説明

光結合用光導波路の製造方法

【課題】光ファイバコアの細径化・受光径の小面積化に対応することが可能な光結合用光導波路の製造方法を提供する。
【解決手段】コア部又はクラッド部のいずれかを成形する工程で、コア部又はクラッド部のいずれかに、コア部の入射側及び出射側に連続する各位置となり且つ入射側及び出射側よりも各々大きな直径となる光入射側凸レンズ及び光出射側凸レンズを一体に成形する。このような製造方法を採用して光透過性の透明な光結合用光導波路を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア部とクラッド部とを備えて構成されるとともに、光ファイバと光素子部品との間に配置される光透過性の透明な光結合用光導波路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバと光素子部品との間に介在する光結合用光導波路は、例えば本願出願人が先に提案した下記特許文献1に光コネクタ用スリーブとして開示されている。図7において、光コネクタ用スリーブ1は、コア部2とクラッド部3とを備えて略円柱形状に形成されている。コア部2は、次第に縮径するテーパ状の側部4を形成してなる略截頭円錐状の導波路5と、円形フランジ状のガイド6とを有している。導波路5の大きな径側の端部には、レンズ7が一体に形成されている。これに対して、導波路5の小さな径側の端部は、円形で平坦な端面となるように形成されている。クラッド部3は、コア部2の側部4に密着するとともに、外形がガイド6と面一となるように形成されている。
【特許文献1】特開2001−133665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術にあっては、コア部2の導波路5の一方のみにレンズ7が一体に形成されているが、近年の伝送容量増大の傾向においては、光ファイバコアの細径化・受光径の小面積化に対する光結合効率確保の観点から、受発光部ともに小さい径の端部(導波路5の光出射側)にもレンズが必要であると本願発明者は考えている(導波路5のテーパ形状により、出射光NAは入射光NAよりも大きくなる。マルチモードファイバにおけるモード分散の影響は、光ファイバへの入射光NAが大きいほど、すなわち光ファイバ内での光線の反射角が大きいほど顕著になり、結果、光リンクの伝送帯域は劣化する。よって、発光側では光出射側にもレンズが必要になると考えている)。
【0004】
光ファイバコアの細径化・受光径の小面積化により導波路5の小さい径の端部(光出射側)にレンズを一体に形成することを上記従来技術の形状に基づいて考えると、上記小さい径の端部が非常に小さいことからレンズが極小なものとなってしまい、樹脂成形の面や特性の面で問題点(金型加工精度や伝送損失)が生じてしまう可能性を有している。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、光ファイバコアの細径化・受光径の小面積化に対応することが可能な光結合用光導波路の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の光結合用光導波路の製造方法は、コア部とクラッド部とを備えて構成されるとともに、光ファイバと光素子部品との間に配置される光透過性の透明な光結合用光導波路の製造方法において、前記コア部又は前記クラッド部のいずれかを成形する工程で、該いずれかに前記コア部の入射側及び出射側に連続する各位置となり且つ該入射側及び該出射側よりも各々大きな直径となる光入射側凸レンズ及び光出射側凸レンズを一体に成形することを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の本発明の光結合用光導波路の製造方法は、請求項1に記載の光結合用光導波路の製造方法において、前記光入射側凸レンズ及び前記光出射側凸レンズを有するとともに、これらの間にコア溝及びクラッド溝を有するクラッド部基材を成形する工程と、前記コア溝にコア材料を充填して前記コア部を成形する工程と、前記クラッド溝にクラッド材料を充填して前記コア部の上にオーバークラッド部を成形する工程と、を含むことを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の本発明の光結合用光導波路の製造方法は、請求項2に記載の光結合用光導波路の製造方法において、前記オーバークラッド部と前記クラッド部基材とにより全体の外観形状を略円柱形状又は略半円柱形状に成形するとともに、円柱両端面又は半円柱両端面から前記光入射側凸レンズ及び前記光出射側凸レンズが突出しない形状にも成形することを特徴としている。
【0009】
請求項4記載の本発明の光結合用光導波路の製造方法は、請求項1に記載の光結合用光導波路の製造方法において、コア部入射側端面及びコア部出射側端面を有するように前記コア部を成形する工程と、前記コア部入射側端面及び前記コア部出射側端面を露出させつつ前記コア部をクラッド材料の中に埋めるようにして光導波路部品を作製する工程と、前記光入射側凸レンズ及び前記光出射側凸レンズを有するとともに、これらの間に前記光導波路部品を収容する光導波路部品収容凹部を有する基材を成形する工程と、前記光導波路部品収容凹部に前記光導波路部品を収容固定する工程と、を含むことを特徴としている。
【0010】
請求項5記載の本発明の光結合用光導波路の製造方法は、請求項4に記載の光結合用光導波路の製造方法において、前記基材を略円柱形状又は略半円柱形状の外観形状に成形するとともに、円柱両端面又は半円柱両端面から前記光入射側凸レンズ及び前記光出射側凸レンズが突出しない形状にも成形することを特徴としている。
【0011】
請求項6記載の本発明の光結合用光導波路の製造方法は、請求項5に記載の光結合用光導波路の製造方法において、前記基材を前記略円柱形状の外観形状に成形する場合、前記光導波路部品収容凹部に連続する光導波路部品差込開口部を前記基材に形成することを特徴としている。
【0012】
請求項7記載の本発明の光結合用光導波路の製造方法は、請求項1に記載の光結合用光導波路の製造方法において、コア部成形用貫通孔を有するように前記クラッド部を成形する工程と、前記コア部成形用貫通孔にコア材料を充填して前記コア部を成形するとともに、これと同時に前記コア部成形用貫通孔の外側に前記コア材料によって前記光入射側凸レンズ及び前記光出射側凸レンズを前記コア部に一体成形する工程と、を含むことを特徴としている。
【0013】
請求項8記載の本発明の光結合用光導波路の製造方法は、請求項7に記載の光結合用光導波路の製造方法において、全体の外観形状を略円柱形状に成形するとともに、円柱両端面から前記光入射側凸レンズ及び前記光出射側凸レンズが突出しない形状にも成形することを特徴としている。
【0014】
請求項9記載の本発明の光結合用光導波路の製造方法は、請求項1ないし請求項8いずれか記載の光結合用光導波路の製造方法において、前記コア部を、前記入射側から前記出射側に向けて幅狭となるテーパ形状の側面を有する形状に成形することを特徴としている。
【0015】
以上のような特徴を有する本発明によれば、コア部の両端に、このコア部の入射側及び出射側よりも大きなレンズとなる光入射側凸レンズ及び光出射側凸レンズが一体に成形される。これにより光結合用光導波路は、光ファイバコアの細径化・受光径の小面積化に対応可能なものとなる。光入射側凸レンズ及び光出射側凸レンズは、コア部の入射側及び出射側よりも大きなレンズとなることから、樹脂成形の面や特性の面で良好な結果が得られる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載された本発明によれば、光ファイバコアの細径化・受光径の小面積化に対応することが可能な光結合用光導波路の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【0017】
請求項2に記載された本発明によれば、クラッド部基材に成形されたコア溝にコア材料を充填してコア部を成形すると、コア部の入射側及び出射側とクラッド部基材に成形された光入射側凸レンズ及び光出射側凸レンズとが一体化するので、このような方法によって光ファイバコアの細径化・受光径の小面積化に対応することが可能な光結合用光導波路を製造することができるという効果を奏する。
【0018】
請求項3に記載された本発明によれば、全体の外観形状が略円柱形状であり、光入射側凸レンズ及び光出射側凸レンズが端面から突出しない形状であることから、光コネクタ用スリーブとして好適な形状の光結合用光導波路を製造することができるという効果を奏する。また、光入射側凸レンズ及び光出射側凸レンズの損傷、汚染を防止することができるという効果を奏する。
【0019】
請求項4に記載された本発明によれば、コア部を有する光導波路部品を光入射側凸レンズ及び光出射側凸レンズを有するクラッド部基材の光導波路部品収容凹部に収容すると、コア部のコア部入射側端面及びコア部出射側端面とクラッド部基材の光入射側凸レンズ及び光出射側凸レンズとが連続するので、このような方法によって光ファイバコアの細径化・受光径の小面積化に対応することが可能な光結合用光導波路を製造することができるという効果を奏する。
【0020】
請求項5に記載された本発明によれば、全体の外観形状が略円柱形状又は略半円柱形状であり、光入射側凸レンズ及び光出射側凸レンズが端面から突出しない形状であることから、光入射側凸レンズ及び光出射側凸レンズの損傷、汚染を防止することができるという効果を奏する。また、特に略円柱形状の場合、光コネクタ用スリーブとして好適な形状の光結合用光導波路を製造することができるという効果を奏する。
【0021】
請求項6に記載された本発明によれば、光導波路部品差込開口部を介して光導波路部品を差し込むだけで簡単に光導波路部品を光導波路部品収容凹部に収容することができるという効果を奏する。
【0022】
請求項7に記載された本発明によれば、コア部の成形と同時にこのコア部の両端に光入射側凸レンズ及び光出射側凸レンズとが一体化するので、このような方法によって光ファイバコアの細径化・受光径の小面積化に対応することが可能な光結合用光導波路を製造することができるという効果を奏する。
【0023】
請求項8に記載された本発明によれば、全体の外観形状が略円柱形状であり、光入射側凸レンズ及び光出射側凸レンズが端面から突出しない形状であることから、光コネクタ用スリーブとして好適な形状の光結合用光導波路を製造することができるという効果を奏する。また、光入射側凸レンズ及び光出射側凸レンズの損傷、汚染を防止することができるという効果を奏する。
【0024】
請求項9に記載された本発明によれば、テーパ形状によってコア部を伝播する光を次第に集光させることができるという効果を奏する。コア部において集光された光は、さらにクラッド部の光出射側凸レンズによって集光されることから、結果、より好適に光ファイバコアの細径化・受光径の小面積化に対応することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の光結合用光導波路の製造方法に係る図であり、(a)は光結合用光導波路の断面図、(b)は光結合用光導波路を発光側に配置した時の断面図、(c)は光結合用光導波路を受光側に配置した時の断面図である。また、図2は光結合用光導波路を備える光コネクタの図であり、(a)は光コネクタの分解斜視図、(b)は雌側の光コネクタの断面図である。
【0026】
図1において、引用符号11は本発明の方法により製造された光結合用光導波路の第一の例を示している。光結合用光導波路11は、光透過性を有する透明な合成樹脂製の部材であって、コア部12とクラッド部13とを備えて構成されている。光結合用光導波路11は、二色成形によってコア部12をクラッド部13内に埋めた状態となるように成形されている。また、光結合用光導波路11は、本形態において、最終形状が略円柱形状となるように成形されている(最終形状は一例であり、本形態においては後述する光コネクタの仕様に合わせているものとする)。
【0027】
コア部12は、例えば透明なポリカーボネート(PC。この材料に限定されないものとする)を用いて成形されており、次第に縮径するテーパ状の側面14を有するとともに、コア部入射側端面15及びコア部出射側端面16を有して、光ファイバ17及び光素子部品(18、19)の光軸方向にのびる、比較的細長い略截頭円錐状の図示形状に形成されている。
【0028】
側面14は、コア部入射側端面15からコア部出射側端面16に向けて幅狭となるように形成されている。コア部入射側端面15及びコア部出射側端面16は、共に円形の平坦な端面であって、側面14がテーパ状であることからコア部入射側端面15の方がコア部出射側端面16よりも大きな直径に形成されている。尚、コア部12は、上記形状に限らず、真っ直ぐな円柱形状等に形成しても良いものとする(光ファイバ17を適宜長さに切断してこれを用いることも可能であるものとする)。本形態においては、テーパ状に形成することにより、調心位置からの位置ズレが生じても光結合効率が劣化し難くなるようになっている。
【0029】
クラッド部13は、例えば透明なポリメタクリル酸メチル(PMMA(メタクリル樹脂)。この材料に限定されないものとする)を用いて成形されており、上記の如く内部にコア部12を埋めた状態で外観形状が略円柱形状となるように形成されている。引用符号20は側面を示している。また、引用符号21はクラッド部入射側端面、引用符号22はクラッド部入射側端面21の反対側に位置するクラッド部出射側端面を示している。
【0030】
クラッド部入射側端面21及びクラッド部出射側端面22は、共に円形の平坦な端面であって、各中央には凹部23、24が所定の深さで形成されている。クラッド部入射側端面21の凹部23には、この底面にコア部12のコア部入射側端面15に連続する光入射側凸レンズ25が形成されている。また、クラッド部出射側端面22の凹部24にも同様に、この底面にコア部12のコア部出射側端面16に連続する光出射側凸レンズ26が形成されている。光入射側凸レンズ25及び光出射側凸レンズ26は、図示の如くの凸レンズであって、本形態においては非球面となるように形成されている(レンズ面に無反射膜コートを施しても良いものとする)。光入射側凸レンズ25及び光出射側凸レンズ26は、クラッド部入射側端面21及びクラッド部出射側端面22から突出しないような高さ寸法で形成されている(光入射側凸レンズ25及び光出射側凸レンズ26の損傷、汚染防止に効果的である)。
【0031】
コア部12、光入射側凸レンズ25、及び光出射側凸レンズ26は、これらの中心が原則、同一軸上(光軸上)になるように配置形成されている。
【0032】
図1(b)において、以上のような光結合用光導波路11は、光ファイバ17と、光素子部品に含まれる発光素子18との間に介在させて用いる際に、光ファイバ17側に光出射側凸レンズ26が位置し、発光素子18側に光入射側凸レンズ25が位置するような使用形態になっている。また、図1(c)において、光素子部品に含まれる受光素子19と、光ファイバ17との間に介在させて用いる際には、受光素子19側に光出射側凸レンズ26が位置し、光ファイバ17側に光入射側凸レンズ25が位置するような使用形態になっている。
【0033】
光ファイバ17は、マルチモード光ファイバであって、本形態においては、PCS(Polymer Clad Silica)[コア径:φ200μm、クラッド径:φ230μm]が用いられている(一例であるものとする)。発光素子18は、本形態において、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)[発光波長850nm]が用いられている。尚、VCSEL以外としては、LDやLEDが挙げられるものとする。受光素子19は、本形態において、Si−PINフォトダイオードが用いられている。尚、Si−PINフォトダイオード以外としては、例えばGaAs系フォトダイオードが挙げられるものとする。
【0034】
次に、図2を参照しながら光結合用光導波路11を備える光コネクタ31について簡単に説明する(詳細な構造に関しては、背景技術の欄の特許文献1に開示されている)。
【0035】
図2において、光コネクタ31は、雄型の光コネクタ32と雌型の光コネクタ33とを備えて構成されており、これらが嵌合することにより光学的な結合がなされるようになっている。雄型の光コネクタ32は、一対の光ファイバケーブル34の端末に設けられており、雌型の光コネクタ33は図示しない回路基板に接続固定されている。
【0036】
光ファイバケーブル34の端末には、フェルール(図示省略)とスプリング(図示省略)とが設けられている。雄型の光コネクタ32は、上記フェルールを収容するハウジング35と、ハウジング35の後部に嵌合して上記スプリングを支持するスプリングキャップ36とを備えて構成されている。
【0037】
一方、雌型の光コネクタ33は、ハウジング37と、本発明の光結合用光導波路11と、発光素子部品38と、受光素子部品39と、キャップ40とを備えて構成されている。ハウジング37には、雄型の光コネクタ32が嵌合する嵌合部41と、この嵌合部41の内部に突出する筒部42と、発光素子部品38及び受光素子部品39が収容される収容部43とが形成されている。
【0038】
筒部42には、光ファイバケーブル34の端末のフェルールが差し込まれるようになっている。また、筒部42には、光結合用光導波路11が収容されるようになっている。筒部42に収容された光結合用光導波路11は、フェルールの端末に露出する光ファイバ端面と、発光素子部品38又は受光素子部品39との間に介在するようになっている。
【0039】
光ファイバ端面と光結合用光導波路11との位置は、筒部42の構造やフェルールの構造によって位置決めがなされるようになっている(結合損失が小さくなるように寸法設定がなされている)。収容部43に収容された発光素子部品38及び受光素子部品39は、キャップ40により押圧されて、光結合用光導波路11との位置が安定するようになっている(結合損失が小さくなるように寸法設定がなされている)。
【0040】
尚、上記説明では発光側、受光側とも光結合用光導波路11を用いていることから、発光側、受光側で形状及び材料が同一のものとなっている。しかしながらこれに限らず、発光側、受光側に対し各々最適化した形状や材料となる光結合用光導波路を用いても良いものとする。
【0041】
続いて、図3ないし図6を参照しながら光結合用光導波路の製造方法の他の例について説明する。図3は第二の例及び第三の例であり、(a)はクラッド部基材の斜視図、(b)はクラッド部基材の断面図、(c)はコア部成形後の斜視図、(d)はコア部成形後の断面図、(e)はオーバークラッド部成形後の斜視図(第二の例)、(f)はオーバークラッド部成形後の断面図(第二の例)、(g)はオーバークラッド部成形後の斜視図(第三の例)、(h)はオーバークラッド部成形後の断面図(第三の例)である。
【0042】
また、図4は第四の例であり、(a)は分解斜視図、(b)は製造後の斜視図である。さらに、図5は第五の例であり、(a)は光導波路部品とクラッド部基材の斜視図、(b)は光導波路部品をクラッド部基材に収容した状態の斜視図である。さらにまた、図6は第六の例であり、(a)及び(b)は光結合用光導波路の断面図である。
【0043】
尚、以下で説明する光結合用光導波路の機能は、上記形態の光結合用光導波路11(図1参照)と基本的に同じであり、各部分の詳細な説明は省略するものとする。また、使用する樹脂材料も最適であれば同じであり、説明は省略するものとする。
【0044】
<第二の例>:図3(e)に示す如くの光結合用光導波路51は、幾つかの工程を経て製造されている。具体的には、先ず、図3(a)及び(b)に示す如くのクラッド部基材52を成形する。クラッド部基材52は、クラッド部の一部を構成するものであって、所望のクラッド材料を用いて略半円柱形状に成形されている。クラッド部基材52には、光入射側凸レンズ53及び光出射側凸レンズ54が形成されている。また、クラッド部基材52には、コア溝55及びクラッド溝56が形成されている。コア溝55及びクラッド溝56は、光入射側凸レンズ53及び光出射側凸レンズ54の間に形成されている。
【0045】
コア溝55は、断面視矩形状に形成されている。また、コア溝55は、光入射側凸レンズ53から光出射側凸レンズ54に向けて幅狭となるように形成されている。コア溝55は、クラッド溝56の底面を凹ますようにして形成されている。クラッド溝56は、堰状の一対のリブ57によって形成されている。光入射側凸レンズ53及び光出射側凸レンズ54は、非球面となるように形成されている。また、光入射側凸レンズ53及び光出射側凸レンズ54は、コア溝55の両端よりも大きな直径を有するように形成されている。
【0046】
クラッド部基材52の成形後は、図3(c)及び(d)に示す如く、コア溝55にコア材料を充填してコア部58を成形する。コア材料は、本形態において、ディスペンサを用いて充填されるようになっている。コア材料は、クラッド溝56の底面に面一となるまで充填されるようになっている。コア溝55に充填されたコア材料が硬化すると、コア部58の成形が完了するとともに、コア部58と光入射側凸レンズ53及び光出射側凸レンズ54とが一体化する。
【0047】
コア部58の成形が完了すると、最後に、図3(e)及び(f)に示す如く、クラッド溝56にクラッド材料を充填してコア部58の上にオーバークラッド部59を成形する。クラッド材料は、ここでは一対のリブ57の上面に面一となるまで充填されるようになっている。オーバークラッド部59は、コア部58を覆った状態でクラッド部基材52に一体化する。オーバークラッド部59は、クラッド部の一部を構成しているものとする。
【0048】
オーバークラッド部59を成形すると、光結合用光導波路51の一連の製造が完了する。光結合用光導波路51は、この全体の外観形状が略半円柱形状に形成されている。また、光結合用光導波路51は、光入射側凸レンズ53及び光出射側凸レンズ54が端面から突出しない形状に形成されている(凹部61を形成してクラッド部入射側端面62及びクラッド部出射側端面63から突出しないようになっている)。
【0049】
<第三の例>:図3(g)に示す如くの光結合用光導波路51′は、幾つかの工程を経て製造されている。具体的には、先ず、図3(a)及び(b)に示す如くのクラッド部基材52を成形する。次に、図3(c)及び(d)に示す如く、コア溝55にコア材料を充填してコア部58を成形する。最後に、図3(g)及び(h)に示す如く、クラッド部基材52の上にオーバークラッド部60を成形(オーバークラッド部60はクラッド部の一部を構成するものとする)すると、光結合用光導波路51′の一連の製造が完了する。光結合用光導波路51′は、この全体の外観形状が略円柱形状に形成されている。また、光結合用光導波路51は、光入射側凸レンズ53及び光出射側凸レンズ54が端面から突出しない形状に形成されている(凹部61′を形成してクラッド部入射側端面62′及びクラッド部出射側端面63′から突出しないようになっている)。
【0050】
<第四の例>:図4(b)に示す如くの光結合用光導波路71は、幾つかの工程を経て製造されている。具体的には、先ず、コア部入射側端面及びコア部出射側端面を有するコア部72を成形する。次に、コア部72をクラッド材料の中に埋めるようにして、図4(a)に示す如くの光導波路部品73を作製する(光導波路部品の作製に関する他の方法は後述する)。光導波路部品73は、平面視矩形となる板状に作製されている。光導波路部品73は、この端面にコア部72のコア部入射側端面及びコア部出射側端面が露出するように作製されている。
【0051】
光導波路部品73とは別に図4(a)に示す如くの基材74を成形する。基材74は、コア部入射側端面及びコア部出射側端面よりも径の大きな光入射側凸レンズ75及び光出射側凸レンズ76を有しており、全体の外観形状が略円柱形状となるように形成されている。基材74は、光入射側凸レンズ75及び光出射側凸レンズ76が端面から突出しない形状に形成されている(凹部77を形成してクラッド部入射側端面78及びクラッド部出射側端面79から突出しないようになっている)。基材74は、クラッド部の一部を構成するようになっている。このような基材74には、この内部に光導波路部品73を収容するための光導波路部品差込開口部80及び光導波路部品収容凹部81が形成されている。
【0052】
最後に、光導波路部品73を光導波路部品差込開口部80を介して光導波路部品収容凹部81に収容し例えば接着剤等で固定すると、図4(b)に示す如く、光結合用光導波路71の一連の製造が完了する。
【0053】
尚、光導波路部品の製造方法に関して補足すると、光導波路部品は、RIE(Reactive Ion Etching)法、直接露光法、インプリンティング法、ソフトモールド法、フォトブリーチング法など、光導波路を高精度、低損失かつ高信頼で製作することができる方法により得られるものとする。コア部はクラッド内に埋め込まれており、材料は樹脂、ガラスのいずれであっても製作可能であるものとする。このような光導波路部品は、光導波路の透過率や経時劣化等特性に優れた材料選定が可能になるという利点を有している。
【0054】
<第五の例>:図5(b)に示す如くの光結合用光導波路51′は、幾つかの工程を経て製造されている。具体的には、先ず、図5(a)に示す如くの光導波路部品73を作製する(作製は第四の例を参照)。
【0055】
次に、光導波路部品73とは別に図5(a)に示す如くの基材82を成形する(基材82はクラッド部の一部を構成するものとする)。基材82には、光入射側凸レンズ75及び光出射側凸レンズ76が形成されている。また、基材82には、光入射側凸レンズ75及び光出射側凸レンズ76の間に光導波路部品73を収容するための光導波路部品収容凹部83が形成されている。
【0056】
最後に、図5(b)に示す如く、光導波路部品73を光導波路部品収容凹部83に収容し例えば接着剤等で固定すると、第五の例の光結合用光導波路71′の一連の製造が完了する。
【0057】
<第六の例>:図6(a)に示す如くの光結合用光導波路91は、幾つかの工程を経て製造されている。具体的には、先ず、クラッド部92を成形する。このクラッド部92は、円形の端面93、94と側面95とを有しており、中央にコア部成形用貫通孔96が形成されている。このコア部成形用貫通孔96は、テーパ状に形成されている。コア部成形用貫通孔96は、この一端が凹部97の底面に開口するように形成されている。また、コア部成形用貫通孔96は、この他端が端面94に開口するように形成されている。凹部97は、端面93に形成されている。
【0058】
クラッド部92の成形後はコア部98を成形する。コア部98の成形は、コア部成形用貫通孔96にコア材料を充填するとともに、これと同時にコア部成形用貫通孔96の外側に上記コア材料によって光入射側凸レンズ99及び光出射側凸レンズ100を一体に成形するようになっている。光入射側凸レンズ99は、クラッド部92の端面94に一体成形された光入射側端部101の凹部102に形成されている。一方、光出射側凸レンズ100は、クラッド部92の凹部97に形成されている。
【0059】
光入射側凸レンズ99及び光出射側凸レンズ100は、コア部入射側及びコア部出射側よりも大きな直径となり、且つ端面93及び光入射側端部101の端面103から突出しない形状に形成されている。コア部98の成形が完了すると全体の外観形状が略円柱形状となる光結合用光導波路91の一連の製造が完了する。
【0060】
尚、上記に限らず次のように製造しても良いものとする。すなわち、図6(b)に示す如く、先ず、クラッド部104を成形する。このクラッド部104は、円形の端面105、106と側面107とを有しており、中央にコア部成形用貫通孔108が形成されている。このコア部成形用貫通孔108は、テーパ状に形成されている。コア部成形用貫通孔108は、この一端が凹部109の底面に開口するように形成されている。また、コア部成形用貫通孔108は、この他端が端面106に開口するように形成されている。凹部109は、端面105に形成されている。
【0061】
クラッド部104の成形後はコア部110を成形する。コア部110の成形は、コア部成形用貫通孔108にコア材料を充填するとともに、これと同時にコア部成形用貫通孔108の外側に上記コア材料によって光入射側凸レンズ111及び光出射側凸レンズ112を一体に成形するようになっている。光入射側凸レンズ111は、クラッド部104の凹部109に形成されている。一方、光出射側凸レンズ112は、端面106に一体成形された光出射側端部113の凹部114に形成されている。
【0062】
光入射側凸レンズ111及び光出射側凸レンズ112は、コア部入射側及びコア部出射側よりも大きな直径となり、且つ端面105及び光出射側端部113の端面115から突出しない形状に形成されている。コア部110の成形が完了すると全体の外観形状が略円柱形状となる光結合用光導波路116の一連の製造が完了する。
【0063】
以上、図1ないし図6を参照しながら説明してきたように、各例とも光ファイバコアの細径化・受光径の小面積化に対応することが可能な光結合用光導波路を製造することができるという効果を奏する。
【0064】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の光結合用光導波路の製造方法に係る図であり、(a)は光結合用光導波路の断面図、(b)は光結合用光導波路を発光側に配置した時の断面図、(c)は光結合用光導波路を受光側に配置した時の断面図である。
【図2】光結合用光導波路を備える光コネクタの図であり、(a)は光コネクタの分解斜視図、(b)は雌側の光コネクタの断面図である。
【図3】光結合用光導波路の製造方法に係る第二の例及び第三の例であり、(a)はクラッド部基材の斜視図、(b)はクラッド部基材の断面図、(c)はコア部成形後の斜視図、(d)はコア部成形後の断面図、(e)はオーバークラッド部成形後の斜視図(第二の例)、(f)はオーバークラッド部成形後の断面図(第二の例)、(g)はオーバークラッド部成形後の斜視図(第三の例)、(h)はオーバークラッド部成形後の断面図(第三の例)である。
【図4】光結合用光導波路の製造方法に係る第四の例であり、(a)は分解斜視図、(b)は製造後の斜視図である。
【図5】光結合用光導波路の製造方法に係る第五の例であり、(a)は分解斜視図、(b)は製造後の斜視図である。
【図6】光結合用光導波路の製造方法に係る第六の例であり、(a)及び(b)は光結合用光導波路の断面図である。
【図7】従来例の光結合用光導波路の断面図である。
【符号の説明】
【0066】
11、51、51′、71、71′、91、116 光結合用光導波路
12、58、72、98、110 コア部
13、92、104 クラッド部
14 側面
15 コア部入射側端面
16 コア部出射側端面
17 光ファイバ(細径コア光ファイバ)
18 発光素子(光素子部品)
19 受光素子(光素子部品)
20 側面
21、62、62′、78 クラッド部入射側端面
22、63、63′、79 クラッド部出射側端面
23、24、61、61′、77 凹部
25、53、75、99、111 光入射側凸レンズ
26、54、76、100、112 光出射側凸レンズ
31 光コネクタ
32 雄型の光コネクタ
33 雌型の光コネクタ
34 光ファイバケーブル
35 ハウジング
36 スプリングキャップ
37 ハウジング
38 発光素子部品
39 受光素子部品
40 キャップ
41 嵌合部
42 筒部
43 収容部
52 クラッド部基材(クラッド部)
55 コア溝
56 クラッド溝
59、60 オーバークラッド部(クラッド部)
73 光導波路部品
74、82 基材(クラッド部)
80 光導波路部品差込開口部
81、83 光導波路部品収容凹部
96、108 コア部成形用貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部とクラッド部とを備えて構成されるとともに、光ファイバと光素子部品との間に配置される光透過性の透明な光結合用光導波路の製造方法において、
前記コア部又は前記クラッド部のいずれかを成形する工程で、該いずれかに前記コア部の入射側及び出射側に連続する各位置となり且つ該入射側及び該出射側よりも各々大きな直径となる光入射側凸レンズ及び光出射側凸レンズを一体に成形する
ことを特徴とする光結合用光導波路の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光結合用光導波路の製造方法において、
前記光入射側凸レンズ及び前記光出射側凸レンズを有するとともに、これらの間にコア溝及びクラッド溝を有するクラッド部基材を成形する工程と、
前記コア溝にコア材料を充填して前記コア部を成形する工程と、
前記クラッド溝にクラッド材料を充填して前記コア部の上にオーバークラッド部を成形する工程と、
を含む
ことを特徴とする光結合用光導波路の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の光結合用光導波路の製造方法において、
前記オーバークラッド部と前記クラッド部基材とにより全体の外観形状を略円柱形状又は略半円柱形状に成形するとともに、円柱両端面又は半円柱両端面から前記光入射側凸レンズ及び前記光出射側凸レンズが突出しない形状にも成形する
ことを特徴とする光結合用光導波路の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の光結合用光導波路の製造方法において、
コア部入射側端面及びコア部出射側端面を有するように前記コア部を成形する工程と、
前記コア部入射側端面及び前記コア部出射側端面を露出させつつ前記コア部をクラッド材料の中に埋めるようにして光導波路部品を作製する工程と、
前記光入射側凸レンズ及び前記光出射側凸レンズを有するとともに、これらの間に前記光導波路部品を収容する光導波路部品収容凹部を有する基材を成形する工程と、
前記光導波路部品収容凹部に前記光導波路部品を収容固定する工程と、
を含む
ことを特徴とする光結合用光導波路の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の光結合用光導波路の製造方法において、
前記基材を略円柱形状又は略半円柱形状の外観形状に成形するとともに、円柱両端面又は半円柱両端面から前記光入射側凸レンズ及び前記光出射側凸レンズが突出しない形状にも成形する
ことを特徴とする光結合用光導波路の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の光結合用光導波路の製造方法において、
前記基材を前記略円柱形状の外観形状に成形する場合、前記光導波路部品収容凹部に連続する光導波路部品差込開口部を前記基材に形成する
ことを特徴とする光結合用光導波路の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の光結合用光導波路の製造方法において、
コア部成形用貫通孔を有するように前記クラッド部を成形する工程と、
前記コア部成形用貫通孔にコア材料を充填して前記コア部を成形するとともに、これと同時に前記コア部成形用貫通孔の外側に前記コア材料によって前記光入射側凸レンズ及び前記光出射側凸レンズを前記コア部に一体成形する工程と、
を含む
ことを特徴とする光結合用光導波路の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の光結合用光導波路の製造方法において、
全体の外観形状を略円柱形状に成形するとともに、円柱両端面から前記光入射側凸レンズ及び前記光出射側凸レンズが突出しない形状にも成形する
ことを特徴とする光結合用光導波路の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8いずれか記載の光結合用光導波路の製造方法において、
前記コア部を、前記入射側から前記出射側に向けて幅狭となるテーパ形状の側面を有する形状に成形する
ことを特徴とする光結合用光導波路の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−162807(P2009−162807A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339206(P2007−339206)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】