説明

光源装置

【課題】簡易な構成で、可干渉距離が短く連続光を発生させることができる光源装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る光源装置は、赤外波長域の連続光である第1のレーザー光を発生する第1のレーザー媒質1aと、第1のレーザー光と略同一波長の連続光である第2のレーザー光を発生する第2のレーザー媒質1bと、第1のレーザー光の第2高調波を発生する第2高調波発生用非線形光学結晶2と、第2高調波と第2レーザー光とを和周波混合し、出力10mW以上、可干渉距離1m以下の連続出力光を発生させる和周波混合用非線形光学結晶3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置に関し、特に連続的に発振できる紫外光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微細化が進む半導体露光用フォトマスク原板の製造過程では、原板内の微小な欠陥を測定することが必要である。その測定には、連続出力の光を被測定対象物に照射して、その散乱等による強度変化を捉える検査装置がよく利用されている。照射用の光源としては、可視ないし紫外の横シングルモードレーザーが用いられる。その出力は、最低でも10mWが必要である。
【0003】
レーザー光は一般に単色で干渉性が高いため、被測定対象物からの反射光と検査装置内に用いられる光学部材からの反射光が干渉を起こし、測定に支障となることがある。このため、半導体検査用の光源としては、干渉効果が強い単一周波数のレーザーではなく、光学系の色収差が問題にならない範囲で可干渉距離の短い光源が適する。
【0004】
発明者等は、このような検査に適したレーザー光源の可干渉距離は1m以下(光帯域300MHz以上)であることを見出した。このような条件を満たすレーザー光源としては、古くからある波長515nm、488nm、351nm等で発振するアルゴンイオンレーザーが知られている。また、近年では、Ndイオンを添加した固体レーザーの共振器内波長変換による第2高調波(532nm)等がある。
【0005】
このうち、アルゴンイオンレーザーは、低効率で大電力を必要とする上、装置の寿命が短く、頻繁な交換や調整作業が必要になるという課題を抱えている。このため、24時間可動を前提とする半導体製造工場等では、固体レーザーの利用が望まれている。
【0006】
そのような背景から、515nm、488nmのアルゴンイオンレーザーは、多少波長が長くとも532nmの固体レーザーへの置換が進んでいる。なお、最近では、波長370nm〜450nm帯の半導体レーザーも高出力化が進んでいるが、横シングルモードでの出力は不十分である。
【0007】
一方、波長351nmのアルゴンレーザーは、数100mWという半導体検査に必要な出力が得られ、532nm、488nm等のレーザーよりも単波長であるために検査性能の向上が可能である。しかしながら、波長351nmのアルゴンレーザーは、515nm、488nmに比してさらに発振効率が低く、保守性も悪い。このため、今後は、351nmのアルゴンイオンレーザーの固体レーザーによる置換が期待されている。
【0008】
波長351nm付近で発振する実用的な固体レーザーは存在しないが、1μm帯で発振する固体レーザーの第3高調波がこの波長域に対応する。例えば、波長1064nmのNd:YAGレーザーの第3高調波は、355nmである。その変換は、図7に示すように、パルスレーザー装置11から出射される1064nm光が第2高調波発生用非線形光学結晶12により532nm光に変換され、和周波混合用非線形光学結晶13で1064nm光と532nm光の和周波発生により355nmの波長の光が取り出される2段階の変換過程が必要となる。
【0009】
Qスイッチ等のピーク強度が高いパルスレーザー装置11では、図7のようにレーザー共振器の外部に2つの非線形光学結晶を配した外部変換方式でも、1064nmから355nmの変換効率は20%〜30%が比較的容易に得られる。しかしながら、連続出力のレーザー光はそのまま非線形光学結晶内で集光しても強度が低いため、図7の外部変換方式では初段の第2高調波ですら十分な変換効率を得ることが難しい。
【0010】
近年は、図8のように、2枚の高反射ミラー14a、14bで構成されるレーザー共振器の内部に2つの非線形光学結晶を配置した共振器内変換方式によるさらに変換効率の高い光源が構築されている。波長355nmの光は、出力ミラー15により外部に取り出される。このような方式による波長355nmの紫外パルス光源は、近年では主に材料加工用として数多く市販されている。
【0011】
しかし、共振器内変換方式でも連続出力の場合は十分な効率を得ることは困難である。これは、共振器内に設置された第2高調波発生用結晶により532nmは高い変換効率が得られるものの、1064nmに対する損失要因となって、共振器内の1064nm強度が極端に下がってしまう。このため、355nmへの和周波混合の効率を高めることは困難だからである。このような事情から、連続出力の第3高調波発生はいずれの方式の報告例も少なく、市販品も低出力なものに止まっている。
【0012】
高出力な連続出力355nmの発生方法として、例えば、特許文献1に示された2重共振法というものがある。これは、干渉作用により光強度が増強される共振器内に、非線形光学結晶を配置する外部共振器変換法の一種である。例えば、2台の単一周波数レーザー装置から発生する波長1064nm、532nmのレーザー光を、外部共振器で同時に共振させて、高い和周波混合効率を実現するものである。しかしながら、この方法では、単一周波数の355nmの光しか得ることができない。
【0013】
特許文献2では、単一周波数のレーザー光と縦マルチモードのレーザー光の両方に対して独立した外部共振器が構成されている。例えば、1064nmと266nmのレーザー光から213nmの光を発生させる構成が提案されている。しかし、1つの非線形光学結晶を共有する独立した2つの外部共振器を設けるため、構成が複雑である。また、縦マルチモード用の外部共振器長は、入射するレーザー共振器の2n(nは整数)倍というきわめて特殊な条件に制御する必要があり、安定した動作は困難である。
【0014】
また、特許文献3には、単一周波数の紫外光を外部共振器にて共振させ、赤外レーザー光との和周波混合により、波長200nm付近の単波長光を得る方法が示されている。紫外光は低出力のため、単一周波数の紫外光を外部共振器によって増強する構成である。しかし、光子エネルギーの高い紫外光を共振させる外部共振器は、その公正部品が光損傷を被る懸念が高い。
【0015】
また、近年では、連続出力の光に対しても高い変換効率が得られる分極反転型の波長変換素子の開発が進んでおり、波長340nm付近の光を発生を得た報告例もある(非特許文献1)。しかしながら、現状で分極反転できるLiNbOやLiTaO結晶等の波長350nm近傍での透過率は十分でないために、半導体検査に必要な数100mWの出力を安定に得ることは現状困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平8−194240号公報
【特許文献2】特許第4065880号公報
【特許文献3】特開2004−55695号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】応用物理学会学術講演会講演予稿集、Vol.57、No.3(19960907)、p.941
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、以上のように見出だされた技術課題を克服するべくなされたものであり、簡易な構成で、可干渉距離が短い連続光を出力できる光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様に係る光源装置は、赤外波長域の連続光である第1のレーザー光を発生する第1のレーザー装置と、前記第1のレーザー光と略同一波長の連続光である第2のレーザー光を発生する第2のレーザー装置と、前記第1のレーザー光の第2高調波を発生する第1の非線形光学結晶と、前記第2高調波と前記第2レーザー光とを和周波混合し、出力10mW以上、可干渉距離1m以下の連続出力光を発生させる第2の非線形光学結晶とを備えるものである。これにより、簡易な構成で、可干渉距離が短い連続光を発生させることができる。
【0020】
本発明の第2の態様に係る光源装置は、上記の光源装置において、前記第1のレーザー光又は前記第2のレーザー光の少なくともいずれか一方は、単一周波数でないことを特徴とするものである。これにより、可干渉距離が短い、連続出力光を発生させることができる。
【0021】
本発明の第3の態様に係る光源装置は、上記の光源装置において、前記第1のレーザー装置及び前記第2のレーザー装置の波長は、1030〜1080nmであることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の第4の態様に係る光源装置は、上記の光源装置において、前記第1のレーザー光を共振させる第1のレーザー共振器を備え、前記第1の非線形光学結晶は、前記第1のレーザー共振器の内部に配置されることを特徴とするものである。これにより、変換効率を向上させることができる。
【0023】
本発明の第5の態様に係る光源装置は、上記の光源装置において、前記第2のレーザー光を共振させる第2のレーザー共振器を備え、前記第2の非線形結晶は、前記第2のレーザー共振器の内部に配置されることを特徴とするものである。これにより、変換効率を向上させることができる。
【0024】
本発明の第6の態様に係る光源装置は、上記の光源装置において、前記第2のレーザー共振器は、少なくとも3枚の光学鏡を含むことを特徴とするものである。これにより、変換効率を向上させることができる。
【0025】
本発明の第7の態様に係る光源装置は、上記の光源装置において、前記第1の非線形光学結晶は、擬似位相整合型結晶であることを特徴とするものである。これにより、変換効率を向上させることができる。
【0026】
本発明の第8の態様に係る光源装置は、上記の光源装置において、前記第2の非線形光学結晶に対し、入射する2つの光の偏光方向が直交していることを特徴とするものである。これにより、光損失を低減することができる。
【0027】
本発明の第9の態様に係る光源装置は、上記の光源装置において、前記第1のレーザー装置の媒質は1064nm付近で発光するネオジウム又はイッテイビウム添加の固体状媒質であり、前記第2のレーザー装置の媒質は1030nm付近で発光するネオジウム又はイッテイビウム添加の固体状媒質であり、前記連続出力光の波長は、351nm付近であることを特徴とするものである。
【0028】
本発明の第10の態様に係る光源装置は、上記の光源装置において、前記第1のレーザー媒質は、1047nm付近で発光するネオジウム又はイッテリビウム添加の固体状媒質であり、前記第2のレーザー装置の媒質は1064nm付近で発光するネオジウム又はイッテリビウム添加の固体状媒質であり、前記連続出力光の波長は、351nm付近であることを特徴とするものである。
【0029】
本発明の第11の態様に係る光源装置は、上記の光源装置において、前記第1のレーザー媒質及び前記第2のレーザー装置は、1053nm付近で発光するネオジウム又はイッテリビウム添加の固体状媒質であり、前記連続出力光の波長は、351nm付近であることを特徴とするものである。
【0030】
本発明の第12の態様に係る光源装置は、上記の光源装置において、前記第1のレーザー装置及び前記第2のレーザー装置は、イッテリビウムを添加した光ファイバー形状であることを特徴とするものである。これにより、検査装置等への搭載が容易となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、マスク検査等に利用できる連続発振の紫外光源を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態1に係る光源装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態2に係る光源装置の構成を示す図である。
【図3】実施の形態3に係る光源装置の構成を示す図である。
【図4】実施の形態4に係る光源装置の構成を示す図である。
【図5】実施の形態5に係る光源装置の構成を示す図である。
【図6】波長351nmの連続光を発生させるための第1のファイバーレーザー、第2のファイバーレーザーの組み合わせの例を示す表である。
【図7】従来の光源装置の構成を示す図である。
【図8】従来の光源装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0034】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る光源装置の構成を、図1を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係る光源装置の構成を示す図である。図1に示すように、光源装置は、第1のレーザー媒質1a、第2のレーザー媒質1b、第2高調波発生用非線形光学結晶2、和周波混合用非線形光学結晶3、高反射ミラー4a、4b、4c、4d、ダイクロイックミラー5、6、7を備えている。
【0035】
第1のレーザー媒質1a、第2のレーザー媒質1bは、Nd:YAGロッド等の固体レーザー媒質である。これらは、外部から照射される半導体レーザー光等で励起され、波長1064nm付近の赤外波長域の略同一波長のレーザー光を出射するレーザー装置の一部である。
【0036】
2枚の高反射ミラー4a、4bは、第1のレーザー媒質1a、ダイクロイックミラー5、第2高調波発生用非線形光学結晶2を挟んで、対向して配置されている。高反射ミラー4a、4bは、第1のレーザー媒質1aからの第1のレーザー光を共振させる第1の共振器を構成している。すなわち、第2高調波発生用非線形光学結晶2は、第1の共振器内に配置されている。第1のレーザー媒質1aからの第1のレーザー光の強度は、高反射ミラー4a、4bにより高められる。
【0037】
第1の共振器内には、第2高調波発生用非線形光学結晶2が配置されている。第2高調波発生用非線形光学結晶2は、入射する第1のレーザー媒質1aからの第1のレーザー光の第2高調波を発生する。本例では、第2高調波発生用非線形光学結晶2は、1064nmのレーザー光から532nmの可視光を発生させる。
【0038】
2枚の高反射ミラー4c、4dは、第2のレーザー媒質1b、ダイクロイックミラー6、和周波混合用非線形光学結晶3、ダイクロイックミラー7を挟んで、対向して配置されている。高反射ミラー4c、4dは、第2のレーザー媒質1bからの第2のレーザー光を共振させる第2の共振器を構成している。すなわち、和周波混合用非線形光学結晶3は、第2の共振器内に配置されている。第2のレーザー媒質1bからの第2のレーザー光の強度は、高反射ミラー4c、4dにより高められる。
【0039】
ダイクロイックミラー5、6は、1064nmの光を透過し、532nmの光を反射する。第2高調波発生用非線形光学結晶2で発生した532nmの光は、ダイクロイックミラー5で反射され第1の共振器外に導かれる。そして、ダイクロイックミラー5で反射された光は、第2の共振器内に配置されたダイクロイックミラー6により反射され、第2の共振器の光軸と同軸になって、和周波混合用非線形光学結晶3に入射する。
【0040】
和周波混合用非線形光学結晶3は、入射する1064nm及び532nmの光から355nmの紫外光を発生させる。ダイクロイックミラー7は、1064nmの光を透過し、355nmの光を反射する。和周波混合用非線形光学結晶3により発生した355nmの光は、ダイクロイックミラー7により反射され、第2の共振器の外部に取り出される。
【0041】
このように、本実施の形態では、赤外波長域の略同一の波長のレーザー光を出射する2つの取扱い性の良い固体レーザー媒質を用いて、簡易な構成でマスク検査等に利用できる連続の紫外光を発生させることができる。レーザー媒質にNd:YAGを用いているため、10mW以上の安定性の高い高出力のレーザーが得られる。また、略同一の波長のレーザー光を出射するレーザー媒質を用いているため、共通の光学部品を用いることができ、コストを削減することが可能となる。なお、レーザー媒質としてはNd:YAGに限られず、Nd:YVOやNd:YLF等でも良い。
【0042】
本実施の形態では、第1のレーザー媒質1a、第2のレーザー媒質1bのいずれも、単一周波数ではない赤外波長領域の同一波長の光を出射する。つまり、第1のレーザー媒質1a、第2のレーザー媒質1bは、赤外波長領域において複数の縦モードを含む光を出力する。すなわち、第1のレーザー媒質1a、第2のレーザー媒質1bは、複数の縦モードの光を同時に発振する縦マルチモードのレーザー装置を構成している。
【0043】
このため、特に発振スペクトルを制限する光学素子等を用いなければ、発生する355nm光は単一周波数にはならない。すなわち、発生する355nmの光の可干渉距離を短くすることができる。例えば、本実施の形態では、可干渉距離を1m以下の連続出力光を得ることができる。これにより、検査時にスペックルや干渉縞の問題を軽減することができる。
【0044】
なお、本実施の形態では、第1のレーザー媒質1a及び第2のレーザー媒質1bのいずれも単一周波数ではない光を出射するものを用いたが、これに限定されるものではない。例えば、第1のレーザー媒質1a又は第2のレーザー媒質1bの少なくともいずれか一方が単一周波数でない光を出射すれば、可干渉距離が短い355nmの光を得ることができる。
【0045】
また、ダイクロイックミラー5で反射された532nm光の偏光方向と、ダイクロイックミラー6を透過する1064nm光の偏光方向とが略直交していることが好ましい。例えば、532nm光の偏光方向を紙面に垂直とし、1064nm光の偏光方向を紙面に平行とすることができる。これにより、1064nm光を透過し、532nm光を反射するダイクロイックミラー6として、偏光方向により光を分岐するものを用いることができる。従って、ダイクロイックミラー6を容易に作ることができ、コストを低減させることができる。
【0046】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る光源装置について図2を参照して説明する。図2は、本実施の形態に係る光源装置の構成を示す図である。本実施の形態では、第2高調波発生用非線形光学結晶2として、擬似位相整合型のものを利用した構成を示している。
【0047】
擬似位相整合とは、結晶中での屈折率の違いにより赤外光と可視光とが干渉して消滅するのを防止するために、結晶の伝播方向に周期的に非線形光学定数の符号を反転させて補償する方法である。通常の複屈折位相整合による非線形光学結晶では、連続光に対して1%の変換効率を得ることも容易ではない。
【0048】
しかし、擬似位相整合型結晶では、30%〜40%程度の1064nmから532nmへの変換効率を得ることが可能となる。このため、実施の形態1のように、共振器内に第2高調波発生用非線形光学結晶2を配置して、共振器内で波長変換をしなくてもよい。なお、共振器内に第2高調波発生用非線形光学結晶2を配置することも可能である。
【0049】
本実施の形態においては、第2高調波発生用非線形光学結晶2は第1の共振器外に配置されている。高反射ミラー4bを透過した1064nmの光は、第2高調波発生用非線形光学結晶2に入射して532nmの光に変換される。532nmの光は、折り返しミラー8で反射され、高反射ミラー4c、4dから構成される第2共振器内のダイクロイックミラー6の方向へ進む。
【0050】
そして、実施の形態1と同様に、和周波混合用非線形光学結晶3により、1064nmの光と532nmの光の和周波混合により、355nmの光が発生する。このように、固体レーザー媒質を用いて、簡易な構成により紫外光を発生させることができる。また、本実施の形態では、第1のレーザー媒質1a、第2のレーザー媒質1bのいずれも、単一周波数ではない赤外波長領域の光を出射する。このため、可干渉距離の短い紫外光を得ることができる。
【0051】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係る光源装置の構成について、図3を参照して説明する。図3に示す光源装置では、図2の第1のレーザー媒質1aの代わりに、ファイバーレーザーを用いている。ファイバーレーザーは、電源と光発生部が一体化したものである。光発生部で発生した光は、ファイバーを介して出力される。このため、検査装置等に容易に搭載することができる。
【0052】
第2高調波発生用非線形光学結晶2は、第1のファイバーレーザー9からの1064nm光の第2高調波を発生させる。この第2高調波は、折り返しミラー8によりダイクロイックミラー6のほうへ折り返される。
【0053】
本実施の形態においては、和周波混合用非線形光学結晶3は、高反射ミラー4c、4dで形成される共振器内に配置されている。高反射ミラー4c、4dは、第2のレーザー媒質1bから出射される1064nm光を共振させる。共振された1064nm光と、第2高調波である532nm光は和周波混合用非線形光学結晶3で和周波混合され、355nm光が発生する。発生した355nm光は、ダイクロイックミラー7により共振器の外部に導かれる。
【0054】
実施の形態4.
本発明の実施の形態4に係る光源装置の構成について、図4を参照して説明する。図4に示す例では、図2に示す第1のレーザー媒質1a、第2のレーザー媒質1bをそれぞれ第1のファイバーレーザー9、第2のファイバーレーザー10に置き換えている。
【0055】
第1のファイバーレーザー9は、単一周波数でない1064nm光を出射する。第2高調波発生用非線形光学結晶2は、第1のファイバーレーザー9からの1064nm光の第2高調波を発生させる。この第2高調波は、折り返しミラー8によりダイクロイックミラー6のほうへ折り返される。
【0056】
第2のファイバーレーザー10は、1064nmの単一周波数の光を出射する。本実施の形態では、第2のファイバーレーザー10からの1064nm光を共振させる共振器を構成する4枚のミラー11a、11b、11c、11dが設けられている。この4枚のミラー11a、11b、11c、11dから構成される共振器内には、和周波混合用非線形光学結晶3が配置されている。
【0057】
和周波混合用非線形光学結晶3の入射側にはダイクロイックミラー6が配置されており、出射側にはダイクロイックミラー7が配置されている。共振された1064nm光と、第2高調波である532nm光は和周波混合用非線形光学結晶3で和周波混合され、355nm光が発生する。発生した355nm光は、ダイクロイックミラー7により共振器の外部に導かれる。
【0058】
このように、略同一の赤外波長域の光を発生する2つのファイバーレーザーを用いることにより、簡易な構成でマスク検査等に利用できる10mW以上の高出力の連続紫外光を発生させることができる。また、ファイバーレーザーを用いることにより、検査装置等への搭載を容易にすることができる。
【0059】
また、略同一の波長のレーザー光を出射するファイバーレーザーを用いているため、共通の光学部品を用いることができ、コストを削減することが可能となる。また、2つのファイバーレーザーのうち、少なくとも一方は、単一周波数ではないものを用いている。これにより、可干渉距離の短い紫外光を得ることができる。
【0060】
実施の形態5.
本発明の実施の形態5に係る光源装置について、図5を参照して説明する。図5に示す例では、図2に示す第1のレーザー媒質1a、第2のレーザー媒質1bをそれぞれ第1のファイバーレーザー9、第2のファイバーレーザー10に置き換えている。また、第2高調波発生用非線形光学結晶2が、第2のファイバーレーザー10の出射側に配置されている。
【0061】
第1のファイバーレーザー9は、単一周波数でない1064nm光を出射する。この1064nm光は、折り返しミラー8によりダイクロイックミラー6のほうへ折り返される。第2のファイバーレーザー10は、1064nmの単一周波数の光を出射する。本実施の形態では、第2のファイバーレーザー10から出射された1064nm光は、第2高調波発生用非線形光学結晶2により532nmの第2高調波に変換される。
【0062】
この第2高調波は、4枚のミラー11a、11b、11c、11dからなる共振器内で共振される。この4枚のミラー11a、11b、11c、11dから構成される共振器内には、和周波混合用非線形光学結晶3が配置されている。
【0063】
和周波混合用非線形光学結晶3の入射側にはダイクロイックミラー6が配置されており、出射側にはダイクロイックミラー7が配置されている。ここでは、ダイクロイックミラー6は、532nm光を透過し、1064nm光を反射する。共振された1064nm光と、第2高調波である532nm光は和周波混合用非線形光学結晶3で和周波混合され、355nm光が発生する。発生した355nm光は、ダイクロイックミラー7により共振器の外部に導かれる。
【0064】
このような構成により、簡易な構成でマスク検査等に利用できる10mW以上の高出力の連続紫外光を発生させることができる。また、ファイバーレーザーを用いることにより、検査装置等への搭載を容易にすることができる。また、2つのファイバーレーザーのうち、少なくとも一方は、単一周波数ではないものを用いている。これにより、可干渉距離の短い紫外光を得ることができる。
【0065】
なお、実施の形態4、5においては、共振器が4枚のミラーから構成される例を示したが、3枚のミラーにより構成することも可能である。少なくとも3枚のミラーを用いることにより、共振器を構成することができる。
【0066】
上述の実施の形態においては、第1のレーザー装置、第2のレーザー装置として、1064nmの光を出射するものを用いたが、これに限定されるものではない。第1のファイバーレーザー9、第2のファイバーレーザー10が略同一の赤外波長域の光を出射するものであればよい。波長351nmの連続光を発生させるための第1のファイバーレーザー9、第2のファイバーレーザー10の組み合わせの例について、図6に示す。
【0067】
図6の例1では、第1のファイバーレーザーとして波長1064nmのNd:YAG、Nd:YVO、Yb添加ファイバーを、第2のファイバーレーザーとして波長1031nmのYb:YAG、Yb添加ファイバーを用いている。例2では、第1のファイバーレーザーとして波長1047nmのNd:YLF、Yb添加ファイバーを、第2のファイバーレーザーとして波長1064nmのNd:YAG、Nd:YVO、Yb添加ファイバーを用いている。例3では、第1及び第2のファイバーレーザーとして波長1053nmのNd:YLF、Yb添加ファイバーを用いている。
【0068】
いずれにおいても、第1、第2のレーザー装置からの光の波長を図6に示す表の組合せとすれば、アルゴンイオンレーザーの発振波長351nmとほぼ等しくすることができる。351nmアルゴンイオンレーザーにより構築された応用装置において、波長をほぼ等しいままで本発明の固体レーザーを用いた光源装置に置換することが可能である。
【0069】
以上説明したように、本発明によれば、赤外波長域の略同一波長の光を出射する2つの独立したレーザー装置を用い、少なくとも一方を単一周波数動作ではない構成とすることで、半導体検査光源に適した波長1μmの第3高調波である波長350nm近傍の高出力の連続出力紫外光を発生させることができる。
【0070】
なお、実施の形態1〜4では、波長532nmの第2高調波は共振しないが、高反射ミラー4c、4dからなる第2のレーザー共振器又は、ミラー11a、11b、11c、11dからなる外部共振器において1064nmの強度が高められている。強度が高められた1064nm光と第2高調波とを混合するため、効率よく355nm光を発生させることが可能となる。
【0071】
また、実施の形態1〜4の第2のレーザー媒質1b、第2のファイバーレーザー10からのレーザー光は和周波発生だけに利用されるため、安定かつ高効率に紫外光を発生することができる。さらに、2つの独立した1μm帯のレーザー装置は、同一波長帯でその構成が類似している。このため、光源装置の構築が容易でコストを抑制することができる。
【0072】
なお、上述の実施の形態では、和周波混合用非線形光学結晶3としては、Type−II型位相整合が適用可能である。例えば、和周波混合用非線形光学結晶3としてLBO結晶を用いることができる。
【0073】
この場合、入射する2つの光の偏光方向を直行させることができる。これにより、ダイクロイックミラーでの透過光の偏光を水平、反射光の偏光を垂直に構成することで、ダイクロイックミラーでの損失を低減することができる。
【0074】
以上説明したように、本実施の形態によれば、略同一波長の赤外波長域の光を照射する2つのレーザー装置を用いることにより、アルゴンイオンレーザーに代替できる、単一周波数ではない波長351nm近傍の実用性の高い紫外光源を実現することが可能となる。なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1a 第1のレーザー媒質
1b 第2のレーザー媒質
2 第2高調波発生用非線形光学結晶
3 和周波混合用非線形光学結晶
4a、4b、4c、4d 高反射ミラー
5 ダイクロイックミラー
6 ダイクロイックミラー
7 ダイクロイックミラー
8 折り返しミラー
9 第1のファイバーレーザー
10 第2のファイバーレーザー
11a、11b、11c、11d ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外波長域の連続光である第1のレーザー光を発生する第1のレーザー装置と、
前記第1のレーザー光と略同一波長の連続光である第2のレーザー光を発生する第2のレーザー装置と、
前記第1のレーザー光の第2高調波を発生する第1の非線形光学結晶と、
前記第2高調波と前記第2レーザー光とを和周波混合し、出力10mW以上、可干渉距離1m以下の連続出力光を発生させる第2の非線形光学結晶と、
を備える光源装置。
【請求項2】
前記第1のレーザー光又は前記第2のレーザー光の少なくともいずれか一方は、単一周波数でないことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記第1のレーザー装置及び前記第2のレーザー装置の波長は、1030〜1080nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記第1のレーザー光を共振させる第1のレーザー共振器を備え、
前記第1の非線形光学結晶は、前記第1のレーザー共振器の内部に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記第2のレーザー光を共振させる第2のレーザー共振器を備え、
前記第2の非線形結晶は、前記第2のレーザー共振器の内部に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項6】
前記第2のレーザー共振器は、少なくとも3枚の光学鏡を含むことを特徴とする請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記第1の非線形光学結晶は、擬似位相整合型結晶であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記第2の非線形光学結晶に対し、入射する2つの光の偏光方向が直交していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項9】
前記第1のレーザー装置の媒質は1064nm付近で発光するネオジウム又はイッテイビウム添加の固体状媒質であり、
前記第2のレーザー装置の媒質は1030nm付近で発光するネオジウム又はイッテイビウム添加の固体状媒質であり、
前記連続出力光の波長は、351nm付近であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項10】
前記第1のレーザー媒質は、1047nm付近で発光するネオジウム又はイッテリビウム添加の固体状媒質であり、
前記第2のレーザー装置の媒質は1064nm付近で発光するネオジウム又はイッテリビウム添加の固体状媒質であり、
前記連続出力光の波長は、351nm付近であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項11】
前記第1のレーザー媒質及び前記第2のレーザー装置は、1053nm付近で発光するネオジウム又はイッテリビウム添加の固体状媒質であり、
前記連続出力光の波長は、351nm付近であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項12】
前記第1のレーザー装置及び前記第2のレーザー装置は、イッテリビウムを添加した光ファイバー形状であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−186939(P2010−186939A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31275(P2009−31275)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【Fターム(参考)】