光源モジュールおよび光走査装置および画像形成装置
【課題】アパーチャを通過する光ビームの光量を有効に増大させ、スポット径痩せや深度余裕の狭小化を有効に軽減もしくは防止することができる光源モジュールを実現する。
【解決手段】光走査装置に用いられる光源モジュールであり、レーザ光源100と、光源からの光ビームをカップリングするカップリングレンズ110と、カップリングされた光ビームの周辺光束領域を遮光するアパーチャ121と、光ビーム波面の位相を部分的に変化させる位相調整素子122とを有し、深度余裕およびビームスポット径の設計値を与えるアパーチャの規格開口径の、主走査方向および副走査方向の少なくとも一方において、規格開口径の外側に光ビームを通過させる補助開口部が形成され、位相調整素子122は平行平板状で、アパーチャに補助開口部を設けたことによるビームスポット径と深度余裕の減少を補償するように、少なくとも光ビーム周辺部で波面の位相を変化させる。
【解決手段】光走査装置に用いられる光源モジュールであり、レーザ光源100と、光源からの光ビームをカップリングするカップリングレンズ110と、カップリングされた光ビームの周辺光束領域を遮光するアパーチャ121と、光ビーム波面の位相を部分的に変化させる位相調整素子122とを有し、深度余裕およびビームスポット径の設計値を与えるアパーチャの規格開口径の、主走査方向および副走査方向の少なくとも一方において、規格開口径の外側に光ビームを通過させる補助開口部が形成され、位相調整素子122は平行平板状で、アパーチャに補助開口部を設けたことによるビームスポット径と深度余裕の減少を補償するように、少なくとも光ビーム周辺部で波面の位相を変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光源モジュールおよび光走査装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
「レーザ光源からの光ビームを偏向手段により偏向させ、結像光学系により被走査面上にビームスポットとして集光させ、被走査面を光走査する光走査装置」は、デジタル複写機、レーザプリンタ、レーザファクシミリやレーザプロッタ等の画像形成装置に関連して広く知られ、具体的な形態にも様々なバリエーションが存在する。
光走査に関する技術において、常に求められる課題の1つとして「光走査の高速化」がある。光走査による画像形成は、レーザビームを集光させたビームスポットにより感光体の感光面を1ドットずつ感光させることにより行われるが、1ドットを感光させるのに必要な光エネルギは、1ドット分を露光する時間:τとビームスポットの光強度:qの積である。光走査を高速化すると、1ドットを感光させる時間:τは小さくなる。従って、高速での光走査の実現には「ビームスポットの光強度」の増大が不可欠である。
【0003】
光走査による画像形成の高速化の1手法として、マルチビーム光走査があり、この光走査方法であると、1度の光走査で複数走査線に同時に光書込みできるので、画像形成速度は飛躍的に向上する。しかし、マルチビーム光走査においても更なる高速光走査が求められており、この光走査方式においても、ビームスポットの光強度を増大させることが重要である。
【0004】
また、近来、面発光型半導体レーザ(以下「VCSEL」と言う。)が実用化され、VCSELは、複数の発光源を同一面上に容易に配列できるので、上述のマルチビーム光走査用の光源として好適であるが、反面、従来から知られた端面発光型の半導体レーザに比べると発光強度が弱く、この光源の使用においても如何にしてビームスポットの光強度を増大させるかが問題となる。
【0005】
ビームスポットにおける光強度は、光源そのものの発光強度と、光源から被走査面に至る光ビームの伝搬途上における伝搬効率によって定まる。従って、ビームスポットにおける光強度を大きくするには、光ビームの伝搬効率を大きくすることも必要である。
光走査装置において、光ビームの伝搬効率を大きく低下させる原因のひとつとして「ビーム整形を行うためのアパーチャ」による光ビームの遮光があげられる。周知の如く、レーザ光源からの光ビームをビームスポットとして集光する場合、ビームスポット径は、ビームスポットを集光させるレンズの開口数に反比例し、波長に比例する。従って、アパーチャの開口径が大きくなるほどビームスポット径は小さくなる。
【0006】
一方において、ビームスポット径は画像形成における1ドットのサイズを決定するものであって、光走査装置の仕様により設計的に定められ、ビームスポット径が設計値より大きすぎれば、光走査装置に求められる「画像形成の解像度に対する仕様」が満足されず、画像の像質が低下する。逆にビームスポット径が設計値よりも小さすぎれば、隣接するドット間に空白が生じ、やはり形成される画像の像質が低下する。
【0007】
このことから「ビームスポット径」は、設計値の周りに許容される「許容範囲内」になければならない。
【0008】
ビームスポット径は、設計上は、光ビーム集束部に形成される「ビームウエストの径」であり、光ビームはビームウエスト位置を境として、ビームウエスト位置を離れるに従ってビーム径が増大する。
光走査装置は、光ビームのビームウエスト位置が被走査面上に合致するように設計されるのであるが、現実に製造される光走査装置では、部品や光学素子の製造誤差や組み立て誤差の存在が不可避的であるから、一般にはビームウエスト位置と「被走査面の実体をなす感光性の像担持体の表面」とに誤差による「ズレ」が発生する。この「ズレ」により被走査面位置がビームウエスト位置から離れると、ズレが光ビームの進行方向のどちらに発生しても被走査面上のビームスポット径は増大する。このような「ズレによるビームスポット径の増大」は「スポット径太り」と呼ばれ、上記ズレは「デフォーカス」と呼ばれている。
【0009】
上記設計上のビームスポット径に対する「スポット径太り」の許容範囲は「深度余裕」と呼ばれる。深度余裕は「許容できるビームスポット径(例えば、ビームウエスト径の+10%以内収まる範囲)に収まる光軸方向のデフォーカスの範囲」であり、被走査面に対する光ビームのデフォーカスが深度余裕内にあれば、被走査面上における実際のビームスポット径は、スポット径太りの許容範囲内にあり、適正な光走査が可能である。
【0010】
製造された光走査装置における誤差はこれを小さくするにも限界があるから、深度余裕はなるべく大きいことが好ましい。
光走査における「光ビームの伝搬効率」を向上させて、ビームスポットの光強度を増大させるためには、アパーチャの開口径を大きくして「アパーチャによる遮効率を低下(アパーチャの開口部を通過する光量を増大)させる」ことが考えられるが、光強度の増大に実効ある程度に開口径を大きくすると、ビームウエスト径の縮小により、被走査面上におけるビームスポット径が「ビームスポット径の許容範囲」を超えて縮小してしまう。また、これに伴い、ビームウエストに向かう光ビームの収束状態が急峻となり「深度余裕」を縮める結果を齎す。アパーチャの開口径の増大によって齎されるビームウエスト径の縮小を「スポット径痩せ」と呼ぶことにする。
従って、ビームスポットの光強度を増大させるために「単にアパーチャの開口径を大きくする」のみでは上記「スポット径痩せや深度余裕の狭小化」のような副作用が生じて好ましくない。
【0011】
アパーチャの開口を大きくしてアパーチャを通過する光量を増大させつつ、ビームスポット径の縮小や深度余裕の縮小を防止する方法として「回折格子を用いて分岐させた光ビームを、被走査面上で重ね合わせる方法」が特許文献1に記載されているが、この方法の場合、分岐させた複数の光ビーム間の位相を高精度で合わせる必要があり、製造時のばらつきや経時での変動に弱く、所望の特性を得るのが容易ではない。
【0012】
また「光ビームの一部における偏光状態を変化させ、像面上で重ね合わせる方法」が特許文献2に記載されているが、偏光が異なるビームはインコヒーレント的に重ね合わされる(強度で重ね合わせられる)ためビームが広がりやすく、深度余裕の確保が難しい。
【0013】
【特許文献1】特開2006−234955
【特許文献2】特開2006−234955
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、アパーチャを通過する光ビームの光量を有効に増大させ、且つ、スポット径痩せや深度余裕の狭小化を有効に軽減させ、もしくは防止することができる光源モジュール、かかる光源モジュールを用いる光走査装置、画像形成装置の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明の光源モジュールは「レーザ光源からの光ビームを偏向手段により偏向させ、結像光学系により被走査面上にビームスポットとして集光させ、被走査面を光走査する光走査装置」において用いられる光源モジュールである。
「レーザ光源」としては、固体レーザやガスレーザ、半導体レーザ等の各種レーザ光源を用いることができる。半導体レーザとしては、従来から知られた端面発光型の半導体レーザや半導体レーザアレイ、あるいは前述のVCSELを好適に用いることができる。
「偏向手段」としては、ポリゴンミラーを初め、音響光学素子や、ガルバノミラー等の揺動鏡等、従来から光偏向を行う手段として知られたものを適宜に用いることができる。
【0016】
「結像光学系」は、光源と被走査面の間に配置されて、光源からの光ビームを被走査面上にビームスポットとして集光させる光学系を言う。
【0017】
請求項1記載の光源モジュールは、レーザ光源と、カップリングレンズと、位相調整素子とを有する。このうち、レーザ光源は上記各種レーザ光源である。
「カップリングレンズ」は、レーザ光源からの光ビームを、以後の光学系にカップリングするためのレンズであり、機能としては、レーザ光源からの光ビームを「所望のビーム径を持つ平行光ビームもしくは略平行光ビーム」とするレンズである。カップリングレンズは、従来から各種の光走査装置の光学系に関連して知られたものを適宜用いることができる。
【0018】
「略平行光ビーム」は、弱い発散性の光ビームや弱い集束性の光ビームである。
「アパーチャ」は、カップリングレンズによりカップリングされた光ビームの周辺光束領域(カップリングされた光ビームの伝搬方向に直交する仮想的な平面上における光ビームの断面において、ビーム中心に対して周辺部の光束領域)を遮光して制限する。
【0019】
「位相調整素子」は、光ビームの波面の位相を部分的に変化させる機能を持つ光学素子であり、形態としては「平行平板状」である。位相調整素子はそれ自体として結像作用は持たないが、レーザ光源からの光ビームの光路上に配置されて上記「結像光学系」の一部をなす。
【0020】
請求項1記載の光源モジュールは、以下の如き特徴を有する。
即ち、先ず、上記構成において、位相調整素子が「位相調整機能を持たない」ものとして、即ち、位相調整素子を単なる平行平板と考えて「レーザ光源からの光ビームを偏向手段により偏向させ、結像光学系により被走査面上にビームスポットとして集光させ、被走査面を光走査する光走査装置」を考えると、光源から放射される光ビームは、結像光学系により被走査面上にビームスポットとして集光される。上記の如く、このとき結像光学系に含まれる位相調整素子は「位相調整機能」を有していない。
【0021】
このような光走査装置は「被走査面上に所望のビームスポット径をもったビームスポットが形成され、かつ、所望の深度余裕が実現される」ように設計される。即ち、このような「所望のビームスポット径・深度余裕」が実現されるように、結像光学系(位相調整機能を未だ有しない平行平板状の位相調整素子が含まれる)の諸元および「アパーチャの開口径」が設計される。
【0022】
このとき、アパーチャに関して、設計上「所望のビームスポット径・深度余裕を実現できる」ときの開口径、即ち、結像光学系(位相調整機能を待たない平行平板を含む)により被走査面上に形成されるビームスポットが「深度余裕およびビームスポット径の設計値を与える」ときの開口径を「規格開口径」とする。即ち、規格開口径は「位相調整素子の位相調整機能を考慮せず」に定まるものである。
【0023】
このように設計された光走査装置において、アパーチャの開口径を「規格開口径より大きく設定」すれば、被走査面上のビームスポット径は「スポット径痩せ」で縮小し、深度余裕も狭小化する。
【0024】
この発明の光源モジュールでは、アパーチャの「主走査方向および副走査方向の開口径のうち少なくとも一方」において、規格開口径の外側に「光ビームを通過させる補助開口部」を形成される。位相調整素子に位相調整機能がないと、補助開口部が形成され、光ビームが規格開口径外を通過することにより、ビームスポット径は設計値よりも「スポット径痩せ」で縮小し、深度余裕も設計上の値よりも狭小化する。
【0025】
位相調整素子は、このような「アパーチャに補助開口部を設けたことによるビームスポット径と深度余裕の減少(即ち、スポット径痩せによるビームスポット径の縮小と、深度余裕の狭小化)」を補償するように、少なくとも「光ビーム周辺部における波面の位相」を変化させる。
【0026】
光ビームの「周辺部における波面の位相を変化させる」ことには、ビームスポットのビームプロファイルにおける高次のサイドローブピーク強度の増大を抑制しつつ、メインローブの積分強度を増大させうる意義がある。
【0027】
若干捕捉すると上記説明において、カップリングレンズによりカップリングされた光ビームが「所望のビーム径」を持つとは、カップリングされた光ビームのビーム径が、アパーチャの「補助開口部を含む開口径」よりも大きく、アパーチャにより光束周辺領域が遮光されることを意味する。
【0028】
また、上記カップリングされた光ビームが「平行光ビームもしくは略平行光ビーム」であるとは、アパーチャが位相調整素子よりも光源側にあって、カップリングされた光ビームがアパーチャに入射するとき、あるいは位相調整素子がアパーチャよりも光源側にあってカップリングされた光ビームが位相調整素子に入射するとき、入射光ビームの波面が平面と看做しうる程度であることを意味する。
【0029】
位相調整素子による位相の調整は、例えば、平行平板状の位相調整素子を透明板として形成し、その厚さを光ビームの透過領域内で変化させれば、透過光における波面は、位相調整素子の厚さの変化に応じて変形」する。あるいはまた、平行平板状の片面を反射面として、反射面を「微小な凹凸を持った形状」とし、光ビームを反射させることにより、反射光ビームにおける波面の形状を反射面の形状に応じて変化させることができる。
【0030】
このように、位相調整素子は光透過性のものとして構成することもできるし、光反射性のものとして構成することも可能である。また、位相調整素子の表面形状は、その高低差が波長オーダであるので、位相調整素子表面の微小な凹凸にかかわらず、位相調整素子は平行平板状であるとしてよい。
【0031】
あるいはまた、光透過性の平行平板において、その光ビーム透過領域内で「屈折率を位相調整機能に応じて変化させる」ようにしてもよい。この場合であると、位相調整素子の表面に微小な凹凸を形成する必要はない。
【0032】
「アパーチャに補助開口部を設けたことによるビームスポット径と深度余裕の減少(即ち、スポット径痩せによるビームスポット径の縮小と、深度余裕の狭小化)を補償するように、少なくとも光ビーム周辺部における波面の位相を変化させる。」との位相調整素子の機能は、設計された光走査装置における結像光学系やアパーチャの補助開口部の形態に応じ、個別的に「結像の波面解析」を行って決定されるものである。
位相調整素子の位相調整による「ビームスポット径と深度余裕の減少の補償」は、例えば、位相調整後におけるビームスポット径・深度余裕の減少が、設計上のビームスポット径・深度余裕に対して、絶対値で15%以下、好ましくは10%以下となるように行われる。勿論、位相調整素子の位相調整機能と補助開口部の形態(大きさ・形状等)を最適化して、ビームスポット径・深度余裕が設計値を与えるようにすることが可能である。
【0033】
請求項1記載の光源モジュールにおけるレーザ光源は、上述の如く固体レーザやガスレーザ、半導体レーザ等の各種レーザ光源の使用が可能であるが、レーザ光源として「1以上の発光源を有する面発光型半導体レーザ(VCSEL)」を用いることができる(請求項2)。
【0034】
前述の如く、VCSELは、従来から知られた端面発光型の半導体レーザに比べると発光強度が弱いが、この発明のように「アパーチャの補助開口部によりアパーチャを通過する光量を増加させて光ビームの伝搬効率を高める」ことにより、発光強度の弱さを幾分なりともカバーできる。特に、2以上の発光源をもつVCSELを用いて、マルチビーム光走査を行うようにし、マルチビーム光走査により画像形成速度を確保しつつ、光ビームの伝搬効率を高めてさらなる高速化を実現できる。VCSELは単一発光部のものを用いることもできるし、複数発光部をアレイ配列したものをマルチビーム光走査用のレーザ光源として用いることもできる。
【0035】
請求項1または2記載の光源モジュールにおける位相調整素子は「アパーチャの中心に対して対称性を有する」ことが好ましい(請求項3)。アパーチャの中心は言うまでも無く「規格開口径を有する開口部」の中心であり、光ビームの主光線はこの開口部の中心と実質的に合致する。
【0036】
このように「位相調整素子に、アパーチャの中心に対して対称性を持たせる」ことにより、ビームスポットのビームプロファイルの強度分布に偏りが発生するのを抑制でき、良好な深度余裕を確保できる。
【0037】
請求項1〜3の任意の1に記載の光源モジュールにおけるアパーチャの補助開口部は、「主走査方向および副走査方向の開口径のうち少なくとも一方において、開口を規格開口径の外側に拡張して形成」することができる(請求項4)。
【0038】
請求項1〜3の任意の1に記載の光源モジュールは、アパーチャの補助開口部を「主走査方向および副走査方向の開口径のうち少なくとも一方において、規格開口径の外側に、主たる開口部とは独立した1対以上の開口」として形成し、位相調整素子が「補助開口部に対応する部分で位相を変化させる」ように構成することができる(請求項5)。上記「主たる開口部」は「規格開口径を有する開口部」である。
【0039】
請求項5に記載の光源モジュールにおいては、主たる開口と独立して形成された補助開口部の開口の少なくとも1対における平均位相と、主たる開口部における平均位相とが異なるように、位相調整素子による位相調整を行うことが好ましい(請求項6)。
【0040】
請求項1〜6の任意の1に記載の光源モジュールにおける位相調整素子は「入射側もしくは射出側の少なくとも1面に反射防止機能を有する」ことが好ましい(請求項7)。反射防止膜の使用により、位相調整素子における反射損失を有効に軽減し、光ビームの「反射による伝搬効率の低下」を有効に軽減もしくは防止できる。
【0041】
この発明の光走査装置は「1以上のレーザ光源からの光ビームを偏向手段により偏向させ、1以上の結像光学系により、1以上の被走査面上にビームスポットとして集光させ、1以上の被走査面を光走査する光走査装置」であって、1以上の光源モジュールとして、請求項1〜7の任意の1に記載のものを用いることを特徴とする(請求項8)。
【0042】
この請求項8に記載の光走査装置において、光源モジュールにおけるレーザ光源を「1以上の発光源を有する面発光型半導体レーザ」とし、光源モジュールにおけるアパーチャの、補助開口部を含む開口の「主走査方向の幅:dm、副走査方向の幅:ds」、「アパーチャ以降の合成光学系」における、主走査方向の焦点距離:fm、副走査方向の主点距離:fsが、条件:
dm/fm<ds/fs
を満足することができる(請求項9)。
請求項8または9記載の光走査装置において、光モジュールの位相調整素子は「副走査方向のみに位相を調整する機能」を有するものであることができる(請求項10)。
【0043】
請求項11記載の画像形成装置は「光走査装置により像担持体上に静電潜像を形成し、この静電潜像をトナー画像として可視化して画像形成を行う画像形成装置」であって、光走査装置として請求項8〜10の任意の1に記載のものを用いることを特徴とする。
【0044】
請求項12記載の画像形成装置は「光走査により1以上の像担持体上に2以上の静電潜像を形成し、これらの静電潜像を異なる色のトナーで可視化し、得られる各色トナー画像を重ね合わせることによりカラー画像を形成する画像形成装置」であって、請求項1〜7の任意の1に記載の光源モジュールを「光走査により静電線像を形成する像担持体の数と同数」用いることを特徴とする。
ここに「カラー画像」は、通常のフルカラー画像や2色画像、多色画像等を含む。
【0045】
請求項11、12における「像担持体」は、感光性のものであり、その表面である感光面が上記「被走査面」の実体をなす。像担持体の形態はドラム状や、有端あるいは無端のベルト状であることができる。
請求項12の画像形成装置では、像担持体上に2以上の静電潜像が形成される。2以上の静電潜像は、同一の像担持体上に位置をずらして形成しても良いし、同一の像担持体の同一箇所に「時間的にずらして形成する」こともできる。この場合、光走査装置を単一とし、複数の静電潜像を単一の光走査装置で形成することができ、その場合の光走査装置は上記請求項8〜10の任意の1に記載のものを用いることができる。
【0046】
また、2つ以上の像担持体を用い、これらに個別的に静電潜像を形成するようにすることもできる。これは所謂「タンデム方式」のカラー画像形成装置であり、各々の像担持体に光走査を行うのに、像担持体ごとに請求項8〜10の任意の1に記載の光走査装置を設けて光走査を行うようにしても良い。
【0047】
この場合、複数の像担持体の各々に光走査を行う光走査装置は、像担持体ごとに個別的に光走査装置を用いても良いが、光偏向器としてポリゴンミラーを用い、このポリゴンミラーを複数の像担持体に共通化し、同一のポリゴンミラーの回転により「複数の像担持体への光ビームの偏向」を行うようにしても良い。
【発明の効果】
【0048】
以上に説明したように、この発明によれば新規な光源モジュール・光走査装置・画像形成装置を実現できる。この発明の光源モジュールは上記の如き構成となっているので、アパーチャを通過する光ビームの光量を増大させて、光伝達効率を高めることにより、光走査の高速化に資することができ、なおかつ、ビームスポット径の縮小や深度余裕の狭小化を有効に軽減し、あるいは防止することができる。従って、この発明の光源モジュールを用いることにより、良好な光走査・画像形成が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
図1に光走査装置の光学配置の1例を示す。
図1は、レーザ光源1から、被走査面11に至る光路を構成する光学系を、1平面内に仮想的に展開して示している。
図1に示すように、レーザ光源1から放射された光ビームは、カップリングレンズ3により平行光束化され、光学部材12を通過し、シリンダレンズ5により副走査方向(図面に直交する方向)に集束傾向を与えられ、偏向手段であるポリゴンミラー7の偏向反射面近傍に「主走査方向に長い線像」として結像する。ポリゴンミラー7は、この実施の形態例においては偏向反射面を4面もつものである。
ポリゴンミラー7の偏向反射面により反射された光ビームは走査レンズ8、10に入射し、走査レンズ8、12の作用により被走査面11上にビームスポットとして集光する。
【0050】
ポリゴンミラー7が等速回転すると、偏向反射面により反射された光ビームは等角速度的に偏向し、ビームスポットは被走査面11を光走査する。
光学部材12は後述するように「アパーチャと位相調整素子とを一体化したもの」であり、アパーチャにより光ビームの周辺光束領域を遮光するとともに、位相調整素子による波面の位相調整を行う。
【0051】
図1の光走査装置においては、カップリングレンズ3と光学部材12における位相調整素子と、シリンダレンズ5と走査レンズ8、10が「結像光学系」を構成する。走査レンズ8、10は所謂「fθレンズ」を構成し、等角速度的に偏向する光ビームのビームスポットの被走査面11上での変位を等速化する機能を有している。
走査レンズ8、10は、ポリゴンミラー7の偏向反射面位置と被走査面11の位置とを「副走査方向に関して共役な関係」としており、副走査方向に関しては上記「主走査方向に長い線像」が走査レンズ8、10によるfθレンズの物点となるので、ポリゴンミラー7の面倒れが補正されるようになっている。なお、fθレンズを構成する2つの走査レンズ8、10は共に樹脂製である。樹脂製の走査レンズの環境変動による結像機能の変動を補正するための回折格子を1以上のレンズ面に形成することもできる。
【0052】
図1における被走査面11は実態としては像担持体の感光面である。
【0053】
図1に示した光学配置を持つ光走査装置は、光学部材12の部分を除けば、従来から広く知られた構成のものであり、このような構成の光走査装置は、図2に示すように組合せることによりタンデム式の光走査装置を構成することができる。
図2は、タンデム式の光走査装置の光学系部分を、副走査方向、即ち、偏向手段であるポリゴンミラー7の回転軸方向から見た状態を示している。図示の簡単のため、ポリゴンミラー7から光走査位置である各被走査面に至る光路上における光路屈曲用のミラーの図示を省略し、光路が平面上にあるように描いた。
【0054】
この光走査装置では、4つの被走査面11Y、11M、11C、11Kをそれぞれ光ビームで光走査する。4個の被走査面11Y、11M、11C、11Kの実体をなす像担持体は「光導電性の感光体ドラム」であり、これら4個の感光体ドラムに形成される静電潜像をマゼンタ、イエロー、シアン、黒のトナーで個別に可視化し、得られる4色のトナー画像を重ね合わせてカラー画像を形成する。従って、以下において被走査面と、その実態をなす感光体ドラムには共通の符号を付する。
【0055】
図2において、符号1Y、1M、1C、1Kは「レーザ光源」を示す。レーザ光源1Y、1Mは、図面に直交する方向である副走査方向に重なりあうように配置されている。レーザ光源1Mは「マゼンタ画像に対応する画像信号」により強度変調され、レーザ光源1Yは「イエロー画像に対応する画像信号」により強度変調される。
【0056】
同様に、レーザ光源1C、1Kも副走査方向に重なりあうように配置されており、レーザ光源1Cは「シアン画像に対応する画像信号」により強度変調され、レーザ光源1Kは「黒画像に対応する画像信号」により強度変調される。
【0057】
レーザ光源1Y、1Mの個々から放射された光束は、カップリングレンズ3Y、3M(副走査方向に重ねて配置され、各レーザ光源からの光束を入射される。)により平行光束化され、光学部材12Y、12M(副走査方向に重なりあうように配置され、光ビームの周辺光束領域の遮光と波面の位相調整を行う。)を通過したのち、副走査方向に配列されたシリンダレンズ5Y、5M(副走査方向に重なり合うように配置されている。)により、それぞれ副走査方向へ集光されてポリゴンミラー7に入射する。シリンダレンズ5Y、5Mによる「主走査方向に長い線像」はポリゴンミラー7の偏向反射面近傍に結像し、偏向される光ビームは、それぞれ走査レンズ8Y、8M、10Y、10Mを透過し、これらレンズの作用により被走査面11Y、11Mにビームスポットを形成し、これら被走査面を光走査する。
【0058】
同様に、レーザ光源1C、1Kから放射された光束はカップリングレンズ3C、3Kにより平行光束化され、光学部材12C、12Kを通過したのち、副走査方向に配列されたシリンダレンズ5C、5Kによりそれぞれ、副走査方向へ集光され、ポリゴンミラー7に入射して偏向され、それぞれ走査レンズ8C、8K、10C、10Kを透過し、これらレンズの作用により被走査面11C、11Kにビームスポットを形成し、これら被走査面を光走査する。
【0059】
図3は、図2に示す光走査装置を用いた画像形成装置の構成を示す図である。図3において符号20で示す部分が、図2に即して説明した光走査装置の部分である。図3に示すように、ポリゴンミラー7は偏向反射面を4面有し、2段構成となっており上段で偏向される光束のうち一方は、光路折り曲げミラーmM1、mM2、mM3により屈曲された光路により感光体ドラム11Mに導光され、他方の光ビームは、光路折り曲げミラーmC1、mC2、mC3により屈曲された光路により感光体ドラム11Cに導光される。
【0060】
また、ポリゴンミラー7の下段側で偏向される光束のうち一方は、光路折り曲げミラーmYにより屈曲された光路により感光体ドラム11Yに導光され、他方の光ビームは、光路折り曲げミラーmKにより屈曲された光路により感光体ドラム11Kに導光される。
【0061】
従って、4個のレーザ光源1Y、1M、1C、1Kからの光束により、4個の感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kが光走査される。感光体ドラム11Y〜11Kは何れも時計回りに等速回転され、帯電手段をなす帯電ローラTY、TM、TC、TKにより均一帯電され、それぞれ対応する光束の光走査を受けてイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色画像を書込まれ対応する静電潜像(ネガ潜像)を形成される。
【0062】
これら静電潜像はそれぞれ現像装置GY、GM、GC、GKにより反転現像され、感光体ドラム11Y、11M、11C、11K上にそれぞれイエロートナー画像、マゼンタトナー画像、シアントナー画像、黒トナー画像が形成される。
【0063】
これら各色トナー画像は、図示されない「転写シート」上に転写される。即ち、転写シートは搬送ベルト17により搬送され、転写器15Yにより感光体ドラム11Y上からイエロートナー画像を転写され、転写器15M、15C、15Kによりそれぞれ、感光体ドラム11M、11C、11kから、マゼンタトナー画像、シアントナー画像、黒トナー画像を順次に転写される。
【0064】
このようにして転写シート上においてイエロートナー画像〜黒トナー画像が重ね合わせられてカラー画像を合成的に構成する。このカラー画像は定着装置19により転写シート上に定着されてカラー画像が得られる。なお、各感光体ドラム上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト上において重ね合わせてカラー画像となし、このカラー画像を転写シート状に転写して定着しても良い。
【0065】
図3において、ポリゴンミラー7の右側に偏向される光ビームが入射する走査レンズ8Y、8Mは、図において分離して描いてあるが、これらは互いに2段に重ねて一体化してもよい。図3において、ポリゴンミラー7の左側に偏向される光ビームが入射する走査レンズ8C、8Kについても同様である。
【0066】
上に説明した光走査装置・画像形成装置の実施形態において、「光源モジュール」は、レーザ光源と、このレーザ光源からの光ビームを所望のビーム径を持つ平行光ビームもしくは略平行光ビームとするカップリングレンズと、このカップリングレンズによりカップリングされた光ビームの周辺光束領域を遮光して制限するアパーチャと、光ビームの波面の位相を部分的に変化させる位相調整素子とを有する。
【0067】
図1の場合を例として説明すれば、図1の例においては、光源モジュールは、レーザ光源1とカップリングレンズ3と、「アパーチャと位相調整素子とを一体化」した光学部材12とを有することになる。
【0068】
光源モジュールを、図4(a)を参照して説明すると、光源モジュールは、レーザ光源100と、カップリングレンズ110と、アパーチャ121と位相調整素子122とを有する。また、アパーチャ121と位相調整素子122とは、図4(a)に示すように互いに別体としてもよいが、これらを密着一体化してもよい。図1を参照して説明した実施の形態においては、光学部材12を構成するアパーチャと位相調整素子とが互いに密着一体化されている。
【0069】
アパーチャ121と位相調整素子122との「光ビーム光路上の配置の順序」は入れ替えても良い。アパーチャ121と位相調整素子122とを別々に設ける場合も、互いに一体化する場合も、位相調整素子は光偏向手段よりも光源側に設置するのがよく、どちらもカップリングレンズ3とシリンダレンズ5の間に設置するのが好ましい。
【0070】
図4(b)は「アパーチャを光軸方向から見た状態」である。アパーチャ121は、遮光領域の中央部に矩形の開口を有し、この開口の部分で光ビームを通過させ、遮光領域で光束周辺領域の遮光を行う。図4(c)は位相調整素子122を示す図であり、左図は光路方向から見た状態、右図は断面形状である。位相調整素子122は、この例では透明な平行平板状であって、その片面に、透過する光ビームの波面の位相を調整するための「断面矩形状の主走査方向に長い突起」が2本平行に形成されている。
【0071】
なお、図4(c)の右図は説明図であり、突起の高さは実際よりも大きく描いてある。実際の突起の高さは波長オーダである。なお、均一な屈折率を持つ平行平板の面に上記の如き突起を形成するのに変えて、平行平板に上記突起に相当する屈折率分布を形成することにより位相調整を行うようにすることもできる。
【0072】
図4には、簡単のため、2段階の位相調整部(突起の無い部分とある部分における平行平板の厚さの差が2段階である。)で、かつ「副走査方向にのみ位相分布(波面の位相を調整するための位相調整部の分布)を設けた構造」になっているが、これに限定されるものではなく、主走査方向にも位相分布を持つ形状(例えば円形や矩形等)の位相分布を設けてもよいし、3段階以上の多段階の位相調整部を用いてもよい。
【0073】
このような位相分布を適切に設計することで「アパーチャにおける開口部を拡大しつつ、ビーム径痩せや深度余裕の狭小化を軽減もしくは防止」することができる。
【0074】
以下、位相調整素子による位相調整作用をシミュレーションの結果に基づき説明する。
【0075】
シミュレーション:1
アパーチャと位相調整素子の作用を、図5(a)のようにモデル化した。
図5(a)に示すように、光学部材120に対して、図の左方から「均一光強度の平面波」を入射させるように条件を設定し、光学部材120の右方:50mmの位置に、焦点距離:50mmの理想の、即ち、無収差の凸レンズ130を配置するように条件を設定した。
【0076】
光学部材120は、図5(b)の右図に示すように、アパーチャ120Aと位相調整素子120Bとを密着一体化させたものを想定した。
【0077】
この条件では、入射光はアパーチャ120Aと位相調整素子120Bを介して、凸レンズ130の像側焦点面を像面として結像する。光学部材120の射出側面は、凸レンズ130の前側焦点位置に位置させている。
図5(b)に示すように、アパーチャ120Aは「矩形状の開口部」を有するが、開口部の開口幅は、主走査方向:0.93mmに対し副走査方向:1.57mmとし、位相調整素子120Bは「副走査方向にのみ位相分布を有するもの」とし、アパーチャ120Aの開口部の副走査方向における最周辺部に幅:80μmの「主走査方向に平行な溝」を刻設し、その少し内側に幅:70μmの「主走査方向に平行な溝」を刻設している。溝の深さは、使用波長に対して「位相:π」となるように設定している。これらの溝の各寸法は、図5(b)に示すとおりである。
【0078】
まず「比較例」として、位相調整素子120Bを用いないときのシミュレーションの結果を図6に示す。このときのアパーチャ120Aの開口幅は主走査方向:0.93mm、副走査方向:0.93mmとしている。
【0079】
図6(a)は、凸レンズ130の像側焦点位置において「ビームプロファイルの強度がピークを取るところで切断した主走査断面、及び、副走査断面におけるプロファイル」の図であり、強度:1に規格化してある。図の如く、破線のカーブは主走査断面、実線のカーブは副走査断面である。主走査断面、副走査断面のプロファイルは略重なっている。これは、入射光が均一な光強度を有し、アパーチャ120Aが正方形形状の開口を有し、凸レンズ130が軸対称レンズであることから当然の結果である。
【0080】
図6(b)に示すのは、デフォーカスに対するビームスポット径(ピーク強度に対して1/e2となるときの径で定義される。)の変化を示す図である。この図から、深度余裕は±3mm程度であることが分る。
【0081】
次に、図5(b)に示す光学部材120を用いたときのシミュレーションの結果を、図7に示す。図7(a)は、凸レンズ130の像側焦点位置において「ビームプロファイルの強度がピークを取るところで切断した主走査断面、及び、副走査断面におけるプロファイル」の図であり、強度:1に規格化してある。主走査断面のプロファイルを破線、副走査断面のプロファイルを実線で示している。
図7(b)は、デフォーカスに対するビームスポット径の変化を示す図である。
【0082】
図6(a)、(b)と図7(a)、(b)とを比較すると、凸レンズ130の焦点位置においては、ともに実質的に等しいビームスポット径が得られ、また、深度余裕も同程度である。
【0083】
しかしながら、位相調整素子120Bを用いる場合は、アパーチャ120Aの開口は、副走査方向において、比較例における0.93mmから1.57mmに拡大している。即ち、比較例における0.93mmは「副走査方向における規格開口径」であり、アパーチャ120Aの開口径は「副走査方向において規格開口径よりも0.64mmだけ拡張」されている。即ち、規格開口径の副走査方向における両側に、幅:0.32mmの補助開口部が形成されているのである。
【0084】
このようにアパーチャの開口径が副走査方向に0.64mm拡張したことにより、補助開口部を通過する光ビームの光量もビームスポットに集光されるので、光学部材120を用いることにより、メインローブの積分強度(ビームスポットの実質的な光強度)が14%増加している。
【0085】
即ち、アパーチャ120Aの開口径を規格開口径より増大させて、ビームスポットの光強度を増大させることができ、なおかつ、位相調整素子120Bを用いて波面の位相を調整することにより「比較例におけると実質的に同じビームスポット径・深度余裕」が得られている。
【0086】
上のシミュレーション例では、位相調整素子の位相分布を「0位相とπ位相の2値」で構成しているため、図7(b)に示すように、デフォーカス:0(凸レンズ130の焦点位置)に対して「+デフォーカスと−デフォーカスで対称なビームスポット径」が得られており良好である。
【0087】
上のシミュレーション例では、アパーチャ120Aと位相調整素子120Bを一体化している。これらを別々に設けてもよいが「アパーチャと位相調整素子の相対位置は高精度で合わせる必要がある」ことを考慮すると、これらを一体化することが好ましい。
【0088】
位相調整素子は、上の例のように「周期構造を持たない位相分布」にするのがよい。位相分布が周期構造を持つと、光ビームが回折して分岐してしまったり、高次のサイドローブピーク強度が増大したりして「メインローブの積分強度を増大させる」ことが阻まれる恐れがあり、また、光走査により形成される画像に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0089】
ところで、位相調整素子を用いて位相調整を行う場合に、素子の中央部の位相を基準に考えると「中央に近いところに位相分布を与える(即ち、位相調整を行う)と、高次のサイドローブピーク強度が増大し易く」なり、ビームスポットにおける「メインローブの積分強度」を増大させることが難しくなり、ビームスポットの実効的な光強度を増大できない。
【0090】
上のシミュレーション例のように、位相調整素子における位相分布を「アパーチャの開口部の周辺部近傍に設ける」ことにより、ビームスポットのビームプロファイルにおける高次のサイドローブピーク強度の増大を抑制しつつ、メインローブの積分強度を増大させることができる。
【0091】
具体的には、位相調整素子の「中央の位相を基準にしたときの位相分布」は、位相調整素子の「中央から開口部の周辺部までの長さ」を100%としたとき、少なくとも50%よりも外側に設けるのがよく、より望ましくは70%よりも外側に設けるのが良い。なお、上記のシミュレーション例では「位相調整素子の中央からアパーチャ開口部の周辺部までの長さの72%より外側」に位相分布が設けられ、上記の如く特性良好である。
【0092】
また、位相調整素子は、上記シミュレーション例のように、その中心(アパーチャの開口の中心に合致する。)を通る線に対して線対称な位相分布を設定するのが良い。最も好ましい「位相分布の中心を通り、且つ、主走査方向、副走査方向に平行な2つの線」に対して線対称な位相分布を設定するのが良い。このようにすることにより「ビームプロファイルの強度分布に偏りが発生する」のを抑制でき良好な深度余裕を確保できる。
【0093】
位相調整素子を設けると、その両面でのフレネルロスにより光利用効率が低下する。フレネルロスを回避し、効果的に光利用効率を向上させるためには、位相調整素子の少なくとも1面、望ましくは両面に反射防止機能を付与するのが望ましい。反射防止機能は、反射防止膜コートや、波長以下の微細な凹凸形状を与えることにより実現できる。
【0094】
上のシミュレーション例においては、図7(a)に示すビームプロファイルにおいて、主走査方向のメインローブの外側のグラフ外の部分に「少し強度の強い高次サイドローブ光」が発生している。図7(a)のビームプロファイルでも、多くの場合、問題にならないが、以下のシミュレーション:2のようにすることで「高次のサイドローブ光強度を低減する」ことができる。
【0095】
シミュレーション:2
図8に光学部材の別の例を示す。この光学部材はアパーチャ120Cと位相調整素子120Dを一体化したものである。アパーチャ120Cにおいて通常用いられる開口(規格開口径を持つ開口、図の中央の開口)の副走査方向における両周辺にそれぞれ、更に「3つの開口」を設けており、これらの3対の開口に合わせた位置で、位相調整素子120Dに「主走査方向に長い溝」が刻設されている。溝の深さは「使用波長に対して位相差:πを与える大きさ」に設定している。溝・開口の各寸法は図8に示す如くにである。
【0096】
シミュレーションの条件は、図5に即して説明したものと同じである。
即ち、アパーチャ120Cに対して光源側から「均一光強度の平面波」が入射し、位相調整素子120Dから50mmの位置に、焦点距離:50mmの理想の凸レンズが配置される条件である。
【0097】
シミュレーション結果を図9に示す。
図9(a)は、凸レンズの焦点位置において「ビームプロファイルの強度がピークを取る位置」で切断した主走査断面、及び、副走査断面のプロファイルの図であり、強度:1は規格化している。図9(b)は「デフォーカスに対するビームスポット径の変化」を示す図である。
前述の「比較例」のシミュレーション結果を示す図6(a)、(b)と、図9(a)、(b)とを比較すると、シミュレーション2の結果は、ビームスポット径・深度余裕に対して、比較例と実質的に等しい。しかしながら一方においてシミュレーション2においては、アパーチャ120Cにおける規格開口径の副走査方向における各側に3つの開口を補助開口部として形成したことにより、アパーチャの開口幅を、副走査方向において、比較例の0.93mmから2.23mm(図8における最も周辺部の開口間の幅)まで拡大でき、メインローブ光の積分強度は従来例と比較して19%増大できている。
【0098】
また、図8の光学部材を用いたシミュレーション:2では、図6の光学部材を用いたシミュレーション:1の場合に比して、ビームプロファイルにおける高次のサイドローブピーク強度(図9(a)のグラフの外側において)が更に小さく抑えられている。
【0099】
このように、アパーチャ中央の規格開口径を持つ開口部の周辺に、更に補助開口部を独立した開口として追加して設け、追加して設けた少なくとも1対の開口部の位相を、アパーチャ中央の開口部における位相と異ならせることで、ビームスポット径を細くしすぎることなく、規格開口径の開口のみの場合と同等の深度余裕を維持しつつ、光利用効率を向上されることができ、さらに高次のサイドローブ光の発生も低く抑えることができる。
【0100】
上には、補助開口部を副走査方向にのみ追加して設ける例を示したが、これに限らず、主走査方向にも補助開口部を追加して設けても良い。また、中央の開口部を取り囲むようにして設けても良い。開口部の形状として矩形の場合を説明したが、楕円形状や、それに近い形状とすることもできる。また、追加して設ける補助開口部の位相は、中央の開口部に対して位相差:πに設定したが(0位相とπ位相の2段階の位相のみを用いたが)、これに限らず、3段階以上に位相を段階化して設けても良い。
【0101】
また前述の如く、アパーチャと位相調整素子は分離することも可能である。図8に示した位相調整素子120Dの「位相分布を構成する溝」は中央の「規格開口径をもつ開口」の両側に3溝ずつ形成されているが、図8に記載した寸法からも分るように、溝(位相が異なる部分)の幅や間隔に周期性はない。
【0102】
シミュレーション2では、アパーチャ中央の開口部の周辺に、開口部を補助開口部として追加して設ける際、追加して設ける開口部のうち「少なくとも1つの開口部における平均位相」を、中央の開口部の平均位相と異ならせている。このようにすることにより、ビームスポット径を細くしすぎることなく、深度余裕を維持しつつ、光利用効率を向上されることができ、さらに高次のサイドローブ光の発生も低く抑えることができる。
【0103】
以上のシミュレーション:1、2から、アパーチャの開口径を規格開口径よりも拡張しても、位相調整素子による位相調整により、スポット径痩せ・深度余裕の狭小化を有効に軽減もしくは防止できることが分る。
【0104】
上記シミュレーション1、2は「図5のように簡略化したモデル」を用いたものであり、ビームスポットを焦点距離:50mmの「軸対称凸レンズ」で形成する場合である。実際の光走査装置では、アパーチャ以降の光学系の合成焦点距離は、シミュレーションに用いた凸レンズのものとは異なり、また主走査方向と副走査方向でも焦点距離が異なる。
焦点距離が変わると「ビームスポット径」は変わるが、ビームプロファイルは殆んど変化しない。ビームプロファイルを変化させることなく、ビームスポット径のみを変化させるには「アパーチャの開口径(補助開口部を含めた開口径)と位相調整素子の位相分布」を比例拡大(もしくは比例縮小)すればよい。この場合、主走査方向と副走査方向で焦点距離が違うので、主走査方向と副走査方向で、アパーチャの開口径と位相素子の「比例拡大(もしくは比例縮小)する割合」を異ならせる。
【0105】
上記の如く、簡略化したモデルでのシミュレーション結果を、実際の光走査装置に適用するには、アパーチャの開口径と位相調整素子素子の比例拡大(もしくは比例縮小)し、その割合を主走査方向と副走査方向で異ならせればよい。
【0106】
また、シミュレーション:1、2では入射光を「均一光強度の平面波」としているが、レーザ光源からの光ビームをカップリングしたものは一般に「光強度分布がガウス分布」である。入射光の光強度分布が変化するとビームプロファイルの形状や大きさは変化するが、光走査における一般的な状況では、アパーチャの開口部を透過する光の強度分布は略均一強度とみなすことができる。実際の光走査装置における入射光の光強度分布の「均一光強度からのずれ」は、アパーチャの開口部の形状や、位相調整素子の位相分布の形状を少し修正することで、実際の光走査装置においても簡略化したモデルでのシミュレーション結果と同等な結果を得ることができる。
【0107】
以下、図1に即して説明した光走査装置の数値具体例を示す。
レーザ光源1として、複数の発光部を2次元的に配列された垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)を用いる。図10は、このVCSELにおける発光部(黒丸で示す。)の配列状態を示している。10個の発光部を1行に並べ、これを4行配列して、4×10のアレイ配列としている。
【0108】
副走査方向に隣り合う発光部間は等間隔:Dsとし、主走査方向の光源数をnとして、「主走査方向の同じ行における隣接発光部の副走査方向間隔:d」はd=Ds/nの等間隔とする。主走査方向に隣り合う発光部間は等間隔:Dmとする。具体的にはDsを44μm、Dmを30μmとした。d=4.4μmとなる。なお、発光部間隔:Ds、Dmは、動作時の他の素子からの熱干渉の影響も考慮して決める必要がある。副走査方向での高密度化に影響のない主走査方向の素子間隔を広げているので、各発光部間の熱干渉の影響低減や、各発光部の配線を通すために必要なスペースを確保できる。
【0109】
VSCELは発振波長の温度変動が小さく、波長の不連続な変化(波長飛び)が原理的に発生しないため、環境変化によっても光学特性が劣化しにくい。
【0110】
発振波長は780nmである。
【0111】
カップリングレンズ3、シリンダレンズ5は、ガラス製でも樹脂製でも良い。樹脂製とした場合は温度変化による光学特性の劣化を低減するために回折光学素子としてもよい。
【0112】
レーザ光源1とカップリングレンズ3は、アルミ材質の同一の部材に固定される。
「カップリングレンズ3」
焦点距離:F1=47.7mm
光軸上肉厚:3mm
カップリング機能:レーザ光源からの光束を略平行光にする。
【0113】
カップリングレンズ3はレーザ光源1から46.06mmの位置に設けられる。
【0114】
アパーチャ(光学部材13におけるカップリングレンズ3側に設けられる。カップリングレンズ3との間隔は47.69mmである。)上における入射光ビームのビーム径(1/e2で定義される。):9.58mm×9.58mmの円形
「位相調整素子」は、アパーチャと一体化して、カップリングレンズ3とシリンダレンズ5の間に設置している。
【0115】
「シリンダレンズ5」
焦点距離:F2=107.0mm
シリンダレンズ5は光学部材13における位相調整素子側から12.85mmの位置に配置される。肉厚:3.0mmである。シリンダレンズ5からポリゴンミラー7の偏向反射面への入射位置に至る距離は108.7mmである。
【0116】
「ポリゴンミラー7」
内接円半径:7mm
偏向反射面数:4 。
【0117】
fθレンズを構成する走査レンズ8および10
「走査レンズ8」
光軸上肉厚:13.5mm
「走査レンズ10」
光軸上肉厚:3.5mm 。
【0118】
走査レンズ8は、入射側面(L1R1)が「主走査方向が非円弧形状で副走査方向が円弧である面」、射出側面(L1R2)は「主走査方向が非円弧形状で、副走査方向は曲率:C(Y)が主走査方向に変化する面」である。
【0119】
走査レンズ10は、射出側面(L2R1)が「主走査方向が非円弧形状で、副走査方向は曲率:C(Y)が主走査方向に変化する面」、射出側面(L2R2)が「主走査方向が非円弧形状で副走査方向が円弧である面」である。
【0120】
上記非円弧形状は、
X=(Y2/Rm)/[1+√{1−(1+a00)(Y/Rm)2}]+
+a01・Y+a02・Y2+a03・Y3+a04・Y4+Δ (1)
で表され、上記曲率の変化:C(Y)は、
Cs(Y)={1/Rs(0)}+
+b01・Y+b02・Y2+b03・Y3+Δ (2)
で表される。
【0121】
これらの式(1)、(2)において、Xは走査レンズ8、10の光軸方向の座標、Yは主走査方向座標、Rmは主走査方の近軸曲率半径、a00,a01,a02,・・・は主走査形状の非球面係数である。Rs0は副走査方向の近軸曲率半径を示し、b00,b01,b02・・・は副走査方向の非球面係数である。
【0122】
走査レンズ8は、入射側面L1R1が、ポリゴンミラー7による偏向の起点から46.31mmの位置に設けられ、上記肉厚:13.5mmを有し、走査レンズ10は、入射側面L2R1が、走査レンズ8の射出側面L1R2から89.73mmの位置になるように設けられ、上記肉厚:3.50mmを有する。射出側面L2R2から被走査面までの距離は141.36mmである。
【0123】
また、レーザ光源側から偏向反射面に入射する光ビームの方向と、走査レンズ8、10の光軸のなす角は60度である。
【0124】
走査レンズ8、10の上記各面L1R1、L1R2、L2R1、L2R2に関するデータを表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
結像光学系(レーザ光源1と被走査面11との間にある光学系)全系の横倍率は、副走査方向につき2.18倍であり、走査レンズ8、10(fθレンズ)のみでは−0.97倍である。fθレンズの焦点距離は、主走査方向:237.8mm、副走査方向:71.4mmである。
光走査による書込幅は±161.5mmである。
【0127】
ビームスポット径の狙いは主走査方向で52μm、副走査方向で55μmである。
【0128】
このような光走査装置において、「比較例」として、位相調整素子が「位相調整機能の無い平行平板」であるとし、規格開口径の開口部1つをもつアパーチャを用いる場合、アパーチャの開口は矩形形状で規格開口径は、主走査方向:5.44mm、副走査方向:2.10mmであり、一般的な光走査装置では、このように主走査方向に長い開口形状が用いられる。
【0129】
一方、面発光レーザからは一般に軸対称で「円形のファーフィールドパターン」を持つ光ビームが射出され(本実施例では、遮光部材上で9.58mm×9.58mm)、上記アパーチャを用いる場合、副走査方向において光利用効率が低くなってしまう。
【0130】
このような光利用効率の低下を軽減するには、アパーチャにおいて、主走査方向よりも副走査方向の開口幅を広げ(図8のような開口形状のときは、最周辺の開口間の幅(以下の説明においても同様とする。図11では2.23mm)、そのときの被走査面上でのビームスポット径および深度余裕を一定に保つように「位相素子における位相分布」を設定する。
【0131】
「アパーチャ以降の合成光学系」における主走査方向、副走査方向の近軸焦点距離をそれぞれfm、fsとすると、上記光走査装置ではfm=237.59mm、fs=104.84mmであり、位相調整素子に位相調整機能を持たせないときの主走査方向、及び副走査方向のアパーチャの規格開口幅:dm、dsはそれぞれ、上記のdm=5.44mm、ds=2.10mmである。
このとき、dm/fm=0.023、ds/fs=0.020である。このように、副走査方向の(ds/fs)の方が主走査方向の(dm/fm)よりも若干小さくなるように設定するのが通常である。
この発明の光源モジュールの位相調整素子を用いると、アパーチャの開口幅(図8のような開口の形状のときは、最周辺の開口間の幅。図8では2.23mm)を広くすることができるため、被走査面上でのビームスポット径および深度余裕は比較例と略同一で、dm/fmもしくはds/fsの値が大きくなる。
【0132】
アパーチャの開口形状と、開口へ入射する光ビームの光束断面形状を考えると、アパーチャにおける副走査方向の開口幅を広げる方が光利用効率を効果的に向上できる。そのため、dm/fmの値の増大量よりも、ds/fsの値の増大量の方が大きくなるように設定する。即ち「dm/fm<ds/fsとなるような位相調整素子とアパーチャ」を設けるのが良い。
【0133】
アパーチャの開口幅が、入射光ビームのビーム径に対して大きくなりすぎると、レーザ光源の「発散角ばらつき」の影響で、被走査面上でのビームスポット径にばらつきが発生するので、開口幅を大きくしすぎないようにする。
【0134】
均一強度の光(入射ビーム径:∞の光)がアパーチャの開口部に入射するとき、レンズの焦点位置上に形成されるビームスポット径を1と規格化する。このときの遮光部材は、開口が1つのものを想定しているが、図8のように複数の開口がある場合では、最周辺の開口観の幅を持つ単一の開口と考える。
【0135】
アパーチャ上において、開口径に対する入射光ビーム径の比(以下、比:Aと呼ぶ)を変化させたとき、レンズの焦点位置上におけるビームスポット径(以下「規格化ビームスポット径」と呼ぶ)の変化をシミュレーションした結果を図11に示す(■で示す。)。
【0136】
また、アパーチャ通過前のビーム光量に対する、アパーチャ通過後のビーム光量の比を「アパーチャ透過率」と呼び、アパーチャ径に対する入射ビーム径の比:Aを変化させたときのアパーチャ透過率の変化を図11に合わせて示す(○で示す)。
【0137】
図11に示されているように、比:Aが1より小さくなると、規格化ビームスポット径の変化の傾きが急峻になる。この状態は「レーザ光源での発散角のばらつきにより、アパーチャへの入射光ビーム径がばらつくと、レンズで結像したときの焦点位置でのビームスポット径が大きくばらつく」ことを示している。レンズの焦点位置でのビームスポット径のばらつきは、画像形成装置に適用した際には、出力画像の劣化を引起してしまう。
【0138】
従って、比:Aが1以上になるように、アパーチャの開口幅と入射ビーム径を設定するのが良い。
【0139】
前述のように、通常の光走査装置では、遮光部材における光利用効率は、主走査方向よりも副走査方向の方が悪い。そのため、位相調整素子は、副走査方向にのみ位相分布を有するように位相分布を設定するのがよい。このとき、開口の形状を矩形形状とすると、副走査方向の深度余裕、およびビームスポット径を、主走査方向とは独立して制御することができ好ましい。
【0140】
このようにこの発明の光源モジュールを有する光走査装置を用いることにより、像担持体上におけるビームポット径および深度余裕を「ほぼ所望の大きさ」に保ちながら、感光体に到達する光量を増大でき、高速の光走査を実現でき、高品位な出力画像を高速に提供できる。
上に具体的な数値を示して説明した光走査装置は、図1に光学配置を示したものであるが、これを図2、図3のように組合せてカラー画像形成を行う画像形成装置とすることができることは言うまでも無い。勿論、単色の画像を形成する画像形成形成装置を構成できることはいうまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】光走査装置を説明するための図である。
【図2】タンデム方式の光走査装置を説明するための図である。
【図3】図2の光走査装置を用いるタンデム式の画像形成装置を説明するための図である。
【図4】光モジュールの構成を説明するための図である。
【図5】光モジュールにおける位相調整の効果を説明するためのシミュレーションを説明するための図である。
【図6】位相調整を行わないときの設計上のビームスポットのビームプロファイルと深度余裕を示す図である。
【図7】アパーチャの開口径を拡張し、位相調整素子により位相調整を行ったときのビームプロファイルと深度余裕を示す図である。
【図8】別のシミュレーションに用いたアパーチャと位相調整素子を説明するための図である。
【図9】図8のアパーチャと位相調整素子によるシミュレーション結果であるビームプロファイルと深度余裕を説明するための図である。
【図10】レーザ光源としてのVCSELの1例を示す図である。
【図11】請求項9の発明を説明するための図である。
【符号の説明】
【0142】
100 レーザ光源
110 カップリングレンズ
121 アパーチャ
122 位相調整素子
【技術分野】
【0001】
この発明は、光源モジュールおよび光走査装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
「レーザ光源からの光ビームを偏向手段により偏向させ、結像光学系により被走査面上にビームスポットとして集光させ、被走査面を光走査する光走査装置」は、デジタル複写機、レーザプリンタ、レーザファクシミリやレーザプロッタ等の画像形成装置に関連して広く知られ、具体的な形態にも様々なバリエーションが存在する。
光走査に関する技術において、常に求められる課題の1つとして「光走査の高速化」がある。光走査による画像形成は、レーザビームを集光させたビームスポットにより感光体の感光面を1ドットずつ感光させることにより行われるが、1ドットを感光させるのに必要な光エネルギは、1ドット分を露光する時間:τとビームスポットの光強度:qの積である。光走査を高速化すると、1ドットを感光させる時間:τは小さくなる。従って、高速での光走査の実現には「ビームスポットの光強度」の増大が不可欠である。
【0003】
光走査による画像形成の高速化の1手法として、マルチビーム光走査があり、この光走査方法であると、1度の光走査で複数走査線に同時に光書込みできるので、画像形成速度は飛躍的に向上する。しかし、マルチビーム光走査においても更なる高速光走査が求められており、この光走査方式においても、ビームスポットの光強度を増大させることが重要である。
【0004】
また、近来、面発光型半導体レーザ(以下「VCSEL」と言う。)が実用化され、VCSELは、複数の発光源を同一面上に容易に配列できるので、上述のマルチビーム光走査用の光源として好適であるが、反面、従来から知られた端面発光型の半導体レーザに比べると発光強度が弱く、この光源の使用においても如何にしてビームスポットの光強度を増大させるかが問題となる。
【0005】
ビームスポットにおける光強度は、光源そのものの発光強度と、光源から被走査面に至る光ビームの伝搬途上における伝搬効率によって定まる。従って、ビームスポットにおける光強度を大きくするには、光ビームの伝搬効率を大きくすることも必要である。
光走査装置において、光ビームの伝搬効率を大きく低下させる原因のひとつとして「ビーム整形を行うためのアパーチャ」による光ビームの遮光があげられる。周知の如く、レーザ光源からの光ビームをビームスポットとして集光する場合、ビームスポット径は、ビームスポットを集光させるレンズの開口数に反比例し、波長に比例する。従って、アパーチャの開口径が大きくなるほどビームスポット径は小さくなる。
【0006】
一方において、ビームスポット径は画像形成における1ドットのサイズを決定するものであって、光走査装置の仕様により設計的に定められ、ビームスポット径が設計値より大きすぎれば、光走査装置に求められる「画像形成の解像度に対する仕様」が満足されず、画像の像質が低下する。逆にビームスポット径が設計値よりも小さすぎれば、隣接するドット間に空白が生じ、やはり形成される画像の像質が低下する。
【0007】
このことから「ビームスポット径」は、設計値の周りに許容される「許容範囲内」になければならない。
【0008】
ビームスポット径は、設計上は、光ビーム集束部に形成される「ビームウエストの径」であり、光ビームはビームウエスト位置を境として、ビームウエスト位置を離れるに従ってビーム径が増大する。
光走査装置は、光ビームのビームウエスト位置が被走査面上に合致するように設計されるのであるが、現実に製造される光走査装置では、部品や光学素子の製造誤差や組み立て誤差の存在が不可避的であるから、一般にはビームウエスト位置と「被走査面の実体をなす感光性の像担持体の表面」とに誤差による「ズレ」が発生する。この「ズレ」により被走査面位置がビームウエスト位置から離れると、ズレが光ビームの進行方向のどちらに発生しても被走査面上のビームスポット径は増大する。このような「ズレによるビームスポット径の増大」は「スポット径太り」と呼ばれ、上記ズレは「デフォーカス」と呼ばれている。
【0009】
上記設計上のビームスポット径に対する「スポット径太り」の許容範囲は「深度余裕」と呼ばれる。深度余裕は「許容できるビームスポット径(例えば、ビームウエスト径の+10%以内収まる範囲)に収まる光軸方向のデフォーカスの範囲」であり、被走査面に対する光ビームのデフォーカスが深度余裕内にあれば、被走査面上における実際のビームスポット径は、スポット径太りの許容範囲内にあり、適正な光走査が可能である。
【0010】
製造された光走査装置における誤差はこれを小さくするにも限界があるから、深度余裕はなるべく大きいことが好ましい。
光走査における「光ビームの伝搬効率」を向上させて、ビームスポットの光強度を増大させるためには、アパーチャの開口径を大きくして「アパーチャによる遮効率を低下(アパーチャの開口部を通過する光量を増大)させる」ことが考えられるが、光強度の増大に実効ある程度に開口径を大きくすると、ビームウエスト径の縮小により、被走査面上におけるビームスポット径が「ビームスポット径の許容範囲」を超えて縮小してしまう。また、これに伴い、ビームウエストに向かう光ビームの収束状態が急峻となり「深度余裕」を縮める結果を齎す。アパーチャの開口径の増大によって齎されるビームウエスト径の縮小を「スポット径痩せ」と呼ぶことにする。
従って、ビームスポットの光強度を増大させるために「単にアパーチャの開口径を大きくする」のみでは上記「スポット径痩せや深度余裕の狭小化」のような副作用が生じて好ましくない。
【0011】
アパーチャの開口を大きくしてアパーチャを通過する光量を増大させつつ、ビームスポット径の縮小や深度余裕の縮小を防止する方法として「回折格子を用いて分岐させた光ビームを、被走査面上で重ね合わせる方法」が特許文献1に記載されているが、この方法の場合、分岐させた複数の光ビーム間の位相を高精度で合わせる必要があり、製造時のばらつきや経時での変動に弱く、所望の特性を得るのが容易ではない。
【0012】
また「光ビームの一部における偏光状態を変化させ、像面上で重ね合わせる方法」が特許文献2に記載されているが、偏光が異なるビームはインコヒーレント的に重ね合わされる(強度で重ね合わせられる)ためビームが広がりやすく、深度余裕の確保が難しい。
【0013】
【特許文献1】特開2006−234955
【特許文献2】特開2006−234955
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、アパーチャを通過する光ビームの光量を有効に増大させ、且つ、スポット径痩せや深度余裕の狭小化を有効に軽減させ、もしくは防止することができる光源モジュール、かかる光源モジュールを用いる光走査装置、画像形成装置の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明の光源モジュールは「レーザ光源からの光ビームを偏向手段により偏向させ、結像光学系により被走査面上にビームスポットとして集光させ、被走査面を光走査する光走査装置」において用いられる光源モジュールである。
「レーザ光源」としては、固体レーザやガスレーザ、半導体レーザ等の各種レーザ光源を用いることができる。半導体レーザとしては、従来から知られた端面発光型の半導体レーザや半導体レーザアレイ、あるいは前述のVCSELを好適に用いることができる。
「偏向手段」としては、ポリゴンミラーを初め、音響光学素子や、ガルバノミラー等の揺動鏡等、従来から光偏向を行う手段として知られたものを適宜に用いることができる。
【0016】
「結像光学系」は、光源と被走査面の間に配置されて、光源からの光ビームを被走査面上にビームスポットとして集光させる光学系を言う。
【0017】
請求項1記載の光源モジュールは、レーザ光源と、カップリングレンズと、位相調整素子とを有する。このうち、レーザ光源は上記各種レーザ光源である。
「カップリングレンズ」は、レーザ光源からの光ビームを、以後の光学系にカップリングするためのレンズであり、機能としては、レーザ光源からの光ビームを「所望のビーム径を持つ平行光ビームもしくは略平行光ビーム」とするレンズである。カップリングレンズは、従来から各種の光走査装置の光学系に関連して知られたものを適宜用いることができる。
【0018】
「略平行光ビーム」は、弱い発散性の光ビームや弱い集束性の光ビームである。
「アパーチャ」は、カップリングレンズによりカップリングされた光ビームの周辺光束領域(カップリングされた光ビームの伝搬方向に直交する仮想的な平面上における光ビームの断面において、ビーム中心に対して周辺部の光束領域)を遮光して制限する。
【0019】
「位相調整素子」は、光ビームの波面の位相を部分的に変化させる機能を持つ光学素子であり、形態としては「平行平板状」である。位相調整素子はそれ自体として結像作用は持たないが、レーザ光源からの光ビームの光路上に配置されて上記「結像光学系」の一部をなす。
【0020】
請求項1記載の光源モジュールは、以下の如き特徴を有する。
即ち、先ず、上記構成において、位相調整素子が「位相調整機能を持たない」ものとして、即ち、位相調整素子を単なる平行平板と考えて「レーザ光源からの光ビームを偏向手段により偏向させ、結像光学系により被走査面上にビームスポットとして集光させ、被走査面を光走査する光走査装置」を考えると、光源から放射される光ビームは、結像光学系により被走査面上にビームスポットとして集光される。上記の如く、このとき結像光学系に含まれる位相調整素子は「位相調整機能」を有していない。
【0021】
このような光走査装置は「被走査面上に所望のビームスポット径をもったビームスポットが形成され、かつ、所望の深度余裕が実現される」ように設計される。即ち、このような「所望のビームスポット径・深度余裕」が実現されるように、結像光学系(位相調整機能を未だ有しない平行平板状の位相調整素子が含まれる)の諸元および「アパーチャの開口径」が設計される。
【0022】
このとき、アパーチャに関して、設計上「所望のビームスポット径・深度余裕を実現できる」ときの開口径、即ち、結像光学系(位相調整機能を待たない平行平板を含む)により被走査面上に形成されるビームスポットが「深度余裕およびビームスポット径の設計値を与える」ときの開口径を「規格開口径」とする。即ち、規格開口径は「位相調整素子の位相調整機能を考慮せず」に定まるものである。
【0023】
このように設計された光走査装置において、アパーチャの開口径を「規格開口径より大きく設定」すれば、被走査面上のビームスポット径は「スポット径痩せ」で縮小し、深度余裕も狭小化する。
【0024】
この発明の光源モジュールでは、アパーチャの「主走査方向および副走査方向の開口径のうち少なくとも一方」において、規格開口径の外側に「光ビームを通過させる補助開口部」を形成される。位相調整素子に位相調整機能がないと、補助開口部が形成され、光ビームが規格開口径外を通過することにより、ビームスポット径は設計値よりも「スポット径痩せ」で縮小し、深度余裕も設計上の値よりも狭小化する。
【0025】
位相調整素子は、このような「アパーチャに補助開口部を設けたことによるビームスポット径と深度余裕の減少(即ち、スポット径痩せによるビームスポット径の縮小と、深度余裕の狭小化)」を補償するように、少なくとも「光ビーム周辺部における波面の位相」を変化させる。
【0026】
光ビームの「周辺部における波面の位相を変化させる」ことには、ビームスポットのビームプロファイルにおける高次のサイドローブピーク強度の増大を抑制しつつ、メインローブの積分強度を増大させうる意義がある。
【0027】
若干捕捉すると上記説明において、カップリングレンズによりカップリングされた光ビームが「所望のビーム径」を持つとは、カップリングされた光ビームのビーム径が、アパーチャの「補助開口部を含む開口径」よりも大きく、アパーチャにより光束周辺領域が遮光されることを意味する。
【0028】
また、上記カップリングされた光ビームが「平行光ビームもしくは略平行光ビーム」であるとは、アパーチャが位相調整素子よりも光源側にあって、カップリングされた光ビームがアパーチャに入射するとき、あるいは位相調整素子がアパーチャよりも光源側にあってカップリングされた光ビームが位相調整素子に入射するとき、入射光ビームの波面が平面と看做しうる程度であることを意味する。
【0029】
位相調整素子による位相の調整は、例えば、平行平板状の位相調整素子を透明板として形成し、その厚さを光ビームの透過領域内で変化させれば、透過光における波面は、位相調整素子の厚さの変化に応じて変形」する。あるいはまた、平行平板状の片面を反射面として、反射面を「微小な凹凸を持った形状」とし、光ビームを反射させることにより、反射光ビームにおける波面の形状を反射面の形状に応じて変化させることができる。
【0030】
このように、位相調整素子は光透過性のものとして構成することもできるし、光反射性のものとして構成することも可能である。また、位相調整素子の表面形状は、その高低差が波長オーダであるので、位相調整素子表面の微小な凹凸にかかわらず、位相調整素子は平行平板状であるとしてよい。
【0031】
あるいはまた、光透過性の平行平板において、その光ビーム透過領域内で「屈折率を位相調整機能に応じて変化させる」ようにしてもよい。この場合であると、位相調整素子の表面に微小な凹凸を形成する必要はない。
【0032】
「アパーチャに補助開口部を設けたことによるビームスポット径と深度余裕の減少(即ち、スポット径痩せによるビームスポット径の縮小と、深度余裕の狭小化)を補償するように、少なくとも光ビーム周辺部における波面の位相を変化させる。」との位相調整素子の機能は、設計された光走査装置における結像光学系やアパーチャの補助開口部の形態に応じ、個別的に「結像の波面解析」を行って決定されるものである。
位相調整素子の位相調整による「ビームスポット径と深度余裕の減少の補償」は、例えば、位相調整後におけるビームスポット径・深度余裕の減少が、設計上のビームスポット径・深度余裕に対して、絶対値で15%以下、好ましくは10%以下となるように行われる。勿論、位相調整素子の位相調整機能と補助開口部の形態(大きさ・形状等)を最適化して、ビームスポット径・深度余裕が設計値を与えるようにすることが可能である。
【0033】
請求項1記載の光源モジュールにおけるレーザ光源は、上述の如く固体レーザやガスレーザ、半導体レーザ等の各種レーザ光源の使用が可能であるが、レーザ光源として「1以上の発光源を有する面発光型半導体レーザ(VCSEL)」を用いることができる(請求項2)。
【0034】
前述の如く、VCSELは、従来から知られた端面発光型の半導体レーザに比べると発光強度が弱いが、この発明のように「アパーチャの補助開口部によりアパーチャを通過する光量を増加させて光ビームの伝搬効率を高める」ことにより、発光強度の弱さを幾分なりともカバーできる。特に、2以上の発光源をもつVCSELを用いて、マルチビーム光走査を行うようにし、マルチビーム光走査により画像形成速度を確保しつつ、光ビームの伝搬効率を高めてさらなる高速化を実現できる。VCSELは単一発光部のものを用いることもできるし、複数発光部をアレイ配列したものをマルチビーム光走査用のレーザ光源として用いることもできる。
【0035】
請求項1または2記載の光源モジュールにおける位相調整素子は「アパーチャの中心に対して対称性を有する」ことが好ましい(請求項3)。アパーチャの中心は言うまでも無く「規格開口径を有する開口部」の中心であり、光ビームの主光線はこの開口部の中心と実質的に合致する。
【0036】
このように「位相調整素子に、アパーチャの中心に対して対称性を持たせる」ことにより、ビームスポットのビームプロファイルの強度分布に偏りが発生するのを抑制でき、良好な深度余裕を確保できる。
【0037】
請求項1〜3の任意の1に記載の光源モジュールにおけるアパーチャの補助開口部は、「主走査方向および副走査方向の開口径のうち少なくとも一方において、開口を規格開口径の外側に拡張して形成」することができる(請求項4)。
【0038】
請求項1〜3の任意の1に記載の光源モジュールは、アパーチャの補助開口部を「主走査方向および副走査方向の開口径のうち少なくとも一方において、規格開口径の外側に、主たる開口部とは独立した1対以上の開口」として形成し、位相調整素子が「補助開口部に対応する部分で位相を変化させる」ように構成することができる(請求項5)。上記「主たる開口部」は「規格開口径を有する開口部」である。
【0039】
請求項5に記載の光源モジュールにおいては、主たる開口と独立して形成された補助開口部の開口の少なくとも1対における平均位相と、主たる開口部における平均位相とが異なるように、位相調整素子による位相調整を行うことが好ましい(請求項6)。
【0040】
請求項1〜6の任意の1に記載の光源モジュールにおける位相調整素子は「入射側もしくは射出側の少なくとも1面に反射防止機能を有する」ことが好ましい(請求項7)。反射防止膜の使用により、位相調整素子における反射損失を有効に軽減し、光ビームの「反射による伝搬効率の低下」を有効に軽減もしくは防止できる。
【0041】
この発明の光走査装置は「1以上のレーザ光源からの光ビームを偏向手段により偏向させ、1以上の結像光学系により、1以上の被走査面上にビームスポットとして集光させ、1以上の被走査面を光走査する光走査装置」であって、1以上の光源モジュールとして、請求項1〜7の任意の1に記載のものを用いることを特徴とする(請求項8)。
【0042】
この請求項8に記載の光走査装置において、光源モジュールにおけるレーザ光源を「1以上の発光源を有する面発光型半導体レーザ」とし、光源モジュールにおけるアパーチャの、補助開口部を含む開口の「主走査方向の幅:dm、副走査方向の幅:ds」、「アパーチャ以降の合成光学系」における、主走査方向の焦点距離:fm、副走査方向の主点距離:fsが、条件:
dm/fm<ds/fs
を満足することができる(請求項9)。
請求項8または9記載の光走査装置において、光モジュールの位相調整素子は「副走査方向のみに位相を調整する機能」を有するものであることができる(請求項10)。
【0043】
請求項11記載の画像形成装置は「光走査装置により像担持体上に静電潜像を形成し、この静電潜像をトナー画像として可視化して画像形成を行う画像形成装置」であって、光走査装置として請求項8〜10の任意の1に記載のものを用いることを特徴とする。
【0044】
請求項12記載の画像形成装置は「光走査により1以上の像担持体上に2以上の静電潜像を形成し、これらの静電潜像を異なる色のトナーで可視化し、得られる各色トナー画像を重ね合わせることによりカラー画像を形成する画像形成装置」であって、請求項1〜7の任意の1に記載の光源モジュールを「光走査により静電線像を形成する像担持体の数と同数」用いることを特徴とする。
ここに「カラー画像」は、通常のフルカラー画像や2色画像、多色画像等を含む。
【0045】
請求項11、12における「像担持体」は、感光性のものであり、その表面である感光面が上記「被走査面」の実体をなす。像担持体の形態はドラム状や、有端あるいは無端のベルト状であることができる。
請求項12の画像形成装置では、像担持体上に2以上の静電潜像が形成される。2以上の静電潜像は、同一の像担持体上に位置をずらして形成しても良いし、同一の像担持体の同一箇所に「時間的にずらして形成する」こともできる。この場合、光走査装置を単一とし、複数の静電潜像を単一の光走査装置で形成することができ、その場合の光走査装置は上記請求項8〜10の任意の1に記載のものを用いることができる。
【0046】
また、2つ以上の像担持体を用い、これらに個別的に静電潜像を形成するようにすることもできる。これは所謂「タンデム方式」のカラー画像形成装置であり、各々の像担持体に光走査を行うのに、像担持体ごとに請求項8〜10の任意の1に記載の光走査装置を設けて光走査を行うようにしても良い。
【0047】
この場合、複数の像担持体の各々に光走査を行う光走査装置は、像担持体ごとに個別的に光走査装置を用いても良いが、光偏向器としてポリゴンミラーを用い、このポリゴンミラーを複数の像担持体に共通化し、同一のポリゴンミラーの回転により「複数の像担持体への光ビームの偏向」を行うようにしても良い。
【発明の効果】
【0048】
以上に説明したように、この発明によれば新規な光源モジュール・光走査装置・画像形成装置を実現できる。この発明の光源モジュールは上記の如き構成となっているので、アパーチャを通過する光ビームの光量を増大させて、光伝達効率を高めることにより、光走査の高速化に資することができ、なおかつ、ビームスポット径の縮小や深度余裕の狭小化を有効に軽減し、あるいは防止することができる。従って、この発明の光源モジュールを用いることにより、良好な光走査・画像形成が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
図1に光走査装置の光学配置の1例を示す。
図1は、レーザ光源1から、被走査面11に至る光路を構成する光学系を、1平面内に仮想的に展開して示している。
図1に示すように、レーザ光源1から放射された光ビームは、カップリングレンズ3により平行光束化され、光学部材12を通過し、シリンダレンズ5により副走査方向(図面に直交する方向)に集束傾向を与えられ、偏向手段であるポリゴンミラー7の偏向反射面近傍に「主走査方向に長い線像」として結像する。ポリゴンミラー7は、この実施の形態例においては偏向反射面を4面もつものである。
ポリゴンミラー7の偏向反射面により反射された光ビームは走査レンズ8、10に入射し、走査レンズ8、12の作用により被走査面11上にビームスポットとして集光する。
【0050】
ポリゴンミラー7が等速回転すると、偏向反射面により反射された光ビームは等角速度的に偏向し、ビームスポットは被走査面11を光走査する。
光学部材12は後述するように「アパーチャと位相調整素子とを一体化したもの」であり、アパーチャにより光ビームの周辺光束領域を遮光するとともに、位相調整素子による波面の位相調整を行う。
【0051】
図1の光走査装置においては、カップリングレンズ3と光学部材12における位相調整素子と、シリンダレンズ5と走査レンズ8、10が「結像光学系」を構成する。走査レンズ8、10は所謂「fθレンズ」を構成し、等角速度的に偏向する光ビームのビームスポットの被走査面11上での変位を等速化する機能を有している。
走査レンズ8、10は、ポリゴンミラー7の偏向反射面位置と被走査面11の位置とを「副走査方向に関して共役な関係」としており、副走査方向に関しては上記「主走査方向に長い線像」が走査レンズ8、10によるfθレンズの物点となるので、ポリゴンミラー7の面倒れが補正されるようになっている。なお、fθレンズを構成する2つの走査レンズ8、10は共に樹脂製である。樹脂製の走査レンズの環境変動による結像機能の変動を補正するための回折格子を1以上のレンズ面に形成することもできる。
【0052】
図1における被走査面11は実態としては像担持体の感光面である。
【0053】
図1に示した光学配置を持つ光走査装置は、光学部材12の部分を除けば、従来から広く知られた構成のものであり、このような構成の光走査装置は、図2に示すように組合せることによりタンデム式の光走査装置を構成することができる。
図2は、タンデム式の光走査装置の光学系部分を、副走査方向、即ち、偏向手段であるポリゴンミラー7の回転軸方向から見た状態を示している。図示の簡単のため、ポリゴンミラー7から光走査位置である各被走査面に至る光路上における光路屈曲用のミラーの図示を省略し、光路が平面上にあるように描いた。
【0054】
この光走査装置では、4つの被走査面11Y、11M、11C、11Kをそれぞれ光ビームで光走査する。4個の被走査面11Y、11M、11C、11Kの実体をなす像担持体は「光導電性の感光体ドラム」であり、これら4個の感光体ドラムに形成される静電潜像をマゼンタ、イエロー、シアン、黒のトナーで個別に可視化し、得られる4色のトナー画像を重ね合わせてカラー画像を形成する。従って、以下において被走査面と、その実態をなす感光体ドラムには共通の符号を付する。
【0055】
図2において、符号1Y、1M、1C、1Kは「レーザ光源」を示す。レーザ光源1Y、1Mは、図面に直交する方向である副走査方向に重なりあうように配置されている。レーザ光源1Mは「マゼンタ画像に対応する画像信号」により強度変調され、レーザ光源1Yは「イエロー画像に対応する画像信号」により強度変調される。
【0056】
同様に、レーザ光源1C、1Kも副走査方向に重なりあうように配置されており、レーザ光源1Cは「シアン画像に対応する画像信号」により強度変調され、レーザ光源1Kは「黒画像に対応する画像信号」により強度変調される。
【0057】
レーザ光源1Y、1Mの個々から放射された光束は、カップリングレンズ3Y、3M(副走査方向に重ねて配置され、各レーザ光源からの光束を入射される。)により平行光束化され、光学部材12Y、12M(副走査方向に重なりあうように配置され、光ビームの周辺光束領域の遮光と波面の位相調整を行う。)を通過したのち、副走査方向に配列されたシリンダレンズ5Y、5M(副走査方向に重なり合うように配置されている。)により、それぞれ副走査方向へ集光されてポリゴンミラー7に入射する。シリンダレンズ5Y、5Mによる「主走査方向に長い線像」はポリゴンミラー7の偏向反射面近傍に結像し、偏向される光ビームは、それぞれ走査レンズ8Y、8M、10Y、10Mを透過し、これらレンズの作用により被走査面11Y、11Mにビームスポットを形成し、これら被走査面を光走査する。
【0058】
同様に、レーザ光源1C、1Kから放射された光束はカップリングレンズ3C、3Kにより平行光束化され、光学部材12C、12Kを通過したのち、副走査方向に配列されたシリンダレンズ5C、5Kによりそれぞれ、副走査方向へ集光され、ポリゴンミラー7に入射して偏向され、それぞれ走査レンズ8C、8K、10C、10Kを透過し、これらレンズの作用により被走査面11C、11Kにビームスポットを形成し、これら被走査面を光走査する。
【0059】
図3は、図2に示す光走査装置を用いた画像形成装置の構成を示す図である。図3において符号20で示す部分が、図2に即して説明した光走査装置の部分である。図3に示すように、ポリゴンミラー7は偏向反射面を4面有し、2段構成となっており上段で偏向される光束のうち一方は、光路折り曲げミラーmM1、mM2、mM3により屈曲された光路により感光体ドラム11Mに導光され、他方の光ビームは、光路折り曲げミラーmC1、mC2、mC3により屈曲された光路により感光体ドラム11Cに導光される。
【0060】
また、ポリゴンミラー7の下段側で偏向される光束のうち一方は、光路折り曲げミラーmYにより屈曲された光路により感光体ドラム11Yに導光され、他方の光ビームは、光路折り曲げミラーmKにより屈曲された光路により感光体ドラム11Kに導光される。
【0061】
従って、4個のレーザ光源1Y、1M、1C、1Kからの光束により、4個の感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kが光走査される。感光体ドラム11Y〜11Kは何れも時計回りに等速回転され、帯電手段をなす帯電ローラTY、TM、TC、TKにより均一帯電され、それぞれ対応する光束の光走査を受けてイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色画像を書込まれ対応する静電潜像(ネガ潜像)を形成される。
【0062】
これら静電潜像はそれぞれ現像装置GY、GM、GC、GKにより反転現像され、感光体ドラム11Y、11M、11C、11K上にそれぞれイエロートナー画像、マゼンタトナー画像、シアントナー画像、黒トナー画像が形成される。
【0063】
これら各色トナー画像は、図示されない「転写シート」上に転写される。即ち、転写シートは搬送ベルト17により搬送され、転写器15Yにより感光体ドラム11Y上からイエロートナー画像を転写され、転写器15M、15C、15Kによりそれぞれ、感光体ドラム11M、11C、11kから、マゼンタトナー画像、シアントナー画像、黒トナー画像を順次に転写される。
【0064】
このようにして転写シート上においてイエロートナー画像〜黒トナー画像が重ね合わせられてカラー画像を合成的に構成する。このカラー画像は定着装置19により転写シート上に定着されてカラー画像が得られる。なお、各感光体ドラム上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト上において重ね合わせてカラー画像となし、このカラー画像を転写シート状に転写して定着しても良い。
【0065】
図3において、ポリゴンミラー7の右側に偏向される光ビームが入射する走査レンズ8Y、8Mは、図において分離して描いてあるが、これらは互いに2段に重ねて一体化してもよい。図3において、ポリゴンミラー7の左側に偏向される光ビームが入射する走査レンズ8C、8Kについても同様である。
【0066】
上に説明した光走査装置・画像形成装置の実施形態において、「光源モジュール」は、レーザ光源と、このレーザ光源からの光ビームを所望のビーム径を持つ平行光ビームもしくは略平行光ビームとするカップリングレンズと、このカップリングレンズによりカップリングされた光ビームの周辺光束領域を遮光して制限するアパーチャと、光ビームの波面の位相を部分的に変化させる位相調整素子とを有する。
【0067】
図1の場合を例として説明すれば、図1の例においては、光源モジュールは、レーザ光源1とカップリングレンズ3と、「アパーチャと位相調整素子とを一体化」した光学部材12とを有することになる。
【0068】
光源モジュールを、図4(a)を参照して説明すると、光源モジュールは、レーザ光源100と、カップリングレンズ110と、アパーチャ121と位相調整素子122とを有する。また、アパーチャ121と位相調整素子122とは、図4(a)に示すように互いに別体としてもよいが、これらを密着一体化してもよい。図1を参照して説明した実施の形態においては、光学部材12を構成するアパーチャと位相調整素子とが互いに密着一体化されている。
【0069】
アパーチャ121と位相調整素子122との「光ビーム光路上の配置の順序」は入れ替えても良い。アパーチャ121と位相調整素子122とを別々に設ける場合も、互いに一体化する場合も、位相調整素子は光偏向手段よりも光源側に設置するのがよく、どちらもカップリングレンズ3とシリンダレンズ5の間に設置するのが好ましい。
【0070】
図4(b)は「アパーチャを光軸方向から見た状態」である。アパーチャ121は、遮光領域の中央部に矩形の開口を有し、この開口の部分で光ビームを通過させ、遮光領域で光束周辺領域の遮光を行う。図4(c)は位相調整素子122を示す図であり、左図は光路方向から見た状態、右図は断面形状である。位相調整素子122は、この例では透明な平行平板状であって、その片面に、透過する光ビームの波面の位相を調整するための「断面矩形状の主走査方向に長い突起」が2本平行に形成されている。
【0071】
なお、図4(c)の右図は説明図であり、突起の高さは実際よりも大きく描いてある。実際の突起の高さは波長オーダである。なお、均一な屈折率を持つ平行平板の面に上記の如き突起を形成するのに変えて、平行平板に上記突起に相当する屈折率分布を形成することにより位相調整を行うようにすることもできる。
【0072】
図4には、簡単のため、2段階の位相調整部(突起の無い部分とある部分における平行平板の厚さの差が2段階である。)で、かつ「副走査方向にのみ位相分布(波面の位相を調整するための位相調整部の分布)を設けた構造」になっているが、これに限定されるものではなく、主走査方向にも位相分布を持つ形状(例えば円形や矩形等)の位相分布を設けてもよいし、3段階以上の多段階の位相調整部を用いてもよい。
【0073】
このような位相分布を適切に設計することで「アパーチャにおける開口部を拡大しつつ、ビーム径痩せや深度余裕の狭小化を軽減もしくは防止」することができる。
【0074】
以下、位相調整素子による位相調整作用をシミュレーションの結果に基づき説明する。
【0075】
シミュレーション:1
アパーチャと位相調整素子の作用を、図5(a)のようにモデル化した。
図5(a)に示すように、光学部材120に対して、図の左方から「均一光強度の平面波」を入射させるように条件を設定し、光学部材120の右方:50mmの位置に、焦点距離:50mmの理想の、即ち、無収差の凸レンズ130を配置するように条件を設定した。
【0076】
光学部材120は、図5(b)の右図に示すように、アパーチャ120Aと位相調整素子120Bとを密着一体化させたものを想定した。
【0077】
この条件では、入射光はアパーチャ120Aと位相調整素子120Bを介して、凸レンズ130の像側焦点面を像面として結像する。光学部材120の射出側面は、凸レンズ130の前側焦点位置に位置させている。
図5(b)に示すように、アパーチャ120Aは「矩形状の開口部」を有するが、開口部の開口幅は、主走査方向:0.93mmに対し副走査方向:1.57mmとし、位相調整素子120Bは「副走査方向にのみ位相分布を有するもの」とし、アパーチャ120Aの開口部の副走査方向における最周辺部に幅:80μmの「主走査方向に平行な溝」を刻設し、その少し内側に幅:70μmの「主走査方向に平行な溝」を刻設している。溝の深さは、使用波長に対して「位相:π」となるように設定している。これらの溝の各寸法は、図5(b)に示すとおりである。
【0078】
まず「比較例」として、位相調整素子120Bを用いないときのシミュレーションの結果を図6に示す。このときのアパーチャ120Aの開口幅は主走査方向:0.93mm、副走査方向:0.93mmとしている。
【0079】
図6(a)は、凸レンズ130の像側焦点位置において「ビームプロファイルの強度がピークを取るところで切断した主走査断面、及び、副走査断面におけるプロファイル」の図であり、強度:1に規格化してある。図の如く、破線のカーブは主走査断面、実線のカーブは副走査断面である。主走査断面、副走査断面のプロファイルは略重なっている。これは、入射光が均一な光強度を有し、アパーチャ120Aが正方形形状の開口を有し、凸レンズ130が軸対称レンズであることから当然の結果である。
【0080】
図6(b)に示すのは、デフォーカスに対するビームスポット径(ピーク強度に対して1/e2となるときの径で定義される。)の変化を示す図である。この図から、深度余裕は±3mm程度であることが分る。
【0081】
次に、図5(b)に示す光学部材120を用いたときのシミュレーションの結果を、図7に示す。図7(a)は、凸レンズ130の像側焦点位置において「ビームプロファイルの強度がピークを取るところで切断した主走査断面、及び、副走査断面におけるプロファイル」の図であり、強度:1に規格化してある。主走査断面のプロファイルを破線、副走査断面のプロファイルを実線で示している。
図7(b)は、デフォーカスに対するビームスポット径の変化を示す図である。
【0082】
図6(a)、(b)と図7(a)、(b)とを比較すると、凸レンズ130の焦点位置においては、ともに実質的に等しいビームスポット径が得られ、また、深度余裕も同程度である。
【0083】
しかしながら、位相調整素子120Bを用いる場合は、アパーチャ120Aの開口は、副走査方向において、比較例における0.93mmから1.57mmに拡大している。即ち、比較例における0.93mmは「副走査方向における規格開口径」であり、アパーチャ120Aの開口径は「副走査方向において規格開口径よりも0.64mmだけ拡張」されている。即ち、規格開口径の副走査方向における両側に、幅:0.32mmの補助開口部が形成されているのである。
【0084】
このようにアパーチャの開口径が副走査方向に0.64mm拡張したことにより、補助開口部を通過する光ビームの光量もビームスポットに集光されるので、光学部材120を用いることにより、メインローブの積分強度(ビームスポットの実質的な光強度)が14%増加している。
【0085】
即ち、アパーチャ120Aの開口径を規格開口径より増大させて、ビームスポットの光強度を増大させることができ、なおかつ、位相調整素子120Bを用いて波面の位相を調整することにより「比較例におけると実質的に同じビームスポット径・深度余裕」が得られている。
【0086】
上のシミュレーション例では、位相調整素子の位相分布を「0位相とπ位相の2値」で構成しているため、図7(b)に示すように、デフォーカス:0(凸レンズ130の焦点位置)に対して「+デフォーカスと−デフォーカスで対称なビームスポット径」が得られており良好である。
【0087】
上のシミュレーション例では、アパーチャ120Aと位相調整素子120Bを一体化している。これらを別々に設けてもよいが「アパーチャと位相調整素子の相対位置は高精度で合わせる必要がある」ことを考慮すると、これらを一体化することが好ましい。
【0088】
位相調整素子は、上の例のように「周期構造を持たない位相分布」にするのがよい。位相分布が周期構造を持つと、光ビームが回折して分岐してしまったり、高次のサイドローブピーク強度が増大したりして「メインローブの積分強度を増大させる」ことが阻まれる恐れがあり、また、光走査により形成される画像に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0089】
ところで、位相調整素子を用いて位相調整を行う場合に、素子の中央部の位相を基準に考えると「中央に近いところに位相分布を与える(即ち、位相調整を行う)と、高次のサイドローブピーク強度が増大し易く」なり、ビームスポットにおける「メインローブの積分強度」を増大させることが難しくなり、ビームスポットの実効的な光強度を増大できない。
【0090】
上のシミュレーション例のように、位相調整素子における位相分布を「アパーチャの開口部の周辺部近傍に設ける」ことにより、ビームスポットのビームプロファイルにおける高次のサイドローブピーク強度の増大を抑制しつつ、メインローブの積分強度を増大させることができる。
【0091】
具体的には、位相調整素子の「中央の位相を基準にしたときの位相分布」は、位相調整素子の「中央から開口部の周辺部までの長さ」を100%としたとき、少なくとも50%よりも外側に設けるのがよく、より望ましくは70%よりも外側に設けるのが良い。なお、上記のシミュレーション例では「位相調整素子の中央からアパーチャ開口部の周辺部までの長さの72%より外側」に位相分布が設けられ、上記の如く特性良好である。
【0092】
また、位相調整素子は、上記シミュレーション例のように、その中心(アパーチャの開口の中心に合致する。)を通る線に対して線対称な位相分布を設定するのが良い。最も好ましい「位相分布の中心を通り、且つ、主走査方向、副走査方向に平行な2つの線」に対して線対称な位相分布を設定するのが良い。このようにすることにより「ビームプロファイルの強度分布に偏りが発生する」のを抑制でき良好な深度余裕を確保できる。
【0093】
位相調整素子を設けると、その両面でのフレネルロスにより光利用効率が低下する。フレネルロスを回避し、効果的に光利用効率を向上させるためには、位相調整素子の少なくとも1面、望ましくは両面に反射防止機能を付与するのが望ましい。反射防止機能は、反射防止膜コートや、波長以下の微細な凹凸形状を与えることにより実現できる。
【0094】
上のシミュレーション例においては、図7(a)に示すビームプロファイルにおいて、主走査方向のメインローブの外側のグラフ外の部分に「少し強度の強い高次サイドローブ光」が発生している。図7(a)のビームプロファイルでも、多くの場合、問題にならないが、以下のシミュレーション:2のようにすることで「高次のサイドローブ光強度を低減する」ことができる。
【0095】
シミュレーション:2
図8に光学部材の別の例を示す。この光学部材はアパーチャ120Cと位相調整素子120Dを一体化したものである。アパーチャ120Cにおいて通常用いられる開口(規格開口径を持つ開口、図の中央の開口)の副走査方向における両周辺にそれぞれ、更に「3つの開口」を設けており、これらの3対の開口に合わせた位置で、位相調整素子120Dに「主走査方向に長い溝」が刻設されている。溝の深さは「使用波長に対して位相差:πを与える大きさ」に設定している。溝・開口の各寸法は図8に示す如くにである。
【0096】
シミュレーションの条件は、図5に即して説明したものと同じである。
即ち、アパーチャ120Cに対して光源側から「均一光強度の平面波」が入射し、位相調整素子120Dから50mmの位置に、焦点距離:50mmの理想の凸レンズが配置される条件である。
【0097】
シミュレーション結果を図9に示す。
図9(a)は、凸レンズの焦点位置において「ビームプロファイルの強度がピークを取る位置」で切断した主走査断面、及び、副走査断面のプロファイルの図であり、強度:1は規格化している。図9(b)は「デフォーカスに対するビームスポット径の変化」を示す図である。
前述の「比較例」のシミュレーション結果を示す図6(a)、(b)と、図9(a)、(b)とを比較すると、シミュレーション2の結果は、ビームスポット径・深度余裕に対して、比較例と実質的に等しい。しかしながら一方においてシミュレーション2においては、アパーチャ120Cにおける規格開口径の副走査方向における各側に3つの開口を補助開口部として形成したことにより、アパーチャの開口幅を、副走査方向において、比較例の0.93mmから2.23mm(図8における最も周辺部の開口間の幅)まで拡大でき、メインローブ光の積分強度は従来例と比較して19%増大できている。
【0098】
また、図8の光学部材を用いたシミュレーション:2では、図6の光学部材を用いたシミュレーション:1の場合に比して、ビームプロファイルにおける高次のサイドローブピーク強度(図9(a)のグラフの外側において)が更に小さく抑えられている。
【0099】
このように、アパーチャ中央の規格開口径を持つ開口部の周辺に、更に補助開口部を独立した開口として追加して設け、追加して設けた少なくとも1対の開口部の位相を、アパーチャ中央の開口部における位相と異ならせることで、ビームスポット径を細くしすぎることなく、規格開口径の開口のみの場合と同等の深度余裕を維持しつつ、光利用効率を向上されることができ、さらに高次のサイドローブ光の発生も低く抑えることができる。
【0100】
上には、補助開口部を副走査方向にのみ追加して設ける例を示したが、これに限らず、主走査方向にも補助開口部を追加して設けても良い。また、中央の開口部を取り囲むようにして設けても良い。開口部の形状として矩形の場合を説明したが、楕円形状や、それに近い形状とすることもできる。また、追加して設ける補助開口部の位相は、中央の開口部に対して位相差:πに設定したが(0位相とπ位相の2段階の位相のみを用いたが)、これに限らず、3段階以上に位相を段階化して設けても良い。
【0101】
また前述の如く、アパーチャと位相調整素子は分離することも可能である。図8に示した位相調整素子120Dの「位相分布を構成する溝」は中央の「規格開口径をもつ開口」の両側に3溝ずつ形成されているが、図8に記載した寸法からも分るように、溝(位相が異なる部分)の幅や間隔に周期性はない。
【0102】
シミュレーション2では、アパーチャ中央の開口部の周辺に、開口部を補助開口部として追加して設ける際、追加して設ける開口部のうち「少なくとも1つの開口部における平均位相」を、中央の開口部の平均位相と異ならせている。このようにすることにより、ビームスポット径を細くしすぎることなく、深度余裕を維持しつつ、光利用効率を向上されることができ、さらに高次のサイドローブ光の発生も低く抑えることができる。
【0103】
以上のシミュレーション:1、2から、アパーチャの開口径を規格開口径よりも拡張しても、位相調整素子による位相調整により、スポット径痩せ・深度余裕の狭小化を有効に軽減もしくは防止できることが分る。
【0104】
上記シミュレーション1、2は「図5のように簡略化したモデル」を用いたものであり、ビームスポットを焦点距離:50mmの「軸対称凸レンズ」で形成する場合である。実際の光走査装置では、アパーチャ以降の光学系の合成焦点距離は、シミュレーションに用いた凸レンズのものとは異なり、また主走査方向と副走査方向でも焦点距離が異なる。
焦点距離が変わると「ビームスポット径」は変わるが、ビームプロファイルは殆んど変化しない。ビームプロファイルを変化させることなく、ビームスポット径のみを変化させるには「アパーチャの開口径(補助開口部を含めた開口径)と位相調整素子の位相分布」を比例拡大(もしくは比例縮小)すればよい。この場合、主走査方向と副走査方向で焦点距離が違うので、主走査方向と副走査方向で、アパーチャの開口径と位相素子の「比例拡大(もしくは比例縮小)する割合」を異ならせる。
【0105】
上記の如く、簡略化したモデルでのシミュレーション結果を、実際の光走査装置に適用するには、アパーチャの開口径と位相調整素子素子の比例拡大(もしくは比例縮小)し、その割合を主走査方向と副走査方向で異ならせればよい。
【0106】
また、シミュレーション:1、2では入射光を「均一光強度の平面波」としているが、レーザ光源からの光ビームをカップリングしたものは一般に「光強度分布がガウス分布」である。入射光の光強度分布が変化するとビームプロファイルの形状や大きさは変化するが、光走査における一般的な状況では、アパーチャの開口部を透過する光の強度分布は略均一強度とみなすことができる。実際の光走査装置における入射光の光強度分布の「均一光強度からのずれ」は、アパーチャの開口部の形状や、位相調整素子の位相分布の形状を少し修正することで、実際の光走査装置においても簡略化したモデルでのシミュレーション結果と同等な結果を得ることができる。
【0107】
以下、図1に即して説明した光走査装置の数値具体例を示す。
レーザ光源1として、複数の発光部を2次元的に配列された垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)を用いる。図10は、このVCSELにおける発光部(黒丸で示す。)の配列状態を示している。10個の発光部を1行に並べ、これを4行配列して、4×10のアレイ配列としている。
【0108】
副走査方向に隣り合う発光部間は等間隔:Dsとし、主走査方向の光源数をnとして、「主走査方向の同じ行における隣接発光部の副走査方向間隔:d」はd=Ds/nの等間隔とする。主走査方向に隣り合う発光部間は等間隔:Dmとする。具体的にはDsを44μm、Dmを30μmとした。d=4.4μmとなる。なお、発光部間隔:Ds、Dmは、動作時の他の素子からの熱干渉の影響も考慮して決める必要がある。副走査方向での高密度化に影響のない主走査方向の素子間隔を広げているので、各発光部間の熱干渉の影響低減や、各発光部の配線を通すために必要なスペースを確保できる。
【0109】
VSCELは発振波長の温度変動が小さく、波長の不連続な変化(波長飛び)が原理的に発生しないため、環境変化によっても光学特性が劣化しにくい。
【0110】
発振波長は780nmである。
【0111】
カップリングレンズ3、シリンダレンズ5は、ガラス製でも樹脂製でも良い。樹脂製とした場合は温度変化による光学特性の劣化を低減するために回折光学素子としてもよい。
【0112】
レーザ光源1とカップリングレンズ3は、アルミ材質の同一の部材に固定される。
「カップリングレンズ3」
焦点距離:F1=47.7mm
光軸上肉厚:3mm
カップリング機能:レーザ光源からの光束を略平行光にする。
【0113】
カップリングレンズ3はレーザ光源1から46.06mmの位置に設けられる。
【0114】
アパーチャ(光学部材13におけるカップリングレンズ3側に設けられる。カップリングレンズ3との間隔は47.69mmである。)上における入射光ビームのビーム径(1/e2で定義される。):9.58mm×9.58mmの円形
「位相調整素子」は、アパーチャと一体化して、カップリングレンズ3とシリンダレンズ5の間に設置している。
【0115】
「シリンダレンズ5」
焦点距離:F2=107.0mm
シリンダレンズ5は光学部材13における位相調整素子側から12.85mmの位置に配置される。肉厚:3.0mmである。シリンダレンズ5からポリゴンミラー7の偏向反射面への入射位置に至る距離は108.7mmである。
【0116】
「ポリゴンミラー7」
内接円半径:7mm
偏向反射面数:4 。
【0117】
fθレンズを構成する走査レンズ8および10
「走査レンズ8」
光軸上肉厚:13.5mm
「走査レンズ10」
光軸上肉厚:3.5mm 。
【0118】
走査レンズ8は、入射側面(L1R1)が「主走査方向が非円弧形状で副走査方向が円弧である面」、射出側面(L1R2)は「主走査方向が非円弧形状で、副走査方向は曲率:C(Y)が主走査方向に変化する面」である。
【0119】
走査レンズ10は、射出側面(L2R1)が「主走査方向が非円弧形状で、副走査方向は曲率:C(Y)が主走査方向に変化する面」、射出側面(L2R2)が「主走査方向が非円弧形状で副走査方向が円弧である面」である。
【0120】
上記非円弧形状は、
X=(Y2/Rm)/[1+√{1−(1+a00)(Y/Rm)2}]+
+a01・Y+a02・Y2+a03・Y3+a04・Y4+Δ (1)
で表され、上記曲率の変化:C(Y)は、
Cs(Y)={1/Rs(0)}+
+b01・Y+b02・Y2+b03・Y3+Δ (2)
で表される。
【0121】
これらの式(1)、(2)において、Xは走査レンズ8、10の光軸方向の座標、Yは主走査方向座標、Rmは主走査方の近軸曲率半径、a00,a01,a02,・・・は主走査形状の非球面係数である。Rs0は副走査方向の近軸曲率半径を示し、b00,b01,b02・・・は副走査方向の非球面係数である。
【0122】
走査レンズ8は、入射側面L1R1が、ポリゴンミラー7による偏向の起点から46.31mmの位置に設けられ、上記肉厚:13.5mmを有し、走査レンズ10は、入射側面L2R1が、走査レンズ8の射出側面L1R2から89.73mmの位置になるように設けられ、上記肉厚:3.50mmを有する。射出側面L2R2から被走査面までの距離は141.36mmである。
【0123】
また、レーザ光源側から偏向反射面に入射する光ビームの方向と、走査レンズ8、10の光軸のなす角は60度である。
【0124】
走査レンズ8、10の上記各面L1R1、L1R2、L2R1、L2R2に関するデータを表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
結像光学系(レーザ光源1と被走査面11との間にある光学系)全系の横倍率は、副走査方向につき2.18倍であり、走査レンズ8、10(fθレンズ)のみでは−0.97倍である。fθレンズの焦点距離は、主走査方向:237.8mm、副走査方向:71.4mmである。
光走査による書込幅は±161.5mmである。
【0127】
ビームスポット径の狙いは主走査方向で52μm、副走査方向で55μmである。
【0128】
このような光走査装置において、「比較例」として、位相調整素子が「位相調整機能の無い平行平板」であるとし、規格開口径の開口部1つをもつアパーチャを用いる場合、アパーチャの開口は矩形形状で規格開口径は、主走査方向:5.44mm、副走査方向:2.10mmであり、一般的な光走査装置では、このように主走査方向に長い開口形状が用いられる。
【0129】
一方、面発光レーザからは一般に軸対称で「円形のファーフィールドパターン」を持つ光ビームが射出され(本実施例では、遮光部材上で9.58mm×9.58mm)、上記アパーチャを用いる場合、副走査方向において光利用効率が低くなってしまう。
【0130】
このような光利用効率の低下を軽減するには、アパーチャにおいて、主走査方向よりも副走査方向の開口幅を広げ(図8のような開口形状のときは、最周辺の開口間の幅(以下の説明においても同様とする。図11では2.23mm)、そのときの被走査面上でのビームスポット径および深度余裕を一定に保つように「位相素子における位相分布」を設定する。
【0131】
「アパーチャ以降の合成光学系」における主走査方向、副走査方向の近軸焦点距離をそれぞれfm、fsとすると、上記光走査装置ではfm=237.59mm、fs=104.84mmであり、位相調整素子に位相調整機能を持たせないときの主走査方向、及び副走査方向のアパーチャの規格開口幅:dm、dsはそれぞれ、上記のdm=5.44mm、ds=2.10mmである。
このとき、dm/fm=0.023、ds/fs=0.020である。このように、副走査方向の(ds/fs)の方が主走査方向の(dm/fm)よりも若干小さくなるように設定するのが通常である。
この発明の光源モジュールの位相調整素子を用いると、アパーチャの開口幅(図8のような開口の形状のときは、最周辺の開口間の幅。図8では2.23mm)を広くすることができるため、被走査面上でのビームスポット径および深度余裕は比較例と略同一で、dm/fmもしくはds/fsの値が大きくなる。
【0132】
アパーチャの開口形状と、開口へ入射する光ビームの光束断面形状を考えると、アパーチャにおける副走査方向の開口幅を広げる方が光利用効率を効果的に向上できる。そのため、dm/fmの値の増大量よりも、ds/fsの値の増大量の方が大きくなるように設定する。即ち「dm/fm<ds/fsとなるような位相調整素子とアパーチャ」を設けるのが良い。
【0133】
アパーチャの開口幅が、入射光ビームのビーム径に対して大きくなりすぎると、レーザ光源の「発散角ばらつき」の影響で、被走査面上でのビームスポット径にばらつきが発生するので、開口幅を大きくしすぎないようにする。
【0134】
均一強度の光(入射ビーム径:∞の光)がアパーチャの開口部に入射するとき、レンズの焦点位置上に形成されるビームスポット径を1と規格化する。このときの遮光部材は、開口が1つのものを想定しているが、図8のように複数の開口がある場合では、最周辺の開口観の幅を持つ単一の開口と考える。
【0135】
アパーチャ上において、開口径に対する入射光ビーム径の比(以下、比:Aと呼ぶ)を変化させたとき、レンズの焦点位置上におけるビームスポット径(以下「規格化ビームスポット径」と呼ぶ)の変化をシミュレーションした結果を図11に示す(■で示す。)。
【0136】
また、アパーチャ通過前のビーム光量に対する、アパーチャ通過後のビーム光量の比を「アパーチャ透過率」と呼び、アパーチャ径に対する入射ビーム径の比:Aを変化させたときのアパーチャ透過率の変化を図11に合わせて示す(○で示す)。
【0137】
図11に示されているように、比:Aが1より小さくなると、規格化ビームスポット径の変化の傾きが急峻になる。この状態は「レーザ光源での発散角のばらつきにより、アパーチャへの入射光ビーム径がばらつくと、レンズで結像したときの焦点位置でのビームスポット径が大きくばらつく」ことを示している。レンズの焦点位置でのビームスポット径のばらつきは、画像形成装置に適用した際には、出力画像の劣化を引起してしまう。
【0138】
従って、比:Aが1以上になるように、アパーチャの開口幅と入射ビーム径を設定するのが良い。
【0139】
前述のように、通常の光走査装置では、遮光部材における光利用効率は、主走査方向よりも副走査方向の方が悪い。そのため、位相調整素子は、副走査方向にのみ位相分布を有するように位相分布を設定するのがよい。このとき、開口の形状を矩形形状とすると、副走査方向の深度余裕、およびビームスポット径を、主走査方向とは独立して制御することができ好ましい。
【0140】
このようにこの発明の光源モジュールを有する光走査装置を用いることにより、像担持体上におけるビームポット径および深度余裕を「ほぼ所望の大きさ」に保ちながら、感光体に到達する光量を増大でき、高速の光走査を実現でき、高品位な出力画像を高速に提供できる。
上に具体的な数値を示して説明した光走査装置は、図1に光学配置を示したものであるが、これを図2、図3のように組合せてカラー画像形成を行う画像形成装置とすることができることは言うまでも無い。勿論、単色の画像を形成する画像形成形成装置を構成できることはいうまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】光走査装置を説明するための図である。
【図2】タンデム方式の光走査装置を説明するための図である。
【図3】図2の光走査装置を用いるタンデム式の画像形成装置を説明するための図である。
【図4】光モジュールの構成を説明するための図である。
【図5】光モジュールにおける位相調整の効果を説明するためのシミュレーションを説明するための図である。
【図6】位相調整を行わないときの設計上のビームスポットのビームプロファイルと深度余裕を示す図である。
【図7】アパーチャの開口径を拡張し、位相調整素子により位相調整を行ったときのビームプロファイルと深度余裕を示す図である。
【図8】別のシミュレーションに用いたアパーチャと位相調整素子を説明するための図である。
【図9】図8のアパーチャと位相調整素子によるシミュレーション結果であるビームプロファイルと深度余裕を説明するための図である。
【図10】レーザ光源としてのVCSELの1例を示す図である。
【図11】請求項9の発明を説明するための図である。
【符号の説明】
【0142】
100 レーザ光源
110 カップリングレンズ
121 アパーチャ
122 位相調整素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源からの光ビームを偏向手段により偏向させ、結像光学系により被走査面上にビームスポットとして集光させ、上記被走査面を光走査する光走査装置において用いられる光源モジュールであって、
レーザ光源と、このレーザ光源からの光ビームを所望のビーム径を持つ平行光ビームもしくは略平行光ビームとするカップリングレンズと、このカップリングレンズによりカップリングされた上記光ビームの周辺光束領域を遮光して制限するアパーチャと、上記光ビームの波面の位相を部分的に変化させる位相調整素子とを有し、
結像光学系により上記被走査面上に形成されるビームスポットが、深度余裕およびビームスポット径の設計値を与えるときの上記アパーチャの開口径を規格開口径とするとき、
上記アパーチャの、主走査方向および副走査方向の開口径のうち少なくとも一方において、規格開口径の外側に、光ビームを通過させる補助開口部が形成され、
上記位相調整素子は平行平板状であって、上記アパーチャに補助開口部を設けたことによるビームスポット径と深度余裕の減少を補償するように、少なくとも光ビーム周辺部における波面の位相を変化させるものであることを特徴とする光源モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の光源モジュールにおいて、
レーザ光源として、1以上の発光源を有する面発光型半導体レーザを用いることを特徴とする光源モジュール。
【請求項3】
請求項1または2記載の光源モジュールにおいて、
位相調整素子が、アパーチャの中心に対して対称性を有することを特徴とする光源モジュール。
【請求項4】
請求項1〜3の任意の1に記載の光源モジュールにおいて、
アパーチャの補助開口部が、主走査方向および副走査方向の開口径のうち少なくとも一方において、開口を規格開口径の外側に拡張して形成されていることを特徴とする光源モジュール。
【請求項5】
請求項1〜3の任意の1に記載の光源モジュールにおいて、
アパーチャの補助開口部が、主走査方向および副走査方向の開口径のうち少なくとも一方において、規格開口径の外側に、主たる開口部とは独立した1対以上の開口として形成され、
位相調整素子が、上記補助開口部に対応する部分で位相を変化させることを特徴とする光源モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の光源モジュールにおいて、
主たる開口と独立して形成された補助開口部の開口の少なくとも1対における平均位相と、上記主たる開口部における平均位相とが異なるように、位相調整素子による位相調整が行われることを特徴とする光源モジュール。
【請求項7】
請求項1〜6の任意の1に記載の光源モジュールにおいて、
位相調整素子が、入射側もしくは射出側の少なくとも1面に反射防止機能を有することを特徴とする光源モジュール。
【請求項8】
1以上のレーザ光源からの光ビームを偏向手段により偏向させ、1以上の結像光学系により、1以上の被走査面上にビームスポットとして集光させ、上記1以上の被走査面を光走査する光走査装置において、
1以上の光源モジュールとして、請求項1〜7の任意の1に記載のものを用いることを特徴とする光走査装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光走査装置において、
光源モジュールにおけるレーザ光源を、1以上の発光源を有する面発光型半導体レーザとし、
上記光源モジュールにおけるアパーチャの、補助開口部を含む開口の、主走査方向の幅:dm、副走査方向の幅:ds、アパーチャ以降の合成光学系における、主走査方向の焦点距離:fm、副走査方向の主点距離:fsが、条件:
dm/fm<ds/fs
を満足することを特徴とする光走査装置。
【請求項10】
請求項8または9記載の光走査装置において、
位相調整素子が、副走査方向のみに位相を調整する機能を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項11】
光走査装置により像担持体上に静電潜像を形成し、この静電潜像をトナー画像として可視化して画像形成を行う画像形成装置であって、
光走査装置として、請求項8〜10の任意の1に記載のものを用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
光走査により1以上の像担持体上に2以上の静電潜像を形成し、これらの静電潜像を異なる色のトナーで可視化し、得られる各色トナー画像を重ね合わせることによりカラー画像を形成する画像形成装置であって、
請求項1〜7の任意の1に記載の光源モジュールを、光走査により静電線像を形成する像担持体の数と同数用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
レーザ光源からの光ビームを偏向手段により偏向させ、結像光学系により被走査面上にビームスポットとして集光させ、上記被走査面を光走査する光走査装置において用いられる光源モジュールであって、
レーザ光源と、このレーザ光源からの光ビームを所望のビーム径を持つ平行光ビームもしくは略平行光ビームとするカップリングレンズと、このカップリングレンズによりカップリングされた上記光ビームの周辺光束領域を遮光して制限するアパーチャと、上記光ビームの波面の位相を部分的に変化させる位相調整素子とを有し、
結像光学系により上記被走査面上に形成されるビームスポットが、深度余裕およびビームスポット径の設計値を与えるときの上記アパーチャの開口径を規格開口径とするとき、
上記アパーチャの、主走査方向および副走査方向の開口径のうち少なくとも一方において、規格開口径の外側に、光ビームを通過させる補助開口部が形成され、
上記位相調整素子は平行平板状であって、上記アパーチャに補助開口部を設けたことによるビームスポット径と深度余裕の減少を補償するように、少なくとも光ビーム周辺部における波面の位相を変化させるものであることを特徴とする光源モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の光源モジュールにおいて、
レーザ光源として、1以上の発光源を有する面発光型半導体レーザを用いることを特徴とする光源モジュール。
【請求項3】
請求項1または2記載の光源モジュールにおいて、
位相調整素子が、アパーチャの中心に対して対称性を有することを特徴とする光源モジュール。
【請求項4】
請求項1〜3の任意の1に記載の光源モジュールにおいて、
アパーチャの補助開口部が、主走査方向および副走査方向の開口径のうち少なくとも一方において、開口を規格開口径の外側に拡張して形成されていることを特徴とする光源モジュール。
【請求項5】
請求項1〜3の任意の1に記載の光源モジュールにおいて、
アパーチャの補助開口部が、主走査方向および副走査方向の開口径のうち少なくとも一方において、規格開口径の外側に、主たる開口部とは独立した1対以上の開口として形成され、
位相調整素子が、上記補助開口部に対応する部分で位相を変化させることを特徴とする光源モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の光源モジュールにおいて、
主たる開口と独立して形成された補助開口部の開口の少なくとも1対における平均位相と、上記主たる開口部における平均位相とが異なるように、位相調整素子による位相調整が行われることを特徴とする光源モジュール。
【請求項7】
請求項1〜6の任意の1に記載の光源モジュールにおいて、
位相調整素子が、入射側もしくは射出側の少なくとも1面に反射防止機能を有することを特徴とする光源モジュール。
【請求項8】
1以上のレーザ光源からの光ビームを偏向手段により偏向させ、1以上の結像光学系により、1以上の被走査面上にビームスポットとして集光させ、上記1以上の被走査面を光走査する光走査装置において、
1以上の光源モジュールとして、請求項1〜7の任意の1に記載のものを用いることを特徴とする光走査装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光走査装置において、
光源モジュールにおけるレーザ光源を、1以上の発光源を有する面発光型半導体レーザとし、
上記光源モジュールにおけるアパーチャの、補助開口部を含む開口の、主走査方向の幅:dm、副走査方向の幅:ds、アパーチャ以降の合成光学系における、主走査方向の焦点距離:fm、副走査方向の主点距離:fsが、条件:
dm/fm<ds/fs
を満足することを特徴とする光走査装置。
【請求項10】
請求項8または9記載の光走査装置において、
位相調整素子が、副走査方向のみに位相を調整する機能を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項11】
光走査装置により像担持体上に静電潜像を形成し、この静電潜像をトナー画像として可視化して画像形成を行う画像形成装置であって、
光走査装置として、請求項8〜10の任意の1に記載のものを用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
光走査により1以上の像担持体上に2以上の静電潜像を形成し、これらの静電潜像を異なる色のトナーで可視化し、得られる各色トナー画像を重ね合わせることによりカラー画像を形成する画像形成装置であって、
請求項1〜7の任意の1に記載の光源モジュールを、光走査により静電線像を形成する像担持体の数と同数用いることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−69508(P2009−69508A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238210(P2007−238210)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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