説明

光量検出回路及び電気光学装置

【課題】製造条件の変更を行うことなく、感度低下を補正して光検出精度を向上させることができる光量検出回路及び電気光学装置を提供する。
【解決手段】一対の光検知部LS1及びLS2を設け、一方の光検知部LS1は外光の光量に応じた出力信号Iaを出力し、他方の光検知部LS2は減光手段で1/nに減光された外光の光量に応じた出力信号Ibを出力する。そして、光検知部LS2の出力信号Ibにn2を乗算する乗算部11と、乗算部11の出力値から光検知部LS1の出力信号Ia
を減算する減算部12と、(n−1)に初期感度Kを乗算する乗算部13と、減算部12の出力値を乗算部13の出力値で除算する除算部14とを備え、徐算部14の出力値を外光の光量(照度L)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外光の明るさを検出する光センサを有する光量検出回路、及びこれを備えた電気光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光量検出回路として、薄膜トランジスタの漏れ電流が受光量に比例することを利用し、この漏れ電流で電圧検出用コンデンサに電荷を充電あるいは放電させ、当該コンデンサの両端間の電圧変化を監視することによって光量を検出するというものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、薄膜トランジスタの漏れ電流は受光量に比例するが、その感度(受光量に対する電流値)は光暴露によって低下することがわかっている。そのため、上記特許文献1に記載の光量検出回路にあっては、この感度低下によって光量の検出精度が低下してしまう。
【0003】
これを防止するために、トランジスタの生成方法を改良して、対劣化特性を向上させるという光電変換素子が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−29832号公報
【特許文献2】特開平9−232620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献2に記載の光電変換素子においては、特別な製造条件が必要となり、例えばTFTを用いた表示装置の内部に光センサを作り込んだり、同一装置で表示装置と光センサとを製造したりする場合に、表示用に適した特性とは異なった製造プロセスとなって、当該製造プロセスが長くなったり、製造装置の頻繁な条件設定の変更を余儀なくされたりする。
【0005】
そこで、本発明は、製造条件の変更を行うことなく、感度低下を補正して光検出精度を向上させることができる光量検出回路及び電気光学装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る光量検出回路は、外光を検知する光センサを有する一対の光検知部と、当該一対の光検知部からの出力信号を読み取る光センサ読み取り部と、を備え、
前記一対の光検知部は、入射光の積算光量の関数で表される当該光検知部の感度の劣化関数と、当該光検知部の初期感度と、入射光量との積となる出力信号を出力するものであって、
一方の光検知部は前記外光が入射光として入射され、当該外光の光量に応じた出力信号を出力し、他方の光検知部は外光を減光する減光手段を有し、該減光手段で減光された光が入射光として入射され、当該減光された光の光量に応じた出力信号を出力し、
前記一方の光検知部における入射光量と出力信号との相関関係と、前記他方の光検知部における入射光量と出力信号との相関関係とをもとに、前記光センサ読み取り部で読み取った各出力信号に基づいて前記外光の光量を検出することを特徴としている。
【0007】
これにより、感度低下を補正して外光の照度を高精度に検出することができる。
また、一方の光検知部における入射光量と出力信号との相関関係と、他方の光検知部に
おける入射光量と出力信号との相関関係から成り立つ連立方程式を、入射光量と積算光量とで解くことにより、積算光量が未知であっても感度補正を行うことができ、積算光量を検知するための回路が不要となって光量検知回路の簡易化を実現することができる。
【0008】
さらに、光検知部自体の特性向上(製造条件の変更)を行うものではないため、例えば、同一製造装置で表示装置と光センサとを製造するような場合であっても、製造プロセスが長くなったり、製造装置の頻繁な条件設定の変更を余儀なくされたりすることがない。
また、本発明において、前記他方の光検知部の出力信号に、前記減光手段における透過率の逆数を2乗した第1の定数を乗算する第1の乗算回路と、該第1の乗算回路の出力値から前記一方の光検知部の出力信号を減算する減算回路と、該減算回路の出力値を前記透過率の逆数から1を減算した値に前記初期感度を乗算した第2の定数で除算する除算回路とを備え、前記徐算回路の出力値を前記外光の光量とするのが望ましい。
【0009】
これにより、劣化関数を光センサの種類に応じた形Exp[−ap](aは劣化の速さを示す定数、pは積算光量)で定義して、適正に感度低下を補正することができる。また、劣化関数を1次までテイラー展開した関数とすることにより、簡易な回路で感度低下を補正することができる。さらに、劣化の速さを示す定数aも含まれない形で感度補正が可能となるため、光センサ毎で劣化速度のばらつきがあっても適正に感度補正をすることができる。なお、光量の単位を適当に設定することで、第2の定数を1とすることが出来る場合には、除算回路を省略して、減算回路の出力に基づいて前記外光の光量を検出することが出来る。
【0010】
さらに、前記初期感度と前記透過率の逆数から1を減算した値である第3の定数とを乗算して前記第2の定数を生成する第2の乗算回路を備えることが好ましく、またさらに、前記光検知部の積算通電時間に応じて、前記初期感度を補正する初期感度補正回路を備えることが好ましい。
これにより、個々の光センサの感度や透過率を設定できて確度が上がり、また、より適正に感度低下を補正することができる。
【0011】
また、本発明に係る電気光学装置は、第1乃至第7の発明の何れかの光量検出回路と、
複数の走査線と、複数のデータ線と、前記複数の走査線と前記複数のデータ線との交差に対応して設けられた複数の画素と、を有する表示パネルと、
前記表示パネル照光する照光部と、
前記光量検出回路の出力値に基づいて前記照光部を制御する制御回路と、を備えることを特徴としている。
【0012】
これにより、光量検出回路の感度低下を補正して外光の照度を高精度に検出することができ、適正に照光部を制御することができる電気光学装置とすることができる。
また、光検知部自体の特性向上(製造条件の変更)を行うものではないため、同一製造装置で表示パネルと光センサとを製造するような場合であっても、製造プロセスが長くなったり、製造装置の頻繁な条件設定の変更を余儀なくされたりすることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の光量検出回路1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、この光量検出回路1は、一対の光検知部LS1及びLS2と、光検知部LS1及びLS2から得られる2つのアナログ情報を取得すると共に、これらの読み取り値から算出される外光の照度Lを出力する読み取り部10と、を備えている。
【0014】
図2は、本実施形態の光検知部LS1及びLS2の構成を示す回路図である。
この図2に示すように、光検知部LS1及びLS2は、薄膜トランジスタ(TFT光センサ)のドレイン電極DLとソース電極SLとの間にコンデンサCが並列接続され、ソース電極SLとコンデンサCの一方の端子とがスイッチ素子SWを介して基準電圧源に接続さ
れ、更に、TFT光センサのドレイン電極DL及びコンデンサCの他方の端子が第2電圧
源(V2)に接続された構成となる。
【0015】
このような構成により、所定期間毎にスイッチ素子SWがオン状態となると、基準電圧源から所定の基準電圧Vs(例えば、+2V)がコンデンサCに印加されて充電される。この充電により、コンデンサCの両端には基準電圧Vsと第2電圧V2間の電位差が掛かって充電されるが、ゲート電極GLには逆極性のゲート電圧GVが印加されてゲートオフ
されているので、スイッチ素子SWをオフ状態とすると、TFT光センサへ光が照射されることにより生じる漏れ電流によって、この充電電圧が低下する。
【0016】
そして、コンデンサCへの充電タイミングから所定の読み取り時間後に、コンデンサCに充電された電圧を読み取り(検知し)、読み取った充電電圧に基づいて外光の照度を検出することが可能となる。
なお、以下の説明においては、各光検知部LSi(i=1,2)に設けられたスイッチ素子(図2のSWに相当)をSWi、コンデンサ(図2のCに相当)をCiと称する。
【0017】
図3は、光検知部LS1を構成する光センサ及びスイッチ素子の断面図である。
光検知部LS1を構成するTFT光センサ及びスイッチ素子SW1は、図3に示すように、いずれもTFTからなりTFT基板2上に形成されている。すなわち、TFT基板2は、その表面にTFT光センサのゲート電極GL、コンデンサC1の一方の端子Ca及び
一方のスイッチ素子SW1を構成するゲート電極GSが形成され、これらの表面を覆うよ
うにして窒化シリコンや酸化シリコンなどからなるゲート絶縁膜17が積層されている。
【0018】
また、TFT光センサのゲート電極GLの上及びスイッチ素子SW1を構成するTFT
のゲート電極GSの上には、それぞれゲート絶縁膜17を介して非晶質シリコンや多結晶
シリコンなどからなる半導体層19L及び19Sが形成されている。
また、ゲート絶縁体17上には、アルミニウムやモリブデン等の金属からなるTFT光センサのソース電極SL及びドレイン電極DL、一方のスイッチ素子SW1を構成するTFTのソース電極SS及びドレイン電極DSがそれぞれの半導体層19L及び19Sと接触するように設けられている。
【0019】
このうち、TFT光センサのソース電極SL及びスイッチ素子SW1を構成するTFT
のドレイン電極DSは、互いに延長されて接続されてコンデンサC1の他方の端子Cbが
形成されている。更に、TFT光センサ、コンデンサC1及びTFTからなるスイッチ素子SW1の表面を覆うようにして、例えば、無機絶縁材料からなる保護絶縁膜18が積層されており、また、TFTからなるスイッチ素子SW1の表面には、外部光の影響を受けないようにするために、ブラックマトリクス21が被覆されている。
【0020】
また、光検知部LS2は、図3に示す光検知部LS1において、TFT光センサの表面に、減光手段として透過率1/nのカラーフィルタが被覆されていることを除いては、光検知部LS1と同様の構成を有し、一対の光検知部LS1及びLS2は等しい光電変換特性を有する。ここで、上記カラーフィルタは、当該光検知部LS2の入射光量が、光検知部LS1の入射光量の1/n(n>0)となるように減光するためのものである。
【0021】
つまり、光検知部LS1のTFT光センサには、外光がそのまま入射光として入射され、光検知部LS2のTFT光センサには、カラーフィルタによって1/nに減光された外光が入射光として入射されることになる。
図1の読み取り部10は、光検知部LS1及びLS2のスイッチ素子SW1及びSW2のオン/オフ制御を行って、光検知部LS1及びLS2のコンデンサC1及びC2への充電を行う。このとき、光検知部LS1と光検知部LS2との充電タイミング及び1放電期間は、それぞれ等しく設定されている。なお、1放電期間とは、コンデンサCiへの充電開始時点から次の充電開始時点までの期間である。また、充電開始時点からコンデンサCiの充電電圧を読み取るまでの読み取り時間は、光検知部LS1とLS2とで等しく設定されている。
【0022】
そして、このようにして光検知部LS1から取得した読み取り値Iaと、光検知部LS2から取得した読み取り値Ibとに基づいて、後述する処理を行って照度Lを求めるようになっている。
図4は、読み取り部10の構成を示すブロック図である。
この図4に示すように、読み取り部10は、光検知部LS2の読み取り値Ibと、透過率の逆数nの2乗(n2)とを乗算する乗算部11と、該乗算部11の出力値から光検知
部LS1の読み取り値Iaを減算する減算部12と、減光手段なしの光検知部の初期感度Kと透過率の逆数nから“1”を減じた値(n−1)とを乗算する乗算部13と、減算部12の出力値を乗算部13の出力値で除算して照度Lを出力する除算部14とから構成されている。
【0023】
即ち、この読み取り部10での処理は、各光検知部から取得した読み取り値Ia,Ibに基づいて、次式をもとに照度Lを算出する処理に相当する。
L=(n2Ib−Ia)/{K(n−1)} ………(1)
なお、上記(1)式において、定数n2が第1の定数に対応し、定数K(n−1)が第
2の定数に対応し、定数(n−1)が第3の定数に対応している。
【0024】
次に、上記(1)式の算出原理について説明する。
前述したように、本実施形態では、2つの光検知部LS1,LS2を設け、光検知部LS2に、当該光検知部LS2の入射光量を光検知部LS1の入射光量の1/nにするための減光手段を設けている。
したがって、ある照度Lの光を照射したとき、各光検知部の読み取り値Ia,Ibと照度Lとの相関関係によって、以下の連立方程式が得られる。
【0025】
Ia=R[p]KL,
Ib=R[p/n]KL/n ………(2)
ここで、R[p]は感度の劣化関数であって、受光光量の時間積分である積算光量pの関数である。この劣化関数R[p]は、実験等による経験則で得られるものであり、本実施形態では、例えば、R[p]=Exp[−ap](aは定数)とする。
【0026】
この劣化関数R[p]をテイラー展開すると、次式のようになる。
R[p]=1−ap+a22/2−a33/6+a44/24−・・・ ………(3)
そして、この劣化関数R[p]を1次の項までで切断し、R[p]=1−apとして上記(2)式の連立方程式に代入すると、
Ia=(1−ap)KL,
Ib=(1−ap/n)KL/n ………(4)
となり、これを照度Lと積算光量pについて解くと、上記(1)式を得る。
【0027】
このようにして得られた照度Lの式には、積算光量pは含まれず、当該積算光量pが未知でも照度Lを算出することができる。また、劣化関数をテイラー展開して1次までの項を採用した形R[p]=1−apとすることで、劣化の速さを示す定数aも含まれなくなり、光センサ毎の劣化速度のばらつきがあっても精度良く照度Lを算出することができる

【0028】
なお、図4において、乗算部11が第1の乗算回路に対応し、減算部12が減算回路に対応し、乗算部13が第2の乗算回路に対応し、除算部14が第1の除算回路に対応している。
次に、本発明における第1の実施形態の動作について説明する。
今、外光がTFT光センサに照射されているものとする。このとき、読み取り部10が光検知部LS1及びLS2のスイッチ素子SW1及びSW2をオン状態とし、光検知部LS1及びLS2のコンデンサC1及びC2に夫々基準電圧Vsを充電する。そして、その後、読み取り部10がスイッチ素子SW1及びSW2をオフ状態に切り替え、TFT光センサに上記外光が照射されることにより生じる漏れ電流によって、コンデンサC1及びC2に充電された充電電圧がそれぞれ同じ放電特性で低下する。
【0029】
その後、読み取り部10は、所定の読み取り時間が経過した時点で、コンデンサC1及びC2の充電電圧を読み取り、これらを読み取り値Ia,Ibとして図4に示す処理を行って照度Lを算出する。
ところで、薄膜トランジスタの漏れ電流が受光量に比例することを利用し、この漏れ電流で電圧検出用コンデンサに電荷を充電あるいは放電させ、このコンデンサの両端間の電圧変化によって光量を検出する光量検出回路は広く普及しているが、薄膜トランジスタの感度(受光量に対する電流値)は光暴露によって低下することがわかっており、この感度低下によって光量の検出精度が低下してしまう。
【0030】
これを防止するために、トランジスタの生成方法を改良して、対劣化特性を向上させるという光電変換素子が知られているが、この場合、特別な製造条件が必要となり、例えばTFTを用いた表示装置の内部に光センサを作り込んだり、同一装置で表示装置と光センサとを製造したりする場合に、表示用に適した特性とは異なった製造プロセスとなって、当該製造プロセスが長くなったり、製造装置の頻繁な条件設定の変更を余儀なくされたりする。
【0031】
また、上記感度低下は、受光光量の時間積分である積算光量に依存することがわかっているため、積算光量で感度補正をすることも考えられるが、積算光量を知るには、装置が死ぬまで常に測光し続ける必要がある。これは、測光を必要としない場合や装置が作動しない場合も含めてであり、現実的ではない。
これに対して、本実施形態は、トランジスタ自体の特性向上(製造条件の変更)を行うことなく、感度低下を補正することができるので、精度良く光量検出を行うことができると共に、上記のように製造プロセスが長くなったり、製造装置の条件設定を頻繁に変更したりする必要がない。さらに、積算光量が未知であっても感度補正が可能となる。
【0032】
図5は、本実施形態の効果を説明するための図である。この図5において、太実線は本実施形態を適用した場合の感度特性、細線は本実施形態のような補正を行わない場合の感度特性である。
この図5からも明らかなように、本実施形態のような照度計算を行わない場合、積算光量が10kLxH以上で感度低下が生じるが、本実施形態の照度計算を行った場合、この感度低下が適切に補正されることがわかる。
【0033】
このように、上記第1の実施形態では、一対の光検知部のうち、一方の光検知部は外光の光量に応じた出力信号を出力し、他方の光検知部は減光手段で減光された入射光の光量に応じた出力信号を出力し、一方の光検知部における入射光量と出力信号との相関関係と、他方の光検知部における入射光量と出力信号との相関関係とをもとに、各出力信号に基づいて外光の光量を検出する。
【0034】
これにより、感度低下を補正して外光の照度を高精度に検出することができる。
また、一方の光検知部における入射光量と出力信号との相関関係と、他方の光検知部における入射光量と出力信号との相関関係から成り立つ連立方程式を、入射光量と積算光量とで解くことにより、積算光量が未知であっても感度補正を行うことができ、積算光量を検知するための回路が不要となって光量検知回路の簡易化を実現することができる。
【0035】
さらに、光検知部自体の特性向上(製造条件の変更)を行うものではないため、例えば、同一製造装置で表示装置と光センサとを製造するような場合であっても、製造プロセスが長くなったり、製造装置の頻繁な条件設定の変更を余儀なくされたりすることがない。
さらに、他方の光検知部の出力信号に、減光手段における透過率の逆数の2乗を乗算する第1の乗算回路と、該第1の乗算回路の出力値から一方の光検知部の出力信号を減算する減算回路と、前記透過率の逆数から1を減算した値に初期感度を乗算する第2の乗算回路と、前記減算回路の出力値を前記第2の乗算回路の出力値で除算することで、前記外光の光量を算出する除算回路とを備えるので、劣化関数を光センサの種類に応じた形Exp[−ap](aは劣化の速さを示す定数、pは積算光量)で定義して、適切に感度低下を補正することができる。
【0036】
また、劣化関数を1次までテイラー展開した関数とすることにより、簡易な回路で感度低下を補正することができる。さらに、劣化の速さを示す定数aも含まれない形で感度補正が可能となるため、光センサ毎で劣化速度のばらつきがあっても、当該ばらつきに因らずに適正に感度補正をすることができる。
なお、上記第1の実施形態においては、読み取り部10で、図4に示す演算回路を用いて、実際に照度Lを計算する場合について説明したが、各光検知部の読み取り値Ia,Ibを入力変数とするルックアップテーブルを用意し、このテーブルを参照して照度Lを求めることもできる。また、各光検知部の読み取り値Ia,Ibを入力とし、上記(1)式をもとにCPUで直接演算することもできる。
【0037】
さらに、初期感度K及び減光用カラーフィルタの透過率が製品間において許容誤差範囲で一定であるならば、乗算部13を省略して、減光手段なしの光検知部の初期感度Kと透過率の逆数nから“1”を減じた値(n−1)とを乗算して得られる定数を用いて、除算部14が減算部12の出力値を割る構成に簡略化出来る。またさらに、割る数が定数なので、この光量検出回路の出力値を用いる装置との単位系を調整することで、割る数を1とすることも可能となり、除算部14も省略可能となってさらに簡略化できる。即ち、減算部12の出力値を照度Lとして用いることができる。
【0038】
さらに、上記第1の実施形態においては、劣化関数R[p]として、上記(3)式の1次までの項を採用する場合について説明したが、2次以降の項まで採用して照度Lを求めることもできる。例えば、上記(3)式の2次までの項を採用し、R[p]=1−ap+a22/2とした場合、上記(1)式で示される連立方程式を解くと、照度Lは次式で表される。
【0039】
L=(−aIa+aIbn4+√(−a22(Ia2+Ib24−2IaIbn(1+(−1+n)n))))/(ak(−1+n)(1+n2)) ………(5)
L=−(a(Ia+Ibn4)+√(−a22(Ia2+Ib24−2IaIbn(1+(−1+n)n))))/(ak(−1+n)(1+n2)) ………(6)
そして、上記(5)及び(6)式のうち、物理的に意味のある方の式(照度Lが正値となる方の式)を用いて照度Lを算出する。これにより、より精度良く感度補正することができる。
【0040】
また、上記第1の実施形態においては、劣化関数R[p]=Exp[−ap]とする場合について説明したが、光センサの種類に応じた劣化関数R[p]を適用することができる。この場合にも、劣化関数R[p]の具体的な形を求めて上記(2)式で示される連立方程式を解くことにより、照度Lが得られる。
次に、本発明における第2の実施形態について説明する。
【0041】
この第2の実施形態は、前述した第1の実施形態において、初期感度Kを固定値としているのに対し、当該初期感度Kを積算通電時間に応じて可変とするようにしたものである。
図6は、第2の実施形態における光量検出回路1の構成を示すブロック図である。この図6に示すように、本実施形態の光量検出回路1は、積算通電時間に応じて初期感度Kを変更して出力する初期感度補正部20が追加されていることを除いては、図1の光量検出回路1と同様の構成を有するため、構成の異なる部分を中心に説明する。
【0042】
初期感度補正部20は、例えば、書き換え可能な不揮発性メモリに逐次記憶された積算通電時間Tを読み出し、この積算通電時間Tに応じた初期感度Kを読み取り部10に出力する。そして、読み取り部10では、乗算部13で、初期感度補正部20から出力される初期感度Kと定数(n−1)とを乗算し、その結果を前記除算部14に出力するようになっている。
【0043】
ここで、初期感度Kは、積算通電時間Tの関数を用いて直接算出してもよく、また、積算通電時間Tを入力変数とするルックアップテーブルを用意し、そのテーブルを参照して算出してもよい。このとき、初期感度Kは、積算通電時間Tが長いほど大きく算出されるようにする。
なお、図6において、初期感度補正部20が初期感度補正回路に対応している。
【0044】
このように、上記第2の実施形態では、積算通電時間に応じて初期感度を変更するので、感度低下が測光時の積算通電時間に依存する場合であっても、照度検出値を適切に補正することができ、より高精度な照度検出を実現することができる。
なお、上記各実施形態においては、光センサとしてTFT光センサを適用する場合について説明したが、周知のフォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトTFT、フォトSCR、光導電体、光電池など、任意の光−電気変換素子を適用することができる。
【0045】
次に、上述した光量検出回路1を適用した電気光学装置100について説明する。
図7は、光量検出回路1を適用した電気光学装置100の構成を示す図である。
この図7に示すように、この電気光学装置100は、液晶パネル101、調光回路102、照光部としてのバックライト103、制御回路104を備える。液晶パネル101は、その素子基板上に画像表示領域A、走査線駆動回路201、データ線駆動回路202、光量検出回路1を備える。
【0046】
ここで、液晶パネル101は、一般にトランジスタが形成される素子基板とカラーフィルタが形成される対向基板の対が液晶層を挟持する構造となっているので、光量検出回路1を素子基板上に設けた場合、光量検出回路1の光検知部LS2の減光用のフィルタを光検知部上ではなく、対向基板の対応する部分に設けることで、製造プロセスを増加させることなく、光検知部LS2に入射する光を減光させることが出来る。
【0047】
制御回路104は、各種信号を生成して走査線駆動回路201及びデータ線駆動回路202に供給するものである。また、画像表示領域Aには、複数の画素P1がマトリクス状に形成されており、画素P1ごとに透過率を制御することができる。バックライト103からの光は、画素P1を介して射出される。これによって、光変調による階調表示が可能
となる。調光回路102は、光量検出回路1から出力される外光(環境光)の照度を示す照度データに応じた輝度でバックライト103が発光するように調整する。
【0048】
表示画像の見え易さは環境の明るさによって左右される。したがって、調光回路102は、光量検出回路1から出力される環境光の照度と所定の照度閾値とを比較し、例えば、環境光の照度が日中の自然光に相当する場合には、バックライト103の発光輝度を高く設定し、明るい画面を表示するようにする。一方、環境光の照度が夜間の暗い環境下に相当する場合には、バックライト103の発光輝度を低く設定する。
【0049】
なお、ここでは液晶を用いた電気光学装置に適用する場合について説明したが、液晶以外の電気光学物質を用いた電気光学装置に適用することもできる。例えば、有機ELや発光ポリマーなどのOLED素子を電気光学物質として用いた表示パネルや、着色された液体とこの液体に分散された白色の粒子とを含むマイクロカプセルを電気光学物質として用いた電気泳動表示パネル、極性が相違する領域ごとに異なる色に塗り分けられたツイストボールを電気光学物質として用いたツイストボールディスプレイパネル、黒色トナーを電気光学物質として用いたトナーディスプレイパネル、ヘリウムやネオン等の高圧ガスを電気光学物質として用いたプラズマディスプレイパネルなど、各種の電気光学装置に対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明における実施形態の光量検出回路の構成を示すブロック図ある。
【図2】光検知部の回路図である。
【図3】TFT基板上の光センサ及びスイッチ素子の断面図である。
【図4】読み取り部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の効果を説明するための図である。
【図6】第2の実施形態における光量検出回路の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の光量検出回路を適用した電気光学装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1…光量検出回路、10…読み取り部、11…乗算部、12…減算部、13…乗算部、14…除算部、20…初期感度出力部、100…電気光学装置、LS1,LS2…光検知部、SW1,SW2…スイッチ素子、C1,C2…コンデンサ、Vs…基準電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外光を検知する光センサを有する一対の光検知部と、当該一対の光検知部からの出力信号を読み取る光センサ読み取り部と、を備え、
前記一対の光検知部は、入射光の積算光量の関数で表される当該光検知部の感度の劣化関数と、当該光検知部の初期感度と、入射光量との積となる出力信号を出力するものであって、
一方の光検知部は前記外光が入射光として入射され、当該外光の光量に応じた出力信号を出力し、他方の光検知部は外光を減光する減光手段を有し、該減光手段で減光された光が入射光として入射され、当該減光された光の光量に応じた出力信号を出力し、
前記一方の光検知部における入射光量と出力信号との相関関係と、前記他方の光検知部における入射光量と出力信号との相関関係とをもとに、前記光センサ読み取り部で読み取った各出力信号に基づいて前記外光の光量を検出することを特徴とする光量検出回路。
【請求項2】
前記他方の光検知部の出力信号に、所定の第1の定数を乗算する第1の乗算回路と、該第1の乗算回路の出力値から前記一方の光検知部の出力信号を減算する減算回路とを備え、前記減算回路の出力値を前記外光の光量とすることを特徴とする請求項1に記載の光量検出回路。
【請求項3】
前記減算回路の出力値を所定の第2の定数で除算する第1の除算回路を備え、該第1の除算回路の出力値を前記外光の光量とすることを特徴とする請求項2に記載の光量検出回路。
【請求項4】
前記第1の定数が、前記減光手段における透過率の逆数を2乗した値であることを特徴とする請求項2又は3に記載の光量検出回路。
【請求項5】
前記第2の定数が、前記透過率の逆数から1を減算した値に前記初期感度を乗算した値であることを特徴とする請求項3又は4に記載の光量検出回路。
【請求項6】
前記初期感度と所定の第3の定数とを乗算して前記第2の定数を生成する第2の乗算回路を備えたことを特徴とする請求項3乃至5の何れか1項に記載の光量検出回路。
【請求項7】
前記光検知部の積算通電時間に応じて、前記初期感度を補正する初期感度補正回路を備えることを特徴とする請求項3乃至6の何れか1項に記載の光量検出回路。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の光量検出回路と、
複数の走査線と、複数のデータ線と、前記複数の走査線と前記複数のデータ線との交差に対応して設けられた複数の画素と、を有する表示パネルと、
前記表示パネル照光する照光部と、
前記光量検出回路の出力値に基づいて前記照光部を制御する調光回路と、を備えることを特徴とする電気光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−2727(P2009−2727A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162292(P2007−162292)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】