光情報記録媒体およびその製造方法
【課題】 青色レーザーによる主情報領域への主情報記録(データ記録)と、赤色レーザーによる副情報領域への副情報記録(BCA記録)と、をともに可能とし、青色レーザーを用いるブルーレーザーディスク(BDおよびHD−DVD)の規格で要請されているBCA記録などを実現可能な光情報記録媒体およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 青色レーザーの波長領域の記録波長より短波長側に吸収ピークを有する色素で、赤色レーザーの波長領域にも吸収スペクトルを有する色素を光記録層の光吸収物質として選択することに着目し、レーザー光により主情報(データ情報)とは種類の異なる副情報(BCA情報)を主情報領域(データ領域)とは異なる副情報領域(BCA記録領域)に記録可能とし、光記録層は波長が350〜500nmのレーザー光を吸収可能であるとともに波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方のレーザー光により副情報を副情報領域に記録可能であることを特徴とする。
【解決手段】 青色レーザーの波長領域の記録波長より短波長側に吸収ピークを有する色素で、赤色レーザーの波長領域にも吸収スペクトルを有する色素を光記録層の光吸収物質として選択することに着目し、レーザー光により主情報(データ情報)とは種類の異なる副情報(BCA情報)を主情報領域(データ領域)とは異なる副情報領域(BCA記録領域)に記録可能とし、光記録層は波長が350〜500nmのレーザー光を吸収可能であるとともに波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方のレーザー光により副情報を副情報領域に記録可能であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光情報記録媒体およびその製造方法にかかるもので、とくに波長が350〜500nmのレーザー光(ブルーレーザー)による記録を行う光情報記録媒体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からレーザー光を用いて光情報の記録再生を行う光情報記録媒体すなわち、波長が750〜830nm(たとえば780nm前後)の赤色レーザー光を用いるCD、あるいは波長が640〜680nm(たとえば650〜665nm)の短波長赤色レーザー光を用いるDVDに加えて、さらに波長が350〜500nm(たとえば405nm前後)と短い青色レーザーを用いることによって、高密度の光情報を高速で記録および再生可能とすることができるブルーレーザーディスク(BD、あるいはHD−DVD)の開発が進められている。
【0003】
このブルーレーザーディスク(BD、あるいはHD−DVD)に対する規格のひとつとして、BCA記録を行うことが定められている。
図14は、当該ブルーレーザーディスク(とくにHD−DVD)による光情報記録媒体1の概略平面図、図15は、その概略断面図である。
光情報記録媒体1は、とくに図15に示すように、透光性の基板2と、この基板2上に形成した光記録層3(光吸収層)と、この光記録層3の上に形成した光反射層4と、この光反射層4の上に形成した保護層5(接着層)と、保護層5のさらに上層に所定厚さで積層したダミー基板6と、を有し、規格で必要とされる所定の厚さに形成する。
上記基板2にはスパイラル状にプリグルーブ7を形成してある。このプリグルーブ7の左右には、このプリグルーブ7以外の部分すなわちランド8が位置している。
この基板2側からレーザー光9を照射することにより、光記録層3がレーザー光9のエネルギーを吸収することによって発熱し、光記録層3の熱分解により記録ピット10が形成され、光記録層3に情報を記録可能である。
【0004】
透光性の基板2は、レーザー光9に対する屈折率がたとえば1.5〜1.7程度の範囲内の透明度の高い材料で、厚さ約1.1mmであり、耐衝撃性に優れた主として樹脂により形成したもの、たとえばポリカーボネート、ガラス板、アクリル板、エポキシ板等を用いる。
【0005】
光記録層3は、基板2の上に形成した色素を含む光吸収性の物質(光吸収物質)からなる層で、レーザー光9を照射することにより、発熱、溶融、昇華、変形または変性をともなう層である。この光記録層3はたとえば溶剤により溶解した色素等を、スピンコート法等の手段により、基板2の表面に一様にコーティングすることによってこれを形成する。
光記録層3に用いる材料は、任意の光記録材料を採用することができるが、光吸収性の有機色素が望ましいとともに、レーザー光9の吸収波長領域で屈折率nが1.9をこえる材料が必要である。
【0006】
光反射層4は、熱伝導率および光反射性の高い金属膜であり、たとえば、金、銀、銅、アルミニウム、あるいはこれらを含む合金を、蒸着法、スパッタ法等の手段によりこれを形成する。
【0007】
保護層5は、基板2と同様の耐衝撃性、接着性に優れた樹脂によりこれを形成する。たとえば、紫外線硬化樹脂をスピンコート法により塗布し、これに紫外線を照射して硬化させることによりこれを形成する。
【0008】
ダミー基板6は、上記基板2と同様の材料によるものである。
【0009】
とくに図14に示すように、光情報記録媒体1(基板2)のセンターホール11から外周側に向かって平面的かつ同心的に、副情報領域12(BCA記録領域)と、システムリードイン領域13と、主情報領域14(データ領域)と、を定義可能としてある。
すなわちBCA(Burst Cutting Area)記録は、ディスク(光情報記録媒体1)の中央付近にバーコード15による記録領域(副情報領域12)を形成し、レーザー光9を用いてバーコード15によるキー情報その他を記録して、ディスクの連番表記、ディスクの違法コピーの防止などを可能とするものである。副情報としては、このBCA記録による情報に限定されるものではない。副情報領域としても、このBCA記録領域に限定されるものではない。
なお、この副情報領域12および主情報領域14自体の断面は、図15に示した構造を有し、副情報領域12における光記録層3によるレーザー光9の吸収により、バーコード15を記録可能とする。
【0010】
システムリードイン領域13は、副情報領域12の外周側に位置し、エンボスピットによる情報記録を行う。
主情報領域14は、システムリードイン領域13のさらに外周側に位置し、一般ユーザーが用いるレーザー光9による通常の光情報(データ情報)の記録再生に用いる領域である。主情報としては、主情報領域14(データ領域)に記録する情報すなわち一般ユーザーが記録するこのデータ情報に限定されるものではない。
【0011】
こうした構成の光情報記録媒体1において、副情報領域12およびシステムリードイン領域13は、いずれも工場からの出荷段階で、BCA用の書込み装置およびエンボス用装置(ともに図示せず)によりこれらに情報を書き込むものであるが、とくに副情報領域12には、基板2にプリグルーブ7およびランド8を形成するためのスタンピング工程とは独立して、基板2への光記録層3、光反射層4、保護層5およびダミー基板6の形成後に、バーコード記録によるBCA記録(副情報記録)を行う必要があるという問題がある。
【0012】
こうした問題は、他のタイプのブルーレーザーディスク(BD)についても同様である。
図16は、当該ブルーレーザーディスク(とくにBD)による光情報記録媒体20の概略断面図である。
図示のように、光情報記録媒体20は、透明な基板2と、光反射層4と、光記録層3と、保護層5と、接着層21と、カバー層22と、を有するとともに、その平面図は、光情報記録媒体1(図14)と事実上同一である。なお、保護層5あるいは接着層21の表面に無機層を追加してもよい。
接着層21は、厚さ約0.1mmのカバー層22を保護層5に接着するものである。
このカバー層22側からレーザー光9を照射することにより、光記録層3がレーザー光9のエネルギーを吸収することによって発熱し、光記録層3の熱分解によってプリグルーブ7あるいはランド8のいずれかに記録ピット10が形成され、光記録層3に情報を記録可能である。
【0013】
図17は、レーザー光9の波長に対する各ディスク(CD、DVD、BDおよびHD−DVD)の吸光度のグラフ(吸収スペクトル)であって、これらのスペクトルに加えて、光記録層3の屈折率nおよびBCA用出力(レーザーパワー)も同グラフ上にプロットしている。
まず屈折率nについて述べると、CD、DVD、BDおよびHD−DVDのいずれの場合もその光記録層3のレーザー波長に対する屈折率nの最大値がそれぞれの吸収ピークの長波長側に位置しており、光記録における十分な変調度を得るためには(すなわち、屈折率nの変化量Δnを大きく取るためには)、屈折率nが大きいことが必要であり、CD、DVD、BDおよびHD−DVDのいずれも吸収ピークの長波長側における吸収により主情報領域14へのデータ記録を行うこととしている。
さらに図示のように、BCA用としてバーコード15を書き込むためには、バーコード15が記録ピット10に比較してより広い面積を有していることから、主情報領域14への通常のデータ書込み用のレーザー出力(100mW程度)より大出力(1000mW程度)のレーザーが必要であるが、BDおよびHD−DVD用の青色レーザーの発振源(半導体)としては十分な出力を有しているものが未だ開発されてはおらず(最大でも200mW程度)、BCA記録を行うために、現状では、CD用あるいはDVD用にすでに用いられている赤色レーザー光(CD用の赤色レーザー光あるいはDVD用の短波長赤色レーザー光、以下「赤色レーザー」と呼ぶ)の発振源が用いられている。
【0014】
かくして、同一のディスク(光情報記録媒体1(図15)、光情報記録媒体20(図16))に対して副情報領域12へのバーコード記録(副情報記録)と、主情報領域14へのデータ記録(主情報記録)とで半導体などによる発振レーザーの波長が異なることになり、光情報記録媒体1、20の光記録層3の特性を工夫する必要があるという問題がある。
【0015】
【特許文献1】特開2003−331465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、青色レーザーを用いるブルーレーザーディスク(BDおよびHD−DVD)の規格で要請されているBCA記録を実現可能な光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0017】
また本発明は、青色レーザーに対する記録感度を確保ないし向上しながら、赤色レーザーに対する記録感度も若干有する光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0018】
また本発明は、青色レーザーによる主情報領域への主情報記録(データ記録)と、赤色レーザーによる副情報領域への副情報記録(BCA記録)と、をともに可能とした光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0019】
また本発明は、青色レーザーによる低出力の主情報領域へのデータ記録、および、赤色レーザーによる大出力の副情報領域へのBCA記録をともに可能とした光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0020】
また本発明は、低出力の主情報領域へのピットによるデータ記録と、大出力の副情報領域へのバーコード15によるBCA記録と、を可能とした光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
すなわち本発明は、青色レーザーの波長領域の記録波長より短波長側に吸収ピークを有する色素であって、かつ赤色レーザーの波長領域にも吸収スペクトルを有する色素を光記録層の光吸収物質として選択することに着目したもので、第一の発明は、透光性を有する基板と、レーザー光を吸収する色素から構成した光吸収物質を含む光記録層と、上記レーザー光を反射する光反射層と、を有し、上記光記録層に上記レーザー光を照射することにより光学的に読み取り可能な主情報を記録可能な主情報領域を有する光情報記録媒体であって、上記レーザー光により上記主情報とは種類の異なる副情報を上記主情報領域とは異なる副情報領域に記録可能とし、上記光記録層は、波長が350〜500nmの上記レーザー光を吸収可能であるとともに、波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の上記レーザー光により上記副情報を上記副情報領域に記録可能であることを特徴とする光情報記録媒体である。
【0022】
第二の発明は、透光性を有する基板と、レーザー光を吸収する色素から構成した光吸収物質を含む光記録層と、上記レーザー光を反射する光反射層と、を有し、上記光記録層に上記レーザー光を照射することにより光学的に読み取り可能な主情報を記録可能な主情報領域を有する光情報記録媒体の製造方法であって、波長が350〜500nmの上記レーザー光を吸収可能である第1の色素と、波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の上記レーザー光を吸収可能であるとともに上記第1の色素に対する割合が20重量%以下である第2の色素と、を有する混合色素を、上記基板上に直接あるいは他の層を介して塗布することにより、上記光記録層を形成することを特徴とする光情報記録媒体の製造方法である。
【0023】
第三の発明は、透光性を有する基板と、レーザー光を吸収する色素から構成した光吸収物質を含む光記録層と、上記レーザー光を反射する光反射層と、を有し、上記光記録層に上記レーザー光を照射することにより光学的に読み取り可能な主情報を記録可能な主情報領域を有する光情報記録媒体の製造方法であって、波長が350〜500nmの上記レーザー光を吸収可能である第1の色素を上記基板上に直接あるいは他の層を介して塗布することにより上記光記録層を形成したのちに、波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の上記レーザー光を吸収可能である第2の色素を上記主情報領域とは異なる副情報領域に塗布することを特徴とする光情報記録媒体の製造方法である。
【0024】
第四の発明は、透光性を有する基板と、レーザー光を吸収する色素から構成した光吸収物質を含む光記録層と、上記レーザー光を反射する光反射層と、を有し、上記光記録層に上記レーザー光を照射することにより光学的に読み取り可能な主情報を記録可能な主情報領域を有する光情報記録媒体の製造方法であって、波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の上記レーザー光を吸収可能である第2の色素を上記主情報領域とは異なる副情報領域に塗布したのちに、波長が350〜500nmの上記レーザー光を吸収可能である第1の色素を上記基板上に直接あるいは他の層を介して塗布することにより上記光記録層を形成することを特徴とする光情報記録媒体の製造方法である。
【0025】
上記光吸収物質は、波長が350〜500nmの上記レーザー光を吸収して上記主情報領域の上記光記録層に記録可能であるとともに、波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の上記レーザー光を吸収して上記副情報領域の上記光記録層にBCA記録を可能とすることができる。
【0026】
上記光吸収物質は、単一の色素を含むことができる。
【0027】
上記光吸収物質は、波長が350〜500nmの上記レーザー光を吸収して上記光記録層に記録可能である第1の色素と、波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の上記レーザー光によるBCA記録が可能な第2の色素と、を有することができる。
【0028】
上記光吸収物質は、下記構造式(化8)のフタロシアニン色素を含むことができる。
【化8】
【0029】
上記光吸収物質は、下記構造式(化9)のオキサシアニン色素と、下記構造式(化10)のアゾ色素と、を有することができる。
【化9】
【化10】
【0030】
上記光吸収物質は、下記構造式(化11)のオキサシアニン色素と、下記構造式(化12)のシアニン色素と、を有することができる。
【化11】
【化12】
【0031】
上記光吸収物質は、下記構造式(化13)のオキサシアニン色素と、下記構造式(化14)のフタロシアニン色素と、を有することができる。
【化13】
【化14】
【0032】
上記第1の色素に対する上記第2の色素の割合は、20重量%以下、好ましくは、5〜10重量%であることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明による光情報記録媒体およびその製造方法においては、青色レーザーの波長領域より短波長側に吸収ピークを有する色素であって、かつ赤色レーザーの波長領域にも吸収スペクトルを有する色素を選択するようにしたので、主情報領域への通常の主情報記録(データ記録)は、青色レーザーの出力レベルでこれを行い、副情報領域への副情報記録(BCA記録)については、赤色レーザーのより大きな出力レベルでこれを実行することができる。
したがって、大出力の青色レーザー半導体が開発されていない現状であっても、従来の赤色レーザー用の半導体を用いてBCA記録などの副情報記録を行うことができる。
【0034】
とくに第一の発明によれば、色素の選択あるいは組み合わせにより、主情報およびこれとは異なるタイプの副情報の記録を現状の機器を用いて効率よく行うことができる。
【0035】
とくに第二の発明によれば、第1の色素および第2の色素の重量比を選択して基板上にその混合色素溶液を塗布するようにしたので、青色レーザーおよび赤色レーザーによる記録をともに可能とするディスクを製造可能である。
【0036】
とくに第三の発明によれば、第1の色素の塗布領域と、この塗布後に形成する第2の色素の塗布領域と、を画成可能としたので、青色レーザーによる記録領域および赤色レーザーによる記録領域を明確に分離しておくことができる。
【0037】
とくに第四の発明によれば、第1の色素の塗布領域と、この塗布前に形成する第2の色素の塗布領域と、を画成可能としたので、青色レーザーによる記録領域および赤色レーザーによる記録領域を明確に分離しておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明は、青色レーザーおよび赤色レーザーにともに吸収を有する色素を選択したので、赤色レーザーによるBCA記録などの副情報記録も可能としてBD規格を満足する光情報記録媒体およびその製造方法を実現することができた。
【実施例】
【0039】
つぎに本発明の第1の実施の形態による光情報記録媒体を図1および図2にもとづき説明する。ただし、図14ないし図17と同様の部分には同一符号を付し、その詳述はこれを省略する。
この光情報媒体の平面構造および断面構造自体は、図14および図15(あるいは図16)に示した従来の光情報媒体1、20と同様であるが、その光記録層3に用いる色素が異なる。
すなわち図1は、当該第1の実施の形態による光情報記録媒体の光記録層3に用いる色素(フタロシアニン色素)の構造式を示す説明図である。
【0040】
図2は、上記フタロシアニン色素の一例(フタロシアニン誘導体)の構造式を示す説明図で、この誘導体は、2,9,16,22−テトラモノメチルアミノコバルト(II)フタロシアニンと呼ばれる。
【0041】
図3は、レーザー光9の波長に対するこのフタロシアニン色素(フタロシアニン誘導体、図2)の吸光度を示すグラフであって、フタロシアニン色素は単一色素であっても、図示のように、青色レーザーの波長領域に吸収スペクトルを有し、とくに、記録波長の短波長側に吸収ピークを有していて、高屈折率nを得ることが可能である。
すなわちフタロシアニン色素は、青色レーザーの記録波長405nm付近での吸収が可能であるとともに、波長650nm付近の赤色レーザーの波長領域にも、より低い吸収ピークを有していて、赤色レーザーの吸収が可能である。
【0042】
こうした構成のフタロシアニン色素を光記録層3に用いることにより、一般ユーザーが主情報領域14(データ領域)における光記録層3に青色レーザーによる主情報記録(データ記録)が可能であるとともに、事前の工場出荷段階で副情報領域12(BCA記録領域)に赤色レーザーを用いた大出力による副情報記録(BCA記録)が可能となる。
かくして、青色レーザーによるBCA用書込み装置ないしその大出力のレーザー発振部がなくても、従来の赤色レーザーを用いたBCA用書込み装置によるBCA記録を実現して、ブルーレーザーディスク(BDおよびHD−DVD)の規格を満足する製品を製造可能である。
【0043】
なお、たとえば図15の光情報記録媒体1のように、当該フタロシアニン色素を含む光記録層3を基板2上に直接形成するためには、あるいは、たとえば図16の光情報記録媒体20のように、他の層(たとえば光反射層4)を介して光記録層3を形成するためには、色素を溶剤に溶解した色素溶液をスピンコート法により基板2に塗布する。
いずれの場合にも、基板2上の副情報領域12、システムリードイン領域13および主情報領域14にまたがって色素溶液を一様に塗布することができる。
【0044】
本発明は、上述したフタロシアニン色素のように、単一の色素でふたつの吸収ピーク(図3)を有するものを選択することもできるが、二以上の色素によりふたつの吸収ピークを得るようにすることもできる。具体的には、青色レーザーに対して感度の高い材料に、赤色レーザーの波長域に吸収を有する材料を少量添加することにより、BCA記録に関するBD規格を満足するブルーレーザーディスクとすることができる。
すなわち、図4は、本発明の第2の実施の形態による光情報記録媒体の光記録層3に用いる第1の色素(ベース色素、オキサシアニン色素)の構造式を示す説明図、図5は、同、第2の色素(添加色素、アゾ色素)の構造式を示す説明図である。
なお、この第2の実施の形態による光情報媒体の平面構造および断面構造自体は、第1の実施の形態による光情報記録媒体の場合と同様に、図14および図15(あるいは図16)に示した従来の光情報媒体1、20と同様であるが、その光記録層3に用いる色素が異なる。
【0045】
図6は、上記第1および第2の色素を含む光記録層3の吸光度のグラフであって、図示のように、第1の色素(オキサシアニン色素)が青色レーザーの波長領域に吸収スペクトルを有し、とくに、その記録波長の短波長側に吸収ピークを有していて、高屈折率nを得ることが可能である。
さらに、第1の色素(オキサシアニン色素)および第2の色素(アゾ色素)の会合により、あるいは第2の色素(アゾ色素)により、赤色レーザーの波長領域にも、より低い吸収ピークを有していて、赤色レーザーの吸収も可能であり、したがって、赤色レーザーを用いた大出力によるBCA記録も可能である。
【0046】
BCA記録を行うためには、光記録層3内の色素が赤色レーザー領域での波長で吸収を行う必要があるが、この赤色レーザー光の出力が、記録光(青色レーザー)の出力に比較して高いため、有効な吸収を行うための濃度ないし量としては少量でよく、たとえば、ベース色素の重量に対して20重量%以下、好ましくは5〜10重量%である。
添加色素の添加量が20重量%をこえてしまうと、ベース色素の光吸収に悪影響を及ぼし、その結果、BDあるいはHD−DVDとしての記録再生特性に劣化が生じてしまう。
また、添加色素の添加量が5重量%より少なくなると、添加色素の光吸収帯域での良好な光吸収が得られず、結果としてBCA記録ができなくなってしまう。
【0047】
なお本発明においては、図4の第1の色素(ベース色素、オキサシアニン色素)に対する第2の色素(添加色素)としてシアニン色素を用いることもできる。
すなわち図7は、本発明の第3の実施の形態による光情報記録媒体の光記録層3に用いる第2の色素(添加色素、シアニン色素)の構造式を示す説明図である。
【0048】
この第1の色素(オキサシアニン色素)および第2の色素(シアニン色素)を併せて光記録層3の色素に用いることにより、図6と同様の吸収スペクトルを得ることができ、青色レーザーによるデータ記録および赤色レーザーによるBCA記録をともに実現可能である。
【0049】
つぎに図8は、本発明の第4の実施の形態による光情報記録媒体の光記録層3に用いる第2の色素(添加色素、フタロシアニン色素)の構造式を示す説明図である。
【0050】
前記第1の色素(オキサシアニン色素)および第2の色素(フタロシアニン色素)を併せて光記録層3の色素に用いることにより、図6と同様の吸収スペクトルを得ることができ、青色レーザーによるデータ記録および赤色レーザーによるBCA記録をともに実現可能である。
【0051】
図9は、図8におけるM=Cu(銅)、A1〜A4=フェニル基である場合の、レーザー光9の波長に対する第2の色素(フタロシアニン色素)の吸光度を示すグラフであって、当該色素が波長650nmあるいは780nm付近における吸収能力があるために、赤色レーザーのエネルギーを吸収可能であって、CDあるいはDVD用のBCA記録装置(BCA用の書込み装置)を流用することができる。
【0052】
図10は、図8におけるM=Pd(パラジウム)、A1〜A4=フェニル基である場合の、レーザー光9の波長に対する第2の色素(フタロシアニン色素)の吸光度を示すグラフであって、当該色素が波長650nm付近における吸収能力があるために、赤色レーザーのエネルギーを吸収可能であって、DVD用のBCA記録装置(BCA用の書込み装置)を流用することができる。
【0053】
図11は、図8におけるM=Co(コバルト)、A1〜A4=フェニル基である場合の、レーザー光9の波長に対する第2の色素(フタロシアニン色素)の吸光度を示すグラフであって、当該色素が波長650nmあるいは780nm付近における吸収能力があるために、赤色レーザーのエネルギーを吸収可能であって、CDあるいはDVD用のBCA記録装置(BCA用の書込み装置)を流用することができる。
【0054】
つぎに、第1および第2の色素、あるいはこれらを含む混合色素を基板2上に塗布する方法について、図12および図13にもとづき説明する。
図12は、本発明による色素の第1の塗布方法ないし光情報記録媒体の製造方法(第二の発明)を示す要部概略断面図であって、たとえば図15の光情報記録媒体1のように、上記混合色素を含む光記録層3を基板2上に直接形成するためには、あるいは、たとえば図16の光情報記録媒体20のように、他の層(たとえば光反射層4、図12中仮想線)を介して光記録層3を形成するために、色素を溶剤に溶解した混合色素溶液をスピンコート法により基板2に塗布する。
いずれの場合にも、基板2上の副情報領域12、システムリードイン領域13および主情報領域14にまたがって色素溶液を一様に塗布することができる。
【0055】
図13は、本発明による色素の第2の塗布方法ないし光情報記録媒体の製造方法(第三の発明)を示す要部概略断面図であって、たとえば図15の光情報記録媒体1のように、色素を含む光記録層3を基板2上に直接形成するためには、あるいは、たとえば図16の光情報記録媒体20のように、他の層(たとえば光反射層4、図12中仮想線)を介して光記録層3を形成するために、色素を溶剤に溶解した色素溶液をスピンコート法により基板2に塗布する。
ただし、基板2上の副情報領域12、システムリードイン領域13および主情報領域14にまたがって第1の色素溶液を一様に塗布することにより第1の色素層3Aを形成したのちに、システムリードイン領域13および主情報領域14にまたがってマスク30を設けた状態で、副情報領域12のみに第2の色素溶液を一様に塗布することにより第2の色素層3Bを形成する。
【0056】
なお、図示を省略はするが、本発明による色素の第3の塗布方法ないし光情報記録媒体の製造方法(第四の発明)においては、図13とは逆の構成ないし順序で第1の色素層3Aおよび第2の色素層3Bを塗布するようにしてもよい。
すなわち、上述と同様のシステムリードイン領域13および主情報領域14にまたがってマスク30を設けた状態で、基板2上の副情報領域12のみに第2の色素溶液を一様に塗布することにより第2の色素層3Bを形成したのちに、システムリードイン領域13および主情報領域14にまたがって第1の色素溶液を一様に塗布することにより第1の色素層3Aを形成することもできる。
【0057】
以上のように、本発明によれば、記録再生用のレーザー光9よりも短波長側に色素の吸収ピークを有する材料を用いることにより、有機色素の屈折率nが高い領域を使用することができ、高感度化を達成することができるとともに、CDあるいはDVDで使用しているBCA用の書込み装置をそのまま使用することができ、青色レーザーによる記録、および赤色レーザーによるBCA記録に対応した光情報記録媒体およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施の形態による光情報記録媒体の光記録層3に用いる色素(フタロシアニン色素)の構造式を示す説明図である。
【図2】同、フタロシアニン色素の一例(フタロシアニン誘導体、2,9,16,22−テトラモノメチルアミノコバルト(II)フタロシアニン)の構造式を示す説明図である。
【図3】同、レーザー光9の波長に対するフタロシアニン色素(フタロシアニン誘導体、図2)の吸光度を示すグラフである。
【図4】本発明の第2の実施の形態による光情報記録媒体の光記録層3に用いる第1の色素(ベース色素、オキサシアニン色素)の構造式を示す説明図である。
【図5】同、第2の色素(添加色素、アゾ色素)の構造式を示す説明図である。
【図6】同、第1および第2の色素を含む光記録層3の吸光度のグラフである。
【図7】本発明の第3の実施の形態による光情報記録媒体の光記録層3に用いる第2の色素(添加色素、シアニン色素)の構造式を示す説明図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態による光情報記録媒体の光記録層3に用いる第2の色素(添加色素、フタロシアニン色素)の構造式を示す説明図である。
【図9】同、図8におけるM=Cu(銅)、A1〜A4=フェニル基である場合の、レーザー光9の波長に対する第2の色素(フタロシアニン色素)の吸光度を示すグラフである。
【図10】同、図8におけるM=Pd(パラジウム)、A1〜A4=フェニル基である場合の、レーザー光9の波長に対する第2の色素(フタロシアニン色素)の吸光度を示すグラフである。
【図11】同、図8におけるM=Co(コバルト)、A1〜A4=フェニル基である場合の、レーザー光9の波長に対する第2の色素(フタロシアニン色素)の吸光度を示すグラフである。
【図12】本発明による色素の第1の塗布方法ないし光情報記録媒体の製造方法(第二の発明)を示す要部概略断面図である。
【図13】本発明による色素の第2の塗布方法ないし光情報記録媒体の製造方法(第三の発明)を示す要部概略断面図である。
【図14】ブルーレーザーディスク(HD−DVD)による光情報記録媒体1の概略平面図である。
【図15】同、概略断面図である。
【図16】他のブルーレーザーディスク(BD)による光情報記録媒体20の概略断面図である。
【図17】同、レーザー光の波長に対する各ディスク(CD、DVD、BDおよびHD−DVD)の吸光度のグラフである。
【符号の説明】
【0059】
1 光情報記録媒体(ブルーレーザーディスク(HD−DVD)、図14、図15)
2 透光性の基板
3 光記録層(光吸収層)
3A 第1の色素層(図13)
3B 第2の色素層(図13)
4 光反射層
5 保護層(接着層)
6 ダミー基板
7 プリグルーブ
8 ランド
9 レーザー光
10 記録ピット
11 光情報記録媒体1、20(基板2)のセンターホール(図14)
12 副情報領域(BCA記録領域)
13 システムリードイン領域
14 主情報領域(データ領域)
15 バーコード
20 光情報記録媒体(ブルーレーザーディスク(BD)、図16)
21 接着層
22 カバー層
30 マスク(図13)
【技術分野】
【0001】
本発明は光情報記録媒体およびその製造方法にかかるもので、とくに波長が350〜500nmのレーザー光(ブルーレーザー)による記録を行う光情報記録媒体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からレーザー光を用いて光情報の記録再生を行う光情報記録媒体すなわち、波長が750〜830nm(たとえば780nm前後)の赤色レーザー光を用いるCD、あるいは波長が640〜680nm(たとえば650〜665nm)の短波長赤色レーザー光を用いるDVDに加えて、さらに波長が350〜500nm(たとえば405nm前後)と短い青色レーザーを用いることによって、高密度の光情報を高速で記録および再生可能とすることができるブルーレーザーディスク(BD、あるいはHD−DVD)の開発が進められている。
【0003】
このブルーレーザーディスク(BD、あるいはHD−DVD)に対する規格のひとつとして、BCA記録を行うことが定められている。
図14は、当該ブルーレーザーディスク(とくにHD−DVD)による光情報記録媒体1の概略平面図、図15は、その概略断面図である。
光情報記録媒体1は、とくに図15に示すように、透光性の基板2と、この基板2上に形成した光記録層3(光吸収層)と、この光記録層3の上に形成した光反射層4と、この光反射層4の上に形成した保護層5(接着層)と、保護層5のさらに上層に所定厚さで積層したダミー基板6と、を有し、規格で必要とされる所定の厚さに形成する。
上記基板2にはスパイラル状にプリグルーブ7を形成してある。このプリグルーブ7の左右には、このプリグルーブ7以外の部分すなわちランド8が位置している。
この基板2側からレーザー光9を照射することにより、光記録層3がレーザー光9のエネルギーを吸収することによって発熱し、光記録層3の熱分解により記録ピット10が形成され、光記録層3に情報を記録可能である。
【0004】
透光性の基板2は、レーザー光9に対する屈折率がたとえば1.5〜1.7程度の範囲内の透明度の高い材料で、厚さ約1.1mmであり、耐衝撃性に優れた主として樹脂により形成したもの、たとえばポリカーボネート、ガラス板、アクリル板、エポキシ板等を用いる。
【0005】
光記録層3は、基板2の上に形成した色素を含む光吸収性の物質(光吸収物質)からなる層で、レーザー光9を照射することにより、発熱、溶融、昇華、変形または変性をともなう層である。この光記録層3はたとえば溶剤により溶解した色素等を、スピンコート法等の手段により、基板2の表面に一様にコーティングすることによってこれを形成する。
光記録層3に用いる材料は、任意の光記録材料を採用することができるが、光吸収性の有機色素が望ましいとともに、レーザー光9の吸収波長領域で屈折率nが1.9をこえる材料が必要である。
【0006】
光反射層4は、熱伝導率および光反射性の高い金属膜であり、たとえば、金、銀、銅、アルミニウム、あるいはこれらを含む合金を、蒸着法、スパッタ法等の手段によりこれを形成する。
【0007】
保護層5は、基板2と同様の耐衝撃性、接着性に優れた樹脂によりこれを形成する。たとえば、紫外線硬化樹脂をスピンコート法により塗布し、これに紫外線を照射して硬化させることによりこれを形成する。
【0008】
ダミー基板6は、上記基板2と同様の材料によるものである。
【0009】
とくに図14に示すように、光情報記録媒体1(基板2)のセンターホール11から外周側に向かって平面的かつ同心的に、副情報領域12(BCA記録領域)と、システムリードイン領域13と、主情報領域14(データ領域)と、を定義可能としてある。
すなわちBCA(Burst Cutting Area)記録は、ディスク(光情報記録媒体1)の中央付近にバーコード15による記録領域(副情報領域12)を形成し、レーザー光9を用いてバーコード15によるキー情報その他を記録して、ディスクの連番表記、ディスクの違法コピーの防止などを可能とするものである。副情報としては、このBCA記録による情報に限定されるものではない。副情報領域としても、このBCA記録領域に限定されるものではない。
なお、この副情報領域12および主情報領域14自体の断面は、図15に示した構造を有し、副情報領域12における光記録層3によるレーザー光9の吸収により、バーコード15を記録可能とする。
【0010】
システムリードイン領域13は、副情報領域12の外周側に位置し、エンボスピットによる情報記録を行う。
主情報領域14は、システムリードイン領域13のさらに外周側に位置し、一般ユーザーが用いるレーザー光9による通常の光情報(データ情報)の記録再生に用いる領域である。主情報としては、主情報領域14(データ領域)に記録する情報すなわち一般ユーザーが記録するこのデータ情報に限定されるものではない。
【0011】
こうした構成の光情報記録媒体1において、副情報領域12およびシステムリードイン領域13は、いずれも工場からの出荷段階で、BCA用の書込み装置およびエンボス用装置(ともに図示せず)によりこれらに情報を書き込むものであるが、とくに副情報領域12には、基板2にプリグルーブ7およびランド8を形成するためのスタンピング工程とは独立して、基板2への光記録層3、光反射層4、保護層5およびダミー基板6の形成後に、バーコード記録によるBCA記録(副情報記録)を行う必要があるという問題がある。
【0012】
こうした問題は、他のタイプのブルーレーザーディスク(BD)についても同様である。
図16は、当該ブルーレーザーディスク(とくにBD)による光情報記録媒体20の概略断面図である。
図示のように、光情報記録媒体20は、透明な基板2と、光反射層4と、光記録層3と、保護層5と、接着層21と、カバー層22と、を有するとともに、その平面図は、光情報記録媒体1(図14)と事実上同一である。なお、保護層5あるいは接着層21の表面に無機層を追加してもよい。
接着層21は、厚さ約0.1mmのカバー層22を保護層5に接着するものである。
このカバー層22側からレーザー光9を照射することにより、光記録層3がレーザー光9のエネルギーを吸収することによって発熱し、光記録層3の熱分解によってプリグルーブ7あるいはランド8のいずれかに記録ピット10が形成され、光記録層3に情報を記録可能である。
【0013】
図17は、レーザー光9の波長に対する各ディスク(CD、DVD、BDおよびHD−DVD)の吸光度のグラフ(吸収スペクトル)であって、これらのスペクトルに加えて、光記録層3の屈折率nおよびBCA用出力(レーザーパワー)も同グラフ上にプロットしている。
まず屈折率nについて述べると、CD、DVD、BDおよびHD−DVDのいずれの場合もその光記録層3のレーザー波長に対する屈折率nの最大値がそれぞれの吸収ピークの長波長側に位置しており、光記録における十分な変調度を得るためには(すなわち、屈折率nの変化量Δnを大きく取るためには)、屈折率nが大きいことが必要であり、CD、DVD、BDおよびHD−DVDのいずれも吸収ピークの長波長側における吸収により主情報領域14へのデータ記録を行うこととしている。
さらに図示のように、BCA用としてバーコード15を書き込むためには、バーコード15が記録ピット10に比較してより広い面積を有していることから、主情報領域14への通常のデータ書込み用のレーザー出力(100mW程度)より大出力(1000mW程度)のレーザーが必要であるが、BDおよびHD−DVD用の青色レーザーの発振源(半導体)としては十分な出力を有しているものが未だ開発されてはおらず(最大でも200mW程度)、BCA記録を行うために、現状では、CD用あるいはDVD用にすでに用いられている赤色レーザー光(CD用の赤色レーザー光あるいはDVD用の短波長赤色レーザー光、以下「赤色レーザー」と呼ぶ)の発振源が用いられている。
【0014】
かくして、同一のディスク(光情報記録媒体1(図15)、光情報記録媒体20(図16))に対して副情報領域12へのバーコード記録(副情報記録)と、主情報領域14へのデータ記録(主情報記録)とで半導体などによる発振レーザーの波長が異なることになり、光情報記録媒体1、20の光記録層3の特性を工夫する必要があるという問題がある。
【0015】
【特許文献1】特開2003−331465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、青色レーザーを用いるブルーレーザーディスク(BDおよびHD−DVD)の規格で要請されているBCA記録を実現可能な光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0017】
また本発明は、青色レーザーに対する記録感度を確保ないし向上しながら、赤色レーザーに対する記録感度も若干有する光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0018】
また本発明は、青色レーザーによる主情報領域への主情報記録(データ記録)と、赤色レーザーによる副情報領域への副情報記録(BCA記録)と、をともに可能とした光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0019】
また本発明は、青色レーザーによる低出力の主情報領域へのデータ記録、および、赤色レーザーによる大出力の副情報領域へのBCA記録をともに可能とした光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0020】
また本発明は、低出力の主情報領域へのピットによるデータ記録と、大出力の副情報領域へのバーコード15によるBCA記録と、を可能とした光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
すなわち本発明は、青色レーザーの波長領域の記録波長より短波長側に吸収ピークを有する色素であって、かつ赤色レーザーの波長領域にも吸収スペクトルを有する色素を光記録層の光吸収物質として選択することに着目したもので、第一の発明は、透光性を有する基板と、レーザー光を吸収する色素から構成した光吸収物質を含む光記録層と、上記レーザー光を反射する光反射層と、を有し、上記光記録層に上記レーザー光を照射することにより光学的に読み取り可能な主情報を記録可能な主情報領域を有する光情報記録媒体であって、上記レーザー光により上記主情報とは種類の異なる副情報を上記主情報領域とは異なる副情報領域に記録可能とし、上記光記録層は、波長が350〜500nmの上記レーザー光を吸収可能であるとともに、波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の上記レーザー光により上記副情報を上記副情報領域に記録可能であることを特徴とする光情報記録媒体である。
【0022】
第二の発明は、透光性を有する基板と、レーザー光を吸収する色素から構成した光吸収物質を含む光記録層と、上記レーザー光を反射する光反射層と、を有し、上記光記録層に上記レーザー光を照射することにより光学的に読み取り可能な主情報を記録可能な主情報領域を有する光情報記録媒体の製造方法であって、波長が350〜500nmの上記レーザー光を吸収可能である第1の色素と、波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の上記レーザー光を吸収可能であるとともに上記第1の色素に対する割合が20重量%以下である第2の色素と、を有する混合色素を、上記基板上に直接あるいは他の層を介して塗布することにより、上記光記録層を形成することを特徴とする光情報記録媒体の製造方法である。
【0023】
第三の発明は、透光性を有する基板と、レーザー光を吸収する色素から構成した光吸収物質を含む光記録層と、上記レーザー光を反射する光反射層と、を有し、上記光記録層に上記レーザー光を照射することにより光学的に読み取り可能な主情報を記録可能な主情報領域を有する光情報記録媒体の製造方法であって、波長が350〜500nmの上記レーザー光を吸収可能である第1の色素を上記基板上に直接あるいは他の層を介して塗布することにより上記光記録層を形成したのちに、波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の上記レーザー光を吸収可能である第2の色素を上記主情報領域とは異なる副情報領域に塗布することを特徴とする光情報記録媒体の製造方法である。
【0024】
第四の発明は、透光性を有する基板と、レーザー光を吸収する色素から構成した光吸収物質を含む光記録層と、上記レーザー光を反射する光反射層と、を有し、上記光記録層に上記レーザー光を照射することにより光学的に読み取り可能な主情報を記録可能な主情報領域を有する光情報記録媒体の製造方法であって、波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の上記レーザー光を吸収可能である第2の色素を上記主情報領域とは異なる副情報領域に塗布したのちに、波長が350〜500nmの上記レーザー光を吸収可能である第1の色素を上記基板上に直接あるいは他の層を介して塗布することにより上記光記録層を形成することを特徴とする光情報記録媒体の製造方法である。
【0025】
上記光吸収物質は、波長が350〜500nmの上記レーザー光を吸収して上記主情報領域の上記光記録層に記録可能であるとともに、波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の上記レーザー光を吸収して上記副情報領域の上記光記録層にBCA記録を可能とすることができる。
【0026】
上記光吸収物質は、単一の色素を含むことができる。
【0027】
上記光吸収物質は、波長が350〜500nmの上記レーザー光を吸収して上記光記録層に記録可能である第1の色素と、波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の上記レーザー光によるBCA記録が可能な第2の色素と、を有することができる。
【0028】
上記光吸収物質は、下記構造式(化8)のフタロシアニン色素を含むことができる。
【化8】
【0029】
上記光吸収物質は、下記構造式(化9)のオキサシアニン色素と、下記構造式(化10)のアゾ色素と、を有することができる。
【化9】
【化10】
【0030】
上記光吸収物質は、下記構造式(化11)のオキサシアニン色素と、下記構造式(化12)のシアニン色素と、を有することができる。
【化11】
【化12】
【0031】
上記光吸収物質は、下記構造式(化13)のオキサシアニン色素と、下記構造式(化14)のフタロシアニン色素と、を有することができる。
【化13】
【化14】
【0032】
上記第1の色素に対する上記第2の色素の割合は、20重量%以下、好ましくは、5〜10重量%であることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明による光情報記録媒体およびその製造方法においては、青色レーザーの波長領域より短波長側に吸収ピークを有する色素であって、かつ赤色レーザーの波長領域にも吸収スペクトルを有する色素を選択するようにしたので、主情報領域への通常の主情報記録(データ記録)は、青色レーザーの出力レベルでこれを行い、副情報領域への副情報記録(BCA記録)については、赤色レーザーのより大きな出力レベルでこれを実行することができる。
したがって、大出力の青色レーザー半導体が開発されていない現状であっても、従来の赤色レーザー用の半導体を用いてBCA記録などの副情報記録を行うことができる。
【0034】
とくに第一の発明によれば、色素の選択あるいは組み合わせにより、主情報およびこれとは異なるタイプの副情報の記録を現状の機器を用いて効率よく行うことができる。
【0035】
とくに第二の発明によれば、第1の色素および第2の色素の重量比を選択して基板上にその混合色素溶液を塗布するようにしたので、青色レーザーおよび赤色レーザーによる記録をともに可能とするディスクを製造可能である。
【0036】
とくに第三の発明によれば、第1の色素の塗布領域と、この塗布後に形成する第2の色素の塗布領域と、を画成可能としたので、青色レーザーによる記録領域および赤色レーザーによる記録領域を明確に分離しておくことができる。
【0037】
とくに第四の発明によれば、第1の色素の塗布領域と、この塗布前に形成する第2の色素の塗布領域と、を画成可能としたので、青色レーザーによる記録領域および赤色レーザーによる記録領域を明確に分離しておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明は、青色レーザーおよび赤色レーザーにともに吸収を有する色素を選択したので、赤色レーザーによるBCA記録などの副情報記録も可能としてBD規格を満足する光情報記録媒体およびその製造方法を実現することができた。
【実施例】
【0039】
つぎに本発明の第1の実施の形態による光情報記録媒体を図1および図2にもとづき説明する。ただし、図14ないし図17と同様の部分には同一符号を付し、その詳述はこれを省略する。
この光情報媒体の平面構造および断面構造自体は、図14および図15(あるいは図16)に示した従来の光情報媒体1、20と同様であるが、その光記録層3に用いる色素が異なる。
すなわち図1は、当該第1の実施の形態による光情報記録媒体の光記録層3に用いる色素(フタロシアニン色素)の構造式を示す説明図である。
【0040】
図2は、上記フタロシアニン色素の一例(フタロシアニン誘導体)の構造式を示す説明図で、この誘導体は、2,9,16,22−テトラモノメチルアミノコバルト(II)フタロシアニンと呼ばれる。
【0041】
図3は、レーザー光9の波長に対するこのフタロシアニン色素(フタロシアニン誘導体、図2)の吸光度を示すグラフであって、フタロシアニン色素は単一色素であっても、図示のように、青色レーザーの波長領域に吸収スペクトルを有し、とくに、記録波長の短波長側に吸収ピークを有していて、高屈折率nを得ることが可能である。
すなわちフタロシアニン色素は、青色レーザーの記録波長405nm付近での吸収が可能であるとともに、波長650nm付近の赤色レーザーの波長領域にも、より低い吸収ピークを有していて、赤色レーザーの吸収が可能である。
【0042】
こうした構成のフタロシアニン色素を光記録層3に用いることにより、一般ユーザーが主情報領域14(データ領域)における光記録層3に青色レーザーによる主情報記録(データ記録)が可能であるとともに、事前の工場出荷段階で副情報領域12(BCA記録領域)に赤色レーザーを用いた大出力による副情報記録(BCA記録)が可能となる。
かくして、青色レーザーによるBCA用書込み装置ないしその大出力のレーザー発振部がなくても、従来の赤色レーザーを用いたBCA用書込み装置によるBCA記録を実現して、ブルーレーザーディスク(BDおよびHD−DVD)の規格を満足する製品を製造可能である。
【0043】
なお、たとえば図15の光情報記録媒体1のように、当該フタロシアニン色素を含む光記録層3を基板2上に直接形成するためには、あるいは、たとえば図16の光情報記録媒体20のように、他の層(たとえば光反射層4)を介して光記録層3を形成するためには、色素を溶剤に溶解した色素溶液をスピンコート法により基板2に塗布する。
いずれの場合にも、基板2上の副情報領域12、システムリードイン領域13および主情報領域14にまたがって色素溶液を一様に塗布することができる。
【0044】
本発明は、上述したフタロシアニン色素のように、単一の色素でふたつの吸収ピーク(図3)を有するものを選択することもできるが、二以上の色素によりふたつの吸収ピークを得るようにすることもできる。具体的には、青色レーザーに対して感度の高い材料に、赤色レーザーの波長域に吸収を有する材料を少量添加することにより、BCA記録に関するBD規格を満足するブルーレーザーディスクとすることができる。
すなわち、図4は、本発明の第2の実施の形態による光情報記録媒体の光記録層3に用いる第1の色素(ベース色素、オキサシアニン色素)の構造式を示す説明図、図5は、同、第2の色素(添加色素、アゾ色素)の構造式を示す説明図である。
なお、この第2の実施の形態による光情報媒体の平面構造および断面構造自体は、第1の実施の形態による光情報記録媒体の場合と同様に、図14および図15(あるいは図16)に示した従来の光情報媒体1、20と同様であるが、その光記録層3に用いる色素が異なる。
【0045】
図6は、上記第1および第2の色素を含む光記録層3の吸光度のグラフであって、図示のように、第1の色素(オキサシアニン色素)が青色レーザーの波長領域に吸収スペクトルを有し、とくに、その記録波長の短波長側に吸収ピークを有していて、高屈折率nを得ることが可能である。
さらに、第1の色素(オキサシアニン色素)および第2の色素(アゾ色素)の会合により、あるいは第2の色素(アゾ色素)により、赤色レーザーの波長領域にも、より低い吸収ピークを有していて、赤色レーザーの吸収も可能であり、したがって、赤色レーザーを用いた大出力によるBCA記録も可能である。
【0046】
BCA記録を行うためには、光記録層3内の色素が赤色レーザー領域での波長で吸収を行う必要があるが、この赤色レーザー光の出力が、記録光(青色レーザー)の出力に比較して高いため、有効な吸収を行うための濃度ないし量としては少量でよく、たとえば、ベース色素の重量に対して20重量%以下、好ましくは5〜10重量%である。
添加色素の添加量が20重量%をこえてしまうと、ベース色素の光吸収に悪影響を及ぼし、その結果、BDあるいはHD−DVDとしての記録再生特性に劣化が生じてしまう。
また、添加色素の添加量が5重量%より少なくなると、添加色素の光吸収帯域での良好な光吸収が得られず、結果としてBCA記録ができなくなってしまう。
【0047】
なお本発明においては、図4の第1の色素(ベース色素、オキサシアニン色素)に対する第2の色素(添加色素)としてシアニン色素を用いることもできる。
すなわち図7は、本発明の第3の実施の形態による光情報記録媒体の光記録層3に用いる第2の色素(添加色素、シアニン色素)の構造式を示す説明図である。
【0048】
この第1の色素(オキサシアニン色素)および第2の色素(シアニン色素)を併せて光記録層3の色素に用いることにより、図6と同様の吸収スペクトルを得ることができ、青色レーザーによるデータ記録および赤色レーザーによるBCA記録をともに実現可能である。
【0049】
つぎに図8は、本発明の第4の実施の形態による光情報記録媒体の光記録層3に用いる第2の色素(添加色素、フタロシアニン色素)の構造式を示す説明図である。
【0050】
前記第1の色素(オキサシアニン色素)および第2の色素(フタロシアニン色素)を併せて光記録層3の色素に用いることにより、図6と同様の吸収スペクトルを得ることができ、青色レーザーによるデータ記録および赤色レーザーによるBCA記録をともに実現可能である。
【0051】
図9は、図8におけるM=Cu(銅)、A1〜A4=フェニル基である場合の、レーザー光9の波長に対する第2の色素(フタロシアニン色素)の吸光度を示すグラフであって、当該色素が波長650nmあるいは780nm付近における吸収能力があるために、赤色レーザーのエネルギーを吸収可能であって、CDあるいはDVD用のBCA記録装置(BCA用の書込み装置)を流用することができる。
【0052】
図10は、図8におけるM=Pd(パラジウム)、A1〜A4=フェニル基である場合の、レーザー光9の波長に対する第2の色素(フタロシアニン色素)の吸光度を示すグラフであって、当該色素が波長650nm付近における吸収能力があるために、赤色レーザーのエネルギーを吸収可能であって、DVD用のBCA記録装置(BCA用の書込み装置)を流用することができる。
【0053】
図11は、図8におけるM=Co(コバルト)、A1〜A4=フェニル基である場合の、レーザー光9の波長に対する第2の色素(フタロシアニン色素)の吸光度を示すグラフであって、当該色素が波長650nmあるいは780nm付近における吸収能力があるために、赤色レーザーのエネルギーを吸収可能であって、CDあるいはDVD用のBCA記録装置(BCA用の書込み装置)を流用することができる。
【0054】
つぎに、第1および第2の色素、あるいはこれらを含む混合色素を基板2上に塗布する方法について、図12および図13にもとづき説明する。
図12は、本発明による色素の第1の塗布方法ないし光情報記録媒体の製造方法(第二の発明)を示す要部概略断面図であって、たとえば図15の光情報記録媒体1のように、上記混合色素を含む光記録層3を基板2上に直接形成するためには、あるいは、たとえば図16の光情報記録媒体20のように、他の層(たとえば光反射層4、図12中仮想線)を介して光記録層3を形成するために、色素を溶剤に溶解した混合色素溶液をスピンコート法により基板2に塗布する。
いずれの場合にも、基板2上の副情報領域12、システムリードイン領域13および主情報領域14にまたがって色素溶液を一様に塗布することができる。
【0055】
図13は、本発明による色素の第2の塗布方法ないし光情報記録媒体の製造方法(第三の発明)を示す要部概略断面図であって、たとえば図15の光情報記録媒体1のように、色素を含む光記録層3を基板2上に直接形成するためには、あるいは、たとえば図16の光情報記録媒体20のように、他の層(たとえば光反射層4、図12中仮想線)を介して光記録層3を形成するために、色素を溶剤に溶解した色素溶液をスピンコート法により基板2に塗布する。
ただし、基板2上の副情報領域12、システムリードイン領域13および主情報領域14にまたがって第1の色素溶液を一様に塗布することにより第1の色素層3Aを形成したのちに、システムリードイン領域13および主情報領域14にまたがってマスク30を設けた状態で、副情報領域12のみに第2の色素溶液を一様に塗布することにより第2の色素層3Bを形成する。
【0056】
なお、図示を省略はするが、本発明による色素の第3の塗布方法ないし光情報記録媒体の製造方法(第四の発明)においては、図13とは逆の構成ないし順序で第1の色素層3Aおよび第2の色素層3Bを塗布するようにしてもよい。
すなわち、上述と同様のシステムリードイン領域13および主情報領域14にまたがってマスク30を設けた状態で、基板2上の副情報領域12のみに第2の色素溶液を一様に塗布することにより第2の色素層3Bを形成したのちに、システムリードイン領域13および主情報領域14にまたがって第1の色素溶液を一様に塗布することにより第1の色素層3Aを形成することもできる。
【0057】
以上のように、本発明によれば、記録再生用のレーザー光9よりも短波長側に色素の吸収ピークを有する材料を用いることにより、有機色素の屈折率nが高い領域を使用することができ、高感度化を達成することができるとともに、CDあるいはDVDで使用しているBCA用の書込み装置をそのまま使用することができ、青色レーザーによる記録、および赤色レーザーによるBCA記録に対応した光情報記録媒体およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施の形態による光情報記録媒体の光記録層3に用いる色素(フタロシアニン色素)の構造式を示す説明図である。
【図2】同、フタロシアニン色素の一例(フタロシアニン誘導体、2,9,16,22−テトラモノメチルアミノコバルト(II)フタロシアニン)の構造式を示す説明図である。
【図3】同、レーザー光9の波長に対するフタロシアニン色素(フタロシアニン誘導体、図2)の吸光度を示すグラフである。
【図4】本発明の第2の実施の形態による光情報記録媒体の光記録層3に用いる第1の色素(ベース色素、オキサシアニン色素)の構造式を示す説明図である。
【図5】同、第2の色素(添加色素、アゾ色素)の構造式を示す説明図である。
【図6】同、第1および第2の色素を含む光記録層3の吸光度のグラフである。
【図7】本発明の第3の実施の形態による光情報記録媒体の光記録層3に用いる第2の色素(添加色素、シアニン色素)の構造式を示す説明図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態による光情報記録媒体の光記録層3に用いる第2の色素(添加色素、フタロシアニン色素)の構造式を示す説明図である。
【図9】同、図8におけるM=Cu(銅)、A1〜A4=フェニル基である場合の、レーザー光9の波長に対する第2の色素(フタロシアニン色素)の吸光度を示すグラフである。
【図10】同、図8におけるM=Pd(パラジウム)、A1〜A4=フェニル基である場合の、レーザー光9の波長に対する第2の色素(フタロシアニン色素)の吸光度を示すグラフである。
【図11】同、図8におけるM=Co(コバルト)、A1〜A4=フェニル基である場合の、レーザー光9の波長に対する第2の色素(フタロシアニン色素)の吸光度を示すグラフである。
【図12】本発明による色素の第1の塗布方法ないし光情報記録媒体の製造方法(第二の発明)を示す要部概略断面図である。
【図13】本発明による色素の第2の塗布方法ないし光情報記録媒体の製造方法(第三の発明)を示す要部概略断面図である。
【図14】ブルーレーザーディスク(HD−DVD)による光情報記録媒体1の概略平面図である。
【図15】同、概略断面図である。
【図16】他のブルーレーザーディスク(BD)による光情報記録媒体20の概略断面図である。
【図17】同、レーザー光の波長に対する各ディスク(CD、DVD、BDおよびHD−DVD)の吸光度のグラフである。
【符号の説明】
【0059】
1 光情報記録媒体(ブルーレーザーディスク(HD−DVD)、図14、図15)
2 透光性の基板
3 光記録層(光吸収層)
3A 第1の色素層(図13)
3B 第2の色素層(図13)
4 光反射層
5 保護層(接着層)
6 ダミー基板
7 プリグルーブ
8 ランド
9 レーザー光
10 記録ピット
11 光情報記録媒体1、20(基板2)のセンターホール(図14)
12 副情報領域(BCA記録領域)
13 システムリードイン領域
14 主情報領域(データ領域)
15 バーコード
20 光情報記録媒体(ブルーレーザーディスク(BD)、図16)
21 接着層
22 カバー層
30 マスク(図13)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する基板と、
レーザー光を吸収する色素から構成した光吸収物質を含む光記録層と、
前記レーザー光を反射する光反射層と、を有し、
前記光記録層に前記レーザー光を照射することにより光学的に読み取り可能な主情報を記録可能な主情報領域を有する光情報記録媒体であって、
前記レーザー光により前記主情報とは種類の異なる副情報を前記主情報領域とは異なる副情報領域に記録可能とし、
前記光記録層は、
波長が350〜500nmの前記レーザー光を吸収可能であるとともに、
波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の前記レーザー光により前記副情報を前記副情報領域に記録可能であることを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項2】
前記光吸収物質は、
波長が350〜500nmの前記レーザー光を吸収して前記主情報領域の前記光記録層に記録可能であるとともに、
波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の前記レーザー光を吸収して前記副情報領域の前記光記録層にBCA記録を可能とすることを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項3】
前記光吸収物質は、単一の色素を含むことを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
前記光吸収物質は、
波長が350〜500nmの前記レーザー光を吸収して前記光記録層に記録可能である第1の色素と、
波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の前記レーザー光によるBCA記録が可能な第2の色素と、を有することを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項5】
前記光吸収物質は、下記構造式(化1)のフタロシアニン色素を含むことを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
【化1】
【請求項6】
前記光吸収物質は、下記構造式(化2)のオキサシアニン色素と、下記構造式(化3)のアゾ色素と、を有することを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
【化2】
【化3】
【請求項7】
前記光吸収物質は、下記構造式(化4)のオキサシアニン色素と、下記構造式(化5)のシアニン色素と、を有することを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
【化4】
【化5】
【請求項8】
前記光吸収物質は、下記構造式(化6)のオキサシアニン色素と、下記構造式(化7)のフタロシアニン色素と、を有することを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
【化6】
【化7】
【請求項9】
前記第1の色素に対する前記第2の色素の割合は、20重量%以下、好ましくは、5〜10重量%であることを特徴とする請求項4記載の光情報記録媒体。
【請求項10】
透光性を有する基板と、
レーザー光を吸収する色素から構成した光吸収物質を含む光記録層と、
前記レーザー光を反射する光反射層と、を有し、
前記光記録層に前記レーザー光を照射することにより光学的に読み取り可能な主情報を記録可能な主情報領域を有する光情報記録媒体の製造方法であって、
波長が350〜500nmの前記レーザー光を吸収可能である第1の色素と、
波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の前記レーザー光を吸収可能であるとともに前記第1の色素に対する割合が20重量%以下である第2の色素と、を有する混合色素を、前記基板上に直接あるいは他の層を介して塗布することにより、前記光記録層を形成することを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。
【請求項11】
透光性を有する基板と、
レーザー光を吸収する色素から構成した光吸収物質を含む光記録層と、
前記レーザー光を反射する光反射層と、を有し、
前記光記録層に前記レーザー光を照射することにより光学的に読み取り可能な主情報を記録可能な主情報領域を有する光情報記録媒体の製造方法であって、
波長が350〜500nmの前記レーザー光を吸収可能である第1の色素を前記基板上に直接あるいは他の層を介して塗布することにより前記光記録層を形成したのちに、
波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の前記レーザー光を吸収可能である第2の色素を前記主情報領域とは異なる副情報領域に塗布することを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。
【請求項12】
透光性を有する基板と、
レーザー光を吸収する色素から構成した光吸収物質を含む光記録層と、
前記レーザー光を反射する光反射層と、を有し、
前記光記録層に前記レーザー光を照射することにより光学的に読み取り可能な主情報を記録可能な主情報領域を有する光情報記録媒体の製造方法であって、
波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の前記レーザー光を吸収可能である第2の色素を前記主情報領域とは異なる副情報領域に塗布したのちに、
波長が350〜500nmの前記レーザー光を吸収可能である第1の色素を前記基板上に直接あるいは他の層を介して塗布することにより前記光記録層を形成することを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。
【請求項1】
透光性を有する基板と、
レーザー光を吸収する色素から構成した光吸収物質を含む光記録層と、
前記レーザー光を反射する光反射層と、を有し、
前記光記録層に前記レーザー光を照射することにより光学的に読み取り可能な主情報を記録可能な主情報領域を有する光情報記録媒体であって、
前記レーザー光により前記主情報とは種類の異なる副情報を前記主情報領域とは異なる副情報領域に記録可能とし、
前記光記録層は、
波長が350〜500nmの前記レーザー光を吸収可能であるとともに、
波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の前記レーザー光により前記副情報を前記副情報領域に記録可能であることを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項2】
前記光吸収物質は、
波長が350〜500nmの前記レーザー光を吸収して前記主情報領域の前記光記録層に記録可能であるとともに、
波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の前記レーザー光を吸収して前記副情報領域の前記光記録層にBCA記録を可能とすることを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項3】
前記光吸収物質は、単一の色素を含むことを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
前記光吸収物質は、
波長が350〜500nmの前記レーザー光を吸収して前記光記録層に記録可能である第1の色素と、
波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の前記レーザー光によるBCA記録が可能な第2の色素と、を有することを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項5】
前記光吸収物質は、下記構造式(化1)のフタロシアニン色素を含むことを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
【化1】
【請求項6】
前記光吸収物質は、下記構造式(化2)のオキサシアニン色素と、下記構造式(化3)のアゾ色素と、を有することを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
【化2】
【化3】
【請求項7】
前記光吸収物質は、下記構造式(化4)のオキサシアニン色素と、下記構造式(化5)のシアニン色素と、を有することを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
【化4】
【化5】
【請求項8】
前記光吸収物質は、下記構造式(化6)のオキサシアニン色素と、下記構造式(化7)のフタロシアニン色素と、を有することを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
【化6】
【化7】
【請求項9】
前記第1の色素に対する前記第2の色素の割合は、20重量%以下、好ましくは、5〜10重量%であることを特徴とする請求項4記載の光情報記録媒体。
【請求項10】
透光性を有する基板と、
レーザー光を吸収する色素から構成した光吸収物質を含む光記録層と、
前記レーザー光を反射する光反射層と、を有し、
前記光記録層に前記レーザー光を照射することにより光学的に読み取り可能な主情報を記録可能な主情報領域を有する光情報記録媒体の製造方法であって、
波長が350〜500nmの前記レーザー光を吸収可能である第1の色素と、
波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の前記レーザー光を吸収可能であるとともに前記第1の色素に対する割合が20重量%以下である第2の色素と、を有する混合色素を、前記基板上に直接あるいは他の層を介して塗布することにより、前記光記録層を形成することを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。
【請求項11】
透光性を有する基板と、
レーザー光を吸収する色素から構成した光吸収物質を含む光記録層と、
前記レーザー光を反射する光反射層と、を有し、
前記光記録層に前記レーザー光を照射することにより光学的に読み取り可能な主情報を記録可能な主情報領域を有する光情報記録媒体の製造方法であって、
波長が350〜500nmの前記レーザー光を吸収可能である第1の色素を前記基板上に直接あるいは他の層を介して塗布することにより前記光記録層を形成したのちに、
波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の前記レーザー光を吸収可能である第2の色素を前記主情報領域とは異なる副情報領域に塗布することを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。
【請求項12】
透光性を有する基板と、
レーザー光を吸収する色素から構成した光吸収物質を含む光記録層と、
前記レーザー光を反射する光反射層と、を有し、
前記光記録層に前記レーザー光を照射することにより光学的に読み取り可能な主情報を記録可能な主情報領域を有する光情報記録媒体の製造方法であって、
波長が640〜680nmあるいは750〜830nmの少なくともいずれか一方の前記レーザー光を吸収可能である第2の色素を前記主情報領域とは異なる副情報領域に塗布したのちに、
波長が350〜500nmの前記レーザー光を吸収可能である第1の色素を前記基板上に直接あるいは他の層を介して塗布することにより前記光記録層を形成することを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−48771(P2006−48771A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224805(P2004−224805)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レ−ザーディスク
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レ−ザーディスク
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
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