説明

光情報記録再生装置および光記録再生方法

【課題】光情報記録媒体へのホログラフィック記録多重度を上げるために参照光ビームの入射角度ピッチを小さくした場合に生じる、多重記録された各ページデータ間でのクロストークを低減し、良好な品質のページデータを再生する。
【解決手段】参照光ビーム223の光路中にその波面(等位相面)形状を互いに異なる複数の形状に逐次可変制御できる参照光ビーム波面変換装置230、231を設け、ページデータ多重記録時に参照光ビーム223の入射角度と共に、その波面(等位相面)形状を逐次変化させるようにした。これによりホログラフィック記録方式が持つ参照光ビーム角度選択特性と波面形状選択特性の両方の特性を利用でき、ページデータ間のクロストークをより効果的に低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホログラムを用いて光情報記録媒体に情報を記録し、または光情報記録媒体から情報を再生する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、例えば、特許文献1(特開2004−272268号公報)に記載の技術がある。特許文献1には、信号光束をレンズで光情報記録媒体に集光すると同時に、平行光束の参照光を照射して干渉させてホログラフィック記録を行い、さらにこの参照光の光記録媒体への入射角度を変えながら異なるページデータを重ね書きする方式が記載されている。ホログラフィック記録におけるこのようなページデータ多重記録方式は一般に角度多重方式と呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−272268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、次世代の大容量ストレージ技術として、ホログラムを利用してデジタル情報を記録するホログラフィック記録技術が大きな注目を集めている。
【0005】
ホログラフィック記録技術とは、空間光変調器により2次元的に変調されたページデータの情報を有する信号光と、参照光とを記録媒体の内部で重ね合わせ、その時に生じる干渉縞パターンによって記録媒体内に屈折率変調を生じさせることで情報を記録する技術である。
【0006】
また情報の再生時には、記録時に用いた参照光を同じ配置で記録媒体に照射すると、記録媒体中に記録されているホログラムが回折格子のように作用して回折光を生じる。この回折光が記録した信号光と位相情報を含めて同一の光として再生される。再生された信号光は、CMOSやCCDなどの光検出器を用いて2次元的に高速に検出される。
【0007】
このようにホログラフィック記録技術では、1つのホログラムに2次元的な情報を記録し、かつその2次元記録情報(ページデータ)を2次元の状態のままで再生することができる。
【0008】
さらにこのホログラフィック記録技術は、記録媒体内の同一位置に複数のページデータを多重記録できるという大きな特徴を備えており、大容量かつ高速の情報ストレージ技術として極めて有望である。
【0009】
ところで上記のような角度多重記録方式においては、角度多重記録時の参照光ビームの光情報記録媒体に対する入射角度の間隔(角度ピッチ)を小さくすることにより、ページデータの記録多重度を上げてその記録密度を高めることができる。しかしながら、上記参照光ビームの入射角度ピッチを小さくすると、多重記録された各ページデータ間でのクロストークが増大し、データ再生時に再生信号の品質が大幅に劣化するという課題がある。
【0010】
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、角度多重記録方式のホログラフィック記録において、ページデータの多重記録および再生時に生じるページデータ間のクロストークをより効果的に低減し、良好な品質のデータが再生できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、一例として、特許請求の範囲に記載の発明によって達成できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高いデータ信頼性を備えた角度多重記録方式のホログラフィック記録再生装置および光記録再生方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のホログラム情報記録再生装置の一実施例を示した概略図
【図2】本発明の参照光ビーム波面変換装置に関する第1の実施例を示した概略断面図
【図3】図2に示した参照光ビーム波面変換装置で変換される参照光ビームの波面断面形状の第1の例を示した線図
【図4】本発明の情報信号多重記録の手順を示したホログラム情報記録再生装置主要部の概略図
【図5】本発明の参照光ビーム波面変換装置に関する第2の実施例を示した概略断面図
【図6】図5に示した参照光ビーム波面変換装置における透明電極の分割パターンの一例を示した概略平面図
【図7】図5および図6に示した参照光ビーム波面変換装置で変換される参照光ビームの波面断面形状の第2の例を示した線図
【図8】図5および図6に示した参照光ビーム波面変換装置で変換される参照光ビームの波面断面形状の第3の例を示した線図
【図9】図5に示した参照光ビーム波面変換装置における透明電極の分割パターンの別の一例を示した概略平面図
【図10】図5および図9に示した参照光ビーム波面変換装置で変換される参照光ビームの波面断面形状の第3の例を示した線図
【図11】本発明に従う参照光ビーム波面変換装置の一例を示した概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、ホログラム情報記録再生装置におけるピックアップ11の光学系構成の一例を示したものである。
【0016】
レーザ光源201を出射した光ビームはコリメートレンズ202を透過し、シャッタ203に入射する。シャッタ203が開いている時は、光ビームはシャッタ203を通過した後、例えば1/2波長板などで構成される光学素子204によってP偏光とS偏光の光量比が所望の比になるように偏光方向を制御された後、偏光ビームスプリッタ205に入射し、この偏光ビームスプリッタ205によって透過光ビーム206と反射光ビーム223に分離される。
【0017】
このうち、偏光ビームスプリッタ205を透過した光ビーム206は、ビームエキスパンダ209によって光ビーム径を拡大された後、位相マスク211、リレーレンズ210、偏光ビームスプリッタ207を経由して空間光変調器208に入射し、この空間光変調器208によって情報信号を付加されて信号光ビームとなる。そしてこの信号光ビームは偏光ビームスプリッタ207を透過し、リレーレンズ212ならびに空間フィルタ213を経て対物レンズ225によって光情報記録媒体1に集光する。
【0018】
一方、偏光ビームスプリッタ205を反射した光ビーム223は参照光ビームとして働き、参照光ビーム波面変換装置230に入射する。
【0019】
この参照光ビーム波面変換装置230は、入射した参照光ビームの波面(等位相面)を所定の波面形状に変換する機能を備えた装置であり、本実施例において特徴となる構成の一つである。なお本装置の構成、機能およびそれを用いた内容等に関しては、後ほど詳しく説明する。
【0020】
参照光波面変換装置230を通過した参照光ビーム223は、次に偏光方向変換素子224に入射し、この偏光方向変換素子224によって記録時又は再生時に応じて所定の偏光方向に設定された後、ミラー214ならびにミラー215を経由してガルバノミラー216に入射する。
【0021】
このガルバノミラー216は、アクチュエータ217により高い精度で任意に角度に偏向させることができる。そこでこのガルバノミラー216の角度を所望の角度に偏向させることで、該ガルバノミラー216を反射しさらにレンズ219とレンズ220を経た参照光ビーム223を所定の入射角度で情報記録媒体1に入射させることができる。
【0022】
そして、この参照光ビーム223と前記信号光ビーム206とを、光情報記録媒体1において互いに重ね合うように入射させることで、記録媒体内に干渉縞パターンを形成させ、この干渉縞パターンを記録媒体1に書き込むことで信号光ビーム206に付加された情報信号を記録する。さらにガルバノミラー216によって光情報記録媒体1に入射する参照光ビーム223の入射角度を変化させることで、角度多重記録方式によるホログラフィック記録が可能となる。
【0023】
一方、光情報記録媒体1にホログラフィック記録された情報信号を再生する場合は、参照光ビーム223をいったん光情報記録媒体1に入射させ、さらに光情報記録媒体1を透過した光ビームをガルバノミラー221にて反射させることで、その位相共役光ビームを生成して再度光情報記録媒体1に入射させる。この時、ガルバノミラー221はアクチュエータ222によって角度を制御可能であり、情報信号再生時には前記したガルバノミラー216と連動して駆動される。このガルバノミラー221およびアクチュエータ222等からなる光学系12を位相共役光学系12と記す。
【0024】
光情報記録媒体1に入射した前記位相共役光ビームからは、該光情報記録媒体1にホログラフィック記録された所定の情報信号(ページデータ)を含んだ再生光ビームが生成され、対物レンズ225、リレーレンズ212ならびに空間フィルタ213を伝播した後、偏光ビームスプリッタ207を反射して光検出器218に入射し、この光検出器218によって前記再生光ビームに含まれる情報信号が検出される。
【0025】
ところで前記したように、一般に角度多重記録方式のホログラフィック記録再生装置では、ホログラフィック記録および再生システムが備えている参照光ビーム角度選択特性と云う光学的特徴をページデータの多重記録/再生に活用するため、参照光ビームを光情報記録媒体1に入射させる際に、その光情報記録媒体に対する入射角度を段階的に変化させながら入射させている。そして、この入射角度を振った各参照光ビームと記録光ビームとを干渉させてその干渉縞を多重に記録することで、ページデータの多重記録を実現している。
【0026】
この時、各参照光ビームは互いに入射角度が異なるものの、全て一律に平行光ビームの状態すなわちほぼフラットな波面(等位相面)になっている。これはホログラフィック記録および再生方式が、前記参照光ビームの角度選択特性のみを利用した多重記録/再生システム方式を採用していることによる。
【0027】
しかしながら、このようにホログラフィック記録および再生における参照光ビーム角度選択特性だけを利用した多重記録では、上記したようにページデータの記録密度を高める目的で参照光ビームの入射角度ピッチを小さくして記録多重度を増やしていくと、多重記録された各ページデータ間でのクロストークが大きくなりデータ再生時に再生信号の品質が急速に劣化するという課題が生じる。
【0028】
一方、ホログラフィック記録および再生システムは、上記の参照光ビーム角度選択特性以外に参照光ビームの波面(等位相面)形状に基づく選択特性と云う光学的特徴も有している。これは特定の波面(等位相面)形状を備えた参照光ビームを用いてホログラフィック記録されたページデータは、再生時においても記録時と同一の波面(等位相面)形状を備えた参照光ビームでのみ選択的に前記ページデータ情報を含んだ再生光ビームを生成すると云う特徴である。
【0029】
そこで本実施例では、この参照光ビーム波面(等位相面)形状選択特性を参照光ビーム角度選択特性と併用して活用することで、多重記録された各ページデータ間でのクロストークを低減し、結果的にホログラフィック記録おけるページデータ記録多重度を大幅に増加させることを目的とする。
【0030】
すなわち本実施例は、例えば図1に示すような角度多重記録方式のホログラム情報記録再生装置におけるピックアップ11において、偏光ビームスプリッタ205を反射した参照光ビーム223をガルバノミラー216によって段階的に異なる入射角度で情報記録媒体1に入射させると共に、該参照光ビーム223の光路中に、入射した参照光ビームの波面(等位相面)を所定の波面形状に変換する機能を備えた参照光ビーム波面変換装置230を配置し、この波面変換装置230によって、入射角度変化に同期した状態で段階的に参照光ビームの波面(等位相面)形状を変化させる。このようにして光情報記録媒体1への入射角度と波面(等位相面)形状の両方を段階的に変化させた参照光ビームと信号光ビームを干渉させることでページデータを多重記録するものである。
【0031】
なお図1に示した実施例では、参照光ビーム波面変換装置230を偏光ビームスプリッタ205と偏光方向変換素子224の間の光路中に配置しているが、本実施例はこのような配置に限定されるものではなく、偏光ビームスプリッタ205から光情報記録媒体1に至る参照光ビームの光路内であれば、どこに配置しても構わない。
【0032】
また図1の実施例においては、光情報記録媒体1とガルバノミラー221との間の光路中に前記参照光ビーム波面変換装置230と同様の波面(等位相面)形状変換機能を備えた第2の波面変換装置231を配置し、再生時にはこの波面変換装置231を往復路で通過した前記位相共役光ビームが、記録時の参照光ビームと同様の入射角度および波面(等位相面)形状で前記光情報記録媒体1に照射するように設定することで、所望のページデータを含んだ再生光ビームが、他のページデータからのクロストークが大幅に低減された状態で選択的に生成される。
【0033】
なお、図1の実施例で示したピックアップ11では、前記したように再生時には光情報記録媒体1とガルバノミラー221との間の光路中に設けた前記波面変換装置231を駆動する構成になっているが、本実施例はそのような構成に限定されるものではない。
【0034】
例えば、前記波面変換装置231を省略して、再生時においても前記参照光ビーム波面変換装置230を駆動して再生光ビームを生成する参照光ビームを所定の波面(等位相面)形状に変換させてもよい。
【0035】
ただしこの場合は、記録時に光情報記録媒体1に照射される参照光ビームと、再生時に光情報記録媒体1に照射される位相共役光ビームに光路長の違いが生じることに注意する必要がある。すなわち再生時では、いったん光情報記録媒体1を透過し、ガルバノミラー221を反射して再度光情報記録媒体1に入射する位相共役光ビームから再生光ビームが生成されるが、この位相共役光ビームは、往路の参照光ビームに対して波面(等位相面)形状が反転する上、光情報記録媒体1とガルバノミラー221間を往復する分だけ往路の参照光ビームよりも光路長が伸び、その影響で波面(等位相面)形状が僅かに歪む怖れがある。そのため再生時には、光情報記録媒体1内での前記位相共役光ビームの波面(等位相面)形状の歪を補正し、記録時における光情報記録媒体1内での参照光ビームの波面(等位相面)形状に略一致するよう参照光波面変換装置230における参照光波面変換量を制御することが望ましい。
【0036】
また当然の事ながら、ピックアップ11の光学系構成は、図1に限定されるものではない。例えば、図1では再生時に位相共役光ビームを用いる構成であるため、ホログラムの記録時と再生時の信号光は同一のリレーレンズ212、空間フィルタ213、対物レンズ225を通過し、空間光変調器208と光検出器218が光情報記録媒体1に対して同じ側に配置される構成であるが、光検出器218を光情報記録媒体1に対して空間光変調器208と反対側に配置し、位相共役光ビームの代わりに記録時と同じ参照光ビームを用いて信号を再生する構成も可能である。
【0037】
なおこのような光学系構成の場合は、記録時と再生時で同じ参照光ビーム波面変換装置230によって参照光ビームの波面(等位相面)形状を変換させることができる。しかもこの光学系構成の場合は、記録時と再生時で参照光ビームの光路が完全に一致しているので、前記の構成のように記録時と再生時での光路の相違に伴って生じる波面形状の歪みを補正する必要がないので、参照光波面変換装置230の制御が比較的容易であるという利点がある。
【0038】
次に、本実施例において特徴となる構成の一つである前記参照光ビーム波面変換装置230または231の具体的実施例について詳しく説明する。
【0039】
図2は、参照光ビーム波面変換装置230または231の第1の実施例を示した概略構成図である。本実施例では参照光ビーム波面変換装置230または231は、少なくとも2個のレンズ232および233から構成されるリレーレンズ光学系になっている。そしてその中の少なくとも1個のレンズ(図2の例ではレンズ233)には所定のスライド機構(図示せず)が接続されており、光軸に沿って所定の変位量だけ前後にスライドできるように構成されている。
【0040】
このようなリレーレンズ系において、前記のように一方のレンズを光軸に沿って所定量だけ前後にスライドさせると、そのスライド方向およびスライド量に応じてこのリレーレンズ系を出射する光ビームを弱発散光、平行光、弱収束光と順次変化させていくことができる。
【0041】
図3は、前記のように(a)弱発散光、(b)平行光、(c)弱収束光となって前記参照光ビーム波面変換装置230または231を出射した参照光ビームの波面断面図300a乃至300cを示している。図から明らかなように(a)(b)(c)各場合で、参照光ビーム波面変換装置230または231を出射した参照光ビームの波面形状が異なっていることが分かる。
【0042】
そこで例えば図4に示すように、第m番目(mは任意の整数)のページデータを記録する際、参照光ビーム223を入射角度θmで情報記録媒体1に入射させると共に、その波面(等位相面)形状を図3(a)のような断面形状を有する弱発散光波面300aとし、次に第m+1番目のページデータを記録する際は、参照光ビームの入射角度θm+1=θm+Δθとすると共に、その波面(等位相面)形状を図3(b)のような直線状の断面を有する平行光波面300bとする。
【0043】
さらに第m+2番目のページデータを記録する際は、参照光ビームの入射角度θm+2=θm+1+Δθとすると共に、その波面(等位相面)形状を図3(c)のような断面形状を有する弱収束光波面300cとし、第m+3番目のページデータを記録する際は、参照光ビームの入射角度θm+3=θm+2+Δθとすると共に、その波面形状を再び図3(a)のような断面形状を有する弱発散光波面300aに戻す。以下、上記のような入射角度の微小偏向と参照光ビーム波面形状変更を周期的に繰り返す。このように参照光ビームの入射角度偏向に合わせて波面形状の変換を周期的に行うことにより、参照光ビームの入射角度変化分Δθで隣接するページデータ同士は、その記録時参照光ビームの波面形状が異なるため、参照光ビーム角度選択特性と波面(等位相面)形状選択特性の両方の選択特性効果により、再生光ビームに漏れこむクロストークは大幅に低減される。
【0044】
しかも、前記同じ波面形状の参照光ビームとの入射角度差は、少なくとも3×Δθ以上に広がることになり、このため参照光ビームの入射角度ピッチを小さくして記録多重度を増やした場合でも、再生時には隣接ページデータからのクロストークが良好に低減された再生光ビームを生成することができる。
【実施例2】
【0045】
次に、本発明に関する第2の実施例として、液晶素子を用いた前記参照光ビーム波面変換装置について説明する。
【0046】
図5は、本実施例における参照光ビーム波面変換装置230または231の概略構成を示した断面図である。
【0047】
この装置は図中に示すように、所定の液晶分子を含む液晶層250、および該液晶層250に所定の分子配向を与えるため該液晶層250を挟む位置に形成された配向膜251および252を備え、さらに該各配向膜の外側に配置された透明電極253および254および保護層として最外部に配置されたガラス基板255及び256等から構成されている。
【0048】
そして、前記各透明電極253および254間に所定の電位差を印加すると、それに応じて当該透明電極に挟まれた部分の液晶分子の配向性が変化し、その結果入射光ビームに対する屈折率が変化する特性を利用し、当該液晶層を透過する光ビームの波面(等位相面)に所定の局所的位相差(波面歪み)を付加する機能を備えている。
【0049】
したがって、透明電極253や254の分割形状や配置パターンを所定の分割形状や配置パターンに定め、さらに該透明電極に印加する電位差を任意に制御することにより、この装置を通過した光ビームの波面(等位相面)形状を所望の形状に変換させることができる。
【0050】
例えば、透明電極253を図6のように同芯輪帯状および円盤状の複数電極253a乃至253eに分割し、分割された各透明電極に各々所定の電位差を印加することで、略平行平面状の波面(等位相面)を有する入射光ビームを、例えば図7(a)または(c)に示すような断面形状の光軸対称な波面(等位相面)の光ビームに変換できる。このような波面(等位相面)形状は、一般に球面収差と称される波面収差(図中に破線で表示)に近似的に符合している。
【0051】
一方、各透明電極に印加される電位差を全てゼロもしくは等電位にすると、この波面変換装置を通過した略平行平面状波面の光ビームは、何らの位相差(波面歪み)も付加されず、図7(b)に示すようにフラットな断面形状を持つ略平行平面状波面まま該波面変換装置を出射する。
【0052】
そこで、このような波面変換機能を備えた波面変換装置を、例えば前記実施例1と同様、本実施例のピックアップ11内の参照光ビーム波面変換装置230または231として用い、例えばm番目(mは任意の整数)、m+1番目、m+2番目、m+3番目、・・・と順次ページデータを多重記録または再生する際に、参照光ビームの入射角度θmを微小角度Δθずつ変化させると共に、その参照光ビームの波面(等位相面)形状を図7(a)乃至(c)に示すような断面形状の波面(等位相面)を有する光ビームに変換して情報記録媒体1に入射させることにより、前記実施例1と同様、隣接ページデータからのクロストークを大幅に低減させた再生光ビームを生成することができる。
【0053】
なお本実施例は前記実施例1の場合と異なり、参照光ビーム波面変換装置内に光学部品を機械的に駆動する部分が無く、所定の電極に所定の電位差を印加する電気的な制御だけで波面変換を実施できるので、波面変換の応答速度や変換精度の点で有利であり、かつ装置を小型化できるという利点も有している。
【0054】
また本実施例では、一般に球面収差と称される波面収差に近似的に符合した波面に変換する場合について説明したが、もちろん変換される波面形状はこれに限定されるものではない。例えば透明電極の分割パターンが図6と全く同様であっても、各分割電極253a乃至253eに印加される電位差の組み合わせを変えることで、図8(a)乃至(c)に示すように、実施例1で説明したリレーレンズ系を用いた場合の(a)弱発散光、(b)平行光、(c)弱収束光波面(図中に破線で表示)と近似的にほぼ同等の波面(等位相面)に変換することも可能である。
【実施例3】
【0055】
次に、本発明に関する第3の実施例を説明する。本実施例は、前記第2の実施例と同様、液晶素子を用いた波面変換装置を参照光ビーム波面変換装置230または231として用いるが、その透明電極の分割パターンが前記第2の実施例と異なる。その透明電極の分割パターンを図9に示す。
【0056】
図9に示すような透明電極の分割パターンを用い、各分割電極253a乃至253eに所定の電位差を印加することにより、例えば図10(a)または(c)に示すような断面形状の波面(等位相面)を有する光ビームに変換できる。なおこのような波面(等位相面)形状は、一般にコマ収差と称される波面収差に近似的に符合している。
【0057】
また前記第2の実施例の場合と同様、各分割電極に印加する電位差を全てゼロもしくは等電位にすると、この波面変換装置に入射した略平行平面状波面の光ビームは何の位相差(波面歪み)も印加されず、図10(b)に示すようにフラットな断面形状を持つ略平行平面状波面のまま該波面変換装置を出射する。
【0058】
以上、参照光ビーム波面変換装置230または231の実施例としていくつかの具体的な構成を示したが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0059】
例えば、実施例2および実施例3で説明した液晶素子を用いた波面変換装置を用い、分割電極を放射状に配置させて各分割電極に所定の電位差を印加すると、一般に非点収差と称される波面収差に近似的に符合した波面形状に変換できるが、このような波面変換機能を備えた装置を本発明における参照光ビーム波面変換装置230または231として用いても構わない。
【0060】
また、参照光ビーム波面変換装置230または231としては、前記したリレーレンズ系を用いた装置や液晶素子を用いた波面変換装置に限定されるものではなく、少なくとも2種類以上の互いに異なる波面(等位相面)形状を選択的に変換できる機能を備えた波面変換装置であればどのような装置でもよい。
【実施例4】
【0061】
図11は、本発明に従うピックアップ11を搭載したホログラム情報記録再生装置10の全体的な構成を示したものである。
【0062】
ホログラム情報記録再生装置10は、ピックアップ11、位相共役光学系12、媒体キュア光学系13、媒体回転角度検出用光学系14ならびに回転モータ50等を備えており、光情報記録媒体1は回転モータ50によって回転可能な構成となっている。
【0063】
また、ピックアップ11にはアクセス制御回路81、光源駆動回路82、サーボ信号生成回路83、サーボ制御回路84、信号処理回路85、信号生成回路86、シャッタ制御回路87、媒体回転モータ制御回路88、参照光波面制御回路89等の電気回路が接続されており、さらにこれら各電気回路はコントローラ90にて制御されている。
【0064】
次に、上記した各光学系のうち、既に説明したピックアップ11および位相共役光学系12を除いた各光学系および電気回路の機能を説明する。
【0065】
媒体キュア光学系13は、光情報記録媒体1のプリキュア及びポストキュアに用いる光ビームを生成する。ここでプリキュアとは、光情報記録媒体1内の所望の位置に情報を記録する際、参照光と信号光を照射する前に予め所定の光ビームを照射する前工程のことである。またポストキュアとは、光情報記録媒体1内の所望の位置に情報を記録した後、その位置に追記不可能とするために所定の光ビームを照射する後工程のことである。
【0066】
媒体回転角度検出用光学系14は、光情報記録媒体1の回転角度を検出するために用いられる。光情報記録媒体1を所定の回転角度に調整する場合は、媒体回転角度検出用光学系14によって回転角度に応じた信号を検出し、検出された信号を用いてコントローラ90によって媒体回転モータ制御回路88を介して回転モータ50を駆動し、光情報記録媒体1の回転角度を制御することができる。
【0067】
アクセス制御回路81は、ピックアップ11、位相共役光学系12、媒体キュア光学系13の位置制御に用いられる。これら光学系には光情報記録媒体1の半径方向に位置をスライドできる機構が設けられており、光情報記録媒体1の所定位置に信号光ビームおよび参照光ビームは照射されるようアクセス制御回路81を介してその位置が制御される。なお、ピックアップ11、位相共役光学系12、媒体キュア光学系13が大型でスライドするのが困難な場合は、これらを光情報記録媒体1の半径方向に位置をスライドする代わりに、光情報記録媒体1をスライドする構成でもかまわない。
【0068】
光源駆動回路82は、所定の光源駆動電流をピックアップ11、媒体キュア光学系13、媒体回転角度検出用光学系14等の各光学系内に配置された光源に供給し、各々の光源を所定の光量で発光させる機能を備えている。
【0069】
サーボ信号生成回路83は、光情報記録媒体1の傾きや位置ずれ等を検出する検出する機能を備えている。本発明のようにホログラムによって情報信号の記録や再生を行う場合は、光情報記録媒体に超高密度な情報を記録しなければならないため、光情報記録媒体の傾きや位置ずれに対する許容誤差が極めて小さくなる傾向がある。それゆえピックアップ11内に、例えば光情報記録媒体1の傾きや位置ずれ等、許容誤差が小さいずれ要因のずれ量に相当する信号を検出する機構を設け、その検出信号からサーボ信号生成回路83にて所定のサーボ制御信号を生成する。そしてこのサーボ制御信号を用いサーボ制御回路84を介してピックアップ11内のガルバノミラー等を制御し、光情報記録媒体1の傾きや位置ずれ等に伴う記録または再生性能の劣化を防ぐようになっている。
【0070】
信号処理回路85は、再生時にピックアップ11内の光検出器218で検出された信号から所定の情報信号を再生する機能を備えている。
【0071】
信号生成回路86は、記録時にピックアップ11内に配置された空間光変調器208を駆動して該空間光変調器208に入射した信号光ビームに所定の情報信号を付加させるための信号を生成する機能を備えている。
【0072】
シャッタ制御回路87は、記録時または再生時において、コントローラ90からの指令に基づき光情報記録媒体1に照射される参照光と信号光の照射時間を制御する機能を備えている。
【0073】
参照光波面制御回路89は、コントローラ90からの指令に基づき、本発明に従うピックアップ11内に配置された前記参照光ビーム波面変換装置230または231を駆動し、記録時の参照光ビームあるいは再生時の位相共役光ニームの波面形状を所定の形状に変換させる機能を備えている。
【0074】
なお、ホログラム情報記録再生装置10は、上記したような構成に限定されるものではない。例えば、上記のピックアップ11、位相共役光学系12、媒体キュア光学系13、媒体回転角度検出用光学系14等のうち、いくつかの光学系構成又は全ての光学系構成をひとつに纏めて簡素化しても一向に構わない。
【0075】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0076】
また、上記の各構成は、それらの一部又は全部が、ハードウェアで構成されても、プロセッサでプログラムが実行されることにより実現されるように構成されてもよい。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…光情報記録媒体、10…ホログラム情報記録再生装置、11…ピックアップ、201…レーザ光源、206…信号光ビーム、208…空間光変調器、218…光検出器、223…参照光ビーム、225…対物レンズ、230、231…参照光ビーム波面変換装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光情報記録再生装置において、
レーザ光源と、
該レーザ光源を出射した光ビームから信号光ビームと参照光ビームとを分離形成する光学素子と、
前記信号光ビームを変調する空間光変調器と、
該空間光変調器によって変調された前記信号光ビームと前記参照光ビームとの干渉により生じる干渉縞をホログラムとして多重記録する光情報記録媒体と、
該光情報記録媒体からの再生光ビームを検出する光検出器と、
前記参照光ビームを前記光情報記録媒体内の略同一位置に複数の入射角度で入射させる機能を備えた参照光ビーム角度制御手段と、
前記参照光ビームが通過する光路中に前記参照光ビームの等位相面形状を可変制御する機能を備えた参照光ビーム等位相面制御手段と、
を備えたことを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項2】
前記参照光ビーム等位相面制御手段は、
所定の可変制御信号に基づき、
該制御手段に入射した参照光ビームの等位相面形状を該入射参照光ビームの等位相とは異なる少なくとも1種類以上の等位相面形状に変換する機能を備えたことを特徴とする請求項1記載の光情報記録再生装置。
【請求項3】
前記参照光ビーム等位相面制御手段は、
所定の可変制御信号に基づき、
前記制御手段に入射した参照光ビームの等位相面形状を所定の曲率半径を有する略発散球面形状もしくは略収束球面形状に変換する機能を備えたことを特徴とする請求項2記載の光情報記録再生装置。
【請求項4】
前記参照光ビーム等位相面制御手段は、
所定の可変制御信号に基づき、
前記制御手段に入射した参照光ビームの等位相面を所定の略球面収差が付加された等位相面形状に変換する機能を備えたことを特徴とする請求項2記載の光情報記録再生装置。
【請求項5】
前記参照光ビーム等位相面制御手段は、
所定の可変制御信号に基づき、
前記制御手段に入射した参照光ビームの等位相面を所定の略コマ収差が付加された等位相面形状に変換する機能を備えたことを特徴とする請求項2記載の光情報記録再生装置。
【請求項6】
前記参照光ビーム等位相面制御手段は、
所定の可変制御信号に基づき、
前記制御手段に入射した参照光ビームの等位相面を所定の略非点収差が付加された等位相面形状に変換する機能を備えたことを特徴とする請求項2記載の光情報記録再生装置。
【請求項7】
前記参照光ビーム等位相面制御手段は、
少なくとも2個以上のレンズからなるレンズ群と、
所定の可変制御信号に基づき、
前記レンズ群の中の少なくとも一個のレンズを駆動させ他のレンズに対する相対位置を変位させる機能を備えたレンズ位置制御手段と、
を具備したことを特徴とする請求項2乃至6記載の光情報記録再生装置。
【請求項8】
前記参照光ビーム等位相面制御手段は、
所定の液晶層と所定の電極とを具備し、
所定の制御信号に基づき、
前記参照光ビーム内の所定領域における位相面を所定量だけシフトさせる機能を備えたことを特徴とする請求項2乃至6記載の光情報記録再生装置。
【請求項9】
入射角度が互いに異なる複数種類の参照光ビームの各々と、
所定の空間光変調器によって変調された信号光ビームと、
の干渉により生じる複数種類の干渉縞パターンを各々ホログラムとして所定の光情報記録媒体内の略同一位置に多重記録する角度多重型の光情報記録再生方法にであって、
少なくとも隣接する入射角度を有する前記参照光ビーム同士の等位相面形状を互いに異なる形状に変換した上で前記信号光ビームと干渉させることを特徴とする光情報記録再生方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−43504(P2012−43504A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184543(P2010−184543)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】