説明

光拡散性フィルム、およびその製造方法

【課題】後加工時の熱処理工程におけるフィルムの通過性が後加工の条件に拘わらずロール全長に亘って良好な実用性の高い光拡散性フィルムを提供する。
【解決手段】Δnabが0.015以上0.060以下であり、(1)内部に光拡散成分を有する光拡散層を有し、(2)前記光拡散層が、少なくとも熱可塑性樹脂と光拡散成分としての微粒子からなり、(3)前記光拡散層の内部に、微粒子とは独立した気泡を含有し、さらに左右両端際のHS150がいずれも0.0%以上0.5%未満であって、左右両端際のHS150の差が0.1%以下であって、かつ、左右両端際のHS180がいずれも0.7%以上1.5%未満であって、左右両端際のHS180の差が0.15%以下であることを特徴とする光拡散性フィルムおよびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散性フィルムに関するものであり、詳しくは、優れた加工特性を有する光拡散性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムを基材フィルムとする光拡散性フィルムは、優れた光透過性、光拡散性、耐薬品性から液晶ディスプレイのバックライト用フィルムとして利用されている。特に、表面が平滑でありながら、光透過性、光拡散性、機械的強度、輝度特性に優れた光拡散性フィルムが提案されている(特許文献1)。かかる光拡散性フィルムは、回転速度に差を設けたロール間で長手方向に延伸された後に、テンター内でフィルムの端部を把持された状態で幅方向に延伸され、熱固定されることによって製造される。この場合、フィルムの幅方向の端部際では熱固定時に長手方向の緩和ができないため、フィルム幅方向の位置によっては長手方向の熱収縮率に差異が生じる。したがって、ミルロールの端縁際に相当するスリットロールでは、幅方向の片端縁際の熱収縮率(長手方向の熱収縮率)が他端縁際の熱収縮率よりも大きくなる。このようなスリットロールを利用すると、平滑なフィルムの表面に、プリズムレンズ層やハードコート層、粘着層などの光拡散性以外の機能を付加するため、別の層を積層する際の後加工時の熱処理工程でフィルムの通過性が悪化する。場合によっては、フィルムが機台の枠やその他で擦れて傷がつく。また、フィルムが傷付かないようにする為に、後加工条件を調整することは非常に手間がかかる作業である。上記の理由から、ミルロールの端縁際以外のスリットロールしか、後加工条件を調整せずに、利用することができなかった。しかしながら、近年の生産効率の向上の要求から、前記の後加工条件は高速かつ高温になってきており、かかる条件下ではロール特性に応じて後加工条件を調整しても、機台との擦れ傷が抑制されない場合が生じてきた。
【0003】
【特許文献1】特開2002−196113号公報
【0004】
さらに、上記のようにフィルムを連続的に熱工程を通過さない場合であっても、枚葉で熱が掛かる場合があり、その様な用途として、電飾板、ラベル等がある。又、タッチパネル用途など、フィルムにITO蒸着を施す場合は、加熱アニール工程を通して、この長手方向の収縮率を十分に小さくする必要がある。この収縮量が大きいとITOフィルムを部材とする製品を加熱加工する際に、フィルムが収縮し寸法が変化することが多い。使用するITOフィルムの、寸法変化を特に嫌う用途では、加工前に再度、アニール処理を実施してから使用することも行われている。
【0005】
これら以外にも、たとえば次のような用途に利用される場合に、フィルムの熱収縮率が低いことが望まれる。ハードコートフィルムを熱加工する(例えば、約150℃で約1分間加熱)ときにハードコートの収縮率とフィルム基材の熱収縮率の差が大きいとフィルムにカールが生じる問題があった。また、フィルムを真空蒸着加工する場合は、フィルムの温度は約160℃に曝されるが、この様な熱によりフィルムが寸法変化する場合がある。特に耐熱性を要求する分野ではより高温(例えば、180℃)での熱寸法安定性が求められている。
【0006】
また、後加工コストの低減のために幅広のスリットロールの需要が増加してきている。広幅のスリットロールを採取するためにはミルロールの幅を広くすることが望ましい。しかしながら、ミルロールの幅を広くすると、熱固定の際に幅方向での温度を均一に保つのが難しくなる。つまり、位置的にも時間的にも温度の変動幅が大きくなる。それゆえ、ミルロールの幅を広くするためには、熱風吹き出し量等を微調整して、熱固定装置の幅方向における温度の均一性を保つ必要がある。ところが、熱風吹き出し量等の微調整する場合であっても、後加工でのフィルムの通過性を改善するために十分なレベルにまでフィルム端縁部の熱収縮率差を低減させることはできない。
【0007】
それゆえ、ミルロールの幅に拘わらず、後加工工程におけるフィルムの通過性を良好なものとすべく、フィルムの幅方向における熱収縮率(フィルムの長手方向の熱収縮率)の差を低減する方法として、出願人によって、フィルムの熱固定工程において、フィルムの進行方向に対して一定間隔で上下に配置させたプレナムダクト(熱風の吹き出し口)に連続的な遮蔽板を被せ、その遮蔽板の幅をフィルム進行方向側にいくにしたがって徐々に拡げていくことにより、フィルムの幅方向の温度を中央部から端部にかけて高くして、端部際の緩和量を中央部分の緩和量に近づける方法が提案されている(特許文献2)。
【0008】
【特許文献2】特開2001−138462号公報
【0009】
しかしながら、プレナムダクトに連続的な遮蔽板を被せるだけの上記方法では、後加工(塗工および乾燥)における熱処理が120℃程度での通過性はある程度改善されるものの、フィルム端部際のフィルムの緩和はいまだ不十分である。すなわち、上記方法では、160℃程度の熱処理を比較的長時間(10〜60秒)に亘って行った場合(ハードコート膜の形成など)の通過性はさほど改善されない。それゆえ、高温で長時間での後加工をする場合には、条件を調整せざるを得ないが、かかる調整ができない場合もある。
【0010】
さらに、出願人は、フィルムの幅方向における熱収縮率の差を低減する方法として、フィルムの熱固定工程において、5本のプレナムダクトに不連続な遮蔽板を取り付け、各プレナムダクトから単位時間当たりに吹き出す熱風の量を一定にし、プレナムダクトから吹き出す風速を増加させることで端部に当たる熱風量を増加させる方法を開示している(特許文献3)。
【0011】
【特許文献3】特開2002−79638号公報
【0012】
しかし、各プレナムダクトの風量は一定であるので、各プレナムダクト毎に風速が異なるため、熱固定装置内で乱流が生じる。従って、熱固定ゾーンにおける温度に大きな不均一性が生じており不都合である。また、遮蔽板による幅方向の熱収縮率の差を低減する効果は満足できるレベルではなかった。
【0013】
加えて、熱固定処理においてプレナムダクトに遮蔽板を被せるだけの方法では、熱固定ゾーンにおける温度の乱調(ハンチング)が大きくなってしまうため、1,000m以上の長尺なフィルム(ミルロール)を製造する際に、通過性の悪い部分(すなわち、フィルムの幅方向における熱収縮率の差が大きい部分)が形成されてしまう。また、熱収縮率の絶対値を低減するには本方法だけでは達成出来なかった。
【0014】
また、長手方向の熱収縮率を小さくして後加工時のカールを小さくする方法として、長手方向の処理をオフラインの熱処理工程で実施する方法が提案されている(特許文献4)。
【0015】
【特許文献4】特開2001−138466号公報
【0016】
しかし、特許文献4の方法は熱収縮値を下げるのには効果的であるが、オフラインで処理をする為に、製造コストが高くてなり、コスト低減要求には適わない。そのため、インライン(製膜時)の処理により低収縮なフィルムを製造する方法が熱望されている。
【0017】
さらに、フィルムの熱収縮を低減させる方法として、例えば特許文献5に示されるようにテンターの内で端部に剃刀を入れ切断しクリップの影響を避けて長手方向に緩和処理を行う方法が提案されている。この方法ではクリップの把持の影響は受けないが緩和処理中のフィルムの自重で弛み、テンターのプレナムダクトに接触して傷が生じるという問題が発生した。これを避ける為に上下のエアバランスを微妙に調整し傷防止を行うとエアバランスの崩れによりオーブン内の温度の均一性が損なわれて、フィルムの平面性が悪化したり均一性が損なわれるという問題がある。
【0018】
【特許文献5】特公昭57−54290号公報
【0019】
これ以外の、フィルムの熱収縮を低減させる方法として、特許文献6に示されるようにテンターのクリップ間隔を徐々に狭くして、縦方向の緩和処理を行う方法が提案されている。しかし、この方法では、クリップ際の端部と中央部のフィルムの動きやすさが異なり、長手方向の把持部近傍と中央部の物性の差が避けられず、熱収縮率を低下させるために緩和を大きくするとフィルムの平面性が悪化するという問題があった。
【0020】
【特許文献6】特公平4−028218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、上記従来の光拡散性フィルムおよびその製造方法が有する問題点を解消し、後加工時の熱処理工程におけるフィルムの通過性が後加工の条件に拘わらずロール全長に亘って良好な実用性の高い光拡散性フィルムを提供することにある。また、本発明の目的は、そのように後加工時の熱処理工程におけるフィルムの通過性がロール全長に亘ってきわめて良好な上に熱収縮率が小さい高品位な光拡散性フィルムを安価かつ容易に製造することが可能な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
かかる本発明の内、第1の発明は、フィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の屈折率と巻き取られたフィルムの巻取方向と135度の角度をなす方向の屈折率との差異であるΔnabが0.015以上0.060以下である、下記要件(1)〜(3)を満たす光拡散性フィルムであって、フィルムの巻き終わりから2m以内に最初の試料切り出し部を設け、フィルムの巻き始めから2m以内に最終の切り出し部を設け、それらの最初と最終の切り出し部との間を9等分した長さ毎に試料切り出し部を設けることによって、合計10個の試料切り出し部を設けたとき、下記要件(4)〜(6)を満たすことにある。
(1)二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムの少なくとも一方の面に、内部に光拡散成分を有する光拡散層を有すること
(2)前記光拡散層が、少なくとも光透過性樹脂と光拡散成分としての微粒子からなること
(3)前記光拡散層が、微粒子とは独立した気泡を含有すること
(4)前記各切り出し部において、フィルムの幅方向における片端縁から50mm以内の位置および他端縁から50mm以内の位置からそれぞれ試料を切り出し、その2つの試料について、150℃で30分間加熱したときのフィルム巻き取り方向の熱収縮率であるHS150を求め、それらのHS150の差である熱収縮率差を求めたときに、すべての切り出し部における熱収縮率差が、いずれも0.1%以下であること
(5)前記各切り出し部において、フィルムの幅方向における片端縁から50mm以内の位置および他端縁から50mm以内の位置からそれぞれ試料を切り出し、それぞれの試料についてHS150を求めたときに、すべての切り出し部における両端縁の試料のHS150が、いずれも0.0%以上0.5%未満であること
(6)前記各切り出し部において求めたフィルムの幅方向における片端縁側のHS150の変動量、および、前記各切り出し部において求めたフィルムの幅方向における他端縁側のHS150の変動量が、いずれも0.25%以下であること
第2の発明は、前記光拡散性フィルムの巻き終わりから2m以内に最初の試料切り出し部を設け、フィルムの巻き始めから2m以内に最終の切り出し部を設け、それらの最初と最終の切り出し部との間を9等分した長さ毎に試料切り出し部を設けることによって、合計10個の試料切り出し部を設けたとき、下記要件(8)および(9)を満たすことを特徴とする。
(8)前記各切り出し部において、ロールの幅方向における片端縁から50mm以内の位置および他端縁から50mm以内の位置からそれぞれ試料を切り出し、その2つの試料について、180℃で30分間加熱したときのフィルム巻取方向の熱収縮率であるHS180を求め、それらのHS180の差である熱収縮率差を求めたときに、すべての切り出し部における熱収縮率差が、いずれも0.15%以下であること
(9)前記各切り出し部において、ロールの幅方向における片端縁から50mm以内の位置および他端縁から50mm以内の位置からそれぞれ試料を切り出し、それぞれの試料についてHS180を求めたときに、すべての切り出し部における両端縁の試料のHS180が、いずれも0.7%以上1.5%未満であること
第3の発明は、前記光拡散性フィルム断面に観察される気泡の、フィルム面に平行方向の長さx、垂直方向の長さをyとしたとき、xとyの比が2/3<x/y<3/2である前記光拡散性フィルムである。
第4の発明は、前記光拡散性フィルムの厚みが80μm以上450μm以下であることにある。
第5の発明は、前記光拡散性フィルムを製造するための製造方法であって、押出機から原料樹脂を溶融押し出しすることにより未延伸シートを形成するフィルム化工程と、そのフィルム化工程で得られる未延伸シートを縦方向および横方向に二軸延伸する二軸延伸工程と、二軸延伸後のフィルムを熱固定する熱固定工程と、熱固定後のフィルムを長手方向に緩和処理する工程を含んでおり、その熱固定工程が、下記要件(9)〜(11)を満たす熱固定装置において行われることにある。
(9)熱風を吹き出す幅広な複数のプレナムダクトが、フィルムの進行方向に対して上下に対向して配置されていること
(10)前記複数のプレナムダクトに熱風の吹き出し口を遮蔽するための遮蔽板が取り付けられていること
(11)前記各遮蔽板のフィルムの進行方向における寸法が、フィルムの進行方向における各プレナムダクトの吹き出し口の寸法と略同一に調整されており、前記各遮蔽板のフィルムの幅方向における寸法が、フィルムの進行方向に対して次第に長くなるように調整されていること
第6の発明は、前記長手方向の緩和処理をする工程において、フィルム端部を保持するクリップと隣接クリップとの間に屈曲可動なチェンリンクで連結するジョイント部を有し,当該ジョイント部に連結したベアリングがガイドレールを走行することで、チェンリンクの屈曲角度が変位することにより、クリップの進行方向の間隔を収縮することで当該長手方向の緩和処理を行うことを特徴とする。
第7の発明は、前記発明において、二軸延伸工程がフィルムを縦方向に延伸した後に横方向に延伸するものであるとともに、その横延伸を行うゾーンと熱固定装置との間に、風の吹き付けを実行しない中間ゾーンを設けたことにある。
第8の発明は、前記発明において、熱固定装置が、複数の熱固定ゾーンに分割されているとともに、隣接し合う熱固定ゾーン間における温度差と風速差との積が、いずれも、250℃・m/s以下となるように設定されていることにある。
【発明の効果】
【0023】
本発明の光拡散性フィルムは、プリズムレンズ加工やハードコート加工、粘着加工、ARやAS加工などの後加工時におけるフィルムの通過性が非常に優れているため、きわめて高い歩留まりで後加工することができる。また、その後加工における熱処理工程での熱寸法安定性が良い。したがって、本発明の光拡散性フィルムは、後加工の熱処理が高温(160℃程度)で比較的長時間(10〜60秒)行われる加工処理に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の光拡散性フィルムの基材フィルムであるポリエチレンテレフタレート系フィルムは、エチレングリコールおよびテレフタル酸を主な構成成分とする。本発明の目的を阻害しない範囲であれば、他のジカルボン酸成分およびグリコール成分を共重合させても良い。上記の他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス−(4−カルボキシフェニルエタン)、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シクロヘキサン−1、4−ジカルボン酸などが挙げられる。上記の他のグリコール成分としては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ビスフェノールAなどのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。この他、p−オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸成分も利用され得る。
【0025】
本発明の光拡散性フィルムは、ポリエチレンテレフタレート系フィルムの少なくとも片側の面に、熱可塑性樹脂と微粒子からなる内部拡散型の光拡散層が積層した構造を有するものであって、さらにその光拡散層の内部に該微粒子とは独立した気泡を含有することを特徴とする光拡散性フィルムである。
【0026】
本発明でいう気泡とは、フィルム内部に含まれる気体の種類、または真空かどうかに拘わらず、フィルム断面を切り出したときに、断面内に観察される空隙のことをいう。また、この断面は走査型電子顕微鏡を用いて観察することができる。本発明では、1,000倍の倍率で観察した際に認識できない空隙は気泡と呼ばない。
【0027】
本発明において、気泡は併存する微粒子とは独立して存在する気泡である。ここでいう独立とは、微粒子と気泡が全く接していないか、またはお互いに外接している状態を示す。独立でない状態とは、気泡の内壁に微粒子が内接している状態、つまり微粒子が気泡で覆われている状態のことを指し、それ以外は独立しているとみなす。
【0028】
本発明において、フィルム断面を切り出したときに観察される気泡の、フィルム面に平行方向の長さをx、垂直方向の長さをyとしたとき、xとyの比が2/3<x/y<3/2であることが好ましく、x/y<4/3であることがさらに好ましい。xとyの比x/yが3/2以上の気泡が存在していてもよいが、フィルム断面を切り出したときにフィルム面に観察される任意の隣り合う10個の気泡のうち3個以内であることが好ましい。
【0029】
この範囲の形状を有する気泡とすることにより、フィルム面に入射した光の反射を抑えることができ、高光透過性が得られる。
【0030】
本発明の気泡は、光拡散性フィルムにおいて、面内投影面積の総和が全体の30%以下であることが好ましい。ここで面内投影面積とは、フィルムを面方向から眺め、該フィルム面に気泡を投影させたときの面積のことである。例えば、透過型光学顕微鏡で面方向から観察した際に見える気泡の面積のことである。投影した場合、気泡の像が重なりあうことがあるが、重なり分は省略して計算する。高光透過率を得るためには、この総和を30%以内とすることが好ましく、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下である。
【0031】
投影面積の計算には、例えば、キーエンス(株)製デジタルマイクロスコープVH−6200を用いて500倍の倍率で観察し、得られた画像を東洋紡績(株)製イメージアナライザーV10などの画像処理機器を用いることで容易に計算することができる。また、このとき、投影した気泡像を画像処理することにより、求めた像面積から円に換算することも可能である。円に換算したときの平均径は1〜50μmが好ましく、より好ましくは5〜40μmである。
【0032】
また、本発明では、フィルム断面の気泡のフィルム面に平行方向の長さxの平均は1〜50μmであることが好ましい。この範囲にすることにより、透過光の黄色化の抑制および反射の抑制による高光透過性が得られる。より好ましくは5〜40μmである。
【0033】
本発明の光拡散層に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2、6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプレピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステルおよびこれらを主たる成分とする共重合体、またはこれら樹脂の混合物等が挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2、6−ナフタレートまたはこれらを主たる成分とする共重合体や混合物等のポリエステル系樹脂が用いられる。
【0034】
また、本発明で用いられる微粒子としては、例えば、ガラス、シリカ、硫酸バリウム、酸化チタン、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の無機微粒子、またはアクリル樹脂、有機シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、尿素樹脂、ホルムアルデヒド縮合物、フッ素樹脂等の有機架橋微粒子、またはポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂など各種樹脂を用いた非相溶のポリマー同士をブレンドすることにより生成した樹脂微粒子等を挙げることができる。
【0035】
本発明では、非相溶のポリマー同士をブレンドすることにより生成した樹脂微粒子を好
ましく用いることができる。
【0036】
ここで、熱可塑性樹脂は、単体の樹脂、または2種類以上の樹脂の混合物でもよいが、どちらの場合も実質的に非光拡散性であることが好ましい。一方、樹脂微粒子を構成する樹脂は、すべての成分が同一の単体樹脂でもよいし、異なる単体樹脂からなる成分がいくつか存在してもよく、また、混合物であってもよい。
【0037】
光拡散性フィルムの拡散性を向上させるために、熱可塑性樹脂と微粒子の屈折率は異なることが好ましい。異屈折率とすることにより、界面での光屈折が起こり入射光線が散乱される。熱可塑性樹脂と微粒子の屈折率差の絶対値は0.012以上0.4以下が好ましく、0.05以上0.4以下がさらに好ましく、0.1以上0.4以下が最も好ましい。また、熱可塑性樹脂および微粒子の屈折率は、ともに1.3〜1.7の範囲で、上記条件を満たすものから選択することができる。
【0038】
また光拡散性は、他にも、微粒子の体積分率や光拡散層の厚さにも依存し、これを向上させるためには、これら体積分率や光拡散層の厚さの値を増加させることで実現できる。さらに言えば、これら条件の選択により任意に拡散性をコントロールできることを表している。
【0039】
微粒子の光拡散層全体に占める体積分率は、50%以下であることが好ましく、10〜40%がさらに好ましい。50%を超えると、光拡散性フィルムの透過率が低下したり、また、樹脂の流動特性が悪くなるなどの影響がでることがある。
【0040】
また、光拡散層の厚さは、作業性等を考慮すると、10〜100μmが好ましく、20〜75μmがより好ましく、30〜50μmがさらに好ましい。
【0041】
また、微粒子の形状は、球状が好ましい。ここでいう球状とは球面体であることであり、必ずしも真球状である必要はないが、形状に異方性がない真球状であるほうが均一な散乱を得るためには好ましい。
【0042】
光拡散層が積層されるポリエチレンテレフタレート系フィルムは、一軸または二軸延伸されていることが好ましく、二軸延伸されていることがさらに好ましい。延伸されたフィルムを積層することにより、得られる積層フィルムの曲げ強度と引っ張り強度が向上する。また、延伸フィルムの積層により、表面の平均粗さが小さく、表面が平滑な光拡散性フィルムとすることが可能である。
【0043】
また、延伸フィルムは、実質的に非拡散性であることが好ましい。実質的に非拡散性とは、使用する膜厚において、ヘーズが10%以下であることを示す。
【0044】
また、本発明で用いられる光拡散層を構成する熱可塑性樹脂は、ポリエチレンテレフタレート系フィルムの原料となる樹脂の融点Tmにおいて流動性を有することを特徴とする。ここでいう流動性を有するとは、熱可塑性樹脂が結晶性の場合、温度Tmは好適には熱可塑性樹脂の融点より高いことを示しており、また熱可塑性樹脂が非晶性の場合、温度Tmは好適には熱可塑性樹脂の熱変形温度より高いことを示している。ここで熱変形温度とは、ASTM D648に準拠し、例えば1.82MPaの荷重で測定される温度のことをいう。
【0045】
本発明の光拡散性フィルムの全光線透過率は、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上である。また、本発明の積層光拡散性フィルムのヘーズは、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは91%以上である。ヘーズが80%未満の場合には、平行光の透過率が高くなる傾向にあり、この場合も輝度に斑が生じやすくなる。しかしながら、用途によっては拡散性の弱いフィルムが必要な場合がある。この要望に対しては、熱可塑性樹脂と微粒子の屈折率差、混合比率、光拡散層の厚みあるいは気泡含有量などにより、所望の拡散性にコントロールする。
【0046】
基材フィルムとして用いるポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETという)の重合法としては、例えば以下の方法が利用できる。(1)テレフタル酸とエチレングリコール、および必要に応じて他のジカルボン酸成分およびジオール成分を直接反応させる直接重合法。(2)テレフタル酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のジオール成分を含む)とをエステル交換反応させるエステル交換法。
【0047】
本発明の基材フィルムを主にPETによって形成する場合には、PET原料の極限粘度(IV)は、0.45〜0.70dl/gの範囲が好ましい。PET原料の極限粘度が0.45以上であると、フィルムの延伸性や耐引き裂き性が向上するため好ましい。また、極限粘度が0.70dl/g以下であると、濾圧が適度に低くなり、高精度濾過が可能となる。なお、樹脂原料のIVは、たとえば、以下のような方法で求められる。
【0048】
[極限粘度(IV)]
PETの粉砕試料を乾燥後、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(重量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて、30℃で0.4(g/dl)の濃度の溶液の流下時間、および、溶媒のみの流下時間を測定する。それらの時間比率から、Hugginsの式を用い、Hugginsの定数が0.38であると仮定してIVを算出する。なお、極限粘度は〔η〕とも表される。
【0049】
本発明の光拡散性フィルムは、一旦広幅に製造されたミルロールをスリットしたスリットロールに由来するものであり、Δnab(巻き取られたフィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の基材フィルム側の屈折率と巻き取られたフィルムの巻取方向と135度の角度をなす方向の基材フィルム側の屈折率との差異(絶対値))がすべての領域において0.015以上0.060以下であるものに限定される。すなわち、Δnabが0.015以上の歪んだスリットロールでは、上記した“歪み(すなわち、幅方向における物性差)”の問題が生じる。また、Δnabが0.060以下のスリットロールでは、本発明の要件を満たすように熱収縮性率差等を調整することできる。
【0050】
また、本発明の光拡散性フィルムは、後述する方法により試料切り出し部を設定した場合に、各切り出し部において、フィルムの幅方向における片端縁から50mm以内の位置および他端縁から50mm以内の位置からそれぞれ試料を切り出し、その2つの試料について、150℃で30分間加熱したときのフィルム巻き取り方向の熱収縮率であるHS150を求め、それらのHS150の差である熱収縮率差を求めたときに、すべての切り出し部における熱収縮率差が、いずれも0.1%以下であることが必要である。
【0051】
すなわち、本発明の光拡散性フィルムは、合計10個の切り出し部において求めた合計10個の熱収縮率差(各切り出し部から切り出したフィルム試料における両端縁のHS150の差)が、いずれも0.1%以下であることが必要である。各切り出し部における熱収縮率差が、0.1%以下であると、後加工におけるフィルムの通過性が良好となり好ましい。また、各切り出し部における熱収縮率差は、0.08%以下であるとより好ましく、0.06%以下であると特に好ましい。なお、各切り出し部における熱収縮率差は、低いほど好ましいが、設計上、0.05%が下限であると考えられる。
【0052】
HS150の測定に使用するフィルム試料は、次の手順によって設けた10個の切り出し部から切り出す。
(1)フィルムの巻き終わりから2m以内に最初の試料切り出し部を設ける。
(2)巻き取ったフィルムの長さを9で除した値(以下、「切り出し部間隔」という)を算出する。
(3)フィルムの巻き終わりから各「切り出し部間隔」の前後10m以内の位置に試料切り出し部を設ける。
(4)フィルムの巻き始めから2m以内に最終の切り出し部を設ける。
【0053】
上記試料の切り出しについてより具体的に説明する。たとえば、長さ500mのフィルムがロールに巻回されている場合、フィルムの巻き終わりから2m以内までの間で、最初の試料(1)を切り取る。なお、試料の切り出しは、ロールの幅方向(フィルムの巻き取り方向と直交する方向)における片端縁から50mm以内の位置および他端縁から50mm以内の位置を含めて、フィルムの巻き取り方向(長手方向)に沿う辺と幅方向に沿う辺とを有するように矩形状に切り取る(斜めには切り取らない)。次いで、フィルムの巻き長を9で除すことによって「切り出し部間隔」を算出する。なお、「切り出し部間隔」は、「1m」の単位まで算出する。したがって、上記の如く、巻き長が500mである場合には、最初の切り出し部を設け得る巻き終わりから2mと最終の切り出し部を設け得る巻き始めから2mとを予め500mから差し引き、残りの496mを9等分した55mを「切り出し部間隔」とする。続いて、フィルムの巻き終わりから55±10m巻き始め側に離れたところで、2番目の試料(2)を切り取る。以下、同様に、巻き始め側に55mずつの間隔を隔てて順次試料を切り取り、合計10個の試料を得る。すなわち、巻き終わりから2m以内の位置で最初の試料(1番目の試料)を切り出し、巻き終わりから57m付近の位置で2番目の試料を切り出し、巻き終わりから112m付近の位置で3番目の試料を切り出し、同様に、巻き終わりから55m離れた位置毎に4番目〜9番目の試料を切り出し、巻き始めから2m以内の位置で最終の試料(10番目の試料)を切り出す。
【0054】
さらに、光拡散性フィルムは、上記した方法により試料切り出し部を設定した場合に、各切り出し部において、ロールの幅方向における片端縁から50mm以内の位置および他端縁から50mm以内の位置からそれぞれ試料を切り出し、それぞれの試料についてHS150を求めたときに、すべての切り出し部における両端縁の試料のHS150が、いずれも0.0%以上0.5%未満であることが必要である。
【0055】
すなわち、本発明の光拡散性フィルムは、合計10個の切り出し部において、切り出したフィルム試料の両端縁のHS150の値(合計20個のHS150の値)が、いずれも0.0%以上0.5%未満であることが必要である。各切り出し部から切り出したフィルム試料の両端際におけるHS150の値が0.5%を上回ると、後加工におけるフィルムの熱寸法変化が大きくなるので好ましくない。また、各切り出し部から切り出したフィルム試料の両端際におけるHS150の値は、0.3%未満であるとより好ましく、0.25%未満であると特に好ましい。なお、各切り出し部から切り出したフィルム試料の両端際におけるHS150の値は、絶対値が小さい程好ましいが、生産性の点から、絶対値で0.0%が下限であると考えている。
【0056】
さらに、本発明の光拡散性フィルムは、各切り出し部において求めたロールの幅方向における片端縁側のHS150の変動量、および、各切り出し部において求めたロールの幅方向における他端縁側のHS150の変動量が、いずれも0.25%以下であることが必要である。
【0057】
すなわち、本発明の光拡散性フィルムは、各切り出し部から切り出した10枚のフィルムについて、片端縁側(幅方向における片端縁側)のHS150と他端縁側(幅方向における他端縁側)のHS150を求めたときに、片端縁側の10個のHS150の変動量(最高値と最低値との差)が0.25%以下であるとともに、他端縁側の10個のHS150の変動量が0.25%以下であることが必要である。いずれかの端縁側の10個のHS150の変動量が0.25%以下であると、後加工時におけるフィルムの通過性が良くなるので好ましい。また、各端縁側の10個のHS150の変動量は0.20%以下であるとより好ましく、0.18%以下であるとなお好ましく、0.016%以下であるとさらに好ましく、0.15%以下であると特に好ましい。なお、各端縁側の10個のHS150の変動量は、低いほど好ましいが、設計上、0.05%が下限であると考えられる。
【0058】
また、本発明の光拡散性フィルムは、後述する方法により試料切り出し部を設定した場合に、各切り出し部において、ロールの幅方向における片端縁から50mm以内の位置および他端縁から50mm以内の位置からそれぞれ試料を切り出し、その2つの試料について、180℃で30分間加熱したときのフィルム巻き取り方向の熱収縮率であるHS180を測定し、その差である熱収縮率差(ΔHS180)を求めたときに、すべての切り出し部における熱収縮率差が、いずれも0.15%以下であることが必要である。
【0059】
すなわち、本発明の光拡散性フィルムは、合計10個の切り出し部において求めた合計10個の熱収縮率差(ΔHS180)(各切り出し部から切り出したフィルム試料における両端縁のHS180の差)が、いずれも0.15%以下であることが必要である。これにより、本発明の光拡散性フィルムはより高温でも熱寸法安定性が保たれる。そのため、より高温下で行われる後工程にも好適に使用できる。各切出し部における熱収縮率差(ΔHS180)が、0.20%を上回ると、高温下でフィルムの寸法変化が生じ、熱収縮によりずれが発生するため好ましくない。各切り出し部における熱収縮率差(ΔHS180)は、0.15%以下であると上記用途に使用できる。また、各切り出し部における熱収縮率差(ΔHS180)は、0.10%以下であると特に好ましい。なお、各切り出し部における熱収縮率差は、低いほど好ましいが、設計上、0.05%が下限であると考えられる。
【0060】
さらに、本発明の光拡散性フィルムは、上記した方法により試料切り出し部を設定した場合に、各切り出し部において、ロールの幅方向における片端縁から50mm以内の位置および他端縁から50mm以内の位置からそれぞれ試料を切り出し、それぞれの試料についてHS180を求めたときに、すべての切り出し部における両端縁の試料のHS180が、いずれも0.7%以上1.5%未満であることが必要である。
【0061】
すなわち、本発明の光拡散性フィルムは、合計10個の切り出し部において、切り出したフィルム試料の両端縁のHS180の値(合計20個のHS180の値)が、いずれも0.7%以上1.5%未満であることが必要である。各切り出し部から切り出したフィルム試料の両端際におけるHS180の値が1.5%を上回ると、後加工におけるフィルムの熱寸法変化が大きくなるので好ましくない。また、各切り出し部から切り出したフィルム試料の両端際におけるHS180の値は、絶対値が小さい程好ましく、生産性の点から0.7%が下限であると考えている。
【0062】
本発明の光拡散性フィルムは、光拡散層の原料とポリエチレンテレフタレート系樹脂を別々の押出機で溶融し、Tダイ等を通して共押出して得られた未延伸シート(未延伸積層フィルムあるいは未延伸積層シート)を縦方向(長手方向)および横方法(幅方向)に二軸延伸した後にロール状に巻き取り、後述する方法で熱固定することによって製造することができる。
【0063】
未延伸シートを得る方法としては、約285℃で溶融した樹脂をシート状に溶融押出し、溶融シートを冷却ロールで冷却固化する方法等を好適に採用することができる。なお。押出機に供する樹脂のペレットは十分に乾燥したものであるのが望ましい。
【0064】
シート状溶融物を回転冷却ドラムに密着させる方法としては、たとえばエアナイフを使用する方法や静電荷を印荷する方法等が好ましく適用できる。それらの方法では後者が好ましく使用される。
【0065】
また、このシート状溶融物を冷却する方法としては、たとえばシート面に槽内の冷却用液体に接触させる方法、シートエア面にスプレーノズルで蒸散する液体を塗布する方法、高速気流を吹きつけて冷却する方法を併用しても良い。このようにして得られた未延伸シートを二軸方向に延伸してフィルムを得る。
【0066】
フィルムを二軸方向に延伸する方法としては、得られた未延伸シートを、ロールあるいは、テンター方式の延伸機により長手方向に延伸した後に、一段目の延伸方向と直交する幅方向に延伸を行う方法を挙げることができる。長手方向の延伸温度は、75〜120℃が好ましく、長手方向の延伸倍率は2.5〜4.5倍、好ましくは3.0〜4.3倍である。長手方向の延伸温度が75℃以上では、フィルムが破断し難くなるため、好ましい。また、120℃以下では、得られたフィルムの厚み斑が生じ難くなるため、好ましい。長手方向の延伸倍率が2.5倍以上では、フィルムの平面性の点で好ましい。また、4.6倍以下であると配向による破断頻度が少なくなり好ましい。
【0067】
幅方向に延伸する場合には、延伸温度は80〜210℃であることが必要であり、好ましくは130〜200℃である。幅方向の延伸温度が80℃以上では、フィルムが破断し難くなるため、好ましい。また、210℃以下では、得られたフィルムの平面性の点で好ましい。幅方向の延伸倍率は、3.0〜5.0倍、好ましくは3.6〜4.8倍である。幅方向の延伸倍率が3.0倍以上では得られたフィルムの厚み斑が生じ難くなるため、好ましい。幅方向の延伸倍率が5.0倍以下であると配向による破断頻度が少なくなり好ましい。
【0068】
引き続き、熱固定処理を行う。熱固定処理工程の温度は180℃以上240℃以下が好ましい。熱固定処理の温度が180℃以上では、熱収縮率の絶対値が小さくなり好ましい。また、熱固定処理の温度が240℃以下であると、破断の頻度が少なくなり好ましい。なお、好適な熱固定処理方法については、後述する。
【0069】
熱固定処理で把持具のガイドレールを先狭めにして、弛緩処理することは熱収縮率、特に幅方向の熱収縮率の制御に有効である。弛緩処理する温度は熱固定処理温度からポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムのガラス移転温度Tgまでの範囲で選べるが、好ましくは(熱固定処理温度)−10℃〜Tg+10℃である。この幅弛緩率は1〜6%が好ましい。1%未満では効果が少なく、6%以下であるとフィルムの平面性の点で好ましい。
【0070】
ここでは、最初に長手方向に延伸した後、幅方向に延伸を行う方法について述べたが、延伸順序は逆であっても良い。また、縦延伸および横延伸は、各方向への延伸を一段階で行っても良いし、二段階以上に分けて行うことも可能である。加えて、上記の如く、逐次二軸延伸する方法の他に、縦方向および横方向に同時に延伸する同時二軸延伸法を採用することも可能である。ただし、本発明の特性を満たすために最適な温度条件や縦横の延伸倍率をとることが重要であり、最終的に得られたフィルム特性が本発明の要件を満足するものであれば良い。
【0071】
また、フィルムに光拡散性以外の機能性を付与するため、3層以上の多層構造を有するポリエチレンテレフタレート系光拡散性フィルムとしても良い。易滑層や易接着層を塗布する面をA層、その光拡散層をB層、これら以外の面をC層とすると、フィルム厚み方向の層構成は、A/B,A/B/A, A/B/C, A/C/B, あるいはA/C/B/C/A等の構成が考えられる。A〜C層の各層は、それぞれ、材質が同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0072】
本発明のポリエチレンテレフタレート系光拡散性フィルムの厚みは、80以上450μm以下の厚みであると好ましい。
【0073】
また、フィルムの幅は、取扱い易さの点から、フィルムの幅の下限は、0.7m以上であると好ましく、1.0m以上であるとより好ましい。一方、フィルムの幅の上限は、後加工する装置の大きさによって定まるが、現状では2.2mが最大幅と考えられており、2.0m以下であるとより好ましく、1.5m以下であるとさらに好ましい。加えて、フィルムの巻長は、巻き易さや取扱い易さの点から、フィルムが80μm程度の厚みである場合には、7,000m以下であると好ましく、6,000m以下であるとより好ましい。また、フィルムが450μm程度の厚みである場合には、1,100m以下であると好ましく、1,000m以下であるとより好ましい。したがって、フィルムの厚みが80〜450μmの中間である場合には、400m以上7,000m以下の巻長となるように設定するのが好ましい。なお、巻取りコアとしては、通常、3インチ、6インチ、8インチ等の紙、プラスチックコアや金属製コア、導電性コアを使用することができる。
【0074】
本発明の光拡散性フィルムの片面、又は両面に易接着性や易滑性を付与する目的で種々のコーティングを製膜時に付与したもの好適に用いられる。
【0075】
また、本発明のフィルムを構成するポリエチレンテレフタレート系フィルムを形成する樹脂の中には、必要に応じて微粒子を添加することができる。その際に添加する微粒子としては、公知の無機微粒子や有機微粒子を挙げることができる。さらに、フィルムを形成する樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、たとえば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。本発明におけるポリエチレンテレフタレート系フィルムには、微粒子を添加してフィルムの滑り性を良好なものとすることが好ましい。微粒子としては、たとえばシリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等の無機粒子を挙げることができる。また、有機系微粒子として、たとえばアクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子などを挙げることができる。微粒子の平均粒径は、0.05〜2.0μmの範囲内で、必要に応じて選択することができる。
【0076】
フィルムに上記粒子を配合する方法としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を製造する段階で添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めても良い。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエチレンテレフタレート系樹脂原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエチレンテレフタレート系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行うことができる。
【0077】
さらに、本発明の光拡散性フィルムには、フィルム表面の接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したりすることも可能である。
【0078】
次に、本発明の光拡散性フィルムを得るための好ましい製造方法について説明する。
【0079】
通常、延伸後のフィルムの熱固定処理は、長尺状の熱風吹き出し口を有する複数本のプレナムダクトを長手方向に垂直に配置した熱固定装置内で実施される。このような熱固定装置では、加熱効率を良くするために、「熱風の循環」が行われる。熱固定装置に設置された循環ファンにより熱固定装置内の空気を吸引し、その吸引した空気を温調して、再度、プレナムダクトの熱風吹き出し口から排出される。このようにして、「熱風の吹き出し→循環ファンによる吸引→吸引した空気の温調→熱風の吹き出し」の「熱風循環」が行われる。
【0080】
また、上述したように、フィルムロールの幅方向における熱収縮率差(片端縁際のHS150と他端縁際のHS150との差)は、熱固定を行う際にフィルム端縁部の緩和が不十分であるために発生する。図1に示すように、熱固定処理において各プレナムダクト3,3・・の熱風吹き出し口2,2・・の中央部分に連続した大型の遮蔽板Sを被せる方法(特開2001−138462号公報参照)によって、短尺のフィルムを後加工で比較的低温で処理する場合の通過性は改善される。しかし、長尺のフィルムにおける通過性や、後加工での熱処理を高温(例えば、160℃)で行った場合の通過性は、改善されない。
【0081】
本発明者らは、図1に示す方法では何故「長尺のフィルムにおける通過性」や「後加工における熱固定処理を高温にて行った場合の通過性」が改善されないのかを理解するため、熱固定装置内における現象の解析を詳細に行った。その結果、複数本のプレナムダクトに跨るような連続した大型の遮蔽板をプレナムダクトの熱風吹き出し口に被せると、遮蔽板により熱風の流れが制限され、上記した「熱風の循環」がスムーズに行われず、熱固定装置内で温度の乱調(温度のハンチング現象)が生じることを突き止めた。
【0082】
本発明者らは、上記した「温度のハンチング現象」によりフィルム端部際の熱緩和が不十分になる為に、「長尺のフィルムにおける通過性」や「後加工における熱固定処理を高温にて行った場合の通過性」が悪くなるのではないかと推測した。そこで、本発明者らは、「熱風の循環」をスムーズにするとで、「長尺のフィルムにおける通過性」および「後加工における熱固定処理を高温にて行った場合の通過性」を改善できるのではないかと考えた。そして、熱固定装置の温度風量条件、遮蔽板の被覆態様、および後加工におけるフィルムの通過性の三者の関係を把握すべく試行錯誤した結果、フィルム製造の際に、下記(1)の手段を講じることにより、「長尺のフィルムにおける通過性」や「後加工における熱固定処理を高温にて行った場合の通過性」が改善される傾向が見られた。そして、その知見に基づいて、本発明者らが、さらに試行錯誤した結果、下記(1)の手段を講じた上で、下記(2),(3)の手段を講じることにより、後加工における通過性の良好なフィルムを得ることが可能となることを見出した。さらに、下記(4)の手段を講じることにより、微粒子とは独立した気泡を含有する光拡散層を得ることができ、表面が平滑でありながら、光透過性、光拡散性、輝度特性に優れたフィルムを得ることが可能となり、本発明を案出するに至った。
(1)熱固定装置におけるプレナムダクトの温度・風量の調節
(2)熱固定装置におけるプレナムダクトの熱風吹き出し口の遮断条件の調整
(3)延伸ゾーンと熱固定装置との間における加熱の遮断
(4)熱固定温度の調整
以下、上記した各手段について順次説明する。
【0083】
(1)熱固定装置におけるプレナムダクトの温度・風量の調節
熱固定工程では加温・冷却を段階的に行うために、一般に、熱固定装置は温度の異なるいくつかの区分(熱固定ゾーン)に分かれている。本発明のフィルムの製造においては、熱固定装置の隣接し合う熱固定ゾーン間における温度差と風速差との積が、いずれも、250℃・m/s以下となるように、各プレナムダクトから吹き出される熱風の温度、風量を調節することが不可欠である。たとえば、熱固定装置が第1〜3の熱固定ゾーンに分割されている場合には、第1ゾーン−第2ゾーン間における温度差と風速差との積、第2ゾーン−第3ゾーン間における温度差と風速差との積のいずれもが、250℃・m/s以下となるように調節される。このように、熱風の温度、風量を調節することによって、「熱風の循環」がスムーズになる。後述する不連続な遮蔽板を熱風吹き出し口に取り付る方法と組み合わせると、「温度のハンチング現象」が効果的に抑制される。これにより初めて、後加工における熱固定処理を高温にて行った場合の通過性が良好な長尺のフィルムを得ることが可能となる。
【0084】
隣接し合う熱固定ゾーン間における温度差と風速差との積が250℃・m/s以下であると(たとえば、隣接し合う熱固定ゾーン同士の温度差が20℃となるように設定するとともに、隣接し合う熱固定ゾーン同士の風速差が10m/sとなるように設定する)、熱固定装置における「熱風の循環」がスムーズに行われ、「温度のハンチング現象」を効果的に抑制することができるので好ましい。加えて、隣接し合う熱固定ゾーン間における温度差と風速差との積が250℃・m/s以下であると、フィルムの通過により生じる随伴流として上流の熱固定ゾーンから下流の熱固定ゾーンへと流れ込む空気の温度差が小さくなる。そのため、下流の熱固定ゾーンの幅方向における温度が安定する為、好ましい。また、当該温度差と風速差との積は、200℃・m/s以下であると好ましく、150℃・m/s以下であるとより好ましい。また、特許文献3のように、各プレナムダクトの風量を一定にし、各プレナムダクトの風速を異なるようにすると「温度のハンチング現象」が起こる。本発明では、各ゾーン内での風速を一定にすることで、「温度のハンチング現象」を効果的に抑制する。
【0085】
(2)熱固定装置におけるプレナムダクトの遮断条件の調整
本発明のフィルムの製造においては、複数のプレナムダクトに跨る大きな遮蔽板を取り付けるのではなく、図2に示すように、個々のプレナムダクト3,3・・の熱風吹き出し口(ノズル)2,2・・を一つずつ遮蔽するように棒状の遮蔽板S,S・・を取り付ける必要がある。このような不連続な遮蔽板を用いることで、「熱風の循環」がスムーズに行われる。また、同一の長さの遮蔽板を各プレナムダクトに取り付けるのではなく、熱固定装置の入口から出口(フィルムの通過方向)にかけて遮蔽板の長さを次第に長くするのが好ましい(図4参照)。このように、長さを調整することで、フィルム端縁部に曝される熱風温度が調整され、フィルム端縁部の歪みの解消が促される。なお、遮蔽板の材質は、熱固定装置の温度に耐えることができ、かつ、フィルムを汚したり、フィルムを粘着させたりしないものであればよいが、熱膨張の点からプレナムダクトと同一の材料を用いるのが好ましい。また、遮蔽板によるフィルム端縁部の熱収縮率差を本発明の程度に抑えるためには、遮蔽板の数は多い方が好ましく、15枚以上にすることが望ましい。
【0086】
(3)延伸ゾーンと熱固定装置との間における加熱の遮断(中間ゾーンの設置)
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムを基材とする光拡散性フィルムは、通常、縦−横延伸された後に、熱固定処理される。本発明のフィルムの製造においては、縦−横延伸されるゾーンと熱固定処理される熱固定装置との間に、積極的な熱風の吹き付けを行わない中間ゾーンを設置することが望ましい。これにより、延伸ゾーンと熱固定装置との間で、完全に加熱の遮断が行われる。より具体的には、延伸ゾーンおよび熱固定装置をフィルム製造時と同一条件にした状態で、延伸ゾーンと熱固定装置との間に短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、延伸ゾーンおよび熱固定装置の熱風を遮断するのが好ましい。なお、そのような中間ゾーンは、ハウジングによって囲われていても良いし、連続的に製造されるフィルムが露出するように設けられていても良い。かかる中間ゾーンにおける熱風の遮断が十分になされると、熱固定装置中における遮蔽板による遮蔽効果が発揮され、後加工時における良好なフィルムの通過性が得られるようになり好ましい。
【0087】
(4)熱固定温度の調整
本発明の光拡散性フィルムは、上記のようにポリエチレンテレフタレート系フィルムの少なくとも片面に光拡散層を積層してなり、その光拡散層の内部に上記気泡を効果的に生成するためには、製膜時において、延伸ゾーンと熱固定ゾーンを連続させずに、間に上記中間ゾーンを設けることが望ましい。ここで中間ゾーンの温度は、常温から延伸温度程度の温度領域が望ましい。さらに、ポリエチレンテレフタレート系フィルムの原料となる樹脂の融点Tmより低く、熱可塑性樹脂が流動性を有する温度で熱固定することが好ましい。これにより、一軸または二軸延伸した結果、微粒子の周囲に生成していた光の反射効率が高く透過率が低い扁平状のボイドが消滅し、それとは別に独立した気泡を生成させることができ好ましい。
【0088】
本発明において、光拡散層中に気泡を含有させることにより、熱可塑性樹脂との屈折率差を大きくとれることから、入射した光線をより広い角度で拡散することができるようになる。このことが示すことは、斜めに入射した光線をより正面方向に屈折する性能に優れるということである。よって、バックライトの出射性能によっては正面輝度が高くなる効果が得られ、輝度が向上するようになり好ましい。
【0089】
上述した通り、上記した(1)〜(3)までの方法を採用することにより、熱固定装置における「熱風の循環」がスムーズに実行され、「温度のハンチング現象」を抑えることが可能となり、その結果、幅方向の端部際で長手方向の緩和を十分に促すことができ、「長尺のフィルムにおける通過性」や「後加工における熱固定処理を高温にて行った場合の通過性」を改善することが可能となる。なお、上記説明においては、プレナムダクトを設置した熱固定装置において「熱風の循環」をスムーズに実行させて「温度のハンチング現象」を抑える方法を示した。上記説明は、生産レベルにおいて如何にフィルムに熱エネルギーを付与すれば本発明のフィルムが得られるか、という技術的思想を開示したものであるが、当業者であれば、かかる技術的思想を上記した方法と異なった方法により容易に実施することができ、異なった方法で本発明のフィルムを得ることができる。例えば、遮蔽板を設けるかわりに、赤外線ヒーターを用いて、フィルム幅方向の温度を中央から端部にかけて高くしても良い。すなわち、別のタイプの熱固定装置であっても、「熱風の循環」をスムーズに実行させて「温度のハンチング現象」を抑えた上で、幅方向の端部際で長手方向に十分に緩和させるに足る熱エネルギーをフィルムに付与することにより、本発明のフィルムの如く「長尺のフィルムにおける通過性」や「後加工における熱固定処理を高温にて行った場合の通過性」の改善されたフィルムを得ることが可能である。
【0090】
ただ、上記の熱固定方法であっても、クリップ近傍のフィルムはクリップにより動きを制限されているために、長手方向の緩和が十分に実施されず、フィルム端縁部については熱収縮率が十分改善されない場合がある。長手方向の熱収縮率を小さくしようとしても、単に熱固定での温度を上げるだけでは、フィルムが着色したり、結晶化が進みフィルムが白化して透明性が悪化するという問題があり、熱収縮率を低下させることが困難であった。
【0091】
そこで、本発明では、上記熱固定処理方法に加え、さらに以下の方法により長手方向の緩和を行うことでフィルム端縁部の熱収縮率を小さくすることができた。すなわち、本発明における長手方向の緩和処理は、クリップ間に屈曲可能な構造を持たせ、縦方向のクリップ間隔を調整することでフィルム端部を保持するクリップと隣接クリップとの間に屈曲可動なチェンリンクで連結するジョイント部を有し,当該ジョイント部に連結したベアリングがガイドレールを走行することで、チェンリンクの屈曲角度が変位することにより、クリップの進行方向の間隔を収縮することで長手方向の緩和を実施することが可能となる(図5、6、7参照)。本発明の長手方向の緩和処理はフィルムの製造工程で連続的に行うことができ(インライン工程)、後工程で追加の工程を加えることなく追加加工が可能となる。本発明における緩和率は1%以上4%以下が好ましく、1.5%以上2.0%以下が更に好ましい。
【0092】
また、上記した(4)の方法を採用することにより、「微粒子とは独立した気泡」を効果的に生成させることが可能となる。なお、上記説明においては、中間ゾーンの設置、熱固定温度の調整による方法を示した。上記説明は、生産レベルにおいて如何に、気泡を含有する本発明のフィルムが得られるか、という技術思想を開示したものであるが、当業者であれば、上記方法と異なった方法でも容易に実施することができ、異なった方法でも本発明のフィルムを得ることができる。すなわち、熱などにより分解して気体を発生する樹脂または気体を含有した樹脂を内部に埋め込み、フィルム化した後に気体を発生させて内部に気泡を生成する方法、所望の形態に樹脂等を分散後に該樹脂が溶解する溶媒で抽出して気泡を生成する方法等により、本発明の如く「微粒子とは独立した気泡」を含有するフィルムを得ることが可能である。
【実施例】
【0093】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。なお、フィルム特性の評価方法は以下の通りである。
【0094】
[Δnab
得られたスリットロールのフィルム巻取方向に平行な両端縁から50mm以内の位置および中央の位置からそれぞれ試料フィルムを採取した。切り出された試料フィルムを23℃、65%RHの環境下で2時間以上放置した。各試料サンプルについて、アタゴ社製の「アッベ屈折計4T型」を用い、フィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の基材フィルム側の屈折率(n)と、フィルムの巻取方向と135度の角度をなす方向(すなわち、上記した45度の角度をなす方向と90度の角度をなす方向)の基材フィルム側の屈折率(n)とを測定した。これら2つの屈折率の差異の絶対値をΔnabとし、Δnab=│n―n│により算出した。フィルムロールの両端縁部および中央部のΔnabがいずれも0.015以上0.060以下であることを確認し、最も大きい値を表中のΔnabとした。
【0095】
[フィルムの熱収縮率]
フィルムの巻き終わりから2m以内に最初の試料切り出し部を設け、フィルムの巻き終わりから、フィルムの巻き長を9等分した長さ毎に試料切り出し部を設けるとともに、フィルムの巻き始めから2m以内に最終の切り出し部を設けることによって、1本のフィルムロールについて合計10個の試料切り出し部を設けた。各切り出し部について、フィルムロールの左右の端縁部(端縁から50mm以内の部分)から、フィルム巻き取り方向にそって、幅20mm、長さ250mmの試料フィルムを切り出し、左端縁部、右端縁部それぞれにつき10個の試料フィルムを得た。各試料フィルムに200mm間隔で標線をしるし、150℃に調節した加熱オーブンに入れ、JIS C−2318に準拠して、150℃での熱収縮量HS150を測定した。さらに、180℃に調節した加熱オーブンに入れ、上記と同様にして、180℃での熱収縮量HS180を測定した。なお、表中の「各切り出し部における熱収縮率」は幅方向の熱収縮率差が最小のものと最大のものの組み合わせを示している。
【0096】
[フィルムの通過性]
熱処理後のフィルムの平面性を下記方法により評価した。熱処理工程として、2本のロールの間隔が1,900mmであるコーターを用い、温度を100℃あるいは160℃、炉内張力を100Nに設定した。次いで、ロール間隔が2,000mmになるよう2本のロールを水平に配置し、さらに2本のロールの中央位置に、ロール上面の共通接線から30mm下の位置に上面が位置されるように鉄棒を配置した。熱処理工程を通過させたフィルムを98Nの張力下で2本のロール間を通過させた。フィルムを通過させた際に、鉄棒にフィルムが接触しない場合は○とし、鉄棒に接触した場合には×とした。これらの工程は連続して行ない、フィルムが鉄棒に接触したか否かの確認は目視にて行った。
【0097】
また、実施例および比較例におけるフィルムロールの製膜条件を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
[実施例1]
[塗布液(M1)の調製]
常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行って、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%および5−スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%およびネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。
【0100】
次いで、水51.4重量部、イソプロピルアルコール38重量部、n−ブチルセルソルブ5重量部、ノニオン系界面活性剤0.06重量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に達したら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5重量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0重量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。
【0101】
さらに、凝集体シリカ粒子(富士シリシア(株)社製、サイリシア310)3重量部を水50重量部に分散させた後、上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46重量部にサイリシア310の水分散液0.54重量部を加えて、撹拌しながら水20重量部を加えて、塗布液(M1)を得た。
【0102】
主押出し機に、ポリエチレンテレフタレート(PET)にイソフタル酸成分を18mol%共重合させたポリエステル樹脂(屈折率:1.61)を90重量%、ポリメチルペンテン(屈折率:1.46)を10重量%混合したチップをペレットを供給し、押出機内で280℃の温度で溶融させた。また別に副押出し機に微粒子を含有しないPETを供給して、押出機内で285℃の温度で溶融させ、溶融した樹脂を押出機内でステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度:10μm以上の粒子を90%カット)によって濾過した。次いで、溶融した樹脂をT型ダイスより溶融3層共押出しを行ない、静電印可法により鏡面のキャストドラム上で冷却して3層積層シートを作製した。この3層積層シートは、粒子含有PETの両表面を無粒子PETで被覆した構造である。
【0103】
上記した未延伸シートを、加熱されたロール群と近赤外線ヒーターとによって100℃に加熱し、その後、周速差のあるロール群で、長手方向への連続的に3.5倍の延伸を行った。
【0104】
縦延伸完了後、得られた一軸延伸フィルムの両面に前記塗布液(M1)を最終被覆層膜厚が0.08g/mとなるように塗布した後、乾燥炉にて乾燥させた。
【0105】
次いで、その一軸延伸フィルムの端部をクリップで把持して110℃で加熱された熱風ゾーンに導き、幅方向への連続的に4.0倍の延伸を行った。その後、105℃で熱処理し、さらに、後述する方法により熱固定処理を行った後、225℃で1.7%の横緩和処理を行った。また、ベアリングをガイドレールに沿わせることで、チェンリンクの屈曲角度を変位させ、長手方向のクリップ間隔を狭めることにより1.7%の縦緩和処理を行った。この縦緩和処理を行う間にフィルム温度は220℃から150℃に下がった。これをロール状に巻き取ることによって、厚さ100μmで幅3,300mmのフィルムを6,500m巻き取った二軸配向光拡散性フィルムロール(ミルロール)を作製した。表面層の厚さは片側18μmであった。そのミルロールを巻き返しながら、両端部を150mmずつ除去し、残りの部分を幅方向に等間隔に3つにスリットする工程を繰り返し、ミルロールの表層(巻き終わり部分)から凡そ200mを除外することによって、幅1,000mmで巻長3,010mの6本のスリットロールを得た。上記の如く得られた6本のスリットロールのうち、ミルロールの片方の端縁側(フィルムの流れの上流から下流を見たときの右側)に相当するスリットロールを用いて、フィルムの光学的特性以外の評価を行った。評価結果を表4に示す。フィルムの断面、全光線透過率、ヘーズ、正面輝度の光学的特性の評価は、ミルロールの片方の端縁側(フィルムの流れの上流から下流を見たときの右側)に相当するスリットロールの幅方向中央に位置するフィルムを用いて行った。
【0106】
得られた光拡散性フィルムについて、日本工業規格JIS K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠し、全自動直読ヘーズコンピューターHGM−2DP(スガ試験機(株)製)を用いて全光線透過率とヘーズを測定した。全光線透過率は88%であり、ヘーズは90%であった。
【0107】
次に、フィルム断面を切り出し、走査型電子顕微鏡S−2100A(日立製作所(株)製)を用いて1000倍の倍率で断面観察し、断面に観察される任意の隣り合う気泡10個について、フィルム面に平行方向の長さx、垂直方向の長さyを測定し、平均値について、下記の基準により評価したところ○であった。
○:2/3<x/y<3/2
×:x/y≦2/3、3/2≦x/y
この気泡は、ポリメチルペンテンからなる微粒子とは独立していた。
【0108】
また、13.3インチの直管一灯サイドライト型バックライトの導光板上に、得られた光拡散性フィルムを置き、正面輝度を測定した。導光板のみの正面輝度に対して、200cd/m以上、輝度が高くなった場合を○、200cd/m未満であった場合を×、と評価したところ○であった。以上、高光拡散性、高光透過性、高輝度の光拡散性フィルムが得られることがわかった。評価結果を表4に示す。
【0109】
[熱固定処理]
上記熱固定処理は、図2に示す構造を有する熱固定装置で行った。熱固定装置は第1〜4ゾーンという4個の熱固定ゾーンに区切られている。第1〜3ゾーンには、それぞれ、8個ずつのプレナムダクトa〜xが設けられている。第4ゾーンにも、8個のプレナムダクトが設けられている。各プレナムダクトは、フィルムの進行方向に対して垂直となるように、フィルムの進行方向に対して400mm間隔で上下に設置されている。プレナムダクトの熱風吹き出し口(ノズル)から、延伸されたフィルムに熱風が吹き付けられるようになっている。
【0110】
実施例1においては、a〜oの15本のプレナムダクトの熱風吹き出し口に、不連続な棒状の遮蔽板S,S・・を、図2に示す態様で取り付けた。プレナムダクトa〜oの熱風吹き出し口に遮蔽板S,S・・を取り付けた熱固定装置を上から見た様子を図4に示す。取り付けられた各遮蔽板S,S・・の長手方向の中心は、熱固定装置を通過するフィルムの幅の中心と略一致するように設定されている。また、各遮蔽板S,S・・の長さ(製造されるフィルムの幅方向における寸法)は、熱固定装置の入口から出口にかけて次第に幅広になるように設定した。a〜oの各プレナムダクトの熱風吹き出し口の遮蔽率(遮蔽板による熱風吹き出し口の遮蔽面積/熱風吹き出し口の面積)を表2に示す。なお、実施例1における遮蔽板による遮蔽態様を「A態様」とする。
【0111】
【表2】

【0112】
また、実施例1における、熱固定装置の第1〜4ゾーンの温度、風速の各調整値を表3に示す。なお、実施例1の熱固定装置の第1〜4ゾーンの温度条件、風速条件は、隣接する熱固定ゾーン間の温度差と風速差との積が、いずれも、250℃・m/s以下に設定した。なお、実施例1における第1〜4ゾーンの温度、風速条件を「I条件」とする。
【0113】
【表3】

【0114】
[実施例2]
押出機の押出量を増加させて、未延伸シートの厚みを増加させるとともに、キャスティングドラムでの冷却の際に16℃の冷却風を併用し、長手方向への延伸倍率を3.3倍に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ188μmで幅3,300mmのフィルムを4,500m巻き取ったミルロールを得た。そのミルロールを巻き返しながら、両端部を150mmずつ除去し、残りの部分を幅方向に等間隔に3つにスリットする工程を繰り返し、ミルロールの表層から凡そ200mを除外することによって、幅1,000mmで巻長2,010mの6本のスリットロールを得た。そして、実施例1と同位置にあるスリットロールを用いて、フィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0115】
[実施例3]
押出機の押出量を増加させて、未延伸シートの幅を増加させるとともに、熱固定装置の各プレナムダクトの熱風吹き出し口に取り付ける遮蔽板を表2に示す遮蔽率となるように変更し、熱固定装置の第1〜4ゾーンの温度、風速を表3に示す各調整値に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ100μmで幅5,200mmのフィルムを6,500m巻き取ったミルロールを得た。そのミルロールを巻き返しながら、両端部を100mmずつ除去し、残りの部分を幅方向に等間隔に5つにスリットする工程を繰り返、ミルロールの表層から凡そ200mを除外することによって、幅1,000mmで巻長3,010mの10本のスリットロールを得た。そして、上記の如く得られた10本のスリットロールのうち、ミルロールの片方の端縁側(フィルムの流れの上流から下流を見たときの右側)に相当するスリットロールを用いて、フィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4に示す。なお、実施例2における遮蔽板による遮蔽態様を「B態様」とし、実施例2における第1〜4ゾーンの温度、風速条件を「II条件」とする。
【0116】
[実施例4]
未延伸シートの引取速度を調整して未延伸シートの厚みを2,440μmに変更すると共に、キャスティングドラムでの冷却の際に16℃の冷却風を併用し、長手方向への延伸倍率を3.3倍に変更した以外は、実施例2と同様にして、厚さ188μmで幅5,200mmのフィルムを4,500m巻き取ったミルロールを得た。そのミルロールを巻き返しながら、両端部を100mmずつ除去し、残りの部分を幅方向に等間隔に5つにスリットする工程を繰り返し、ミルロールの表層から凡そ200mを除外することによって、幅1,000mmで巻長2,010mの10本のスリットロールを得た。そして、実施例3と同位置にあるスリットロールを用いて、フィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0117】
[比較例1]
各プレナムダクトの熱風吹き出し口に遮蔽板を取り付けることなく熱固定を実施し、熱固定装置の第1〜4ゾーンの温度、風速を表3のように変更した以外は実施例1と同様にした。そして、実施例1と同位置のスリットロールを用いて、フィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4に示す。なお、実施例1における第1〜4ゾーンの温度、風速条件を「IV」条件とする。
【0118】
[比較例2]
各プレナムダクトの熱風吹き出し口に遮蔽板を取り付けることなく熱固定を実施し、熱固定装置の第1〜4ゾーンの温度、風速を表3のように変更した以外は、実施例2と同様にした。そして、実施例2と同位置のスリットロールを用いて、フィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0119】
[比較例3]
縦方向の緩和処理を実施しなかった以外は、実施例1と同様にした。そして、実施例1と同位置のスリットロールを用いて、フィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0120】
[比較例4]
縦方向の緩和処理を実施しなかった以外は、実施例2と同様にした。そして、実施例2と同位置のスリットロールを用いて、フィルムの特性の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0121】
【表4】

【0122】
[実施例のフィルムの効果]
表4から、実施例のフィルムは、いずれも、光透過性、光拡散性、正面輝度特性に優れている上、ロール全幅に亘る熱収縮率の差(すなわち、熱収縮率差)が小さい上、長手方向における熱収縮率の変動量も小さく、後加工時における通過性が良好である。又、熱の掛かる通過性が行われない、枚葉での加工が施される場合も長手方向の熱収縮量が小さく適していることが分かる。これに対して、比較例のフィルムは、ロール全幅に亘る熱収縮率差が小さいが、枚葉での加工が施される場合には長手方向の熱収縮量が大きく、使用するには別途、アニール処理が必要である。遮蔽板をなしで緩和すると幅方向の熱収縮率差が大きくなってしまう。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の光拡散性フィルムは、上記の如く優れた加工特性を有しているため、プリズムレンズ加工やハードコート加工、粘着加工、AR加工やAS加工などの後加工における熱処理を高温ゾーン(160℃程度)にて比較的長時間(10〜60秒)に亘って行う加工用フィルムとして好適に用いることができる上に、熱処理を通過させて加工しない用途で枚葉での高温処理にも好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】従来の遮蔽板による遮蔽態様を示す説明図(aは、熱固定装置の一部の鉛直断面を示したものであり、bは、プレナムダクトの熱風吹き出し口に遮蔽板を取り付けた状態を上から見た状態を示したものである)。
【図2】本発明における遮蔽板による遮蔽態様を示す説明図である(aは、熱固定装置の一部の鉛直断面を示したものであり、bは、プレナムダクトの熱風吹き出し口に遮蔽板を取り付けた状態を上から見た状態を示したものである)。
【図3】実施例・比較例で用いた熱固定装置を上から透視した状態を示す説明図である。
【図4】実施例1における遮蔽板による遮蔽態様を示す説明図である。
【図5】本発明における長手方向の緩和を実施するクリップチェンの拡大部分を示す平面図である。
【図6】(a)本発明における長手方向の弛緩を実施するクリップチェンの拡大部分を示す縦の断面図である。(b)はガイドレールが半分程変位した状態を示す。
【図7】本発明における横延伸機全体を示す説明図である。
【符号の説明】
【0125】
1:熱固定装置
2:熱風吹き出し口
3,a〜x:プレナムダクト
F:フィルム
S:遮蔽板
A:フィルムの巻き取り方向
Z1:第1ゾーン
Z2:第2ゾーン
Z3:第3ゾーン
Z4:第4ゾーン
N1、N2:中間ゾーン
4:クリップ
5,6:クリップに連結したベアリング
7:チェンリンク
8:ジョイント部
9:クリップが取り付けられる台
10:クリップに連結したベアリング
11:ジョイント部に連結したベアリング
12:クリップ走行レール
13:ガイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の屈折率とフィルムの巻取方向と135度の角度をなす方向の屈折率との差異であるΔnabが0.015以上0.060以下である、下記要件(1)〜(3)の要件を満たす光拡散性フィルムであって、
フィルムの巻き終わりから2m以内に最初の試料切り出し部を設け、フィルムの巻き始めから2m以内に最終の切り出し部を設け、それらの最初と最終の切り出し部との間を9等分した長さ毎に試料切り出し部を設けることによって、合計10個の試料切り出し部を設けたとき、下記要件(4)〜(6)を満たすことを特徴とする光拡散性フィルム。
(1)二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムの少なくとも一方の面に、内部に光拡散成分を有する光拡散層を有すること
(2)前記光拡散層が、少なくとも光透過性樹脂と光拡散成分としての微粒子からなること
(3)前記光拡散層が、微粒子とは独立した気泡を含有すること
(4)前記各切り出し部において、フィルムの幅方向における片端縁から50mm以内の位置および他端縁から50mm以内の位置からそれぞれ試料を切り出し、その2つの試料について、150℃で30分間加熱したときのフィルム巻き取り方向の熱収縮率であるHS150を求め、それらのHS150の差である熱収縮率差を求めたときに、すべての切り出し部における熱収縮率差が、いずれも0.1%以下であること
(5)前記各切り出し部において、フィルムの幅方向における片端縁から50mm以内の位置および他端縁から50mm以内の位置からそれぞれ試料を切り出し、それぞれの試料についてHS150を求めたときに、すべての切り出し部における両端縁の試料のHS150が、いずれも0.0%以上0.5%未満であること
(6)前記各切り出し部において求めたフィルムの幅方向における片端縁側のHS150の変動量、および、前記各切り出し部において求めたフィルムの幅方向における他端縁側のHS150の変動量が、いずれも0.25%以下であること
【請求項2】
請求項1記載の光拡散性フィルムであって、フィルムの巻き終わりから2m以内に最初の試料切り出し部を設け、フィルムの巻き始めから2m以内に最終の切り出し部を設け、それらの最初と最終の切り出し部との間を9等分した長さ毎に試料切り出し部を設けることによって、合計10個の試料切り出し部を設けたとき、下記要件(7)および(8)を満たすことを特徴とする光拡散性フィルム。
(7)前記各切り出し部において、ロールの幅方向における片端縁から50mm以内の位置および他端縁から50mm以内の位置からそれぞれ試料を切り出し、その2つの試料について、180℃で30分間加熱したときのフィルム巻取方向の熱収縮率であるHS180を求め、それらのHS180の差である熱収縮率差を求めたときに、すべての切り出し部における熱収縮率差が、いずれも0.15%以下であること
(8)前記各切り出し部において、ロールの幅方向における片端縁から50mm以内の位置および他端縁から50mm以内の位置からそれぞれ試料を切り出し、それぞれの試料についてHS180を求めたときに、すべての切り出し部における両端縁の試料のHS180が、いずれも0.7%以上1.5%未満であること
【請求項3】
フィルム断面に観察される気泡の、フィルム面に平行方向の長さx、垂直方向の長さをyとしたとき、xとyの比が2/3<x/y<3/2であることを特徴とする請求項1記載の光拡散性フィルム。
【請求項4】
光拡散性フィルムの厚みが80μm以上450μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散性フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4に記載された光拡散性フィルムを製造するための製造方法であって、
押出機から原料樹脂を溶融押し出しすることにより未延伸シートを形成するフィルム化工程と、そのフィルム化工程で得られる未延伸シートを縦方向および横方向に二軸延伸する二軸延伸工程と、二軸延伸後のフィルムを熱固定する熱固定工程と、熱固定後のフィルムを長手方向に緩和処理する工程を含んでおり、
その熱固定工程が、下記要件(9)〜(11)を満たす熱固定装置において行われることを特徴とする光拡散性フィルムの製造方法。
(9)熱風を吹き出す幅広な複数のプレナムダクトが、フィルムの進行方向に対して上下に対向して配置されていること
(10)前記複数のプレナムダクトに熱風の吹き出し口を遮蔽するための遮蔽板が取り付けられていること
(11)前記各遮蔽板のフィルムの進行方向における寸法が、フィルムの進行方向における各プレナムダクトの吹き出し口の寸法と略同一に調整されており、前記各遮蔽板のフィルムの幅方向における寸法が、フィルムの進行方向に対して次第に長くなるように調整されていること
【請求項6】
請求項5に記載の長手方向の緩和処理をする工程において、フィルム端部を保持するクリップと隣接クリップとの間に屈曲可動なチェンリンクで連結するジョイント部を有し,当該ジョイント部に連結したベアリングがガイドレールを走行することで、チェンリンクの屈曲角度が変位することにより、クリップの進行方向の間隔を収縮することで当該長手方向の緩和処理を行うことを特徴とする光拡散性フィルムの製造方法。
【請求項7】
二軸延伸工程がフィルムを縦方向に延伸した後に横方向に延伸するものであるとともに、その横延伸を行うゾーンと熱固定装置との間に、風の吹き付けを実行しない中間ゾーンを設けたことを特徴とする請求項5または6に記載の光拡散性フィルムの製造方法。
【請求項8】
熱固定装置が、複数の熱固定ゾーンに分割されているとともに、隣接し合う熱固定ゾーン間における温度差と風速差との積が、いずれも、250℃・m/s以下となるように設定されていることを特徴とする請求項5〜7に記載の光拡散性フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−139832(P2009−139832A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318340(P2007−318340)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】