光記録装置、光記録方法、記録媒体及び再生方法
【課題】記録光の光軸方向に対して、互いにクロストークの少ないホログラムを多重記録する。
【解決手段】ホログラム記録再生装置1は、光軸を共通として同方向から照射される信号光と参照光とを含む記録光をホログラム記録媒体100に対して集光させ、記録光がホログラム記録媒体100に対して集光される集光位置を、光軸方向について移動させ、各位置において、記録光により形成される干渉縞を、ホログラム記録媒体100に記録する。
【解決手段】ホログラム記録再生装置1は、光軸を共通として同方向から照射される信号光と参照光とを含む記録光をホログラム記録媒体100に対して集光させ、記録光がホログラム記録媒体100に対して集光される集光位置を、光軸方向について移動させ、各位置において、記録光により形成される干渉縞を、ホログラム記録媒体100に記録する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラムを記録する光記録装置、光記録方法、記録媒体及び再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光記録技術において、大容量、高速記録再生を可能とする技術の1つに、ホログラム記録技術がある。ホログラム記録技術においては、ホログラム記録媒体の同一又は略同一位置にホログラムを記録することで、ホログラム記録媒体の記録容量を増加させることができる。
【0003】
そして、従来では、二光波でホログラムを記録するホログラム記録装置において、信号光と参照光との集光位置を制御して、ホログラムの多重記録を行っているものがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、光分岐素子を用いてレーザ光を信号光と参照光に分岐させ、光変調素子により信号光に情報を付与し、位相変調素子により参照光を位相変調させ、集光光学系により両者をホログラム記録媒体の略同一箇所に集光させてホログラム記録する技術が開示されている。上記の技術では、集光位置をホログラム記録媒体の表面に沿った方向で制御して面内の多重記録を、位相変調素子とホログラム記録媒体との距離を制御させて深さ方向の多重記録を行うものである。こうすることで、多重化される信号光波面の相関による多重時のクロストークの低減を実現させている。
【特許文献1】特開2005−322382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、記録光の光軸方向に対して、互いにクロストークの少ないホログラムを多重記録することができる光記録装置、及び光記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の光記録装置は、光軸を共通として同方向から照射される信号光と参照光とを含む記録光を透過型記録媒体に対して集光させる集光手段と、前記集光手段により前記記録光が前記透過型記録媒体に対して集光される集光位置を、前記光軸方向について移動させる集光位置移動手段と、を含み、前記集光位置移動手段により移動される各位置において、前記記録光により形成される干渉縞を、前記透過型記録媒体に記録する、ことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明において、前記集光手段は、前記記録光を前記光軸に対して、sinθ>0.2を満たす角度θで集光する、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1又は2に記載の発明において、前記集光位置移動手段は、前記記録光の集光位置を、前記透過型記録媒体の光記録層の前記記録光の光軸と交差する各境界面から所定の範囲内に移動させ、前記各所定の範囲内にある前記光記録層に、前記記録光により形成される干渉縞を記録する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、上記請求項3に記載の光記録装置において、前記記録光の光軸は、前記光記録層の境界面と2箇所で交差し、前記各所定の範囲は、前記記録層の光軸と前記光記録層の境界面との各交点から略等しい場所であり、前記光記録層の厚さ方向において該光記録層の中心から略対称位置に干渉縞を記録する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、上記請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記透過型記録媒体は、前記記録光の波長とは異なる波長の位置決め用の光を反射する反射膜を備え、前記光記録装置は、前記位置決め用の光を照射する照射手段と、前記照射手段により照射される位置決め用の光が前記反射膜により反射された反射光を受光する受光手段と、をさらに含み、前記集光位置移動手段は、前記受光手段により受光した反射光に基づいて、前記記録光の集光位置を移動させる、ことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、上記請求項5に記載の発明において、前記透過型記録媒体は、複数の光記録層を積層して形成され、各光記録層の間には反射膜が備えられ、前記受光手段は、各反射膜により反射された反射光をそれぞれ受光し、前記集光位置移動手段は、前記受光手段によりそれぞれ受光された反射光に基づいて、前記各光記録層における記録光の集光位置を移動させる、ことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の光記録方法は、光軸を共通として同方向から照射される信号光と参照光とを含む記録光を透過型記録媒体に対して集光させる集光ステップと、前記集光ステップで前記記録光が前記透過型記録媒体に対して集光される集光位置を、前記光軸方向について移動させる集光位置移動ステップと、を含み、前記集光位置移動ステップで移動される各位置において、前記記録光により形成される干渉縞を、前記透過型記録媒体に記録する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、上記請求項7に記載の光記録方法において、前記透過型記録媒体の光記録層の各境界面から所定の範囲内に位置する各層において、前記透過型記録媒体の面内方向に所定の間隔で干渉縞を記録し、前記各層の互いに隣り合う層において記録される干渉縞の位置は、前記面内方向に前記所定の間隔の半分ずつずらして記録される、ことを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の記録媒体の発明は、上記請求項7又は8に記載の光記録方法によりデータが記録された記録媒体である。
【0015】
請求項10に記載の再生方法の発明は、上記請求項1乃至6のいずれかに記載の光記録装置によりデータが記録される透過型記録媒体に参照光を照射させて得られる回折光に含まれる1ビットのデジタル信号を複数の受光素子により受光して、データを再生する再生方法である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、透過型記録媒体に対して、信号光と参照光をともに光軸方向へシフトさせて多重記録を行うため、本構成を有していない場合に比較して、記録光の光軸方向に対して、互いにクロストークの少ないホログラムを多重記録することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、記録光の光軸方向に多重記録されるホログラム間のシフト量を小さくした際にも、ホログラムの記録を精度良く行うことができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、ホログラム記録媒体の光記録層において多重記録が精度良く行える部分を選択的に用いて、ホログラムの多重記録をより精度良く行うことができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、1つの光記録層について、厚さ方向における略対象位置においてホログラムを記録するため、本構成を有していない場合に比較して、光記録材料を均一に消費することができ、記録媒体のダイナミックレンジを有効に使うことができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、記録光が透過型記録媒体に対して集光される集光位置の位置決め精度が良好となり、記録光の光軸方向に関して多重記録されるホログラム間のシフト量を小さくした際にも、ホログラムの記録を精度良く行うことができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、複数の光記録層が積層された透過型記録媒体の各光記録層に対して、記録光の光軸方向に多重記録されるホログラム間のシフト量を小さくすることができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、透過型記録媒体に対して、信号光と参照光をともに光軸方向へシフトさせて多重記録を行うため、本構成を有していない場合に比較して、記録光の光軸方向に対して、互いにクロストークの少ないホログラムを多重記録することができる。
【0023】
請求項8の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、ホログラムを光軸方向に記録する際に、光記録層の記録材料を有効に使用できる。さらには、複数のホログラムを均一の多重状態で記録していくことで、光記録層の記録材料を有効に使用できる。
【0024】
請求項9の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、記録光の光軸方向に対して、互いにクロストークの少ないホログラムが多重記録された記録媒体を提供することができる。
【0025】
請求項10の発明によれば、記録光の光軸方向に対して、互いにクロストークの少ないホログラムによりデジタルデータを多重記録した記録媒体から、記録したデジタルデータを再生できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明では、ホログラムを記録するホログラム記録媒体には、光を透過する透過型のホログラム記録媒体を用いる。本発明において、ホログラム記録媒体に反射型記録媒体ではなく、透過型記録媒体を用いるのは、以下の理由による。
【0027】
反射型記録媒体では、常に反射面に焦点をもってくることで、固定された2次元センサアレイ(受光素子)に結像させる装置構成を可能としている。反射型記録媒体に対して信号光の焦点位置を変えると、それに応じて再生画像の結像位置や大きさが変化する。そのため、反射型記録媒体を用いる場合に、信号光を参照光とともに光軸方向にシフトさせてデータを記録すると、その記録されたデータを再生することが困難で、たとえ実現させるにしても極めて複雑な再生光学系が必要となってしまう。
【0028】
また、透過型記録媒体を利用した場合においても、従来では、空間光変調器(SLM)とセンサアレイの画素を完全に一致させる、いわゆる画素マッチをおこなっていた。この方式では、フーリエ変換レンズの間に存在する記録媒体の位置が変化すると結像画像が歪んでしまうため、きちんとした4f系を構成するために、記録媒体と対称な位置に補償板を入れるという技術も提案されている(Applied Optics Vol.43,No.25, 4902-4914(2004).を参照)。しかしながら、この従来技術でも、透過型記録媒体にホログラムを記録する場合に、信号光と参照光とをともに光軸方向にシフトさせながら記録することを実現しているものではない。
【0029】
そこで、本発明者は、信号光データの1画素の「明」「暗」で示されたデジタルデータを複数の受光素子によって受光する、いわゆるオーバーサンプリングを採用している場合には、信号光を光軸方向にシフトさせても、記録したホログラムを読み取れることを見出した。さらに、膜厚方向の選択性を高めるために、参照光を信号光と同一のレンズで集光させ、かつ、その集光角度を所定の条件(sinθ>0.2)とすることで、従来の10分の1程度のピッチで厚さ方向にホログラムが記録できることを見出した。
【0030】
そして、本発明では、上記の見地に基づき、透過型記録媒体にホログラムを記録する技術において、光学系の結像関係をくずさずに信号光の集光位置を厚さ方向(信号光の光軸方向)にシフトさせることを実現した。さらには、ホログラムの形成領域を限定し、なおかつ、信号光をシフトさせて記録することにより、多重化される信号光波面の相関を減らし、高いシフト選択性を実現するものである。
【0031】
以下、本発明を実施するための実施の形態の一例(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0032】
本実施形態に係るホログラム記録再生装置は、光軸を共通とする信号光と参照光とを同方向からホログラム記録媒体に照射する。そして、ホログラム記録媒体上で、信号光と参照光とが干渉して、照射点に回折格子(干渉縞)が形成される。こうして、ホログラム記録媒体に信号光が持つ情報が記憶される。以下、ホログラム記録媒体に照射される信号光と参照光とを含む光を記録光とする。本発明では、記録光が、信号光と参照光とが光軸を共通とする1光束からなる、同軸記録方式であることを特徴としている。
【0033】
そして、本実施形態のホログラム記録再生装置は、記録光の光軸方向(ホログラム記録媒体の膜厚方向)に記録光の集光位置を移動させながら、記録光の光軸方向(ホログラム記録媒体の膜厚方向)及びホログラム記録媒体の面内方向にホログラムを多重記録する。
【0034】
また、ホログラム記録媒体に記憶された情報は、ホログラム記録媒体に形成された回折格子に参照光のみを照射させ、そこから出射される再生光(回折光)を受光し、受光した再生光に基づいて読み出される。
【0035】
図1には、本実施形態に係るホログラム記録再生装置1のシステム構成を示す。ホログラム記録再生装置1は、レーザ光源10、シャッター12、π/2波長板14、偏光板16、拡大・コリメート光学系18、ミラー20、偏光ビームスプリッター22、空間光変調器24、リレーレンズ系を構成するレンズ26,30、アパチャー28、フーリエ変換レンズ32,36、記録媒体位置決め制御機構部34、アパチャー38、リレーレンズ系を構成するレンズ40,42、センサアレイ44、位置決め用の光源(ここではレーザ光を用いる)46、コリメートレンズ48、ビームスプリッター50、ダイクロイックミラー52、及び受光素子54を備える。
【0036】
レーザ光源10は、ホログラムを記録する信号光及び参照光の光源となるレーザ光を照射する。レーザ光源10からは、ホログラム記録媒体100の光記録層に感度のある所定の波長のレーザ光(例えば、波長が532nmの緑色レーザ等)が照射される。
【0037】
シャッター12は、レーザ光源10から照射されたレーザ光の光路上に設けられる。シャッター12の開閉に応じて、レーザ光が遮断される。そして、シャッター12を通過したレーザ光は、π/2波長板14と、偏光板16とを通過して、光強度や偏光方向が調整される。
【0038】
偏光板16を通過したレーザ光は、拡大・コリメート光学系18により所定径の平行光に変換される。拡大・コリメート光学系18で平行光に変換されたレーザ光は、ミラー20により反射され、偏光ビームスプリッター22に入射する。
【0039】
偏光ビームスプリッター22により反射されたレーザ光は、空間光変調器24に入射する。
【0040】
空間光変調器24は、偏光ビームスプリッター22から入射したレーザ光を、記録情報に応じたパターンでレーザ光を偏光変調する。変調されたレーザ光が再び偏光ビームスプリッター22に入射し、偏光ビームスプリッター22はp偏光のみを透過させるため、光強度変調された光強度変調パターンを有する光に変調することができる。記録情報は、例えばデジタルデータ「0,1」を「明,暗」に対応させた明暗のパターン画像により表現される。
【0041】
図2には、空間光変調器24により変調された信号光と、参照光の表示パターンの一例を示す。図2に示されるように、記録光の中心部に信号光が配置され、信号光の外周に参照光が配置される。なお、参照光は信号に基づいた変調はしないが、適宜変調してもよい。参照光を変調させることで記録媒体内での信号光と参照光の重なりを大きくすることが可能である。図2においては、参照光を、信号光を表現する画素サイズでランダムな強度パターンによって変調させている。参照光にデータパターンと同程度の周期でランダム変調を与えることによって、データ記録に必要な領域に参照光を均等に照射させるという利点がある。
【0042】
空間光変調器24により出射された信号光と参照光を含む記録光は、レンズ26に入射する。記録光は、レンズ26によりアパチャー28(ピンホール)を通過するように集光され、アパチャー28を通過する際に所定の周波数成分がカットされる。なお、アパチャー28により所定の周波数成分がカットされ、記録媒体を寄り有効に使った記録が可能となるが、アパチャー28は発明の実施のために必須なものではない。そして、アパチャー28を通過した記録光は、レンズ30により再び平行光にされ、フーリエ変換レンズ32に入射する。
【0043】
フーリエ変換レンズ32は、信号光と参照光とを共にホログラム記録媒体100に集光させる。そして、信号光と参照光とが集光される位置において、信号光と参照光とが干渉した干渉縞がホログラム記録媒体100の光記録層に形成される。本実施形態において、フーリエ変換レンズ32は、開口数(NA)の大きなレンズであることを特徴とするが、その詳細については後述する。
【0044】
また、本発明では、上述したように、ホログラムを記録するホログラム記録媒体100には、光を透過する透過型のホログラム記録媒体を用いる。
【0045】
図3には、本実施形態におけるホログラム記録媒体100の構成の一例を示す。図3に示されるように、ホログラム記録媒体100は、光記録層102、保護層104、及び選択反射層106を含み構成される。
【0046】
光記録層102は、記録光により形成されるホログラム(干渉縞)が記録されるホログラム記録層である。
【0047】
保護層104は、光記録層102や選択反射層106を保護する層であり、透明のガラス基板等から構成される。
【0048】
選択反射層106は、光記録層102の界面に接するように設けられ、記録光200とは異なる波長の位置決め用の光としてレーザ光202(例えば、波長が650nmの赤色半導体レーザ等、以下「位置決め用レーザ光」と呼ぶ)を選択的に反射する。位置決め用レーザ光202には、ホログラム記録媒体100の光記録層102の材料に対して感度が小さいものが用いられる。
【0049】
位置決め用レーザ光202は、位置決め用レーザ光源46から照射される。照射された位置決め用レーザ光202は、コリメートレンズ48により平行光にされる。平行光にされた位置決め用レーザ光202は、ビームスプリッター50を通過して、ダイクロイックミラー52に入射する。そして、ダイクロイックミラー52において、記録光と同一の光路とされる。そして、位置決め用レーザ光202は、ホログラム記録媒体100に入射すると、選択反射層106により位置決め用レーザ光202の一部が反射される。選択反射層106により反射された反射光は、ダイクロイックミラー52、ビームスプリッター50により反射されて、受光素子54により受光される。そして、受光素子54では、受光された反射光に基づいて、記録光の焦点位置制御のためのサーボ信号を出力する。
【0050】
ホログラム記録媒体100は、記録媒体位置決め制御機構部34に保持される。記録媒体位置決め制御機構部34は、記録光の光軸方向に移動することができる。そして、受光素子54から出力されたサーボ信号に基づいて、記録媒体位置決め制御機構部34は、光軸方向にその位置を調整し、ホログラム記録媒体100とフーリエ変換レンズ32との距離を調整する。こうして、記録光がホログラム記録媒体100に対して集光する集光位置が制御される。また、位置決め用レーザ光202は、図3に示されるように、ホログラム記録媒体100の両面から入射されるようにしてもよい。
【0051】
ホログラム記録媒体100に記録したデータを読み出す際には、ホログラム記録媒体100に、参照光のみが照射される。そして、参照光が、ホログラム記録媒体100に形成された回折格子(干渉縞)に照射されることにより、ホログラム記録媒体100を透過する再生光(回折光)が出射される。再生光は、回折格子を形成した際に照射した記録光を含むものである。そして、出射された再生光は、フーリエ変換レンズ36により逆フーリエ変換される。そしてアパチャー38を通過する際に、参照光がカットされる。なお、アパチャー38が参照光をカットすることで、高いSN比で信号光を検出することが可能となるが、アパチャー38は発明の実施のために必須なものではない。そして、レンズ40,42によりリレーされた再生光を、センサアレイ44により受光する。センサアレイ44では、再生光に含まれる信号光の光強度変調パターンに基づいて、信号光に重畳されたデータを読み出す。なお、本実施形態においては、センサアレイ44は、1ビットのデータを4つ(2×2)の受光素子により受光している。
【0052】
また、上述したように、本実施形態においては、フーリエ変換レンズ32には、開口数(NA)が所定値よりも大きなレンズを用いる。具体的には、記録光を光軸に対してsinθ>0.2を満たす角度θを最大角度として集光すること、すなわち、フーリエ変換レンズ32は、少なくとも開口数(NA)が0.2より大きいことを特徴とする。以下には、上記の角度θの範囲を選択した理由を説明する。
【0053】
図4(A)には、ホログラム記録媒体にホログラムを記録し、光軸方向に参照光の焦点位置を移動させながら再生されるON画素(明画素)の平均輝度を測定した結果を示す。上記の測定は、異なる集光角度(sinθ:0.45,0.37,0.27,0.20,0.09)で記録再生したものである。また、上記の測定には、光記録層の厚みが、1mmのホログラム記録媒体を用いた。そして、図4(A)においては、横軸には、ホログラムを記録した位置から光軸方向に記録光(又は参照光)を移動させたシフト量を取っている。そして、縦軸には、ON画素の相対輝度を取っている。なお、図4(A)では、各集光角度(sinθ)についての測定結果をまとめて示しており、縦軸の相対輝度はそれぞれの集光角度(sinθ)に関して、低い値を取っているところは輝度が小さく、高い値を取っているところは輝度が大きいことを表している。
【0054】
そして、図4(A)に示されるように、例えば、集光角度(sinθ)が0.45では、ホログラムを記録した位置から5μm程度、参照光が移動すると回折光が消失していることが分かる。従って、集光角度(sinθ)が0.45では、5μm程度の微小シフト量でホログラムを多重記録できる。また、図4(A)から、集光角度(sinθ)が大きい程、回折光が消失するまでのシフト量が小さくなることが示されている。
【0055】
そして、図4(B)には、上記の測定結果において、集光角度(sinθ)に対する、ON画素の相対輝度の半値幅をプロットしたグラフを示す。ここで、半値幅とは、ON画素の相対輝度の値が半分になるまでの参照光のシフト量を示すものである。図4(B)に示されるように、集光角度(sinθ)が0.2を超える場合では、半値幅が10μm以下となり、100μm以上であった従来に比べて、微少なシフト量で多重記録ができることがわかる。
【0056】
以上の知見により、集光角度(sinθ)が0.2より大きく集光させることが望ましく、すなわち、ホログラム記録媒体に記録光を集光させるフーリエ変換レンズには、少なくとも開口数が0.2より大きなレンズを用いるのが望ましいとした。
【0057】
次に、図5(A)に、ホログラム記録再生装置1によりホログラム記録媒体100に記録したデジタルデータを光軸方向に参照光をシフトさせながら再生した際のON画素とOFF画素のそれぞれの平均濃度と、再生したデジタルデータのビットエラーレートを示す。ここで、ビットエラーレート(BER)は、エラー補正を用いない場合の値を用いている。そして、ホログラム記録媒体100への集光角度(sinθ)を0.45とした。
【0058】
図5(A)に示されているように、集光角度(sinθ)を0.45としてホログラムを記録した場合には、5μmのシフト量により回折光が消失し、次のホログラムが十分に記録できることが分かった。また、記録されたホログラムを再生した際のエラービットレートも十分に許容値(0.005)を満たしているものである。
【0059】
また、図5(B)には、記録光を光軸方向に5μmずつシフトさせながらホログラム記録媒体100にデジタルデータを3多重記録し、記録したデジタルデータを光軸方向に参照光をシフトさせながら再生した際のON画素とOFF画素の平均濃度と、再生したデジタルデータのビットエラーレートを示す。
【0060】
そして、図5(B)に示されるように、デジタルデータを5μm間隔で3多重記録した場合にも、記録されたホログラムを再生した際のエラービットレートも許容値(0.005)を満たし、精度良く多重記録できることが分かった。
【0061】
次に、以下に行った測定に基づいて、ホログラム記録媒体の光記録層のどの位置にホログラムを記録することが望ましいのかについて説明する。
【0062】
ホログラム記録層の膜厚方向における中心部を原点位置として、ホログラム記録媒体の膜厚方向(記録光の光軸方向)にデフォーカス量を変更しながら、ホログラムを記録した。デフォーカス量とは、ホログラム記録媒体の膜厚方向における中心部からの記録光の焦点位置のシフト量のことを示す。
【0063】
図6(A)は、横軸にデフォーカス量を示し、縦軸には記録したデジタルデータを再生した際のビットエラーレートを示したグラフである。また、図6(B)は、横軸にデフォーカス量を示し、縦軸には記録したデジタルデータを再生した際のSN比を示したグラフである。上記の測定は、光記録層の厚みが500μmの場合と、1mmの場合のそれぞれについて行った。
【0064】
図6(A)及び図6(B)に示されるように、記録光の焦点位置が、光記録層の中心部付近よりも、光記録層の界面に近い部分にある場合の方が、ビットエラーレートが低く、さらに高SN比で記録したデータが再生されることが分かった。そして、ビットエラーレートの目標値を0.005(5e−3)とした場合には、その目標値を充足するデフォーカス量は、図6(A)の矢印で示されている範囲に相当する。すなわち、光記録層の膜厚が500μmである場合には約0.5mmの範囲で、膜厚が1mmである場合には約0.75mmの範囲で、目標のビットエラーレートを充足させながら記録することができる。上記の場合に、5μmで光軸方向に記録光をシフトさせながら多重記録すると、理論上は、500μmのホログラム記録媒体では100多重、1mmのホログラム記録媒体では150多重もの多重記録が可能となる。
【0065】
また、ホログラム記録媒体は、光記録層を1層とした構成に限られるものではなく、図7(A)に示されるように、選択反射層と光記録層とを交互に積層して構成することとしてもよい。また、図7(B)に示されるように、選択反射層と光記録層と交互に積層した層の間にギャップを設けてもよい。そして、図7(C)に示されるように、選択反射層と光記録層とを交互に複数積層させ、各層の間の一部もしくは全部にギャップを設けるようにしてもよい。
【0066】
そして、積層された各光記録層において、記録光の集光位置の位置決めを行う際には、その光記録層に対応する選択反射層により位置決めレーザ光の一部を反射させ、反射された位置決め用レーザ光を受光し、その受光された反射光に基づいて、記録光の焦点位置制御のためのサーボ信号を出力する。そして、出力されたサーボ信号に基づいて、位置決め制御機構は光軸方向の位置を調整する。こうして、各光記録層について位置決め用レーザ光の反射光を用いたサーボ制御を行い、各光記録層に対する位置決め精度を向上させる。こうして、ホログラム記録媒体の光記録層が多層になった場合にも、本発明を適用することができる。
【0067】
そして、図8には、ホログラム記録媒体の面内方向、及び膜厚方向(光軸方向)に記録光をシフトさせる順番(記録シーケンス)を変更させて多重記録を行った場合に、各記録シーケンスにより記録されるホログラムを再生した際のビットエラーレートの測定結果を示す。ここでは、各記録シーケンスについて、ホログラム記録媒体の面内方向のシフト量を変えながらホログラムを記録し、各シフト量において記録されたホログラムを再生した際のビットエラーレートを測定している。なお、測定対象とした記録シーケンスは3つである。
【0068】
まず、1つ目の記録シーケンスAは、図9(A)に示されるように、横7×縦7の49個のホログラムを、渦巻き状にシフトさせながら記録する記録シーケンスである。なお、記録シーケンスAは、従来型の記録シーケンスである。
【0069】
また、2つ目の記録シーケンスBは、図9(B)に示されるように、横7×縦7の49個のホログラムを、上下の2層に交互に記録する記録シーケンスである。
【0070】
そして、3つ目の記録シーケンスCは、図9(C)に示されるように、横5×縦5の25個のホログラムを、上記の記録シーケンスA及びB場合と比べて2倍のシフト量でまず1層に記録し、さらに1層とは半分のシフト量をずらして同様に2層目に記録する記録シーケンスである。記録シーケンスB,Cにおける上下の層のシフト量は600μmとしている。なお、各記録シーケンスにより記録されるホログラム数は、記録シーケンスA,Bが49、記録シーケンスCが50であり、ほぼ同一としている。
【0071】
図8には、各記録シーケンスA,B,Cにより記録されたホログラムを再生した際のビットエラーレートが示されている。図8に示されるように、記録シーケンスCが最もビットエラーレートが低く、ついで記録シーケンスB、そして記録シーケンスAの順にビットエラーレートが高くなる。従って、記録シーケンスAによりも記録シーケンスB,Cによればビットエラーレートが低い多重記録が可能である。
【0072】
また、以下には、ホログラム記録媒体のダイナミックレンジを有効に利用するための、ホログラムの記録シーケンスの一例について、図10を参照しつつ説明する。
【0073】
図10における記録シーケンスでは、記録するホログラムを光記録層の界面付近の上下二層に配置する。ホログラムを記録する二層は、上述したようにSN比が高く記録できる層を選択する。そして、図10に示されるように、記録光による焦点位置のスポットの直径が上下の各層についてa及びbとした場合に、近接するホログラムが重ならないように、ホログラム間の距離が(a+b)/2となるように記録光を集光させる。このようにホログラムを記録することにより、光記録層の記録材料が均一に消費される。また、図10に示されるホログラム群を、図11に示されるように、ホログラム記録媒体の面方向にシフトさせて記録することで、多重記録も可能となる。
【0074】
以上、本発明の一実施形態を詳細に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、公知の技術を応用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】ホログラム記録再生装置のシステム構成の一例を示す図である。
【図2】信号光と参照光の表示パターンの一例を示す図である。
【図3】ホログラム記録媒体の構成の一例を示す図である。
【図4】回折光が消失するまでのシフト量に関する計測結果を示す図である。
【図5】記録したデジタルデータの読み出しに関する計測結果を示す図である。
【図6】デフォーカス量に応じて計測されたビットエラーレートを示す図である。
【図7】ホログラム記録媒体の他の構成例を示す図である。
【図8】3次元シフト多重記録の記録シーケンスに応じて計測されたビットエラーレートを示す図である。
【図9】ホログラムの記録シーケンスを示す図である。
【図10】ホログラムの記録シーケンスの一例を示す図である。
【図11】記録媒体の面内方向に多重記録されたホログラムの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1 ホログラム記録再生装置、10 レーザ光源、12 シャッター、14 π/2波長板、16 偏光板、18 拡大・コリメート光学系、20 ミラー、22 偏光ビームスプリッター、24 空間光変調器、26 レンズ、28 アパチャー、30 レンズ、32 フーリエ変換レンズ、34 記録媒体位置決め制御機構部、36 フーリエ変換レンズ、38 アパチャー、40,42 レンズ、44 センサアレイ、46 位置決め用レーザ光源、48 コリメートレンズ、50 ビームスプリッター、52 ダイクロイックミラー、54 受光素子、100 ホログラム記録媒体、102 光記録層、104 保護層、106 選択反射層、200 記録光、202 位置決め用レーザ光。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラムを記録する光記録装置、光記録方法、記録媒体及び再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光記録技術において、大容量、高速記録再生を可能とする技術の1つに、ホログラム記録技術がある。ホログラム記録技術においては、ホログラム記録媒体の同一又は略同一位置にホログラムを記録することで、ホログラム記録媒体の記録容量を増加させることができる。
【0003】
そして、従来では、二光波でホログラムを記録するホログラム記録装置において、信号光と参照光との集光位置を制御して、ホログラムの多重記録を行っているものがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、光分岐素子を用いてレーザ光を信号光と参照光に分岐させ、光変調素子により信号光に情報を付与し、位相変調素子により参照光を位相変調させ、集光光学系により両者をホログラム記録媒体の略同一箇所に集光させてホログラム記録する技術が開示されている。上記の技術では、集光位置をホログラム記録媒体の表面に沿った方向で制御して面内の多重記録を、位相変調素子とホログラム記録媒体との距離を制御させて深さ方向の多重記録を行うものである。こうすることで、多重化される信号光波面の相関による多重時のクロストークの低減を実現させている。
【特許文献1】特開2005−322382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、記録光の光軸方向に対して、互いにクロストークの少ないホログラムを多重記録することができる光記録装置、及び光記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の光記録装置は、光軸を共通として同方向から照射される信号光と参照光とを含む記録光を透過型記録媒体に対して集光させる集光手段と、前記集光手段により前記記録光が前記透過型記録媒体に対して集光される集光位置を、前記光軸方向について移動させる集光位置移動手段と、を含み、前記集光位置移動手段により移動される各位置において、前記記録光により形成される干渉縞を、前記透過型記録媒体に記録する、ことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明において、前記集光手段は、前記記録光を前記光軸に対して、sinθ>0.2を満たす角度θで集光する、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1又は2に記載の発明において、前記集光位置移動手段は、前記記録光の集光位置を、前記透過型記録媒体の光記録層の前記記録光の光軸と交差する各境界面から所定の範囲内に移動させ、前記各所定の範囲内にある前記光記録層に、前記記録光により形成される干渉縞を記録する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、上記請求項3に記載の光記録装置において、前記記録光の光軸は、前記光記録層の境界面と2箇所で交差し、前記各所定の範囲は、前記記録層の光軸と前記光記録層の境界面との各交点から略等しい場所であり、前記光記録層の厚さ方向において該光記録層の中心から略対称位置に干渉縞を記録する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、上記請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記透過型記録媒体は、前記記録光の波長とは異なる波長の位置決め用の光を反射する反射膜を備え、前記光記録装置は、前記位置決め用の光を照射する照射手段と、前記照射手段により照射される位置決め用の光が前記反射膜により反射された反射光を受光する受光手段と、をさらに含み、前記集光位置移動手段は、前記受光手段により受光した反射光に基づいて、前記記録光の集光位置を移動させる、ことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、上記請求項5に記載の発明において、前記透過型記録媒体は、複数の光記録層を積層して形成され、各光記録層の間には反射膜が備えられ、前記受光手段は、各反射膜により反射された反射光をそれぞれ受光し、前記集光位置移動手段は、前記受光手段によりそれぞれ受光された反射光に基づいて、前記各光記録層における記録光の集光位置を移動させる、ことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の光記録方法は、光軸を共通として同方向から照射される信号光と参照光とを含む記録光を透過型記録媒体に対して集光させる集光ステップと、前記集光ステップで前記記録光が前記透過型記録媒体に対して集光される集光位置を、前記光軸方向について移動させる集光位置移動ステップと、を含み、前記集光位置移動ステップで移動される各位置において、前記記録光により形成される干渉縞を、前記透過型記録媒体に記録する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、上記請求項7に記載の光記録方法において、前記透過型記録媒体の光記録層の各境界面から所定の範囲内に位置する各層において、前記透過型記録媒体の面内方向に所定の間隔で干渉縞を記録し、前記各層の互いに隣り合う層において記録される干渉縞の位置は、前記面内方向に前記所定の間隔の半分ずつずらして記録される、ことを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の記録媒体の発明は、上記請求項7又は8に記載の光記録方法によりデータが記録された記録媒体である。
【0015】
請求項10に記載の再生方法の発明は、上記請求項1乃至6のいずれかに記載の光記録装置によりデータが記録される透過型記録媒体に参照光を照射させて得られる回折光に含まれる1ビットのデジタル信号を複数の受光素子により受光して、データを再生する再生方法である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、透過型記録媒体に対して、信号光と参照光をともに光軸方向へシフトさせて多重記録を行うため、本構成を有していない場合に比較して、記録光の光軸方向に対して、互いにクロストークの少ないホログラムを多重記録することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、記録光の光軸方向に多重記録されるホログラム間のシフト量を小さくした際にも、ホログラムの記録を精度良く行うことができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、ホログラム記録媒体の光記録層において多重記録が精度良く行える部分を選択的に用いて、ホログラムの多重記録をより精度良く行うことができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、1つの光記録層について、厚さ方向における略対象位置においてホログラムを記録するため、本構成を有していない場合に比較して、光記録材料を均一に消費することができ、記録媒体のダイナミックレンジを有効に使うことができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、記録光が透過型記録媒体に対して集光される集光位置の位置決め精度が良好となり、記録光の光軸方向に関して多重記録されるホログラム間のシフト量を小さくした際にも、ホログラムの記録を精度良く行うことができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、複数の光記録層が積層された透過型記録媒体の各光記録層に対して、記録光の光軸方向に多重記録されるホログラム間のシフト量を小さくすることができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、透過型記録媒体に対して、信号光と参照光をともに光軸方向へシフトさせて多重記録を行うため、本構成を有していない場合に比較して、記録光の光軸方向に対して、互いにクロストークの少ないホログラムを多重記録することができる。
【0023】
請求項8の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、ホログラムを光軸方向に記録する際に、光記録層の記録材料を有効に使用できる。さらには、複数のホログラムを均一の多重状態で記録していくことで、光記録層の記録材料を有効に使用できる。
【0024】
請求項9の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、記録光の光軸方向に対して、互いにクロストークの少ないホログラムが多重記録された記録媒体を提供することができる。
【0025】
請求項10の発明によれば、記録光の光軸方向に対して、互いにクロストークの少ないホログラムによりデジタルデータを多重記録した記録媒体から、記録したデジタルデータを再生できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明では、ホログラムを記録するホログラム記録媒体には、光を透過する透過型のホログラム記録媒体を用いる。本発明において、ホログラム記録媒体に反射型記録媒体ではなく、透過型記録媒体を用いるのは、以下の理由による。
【0027】
反射型記録媒体では、常に反射面に焦点をもってくることで、固定された2次元センサアレイ(受光素子)に結像させる装置構成を可能としている。反射型記録媒体に対して信号光の焦点位置を変えると、それに応じて再生画像の結像位置や大きさが変化する。そのため、反射型記録媒体を用いる場合に、信号光を参照光とともに光軸方向にシフトさせてデータを記録すると、その記録されたデータを再生することが困難で、たとえ実現させるにしても極めて複雑な再生光学系が必要となってしまう。
【0028】
また、透過型記録媒体を利用した場合においても、従来では、空間光変調器(SLM)とセンサアレイの画素を完全に一致させる、いわゆる画素マッチをおこなっていた。この方式では、フーリエ変換レンズの間に存在する記録媒体の位置が変化すると結像画像が歪んでしまうため、きちんとした4f系を構成するために、記録媒体と対称な位置に補償板を入れるという技術も提案されている(Applied Optics Vol.43,No.25, 4902-4914(2004).を参照)。しかしながら、この従来技術でも、透過型記録媒体にホログラムを記録する場合に、信号光と参照光とをともに光軸方向にシフトさせながら記録することを実現しているものではない。
【0029】
そこで、本発明者は、信号光データの1画素の「明」「暗」で示されたデジタルデータを複数の受光素子によって受光する、いわゆるオーバーサンプリングを採用している場合には、信号光を光軸方向にシフトさせても、記録したホログラムを読み取れることを見出した。さらに、膜厚方向の選択性を高めるために、参照光を信号光と同一のレンズで集光させ、かつ、その集光角度を所定の条件(sinθ>0.2)とすることで、従来の10分の1程度のピッチで厚さ方向にホログラムが記録できることを見出した。
【0030】
そして、本発明では、上記の見地に基づき、透過型記録媒体にホログラムを記録する技術において、光学系の結像関係をくずさずに信号光の集光位置を厚さ方向(信号光の光軸方向)にシフトさせることを実現した。さらには、ホログラムの形成領域を限定し、なおかつ、信号光をシフトさせて記録することにより、多重化される信号光波面の相関を減らし、高いシフト選択性を実現するものである。
【0031】
以下、本発明を実施するための実施の形態の一例(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0032】
本実施形態に係るホログラム記録再生装置は、光軸を共通とする信号光と参照光とを同方向からホログラム記録媒体に照射する。そして、ホログラム記録媒体上で、信号光と参照光とが干渉して、照射点に回折格子(干渉縞)が形成される。こうして、ホログラム記録媒体に信号光が持つ情報が記憶される。以下、ホログラム記録媒体に照射される信号光と参照光とを含む光を記録光とする。本発明では、記録光が、信号光と参照光とが光軸を共通とする1光束からなる、同軸記録方式であることを特徴としている。
【0033】
そして、本実施形態のホログラム記録再生装置は、記録光の光軸方向(ホログラム記録媒体の膜厚方向)に記録光の集光位置を移動させながら、記録光の光軸方向(ホログラム記録媒体の膜厚方向)及びホログラム記録媒体の面内方向にホログラムを多重記録する。
【0034】
また、ホログラム記録媒体に記憶された情報は、ホログラム記録媒体に形成された回折格子に参照光のみを照射させ、そこから出射される再生光(回折光)を受光し、受光した再生光に基づいて読み出される。
【0035】
図1には、本実施形態に係るホログラム記録再生装置1のシステム構成を示す。ホログラム記録再生装置1は、レーザ光源10、シャッター12、π/2波長板14、偏光板16、拡大・コリメート光学系18、ミラー20、偏光ビームスプリッター22、空間光変調器24、リレーレンズ系を構成するレンズ26,30、アパチャー28、フーリエ変換レンズ32,36、記録媒体位置決め制御機構部34、アパチャー38、リレーレンズ系を構成するレンズ40,42、センサアレイ44、位置決め用の光源(ここではレーザ光を用いる)46、コリメートレンズ48、ビームスプリッター50、ダイクロイックミラー52、及び受光素子54を備える。
【0036】
レーザ光源10は、ホログラムを記録する信号光及び参照光の光源となるレーザ光を照射する。レーザ光源10からは、ホログラム記録媒体100の光記録層に感度のある所定の波長のレーザ光(例えば、波長が532nmの緑色レーザ等)が照射される。
【0037】
シャッター12は、レーザ光源10から照射されたレーザ光の光路上に設けられる。シャッター12の開閉に応じて、レーザ光が遮断される。そして、シャッター12を通過したレーザ光は、π/2波長板14と、偏光板16とを通過して、光強度や偏光方向が調整される。
【0038】
偏光板16を通過したレーザ光は、拡大・コリメート光学系18により所定径の平行光に変換される。拡大・コリメート光学系18で平行光に変換されたレーザ光は、ミラー20により反射され、偏光ビームスプリッター22に入射する。
【0039】
偏光ビームスプリッター22により反射されたレーザ光は、空間光変調器24に入射する。
【0040】
空間光変調器24は、偏光ビームスプリッター22から入射したレーザ光を、記録情報に応じたパターンでレーザ光を偏光変調する。変調されたレーザ光が再び偏光ビームスプリッター22に入射し、偏光ビームスプリッター22はp偏光のみを透過させるため、光強度変調された光強度変調パターンを有する光に変調することができる。記録情報は、例えばデジタルデータ「0,1」を「明,暗」に対応させた明暗のパターン画像により表現される。
【0041】
図2には、空間光変調器24により変調された信号光と、参照光の表示パターンの一例を示す。図2に示されるように、記録光の中心部に信号光が配置され、信号光の外周に参照光が配置される。なお、参照光は信号に基づいた変調はしないが、適宜変調してもよい。参照光を変調させることで記録媒体内での信号光と参照光の重なりを大きくすることが可能である。図2においては、参照光を、信号光を表現する画素サイズでランダムな強度パターンによって変調させている。参照光にデータパターンと同程度の周期でランダム変調を与えることによって、データ記録に必要な領域に参照光を均等に照射させるという利点がある。
【0042】
空間光変調器24により出射された信号光と参照光を含む記録光は、レンズ26に入射する。記録光は、レンズ26によりアパチャー28(ピンホール)を通過するように集光され、アパチャー28を通過する際に所定の周波数成分がカットされる。なお、アパチャー28により所定の周波数成分がカットされ、記録媒体を寄り有効に使った記録が可能となるが、アパチャー28は発明の実施のために必須なものではない。そして、アパチャー28を通過した記録光は、レンズ30により再び平行光にされ、フーリエ変換レンズ32に入射する。
【0043】
フーリエ変換レンズ32は、信号光と参照光とを共にホログラム記録媒体100に集光させる。そして、信号光と参照光とが集光される位置において、信号光と参照光とが干渉した干渉縞がホログラム記録媒体100の光記録層に形成される。本実施形態において、フーリエ変換レンズ32は、開口数(NA)の大きなレンズであることを特徴とするが、その詳細については後述する。
【0044】
また、本発明では、上述したように、ホログラムを記録するホログラム記録媒体100には、光を透過する透過型のホログラム記録媒体を用いる。
【0045】
図3には、本実施形態におけるホログラム記録媒体100の構成の一例を示す。図3に示されるように、ホログラム記録媒体100は、光記録層102、保護層104、及び選択反射層106を含み構成される。
【0046】
光記録層102は、記録光により形成されるホログラム(干渉縞)が記録されるホログラム記録層である。
【0047】
保護層104は、光記録層102や選択反射層106を保護する層であり、透明のガラス基板等から構成される。
【0048】
選択反射層106は、光記録層102の界面に接するように設けられ、記録光200とは異なる波長の位置決め用の光としてレーザ光202(例えば、波長が650nmの赤色半導体レーザ等、以下「位置決め用レーザ光」と呼ぶ)を選択的に反射する。位置決め用レーザ光202には、ホログラム記録媒体100の光記録層102の材料に対して感度が小さいものが用いられる。
【0049】
位置決め用レーザ光202は、位置決め用レーザ光源46から照射される。照射された位置決め用レーザ光202は、コリメートレンズ48により平行光にされる。平行光にされた位置決め用レーザ光202は、ビームスプリッター50を通過して、ダイクロイックミラー52に入射する。そして、ダイクロイックミラー52において、記録光と同一の光路とされる。そして、位置決め用レーザ光202は、ホログラム記録媒体100に入射すると、選択反射層106により位置決め用レーザ光202の一部が反射される。選択反射層106により反射された反射光は、ダイクロイックミラー52、ビームスプリッター50により反射されて、受光素子54により受光される。そして、受光素子54では、受光された反射光に基づいて、記録光の焦点位置制御のためのサーボ信号を出力する。
【0050】
ホログラム記録媒体100は、記録媒体位置決め制御機構部34に保持される。記録媒体位置決め制御機構部34は、記録光の光軸方向に移動することができる。そして、受光素子54から出力されたサーボ信号に基づいて、記録媒体位置決め制御機構部34は、光軸方向にその位置を調整し、ホログラム記録媒体100とフーリエ変換レンズ32との距離を調整する。こうして、記録光がホログラム記録媒体100に対して集光する集光位置が制御される。また、位置決め用レーザ光202は、図3に示されるように、ホログラム記録媒体100の両面から入射されるようにしてもよい。
【0051】
ホログラム記録媒体100に記録したデータを読み出す際には、ホログラム記録媒体100に、参照光のみが照射される。そして、参照光が、ホログラム記録媒体100に形成された回折格子(干渉縞)に照射されることにより、ホログラム記録媒体100を透過する再生光(回折光)が出射される。再生光は、回折格子を形成した際に照射した記録光を含むものである。そして、出射された再生光は、フーリエ変換レンズ36により逆フーリエ変換される。そしてアパチャー38を通過する際に、参照光がカットされる。なお、アパチャー38が参照光をカットすることで、高いSN比で信号光を検出することが可能となるが、アパチャー38は発明の実施のために必須なものではない。そして、レンズ40,42によりリレーされた再生光を、センサアレイ44により受光する。センサアレイ44では、再生光に含まれる信号光の光強度変調パターンに基づいて、信号光に重畳されたデータを読み出す。なお、本実施形態においては、センサアレイ44は、1ビットのデータを4つ(2×2)の受光素子により受光している。
【0052】
また、上述したように、本実施形態においては、フーリエ変換レンズ32には、開口数(NA)が所定値よりも大きなレンズを用いる。具体的には、記録光を光軸に対してsinθ>0.2を満たす角度θを最大角度として集光すること、すなわち、フーリエ変換レンズ32は、少なくとも開口数(NA)が0.2より大きいことを特徴とする。以下には、上記の角度θの範囲を選択した理由を説明する。
【0053】
図4(A)には、ホログラム記録媒体にホログラムを記録し、光軸方向に参照光の焦点位置を移動させながら再生されるON画素(明画素)の平均輝度を測定した結果を示す。上記の測定は、異なる集光角度(sinθ:0.45,0.37,0.27,0.20,0.09)で記録再生したものである。また、上記の測定には、光記録層の厚みが、1mmのホログラム記録媒体を用いた。そして、図4(A)においては、横軸には、ホログラムを記録した位置から光軸方向に記録光(又は参照光)を移動させたシフト量を取っている。そして、縦軸には、ON画素の相対輝度を取っている。なお、図4(A)では、各集光角度(sinθ)についての測定結果をまとめて示しており、縦軸の相対輝度はそれぞれの集光角度(sinθ)に関して、低い値を取っているところは輝度が小さく、高い値を取っているところは輝度が大きいことを表している。
【0054】
そして、図4(A)に示されるように、例えば、集光角度(sinθ)が0.45では、ホログラムを記録した位置から5μm程度、参照光が移動すると回折光が消失していることが分かる。従って、集光角度(sinθ)が0.45では、5μm程度の微小シフト量でホログラムを多重記録できる。また、図4(A)から、集光角度(sinθ)が大きい程、回折光が消失するまでのシフト量が小さくなることが示されている。
【0055】
そして、図4(B)には、上記の測定結果において、集光角度(sinθ)に対する、ON画素の相対輝度の半値幅をプロットしたグラフを示す。ここで、半値幅とは、ON画素の相対輝度の値が半分になるまでの参照光のシフト量を示すものである。図4(B)に示されるように、集光角度(sinθ)が0.2を超える場合では、半値幅が10μm以下となり、100μm以上であった従来に比べて、微少なシフト量で多重記録ができることがわかる。
【0056】
以上の知見により、集光角度(sinθ)が0.2より大きく集光させることが望ましく、すなわち、ホログラム記録媒体に記録光を集光させるフーリエ変換レンズには、少なくとも開口数が0.2より大きなレンズを用いるのが望ましいとした。
【0057】
次に、図5(A)に、ホログラム記録再生装置1によりホログラム記録媒体100に記録したデジタルデータを光軸方向に参照光をシフトさせながら再生した際のON画素とOFF画素のそれぞれの平均濃度と、再生したデジタルデータのビットエラーレートを示す。ここで、ビットエラーレート(BER)は、エラー補正を用いない場合の値を用いている。そして、ホログラム記録媒体100への集光角度(sinθ)を0.45とした。
【0058】
図5(A)に示されているように、集光角度(sinθ)を0.45としてホログラムを記録した場合には、5μmのシフト量により回折光が消失し、次のホログラムが十分に記録できることが分かった。また、記録されたホログラムを再生した際のエラービットレートも十分に許容値(0.005)を満たしているものである。
【0059】
また、図5(B)には、記録光を光軸方向に5μmずつシフトさせながらホログラム記録媒体100にデジタルデータを3多重記録し、記録したデジタルデータを光軸方向に参照光をシフトさせながら再生した際のON画素とOFF画素の平均濃度と、再生したデジタルデータのビットエラーレートを示す。
【0060】
そして、図5(B)に示されるように、デジタルデータを5μm間隔で3多重記録した場合にも、記録されたホログラムを再生した際のエラービットレートも許容値(0.005)を満たし、精度良く多重記録できることが分かった。
【0061】
次に、以下に行った測定に基づいて、ホログラム記録媒体の光記録層のどの位置にホログラムを記録することが望ましいのかについて説明する。
【0062】
ホログラム記録層の膜厚方向における中心部を原点位置として、ホログラム記録媒体の膜厚方向(記録光の光軸方向)にデフォーカス量を変更しながら、ホログラムを記録した。デフォーカス量とは、ホログラム記録媒体の膜厚方向における中心部からの記録光の焦点位置のシフト量のことを示す。
【0063】
図6(A)は、横軸にデフォーカス量を示し、縦軸には記録したデジタルデータを再生した際のビットエラーレートを示したグラフである。また、図6(B)は、横軸にデフォーカス量を示し、縦軸には記録したデジタルデータを再生した際のSN比を示したグラフである。上記の測定は、光記録層の厚みが500μmの場合と、1mmの場合のそれぞれについて行った。
【0064】
図6(A)及び図6(B)に示されるように、記録光の焦点位置が、光記録層の中心部付近よりも、光記録層の界面に近い部分にある場合の方が、ビットエラーレートが低く、さらに高SN比で記録したデータが再生されることが分かった。そして、ビットエラーレートの目標値を0.005(5e−3)とした場合には、その目標値を充足するデフォーカス量は、図6(A)の矢印で示されている範囲に相当する。すなわち、光記録層の膜厚が500μmである場合には約0.5mmの範囲で、膜厚が1mmである場合には約0.75mmの範囲で、目標のビットエラーレートを充足させながら記録することができる。上記の場合に、5μmで光軸方向に記録光をシフトさせながら多重記録すると、理論上は、500μmのホログラム記録媒体では100多重、1mmのホログラム記録媒体では150多重もの多重記録が可能となる。
【0065】
また、ホログラム記録媒体は、光記録層を1層とした構成に限られるものではなく、図7(A)に示されるように、選択反射層と光記録層とを交互に積層して構成することとしてもよい。また、図7(B)に示されるように、選択反射層と光記録層と交互に積層した層の間にギャップを設けてもよい。そして、図7(C)に示されるように、選択反射層と光記録層とを交互に複数積層させ、各層の間の一部もしくは全部にギャップを設けるようにしてもよい。
【0066】
そして、積層された各光記録層において、記録光の集光位置の位置決めを行う際には、その光記録層に対応する選択反射層により位置決めレーザ光の一部を反射させ、反射された位置決め用レーザ光を受光し、その受光された反射光に基づいて、記録光の焦点位置制御のためのサーボ信号を出力する。そして、出力されたサーボ信号に基づいて、位置決め制御機構は光軸方向の位置を調整する。こうして、各光記録層について位置決め用レーザ光の反射光を用いたサーボ制御を行い、各光記録層に対する位置決め精度を向上させる。こうして、ホログラム記録媒体の光記録層が多層になった場合にも、本発明を適用することができる。
【0067】
そして、図8には、ホログラム記録媒体の面内方向、及び膜厚方向(光軸方向)に記録光をシフトさせる順番(記録シーケンス)を変更させて多重記録を行った場合に、各記録シーケンスにより記録されるホログラムを再生した際のビットエラーレートの測定結果を示す。ここでは、各記録シーケンスについて、ホログラム記録媒体の面内方向のシフト量を変えながらホログラムを記録し、各シフト量において記録されたホログラムを再生した際のビットエラーレートを測定している。なお、測定対象とした記録シーケンスは3つである。
【0068】
まず、1つ目の記録シーケンスAは、図9(A)に示されるように、横7×縦7の49個のホログラムを、渦巻き状にシフトさせながら記録する記録シーケンスである。なお、記録シーケンスAは、従来型の記録シーケンスである。
【0069】
また、2つ目の記録シーケンスBは、図9(B)に示されるように、横7×縦7の49個のホログラムを、上下の2層に交互に記録する記録シーケンスである。
【0070】
そして、3つ目の記録シーケンスCは、図9(C)に示されるように、横5×縦5の25個のホログラムを、上記の記録シーケンスA及びB場合と比べて2倍のシフト量でまず1層に記録し、さらに1層とは半分のシフト量をずらして同様に2層目に記録する記録シーケンスである。記録シーケンスB,Cにおける上下の層のシフト量は600μmとしている。なお、各記録シーケンスにより記録されるホログラム数は、記録シーケンスA,Bが49、記録シーケンスCが50であり、ほぼ同一としている。
【0071】
図8には、各記録シーケンスA,B,Cにより記録されたホログラムを再生した際のビットエラーレートが示されている。図8に示されるように、記録シーケンスCが最もビットエラーレートが低く、ついで記録シーケンスB、そして記録シーケンスAの順にビットエラーレートが高くなる。従って、記録シーケンスAによりも記録シーケンスB,Cによればビットエラーレートが低い多重記録が可能である。
【0072】
また、以下には、ホログラム記録媒体のダイナミックレンジを有効に利用するための、ホログラムの記録シーケンスの一例について、図10を参照しつつ説明する。
【0073】
図10における記録シーケンスでは、記録するホログラムを光記録層の界面付近の上下二層に配置する。ホログラムを記録する二層は、上述したようにSN比が高く記録できる層を選択する。そして、図10に示されるように、記録光による焦点位置のスポットの直径が上下の各層についてa及びbとした場合に、近接するホログラムが重ならないように、ホログラム間の距離が(a+b)/2となるように記録光を集光させる。このようにホログラムを記録することにより、光記録層の記録材料が均一に消費される。また、図10に示されるホログラム群を、図11に示されるように、ホログラム記録媒体の面方向にシフトさせて記録することで、多重記録も可能となる。
【0074】
以上、本発明の一実施形態を詳細に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、公知の技術を応用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】ホログラム記録再生装置のシステム構成の一例を示す図である。
【図2】信号光と参照光の表示パターンの一例を示す図である。
【図3】ホログラム記録媒体の構成の一例を示す図である。
【図4】回折光が消失するまでのシフト量に関する計測結果を示す図である。
【図5】記録したデジタルデータの読み出しに関する計測結果を示す図である。
【図6】デフォーカス量に応じて計測されたビットエラーレートを示す図である。
【図7】ホログラム記録媒体の他の構成例を示す図である。
【図8】3次元シフト多重記録の記録シーケンスに応じて計測されたビットエラーレートを示す図である。
【図9】ホログラムの記録シーケンスを示す図である。
【図10】ホログラムの記録シーケンスの一例を示す図である。
【図11】記録媒体の面内方向に多重記録されたホログラムの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1 ホログラム記録再生装置、10 レーザ光源、12 シャッター、14 π/2波長板、16 偏光板、18 拡大・コリメート光学系、20 ミラー、22 偏光ビームスプリッター、24 空間光変調器、26 レンズ、28 アパチャー、30 レンズ、32 フーリエ変換レンズ、34 記録媒体位置決め制御機構部、36 フーリエ変換レンズ、38 アパチャー、40,42 レンズ、44 センサアレイ、46 位置決め用レーザ光源、48 コリメートレンズ、50 ビームスプリッター、52 ダイクロイックミラー、54 受光素子、100 ホログラム記録媒体、102 光記録層、104 保護層、106 選択反射層、200 記録光、202 位置決め用レーザ光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸を共通として同方向から照射される信号光と参照光とを含む記録光を透過型記録媒体に対して集光させる集光手段と、
前記集光手段により前記記録光が前記透過型記録媒体に対して集光される集光位置を、前記光軸方向について移動させる集光位置移動手段と、を含み、
前記集光位置移動手段により移動される各位置において、前記記録光により形成される干渉縞を、前記透過型記録媒体に記録する、
ことを特徴とする光記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光記録装置において、
前記集光手段は、
前記記録光を前記光軸に対して、sinθ>0.2を満たす角度θで集光する、
ことを特徴とする光記録装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光記録装置において、
前記集光位置移動手段は、
前記記録光の集光位置を、前記透過型記録媒体の光記録層の前記記録光の光軸と交差する各境界面から所定の範囲内に移動させ、
前記各所定の範囲内にある前記光記録層に、前記記録光により形成される干渉縞を記録する、
ことを特徴とする光記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光記録装置において、
前記記録光の光軸は、前記光記録層の境界面と2箇所で交差し、
前記各所定の範囲は、前記記録層の光軸と前記光記録層の境界面との各交点から略等しい場所であり、
前記光記録層の厚さ方向において該光記録層の中心から略対称位置に干渉縞を記録する
ことを特徴とする光記録装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光記録装置において、
前記透過型記録媒体は、前記記録光の波長とは異なる波長の位置決め用の光を反射する反射膜を備え、
前記光記録装置は、
前記位置決め用の光を照射する照射手段と、
前記照射手段により照射される位置決め用の光が前記反射膜により反射された反射光を受光する受光手段と、をさらに含み、
前記集光位置移動手段は、
前記受光手段により受光した反射光に基づいて、前記記録光の集光位置を移動させる、
ことを特徴とする光記録装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光記録装置において、
前記透過型記録媒体は、複数の光記録層を積層して形成され、各光記録層の間には反射膜が備えられ、
前記受光手段は、各反射膜により反射された反射光をそれぞれ受光し、
前記集光位置移動手段は、
前記受光手段によりそれぞれ受光された反射光に基づいて、前記各光記録層における記録光の集光位置を移動させる、
ことを特徴とする光記録装置。
【請求項7】
光軸を共通として同方向から照射される信号光と参照光とを含む記録光を透過型記録媒体に対して集光させる集光ステップと、
前記集光ステップで前記記録光が前記透過型記録媒体に対して集光される集光位置を、前記光軸方向について移動させる集光位置移動ステップと、を含み、
前記集光位置移動ステップで移動される各位置において、前記記録光により形成される干渉縞を、前記透過型記録媒体に記録する、
ことを特徴とする光記録方法。
【請求項8】
請求項7に記載の光記録方法において、
前記透過型記録媒体の光記録層の各境界面から所定の範囲内に位置する各層において、前記透過型記録媒体の面内方向に所定の間隔で干渉縞を記録し、
前記各層の互いに隣り合う層において記録される干渉縞の位置は、前記面内方向に前記所定の間隔の半分ずつずらして記録される、
ことを特徴とする光記録方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の光記録方法によりデータが記録された記録媒体。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれかに記載の光記録装置によりデータが記録される透過型記録媒体に参照光を照射させて得られる回折光に含まれる1ビットのデジタル信号を複数の受光素子により受光して、データを再生する再生方法。
【請求項1】
光軸を共通として同方向から照射される信号光と参照光とを含む記録光を透過型記録媒体に対して集光させる集光手段と、
前記集光手段により前記記録光が前記透過型記録媒体に対して集光される集光位置を、前記光軸方向について移動させる集光位置移動手段と、を含み、
前記集光位置移動手段により移動される各位置において、前記記録光により形成される干渉縞を、前記透過型記録媒体に記録する、
ことを特徴とする光記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光記録装置において、
前記集光手段は、
前記記録光を前記光軸に対して、sinθ>0.2を満たす角度θで集光する、
ことを特徴とする光記録装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光記録装置において、
前記集光位置移動手段は、
前記記録光の集光位置を、前記透過型記録媒体の光記録層の前記記録光の光軸と交差する各境界面から所定の範囲内に移動させ、
前記各所定の範囲内にある前記光記録層に、前記記録光により形成される干渉縞を記録する、
ことを特徴とする光記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光記録装置において、
前記記録光の光軸は、前記光記録層の境界面と2箇所で交差し、
前記各所定の範囲は、前記記録層の光軸と前記光記録層の境界面との各交点から略等しい場所であり、
前記光記録層の厚さ方向において該光記録層の中心から略対称位置に干渉縞を記録する
ことを特徴とする光記録装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光記録装置において、
前記透過型記録媒体は、前記記録光の波長とは異なる波長の位置決め用の光を反射する反射膜を備え、
前記光記録装置は、
前記位置決め用の光を照射する照射手段と、
前記照射手段により照射される位置決め用の光が前記反射膜により反射された反射光を受光する受光手段と、をさらに含み、
前記集光位置移動手段は、
前記受光手段により受光した反射光に基づいて、前記記録光の集光位置を移動させる、
ことを特徴とする光記録装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光記録装置において、
前記透過型記録媒体は、複数の光記録層を積層して形成され、各光記録層の間には反射膜が備えられ、
前記受光手段は、各反射膜により反射された反射光をそれぞれ受光し、
前記集光位置移動手段は、
前記受光手段によりそれぞれ受光された反射光に基づいて、前記各光記録層における記録光の集光位置を移動させる、
ことを特徴とする光記録装置。
【請求項7】
光軸を共通として同方向から照射される信号光と参照光とを含む記録光を透過型記録媒体に対して集光させる集光ステップと、
前記集光ステップで前記記録光が前記透過型記録媒体に対して集光される集光位置を、前記光軸方向について移動させる集光位置移動ステップと、を含み、
前記集光位置移動ステップで移動される各位置において、前記記録光により形成される干渉縞を、前記透過型記録媒体に記録する、
ことを特徴とする光記録方法。
【請求項8】
請求項7に記載の光記録方法において、
前記透過型記録媒体の光記録層の各境界面から所定の範囲内に位置する各層において、前記透過型記録媒体の面内方向に所定の間隔で干渉縞を記録し、
前記各層の互いに隣り合う層において記録される干渉縞の位置は、前記面内方向に前記所定の間隔の半分ずつずらして記録される、
ことを特徴とする光記録方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の光記録方法によりデータが記録された記録媒体。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれかに記載の光記録装置によりデータが記録される透過型記録媒体に参照光を照射させて得られる回折光に含まれる1ビットのデジタル信号を複数の受光素子により受光して、データを再生する再生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−140472(P2008−140472A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325681(P2006−325681)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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