光拡散フィルム
【課題】一般的に使用されている拡散剤を使用しなくても、良好な拡散特性を有し、あらゆる使用環境に対して十分な耐性を示す、照明装置や液晶表示装置の光拡散部材として特に有用な光拡散フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材の少なくとも一方の表面に薄膜を形成して積層体を得、該積層体を面内の少なくとも一つの軸方向に収縮させて薄膜を褶曲させることによって、少なくとも一方の表面に複数の畝状凸レンズ部を有するフィルムを含んで成り、少なくとも一組の隣接する畝状凸レンズ部の曲率が互いに異なっている、光拡散フィルムを得る。
【解決手段】透明基材の少なくとも一方の表面に薄膜を形成して積層体を得、該積層体を面内の少なくとも一つの軸方向に収縮させて薄膜を褶曲させることによって、少なくとも一方の表面に複数の畝状凸レンズ部を有するフィルムを含んで成り、少なくとも一組の隣接する畝状凸レンズ部の曲率が互いに異なっている、光拡散フィルムを得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散フィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、良好な拡散特性を有し、あらゆる使用環境に対して十分な耐性を示し、照明装置や液晶表示装置の光拡散部材として特に有用な光拡散フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光拡散部材は液晶ディスプレイ(LCD)などの表示品位の向上、視野角特性の改良などに用いられている。
【0003】
光拡散フィルムとして、透明樹脂中に粒子や繊維を分散させ樹脂−粒子間の界面反射または粒子や繊維の浮き出しによる表面微細凹凸を利用して拡散性を付与したもの、また透明フィルムの表面に微細な立体構造を形成し構造体の屈折を利用して拡散性を付与したものが知られている。
粒子を配合した光拡散フィルムとして、特許文献1には、少なくとも透明樹脂(a)およびガラス繊維(b)からなり、少なくとも片面の表面十点平均粗さ(Rz)が3μm以上100μm以下で、かつ凹凸の平均間隔(Sm)が0.1μm以上、5μm以下である光拡散フィルムおよび、片面の表面十点平均粗さ(Rz)が3μm以上100μ以下で、かつ凹凸 の平均間隔(Sm)が0.1μm以上50μm以下であり、反対面の表面十点平均粗さ(Rz)が3μm未満、または凹凸の平均間隔(Sm)が50μm以上である光拡散フィルムが開示されている。
【0004】
特許文献2には、織編物の織糸間又は編糸間に形成される空隙部にバインダー樹脂が充填され、該織編物の少なくとも片面に織り目又は編み目パターンに対応した凹凸形状が形成されてなることを特徴とする光拡散フィルムが開示されている。
【0005】
特許文献3には、液晶表示装置のバックライトユニットに用いられる前後方向の拡散能と左右方向の拡散能とが異なる光拡散手段を備える光拡散フィルムが開示されている。この光拡散手段として、フィルム面に形成した縦割紡錘形状の凸部若しくは凹部又は底面が長方形の四角錐状の凸部若しくは凹部、フィルム内に中心軸を前後方向又は左右方向に向けて分散させた紡錘形状の光拡散剤、及び紡錘形状の光拡散剤を同様に分散させた光拡散層が開示されている。
【0006】
しかしながら、粒子や繊維を配合した光拡散部材は、入射した光を各方位に無差別に均一に拡散する特性を有するため、入射した偏光は該光拡散部材で自然光になってしまう。また、液晶ディスプレイのように偏光を利用する装置では、光源からの光の利用効率が低下し、低輝度になってしまう。
【0007】
【特許文献1】特開2005−326492号公報
【特許文献2】特開2005−189583号公報
【特許文献3】特開2000−292790号公報
【0008】
表面に立体構造を形成した光拡散フィルムとして、特許文献4には、透光性フィルムの一面に凹凸形状が設けられていて、この凹凸形状の断面形状が、Y=a・sin(bX)で表される正弦曲面である光拡散フィルムが開示されている。この光拡散フィルムは、光拡散部材として不十分な光拡散性しか示さなかった。
【0009】
特許文献5には、規則的な波型もしくは多数の平行な山部からなり、その波型もしくは多数の平行な山部に微細な凹凸加工が施されている構造面を有する光拡散フィルムが開示されている。しかしながら、この光拡散フィルムは、規則的な構造を形成した後、微細な凹凸加工を施すため、製造工程が煩雑になるといった問題を有していた。
【0010】
特許文献6には、第一の表面がフィルムに入射した光を拡散させるため働くように第二の表面構造関数で変調された第一の表面構造関数で定義される第一の表面を含む光学フィルムであって、第一の表面構造関数はマイクロレンズ構造物の機能を有すると共に、第二の表面構造関数は拡散光を与える機能を有する光拡散フィルムが開示されている。該光拡散フィルムは、レンズの高さ、位相、周波数をランダム化しているため、光が拡散する方向に対しては一様な拡散性を示すといった、一般的な拡散部材と類似した拡散特性を有する。そのため、液晶ディスプレイのバックライト部材として使用した場合、視野角特性に問題が生じることがあった。また、該光拡散フィルムのパターン部を硬化樹脂を用いて作製した場合、基材層と硬化樹脂層との間で膨張係数等の特性が大きく異なるため、使用環境によってはフィルムのそりが顕著に見られる等の問題を有していた。
【0011】
【特許文献4】特開平6−43310号公報
【特許文献5】特開平6−148408号公報
【特許文献6】特開2005−234538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、液晶ディスプレイのバックライトに好適に利用できる光拡散フィルムを提供するものである。本発明の目的は、一般的に使用されている拡散剤を使用しなくても、入射光を効果的に拡散することができ、液晶ディスプレイのバックライト部材として使用した場合には視野角特性を改善でき、且つあらゆる使用環境に対して十分な耐性を示す光拡散フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、フィルム表面の少なくとも一方の表面に、複数の畝状凸レンズ部を形成し、かつ各レンズ部の曲率をランダム化することにより、良好な拡散特性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1)少なくとも一方の表面に複数の畝状凸レンズ部を有するフィルムを含んで成り、少なくとも一組の隣接する畝状凸レンズ部の曲率が互いに異なっている、光拡散フィルム。
(2)前記畝状凸レンズ部の頂は円弧状に湾曲しており、該湾曲部の曲率半径の平均値Xrは0.1μm以上であり、該湾曲部の曲率半径の標準偏差σrはXrに対してσr/Xr=0.05〜0.8であり、且つ畝状凸レンズ部の高さと畝状凸レンズ部間の間隔との比(アスペクト比)の平均値が0.1〜4.0である、光拡散フィルム。
(3)畝状凸レンズ部間の間隔の平均値Xpが0.2〜40μmであり、且つ畝状凸レンズ部間の間隔の標準偏差σpがXpに対してσp/Xp=0.1〜0.9である、前記の光拡散フィルム。
(4)全光線透過率が75%以上で、且つヘイズが70%以上である、前記の光拡散フィルム。
(5)前記畝状凸レンズ部の上に積層され且つ前記畝状凸レンズ部の形状に対応するように褶曲している薄膜層をさらに含み、薄膜層側の表面が前記畝状凸レンズ部の形状の浮き出しで起伏している前記の光拡散フィルム。
(6)平板状の透明基材の少なくとも一方の表面に薄膜を形成して積層体を得る工程、および該積層体を面内の少なくとも一つの軸方向に収縮させて薄膜を褶曲させる工程を含む、前記の光拡散フィルムの製造方法。
(7)前記の光拡散フィルムを備える照明装置。
(8)前記の光拡散フィルムを備える液晶表示装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光拡散フィルムは、一般的に使用されている拡散剤を使用しなくても、入射光を効果的に拡散することができ、また液晶ディスプレイのバックライト部材として使用した場合には視野角特性を改善できる。また、あらゆる使用環境に対して十分な耐性を示す。本発明の光拡散フィルムを液晶表示装置に用いれば、プリズムレンズなどの光学変調部材を別に備える必要が無くなり、装置全体を軽量、薄型にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】光拡散フィルムの形状による拡散特性の影響を示す図
【図2】光拡散フィルムのσr/Xrによる拡散特性の影響を示す図
【図3】本発明の光拡散フィルムの一例の表面走査型電子顕微鏡写真像を示す図
【図4】本発明の光拡散フィルムの別の一例の表面走査型電子顕微鏡写真像を示す図
【図5】本発明で得られる構造の断面模式図
【図6】本発明で得られる構造の断面模式図
【図7】実施例1で得られた光拡散フィルム1の断面を観察した表面走査型電子顕微鏡像を示す図
【図8】光拡散フィルム1の出射光の拡散特性を示す図
【図9】光拡散フィルム2の出射光の拡散特性を示す図
【図10】光拡散フィルム3の出射光の拡散特性を示す図
【図11】照明装置(光拡散フィルム1〜3)の出射光の拡散特性を示す図
【図12】光拡散フィルム4の出射光の拡散特性を示す図
【図13】光拡散フィルム5の出射光の拡散特性を示す図
【図14】照明装置(光拡散フィルム4〜5)の出射光の拡散特性を示す図
【符号の説明】
【0017】
1,11:第一層(透明基材)
2,12:第二層(薄膜)
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
〔光拡散フィルム〕
本発明の光拡散フィルムは、少なくとも一方の表面に複数の畝状凸レンズ部を有するフィルムを含んでなり、少なくとも一組の隣接する畝状凸レンズ部の曲率が互いに異なっているものである。なお、畝状凸レンズ部の曲率は、畝の長手方向に垂直な断面の形状の頂の曲率を意味する。
本発明の光拡散フィルムは、各畝状凸レンズ部の頂の曲率が互いに異なっているので、畝状凸レンズから出射される光の集光特性(集光される方向)が隣接する畝状凸レンズ間で異なり、その結果、フィルムから出射される光が広く拡散するようになる。図1は、隣接する畝状凸レンズ部の曲率を互いに異ならせることにより付与される拡散特性(実線)と、隣接する畝状凸レンズ部の曲率は同一であるが、畝のピッチ、高さをランダムにすることによって付与される拡散特性(破線)とを示した図である。隣接する畝状凸レンズ部の曲率を互いに異ならせることにより付与される拡散特性の方が、輝度の角度依存性が小さく、高い輝度領域が広いことが分かる。
【0019】
本発明の好適な態様の光拡散フィルムは、前記畝状凸レンズ部の頂が円弧状に湾曲している。該湾曲部は、曲率半径の平均値Xrが、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5〜60μmである。
また、該湾曲部の曲率半径の標準偏差σrは、Xrに対して(σr/Xr=)0.05〜0.8であることが好ましく、0.1〜0.6であることがより好ましい。なお、本発明における標準偏差は、標本標準偏差である。Xrおよびσr/Xrがこの範囲内にあると、各畝状凸レンズ部の集光方向の分布が適度な広がりとなるので、視野角度の拡大と輝度向上とのバランスが良好となる。
さらに、畝状凸レンズ部の高さと畝状凸レンズ部間の間隔との比(=高さ/間隔 =アスペクト比)の平均値は、好ましくは0.1〜4.0、より好ましくは0.5〜2.0である。
【0020】
図2は、畝状凸レンズ部間の間隔の平均値Xpが30μmでσr/Xrが0.55の光拡散フィルム(実線)と、畝状凸レンズ部間の間隔の平均値Xpが30μmでσr/Xrが0.04のフィルム(破線)とに、それぞれ平行光を入射し、フィルムを通過して反対側に出射される光の角度依存性を、光の拡散性が最も強い方向に対して測定した結果を示すものである。σr/Xrが0.55の光拡散フィルムは、σr/Xrが0.04のフィルムよりも、出射角度が広くなっていることが分かる。このような出射角度の広い光拡散フィルムを液晶ディスプレイのバックライト部材として用いると、斜めから観察したときの輝度を高くすることができる。
【0021】
また、本発明の光拡散フィルムは畝状凸レンズ部の曲率を互いに異ならせたことによって、上記のように入射した光を拡散することが可能となるため、拡散粒子をフィルム中に分散させなくても光拡散部材として十分に使用できる。さらに、本発明の光拡散フィルムは、入射光の偏光状態を維持したまま光を拡散できる(偏光解消度が小さい)ので、活用範囲が広い。
【0022】
なお、前記偏光解消度は、クロスニコル配置及びパラレル配置の状態にした二枚の直線偏光板を透過した光の輝度をそれぞれ測定し、次いで、クロスニコル配置にした二枚の直線偏光板間に光拡散フィルムを挟んだ状態で輝度を測定し、前記測定値から算出する。なお、本発明で得られる光拡散フィルムの偏光解消度は、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下である。偏光解消度が小さいほど、入射した光の偏光状態を維持した光を拡散することができ、反射偏光子を備えたバックライト用の部材として好適である。
【0023】
畝状凸レンズ部間の間隔の平均値Xpは、好ましくは0.2〜40μm、より好ましくは1.0〜30μmである。また、畝状凸レンズ部間の間隔の標準偏差σpは、Xpに対して(σp/Xp=)0.1〜0.9であることが好ましく、0.2〜0.7であることがより好ましい。Xpおよびσp/Xpがこの範囲内にあると、集光性による輝度向上と、光拡散性による視野角度拡大とのバランスが良好となる。なお、畝状凸レンズ部間の間隔は頂点間距離である。畝状凸レンズ部は、図4に示すように、ランダムに配置されていてもよいし、図3に示すように規則的に配置されていてもよい。
【0024】
畝状凸レンズ部が図3のように規則的に配置されている場合、入射した光の拡散方向に異方性(異方拡散性)を付与することができる。なお、異方拡散性は、コリメート光のような平行光を光拡散フィルムに入射し、周期性のある方向およびそれに直交する方向に透過してきた光の出射角度と輝度との関係を調べることにより測定できる。フィルムの異方拡散性は所望の特性に応じて適宜選択でき、畝状凸レンズ部の規則性を変化させることにより異方拡散性を調整できる。例えば、入射した光の異方拡散性を強くしたい場合、図3に示すような規則性の高い状態にすればよい。なお、畝状凸レンズ部の側面は、フィルム主面に対して垂直な面であってもよいし、オーバーハング(逆テーパー構造)になっていてもよいし、緩やかな傾斜面になっていてもよい。
【0025】
また、前記畝状凸レンズ部は、褶曲によるフィルム表面の隆起で構成されている。すなわち、本発明における畝状凸レンズ部は、平らな基材フィルムの表面に樹脂等を付着させて形成させた凸部とは本質的に異なる。
【0026】
前記の畝状凸レンズ部を有するフィルムは、通常、樹脂や、ゴム若しくはエラストマーで形成されている。
前記樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(例えば、2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(例えば、セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)などが挙げられる。
【0027】
なお、脂環式オレフィン系樹脂としては、特開平05−310845号公報や米国特許第5179171号公報に記載されている環状オレフィンランダム共重合体、特開平05−97978号公報や米国特許第5202388号公報に記載されている水素添加重合体、特開平11−124429号公報や国際公開99/20676号公報に記載されている熱可塑性ジシクロペンタジエン系開環重合体及びその水素添加物等が挙げられる。
【0028】
また前記ゴム/エラストマーとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。これらのうちフィルムの製造が容易な点から熱可塑性樹脂が好ましい。
【0029】
畝状凸レンズ部を有するフィルムに好ましく用いられる熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、加工の容易さの観点からガラス転移温度が60〜200℃であるものが好ましく、100〜180℃であるものがより好ましい。なお、ガラス転移温度は示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。
【0030】
また、前記熱可塑性樹脂は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは8,000〜200,000、特に好ましくは10,000〜100,000である。重量平均分子量がこの範囲にあることにより成形加工性が良好となり、機械的強度を向上させることができる。この重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0031】
畝状凸レンズ部を有するフィルムを構成する樹脂や、ゴム又はエラストマーは、顔料や染料のごとき着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、有機又は無機の充填剤、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止剤、蛍光増白剤、抗菌剤、光拡散粒子、熱可塑性エラストマーその他の配合剤が適宜配合されたものであってもよい。
【0032】
本発明の光拡散フィルムは、フィルム表面の畝状凸レンズ部の上に積層され且つ前記畝状凸レンズ部の形状に対応するように褶曲している薄膜層をさらに含むことが好ましい。
前記薄膜層は有機物質または無機物質で形成されている。
薄膜層を構成する無機物質としては、金属酸化物や金属窒化物などの金属化合物、非金属酸化物や非金属窒化物などの非金属化合物などが挙げられ、具体的には、アルミニウム、珪素、マグネシウム、パラジウム、白金、亜鉛、錫、ニッケル、銀、銅、金、アンチモン、イットリウム、インジウム、ステンレス鋼、クロム、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、ランタン、セリウム、等の金属若しくは非金属;またはこれらの酸化物や窒化物;又はそれらの混合物が挙げられる。これらのうち、可視光を透過する無機物質を選択することが好ましく、その具体的な例としてITO、In2O3、SnO2、SiO2、CuI、TiO2、ZrO2等が挙げられる。これらのうち、薄膜の柔軟性という観点からSiO2が好ましい。
【0033】
前記無機薄膜の平均厚さは、1nm〜500nmであることが好ましい。1nmより薄すぎると畝状凸レンズ部が形成しづらくなり、500nmより厚すぎると薄膜にクラックが発生しやすくなる。無機薄膜を用いると、平均間隔Xpが100nm〜1000nmの微細な畝状凸レンズ部が容易に得られる。
【0034】
薄膜層を構成する有機物質としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、前記畝状凸レンズ部を有するフィルムに用いることができるものとして例示したものと同様のものを挙げることができる。また、有機薄膜には、前記畝状凸レンズ部を有するフィルムに用いる樹脂同様に配合剤を含んでいてもよい。
【0035】
本発明においては、前記畝状凸レンズ部を有するフィルムが熱可塑性樹脂1からなるものであり、前記有機薄膜が熱可塑性樹脂2からなる場合、熱可塑性樹脂2のガラス転移温度は、熱可塑性樹脂1のガラス転移温度よりも20℃以上高いことが好ましい。なお、ガラス転移温度は示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。
【0036】
前記硬化性樹脂としては、熱硬化性のものと、エネルギー線硬化性のものとがある。なお、エネルギー線とは、可視光線、紫外線、電子線、などのことをいう。
【0037】
前記熱硬化性樹脂の具体例としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
【0038】
前記エネルギー線硬化型樹脂としては特に限定されないが、例えば、ラジカル重合性不飽和基及び/又はカチオン重合性基を有する低分子量化合物、又は樹脂等が挙げられ、所望の特性によって適宜選択できる。なお、ラジカル重合性不飽和基及び/又はカチオン重合性基は、1分子中に2以上含んでいてもよい。
【0039】
前記ラジカル重合性不飽和基を有する低分子量化合物としては、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン化合物;スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、ピニルナフタレン、4−ビニルピリジン等のラジカル反応性芳香族化合物;アクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、マレイン酸、エンド−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,8−ジカルボン酸(エンディック酸)、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸:アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、マイイン酸クロライド等の前記不飽和カルボン酸のハライド;アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド等の、前記不飽和カルボン酸のアミド若しくはイミド誘導体;無水マレイン酸、無水エンディック酸、無水シトラコン酸等の前記不飽和カルボン酸の無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、(メタ)アクリル酸アミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アリル(メク)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フエノキシエチル(メタ)アクリレート、へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントソ(メタ)アクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールへキサ(メタ)アクリレート等の前記不飽和カルボン酸のエステル誘導体; ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシトリエトキシシラン等のラジカル反応不飽和基を有するシラン化合物;等が挙げられる。
【0040】
前記カチオン重合性基を有する低分子化合物としては、ジシクロペンタジエンジオキサイド、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アセタール、エチレングリコールのビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル、エチレングリコールの3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸ジエステル等の脂環式エポキシ基を含有する化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、スピログリコールジグリシジルエーテル等のグリシジル基を含有するエポキシ化合物;3−エチル−3−メトキシメチルオキセタン、3−エチル−3−エトキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン、3−エチル−3−アリルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2´−ヒドロキシエチル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2´−ヒドロキシ−3´−フェノキシプロピル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2´−ヒドロキシ−3´−ブトキシプロピル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−[2´−(2´´−エトキシエチル)オキシメチル]オキセタン等のオキセタン環を含有する化合物;等が挙げられる。
【0041】
前記ラジカル重合性不飽和基又はカチオン重合性基を有する樹脂としては、低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等の側鎖にラジカル重合性不飽和基又はカチオン重合性基を有する樹脂が挙げられる。
【0042】
エネルギー線として紫外線や可視光線を用いる場合には、硬化性樹脂の中に光重合開始剤、光増感剤などを含ませる。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類等が挙げられる。光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0043】
硬化性樹脂からなる薄膜層には、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等の配合剤が含まれていてもよい。
有機薄膜としては、微細な畝状凸レンズ部のアスペクト比の制御が容易な場合があるため、硬化性樹脂薄膜を用いることが好ましい。
【0044】
有機薄膜の平均厚さは、100nm〜20μmであることが好ましい。100nmより薄すぎると畝状凸レンズ部が形成しづらくなり、20μmより厚すぎるとアスペクト比の制御が難しくなる。なお、有機薄膜を用いると、畝状凸レンズ部頂点間の平均距離が500nm〜40μmの微細な畝状凸レンズ部が容易に得られる。
【0045】
薄膜層の平均厚さは、光拡散フィルム上の畝状凸レンズ部の高さに対して、10%〜100%であることが好ましい。薄膜層の平均厚さの割合が10%より薄い場合には、耐擦傷性が損なわれる可能性があり、逆に100%より厚い場合には、過酷な条件で使用した場合、そりが出る可能性がある。
【0046】
薄膜層の厚さの変動係数は20%以下であることが好ましい。薄膜層の厚さの変動係数が20%より大きい場合には、薄膜層の厚さ分布が大きくなり、そりの原因となる場合がある。なお、薄膜層の厚さは、以下のようにして計測できる。光拡散フィルムを周期性が強い方向で垂直に切断し超薄切片を得、透過電子顕微鏡にて超薄切片を写真撮影する。撮影した画像から薄膜層の厚さを、凸部頂点および凹部底点のそれぞれ少なくとも15点以上で計測し、それら計測値から、平均値、標準偏差、変動係数を算出する。光拡散フィルムの周期性が強い方向は、光拡散フィルム表面の走査型電子顕微鏡写真像を2次元フーリエ変換して得られる空間周波数のパワースペクトル分布から空間周波数の強度が強い2点を抽出し、この2点で結ばれる直線の方向である。この方向は、例えば畝状凸レンズ部が面内でストライプ状である場合、ストライプの長手方向に直交する方向である。
【0047】
薄膜層は、前記畝状凸レンズ部の上に積層され且つ前記畝状凸レンズ部の形状に対応するように褶曲している。図5及び図6は、本発明の光拡散フィルムの垂直断面を示す模式図である。光拡散フィルムの表面の畝状凸レンズ部に対応して、薄膜が褶曲し、光拡散フィルムの薄膜層側の表面は畝状凸レンズ部の形状が浮き出し、起伏している。浮き出しによる起伏が小さくなると畝状凸レンズ部の集光性が弱くなる傾向がある。
【0048】
本発明の光拡散フィルムは、ヘイズが70%以上であることが好ましく、75%以上であることが特に好ましい。また、本発明の光拡散フィルムは、全光線透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。光拡散フィルムの光学特性を前記範囲にすることにより、光拡散フィルムとして好適に使用することができる。
【0049】
〔光拡散フィルムの製造方法〕
本発明の光拡散フィルムの好適な製造方法は、平板状の透明基材の少なくとも一方の表面に薄膜を形成して積層体を得る工程、及び該積層体を面内の少なくとも一つの軸方向に収縮させて薄膜を褶曲させる工程を含むものである。
【0050】
(透明基材)
本発明の製造方法に用いる透明基材は、薄膜を積層させた後に、面内の少なくとも一つの軸方向に収縮させることができるものであれば特に限定されない。例えば、透明基材自身が加熱などの手段によって収縮するものであってもよいし、一軸延伸させたときに延伸方向に直交する方向が収縮するものであってもよい。
【0051】
透明基材の収縮前の平均厚さは、ハンドリングの観点から通常5μm〜1mm、好ましくは20〜500μmである。透明基材は、通常、樹脂や、ゴム若しくはエラストマーで形成されている。樹脂や、ゴム若しくはエラストマーとしては、前記畝状凸レンズ部を有するフィルムを構成するものとして例示したものと同様のものを挙げることができる。また、前記畝状凸レンズ部を有するフィルムを構成する樹脂同様に配合剤を含んでいてもよい。
【0052】
透明基材は、その製法によって特に制限されない。透明基材の原反は、前述の樹脂等を公知のフィルム成形法で成形することによって得られる。フィルム成形法としては、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。
【0053】
加熱などの手段によってそれ自身が収縮する透明基材は、通常、面内で分子配向していることが好ましい。分子配向の状態は、公知の方法で測定することでき、例えば、自動複屈折計KOBRA21ADHを用いて測定することができる。
【0054】
加熱などの手段によってそれ自身が収縮する透明基材は、例えば、前述の樹脂等を公知の成形法で原反フィルムに形成し、該原反フィルムを延伸することによって得ることができる。また、延伸処理の代わりに、磁場や電場を掛けて又はラビング処理して分子を配向させ収縮性を示す透明基材とすることができる。ゴム又はエラストマーを公知の成形法で弾性フィルムに形成し、該弾性フィルムを面内方向に引っ張った状態にすることで、弾性による復元力を利用した収縮性を示す透明基材とすることができる。さらに硬化性樹脂からなるフィルムをあらかじめ溶剤等で膨潤させ、該膨潤フィルムが乾燥する時に生じる収縮を利用して本発明に用いる透明基材とすることができる。これらのうち、原反フィルムを延伸することによって得られる収縮性を示す透明基材が好ましい。
【0055】
原反フィルムを延伸することによって得られる収縮性を示す透明基材は、その延伸方法によって特に制限されず、一軸延伸法、二軸延伸法のいずれで延伸したものであってもよい。二軸延伸の場合は、通常、フィルム面内の二つの方向に収縮することになる。
延伸処理する方法としては、ロール側の周速の差を利用して縦方向に一軸延伸する方法;テンター延伸機を用いて横方向に一軸延伸する方法等の一軸延伸法;固定するクリップの間隔を開いての縦方向の延伸と同時に、ガイドレールの広がり角度により横方向に延伸する同時二軸延伸法や、ロール間の周速の差を利用して縦方向に延伸した後、その両端部をクリップ把持してテンター延伸機を用いて横方向に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法;横又は縦方向に左右異なる速度の送り力若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機を用いてフィルムの幅方向に対して任意の角度θの方向に連続的に斜め延伸する方法;などが挙げられる。
【0056】
主たる収縮方向の収縮率が大幅に高くなると、主たる収縮方向に直交する方向に伸びが生じることがあり、その伸びによって薄膜表面に亀裂が生じることがある。この収縮時の亀裂発生を抑制することができるという観点から、(i)延伸時の縦方向の収縮を好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下に抑えて横方向に一軸延伸する(横一軸延伸法)か、(ii)縦方向及び横方向に二軸延伸するの(二軸延伸法)が好ましい。
【0057】
延伸に用いる装置として、例えば、縦一軸延伸機、テンター延伸機、バブル延伸機、ローラー延伸機等が挙げられる。
【0058】
延伸時の温度は、透明基材を構成する材料のガラス転移温度をTgとしたときに、好ましくは(Tg−30℃)と(Tg+60℃)の間、より好ましくは(Tg−10℃)と(Tg+50℃)の間の温度から選択される。
延伸倍率は、使用する透明基材の引張り特性に応じて、所望する畝状凸レンズ部のアスペクト比になるように適宜選択すればよい。
【0059】
高アスペクト比の畝状凸レンズ部を得たい場合には、薄膜の膜質や厚さにもよるが、おおむね延伸倍率を高く設定する。低アスペクト比の畝状凸レンズ部を得たい場合には、延伸倍率を低く設定する。具体的には、主たる延伸方向の延伸倍率を、通常1.01〜30倍、より好ましくは1.01〜10倍、より好ましくは1.05〜5倍にする。主たる延伸方向の延伸倍率が1.01倍より小さい倍率では、畝状凸レンズ部が発生せず、30倍より大きい倍率では、フィルム強度が低下する恐れがある。
【0060】
(薄膜)
次に、透明基材の少なくとも一方の表面に薄膜を形成する。薄膜の収縮率は、透明基材を収縮させる条件下において、透明基材の収縮率の20%以下であることが好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。薄膜の収縮率が大きすぎると微細な畝状凸レンズ部が形成しない場合がある。
【0061】
薄膜の収縮前の平均厚さは、1nm〜20μmであることが好ましい。薄膜の厚さは、電子顕微鏡にて、薄膜の垂直断面を写真撮影し、該写真像から厚さの平均値を求める。
薄膜としては、前述のごとく、無機薄膜及び有機薄膜がある。
【0062】
無機薄膜の材料としては前述の無機薄膜で例示したものと同様のものが挙げられる。
無機薄膜を形成する方法は、特に制限されず、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、CVD(化学蒸着)等の蒸着法;スピンコート法、ディッピング法、ロールコート法、スプレー法、ベーパー法、グラビアコータやブレードコータなどのコータ法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の塗布法;無電解めっき法、電解めっき法などが挙げられる。
【0063】
有機薄膜の材料としては前述の有機薄膜で例示したものと同様のものが挙げられる。なお、有機薄膜には前述した配合剤を含んでいてもよい。
熱可塑性樹脂からなる有機薄膜の形成方法としては、(1)透明基材を構成する樹脂と、薄膜を構成する樹脂とを共押出する方法;(2)熱可塑性樹脂を薄膜に成形し、これを透明基材に貼り合わせる方法;(3)透明基材の表面に熱可塑性樹脂を含有する溶液を塗布し乾燥する方法等が挙げられる。
硬化性樹脂からなる有機薄膜の形成方法は、特に限定されない。硬化性樹脂からなる有機薄膜は、例えば、透明基材面に硬化性樹脂の組成物を塗布し、硬化することによって得られる。なお、前記硬化性樹脂の組成物には作業性を良好にする観点から溶剤を含んでいても良い。硬化性樹脂薄膜を形成する際、透明基材のガラス転移温度より5℃以上低い温度で熱処理することが望ましい。薄膜形成の際に高い温度がかかると、透明基材がアニールされ、設計どおりに収縮しなくなるおそれがある。
【0064】
(褶曲誘起構造)
本発明の製造方法においては、透明基材表面に薄膜を形成する前に、薄膜の褶曲を引き起こさせるための構造(褶曲誘起構造)を透明基材の表面に形成してもよいし、また透明基材表面に薄膜を形成した後で且つ該基材を収縮させる前に、該薄膜の褶曲を引き起こさせるための構造(褶曲誘起構造)を薄膜に形成してもよい。
【0065】
該構造は、基材が収縮したときに薄膜の褶曲を引き起こさせる構造であれば特に限定されず、例えば、ラビング処理やその他の方法で表面に付けた傷、インクジェットプリンターや印刷機等で載せたインク印、エンボス加工やインプリントなどで付与した凹凸などが挙げられる。
褶曲誘起構造は一定間隔の位置に形成されることが好ましい。褶曲誘起構造の間隔は、所望する畝状凸レンズ部の頂点間の距離とは直接に関係無いので、所望の畝状凸レンズ部の頂点間の距離よりも狭くても、広くても良いが、畝状凸レンズ部の頂点間の所望距離の0.05倍〜100倍の褶曲誘起構造の間隔にすることが好ましい。
【0066】
本発明の製造方法においては、次に前記薄膜を表面に形成した透明基材を収縮させ、薄膜を褶曲させる。透明基材を収縮させる方法は、透明基材の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0067】
透明基材の収縮率は、透明基材の収縮によって薄膜が褶曲したときに薄膜等に亀裂などが生じないようにするために、主たる収縮方向の収縮率ΔL、および主たる収縮方向に直交する方向の収縮率ΔMが、式〔3〕および式〔4〕を満たすことが好ましい。なお、ΔL及びΔMは式〔1〕及び式〔2〕でそれぞれ定義される。
【0068】
式〔1):ΔL=(L0−L1)/L0×100 (L0:主たる収縮方向の収縮前の長さ、L1:主たる収縮方向の収縮後の長さ)
式〔2):ΔM=(M0−M1)/M0×100 (M0:主たる収縮方向に直交する方向の収縮前の長さ、M1:主たる収縮方向に直交する方向の収縮後の長さ)
式〔3〕:ΔL>0
式〔4〕:−(ΔL×0.3)≦ΔM≦ΔL
【0069】
微細畝状凸レンズ部の異方性を強くしたい場合、すなわち、畝状凸レンズ部を面内でストライプ状に細長く伸びた構造にしたい場合には、式〔3〕及び式〔5〕を満たすことが好ましい。
式〔5〕:−(ΔL×0.2)≦ΔM≦(ΔL×0.2)
それにより、得られる光拡散フィルムの異方拡散性を強くすることができる。
【0070】
本発明の製造方法は、このように収縮条件を変更するだけで、畝状凸レンズ部頂点間距離、アスペクト比等を任意に調整できる。
【0071】
なお、主たる収縮方向は、収縮する度合い(収縮率)が最も大きい方向である。例えば、熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸して得られた透明基材は加熱によって収縮する。フィルムの延伸を一軸方向にだけ行った場合には、通常、該延伸方向が主たる収縮方向になる。また二軸方向に延伸を行った場合には、通常、延伸した二つの方向のうち延伸倍率の大きい方向が主たる収縮方向になる。
【0072】
熱可塑性樹脂からなるフィルムを一軸延伸した時に延伸方向に直交する方向にフィルムが収縮する。この延伸時の収縮を利用した透明基材では、延伸方向に直交する方向が主たる収縮方向である。なお、主たる収縮方向に直交する方向の収縮率ΔMの値がマイナスのときは、収縮処理においてフィルムが伸びたことを表す。主たる収縮方向にフィルムが収縮したときに、主たる収縮方向に直交する方向の伸びが大きくなりすぎると薄膜に亀裂が生じやすくなる。このようなことから、主たる収縮方向に直交する方向の収縮率は、1%〜90%であることが好ましく、1%〜50%であることがより好ましい。
【0073】
褶曲の度合いの変化によって畝状凸レンズ部の頂の曲率が変化する。褶曲の度合いは、薄膜及びフィルム基材の収縮率と、薄膜及びフィルム基材の厚さと、並びに薄膜及びフィルム基材の密着度合いによって変わる。
ある所定の厚さのフィルム基材や薄膜を如何に精密に均一に作成したとしても、薄膜及びフィルム基材の収縮率、薄膜及びフィルム基材の厚さ、並びに薄膜及びフィルム基材の密着度には、統計的確率で分布が生じる。この収縮率や厚さ等の統計的確率による分布によって、褶曲の度合いに統計的確率で分布が生じる。本発明の製造方法は、この統計的確率で生じる分布を利用して、畝状凸レンズ部の頂の曲率を異ならしめたのである。
畝状凸レンズ部の頂の曲率半径は、基材フィルム及び薄膜の材質、厚さ等の材料構成、及び薄膜層の成膜、基材フィルムの延伸、収縮等の製造条件に大きく依存している。例えば、σr/Xrを小さくするためには、前記材料構成及び製造条件の変動(例えば、厚さムラや延伸ムラ)を小さくすれば良く、逆にσr/Xrを大きくするためには、前記変動を大きくすれば良い。つまり、前記材料構成及び製造条件を調整することにより、Xr、σr/Xrを制御することが可能となる。
畝状凸レンズ部間の距離、バラツキは、薄膜の材質、厚さ等の材料構成、及び基材フィルムの延伸、収縮等の製造条件に大きく依存している。例えば、Xpを小さくするためには、無機薄膜を用いる、若しくは薄膜の厚さを薄くすれば良く、逆にXpを大きくするためには、有機薄膜を用いる、若しくは薄膜の厚さを厚くすれば良い。また、σp/Xpを小さくするためには、基材フィルムの収縮の一軸性を高く(例えば、延伸倍率の異なる二軸延伸で、延伸倍率の差を大きくする)し、前記褶曲誘起構造を用いればよく、逆にσp/Xpを大きくするためには、基材フィルムの収縮の一軸性を低く(例えば、延伸倍率の異なる二軸延伸で、延伸倍率の差を小さくする)すれば良い。つまり、前記材料構成及び製造条件を調整することにより、Xp、σp/Xpを制御することが可能となる。
【0074】
本発明の光拡散フィルムを光源の前に備えることによって、異方拡散性や集光特性を有し、あらゆる使用環境に対して十分な耐性を示す、本発明の照明装置を得ることができる。
照明装置には、光源の背後に光反射素子を備えていてもよい。前記光反射素子は、光を反射することができる素子である。具体的には、反射性金属膜や白色膜を備えた反射板が挙げられる。
【0075】
光源は特に限定されないが、白色光を発するものが好ましく、具体的には冷陰極管、熱陰極管、発光ダイオード、およびエレクトロルミネセンスから選択される。偏光を発する照明装置とするために偏光板を設けてもよい。その他に、プリズムフィルム、反射性偏光子、1/4波長板、1/2波長板、視野角補償フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルムなどが配置されていてもよい。
【0076】
本発明の光拡散フィルムを光源と液晶パネルとの間に備えることによって本発明の液晶表示装置を得ることができる。液晶パネルは、液晶セルと、これを挟んで積層される二枚の偏光板とからなるものである。液晶セルは、数μmのギャップを隔てて対向する透明電極を設けた2枚のガラス基板の間に液晶物質を充填し、この電極に電圧を掛けて液晶の配向状態を変化させてここを通過する光の量を制御するものである。
【0077】
液晶物質の配向状態を変化させる方式(動作モード)などによって、液晶セルは分類され、例えば、TN(Twisted Nematic)型液晶セル、STN(Super Twisted Nematic)型液晶セル、HAN(Hybrid Alignment Nematic)型液晶セル、IPS(In Plane Switching)型液晶セル、VA(Vertical Alignment)型液晶セル、MVA(Multi−domain Vertical Alignment型液晶セル、OCB(Optical Compensated Bend)型液晶セルなどが挙げられる。
【0078】
本発明の液晶表示装置は、その他に、光反射素子、導光板、プリズムフィルム、光拡散板、反射性偏光子、1/4波長板、1/2波長板、視野角補償フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルムなどが配置されていてもよい。本発明の光拡散フィルムは異方拡散性や集光特性を有するので、液晶表示装置において、プリズムフィルム、光拡散板などの部材を省略することができる。
【実施例】
【0079】
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0080】
(光拡散フィルム表面に形成された畝状凸レンズ部の頂の曲率半径、畝状凸レンズ部の間隔)
電界放出形走査電子顕微鏡(S−4700、日立製作所製)にて、フィルム表面に形成された構造を撮影した。走査電子顕微鏡像を画像解析ソフト(SoftImagingSystem製、AnlySIS)を用いて、2次元高速フーリエ変換し、空間周波数のパワースペクトル分布を求め、周期性を強く示す方向を読み取った。この方向にウルトラミクロトームを用いて切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−4700)で写真撮影した。
この断面写真撮影をフィルム幅方向および流れ方向に少なくとも10cm以上離れた3箇所の点で行った。走査型電子顕微鏡写真像から、畝状凸レンズ部頂点間距離を30点計測し、平均値および標準偏差を求めた。
曲率半径については、畝状凸レンズ部の頂の湾曲している部分を画像処理にてフィッテングし、30点全ての曲率半径を測定し、平均値および標準偏差を求めた。
【0081】
(光拡散フィルムの全光線透過率、ヘイズ)
濁度計(日本電色製 NDH2000型)を使用し、JIS−K−7105に準拠し測定した。
【0082】
(光拡散フィルムの異方拡散性)
スポット径2mmのコリメート光を光拡散フィルムの法線方向から入射し、周期性を強く示す方向およびそれに直交する方向についての出射光の角度と輝度との関係を輝度計(BM−7、トプコン社製)を用いて測定した。
【0083】
(光拡散フィルムの偏光解消度)
クロスニコル配置の二枚の直線偏光板に、冷陰極管と導光板で構成される面状光源の光を透過させ、輝度計(BM−7、トプコン社製)を用いて透過光の正面輝度(A)を測定した。
パラレル配置の二枚の直線偏光板に、冷陰極管と導光板で構成される面状光源の光を透過させ、輝度計(BM−7、トプコン社製)を用いて透過光の正面輝度(B)を測定した。
次に光拡散フィルムを二枚の直線偏光板(クロスニコル配置)の間に挟むように重ねた。それに、冷陰極管と導光板で構成される面状光源の光を透過させ、輝度計(BM−7、トプコン社製)を用いて透過光の正面輝度(C)を測定した。
偏光解消度は下記の式で定義される。
偏光解消度〔%〕=(輝度(C)−輝度(A))/輝度(B)×100
偏光解消度が小さいほど、透過する光の偏光状態を変化させないこと(非偏光解消性)を示している。
【0084】
(光拡散フィルムの耐久性)
光拡散フィルムを5cm角に切断し、60℃×85%RH環境下に500時間放置した。光拡散フィルムの外観を観察し、そりの状態を評価した。
【0085】
(照明装置、液晶表示装置)
内寸幅300mm、内寸長さ240mm、内寸深さ18mmの乳白色プラスチック製ケースの底に、反射フィルムを貼着して反射板とした。反射板から4mm離して、直径4mm、長さ360mmの冷陰極管8本を、冷陰極管の中心軸間の距離を25mmとして配置した。電極部近傍をシリコーンシーラントで固定し、インバーターを取り付けた。
光拡散板を冷陰極管中心軸と光拡散板の冷陰極管に近い側の面との距離が14mmになるように設置した。反射偏光子(DBEF−M、住友スリーエム製)および光拡散フィルムを光の拡散方向がケースの幅方向になるように積層して、照明装置を作製した。
管電流6mA、管電圧330Vrmsを印加して冷陰極管を点灯した。幅方向に出射する光の出射角度と輝度との関係を輝度計(BM−7、トプコン製)を用いて測定した。
【0086】
前記照明装置の上に、液晶パネルを配置することにより液晶表示装置を作製した。管電流6mA、管電圧330Vrmsを印加して冷陰極管を点灯した。液晶セルを白表示の状態にして、液晶表示装置の正面輝度を輝度計(BM−7、トプコン製)を用いて測定した。
【0087】
製造例1 (延伸倍率1.2の一軸延伸フィルム)
脂環式オレフィンポリマー(ZEONOR1420、ガラス転移温度136℃、日本ゼオン社製)のペレットを、窒素を流通させた熱風乾燥機中にて、100℃で4時間乾燥した。 このペレットを、50mmφのスクリューを備えたTダイ式フィルム溶融押出成形機に供給し、溶融樹脂温度260℃で押出して、幅650mm、厚さ188μmのフィルムを成形し、続いて両端から25mmずつをトリミングして幅600mmの基材フィルムを得た。
【0088】
幅600mmの基材フィルムの両端をクリップで把持し、テンター延伸機内に導入し、温度150℃でフィルム幅方向に1.2倍、フィルム流れ方向に1.0倍になるように横一軸延伸した。テンター延伸機から出てきたフィルムをクリップから外し、両端を連続的にトリミングして幅700mmの延伸フィルム(1)を得た。
【0089】
製造例2 (延伸倍率2.0の一軸延伸フィルム)
製造例1において、延伸倍率を、フィルム幅方向に2.0倍、フィルム流れ方向に1.0倍に変えた以外は製造例1と同様の方法によって、幅1000mmの延伸フィルム(2)を得た。
【0090】
製造例3 (二軸延伸フィルム(延伸倍率:横2.2倍、縦1.7倍))
製造例1で得た幅600mmの基材フィルムを、縦一軸延伸装置を用い145℃の温度で縦方向に1.7倍に延伸した。次いで、この縦延伸フィルムをテンター延伸(横一軸延伸)装置に送り150℃で、フィルム幅方向に2.2倍、フィルム流れ方向に1.0倍に延伸し、延伸フィルム(3)を得た。
【0091】
製造例4 (紫外線硬化性樹脂)
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(NKエステル AD−TMP、新中村化学製)90.0質量部、光開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー製)10.0質量部、および酢酸ブチル900.0質量部を均一になるまで撹拌し、次いで1μmのフィルタで濾過して、紫外線硬化性樹脂溶液を調製した。
【0092】
実施例1
製造例1で得た延伸フィルム(1)をコロナ放電処理して表面改質した。該フィルムに、製造例4で作製した紫外線硬化性樹脂溶液を、グラビアコーターを用いて、乾燥膜厚が0.4μmになるように塗布し、80℃で5分間乾燥させ、次いで、超高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射(積算光量400mJ/cm2)し、塗膜を硬化させて、積層フィルムを得た。
次いで、積層フィルムを、140℃の温風を循環させた乾燥機を通過させて、積層フィルムを収縮させて、光拡散フィルム1を得た。図7に示すように、光拡散フィルム1の表面には複数の畝状凸レンズ部が形成され、紫外線硬化性樹脂で形成された薄膜が畝状凸レンズ部の形状に対応するように褶曲して積層され、薄膜層側表面は畝状凸レンズ部の形状が浮き出し起伏していた。畝状凸レンズ部は、畝の長手方向が一方向にほぼ揃い、畝の短手方向に強い周期性を示すものであった。また、少なくとも一組の隣接する畝状凸レンズ部の曲率が互いに異なっていた。
【0093】
畝状凸レンズ部の頂の曲率半径の平均値(Xr)は0.25μm、標準偏差(σr)は0.028μm、σr/Xrは0.112であった。
畝状凸レンズ部の間隔の平均値(Xp)は1.8μm、標準偏差(σp)は0.66μm、σp/Xpは0.367であった。
また、畝状凸レンズ部の平均アスペクト比は0.5であった。
【0094】
光拡散フィルム1は、全光線透過率が88%、ヘイズが80%、偏光解消度が0.4%であった。
光拡散フィルム1は、高い光線透過率、光拡散性を有し、かつ透過光の偏光を維持する特性を有するフィルムであることが確認された。
また、光拡散フィルム1の出射光異方拡散性評価の結果を図8に示した。実線は強い周期性を示す方向の角度依存性、点線は周期性の弱い方向の角度依存性を示している。光拡散フィルム1は強い周期性を示す方向に回折及び散乱を示し、それと直交する方向には全く散乱しないことがわかる。
光拡散フィルム1を60℃×85%RH環境下に500時間放置したが、そりは全く見られなかった。
【0095】
次に、光拡散フィルム1を強い周期性を示す方向をケースの幅方向に平行に配置し、前述のように照明装置および液晶表示装置を作製した。
該照明装置の幅方向角度−出射光輝度の分布を測定した結果(実線)を図11に示した。該照明装置は、幅方向に対して光を拡散する特性を示し、広い範囲に亘り高い輝度を示すことがわかる。
また、作製した液晶表示装置を白表示にした際の正面輝度は480cd/m2であり、良好な表示特性を示すことが確認された。
【0096】
実施例2
製造例1で得た延伸フィルム(1)を製造例2で得た延伸フィルム(2)に替え、ワイヤーバーコーターを用いて紫外線硬化性樹脂溶液を乾燥膜厚が3.8μmになるように塗布した以外は実施例1と同様の方法によって、光拡散フィルム2を得た。
光拡散フィルム2の表面には複数の畝状凸レンズ部が形成され、紫外線硬化性樹脂で形成された薄膜が畝状凸レンズ部の形状に対応するように褶曲して積層され、薄膜層側表面は畝状凸レンズ部の形状が浮き出し起伏していた。畝状凸レンズ部は、畝の長手方向が一方向にほぼ揃い、畝の短手方向に強い周期性を示すものであった。また、少なくとも一組の隣接する畝状凸レンズ部の曲率が互いに異なっていた。
【0097】
畝状凸レンズ部の頂の曲率半径の平均値(Xr)は46.7μm、標準偏差(σr)は35.5μm、σr/Xrは0.760であった。
畝状凸レンズ部の間隔の平均値(Xp)は32.0μm、標準偏差(σp)は3.84μm、σp/Xpは0.12であった。また、畝状凸レンズ部の平均アスペクト比は0.6であった。
【0098】
光拡散フィルム2は、全光線透過率が79%、ヘイズが77%、偏光解消度が0.4%であった。つまり、光拡散フィルム2は光拡散フィルム1と同様に、高い光線透過率、光拡散性を有し、かつ透過光の偏光を維持する特性を有するフィルムであることが確認された。
光拡散フィルム2の出射光異方拡散性評価の結果を図9に示した。実線は強い周期性を示す方向の角度依存性、点線は周期性の弱い方向の角度依存性を示している。該フィルムは強い周期性を示す方向に散乱を示し、それと直交する方向には全く散乱しないことがわかる。
光拡散フィルム2を60℃×85%RH環境下に500時間放置したが、そりは全く見られなかった。
【0099】
次に、光拡散フィルム2を強い周期性を示す方向をケースの幅方向に平行に配置して、前述のように照明装置および液晶表示装置を作製した。
該照明装置の幅方向角度−出射光輝度の分布を測定した結果(破線)を図11に示した。実施例2の照明装置は、幅方向に対して光を拡散する特性を示し、広い範囲に渡り高い輝度を示すことがわかる。
また、液晶表示装置の正面輝度(白表示時)は440cd/m2であり、良好な表示特性を示すことが確認された。
【0100】
実施例3
製造例2で得た延伸フィルム(2)を製造例3で得た延伸フィルム(3)に替え、紫外線硬化性樹脂溶液を乾燥膜厚を1.5μmになるように塗布した以外は実施例1と同様の方法によって、光拡散フィルム3を得た。
光拡散フィルム3の表面には複数の畝状凸レンズ部が形成され、紫外線硬化性樹脂で形成された薄膜が畝状凸レンズ部の形状に対応するように褶曲して積層され、薄膜層側表面は畝状凸レンズ部の形状が浮き出し起伏していた。畝状凸レンズは、図4のごとく、畝が複雑に曲がり、周期性の強い方向と弱い方向との差が小さいものであった。また、少なくとも一組の隣接する畝状凸レンズ部の曲率が互いに異なっていた。
【0101】
畝状凸レンズ部の頂の曲率半径の平均値(Xr)は1.19μm、標準偏差(σr)は0.07μm、σr/Xrは0.059であった。
畝状凸レンズ部の間隔の平均値(Xp)は5.4μm、標準偏差(σp)は4.48μm、σp/Xpは0.830であった。また、畝状凸レンズ部の平均アスペクト比は3.7であった。
【0102】
光拡散フィルム3は、全光線透過率が76%、ヘイズが88%、偏光解消度が0.4%であった。
光拡散フィルム3は光拡散フィルム1または2と同様に、高い光線透過率、光拡散性を有し、かつ透過光の偏光を維持する特性を有するフィルムであることが確認された。
光拡散フィルム3の出射光異方拡散性評価の結果を図10に示した。実線は強い周期性を示す方向の角度依存性、点線は周期性の弱い方向の角度依存性を示している。光拡散フィルム3は周期性を強く示す方向に強い散乱を示し、それに直交する方向には弱い散乱を示すことがわかる。
次に、光拡散フィルム3を60℃×85%RH環境下に500時間放置したが、そりは全く見られなかった。
【0103】
次に、光拡散フィルム3を強い周期性を示す方向をケースの幅方向に配置して、前述のように照明装置および液晶表示装置を作製した。
該照明装置の幅方向角度−出射光輝度の分布を測定した結果(点線)を図11に示した。実施例3の照明装置は、幅方向に対して光を拡散する特性を示し、広い範囲に渡り高い輝度を示すことがわかる。
また、液晶表示装置の正面輝度(白表示時)は430cd/m2であり、良好な表示特性を示すことが確認された。
【0104】
比較例1
ステンレス製反応器に、脱イオン水300質量部、ポリビニルアルコール分散剤0.05質量部、スチレン100質量部およびジビニルベンゼン5質量部を入れ、減圧脱気し、次いで撹拌して、エマルジョンを得た。このエマルジョンを均質機を用いて安定化し、別に脱気されたオートクレーブに移し71℃に昇温した。
その後、過酸化ベンゾイル0.015質量部、およびメチルメタクリレート3質量部をオートクレーブに入れ、5時間重合を行って、ポリマービーズの分散液を得た。得られたポリマービーズ分散液を濾別、洗浄、乾燥し、次いで篩別(50μm以上の粒子を除去)することによりポリマービーズを得た。得られたポリマービーズは粒子径が5.8μmであった。
次いで、アクリル樹脂(ダイヤナールBR102、三菱レイヨン製)10質量部、前記ポリマービーズ10質量部、および酢酸ブチル80質量部を混合、攪拌して、アクリル樹脂溶液を調製した。
【0105】
コロナ放電処理によって表面改質させた厚さ100μmの脂環式オレフィンポリマーフィルム(ゼオノアフィルムZF14、オプテス社製)の上に、乾燥膜厚が30μmになるようにロールコーターを用いて前記アクリル樹脂溶液を塗布し、100℃の乾燥炉内で乾燥して、平らな表面を持つ脂環式オレフィンポリマーフィルムと、ポリマービーズによる凸レンズ部がランダムに配置された層との積層された光拡散フィルム4を得た。
光拡散フィルム4は、全光線透過率が68%、ヘイズが88%、偏光解消度が83.9%であった。光拡散フィルム4に直線偏光を入射しても、出射光は自然光になってしまう特性を有していた。
光拡散フィルム4の出射光異方拡散性評価の結果を図12に示した。実線と破線は光拡散フィルム4の面内で互いに直交する方向の輝度の角度依存性を示すものであるが、実線と破線とはほぼ重なってしまっている。光拡散フィルム4は、すべての方向に対して均一に散乱する等方散乱性を示すことがわかる。
光拡散フィルム4を60℃×85%RH環境下に500時間放置したところ、フィルム端部にそりが生じていた。
【0106】
次に、光拡散フィルム4を用いて前述のように照明装置および液晶表示装置を作製した。
該照明装置の幅方向角度−出射光輝度の分布を測定した結果(実線)を図14に示した。比較例1の照明装置は、正面の輝度のみが高い特性を有するものであることがわかる。
また、液晶表示装置の正面輝度(白表示時)は380cd/m2であった。反射偏光子から出た直線偏光が光拡散フィルム4によって偏光が解消してしまっているので、液晶パネルにおいて光が吸収され表示装置の正面に光が十分出てこなくなっていることがわかる。
【0107】
比較例2
8mm×8mm×60mmのSUS製シャンクにろう付けされた寸法1mm×1mm×1mmの直方体単結晶ダイヤモンドの一面に、集束イオンビーム加工装置SMI3050(セイコーインスツルメンツ製)を用いてアルゴンイオンビームを用いた集束イオンビーム加工を行い、長さ1mmの辺に平行にピッチ30.0μm、深さ9.0μmの断面波形の溝を彫り込み、切削工具を作製した。
寸法50mm×50mm、厚さ10mmのステンレス鋼SUS430の表面に、厚さ100μmのニッケル−リン無電解メッキを施し、精密微細加工機(ナガセインテグレックス製、超精密微細加工機NIC200)と上記の切削工具を用いて、ニッケル−リン無電解メッキ面に、ピッチ30.0μm、高さ9.0μmの断面波形の畝状凸部を有する金属モールドを得た。
【0108】
コロナ処理により表面改質した厚さ100μmの脂環式オレフィンポリマーフィルム(ゼオノアフィルムZF14、オプテス社製)上に、乾燥膜厚が10μmになるように製造例4で作製した紫外線硬化性樹脂溶液を塗布し、80℃で5分間乾燥させた。次いで前記金属モールド上に前記フィルムを塗膜側が金属モールドに接触するように載せ、超高圧水銀ランプを用いてフィルム側から紫外線を照射(積算光量400mJ/cm2)し、塗膜を硬化させて、平らな表面を持つ脂環式オレフィンポリマーフィルムと、ピッチ30.0μm、高さ9.0μmの断面波形の畝状凸レンズ部が形成された硬化樹脂層とが積層された光拡散フィルム5を得た。
畝状凸レンズ部の頂の曲率半径の平均値(Xr)は5.50μm、標準偏差(σr)は0であった。畝状凸レンズ部間の間隔の平均値(Xp)は30.0μm、標準偏差(σp)は1.45μ、σp/Xpは0.048であった。また、畝状凸レンズ部の平均アスペクト比は0.3であった。また、隣接する畝状凸レンズ部の曲率はすべて同じになっていた。
【0109】
光拡散フィルム5は、全光線透過率が71%、ヘイズが68%、偏光解消度が0.5%であった。光拡散フィルム5の出射光異方拡散性評価の結果を図13に示した。実線は強い周期性を示す方向の角度依存性、点線は周期性の弱い方向の角度依存性を示している。光拡散フィルム5は周期性を強く示す方向に強い散乱光が出る異方散乱性を示すものであるが、本発明実施例の光拡散フィルムに比べ、散乱角度が狭かった。
光拡散フィルム5を60℃×85%RH環境下に500時間放置したところ、フィルム端部でそりが生じていた。
【0110】
次に、光拡散フィルム5を強い周期性を示す方向をケースの幅方向に平行に配置して、前述のように照明装置および液晶表示装置を作製した。
該照明装置の出射光の角度−輝度分布を測定した結果(破線)を図14に示した。
液晶表示装置の正面輝度(白表示時)は435cd/m2であったが、実施例の光拡散フィルムにくらべ散乱角度が狭かった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散フィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、良好な拡散特性を有し、あらゆる使用環境に対して十分な耐性を示し、照明装置や液晶表示装置の光拡散部材として特に有用な光拡散フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光拡散部材は液晶ディスプレイ(LCD)などの表示品位の向上、視野角特性の改良などに用いられている。
【0003】
光拡散フィルムとして、透明樹脂中に粒子や繊維を分散させ樹脂−粒子間の界面反射または粒子や繊維の浮き出しによる表面微細凹凸を利用して拡散性を付与したもの、また透明フィルムの表面に微細な立体構造を形成し構造体の屈折を利用して拡散性を付与したものが知られている。
粒子を配合した光拡散フィルムとして、特許文献1には、少なくとも透明樹脂(a)およびガラス繊維(b)からなり、少なくとも片面の表面十点平均粗さ(Rz)が3μm以上100μm以下で、かつ凹凸の平均間隔(Sm)が0.1μm以上、5μm以下である光拡散フィルムおよび、片面の表面十点平均粗さ(Rz)が3μm以上100μ以下で、かつ凹凸 の平均間隔(Sm)が0.1μm以上50μm以下であり、反対面の表面十点平均粗さ(Rz)が3μm未満、または凹凸の平均間隔(Sm)が50μm以上である光拡散フィルムが開示されている。
【0004】
特許文献2には、織編物の織糸間又は編糸間に形成される空隙部にバインダー樹脂が充填され、該織編物の少なくとも片面に織り目又は編み目パターンに対応した凹凸形状が形成されてなることを特徴とする光拡散フィルムが開示されている。
【0005】
特許文献3には、液晶表示装置のバックライトユニットに用いられる前後方向の拡散能と左右方向の拡散能とが異なる光拡散手段を備える光拡散フィルムが開示されている。この光拡散手段として、フィルム面に形成した縦割紡錘形状の凸部若しくは凹部又は底面が長方形の四角錐状の凸部若しくは凹部、フィルム内に中心軸を前後方向又は左右方向に向けて分散させた紡錘形状の光拡散剤、及び紡錘形状の光拡散剤を同様に分散させた光拡散層が開示されている。
【0006】
しかしながら、粒子や繊維を配合した光拡散部材は、入射した光を各方位に無差別に均一に拡散する特性を有するため、入射した偏光は該光拡散部材で自然光になってしまう。また、液晶ディスプレイのように偏光を利用する装置では、光源からの光の利用効率が低下し、低輝度になってしまう。
【0007】
【特許文献1】特開2005−326492号公報
【特許文献2】特開2005−189583号公報
【特許文献3】特開2000−292790号公報
【0008】
表面に立体構造を形成した光拡散フィルムとして、特許文献4には、透光性フィルムの一面に凹凸形状が設けられていて、この凹凸形状の断面形状が、Y=a・sin(bX)で表される正弦曲面である光拡散フィルムが開示されている。この光拡散フィルムは、光拡散部材として不十分な光拡散性しか示さなかった。
【0009】
特許文献5には、規則的な波型もしくは多数の平行な山部からなり、その波型もしくは多数の平行な山部に微細な凹凸加工が施されている構造面を有する光拡散フィルムが開示されている。しかしながら、この光拡散フィルムは、規則的な構造を形成した後、微細な凹凸加工を施すため、製造工程が煩雑になるといった問題を有していた。
【0010】
特許文献6には、第一の表面がフィルムに入射した光を拡散させるため働くように第二の表面構造関数で変調された第一の表面構造関数で定義される第一の表面を含む光学フィルムであって、第一の表面構造関数はマイクロレンズ構造物の機能を有すると共に、第二の表面構造関数は拡散光を与える機能を有する光拡散フィルムが開示されている。該光拡散フィルムは、レンズの高さ、位相、周波数をランダム化しているため、光が拡散する方向に対しては一様な拡散性を示すといった、一般的な拡散部材と類似した拡散特性を有する。そのため、液晶ディスプレイのバックライト部材として使用した場合、視野角特性に問題が生じることがあった。また、該光拡散フィルムのパターン部を硬化樹脂を用いて作製した場合、基材層と硬化樹脂層との間で膨張係数等の特性が大きく異なるため、使用環境によってはフィルムのそりが顕著に見られる等の問題を有していた。
【0011】
【特許文献4】特開平6−43310号公報
【特許文献5】特開平6−148408号公報
【特許文献6】特開2005−234538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、液晶ディスプレイのバックライトに好適に利用できる光拡散フィルムを提供するものである。本発明の目的は、一般的に使用されている拡散剤を使用しなくても、入射光を効果的に拡散することができ、液晶ディスプレイのバックライト部材として使用した場合には視野角特性を改善でき、且つあらゆる使用環境に対して十分な耐性を示す光拡散フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、フィルム表面の少なくとも一方の表面に、複数の畝状凸レンズ部を形成し、かつ各レンズ部の曲率をランダム化することにより、良好な拡散特性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1)少なくとも一方の表面に複数の畝状凸レンズ部を有するフィルムを含んで成り、少なくとも一組の隣接する畝状凸レンズ部の曲率が互いに異なっている、光拡散フィルム。
(2)前記畝状凸レンズ部の頂は円弧状に湾曲しており、該湾曲部の曲率半径の平均値Xrは0.1μm以上であり、該湾曲部の曲率半径の標準偏差σrはXrに対してσr/Xr=0.05〜0.8であり、且つ畝状凸レンズ部の高さと畝状凸レンズ部間の間隔との比(アスペクト比)の平均値が0.1〜4.0である、光拡散フィルム。
(3)畝状凸レンズ部間の間隔の平均値Xpが0.2〜40μmであり、且つ畝状凸レンズ部間の間隔の標準偏差σpがXpに対してσp/Xp=0.1〜0.9である、前記の光拡散フィルム。
(4)全光線透過率が75%以上で、且つヘイズが70%以上である、前記の光拡散フィルム。
(5)前記畝状凸レンズ部の上に積層され且つ前記畝状凸レンズ部の形状に対応するように褶曲している薄膜層をさらに含み、薄膜層側の表面が前記畝状凸レンズ部の形状の浮き出しで起伏している前記の光拡散フィルム。
(6)平板状の透明基材の少なくとも一方の表面に薄膜を形成して積層体を得る工程、および該積層体を面内の少なくとも一つの軸方向に収縮させて薄膜を褶曲させる工程を含む、前記の光拡散フィルムの製造方法。
(7)前記の光拡散フィルムを備える照明装置。
(8)前記の光拡散フィルムを備える液晶表示装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光拡散フィルムは、一般的に使用されている拡散剤を使用しなくても、入射光を効果的に拡散することができ、また液晶ディスプレイのバックライト部材として使用した場合には視野角特性を改善できる。また、あらゆる使用環境に対して十分な耐性を示す。本発明の光拡散フィルムを液晶表示装置に用いれば、プリズムレンズなどの光学変調部材を別に備える必要が無くなり、装置全体を軽量、薄型にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】光拡散フィルムの形状による拡散特性の影響を示す図
【図2】光拡散フィルムのσr/Xrによる拡散特性の影響を示す図
【図3】本発明の光拡散フィルムの一例の表面走査型電子顕微鏡写真像を示す図
【図4】本発明の光拡散フィルムの別の一例の表面走査型電子顕微鏡写真像を示す図
【図5】本発明で得られる構造の断面模式図
【図6】本発明で得られる構造の断面模式図
【図7】実施例1で得られた光拡散フィルム1の断面を観察した表面走査型電子顕微鏡像を示す図
【図8】光拡散フィルム1の出射光の拡散特性を示す図
【図9】光拡散フィルム2の出射光の拡散特性を示す図
【図10】光拡散フィルム3の出射光の拡散特性を示す図
【図11】照明装置(光拡散フィルム1〜3)の出射光の拡散特性を示す図
【図12】光拡散フィルム4の出射光の拡散特性を示す図
【図13】光拡散フィルム5の出射光の拡散特性を示す図
【図14】照明装置(光拡散フィルム4〜5)の出射光の拡散特性を示す図
【符号の説明】
【0017】
1,11:第一層(透明基材)
2,12:第二層(薄膜)
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
〔光拡散フィルム〕
本発明の光拡散フィルムは、少なくとも一方の表面に複数の畝状凸レンズ部を有するフィルムを含んでなり、少なくとも一組の隣接する畝状凸レンズ部の曲率が互いに異なっているものである。なお、畝状凸レンズ部の曲率は、畝の長手方向に垂直な断面の形状の頂の曲率を意味する。
本発明の光拡散フィルムは、各畝状凸レンズ部の頂の曲率が互いに異なっているので、畝状凸レンズから出射される光の集光特性(集光される方向)が隣接する畝状凸レンズ間で異なり、その結果、フィルムから出射される光が広く拡散するようになる。図1は、隣接する畝状凸レンズ部の曲率を互いに異ならせることにより付与される拡散特性(実線)と、隣接する畝状凸レンズ部の曲率は同一であるが、畝のピッチ、高さをランダムにすることによって付与される拡散特性(破線)とを示した図である。隣接する畝状凸レンズ部の曲率を互いに異ならせることにより付与される拡散特性の方が、輝度の角度依存性が小さく、高い輝度領域が広いことが分かる。
【0019】
本発明の好適な態様の光拡散フィルムは、前記畝状凸レンズ部の頂が円弧状に湾曲している。該湾曲部は、曲率半径の平均値Xrが、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5〜60μmである。
また、該湾曲部の曲率半径の標準偏差σrは、Xrに対して(σr/Xr=)0.05〜0.8であることが好ましく、0.1〜0.6であることがより好ましい。なお、本発明における標準偏差は、標本標準偏差である。Xrおよびσr/Xrがこの範囲内にあると、各畝状凸レンズ部の集光方向の分布が適度な広がりとなるので、視野角度の拡大と輝度向上とのバランスが良好となる。
さらに、畝状凸レンズ部の高さと畝状凸レンズ部間の間隔との比(=高さ/間隔 =アスペクト比)の平均値は、好ましくは0.1〜4.0、より好ましくは0.5〜2.0である。
【0020】
図2は、畝状凸レンズ部間の間隔の平均値Xpが30μmでσr/Xrが0.55の光拡散フィルム(実線)と、畝状凸レンズ部間の間隔の平均値Xpが30μmでσr/Xrが0.04のフィルム(破線)とに、それぞれ平行光を入射し、フィルムを通過して反対側に出射される光の角度依存性を、光の拡散性が最も強い方向に対して測定した結果を示すものである。σr/Xrが0.55の光拡散フィルムは、σr/Xrが0.04のフィルムよりも、出射角度が広くなっていることが分かる。このような出射角度の広い光拡散フィルムを液晶ディスプレイのバックライト部材として用いると、斜めから観察したときの輝度を高くすることができる。
【0021】
また、本発明の光拡散フィルムは畝状凸レンズ部の曲率を互いに異ならせたことによって、上記のように入射した光を拡散することが可能となるため、拡散粒子をフィルム中に分散させなくても光拡散部材として十分に使用できる。さらに、本発明の光拡散フィルムは、入射光の偏光状態を維持したまま光を拡散できる(偏光解消度が小さい)ので、活用範囲が広い。
【0022】
なお、前記偏光解消度は、クロスニコル配置及びパラレル配置の状態にした二枚の直線偏光板を透過した光の輝度をそれぞれ測定し、次いで、クロスニコル配置にした二枚の直線偏光板間に光拡散フィルムを挟んだ状態で輝度を測定し、前記測定値から算出する。なお、本発明で得られる光拡散フィルムの偏光解消度は、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下である。偏光解消度が小さいほど、入射した光の偏光状態を維持した光を拡散することができ、反射偏光子を備えたバックライト用の部材として好適である。
【0023】
畝状凸レンズ部間の間隔の平均値Xpは、好ましくは0.2〜40μm、より好ましくは1.0〜30μmである。また、畝状凸レンズ部間の間隔の標準偏差σpは、Xpに対して(σp/Xp=)0.1〜0.9であることが好ましく、0.2〜0.7であることがより好ましい。Xpおよびσp/Xpがこの範囲内にあると、集光性による輝度向上と、光拡散性による視野角度拡大とのバランスが良好となる。なお、畝状凸レンズ部間の間隔は頂点間距離である。畝状凸レンズ部は、図4に示すように、ランダムに配置されていてもよいし、図3に示すように規則的に配置されていてもよい。
【0024】
畝状凸レンズ部が図3のように規則的に配置されている場合、入射した光の拡散方向に異方性(異方拡散性)を付与することができる。なお、異方拡散性は、コリメート光のような平行光を光拡散フィルムに入射し、周期性のある方向およびそれに直交する方向に透過してきた光の出射角度と輝度との関係を調べることにより測定できる。フィルムの異方拡散性は所望の特性に応じて適宜選択でき、畝状凸レンズ部の規則性を変化させることにより異方拡散性を調整できる。例えば、入射した光の異方拡散性を強くしたい場合、図3に示すような規則性の高い状態にすればよい。なお、畝状凸レンズ部の側面は、フィルム主面に対して垂直な面であってもよいし、オーバーハング(逆テーパー構造)になっていてもよいし、緩やかな傾斜面になっていてもよい。
【0025】
また、前記畝状凸レンズ部は、褶曲によるフィルム表面の隆起で構成されている。すなわち、本発明における畝状凸レンズ部は、平らな基材フィルムの表面に樹脂等を付着させて形成させた凸部とは本質的に異なる。
【0026】
前記の畝状凸レンズ部を有するフィルムは、通常、樹脂や、ゴム若しくはエラストマーで形成されている。
前記樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(例えば、2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(例えば、セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)などが挙げられる。
【0027】
なお、脂環式オレフィン系樹脂としては、特開平05−310845号公報や米国特許第5179171号公報に記載されている環状オレフィンランダム共重合体、特開平05−97978号公報や米国特許第5202388号公報に記載されている水素添加重合体、特開平11−124429号公報や国際公開99/20676号公報に記載されている熱可塑性ジシクロペンタジエン系開環重合体及びその水素添加物等が挙げられる。
【0028】
また前記ゴム/エラストマーとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。これらのうちフィルムの製造が容易な点から熱可塑性樹脂が好ましい。
【0029】
畝状凸レンズ部を有するフィルムに好ましく用いられる熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、加工の容易さの観点からガラス転移温度が60〜200℃であるものが好ましく、100〜180℃であるものがより好ましい。なお、ガラス転移温度は示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。
【0030】
また、前記熱可塑性樹脂は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは8,000〜200,000、特に好ましくは10,000〜100,000である。重量平均分子量がこの範囲にあることにより成形加工性が良好となり、機械的強度を向上させることができる。この重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0031】
畝状凸レンズ部を有するフィルムを構成する樹脂や、ゴム又はエラストマーは、顔料や染料のごとき着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、有機又は無機の充填剤、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止剤、蛍光増白剤、抗菌剤、光拡散粒子、熱可塑性エラストマーその他の配合剤が適宜配合されたものであってもよい。
【0032】
本発明の光拡散フィルムは、フィルム表面の畝状凸レンズ部の上に積層され且つ前記畝状凸レンズ部の形状に対応するように褶曲している薄膜層をさらに含むことが好ましい。
前記薄膜層は有機物質または無機物質で形成されている。
薄膜層を構成する無機物質としては、金属酸化物や金属窒化物などの金属化合物、非金属酸化物や非金属窒化物などの非金属化合物などが挙げられ、具体的には、アルミニウム、珪素、マグネシウム、パラジウム、白金、亜鉛、錫、ニッケル、銀、銅、金、アンチモン、イットリウム、インジウム、ステンレス鋼、クロム、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、ランタン、セリウム、等の金属若しくは非金属;またはこれらの酸化物や窒化物;又はそれらの混合物が挙げられる。これらのうち、可視光を透過する無機物質を選択することが好ましく、その具体的な例としてITO、In2O3、SnO2、SiO2、CuI、TiO2、ZrO2等が挙げられる。これらのうち、薄膜の柔軟性という観点からSiO2が好ましい。
【0033】
前記無機薄膜の平均厚さは、1nm〜500nmであることが好ましい。1nmより薄すぎると畝状凸レンズ部が形成しづらくなり、500nmより厚すぎると薄膜にクラックが発生しやすくなる。無機薄膜を用いると、平均間隔Xpが100nm〜1000nmの微細な畝状凸レンズ部が容易に得られる。
【0034】
薄膜層を構成する有機物質としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、前記畝状凸レンズ部を有するフィルムに用いることができるものとして例示したものと同様のものを挙げることができる。また、有機薄膜には、前記畝状凸レンズ部を有するフィルムに用いる樹脂同様に配合剤を含んでいてもよい。
【0035】
本発明においては、前記畝状凸レンズ部を有するフィルムが熱可塑性樹脂1からなるものであり、前記有機薄膜が熱可塑性樹脂2からなる場合、熱可塑性樹脂2のガラス転移温度は、熱可塑性樹脂1のガラス転移温度よりも20℃以上高いことが好ましい。なお、ガラス転移温度は示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。
【0036】
前記硬化性樹脂としては、熱硬化性のものと、エネルギー線硬化性のものとがある。なお、エネルギー線とは、可視光線、紫外線、電子線、などのことをいう。
【0037】
前記熱硬化性樹脂の具体例としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
【0038】
前記エネルギー線硬化型樹脂としては特に限定されないが、例えば、ラジカル重合性不飽和基及び/又はカチオン重合性基を有する低分子量化合物、又は樹脂等が挙げられ、所望の特性によって適宜選択できる。なお、ラジカル重合性不飽和基及び/又はカチオン重合性基は、1分子中に2以上含んでいてもよい。
【0039】
前記ラジカル重合性不飽和基を有する低分子量化合物としては、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン化合物;スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、ピニルナフタレン、4−ビニルピリジン等のラジカル反応性芳香族化合物;アクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、マレイン酸、エンド−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,8−ジカルボン酸(エンディック酸)、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸:アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、マイイン酸クロライド等の前記不飽和カルボン酸のハライド;アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド等の、前記不飽和カルボン酸のアミド若しくはイミド誘導体;無水マレイン酸、無水エンディック酸、無水シトラコン酸等の前記不飽和カルボン酸の無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、(メタ)アクリル酸アミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アリル(メク)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フエノキシエチル(メタ)アクリレート、へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントソ(メタ)アクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールへキサ(メタ)アクリレート等の前記不飽和カルボン酸のエステル誘導体; ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシトリエトキシシラン等のラジカル反応不飽和基を有するシラン化合物;等が挙げられる。
【0040】
前記カチオン重合性基を有する低分子化合物としては、ジシクロペンタジエンジオキサイド、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アセタール、エチレングリコールのビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル、エチレングリコールの3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸ジエステル等の脂環式エポキシ基を含有する化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、スピログリコールジグリシジルエーテル等のグリシジル基を含有するエポキシ化合物;3−エチル−3−メトキシメチルオキセタン、3−エチル−3−エトキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン、3−エチル−3−アリルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2´−ヒドロキシエチル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2´−ヒドロキシ−3´−フェノキシプロピル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2´−ヒドロキシ−3´−ブトキシプロピル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−[2´−(2´´−エトキシエチル)オキシメチル]オキセタン等のオキセタン環を含有する化合物;等が挙げられる。
【0041】
前記ラジカル重合性不飽和基又はカチオン重合性基を有する樹脂としては、低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等の側鎖にラジカル重合性不飽和基又はカチオン重合性基を有する樹脂が挙げられる。
【0042】
エネルギー線として紫外線や可視光線を用いる場合には、硬化性樹脂の中に光重合開始剤、光増感剤などを含ませる。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類等が挙げられる。光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0043】
硬化性樹脂からなる薄膜層には、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等の配合剤が含まれていてもよい。
有機薄膜としては、微細な畝状凸レンズ部のアスペクト比の制御が容易な場合があるため、硬化性樹脂薄膜を用いることが好ましい。
【0044】
有機薄膜の平均厚さは、100nm〜20μmであることが好ましい。100nmより薄すぎると畝状凸レンズ部が形成しづらくなり、20μmより厚すぎるとアスペクト比の制御が難しくなる。なお、有機薄膜を用いると、畝状凸レンズ部頂点間の平均距離が500nm〜40μmの微細な畝状凸レンズ部が容易に得られる。
【0045】
薄膜層の平均厚さは、光拡散フィルム上の畝状凸レンズ部の高さに対して、10%〜100%であることが好ましい。薄膜層の平均厚さの割合が10%より薄い場合には、耐擦傷性が損なわれる可能性があり、逆に100%より厚い場合には、過酷な条件で使用した場合、そりが出る可能性がある。
【0046】
薄膜層の厚さの変動係数は20%以下であることが好ましい。薄膜層の厚さの変動係数が20%より大きい場合には、薄膜層の厚さ分布が大きくなり、そりの原因となる場合がある。なお、薄膜層の厚さは、以下のようにして計測できる。光拡散フィルムを周期性が強い方向で垂直に切断し超薄切片を得、透過電子顕微鏡にて超薄切片を写真撮影する。撮影した画像から薄膜層の厚さを、凸部頂点および凹部底点のそれぞれ少なくとも15点以上で計測し、それら計測値から、平均値、標準偏差、変動係数を算出する。光拡散フィルムの周期性が強い方向は、光拡散フィルム表面の走査型電子顕微鏡写真像を2次元フーリエ変換して得られる空間周波数のパワースペクトル分布から空間周波数の強度が強い2点を抽出し、この2点で結ばれる直線の方向である。この方向は、例えば畝状凸レンズ部が面内でストライプ状である場合、ストライプの長手方向に直交する方向である。
【0047】
薄膜層は、前記畝状凸レンズ部の上に積層され且つ前記畝状凸レンズ部の形状に対応するように褶曲している。図5及び図6は、本発明の光拡散フィルムの垂直断面を示す模式図である。光拡散フィルムの表面の畝状凸レンズ部に対応して、薄膜が褶曲し、光拡散フィルムの薄膜層側の表面は畝状凸レンズ部の形状が浮き出し、起伏している。浮き出しによる起伏が小さくなると畝状凸レンズ部の集光性が弱くなる傾向がある。
【0048】
本発明の光拡散フィルムは、ヘイズが70%以上であることが好ましく、75%以上であることが特に好ましい。また、本発明の光拡散フィルムは、全光線透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。光拡散フィルムの光学特性を前記範囲にすることにより、光拡散フィルムとして好適に使用することができる。
【0049】
〔光拡散フィルムの製造方法〕
本発明の光拡散フィルムの好適な製造方法は、平板状の透明基材の少なくとも一方の表面に薄膜を形成して積層体を得る工程、及び該積層体を面内の少なくとも一つの軸方向に収縮させて薄膜を褶曲させる工程を含むものである。
【0050】
(透明基材)
本発明の製造方法に用いる透明基材は、薄膜を積層させた後に、面内の少なくとも一つの軸方向に収縮させることができるものであれば特に限定されない。例えば、透明基材自身が加熱などの手段によって収縮するものであってもよいし、一軸延伸させたときに延伸方向に直交する方向が収縮するものであってもよい。
【0051】
透明基材の収縮前の平均厚さは、ハンドリングの観点から通常5μm〜1mm、好ましくは20〜500μmである。透明基材は、通常、樹脂や、ゴム若しくはエラストマーで形成されている。樹脂や、ゴム若しくはエラストマーとしては、前記畝状凸レンズ部を有するフィルムを構成するものとして例示したものと同様のものを挙げることができる。また、前記畝状凸レンズ部を有するフィルムを構成する樹脂同様に配合剤を含んでいてもよい。
【0052】
透明基材は、その製法によって特に制限されない。透明基材の原反は、前述の樹脂等を公知のフィルム成形法で成形することによって得られる。フィルム成形法としては、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。
【0053】
加熱などの手段によってそれ自身が収縮する透明基材は、通常、面内で分子配向していることが好ましい。分子配向の状態は、公知の方法で測定することでき、例えば、自動複屈折計KOBRA21ADHを用いて測定することができる。
【0054】
加熱などの手段によってそれ自身が収縮する透明基材は、例えば、前述の樹脂等を公知の成形法で原反フィルムに形成し、該原反フィルムを延伸することによって得ることができる。また、延伸処理の代わりに、磁場や電場を掛けて又はラビング処理して分子を配向させ収縮性を示す透明基材とすることができる。ゴム又はエラストマーを公知の成形法で弾性フィルムに形成し、該弾性フィルムを面内方向に引っ張った状態にすることで、弾性による復元力を利用した収縮性を示す透明基材とすることができる。さらに硬化性樹脂からなるフィルムをあらかじめ溶剤等で膨潤させ、該膨潤フィルムが乾燥する時に生じる収縮を利用して本発明に用いる透明基材とすることができる。これらのうち、原反フィルムを延伸することによって得られる収縮性を示す透明基材が好ましい。
【0055】
原反フィルムを延伸することによって得られる収縮性を示す透明基材は、その延伸方法によって特に制限されず、一軸延伸法、二軸延伸法のいずれで延伸したものであってもよい。二軸延伸の場合は、通常、フィルム面内の二つの方向に収縮することになる。
延伸処理する方法としては、ロール側の周速の差を利用して縦方向に一軸延伸する方法;テンター延伸機を用いて横方向に一軸延伸する方法等の一軸延伸法;固定するクリップの間隔を開いての縦方向の延伸と同時に、ガイドレールの広がり角度により横方向に延伸する同時二軸延伸法や、ロール間の周速の差を利用して縦方向に延伸した後、その両端部をクリップ把持してテンター延伸機を用いて横方向に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法;横又は縦方向に左右異なる速度の送り力若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機を用いてフィルムの幅方向に対して任意の角度θの方向に連続的に斜め延伸する方法;などが挙げられる。
【0056】
主たる収縮方向の収縮率が大幅に高くなると、主たる収縮方向に直交する方向に伸びが生じることがあり、その伸びによって薄膜表面に亀裂が生じることがある。この収縮時の亀裂発生を抑制することができるという観点から、(i)延伸時の縦方向の収縮を好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下に抑えて横方向に一軸延伸する(横一軸延伸法)か、(ii)縦方向及び横方向に二軸延伸するの(二軸延伸法)が好ましい。
【0057】
延伸に用いる装置として、例えば、縦一軸延伸機、テンター延伸機、バブル延伸機、ローラー延伸機等が挙げられる。
【0058】
延伸時の温度は、透明基材を構成する材料のガラス転移温度をTgとしたときに、好ましくは(Tg−30℃)と(Tg+60℃)の間、より好ましくは(Tg−10℃)と(Tg+50℃)の間の温度から選択される。
延伸倍率は、使用する透明基材の引張り特性に応じて、所望する畝状凸レンズ部のアスペクト比になるように適宜選択すればよい。
【0059】
高アスペクト比の畝状凸レンズ部を得たい場合には、薄膜の膜質や厚さにもよるが、おおむね延伸倍率を高く設定する。低アスペクト比の畝状凸レンズ部を得たい場合には、延伸倍率を低く設定する。具体的には、主たる延伸方向の延伸倍率を、通常1.01〜30倍、より好ましくは1.01〜10倍、より好ましくは1.05〜5倍にする。主たる延伸方向の延伸倍率が1.01倍より小さい倍率では、畝状凸レンズ部が発生せず、30倍より大きい倍率では、フィルム強度が低下する恐れがある。
【0060】
(薄膜)
次に、透明基材の少なくとも一方の表面に薄膜を形成する。薄膜の収縮率は、透明基材を収縮させる条件下において、透明基材の収縮率の20%以下であることが好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。薄膜の収縮率が大きすぎると微細な畝状凸レンズ部が形成しない場合がある。
【0061】
薄膜の収縮前の平均厚さは、1nm〜20μmであることが好ましい。薄膜の厚さは、電子顕微鏡にて、薄膜の垂直断面を写真撮影し、該写真像から厚さの平均値を求める。
薄膜としては、前述のごとく、無機薄膜及び有機薄膜がある。
【0062】
無機薄膜の材料としては前述の無機薄膜で例示したものと同様のものが挙げられる。
無機薄膜を形成する方法は、特に制限されず、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、CVD(化学蒸着)等の蒸着法;スピンコート法、ディッピング法、ロールコート法、スプレー法、ベーパー法、グラビアコータやブレードコータなどのコータ法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の塗布法;無電解めっき法、電解めっき法などが挙げられる。
【0063】
有機薄膜の材料としては前述の有機薄膜で例示したものと同様のものが挙げられる。なお、有機薄膜には前述した配合剤を含んでいてもよい。
熱可塑性樹脂からなる有機薄膜の形成方法としては、(1)透明基材を構成する樹脂と、薄膜を構成する樹脂とを共押出する方法;(2)熱可塑性樹脂を薄膜に成形し、これを透明基材に貼り合わせる方法;(3)透明基材の表面に熱可塑性樹脂を含有する溶液を塗布し乾燥する方法等が挙げられる。
硬化性樹脂からなる有機薄膜の形成方法は、特に限定されない。硬化性樹脂からなる有機薄膜は、例えば、透明基材面に硬化性樹脂の組成物を塗布し、硬化することによって得られる。なお、前記硬化性樹脂の組成物には作業性を良好にする観点から溶剤を含んでいても良い。硬化性樹脂薄膜を形成する際、透明基材のガラス転移温度より5℃以上低い温度で熱処理することが望ましい。薄膜形成の際に高い温度がかかると、透明基材がアニールされ、設計どおりに収縮しなくなるおそれがある。
【0064】
(褶曲誘起構造)
本発明の製造方法においては、透明基材表面に薄膜を形成する前に、薄膜の褶曲を引き起こさせるための構造(褶曲誘起構造)を透明基材の表面に形成してもよいし、また透明基材表面に薄膜を形成した後で且つ該基材を収縮させる前に、該薄膜の褶曲を引き起こさせるための構造(褶曲誘起構造)を薄膜に形成してもよい。
【0065】
該構造は、基材が収縮したときに薄膜の褶曲を引き起こさせる構造であれば特に限定されず、例えば、ラビング処理やその他の方法で表面に付けた傷、インクジェットプリンターや印刷機等で載せたインク印、エンボス加工やインプリントなどで付与した凹凸などが挙げられる。
褶曲誘起構造は一定間隔の位置に形成されることが好ましい。褶曲誘起構造の間隔は、所望する畝状凸レンズ部の頂点間の距離とは直接に関係無いので、所望の畝状凸レンズ部の頂点間の距離よりも狭くても、広くても良いが、畝状凸レンズ部の頂点間の所望距離の0.05倍〜100倍の褶曲誘起構造の間隔にすることが好ましい。
【0066】
本発明の製造方法においては、次に前記薄膜を表面に形成した透明基材を収縮させ、薄膜を褶曲させる。透明基材を収縮させる方法は、透明基材の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0067】
透明基材の収縮率は、透明基材の収縮によって薄膜が褶曲したときに薄膜等に亀裂などが生じないようにするために、主たる収縮方向の収縮率ΔL、および主たる収縮方向に直交する方向の収縮率ΔMが、式〔3〕および式〔4〕を満たすことが好ましい。なお、ΔL及びΔMは式〔1〕及び式〔2〕でそれぞれ定義される。
【0068】
式〔1):ΔL=(L0−L1)/L0×100 (L0:主たる収縮方向の収縮前の長さ、L1:主たる収縮方向の収縮後の長さ)
式〔2):ΔM=(M0−M1)/M0×100 (M0:主たる収縮方向に直交する方向の収縮前の長さ、M1:主たる収縮方向に直交する方向の収縮後の長さ)
式〔3〕:ΔL>0
式〔4〕:−(ΔL×0.3)≦ΔM≦ΔL
【0069】
微細畝状凸レンズ部の異方性を強くしたい場合、すなわち、畝状凸レンズ部を面内でストライプ状に細長く伸びた構造にしたい場合には、式〔3〕及び式〔5〕を満たすことが好ましい。
式〔5〕:−(ΔL×0.2)≦ΔM≦(ΔL×0.2)
それにより、得られる光拡散フィルムの異方拡散性を強くすることができる。
【0070】
本発明の製造方法は、このように収縮条件を変更するだけで、畝状凸レンズ部頂点間距離、アスペクト比等を任意に調整できる。
【0071】
なお、主たる収縮方向は、収縮する度合い(収縮率)が最も大きい方向である。例えば、熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸して得られた透明基材は加熱によって収縮する。フィルムの延伸を一軸方向にだけ行った場合には、通常、該延伸方向が主たる収縮方向になる。また二軸方向に延伸を行った場合には、通常、延伸した二つの方向のうち延伸倍率の大きい方向が主たる収縮方向になる。
【0072】
熱可塑性樹脂からなるフィルムを一軸延伸した時に延伸方向に直交する方向にフィルムが収縮する。この延伸時の収縮を利用した透明基材では、延伸方向に直交する方向が主たる収縮方向である。なお、主たる収縮方向に直交する方向の収縮率ΔMの値がマイナスのときは、収縮処理においてフィルムが伸びたことを表す。主たる収縮方向にフィルムが収縮したときに、主たる収縮方向に直交する方向の伸びが大きくなりすぎると薄膜に亀裂が生じやすくなる。このようなことから、主たる収縮方向に直交する方向の収縮率は、1%〜90%であることが好ましく、1%〜50%であることがより好ましい。
【0073】
褶曲の度合いの変化によって畝状凸レンズ部の頂の曲率が変化する。褶曲の度合いは、薄膜及びフィルム基材の収縮率と、薄膜及びフィルム基材の厚さと、並びに薄膜及びフィルム基材の密着度合いによって変わる。
ある所定の厚さのフィルム基材や薄膜を如何に精密に均一に作成したとしても、薄膜及びフィルム基材の収縮率、薄膜及びフィルム基材の厚さ、並びに薄膜及びフィルム基材の密着度には、統計的確率で分布が生じる。この収縮率や厚さ等の統計的確率による分布によって、褶曲の度合いに統計的確率で分布が生じる。本発明の製造方法は、この統計的確率で生じる分布を利用して、畝状凸レンズ部の頂の曲率を異ならしめたのである。
畝状凸レンズ部の頂の曲率半径は、基材フィルム及び薄膜の材質、厚さ等の材料構成、及び薄膜層の成膜、基材フィルムの延伸、収縮等の製造条件に大きく依存している。例えば、σr/Xrを小さくするためには、前記材料構成及び製造条件の変動(例えば、厚さムラや延伸ムラ)を小さくすれば良く、逆にσr/Xrを大きくするためには、前記変動を大きくすれば良い。つまり、前記材料構成及び製造条件を調整することにより、Xr、σr/Xrを制御することが可能となる。
畝状凸レンズ部間の距離、バラツキは、薄膜の材質、厚さ等の材料構成、及び基材フィルムの延伸、収縮等の製造条件に大きく依存している。例えば、Xpを小さくするためには、無機薄膜を用いる、若しくは薄膜の厚さを薄くすれば良く、逆にXpを大きくするためには、有機薄膜を用いる、若しくは薄膜の厚さを厚くすれば良い。また、σp/Xpを小さくするためには、基材フィルムの収縮の一軸性を高く(例えば、延伸倍率の異なる二軸延伸で、延伸倍率の差を大きくする)し、前記褶曲誘起構造を用いればよく、逆にσp/Xpを大きくするためには、基材フィルムの収縮の一軸性を低く(例えば、延伸倍率の異なる二軸延伸で、延伸倍率の差を小さくする)すれば良い。つまり、前記材料構成及び製造条件を調整することにより、Xp、σp/Xpを制御することが可能となる。
【0074】
本発明の光拡散フィルムを光源の前に備えることによって、異方拡散性や集光特性を有し、あらゆる使用環境に対して十分な耐性を示す、本発明の照明装置を得ることができる。
照明装置には、光源の背後に光反射素子を備えていてもよい。前記光反射素子は、光を反射することができる素子である。具体的には、反射性金属膜や白色膜を備えた反射板が挙げられる。
【0075】
光源は特に限定されないが、白色光を発するものが好ましく、具体的には冷陰極管、熱陰極管、発光ダイオード、およびエレクトロルミネセンスから選択される。偏光を発する照明装置とするために偏光板を設けてもよい。その他に、プリズムフィルム、反射性偏光子、1/4波長板、1/2波長板、視野角補償フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルムなどが配置されていてもよい。
【0076】
本発明の光拡散フィルムを光源と液晶パネルとの間に備えることによって本発明の液晶表示装置を得ることができる。液晶パネルは、液晶セルと、これを挟んで積層される二枚の偏光板とからなるものである。液晶セルは、数μmのギャップを隔てて対向する透明電極を設けた2枚のガラス基板の間に液晶物質を充填し、この電極に電圧を掛けて液晶の配向状態を変化させてここを通過する光の量を制御するものである。
【0077】
液晶物質の配向状態を変化させる方式(動作モード)などによって、液晶セルは分類され、例えば、TN(Twisted Nematic)型液晶セル、STN(Super Twisted Nematic)型液晶セル、HAN(Hybrid Alignment Nematic)型液晶セル、IPS(In Plane Switching)型液晶セル、VA(Vertical Alignment)型液晶セル、MVA(Multi−domain Vertical Alignment型液晶セル、OCB(Optical Compensated Bend)型液晶セルなどが挙げられる。
【0078】
本発明の液晶表示装置は、その他に、光反射素子、導光板、プリズムフィルム、光拡散板、反射性偏光子、1/4波長板、1/2波長板、視野角補償フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルムなどが配置されていてもよい。本発明の光拡散フィルムは異方拡散性や集光特性を有するので、液晶表示装置において、プリズムフィルム、光拡散板などの部材を省略することができる。
【実施例】
【0079】
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0080】
(光拡散フィルム表面に形成された畝状凸レンズ部の頂の曲率半径、畝状凸レンズ部の間隔)
電界放出形走査電子顕微鏡(S−4700、日立製作所製)にて、フィルム表面に形成された構造を撮影した。走査電子顕微鏡像を画像解析ソフト(SoftImagingSystem製、AnlySIS)を用いて、2次元高速フーリエ変換し、空間周波数のパワースペクトル分布を求め、周期性を強く示す方向を読み取った。この方向にウルトラミクロトームを用いて切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−4700)で写真撮影した。
この断面写真撮影をフィルム幅方向および流れ方向に少なくとも10cm以上離れた3箇所の点で行った。走査型電子顕微鏡写真像から、畝状凸レンズ部頂点間距離を30点計測し、平均値および標準偏差を求めた。
曲率半径については、畝状凸レンズ部の頂の湾曲している部分を画像処理にてフィッテングし、30点全ての曲率半径を測定し、平均値および標準偏差を求めた。
【0081】
(光拡散フィルムの全光線透過率、ヘイズ)
濁度計(日本電色製 NDH2000型)を使用し、JIS−K−7105に準拠し測定した。
【0082】
(光拡散フィルムの異方拡散性)
スポット径2mmのコリメート光を光拡散フィルムの法線方向から入射し、周期性を強く示す方向およびそれに直交する方向についての出射光の角度と輝度との関係を輝度計(BM−7、トプコン社製)を用いて測定した。
【0083】
(光拡散フィルムの偏光解消度)
クロスニコル配置の二枚の直線偏光板に、冷陰極管と導光板で構成される面状光源の光を透過させ、輝度計(BM−7、トプコン社製)を用いて透過光の正面輝度(A)を測定した。
パラレル配置の二枚の直線偏光板に、冷陰極管と導光板で構成される面状光源の光を透過させ、輝度計(BM−7、トプコン社製)を用いて透過光の正面輝度(B)を測定した。
次に光拡散フィルムを二枚の直線偏光板(クロスニコル配置)の間に挟むように重ねた。それに、冷陰極管と導光板で構成される面状光源の光を透過させ、輝度計(BM−7、トプコン社製)を用いて透過光の正面輝度(C)を測定した。
偏光解消度は下記の式で定義される。
偏光解消度〔%〕=(輝度(C)−輝度(A))/輝度(B)×100
偏光解消度が小さいほど、透過する光の偏光状態を変化させないこと(非偏光解消性)を示している。
【0084】
(光拡散フィルムの耐久性)
光拡散フィルムを5cm角に切断し、60℃×85%RH環境下に500時間放置した。光拡散フィルムの外観を観察し、そりの状態を評価した。
【0085】
(照明装置、液晶表示装置)
内寸幅300mm、内寸長さ240mm、内寸深さ18mmの乳白色プラスチック製ケースの底に、反射フィルムを貼着して反射板とした。反射板から4mm離して、直径4mm、長さ360mmの冷陰極管8本を、冷陰極管の中心軸間の距離を25mmとして配置した。電極部近傍をシリコーンシーラントで固定し、インバーターを取り付けた。
光拡散板を冷陰極管中心軸と光拡散板の冷陰極管に近い側の面との距離が14mmになるように設置した。反射偏光子(DBEF−M、住友スリーエム製)および光拡散フィルムを光の拡散方向がケースの幅方向になるように積層して、照明装置を作製した。
管電流6mA、管電圧330Vrmsを印加して冷陰極管を点灯した。幅方向に出射する光の出射角度と輝度との関係を輝度計(BM−7、トプコン製)を用いて測定した。
【0086】
前記照明装置の上に、液晶パネルを配置することにより液晶表示装置を作製した。管電流6mA、管電圧330Vrmsを印加して冷陰極管を点灯した。液晶セルを白表示の状態にして、液晶表示装置の正面輝度を輝度計(BM−7、トプコン製)を用いて測定した。
【0087】
製造例1 (延伸倍率1.2の一軸延伸フィルム)
脂環式オレフィンポリマー(ZEONOR1420、ガラス転移温度136℃、日本ゼオン社製)のペレットを、窒素を流通させた熱風乾燥機中にて、100℃で4時間乾燥した。 このペレットを、50mmφのスクリューを備えたTダイ式フィルム溶融押出成形機に供給し、溶融樹脂温度260℃で押出して、幅650mm、厚さ188μmのフィルムを成形し、続いて両端から25mmずつをトリミングして幅600mmの基材フィルムを得た。
【0088】
幅600mmの基材フィルムの両端をクリップで把持し、テンター延伸機内に導入し、温度150℃でフィルム幅方向に1.2倍、フィルム流れ方向に1.0倍になるように横一軸延伸した。テンター延伸機から出てきたフィルムをクリップから外し、両端を連続的にトリミングして幅700mmの延伸フィルム(1)を得た。
【0089】
製造例2 (延伸倍率2.0の一軸延伸フィルム)
製造例1において、延伸倍率を、フィルム幅方向に2.0倍、フィルム流れ方向に1.0倍に変えた以外は製造例1と同様の方法によって、幅1000mmの延伸フィルム(2)を得た。
【0090】
製造例3 (二軸延伸フィルム(延伸倍率:横2.2倍、縦1.7倍))
製造例1で得た幅600mmの基材フィルムを、縦一軸延伸装置を用い145℃の温度で縦方向に1.7倍に延伸した。次いで、この縦延伸フィルムをテンター延伸(横一軸延伸)装置に送り150℃で、フィルム幅方向に2.2倍、フィルム流れ方向に1.0倍に延伸し、延伸フィルム(3)を得た。
【0091】
製造例4 (紫外線硬化性樹脂)
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(NKエステル AD−TMP、新中村化学製)90.0質量部、光開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー製)10.0質量部、および酢酸ブチル900.0質量部を均一になるまで撹拌し、次いで1μmのフィルタで濾過して、紫外線硬化性樹脂溶液を調製した。
【0092】
実施例1
製造例1で得た延伸フィルム(1)をコロナ放電処理して表面改質した。該フィルムに、製造例4で作製した紫外線硬化性樹脂溶液を、グラビアコーターを用いて、乾燥膜厚が0.4μmになるように塗布し、80℃で5分間乾燥させ、次いで、超高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射(積算光量400mJ/cm2)し、塗膜を硬化させて、積層フィルムを得た。
次いで、積層フィルムを、140℃の温風を循環させた乾燥機を通過させて、積層フィルムを収縮させて、光拡散フィルム1を得た。図7に示すように、光拡散フィルム1の表面には複数の畝状凸レンズ部が形成され、紫外線硬化性樹脂で形成された薄膜が畝状凸レンズ部の形状に対応するように褶曲して積層され、薄膜層側表面は畝状凸レンズ部の形状が浮き出し起伏していた。畝状凸レンズ部は、畝の長手方向が一方向にほぼ揃い、畝の短手方向に強い周期性を示すものであった。また、少なくとも一組の隣接する畝状凸レンズ部の曲率が互いに異なっていた。
【0093】
畝状凸レンズ部の頂の曲率半径の平均値(Xr)は0.25μm、標準偏差(σr)は0.028μm、σr/Xrは0.112であった。
畝状凸レンズ部の間隔の平均値(Xp)は1.8μm、標準偏差(σp)は0.66μm、σp/Xpは0.367であった。
また、畝状凸レンズ部の平均アスペクト比は0.5であった。
【0094】
光拡散フィルム1は、全光線透過率が88%、ヘイズが80%、偏光解消度が0.4%であった。
光拡散フィルム1は、高い光線透過率、光拡散性を有し、かつ透過光の偏光を維持する特性を有するフィルムであることが確認された。
また、光拡散フィルム1の出射光異方拡散性評価の結果を図8に示した。実線は強い周期性を示す方向の角度依存性、点線は周期性の弱い方向の角度依存性を示している。光拡散フィルム1は強い周期性を示す方向に回折及び散乱を示し、それと直交する方向には全く散乱しないことがわかる。
光拡散フィルム1を60℃×85%RH環境下に500時間放置したが、そりは全く見られなかった。
【0095】
次に、光拡散フィルム1を強い周期性を示す方向をケースの幅方向に平行に配置し、前述のように照明装置および液晶表示装置を作製した。
該照明装置の幅方向角度−出射光輝度の分布を測定した結果(実線)を図11に示した。該照明装置は、幅方向に対して光を拡散する特性を示し、広い範囲に亘り高い輝度を示すことがわかる。
また、作製した液晶表示装置を白表示にした際の正面輝度は480cd/m2であり、良好な表示特性を示すことが確認された。
【0096】
実施例2
製造例1で得た延伸フィルム(1)を製造例2で得た延伸フィルム(2)に替え、ワイヤーバーコーターを用いて紫外線硬化性樹脂溶液を乾燥膜厚が3.8μmになるように塗布した以外は実施例1と同様の方法によって、光拡散フィルム2を得た。
光拡散フィルム2の表面には複数の畝状凸レンズ部が形成され、紫外線硬化性樹脂で形成された薄膜が畝状凸レンズ部の形状に対応するように褶曲して積層され、薄膜層側表面は畝状凸レンズ部の形状が浮き出し起伏していた。畝状凸レンズ部は、畝の長手方向が一方向にほぼ揃い、畝の短手方向に強い周期性を示すものであった。また、少なくとも一組の隣接する畝状凸レンズ部の曲率が互いに異なっていた。
【0097】
畝状凸レンズ部の頂の曲率半径の平均値(Xr)は46.7μm、標準偏差(σr)は35.5μm、σr/Xrは0.760であった。
畝状凸レンズ部の間隔の平均値(Xp)は32.0μm、標準偏差(σp)は3.84μm、σp/Xpは0.12であった。また、畝状凸レンズ部の平均アスペクト比は0.6であった。
【0098】
光拡散フィルム2は、全光線透過率が79%、ヘイズが77%、偏光解消度が0.4%であった。つまり、光拡散フィルム2は光拡散フィルム1と同様に、高い光線透過率、光拡散性を有し、かつ透過光の偏光を維持する特性を有するフィルムであることが確認された。
光拡散フィルム2の出射光異方拡散性評価の結果を図9に示した。実線は強い周期性を示す方向の角度依存性、点線は周期性の弱い方向の角度依存性を示している。該フィルムは強い周期性を示す方向に散乱を示し、それと直交する方向には全く散乱しないことがわかる。
光拡散フィルム2を60℃×85%RH環境下に500時間放置したが、そりは全く見られなかった。
【0099】
次に、光拡散フィルム2を強い周期性を示す方向をケースの幅方向に平行に配置して、前述のように照明装置および液晶表示装置を作製した。
該照明装置の幅方向角度−出射光輝度の分布を測定した結果(破線)を図11に示した。実施例2の照明装置は、幅方向に対して光を拡散する特性を示し、広い範囲に渡り高い輝度を示すことがわかる。
また、液晶表示装置の正面輝度(白表示時)は440cd/m2であり、良好な表示特性を示すことが確認された。
【0100】
実施例3
製造例2で得た延伸フィルム(2)を製造例3で得た延伸フィルム(3)に替え、紫外線硬化性樹脂溶液を乾燥膜厚を1.5μmになるように塗布した以外は実施例1と同様の方法によって、光拡散フィルム3を得た。
光拡散フィルム3の表面には複数の畝状凸レンズ部が形成され、紫外線硬化性樹脂で形成された薄膜が畝状凸レンズ部の形状に対応するように褶曲して積層され、薄膜層側表面は畝状凸レンズ部の形状が浮き出し起伏していた。畝状凸レンズは、図4のごとく、畝が複雑に曲がり、周期性の強い方向と弱い方向との差が小さいものであった。また、少なくとも一組の隣接する畝状凸レンズ部の曲率が互いに異なっていた。
【0101】
畝状凸レンズ部の頂の曲率半径の平均値(Xr)は1.19μm、標準偏差(σr)は0.07μm、σr/Xrは0.059であった。
畝状凸レンズ部の間隔の平均値(Xp)は5.4μm、標準偏差(σp)は4.48μm、σp/Xpは0.830であった。また、畝状凸レンズ部の平均アスペクト比は3.7であった。
【0102】
光拡散フィルム3は、全光線透過率が76%、ヘイズが88%、偏光解消度が0.4%であった。
光拡散フィルム3は光拡散フィルム1または2と同様に、高い光線透過率、光拡散性を有し、かつ透過光の偏光を維持する特性を有するフィルムであることが確認された。
光拡散フィルム3の出射光異方拡散性評価の結果を図10に示した。実線は強い周期性を示す方向の角度依存性、点線は周期性の弱い方向の角度依存性を示している。光拡散フィルム3は周期性を強く示す方向に強い散乱を示し、それに直交する方向には弱い散乱を示すことがわかる。
次に、光拡散フィルム3を60℃×85%RH環境下に500時間放置したが、そりは全く見られなかった。
【0103】
次に、光拡散フィルム3を強い周期性を示す方向をケースの幅方向に配置して、前述のように照明装置および液晶表示装置を作製した。
該照明装置の幅方向角度−出射光輝度の分布を測定した結果(点線)を図11に示した。実施例3の照明装置は、幅方向に対して光を拡散する特性を示し、広い範囲に渡り高い輝度を示すことがわかる。
また、液晶表示装置の正面輝度(白表示時)は430cd/m2であり、良好な表示特性を示すことが確認された。
【0104】
比較例1
ステンレス製反応器に、脱イオン水300質量部、ポリビニルアルコール分散剤0.05質量部、スチレン100質量部およびジビニルベンゼン5質量部を入れ、減圧脱気し、次いで撹拌して、エマルジョンを得た。このエマルジョンを均質機を用いて安定化し、別に脱気されたオートクレーブに移し71℃に昇温した。
その後、過酸化ベンゾイル0.015質量部、およびメチルメタクリレート3質量部をオートクレーブに入れ、5時間重合を行って、ポリマービーズの分散液を得た。得られたポリマービーズ分散液を濾別、洗浄、乾燥し、次いで篩別(50μm以上の粒子を除去)することによりポリマービーズを得た。得られたポリマービーズは粒子径が5.8μmであった。
次いで、アクリル樹脂(ダイヤナールBR102、三菱レイヨン製)10質量部、前記ポリマービーズ10質量部、および酢酸ブチル80質量部を混合、攪拌して、アクリル樹脂溶液を調製した。
【0105】
コロナ放電処理によって表面改質させた厚さ100μmの脂環式オレフィンポリマーフィルム(ゼオノアフィルムZF14、オプテス社製)の上に、乾燥膜厚が30μmになるようにロールコーターを用いて前記アクリル樹脂溶液を塗布し、100℃の乾燥炉内で乾燥して、平らな表面を持つ脂環式オレフィンポリマーフィルムと、ポリマービーズによる凸レンズ部がランダムに配置された層との積層された光拡散フィルム4を得た。
光拡散フィルム4は、全光線透過率が68%、ヘイズが88%、偏光解消度が83.9%であった。光拡散フィルム4に直線偏光を入射しても、出射光は自然光になってしまう特性を有していた。
光拡散フィルム4の出射光異方拡散性評価の結果を図12に示した。実線と破線は光拡散フィルム4の面内で互いに直交する方向の輝度の角度依存性を示すものであるが、実線と破線とはほぼ重なってしまっている。光拡散フィルム4は、すべての方向に対して均一に散乱する等方散乱性を示すことがわかる。
光拡散フィルム4を60℃×85%RH環境下に500時間放置したところ、フィルム端部にそりが生じていた。
【0106】
次に、光拡散フィルム4を用いて前述のように照明装置および液晶表示装置を作製した。
該照明装置の幅方向角度−出射光輝度の分布を測定した結果(実線)を図14に示した。比較例1の照明装置は、正面の輝度のみが高い特性を有するものであることがわかる。
また、液晶表示装置の正面輝度(白表示時)は380cd/m2であった。反射偏光子から出た直線偏光が光拡散フィルム4によって偏光が解消してしまっているので、液晶パネルにおいて光が吸収され表示装置の正面に光が十分出てこなくなっていることがわかる。
【0107】
比較例2
8mm×8mm×60mmのSUS製シャンクにろう付けされた寸法1mm×1mm×1mmの直方体単結晶ダイヤモンドの一面に、集束イオンビーム加工装置SMI3050(セイコーインスツルメンツ製)を用いてアルゴンイオンビームを用いた集束イオンビーム加工を行い、長さ1mmの辺に平行にピッチ30.0μm、深さ9.0μmの断面波形の溝を彫り込み、切削工具を作製した。
寸法50mm×50mm、厚さ10mmのステンレス鋼SUS430の表面に、厚さ100μmのニッケル−リン無電解メッキを施し、精密微細加工機(ナガセインテグレックス製、超精密微細加工機NIC200)と上記の切削工具を用いて、ニッケル−リン無電解メッキ面に、ピッチ30.0μm、高さ9.0μmの断面波形の畝状凸部を有する金属モールドを得た。
【0108】
コロナ処理により表面改質した厚さ100μmの脂環式オレフィンポリマーフィルム(ゼオノアフィルムZF14、オプテス社製)上に、乾燥膜厚が10μmになるように製造例4で作製した紫外線硬化性樹脂溶液を塗布し、80℃で5分間乾燥させた。次いで前記金属モールド上に前記フィルムを塗膜側が金属モールドに接触するように載せ、超高圧水銀ランプを用いてフィルム側から紫外線を照射(積算光量400mJ/cm2)し、塗膜を硬化させて、平らな表面を持つ脂環式オレフィンポリマーフィルムと、ピッチ30.0μm、高さ9.0μmの断面波形の畝状凸レンズ部が形成された硬化樹脂層とが積層された光拡散フィルム5を得た。
畝状凸レンズ部の頂の曲率半径の平均値(Xr)は5.50μm、標準偏差(σr)は0であった。畝状凸レンズ部間の間隔の平均値(Xp)は30.0μm、標準偏差(σp)は1.45μ、σp/Xpは0.048であった。また、畝状凸レンズ部の平均アスペクト比は0.3であった。また、隣接する畝状凸レンズ部の曲率はすべて同じになっていた。
【0109】
光拡散フィルム5は、全光線透過率が71%、ヘイズが68%、偏光解消度が0.5%であった。光拡散フィルム5の出射光異方拡散性評価の結果を図13に示した。実線は強い周期性を示す方向の角度依存性、点線は周期性の弱い方向の角度依存性を示している。光拡散フィルム5は周期性を強く示す方向に強い散乱光が出る異方散乱性を示すものであるが、本発明実施例の光拡散フィルムに比べ、散乱角度が狭かった。
光拡散フィルム5を60℃×85%RH環境下に500時間放置したところ、フィルム端部でそりが生じていた。
【0110】
次に、光拡散フィルム5を強い周期性を示す方向をケースの幅方向に平行に配置して、前述のように照明装置および液晶表示装置を作製した。
該照明装置の出射光の角度−輝度分布を測定した結果(破線)を図14に示した。
液晶表示装置の正面輝度(白表示時)は435cd/m2であったが、実施例の光拡散フィルムにくらべ散乱角度が狭かった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の表面に複数の畝状凸レンズ部を有するフィルムを含んで成り、少なくとも一組の隣接する畝状凸レンズ部の曲率が互いに異なっている、光拡散フィルム。
【請求項2】
前記畝状凸レンズ部の頂は円弧状に湾曲しており、
該湾曲部の曲率半径の平均値Xrは0.1μm以上であり、
該湾曲部の曲率半径の標準偏差σrはXrに対してσr/Xr=0.05〜0.8であり、且つ
畝状凸レンズ部の高さと畝状凸レンズ部間の間隔との比の平均値が0.1〜4.0である、請求項1に記載の光拡散フィルム。
【請求項3】
畝状凸レンズ部間の間隔の平均値Xpが0.2〜40μmであり、且つ
畝状凸レンズ部間の間隔の標準偏差σpがXpに対してσp/Xp=0.1〜0.9である、請求項2に記載の光拡散フィルム。
【請求項4】
全光線透過率が75%以上で、且つヘイズが70%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散フィルム。
【請求項5】
前記畝状凸レンズ部の上に積層され且つ前記畝状凸レンズ部の形状に対応するように褶曲している薄膜層をさらに含み、薄膜層側の表面が前記畝状凸レンズ部の形状の浮き出しで起伏している請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散フィルム。
【請求項6】
平板状の透明基材の少なくとも一方の表面に薄膜を形成して積層体を得る工程、および
該積層体を面内の少なくとも一つの軸方向に収縮させて薄膜を褶曲させる工程を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散フィルムを備える照明装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散フィルムを備える液晶表示装置。
【請求項1】
少なくとも一方の表面に複数の畝状凸レンズ部を有するフィルムを含んで成り、少なくとも一組の隣接する畝状凸レンズ部の曲率が互いに異なっている、光拡散フィルム。
【請求項2】
前記畝状凸レンズ部の頂は円弧状に湾曲しており、
該湾曲部の曲率半径の平均値Xrは0.1μm以上であり、
該湾曲部の曲率半径の標準偏差σrはXrに対してσr/Xr=0.05〜0.8であり、且つ
畝状凸レンズ部の高さと畝状凸レンズ部間の間隔との比の平均値が0.1〜4.0である、請求項1に記載の光拡散フィルム。
【請求項3】
畝状凸レンズ部間の間隔の平均値Xpが0.2〜40μmであり、且つ
畝状凸レンズ部間の間隔の標準偏差σpがXpに対してσp/Xp=0.1〜0.9である、請求項2に記載の光拡散フィルム。
【請求項4】
全光線透過率が75%以上で、且つヘイズが70%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散フィルム。
【請求項5】
前記畝状凸レンズ部の上に積層され且つ前記畝状凸レンズ部の形状に対応するように褶曲している薄膜層をさらに含み、薄膜層側の表面が前記畝状凸レンズ部の形状の浮き出しで起伏している請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散フィルム。
【請求項6】
平板状の透明基材の少なくとも一方の表面に薄膜を形成して積層体を得る工程、および
該積層体を面内の少なくとも一つの軸方向に収縮させて薄膜を褶曲させる工程を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散フィルムを備える照明装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散フィルムを備える液晶表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−299072(P2008−299072A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144985(P2007−144985)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】
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