面PS1との距離が比較的近くなり、第1転写面S1からエアが抜けやすくなる。以上により、レンズ10の外観不良を低減し、高精度なレンズ10を製造することができる。
【解決手段】型開き工程において、比較的浅い第2光学面OS2を成形する第2金型42にレンズ10を残しており、第2金型42の型開き後の突き出し工程とその後の成形品取り出し工程とにおいて、レンズ10に設けられたゲート部GPが変形することを防ぐことができる。また、第1光学面OS1を成形する第1金型41を型開き時にレンズ10が残らない金型とするため、第1金型41によって形成されるフランジ部12の部分厚さが小さくなることで第1転写面S1とパーティング面PS1との距離が比較的近くなり、第1転写面S1からエアが抜けやすくなる。以上により、レンズ10の外観不良を低減し、高精度なレンズ10を製造することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の光学素子の製造方法等に関し、特に射出成形装置を用いたランナー部付きの光学素子の製造方法、及び当該方法によって製造した光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製レンズの製造方法として、射出成形という手法が知られているが、形状転写後の樹脂製レンズを型面から離す離型に際して、樹脂製レンズを外側に突き出す必要がある。このような樹脂製レンズの突き出し工程として、例えば曲率が比較的大きい光学面転写用のコア金型部(以下、コア部)を周囲の型部分から突出させるように前進させることで、樹脂製レンズの取り出しを可能にするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、特許文献1のような光学素子の製造方法では、曲率が大きく型面に深く嵌り込むような樹脂製レンズの場合、樹脂製レンズの突き出し工程後に樹脂製レンズから延びるランナー部やスプル―部等を取出装置に把持させて成形品を型外に取り出す際に、コア部に樹脂製レンズが張り付いてゲート部が曲がってしまう。このようなゲート部の変形により、樹脂製レンズの光学面にまで微小な変形が達することがあったり、レンズが傾いて離型されるため不均一な離型力が加わり光学面が微小に変形することがあったりする。そのため、結果的に所望の光学面が得られなくなり、或いは製品の歩留まり率を下げることになる。特に、BD(ブルーレイディスク)用の対物レンズは、曲率が大きく突起量が大きくなってコア部の転写面が深くなりやすく、レンズ部分に高い形状精度が要求されるにもかかわらずレンズ部分のサイズが小さい。よって、ゲート部の変形が光学面に及びやすい傾向があり、離型時の光学面の変形を低減することが望ましい。また、ゲート部の変形によりレンズが傾いて離型されると、離型の際にレンズの光学面が金型に接触し、レンズの光学面に三日月状の傷を生じる虞があり、この場合も、結果的に所望の光学面が得られなくなり、或いは製品の歩留まり率を下げることになってしまうので、離型時の光学面の傷を低減することが望ましい。
【0004】
また、製品部分であるレンズ部分を突き出す部材とランナー等の非製品部分を突き出す部材とでは型内での構造がそれぞれ異なる場合、突き出すタイミングを完全に一致させることは困難となり、突き出すタイミングの違いにより、ゲート部に曲がりを生じさせてしまうことがある。そして、突き出しの段階でゲート部に曲がりが生じてしまうと、後の取出しの際に、コア部にレンズが張り付くことによるゲート部の曲がりをよりいっそう引き起こしやすくなってしまう。
【0005】
また、成形時においては、金型の境界であるパーティング面からエア抜きやガス抜きが行われる。また、その効果を上げるために0.1μm〜10μm程度の隙間又はエアベントが形成されることがある。特許文献1のような光学素子の製造方法では、曲率が比較的大きい光学面がパーティング面から離れているため、成形時のエア抜けやガス抜けが悪くなり、曲率が比較的大きい光学面にエア溜まりや微小な面くもり等の外観不良が生じるおそれがある。
【0006】
ここで、曲率が比較的大きい光学面側のフランジ部に突き出しピンを設置してピン突き出しをし、取出装置で把持する前にコア部の離型を済ませることによって、樹脂製レンズの取り出し工程において、ゲート部が曲がる問題が解決すると考えられる。しかしながら、ピン突き出しの場合、樹脂製レンズのフランジ部にある取付基準面に突き出しバリ(不要な微小な突起)が生じる。そのため、樹脂製レンズをレンズホルダに取り付ける際に、樹脂製レンズが傾き、コマ収差が発生するという問題が生じる。また、曲率が比較的大きい光学面を金型の固定側とし、曲率が比較的小さい光学面を金型の可動側とし、曲率が比較的小さい光学面側のフランジ部をピン突き出しすれば、ゲート部が曲がる問題やエア溜まりの問題が解決すると考えられる。しかしながら、曲率が比較的小さい光学面側をピン突き出しした場合、曲率が比較的小さい光学面の外周に存在するフランジ端面(円環状の鏡面部)の面積が小さくなるため、スキュー調整時にレンズ傾きの検出が難しくなる問題が生じる。
【0007】
また、コア突き出し及びピン突き出しのどちらの場合も、製品部分である光学素子を突き出す部材とランナー等の非製品部分を突き出す部材とでは型内での構造がそれぞれ異なる場合、突き出すタイミングを完全に一致させることは困難となる。突き出すタイミングが異なると、そのタイミングのずれによって、ゲート部に曲がりを生じさせてしまうが、BD用のピックアップレンズのような場合、ゲート部の僅かな曲がりにより、その影響が光学機能面へ伝わり所望の収差性能が得られなくなる虞がある。特に、複数の突き出し部材でフランジ部を突き出すピン突き出しの場合、光学素子を突き出す複数の突き出し部材とランナー部を突き出す部材とで、突き出すための部品点数が多くなるためより一層突き出しのタイミングを合わせることが難しく、よりゲート部の曲がりを生じさせやすくなってしまうことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−200652号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明は、離型のためにコア部を突き出して成形品を取り出す際に、フランジ端面の機能を保ちつつ、光学面の変形や傷を低減できる光学素子の製造方法及び当該方法によって製造した光学素子を提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る光学素子の製造方法は、光情報記録媒体への情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置に組み込まれ、開口数が0.75以上の光学素子のうち第1光学面を成形するための第1の金型と、光学素子のうち第2光学面を成形するための第2の金型とを有する射出成型装置を用いた光学素子の製造方法であって、第2光学面は、第1光学面よりも曲率が小さく、第1の金型と第2の金型とで形成する型空間及び流路空間に溶融樹脂を射出して光学素子及びランナー部を成形する成形工程と、第2の金型に光学素子を残すように、第1の金型と第2の金型とを相対的に移動させて型開きする型開き工程と、第2の金型に設けたコア部を、コア部を周囲から保持する保持部に対して第1の金型側に相対的に移動させて、光学素子を第1の金型側へ突き出し、第2の金型に設けた突出部材を第1の金型側に移動させて、ランナー部を第1の金型側へ突き出す突き出し工程と、を備える。
【0011】
上記光学素子の製造方法によれば、型開き工程において第1の金型に対して第2の金型を離すように移動させる際に、曲率が小さく面深さが比較的浅い第2光学面を成形する第2の金型(一般的には、可動金型)に光学素子を残しており、第2の金型に設けたコア部による型開き後の突き出し工程とその後の取出装置による成形品取り出し工程とにおいて、光学素子に設けられたゲート部が変形することを防ぐことができる。これは、曲率が比較的小さい第2光学面を成形する第2転写面が第1光学面を成形する第1転写面よりも浅いため、コア部の第2転写面への第2光学面の張り付き力が比較的小さくなって成形品をコア部から外しやすくなるからである。また、第1光学面を成形する第1の金型を型開き時に光学素子が残らない金型(一般的には、固定金型)とするため、第1の金型によって形成されるフランジ部の部分厚さを、第1の金型に光学素子を残す場合に比較して小さくすることになる。そのため、第1転写面と、第1及び第2の金型との当接面であるパーティング面との距離が近くなり、第1転写面からエアやガスが抜けやすくなる。以上により、光学素子の外観不良を低減し、高精度な光学素子を製造することができる。これは、特に、例えばBD用光ピックアップ装置用の対物レンズのような偏肉比p(最厚部の厚み÷最薄部の厚み)が比較的高いレンズにおいて有効である。また、ゲート部の変形によりレンズが傾いて離型され、離型の際にレンズの光学面が金型に接触し、レンズの光学面に三日月状の傷が付いてしまうのを防ぐことが可能となる。さらに、光学素子を突き出すコア部とランナー部を突き出す突出部材とで突き出すタイミングの違いにより、突き出し時にゲート部に曲がりが生じたとしても、成形品をコア部から外しやすくなっているため、後の取出しの際に、ゲート部のさらなる曲がりを防止することができる。
【0012】
また、第2光学面側のコアを突き出すことによって光学素子を離型するため、第1光学面側にある光学素子の取付基準面上に突き出しピンによるバリが生じることを防ぐことができ、レンズホルダに取り付ける際にレンズが傾き、コマ収差が発生するという問題が生じることを防ぐことができる。これにより、光学素子を精度良く光ピックアップ装置等に取り付けることができる。さらに、光学素子をコア突き出しによって離型するため、光学面の外周(例えば、フランジ部)において、端面部分の面積を十分に確保することができる。これにより、端面において光が十分な強さで確実に反射されるものとなり、効率良くスキュー調整することができる。
【0013】
また、曲率が比較的小さい第2光学面を成形する第2転写面が第1光学面を成形する第1転写面よりも浅いため、コア部の第2転写面への第2光学面の張り付き力が比較的小さくなって成形品をコア部から外しやすくなるが、その一方、第2光学面よりも曲率の大きい第1光学面を第1の金型(一般的に固定金型)で成形するため、型開きの際に光学素子が第1の金型側に張り付いて残りやすくなってしまうことが考えられる。それに対し、第2の金型側に設ける流路空間の体積を第1の金型側に設ける流路空間の体積よりも大きくする等することで光学素子が第2の金型側(一般的に可動金型)に残りやすくすることができる。しかしその場合、流路空間で成形されるランナー部の第2の金型側への張り付きが強まってしまうが、本発明では、第2の金型にランナー部を第1金型側へ突き出す突出部材を設けているので、ランナー部をスムーズ(円滑)に離型することを可能としている。
【0014】
さらに、コア突き出しとすることにより、ピン突き出しに比べて突き出すための部品点数を少なくすることが可能となる。そのため、光学素子を突き出す部材とランナー部を突き出す部材とで突き出すタイミングをより合わせやすくでき、突き出しの際のゲート曲がりを低減することができる。その結果、BD用のピックアップレンズのような高い成形精度が必要となるレンズに対しても所望の収差を得ることが可能となる。
【0015】
なお、本明細書においてコア突き出しとは、光学素子の光学機能面を成形する転写面を有する突き出し部材で、その転写面を光学素子の光学機能面に当接させて突き出すものであり、ピン突き出しとは、光学素子の光学機能部の外周に設けたフランジ部を複数の突き出し部材で突き出すものをいう。
【0016】
本発明の具体的な態様又は側面では、突き出し工程において、コア部で光学素子を第1の金型側へ突き出すタイミングと、突出部材でランナー部を第1の金型側へ突き出すタイミングが異なる。ここで、突き出すタイミングが異なるとは、それぞれをほぼ同時に突き出した際における若干のタイミングのズレであることを意味する。
コア突き出し及びピン突き出しのどちらの場合も、製品部分である光学素子を突き出す部材とランナー等の非製品部分を突き出す部材とでは型内での構造がそれぞれ異なる場合、突き出すタイミングを完全に一致させることは困難となる。本発明では、コア突き出しとすることにより、ピン突き出しに比べて、光学素子を突き出すタイミングとランナー部を突き出すタイミングをより合わせやすくすることができる。
【0017】
本発明の別の側面では、成形工程は、複数の光学素子及び複数のランナー部を成形する。複数の光学素子及び複数のランナー部を一度に成形する場合、光学素子及びランナー部を突き出すための部品がより多くなるため、突き出しのタイミングをそれぞれ合わせることがより一層困難となる。本発明では、コア突き出しとすることにより、ピン突き出しに比べて、突き出す部材の部品点数を少なくできるため、比較的突き出しのタイミングを合わせることを可能としている。
【0018】
本発明のさらに別の側面では、上記光学素子の製造方法において、成形工程前に、型空間内を真空引きする。この場合、比較的曲率の大きい第1光学面を成形する第1転写面にも溶融樹脂が確実に充填されて転写精度が向上し、光学素子の外観を良好なものとすることができる。
【0019】
本発明のさらに別の側面では、光学素子は、第1光学面と第2光学面とを有する光学機能部と、光学機能部の周囲に配置されるフランジ部とを有するレンズであり、光学素子は、フランジ部の外周縁に成形工程において形成されるゲート部を有し、レンズのレンズ光軸に垂直な方向のレンズ外径をDとし、フランジ部のレンズ光軸に平行な方向のフランジ厚さをTとし、ゲート部のレンズ光軸に平行な方向のゲート厚さをHとし、ゲート部のレンズ光軸に垂直な方向のゲート長さをLとし、ゲート部のレンズ光軸に垂直な方向のゲート幅をWとしたときに、以下の条件式(1)〜(3)を満たす。
0.05D≦W≦0.4D (1)
0.5T≦H≦T (2)
0.1(mm)≦L≦2.0(mm) (3)
この場合、光学素子の成形時における要素が上記条件式(1)〜(3)を満たすことにより、樹脂注入時に溶融樹脂が確実に充填されるとともに適切なゲートシール時間を設けることができ、かつ突き出し工程とその後の取出装置による成形品取り出し工程とにおいてゲート部が変形しにくくなるため、光学機能部の変形を確実に防ぐことができる。
【0020】
本発明のさらに別の側面では、フランジ部のうち第1の金型によって形成される部分厚さをt1としたきに、以下の条件式(4)を満たす。
0≦t1<0.5T (4)
この場合、上記条件式(4)が満たされることにより、型開き工程において、光学素子を第2の金型側に確実に残すことができる。
【0021】
本発明のさらに別の側面では、レンズのフランジ部のうち、第1の金型側の第1フランジ外径をd1とし、第2の金型側の第2フランジ外径をd2としたときに、以下の条件式(5)を満たす。
d1<d2 (5)
この場合、上記条件式(5)が満たされることにより、第2の金型単体のみで、光学素子の外径に対応する転写面を形成することができるため、光学素子の外径を高精度に維持することができる。
【0022】
本発明のさらに別の側面では、第1の金型と第2の金型の当接面であるパーティング面は、フランジ部のレンズ光軸に平行な方向のフランジ厚さの中心よりも、レンズ光軸に平行な方向において第1の金型側に位置している。この場合、第1転写面とパーティング面との距離を近くすることができ、第1転写面からエアやガスが抜けやすくすることができる。また、第2の金型側に光学素子を残しやすくすることができる。
【0023】
本発明のさらに別の側面では、第1の金型は、コア部と、コア部を保持する保持部とを有し、第1の金型のコア部によって、光学機能部の第1光学面と、フランジ部のうち第1光学面側に設けられる第1フランジ面の少なくとも一部を形成し、第1の金型のコア部の第2の金型に対向する先端部の外周部分は、第1光学面と第1フランジ面との間に環状の凹部を形成するための環状の凸部を有する。この場合、フランジ部を形成するフランジ空間を広くすることができ、溶融樹脂の流動性を向上させることができる。また、この場合、第1の金型において光学素子が冷却により収縮した際に第1コア部に食い付いて密着しやすくなるが、第1の金型によって成形される第1光学面を第2光学面よりも先に離型することで、離型変形等を確実に防止できる。
【0024】
本発明のさらに別の側面では、光学素子は、第1光学面に微細形状を有する。この場合、第1光学面が微細形状を有することにより、第1の金型において第1コア部と第1光学面とが密着しやすくなるが、第1光学面を第2光学面よりも先に離型することで、離型変形等を確実に防止できる。
例えば、BD、DVD(デジタルバーサタイルディスク)及びCD(コンパクトディスク)の3種類の光ディスクの互換を共通の対物レンズで行うトリプル互換レンズのように、曲率が大きい方の光学面に微細な段差を有する回折構造が形成されているような光学素子の場合において、取出しの際にゲート部が曲がりを有し光学素子が傾いて離型されたとしても、回折構造を崩すことはないため高い光利用効率を得ることが可能となる。
【0025】
本発明のさらに別の側面では、光学素子は、光学素子の軸上レンズ厚をd(mm)とし、500nm以下の波長の光束における光学素子の焦点距離をf(mm)としたときに、0.8≦d/f≦2.0である。この場合、第1光学面の曲率が大きく突起量も大きくなるが、このような光学素子に対しても、光学素子の外観不良を低減し、高精度な光学素子を製造することができる。
【0026】
本発明のさらに別の側面では、光学素子は、光ピックアップ装置用の対物レンズである。
【0027】
本発明のさらに別の側面では、光学素子は、BD、DVD及びCDの3種類の光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置用の対物レンズである。非常に高い成形精度が求められるBD、DVD(デジタルバーサタイルディスク)及びCD(コンパクトディスク)の3種類の光ディスクの互換を共通の対物レンズで行うトリプル互換レンズにおいて、より有用となる。
なお、本明細書において、BDとは、波長390〜415nm程度の光束、NA0.8〜0.9程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.05〜0.125mm程度であるBD系列光ディスクの総称であり、単一の情報記録層のみ有するBDや、2層又はそれ以上の情報記録層を有するBD等を含むものである。更に、本明細書においては、DVDとは、NA0.60〜0.67程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.6mm程度であるDVD系列光ディスクの総称であり、DVD−ROM、DVD−Video、DVD− Audio、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等を含む。また、本明細書においては、CDとは、NA0.45〜0.51程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが1.2mm 程度であるCD系列光ディスクの総称であり、CD−ROM、CD−Audio、CD−Video、CD−R、CD−RW等を含む。尚、記録密度については、BDの記録密度が最も高く、次いでDVD、CDの順に低くなる。
【0028】
本発明のさらに別の側面では、突き出し工程後に、成形工程によって成形された成形品のうち光学素子を除いた部分を把持し、光学素子を第2の金型から離間させる。この場合、光学素子を把持しないので、把持による傷が光学素子につくことを防止することができる。
【0029】
上記課題を解決するため、本発明に係る光学素子は、上述の光学素子の製造方法で製造することによって得られる。
【0030】
上記光学素子は、上述の製造方法で製造されることにより、高精度な光学素子となる。これは、特に、例えばBD用光ピックアップ装置用の対物レンズのような偏肉比p(最厚部の厚み÷最薄部の厚み)が比較的高いレンズにおいて有効である。また、光学素子の取付基準面上に突き出しピンによるバリが生じることを防ぐことができ、光学素子を精度良く光ピックアップ装置等に取り付けることができる。さらに、光学面の外周(例えば、フランジ部)において、端面部分の面積を十分に確保することができ、効率良くスキュー調整することができる。また、ゲート部の変形により光学素子が傾いて離型される際に光学面が金型に接触することを防止でき、光学面に三日月状などの傷のない光学素子にすることができる。突き出しの際のゲート曲がりを低減することができ、BD用のピックアップレンズのような高い成形精度が必要となるレンズに対しても所望の収差性能を満たすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態に係る光学素子の製造方法を実施するための成形金型を説明する側方断面図である。
【図2】光学素子を成形するための型空間を説明する図である。
【図3】図3Aは、光学素子であるレンズの断面図であり、図3Bは、レンズの第2光学面からみた平面図である。
【図4】図2の比較例を説明する図である。
【図5】図1に示す成形金型を用いた成形方法を説明するフローチャートである。
【図6】図6A、図6Bは、光学素子の製造工程を説明する概念図である。
【図7】図2の型空間及び図3の光学素子の変形例について説明する図である。
【図8】第2実施形態に係る光学素子の製造方法で用いられる型空間及び光学素子を説明する図である。
【図9】図8の型空間及び光学素子の変形例について説明する図である。
【図10】図8の型空間及び光学素子の別の変形例について説明する図である。
【図11】第3実施形態に係る光学素子の製造方法で用いられる型空間及び光学素子を説明する図である。
【図12】第4実施形態に係る光学素子の製造方法で用いられる型空間及び光学素子を説明する図である。
【図13】図12の型空間及び光学素子の変形例について説明する図である。
【図14】第5実施形態に係る光学素子の製造方法で用いられる型空間及び光学素子を説明する図である。
【図15】図14の型空間及び光学素子の変形例について説明する図である。
【図16】第6実施形態に係る光学素子の製造方法で用いられる型空間及び光学素子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る光学素子の製造方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0033】
図1に示すように、本実施形態の製造方法を実施するための射出成形装置100は、成形金型40を備え、成形金型40は、第1の金型41と第2の金型42とを備える。ここで、第2金型42は、開閉駆動装置79に駆動されてAB方向に往復移動可能になっている。第2金型42を第1金型41に向けて移動させ、両金型41,42をパーティング面PS1,PS2で型合わせして型締めすることにより、図2に部分的に拡大して示すように、光学素子としてのレンズ10を成形するための型空間CVと、これに樹脂を供給するための流路空間FCとが形成される。なお、型空間CVや流路空間FCは成形金型40内に複数個形成される場合もある。
【0034】
図2に示すように、型空間CVは、第1及び第2転写面S1,S2に挟まれた本体空間CV1と、第3、第4、第5、及び第6転写面S3,S4,S5,S6に囲まれたフランジ空間CV2とを備える。ここで、本体空間CV1に臨む一対の対向する第1及び第2転写面S1,S2は、図3A及び3Bに拡大して示すレンズ10のうち中央の光学機能部11の第1及び第2光学面OS1,OS2を形成するための部分である。この場合、一方の第1転写面S1は、他方の第2転写面S2よりも深く曲率が大きくなっており、第1光学面OS1の微細構造又は微細形状FSを転写するための微細な凹凸パターンFPが設けられている。一方、フランジ空間CV2を囲む第3、第4、第5、及び第6転写面S3,S4,S5,S6は、レンズ10のうちフランジ部12を形成するための部分である。ここで、フランジ空間CV2に臨む第3、第4、及び第6転写面S3,S4,S6は、図3A及び3Bに拡大して示すレンズ10のうち第1、第2、及び第3フランジ面12a,12b,12cを形成するための部分である。また、フランジ空間CV2に臨む第5転写面S5は、レンズ10の外周側面SSを形成するための部分である。図3Aに示すフランジ部12の第1フランジ面12aには、レンズ10の外周側面SSに隣接する外縁に、環状の凹部u1が設けられている。この凹部u1を形成する凸転写面S7は、レンズ10の軸上レンズ厚dを調整するために第1金型41において後述する第1コア部64aの底面に不図示のスペーサを入れる際の調整代となる。凸転写面S7は、図2に示すように、保持部64bの端面を第1コア部64aの端面よりも突出させることにより形成される。なお、流路空間FCは、図2、3A、及び3Bに示す成形品MPのうちランナー部RPを形成する空間として、ランナー部分RSを有しており、このランナー部分RSは、ゲート部分GSを介して型空間CVに連通している。このゲート部分GSの空間により、成形品MPにおいてレンズ10とランナー部RPとをつなぐゲート部GPが形成される。
【0035】
図3A及び3B等に示す成形品MPのうち、本体であるレンズ10は、樹脂製であり、上述のように、光学的機能を有する光学機能部11と、光学機能部11の外縁から半径方向外側に設けられた略環状のフランジ部12とを備える。レンズ10は、第1光学面OS1側の突起が大きな肉厚型の光ピックアップ用の対物レンズである。具体的には、レンズ10は、例えば波長405nmで開口数(NA)0.85のBD(ブルーレイディスク)に対応した光情報の読み取り又は書き込みを可能にする。ここで、レンズ10の光学的な仕様については、NA0.85に限らず、例えばNA0.75以上の様々な光ピックアップ用の対物レンズの規格に対応するものとすることができる。また、レンズ10は、レンズ10の軸上レンズ厚をd(mm)とし、500nm以下の波長の光束におけるレンズ10の焦点距離をf(mm)としたときに、0.8≦d/f≦2.0である。
【0036】
光学機能部11において、一方の第1光学面OS1は、レーザ光源側に配置されるものであり、光情報記録媒体である光ディスク側に配置される他方の第2光学面OS2よりも大きく突出し曲率が大きくなっている。さらに、第1光学面OS1の曲率が極めて大きいため、レンズ10は、中心部で肉厚が極めて大きく、偏肉比p(最厚部の厚み÷最薄部の厚み)が高くなっている。なお、第1光学面OS1には、回折構造である微細構造又は微細形状FSが設けられている。この微細形状FS等は、同心の輪帯状に形成されている。一方、第2光学面OS2は、回折構造等を有しない鏡面となっている。
【0037】
フランジ部12は、第1光学面OS1側にレンズ光軸OAに垂直な方向に延びる第1フランジ面12aと、第2光学面OS2側にレンズ光軸OAに垂直な方向に延びる第2フランジ面12b、第3フランジ面12cとを有する。第3フランジ面12cは、アライメント用の端面としての鏡面となっている。レンズ10の成形時には、フランジ部12の外周側面SSの一部にゲート部GPが形成されるが、成形金型40から取り出した後の仕上げ処理によって除去される。
【0038】
以下、レンズ10及び型空間CVの寸法について説明する。なお、図2、図3A、及び3Bに示すように、型空間CVの寸法は、レンズ10の各要素に対応したものであり、レンズ10の寸法と略同様である。すなわち、樹脂の成形収縮率をαとすると、型空間CVの寸法の(1−α)倍がレンズ10の寸法となる。よって、以下ではレンズ10の寸法について説明する。
【0039】
図3A及び3Bに示すように、レンズ10の寸法は、レンズ10のレンズ光軸OAに垂直な方向のレンズ外径をDとし、フランジ部12のレンズ光軸OAに平行な方向のフランジ厚さをTとし、ゲート部GPのレンズ光軸OAに平行な方向のゲート厚さをHとし、ゲート部GPのレンズ光軸OAに垂直な方向のゲート長さをLとし、ゲート部GPのレンズ光軸OAに垂直な方向のゲート幅をWとしたときに、以下の条件式(1)〜(3)を満たす。
0.05D≦W≦0.4D (1)
0.5T≦H≦T (2)
0.1(mm)≦L≦2.0(mm) (3)
【0040】
上記条件式(1)〜(3)を満たすようなレンズ10は、後述する樹脂注入工程(ステップS14)において樹脂注入時に溶融樹脂が確実に充填されるとともに適切なゲートシール時間を設けることができ、かつ突き出し工程(ステップS17)と成形品取り出し工程(ステップS18)とにおいてゲート部GPが変形しにくく、ゲート部GPの変形が光学機能部11に及びにくくなるため、ゲート部GPの変形を確実に防ぐことができる。なお、上記条件式(1)〜(3)を満たす範囲であれば、ゲート部GPの形状については、特に制限はなく、例えば直方体とすることができる。
【0041】
また、レンズ10のレンズ光軸OAに平行な方向のフランジ厚さをTとし、フランジ部12のうち固定側の第1金型41によって形成される部分厚さをt1としたきに、以下の条件式(4)
0≦t1<0.5T (4)
を満たす。なお、より好ましくは、以下の条件式(4a)
0≦t1<0.2T (4a)
を満たすものとする。なお、フランジ部12のうち可動側の第2金型42によって形成される部分厚さをt2としたときに、上記条件式(4)に対応するように、部分厚さt2は、0.5T≦t2≦Tの範囲となっている。
【0042】
本実施形態では、図2に示すように、第1金型41と第2金型42の当接面であるパーティング面PS1,PS2は、フランジ部12のレンズ光軸OAに平行な方向のフランジ厚さTの中心よりも、レンズ光軸OAに平行な方向において第1金型41側に位置している。これにより、第1金型41の第1転写面S1とパーティング面PS1との距離が近くなっており、第1転写面S1からエアやガスが抜けやすくなる。
【0043】
上記条件式(4)を満たすことにより、型開き工程において、レンズ10を可動側の第2金型42側に確実に残すことができる。
【0044】
また、レンズ10のフランジ部12のうち、第1フランジ面12a側の外径をd1とし、第2フランジ面12b側の外径をd2としたときに、以下の条件式(5)
d1<d2 (5)
を満たす。なお、より好ましくは、以下の条件式(5a)
d1<d2−0.010(mm) (5a)
を満たすものとする。
【0045】
上記条件式(5)を満たすことにより、第2金型42単体のみで、レンズ10のレンズ外径Dに対応する第4転写面S4を形成することができるため、レンズ10のレンズ外径Dを高精度に維持することができる。一方、d1=d2の場合、例えば第1金型41側と第2金型42側と間に芯ずれ(レンズ光軸OAと軸AXとのずれ)が起きた時にレンズ10のレンズ外径Dがd3となり(図4参照)、結果的に所期のレンズ外径D(=d2)よりも大きくd3>d2となってしまう。よって、芯ずれ量によってレンズ外径Dが変化してしまい、レンズ外径Dを高精度に作るために、第2金型42の第2フランジ面12bに対応する第4転写面S4の外径(d2に相当)を精度良く作っても無意味になってしまう。また、d1>d2であると、第1金型41の第3転写面S3の外径(d1に相当)を精度良く作っても、d1に関して、第1金型41側はフランジ部12の厚さが第2金型42側に比べて小さくなるため、レンズ10をホルダ等に取り付ける際にレンズ10がガタついてしまい精度良い位置決めができなくなってしまう。
【0046】
図1に戻って、固定側の第1金型41は、図2に示す型空間CVを第1金型41から形成する中心部としての第1コア部64aと、第1コア部64aの周囲に設けられる周辺部としての保持部64bと、第1コア部64aや保持部64bを背後から支持する受板64cとを備える。ここで、第1コア部64aは、保持部64bに形成された貫通孔64g中に組み込まれて不図示のボルトで固定されている。なお、保持部64bの端面64eには、図2に示す成形品MPのランナー部分RS等となるべき凹部が形成されている。
【0047】
可動側の第2金型42は、図2に示す型空間CVを第2金型42から形成する中心部としての第2コア部74aと、第2コア部74aの周囲に設けられる周辺部としての保持部74bと、第2コア部74aや保持部74bを背後から支持する受板74cと、成形品MPのランナー部RP等を突き出して離型するための突出部材74pと、第2コア部74a及び突出部材74pを背後から押す可動ロッド75,76と、可動ロッド75,76を軸AX方向に進退移動させる進退機構部78とを備える。
【0048】
第2コア部74aは、保持部74bに形成された貫通孔74g中に軸AX方向に沿って進退移動可能に組み込まれている。突出部材74pも、保持部74bに形成された貫通孔74h中に軸AX方向に沿って進退移動可能に組み込まれている。ここで、第2コア部74aは、バネ74sによって一定以上の力で後方に付勢されている。つまり、第2コア部74aは、前進する可動ロッド75に駆動されて第1金型41側に前進し、可動ロッド75の後退に伴って伸張するバネ74sに従って自動的に後退して元の位置に復帰する。また、突出部材74pは、可動ロッド76に駆動されて第1金型41側に前進し、型閉じの際に後述する第1金型41側の保持部64bによる外力や、樹脂流入時の樹脂圧力により後退して元の位置に復帰する。また、第2コア部74aと同様に、突出部材74pにもバネを用いることで自動的に後退して元の位置に復帰するようにしてもよい。なお、保持部74bの端面74eには、図2に示す成形品MPのランナー部分RS等となるべき凹部が形成されている。
【0049】
なお、曲率の比較的大きい第1光学面OS1を固定側の金型で成形する場合、第1及び第2金型41,42の型開きの際に軸ずれによる光学面の変形が生じやすくなる可能性があるが、例えば実開平7−9945号公報に開示されるように型板にテーパピンやテーパブロックを使用することで解決可能である。
【0050】
図5は、図1に示す成形金型40を用いた光学素子の製造方法を概念的に説明するフローチャートである。
【0051】
まず、開閉駆動装置79を動作させ、第2金型42を第1金型41に向けて相対的に前進させることで型閉じを開始させる(ステップS11)。なお、両金型41,42の表面は、成形に適する温度まで加熱されている。
【0052】
開閉駆動装置79の閉動作を継続することにより、第1金型41と第2金型42とが接触する型当たり位置まで移動して型閉じが完了し、開閉駆動装置79の閉動作をさらに継続することにより、第1金型41と第2金型42とを必要な圧力で締め付ける型締めが行われる(ステップS12)。
【0053】
次に、不図示の真空装置を動作させて、型締めされた第1金型41と第2金型42との間の型空間CV内を真空引きする(ステップS13)。これにより、型空間CVは適度に減圧された状態となり、比較的曲率の大きい第1転写面S1にも溶融樹脂が確実に充填される。
【0054】
次に、不図示の射出装置を動作させて、型空間CV中に、必要な圧力で溶融樹脂を注入する射出を行わせる(ステップS14)。そして、射出装置は、型空間CV中の樹脂圧を保つ。
【0055】
溶融樹脂を型空間CVに導入した後、型空間CV中の溶融樹脂が放熱によって徐々に冷却されるので、かかる冷却にともなって溶融樹脂が固化し成形が完了するのを待つ(ステップS15)。
【0056】
次に、開閉駆動装置79を動作させて、第2金型42を相対的に後退させる型開きが行われる(ステップS16)。第2金型42の後退に伴って第1金型41と第2金型42とが離間する。この結果、図6Aに示すように、成形品MPすなわちレンズ10は、第2金型42側に残る。つまり、レンズ10は、可動側の第2金型42に埋め込むように保持された状態で第1金型41から離型される。
【0057】
次に、進退機構部78を動作させて、可動ロッド75,76により、第2金型42に残った成形品MPを第1金型41側に突き出す(ステップS17)。これにより、図6Bに示すように、成形品MPの離型が行われる。この際、レンズ10は保持部74bから完全に押し出された状態となっている。
【0058】
この状態で、不図示の取出装置を動作させて、成形品MPを第2金型42から離間させるとともに外部に搬出する(ステップS18)。成形品MPを搬送する際には、成形品MPのうち本体のレンズ10を除いた部分を把持する。この際、レンズ10の第2光学面OS2の曲率が小さく面深さが比較的浅いため、第2コア部74aの第2転写面S2への第2光学面OS2の張り付き力は比較的小さい。よって成形品MPを第2コア部74aから外しやすいので、レンズ10外周の一部に偏った力が加えられることを防止できる。
【0059】
以上説明した本実施形態の光学素子の製造方法によれば、型開き工程(ステップS16)において第1金型41に対して第2金型42を離すように移動させる際に、比較的浅い第2光学面OS2を成形する第2金型42にレンズ10を残しており、第2金型42の第2コア部74aによる型開き後の突き出し工程(ステップS17)と取出装置による成形品取り出し工程(ステップS18)とにおいて、レンズ10に設けられたゲート部GPが変形することを防ぐことができる。これは、曲率が比較的小さい第2光学面OS2を成形する第2転写面S2が第1光学面OS1を成形する第1転写面S1よりも浅くなり、第2コア部74aの第2転写面S2への第2光学面OS2の張り付き力が比較的小さくなって成形品MPを第2コア部74aから外しやすくなるからである。また、第1光学面OS1を成形する第1金型41を型開き時にレンズ10が残らない金型とするために、第1金型41によって形成されるフランジ部12の部分厚さt1を第1金型41にレンズ10を残す場合に比較して小さくすることになる。そのため、第1転写面S1とパーティング面PS1との距離が比較的近くなり、第1転写面S1からエアやガスが抜けやすくなる。以上により、レンズ10の外観不良を低減し、高精度なレンズ10を製造することができる。これは、特に、例えばBD用光ピックアップ装置用の対物レンズのような偏肉比p(最厚部の厚み÷最薄部の厚み)が比較的高いレンズにおいて有効である。
また、曲率が比較的小さい第2光学面OS2を成形する第2転写面S2が第1光学面OS1を成形する第1転写面S1よりも浅いため、第2コア部74aの第2転写面S2への第2光学面OS2の張り付き力が比較的小さくなってレンズ10を第2コア部74aから外しやすくなるが、その一方、第2光学面OS2よりも曲率の大きい第1光学面OS1を第1金型41で成形するため、型開きの際にレンズ10が第1金型41側に張り付いて残りやすくなってしまうことが考えられる。それに対し、第2金型42側に設ける流路空間FCの体積を増やすことでレンズ10が第2金型42側に残りやすくすることができる。しかしその場合、流路空間FCで成形されるランナー部RPの第2金型42側への張り付きが強まってしまうが、第2金型42にランナー部RPを第1金型41側へ突き出す突出部材74pを設けているので、ランナー部RPをスムーズに離型することを可能としている。
さらに、ゲート部GPの変形によりレンズ10が傾いて離型され、離型の際にレンズ10の第1光学面OS1が金型に接触し、レンズ10の第1光学面OS1に三日月状の傷が付いてしまうのを防ぐことが可能となる。さらに、レンズ10を突き出す第2コア部74aとランナー部RPを突き出す突出部材74pとで突き出すタイミングの違いにより、突き出し時にゲート部GPに曲がりが生じたとしても、レンズ10を第2コア部74aから外しやすくなっているため、後の取出しの際に、ゲート部GPのさらなる曲がりを防止することができる。
さらに、コア突き出しとすることにより、ピン突き出しに比べて突き出すための部品点数を少なくすることが可能となる。そのため、レンズ10を突き出す第2コア部74aとランナー部RPを突き出す突出部材74pとで突き出すタイミングをより合わせやすくでき、突き出しの際のゲート部GPの曲がりを低減することができる。その結果、BD用のピックアップレンズのような高い成形精度が必要となるレンズ10に対しても所望の収差を得ることが可能となる。
【0060】
また、レンズ10をコア突き出しによって離型するため、レンズ10の取付基準面上にピン突き出し時のバリが生じることを防ぐことができる。これにより、レンズ10を精度良く光ピックアップ装置等に取り付けることができる。さらに、レンズ10をコア突き出しによって離型するため、光学面の外周(例えば、フランジ部12)において、端面部分の面積を十分に確保することができる。これにより、端面において光が十分な強さで確実に反射されるものとなり、効率良くスキュー調整することができる。
【0061】
なお、第1実施形態において、図7に示すように、フランジ部12の第1フランジ面12aに段差構造b1を設けてもよい。段差構造b1は、レンズ10の中心側の段差がレンズ10の外側の段差よりもレーザ光源側に向かって高くなっている。第1金型41の第1コア部64aの外側には、段差構造b1を形成するための段差状の凸転写面S21が設けられている。
【0062】
レンズ10が段差構造b1を有することにより、第1フランジ面12a側に第1コア部64aと保持部64bとの境界によるバリが生じても、レンズ10をレンズホルダ等に取り付ける際に、バリをホルダ等と段差構造b1との間に形成される空間に収めることができる。これにより、レンズ10をホルダ等に精度良く取り付けることができる。
【0063】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る光学素子の製造方法について説明する。なお、第2実施形態に係る光学素子の製造方法は、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。
【0064】
図8に示すように、レンズ10は、フランジ部12の第2フランジ面12b側に段差構造b2を有する。段差構造b2は、レンズ10の外側の段差がレンズ10の中心側の段差よりも情報記録媒体側に向かって高くなっている。第2金型42の保持部74bの内側には、段差構造b2を形成するための段差状の凸転写面S22が設けられている。
【0065】
レンズ10が段差構造b2を有することにより、第2フランジ面12b側に第2コア部74aと保持部74bとの境界によるバリが生じても、バリを段差構造b2で形成される空間に収めることができる。これにより、成形時にバリの長さがばらつくことにより情報記録媒体とレンズ10との間の距離(WD:ワーキングディスタンス)が変化することを防止することができる。
【0066】
なお、第2実施形態において、図9に示すように、フランジ部12の第1フランジ面12aに第1実施形態で説明した段差構造b1を設けてもよい。
【0067】
また、第2実施形態において、図10に示す段差構造b3のように、段差構造b3のレンズ10の中心側の段差がレンズ10の外側の段差よりも情報記録媒体側に向かって高くなっていてもよい。この場合、第2金型42の第2コア部74aの外側に段差構造b3を形成するための段差状の凸転写面S23が設けられている。第2コア部74aの凸転写面S23は、保持部74bの第4転写面S4よりもパーティング面PS2から深くなっている。なお、図10において、フランジ部12の第1フランジ面12aに段差構造b1を設けない構造としてもよい。
【0068】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る光学素子の製造方法について説明する。なお、第3実施形態に係る光学素子の製造方法は、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。
【0069】
図11に示すように、レンズ10は、光学機能部11とフランジ部12との間に凹部m1を有する。つまり、レーザ光源側の光学機能部11とフランジ部12との境界が環状に窪んだ形状となっている。第1金型41の第1コア部64aの第1転写面S1と第3転写面S3との境界には、凹部m1を形成するための環状の凸部を構成する面として凸転写面S24が設けられている。凸転写面S24は、第3転写面S3よりもパーティング面PS1から浅くなっている。
【0070】
凹部m1を形成する凸転写面S24を設けることにより、フランジ部12を形成するフランジ空間CV2を広くすることができ、溶融樹脂の流動性を向上させることができる。
【0071】
なお、第3実施形態において、フランジ部12の第1フランジ面12aに、第1及び第2実施形態で説明した段差構造b1を設けてもよい。
【0072】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る光学素子の製造方法について説明する。なお、第4実施形態に係る光学素子の製造方法は、第2及び第3実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第2及び第3実施形態と同様であるものとする。
【0073】
図12に示すように、第1コア部64aの先端面は、主要な部分がレンズ10の第1光学面OS1を形成するための第1転写面S1となっている。そのため、第1転写面S1を有する第1コア部64aの周りに第3転写面S3を有する保持部64bが配置されることで、第1コア部64aの外縁部が、本体空間CV1とフランジ空間CV2との境界に食い込んだ状態となっている。
【0074】
第1コア部64aの外縁部がレンズ10の第1光学面OS1と第1フランジ面12aとの間に食い込みやすい構造となっているため、型空間CV内に充填された溶融樹脂が完全に固化すると、樹脂の収縮によりレンズ10が第1金型41から離型しにくくなり、外観不良の原因となる。そのため、第1金型41を型開き時にレンズ10が残らない固定金型とすることで、溶融樹脂が完全に固化する前にレンズ10を良好な外観を保ちつつ確実に第1金型41から離型することができる。
【0075】
なお、第4実施形態において、第1実施形態のように、フランジ部12の第2フランジ面12b側に段差構造b2を設けない構造としてもよい。また、第4実施形態において、フランジ部12の第1フランジ面12aに、第1及び第2実施形態で説明した段差構造b1を設けてもよい。
【0076】
また、図13に示すように、フランジ部12の第1フランジ面12a側に段差構造b4を有していてもよい。段差構造b4は、レンズ10の外側の段差がレンズ10の中心側の段差よりもレーザ光源側に向かって高くなっている。第1金型41の保持部64bの内側には、段差構造b4を形成するための段差状の凸転写面S25が設けられている。これにより、第1フランジ面12a側に第1コア部64aと保持部64bとの境界によるバリが生じてもレンズ10をレンズホルダ等に取り付ける際に、バリをホルダ等と段差構造b4との間に形成される空間に収めることができる。これにより、レンズ10をホルダ等に精度良く取り付けることができる。
【0077】
〔第5実施形態〕
以下、第5実施形態に係る光学素子の製造方法について説明する。なお、第5実施形態に係る光学素子の製造方法は、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。
【0078】
図14に示すように、第1金型41は、第1コア部64aと保持部64bとに分割されていない構造となっている。つまり、第1金型41は、第1実施形態で説明した第1コア部64aと保持部64bとを一体化した金型部64dを有しており、金型部64dによってレンズ10の第1光学面OS1と第1フランジ面12a等を成形する。
【0079】
なお、第5実施形態において、図15に示すように、フランジ部12の第1フランジ面12a側の外縁、すなわち凹部u1の側面にテーパTPが設けられていることがより好ましい。第1金型41には、金型部64dの第3転写面S3の外側にテーパTPを形成するための傾斜転写面S26が設けられている。
【0080】
第1金型41にテーパTPを設けることにより、レンズ10が第1金型41から抜けやすくなり、型開き時にレンズ10を可動側の第2金型42に残しやすくすることができる。
【0081】
〔第6実施形態〕
以下、第6実施形態に係る光学素子の製造方法について説明する。なお、第6実施形態に係る光学素子の製造方法は、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。
【0082】
図16に示すように、レンズ10のフランジ部12のうち第1金型41によって形成される部分厚さt1がt1=0となっている。すなわち、レンズ10のフランジ厚さTが、フランジ部12のうち第2金型42によって形成される部分厚さt2と等しくなっている。これにより、第1転写面S1からエアがより抜けやすくなる。また、レンズ10が第1金型41から抜けやすくなるため、型開き時にレンズ10を可動側の第2金型42に残しやすくすることができる。
【0083】
以上、実施形態に即して本発明を説明したが本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば第2金型42を固定し、第1金型41を可動とすることで型閉じ工程を行うことができる。この場合、レンズ10が残った第2金型42側にレンズ10の突き出し機構等を設ける。
【0084】
また、第1金型41と第2金型42とを水平に配置する必要はなく、第1金型41と第2金型42とを上下に配置する竪型の成形金型とすることもできる。
【0085】
上記実施形態では、レンズ10が光ピックアップ用の対物レンズとしたが、同様の形状を有し中心肉厚が大きな小型のレンズについても、本実施形態と同様の手法で製造することにより、光学面の変形や傷を低減してすることができ、要求精度が高い場合に対応することができる。
【0086】
上記実施形態では、コア部64aの戻し力をバネによって与えているが、バネ以外の手段でコア部64aを戻すこともできる。
【0087】
上記実施形態において、レンズ10の外周側面SSが円筒面であるとしたが、外周側面SSはレンズ光軸OAに対称な形状で無くてもよい。すなわち、外周側面SSは略角柱面であってもよいし、円筒面と角柱面を組み合せた面で有ってもよい。また、外周側面SSに僅かなテーパを形成することができ、保持部74bの第5転写面S5にも僅かなテーパを形成することができる。
【0088】
上記実施形態において、レンズ10の光学面は、光学面に微細形状FS等を設けずに、平滑なものであってもよい。
【0089】
上記実施形態において、第1及び第2金型41,42の型締め後、真空引きを行ったが(ステップS13)、型空間CV内に溶融樹脂が確実に充填され、転写精度が維持されれば、真空引きを行わなくてもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の光学素子の製造方法等に関し、特に射出成形装置を用いたランナー部付きの光学素子の製造方法、及び当該方法によって製造した光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製レンズの製造方法として、射出成形という手法が知られているが、形状転写後の樹脂製レンズを型面から離す離型に際して、樹脂製レンズを外側に突き出す必要がある。このような樹脂製レンズの突き出し工程として、例えば曲率が比較的大きい光学面転写用のコア金型部(以下、コア部)を周囲の型部分から突出させるように前進させることで、樹脂製レンズの取り出しを可能にするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、特許文献1のような光学素子の製造方法では、曲率が大きく型面に深く嵌り込むような樹脂製レンズの場合、樹脂製レンズの突き出し工程後に樹脂製レンズから延びるランナー部やスプル―部等を取出装置に把持させて成形品を型外に取り出す際に、コア部に樹脂製レンズが張り付いてゲート部が曲がってしまう。このようなゲート部の変形により、樹脂製レンズの光学面にまで微小な変形が達することがあったり、レンズが傾いて離型されるため不均一な離型力が加わり光学面が微小に変形することがあったりする。そのため、結果的に所望の光学面が得られなくなり、或いは製品の歩留まり率を下げることになる。特に、BD(ブルーレイディスク)用の対物レンズは、曲率が大きく突起量が大きくなってコア部の転写面が深くなりやすく、レンズ部分に高い形状精度が要求されるにもかかわらずレンズ部分のサイズが小さい。よって、ゲート部の変形が光学面に及びやすい傾向があり、離型時の光学面の変形を低減することが望ましい。また、ゲート部の変形によりレンズが傾いて離型されると、離型の際にレンズの光学面が金型に接触し、レンズの光学面に三日月状の傷を生じる虞があり、この場合も、結果的に所望の光学面が得られなくなり、或いは製品の歩留まり率を下げることになってしまうので、離型時の光学面の傷を低減することが望ましい。
【0004】
また、製品部分であるレンズ部分を突き出す部材とランナー等の非製品部分を突き出す部材とでは型内での構造がそれぞれ異なる場合、突き出すタイミングを完全に一致させることは困難となり、突き出すタイミングの違いにより、ゲート部に曲がりを生じさせてしまうことがある。そして、突き出しの段階でゲート部に曲がりが生じてしまうと、後の取出しの際に、コア部にレンズが張り付くことによるゲート部の曲がりをよりいっそう引き起こしやすくなってしまう。
【0005】
また、成形時においては、金型の境界であるパーティング面からエア抜きやガス抜きが行われる。また、その効果を上げるために0.1μm〜10μm程度の隙間又はエアベントが形成されることがある。特許文献1のような光学素子の製造方法では、曲率が比較的大きい光学面がパーティング面から離れているため、成形時のエア抜けやガス抜けが悪くなり、曲率が比較的大きい光学面にエア溜まりや微小な面くもり等の外観不良が生じるおそれがある。
【0006】
ここで、曲率が比較的大きい光学面側のフランジ部に突き出しピンを設置してピン突き出しをし、取出装置で把持する前にコア部の離型を済ませることによって、樹脂製レンズの取り出し工程において、ゲート部が曲がる問題が解決すると考えられる。しかしながら、ピン突き出しの場合、樹脂製レンズのフランジ部にある取付基準面に突き出しバリ(不要な微小な突起)が生じる。そのため、樹脂製レンズをレンズホルダに取り付ける際に、樹脂製レンズが傾き、コマ収差が発生するという問題が生じる。また、曲率が比較的大きい光学面を金型の固定側とし、曲率が比較的小さい光学面を金型の可動側とし、曲率が比較的小さい光学面側のフランジ部をピン突き出しすれば、ゲート部が曲がる問題やエア溜まりの問題が解決すると考えられる。しかしながら、曲率が比較的小さい光学面側をピン突き出しした場合、曲率が比較的小さい光学面の外周に存在するフランジ端面(円環状の鏡面部)の面積が小さくなるため、スキュー調整時にレンズ傾きの検出が難しくなる問題が生じる。
【0007】
また、コア突き出し及びピン突き出しのどちらの場合も、製品部分である光学素子を突き出す部材とランナー等の非製品部分を突き出す部材とでは型内での構造がそれぞれ異なる場合、突き出すタイミングを完全に一致させることは困難となる。突き出すタイミングが異なると、そのタイミングのずれによって、ゲート部に曲がりを生じさせてしまうが、BD用のピックアップレンズのような場合、ゲート部の僅かな曲がりにより、その影響が光学機能面へ伝わり所望の収差性能が得られなくなる虞がある。特に、複数の突き出し部材でフランジ部を突き出すピン突き出しの場合、光学素子を突き出す複数の突き出し部材とランナー部を突き出す部材とで、突き出すための部品点数が多くなるためより一層突き出しのタイミングを合わせることが難しく、よりゲート部の曲がりを生じさせやすくなってしまうことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−200652号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明は、離型のためにコア部を突き出して成形品を取り出す際に、フランジ端面の機能を保ちつつ、光学面の変形や傷を低減できる光学素子の製造方法及び当該方法によって製造した光学素子を提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る光学素子の製造方法は、光情報記録媒体への情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置に組み込まれ、開口数が0.75以上の光学素子のうち第1光学面を成形するための第1の金型と、光学素子のうち第2光学面を成形するための第2の金型とを有する射出成型装置を用いた光学素子の製造方法であって、第2光学面は、第1光学面よりも曲率が小さく、第1の金型と第2の金型とで形成する型空間及び流路空間に溶融樹脂を射出して光学素子及びランナー部を成形する成形工程と、第2の金型に光学素子を残すように、第1の金型と第2の金型とを相対的に移動させて型開きする型開き工程と、第2の金型に設けたコア部を、コア部を周囲から保持する保持部に対して第1の金型側に相対的に移動させて、光学素子を第1の金型側へ突き出し、第2の金型に設けた突出部材を第1の金型側に移動させて、ランナー部を第1の金型側へ突き出す突き出し工程と、を備える。
【0011】
上記光学素子の製造方法によれば、型開き工程において第1の金型に対して第2の金型を離すように移動させる際に、曲率が小さく面深さが比較的浅い第2光学面を成形する第2の金型(一般的には、可動金型)に光学素子を残しており、第2の金型に設けたコア部による型開き後の突き出し工程とその後の取出装置による成形品取り出し工程とにおいて、光学素子に設けられたゲート部が変形することを防ぐことができる。これは、曲率が比較的小さい第2光学面を成形する第2転写面が第1光学面を成形する第1転写面よりも浅いため、コア部の第2転写面への第2光学面の張り付き力が比較的小さくなって成形品をコア部から外しやすくなるからである。また、第1光学面を成形する第1の金型を型開き時に光学素子が残らない金型(一般的には、固定金型)とするため、第1の金型によって形成されるフランジ部の部分厚さを、第1の金型に光学素子を残す場合に比較して小さくすることになる。そのため、第1転写面と、第1及び第2の金型との当接面であるパーティング面との距離が近くなり、第1転写面からエアやガスが抜けやすくなる。以上により、光学素子の外観不良を低減し、高精度な光学素子を製造することができる。これは、特に、例えばBD用光ピックアップ装置用の対物レンズのような偏肉比p(最厚部の厚み÷最薄部の厚み)が比較的高いレンズにおいて有効である。また、ゲート部の変形によりレンズが傾いて離型され、離型の際にレンズの光学面が金型に接触し、レンズの光学面に三日月状の傷が付いてしまうのを防ぐことが可能となる。さらに、光学素子を突き出すコア部とランナー部を突き出す突出部材とで突き出すタイミングの違いにより、突き出し時にゲート部に曲がりが生じたとしても、成形品をコア部から外しやすくなっているため、後の取出しの際に、ゲート部のさらなる曲がりを防止することができる。
【0012】
また、第2光学面側のコアを突き出すことによって光学素子を離型するため、第1光学面側にある光学素子の取付基準面上に突き出しピンによるバリが生じることを防ぐことができ、レンズホルダに取り付ける際にレンズが傾き、コマ収差が発生するという問題が生じることを防ぐことができる。これにより、光学素子を精度良く光ピックアップ装置等に取り付けることができる。さらに、光学素子をコア突き出しによって離型するため、光学面の外周(例えば、フランジ部)において、端面部分の面積を十分に確保することができる。これにより、端面において光が十分な強さで確実に反射されるものとなり、効率良くスキュー調整することができる。
【0013】
また、曲率が比較的小さい第2光学面を成形する第2転写面が第1光学面を成形する第1転写面よりも浅いため、コア部の第2転写面への第2光学面の張り付き力が比較的小さくなって成形品をコア部から外しやすくなるが、その一方、第2光学面よりも曲率の大きい第1光学面を第1の金型(一般的に固定金型)で成形するため、型開きの際に光学素子が第1の金型側に張り付いて残りやすくなってしまうことが考えられる。それに対し、第2の金型側に設ける流路空間の体積を第1の金型側に設ける流路空間の体積よりも大きくする等することで光学素子が第2の金型側(一般的に可動金型)に残りやすくすることができる。しかしその場合、流路空間で成形されるランナー部の第2の金型側への張り付きが強まってしまうが、本発明では、第2の金型にランナー部を第1金型側へ突き出す突出部材を設けているので、ランナー部をスムーズ(円滑)に離型することを可能としている。
【0014】
さらに、コア突き出しとすることにより、ピン突き出しに比べて突き出すための部品点数を少なくすることが可能となる。そのため、光学素子を突き出す部材とランナー部を突き出す部材とで突き出すタイミングをより合わせやすくでき、突き出しの際のゲート曲がりを低減することができる。その結果、BD用のピックアップレンズのような高い成形精度が必要となるレンズに対しても所望の収差を得ることが可能となる。
【0015】
なお、本明細書においてコア突き出しとは、光学素子の光学機能面を成形する転写面を有する突き出し部材で、その転写面を光学素子の光学機能面に当接させて突き出すものであり、ピン突き出しとは、光学素子の光学機能部の外周に設けたフランジ部を複数の突き出し部材で突き出すものをいう。
【0016】
本発明の具体的な態様又は側面では、突き出し工程において、コア部で光学素子を第1の金型側へ突き出すタイミングと、突出部材でランナー部を第1の金型側へ突き出すタイミングが異なる。ここで、突き出すタイミングが異なるとは、それぞれをほぼ同時に突き出した際における若干のタイミングのズレであることを意味する。
コア突き出し及びピン突き出しのどちらの場合も、製品部分である光学素子を突き出す部材とランナー等の非製品部分を突き出す部材とでは型内での構造がそれぞれ異なる場合、突き出すタイミングを完全に一致させることは困難となる。本発明では、コア突き出しとすることにより、ピン突き出しに比べて、光学素子を突き出すタイミングとランナー部を突き出すタイミングをより合わせやすくすることができる。
【0017】
本発明の別の側面では、成形工程は、複数の光学素子及び複数のランナー部を成形する。複数の光学素子及び複数のランナー部を一度に成形する場合、光学素子及びランナー部を突き出すための部品がより多くなるため、突き出しのタイミングをそれぞれ合わせることがより一層困難となる。本発明では、コア突き出しとすることにより、ピン突き出しに比べて、突き出す部材の部品点数を少なくできるため、比較的突き出しのタイミングを合わせることを可能としている。
【0018】
本発明のさらに別の側面では、上記光学素子の製造方法において、成形工程前に、型空間内を真空引きする。この場合、比較的曲率の大きい第1光学面を成形する第1転写面にも溶融樹脂が確実に充填されて転写精度が向上し、光学素子の外観を良好なものとすることができる。
【0019】
本発明のさらに別の側面では、光学素子は、第1光学面と第2光学面とを有する光学機能部と、光学機能部の周囲に配置されるフランジ部とを有するレンズであり、光学素子は、フランジ部の外周縁に成形工程において形成されるゲート部を有し、レンズのレンズ光軸に垂直な方向のレンズ外径をDとし、フランジ部のレンズ光軸に平行な方向のフランジ厚さをTとし、ゲート部のレンズ光軸に平行な方向のゲート厚さをHとし、ゲート部のレンズ光軸に垂直な方向のゲート長さをLとし、ゲート部のレンズ光軸に垂直な方向のゲート幅をWとしたときに、以下の条件式(1)〜(3)を満たす。
0.05D≦W≦0.4D (1)
0.5T≦H≦T (2)
0.1(mm)≦L≦2.0(mm) (3)
この場合、光学素子の成形時における要素が上記条件式(1)〜(3)を満たすことにより、樹脂注入時に溶融樹脂が確実に充填されるとともに適切なゲートシール時間を設けることができ、かつ突き出し工程とその後の取出装置による成形品取り出し工程とにおいてゲート部が変形しにくくなるため、光学機能部の変形を確実に防ぐことができる。
【0020】
本発明のさらに別の側面では、フランジ部のうち第1の金型によって形成される部分厚さをt1としたきに、以下の条件式(4)を満たす。
0≦t1<0.5T (4)
この場合、上記条件式(4)が満たされることにより、型開き工程において、光学素子を第2の金型側に確実に残すことができる。
【0021】
本発明のさらに別の側面では、レンズのフランジ部のうち、第1の金型側の第1フランジ外径をd1とし、第2の金型側の第2フランジ外径をd2としたときに、以下の条件式(5)を満たす。
d1<d2 (5)
この場合、上記条件式(5)が満たされることにより、第2の金型単体のみで、光学素子の外径に対応する転写面を形成することができるため、光学素子の外径を高精度に維持することができる。
【0022】
本発明のさらに別の側面では、第1の金型と第2の金型の当接面であるパーティング面は、フランジ部のレンズ光軸に平行な方向のフランジ厚さの中心よりも、レンズ光軸に平行な方向において第1の金型側に位置している。この場合、第1転写面とパーティング面との距離を近くすることができ、第1転写面からエアやガスが抜けやすくすることができる。また、第2の金型側に光学素子を残しやすくすることができる。
【0023】
本発明のさらに別の側面では、第1の金型は、コア部と、コア部を保持する保持部とを有し、第1の金型のコア部によって、光学機能部の第1光学面と、フランジ部のうち第1光学面側に設けられる第1フランジ面の少なくとも一部を形成し、第1の金型のコア部の第2の金型に対向する先端部の外周部分は、第1光学面と第1フランジ面との間に環状の凹部を形成するための環状の凸部を有する。この場合、フランジ部を形成するフランジ空間を広くすることができ、溶融樹脂の流動性を向上させることができる。また、この場合、第1の金型において光学素子が冷却により収縮した際に第1コア部に食い付いて密着しやすくなるが、第1の金型によって成形される第1光学面を第2光学面よりも先に離型することで、離型変形等を確実に防止できる。
【0024】
本発明のさらに別の側面では、光学素子は、第1光学面に微細形状を有する。この場合、第1光学面が微細形状を有することにより、第1の金型において第1コア部と第1光学面とが密着しやすくなるが、第1光学面を第2光学面よりも先に離型することで、離型変形等を確実に防止できる。
例えば、BD、DVD(デジタルバーサタイルディスク)及びCD(コンパクトディスク)の3種類の光ディスクの互換を共通の対物レンズで行うトリプル互換レンズのように、曲率が大きい方の光学面に微細な段差を有する回折構造が形成されているような光学素子の場合において、取出しの際にゲート部が曲がりを有し光学素子が傾いて離型されたとしても、回折構造を崩すことはないため高い光利用効率を得ることが可能となる。
【0025】
本発明のさらに別の側面では、光学素子は、光学素子の軸上レンズ厚をd(mm)とし、500nm以下の波長の光束における光学素子の焦点距離をf(mm)としたときに、0.8≦d/f≦2.0である。この場合、第1光学面の曲率が大きく突起量も大きくなるが、このような光学素子に対しても、光学素子の外観不良を低減し、高精度な光学素子を製造することができる。
【0026】
本発明のさらに別の側面では、光学素子は、光ピックアップ装置用の対物レンズである。
【0027】
本発明のさらに別の側面では、光学素子は、BD、DVD及びCDの3種類の光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置用の対物レンズである。非常に高い成形精度が求められるBD、DVD(デジタルバーサタイルディスク)及びCD(コンパクトディスク)の3種類の光ディスクの互換を共通の対物レンズで行うトリプル互換レンズにおいて、より有用となる。
なお、本明細書において、BDとは、波長390〜415nm程度の光束、NA0.8〜0.9程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.05〜0.125mm程度であるBD系列光ディスクの総称であり、単一の情報記録層のみ有するBDや、2層又はそれ以上の情報記録層を有するBD等を含むものである。更に、本明細書においては、DVDとは、NA0.60〜0.67程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.6mm程度であるDVD系列光ディスクの総称であり、DVD−ROM、DVD−Video、DVD− Audio、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等を含む。また、本明細書においては、CDとは、NA0.45〜0.51程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが1.2mm 程度であるCD系列光ディスクの総称であり、CD−ROM、CD−Audio、CD−Video、CD−R、CD−RW等を含む。尚、記録密度については、BDの記録密度が最も高く、次いでDVD、CDの順に低くなる。
【0028】
本発明のさらに別の側面では、突き出し工程後に、成形工程によって成形された成形品のうち光学素子を除いた部分を把持し、光学素子を第2の金型から離間させる。この場合、光学素子を把持しないので、把持による傷が光学素子につくことを防止することができる。
【0029】
上記課題を解決するため、本発明に係る光学素子は、上述の光学素子の製造方法で製造することによって得られる。
【0030】
上記光学素子は、上述の製造方法で製造されることにより、高精度な光学素子となる。これは、特に、例えばBD用光ピックアップ装置用の対物レンズのような偏肉比p(最厚部の厚み÷最薄部の厚み)が比較的高いレンズにおいて有効である。また、光学素子の取付基準面上に突き出しピンによるバリが生じることを防ぐことができ、光学素子を精度良く光ピックアップ装置等に取り付けることができる。さらに、光学面の外周(例えば、フランジ部)において、端面部分の面積を十分に確保することができ、効率良くスキュー調整することができる。また、ゲート部の変形により光学素子が傾いて離型される際に光学面が金型に接触することを防止でき、光学面に三日月状などの傷のない光学素子にすることができる。突き出しの際のゲート曲がりを低減することができ、BD用のピックアップレンズのような高い成形精度が必要となるレンズに対しても所望の収差性能を満たすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態に係る光学素子の製造方法を実施するための成形金型を説明する側方断面図である。
【図2】光学素子を成形するための型空間を説明する図である。
【図3】図3Aは、光学素子であるレンズの断面図であり、図3Bは、レンズの第2光学面からみた平面図である。
【図4】図2の比較例を説明する図である。
【図5】図1に示す成形金型を用いた成形方法を説明するフローチャートである。
【図6】図6A、図6Bは、光学素子の製造工程を説明する概念図である。
【図7】図2の型空間及び図3の光学素子の変形例について説明する図である。
【図8】第2実施形態に係る光学素子の製造方法で用いられる型空間及び光学素子を説明する図である。
【図9】図8の型空間及び光学素子の変形例について説明する図である。
【図10】図8の型空間及び光学素子の別の変形例について説明する図である。
【図11】第3実施形態に係る光学素子の製造方法で用いられる型空間及び光学素子を説明する図である。
【図12】第4実施形態に係る光学素子の製造方法で用いられる型空間及び光学素子を説明する図である。
【図13】図12の型空間及び光学素子の変形例について説明する図である。
【図14】第5実施形態に係る光学素子の製造方法で用いられる型空間及び光学素子を説明する図である。
【図15】図14の型空間及び光学素子の変形例について説明する図である。
【図16】第6実施形態に係る光学素子の製造方法で用いられる型空間及び光学素子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る光学素子の製造方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0033】
図1に示すように、本実施形態の製造方法を実施するための射出成形装置100は、成形金型40を備え、成形金型40は、第1の金型41と第2の金型42とを備える。ここで、第2金型42は、開閉駆動装置79に駆動されてAB方向に往復移動可能になっている。第2金型42を第1金型41に向けて移動させ、両金型41,42をパーティング面PS1,PS2で型合わせして型締めすることにより、図2に部分的に拡大して示すように、光学素子としてのレンズ10を成形するための型空間CVと、これに樹脂を供給するための流路空間FCとが形成される。なお、型空間CVや流路空間FCは成形金型40内に複数個形成される場合もある。
【0034】
図2に示すように、型空間CVは、第1及び第2転写面S1,S2に挟まれた本体空間CV1と、第3、第4、第5、及び第6転写面S3,S4,S5,S6に囲まれたフランジ空間CV2とを備える。ここで、本体空間CV1に臨む一対の対向する第1及び第2転写面S1,S2は、図3A及び3Bに拡大して示すレンズ10のうち中央の光学機能部11の第1及び第2光学面OS1,OS2を形成するための部分である。この場合、一方の第1転写面S1は、他方の第2転写面S2よりも深く曲率が大きくなっており、第1光学面OS1の微細構造又は微細形状FSを転写するための微細な凹凸パターンFPが設けられている。一方、フランジ空間CV2を囲む第3、第4、第5、及び第6転写面S3,S4,S5,S6は、レンズ10のうちフランジ部12を形成するための部分である。ここで、フランジ空間CV2に臨む第3、第4、及び第6転写面S3,S4,S6は、図3A及び3Bに拡大して示すレンズ10のうち第1、第2、及び第3フランジ面12a,12b,12cを形成するための部分である。また、フランジ空間CV2に臨む第5転写面S5は、レンズ10の外周側面SSを形成するための部分である。図3Aに示すフランジ部12の第1フランジ面12aには、レンズ10の外周側面SSに隣接する外縁に、環状の凹部u1が設けられている。この凹部u1を形成する凸転写面S7は、レンズ10の軸上レンズ厚dを調整するために第1金型41において後述する第1コア部64aの底面に不図示のスペーサを入れる際の調整代となる。凸転写面S7は、図2に示すように、保持部64bの端面を第1コア部64aの端面よりも突出させることにより形成される。なお、流路空間FCは、図2、3A、及び3Bに示す成形品MPのうちランナー部RPを形成する空間として、ランナー部分RSを有しており、このランナー部分RSは、ゲート部分GSを介して型空間CVに連通している。このゲート部分GSの空間により、成形品MPにおいてレンズ10とランナー部RPとをつなぐゲート部GPが形成される。
【0035】
図3A及び3B等に示す成形品MPのうち、本体であるレンズ10は、樹脂製であり、上述のように、光学的機能を有する光学機能部11と、光学機能部11の外縁から半径方向外側に設けられた略環状のフランジ部12とを備える。レンズ10は、第1光学面OS1側の突起が大きな肉厚型の光ピックアップ用の対物レンズである。具体的には、レンズ10は、例えば波長405nmで開口数(NA)0.85のBD(ブルーレイディスク)に対応した光情報の読み取り又は書き込みを可能にする。ここで、レンズ10の光学的な仕様については、NA0.85に限らず、例えばNA0.75以上の様々な光ピックアップ用の対物レンズの規格に対応するものとすることができる。また、レンズ10は、レンズ10の軸上レンズ厚をd(mm)とし、500nm以下の波長の光束におけるレンズ10の焦点距離をf(mm)としたときに、0.8≦d/f≦2.0である。
【0036】
光学機能部11において、一方の第1光学面OS1は、レーザ光源側に配置されるものであり、光情報記録媒体である光ディスク側に配置される他方の第2光学面OS2よりも大きく突出し曲率が大きくなっている。さらに、第1光学面OS1の曲率が極めて大きいため、レンズ10は、中心部で肉厚が極めて大きく、偏肉比p(最厚部の厚み÷最薄部の厚み)が高くなっている。なお、第1光学面OS1には、回折構造である微細構造又は微細形状FSが設けられている。この微細形状FS等は、同心の輪帯状に形成されている。一方、第2光学面OS2は、回折構造等を有しない鏡面となっている。
【0037】
フランジ部12は、第1光学面OS1側にレンズ光軸OAに垂直な方向に延びる第1フランジ面12aと、第2光学面OS2側にレンズ光軸OAに垂直な方向に延びる第2フランジ面12b、第3フランジ面12cとを有する。第3フランジ面12cは、アライメント用の端面としての鏡面となっている。レンズ10の成形時には、フランジ部12の外周側面SSの一部にゲート部GPが形成されるが、成形金型40から取り出した後の仕上げ処理によって除去される。
【0038】
以下、レンズ10及び型空間CVの寸法について説明する。なお、図2、図3A、及び3Bに示すように、型空間CVの寸法は、レンズ10の各要素に対応したものであり、レンズ10の寸法と略同様である。すなわち、樹脂の成形収縮率をαとすると、型空間CVの寸法の(1−α)倍がレンズ10の寸法となる。よって、以下ではレンズ10の寸法について説明する。
【0039】
図3A及び3Bに示すように、レンズ10の寸法は、レンズ10のレンズ光軸OAに垂直な方向のレンズ外径をDとし、フランジ部12のレンズ光軸OAに平行な方向のフランジ厚さをTとし、ゲート部GPのレンズ光軸OAに平行な方向のゲート厚さをHとし、ゲート部GPのレンズ光軸OAに垂直な方向のゲート長さをLとし、ゲート部GPのレンズ光軸OAに垂直な方向のゲート幅をWとしたときに、以下の条件式(1)〜(3)を満たす。
0.05D≦W≦0.4D (1)
0.5T≦H≦T (2)
0.1(mm)≦L≦2.0(mm) (3)
【0040】
上記条件式(1)〜(3)を満たすようなレンズ10は、後述する樹脂注入工程(ステップS14)において樹脂注入時に溶融樹脂が確実に充填されるとともに適切なゲートシール時間を設けることができ、かつ突き出し工程(ステップS17)と成形品取り出し工程(ステップS18)とにおいてゲート部GPが変形しにくく、ゲート部GPの変形が光学機能部11に及びにくくなるため、ゲート部GPの変形を確実に防ぐことができる。なお、上記条件式(1)〜(3)を満たす範囲であれば、ゲート部GPの形状については、特に制限はなく、例えば直方体とすることができる。
【0041】
また、レンズ10のレンズ光軸OAに平行な方向のフランジ厚さをTとし、フランジ部12のうち固定側の第1金型41によって形成される部分厚さをt1としたきに、以下の条件式(4)
0≦t1<0.5T (4)
を満たす。なお、より好ましくは、以下の条件式(4a)
0≦t1<0.2T (4a)
を満たすものとする。なお、フランジ部12のうち可動側の第2金型42によって形成される部分厚さをt2としたときに、上記条件式(4)に対応するように、部分厚さt2は、0.5T≦t2≦Tの範囲となっている。
【0042】
本実施形態では、図2に示すように、第1金型41と第2金型42の当接面であるパーティング面PS1,PS2は、フランジ部12のレンズ光軸OAに平行な方向のフランジ厚さTの中心よりも、レンズ光軸OAに平行な方向において第1金型41側に位置している。これにより、第1金型41の第1転写面S1とパーティング面PS1との距離が近くなっており、第1転写面S1からエアやガスが抜けやすくなる。
【0043】
上記条件式(4)を満たすことにより、型開き工程において、レンズ10を可動側の第2金型42側に確実に残すことができる。
【0044】
また、レンズ10のフランジ部12のうち、第1フランジ面12a側の外径をd1とし、第2フランジ面12b側の外径をd2としたときに、以下の条件式(5)
d1<d2 (5)
を満たす。なお、より好ましくは、以下の条件式(5a)
d1<d2−0.010(mm) (5a)
を満たすものとする。
【0045】
上記条件式(5)を満たすことにより、第2金型42単体のみで、レンズ10のレンズ外径Dに対応する第4転写面S4を形成することができるため、レンズ10のレンズ外径Dを高精度に維持することができる。一方、d1=d2の場合、例えば第1金型41側と第2金型42側と間に芯ずれ(レンズ光軸OAと軸AXとのずれ)が起きた時にレンズ10のレンズ外径Dがd3となり(図4参照)、結果的に所期のレンズ外径D(=d2)よりも大きくd3>d2となってしまう。よって、芯ずれ量によってレンズ外径Dが変化してしまい、レンズ外径Dを高精度に作るために、第2金型42の第2フランジ面12bに対応する第4転写面S4の外径(d2に相当)を精度良く作っても無意味になってしまう。また、d1>d2であると、第1金型41の第3転写面S3の外径(d1に相当)を精度良く作っても、d1に関して、第1金型41側はフランジ部12の厚さが第2金型42側に比べて小さくなるため、レンズ10をホルダ等に取り付ける際にレンズ10がガタついてしまい精度良い位置決めができなくなってしまう。
【0046】
図1に戻って、固定側の第1金型41は、図2に示す型空間CVを第1金型41から形成する中心部としての第1コア部64aと、第1コア部64aの周囲に設けられる周辺部としての保持部64bと、第1コア部64aや保持部64bを背後から支持する受板64cとを備える。ここで、第1コア部64aは、保持部64bに形成された貫通孔64g中に組み込まれて不図示のボルトで固定されている。なお、保持部64bの端面64eには、図2に示す成形品MPのランナー部分RS等となるべき凹部が形成されている。
【0047】
可動側の第2金型42は、図2に示す型空間CVを第2金型42から形成する中心部としての第2コア部74aと、第2コア部74aの周囲に設けられる周辺部としての保持部74bと、第2コア部74aや保持部74bを背後から支持する受板74cと、成形品MPのランナー部RP等を突き出して離型するための突出部材74pと、第2コア部74a及び突出部材74pを背後から押す可動ロッド75,76と、可動ロッド75,76を軸AX方向に進退移動させる進退機構部78とを備える。
【0048】
第2コア部74aは、保持部74bに形成された貫通孔74g中に軸AX方向に沿って進退移動可能に組み込まれている。突出部材74pも、保持部74bに形成された貫通孔74h中に軸AX方向に沿って進退移動可能に組み込まれている。ここで、第2コア部74aは、バネ74sによって一定以上の力で後方に付勢されている。つまり、第2コア部74aは、前進する可動ロッド75に駆動されて第1金型41側に前進し、可動ロッド75の後退に伴って伸張するバネ74sに従って自動的に後退して元の位置に復帰する。また、突出部材74pは、可動ロッド76に駆動されて第1金型41側に前進し、型閉じの際に後述する第1金型41側の保持部64bによる外力や、樹脂流入時の樹脂圧力により後退して元の位置に復帰する。また、第2コア部74aと同様に、突出部材74pにもバネを用いることで自動的に後退して元の位置に復帰するようにしてもよい。なお、保持部74bの端面74eには、図2に示す成形品MPのランナー部分RS等となるべき凹部が形成されている。
【0049】
なお、曲率の比較的大きい第1光学面OS1を固定側の金型で成形する場合、第1及び第2金型41,42の型開きの際に軸ずれによる光学面の変形が生じやすくなる可能性があるが、例えば実開平7−9945号公報に開示されるように型板にテーパピンやテーパブロックを使用することで解決可能である。
【0050】
図5は、図1に示す成形金型40を用いた光学素子の製造方法を概念的に説明するフローチャートである。
【0051】
まず、開閉駆動装置79を動作させ、第2金型42を第1金型41に向けて相対的に前進させることで型閉じを開始させる(ステップS11)。なお、両金型41,42の表面は、成形に適する温度まで加熱されている。
【0052】
開閉駆動装置79の閉動作を継続することにより、第1金型41と第2金型42とが接触する型当たり位置まで移動して型閉じが完了し、開閉駆動装置79の閉動作をさらに継続することにより、第1金型41と第2金型42とを必要な圧力で締め付ける型締めが行われる(ステップS12)。
【0053】
次に、不図示の真空装置を動作させて、型締めされた第1金型41と第2金型42との間の型空間CV内を真空引きする(ステップS13)。これにより、型空間CVは適度に減圧された状態となり、比較的曲率の大きい第1転写面S1にも溶融樹脂が確実に充填される。
【0054】
次に、不図示の射出装置を動作させて、型空間CV中に、必要な圧力で溶融樹脂を注入する射出を行わせる(ステップS14)。そして、射出装置は、型空間CV中の樹脂圧を保つ。
【0055】
溶融樹脂を型空間CVに導入した後、型空間CV中の溶融樹脂が放熱によって徐々に冷却されるので、かかる冷却にともなって溶融樹脂が固化し成形が完了するのを待つ(ステップS15)。
【0056】
次に、開閉駆動装置79を動作させて、第2金型42を相対的に後退させる型開きが行われる(ステップS16)。第2金型42の後退に伴って第1金型41と第2金型42とが離間する。この結果、図6Aに示すように、成形品MPすなわちレンズ10は、第2金型42側に残る。つまり、レンズ10は、可動側の第2金型42に埋め込むように保持された状態で第1金型41から離型される。
【0057】
次に、進退機構部78を動作させて、可動ロッド75,76により、第2金型42に残った成形品MPを第1金型41側に突き出す(ステップS17)。これにより、図6Bに示すように、成形品MPの離型が行われる。この際、レンズ10は保持部74bから完全に押し出された状態となっている。
【0058】
この状態で、不図示の取出装置を動作させて、成形品MPを第2金型42から離間させるとともに外部に搬出する(ステップS18)。成形品MPを搬送する際には、成形品MPのうち本体のレンズ10を除いた部分を把持する。この際、レンズ10の第2光学面OS2の曲率が小さく面深さが比較的浅いため、第2コア部74aの第2転写面S2への第2光学面OS2の張り付き力は比較的小さい。よって成形品MPを第2コア部74aから外しやすいので、レンズ10外周の一部に偏った力が加えられることを防止できる。
【0059】
以上説明した本実施形態の光学素子の製造方法によれば、型開き工程(ステップS16)において第1金型41に対して第2金型42を離すように移動させる際に、比較的浅い第2光学面OS2を成形する第2金型42にレンズ10を残しており、第2金型42の第2コア部74aによる型開き後の突き出し工程(ステップS17)と取出装置による成形品取り出し工程(ステップS18)とにおいて、レンズ10に設けられたゲート部GPが変形することを防ぐことができる。これは、曲率が比較的小さい第2光学面OS2を成形する第2転写面S2が第1光学面OS1を成形する第1転写面S1よりも浅くなり、第2コア部74aの第2転写面S2への第2光学面OS2の張り付き力が比較的小さくなって成形品MPを第2コア部74aから外しやすくなるからである。また、第1光学面OS1を成形する第1金型41を型開き時にレンズ10が残らない金型とするために、第1金型41によって形成されるフランジ部12の部分厚さt1を第1金型41にレンズ10を残す場合に比較して小さくすることになる。そのため、第1転写面S1とパーティング面PS1との距離が比較的近くなり、第1転写面S1からエアやガスが抜けやすくなる。以上により、レンズ10の外観不良を低減し、高精度なレンズ10を製造することができる。これは、特に、例えばBD用光ピックアップ装置用の対物レンズのような偏肉比p(最厚部の厚み÷最薄部の厚み)が比較的高いレンズにおいて有効である。
また、曲率が比較的小さい第2光学面OS2を成形する第2転写面S2が第1光学面OS1を成形する第1転写面S1よりも浅いため、第2コア部74aの第2転写面S2への第2光学面OS2の張り付き力が比較的小さくなってレンズ10を第2コア部74aから外しやすくなるが、その一方、第2光学面OS2よりも曲率の大きい第1光学面OS1を第1金型41で成形するため、型開きの際にレンズ10が第1金型41側に張り付いて残りやすくなってしまうことが考えられる。それに対し、第2金型42側に設ける流路空間FCの体積を増やすことでレンズ10が第2金型42側に残りやすくすることができる。しかしその場合、流路空間FCで成形されるランナー部RPの第2金型42側への張り付きが強まってしまうが、第2金型42にランナー部RPを第1金型41側へ突き出す突出部材74pを設けているので、ランナー部RPをスムーズに離型することを可能としている。
さらに、ゲート部GPの変形によりレンズ10が傾いて離型され、離型の際にレンズ10の第1光学面OS1が金型に接触し、レンズ10の第1光学面OS1に三日月状の傷が付いてしまうのを防ぐことが可能となる。さらに、レンズ10を突き出す第2コア部74aとランナー部RPを突き出す突出部材74pとで突き出すタイミングの違いにより、突き出し時にゲート部GPに曲がりが生じたとしても、レンズ10を第2コア部74aから外しやすくなっているため、後の取出しの際に、ゲート部GPのさらなる曲がりを防止することができる。
さらに、コア突き出しとすることにより、ピン突き出しに比べて突き出すための部品点数を少なくすることが可能となる。そのため、レンズ10を突き出す第2コア部74aとランナー部RPを突き出す突出部材74pとで突き出すタイミングをより合わせやすくでき、突き出しの際のゲート部GPの曲がりを低減することができる。その結果、BD用のピックアップレンズのような高い成形精度が必要となるレンズ10に対しても所望の収差を得ることが可能となる。
【0060】
また、レンズ10をコア突き出しによって離型するため、レンズ10の取付基準面上にピン突き出し時のバリが生じることを防ぐことができる。これにより、レンズ10を精度良く光ピックアップ装置等に取り付けることができる。さらに、レンズ10をコア突き出しによって離型するため、光学面の外周(例えば、フランジ部12)において、端面部分の面積を十分に確保することができる。これにより、端面において光が十分な強さで確実に反射されるものとなり、効率良くスキュー調整することができる。
【0061】
なお、第1実施形態において、図7に示すように、フランジ部12の第1フランジ面12aに段差構造b1を設けてもよい。段差構造b1は、レンズ10の中心側の段差がレンズ10の外側の段差よりもレーザ光源側に向かって高くなっている。第1金型41の第1コア部64aの外側には、段差構造b1を形成するための段差状の凸転写面S21が設けられている。
【0062】
レンズ10が段差構造b1を有することにより、第1フランジ面12a側に第1コア部64aと保持部64bとの境界によるバリが生じても、レンズ10をレンズホルダ等に取り付ける際に、バリをホルダ等と段差構造b1との間に形成される空間に収めることができる。これにより、レンズ10をホルダ等に精度良く取り付けることができる。
【0063】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る光学素子の製造方法について説明する。なお、第2実施形態に係る光学素子の製造方法は、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。
【0064】
図8に示すように、レンズ10は、フランジ部12の第2フランジ面12b側に段差構造b2を有する。段差構造b2は、レンズ10の外側の段差がレンズ10の中心側の段差よりも情報記録媒体側に向かって高くなっている。第2金型42の保持部74bの内側には、段差構造b2を形成するための段差状の凸転写面S22が設けられている。
【0065】
レンズ10が段差構造b2を有することにより、第2フランジ面12b側に第2コア部74aと保持部74bとの境界によるバリが生じても、バリを段差構造b2で形成される空間に収めることができる。これにより、成形時にバリの長さがばらつくことにより情報記録媒体とレンズ10との間の距離(WD:ワーキングディスタンス)が変化することを防止することができる。
【0066】
なお、第2実施形態において、図9に示すように、フランジ部12の第1フランジ面12aに第1実施形態で説明した段差構造b1を設けてもよい。
【0067】
また、第2実施形態において、図10に示す段差構造b3のように、段差構造b3のレンズ10の中心側の段差がレンズ10の外側の段差よりも情報記録媒体側に向かって高くなっていてもよい。この場合、第2金型42の第2コア部74aの外側に段差構造b3を形成するための段差状の凸転写面S23が設けられている。第2コア部74aの凸転写面S23は、保持部74bの第4転写面S4よりもパーティング面PS2から深くなっている。なお、図10において、フランジ部12の第1フランジ面12aに段差構造b1を設けない構造としてもよい。
【0068】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る光学素子の製造方法について説明する。なお、第3実施形態に係る光学素子の製造方法は、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。
【0069】
図11に示すように、レンズ10は、光学機能部11とフランジ部12との間に凹部m1を有する。つまり、レーザ光源側の光学機能部11とフランジ部12との境界が環状に窪んだ形状となっている。第1金型41の第1コア部64aの第1転写面S1と第3転写面S3との境界には、凹部m1を形成するための環状の凸部を構成する面として凸転写面S24が設けられている。凸転写面S24は、第3転写面S3よりもパーティング面PS1から浅くなっている。
【0070】
凹部m1を形成する凸転写面S24を設けることにより、フランジ部12を形成するフランジ空間CV2を広くすることができ、溶融樹脂の流動性を向上させることができる。
【0071】
なお、第3実施形態において、フランジ部12の第1フランジ面12aに、第1及び第2実施形態で説明した段差構造b1を設けてもよい。
【0072】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る光学素子の製造方法について説明する。なお、第4実施形態に係る光学素子の製造方法は、第2及び第3実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第2及び第3実施形態と同様であるものとする。
【0073】
図12に示すように、第1コア部64aの先端面は、主要な部分がレンズ10の第1光学面OS1を形成するための第1転写面S1となっている。そのため、第1転写面S1を有する第1コア部64aの周りに第3転写面S3を有する保持部64bが配置されることで、第1コア部64aの外縁部が、本体空間CV1とフランジ空間CV2との境界に食い込んだ状態となっている。
【0074】
第1コア部64aの外縁部がレンズ10の第1光学面OS1と第1フランジ面12aとの間に食い込みやすい構造となっているため、型空間CV内に充填された溶融樹脂が完全に固化すると、樹脂の収縮によりレンズ10が第1金型41から離型しにくくなり、外観不良の原因となる。そのため、第1金型41を型開き時にレンズ10が残らない固定金型とすることで、溶融樹脂が完全に固化する前にレンズ10を良好な外観を保ちつつ確実に第1金型41から離型することができる。
【0075】
なお、第4実施形態において、第1実施形態のように、フランジ部12の第2フランジ面12b側に段差構造b2を設けない構造としてもよい。また、第4実施形態において、フランジ部12の第1フランジ面12aに、第1及び第2実施形態で説明した段差構造b1を設けてもよい。
【0076】
また、図13に示すように、フランジ部12の第1フランジ面12a側に段差構造b4を有していてもよい。段差構造b4は、レンズ10の外側の段差がレンズ10の中心側の段差よりもレーザ光源側に向かって高くなっている。第1金型41の保持部64bの内側には、段差構造b4を形成するための段差状の凸転写面S25が設けられている。これにより、第1フランジ面12a側に第1コア部64aと保持部64bとの境界によるバリが生じてもレンズ10をレンズホルダ等に取り付ける際に、バリをホルダ等と段差構造b4との間に形成される空間に収めることができる。これにより、レンズ10をホルダ等に精度良く取り付けることができる。
【0077】
〔第5実施形態〕
以下、第5実施形態に係る光学素子の製造方法について説明する。なお、第5実施形態に係る光学素子の製造方法は、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。
【0078】
図14に示すように、第1金型41は、第1コア部64aと保持部64bとに分割されていない構造となっている。つまり、第1金型41は、第1実施形態で説明した第1コア部64aと保持部64bとを一体化した金型部64dを有しており、金型部64dによってレンズ10の第1光学面OS1と第1フランジ面12a等を成形する。
【0079】
なお、第5実施形態において、図15に示すように、フランジ部12の第1フランジ面12a側の外縁、すなわち凹部u1の側面にテーパTPが設けられていることがより好ましい。第1金型41には、金型部64dの第3転写面S3の外側にテーパTPを形成するための傾斜転写面S26が設けられている。
【0080】
第1金型41にテーパTPを設けることにより、レンズ10が第1金型41から抜けやすくなり、型開き時にレンズ10を可動側の第2金型42に残しやすくすることができる。
【0081】
〔第6実施形態〕
以下、第6実施形態に係る光学素子の製造方法について説明する。なお、第6実施形態に係る光学素子の製造方法は、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。
【0082】
図16に示すように、レンズ10のフランジ部12のうち第1金型41によって形成される部分厚さt1がt1=0となっている。すなわち、レンズ10のフランジ厚さTが、フランジ部12のうち第2金型42によって形成される部分厚さt2と等しくなっている。これにより、第1転写面S1からエアがより抜けやすくなる。また、レンズ10が第1金型41から抜けやすくなるため、型開き時にレンズ10を可動側の第2金型42に残しやすくすることができる。
【0083】
以上、実施形態に即して本発明を説明したが本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば第2金型42を固定し、第1金型41を可動とすることで型閉じ工程を行うことができる。この場合、レンズ10が残った第2金型42側にレンズ10の突き出し機構等を設ける。
【0084】
また、第1金型41と第2金型42とを水平に配置する必要はなく、第1金型41と第2金型42とを上下に配置する竪型の成形金型とすることもできる。
【0085】
上記実施形態では、レンズ10が光ピックアップ用の対物レンズとしたが、同様の形状を有し中心肉厚が大きな小型のレンズについても、本実施形態と同様の手法で製造することにより、光学面の変形や傷を低減してすることができ、要求精度が高い場合に対応することができる。
【0086】
上記実施形態では、コア部64aの戻し力をバネによって与えているが、バネ以外の手段でコア部64aを戻すこともできる。
【0087】
上記実施形態において、レンズ10の外周側面SSが円筒面であるとしたが、外周側面SSはレンズ光軸OAに対称な形状で無くてもよい。すなわち、外周側面SSは略角柱面であってもよいし、円筒面と角柱面を組み合せた面で有ってもよい。また、外周側面SSに僅かなテーパを形成することができ、保持部74bの第5転写面S5にも僅かなテーパを形成することができる。
【0088】
上記実施形態において、レンズ10の光学面は、光学面に微細形状FS等を設けずに、平滑なものであってもよい。
【0089】
上記実施形態において、第1及び第2金型41,42の型締め後、真空引きを行ったが(ステップS13)、型空間CV内に溶融樹脂が確実に充填され、転写精度が維持されれば、真空引きを行わなくてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光情報記録媒体への情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置に組み込まれ、開口数が0.75以上の光学素子のうち第1光学面を成形するための第1の金型と、前記光学素子のうち第2光学面を成形するための第2の金型とを有する射出成型装置を用いた光学素子の製造方法であって、
前記第2光学面は、前記第1光学面よりも曲率が小さく、
前記第1の金型と前記第2の金型とで形成する型空間及び流路空間に溶融樹脂を射出して前記光学素子及びランナー部を成形する成形工程と、
前記第2の金型に前記光学素子を残すように、前記第1の金型と前記第2の金型とを相対的に移動させて型開きする型開き工程と、
前記第2の金型に設けたコア部を、前記コア部を周囲から保持する保持部に対して前記第1の金型側に相対的に移動させて、前記光学素子を前記第1の金型側へ突き出し、前記第2の金型に設けた突出部材を前記第1の金型側に移動させて、前記ランナー部を前記第1の金型側へ突き出す突き出し工程と、
を備えることを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記突き出し工程において、前記コア部で前記光学素子を前記第1の金型側へ突き出すタイミングと、前記突出部材で前記ランナー部を前記第1の金型側へ突き出すタイミングが異なることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項3】
前記成形工程は、複数の前記光学素子及び複数の前記ランナー部を成形することを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項4】
前記成形工程前に、前記型空間内を真空引きすることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項5】
前記光学素子は、前記第1光学面と前記第2光学面とを有する光学機能部と、前記光学機能部の周囲に配置されるフランジ部とを有するレンズであり、
前記光学素子は、前記フランジ部の外周縁に前記成形工程において形成されるゲート部を有し、
前記レンズのレンズ光軸に垂直な方向のレンズ外径をDとし、前記フランジ部の前記レンズ光軸に平行な方向のフランジ厚さをTとし、前記ゲート部の前記レンズ光軸に平行な方向のゲート厚さをHとし、前記ゲート部の前記レンズ光軸に垂直な方向のゲート長さをLとし、前記ゲート部の前記レンズ光軸に垂直な方向のゲート幅をWとしたときに、以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
0.05D≦W≦0.4D
0.5T≦H≦T
0.1(mm)≦L≦2.0(mm)
【請求項6】
前記フランジ部のうち第1の金型によって形成される部分厚さをt1としたきに、以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項5に記載の光学素子の製造方法。
0≦t1<0.5T
【請求項7】
前記レンズの前記フランジ部のうち、前記第1の金型側の第1フランジ外径をd1とし、前記第2の金型側の第2フランジ外径をd2としたときに、以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項5に記載の光学素子の製造方法。
d1<d2
【請求項8】
前記第1の金型と前記第2の金型の当接面であるパーティング面は、前記フランジ部の前記レンズ光軸に平行な方向のフランジ厚さの中心よりも、前記レンズ光軸に平行な方向において第1の金型側に位置していることを特徴とする請求項5に記載の光学素子の製造方法。
【請求項9】
前記第1の金型は、コア部と、前記コア部を保持する保持部とを有し、
前記第1の金型の前記コア部によって、前記光学機能部の前記第1光学面と、前記フランジ部のうち前記第1光学面側に設けられる第1フランジ面の少なくとも一部を形成し、
前記第1の金型の前記コア部の前記第2の金型に対向する先端部の外周部分は、前記第1光学面と前記第1フランジ面との間に環状の凹部を形成するための環状の凸部を有することを特徴とする請求項5に記載の光学素子の製造方法。
【請求項10】
前記光学素子は、前記第1光学面に微細形状を有することを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項11】
前記光学素子は、前記光学素子の軸上レンズ厚をd(mm)とし、500nm以下の波長の光束における前記光学素子の焦点距離をf(mm)としたときに、0.8≦d/f≦2.0であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項12】
前記光学素子は、光ピックアップ装置用の対物レンズであることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項13】
前記光学素子は、BD、DVD及びCDの3種類の光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置用の対物レンズであることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項14】
前記突き出し工程後に、前記成形工程によって成形された成形品のうち前記光学素子を除いた部分を把持し、前記光学素子を前記第2の金型から離間させることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載の光学素子の製造方法で製造したことを特徴とする光学素子。
【請求項1】
光情報記録媒体への情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置に組み込まれ、開口数が0.75以上の光学素子のうち第1光学面を成形するための第1の金型と、前記光学素子のうち第2光学面を成形するための第2の金型とを有する射出成型装置を用いた光学素子の製造方法であって、
前記第2光学面は、前記第1光学面よりも曲率が小さく、
前記第1の金型と前記第2の金型とで形成する型空間及び流路空間に溶融樹脂を射出して前記光学素子及びランナー部を成形する成形工程と、
前記第2の金型に前記光学素子を残すように、前記第1の金型と前記第2の金型とを相対的に移動させて型開きする型開き工程と、
前記第2の金型に設けたコア部を、前記コア部を周囲から保持する保持部に対して前記第1の金型側に相対的に移動させて、前記光学素子を前記第1の金型側へ突き出し、前記第2の金型に設けた突出部材を前記第1の金型側に移動させて、前記ランナー部を前記第1の金型側へ突き出す突き出し工程と、
を備えることを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記突き出し工程において、前記コア部で前記光学素子を前記第1の金型側へ突き出すタイミングと、前記突出部材で前記ランナー部を前記第1の金型側へ突き出すタイミングが異なることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項3】
前記成形工程は、複数の前記光学素子及び複数の前記ランナー部を成形することを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項4】
前記成形工程前に、前記型空間内を真空引きすることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項5】
前記光学素子は、前記第1光学面と前記第2光学面とを有する光学機能部と、前記光学機能部の周囲に配置されるフランジ部とを有するレンズであり、
前記光学素子は、前記フランジ部の外周縁に前記成形工程において形成されるゲート部を有し、
前記レンズのレンズ光軸に垂直な方向のレンズ外径をDとし、前記フランジ部の前記レンズ光軸に平行な方向のフランジ厚さをTとし、前記ゲート部の前記レンズ光軸に平行な方向のゲート厚さをHとし、前記ゲート部の前記レンズ光軸に垂直な方向のゲート長さをLとし、前記ゲート部の前記レンズ光軸に垂直な方向のゲート幅をWとしたときに、以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
0.05D≦W≦0.4D
0.5T≦H≦T
0.1(mm)≦L≦2.0(mm)
【請求項6】
前記フランジ部のうち第1の金型によって形成される部分厚さをt1としたきに、以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項5に記載の光学素子の製造方法。
0≦t1<0.5T
【請求項7】
前記レンズの前記フランジ部のうち、前記第1の金型側の第1フランジ外径をd1とし、前記第2の金型側の第2フランジ外径をd2としたときに、以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項5に記載の光学素子の製造方法。
d1<d2
【請求項8】
前記第1の金型と前記第2の金型の当接面であるパーティング面は、前記フランジ部の前記レンズ光軸に平行な方向のフランジ厚さの中心よりも、前記レンズ光軸に平行な方向において第1の金型側に位置していることを特徴とする請求項5に記載の光学素子の製造方法。
【請求項9】
前記第1の金型は、コア部と、前記コア部を保持する保持部とを有し、
前記第1の金型の前記コア部によって、前記光学機能部の前記第1光学面と、前記フランジ部のうち前記第1光学面側に設けられる第1フランジ面の少なくとも一部を形成し、
前記第1の金型の前記コア部の前記第2の金型に対向する先端部の外周部分は、前記第1光学面と前記第1フランジ面との間に環状の凹部を形成するための環状の凸部を有することを特徴とする請求項5に記載の光学素子の製造方法。
【請求項10】
前記光学素子は、前記第1光学面に微細形状を有することを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項11】
前記光学素子は、前記光学素子の軸上レンズ厚をd(mm)とし、500nm以下の波長の光束における前記光学素子の焦点距離をf(mm)としたときに、0.8≦d/f≦2.0であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項12】
前記光学素子は、光ピックアップ装置用の対物レンズであることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項13】
前記光学素子は、BD、DVD及びCDの3種類の光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置用の対物レンズであることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項14】
前記突き出し工程後に、前記成形工程によって成形された成形品のうち前記光学素子を除いた部分を把持し、前記光学素子を前記第2の金型から離間させることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載の光学素子の製造方法で製造したことを特徴とする光学素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−37758(P2013−37758A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−204160(P2012−204160)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2012−537040(P2012−537040)の分割
【原出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2012−537040(P2012−537040)の分割
【原出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】
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