説明

光情報記録装置および光情報再生装置

【課題】 ピックアップを軽くして、高速で記録媒体にアクセスできるようにして転送レートを向上させ、駆動手段を小型化することを目的とする。
【解決手段】 対物レンズ23および一対のリレーレンズのうち対物レンズ側のリレーレンズ19を一体として記録媒体51の照射位置に移動する第一の移動部2aと、一対の反射体15,17を一体として移動する第二の移動部2bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィを利用した光情報記録装置および光情報再生装置に係り、特に、記録媒体の所定の記録位置又は再生位置にアクセスするために対物レンズを移動させる光情報記録装置および光情報再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホログラフィを利用して記録媒体に情報を記録するホログラフィック記録は、一般的に、記録用光を構成するイメージ情報を担持した情報光と記録用参照光とを記録媒体の内部で重ね合わせ、そのときにできる干渉パターンを記録媒体に書き込むことによって行われる。記録された情報の再生時には、その記録媒体に再生用参照光を照射することにより、干渉パターンによる回折によりイメージ情報が再生される(特許文献1参照)。
【0003】
近年では、超高密度光記録のために、ボリュームホログラフィ、特にデジタルボリュームホログラフィが実用域で開発され注目を集めている。ボリュームホログラフィとは、記録媒体の厚み方向も積極的に活用して、3次元的に干渉パターンを書き込む方式であり、厚みを増すことで回折効率を高め、多重記録を用いて記録容量の増大を図ることができるという特徴がある。そして、デジタルボリュームホログラフィとは、ボリュームホログラフィと同様の記録媒体と記録方式を用いつつも、記録するイメージ情報は2値化したデジタルパターンに限定した、コンピュータ指向のホログラフィック記録方式である。このデジタルボリュームホログラフィでは、例えばアナログ的な絵のような画像情報も、一旦デジタイズして、2次元デジタルパターン情報に展開し、これをイメージ情報として記録する。再生時は、このデジタルパターン情報を読み出してデコードすることで、元の画像情報に戻して表示する。これにより、再生時にSN比(信号対雑音比)が多少悪くても、微分検出を行ったり、2値化データをコード化しエラー訂正を行ったりすることで、極めて忠実に元の情報を再現することが可能になる。
【0004】
ところで、ホログラフィック記録の方式としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等と同様にディスク状の記録媒体を採用して、記録媒体に対する情報の記録と記録媒体からの情報の再生を行うための光学系を含む光ピックアップ装置を使用する方式が有力である。
【0005】
従来の光情報記録再生装置における光ピックアップ装置は、光束を出射する光源と、この光源から出射される光束を空間的に変調することによって、情報を担持した情報光を生成する情報光生成手段と、光源から出射される光束を用いて記録用参照光を生成する記録用参照光生成手段と、光源から出射される光束を用いて再生用参照光を生成する再生用参照光生成手段と、記録媒体の情報記録層に情報光と記録用参照光との干渉による干渉パターンによって情報が記録されるように、情報光と記録用参照光とを情報記録層に対して照射し、再生用参照光を情報記録層に対して照射すると共に、再生用参照光が照射されることによって情報記録層より発生される再生光を収集する記録再生光学系と、この記録再生光学系によって収集された再生光を検出する検出手段とを有していた(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−311938号公報(請求項17参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した特許文献1に記載されている従来の光情報記録再生装置は、所定の記録位置又は再生位置に記録又は再生するため、光ピックアップ装置全体を記録媒体の半径方向に移動させてスライドサーボを行っていた。しかしながら、光ピックアップ装置は、光源、情報光生成手段、記録用参照光生成手段、再生用参照光生成手段、記録再生光学系および検出手段を含むため、体積が大きく重量が重かった。このため、光ピックアップ装置を駆動させる駆動手段が大型化し、その結果光情報記録再生装置も大型化してしまっていた。
【0008】
また、従来の光情報記録再生装置は、光ピックアップ装置が重く、慣性が働くため、光ピックアップ装置を高速で記録媒体にアクセスすることができず、転送レートが低下してしまっていた。
【0009】
従来、ホログラフィを利用していない光情報記録再生装置であるCDドライブやDVDドライブにおいては、移動する部分の体積を小さくし、重量を軽くするために、対物レンズを光源側と分離して記録媒体の照射位置に合わせて移動させていた。これは、CDドライブやDVDドライブにおいては、光学系が光の強度(エネルギー)のみを伝えることができれば良かったため可能であった。
【0010】
しかしながら、ホログラフィック記録再生の光学系は、対物レンズによって空間的に変調された情報光および記録用参照光を記録媒体に照射し、記録媒体の情報記録層において干渉させて記録するものであるから、対物レンズの入射瞳面において、少なくとも空間光変調器(情報表現手段)によって空間的に変調された情報光を結像させる必要があった。また、再生する時は、再生用参照光によって記録媒体の情報記録層から発生した再生光の対物レンズの射出瞳面における像を最終的には検出手段において結像させる必要があった。
【0011】
このため、焦点距離fの等しい一対のリレーレンズを設け、空間光変調器(情報表現手段)に表示された像を対物レンズの入射瞳面において結像させ、対物レンズの射出瞳面に再生された像を検出手段において結像させていた。すなわち、空間光変調器(情報表現手段)および検出手段から焦点距離f離れた位置に第一のリレーレンズを配置し、第一のリレーレンズから焦点距離fの2倍離れた位置に第二のリレーレンズを配置し、第二のリレーレンズから焦点距離f離れた位置に入射瞳面が位置するように対物レンズを配置した、4f系の光学系としている。
【0012】
かかるホログラフィック記録再生において、従来、ホログラフィを利用していないCDドライブやDVDドライブで採用されていたように対物レンズを分離して移動させると、対物レンズの入射瞳面の位置も移動するので、対物レンズと第二のリレーレンズとの距離も変化してしまう。
【0013】
図4は、ホログラフィック記録の光学系において空間光変調器(情報表現手段)および検出手段101の位置を固定して、対物レンズ109の位置を移動させた時に必要とされる光学系を示す図である。図4において、記録媒体111は、半径方向の断面を示しており、図4中右側に記録媒体111の回転中心が存在する。
【0014】
図4(A)に示すように、記録媒体111の外周側(図4中左側)に光情報を記録したり記録媒体111の外周側から光情報を再生する場合、空間光変調器:光検出器101の表示面:入射面101aと対物レンズ109の入射瞳面:出射瞳面109a(図4(A)においては、ミラー107の位置)とが共役な関係となり、両位置において像を結像させるため、表示面:入射面101a、第一のリレーレンズ103、一対のリレーレンズ103および105の焦点f、第二のリレーレンズ105および入射瞳面:出射瞳面109aの位置関係が、それぞれ第一の焦点距離f1の間隔に設定されなければならない。なお、記録時における用語や符号の後に「:」で続けて再生時における用語や符号を記載する。以下同じ。
【0015】
そして、図4(B)に示すように、空間光変調器:検出手段101の位置を固定して、対物レンズ109の位置を記録媒体111の内周側(図4中右側)に移動した場合、空間光変調器:光検出器101の表示面:入射面101aと対物レンズ109の入射瞳面:出射瞳面109a(図4(A)においては、ミラー107の位置)とが共役な関係となり、両位置において像を結像させるためには、上記各部材の位置関係が、それぞれ第二の焦点距離f2の間隔に設定されなければならない。
【0016】
このように記録媒体111の外周側と内周側のいずれにおいても表示面:入射面101aと入射瞳面:出射瞳面109aとで像を結像させるためには、一対のリレーレンズ103および105の焦点距離(厚み)を変化させなければならなかった。このため、従来CDドライブやDVDドライブにおいて採用されていたような対物レンズのみを移動させるような構成は、ホログラフィック記録においては採用することができないとされており、空間光変調器:光検出器101から対物レンズ109までの光学系を一体として移動させていたのである。
【0017】
本発明は、以上の点を鑑みて、光ピックアップ装置の移動する部分を軽くして、高速で記録媒体にアクセスできるようにして転送レートを向上させることおよび駆動手段を小型化し、その結果光情報記録装置および光情報再生装置も小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述した目的を達成するため本発明の光情報記録装置は、光源と、前記光源からの光に情報を担持させて情報光を生成する空間光変調器と、前記光源からの光から参照光を生成する参照光生成手段と、前記情報光および前記参照光を記録媒体に照射する対物レンズとを有するホログラフィを利用した光情報記録装置において、前記空間光変調器から前記対物レンズまでの間に配置された一対のリレーレンズと、前記一対のリレーレンズの間に配置された反射面が直交する一対の反射体とを有し、前記対物レンズおよび前記一対のリレーレンズのうち対物レンズ側のリレーレンズを一体として前記記録媒体の照射位置に移動する第一の移動部と、前記一対の反射体を一体として移動する第二の移動部とを備えたことを特徴とする。
【0019】
更に、上記光情報記録装置において、前記第一および第二の移動部の移動を制御する制御手段を有し、前記制御手段は、前記第一の移動部を移動させると共に、前記第二の移動部を前記第一の移動部と同じ向きに前記第一の移動部の移動距離の半分の距離を移動させることを特徴とする。
【0020】
前述した目的を達成するため本発明の光情報再生装置は、光源と、前記光源からの光から参照光を生成する参照光生成手段と、前記参照光を記録媒体に照射し、前記記録媒体から発生した再生光が入射する対物レンズと、前記再生光を検出する検出手段とを有するホログラフィを利用した光情報再生装置において、前記対物レンズから前記検出手段までの間に配置された一対のリレーレンズと、前記一対のリレーレンズの間に配置された反射面が直交する一対の反射体とを有し、前記対物レンズおよび前記一対のリレーレンズのうち対物レンズ側のリレーレンズを一体として前記記録媒体の照射位置に移動する第一の移動部と、前記一対の反射体を一体として移動する第二の移動部とを備えたことを特徴とする。
【0021】
更に、上記光情報再生装置において、前記第一および第二の移動部の移動を制御する制御手段を有し、前記制御手段は、前記第一の移動部を移動させると共に、前記第二の移動部を前記第一の移動部と同じ向きに前記第一の移動部の移動距離の半分の距離を移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の光情報記録装置においては、空間光変調器から対物レンズまでの間に配置された一対のリレーレンズと、一対のリレーレンズの間に配置された反射面が直交する一対の反射体とを有し、対物レンズおよび一対のリレーレンズのうち対物レンズ側のリレーレンズを一体として記録媒体の照射位置に移動する第一の移動部と、一対の反射体を一体として移動する第二の移動部とを備えているため、一対のリレーレンズの間の距離を一定に保った上で、対物レンズの相対的な位置関係を変えることができる。よって、本発明の光情報記録装置では、ピックアップ全体ではなく、第一および第二の移動部を移動させることで記録媒体の所定の照射位置にスライドすることができる。そして、光ピックアップ装置の移動する部分が軽くなるので、駆動手段を小型化することができ、光情報記録装置も小型化することができる。更に光ピックアップ装置の移動する部分が軽くなるので、高速で記録媒体にアクセスすることができ、転送レートを向上させることができる。
【0023】
また、本発明の光情報再生装置においては、対物レンズから検出手段までの間に配置された一対のリレーレンズと、一対のリレーレンズの間に配置された反射面が直交する一対の反射体とを有し、対物レンズおよび一対のリレーレンズのうち対物レンズ側のリレーレンズを一体として記録媒体の照射位置に移動する第一の移動部と、一対の反射体を一体として移動する第二の移動部とを備えているため、一対のリレーレンズの間の距離を一定に保った上で、対物レンズの相対的な位置関係を変えることができる。よって、本発明の光情報再生装置では、ピックアップ全体ではなく、第一および第二の移動部を移動させることで記録媒体の所定の照射位置にスライドすることができる。そして、光ピックアップ装置の移動する部分が軽くなるので、駆動手段を小型化することができ、光情報再生装置も小型化することができる。更に光ピックアップ装置の移動する部分が軽くなるので、高速で記録媒体にアクセスすることができ、転送レートを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。
【0025】
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る光情報記録再生装置1の全体的な構成について説明する。この光情報記録再生装置1は、記録媒体51が取り付けられる取付部61と、ピックアップ2と、ピックアップ駆動手段62と、制御手段63とを備えている。
【0026】
記録媒体51は、ホログラムを記録する情報記録層を有している。記録媒体51として、ディスク状の記録媒体を使用し、回転させつつ記録再生を行う方式の場合は、CDドライブやDVDドライブにおいて使用されているディスク駆動機構を使用することができ、更には、CDドライブやDVDドライブとの互換性を持たせることも容易になるので好ましい。この場合、光情報記録再生装置1は、取り付け部61を駆動して記録媒体51を回転させる記録媒体駆動手段64を備えており、記録媒体51の回転速度を所定の値に保つように制御手段63によって記録媒体駆動手段64が制御される。
【0027】
後述する図2および図3では、ディスク状の記録媒体51を回転させる形態を示すが、記録媒体51としては、ディスク状に限定されるものではなく、また記録媒体51を回転させなくともよい。例えば、カード状の記録媒体51を使用して、所定の位置にピックアップを移動させる場合であっても本件発明を適用することができる。
【0028】
また、記録媒体51に、位置決め用の情報を予め記録しておき、ピックアップ2の位置決めにフィードバック機構を採用すると、より正確な位置決めを行うことができ好ましい。この点については、特許文献1に詳述している。
【0029】
ピックアップ2は、記録媒体51に対して情報光と記録用参照光とを照射して情報を記録すると共に、記録媒体51に対して再生用参照光を照射し、再生光を検出して、記録媒体1に記録されている情報を再生するものである。ピックアップ2は、記録媒体51の記録位置又は再生位置に移動可能とされた第一の移動部2aと、第一の移動部2aの動きに連動して移動する第二の移動部2bとを有している。
【0030】
ピックアップ2によって記録媒体51から再生された情報は、制御手段63に送られ、制御手段63の信号処理機能によってデコードされる。また、ピックアップ2に記録媒体51の位置決め用の情報を読み取るための機能を持たせた場合は、ピックアップ2によって記録媒体51から得られた位置決め用の情報は、制御手段63に送られ、制御手段63の検出機能によって位置のずれを検出し、ピックアップ駆動手段62またはピックアップ2内のアクチュエータにフィードバックされる。なお、ピックアップ2内のアクチュエータは、対物レンズの焦点を合わせるフォーカスサーボや微少なトラック位置を合わせるトラッキングサーボなどを行うために、ピックアップ2そのものではなく、ピックアップ2内の対物レンズ等の光学素子を僅かに移動する機構である。
【0031】
ピックアップ駆動手段62は、第一の移動部2aと第二の移動部2bを移動する手段をそれぞれ独立して有していてもいいし、一部共通していてもよい。後述するように、第一の移動部2a及び第二の移動部2bは、移動軸が同じであるから、ピックアップ駆動手段62の一部を共通化させることが可能である。例えば、同じ搬送レールを使用することができる。部品を共通化させると、小型化および軽量化に有効であり、製造コストも削減することができるので好ましい。ピックアップ駆動手段62として、例えばリニアモータを使用することができる。
【0032】
制御手段63は、CPU(中央処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)およびRAM(ランダム・アクセス・メモリ)を有し、CPUが、RAMを作業領域として、ROMに格納されたプログラムを実行することによって、制御手段63の機能を実現するようになっている。制御手段63は、ピックアップ駆動手段62を制御して、ピックアップ2の第一の移動部2aおよび第二の移動部2bの移動を制御する。更に、記録する情報を信号処理機能によってエンコードして、ピックアップ2の空間光変調器に送り、ピックアップ2によって記録媒体51に情報を記録させる。
【0033】
図2は、本発明に係る光情報記録再生装置のピックアップ2の概略平面図を示すものであり、図3は、図2のピックアップ2において照射位置を移動させた状態を示す図である。図2および図3に示すように、本発明のピックアップ2は、記録および再生用の光源3と、コリメータレンズ5、第一の偏光ビームスプリッタ7、空間光変調器9と、第二の偏光ビームスプリッタ11、第一のリレーレンズ13、一対の反射体15および17、第二のリレーレンズ19、ミラー21、対物レンズ23、検出手段25を有している。
【0034】
そして、対物レンズ23、ミラー21および第二のリレーレンズ19を一体的に移動する第一の移動部2aと、一対の反射体15および17を一体的に移動する第二の移動部2bを備えている。本実施形態においては、ピックアップ2のその他の部材をひとまとまりにして固定部2cとしている。
【0035】
記録再生用光源3としては、コヒーレントな直線偏光の光線束を発生するもので、例えば半導体レーザを用いることができる。この記録再生用光源3としては、高密度記録を行うために波長が短い方が有利であり、青色レーザやグリーンレーザを採用することが好ましい。
【0036】
コリメータレンズ5は記録再生用光源3からの発散光線束をほぼ平行光線とするものである。第一の偏光ビームスプリッタ7は、直線偏光(例えばP偏光)を反射または透過し、当該偏光に垂直な直線偏光(例えばS偏光)を透過または反射するような半反射面を有している。図2においては、第一の偏光ビームスプリッタ7は、記録再生用光源3から発生された光線束を空間光変調器9に向けて反射し、空間光変調器9で偏光方向が90度回転された情報光および記録用参照光を透過する。
【0037】
空間光変調器9は、格子状に配列された多数の画素を有し、各画素毎に出射光の位相又は/および強度を変調することができる透過型又は反射型の空間光変調器を使用することができる。空間光変調器としては、DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)やマトリクス型の液晶素子を使用することができる。DMDは、入射した光を画素ごとに反射方向を変えることで強度を変調したり、入射した光を画素ごとに反射位置を変えることで位相を空間的に変調することができる。液晶素子は、画素ごとに液晶の配向状態を制御することで、入射した光の強度や位相を空間的に変調することができる。例えば、各画素毎に出射光の位相を、互いにπラジアンだけ異なる2つの値のいずれかに設定することによって、光の位相を空間的に変調することができる。空間光変調器は、更に、入射光の偏光方向に対して、出射光の偏光方向を90°回転させるようになっている。
【0038】
そして、空間光変調器9の表示面に表示された2次元デジタルパターン情報によって、光源3からの光を空間的に変調することにより、2次元デジタルパターン情報を担持した情報光を生成することができる。
【0039】
また、図2において、空間光変調器9は、光源の光から記録時における記録用の参照光および再生時における再生用の参照光を生成する参照光生成手段としても機能する。図2に示すように、一つの空間光変調器によって 情報光および参照光を形成する場合は、空間光変調器に二つの領域を設けて、一方の領域において情報光を形成し、他方の領域において参照光を形成すればよい。
【0040】
参照光生成手段は、空間光変調器9とは別に設けることもできる。例えば、光源3からの光を分割して、一方の光を空間光変調器9によって情報光を生成し、他方の光を参照光としてもよい。この場合、光源3からの光を分割する光学素子を含めた他方の光を伝搬する光学系が参照光生成手段となる。
【0041】
更に、他方の光を伝搬する光学系の中に別の空間光変調器を設けて、参照光を空間的に変調してもよい。この場合は、情報光と同様に、参照光の2次元デジタルパターン情報を対物レンズ23の入射瞳面において結像させる必要があるため、情報光を生成する空間光変調器と参照光を生成する空間光変調器を共役な関係とし、一対のリレーレンズによって伝搬させる。
【0042】
第二の偏光ビームスプリッタ11は、再生時において、再生用の参照光を透過し、参照光によって記録媒体51から発生した再生光を検出手段25に向けて反射する。
【0043】
第一および第二のリレーレンズ13および19は、空間光変調器9から対物レンズ23までの間に配置されており、空間光変調器9に表示された像を対物レンズ23の入射瞳面に結像するように配置されている。すなわち、空間光変調器9から第一のリレーレンズ13までの距離が第一のリレーレンズ13の焦点距離f1となり、第二のリレーレンズ19から対物レンズ23の入射瞳面までの距離が第二のリレーレンズ19の焦点距離f2となり、第一および第二のリレーレンズ13、19間の距離が第一のリレーレンズ13の焦点距離f1と第二のリレーレンズ19の焦点距離f2の和となるように配置されている。
【0044】
また、図2において、第一および第二のリレーレンズ13および19は、対物レンズ23から検出手段25までの間に配置されており、再生用参照光によって記録媒体の情報記録層から発生した再生光の対物レンズ23の射出瞳面における像を再び実像として結像するように配置されている。すなわち、対物レンズ23の射出瞳面から第二のリレーレンズ19までの距離が焦点距離f2となり、第一のリレーレンズ13から検出手段25までの距離が焦点距離f1となり、第一および第二のリレーレンズ13、19間の距離が焦点距離f1と焦点距離f2の和となるように配置されている。
【0045】
なお、上記一対のリレーレンズ13,19の配置は、他の光学素子を適宜配置することで変化する。例えば、第一のリレーレンズ13から検出手段25までの間に拡大レンズを配置すれば、第一のリレーレンズ13と拡大レンズの入射瞳面までの距離が焦点距離f1となるように配置される。
【0046】
一対の反射体15および17は、一対のリレーレンズ13および19の間に配置されており、両者の反射面が直交するように配置されている。そして、一対の反射体15および17によって、並列に配置された一対のリレーレンズ13および19間で光が伝搬される。すなわち、第一の反射体15は、第一のリレーレンズ13からの光を第二の反射体17に向けて反射し、第二の反射体17は、第一の反射体15からの光を第二のリレーレンズ19に向けて反射する。反射体15、17としては、光の進行方向を変更できれば特に制限されず、ミラーやプリズム等を使用することができる。
【0047】
ミラー21は、第二のリレーレンズ19からの光を対物レンズ23に向けて反射するものである。更に、ミラー21と対物レンズ23の間には、図示しない4分の1波長板が配置されている。4分の1波長板は、互いに垂直な方向に振動する偏光の光路差を4分の1波長変化させる位相板である。4分の1波長板によってP偏光の光は円偏光に変化され、さらに、この円偏光の光が4分の1波長板を通過するとS偏光に変化されることになる。この4分の1波長板によって、再生時における再生用参照光と再生光を第二の偏光ビームスプリッタ11で分離することができる。
【0048】
対物レンズ23は、記録時においては、入射瞳面に結像した情報光および参照光を記録媒体51に照射し、情報記録層において干渉させて記録するものであり、また再生時においては、入射瞳面に結像した参照光を記録媒体51に照射し、記録媒体51から発生した再生光を入射して射出瞳面に結像するものである。
【0049】
検出手段25は、格子状に配列された多数の画素を有し、各画素毎に受光した光の強度を検出できるようになっている。光検出器25としては、CCD型固体撮像素子やMOS型固体撮像素子を用いることができる。また、光検出器25として、MOS型固体撮像素子と信号処理回路とが1チップ上に集積されたスマート光センサ(例えば、文献「O plus E,1996年9月,No.202,第93〜99ページ」参照。)を用いてもよい。このスマート光センサは、転送レートが大きく、高速な演算機能を有するので、このスマート光センサを用いることにより、高速な再生が可能となり、例えば、G(ギガ)ビット/秒オーダの転送レートで再生を行うことが可能となる。
【0050】
第一の移動部2aは、少なくとも対物レンズ23および第二のリレーレンズ19を有しており、ピックアップ駆動手段62によって記録媒体51の記録位置又は再生位置に一体的に移動可能とされている。図2においては、第二のリレーレンズ19以降のミラー21、4分の1波長板、対物レンズ23が第一の移動部2aとして一体的に移動し、スライドされる。
【0051】
第二の移動部2bは、少なくとも一対の反射体14,17を有し、ピックアップ駆動手段62によって第一の移動部2aの動きに連動して移動される。第二の移動部2bは、第一の移動部2aがスライドすることで、第一のリレーレンズ13との相対的な位置関係が変化しても、第一のリレーレンズ13から第二のリレーレンズ19までの距離を一定に保つためのものである。
【0052】
次に、図1および図2に示す記録および再生装置1の記録時の動作を説明する。光源3から射出した光は、コリメータレンズ5によって平行光とされ、その平行光を第一の偏光ビームスプリッタ7によって空間光変調器9に向けて反射する。平行光は、空間光変調器9に表現された2次元デジタルパターン情報によって情報光および記録用参照光となる。情報光および記録用参照光は、一対のリレーレンズ13および19によって、対物レンズ23の入射瞳面に空間光変調器9で表現された2次元デジタルパターン情報を結像するように伝搬される。その途中、一対の反射体14および17によって反射され、更にミラー21で対物レンズ23に向けて反射され、4分の1波長板(図示せず)を通過する。そして、対物レンズ23によって記録媒体51に照射され、記録媒体51の情報記録層に情報光および記録用参照光の干渉パターンを記録する。
【0053】
この記録装置1において、照射位置を変更した場合を図3を用いて説明する。図3は、第一の移動部2aが、図2における照射位置Xから、ピックアップ駆動手段64によって記録媒体51の外周側の照射位置Yまで図面左方向に距離Lだけ移動した状態である。この時、第二の移動部2bも、図2における位置2b’(図3においてはその一部を一点鎖線で示す)から、ピックアップ駆動手段64によって第一の移動部2aの移動方向と同じ方向(図面左方向)に距離L/2だけ移動する。このため、第一のリレーレンズ13と第二のリレーレンズ19との距離を変えることなく、記録媒体51における照射位置を変更することができるのである。
【0054】
つまり、第一の移動部2aが図面左方向に距離Lだけ移動すると、第一の移動部2aと第二の移動部2bとの距離が距離Lだけ短くなる。しかし、第二の移動部2bが同じ方向に距離L/2移動するので、第二の移動部2bと第一の移動部2aとの距離が距離L/2長くなり、第二の移動部2bと固定部2cとの距離が距離L/2長くなる。結局、第一の移動部2aから第二の移動部2bを介した固定部2cまでの距離は、(−L)+(L/2)+(L/2)=0で変化しない。従って、第一の移動部2aの第二のリレーレンズ19と固定部2cの第一のリレーレンズ13との距離は変わらないのである。
【0055】
なお、逆方向に移動した場合も同じである。第一の移動部2aが図面右方向に距離Lだけ移動したとすると、第一の移動部2aと第二の移動部2bとの距離が距離Lだけ長くなるが、第二の移動部2bが同じ方向に距離L/2移動するので、第二の移動部2bと第一の移動部2aとの距離が距離L/2短くなり、第二の移動部2bと固定部2cとの距離が距離L/2短くなる。結局、第一の移動部2aから第二の移動部2bを介した固定部2cまでの距離は、(L)+(−L/2)+(−L/2)=0で変化しない。
【0056】
以上のとおり、図3の位置においても、空間光変調器9において表示された2次元デジタルパターン情報を対物レンズ23の入射瞳面において結像させることができ、ホログラフィック記録を行うことができる。
【0057】
更に、図1および図2に示す記録および再生装置1の再生時の動作を説明する。光源3から射出した光は、コリメータレンズ5によって平行光とされ、その平行光を第一の偏光ビームスプリッタ7によって空間光変調器9に向けて反射する。空間光変調器9に表現された2次元デジタルパターン情報によって再生用参照光が生成される。再生用参照光は、第二の偏光ビームスプリッタ11を透過して、一対のリレーレンズ13および19によって、対物レンズ23の入射瞳面に空間光変調器9で表現された2次元デジタルパターン情報を結像するように伝搬される。その途中、一対の反射体14および17によって反射され、更にミラー21で対物レンズ23に向けて反射され、4分の1波長板(図示せず)を通過する。そして、対物レンズ23によって記録媒体51に照射され、記録媒体51の情報記録層に記録された干渉パターンと干渉して再生光を発生する。
【0058】
再生光は、記録媒体51の反射層によって反射され、記録媒体51から対物レンズ23に向かって射出する。そして、再生光は、対物レンズ23によって、射出瞳面に再生光の2次元デジタルパターン情報が再生され、一対のリレーレンズ13および19によって、検出手段25に結像するように伝搬される。その途中、4分の1波長板を通過し、ミラー21で一対のリレーレンズ13および19に向けて反射され、一対の反射体14および17によって反射され、偏光ビームスプリッタ11で反射される。そして、検出手段25で再生光の2次元デジタルパターン情報を検出し、情報を再生する。
【0059】
この再生装置1において、照射位置を変更した場合を図3を用いて説明する。図3に示すように、図2における照射位置Xから、ピックアップ駆動手段64によって第一の移動部2aの位置を記録媒体51の外周側の照射位置Yまで距離Lだけ移動させる。この時、ピックアップ駆動手段64によって第二の移動部2bの位置も、第一の移動部2aの移動方向と同じ方向に距離L/2だけ移動させることにより、前述した通り、第一のリレーレンズ13と第二のリレーレンズ19との距離を変えることなく、記録媒体51における照射位置を変更することができる。
【0060】
従って、図3の位置においても、空間光変調器9において表示された参照光の2次元デジタルパターン情報を対物レンズ23の入射瞳面において結像させることができ、対物レンズ23の射出瞳面に再生された再生光の像を検出手段によって検出できるので、ホログラフィック記録の再生を行うことができる。
【0061】
本発明において、ピックアップ2のその他の部材の集合2cを固定部とすることが、構成の単純化及び転送レートの面で好ましいが、固定部に限定されるものではない。集合2cを第三の移動部とした場合であっても、第一の移動部2aの移動距離をxとし、第二の移動部2bの移動距離をyとし、第三の移動部2cその移動距離をzとした時に、x−2y+z=0(移動方向が逆の場合は移動距離の符号を逆にする)となるように制御すれば、第一のリレーレンズと第二のリレーレンズとの距離を一定に保った上で相対的な位置関係を変えることができる。
【0062】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態における光情報記録再生装置の記録時に使用する部分だけを用いれば光情報記録装置とすることができ、再生時に使用する部分だけを用いれば光情報再生装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施形態の光情報記録再生装置の概略構成図
【図2】本発明に係る光情報記録再生装置のピックアップの概略平面図
【図3】図2のピックアップにおいて照射位置を移動させた状態を示す図
【図4】(A)および(B)は、本発明の課題を説明する図
【符号の説明】
【0064】
1 光情報記録再生装置
2 ピックアップ
2a 第一の移動部
2b 第二の移動部
3 光源
9 空間光変調器
13,19 リレーレンズ
15,17 反射体
23 対物レンズ
25 検出手段
51 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源からの光に情報を担持させて情報光を生成する空間光変調器と、前記光源からの光から参照光を生成する参照光生成手段と、前記情報光および前記参照光を記録媒体に照射する対物レンズとを有するホログラフィを利用した光情報記録装置において、
前記空間光変調器から前記対物レンズまでの間に配置された一対のリレーレンズと、
前記一対のリレーレンズの間に配置された反射面が直交する一対の反射体とを有し、
前記対物レンズおよび前記一対のリレーレンズのうち対物レンズ側のリレーレンズを一体として前記記録媒体の照射位置に移動する第一の移動部と、前記一対の反射体を一体として移動する第二の移動部とを備えたことを特徴とする光情報記録装置。
【請求項2】
前記第一および第二の移動部の移動を制御する制御手段を有し、
前記制御手段は、前記第一の移動部を移動させると共に、前記第二の移動部を前記第一の移動部と同じ向きに前記第一の移動部の移動距離の半分の距離を移動させることを特徴とする請求項1に記載の光情報記録装置。
【請求項3】
光源と、前記光源からの光から参照光を生成する参照光生成手段と、前記参照光を記録媒体に照射し、前記記録媒体から発生した再生光が入射する対物レンズと、前記再生光を検出する検出手段とを有するホログラフィを利用した光情報再生装置において、
前記対物レンズから前記検出手段までの間に配置された一対のリレーレンズと、
前記一対のリレーレンズの間に配置された反射面が直交する一対の反射体とを有し、
前記対物レンズおよび前記一対のリレーレンズのうち対物レンズ側のリレーレンズを一体として前記記録媒体の照射位置に移動する第一の移動部と、前記一対の反射体を一体として移動する第二の移動部とを備えたことを特徴とする光情報再生装置。
【請求項4】
前記第一および第二の移動部の移動を制御する制御手段を有し、
前記制御手段は、前記第一の移動部を移動させると共に、前記第二の移動部を前記第一の移動部と同じ向きに前記第一の移動部の移動距離の半分の距離を移動させることを特徴とする請求項3に記載の光情報再生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−53998(P2006−53998A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235105(P2004−235105)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(500112179)株式会社オプトウエア (22)
【Fターム(参考)】