説明

光透過領域を有する研磨パッドを製造するための超音波溶接法

【課題】光透過領域を有する研磨パッドの製造方法として、多彩な研磨パッド材料とウインドウ材料に適用することができ、ウインドウと研磨パッドの間に安定で一体化した結合を形成することができて漏れの傾向がなく、時間効率とコスト効率を犠牲にすることなく製造できる方法が相変わらず必要とされている。
【解決手段】少なくとも1つの光透過領域を有する化学−機械研磨パッドを形成する方法であって、(i)開口部を有する研磨パッドを用意し、(ii)その研磨パッドの開口部に光透過ウインドウを挿入し、(iii)その光透過ウインドウを研磨パッドに超音波溶接によって接合することを含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の光透過領域を有する研磨パッドを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学−機械研磨(“CMP”)プロセスは、マイクロエレクトロニクス・デバイスを製造する際、半導体ウエハ、電界放射デバイスや、他の多くのマイクロエレクトロニクス基板に平坦な表面を形成するのに利用されている。例えば半導体デバイスの製造には、一般に、さまざまなプロセス層を形成し、その層の一部を選択的に除去するかもしくはパターニングし、半導体基板の表面上にさらに別のプロセス層を堆積させて半導体ウエハを形成する操作が含まれる。プロセス層としては、例えば、絶縁層、ゲート酸化膜、導電層、金属またはガラスの層などがある。一般に、ウエハを処理するいくつかのステップでは、プロセス層の最上面が平坦になっていて、その上に次の層が堆積されることが望ましい。CMPがプロセス層の平坦化に使用され、そのとき、堆積された材料、例えば導電材料または絶縁材料が研磨されてウエハが平坦にされた後、続く処理ステップが行なわれる。
【0003】
典型的なCMPプロセスでは、CMPツール内の取り付け台にウエハを上下逆に取り付ける。取り付け台とウエハは、下方に押されて研磨パッドに向かう。取り付け台とウエハは、CMPツールの研磨盤上で回転している研磨パッドの上方で回転する。一般に、研磨組成物(研磨用スラリーとも呼ばれる)が、研磨プロセスの実施中に、回転しているウエハと回転している研磨パッドの間に導入される。研磨組成物は、一般に、ウエハの最上層の一部と反応したりウエハの最上層の一部を溶かしたりする化学物質と、層の一部を物理的に除去する研磨材料とを含んでいる。ウエハと研磨パッドは、同一方向または反対方向に回転させることが可能だが、その方向は、実施する個々の研磨プロセスにとってどちらが望ましいかによって決まる。取り付け台は、研磨盤上の研磨パッドを横断する往復運動をさせることもできる。
【0004】
基板の表面を研磨するとき、研磨プロセスをその場(現場)でモニターすることが望ましい場合がしばしばある。研磨プロセスをその場でモニターする1つの方法は、開口部(アパーチャ)またはウインドウを有する研磨パッドを用いることである。開口部またはウインドウにより、研磨プロセスの最中に基板表面を検査できるようにするための光が通過できる入口が提供される。開口部またはウインドウを有する研磨パッドは公知であり、基板、例えば半導体装置の研磨に用いられてきた。例えばアメリカ合衆国特許第5,893,796号には、研磨パッドの一部を除去して開口部を設け、その開口部に透明なポリウレタンまたは石英でできた栓を嵌めて透明なウインドウにすることが開示されている。透明な栓を研磨パッドの内部に一体成形するには、(1)液体ポリウレタンを研磨パッドの開口部に注いだ後、その液体ポリウレタンを硬化させて栓にするという方法と、(2)あらかじめ成形したポリウレタン製の栓を溶融した研磨パッド材料の中に配置した後、その全体を硬化させるという方法が可能である。あるいは、接着剤を用いて透明な栓を研磨パッドの開口部に固定した後、その接着剤を数日間かけて硬化させることもできる。同様に、アメリカ合衆国特許第5,605,760号には、棒または栓として成形された均一な固体ポリマー材料から形成した透明なウインドウを有するパッドが提示されている。透明な栓は、研磨パッドが鋳型の中でまだ溶融状態のときに不透明な研磨パッドの開口部に挿入すること、または接着剤を用いて研磨パッドの開口部に挿入することができる。
【0005】
ウインドウ部を研磨パッドの内部に固定する従来のこのような方法には多くの欠点がある。例えば接着剤を用いることには問題がある。なぜなら、接着剤は不快なガスを伴うことがあり、硬化させるのに24時間以上かかることがしばしばあるからである。このような研磨パッドのウインドウで用いる接着剤は、研磨組成物の成分からの化学的攻撃を受ける可能性もあるため、ウインドウを研磨パッドに取り付けるのに用いる接着剤のタイプは、どのタイプの研磨システムを使用するかに基づいて選択する必要がある。さらに、研磨パッドへのウインドウ部の接合は、時に不完全だったり、時間経過とともに劣化したりするため、研磨組成物が研磨パッドとウインドウの間に漏れていく。ウインドウ部は、時間が経つと研磨パッドからはずれる場合さえある。
【0006】
上記の問題点は、研磨パッド全体が透明である一体型研磨パッドを用いることによって、あるいは不透明な研磨パッドの小さな部分を特別に変更して透明なウインドウ部を設けた一体型研磨パッドを用いることによって解決できる。例えばアメリカ合衆国特許第6,171,181号に開示されているウインドウ部を有する研磨パッドは、透明なアモルファス材料が、それよりも結晶に近いために不透明なポリマー材料に取り囲まれているようにするため、研磨パッドを作る鋳型の小区画を急速に冷却して形成した一体型部材である。しかしこのような製造方法には、コストがかかること、鋳型を用いて形成できる研磨パッドに限定されること、研磨パッド材料とウインドウ材料が同じポリマー組成物でなくてはならないこと、といった問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、光透過領域を有する研磨パッドの製造方法として、多彩な研磨パッド材料とウインドウ材料に適用することができ、ウインドウと研磨パッドの間に安定で一体化した結合を形成することができて漏れの傾向がなく、時間効率とコスト効率を犠牲にすることなく製造できる方法が相変わらず必要とされている。
【0008】
本発明により、上記のような、光透過領域を含む研磨パッドの製造方法が提供される。本発明のこれらの利点ならびに他の利点と、本発明の別の特徴は、この明細書に記載する本発明の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、少なくとも1つの光透過ウインドウを有する研磨パッドの製造方法であって、(i)開口部を有する本体を持つ研磨パッドを用意し、(ii)その研磨パッドの本体の開口部に光透過ウインドウを挿入し、(iii)その光透過ウインドウを研磨パッドの本体に超音波溶接で接合することにより、光透過ウインドウを有する研磨パッドを形成することを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】本発明の超音波溶接法で用いるのに適した楕円形の光透過ウインドウの上面図である。
【図1B】図1Aの楕円形の光透過ウインドウの側面図である。
【図2A】本発明の超音波溶接法で用いるのに適した長方形の光透過ウインドウの上面図である。
【図2B】図2Aの長方形の光透過ウインドウの側面図である。
【図3A】本発明の超音波溶接法で用いるのに適した楕円形の光透過ウインドウの上面図である。
【図3B】図3Aの楕円形の光透過ウインドウの側面図である。
【図3C】図3Aの楕円形の光透過ウインドウの線分3C−3Cに沿った断面図である。
【図3D】図3Aの楕円形の光透過ウインドウの張出部の、図3Cに3Dとして示した領域の拡大図であり、ウインドウの張出部に、エネルギー誘導部が存在していることが強調されている図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、少なくとも1つの光透過ウインドウを有する化学−機械研磨パッドを形成する方法に関するものである。この方法は、(i)開口部(例えば穴または開放部)を有する本体を持つ研磨パッドを用意するステップと、(ii)その研磨パッドの本体の開口部に光透過ウインドウまたはレンズを挿入するステップと、(iii)その光透過ウインドウを研磨パッドの本体に超音波溶接で接合するステップを含んでいる。
【0012】
超音波溶接は、高周波数の音波を用いて複数の材料を溶融させてその材料を流動状態にし、物理的な結合を形成する操作を含んでいる。一般に、超音波の供給源は、高周波数の電気信号を音波に変換する金属製の音波発生チューニング装置(例えば“ホーン”)であるが、適切な他の任意の超音波供給源も用いることができる。ホーンとしては適切な任意のホーンが可能であり、例えばステンレス鋼製のホーンがある。ホーンは、適切な任意の形状または構造を持つことができるが、研磨パッドのウインドウの形状と似た形状(さもなければ、同一の形状)に加工することが好ましい。
【0013】
ホーンを研磨パッドの本体で開口部のある領域および光透過ウインドウと向かい合う位置に配置し、研磨パッドの本体と光透過ウインドウを互いに溶接する。ホーンに加える圧力を大きくしていくと、研磨パッドの本体と光透過ウインドウの表面に対するホーンからの圧力が大きくなる。圧力は、アクチュエータの圧力および速度として記録される。研磨パッドの本体と光透過ウインドウは、固定装置を用いてホーンと向かい合う位置に保持する。アクチュエータの圧力は、一般に0.05MPa〜0.7MPa(例えば0.1MPa〜0.55MPa)である。アクチュエータの圧力は、0.2MPa〜0.45MPaであることが好ましい。アクチュエータの速度は、一般に20m/秒〜35m/秒(例えば22m/秒〜30m/秒)である。アクチュエータの速度は、光透過ウインドウが固体ポリマー材料であるときには28m/秒以上、光透過ウインドウが多孔性ポリマー材料であるときには20m/秒〜28m/秒であることが好ましい。
【0014】
電気信号によって発生する音波は、ホーンの膨張と収縮(例えば振動)を引き起こす。ホーンの振動とアクチュエータの圧力が組み合わさることで、研磨パッドの本体と光透過ウインドウの界面に摩擦熱が発生する。例えば研磨パッドの本体と光透過ウインドウが熱可塑性ポリマーを含んでいる場合には、そのポリマーが溶融して流動状態になり、研磨パッドの本体のポリマーと光透過ウインドウのポリマーの間に結合が形成される。
【0015】
溶接の間、ホーンは特定の周波数で振動する。振動の周波数は、一般に1秒当たり20,000サイクル(20kHz)という一定値に維持するが、適切な任意の周波数を用いることができる。振動の振幅は、最大振幅の50%〜100%の範囲、好ましくは80%〜100%の範囲になるように変えることができる。ホーンの周波数の利得は、ブースターを利用して変えることができる。典型的なブースター比(入力と出力の比)は、1:1、1:1.5、あるいは1:2である。
【0016】
ホーンを溶接面上に引き込んだ状態にし、ホーンの圧力を光透過ウインドウの外縁部(例えば外縁部の0.1〜0.5cmの範囲)に集中させることができる。このようにして、溶接の圧力と超音波のエネルギーを研磨パッドの本体と光透過ウインドウの界面に集中させる。
【0017】
ホーンは、研磨パッドの本体と光透過ウインドウの表面に対して所定の期間、すなわち溶接時間にわたって振動する。溶接時間を決める際には、アクチュエータの圧力、アクチュエータの速度、振動の周波数、振動の振幅と、互いに溶接する材料のタイプを少なくとも考慮することになるであろう。材料が溶融して流動状態になり始めたときにホーンの振動を止める。材料が熱可塑性材料だと、一般に1秒以下(例えば0.9秒以下)の時間でその状態になる。光透過ウインドウが固体ポリマー材料である場合には、溶接時間は一般に0.4秒〜0.9秒(例えば0.5秒〜0.8秒)である。光透過ウインドウが多孔性ポリマー材料である場合には、溶接時間は一般に0.5秒以下(例えば0.2秒〜0.4秒)である。アクチュエータの圧力は、ホーンの振動を止めた後も所定の時間にわたって維持し、研磨パッドの本体の材料と光透過ウインドウの材料が互いに溶け合うようにする。材料が固化した後、ホーンと支持体固定装置を除去する。
【0018】
超音波溶接をするために研磨パッドの本体と光透過ウインドウを互いに隣接して配置するとき、研磨パッドの本体と光透過ウインドウの間に隙間が残されていることが望ましい。一般に、その隙間は100ミクロン以下(例えば75ミクロン以下)である。この値は、50ミクロン以下(例えば40ミクロン以下)であることが好ましい。
【0019】
溶接時間、振幅、アクチュエータの圧力、アクチュエータの速度は、溶接の質を制御する上で重要なパラメータである。例えば溶接時間が短かすぎたり、振幅、圧力、速度が小さすぎたりすると、溶接された研磨パッドの結合強度が弱くなる可能性がある。溶接時間が長すぎたり、振幅、圧力、速度が大きすぎたりすると、溶接された研磨パッドが歪んだり、過剰な突起部ができたり(例えば、ホーンがある場所の縁部の周辺に過剰な材料が隆起した部分が存在したり)、ウインドウが燃えてなくなったりする可能性がある。これらの特徴のどれかがあると、研磨パッドを研磨に使用できなくなる可能性がある。例えば研磨パッドがウインドウの周囲に漏れたり、研磨パッドが研磨の際に基板に望ましくない欠陥を作ったりする可能性がある。
【0020】
いくつかの実施態様では、研磨パッドおよび/または光透過ウインドウを予備処理し、超音波溶接の均一性と強度を大きくすることが望ましい。そのような1つの予備処理法は、研磨パッドおよび/または光透過ウインドウに放電(すなわち“コロナ処理”)して研磨パッドおよび/または光透過ウインドウの表面を酸化する操作を含んでいる。
【0021】
研磨パッドの本体と光透過ウインドウのうちの少なくとも一方は、超音波溶接プロセスの条件下で溶融および/または流動することが可能な材料を含んでいる。いくつかの実施態様では、研磨パッドの本体と光透過ウインドウの両方が、超音波溶接プロセスの条件下で溶融および/または流動することが可能な材料を含んでいる。一般に、研磨パッドの本体と光透過ウインドウは、ポリマー樹脂を含んでいる(例えば、実質的にポリマー樹脂からなるかもしくはポリマー樹脂からなる)。ポリマー樹脂としては、適切な任意のポリマー樹脂が可能である。ポリマー樹脂は、例えば、熱可塑性エラストマー、熱硬化性ポリマー(例えば熱硬化性ポリウレタン)、ポリウレタン(例えば熱可塑性ポリウレタン)、ポリオレフィン(例えば熱可塑性ポリオレフィン)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ナイロン、弾性ゴム、弾性ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテレフタル酸エチレン、ポリイミド、ポリアラミド、ポリアリーレン、そのコポリマー及びその混合物からなる群から選択することができる。ポリマー樹脂は、好ましくはポリウレタン樹脂である。
【0022】
研磨パッドの本体は、適切な任意の構造、密度、多孔度を持つことができる。研磨パッドの本体として、閉鎖セル(例えば多孔性フォーム)、開放セル(例えば焼結材料)、固体(例えば固体ポリマー・シートから切断したもの)が可能である。研磨パッドの本体は、従来技術で知られている任意の方法で形成することができる。適切な方法としては、多孔性ポリマーを、鋳造(モールディング)、切断、反応射出成形、射出ブロー成形、加圧成形、焼結、熱形成、加圧によって所望の形状の研磨パッドにする方法がある。多孔性ポリマーを所望の形にする前、所望の形にしているとき、あるいは所望の形にした後に、研磨パッドの他の要素も多孔性ポリマーに付け加えることができる。例えば従来技術で知られている多彩な方法により、裏打ち材料を付着させること、穴を開けること、表面に凹凸を与えること(例えば溝、チャネル)ができる。
【0023】
同様に、光透過ウインドウは、適切な任意の構造、密度、多孔度を持つことができる。光透過ウインドウは、例えば固体または多孔性(例えば孔の平均サイズが1ミクロン未満のミクロン孔またはナノ孔)のものが可能である。光透過ウインドウは、固体またはほぼ固体であることが好ましい(例えば空孔の体積が3%以下)。
【0024】
光透過ウインドウは、研磨パッドの本体の材料とは異なる材料を含んでいることが好ましい。光透過ウインドウは、例えば、研磨パッドの本体とは異なるポリマー組成物を含むこと、あるいは研磨パッドの本体と同じ材料だが少なくとも1つの物理的性質(例えば密度、多孔度、加圧性、硬度)が異なるポリマー樹脂を含むことができる。好ましい一実施態様では、研磨パッドの本体は多孔性ポリウレタンを含んでおり、ウインドウは固体ポリウレタンを含んでいる。好ましい別の一実施態様では、研磨パッドの本体は熱可塑性ポリウレタンを含んでおり、ウインドウは熱硬化性ポリウレタンを含んでいる。特に好ましい一実施態様では、熱可塑性ポリウレタンからなるウインドウ(例えば固体ウインドウ)を用い、それを熱硬化性ポリウレタンからなる研磨パッドの本体(例えば多孔性の研磨パッド本体)に溶接する。このような実施態様では、熱硬化性ポリウレタンは、超音波溶接の条件下で溶融または流動する傾向を示さず、熱可塑性ポリウレタンからなるウインドウが、熱硬化性ポリウレタンからなる研磨パッド本体の空いた空間(例えば空孔構造)の中で溶融して流動する傾向がある。もちろん、研磨パッドの本体と光透過ウインドウの両方が、超音波溶接のための同じ条件下で溶融または流動する材料を含むことも可能である。例えば研磨パッドの本体と光透過ウインドウの両方が熱可塑性ポリウレタンを含むようにすることができる。
【0025】
研磨パッドは、場合によっては、有機または無機の粒子を含むことができる。有機または無機の粒子は、例えば金属酸化物粒子(例えばシリカ粒子、アルミナ粒子、セリア粒子)、ダイヤモンド粒子、ガラス・ファイバー、炭素ファイバー、ガラス・ビーズ、アルミノケイ酸塩、フィロケイ酸塩(例えば雲母粒子)、架橋したポリマー粒子(例えばポリスチレン粒子)、水溶性粒子、吸水性粒子、中空粒子、その組み合わせなどからなる群から選択することができる。粒子は、適切な任意のサイズのものが可能であり、例えば直径の平均値として1nm〜10ミクロン(例えば20nm〜5ミクロン)が可能である。研磨パッドの本体に含まれる粒子の量は適切な任意の量にすることができ、例えば研磨パッド本体の全重量に基づいて1重量%〜95重量%である。
【0026】
光透過ウインドウも、無機材料を含むこと、または本質的に無機材料で構成すること、または無機材料からなることができる。例えば光透過ウインドウは、無機粒子(例えば金属酸化物粒子、ポリマー粒子など)を含む無機ウインドウにするか、無機材料(例えば石英)または無機塩(例えばKBr)を含む無機ウインドウにすることができる。この場合、ウインドウは、周辺部をポリマー樹脂でシールするか、低融点金属または金属合金(例えば半田製またはインジウム製のO−リング)でシールする。光透過ウインドウがその周辺部に低融点ポリマーまたは金属/金属合金を含んでいる場合には、研磨パッドの本体(またはその本体のうちで研磨パッドの開口部の周囲に位置する少なくとも一部)は、同じ材料または同様の材料を含んでいる。
【0027】
光透過ウインドウは、適切な任意の形状、サイズ、相対的配置にすることができる。例えば光透過ウインドウは、円、楕円(図1Aに示す)、長方形(図2Aに示す)、正方形、円弧の形状を持つことができる。光透過ウインドウは、円または楕円であることが好ましい。光透過ウインドウの形状が楕円または長方形である場合には、そのウインドウは、一般に長さが3cm〜8cm(例えば4cm〜6cm)で幅が0.5cm〜2cm(例えば1cm〜2cm)である。光透過ウインドウの形状が円または正方形である場合には、そのウインドウは、一般に直径(例えば幅)が1cm〜4cm(例えば2cm〜3cm)である。光透過ウインドウは、一般に厚さが0.1cm〜0.4cm(例えば0.2cm〜0.3cm)である。
【0028】
光透過ウインドウは、長さおよび/または幅がウインドウの非張出部の長さおよび/または幅よりも大きい張出部を備えている。張出部は、光透過ウインドウの上面または底面のいずれかになることができる。張出部は、光透過ウインドウの底面であることが好ましい。図1Bと図2Bには、張出部(12、22)と非張出部(14、24)をそれぞれ備える光透過ウインドウ(10、20)の側面図が示してある。光透過ウインドウの張出部は、研磨パッドの本体(例えば研磨パッドの本体の上面または底面)と重ね合わせ、光透過ウインドウと研磨パッドの本体がよりよく溶接されるようにすることが目的である。一般に、光透過ウインドウの張出部は、長さおよび/または幅が、光透過ウインドウの非張出部の長さおよび/または幅よりも0.6cm大きい(すなわち幅、長さ、直径に沿って0.6cm大きい)。張出部は、一般に厚さが光透過ウインドウの全厚さの50%以下(例えば10%〜40%、または25%〜35%)である。
【0029】
任意であるが、光透過ウインドウの張出部は、エネルギー誘導部、例えば張出部の周辺部に沿った隆起部をさらに備えている。エネルギー誘導部は、通常、(張出部の面から突き出して延びる)高さが0.02cm〜0.01cmである。エネルギー誘導部は、形が三角形で、張出部の面と120°〜160°(例えば130°〜150°)の角度をなしていることが好ましい。張出部(32)と、非張出部(34)と、エネルギー誘導部(36)とを有する楕円形の光透過ウインドウ(30)を図3Aと図3Bに示してある。この光透過ウインドウ(30)の断面図を図3Cに示してある。光透過ウインドウ(30)の張出部(32)の拡大図を図3Dに示してあり、エネルギー誘導部(36)を強調してある。エネルギー誘導部は、超音波溶接を行なっている間にポリマーを素早く溶解させて溶融したポリマーのプールを作り、光透過ウインドウを研磨パッドの本体に接合するのを助けることを目的としている。
【0030】
研磨パッドは、1つ以上の光透過ウインドウを備えることができる。光透過ウインドウは、研磨パッドの適切な任意の位置に配置できる。光透過ウインドウの上面は、研磨パッドの研磨面と同一平面にすること(すなわち被加工物を研磨している間、研磨パッドの上面がその被加工物と接触するようにする)、または研磨パッドの研磨面よりも引っ込ませることができる。
【0031】
いくつかの実施態様では、研磨パッドの本体は、最上部のパッドと最下部のパッド(すなわち“サブパッド”)を含む多層体である。この多層体は、最上部のパッドに設けられた開口部のサイズが、最下部のパッドに設けられた開口部のサイズと異なるような構成にすることができる。例えば最上部のパッドに設けられた開口部のサイズを、最下部のパッドに設けられた開口部のサイズよりも大きくすること、あるいは最上部のパッドに設けられた開口部のサイズを、最下部のパッドに設けられた開口部のサイズよりも小さくすることができる。異なるサイズの開口部を用いると、最上部のパッドまたは最下部のパッドにパッドの張出部ができるため、その張出部を光透過ウインドウで重なり合った部分、特に先に説明した光透過ウインドウの張出部、に溶接することができる。一実施態様では、光透過ウインドウを多層体の最上部のパッドに溶接する。別の一実施態様では、光透過ウインドウを多層体の最下部のパッドに溶接する。
【0032】
光透過ウインドウは、研磨パッドの本体の適切な任意の点に、適切な任意の相対的配置になるように溶接することができる。例えば光透過ウインドウは、研磨パッドの本体(例えば多層体)の上面に溶接し、光透過ウインドウの上面が研磨パッドの研磨面と同じ高さになるようにすることができる。別の方法として、光透過ウインドウは、研磨パッドの本体(例えば多層体)の底面に溶接すること、あるいは多層体の最上部のパッドの底面および/または最下部のパッドの上面に溶接し、光透過ウインドウの上面が研磨パッドの研磨面から引っ込んでいるようにすることもできる。
【0033】
研磨パッドの本体、光透過ウインドウ、研磨パッドの他の部分は、先に説明した特徴に加え、他の要素、成分、添加物、例えば裏打ち材、接着剤、研磨剤や、従来技術で知られている他の添加物を含むことができる。研磨パッドの光透過ウインドウは、例えば、所定の波長の光が通過できるようにする一方で、他の波長の光の通過を遅延させたり排除したりするため、光を吸収または反射する成分、例えば紫外線または可視光を吸収または反射する材料を含むことができる。
【0034】
本発明の方法で製造される研磨パッドは、研磨組成物が研磨パッドの面を横断して横方向に容易に移動できるようにするため、場合によっては溝、および/またはチャネル、および/または穴をさらに有する研磨面を持っている。そのような溝、チャネル、穴は、適切な任意のパターンと、適切な任意の深さおよび幅を持つようにすることができる。研磨パッドは、2つ以上の異なるパターンの溝、例えばアメリカ合衆国特許第5,489,233号に記載されている幅の広い溝と幅の狭い溝の組み合わせを備えることができる。溝は、傾斜した形状の溝、同心の溝、螺旋形または円形の溝、XY方向が交差したパターンの溝にすることができ、互いにつながっていてもつながっていなくてもよい。研磨パッドは、標準的なパッド加工法によって作られる少なくとも小さな溝を有する研磨面を備えていることが好ましい。
【0035】
本発明の方法で製造される研磨パッドは、光透過ウインドウに加え、1つ以上の他の特徴または成分を含むことができる。例えば研磨パッドは、場合によっては、密度、硬度、多孔度、化学的組成の異なる領域を含むことができる。研磨パッドは、場合によっては、固体粒子を含むことができる。固体粒子としては、研磨粒子(例えば金属酸化物粒子)、ポリマー粒子、水溶性粒子、吸水性粒子、中空粒子などがある。
【0036】
本発明の方法で製造される研磨パッドは、化学−機械研磨(CMP)装置と組み合わせて使用するのに特に適している。一般に、この装置はプラテンを備えている。このプラテンは、使用中はある速度で楕円運動、直線運動、円運動している。そのプラテンに本発明の研磨パッドが接触し、プラテンの運動中はそのプラテンとともに移動する。そして被加工物を保持する取り付け台が研磨パッドの表面と接触し、その表面に対して移動することによって被加工物が研磨される。被加工物の研磨は、被加工物が研磨パッドと接触しながら移動し、次いで、一般に研磨組成物を間に挟んだ状態で研磨パッドが被加工物に対して相対運動することによってなされる。すると被加工物の少なくとも一部が研磨されて被加工物が磨き上げられる。研磨組成物は、一般に、液体キャリヤ(例えば水性キャリヤ)とpH調節剤を含んでおり、場合によってはさらに研磨剤を含んでいる。研磨する被加工物のタイプに応じ、研磨組成物はさらに、酸化剤、有機酸、錯化剤、pH緩衝剤、界面活性剤、腐食防止剤、消泡剤などを含むことができる。CMP装置としては、適切な任意のCMP装置が可能であり、そのうちの多くのものが従来技術で知られている。本発明の方法で製造される研磨パッドは、直線式研磨ツールで用いることもできる。
【0037】
本発明の方法で製造される研磨パッドは、単独で用いること、あるいは任意には多層研磨パッドの1つの層として用いることができる。例えば研磨パッドをサブパッドと組み合わせて用いることができる。サブパッドとしては、適切な任意のサブパッドが可能である。適切なサブパッドとしては、ポリウレタン・フォーム製サブパッド、含浸フェルト製サブパッド、微孔性ポリウレタン製サブパッド、焼結ウレタン製サブパッドなどがある。サブパッドは、一般に本発明の研磨パッドよりも柔らかいためにより圧縮しやすく、ショア硬度が研磨パッドよりも小さい。例えばサブパッドは、ショアA硬度を35〜50にすることができる。いくつかの実施態様では、サブパッドはより硬く、より圧縮しにくくショア硬度が研磨パッドよりも大きい。サブパッドは、場合によっては、溝、チャネル、中空区画、ウインドウ、開口部などを備えている。本発明の研磨パッドをサブパッドと組み合わせて用いる場合には、一般に、研磨パッドとサブパッドの間にあって両者に沿って延びている中間裏打ち層、例えばポリテレフタル酸エチレン・フィルムが存在している。
【0038】
本発明の方法で製造される研磨パッドは、多くのタイプの被加工物(例えば基板やウエハ)と被加工物用材料を研磨するのに適している。例えば研磨パッドは、記憶装置、ガラス基板、メモリ・ディスクまたは剛体ディスク、金属(例えば貴金属)、磁気ヘッド、層内誘電(ILD)層、ポリマー・フィルム、誘電率の小さなフィルム、誘電率の大きなフィルム、強誘電体、マイクロ電気機械システム(MEMS)、半導体ウエハ、電界放射ディスプレイ、他のマイクロエレクトロニクス用基板、特に、絶縁層(例えば金属酸化物、窒化ケイ素、誘電率の小さな材料)および/または金属含有層(例えば銅、タンタル、タングステン、アルミニウム、ニッケル、チタン、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、その合金、その混合物)を含むマイクロエレクトロニクス用基板、といった被加工物の研磨に用いることができる。“メモリ・ディスクまたは剛体ディスク”という用語は、情報を電磁形態で保持するためのあらゆる磁気ディスク、ハードディスク、剛体ディスク、メモリ・ディスクを意味する。メモリ・ディスクまたは剛体ディスクは、一般に、ニッケル−リンを含む表面を有するが、その表面には、適切な他の任意の材料が含まれていてよい。適切な金属酸化物絶縁層としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、ゲルマニア、マグネシアと、これらの組み合わせがある。さらに、被加工物は、適切な任意の金属複合体を含むこと、または適切な任意の金属複合体で主として構成すること、または適切な任意の金属複合体で構成することができる。適切な金属複合体としては、例えば、金属窒化物(例えば窒化タンタル、窒化チタン、窒化タングステン)、金属炭化物(例えば炭化ケイ素、炭化タングステン)、ニッケル−リン、アルミノ−ホウケイ酸塩、ホウケイ酸ガラス、ホスホケイ酸ガラス(PSG)、ボロホスホケイ酸ガラス(BPSG)、シリコン/ゲルマニウム合金、シリコン/ゲルマニウム/炭素合金がある。被加工物は、適切な任意の半導体ベース材料を含むこと、または適切な任意の半導体ベース材料で主として構成すること、または適切な任意の半導体ベース材料で構成することもできる。適切な半導体ベース材料としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファス・シリコン、絶縁体上のシリコン、ゲルマニウム・ヒ素などがある。
【実施例】
【0039】
この実施例は、本発明をさらに詳しく説明するものであるが、もちろん、本発明の範囲をいかなる意味でも制限すると考えてはならない。この実施例は、超音波溶接を利用して光透過ウインドウを有する研磨パッドを製造する本発明の方法を説明するものである。
【0040】
光透過ウインドウと研磨パッドのさまざまな組み合わせを、さまざまな溶接条件下で、ホーンを用いて超音波溶接した(サンプルA〜F)。それぞれの研磨パッドは開口部を有する本体で構成し、その開口部に光透過ウインドウを溶接する。サンプルA〜Cは、焼結した楕円形の多孔性熱可塑性ポリウレタン(TPU)ウインドウを、研磨パッドの焼結した多孔性TPU本体、研磨パッドの固体TPU本体、研磨パッドの閉鎖セル熱硬化性ポリウレタン本体にそれぞれ溶接したものからなる。サンプルDとEは、それぞれ楕円形と長方形の固体TPUウインドウを、研磨パッドの閉鎖セル熱硬化性ポリウレタン本体に溶接したものからなる。サンプルFは、焼結した円形の多孔性TPUウインドウを、研磨パッドの閉鎖セル熱硬化性ポリウレタン本体に溶接したものからなる。ホーンの周波数は20kHzであり、最大出力は2000ワットであった。ホーンの周波数の振幅は、最大振幅の%として変化させ、ホーンの周波数の利得は、ブースター比1:1または1:1.5を用いて変化させた。ホーンは、アクチュエータを特定の圧力と速度にして、研磨パッドの本体およびウインドウの表面と向かい合う位置に固定した。研磨パッドの各サンプルについて、ホーンの振幅、ブースター比、アクチュエータの圧力と速度を以下の表にまとめてある。
【0041】
【表1】

【0042】
サンプルA〜Fのそれぞれは、溶接によって研磨パッドの本体と光透過ウインドウの結合強度が優れた研磨パッドを生み出し、しかもその研磨パッドには突起または歪みがなかった。この実施例は、接着剤なしで光透過領域を有する研磨パッドを製造するのに、超音波溶接が有用な技術となりうることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの光透過領域を有する化学−機械研磨パッドを形成する方法であって、
(i)開口部を有する本体を持つ研磨パッドを用意し、
(ii)その研磨パッドの本体の開口部に光透過ウインドウを挿入し、
(iii)その光透過ウインドウを研磨パッドの本体に超音波溶接で接合することにより、光透過ウインドウを有する研磨パッドを形成すること
を含む方法。
【請求項2】
研磨パッドの本体と光透過ウインドウがそれぞれポリマー樹脂を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー樹脂が、熱可塑性エラストマー、熱硬化性ポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ナイロン、弾性ゴム、弾性ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアラミド、ポリアリーレン、そのコポリマー及びその混合物からなる群から選ばれる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
光透過ウインドウが熱可塑性ポリウレタンを含んでいる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
研磨パッドの本体が、焼結研磨パッド、固体研磨パッド、多孔性フォーム製研磨パッドのいずれかである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
研磨パッドの本体と光透過ウインドウがそれぞれ異なるポリマー樹脂を含んでいる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
研磨パッドの本体が熱硬化性ポリマー樹脂を含んでおり、光透過ウインドウが熱可塑性ポリマー樹脂を含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
研磨パッドの本体が熱硬化性ポリウレタン樹脂を含んでおり、光透過ウインドウが熱可塑性ポリウレタン樹脂を含んでいる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
研磨パッドの本体が多孔性であり、光透過ウインドウが固体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
研磨パッドの本体が熱可塑性ポリマー樹脂を含んでおり、光透過ウインドウが熱硬化性ポリマー樹脂を含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
研磨パッドの本体が、最上部のパッドと最下部のパッドを含む多層体である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
研磨パッドの多層体の最上部のパッドに光透過ウインドウを溶接する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
光透過ウインドウが楕円形または円形の形状を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
接合工程における溶接時間が1秒以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
接合工程が、0.2MPa〜0.45MPaであるアクチュエータ圧力を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
光透過ウインドウが、張出部と非張出部を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
光透過ウインドウが、エネルギー誘導部をさらに備えている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法によって作られた、少なくとも1つの光透過領域を有する化学−機械研磨パッド。
【請求項19】
請求項9に記載の方法によって作られた、少なくとも1つの光透過領域を有する化学−機械研磨パッド。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公開番号】特開2011−31392(P2011−31392A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−229045(P2010−229045)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【分割の表示】特願2006−517168(P2006−517168)の分割
【原出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(500397411)キャボット マイクロエレクトロニクス コーポレイション (126)
【Fターム(参考)】