説明

光硬化性組成物、これを用いた硬化物およびその製造方法、ならびに液晶表示装置用部材

【課題】低粘度で高い転写パターン精度を有しつつ、光照射後の密着性に優れた光硬化性組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物および/または下記一般式(2)で表される化合物の少なくとも一種と、下記一般式(3)で表される化合物の少なくとも1種を質量比20:80〜80:20の割合で含む、光硬化性組成物。


(一般式(1)および一般式(2)中、Xは、有機基を表し、nは1〜4の整数を表す。一般式(3)中、Yは有機基を表し、mは1〜4の整数を表し、Rは水素またはメチル基を表す。但し、一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物および一般式(3)で表される化合物は、いずれも分子量が150〜400である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性組成物、特に、光ナノインプリントに用いられる硬化性組成物、該組成物を硬化してなる硬化物に関する。また、硬化物の製造方法、ならびに該硬化物を用いた液晶表示装置用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント法には、被加工材料として熱可塑性樹脂を用いる場合(非特許文献1)と、光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物を用いる場合(非特許文献2)の2通りが提案されている。熱式ナノインプリントの場合、ガラス転移温度以上に加熱した高分子樹脂にモールドをプレスし、冷却後にモールドを離型することで微細構造を基板上の樹脂に転写するものである。多様な樹脂材料やガラス材料にも応用可能であるため、様々な方面への応用が期待されている。例えば、特許文献1、特許文献2には、熱可塑性樹脂を用いて、ナノパターンを安価に形成するナノインプリントの方法が開示されている。
【0003】
一方、透明モールドを通して光を照射し、ナノインプリント用硬化性組成物を光硬化させる光ナノインプリント方式では、室温でのインプリントが可能になる。最近では、この両者の長所を組み合わせたナノキャスティング法や3次元積層構造を作製するリバーサルインプリント方法などの新しい展開も報告されている。
【0004】
このようなナノインプリント法においては、以下のような応用技術が提案されている。第一の技術としては、高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィに代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製等に適用しようとするものである。第二の技術としては、成型した形状(パターン)そのものが機能を持ち、様々なナノテクノロジーの要素部品、あるいは構造部材として応用できる場合であり、その例としては、各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体、光学フィルム、フラットパネルディスプレイにおける構造部材などが挙げられる。なお、さらにその他の技術としては、マイクロ構造とナノ構造の同時一体成型や、簡単な層間位置合わせにより積層構造を構築し、μ−TASやバイオチップの作製に応用しようとするものもある。前述の技術を含め、これらの応用に関するナノインプリント法の実用化への取り組みが近年活発化している。
【0005】
まず、前記第一の技術における高密度半導体集積回路作成への応用例を説明する。近年、半導体集積回路は微細化、集積化が進んでおり、その微細加工を実現するためのパターン転写技術としてフォトリソグラフィ装置の高精度化が進められてきた。これに対し、微細なパターン形成を低コストで行うための技術として提案されたナノインプリントリソグラフィ技術(光ナノインプリント法)を用いることが検討された。例えば、下記特許文献1にはシリコンウエハをスタンパとして用い、25nm以下の微細構造を転写により形成するナノインプリント技術が開示されている。この流れに伴って半導体集積回路の作製にナノインプリントリソグラフィを適用するため、モールドと樹脂との剥離性、パターン転写精度などをはじめとした性質の検討が活発化し始めている。一方、モールドの樹脂からの剥離性、パターン転写精度、基板密着性をはじめとした性質など、半導体集積回路作製にナノインプリントリソグラフィを適用するための検討が活発化し始めている。
【0006】
一方、前記第二の技術における液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などのフラットデイスプレイへのナノインプリントリソグラフィの応用例について説明する。LCD基板やPDP基板大型化や高精細化の動向に伴い、薄膜トランジスタ(TFT)や電極板の製造時に使用する従来のフォトリソグラフィ法に代わる安価なリソグラフィとして光ナノインプリントリソグラフィが、近年注目されている。そのため、従来のフォトリソグラフィ法で用いられるエッチングフォトレジストに代わる光硬化性レジストの開発が必要になってきている。また、LCDなどの構造部材として用いられる透明保護膜材料や液晶ディスプレイにおけるセルギャップを規定するスペーサーなどに対しても、光ナノインプリントリソグラフィの応用も検討され始めている。このような構造部材用のレジストは、前記エッチングレジストとは異なり、最終的にディスプレイ内に残るため、“永久レジスト”、あるいは“永久膜”と称されることがある。
【0007】
従来のフォトリソグラフィ技術を適用した永久膜としては、例えば、液晶パネルのTFT基板上に設けられる保護膜や、R、G、B層間の段差を低減しITO膜のスパッタ製膜時の高温処理に対する耐性を付与するためにカラーフィルタ上に設けられる保護膜等が挙げられる。これらの保護膜(永久膜)の形成においては、塗布膜の均一性、基材との密着性、200℃を超える加熱処理後の高い光透過性、平坦化特性、耐溶剤性、耐擦傷製等の種々の特性が要求されている。
【0008】
また、液晶ディスプレイに用いられるスペーサーの分野では、従来のフォトリソグラフィ法においては、樹脂、光重合性モノマーおよび開始剤からなる光硬化性組成物が一般的に広く用いられてきている。前記スペーサーは、一般には、カラーフィルタ形成後または前記カラーフィルタ用保護膜形成後に、カラーフィルタ基板上に光硬化性組成物を用いてフォオトリソグラフィによって10μm〜20μm程度の大きさのパターンを形成し、さらにポストベイクにより加熱硬化して形成される。このような液晶ディスプレイの用いられるスペーサーには、外部圧力に対する高い機械的特性、硬度、現像性、パターン転写精度、密着性等の性能が要求される。このため、ナノインプリント法を用いた前記透明保護膜やスペーサー等の永久膜(永久レジスト)の形成に好適な光硬化性組成物の開発が求められている。
【0009】
光ナノインプリントリソグラフィに用いられる材料の要求特性は適用する用途によって異なる場合が多いものの、プロセス特性についての要望は用途に依らず共通点がある。例えば、下記非特許文献3に示されている主な要求項目は、塗布性、基板密着性、低粘度(<5mPa・s)、剥離性、低硬化収縮率、速硬化性などである。これらの要求特性をいかに制御し、諸特性のバランスを取るかが材料デザインの鍵となる。このため、少なくともプロセス材料と永久膜とでは要求特性が大きく異なるため材料はプロセスや用途に応じて開発する必要がある。
【0010】
以上のように、永久膜としての主要技術課題としては、パターン精度、密着性、200℃を超える加熱処理後の透明性、高い機械的特性(外部圧力に対する強度)、耐擦傷性、平坦化特性、耐溶剤性、加熱処理時のアウトガス低減など、多くの課題が挙げられる。光ナノインプリント用硬化性組成物を永久膜として適用した場合においても、従来のアクリル樹脂などを用いたレジストと同様に、塗布膜の均一性、加熱処理後の透明性、耐擦傷性の付与が重要である。
【0011】
同時に、光ナノインプリント用硬化性組成物特有の課題としては、前記課題に加えて、モールドの凹部へのレジストの流動性を確保し、無溶剤もしくは少量の溶剤使用下での低粘度化が必要となること、および、光硬化後、モールドと容易に剥離させ、モールドへの付着が生じないこと、を考慮する必要があり、組成物設計の技術的難易度が一層高くなる。
【0012】
このように、光ナノインプリント用の硬化性組成物については、種々の材料が開示されているものの、永久膜の作製に適した硬化性組成物については十分な設計指針が示されていないのが現状である。
【0013】
特許文献3には、アリル化合物とアクリレート化合物を含む、光硬化性組成物が記載されている。ここで、該組成物は、その実施例でも記載されているとおり、実際には、樹脂が必須となる。しかしながら、樹脂を含んでいるがゆえに、ナノインプリント用硬化性組成物として使用することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号公報
【特許文献2】米国特許第5,956,216号公報
【特許文献3】特開2001−183825号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】S.Chou et al.:Appl.Phys.Lett.Vol.67,3114(1995)
【非特許文献2】M.Colbun et al,:Proc.SPIE,Vol. 3676,379 (1999)
【非特許文献3】最新レジスト材料ハンドブック、P1、103〜104(2005年、情報機構出版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記実情に鑑みて成し遂げられたものであり、光硬化性に優れた光硬化性組成物、特に、フラットパネルディスプレイ等の永久膜の作成に好適な光ナノインプリント用光硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
かかる状況のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、(メタ)アクリレート等の重合性単量体に加え、特定の構造を有するアリルエステル化合物またはアリルエーテル化合物を特定量添加することにより、光照射後の密着性に優れた光硬化性組成物が得られることを見出し、本願発明を完成するに至った。具体的には、下記手段により達成された。
(1)下記一般式(1)で表される化合物および/または下記一般式(2)で表される化合物の少なくとも一種と、下記一般式(3)で表される化合物の少なくとも1種を質量比20:80〜80:20の割合で含む、光硬化性組成物。
【化1】

(一般式(1)および一般式(2)中、Xは、それぞれ、有機基を表し、nは、それぞれ、1〜4の整数を表す。一般式(3)中、Yは有機基を表し、mは1〜4の整数を表し、Rは水素またはメチル基を表す。但し、一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物および一般式(3)で表される化合物は、それぞれ、分子量が150〜400である。)
(2)前記一般式(1)で表される化合物を含む、(1)に記載の光硬化性組成物。
(3)一般式(1)または一般式(2)におけるX、および一般式(3)におけるYが、それぞれ、炭化水素基である、(1)または(2)に記載の光硬化性組成物。
(4)一般式(3)において、Rが水素原子である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
(5)一般式(1)または一般式(2)におけるnが、2または3である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
(6)一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物および一般式(3)で表される化合物の合計量が、光硬化性組成物の80質量%以上である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
(7)(1)〜(6)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
(8)(7)に記載の硬化物を含む液晶表示装置用部材。
(9)(1)〜(6)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を基板上に適用してパターン形成する工程と、前記パターン形成層にモールドに押圧する工程と、前記パターン形成層に光照射する工程を含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、低粘度で高い転写パターン精度を有しつつ、光照射後の密着性に優れたナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0020】
以下において本発明を詳細に説明する。なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートはアクリレートおよびメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリルおよびメタクリルを表し、(メタ)アクリロイルはアクリロイルおよびメタクリロイルを表す。また、本明細書中において、単量体とモノマーは同一である。本発明における単量体は、オリゴマー、ポリマーと区別し、質量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、官能基は重合に関与する基をいう。
なお、本発明で言うナノインプリントとは、およそ数μmから数十nmのサイズのパターン転写をいい、ナノオーダのものに限られるものではないことは言うまでもない。
【0021】
[光硬化性組成物]
本発明の光硬化性組成物は、下記一般式(1)で表される化合物および/または下記一般式(2)で表される化合物の少なくとも一種と、下記一般式(3)で表される化合物の少なくとも1種を質量比20:80〜80:20の割合で含むことを特徴とする。
【化2】

(一般式(1)および一般式(2)中、Xは、それぞれ、有機基を表し、nは、それぞれ、1〜4の整数を表す。一般式(3)中、Yは有機基を表し、mは1〜4の整数を表し、Rは水素またはメチル基を表す。但し、一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物および一般式(3)で表される化合物は、それぞれ、分子量が150〜400である。)
【0022】
本発明では、特定の構造を有する、アリルエステル化合物またはアリルエーテル化合物を併用することにより、硬化前においては保存安定性が高く、微細凹凸パターン形成能に優れたものとすることができる。また、硬化後においてはパターン精度に優れており、さらには、他の諸点において総合的に優れた塗膜物性とすることができる。そのため、本発明の光硬化性組成物は、光ナノインプリントリソグラフィに広く用いることができる。また、特に好ましい態様においては、さらに本発明の光硬化性組成物の基板密着性をも顕著に改良することもできる。
【0023】
即ち、本発明の光硬化性組成物は、光ナノインプリントリソグラフィに用いる場合、以下のような特徴を有するものとすることができる。
(1)室温での溶液流動性に優れるため、モールド凹部のキャビティ内に該組成物が流れ込みやすく、大気が取り込まれにくいためバブル欠陥を引き起こすことがなく、モールド凸部、凹部のいずれにおいても光硬化後に残渣が残りにくい。
(2)組成物の保存安定性が高く、経時で増粘、ゲル化するなどの問題が起こりにくいため、組成物を調液した後も長期間にわたりパターン精度の低下が見られない。
(3)硬化後の硬化膜は機械的性質に優れ、塗膜と基板の密着性に優れ、塗膜とモールドの剥離性に優れるため、モールドを引き剥がす際にパターン崩れや塗膜表面に糸引きが生じて表面荒れを引き起こすことがないため良好なパターンを形成できる。
(4)塗布均一性に優れるため、大型基板への塗布・微細加工分野などに適する。
【0024】
例えば、本発明の光硬化性組成物は、これまで展開が難しかった半導体集積回路や液晶表示装置用部材(特に、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、液晶カラーフィルタの保護膜、スペーサ、その他の液晶表示装置用部材の微細加工用途等)に好適に適用でき、その他の用途、例えば、プラズマディスプレイパネル用隔壁材、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーデイスク等の磁気記録媒体、回折格子ヤレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、光学フィルムや偏光素子、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用リブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶等の作製にも幅広く適用できるようになる。
【0025】
(一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物)
一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物、および一般式(3)で表される化合物について説明する。
【化3】

(一般式(1)および一般式(2)中、Xは、それぞれ、有機基を表し、nは、それぞれ、1〜4の整数を表す。一般式(3)中、Yは有機基を表し、mは1〜4の整数を表し、Rは水素またはメチル基を表す。但し、一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物および一般式(3)で表される化合物は、それぞれ、分子量が150〜400である。)
【0026】
一般式(1)および(2)におけるXは、好ましくは、それぞれ、炭化水素基であり、より好ましくは、炭素数2〜6の炭化水素基である。Xは直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、直鎖または分岐が好ましい。
一般式(1)および(2)におけるnは、それぞれ、2または3であることが好ましい。
【0027】
一般式(3)におけるYは、好ましくは、炭化水素基であり、より好ましくは、炭素数2〜10の炭化水素基である。Yは直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、直鎖または分岐が好ましい。
一般式(3)におけるRは水素原子が好ましい。水素原子とすることにより、露光時の感度が上昇する。
また、本発明の硬化性組成物は、一般式(3)におけるmが2以上である化合物を含むことが好ましい。
【0028】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、スクシン酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、クエン酸トリアリル、フェニル酢酸アリル、ヘプタン酸アリル、イソフタル酸ジアリル等が挙げられる。
【0029】
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、トリメチロールプローパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、アリルn−オクチルエーテル、グリセロールα,α‘−ジアリルエーテル等が挙げられる。
【0030】
一般式(3)で表される化合物の具体例としては、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−安息香酸アリルエステル、3−(メタ)アクリロイルオキシ−安息香酸アリルエステル、p−イソプロペニルフェノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸−2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−アリルオキシ−プロピルエステル、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
下記一般式(1)で表される化合物および/または下記一般式(2)で表される化合物の少なくとも一種と、下記一般式(3)で表される化合物の少なくとも1種の質量比は、20:80〜80:20であり、好ましくは、25:75〜75:20であり、より好ましくは30:70〜70:30である。このような範囲とすることにより、組成物の低粘度と光照射後の硬化膜の高密着性を両立できる。
尚、本発明では、一般式(1)で表される化合物および/または一般式(2)で表される化合物の少なくとも一種と、一般式(3)で表される化合物の少なくとも一種を含んでいればよいが、それぞれ、二種類以上含んでいてもよいことは言うまでも無い。
特に、一般式(3)で表される化合物は、二種類以上含んでいることが好ましく、さらに、一般式(3)で表される化合物の少なくとも一種は、2官能または3官能または4官能の化合物であることがより好ましい。
【0032】
一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物および一般式(3)で表される化合物の分子量は、それぞれ、150〜400であり、160〜380が好ましく、170〜360がより好ましい。分子量を150以上とすることにより、揮発を防ぎより良好は塗布性を付与でき、400以下とすることにより、より粘度上昇を抑制できる。
【0033】
本発明の光硬化性組成物は、一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物および一般式(3)で表される化合物の合計量が、全組成物中の80質量%以上を占めることが好ましく、90質量%以上を占めることがより好ましい。
【0034】
本発明の光硬化性組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、上記以外の他の重合性単量体を含んでいてもよい。
【0035】
本発明で用いる他の重合性単量体として、オキシラン環を有する化合物を採用できる。オキシラン環を有する化合物としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0036】
好ましく使用することのできるエポキシ化合物としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などを例示することができる。
【0037】
これらの成分の中、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0038】
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR−6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocyclespart3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報、特許第2906245号公報、特許第2926262号公報などの文献を参考にして合成できる。
【0040】
本発明で用いる他の重合性単量体として、ビニルエーテル化合物を併用してもよい。
ビニルエーテル化合物は、適宜選択すれば良く、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0041】
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers Paint Colour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
その他、本発明で用いる他の重合性単量体として、ビニル化合物としてN−ビニル化合物を用いることもできる。N−ビニル化合物としては、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクトン、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルホルムアミド等が挙げられる。
【0043】
また、本発明で用いる他の重合性単量体として、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、p−メトキシスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0044】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する化合物も併用することができる。
【0045】
本発明で用いる他の重合性単量体として、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを配合できる。例えば1−ドデシル−1−プロペニルエーテル、1−ドデシル−1−ブテニルエーテル、1−ブテノキシメチル−2−ノルボルネン、1−4−ジ(1−ブテノキシ)ブタン、1,10−ジ(1−ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1−ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1−ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1−ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0046】
(多官能オリゴマーやポリマー)
本発明の光硬化性組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、上記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーやポリマーを本発明の目的を達成する範囲で配合することができる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。本発明では、分子量1000以上の高分子の含量が、組成物中5質量%以下であることが好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の光硬化性組成物の粘度を下げることができ、ナノインプリント用光硬化性組成物として用いる際に、より有益である。
【0047】
(B)光重合開始剤
本発明の光硬化性組成物には、光重合開始剤が用いられる。本発明に用いられる光重合開始剤は、全組成物中、例えば、0.1〜15質量%含有し、好ましくは0.2〜12質量%であり、さらに好ましくは、0.3〜10質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
光重合開始剤の割合が0.1質量%以上とすることにより、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の割合を15質量%以下とすることにより、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。これまで、染料および/または顔料を含むインクジェット用組成物や液晶デイスプレイカラーフィルタ用組成物においては、好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量が種々検討されてきたが、ナノインプリント用等の光硬化性組成物についての好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量については報告されていない。すなわち、染料および/または顔料を含む系では、これらがラジカルトラップ剤として働くことがあり、光重合性、感度に影響を及ぼす。その点を考慮して、これらの用途では、光重合開始剤の添加量が最適化される。一方で、本発明の光硬化性組成物では、染料および/または顔料は必須成分でなく、光重合開始剤の最適範囲がインクジェット用組成物や液晶デイスプレイカラーフィルタ用組成物等の分野のものとは異なる場合がある。
【0048】
本発明で用いる光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、適切な活性種を発生させるものを用いる。また、光重合開始剤は1種類のみでも、2種類以上用いてもよい。
【0049】
本発明で使用されるラジカル光重合開始剤は、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、例えば、特開平2008−105414号公報の段落番号0091に記載のものを好ましく採用することができる。
【0050】
本発明の重合開始のための光は、紫外光、近紫外光、遠紫外光、可視光、赤外光等の領域の波長の光または、電磁波だけでなく、放射線も含まれ、放射線には、例えば、マイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、さらに全面露光することも可能である。
【0051】
本発明で使用される光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して適時に選択する必要があるが、モールド加圧・露光中にガスを発生させないものが好ましい。ガスが発生すると、モールドが汚染されるため、頻繁にモールドを洗浄しなければならなくなったり、本発明の光硬化性組成物がモールド内で変形し、転写パターン精度を劣化させたりするなどの問題を生じる。ガスを発生させないものは、モールドが汚染されにくく、モールドの洗浄頻度が減少したり、本発明の光硬化性組成物がモールド内で変形したりしにくいので転写パターン精度を劣化させにくい等の観点で好ましい。
【0052】
(界面活性剤)
本発明の光硬化性組成物には、界面活性剤を含むことができる。本発明に用いられる界面活性剤は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%含有し、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001未満では、塗布の均一性の効果が不十分であり、一方、5質量%を越えると、モールド転写特性を悪化させるため、好ましくない。
界面活性剤は、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびフッ素・シリコーン系界面活性剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、フッ素系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤の両方または、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましく、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことが最も好ましい。
ここで、フッ素・シリコーン系界面活性剤とは、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤の両方の要件を併せ持つものをいう。
このような界面活性剤を用いることにより、本発明の光硬化性組成物を、半導体素子製造用のシリコーンウェハや、液晶素子製造用のガラス角基板、クロム膜、モリブデン膜、モリブデン合金膜、タンタル膜、タンタル合金膜、窒化珪素膜、アモルファスシリコーン膜、酸化錫をドープした酸化インジウム(ITO)膜や酸化錫膜などの、各種の膜が形成されるなど基板上の塗布時に起こるストリエーションや鱗状の模様(レジスト膜の乾燥むら)などの塗布不良の問題を解決する目的、およびモールド凹部のキャビティ内への組成物の流動性を良くし、モールドとレジスト間の剥離性を良くし、レジストと基板間の密着性を良くする、組成物の粘度を下げる等が可能になる。
【0053】
本発明で用いる非イオン性フッ素系界面活性剤の例としては、商品名フロラードFC−430、FC−431(住友スリーエム社製)、商品名サーフロン「S−382」(旭硝子社製)、EFTOP「EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100」(トーケムプロダクツ社製)、商品名PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA社)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18(いずれも(株)ネオス社製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451(いずれもダイキン工業(株)社製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、F780F(いずれも大日本インキ化学工業社製)が挙げられ、非イオン性ケイ素系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ、パイオニンD6315(いずれも竹本油脂社製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業社製)、KP−341(信越化学工業社製)が挙げられる。
本発明で用いる、フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも信越化学工業社製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも大日本インキ化学工業社製)が挙げられる。
【0054】
本発明の光硬化性組成物に用いられる界面活性剤としては、電圧保持率の観点から、非イオン性(ノニオン系)の界面活性剤が好ましい。
【0055】
(酸化防止剤)
さらに、本発明の光硬化性組成物には、公知の酸化防止剤を含むことができる。本発明に用いられる酸化防止剤は、全組成物中、例えば、0.01〜10質量%含有し、好ましくは0.2〜5質量%である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
酸化防止剤は、酸素ラジカルをトラップする能力を有し、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NO、SO(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止できる、または分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中では、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0056】
酸化防止剤の市販品としては、Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業製)、アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0057】
(その他の成分)
本発明の光硬化性組成物には前記成分の他に必要に応じて離型剤、有機金属カップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光増感剤、光酸発生剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、連鎖移動剤、重合禁止剤を添加することができる。これらについて以下説明する。なお、その他流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0058】
剥離性をさらに向上する目的で、本発明の光硬化性組成物には、離型剤を任意に配合することができる。具体的には、本発明の光硬化性組成物の層に押し付けたモールドを、樹脂層の面荒れや版取られを起こさずにきれいに剥離できるようにする目的で添加される。離型剤としては従来公知の離型剤、例えば、シリコーン系離型剤、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロンパウダー(テフロンは登録商標)等の固形ワックス、弗素系、リン酸エステル系化合物等が何れも使用可能である。また、これらの離型剤をモールドに付着させておくこともできる。
【0059】
シリコーン系離型剤は、本発明で用いられる上記光硬化性樹脂と組み合わせた時にモールドからの剥離性が特に良好であり、版取られ現象が起こり難くなる。シリコーン系離型剤は、オルガノポリシロキサン構造を基本構造とする離型剤であり、例えば、未変性または変性シリコーンオイル、トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサン、シリコーン系アクリル樹脂等が該当し、一般的にハードコート用組成物で用いられているシリコーン系レベリング剤の適用も可能である。
【0060】
変性シリコーンオイルは、ポリシロキサンの側鎖および/または末端を変性したものであり、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとに分けられる。反応性シリコーンオイルとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性、異種官能基変性等が挙げられる。非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸変性、フッ素変性等が挙げられる。
一つのポリシロキサン分子に上記したような変性方法の2つ以上を行うこともできる。
【0061】
変性シリコーンオイルは組成物成分との適度な相溶性があることが好ましい。特に、組成物中に必要に応じて配合される他の塗膜形成成分に対して反応性がある反応性シリコーンオイルを用いる場合には、本発明の光硬化性組成物を硬化した硬化膜中に化学結合よって固定されるので、当該硬化膜の密着性阻害、汚染、劣化等の問題が起き難い。特に、蒸着工程での蒸着層との密着性向上には有効である。また、(メタ)アクリロイル変性シリコーン、ビニル変性シリコーン等の、光硬化性を有する官能基で変性されたシリコーンの場合は、本発明の光硬化性組成物と架橋するため、硬化後の特性に優れる。
【0062】
トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサンは表面にブリードアウトし易く剥離性に優れており、表面にブリードアウトしても密着性に優れ、金属蒸着やオーバーコート層との密着性にも優れている点で好ましい。
上記離型剤は1種類のみ或いは2種類以上を組み合わせて添加することができる。
【0063】
離型剤を本発明の光硬化性組成物に添加する場合、組成物全量中に0.001〜10質量%の割合で配合することが好ましく、0.01〜5質量%の範囲で添加することがより好ましい。離型剤の割合が上記範囲未満では、モールドと光硬化性組成物層の剥離性向上効果が不充分となりやすい。一方、離型剤の割合が上記範囲を超えると組成物の塗工時のはじきによる塗膜面の面荒れの問題が生じたり、製品において基材自身および近接する層、例えば、蒸着層の密着性を阻害したり、転写時に皮膜破壊等(膜強度が弱くなりすぎる)を引き起こす等の点で好ましくない。
離型剤の割合が0.01質量%以上とすることにより、モールドと光硬化性組成物層の剥離性向上効果が充分となる。一方、離型剤の割合が上記範囲を10質量%以内だと、組成物の塗工時のはじきによる塗膜面の面荒れの問題が生じにくく、製品において基材自身および近接する層、例えば、蒸着層の密着性を阻害しにくく、転写時に皮膜破壊等(膜強度が弱くなりすぎる)を引き起こしにくい等の点で好ましい。
【0064】
本発明の光硬化性組成物には、微細凹凸パターンを有する表面構造の耐熱性、強度、或いは、金属蒸着層との密着性を高めるために、有機金属カップリング剤を配合してもよい。また、有機金属カップリング剤は、熱硬化反応を促進させる効果も持つため有効である。有機金属カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、スズカップリング剤等の各種カップリング剤を使用できる。
【0065】
本発明の光硬化性組成物に用いるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;および、その他のシランカップリング剤として、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0066】
チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
【0067】
ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−ブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0068】
アルミニウムカップリング剤としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエチレート、エチルアセトアセテエートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトアセテート)等を挙げることができる。
【0069】
上記有機金属カップリング剤は、光硬化性組成物の固形分全量中に0.001〜10質量%の割合で任意に配合できる。有機金属カップリング剤の割合を0.001質量%以上とすることにより、耐熱性、強度、蒸着層との密着性の付与の向上についてより効果的な傾向にある。一方、有機金属カップリング剤の割合を10質量%以下とすることにより、組成物の安定性、成膜性の欠損を抑止できる傾向にあり好ましい。
【0070】
紫外線吸収剤の市販品としては、Tinuvin P、234、320、326、327、328、213(以上、チバガイギー(株)製)、Sumisorb110、130、140、220、250、300、320、340、350、400(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。紫外線吸収剤は、光硬化性組成物の全量に対して任意に0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0071】
光安定剤の市販品としては、Tinuvin 292、144、622LD(以上、チバガイギー(株)製)、サノールLS−770、765、292、2626、1114、744(以上、三共化成工業(株)製)等が挙げられる。光安定剤は組成物の全量に対し、0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0072】
老化防止剤の市販品としては、Antigene W、S、P、3C、6C、RD−G、FR、AW(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。老化防止剤は組成物の全量に対し、0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0073】
本発明の光硬化性組成物には基板との接着性や膜の柔軟性、硬度等を調整するために可塑剤を加えることが可能である。好ましい可塑剤の具体例としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン、ジメチルアジペート、ジエチルアジペート、ジ(n−ブチル)アジペート、ジメチルスベレート、ジエチルスベレート、ジ(n−ブチル)スベレート等があり、可塑剤は組成物中の30質量%以下で任意に添加することができる。好ましくは20質量%以下で、より好ましくは10質量%以下である。可塑剤の添加効果を得るためには、0.1質量%以上が好ましい。
【0074】
本発明の光硬化性組成物には基板との接着性等を調整するために密着促進剤を添加しても良い。密着促進剤として、ベンズイミダゾール類やポリベンズイミダゾール類、低級ヒドロキシアルキル置換ピリジン誘導体、含窒素複素環化合物、ウレアまたはチオウレア、有機リン化合物、8−オキシキノリン、4−ヒドロキシプテリジン、1,10−フェナントロリン、2,2‘−ビピリジン誘導体、ベンゾトリアゾール類、有機リン化合物とフェニレンジアミン化合物、2−アミノ−1−フェニルエタノール、N−フェニルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン,N−エチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンおよび誘導体、ベンゾチアゾール誘導体などを使用することができる。密着促進剤は、組成物中の好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。密着促進剤の添加は効果を得るためには、0.1質量%以上が好ましい。
【0075】
本発明の光硬化性組成物を硬化させる場合、必要に応じて熱重合開始剤も添加することができる。好ましい熱重合開始剤としては、例えば過酸化物、アゾ化合物を挙げることができる。具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。
【0076】
本発明の光硬化性組成物には、塗膜の視認性を向上するなどの目的で、着色剤を任意に添加してもよい。着色剤は、UVインクジェット組成物、カラーフィルタ用組成物およびCCDイメージセンサ用組成物等で用いられている顔料や染料を本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。本発明で用いることができる着色剤としては、例えば、特開平2008−105414号公報の段落番号0121に記載のものを好ましく採用することができる。
着色剤は組成物の全量に対し、0.001〜2質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0077】
また、本発明の光硬化性組成物では、機械的強度、柔軟性等を向上するなどの目的で、任意成分としてエラストマー粒子を添加してもよい。
本発明の光硬化性組成物に任意成分として添加できるエラストマー粒子は、平均粒子サイズが好ましくは10nm〜700nm、より好ましくは30〜300nmである。例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/α−オレフィン系共重合体、エチレン/α−オレフィン/ポリエン共重合体、アクリルゴム、ブタジエン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体などのエラストマーの粒子である。またこれらエラストマー粒子を、メチルメタアクリレートポリマー、メチルメタアクリレート/グリシジルメタアクリレート共重合体などで被覆したコア/シェル型の粒子を用いることができる。エラストマー粒子は架橋構造をとっていてもよい。
【0078】
エラストマー粒子の市販品としては、例えば、レジナスボンドRKB(レジナス化成(株)製)、テクノMBS−61、MBS−69(以上、テクノポリマー(株)製)等を挙げることができる。
【0079】
これらエラストマー粒子は単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。本発明の光硬化性組成物におけるエラストマー成分の含有割合は、好ましくは1〜35質量%であり、より好ましくは2〜30質量%、特に好ましくは3〜20質量%である。
【0080】
さらに本発明の光硬化性組成物には、光重合開始剤の他に、光増感剤を加えて、UV領域の波長を調整することもできる。本発明において用いることができる典型的な増感剤としては、クリベロ〔J.V.Crivello,Adv.in Polymer Sci,62,1(1984)〕に開示しているものが挙げられ、具体的には、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンゾフラビン、N−ビニルカルバゾール、9,10−ジブトキシアントラセン、アントラキノン、クマリン、ケトクマリン、フェナントレン、カンファキノン、フェノチアジン誘導体などを挙げることができる。
【0081】
本発明の光硬化性組成物における光増感剤の含有割合は、該組成物中、15質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは8質量%以下、特に好ましくは5質量%以下が好ましい。光増感度剤含有割合の下限は特に限定されないが、効果を発現するためには、光増感剤含有割合の下限は0.1質量%程度である。
【0082】
本発明の光硬化性組成物には、光硬化反応の促進などの目的で、紫外線等のエネルギー線を受けることにより光重合を開始させる光酸発生剤を添加してもよい。
【0083】
前記光酸発生剤としては、米国特許第4,139,655号明細書に記載のチオビリリウム塩、鉄/アレン錯体、アルミニウム錯体/光分解ケイ素化合物系開始剤、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、o−ニトロベンジルエステル化合物、イミドスルホネート化合物、ビススルホニルジアゾメタン化合物、オキシムスルホネート化合物を挙げることができる。
【0084】
本発明で用いることができる光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物を広く採用することができる(イメージング用有機材料、有機エレクトロニクス材料研究会編、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。これらの化合物は、THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN Voi.71 No.11(1998年)、イメージング用有機材料(有機エレクトロニクス材料研究会編、ぶんしん出版(1993年))に記載の光酸発生剤と同様、公知の方法にて容易に合成することができる。
【0085】
光酸発生剤の市販品としては、IRGACURE261、IRGACURE OXE01、IRGACURE CGI-1397(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。上記の光酸発生剤は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0086】
また、上記酸発生剤は前記光重合開始剤として組み合わせて用いることができる。この場合、光酸発生剤は0.05〜3.0質量%の範囲で用い、光重合開始剤と光酸発生剤併せて、0.5〜15.0質量%の範囲で用いることが望ましい。
【0087】
本発明の光硬化性組成物は、パターン形状、感度等を調整する目的で、必要に応じて光塩基発生剤を添加してもよい。例えば、2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O−カルバモイルヒドロキシルアミド、O−カルバモイルオキシム、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6−ジアミン、4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’,4’−ジニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン等が好ましいものとして挙げられる。
【0088】
本発明の光硬化性組成物には、硬化収縮の抑制、熱安定性を向上するなどの目的で、塩基性化合物を任意に添加してもよい。塩基性化合物としては、アミンならびに、キノリンおよびキノリジンなど含窒素複素環化合物、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物などが挙げられる。これらの中でも、光重合成モノマーとの相溶性の面からアミンが好ましく、例えば、オクチルアミン、ナフチルアミン、キシレンジアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルアニリン、キヌクリジン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0089】
本発明の光硬化性組成物には、光硬化性向上のために、連鎖移動剤を添加しても良い。具体的には、4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)を挙げることができる。
【0090】
(有機溶剤)
本発明の光硬化性組成物は、有機溶剤の含有量が、全組成物中、3質量%以下であることが好ましい。すなわち本発明の光硬化性組成物は、好ましくは特定の1官能およびまたは2官能の単量体を反応性希釈剤として含めることができるため、本発明の光硬化性組成物の成分を溶解させるための有機溶剤は、必ずしも含有する必要がない。また、有機溶剤を含まなければ、溶剤の揮発を目的としたベーキング工程が不要となるため、プロセス簡略化に有効となるなどのメリットが大きい。従って、本発明の光硬化性組成物では、有機溶剤の含有量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下であり、含有しないことが特に好ましい。このように、本発明の光硬化性組成物は、必ずしも、有機溶剤を含むものではないが、反応性希釈剤では、溶解しない化合物などを、本発明の光硬化性組成物として溶解させる場合や粘度を微調整する際など、任意に添加してもよい。本発明の光硬化性組成物に好ましく使用できる有機溶剤の種類としては、光硬化性組成物やフォトレジストで一般的に用いられている溶剤であり、本発明で用いる化合物を溶解および均一分散させるものであれば良く、かつこれらの成分と反応しないものであれば特に限定されない。
【0091】
前記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソフチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類等のエステル類などが挙げられる。
さらに、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート等の高沸点溶剤を添加することもできる。これらは1種を単独使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
これらの中でも、メトキシプロピレングリコールアセテート、2−ヒドロキシプロピン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノンなどが特に好ましい。
【0092】
(粘度)
本発明の光硬化性組成物の粘度について説明する。本発明における粘度は特に述べない限り、25℃±0.2℃における粘度をいう。本発明の光硬化性組成物は、溶剤を除く組成物の25℃±0.2℃における粘度が、3mPa・s以上18mPa・s未満であり、好ましくは5〜15mPa・sであり、より好ましくは7mPa・s以上12mPa・s未満である。本発明の光硬化性組成物の粘度を3mPa・s以上とすることにより、基板塗布適性の問題や膜の機械的強度の低下が生じにくい傾向にある。具体的には、粘度を3mPa・s以上とすることによって、組成物の塗布の際に面上ムラを生じたり、塗布時に基板から組成物が流れ出たりするのを抑止できる傾向にあり、好ましい。一方、本発明の光硬化性組成物の粘度を18mPa・s未満とすることにより、微細な凹凸パターンを有するモールドを組成物に密着させた場合でも、モールドの凹部のキャビティ内にも組成物が流れ込み、大気が取り込まれにくくなるため、バブル欠陥を引き起こしにくくなり、モールド凸部において光硬化後に残渣が残りにくくなり好ましい。
【0093】
(表面張力)
本発明の光硬化性組成物は、表面張力が、18〜30mN/mの範囲にあることが好ましく、20〜28mN/mの範囲にあることがより好ましい。このような範囲とすることにより、表面平滑性を向上させるという効果が得られる。
【0094】
(水分量)
なお、本発明の光硬化性組成物は、調製時における水分量が好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%、さらに好ましくは1.0質量%以下である。調製時における水分量を2.0質量%以下とすることにより、本発明の光硬化性組成物の保存性をより安定にすることができる。
【0095】
(調製)
本発明の光硬化性組成物は、上記各成分を混合した後、例えば、孔径0.05μm〜5.0μmのフィルターで濾過することによって溶液として調製することができる。前記光硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用する材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されない。
【0096】
[硬化膜]
次に、本発明の光硬化性組成物を用いた本発明の硬化膜(特に、微細凹凸パターン)について説明する。本発明では、本発明の光硬化性組成物を塗布して硬化して本発明の硬化膜を形成することができる。
【0097】
また、基板または、支持体上に本発明の光硬化性組成物を塗布し、該組成物からなる層を露光、硬化、必要に応じて乾燥(ベーク)させることにより、オーバーコート層や絶縁膜などの永久膜を作製することもできる。
【0098】
液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)においては、ディスプレイの動作を阻害しないようにするため、レジスト中の金属あるいは有機物のイオン性不純物の混入を極力避けることがのぞましく、その濃度としては、1000ppm以下、望ましくは100ppm以下にすることが必要である。
【0099】
液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)は、製造後にガロン瓶やコート瓶などの容器にボトリングし、輸送、保管されるが、この場合に、劣化を防ぐ目的で、容器内を不活性なチッソ、またはアルゴンなどで置換しておいても良い。また、輸送、保管に際しては、常温でも良いが、より永久膜の変質を防ぐため、−20℃から0℃の範囲に温度制御しても良い。勿論、反応が進行しないレベルで遮光する必要がある。
【0100】
[液晶表示装置用部材]
また、本発明の硬化物は、半導体集積回路、記録材料、あるいは液晶表示装置用部材として好ましく適用することができ、その中でも液晶表示装置部材であることがより好ましく、フラットパネルディスプレイなどのエッチングレジストとして適用することが特に好ましい。
【0101】
[硬化膜の製造方法]
以下において、本発明の光硬化性組成物を用いた硬化膜の製造方法について述べる。
本発明の光硬化性組成物は、光もしくは光及び熱により硬化させることが好ましい。具体的には、基板または、支持体上に少なくとも本発明の光硬化性組成物からなるパターン形成層を適用(通常は塗布)し、溶剤を乾燥させて本発明の光硬化性組成物からなる層(パターン形成層)を形成してパターン受容体を作製し、当該パターン受容体のパターン形成層表面にモールドを圧接し、モールドパターンを転写する加工を行い、微細凹凸パターン形成層を光照射および加熱により硬化させる。通常、光照射および加熱は複数回に渡って行われる。本発明の硬化膜の製造方法によるナノインプリントリソグラフィは、積層化や多重パターニングもでき、通常の熱インプリントと組み合わせて用いることもできる。
【0102】
本発明の硬化物は、一般によく知られた適用方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法などにより、本発明の光硬化性組成物を塗布することにより形成することができる。本発明の光硬化性組成物からなる層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.05μm〜30μmである。また、本発明の光硬化性組成物は、多重塗布してもよい。
【0103】
本発明の光硬化性組成物を塗布するための基板または支持体は、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、紙、SOG、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの半導体作製基板など特に制約されない。基板の形状は、板状でも良いし、ロール状でもよい。
【0104】
本発明の光硬化性組成物を硬化させる光としては特に限定されないが、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いても良いし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でも良い。
【0105】
露光に際しては、露光照度を1mW/cm〜50mW/cmの範囲にすることが望ましい。1mW/cm以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、50mW/cm以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。露光量は5mJ/cm〜1000mJ/cmの範囲にすることが望ましい。5mJ/cm未満では、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生しやすくなる。一方、1000mJ/cmを超えると組成物の分解による永久膜の劣化の恐れが生じる。
更に、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御しても良い。
【0106】
本発明の光硬化性組成物を硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分が好ましく、15〜45分がより好ましい。
【0107】
次に本発明で用いることのできるモールド材について説明する。本発明の光硬化性組成物を用いた光ナノインプリントリソグラフィは、モールド材および/または基板の少なくとも一方は、光透過性の材料を選択する必要がある。本発明に適用される光インプリントリソグラフィでは、基板の上に光硬化性組成物を塗布し、光透過性モールドを押し当て、モールドの裏面から光を照射し、光硬化性組成物を硬化させる。また、光透過性基板上に光硬化性組成物を塗布し、モールドを押し当て、モールドの裏面から光を照射し、光硬化性組成物を硬化させることもできる。
光照射は、モールドを付着させた状態で行ってもよいし、モールド剥離後に行ってもよいが、本発明では、モールドを密着させた状態で行うのが好ましい。
【0108】
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。モールドは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールドパターン形成方法は特に制限されない。
本発明において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであれば良い。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0109】
本発明の透明基板を用いた場合で使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの基板などが例示され、特に制約されない。形状は板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0110】
上記本発明で用いられるモールドは、本発明の光硬化性組成物とモールドとの剥離性を向上するために離型処理を行ったものを用いてもよい。シリコーン系やフッソ系などのシランカップリング剤による処理を行ったもの、例えば、ダイキン工業製、オプツールDSXや住友スリーエム製、Novec EGC−1720等の市販の離型剤も好適に用いることができる。
【0111】
本発明の硬化膜の製造方法を用いて光インプリントリソグラフィを行う場合、通常、モールドの圧力が10気圧以下で行うのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にあり、また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にあり好ましい。モールドの圧力は、モールド凸部の本発明の光硬化性組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
【0112】
本発明において、光インプリントリソグラフィにおける光照射は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、光硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて決定される。
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと光硬化性組成物の密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射しても良い。本発明において、好ましい真空度は、10−1Paから常圧の範囲で行われる。
【実施例】
【0113】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0114】
[実施例1]
(光硬化性組成物の調製)
下記重合性単量体AL−1(50質量%)、下記重合性単量体R−1(10質量%)、下記重合性単量体S−1(40質量%)、下記光重合開始剤P−1(重合性単量体の合計量に対して2質量%)、下記酸化防止剤A−1(重合性単量体の合計量に対して1質量%)、下記界面活性剤W−1(重合性単量体の合計量に対して0.1質量%)および下記界面活性剤W−2(重合性単量体の合計量に対して0.04質量%)を配合して、実施例1の光硬化性組成物を調製した。
【0115】
[実施例2〜8]
実施例1において、光硬化性組成物の各成分を、それぞれ、下記表に記載の化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜8の組成物を調製した。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
<アリルエステル化合物>
AL−1:マレイン酸ジアリル(東京化成製)、分子量196.20
AL−2:フマル酸ジアリル(ALFA製)、分子量196.20
AL−3:スクシン酸ジアリル(東京化成製)、分子量198.22
AL−4:アジピン酸ジアリル(東京化成製)、分子量226.27
AL−5:クエン酸トリアリル(東京化成製)、分子量312.32
【0119】
<アリルエーテル化合物>
AL−6:トリメチロールプロパンジアリルエーテル(Aldrich製)、分子量214.30
AL−7:テトラアリルオキシエタン(東京化成製)、分子量254.32
AL−8:フェニル酢酸アリル(東京化成製)、分子量176.21
AL−9:酢酸アリル(東京化成製)、分子量100.12
AL−10:1,2,4,6−テトラ−O−アセチル−3−O−アリル−β−D−グルコピラロース(東京化成製)、分子量444.43
【0120】
<1官能(メタ)アクリレート>
R−1:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103 信越化学製)、分子量234.32
R−2:ベンジルアクリレート(ビスコート#160:大阪有機化学社製)、分子量162.19
【0121】
<2官能(メタ)アクリレート>
S−1:ネオペンチルグリコールジアクリレート(日本化薬社製)、分子量212.24
S−2:1,4−ブタンジオールジアクリレート(ビスコート#195:大阪有機化学社製)、分子量198.22
【0122】
<3官能(メタ)アクリレート>
T−1:トリメチロールプロパントリアクリレート(アロニックスM−309:東亞合成社製)、分子量296.32
T−2:ウレタンアクリレート(UA−306H:共栄社製)、
【0123】
<4官能(メタ)アクリレート>
F−1:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(NKエステルA−TMMT:新中村化学製)、分子量352.34
【0124】
<光重合開始剤>
P−1:2,4,6−トリメチルベンゾイル−エトキシフェニル−ホスフィンオキシド(Lucirin TPO−L:BASF社製)
【0125】
<非イオン性界面活性剤>
W−1:非フッ素系界面活性剤(竹本油脂(株)製:パイオニンD6315)
W−2:フッ素系界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製:メガファックF780F)
【0126】
<離型剤>
O−1:変性シリコーンKF−410(信越化学製)
【0127】
[比較例1〜7]
実施例1において、光硬化性組成物の各成分を下記表に記載の化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1〜7の組成物を調製した。
【0128】
【表3】

【0129】
【表4】

【0130】
<光ナノインプリントリソグラフィの評価>
実施例1〜8および比較例1〜7により得られた組成物の各々について、下記評価方法に従って測定・評価した。
【0131】
<光硬化性組成物粘度の測定>
光硬化性組成物(硬化前)の粘度の測定は、東機産業(株)社製のRE−80L型回転粘度計を用い、25±0.2℃で測定した。
測定時の回転速度は、0.5mPa・s以上5mPa・s未満は100rpm、5mPa・s以上10mPa・s未満は50rpm、10mPa・s以上30mPa・s未満は20rpm、30mPa・s以上60mPa・s未満は10rpmで、それぞれ行い、その粘度範囲に応じて次のように分類し、評価した。
A:3mPa・s以上12mPa・s未満
B:12mPa・s以上18mPa・s未満
C:18mPa・s以上
【0132】
<硬化性>
各光硬化性組成物を調整し、膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートした。スピンコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm)を光源とするナノインプリント装置にセットした。次いで、モールドとして、10μmのライン/スペースパターンを有し、溝深さが4.0μmのポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング(株)製の「SILPOT184」を80℃で60分間で硬化させたもの)を材質とするものを用いた。装置内を真空とした後(真空度10Torr(約1.33kPa))、モールドを基板に圧着させ、窒素パージ(1.5気圧:モールド押し圧)を行い装置内を窒素置換した。これにモールドの裏面から照度10mW/cmで露光量400mJ/cmの条件で露光した。露光後、モールドを離し、レジストパターンを得た。該レジストパターンに関してベタつきの有無を確認し、硬化不良が起きていないか評価した。
A:ベタつきがなく、良好に硬化していた。
B:ベタつきはないものの、パターン隅の一部に硬化不良が見られた。再度モールドの裏面から照度10mW/cmで露光量200mJ/cmの条件で露光すると良好に硬化した。
C:ベタつきがあり、パターン全体が硬化不良を起こしていた。再度モールドの裏面から照度10mW/cmで露光量200mJ/cmの条件で露光しても硬化しなかった。
【0133】
<パターン精度の観察>
各光硬化性組成物を調整し、膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートした。スピンコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm)を光源とするナノインプリント装置にセットした。次いで、モールドとして、10μmのライン/スペースパターンを有し、溝深さが4.0μmのポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング(株)製の「SILPOT184」を80℃で60分間で硬化させたもの)を材質とするものを用いた。装置内を真空とした後(真空度10Torr(約1.33kPa))、モールドを基板に圧着させ、窒素パージ(1.5気圧:モールド押し圧)を行い装置内を窒素置換した。これにモールドの裏面から照度10mW/cmで露光量400mJ/cmの条件で露光した。露光後、モールドを離し、レジストパターンを得た。該レジストパターンのパターン形状を走査型電子顕微鏡もしくは光学顕微鏡にて観察し、パターン形状を以下のように評価した。
A:モールドのパターン形状の元となる原版のパターンとほぼ同一である
B:モールドのパターン形状の元となる原版のパターン形状と一部異なる部分(原版のパターンと10%未満の範囲)がある
C:モールドのパターン形状の元となる原版のパターン形状と一部異なる部分(原版のパターンと10%以上20%未満の範囲)がある
D:モールドのパターン形状の元となる原版のパターンとはっきりと異なる、あるいはパターンの膜厚が原版のパターンと20%以上異なる
【0134】
<露光後の硬化膜密着性>
光硬化性組成物を窒化ケイ素基板上に回転塗布した後、高圧水銀ランプを用いて、露光量が240mJ/cm2となるように紫外線を照射し、厚さ3μmの硬化膜を形成した。紫外線照射直後(30分以内)および照射後24時間経過した硬化膜に粘着テープを貼り付け、引き剥がした時に、テープ側に光硬化した光硬化性レジストパターンが付着あるか否か目視観察で判断し、以下のように評価した。結果を下記表に示す。なお、密着テープとして、日東電工社製、商品名セロハンテープNo.29を用いた。
A:テープ側にパターンの付着が無かった。(付着率5%未満)
B:パターンの一部がテープに剥ぎ取られた。(付着率5%以上50%未満)
C:パターンの半分以上がテープに剥ぎ取られた。(付着率50%以上95%未満)
D:パターンが完全にテープに剥ぎ取られた。(付着率95%以上)
【0135】
【表5】

【0136】
実施例1〜実施例8は、いずれも光硬化性組成物(硬化前)の粘度が低く光硬化性も良好で、非常に高い転写パターン精度でありながら、相対的に密着性にも優れており、総合的に優れていることが分かった。また、紫外線照射後24時間経過した硬化膜の密着性が紫外線照射直後よりも良化するという予期せぬ効果が見られた。この予期せぬ効果は、硬化膜の経時劣化によるはがれ抑止、すなわち硬化膜の長寿命化という観点から極めて有為である。
比較例1および比較例4の組成物は、本発明の光硬化性組成物に比べて密着性が悪く、経時後の密着性良化の効果も小さかった。
比較例2および比較例3の組成物は、本発明の光硬化性組成物に比べて光硬化性が劣り、パターンを形成できなかった。
比較例5の組成物は、本発明の光硬化性組成物に比べ密着性が悪く、経時後の密着性良化の効果も小さかった。
比較例6の組成物は、本発明の光硬化性組成物に比べ粘度が高く、パターン精度が劣る結果となった。
比較例7の組成物は、本発明の光硬化性組成物に比べ粘度が高く、パターン精度、密着性いずれも劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明により、低粘度で高い転写パターン精度を有しつつ、光照射後の密着性、特に経時後の密着性に優れたナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物を提供することが可能になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物および/または下記一般式(2)で表される化合物の少なくとも一種と、下記一般式(3)で表される化合物の少なくとも1種を質量比20:80〜80:20の割合で含む、光硬化性組成物。
【化1】

(一般式(1)および一般式(2)中、Xは、それぞれ、有機基を表し、nは、それぞれ、1〜4の整数を表す。一般式(3)中、Yは有機基を表し、mは1〜4の整数を表し、Rは水素またはメチル基を表す。但し、一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物および一般式(3)で表される化合物は、それぞれ、分子量が150〜400である。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物を含む、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
一般式(1)または一般式(2)におけるX、および一般式(3)におけるYが、それぞれ、炭化水素基である、請求項1または2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
一般式(3)において、Rが水素原子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
一般式(1)または一般式(2)におけるnが、2または3である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物および一般式(3)で表される化合物の合計量が、光硬化性組成物の80質量%以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物を含む液晶表示装置用部材。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を基板上に適用してパターン形成する工程と、前記パターン形成層にモールドに押圧する工程と、前記パターン形成層に光照射する工程を含むことを特徴とする硬化物の製造方法。

【公開番号】特開2010−209250(P2010−209250A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58304(P2009−58304)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】