説明

光学部材用光硬化性樹脂組成物、接着剤、及び、タッチパネル

【課題】基材との接着性及び硬化性に優れ、かつ、硬化物の透明性、及び、柔軟性に優れる光学部材用接着剤を得ることができる光学部材用光硬化性樹脂組成物を提供する。また、該光学部材用光硬化性樹脂組成物を用いてなる接着剤及びタッチパネルを提供する。
【解決手段】多価フェノール類と多価ビニルエーテル類とをアセタール化反応させて得られる変性多価フェノール類をグリシジルエーテル化して得られる柔軟性カチオン重合性化合物、シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂、オキセタン化合物、及び、カチオン重合開始剤を含有する光学部材用光硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材との接着性及び硬化性に優れ、かつ、硬化物の透明性、及び、柔軟性に優れる光学部材用接着剤を得ることができる光学部材用光硬化性樹脂組成物に関する。また、本発明は、該光学部材用光硬化性樹脂組成物を用いてなる接着剤及びタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ表面にタッチパネルの機能を設けた入力装置が広く利用されている。このタッチパネルには、保護フィルム、反射防止フィルム、ITO蒸着樹脂フィルム等が使用されている。
【0003】
従来、タッチパネルに使用される種々のフィルムは、接着テープにより被着体に貼着されていたが、貼り合わせる際に気泡や異物が入りやすいという問題があった。特許文献1〜3には、接着テープに代わる塗布型の接着剤が開示されている。しかしながら、特許文献1〜3に開示されている接着剤は、PET等からなるプラスチック基材との接着力が不充分であった。
【0004】
特許文献4には、接着力が強く、更に、硬化物の柔軟性や靱性にも優れたエポキシ樹脂組成物が開示されている。しかしながら、特許文献4に開示されているエポキシ樹脂組成物を用いてもPET等からなるプラスチック基材との接着力が不充分であり、硬化性にも劣っていた。また、特許文献4に開示されているエポキシ樹脂組成物は黄色く色づいているため、透明性を必要とする光学部材用の接着剤には不向きであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開03/087187号パンフレット
【特許文献2】特開2007−314804号公報
【特許文献3】特開2008−239756号公報
【特許文献4】特開2005−187609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基材との接着性及び硬化性に優れ、かつ、硬化物の透明性、及び、柔軟性に優れる光学部材用接着剤を得ることができる光学部材用光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該光学部材用光硬化性樹脂組成物を用いてなる接着剤及びタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、多価フェノール類と多価ビニルエーテル類とをアセタール化反応させて得られる変性多価フェノール類をグリシジルエーテル化して得られる柔軟性カチオン重合性化合物、シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂、オキセタン化合物、及び、カチオン重合開始剤を含有する光学部材用光硬化性樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、多価フェノール類と多価ビニルエーテル類とをアセタール化反応させて得られる変性多価フェノール類をグリシジルエーテル化して得られる柔軟性カチオン重合性化合物に加え、シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂、及び、オキセタン化合物を光学部材用光硬化性樹脂組成物に配合することにより、基材との接着性及び硬化性に優れ、かつ、硬化物の透明性、及び、柔軟性に優れる光学部材用接着剤を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物は、多価フェノール類と多価ビニルエーテル類とをアセタール化反応させて得られる変性多価フェノール類をグリシジルエーテル化して得られる柔軟性カチオン重合性化合物を含有する。
【0010】
上記柔軟性カチオン重合性化合物は、上記多価フェノール類中の芳香族性水酸基と上記多価ビニルエーテル類中のビニルエーテル基を付加反応させて、多価フェノール類をアセタール基によって分子鎖延長し、得られる変性多価フェノール類中の水酸基をグリシジルエーテル化してなる化学構造を有している。
上記水酸基とビニルエーテル基との反応は、下記化学反応式(1)で表され、アセタール基を生成する。
【0011】
【化1】

【0012】
上記多価フェノール類は、1分子中に2以上の芳香族性水酸基を有する芳香族系化合物であれば特に限定されず、例えば、ジヒドロキシベンゼン類、ジヒドロキシナフタレン類、ビスフェノール類、ビスナフトール類、フェノール類(ナフトール類)/アルデヒド類重縮合物類、フェノール類(ナフトール類)/ジエン類重付加物類、フェノール類/アラルキル類重縮合物類等が挙げられる。
上記ジヒドロキシベンゼン類は特に限定されず、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、及び、これらの置換基含有体等が挙げられる。
上記ジヒドロキシナフタレン類は特に限定されず、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、及び、これらの置換基含有体等が挙げられる。
上記ビスフェノール類は特に限定されず、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(ビスフェノールAP)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)、及び、これらの置換基含有体等が挙げられる。
上記ビスナフトール類は特に限定されず、例えば、ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)プロパン等が挙げられる。
上記フェノール類(ナフトール類)/アルデヒド類重縮合物類は特に限定されず、例えば、フェノール/ホルムアルデヒド重縮合物、オルソクレゾール/ホルムアルデヒド重縮合物、1−ナフトール/ホルムアルデヒド重縮合物、2−ナフトール/ホルムアルデヒド重縮合物、フェノール/アセトアルデヒド重縮合物、オルソクレゾール/アセトアルデヒド重縮合物、1−ナフトール/アセトアルデヒド重縮合物、2−ナフトール/アセトアルデヒド重縮合物、フェノール/サリチルアルデヒド重縮合物、オルソクレゾール/サリチルアルデヒド重縮合物、1−ナフトール/サリチルアルデヒド重縮合物、2−ナフトール/サリチルアルデヒド重縮合物、及び、これらの置換基含有体等が挙げられる。
上記フェノール類(ナフトール類)/ジエン類重付加物類は特に限定されず、例えば、フェノール/ジシクロペンタジエン重付加物、フェノール/テトラヒドロインデン重付加物、フェノール/4−ビニルシクロヘキセン重付加物、フェノール/5−ビニルノボルナ−2−エン重付加物、フェノール/α−ピネン重付加物、フェノール/β−ピネン重付加物、フェノール/リモネン重付加物、オルソクレゾール/ジシクロペンタジエン重付加物、オルソクレゾール/テトラヒドロインデン重付加物、オルソクレゾール/4−ビニルシクロヘキセン重付加物、オルソクレゾール/5−ビニルノボルナ−2−エン重付加物、オルソクレゾール/α−ピネン重付加物、1−ナフトール/ジシクロペンタジエン重付加物、1−ナフトール/4−ビニルシクロヘキセン重付加物、1−ナフトール/5−ビニルノルボルナジエン重付加物、1−ナフトール/α−ピネン重付加物、1−ナフトール/β−ピネン重付加物、1−ナフトール/リモネン重付加物、オルソクレゾール/β−ピネン重付加物、オルソクレゾール/リモネン重付加物、及び、これらの置換基含有体等が挙げられる。
上記フェノール類/アラルキル類重縮合物類は特に限定されず、例えば、フェノール/p−キシレンジクロライド重縮合物、1−ナフトール/p−キシレンジクロライド重縮合物、2−ナフトール/p−キシレンジクロライド重縮合物、フェノール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物、オルトクレゾール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物、1−ナフトール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物、2−ナフトール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物、及び、これらの置換基含有体等が挙げられる。
また、これらの置換基含有体における置換基は特に限定されず、例えば、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0013】
これらの多価フェノール類のなかでも、ビニルエーテル変性率を高めても液状の低粘度エポキシ樹脂が得られることから、2価フェノール類が好ましい。上記2価フェノール類のなかでも、靭性及び耐湿信頼性に優れる硬化物が得られることから、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類が好ましい。
【0014】
上記多価ビニルエーテル類は、1分子中に2以上のビニルエーテル基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリオキシアルキレン骨格を有するジビニルエーテル類、アルキレン骨格を有するジビニルエーテル類、シクロアルカン骨格を有するジビニルエーテル類、3価ビニルエーテル類、4価ビニルエーテル類、5価以上のビニルエーテル類等が挙げられる。
上記ポリオキシアルキレン骨格を有するジビニルエーテル類は特に限定されず、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレンレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレンレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ポリブチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
上記アルキレン骨格を有するジビニルエーテル類は特に限定されず、例えば、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,9−ノナンジオールジビニルエーテル、1,10−デカンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
上記シクロアルカン骨格を有するジビニルエーテル類は特に限定されず、例えば、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリシクロデカンジオールジビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジオールジビニルエーテル等が挙げられる。
上記3価ビニルエーテル類は特に限定されず、例えば、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル等が挙げられる。
上記4価ビニルエーテル類は特に限定されず、例えば、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ペンタエリスリトールエトキシテトラビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル等が挙げられる。
上記5価以上のビニルエーテル類は特に限定されず、例えば、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等が挙げられる。
その他の上記多価ビニルエーテル類としては、ビスフェノールAジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールFジビニルエーテル、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールFジビニルエーテル等が挙げられる。
【0015】
上記多価ビニルエーテル類のなかでも、ビニルエーテル変性率を高めても低粘度の液状エポキシ樹脂が得られることから、ジビニルエーテル類が好ましい。上記ジビニルエーテル類は、得られる柔軟性カチオン重合性化合物の特性を考慮して適宜選択され、低粘度、柔軟性、靭性等を所望するならば、ポリオキシアルキレン骨格を含有するジビニルエーテル類が好ましく、優れた耐湿信頼性を所望するならば、シクロアルカン骨格を含有するジビニルエーテル類が好ましい。
【0016】
上記多価フェノール類と上記多価ビニルエーテル類とをアセタール化反応させることにより、上記変性多価フェノール類が得られる。
【0017】
上記アセタール化反応を行う方法は特に限定されず、例えば、上記多価フェノール類と上記多価ビニルエーテル類とを仕込み、撹拌混合しながら加熱する方法等が挙げられる。上記アセタール化反応を行う際には、必要に応じて有機溶媒や触媒を使用してもよい。
上記有機溶媒は特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族性有機溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶媒等が挙げられ、用いる原料や生成物の溶解度等の性状や反応条件や経済性等を考慮して適宜選択される。上記有機溶媒の使用量としては、上記多価フェノール類と上記多価ビニルエーテル類との合計重量に対して5〜500重量%の範囲であることが好ましい。
【0018】
上記触媒は、水酸基とビニルエーテル基との反応に用いられる触媒であれば特に限定されず、例えば、無機酸、有機酸、ルイス酸等が挙げられる。
上記無機酸は特に限定されず、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。
上記有機酸は特に限定されず、例えば、酸性リン酸エステル類、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、キシレンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、シュウ酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。
上記ルイス酸は特に限定されず、例えば、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化スズ、塩化ガリウム、塩化チタン、臭化アルミニウム、臭化ガリウム、三フッ化ホウ素エーテル錯体、三フッ化ホウ素フェノール錯体等が挙げられる。
上記触媒の配合量は特に限定されないが、原料重量に対して0.001〜1重量%の範囲で用いることができる。但し、触媒添加系においては、芳香環に対するビニル基の核付加反応を起こさないように、種類、添加量、及び、反応条件を適宜選択する必要がある。
【0019】
上記芳香族性水酸基と上記ビニルエーテル基との反応条件としては、通常−50℃〜200℃、好ましくは0℃〜150℃の温度で、0.5〜30時間程度撹拌すればよい。上記芳香族性水酸基と上記ビニルエーテル基との反応の進行程度は、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー等を用いて、原料の残存量を測定することによって追跡できる。また、有機溶媒を使用した場合には、蒸留等の操作を行って使用した有機溶媒を除去し、触媒を使用した場合には、必要によって失活剤等で失活させて、水洗や濾過操作によって除去する。但し、次工程のグリシジルエーテル化反応で悪影響がない有機溶媒や触媒(失活触媒残含む)の場合は、特に精製しなくてもよい。
【0020】
上記反応における多価フェノール類と多価ビニルエーテル類との反応比率は、反応生成物1分子中に1以上の芳香族性水酸基が残れば特に限定されず、原料の多価フェノール類と多価ビニルエーテル類との種類と組み合わせや、得られる変性多価フェノール類の所望のビニルエーテル変性率、分子量、水酸基当量等の物性値、及び、反応条件に因るアセタール転化率等に応じて決定すればよい。例えば、ビニルエーテル変性に因る柔軟性、靭性、耐湿信頼性等の効果を際だって高めたい場合は、多価ビニルエーテル類の量を増加させればよい。具体的には、多価フェノール類が、多価ビニルエーテル類の有するビニルエーテル基量に対して、モル比で1〜4倍の芳香族性水酸基を有することが好ましい。
【0021】
上記柔軟性カチオン重合性化合物のエポキシ当量は特に限定されないが、200〜2000g/eq.の範囲であることが、粘度、硬化性、靭性、柔軟性、耐湿信頼性、高温放置信頼性等に優れることから好ましい。
【0022】
上記柔軟性カチオン重合性化合物のうち、市販されているものとしては、例えば、EPICLON EXA−4850−150、EPICLON EXA−4850−1000(いずれも、DIC社製)等が挙げられる。
【0023】
本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物中における上記柔軟性カチオン重合性化合物の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は5重量%、好ましい上限は60重量%である。上記柔軟性カチオン重合性化合物の含有量が5重量%未満であると、得られる光学部材用光硬化性樹脂組成物を用いた接着剤の接着力が不充分となったり、硬化物が柔軟性や靱性に劣るものとなったりすることがある。上記柔軟性カチオン重合性化合物の含有量が60重量%を超えると、光学部材用光硬化性樹脂組成物が黄色く色付いたり、硬化性に劣るものとなったりすることがある。上記柔軟性カチオン重合性化合物の含有量のより好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は40重量%である。
【0024】
本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物は、シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂を含有する。上記シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂を含有させることにより、得られる光学部材用光硬化性樹脂組成物の硬化性及び透明性を向上させることができる。
【0025】
上記シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂は構造中又は繰り返し単位内に1つ以上のシクロアルカン骨格を含有していれば特に限定されないが、繰り返し単位内にシクロアルカン骨格を有する樹脂であることが好ましい。繰り返し単位内にシクロアルカン骨格を有する樹脂である場合、繰り返し単以内にシクロアルカン骨格を1つだけ有する樹脂であってもよく、2以上有する樹脂であってもよい。なかでも、下記一般式(2)、(3)、又は、(4)からなる群より選択される少なくとも1の構造を有するエポキシ樹脂であることが好適である。
【0026】
【化2】

【0027】
式(2)中、nは0〜20の整数を表す。R及びRは、水素、又は、直鎖状若しくは分枝鎖状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、R及びRは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0028】
【化3】

【0029】
式(3)中、nは0〜20の整数を表す。R〜R10は、水素、又は、直鎖状若しくは分枝鎖状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、R〜R10はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0030】
【化4】

【0031】
式(4)中、nは0〜20の整数を表す。
【0032】
上記一般式(2)、(3)及び(4)において、nは1以上であることが好ましい。上記nを1以上とすることにより、上記nが0の場合に比べて本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物を用いてなる光学部材用接着剤の着色防止効果をより高くすることができる。なお、上記nが0の場合には、後述する水酸基を有する脂肪族炭化水素化合物を上記nが1の場合よりも多量に配合することにより、本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物を用いてなる光学部材用接着剤の透明性をより高くすることができる。上記nが20を超えると、粘度が高くなりすぎたり、他の配合物との相溶性が悪くなったりすることがある。
【0033】
また、上記一般式(2)で表される化合物の中でも、R及びRは、水素、メチル基、又は、エチル基であることがより好ましい。上記R及びRが、水素、メチル基、又は、エチル基であることにより、本発明の光学部材用接着剤は、優れた耐光性と耐湿性とを兼ね備えたものとなる。なかでも、上記R及びRはメチル基であることが特に好ましい。
【0034】
上記シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
上記シクロアルカン骨格のうち市販されているものとしては、例えば、jER YX8040、jER YX8000、jER YL6753、jER YL7217(以上、いずれもジャパンエポキシレジン社製)、EPICLON EXA−830CRP、EPICLON EXA−830LVP(以上、いずれもDIC社製)等が挙げられる。
【0036】
本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物中における上記シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は20重量%、好ましい上限は80重量%である。上記シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂の含有量が20重量%未満であると、得られる光学部材用光硬化性樹脂組成物が透明性や硬化性に劣るものとなることがある。上記シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂の含有量が80重量%を超えると、上記柔軟性カチオン重合性化合物の含有量が少なくなり、得られる光学部材用光硬化性樹脂組成物が柔軟性や靱性に劣るものとなることがある。上記シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂の含有量のより好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は70重量%である。
【0037】
本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物は、オキセタン化合物を含有する。上記オキセタン化合物を含有させることにより、得られる光学部材用光硬化性樹脂組成物の接着性を向上させることができる。
【0038】
上記オキセタン化合物は特に限定されず、例えば、フェノキシメチルオキセタン、3,3−ビス(メトキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン等が挙げられる。
これらのオキセタン化合物は単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0039】
本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物中における上記オキセタン化合物の含有量は特に限定されないが、上記柔軟性カチオン重合性化合物に対して、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は、40重量%である。上記オキセタン化合物の含有量が10重量%未満であると、得られる光学部材用光硬化性樹脂組成物が接着性に劣るものとなることがある。上記オキセタン化合物の含有量が40重量%を超えると、上記柔軟性カチオン重合性化合物の含有量が少なくなり、得られる光学部材用光硬化性樹脂組成物が接着性に劣るものとなったり、硬化物が柔軟性や靱性に劣るものとなったりすることがある。上記オキセタン化合物の含有量のより好ましい下限は20重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0040】
本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物は、カチオン重合開始剤を含有する。
上記カチオン重合開始剤は、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生型であってもよいし、非イオン性光酸発生型であってもよい。
【0041】
上記カチオン重合開始剤は特に限定されないが、下記一般式(5)で表されるオニウム塩が好適である。上記カチオン重合開始剤として下記一般式(5)で表されるオニウム塩を用い、かつ、増感剤として後述する一般式(10)で表されるベンゾフェノン誘導体を用いることにより、得られる光学部材用光硬化性樹脂組成物の光や熱による着色を抑制することができる。
【0042】
【化5】

【0043】
式(5)中、R11及びR12は、水素、炭素数1〜20の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、又は、炭素数1〜20のカルボン酸アルキルエステル基を表す。上記R11及びR12は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
式(5)中、Xは、PF、AsF、BF、又は、下記式(6)で表されるボロン酸を表す。
【0044】
【化6】

【0045】
なかでも、上記カチオン重合開始剤は、得られる光学部材用光硬化性樹脂組成物を用いてなる接着剤が透明性に優れ、液晶パネルの電極との界面で電極の酸化が発生しにくく、耐久性に優れるものとなるため、上記式(6)で表される嵩高いボロン酸を対アニオンとする塩からなるものが好適である。
【0046】
上記カチオン重合開始剤の含有量は特に限定されないが、上記柔軟性カチオン重合性化合物、上記シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂、及び、上記オキセタン化合物の含有量の合計100重量部に対して、好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記カチオン重合開始剤の含有量が0.1重量部未満であると、光カチオン重合が充分に進行しなかったり、得られる光学部材用光硬化性樹脂組成物の硬化反応が遅くなりすぎたりすることがある。上記カチオン重合開始剤の含有量が10重量部を超えると、得られる光学部材用光硬化性樹脂組成物の硬化反応が速くなりすぎて、作業性が低下したり、得られる光学部材用光硬化性樹脂組成物が不均一な硬化物となったりすることがある。上記カチオン重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0047】
本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物は、更に、高分子側鎖型エポキシ樹脂及び/又は高分子側鎖型オキセタン樹脂を含有することが好ましい。
本明細書において上記高分子側鎖型エポキシ樹脂又は上記高分子側鎖型オキセタン樹脂とは、側鎖にエポキシ基又はオキセタン環を有し、かつ、容易にエポキシ樹脂に溶ける硬化性樹脂を表す。
【0048】
上記高分子側鎖型エポキシ樹脂は、具体的には例えば、下記一般式(7)で表される構造を有する樹脂が挙げられる。
【0049】
【化7】

【0050】
式(7)中、R13はフェニル基又は(メタ)アクリル基を表しnは1〜20の整数を表す。
なお、本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0051】
上記高分子側鎖型エポキシ樹脂又は上記高分子側鎖型オキセタン樹脂のうち、市販されているものとしては、例えば、マープルーフ G−0250S、マープルーフ G−0150M、マープルーフ G−2050M等が挙げられる。
【0052】
本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物は、硬化遅延剤を含有することが好ましい。上記硬化遅延剤を含有することにより、得られる光学部材用光硬化性樹脂組成物を用いてなる接着剤はポッドライフが長くなり、塗工性が向上する。また、いったん光を照射してから接着や封止を行うことができることから、有機EL素子等の光により劣化する可能性のある部材の接着や封止を行うことも可能となる。
【0053】
上記硬化遅延剤は特に限定されず、例えば、ポリエーテル化合物等が挙げられる。
上記ポリエーテル化合物は特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、クラウンエーテル化合物等が挙げられる。なかでも、クラウンエーテル化合物が好適である。
【0054】
上記クラウンエーテル化合物は特に限定されず、例えば、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、24−クラウン−8、及び、下記一般式(8)で表される構造を有する化合物等が挙げられる。
【0055】
【化8】

【0056】
式(8)中、R14〜R25は、少なくとも1つが炭素数1〜20のアルキル基を表す。また、上記アルキル基は、炭素数1〜20の直鎖状又は分枝状のアルコキシル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、及び、炭素数1〜20のカルボン酸アルキルエステル基からなる群より選択される1以上の官能基で置換されていてもよく、更に、隣接するR及びRn+1(但し、nは、14〜24の偶数を表す)は、共同して環状アルキル骨格を形成していてもよい。
【0057】
上記一般式(8)で表される構造を有する硬化遅延剤のなかでも、少なくとも1つのシクロヘキシル基を有するものが好適である。上記シクロヘキシル基を有することにより、クラウンエーテルの骨格が安定し、遅延効果が高まる。
上記シクロヘキシル基を有する上記一般式(8)で表される構造を有する硬化遅延剤としては、具体的には例えば、下記化学式(9)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0058】
【化9】

【0059】
上記化学式(9)で表される構造を有する化合物は、18−クラウン−6−エーテル分子の中央を通る線に対して線対称となる位置に2個のシクロヘキシル基を有するため、18−クラウン−6−エーテル分子の骨格に歪み等を生じさせることなく遅延効果が高くなると考えられる。
【0060】
上記硬化遅延剤の含有量は特に限定されないが、上記柔軟性カチオン重合性化合物、上記シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂、及び、上記オキセタン化合物の含有量の合計100重量部に対して、好ましい下限は0.05重量部、好ましい上限は5.0重量部である。上記硬化遅延剤の含有量が0.05重量部未満であると、本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物に遅延効果を充分に付与できないことがある。上記硬化遅延剤の含有量が5.0重量部を超えると、本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物を硬化させる際に発生するアウトガス等が多くなり、上記アウトガス等が大きな影響を与える用途に本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物を使用しにくくなることがある。上記硬化遅延剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0061】
本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物は、下記一般式(10)で表されるベンゾフェノン誘導体からなる増感剤を含有することが好ましい。上記増感剤は、上記カチオン重合開始剤の重合開始効率をより向上させて、本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物の硬化反応をより促進させる役割を有する。
【0062】
【化10】

【0063】
式(10)中、R26及びR27は、水素、下記一般式(11−1)、又は、下記一般式(11−2)を表す。上記R26及びR27は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0064】
【化11】

【0065】
式(11−1)、(11−2)中、R28は、水素、炭素数1〜20の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、又は、炭素数1〜20のカルボン酸アルキルエステル基を表す。
【0066】
上記一般式(10)で表されるベンゾフェノン誘導体としては、具体的には例えば、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’メチルジフェニルサルファイド等が挙げられる。
【0067】
上記増感剤の含有量は特に限定されないが、上記柔軟性カチオン重合性化合物、上記シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂、及び、上記オキセタン化合物の含有量の合計100重量部に対して、好ましい下限は0.05重量部、好ましい上限は3重量部である。上記増感剤の含有量が0.05重量部未満であると、増感効果が充分に得られないことがある。上記増感剤の含有量が3重量部を超えると、吸収が大きくなりすぎて深部まで光が伝わらないことがある。上記増感剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は1重量部である。
【0068】
本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物は、更に、熱硬化剤を含有することが好ましい。
上記熱硬化剤を含有することで、本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物に熱硬化性を付与することができる。
【0069】
上記熱硬化剤は特に限定されず、例えば、ヒドラジド化合物、イミダゾール誘導体、酸無水物、ジシアンジアミド、グアニジン誘導体、変性脂肪族ポリアミン、各種アミンとエポキシ樹脂との付加生成物等が挙げられる。
上記ヒドラジド化合物は特に限定されず、例えば、1,3−ビス[ヒドラジノカルボノエチル−5−イソプロピルヒダントイン]等が挙げられる。
上記イミダゾール誘導体は特に限定されず、例えば、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、N−[2−(2−メチル−1−イミダゾリル)エチル]尿素、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、N,N’−ビス(2−メチル−1−イミダゾリルエチル)尿素、N,N’−(2−メチル−1−イミダゾリルエチル)−アジポアミド、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記酸無水物は特に限定されず、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、エチレングリコールービス(アンヒドロトリメリテート)等が挙げられる。
これらの熱硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0070】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されないが、上記柔軟性カチオン重合性化合物、上記シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂、及び、上記オキセタン化合物の含有量の合計100重量部に対して、好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は30重量部である。上記熱硬化剤の含有量が0.5重量部未満であると、得られる光学部材用光硬化性樹脂組成物に充分な熱硬化性を付与できないことがある。上記熱硬化剤の含有量が30重量部を超えると、得られる光学部材用光硬化性樹脂組成物の保存安定性が不充分となったり、得られる光学部材用光硬化性樹脂組成物の硬化物の耐湿性が悪くなったりすることがある。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は15重量部である。
【0071】
本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物は、更に、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上記シランカップリング剤は、本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物を用いてなる接着剤と液晶パネルや基板等との接着性を向上させる役割を有する。
【0072】
上記シランカップリング剤としては、具体的には例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシラン化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
上記シランカップリング剤の含有量は特に限定されないが、上記柔軟性カチオン重合性化合物、上記シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂、及び、上記オキセタン化合物の含有量の合計100重量部に対して、好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量が0.1重量部未満であると、得られる光学部材用光硬化性樹脂組成物を用いてなる接着剤の接着性を向上させる効果がほとんど得られないことがある。上記シランカップリング剤の含有量が10重量部を超えると、余剰のシランカップリング剤がブリードアウトすることがある。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0074】
本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で充填剤を含有してもよい。
上記充填剤は特に限定されず、例えば、無機フィラー、有機フィラー等が挙げられる。
上記無機フィラーは特に限定されず、例えば、タルク、石綿、シリカ、スメクタイト、ベントナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、モンモリロナイト、珪藻土、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、硫酸バリウム、石膏、珪酸カルシウム、セリサイト活性白土等が挙げられる。
上記有機フィラーは特に限定されず、例えば、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等が挙げられる。
【0075】
本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物を製造する方法は特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、柔軟性カチオン重合性化合物と、シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂と、オキセタン化合物と、カチオン重合開始剤と、必要に応じて添加する熱硬化剤、シランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法が挙げられる。
【0076】
本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物は、例えば、有機EL素子等の封止剤や、液晶表示装置の液晶パネルと透明部材との貼り合わせに用いる接着剤等の用途に好適に用いることができる。本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物を用いてなる接着剤もまた、本発明の1つである。
【0077】
本発明の接着剤は、基材に直接塗工してもよいし、別の基材に塗工した後、目的の基材に転写してもよい。塗工後の本発明の接着剤による粘着層の厚さは、材質や用途等により適宜決定されるが、一般には1〜200μm程度である。
【0078】
上記基材は特に限定されず、例えば、プラスチックフィルム、ガラス、偏光板、レンズ、プリズム等が挙げられる。
【0079】
本発明の接着剤を塗工する方法は特に限定されず、例えば、ロールコーターやダイコーター等の塗工機を用いて行うことができる。特に、均一に塗工するためには、ダイコーター等により加熱しながら基材に塗工することが好ましい。
【0080】
本発明の接着剤は、塗工後、300nm〜400nmの波長及び300〜3000mJ/cmの積算光量の光を照射することによって硬化させることができる。
本発明の接着剤は、光を照射した後硬化反応が進行し、接着ができなくなるまでの可使時間が1分以上であることが好ましい。上記可使時間が1分未満であると、基板等を貼り合わせる前に硬化が進行してしまい、充分な接着強度が得られなくなることがある。上記可使時間は、上述した水酸基を有する脂肪族炭化水素や硬化遅延剤の添加量を調整することで、適宜調整することができる。
【0081】
本発明の接着剤に光を照射するための光源は特に限定されず、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマレーザ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。これらの光源は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの光源の選択に際しては、上記カチオン重合開始剤の吸収波長に合わせて適宜選択される。
【0082】
上記光源の本発明の接着剤への照射手順としては、例えば、各種光源の同時照射、時間差をおいての逐次照射、同時照射と逐次照射との組み合わせ照射等が挙げられ、いずれの照射手段を用いてもよい。
本発明の接着剤の硬化に際しては、光カチオン重合をより促進して、硬化時間をより短縮するために、光照射と同時に加熱を行ってもよい。上記加熱を行う場合の加熱温度は特に限定されないが、50〜100℃程度であることが好ましい。
【0083】
本発明の光学部材用光硬化性樹脂組成物及び/又は本発明の接着剤を用いてなるタッチパネルもまた、本発明の一つである。
【0084】
本発明のタッチパネルを製造する方法としては、例えば、一方の基材の全面又は一部に本発明の接着剤を塗布し、光を照射した後、本発明の接着剤を介して、一方の基材に他方の基材を貼り合わせ、常温又は加熱下で硬化させる工程を有する方法を用いることができる。
具体的には、例えば、2枚のITOガラスについて、一方のITOガラスの接着面に本発明の接着剤を塗布し、紫外線を照射した後、他方のITOガラスを貼り合わせ、硬化するまで常温又は加熱下で固定する方法が挙げられる。
このようなタッチパネルの製造方法は、例えば、基材の表面に不透明電極やブラックマトリックス等が形成されていて、基材を介して本発明の接着剤に光を照射しにくい場合であっても、好適に用いることができる。更に、貼り合わせ後、硬化するまでに位置を合わせたり、加圧しながら硬化させたりすることができるため、寸法精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0085】
本発明によれば、基材との接着性及び硬化性に優れ、かつ、硬化物の透明性、及び、柔軟性に優れる光学部材用接着剤を得ることができる光学部材用光硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該光学部材用光硬化性樹脂組成物を用いてなる接着剤及びタッチパネルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0086】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0087】
(実施例1)
シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂として、高分子量の水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「jER YX8040」)20重量部及び低分子量の水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「jER YX8000」)30重量部と、オキセタン化合物として3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成社製、「アロンオキセタンOXT−101」)30重量部と、柔軟性カチオン重合性化合物(DIC社製、「EPICLON EXA−4850−150」)15重量部と、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、「CPI−210S」)1重量部と、高分子側鎖型エポキシ樹脂(日油社製、「マープルーフ G−2050M」)5重量部と、硬化遅延剤として18−クラウン−6(和光純薬工業社製)1重量部とを混合し80℃に加熱後、ホモディスパー型攪拌混合機(プライミクス社製、「ホモディスパーL型」)を用い、攪拌速度3000rpmで均一に攪拌混合して、光学部材用光硬化性樹脂組成物を作製した。
【0088】
(実施例2)
jER YX8040の配合量を30重量部とし、EPICLON EXA−4850−150の配合量を5重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、光学部材用光硬化性樹脂組成物を作製した。
【0089】
(実施例3)
jER YX8040の配合量を10重量部とし、jER YX8000の配合量を10重量部とし、アロンオキセタンOXT−101の配合量を20重量部とし、EPICLON EXA−4850−150の配合量を55重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、光学部材用光硬化性樹脂組成物を作製した。
【0090】
(実施例4)
jER YX8000の代わりにjER YL6753(ジャパンエポキシレジン社製)30重量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして、光学部材用光硬化性樹脂組成物を作製した。
【0091】
(実施例5)
jER YX8000の代わりにjER YL7217(ジャパンエポキシレジン社製)30重量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして、光学部材用光硬化性樹脂組成物を作製した。
【0092】
(実施例6)
jER YX8000を用いず、jER YL8040の配合量を50重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、光学部材用光硬化性樹脂組成物を作製した。
【0093】
(実施例7)
オキセタン化合物として、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンの代わりにジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル(東亜合成社製、「アロンオキセタンOXT−221」)30重量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして、光学部材用光硬化性樹脂組成物を作製した。
【0094】
(実施例8)
カチオン重合開始剤として、CPI−210Sの代わりにRP2074(ローディア社製)1重量部を配合し、増感剤として4−ベンゾイル−4’メチルジフェニルサルファイド0.1重量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして、光学部材用光硬化性樹脂組成物を作製した。
【0095】
(実施例9)
マープルーフ G−2050Mを用いず、EPICLON EXA−4850−150の配合量を20重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、光学部材用光硬化性樹脂組成物を作製した。
【0096】
(比較例1)
EPICLON EXA−4850−150を用いず、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンの配合量を35重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、光学部材用光硬化性樹脂組成物を作製した。
【0097】
(比較例2)
jER YX8040及びjER YX8000を用いず、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンの配合量を70重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、光学部材用光硬化性樹脂組成物を作製した。
【0098】
(比較例3)
3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン及びCPI−210Sを用いず、jER YX8040の配合量を30重量部とし、EPICLON EXA−4850−150の配合量を30重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、光学部材用光硬化性樹脂組成物を作製した。
【0099】
(比較例4)
jER YX8040、jER YX8000、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、及び、CPI−210Sを用いず、EPICLON EXA−4850−150の配合量を90重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、光学部材用光硬化性樹脂組成物を作製した。
【0100】
(評価)
実施例及び比較例で得られた光学部材用光硬化性樹脂組成物について、以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0101】
(1)粘度
実施例及び比較例で得られた光学部材用光硬化性樹脂組成物の粘度を、コーンローター式粘度計を用いて25℃、10rpmの条件で測定した。
【0102】
(2)硬化性
実施例及び比較例で得られた光学部材用光硬化性樹脂組成物をスライドガラス上に塗布し、1500mJ/cmの紫外線を照射した後、80℃で30分間保持し、硬化状態を確認した。完全に硬化していた場合を「○」、半硬化状態であった場合を「△」、全く硬化していなかった場合を「×」として評価した。
【0103】
(3)接着性
実施例及び比較例で得られた光学部材用光硬化性樹脂組成物をPETフィルムの上に塗布し、もう一枚のPETフィルムで張り合わせ、1500mJ/cmの紫外線を照射した後、80℃にて30分間保持して光学部材用光硬化性樹脂組成物を硬化させ、試験片1を作製した。得られた試験片1について、JIS K 7113に準拠した方法により引張り試験を行い、接着性を評価した。
【0104】
(4)透明性
実施例及び比較例で得られた光学部材用光硬化性樹脂組成物をスライドガラスの上に塗布し、もう一枚のスライドガラスを張り合わせ、1500mJ/cmの紫外線を照射した後、80℃にて30分間保持して光学部材用光硬化性樹脂組成物を硬化させ、試験片2を作製した。硬化後の樹脂の厚みはほぼ20μmであった。得られた試験片2を目視し、透明な場合を「○」、薄黄色であった場合を「△」、黄色く色付いて透明ではない場合を「×」として評価した。
【0105】
(5)柔軟性
実施例及び比較例で得られた光学部材用光硬化性樹脂組成物を充分に硬化させ、JIS K 7215に準拠した方法によりデュロメータD硬さを測定し、柔軟性を評価した。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によれば、基材との接着性及び硬化性に優れ、かつ、硬化物の透明性、及び、柔軟性に優れる光学部材用接着剤を得ることができる光学部材用光硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該光学部材用光硬化性樹脂組成物を用いてなる接着剤及びタッチパネルを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価フェノール類と多価ビニルエーテル類とをアセタール化反応させて得られる変性多価フェノール類をグリシジルエーテル化して得られる柔軟性カチオン重合性化合物、シクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂、オキセタン化合物、及び、カチオン重合開始剤を含有する
ことを特徴とする光学部材用光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
更に、高分子側鎖型エポキシ樹脂及び/又は高分子側鎖型オキセタン樹脂を含有することを特徴とする請求項1記載の光学部材用光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
多価フェノール類が2価フェノール類であり、かつ、多価ビニルエーテル類がジビニルエーテル類であることを特徴とする請求項1又は2記載の光学部材用光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
多価フェノール類が、多価ビニルエーテル類の有するビニルエーテル基量に対して、モル比で1〜4倍の芳香族性水酸基を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の光学部材用光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
多価ビニルエーテル類は、ポリオキシアルキレン骨格及び/又はシクロアルカン骨格を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の光学部材用光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
柔軟性カチオン重合性化合物は、エポキシ当量が200〜2000g/eq.であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の光学部材用光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の光学部材用光硬化性樹脂組成物を用いてなることを特徴とする接着剤。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5若しくは6記載の光学部材用光硬化性樹脂組成物及び/又は請求項7記載の接着剤を用いてなることを特徴とするタッチパネル。


【公開番号】特開2010−248387(P2010−248387A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100052(P2009−100052)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】