説明

光記録媒体とその製造方法、記録装置

【課題】バルク型の光記録媒体の製品コストの増加を抑えつつ、バルク層に対し録再用レーザ光がほぼロス無く到達されるようにする。
【解決手段】第1の光(録再光)の照射によって深さ方向において選択的にマークの記録が行われ上記マークが多層状に形成される記録層の下層側に対し、上記第1の光とは波長の異なる第2の光(サーボ光)を反射するための反射膜を形成した光記録媒体とする。これにより、上記記録層に対して録再光がほぼロス無く照射されるようにできる。また同時に、上記のように反射膜を上記記録層の下層側に設けた構造とすれば、当該反射膜としては、サーボ光のみを選択反射する必要性はないものとできるので、従来用いられていた誘電体多層膜は不要とでき、例えば金属材料の単層構造による比較的低コストな反射膜を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深さ方向において選択的にマークの記録が行われ、上記マークが多層状に形成される記録層を有する光記録媒体とその製造方法に関する。また、光記録媒体が有する記録層に対するマーク記録を行う記録装置に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2008−135144号公報
【特許文献2】特開2008−176902号公報
【背景技術】
【0003】
光の照射により信号の記録/再生が行われる光記録媒体として、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などのいわゆる光ディスクが普及している。
【0004】
これらCD、DVD、BDなど現状において普及している光記録媒体の次世代を担うべき光記録媒体に関して、先に本出願人は、上記特許文献1や上記特許文献2に記載されるようないわゆるバルク記録型(単にバルク型とも呼ばれる)の光記録媒体を提案している。
【0005】
ここで、バルク記録とは、例えば図19に示すようにして少なくともカバー層101とバルク層(記録層)102とを有する光記録媒体(バルク型記録媒体100)に対し、逐次焦点位置を変えてレーザ光照射を行ってバルク層102内に多層記録を行うことで、大記録容量化を図る技術である。
【0006】
このようなバルク記録に関して、上記特許文献1には、いわゆるマイクロホログラム方式と呼ばれる記録技術が開示されている。マイクロホログラム方式では、バルク層102の記録材料として、いわゆるホログラム記録材料が用いられる。ホログラム記録材料としては、例えば光重合型フォトポリマ等が広く知られている。
【0007】
マイクロホログラム方式は、ポジ型マイクロホログラム方式と、ネガ型マイクロホログラム方式とに大別される。
ポジ型マイクロホログラム方式は、対向する2つの光束(光束A、光束B)を同位置に集光して微細な干渉縞(ホログラム)を形成し、これを記録マークとする手法である。
また、ネガ型マイクロホログラム方式は、ポジ型マイクロホログラム方式とは逆の発想で、予め形成しておいた干渉縞をレーザ光照射により消去して、当該消去部分を記録マークとする手法である。このネガ型マイクロホログラム方式では、初期化処理として、予めバルク層に干渉縞を形成しておく処理が必要となる。
【0008】
また、本出願人は、マイクロホログラム方式とは異なるバルク記録の手法として、例えば特許文献2に開示されるようなボイド(void:空包、空孔)を記録マークとして形成する記録手法も提案している。
ボイド記録方式は、例えば光重合型フォトポリマ或いは樹脂などで構成されたバルク層102に対して、比較的高パワーでレーザ光照射を行い、上記バルク層102内に空包を記録する手法である。特許文献2に記載されるように、このように形成された空包部分は、バルク層102内における他の部分と屈折率が異なる部分となり、それらの境界部分で光の反射率が高められることになる。従って上記空包部分は記録マークとして機能し、これによって空包マークの形成による情報記録が実現される。
【0009】
このようなボイド記録方式は、ホログラムを形成するものではないので、記録にあたっては片側からの光照射を行えば済むものとできる。すなわち、上述のポジ型マイクロホログラム方式の場合のように2つの光束を同位置に集光して記録マークを形成する必要は無いものとできる。
また、ネガ型マイクロホログラム方式との比較では、初期化処理を不要にできるというメリットがある。
なお、特許文献2には、ボイド記録を行うにあたり記録前のプリキュア光の照射を行う例が示されているが、このようなプリキュア光の照射は省略してもボイドの記録は可能である。
【0010】
ところで、上記のような各種の記録手法が提案されているバルク記録型(単にバルク型とも称する)の光記録媒体であるが、このようなバルク型の光記録媒体の記録層(バルク層)は、例えば反射膜が複数形成されるという意味での明示的な多層構造を有するものではない。すなわち、バルク層102においては、通常の多層ディスクが備えているような記録層ごとの反射膜、及び案内溝は設けられていない。
従って、先の図19に示したバルク型記録媒体100の構造のままでは、マークが未形成である記録時において、フォーカスサーボやトラッキングサーボを行うことができないことになる。
【0011】
このため実際において、バルク型記録媒体100に対しては、次の図20に示すような位置案内子を有する基準となる反射面(基準面)を設けるようにされている。
具体的には、カバー層101の下面側に例えばピットやグルーブの形成による位置案内子(つまりこの場合は案内溝となる)がスパイラル状又は同心円状に形成され、そこに選択反射膜103が成膜される。そして、このように選択反射膜103が成膜されたカバー層102の下層側に対し、図中の中間層104としての、例えばUV硬化樹脂などの接着材料を介してバルク層102が積層される。
ここで、上記のようなピットやグルーブ等による位置案内子(案内溝)の形成により、例えば半径位置情報や回転角度情報などの絶対位置情報(アドレス情報)の記録が行われている。以下では、このような案内溝が形成され絶対位置情報の記録が行われた面(この場合は上記選択反射膜103の形成面)のことを、「基準面Ref」と称する。
【0012】
また、上記のような媒体構造とした上で、バルク型記録媒体100に対しては、次の図21に示されるようにマークの記録(又は再生)のためのレーザ光(以下、録再用レーザ光、或いは単に録再光とも称する)とは別途に、位置制御用のレーザ光としてのサーボ用レーザ光(単にサーボ光とも称する)を照射するようにされる。
図示するようにこれら録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とは、共通の対物レンズを介してバルク型記録媒体100に照射される。
【0013】
このとき、上記サーボ用レーザ光としては、録再用レーザ光とは波長帯の異なるレーザ光を用いるようにされる。これは、サーボ用レーザ光の基準面Refからの反射光と、録再用レーザ光の記録マークからの反射光とをそれらの波長の違いを利用して分離検出できるようにするためである。
そしてこれに対応して、基準面Refに形成される反射膜としては、サーボ用レーザ光は反射し、録再用レーザ光は透過するという波長選択性を有する選択反射膜103を用いるようにされている。
【0014】
以上の前提を踏まえた上で、図21を参照し、バルク型記録媒体100に対するマーク記録時の動作について説明する。
先ず、案内溝や反射膜の形成されていないバルク層102に対して多層記録を行うとしたときには、バルク層102内の深さ方向においてマークを記録する層位置を何れの位置とするかを予め定めておくことになる。図中では、バルク層102内においてマークを形成する層位置(マーク形成層位置:情報記録層位置とも呼ぶ)として、第1情報記録層位置L1〜第5情報記録層位置L5の計5つの情報記録層位置Lが設定された場合を例示している。図示するように第1情報記録層位置L1は、案内溝が形成された選択反射膜103(基準面Ref)からフォーカス方向(深さ方向)に第1オフセットof-L1分だけ離間した位置として設定される。また、第2情報記録層位置L2、第3情報記録層位置L3、第4情報記録層位置L4、第5情報記録層位置L5は、それぞれ基準面Refから第2オフセットof-L2分、第3オフセットof-L3分、第4オフセットof-L4分、第5オフセットof-L5分だけ離間した位置として設定される。
なお、ここでは図示の都合上、情報記録層位置Lが5つであるものとしているが、実際には、例えば10μm程度の間隔を空けて数十(例えば20)程度の情報記録層位置Lを設定することになる。
【0015】
マークが未だ形成されていない記録時においては、録再用レーザ光の反射光に基づいてバルク層102内の各層位置を対象としたフォーカスサーボ、トラッキングサーボを行うことはできない。従って、記録時における対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御は、サーボ用レーザ光の反射光に基づき、当該サーボ用レーザ光のスポット位置が基準面Refにおいて案内溝に追従するようにして行うことになる。
【0016】
但し、上記録再用レーザ光は、マーク記録のために基準面Refよりも下層側に形成されたバルク層102に到達させる必要がある。このため、この場合の光学系には、対物レンズのフォーカス機構とは別途に、録再用レーザ光の合焦位置を独立して調整するための録再光用フォーカス機構が設けられることになる。
具体的に、このようなフォーカス機構としては、対物レンズに入射する録再用レーザ光のコリメーションを変化させるエキスパンダを設けるようにする。すなわち、このように対物レンズに入射する録再用レーザ光のコリメーションを変化させることで、録再用レーザ光の合焦位置を、サーボ用レーザ光とは独立して調整できるようにするものである。
【0017】
このようなフォーカス機構によって、上述のようにサーボ用レーザ光の基準面Refからの反射光に基づき対物レンズのフォーカスサーボ制御が行われる下で、録再用レーザ光の合焦位置については、バルク層102内の所要の情報記録層位置Lに一致するように調整することができる。
確認のため述べておくと、録再用レーザ光のトラッキング方向の位置については、サーボ用レーザ光の基準面Refからの反射光に基づく対物レンズのトラッキングサーボ制御が行われることで、所定の位置(基準面Refに形成された案内溝の直下となる位置)に制御されることになる。
【0018】
また、マーク記録が既に行われたバルク型記録媒体100について再生を行う際は、記録時のように対物レンズの位置をサーボ用レーザ光の反射光に基づいて制御する必要性はない。すなわち、再生時においては、再生対象とする情報記録層位置L(再生時については情報記録層Lとも称する)に形成されたマーク列を対象として、録再用レーザ光の反射光に基づいて対物レンズのフォーカス及びトラッキングサーボ制御を行えばよい。
【0019】
ここで、図20や図21に示したように、従来におけるバルク型記録媒体100は、光の入射面側から順にカバー層101、基準面Ref(選択反射膜103)、バルク層102が形成されたものとなっている。つまり、位置制御を行うためのサーボ用レーザ光の反射光を得るための基準面Ref(反射面)が、バルク層102の上層側に形成されているものである。
【0020】
このとき、バルク層102でのマークの記録や再生の特性を考慮すると、バルク層102には、録再用レーザ光がロスなく入射されることが望ましいものとなる。
例えば、特に前述のボイド記録方式が採用される場合においては、バルク層102へのマーク記録のために比較的大きなレーザパワーを要し、またバルク層102にて記録されたマークの反射率は小であるため、選択反射膜3における録再用レーザ光の透過率は重要であり、ほぼ全透過に近いことが理想となる。
このため従来では、選択反射膜103として、波長選択性に優れる誘電体多層膜を用いるようにされていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述のように従来のバルク型記録媒体100では、バルク層102に対し録再用レーザ光がほぼ100%透過して到達できるようにするために、選択反射膜103として、波長選択性に優れた誘電体多層膜を用いるようにされている。
しかしながら、現状において誘電体多層膜は非常に高価であり、その分製品コストの増加を招来するという問題がある。
また、誘電体多層膜を用いる場合は、所望の特性を得るための各誘電体膜の膜厚制御を適正に行うことが困難となり、歩留まりの低下やそれによる高コスト化も問題となる。
【0022】
本発明は以上の問題点に鑑み為されたもので、バルク型の光記録媒体の製品コストの増加を抑えつつ、バルク層に対し録再用レーザ光がほぼロス無く到達できるようにすることをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題の解決のため、本発明では光記録媒体として以下のように構成することとした。
すなわち、本発明の光記録媒体は、第1の光の照射によって深さ方向において選択的にマークの記録が行われ、上記マークが多層状に形成される記録層と、上記第1の光とは波長の異なる第2の光を反射するための反射膜であって、上記記録層の下層側に設けられた反射膜とを備えるものである。
【0024】
また本発明では、光記録媒体の製造方法として以下のようにすることとした。
つまり、本発明の光記録媒体の製造方法は、第1の光の照射によって深さ方向において選択的にマークの記録が行われ、上記マークが多層状に形成される記録層の下層側に対し、上記第1の光とは波長の異なる第2の光を反射するための反射膜を形成するものである。
【0025】
また、本発明では記録装置として以下のように構成することとした。
つまり、本発明の記録装置は、第1の光の照射によって深さ方向において選択的にマークの記録が行われ、上記マークが多層状に形成される記録層と、上記第1の光とは波長の異なる第2の光を反射するための反射膜であって上記記録層の下層側に設けられた反射膜とを備える光記録媒体に対する記録を行う記録装置であって、上記第1の光と上記第2の光とが入射され、これら第1の光と第2の光の双方を上記光記録媒体に対して照射する対物レンズを備える。
また、上記対物レンズをフォーカス方向に駆動する対物レンズフォーカス機構を備える。
また、上記対物レンズに入射する上記第1の光のコリメーションを変化させることで上記第1の光の合焦位置を上記第2の光とは独立して変化させる合焦位置独立調整機構を備える。
また、上記第2の光の上記反射膜からの反射光を受光して得られるフォーカスエラー信号に基づいて上記対物レンズフォーカス機構を駆動することで、上記第2の光が上記記録層の下層側に形成された上記反射膜に合焦するように上記対物レンズについてのフォーカスサーボ制御を行うフォーカスサーボ制御部を備える。
また、上記第1の光の合焦位置が上記反射膜の上層側に形成された上記記録層内の記録対象層位置に調整されるように上記合焦位置独立調整機構を制御すると共に、上記第1の光によるマーク記録が実行されるように制御を行う制御部を備えるものである。
【0026】
上記のように記録層(バルク層)の下層側に対して第2の光(サーボ光)を反射する反射膜を設けるものとすれば、記録層に対し、第1の光(録再光)がほぼロス無く照射されるようにできる。
また同時に、上記のように反射膜を記録層の下層側に設けた構造とすれば、当該反射膜としては、第1の光の透過率を100%近くに維持する必要性はないものとできるので、従来用いられていた誘電体多層膜は不要とでき、例えば金属材料(合金材料も含む)の単層構造による低コストな反射膜を用いることができる。
なお確認のため述べておくと、第1の光は、上記マークの再生時には上記記録層内における対象とする層位置に対して合焦するものであり、つまりは上記反射膜には焦点を結んだ後の第1の光が照射されるものである。従って、第1の光の上記反射膜からの反射光が、当該第1の光の上記マークからの反射光(再生光)に対して与える影響はその分小さいものとできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、第1の光の照射によって深さ方向において選択的にマークの記録が行われ、上記マークが多層状に形成される記録層を有する光記録媒体において、上記第1の光とは波長の異なる第2の光を反射するための反射膜として誘電体多層膜による波長選択反射膜を用いることなく、上記第1の光が上記記録層に対してほぼロス無く照射されるようにできる。
この結果、本発明によれば、上記のように第1の光が記録層に対してほぼロス無く照射されるということと、光記録媒体の製品コストの削減を図るということとの両立が図られる。
【0028】
また、本発明の製造方法によれば、このように優れた効果を奏する本発明の光記録媒体を製造することができる。
また、本発明の記録装置によれば、本発明の光記録媒体に対応して適正にマーク記録を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態の光記録媒体の断面構造図である。
【図2】実施の形態の光記録媒体について位置制御手法について説明するための図である。
【図3】銀を主成分とした反射膜(及びアルミニウムを主成分とした反射膜)についての膜厚(nm)に対する各波長ごとの反射率変化特性を示した図である。
【図4】銅を主成分とした反射膜についての膜厚(nm)に対する各波長ごとの反射率変化特性を示した図である。
【図5】金を主成分とした反射膜についての膜厚(nm)に対する各波長ごとの反射率変化特性を示した図である。
【図6】合金による反射膜についての膜厚(nm)に対する各波長ごとの反射率変化特性について説明するための図である。
【図7】実施の形態としての光記録媒体の製造方法について説明するための図である。
【図8】実施の形態の記録装置が備える光学系の構成を主に示した図である。
【図9】実施の形態の記録装置全体の内部構成を示したブロック図である。
【図10】対物レンズを介して録再用レーザ光が最下情報記録層位置に合焦するように照射され、それに伴いバルク型記録媒体から得られる録再用レーザ光の反射光が受光部に導かれる様子を示した図である。
【図11】最下情報記録層位置から基準面までの距離に対する「迷光強度/再生光強度」の変化特性を、基準面Refの反射率とマーク反射率との反射率比ごとに計算した結果を示した図である。
【図12】図11の計算にあたり前提とした基準面、対物レンズ射出面(戻り光側)、受光面の各強度分布パターンを示した図である。
【図13】最下情報記録層位置からの反射光の球面と基準面からの反射光の球面とに差が生じることについて説明するための図である。
【図14】バルク層側に案内溝を形成した変形例としての光記録媒体の断面構造図である。
【図15】変形例としての光記録媒体の製造方法について説明するための図である。
【図16】カバー層を省略した変形例としての光記録媒体の断面構造図である。
【図17】貼り合わせ構造を採用した変形例としての光記録媒体の断面構造図である。
【図18】半透明記録膜を複数有して多層状記録が可能とされた変形例としての光記録媒体の断面構造図である。
【図19】バルク記録方式について説明するための図である。
【図20】基準面を備える実際のバルク型記録媒体の断面構造を例示した図である。
【図21】バルク型記録媒体に対するマークの記録/再生手法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行う。

<1.実施の形態の光記録媒体>
[1-1.光記録媒体の構造]
[1-2.具体的な反射膜材料について]
[1-3.光記録媒体の製造方法]
<2.記録装置の構成>
[2-1.光学系の構成]
[2-2.記録装置の全体的な内部構成]
<3.最下情報記録層位置から基準面までの距離と反射率比についての考察>
<4.変形例>
【0031】
<1.実施の形態の記録媒体>
[1-1.光記録媒体の構造]

図1は、本発明の光記録媒体の一実施形態としてのバルク型記録媒体1の断面構造図を示している。
ここで、バルク型記録媒体とは、いわゆるバルク記録が行われる光記録媒体である。バルク記録とは、通常の多層光ディスクのような複数の記録膜が形成された多層構造は採らずに、バルク状の記録層に対して逐次焦点位置を変えてレーザ光照射を行って多層記録を行う技術を指す。
【0032】
図1において、バルク型記録媒体1は、ディスク状の光記録媒体とされ、回転駆動されるバルク型記録媒体1に対するレーザ光照射が行われてバルク層3に対するマーク記録(情報記録)が行われる。また、記録情報の再生としても、回転駆動されるバルク型記録媒体1に対してレーザ光を照射して行われる。
なお光記録媒体とは、光の照射により情報の記録/再生が行われる記録媒体を総称したものである。
【0033】
図示するようにバルク型記録媒体1には、上層側から順にカバー層2、バルク層3、接着層4、反射膜5、基板6が形成されている。
ここで、本明細書において「上層側」とは、後述する記録装置(記録再生装置10)側からのレーザ光が入射する面を上面としたときの上層側を指す。
【0034】
また、本明細書においては「深さ方向」という語を用いるが、この「深さ方向」とは、上記「上層側」の定義に従った上下方向と一致する方向(すなわち記録装置側からのレーザ光の入射方向に平行な方向:フォーカス方向)を指すものである。
【0035】
バルク型記録媒体1において、カバー層2は、例えば樹脂で構成され、記録層としてのバルク層3の保護層として機能する。
【0036】
カバー層2の下層側には、バルク層3が形成されている。
バルク層3の形成材料(記録材料)としては、例えば先に挙げたポジ型マイクロホログラム方式やネガ型マイクロホログラム方式などのマイクロホログラム方式、或いはボイド記録方式など、採用するバルク記録の方式に応じて適宜最適とされるものが採用されればよい。
なお、本発明において、バルク層に対するマーク記録の方式は特に限定されるべきものではなく、バルク記録方式の範疇において任意の方式が採用されればよい。以下の説明では一例として、ボイド記録方式が採用される場合を例示する。
ボイド記録方式が採用される場合、バルク層3の記録材料としては樹脂を主成分としたものを用いる。
【0037】
バルク層3の下層側には、所要の接着材料で構成された接着層(中間層)4を介して、反射膜5が形成されている。
当該反射膜5には、記録/再生位置を案内するための位置案内子が形成される。反射膜に位置案内子が形成されているというのは、位置案内子が形成されている界面上に反射膜が形成されるという意味である。
具体的にこの場合は、図中の基板6の一方の面側に対してグルーブ又はピット列が形成されることで、図のような凹凸の断面形状が与えられ、基板6の当該凹凸断面形状が与えられた面上に対し反射膜5が成膜されることで、当該反射膜5に上記グルーブ又はピット列による位置案内子が形成されたものとなっている。
上記グルーブ又はピット列によっては、バルク型記録媒体1の記録面内方向に平行な方向における絶対位置を表す情報(絶対位置情報:半径位置情報、及び回転角度情報)が記録される。この絶対位置情報は、上記位置案内子がグルーブで形成される場合には当該グルーブの蛇行(ウォブル)周期の変調により記録され、ピット列で形成される場合には、ピットの長さや形成間隔の変調により記録が為される。
【0038】
また、基板6は、例えばポリカーボネートやアクリルなどの樹脂で構成される。基板6は、例えば上記位置案内子としての凹凸断面形状が与えられたスタンパを用いた射出成形などによって生成される。
【0039】
ここで、バルク層3内部には、位置案内子或いはそれが形成された反射膜は設けられておらず、後述するようにバルク層3における記録/再生位置は、位置案内子が形成された反射膜5からの反射光に基づき制御されることになる。
この意味で、位置案内子が形成された反射膜5(反射面)については、基準面Refと表記する。
【0040】
ところで、従来のバルク型記録媒体100の場合と同様に、位置案内子や反射膜の形成されていないバルク層3に対して多層記録を行うとしたときには、バルク層3内の深さ方向において、予めマークを記録する層位置を何れの位置とするかを定めておくことになる。
図2に示されるように、この場合もバルク層3内においてマークを形成する層位置(マーク形成層位置:情報記録層位置とも呼ぶ)としては、先の図21の場合と同様に、例えば第1情報記録層位置L1〜第5情報記録層位置L5の計5つの情報記録層位置Lが設定されているとする。
この場合、基準面Refからの各情報記録層位置Lへのオフセットof-Lの情報は、後述する記録再生装置10におけるコントローラ39に設定される。
なお、ここでも図示の都合上、情報記録層位置Lが5つであるものとしているが、実際には例えば10μm程度の間隔を空けて数十(例えば20)程度の情報記録層位置Lを設定することになる。
【0041】
また、先に説明したように、バルク型の光記録媒体に対しては、記録層に対してマークの記録再生のためのレーザ光(録再用レーザ光)と共に、基準面Refにおける位置案内子に基づく位置制御を行うための、録再用レーザ光とは波長の異なるレーザ光(サーボ用レーザ光)とを照射するものとされる。
図2では一例として、バルク層3内における情報記録層位置L3を対象としたマークの記録時において、バルク型記録媒体1に対して照射される録再用レーザ光とサーボ用レーザ光との様子を示している。
マークの記録時には、図のようにサーボ用レーザ光を反射膜5(基準面Ref)に合焦させるように照射して、反射膜5からの当該サーボ用レーザ光の反射光に基づき対物レンズのフォーカス・トラッキングサーボをかけることになる。そしてその状態において、録再用レーザ光の合焦位置を、所望の情報記録層位置Lに一致させるように調整して、バルク層3内の所望の位置(フォーカス方向及びトラッキング方向)にマークを記録することになる。
後述もするように、録再用レーザ光の合焦位置の調整は、録再光用フォーカス機構(図8における固定レンズ14、可動レンズ15、レンズ駆動部16の組)により行われることになる。
【0042】
なお本例において、録再用レーザ光の波長は400nm程度、サーボ用レーザ光の波長は650nm程度であるとする。
【0043】
ここで、上記による説明からも理解されるように、本実施の形態では、記録時の位置制御のためにサーボ用レーザ光の反射光を得るための反射膜5を、バルク層3の下層側に対して形成するものとしている。
このように反射膜5をバルク層3の下層側に設けるようにしたことで、バルク層5に対し、録再用レーザ光がほぼロス無く照射されるようにできる。
また同時に、上記のように反射膜5をバルク層3の下層側に設けた構造とすれば、反射膜5としては、従来の構成を採る場合のように録再用レーザ光の透過率を100%近く確保する必要性はないものとできる。従って、反射膜5としては、従来用いられていた誘電体多層膜とする必要はないものとでき、例えば金属材料の単層構造による比較的低コストな反射膜を用いることができる。これにより、材料自体の低コスト化や、誘電体多層膜を用いないことによる歩留まりの向上により、コストの削減が図られる。
このようにして本実施の形態によれば、録再用レーザ光をバルク層3にほぼロス無く照射できるようにするにあたり、バルク型の光記録媒体の製品コストの削減を図ることができる。
【0044】
なお確認のため述べておくと、録再用レーザ光は、バルク層3に記録されたマークの再生時には、バルク層3内における対象とする情報記録層位置Lに合焦しているものであり、つまりは反射膜5には焦点を結んだ後の録再用レーザ光が照射されるものである。従って、録再用レーザ光の反射膜5からの反射光が、当該録再用レーザ光の記録マークからの反射光(再生光)に対して与える影響は、その分小となる。
【0045】
ここで、上記により説明したような実施の形態としての光記録媒体に関連する技術として、例えば下記の参考文献1及び参考文献2に記載される技術を挙げることができる。
これら参考文献1及び参考文献2には、ページ単位でのホログラム(ホログラムページ)の記録に供されるホログラム記録媒体が記載されている。
具体的に参考文献1では、「第一の基板5→記録層4→フィルタ層6→光吸収層9→反射膜2→第二の基板1」による構造を有するホログラム記録媒体が記載されている。
また参考文献2では、「透明基板70→ホログラム記録層60→ギャップ層50→波長選択層40→ギャップ層30→反射層20→基板10」による構造を有するホログラム記録媒体が記載されている。つまり何れも、記録層の下層側に対して波長選択性を有する反射層(フィルタ層6、波長選択層40)が設けられた構造を採るものである。
但し、参考文献1、参考文献2に記載の構造において、上記フィルタ層6、上記波長選択層40は、ホログラムからの回折光を反射して装置側に再生光として戻すために必要とされる層であり、サーボ光は透過するように構成されたものとなる。このとき、ホログラムの回折効率はおよそ1%前後程度であるので、上記フィルタ層6、上記波長選択層40は、十分な再生光検出強度が得られるべく、記録光(情報光・参照光)をほぼ全反射するように構成される(参考文献1における[0005]や[0117]、参考文献2における[0023]などを参照)。
またこれら参考文献1、参考文献2に記載の記録媒体は、記録層において多層記録は行われないものであり、この点でバルク型の光記録媒体とは相違している。

・参考文献1…特開2007−102185号公報
・参考文献2…特開2007−333766号公報

【0046】
[1-2.具体的な反射膜材料について]

以下、反射膜5の材料の具体例について説明する。
先ず前提として、バルク層3に記録された情報の再生は、録再用レーザ光を照射し、その結果得られる記録マーク(本例の場合はボイドとなる)からの反射光を後述する記録再生装置10側で受光して行うことになる。
【0047】
このとき、図1に示したバルク型記録媒体1の構造によると、上記もしているようにバルク層3内の或る情報記録層位置Lを対象として再生を行っている限りは録再用レーザ光は反射膜5に対してジャストフォーカスの状態で照射されることはなく、焦点を結んだ後の光が照射されることになる。従って、当該録再用レーザ光の反射膜5からの反射光の、記録マークについての再生光に対する影響はその分小となる。
【0048】
但し、再生性能の向上を図る上では、反射膜からの録再用レーザ光の反射光強度は抑制できることに越したことはない。例えば、録再用レーザ光の反射膜5からの反射光については、信号処理によってその影響を除去するなどして再生性能の向上を図るということも考えられるが、これによっては装置側の処理負担が増大し、例えば再生レートの低下を招くなどといった問題が生じ兼ねない。例えばこの意味で、反射膜からの録再用レーザ光の反射光強度は抑制できることが望ましいものとなる。
【0049】
一方、録再用レーザ光の反射光強度の抑制のみを考慮するのであれば、反射膜5の膜厚を薄くすることで、当該反射膜5の反射率を低下させるということができる。
しかしながら、反射膜5の膜厚を薄くした場合には、サーボ用レーザ光の反射光についての光強度についても小となってしまうので、サーボ制御を行うための各種エラー信号の信号品質の低下を招き、その結果安定したサーボ制御を行うことが困難となってしまう虞がある。
【0050】
そこで、反射膜5の構成材料としては、このような点を考慮して選定する。具体的には、少なくともサーボ用レーザ光に対する反射率が録再用レーザ光に対する反射率よりも大となる性質を有する(つまり反射率について「サーボ用レーザ光>録再用レーザ光」となる波長選択性を有する)材料を選定する。
また、上述のように録再用レーザ光の反射光量は小であるほど望ましいので、反射膜5の膜厚については、この点を考慮して設定すべきとなる。
このとき、従来用いていた誘電体多層膜はその構造が複雑であり高価となるので、このような波長選択性を有する反射膜材料としては、単層構造でも実現可能な金属材料を用いることとする。
【0051】
ここで、上記の波長選択性を有する金属材料の一例としては、銀(Ag)を挙げることができる。
図3は、銀を主成分として構成した反射膜5についての膜厚(nm)に対する各波長ごとの反射率の変化特性を示している。
なお図3では比較として、反射膜5を、光ディスクの反射膜として最も一般的に用いられているアルミニウム(Al)を主成分として構成した場合の膜厚に対する各波長ごとの反射率の変化特性も併せて示している。
図3では、横軸を膜厚(0nm〜60nm)、縦軸を反射率(0〜1)とし、銀による反射膜5については、波長400nmのレーザ光に対する反射率を*印によりプロットし、波長650nmのレーザ光に対する反射率を◆印によりプロットして示している。
またアルミニウムによる反射膜5については、波長400nmのレーザ光に対する反射率を●印によりプロットし、波長650nmのレーザ光に対する反射率は■印によりプロットして示している。
【0052】
先ず、アルミニウムによる反射膜5については、その膜厚を変化させても、波長=400nm(録再用レーザ光)に対する反射率と波長=650nm(サーボ用レーザ光)に対する反射率とには殆ど差が生じないことが分かる。
【0053】
これに対し、銀による反射膜5としたときには、アルミニウムとする場合よりも全体的に録再用レーザ光に対する反射率とサーボ用レーザ光に対する反射率との差が生じていることが分かる。このような波長選択性は、銀の光学定数のうち主に消衰係数kの波長分散に起因して得られる。
この場合、特に膜厚が約10nm以上の範囲においては、録再用レーザ光に対する反射率とサーボ用レーザ光に対する反射率との差が顕著に表れるものとなる。
このとき、膜厚30nm程度までの範囲では、録再用レーザ光に対する反射率とサーボ用レーザ光に対する反射率との差が拡大傾向となり、膜厚30nm程度以上では録再用レーザ光に対する反射率とサーボ用レーザ光に対する反射率との差が緩やかに縮小傾向となることが分かる。
【0054】
この図3から理解されるように、銀を主成分とした反射膜5とすることで、上述した波長選択性を有する反射膜を実現することができる。つまり、少なくともサーボ用レーザ光に対する反射率が録再用レーザ光に対する反射率よりも大となる性質を有する反射膜を実現できるものである。
【0055】
ここで、反射膜5のサーボ用レーザ光に対する反射率は、録再用レーザ光に対する反射率の2倍以上あれば、十分な波長選択性が得られているとみなすことができる。すなわち、反射膜5のサーボ用レーザ光に対する反射率をRsv、録再用レーザ光に対する反射率をRrpとしたとき、それらの反射率比(以下、反射率比Rrp/Rsvと表記)が0.5以下であれば、十分な波長選択性が確保されているとすることができる。
【0056】
図3によれば、銀による反射膜5とする場合において反射率比Rrp/Rsv≦0.5となるのは、反射膜5の膜厚が4nm程度〜20nm程度の範囲であることが分かる。なお、膜厚の下限値は、例えば成膜技術上の制約やサーボの安定性のため反射率Rsvを或る程度確保すべき等の制約から自ずと限界があるので、この点を考慮すると、十分な波長選択性を得るにあたっての膜厚は20nm程度以下であると定義することができる。
【0057】
このとき、反射膜5の膜厚は、サーボ用レーザ光と録再用レーザ光との反射率比Rrp/Rsvを左右する一因となるのと同時に、反射率の絶対的な大きさを左右する要因ともなる。
ここで、反射膜5からの録再用レーザ光の反射光の光量が大であると、その分、迷光の光量が増大し、再生信号の品質を悪化させるものとなる。迷光による影響は、記録マークからの反射光量をRmk、迷光としての反射光の光量をRnsとしたとき、単純には「Rsn/Rmk」と表すことができる。そして、迷光の光量Rnsは、反射膜5の録再用レーザ光に対する反射率Rrpと比例するものと捉えることができるので、このことによれば、迷光による影響を抑制するためには、マークの反射率Rmkとの兼ね合いで、当該反射率Rrpの値をなるべく小とすればよいということになる。
【0058】
本例のようにボイド記録方式が採用される場合、ボイドマークの反射率Rmkとの兼ね合いから、迷光による影響がほぼ無いとみなすことのできる反射率Rrpについては0.3程度以下とすることが1つの指標として試算されている。
図3によると、このような反射率Rrp≦0.3程度の条件を満たすためには、反射膜5の膜厚を、上述の20nm程度以下とすればよいことが分かる。つまり、上述した膜厚20nm程度以下という条件によれば、反射膜5として十分な波長選択性が得られ、且つ、迷光による影響がほぼ無いようにできるという効果を奏するものとなる。
【0059】
このようにして銀を主成分とする反射率5によれば、上述した波長選択性を有する反射膜を実現することができる。
また、反射膜5の膜厚を適切に設定することで、十分な波長選択性を確保しつつ迷光による影響がほぼ無くなるようにすることができる。
このとき、膜厚としては、前述のようなサーボの安定性を確保すべくサーボ用レーザ光の反射光量が過小とならないことも考慮して設定する。
【0060】
また、他の金属材料の一例としては、銅(Cu)を挙げることができる。
図4は、銅を主成分として構成した反射膜5についての膜厚(nm)に対する各波長ごとの反射率の変化特性を示している。
図4では、横軸を膜厚(0nm〜60nm)、縦軸を反射率(0〜1)とし、銅による反射膜5についての波長400nmのレーザ光に対する反射率を−印によりプロットし、波長650nmのレーザ光に対する反射率を×印によりプロットして示している。
【0061】
反射膜5を銅で構成する場合としても、先の図3に示したアルミニウムとする場合と比較して、全体的に録再用レーザ光に対する反射率Rrpとサーボ用レーザ光に対する反射率Rsvとの差が生じていることが分かる。特に、この場合も膜厚が約10nm以上の範囲において、録再用レーザ光に対する反射率Rrpとサーボ用レーザ光に対する反射率Rsvとの差が顕著に表れていることが分かる。
このような銅の波長選択性は、消衰係数kの波長分散及び屈折率nの波長分散に起因して得られるものである。
【0062】
銅の場合において特筆すべきは、膜厚が30nm以上においても反射率Rrpと反射率Rsvとの差が拡大傾向のまま維持されるという点である。膜厚60nmのとき、反射率Rrpと反射率Rsvとの差はおよそ「0.9−0.4」であり、このときの反射率比Rrp/Rsvはおよそ0.45程度となる。
【0063】
図4によると、銅の場合において前述した反射率比Rrp/Rsv≦0.5の条件を満たすためには、反射膜5の膜厚は10nm程度以上に設定すればよいことになる。
但し、前述のように膜厚が過大であると反射率Rrpが過大となることにより迷光による影響も大となってしまう。このため、前述した反射率Rrp≦0.3程度の条件も満たすとすると、この場合における反射膜5の膜厚は10nm程度以上且つ30nm程度以下に設定すべきであることが分かる。
【0064】
このように銅を主成分とした反射膜5とすることによっても、上述した波長選択性を有する反射膜を実現することができる。
また、この場合も反射膜5の膜厚を適切に設定することで、十分な波長選択性を確保しつつ迷光による影響がほぼ無くなるようにすることができる。
また、この場合も膜厚は、サーボ用レーザ光の反射光量が過小とならない程度に設定する。
【0065】
また、他の金属材料の一例としては、金(Au)も挙げることができる。
図5は、金を主成分として構成した反射膜5についての膜厚(nm)に対する各波長ごとの反射率の変化特性を示しており、先の図3,図4と同様に横軸を膜厚(0nm〜60nm)、縦軸を反射率(0〜1)とした上で、金による反射膜5についての波長400nmのレーザ光に対する反射率を|印によりプロットし、波長650nmのレーザ光に対する反射率を▲印によりプロットして示している。
【0066】
反射膜5を金で構成する場合としても、図3に示したアルミニウムとする場合と比較して全体的に録再用レーザ光に対する反射率Rrpとサーボ用レーザ光に対する反射率Rsvとの差が生じる。
金の場合も、膜厚が概ね10nm以上の範囲において反射率Rrpと反射率Rsvとの差が顕著に表れ、またこの場合も銅と同様に、膜厚が30nm以上においても反射率Rrpと反射率Rsvとの差が拡大傾向となる。
確認のため述べておくと、このような金の波長選択性としても、消衰係数kと屈折率nの波長依存性に起因して得られるものである。
【0067】
図5によると、金の場合において前述した反射率比Rrp/Rsv≦0.5の条件を満たすためには、反射膜5の膜厚は18nm程度以上に設定すればよいことになる。
ここで、金の場合において特筆すべきは、膜厚が大となっても録再用レーザ光の反射率Rrpが0.3を超えないという点である。この点より、金とする場合には、前述した反射率Rrp≦0.3程度の条件については、特段考慮する必要性はないものとなり、結果、金の場合において両条件を満たすにあたって設定すべき膜厚は、18nm程度以上ということになる。
【0068】
このように金を主成分とした反射膜5とすることによっても、上述した波長選択性を有する反射膜を実現でき、なお且つ反射膜5の膜厚を所定値以上に設定することで十分な波長選択性を確保しつつ迷光による影響がほぼ無くなるようにできる。また、このように膜厚を所定値以上に設定することで、サーボ用レーザ光の反射光量を確保でき、サーボの安定性を確保できる。
【0069】
また、前述した波長選択性を実現するための反射膜5の材料としては、合金を挙げることができる。
図6は、合金による反射膜5についての膜厚(nm)に対する各波長ごとの反射率変化特性について説明するための図である。
図6において、●印及び×印によるプロットが合金、具体的には銀と銅の合金で構成した反射膜5の膜厚に対する反射率変化特性を示している。●印によるプロットは銀:銅の原子組成比を概ね58:42とした場合の反射率変化特性を示し、×印によるプロットが同原子組成比を概ね18:82とした場合の反射率変化特性を示している。
またこの図では比較として、■印のプロットにより銀を主成分とする反射膜5の膜厚に対する反射率変化特性を示すと共に、▲印のプロットにより銅を主成分とする反射膜5の膜厚に対する反射率変化特性を示している。
図示もしているように、実線との組み合わせがサーボ用レーザ光(波長650nm)に対する反射率変化特性であり、破線との組み合わせが録再用レーザ光(波長400nm)に対する反射率変化特性である。
【0070】
図6において、銀:銅=58:42の合金の反射率変化特性(●印)は、対録再用レーザ光、対サーボ用レーザ光の何れとしても、銀を主成分とする場合の特性(■印)と銅を主成分とする場合の特性(▲印)のほぼ中間の特性となっていることが分かる。
また、銀:銅=18:82の合金の反射率変化特性(×印)は、対録再用レーザ光、対サーボ用レーザ光の何れも、上記の銀:銅=58:42の合金の特性と比較して、銅を主成分とする場合の特性に近い特性となっていることが確認できる。
これらの点より、銀と銅の合金とした場合の反射率変化特性は、銀と銅のうち含有量の多い方の金属を主成分とする場合の特性により近い特性が得られるということが分かる。
【0071】
このように銀と銅の合金とする場合は、対録再用レーザ光、対サーボ用レーザ光の双方の反射率変化特性として、銀を主成分とする場合の特性と銅を主成分とする場合の特性との中間的な特性(銀と銅のうち含有量の多い方の金属を主成分とする場合の特性により近い特性)を得ることができる。
このことからも理解されるように、銀と銅の合金とする場合においても、前述の波長選択性を実現できると共に、その膜厚の調整により録再用レーザ光の反射光量を十分に小さくすることができ、迷光による影響がほぼ無くなるようにできる。
具体的に、銀:銅=58:42の合金の場合には、前述の反射率比Rrp/Rsv≦0.5且つ反射率Rrp≦0.3の条件を満たすための膜厚は0.6nm程度以上且つ22nm程度以下となる。また、銀:銅=18:82の合金の場合には、同条件を満たすための膜厚は6nm程度以上且つ24nm程度以下となる。
なお、これらの場合においても、膜厚は、サーボ用レーザ光の反射光量が過小とならない程度に設定する。
【0072】
ここで、前述もしたように、銅を主成分とする場合は、膜厚を10nm程度以上とすることで反射率比Rrp/Rsv≦0.5の条件が満たされる。しかしながら、銀を主成分とする場合と比較すると、反射率比Rrp/Rsvを小さくすることはできないものとなる。
一方、銀を主成分とする場合は、前述のように膜厚を20nm程度以下とすることで反射率比Rrp/Rsvの条件が満たされるものとなるが、このとき、膜厚を薄くするということは、その分保存信頼性の面で不利となってしまう。
【0073】
銀と銅の合金は、保存信頼性に優れることが知られており、その分膜厚を薄くできる利点がある。
この点を考慮すると、銀と銅の合金、特に銀の含有量を50%以上とする合金とする場合には、銀の有する特性(つまり反射率比Rrp/Rsvをより小さくできる特性)を維持しつつ、保存信頼性に優れる反射膜5を実現することができて、膜厚を薄く形成する場合により有利とすることができる。
【0074】
[1-3.光記録媒体の製造方法]

図7は、バルク型記録媒体1の製造方法について説明するための図である。
バルク型記録媒体1の製造工程としては、基板生成工程(図7(a))、反射膜成膜工程(図7(b))、記録層接着工程(図7(c))、カバー層積層工程(図7(d))に大別される。
【0075】
先ず、図7(a)の基板生成工程では、案内溝の形成された基板6を生成する。すなわち、反射膜5に位置案内子が形成されるようにするための凹凸断面形状がその一方の面に与えられた基板6を生成するものである。
先にも触れたように、基板6の生成は、樹脂を形成材料として、スタンパを用いた射出成形により生成する。
【0076】
図7(b)の反射膜成膜工程では、上記基板生成工程で生成した基板6の上記案内溝が形成された側の面に対し、反射膜5を成膜する。つまり本例の場合は、前述した銀又は銅又は金の何れかを主成分とした金属材料か、或いは合金材料を反射膜5として成膜する。
この際、成膜は、例えばスパッタリングや蒸着等により行う。
【0077】
図7(c)の記録層接着工程では、接着材料を用いて、反射膜5上にバルク層3としての記録材料を接着する。この場合、バルク層3の記録材料としては、例えば予めフィルム状に加工されたもの(フィルム状記録材料)を用いる。先にも述べたように、本例の場合、記録材料は樹脂を主成分としたものとなる。
上記のフィルム状記録材料を円盤状に打ち抜き、これを所要の接着材料を用いて反射膜5上に接着する。接着材料としては、例えばPSA(Pressure Sensitive Adhesive:感圧型接着剤)を用いる。PSAを用いる場合、反射膜5上にPSAを載置し、さらに当該PSA上にバルク層3を載置した状態で加圧処理を行って、反射膜5とバルク層3とを接着する。
これにより、図示するようなバルク層3・接着層4・反射膜5・基板6の積層構造を有する構造体が形成される。
【0078】
なお、バルク層3の接着には、UV硬化樹脂を用いることもできる。その場合は、反射膜5上にUV硬化樹脂を例えばスピンコート法などで塗布した後、紫外線照射による硬化処理を施すことで、反射膜5とバルク層3とを接着する。
【0079】
図7(d)のカバー層積層工程では、バルク層3上にカバー層2を積層する。
本例の場合、カバー層2の材料としてはUV硬化樹脂(例えばUVレジン)を用いる。このため、この場合のカバー層積層工程では、バルク層3上にUV硬化樹脂を例えばスピンコート法などで塗布した後、紫外線照射による硬化処理を施すことで、カバー層2を積層する。
【0080】
以上の工程により、図1に示したバルク型記録媒体1が完成する。
【0081】
<2.記録装置の構成>
[2-1.光学系の構成]

図8は、バルク型記録媒体1に対する記録/再生を行う実施の形態としての記録装置が備える主に光学系の構成について説明するための図である。
実施の形態の記録装置は、バルク型記録媒体1についての記録機能と共に再生機能も有する。この点より以下、実施の形態の記録装置については、記録再生装置10と称する。
図8は、当該記録再生装置10が備える光学ピックアップOPの内部構成を主に示すものである。
【0082】
図8において、記録再生装置10に装填されたバルク型記録媒体1は、当該記録再生装置10における所定位置においてそのセンターホールがクランプされるようにしてセットされ、図示は省略したスピンドルモータによる回転駆動が可能な状態に保持される。
光学ピックアップOPは、上記スピンドルモータにより回転駆動されるバルク型記録媒体1に対して録再用レーザ光、サーボ用レーザ光を照射するために設けられる。
【0083】
光学ピックアップOP内には、マークによる情報記録、及びマークにより記録された情報の再生を行うための録再用レーザ光の光源である録再用レーザ11と、基準面Refに形成された位置案内子を利用した位置制御を行うための光であるサーボ用レーザ光の光源であるサーボ用レーザ24とが設けられる。
ここで、前述のように録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とはそれぞれ波長が異なる。つまりこの場合、録再用レーザ光の波長はおよそ400nm程度(いわゆる青紫色レーザ光)、サーボ用レーザ光の波長はおよそ650nm程度(赤色レーザ光)である。
【0084】
また、光学ピックアップOP内には、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光のバルク型記録媒体1への出力端となる対物レンズ20が設けられる。
さらには、上記録再用レーザ光のバルク型記録媒体1からの反射光を受光するための録再光用受光部23と、サーボ用レーザ光のバルク型記録媒体1からの反射光を受光するためのサーボ光用受光部29とが設けられる。
【0085】
その上で、光学ピックアップOP内においては、上記録再用レーザ11より出射された録再用レーザ光を上記対物レンズ20に導くと共に、上記対物レンズ20に入射した上記バルク型記録媒体1からの録再用レーザ光の反射光を上記録再光用受光部23に導くための光学系が形成される。
【0086】
具体的に、上記録再用レーザ11より出射された録再用レーザ光は、コリメーションレンズ12を介して平行光となるようにされた後、偏光ビームスプリッタ13に入射する。偏光ビームスプリッタ13は、このように録再用レーザ11側から入射した録再用レーザ光については透過するように構成されている。
【0087】
上記偏光ビームスプリッタ13を透過した録再用レーザ光は、固定レンズ14、可動レンズ15、及びレンズ駆動部16から成るエキスパンダに入射する。このエキスパンダは、前述した録再光用フォーカス機構に相当するものであり、光源である録再用レーザ11に近い側が固定レンズ14とされ、録再用レーザ11から遠い側に可動レンズ15が配置され、レンズ駆動部16によって上記可動レンズ15が録再用レーザ光の光軸に平行な方向に駆動されるように構成されている。この録再光用フォーカス機構により、録再用レーザ光について独立したフォーカス制御を行うことが可能とされる。
後述するように、当該録再光用フォーカス機構におけるレンズ駆動部16は、図9に示すコントローラ39によって、対象とする情報記録層位置Lに対応して設定されたオフセットof-Lの値に応じて駆動される。
【0088】
上記録再光用フォーカス機構を形成する固定レンズ14及び可動レンズ15を介した録再用レーザ光は、図のようにミラー17にて反射された後、1/4波長板18を介してダイクロイックプリズム19に入射する。
ダイクロイックプリズム19は、その選択反射面が、録再用レーザ光と同波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するように構成されている。従って上記のようにして入射した録再用レーザ光は、ダイクロイックプリズム19にて反射される。
【0089】
上記ダイクロイックプリズム19で反射された録再用レーザ光は、図示するようにして対物レンズ20を介してバルク型記録媒体1に対して照射される。
対物レンズ20に対しては、当該対物レンズ20をフォーカス方向(バルク型記録媒体1に対して接離する方向)、及びトラッキング方向(上記フォーカス方向に直交する方向:バルク型記録媒体1の半径方向)に変位可能に保持する2軸アクチュエータ21が設けられる。
2軸アクチュエータ21には、フォーカスコイル、トラッキングコイルが備えられ、それぞれに駆動信号(後述する駆動信号FD、TD)が与えられることで、対物レンズ20をフォーカス方向、トラッキング方向にそれぞれ変位させる。
【0090】
ここで、再生時においては、上記のようにしてバルク型記録媒体1に対して録再用レーザ光が照射されることに応じて、バルク型記録媒体1(バルク層3内の再生対象の情報記録層Lに記録されたマーク列)より上記録再用レーザ光の反射光が得られる。このように得られた録再用レーザ光の反射光は、対物レンズ20を介してダイクロイックプリズム19に導かれ、当該ダイクロイックプリズム19にて反射される。
ダイクロイックプリズム19で反射された録再用レーザ光の反射光は、1/4波長板18→ミラー17→録再光用フォーカス機構(可動レンズ15→固定レンズ14)を介した後、偏光ビームスプリッタ13に入射する。
【0091】
ここで、このように偏光ビームスプリッタ13に入射する録再用レーザ光の反射光(復路光)は、1/4波長板18による作用とバルク型記録媒体1での反射時の作用とにより、録再用レーザ光11側から偏光ビームスプリッタ13に入射した録再用レーザ光(往路光)とはその偏光方向が90度異なるようにされる。この結果、上記のようにして入射した録再用レーザ光の反射光は、偏光ビームスプリッタ13にて反射される。
【0092】
このように偏光ビームスプリッタ13にて反射された録再用レーザ光の反射光は、集光レンズ22を介して録再光用受光部23の受光面上に集光する。
【0093】
また、光学ピックアップOP内には、上記により説明した録再用レーザ光についての光学系の構成に加えて、サーボ用レーザ24より出射されたサーボ用レーザ光を対物レンズ20に導き且つ、上記対物レンズ20に入射したバルク型記録媒体1からのサーボ用レーザ光の反射光をサーボ光用受光部29に導くための光学系が形成される。
図示するように上記サーボ用レーザ24より出射されたサーボ用レーザ光は、コリメーションレンズ25を介して平行光となるようにされた後、偏光ビームスプリッタ26に入射する。偏光ビームスプリッタ26は、このようにサーボ用レーザ24側から入射したサーボ用レーザ光(往路光)は透過するように構成される。
【0094】
上記偏光ビームスプリッタ26を透過したサーボ用レーザ光は、1/4波長板27を介してダイクロイックプリズム19に入射する。
先に述べたように、ダイクロイックプリズム19は、録再用レーザ光と同波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するように構成されているため、上記サーボ用レーザ光はダイクロイックプリズム19を透過し、対物レンズ20を介してバルク型記録媒体1に照射される。
【0095】
また、このようにバルク型記録媒体1にサーボ用レーザ光が照射されたことに応じて得られる当該サーボ用レーザ光の反射光(基準面Refからの反射光)は、対物レンズ20を介した後ダイクロイックプリズム19を透過し、1/4波長板27を介して偏光ビームスプリッタ26に入射する。
先の録再用レーザ光の場合と同様にして、このようにバルク型記録媒体1側から入射したサーボ用レーザ光の反射光(復路光)は、1/4波長板27の作用とバルク型記録媒体1での反射時の作用とにより、往路光とはその偏光方向が90度異なるものとされ、従って復路光としてのサーボ用レーザ光の反射光は偏光ビームスプリッタ26にて反射される。
【0096】
偏光ビームスプリッタ26にて反射されたサーボ用レーザ光の反射光は、集光レンズ28を介してサーボ光用受光部29の受光面上に集光する。
【0097】
なお、図示による説明は省略するが、実際において記録再生装置10には、上記により説明した光学ピックアップOP全体をトラッキング方向にスライド駆動するスライド駆動部が設けられ、当該スライド駆動部による光学ピックアップOPの駆動により、レーザ光の照射位置を広範囲に変位させることができるようにされている。
【0098】
ここで、前述のように本実施の形態のバルク型記録媒体1は、バルク層3の下層側に対して基準面Refが設けられるので、記録時には、このようにバルク層3の下層側に設けられた基準面Refに対してサーボ用レーザ光が合焦するように対物レンズ20のフォーカスサーボ制御を行いつつ、録再光用フォーカス機構により、録再用レーザ光が、基準面Refよりも上層側におけるバルク層3内に合焦するように、対物レンズ20に入射する録再用レーザ光のコリメーションを調整することになる。
【0099】
但し、このとき、光学系の構成によっては、録再光用フォーカス機構によって録再用レーザ光のコリメーションを変化させても、録再用レーザ光の合焦位置を基準面Refよりも上層側に位置させることができない場合もある。
具体的に、従来のバルク型記録媒体100については、基準面Refがバルク層3(102)の上層側に設けられているので、これに対応する記録再生装置では、上記のような記録時のフォーカスサーボ制御状態、すなわちサーボ用レーザ光の合焦位置を基準面Refに一致させる位置に対物レンズ20を位置させている状態において、録再光用フォーカス機構の可動レンズ15がニュートラル位置(例えば可動範囲内の中間位置)にあるときの録再用レーザ光の合焦位置が、基準面Refよりも下層側に位置するように光学系が設計されることになるが、このような光学系の構成をそのまま踏襲した場合には、基準面Refがバルク層3の下層側にあるバルク型記録媒体1について、バルク層3内の情報記録層位置Lに録再用レーザ光を合焦させることができなくなる虞がある(録再光用フォーカス機構による合焦位置の調整範囲は有限であるため)。
【0100】
このため、本実施の形態の記録再生装置10においては、録再光用フォーカス機構の可動レンズ15がニュートラル位置にあり、且つ対物レンズ20がサーボ用レーザ光の合焦位置を基準面Refに一致させる位置にある状態において、当該対物レンズ20を介して照射される録再用レーザ光の合焦位置が基準面Refよりも上層側に位置する(例えばバルク層3の深さ方向における略中心に位置する)ようにして、光学系が設計されているとする。
これにより、録再光用フォーカス機構における可動レンズ15の位置を大きく動かすことなく(つまり録再用レーザ光のコリメーションを大きく変化させることなく)録再用レーザ光を基準面Refよりも上層側のバルク層3内に合焦させることができる。
【0101】
ここで、録再光用フォーカス機構によるコリメーション状態の変化が少なければ、光学倍率の変化量も小とでき、対物レンズ20の位置の変化(フォーカス方向及びトラッキング方向)に起因して生じるサーボ用レーザ光の焦点位置と録再用レーザ光の焦点位置と間のずれの抑制が図られる。つまりこの結果、録再用レーザ光の位置制御精度の向上が図られる。
【0102】
[2-2.記録装置の全体的な内部構成]

図9は、記録再生装置10の全体的な内部構成を示している。
なお図9において、光学ピックアップOPの内部構成については、先の図8に示した構成のうち録再用レーザ11、レンズ駆動部16、2軸アクチュエータ21のみを抽出して示している。
【0103】
先ず、記録再生装置10には、バルク層3を対象とした記録/再生や、記録マークの再生時における対物レンズ20のフォーカス/トラッキング制御(つまり録再用レーザ光の反射光に基づく位置制御)を行うための信号処理系の構成として、図中の記録処理部32、録再光用マトリクス回路33、再生処理部34が設けられている。
【0104】
記録処理部32には、バルク型記録媒体1に対して記録すべきデータ(記録データ)が入力される。記録処理部32は、入力された記録データに対してエラー訂正符号の付加や所定の記録変調符号化を施すなどして、バルク型記録媒体1に実際に記録される例えば「0」「1」の2値データ列である記録変調データ列を得る。
記録処理部32は、上記生成した記録変調データ列に応じた記録パルス信号RCPを生成する。そして該記録パルス信号RCPに基づき光学ピックアップOP内の録再用レーザ11の発光駆動を行う。
【0105】
録再光用マトリクス回路33は、図2に示した録再光用受光部23としての複数の受光素子からの受光信号DT-rp(出力電流)に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
具体的には、上述した記録変調データ列を再生した再生信号に相当する高周波信号(以降、再生信号RFと称する)、フォーカスサーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE-rp、トラッキングサーボ制御のためのトラッキングエラー信号TE-rpを生成する。
【0106】
録再光用マトリクス回路33にて生成された上記再生信号RFは、再生処理部34に供給される。
また、上記フォーカスエラー信号FE-rp、上記トラッキングエラー信号TE-rpは、録再光用サーボ回路35に対して供給される。
【0107】
再生処理部34は、上記再生信号RFについて、記録変調符号の復号化やエラー訂正処理など上述した記録データを復元するための再生処理を行い、上記記録データを再生した再生データを得る。
【0108】
また、録再光用サーボ回路35は、マトリクス回路33から供給されるフォーカスエラー信号FE-rp、トラッキングエラー信号TE-rpに基づきフォーカスサーボ信号FS-rp、トラッキングサーボ信号TS-rpをそれぞれ生成し、これらフォーカスサーボ信号FS-rp、トラッキングサーボ信号TS-rpに基づくフォーカス駆動信号FD-rp、トラッキング駆動信号TD-rpに基づき、2軸アクチュエータ21のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することで、録再用レーザ光についてのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を行う。
先の説明からも理解されるように、このような録再用レーザ光の反射光に基づく2軸アクチュエータ21(対物レンズ20)のサーボ制御は、再生時において行われるものである。
【0109】
また、録再光用サーボ回路35は、再生時に対応してコントローラ39から為される指示に応じて、トラッキングサーボループをオフとして上記トラッキングコイルにジャンプパルスを与えることでトラックジャンプ動作を実現したり、トラッキングサーボの引き込み制御等も行う。また、再生時におけるフォーカスサーボの引き込み制御等も行う。
【0110】
また、記録再生装置10においては、サーボ用レーザ光の反射光についての信号処理系として、サーボ光用マトリクス回路36、位置情報検出部37、サーボ光用サーボ回路38が設けられる。
【0111】
サーボ光用マトリクス回路36は、図2に示したサーボ光用受光部29における複数の受光素子からの受光信号DT-sv(出力電流)に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
具体的にサーボ光用マトリクス回路36は、フォーカスサーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE-sv、及びトラッキングサーボ制御のためのトラッキングエラー信号TE-svを生成する。
また、基準面Refにおいて記録された絶対位置情報の検出を行うための位置情報検出用信号Dpsを生成する。例えば絶対位置情報がピット列により記録される場合、位置情報検出用信号Dpsとしては和信号を生成する。或いは、ウォブリンググルーブにより絶対位置情報が記録される場合には、位置情報検出用信号Dpsとしてはプッシュプル信号を生成する。
【0112】
位置情報検出用信号Dpsは、位置情報検出部37に供給される。位置情報検出部37は、上記位置情報検出用信号Dpsに基づき基準面Refに記録された絶対位置情報を検出する。検出された絶対位置情報はコントローラ39に対して供給される。
【0113】
サーボ光用サーボ回路38には、サーボ光用マトリクス回路36にて生成されたフォーカスエラー信号FE-sv、トラッキングエラー信号TE-svが供給される。
サーボ光用サーボ回路38は、これらフォーカスエラー信号FE-sv、トラッキングエラー信号TE-svに基づきフォーカスサーボ信号FS-sv、トラッキングサーボ信号TS-svをそれぞれ生成する。
そして、記録時には、コントローラ39からの指示に応じて、フォーカスサーボ信号FS-sv、トラッキングサーボ信号TS-svに基づき生成したフォーカス駆動信号FD-sv、トラッキング駆動信号TD-svに基づいて、2軸アクチュエータ21のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することで、サーボ用レーザ光についてのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を実現する。
【0114】
また、サーボ光用サーボ回路38は、記録時に対応してコントローラ39から為される指示に応じて、トラッキングサーボループをオフとして2軸アクチュエータ21のトラッキングコイルにジャンプパルスを与えることでトラックジャンプ動作を実現したり、基準面Refに対するフォーカスサーボの引き込み制御等も行う。
【0115】
コントローラ39は、例えばCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリ(記憶装置)を備えたマイクロコンピュータで構成され、例えば上記ROM等に記憶されたプログラムに従った制御・処理を実行することで、記録再生装置10の全体制御を行う。
例えばコントローラ39は、前述したように予め各情報記録層位置Lに対応して設定されたオフセットof-Lの値に基づいて、録再用レーザ光の合焦位置の制御(設定)を行う。具体的には、記録対象とする情報記録層位置Lに対応して設定されたオフセットof-Lの値に基づき、光学ピックアップOP内のレンズ駆動部16を駆動することで、深さ方向における記録位置の選択を行う。
【0116】
また、コントローラ39は、先に説明したような記録/再生時の対物レンズ20のサーボ制御切り替えを実現するための制御も行う。具体的にコントローラ39は、記録時には、サーボ光用サーボ回路38に対してフォーカス駆動信号FD-sv、トラッキング駆動信号TD-svの出力を指示し、また録再光用サーボ回路35にはフォーカス駆動信号FD-rp、トラッキング駆動信号TD-rpの出力を停止するように指示を行う。
また記録時においてコントローラ39は、記録処理部に対する指示を行って記録データに基づくマーク記録を実行させる。
【0117】
一方、再生時には、録再光用サーボ回路35に対してフォーカス駆動信号FD-rp、トラッキング駆動信号TD-rpの出力を指示し、サーボ光用サーボ回路38に対しては、フォーカス駆動信号FD-sv、トラッキング駆動信号TD-svの出力を停止するように指示を行う。
【0118】
またコントローラ39は、サーボ光用サーボ回路38に対するシーク動作制御も行う。すなわち、サーボ用レーザ光のスポット位置を基準面Ref上における所定の目標アドレスに移動させるようにサーボ回路38に対する指示を行う。
【0119】
以上で説明した構成による記録再生装置10によれば、バルク層3の下層側に反射膜5(基準面Ref)が形成されたバルク型記録媒体1に対応して、バルク層3内の所定位置(フォーカス方向及びトラッキング方向)にマーク記録を行うことができる。
【0120】
<3.最下情報記録層位置から基準面までの距離と反射率比についての考察>

図10は、対物レンズ20を介して録再用レーザ光がバルク型記録媒体1内の最も下層側に設定された情報記録層位置L(以下、最下情報記録層位置Lmbと称する)に合焦するように照射され、それに伴いバルク型記録媒体1から得られる録再用レーザ光の反射光が受光部(録再光用受光部23)に導かれる様子を示している。
なお図10においては、対物レンズ20を介して録再用レーザ光が最下情報層位置Lmbに照射される部分を拡大して示している。
また、図10において、録再用レーザ光の光学系については、対物レンズ20から偏光ビームスプリッタ13までの間の各部(例えばダイクロイックプリズム19や録再光用フォーカス機構など)、及び録再用レーザ11・コリメーションレンズ12は省略して示している。
【0121】
再生時において、所要の情報記録層位置Lに記録された情報の再生を行うために、録再用レーザ光を当該情報記録層位置Lに合焦させるように照射したときには、マークからの反射光と共に、基準面Refからの反射光が得られる。
図を参照して分かるように、この際の基準面Refからの反射光は、情報記録層位置Lで焦点を結んだ後、拡散光の状態で照射された光についての反射光となる。
【0122】
このような録再用レーザ光の基準面Refからの反射光は、マークからの反射光(つまり再生光)と共に録再光用受光部23に受光されることになる。つまり、上記基準面Refからの反射光は、上記再生光に対するノイズ光として作用することになる。
以下、このような基準面Refからの録再用レーザ光の反射光のことを、迷光とも呼ぶ。
【0123】
このとき、基準面Refからの迷光の光強度は、再生対象とする情報記録層位置Lから基準面Refまでの距離が最も小となるときに最大となる。つまり、ノイズの重畳量は、最下情報記録層位置Lmbについての再生時において最大となるものである。
このことからも理解されるように、迷光によるノイズの影響について考慮する際は、最下情報記録層位置Lmbから基準面Refまでの距離(以下、距離dと表記)が重要な要素となる。
【0124】
また、迷光の光強度は、当然のことながら基準面Refの録再用レーザ光に対する反射率(前述の反射率Rrpと同義:以下では反射率Rrrとも表記する)によっても変化する。従って、迷光の光強度を抑えてノイズの重畳による影響を抑制するためには、当該反射率Rrrは小であることが望ましい。
【0125】
一方で、ノイズの影響は、再生光の強度と相対的なものとなるので、ノイズの影響について考慮する際には、当然のことながらマークの反射率(以下、反射率Rmrとも表記)についても考慮すべきとなる。
【0126】
このようにして、迷光によるノイズの影響について考慮する際には、距離dと、基準面Refの反射率Rrrと、マーク反射率Rmrとの三者が重要な要素となる。
【0127】
ここで、迷光によるノイズの影響について見積もるにあたり、「迷光強度/再生光強度」をSNR相関の評価指標とする。
バルク型記録媒体1において、基準面Refに形成されたパターンは比較的低い周波数で変化するので、迷光は、バルク層3からの再生信号に対しDCオフセットとして重畳することになる。従って、上記のように「迷光強度/再生光強度」をSNR相関の評価指標とみなすことができる。
その上で、システムとして許容できるノイズ/再生光の強度比について、「迷光強度/再生光強度≦α」とおく。
このようにした場合、基準面Refの反射率Rrr、マーク反射率Rmr、距離dについては、当該「迷光強度/再生光強度≦α」の条件が満たされるように設定すればよいことになる。
【0128】
図11は、最下情報記録層位置から基準面までの距離dに対する「迷光強度/再生光強度」の変化特性を、基準面Refの反射率Rrrとマーク反射率Rmrとの反射率比ごとに計算した結果を示している。
具体的に図11では、縦軸を「迷光強度/再生光強度」、横軸をd(1〜10μm)として、基準面Refの反射率Rrrとマーク反射率Rmrとの反射率比(Ref反射率/マーク反射率=25,50,100,150)ごとに、距離dに対する「迷光強度/再生光強度」の変化特性を計算した結果を示している。
Ref反射率/マーク反射率=25についての計算結果は×印、Ref反射率/マーク反射率=50の計算結果は▲印、Ref反射率/マーク反射率=100の計算結果は■印、Ref反射率/マーク反射率=150の計算結果は◆印である。
【0129】
なお、この図11に示す計算結果を得るにあたっては、基準面Refのパターン(位置案内子のパターン)として、図12(a)に示すようなグループとランドの繰り返しパターン(強度分布パターン)を設定した。
また、計算にあたっては、最下情報記録層位置Lmbからの反射光の球面と基準面Refからの反射光の球面とに、図13に示されるフォーカス時参照球面SR1、デフォーカス時参照球面SR2のような差が生じることを前提とした。
さらにこの前提に基づき、バルク型記録媒体1からの録再用レーザ光の反射光(基準面Refからの反射光も含む)についての対物レンズ20からの射出面上における強度分布パターンが図12(b)に示すものとなり、さらに上記録再用レーザ光の反射光の録再光用受光部23の受光面上における強度分布パターンが図12(c)に示すものとなることを前提として計算を行った。
なお計算は、録再用レーザ光の波長λ=400nm、対物レンズ20の開口数NA=0.85として行った。
【0130】
この図11の計算結果に基づき、設計上好ましい距離dとRef反射率/マーク反射率との関係を導き出すことができる。
例えば、前述した「迷光強度/再生光強度」の許容値がα=1とされる場合において、Ref反射率/マーク反射率=50とするのであれば、距離dは、およそ10μm以上とすればよいことが分かる。或いは、同じα=1の条件下において、Ref反射率/マーク反射率を100や150などとする場合には、距離dとしてはさらに大とする必要があることが分かる。
なお確認のために述べておくと、Ref反射率(反射率Rrr)は、反射膜5の材料、膜厚等によって定まるものとなる。またマーク反射率(反射率Rmr)は例えばバルク層3についてどのような材料(記録材料)を選定するか等により定まるものとなる。
【0131】
<4.変形例>

以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えばこれまでの説明では、基板6の上面に対して案内溝を形成する場合を例示したが、図14に示されるバルク型記録媒体40のように、バルク層の下面側に対して案内溝を形成する構造とすることもできる。なお、このように案内溝が形成されたバルク層については、バルク層3’と表記する。
この場合の基板6は、上記のように案内溝(及び反射膜5)がバルク層側に形成されることに対応させて、その上面側も平面状に形成されたものを用いる(以下、基板6’と表記する)。
【0132】
図15は、図14に示すバルク型記録媒体40の製造方法について説明するための図である。
図15において、バルク型記録媒体40の製造にあたっては、先ずはバルク層3’の材料であるフィルム状記録材料3’mを用意する(図15(a))。すなわち、フィルム状の記録材料を円盤状に打ち抜いたものを用意する。
【0133】
そして、このようなフィルム状記録媒体3’mに対し、案内溝を形成することで、バルク層3’を完成させる(図15(b))。
フィルム状記録材料3’mに対する案内溝の形成は、いわゆるナノプリント技術を用いて行う。具体的には、例えば熱転写などの手法で行う。
【0134】
さらに、このように生成されたバルク層3’に対し、反射膜5の成膜を行う(図15(c))。すなわち、バルク層3’の案内溝が形成された側の面に対し、銀又は銅又は金による金属材料を成膜する。
【0135】
反射膜5を成膜した後は、例えばPSAやUV硬化樹脂等の接着材料による接着層4によって、反射膜5と基板6’とを接着する(図15(d))。
その上で、バルク層3の上面側に対し、カバー層2を積層する(図15(e))。これにより、図14に示したバルク型記録媒体40が完成する。
【0136】
ここで、これまでの説明では、バルク層3(又はバルク層3’)の上層側にカバー層2が形成された構造を例示したが、本発明の光記録媒体としては、例えば図16に示されるバルク型記録媒体45のように、カバー層2を省略した構造とすることもできる。
この場合、バルク層3(又はバルク層3’)内における上層部分(最上の情報記録層位置Lよりも上層側の部分)が、カバー層としての機能を担うことになる。
【0137】
或いは、本発明の光記録媒体は、図17に示すバルク型記録媒体50のように、2つの層ユニットを貼り合わせた構造とすることもできる。
具体的に、このバルク型記録媒体50としては、それぞれが「カバー層2・バルク層3・パターン転写中間層51・反射膜5」を有する2つの層ユニットを、反射膜5同士を対向させた向きで接着層4により接着して貼り合わせた構造を有する。
ここで、パターン転写中間層51は、例えばバルク層3上に塗布したUV硬化樹脂に対し前述した案内溝形成のためのスタンパを押し当てた状態で紫外線照射による硬化処理を施すことにより形成することができる。
【0138】
なお、図14に示したようなバルク層3’を有する光記録媒体についても、同様の貼り合わせ構造とすることが可能である。
つまりその場合は、「カバー層2・バルク層3’・反射膜5」を有する層ユニットを、反射膜5同士を対向させた向きで接着層4により接着した構造とすればよい。
【0139】
なお、貼り合わせ構造とする場合にも、カバー層2を省略可能であることは言うまでもない。
【0140】
また、これまでの説明では、本発明の光記録媒体がいわゆるバルク型の光記録媒体とされる場合を例示したが、本発明の光記録媒体としては、例えば図18に示されるような複数の半透明記録膜56を備えた記録層58を有する多層記録媒体55とすることもできる。
図18において、カバー層2、接着層4、反射膜5、及び基板6についてはバルク型記録媒体1の場合と同様となるので改めての説明は省略する。
この多層記録媒体55が備える記録層58は、バルク層3としてのバルク状の記録層とは異なり、複数の半透明記録膜56が中間層57を隔てて形成された多層構造を有する。具体的には、半透明記録膜56→中間層57→半透明記録膜56→中間層57・・・の繰り替えし積層が行われている。
但し、ここで注意すべきは、上記半透明記録膜56には、グルーブやピット列等の形成に伴う位置案内子が形成されていないという点である。つまり、この多層記録媒体55としても、位置案内子は、基準面Refとしての1つの層位置に対してのみ形成される。
このような構造とすることで、バルク型の光記録媒体とする場合と同様に、各層ごとに位置案内子を形成するための工程を省略することができ、その分、記録媒体の製造コストを抑える上で有利とできる。
【0141】
ここで、図18に示す多層記録媒体55は、半透明記録膜56が形成されているため、記録時においても録再用レーザ光の反射光を得ることができる。従って、この場合の記録時における録再用レーザ光のフォーカスサーボ制御は、当該録再光用レーザ光の反射光に基づいて対物レンズ20を駆動することで、記録対象とする半透明記録膜56に合焦させるようにして行うことになる。
一方、記録時における録再用レーザ光のトラッキングサーボ制御に関しては、この場合もサーボ用レーザ光を用いて行うことになる。すなわち、この場合としても、記録時におけるトラッキングサーボ制御は、サーボ用レーザ光の基準面Refからの反射光に基づき対物レンズ20を駆動することで、当該サーボ用レーザ光の焦点位置が基準面Refの案内溝に追従するようにして行う。
【0142】
また、再生時には、この場合も既に記録されたマーク列に基づいて録再用レーザ光のトラッキングサーボ制御を行うことができる。また、上記説明からも理解されるように、再生時においても、録再用レーザ光のフォーカスサーボ制御は、対象とする半透明記録膜56(情報記録層L)からの反射光を利用して行うことができる。つまりこの場合、再生時におけるサーボ制御は、バルク型の光記録媒体とする場合と同様の手法で行うことになる。
【0143】
ここで、図18に示した多層記録媒体55としても、バルク型の光記録媒体と同様に、深さ方向において選択的にマークの記録が行われ、上記マークが多層状に形成される記録層を有する光記録媒体である点に変わりはない。
【0144】
また、これまでの説明では、録再用レーザ光の波長を400nm程度、サーボ用レーザ光の波長を650nm程度とする場合を例示したが、これらの波長については例示した数値に限定されるべきものではない。
【0145】
また、これまでの説明では、記録再生装置10において、光学系が、録再光用フォーカス機構の可動レンズ15がニュートラル位置にあり且つ対物レンズ20がサーボ用レーザ光の合焦位置を基準面Refに一致させる位置にある状態において、当該対物レンズ20を介して照射される録再用レーザ光の合焦位置が基準面Refよりも上層側に位置する(例えば記録層の深さ方向における略中心に位置する)ように設計されている場合を例示したが、本発明の記録装置としては、少なくとも、サーボ用レーザ光(第2の光)を記録層の下層側に形成された反射膜(反射膜5)に合焦させ、その状態で上記反射膜の上層側に形成された上記記録層に対して録再用レーザ光(第1の光)を合焦させることができるように構成されていればよい。
【0146】
また、これまでの説明では、基準面(反射膜)にて形成される位置案内子がピット又はグルーブとしての案内溝とされる場合を例示したが、基準面における位置案内子はマークの記録により形成されたものであってもよい。
その場合、案内溝の形成工程は不要であり、代わりに、反射膜5に対してマーク形成を行う、或いは反射膜5の上面側に対しマーク記録を可能とするための記録材料を形成しそこにマークを記録する、といった工程が追加されることになる。
【0147】
またこれまでの説明では、本発明の記録装置が光記録媒体に対する記録及び再生の双方を行う記録再生装置に適用される場合を例示したが、本発明は光記録媒体(記録層)に対する記録のみが可能とされた記録専用装置(記録装置)にも好適に適用できる。
【符号の説明】
【0148】
1,40,45,50 バルク型記録媒体、2 カバー層、3,3’ バルク層、3’m フィルム状記録材料、4 接着層(中間層)、5 反射膜、Ref 基準面、6,6’ 基板、L マーク形成層位置(情報記録層位置)、10 記録再生装置、11 録再用レーザ、12,25 コリメーションレンズ、13,26 偏光ビームスプリッタ、14 固定レンズ、15 可動レンズ、16 レンズ駆動部、17 ミラー、18,27 1/4波長板、19 ダイクロイックプリズム、20 対物レンズ、21 2軸アクチュエータ、22,28 集光レンズ、23 録再光用受光部、24 サーボ用レーザ、29 サーボ光用受光部、32 記録処理部、33 録再光用マトリクス回路、34 再生処理部、35 録再光用サーボ回路、36 サーボ光用マトリクス回路、37 位置情報検出部、38 サーボ光用サーボ回路、39 コントローラ、55 多層記録媒体、56 半透明記録膜、57 中間層、58 記録層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光の照射によって深さ方向において選択的にマークの記録が行われ、上記マークが多層状に形成される記録層と、
上記第1の光とは波長の異なる第2の光を反射するための反射膜であって、上記記録層の下層側に設けられた反射膜と
を備える光記録媒体。
【請求項2】
上記反射膜に対して位置案内子が形成されている請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
上記反射膜は金属を主成分とする材料で構成されている請求項2に記載の光記録媒体。
【請求項4】
上記反射膜は、上記第1の光に対する反射率が上記第2の光に対する反射率よりも小さくなるように構成されている
請求項3に記載の光記録媒体。
【請求項5】
上記反射膜は、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)の何れかを主成分とした材料で構成されている請求項3に記載の光記録媒体。
【請求項6】
上記反射膜は合金で構成されている請求項3に記載の光記録媒体。
【請求項7】
上記反射膜は銀と銅の合金で構成されている請求項6に記載の光記録媒体。
【請求項8】
上記記録層の上層側にカバー層が形成されている請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項9】
上記記録層と上記反射膜とを有する層ユニットを2つ備え、それぞれの層ユニットにおける上記反射膜同士を対向させた向きでそれらの層ユニットを接着した貼り合わせ構造を有する
請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項10】
その上面側に対し凹凸断面形状が与えられた基板を有し、上記基板の上記上面側に対して上記反射膜が成膜されることで、上記反射膜に上記位置案内子が形成されている
請求項2に記載の光記録媒体。
【請求項11】
上記記録層の下面側に対し凹凸断面形状が与えられ、上記記録層の下面側に上記反射膜が成膜されることで上記反射膜に上記位置案内子が形成されている
請求項2に記載の光記録媒体。
【請求項12】
第1の光の照射によって深さ方向において選択的にマークの記録が行われ、上記マークが多層状に形成される記録層の下層側に対し、上記第1の光とは波長の異なる第2の光を反射するための反射膜を形成する
光記録媒体の製造方法。
【請求項13】
その上面側に案内溝としての凹凸断面形状が与えられた基板を生成する基板生成工程と、
上記基板の上記上面側に対して上記反射膜を成膜する反射膜成膜工程と、
上記反射膜と上記記録層とを接着する記録層接着工程と
を有する請求項12に記載の光記録媒体の製造方法。
【請求項14】
その下面側に対して案内溝としての凹凸断面形状が与えられた上記記録層を生成する記録層生成工程と、
上記記録層の上記下面側に対して上記反射膜を成膜する反射膜成膜工程と、
上記反射膜と基板とを接着する基板接着工程と
を有する請求項12に記載の光記録媒体の製造方法。
【請求項15】
第1の光の照射によって深さ方向において選択的にマークの記録が行われ、上記マークが多層状に形成される記録層と、上記第1の光とは波長の異なる第2の光を反射するための反射膜であって上記記録層の下層側に設けられた反射膜とを備える光記録媒体に対する記録を行う記録装置であって、
上記第1の光と上記第2の光とが入射され、これら第1の光と第2の光の双方を上記光記録媒体に対して照射する対物レンズと、
上記対物レンズをフォーカス方向に駆動する対物レンズフォーカス機構と、
上記対物レンズに入射する上記第1の光のコリメーション状態を変化させることで上記第1の光の合焦位置を上記第2の光とは独立して変化させる合焦位置独立調整機構と、
上記第2の光の上記反射膜からの反射光を受光して得られるフォーカスエラー信号に基づいて上記対物レンズフォーカス機構を駆動することで、上記第2の光が上記記録層の下層側に形成された上記反射膜に合焦するように上記対物レンズについてのフォーカスサーボ制御を行うフォーカスサーボ制御部と、
上記第1の光の合焦位置が上記反射膜の上層側に形成された上記記録層内の記録対象層位置に調整されるように上記合焦位置独立調整機構を制御すると共に、上記第1の光によるマーク記録が実行されるように制御を行う制御部と
を備える記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−89197(P2012−89197A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234656(P2010−234656)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】