光量調節装置及びこれを備えた撮像装置
【課題】光量を調節する羽根部材の開閉位置における運動規制を小型な基板のなかに配置することが出来ると共に羽根に生ずるリバウンドを軽減し、高速度での羽根の開閉を可能とした光量調整装置の提供。
【解決手段】光路開口を有する基板と、この基板に取り付けられ上記光路開口を開閉する羽根部材と、この羽根部材を開閉駆動する駆動手段と、上記羽根部材を開位置及び閉位置で運動規制するストッパー手段とを備え、上記ストッパー手段を、上記羽根部材に形成した開閉方向の長孔と、この長孔に嵌合したストッパーピンとで構成し、上記長孔は上記羽根部材の開閉全域で上記光路開口から退避した位置に形成する。これによって基板には羽根部材に対応した数のピン部材を設けてストッパーを構成する。
【解決手段】光路開口を有する基板と、この基板に取り付けられ上記光路開口を開閉する羽根部材と、この羽根部材を開閉駆動する駆動手段と、上記羽根部材を開位置及び閉位置で運動規制するストッパー手段とを備え、上記ストッパー手段を、上記羽根部材に形成した開閉方向の長孔と、この長孔に嵌合したストッパーピンとで構成し、上記長孔は上記羽根部材の開閉全域で上記光路開口から退避した位置に形成する。これによって基板には羽根部材に対応した数のピン部材を設けてストッパーを構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスチールカメラ、デジタルカメラなどの撮像装置或いはプロジェクタなどの投影装置における光量調節装置に係わり、各種光学機器の光路中に組み込まれ撮影光或いは投影光を遮閉するシャッタなどの光量調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の光量調節装置はカメラ、プロジェクタなどの光学機器の撮像光路或いは投影光路の中央に光路開口を備えた基板(地板)を組み込み、この基板に1枚若しくは複数枚の羽根をピンなどで回動自在に支持し、この羽根先端部を光路開口に臨ませて光路を開放或いは遮閉することによって光量を調節している。このようなシャッタ羽根に代表される光量調節羽根は光路開口を覆う位置とこの開口から退避した位置との間を所定角度内で往復動自在に基板に組み込まれ、この羽根はこれとは別に基板に取付けられたモータなどの駆動装置に伝動部材で連結されている。
【0003】
従来かかる装置として特許文献1乃至3に示す構造が広く用いられている。これ等の構造を図8乃至図11に基づいて説明すると、中央に光路開口を形成した基板には一対の羽根SHがそれぞれ回動自在に支持され、この羽根SHは図8に示すように対向する一対の羽根が反対方向に揺動することによって光路開口を開放、或いは遮閉するようになっている。従来これ等の羽根は基板に一体成形した突起状のストッパー壁に羽根の先端縁を突き当てて開位置と閉位置とで運動規制している。図8、9に示すSP1は閉位置で羽根SHの先端を突当て規制するストッパー壁であり、SP2は開位置のストッパー壁である。従って基板にはシャッタ羽根を構成する複数の羽根それぞれに開位置と閉位置に突起などのストッパー壁を設けなければならず、基板が大型となる。そしてこれら一対の羽根部材は単一の駆動装置から2方向の運動を伝動レバーで作りだしこれをそれぞれの羽根に伝達している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光路開口に配置した羽根部材を開閉する際に開位置と閉位置それぞれにストッパー壁を基板に設けると装置構造が複雑で大型化する問題がある。特に光路開口を高速(迅速)に開閉する為に複数枚、例えば3枚以上の羽根で構成する場合には基板に6ケ所のストッパー壁を設けなければならず、またこれらのストッパー壁は正確な位置精度で配置しなければならない為、装置は大型で複雑なものとなる。これと同時に羽根の先端縁をストッパー壁に突き当てると羽根にリバウンドと変形が生じる。ストッパー壁に突き当たった際の羽根のリバウンドは閉鎖した羽根が再び開いて遮断した光路から光が進入し、このリバウンドは振動のように繰り返される為、特にカメラ等のシャッタ構造としては撮影条件に大きな影響を及ぼす。また羽根にはリバウンドと同時に図11に示すようにストッパーSP1、SP2に羽根が衝突した衝撃で撓んで重なり合う羽根に隙間が生じて光が進入し、この撓みによって羽根のリバウンドが増大する問題があった。
【0005】
このように従来はシャッタ羽根の先端をストッパー壁に突き当てて開位置と閉位置とに停止させている為、羽根自体が撓む問題と羽根のリバウンドによって不用な光が進入したり羽根の開閉動作に支障が生ずる問題があった。
【0006】
そこで本発明は、光量を調節する羽根部材の開位置と閉位置における運動規制を小型な基板のなかに配置することが出来ると共に羽根に生ずるリバウンドを軽減することが可能な光量調節装置の提供をその課題としている。更に本発明は羽根の開閉位置での規制を大きなスペースを占めることなくまたリバウンドを軽減することによって羽根の枚数を多くすることと羽根を高速度で開閉することを可能とし、カメラ装置などの光学機器におけるシャッタ速度を高速にすることが可能な光量調節装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために以下の構成を採用する。
光路開口を有する基板と、この基板に取り付けられ上記光路開口を開閉する羽根部材と、この羽根部材を開閉駆動する駆動手段と、上記羽根部材を開位置及び閉位置で運動規制するストッパー手段とを備え、上記ストッパー手段を、上記羽根部材に形成した開閉方向の長孔と、この長孔に嵌合したストッパーピンとで構成し、上記長孔は上記羽根部材の開閉全域で上記光路開口から退避した位置に形成する。これによって基板には羽根部材に対応した数のピン部材を設けてストッパーを構成すればよく、装置を小型化することが出来る。
【0008】
また前記羽根部材を3枚以上の羽根で構成し、各羽根の基端部を前記基板の光路開口周縁に形成された等間隔の支軸にそれぞれ回動自在に支持し前記長孔とストッパーピンとは開位置及び/又は閉位置で直線状の当接面を設ける。この当接面の形成する直線は該当接面と上記支軸を結ぶ直線に対し所定角度傾斜させることによって羽根に生ずるリバウンド力を軽減することが出来る。尚上記駆動手段は、マグネットロータを有する複数の電磁駆動装置で構成し、この電磁駆動装置を上記基板に取り付けて、上記複数の羽根それぞれに駆動を伝達する。これによって個別の駆動装置を備えた羽根は高速で開閉運動することとなる。
【0009】
次に本発明の撮像装置は被写体からの光を結像するレンズと、このレンズからの光を撮影する撮像手段とを備え、この被写体から撮像手段に至る光路中に配置され光路開口を有する基板を配置する。この基板に上述の構成と同様に羽根部材とこの羽根部材を開閉駆動する駆動手段と開位置及び閉位置で運動規制するストッパー手段設ける。これによって羽根部材でシャッタ羽根を構成するとシャッタスピードを高速にすることが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明は羽根部材に形成した長孔と、この長孔に嵌合したストッパーピンとで羽根を開位置と閉位置で運動規制する為、光量を調節する1つの羽根につき1つのストッパーピンで開閉規制することが出来る。従って従来の羽根先端縁を開位置と閉位置それぞれのストッパー壁で係止する場合に比べ基板を小型かつコンパクトに構成することが可能となり装置を小型化することが出来る。
【0011】
また羽根の長孔とストッパーピンとを開位置と閉位置で直線状の当接面を形成するように例えば長孔を扇型形状、ストッパーピンを角型形状にして、この当接面の形成する直線と羽根の支軸を結ぶ線とが所定角度で交差するように傾斜させることによって羽根に生ずるリバウンド力を軽減することが出来る。このように本発明は羽根の開位置と閉位置における運動規制を小型かつ簡素な機構でそのリバウンドも軽減することが出来るので、羽根を3枚以上で構成することによって開閉ストロークを小さくして高速に開閉することも、また複数の羽根個々に駆動装置を設けて更に高速に開閉することが出来、カメラ装置などでシャッタ速度を高速にすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。
図1は本発明に係るカメラ用光量調節装置を備えたカメラの一実施形態を示すものであり、図2乃至図5は本発明に係るカメラ用光量調節装置の一実施形態を示すものである。
図2はそのカメラ用光量調節装置の分解斜視図、図3は同カメラ用光量調節装置の羽根部材が全開である開放状態の斜視図、図4は同カメラ用光量調節装置の羽根部材が全閉である閉鎖状態の斜視図である。また図5は羽根部材がストッパーに突き当たった状態の説明図ある。
【0013】
まず本発明の光量調節装置について説明すると、中央に光軸開口C1を形成した基板Cと、この基板Cに配置した複数枚の羽根部材B01、B02、B03と、この各羽根部材を開閉する駆動装置Dと、上記基板Cとの間に羽根部材B01、B02、B03を支持する押さえ板Aとから構成されている。基板Cは樹脂のモールド成形などの方法によって円盤その他の形状に構成し、その中央には光軸開口C1を形成する。この基板Cには羽根を案内する突起状の案内ガイドC5と、羽根を開閉支持する支軸C2を一体に形成する。図示のものは羽根部材を3枚構成にした関係で光軸開口C1の周囲に等間隔に120度隔てた位置に3個の支軸C2が形成してある。従って羽根を3枚以上で構成する場合には羽根枚数に応じた支軸を等間隔に配置する。この支軸C2の近傍には後述する駆動装置Dの駆動ピンD1が挿通する逃げ穴C3をそれぞれに穿設する。
【0014】
また上記基板Cには3枚の羽根部材B01、B02、B03それぞれの基端部を支軸C2に回動自在に軸支して取付ける。この羽根部材は金属の薄板、合成樹脂フィルムで形成し、図示のものは合成樹脂フィルムを図示形状にプレス加工で打抜き成形してある。この合成樹脂フィルムは黒色顔料を混合した遮光成フィルムを使用する。上記3枚構成の羽根部材B01乃至B03はそれぞれ基端部に形成した嵌合孔B1を支軸C2に軸支して、この軸支部を中心に回動自在に支持する。
【0015】
また各羽根部材は互いに隣接する先端縁部が上下に重ね合わせられ、第1の羽根部材B01の上に第2の羽根部材B02が、更にその上に第3の羽根部材B03が積み重ねられている。そして各羽根部材B01、B02、B03の光軸開口C1に臨む縁部は光軸開口C1から退避した図3の状態(開位置)と、光軸開口C1を遮閉した図4の状態(閉位置)に光軸開口C1を開閉するようにその形状を形成する。この各羽根部材には開閉方向の長孔B3と駆動ピン係合孔B2を設ける。これ等の孔は羽根の打抜成形時に一体成形する。この長孔B3は羽根の開閉ストロークを定めるように羽根が光軸開口C1から退避した開放域(図3)と羽根が開口を遮閉した閉鎖域(図4)との長さに形成する。
【0016】
そしてこの長孔B3は羽根の開閉全域で光軸開口C1から退避した位置に形成する。これは特に羽根を閉じた状態で長孔B3の一部が光軸開口C1に位置し外部光が撮影光路に進入するのを防止する為である。また長孔B3は後述する駆動ピン係合孔(以下ピン係合孔という)B2と支軸C2を介して反対側に位置するように形成する。図示のものは長孔B3とピン係合孔B2と支軸C2とは図6に示すように略々直線上に配置され、支軸C2を中央に長孔B3とピン係合孔B2とが対向する位置に設けてある。従ってピン係合孔B2と長孔B3とは支軸C2を挟んで反対方向に回転することとなる。またこのピン係合孔B2は後述する駆動装置Dの駆動ピンD1を嵌合して羽根を回転するように駆動ピンD1の回動方向と直交する方向に形成する。
【0017】
次に上述の駆動装置Dは例えば以下のように構成する。図示する駆動装置Dとして良く知られた構造は、回転軸を有するマグネットロータと、このロータに回転トルクを生起する励磁コイルと、このコイルを巻廻するコイル枠とで構成される。通常はN−S2極に分極した円筒状の永久磁石に回転軸を設けてマグネットロータを構成し、このロータをコイル枠の内部に回動自在に収容する。そしてコイル枠の外周にコイルを巻廻し、外周をヨークで覆う。またロータの回転軸には駆動アームを一体に取付けて、この駆動アームの先端に駆動ピンD1を設ける。
【0018】
このように構成して上記励磁コイルに正方向の電流を供給するとマグネットロータに設けられた駆動ピンD1は所定方向に回転し、励磁コイルに逆方向の電流を供給すると駆動ピンD1は反対方向に所定角度回転する。従って励磁コイルに正逆電流を供給することによって駆動ピンD1は90度以内の所定角度内で往復動することとなる。そしてこの駆動ピンD1を基板Cに設けた逃げ穴C3を介して羽根に形成したピン係合孔B2に嵌合(挿入)する。図示のものはこのような駆動装置Dが羽根部材の枚数と同数(3個)基板Cに取付けてある。
【0019】
以上のように基板Cには3枚の羽根部材B01、B02、B03が回動自在に光軸開口C1の周囲に取付けられ、この基板Cの背面側に取付けられた駆動装置Dの駆動ピンD1がピン係合孔B2に嵌合されて連結され羽根は所定角度回動する。またこの基板Cには押さえ板Aを取付ける。この押さえ板Aは基板Cに所定の間隔を隔てて取付けられ前述の羽根部材B01、B02、B03を基板Cとの間に回動可能に支持する。つまり押さえ板Aには基板Cの露光開口C1より若干大きい径の開口A1と、支軸C2の逃げ孔A2と、逃げ穴C3と対応する位置に形成されたスリット孔A3と、ストッパーピンC4の逃げ孔A4と、案内ガイドC5と対向する案内リブA5と、基板Cの固定部C6にネジ止めするためのビス穴A6が形成してある。
【0020】
そこで本発明は各羽根部材B01、B02、B03に形成した長孔B3と基板Cに形成したストッパーピンC4とで以下のストッパー手段を構成する。まず基板Cには羽根に形成した長孔B3に相当する位置に突起状のストッパーピンC4を形成する。このストッパーピンC4は基板Cのモールド成形時に一体に形成する。そしてこのストッパーピンC4と長孔B3の形状は図6及び図7に示す形状にする。
【0021】
まずストッパーピンC4はこれと嵌合する長孔B3の両端B3aとB3bと直線的(図6Y1−Y1,図7Y2−Y2)に当接する当接面を形成する。つまり長孔B3は直線状の端面B3aとB3bを有する扇型形状に形成し、ストッパーピンC4は断面形状で直線状当接面C4aとC4bを有する三角形若しくは台形の断面に形成する。
【0022】
図6は羽根部材Bを全開状態(開位置)にしたときのストッパーピンC4と長孔B3との係合関係を示す。この開位置でストッパーピンC4の当接面C4aと長孔B3の当接面B3aとは図示Y1−Y1方向の直線を形成し、この直線Y1−Y1はこの当接面を支軸C2の嵌合孔B1を結ぶ直線X1−X1に対し所定角度(θ1)傾斜させる。このような位置関係で当接面の図示P1点には羽根の回転力が力F1として作用し、ストッパーピンC4に衝突する。この力F1は当接面の形成する直線Y1−Y1にリバウンド力f1として反力が羽根に及ぶが、傾斜角θ1が形成してある為リバウンド力f1=F1cosθ1となり角度θ1が大きい程リバウンド力は軽減される。
【0023】
同様に図7の羽根の閉位置においてもリバウンド力f2=F2cosθ2となり角度θ2が大きい程リバウンド力f2は軽減される。つまりストッパーピンC4の当接面C4bと長孔B3の当接面B3bの形成する直線Y2−Y2と接点P2と嵌合孔B1との直線X2−X2とは角度θ2を形成するように交差する関係にしてある。尚図示の接点P1及びP2は当接面に連続してある長さだけ角度θ1、θ2を形成すれば良く、図示のようにストッパーピンC4と長孔B3の全長に亘って直線状に当接する必要は無い。
【0024】
また図4に示す羽根部材Bが全閉状態で、地板CのストッパーピンC4に扇形スリット孔からなる長孔B3の当接面B3bが当接したとき羽根に連結された駆動手段Dはそのディテントトルクの作用で、駆動ピンD1は支軸C2を中心にして反時計方向に回動付勢して羽根部材Bを図示位置に保持する。同様に図3に示す羽根部材Bが全開の状態においても駆動ピンD1は支軸C2を中心にして時計方向に回動付勢するように駆動装置Dのディテント力が作用する。この駆動装置Dのディテントトルクは例えばマグネットロータの磁極を吸引する位置に軟磁性部材のピンなどを基板に植設すればよい。またクローズバネなどの付勢手段を用いることも可能である。
【0025】
次に上述の光量調節装置を組み込んだカメラなどの撮像装置について図1に基づいて説明する。図示Eは結像レンズを組み込んだカメラの鏡筒ユニットでありHはカメラ本体である。被写体からの撮影光は鏡筒ユニットEに導かれ、この鏡筒内の集光レンズL2で結像し、この結像位置に配置された撮像手段(例えばCCD、感光フィルムなど)Zで記録する。この過程で鏡筒ユニットEの被写体光を適正な露光調整をして撮像手段Zで取り込み撮影をする様にこのユニット内に光量調節装置が組み込まれる。図示L1は対物レンズであり被写体光を取り込み結像レンズL2に導く。そしてこの光量調節装置として前述の構成を採用することによって鏡筒ユニットEを小径で小型に構成することが出来る。
【0026】
次に、上記光量調節装置の動作について撮像手段として光電センサー(CCD)を用いた場合について説明する。
【0027】
図1において、カメラ本体Hの電源をONすると、図示せぬモニターと露出制御回路が作動しモニターに被写体が映像される。撮影者が撮影を開始すると、露出制御回路が働き、適正露光となるように3つの駆動手段Dを連動して制御し、駆動ピンD1で羽根部材Bを同期させながら、露出開口を開放する方向に駆動する。同時に撮像手段Zに残っている旧画像に相当する電荷を一端リセットしクリアした後、新画像の取り込みを開始する。所定露出時間経過後、この駆動ピンD1の駆動により図3で示す開放状態にある光量調節装置を図4で示す全閉状態に保持されるように、ストッパーピンC4に羽根部材Bの長孔B3の当接面B3bを当接させる。この全閉状態になった適宜時間経過後に撮像手段Zに取り込んだ画像データを図示せぬ記憶手段に一画像として記録する。その後、図3の開放状態になるように駆動手段Dの駆動ピンD1を逆方向に回動させ、ストッパーピンC4に羽根部材Bの長孔B3の当接面B3aが当接し開位置に保持されることによって再びモニターが被写体を捕らえ次の撮影の準備が完了する。
【0028】
そこで、図1の装置においてカメラ本体Hの電源をONすると、制御回路が作動し、羽根部材Bを全開状態(図3の状態)に保持する。この制御回路は例えばCCD電荷素子のチャージ状態から判別して、羽根部材Bが閉位置のときには励磁コイルに正負いずれかの電流を供給して羽根部材Bを開位置に移動する。この羽根部材Bの全開状態で被写体からの光はCCDに結像され、CCDからの出力をモニター画面に投影する。
【0029】
次いで使用者がレリーズ操作を行うと、CCD電荷素子に蓄電している電荷を放出してリセットし撮影動作に移行する。このとき制御回路に組込まれたシャッタ動作のプログラムが実行され、所定の撮影時間を例えばCPUのクロックをカウントして計測する。予め設定された撮影時間が経過すると制御回路は駆動装置Dの励磁コイルに所定電流を供給する。この励磁コイルへの通電で駆動装置Dの駆動ピンD1は図3において時計方向に回転し、羽根部材Bは支軸C2を中心に先端部が反時計方向に回転する。それぞれ個別に駆動される3枚の羽根部材B01、B02、B03は相互に重なり合って光軸開口C1を閉じる。この羽根部材Bが光軸開口C1を閉鎖した図4の状態で撮影動作は終了し、CCDに蓄えられた電荷は出力されメモリーに貯えられる。
【0030】
かかる過程で羽根部材Bは3枚若しくはそれ以上で構成される場合には1枚或いは2枚の場合に比べ開閉のストロークが短くなるから羽根部材Bは開状態から閉状態に高速(迅速)に移動する。また駆動装置Dは各羽根部材に個々に設けてあるから1つの駆動装置から伝動部材で力を分岐して各羽根部材に伝達する場合に比べ高速となる。このように羽根部材Bは高速な開閉運動が可能となり従来装置に比べシャッタスピードの大幅な高速化が実現される。このとき羽根部材を複数枚設け、個々に駆動装置を配置することで装置の大型化と羽根部材がストッパー手段に突き当たったときのリバウンドが問題となる。
【0031】
前述の構成はこれ等の問題を次のように解決する。羽根部材Bにはストッパー手段が羽根に形成した長孔B3と、これに嵌合したストッパーピンC4で構成してあるから、羽根の先端を基板開位置と閉位置に形成した突起状のストッパー壁に突き当てる従来のものに比べ占めるスペースもその構造も簡単で装置特に基板の小型化が計られる。
【0032】
次いで上記長孔B3とストッパーピンC4とは直線状の当接面を開位置と閉位置それぞれに形成し、この当接面の形成する直線は支軸に向かう直線との間に所定角度傾斜するようにしてある為羽根に生ずるリバウンド力が軽減される。また各羽根部材Bには長孔B3と支軸C2の嵌合孔B1とピン係合孔B2とは支軸C2を挟んで羽根基端部側にピン係合孔B2が、羽根中央部側に長孔B3が配置されている。この為羽根部材Bは基端部側に支軸C2のピン係合孔B2が位置し、羽根中央部に長孔B3が位置し、そして羽根先端部が光軸開口C1に臨む為、羽根部材Bに配置される機能部分が基端部から先端部に順次形成される。従って羽根の小型化とスリットなどの影響が少なく堅牢となる。
【0033】
これと共に図5(a)(b)に示すように、羽根部材には駆動ピンD1からの力とストッパーピンC4の抗力が作用する開位置と閉位置で最も大きいストレスが加えられる。ところが同図(a)の開位置で羽根に作用する力、同図(b)の閉位置で羽根に作用する力は、いずれも支軸C2の近傍で反対方向の力が及ぶ為、羽根にシワが生ずるような力が作用することなく羽根に変形が起きない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係わる光量調節装置を備えたカメラの一実施形態の概略図。
【図2】図1の装置における光量調節装置の分解斜視図。
【図3】上記光量調節装置が開放状態の斜視図。
【図4】上記光量調節装置が閉鎖状態の斜視図。
【図5】上記光量調節装置の部分断面図であり、同図(a)は開状態のストッパーピンと羽根の係合関係を示し、同図(b)は閉状態のストッパーピンと羽根の係合を示した説明図。
【図6】上記光量調節装置の全開時のストッパーピンと羽根の当接状態を示す平面図。
【図7】上記光量調節装置の閉鎖時のストッパーピンと羽根の当接状態を示す平面図。
【図8】従来技術に係わるシャッタ装置の平面図。
【図9】従来技術に係わる他のシャッタ装置の平面図。
【図10】従来技術に係わる他のシャッタ装置の平面図。
【図11】図8乃至図10におけるシャッタ装置の部分断面図であり、同図(a)は開状態のストッパー壁と羽根の突き当て状態を示し、同図(b)は閉状態のストッパー壁と羽根の突き当て状態を示した説明図。
【符号の説明】
【0035】
A 押さえ板
B 羽根部材
B01 第1の羽根部材
B02 第2の羽根部材
B03 第3の羽根部材
B2 駆動ピン係合孔
B3 長孔
B3a 当接面
B3b 当接面
C 基板
C1 光軸開口
C2 支軸
C4 ストッパーピン
C4a 当接面
C4b 当接面
D 駆動装置
D1 駆動ピン
H カメラ本体
【技術分野】
【0001】
本発明はスチールカメラ、デジタルカメラなどの撮像装置或いはプロジェクタなどの投影装置における光量調節装置に係わり、各種光学機器の光路中に組み込まれ撮影光或いは投影光を遮閉するシャッタなどの光量調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の光量調節装置はカメラ、プロジェクタなどの光学機器の撮像光路或いは投影光路の中央に光路開口を備えた基板(地板)を組み込み、この基板に1枚若しくは複数枚の羽根をピンなどで回動自在に支持し、この羽根先端部を光路開口に臨ませて光路を開放或いは遮閉することによって光量を調節している。このようなシャッタ羽根に代表される光量調節羽根は光路開口を覆う位置とこの開口から退避した位置との間を所定角度内で往復動自在に基板に組み込まれ、この羽根はこれとは別に基板に取付けられたモータなどの駆動装置に伝動部材で連結されている。
【0003】
従来かかる装置として特許文献1乃至3に示す構造が広く用いられている。これ等の構造を図8乃至図11に基づいて説明すると、中央に光路開口を形成した基板には一対の羽根SHがそれぞれ回動自在に支持され、この羽根SHは図8に示すように対向する一対の羽根が反対方向に揺動することによって光路開口を開放、或いは遮閉するようになっている。従来これ等の羽根は基板に一体成形した突起状のストッパー壁に羽根の先端縁を突き当てて開位置と閉位置とで運動規制している。図8、9に示すSP1は閉位置で羽根SHの先端を突当て規制するストッパー壁であり、SP2は開位置のストッパー壁である。従って基板にはシャッタ羽根を構成する複数の羽根それぞれに開位置と閉位置に突起などのストッパー壁を設けなければならず、基板が大型となる。そしてこれら一対の羽根部材は単一の駆動装置から2方向の運動を伝動レバーで作りだしこれをそれぞれの羽根に伝達している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光路開口に配置した羽根部材を開閉する際に開位置と閉位置それぞれにストッパー壁を基板に設けると装置構造が複雑で大型化する問題がある。特に光路開口を高速(迅速)に開閉する為に複数枚、例えば3枚以上の羽根で構成する場合には基板に6ケ所のストッパー壁を設けなければならず、またこれらのストッパー壁は正確な位置精度で配置しなければならない為、装置は大型で複雑なものとなる。これと同時に羽根の先端縁をストッパー壁に突き当てると羽根にリバウンドと変形が生じる。ストッパー壁に突き当たった際の羽根のリバウンドは閉鎖した羽根が再び開いて遮断した光路から光が進入し、このリバウンドは振動のように繰り返される為、特にカメラ等のシャッタ構造としては撮影条件に大きな影響を及ぼす。また羽根にはリバウンドと同時に図11に示すようにストッパーSP1、SP2に羽根が衝突した衝撃で撓んで重なり合う羽根に隙間が生じて光が進入し、この撓みによって羽根のリバウンドが増大する問題があった。
【0005】
このように従来はシャッタ羽根の先端をストッパー壁に突き当てて開位置と閉位置とに停止させている為、羽根自体が撓む問題と羽根のリバウンドによって不用な光が進入したり羽根の開閉動作に支障が生ずる問題があった。
【0006】
そこで本発明は、光量を調節する羽根部材の開位置と閉位置における運動規制を小型な基板のなかに配置することが出来ると共に羽根に生ずるリバウンドを軽減することが可能な光量調節装置の提供をその課題としている。更に本発明は羽根の開閉位置での規制を大きなスペースを占めることなくまたリバウンドを軽減することによって羽根の枚数を多くすることと羽根を高速度で開閉することを可能とし、カメラ装置などの光学機器におけるシャッタ速度を高速にすることが可能な光量調節装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために以下の構成を採用する。
光路開口を有する基板と、この基板に取り付けられ上記光路開口を開閉する羽根部材と、この羽根部材を開閉駆動する駆動手段と、上記羽根部材を開位置及び閉位置で運動規制するストッパー手段とを備え、上記ストッパー手段を、上記羽根部材に形成した開閉方向の長孔と、この長孔に嵌合したストッパーピンとで構成し、上記長孔は上記羽根部材の開閉全域で上記光路開口から退避した位置に形成する。これによって基板には羽根部材に対応した数のピン部材を設けてストッパーを構成すればよく、装置を小型化することが出来る。
【0008】
また前記羽根部材を3枚以上の羽根で構成し、各羽根の基端部を前記基板の光路開口周縁に形成された等間隔の支軸にそれぞれ回動自在に支持し前記長孔とストッパーピンとは開位置及び/又は閉位置で直線状の当接面を設ける。この当接面の形成する直線は該当接面と上記支軸を結ぶ直線に対し所定角度傾斜させることによって羽根に生ずるリバウンド力を軽減することが出来る。尚上記駆動手段は、マグネットロータを有する複数の電磁駆動装置で構成し、この電磁駆動装置を上記基板に取り付けて、上記複数の羽根それぞれに駆動を伝達する。これによって個別の駆動装置を備えた羽根は高速で開閉運動することとなる。
【0009】
次に本発明の撮像装置は被写体からの光を結像するレンズと、このレンズからの光を撮影する撮像手段とを備え、この被写体から撮像手段に至る光路中に配置され光路開口を有する基板を配置する。この基板に上述の構成と同様に羽根部材とこの羽根部材を開閉駆動する駆動手段と開位置及び閉位置で運動規制するストッパー手段設ける。これによって羽根部材でシャッタ羽根を構成するとシャッタスピードを高速にすることが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明は羽根部材に形成した長孔と、この長孔に嵌合したストッパーピンとで羽根を開位置と閉位置で運動規制する為、光量を調節する1つの羽根につき1つのストッパーピンで開閉規制することが出来る。従って従来の羽根先端縁を開位置と閉位置それぞれのストッパー壁で係止する場合に比べ基板を小型かつコンパクトに構成することが可能となり装置を小型化することが出来る。
【0011】
また羽根の長孔とストッパーピンとを開位置と閉位置で直線状の当接面を形成するように例えば長孔を扇型形状、ストッパーピンを角型形状にして、この当接面の形成する直線と羽根の支軸を結ぶ線とが所定角度で交差するように傾斜させることによって羽根に生ずるリバウンド力を軽減することが出来る。このように本発明は羽根の開位置と閉位置における運動規制を小型かつ簡素な機構でそのリバウンドも軽減することが出来るので、羽根を3枚以上で構成することによって開閉ストロークを小さくして高速に開閉することも、また複数の羽根個々に駆動装置を設けて更に高速に開閉することが出来、カメラ装置などでシャッタ速度を高速にすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。
図1は本発明に係るカメラ用光量調節装置を備えたカメラの一実施形態を示すものであり、図2乃至図5は本発明に係るカメラ用光量調節装置の一実施形態を示すものである。
図2はそのカメラ用光量調節装置の分解斜視図、図3は同カメラ用光量調節装置の羽根部材が全開である開放状態の斜視図、図4は同カメラ用光量調節装置の羽根部材が全閉である閉鎖状態の斜視図である。また図5は羽根部材がストッパーに突き当たった状態の説明図ある。
【0013】
まず本発明の光量調節装置について説明すると、中央に光軸開口C1を形成した基板Cと、この基板Cに配置した複数枚の羽根部材B01、B02、B03と、この各羽根部材を開閉する駆動装置Dと、上記基板Cとの間に羽根部材B01、B02、B03を支持する押さえ板Aとから構成されている。基板Cは樹脂のモールド成形などの方法によって円盤その他の形状に構成し、その中央には光軸開口C1を形成する。この基板Cには羽根を案内する突起状の案内ガイドC5と、羽根を開閉支持する支軸C2を一体に形成する。図示のものは羽根部材を3枚構成にした関係で光軸開口C1の周囲に等間隔に120度隔てた位置に3個の支軸C2が形成してある。従って羽根を3枚以上で構成する場合には羽根枚数に応じた支軸を等間隔に配置する。この支軸C2の近傍には後述する駆動装置Dの駆動ピンD1が挿通する逃げ穴C3をそれぞれに穿設する。
【0014】
また上記基板Cには3枚の羽根部材B01、B02、B03それぞれの基端部を支軸C2に回動自在に軸支して取付ける。この羽根部材は金属の薄板、合成樹脂フィルムで形成し、図示のものは合成樹脂フィルムを図示形状にプレス加工で打抜き成形してある。この合成樹脂フィルムは黒色顔料を混合した遮光成フィルムを使用する。上記3枚構成の羽根部材B01乃至B03はそれぞれ基端部に形成した嵌合孔B1を支軸C2に軸支して、この軸支部を中心に回動自在に支持する。
【0015】
また各羽根部材は互いに隣接する先端縁部が上下に重ね合わせられ、第1の羽根部材B01の上に第2の羽根部材B02が、更にその上に第3の羽根部材B03が積み重ねられている。そして各羽根部材B01、B02、B03の光軸開口C1に臨む縁部は光軸開口C1から退避した図3の状態(開位置)と、光軸開口C1を遮閉した図4の状態(閉位置)に光軸開口C1を開閉するようにその形状を形成する。この各羽根部材には開閉方向の長孔B3と駆動ピン係合孔B2を設ける。これ等の孔は羽根の打抜成形時に一体成形する。この長孔B3は羽根の開閉ストロークを定めるように羽根が光軸開口C1から退避した開放域(図3)と羽根が開口を遮閉した閉鎖域(図4)との長さに形成する。
【0016】
そしてこの長孔B3は羽根の開閉全域で光軸開口C1から退避した位置に形成する。これは特に羽根を閉じた状態で長孔B3の一部が光軸開口C1に位置し外部光が撮影光路に進入するのを防止する為である。また長孔B3は後述する駆動ピン係合孔(以下ピン係合孔という)B2と支軸C2を介して反対側に位置するように形成する。図示のものは長孔B3とピン係合孔B2と支軸C2とは図6に示すように略々直線上に配置され、支軸C2を中央に長孔B3とピン係合孔B2とが対向する位置に設けてある。従ってピン係合孔B2と長孔B3とは支軸C2を挟んで反対方向に回転することとなる。またこのピン係合孔B2は後述する駆動装置Dの駆動ピンD1を嵌合して羽根を回転するように駆動ピンD1の回動方向と直交する方向に形成する。
【0017】
次に上述の駆動装置Dは例えば以下のように構成する。図示する駆動装置Dとして良く知られた構造は、回転軸を有するマグネットロータと、このロータに回転トルクを生起する励磁コイルと、このコイルを巻廻するコイル枠とで構成される。通常はN−S2極に分極した円筒状の永久磁石に回転軸を設けてマグネットロータを構成し、このロータをコイル枠の内部に回動自在に収容する。そしてコイル枠の外周にコイルを巻廻し、外周をヨークで覆う。またロータの回転軸には駆動アームを一体に取付けて、この駆動アームの先端に駆動ピンD1を設ける。
【0018】
このように構成して上記励磁コイルに正方向の電流を供給するとマグネットロータに設けられた駆動ピンD1は所定方向に回転し、励磁コイルに逆方向の電流を供給すると駆動ピンD1は反対方向に所定角度回転する。従って励磁コイルに正逆電流を供給することによって駆動ピンD1は90度以内の所定角度内で往復動することとなる。そしてこの駆動ピンD1を基板Cに設けた逃げ穴C3を介して羽根に形成したピン係合孔B2に嵌合(挿入)する。図示のものはこのような駆動装置Dが羽根部材の枚数と同数(3個)基板Cに取付けてある。
【0019】
以上のように基板Cには3枚の羽根部材B01、B02、B03が回動自在に光軸開口C1の周囲に取付けられ、この基板Cの背面側に取付けられた駆動装置Dの駆動ピンD1がピン係合孔B2に嵌合されて連結され羽根は所定角度回動する。またこの基板Cには押さえ板Aを取付ける。この押さえ板Aは基板Cに所定の間隔を隔てて取付けられ前述の羽根部材B01、B02、B03を基板Cとの間に回動可能に支持する。つまり押さえ板Aには基板Cの露光開口C1より若干大きい径の開口A1と、支軸C2の逃げ孔A2と、逃げ穴C3と対応する位置に形成されたスリット孔A3と、ストッパーピンC4の逃げ孔A4と、案内ガイドC5と対向する案内リブA5と、基板Cの固定部C6にネジ止めするためのビス穴A6が形成してある。
【0020】
そこで本発明は各羽根部材B01、B02、B03に形成した長孔B3と基板Cに形成したストッパーピンC4とで以下のストッパー手段を構成する。まず基板Cには羽根に形成した長孔B3に相当する位置に突起状のストッパーピンC4を形成する。このストッパーピンC4は基板Cのモールド成形時に一体に形成する。そしてこのストッパーピンC4と長孔B3の形状は図6及び図7に示す形状にする。
【0021】
まずストッパーピンC4はこれと嵌合する長孔B3の両端B3aとB3bと直線的(図6Y1−Y1,図7Y2−Y2)に当接する当接面を形成する。つまり長孔B3は直線状の端面B3aとB3bを有する扇型形状に形成し、ストッパーピンC4は断面形状で直線状当接面C4aとC4bを有する三角形若しくは台形の断面に形成する。
【0022】
図6は羽根部材Bを全開状態(開位置)にしたときのストッパーピンC4と長孔B3との係合関係を示す。この開位置でストッパーピンC4の当接面C4aと長孔B3の当接面B3aとは図示Y1−Y1方向の直線を形成し、この直線Y1−Y1はこの当接面を支軸C2の嵌合孔B1を結ぶ直線X1−X1に対し所定角度(θ1)傾斜させる。このような位置関係で当接面の図示P1点には羽根の回転力が力F1として作用し、ストッパーピンC4に衝突する。この力F1は当接面の形成する直線Y1−Y1にリバウンド力f1として反力が羽根に及ぶが、傾斜角θ1が形成してある為リバウンド力f1=F1cosθ1となり角度θ1が大きい程リバウンド力は軽減される。
【0023】
同様に図7の羽根の閉位置においてもリバウンド力f2=F2cosθ2となり角度θ2が大きい程リバウンド力f2は軽減される。つまりストッパーピンC4の当接面C4bと長孔B3の当接面B3bの形成する直線Y2−Y2と接点P2と嵌合孔B1との直線X2−X2とは角度θ2を形成するように交差する関係にしてある。尚図示の接点P1及びP2は当接面に連続してある長さだけ角度θ1、θ2を形成すれば良く、図示のようにストッパーピンC4と長孔B3の全長に亘って直線状に当接する必要は無い。
【0024】
また図4に示す羽根部材Bが全閉状態で、地板CのストッパーピンC4に扇形スリット孔からなる長孔B3の当接面B3bが当接したとき羽根に連結された駆動手段Dはそのディテントトルクの作用で、駆動ピンD1は支軸C2を中心にして反時計方向に回動付勢して羽根部材Bを図示位置に保持する。同様に図3に示す羽根部材Bが全開の状態においても駆動ピンD1は支軸C2を中心にして時計方向に回動付勢するように駆動装置Dのディテント力が作用する。この駆動装置Dのディテントトルクは例えばマグネットロータの磁極を吸引する位置に軟磁性部材のピンなどを基板に植設すればよい。またクローズバネなどの付勢手段を用いることも可能である。
【0025】
次に上述の光量調節装置を組み込んだカメラなどの撮像装置について図1に基づいて説明する。図示Eは結像レンズを組み込んだカメラの鏡筒ユニットでありHはカメラ本体である。被写体からの撮影光は鏡筒ユニットEに導かれ、この鏡筒内の集光レンズL2で結像し、この結像位置に配置された撮像手段(例えばCCD、感光フィルムなど)Zで記録する。この過程で鏡筒ユニットEの被写体光を適正な露光調整をして撮像手段Zで取り込み撮影をする様にこのユニット内に光量調節装置が組み込まれる。図示L1は対物レンズであり被写体光を取り込み結像レンズL2に導く。そしてこの光量調節装置として前述の構成を採用することによって鏡筒ユニットEを小径で小型に構成することが出来る。
【0026】
次に、上記光量調節装置の動作について撮像手段として光電センサー(CCD)を用いた場合について説明する。
【0027】
図1において、カメラ本体Hの電源をONすると、図示せぬモニターと露出制御回路が作動しモニターに被写体が映像される。撮影者が撮影を開始すると、露出制御回路が働き、適正露光となるように3つの駆動手段Dを連動して制御し、駆動ピンD1で羽根部材Bを同期させながら、露出開口を開放する方向に駆動する。同時に撮像手段Zに残っている旧画像に相当する電荷を一端リセットしクリアした後、新画像の取り込みを開始する。所定露出時間経過後、この駆動ピンD1の駆動により図3で示す開放状態にある光量調節装置を図4で示す全閉状態に保持されるように、ストッパーピンC4に羽根部材Bの長孔B3の当接面B3bを当接させる。この全閉状態になった適宜時間経過後に撮像手段Zに取り込んだ画像データを図示せぬ記憶手段に一画像として記録する。その後、図3の開放状態になるように駆動手段Dの駆動ピンD1を逆方向に回動させ、ストッパーピンC4に羽根部材Bの長孔B3の当接面B3aが当接し開位置に保持されることによって再びモニターが被写体を捕らえ次の撮影の準備が完了する。
【0028】
そこで、図1の装置においてカメラ本体Hの電源をONすると、制御回路が作動し、羽根部材Bを全開状態(図3の状態)に保持する。この制御回路は例えばCCD電荷素子のチャージ状態から判別して、羽根部材Bが閉位置のときには励磁コイルに正負いずれかの電流を供給して羽根部材Bを開位置に移動する。この羽根部材Bの全開状態で被写体からの光はCCDに結像され、CCDからの出力をモニター画面に投影する。
【0029】
次いで使用者がレリーズ操作を行うと、CCD電荷素子に蓄電している電荷を放出してリセットし撮影動作に移行する。このとき制御回路に組込まれたシャッタ動作のプログラムが実行され、所定の撮影時間を例えばCPUのクロックをカウントして計測する。予め設定された撮影時間が経過すると制御回路は駆動装置Dの励磁コイルに所定電流を供給する。この励磁コイルへの通電で駆動装置Dの駆動ピンD1は図3において時計方向に回転し、羽根部材Bは支軸C2を中心に先端部が反時計方向に回転する。それぞれ個別に駆動される3枚の羽根部材B01、B02、B03は相互に重なり合って光軸開口C1を閉じる。この羽根部材Bが光軸開口C1を閉鎖した図4の状態で撮影動作は終了し、CCDに蓄えられた電荷は出力されメモリーに貯えられる。
【0030】
かかる過程で羽根部材Bは3枚若しくはそれ以上で構成される場合には1枚或いは2枚の場合に比べ開閉のストロークが短くなるから羽根部材Bは開状態から閉状態に高速(迅速)に移動する。また駆動装置Dは各羽根部材に個々に設けてあるから1つの駆動装置から伝動部材で力を分岐して各羽根部材に伝達する場合に比べ高速となる。このように羽根部材Bは高速な開閉運動が可能となり従来装置に比べシャッタスピードの大幅な高速化が実現される。このとき羽根部材を複数枚設け、個々に駆動装置を配置することで装置の大型化と羽根部材がストッパー手段に突き当たったときのリバウンドが問題となる。
【0031】
前述の構成はこれ等の問題を次のように解決する。羽根部材Bにはストッパー手段が羽根に形成した長孔B3と、これに嵌合したストッパーピンC4で構成してあるから、羽根の先端を基板開位置と閉位置に形成した突起状のストッパー壁に突き当てる従来のものに比べ占めるスペースもその構造も簡単で装置特に基板の小型化が計られる。
【0032】
次いで上記長孔B3とストッパーピンC4とは直線状の当接面を開位置と閉位置それぞれに形成し、この当接面の形成する直線は支軸に向かう直線との間に所定角度傾斜するようにしてある為羽根に生ずるリバウンド力が軽減される。また各羽根部材Bには長孔B3と支軸C2の嵌合孔B1とピン係合孔B2とは支軸C2を挟んで羽根基端部側にピン係合孔B2が、羽根中央部側に長孔B3が配置されている。この為羽根部材Bは基端部側に支軸C2のピン係合孔B2が位置し、羽根中央部に長孔B3が位置し、そして羽根先端部が光軸開口C1に臨む為、羽根部材Bに配置される機能部分が基端部から先端部に順次形成される。従って羽根の小型化とスリットなどの影響が少なく堅牢となる。
【0033】
これと共に図5(a)(b)に示すように、羽根部材には駆動ピンD1からの力とストッパーピンC4の抗力が作用する開位置と閉位置で最も大きいストレスが加えられる。ところが同図(a)の開位置で羽根に作用する力、同図(b)の閉位置で羽根に作用する力は、いずれも支軸C2の近傍で反対方向の力が及ぶ為、羽根にシワが生ずるような力が作用することなく羽根に変形が起きない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係わる光量調節装置を備えたカメラの一実施形態の概略図。
【図2】図1の装置における光量調節装置の分解斜視図。
【図3】上記光量調節装置が開放状態の斜視図。
【図4】上記光量調節装置が閉鎖状態の斜視図。
【図5】上記光量調節装置の部分断面図であり、同図(a)は開状態のストッパーピンと羽根の係合関係を示し、同図(b)は閉状態のストッパーピンと羽根の係合を示した説明図。
【図6】上記光量調節装置の全開時のストッパーピンと羽根の当接状態を示す平面図。
【図7】上記光量調節装置の閉鎖時のストッパーピンと羽根の当接状態を示す平面図。
【図8】従来技術に係わるシャッタ装置の平面図。
【図9】従来技術に係わる他のシャッタ装置の平面図。
【図10】従来技術に係わる他のシャッタ装置の平面図。
【図11】図8乃至図10におけるシャッタ装置の部分断面図であり、同図(a)は開状態のストッパー壁と羽根の突き当て状態を示し、同図(b)は閉状態のストッパー壁と羽根の突き当て状態を示した説明図。
【符号の説明】
【0035】
A 押さえ板
B 羽根部材
B01 第1の羽根部材
B02 第2の羽根部材
B03 第3の羽根部材
B2 駆動ピン係合孔
B3 長孔
B3a 当接面
B3b 当接面
C 基板
C1 光軸開口
C2 支軸
C4 ストッパーピン
C4a 当接面
C4b 当接面
D 駆動装置
D1 駆動ピン
H カメラ本体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路開口を有する基板と、
この基板に取り付けられ上記光路開口を開閉する羽根部材と、
この羽根部材を開閉駆動する駆動手段と、
上記羽根部材を開位置及び閉位置で運動規制するストッパ手段とを備え、
上記ストッパ手段は、上記羽根部材に形成した開閉方向の長孔と、この長孔に嵌合したストッパーピンとで構成され、
上記長孔は上記羽根部材の開閉全域で上記光路開口から退避した位置に形成されていることを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記羽根部材は基端部を前記基板に形成した支軸に回動自在に支持され、
前記長孔とストッパーピンとは開位置及び/又は閉位置で直線状の当接面を有し、
この当接面の形成する直線は該当接面と上記支軸を結ぶ直線に対し所定角度傾斜していることを特徴とする光量調節装置。
【請求項3】
光路開口を有する基板と、
この基板に取り付けられ上記光路開口を開閉する羽根部材と、
この羽根部材を開閉駆動する駆動手段と、
上記羽根部材を開位置及び閉位置で運動規制するストッパ手段とを備え、
上記基板の光路開口周縁に形成された等間隔の支軸にそれぞれ回動自在に支持した3枚以上の羽根で構成され、
上記ストッパ手段は、上記羽根部材に形成した開閉方向の長孔と、
この長孔に嵌合したストッパーピンとで構成され、
上記駆動手段は、マグネットロータを有する複数の電磁駆動装置で構成され、
この電磁駆動装置は上記基板に取り付けられ、上記複数の羽根に対応して個別に設けられていることを特徴とする光量調節装置。
【請求項4】
被写体からの光を結像するレンズと、
このレンズからの光を撮影する撮像手段と、
上記被写体から撮像手段に至る光路中に配置され光路開口を有する基板と、
この基板に取り付けられ上記光路開口を開閉する羽根部材と、
この羽根部材を開閉駆動する駆動手段と、
上記羽根部材を開位置及び閉位置で運動規制するストッパ手段とを備え、
上記ストッパ手段は、上記羽根部材に形成した開閉方向の長孔と、この長孔に嵌合したストッパーピンとで構成され、
上記長孔は上記羽根部材の開閉全域で上記光路開口から退避した位置に形成されていることを特徴とする撮像装置。
【請求項1】
光路開口を有する基板と、
この基板に取り付けられ上記光路開口を開閉する羽根部材と、
この羽根部材を開閉駆動する駆動手段と、
上記羽根部材を開位置及び閉位置で運動規制するストッパ手段とを備え、
上記ストッパ手段は、上記羽根部材に形成した開閉方向の長孔と、この長孔に嵌合したストッパーピンとで構成され、
上記長孔は上記羽根部材の開閉全域で上記光路開口から退避した位置に形成されていることを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記羽根部材は基端部を前記基板に形成した支軸に回動自在に支持され、
前記長孔とストッパーピンとは開位置及び/又は閉位置で直線状の当接面を有し、
この当接面の形成する直線は該当接面と上記支軸を結ぶ直線に対し所定角度傾斜していることを特徴とする光量調節装置。
【請求項3】
光路開口を有する基板と、
この基板に取り付けられ上記光路開口を開閉する羽根部材と、
この羽根部材を開閉駆動する駆動手段と、
上記羽根部材を開位置及び閉位置で運動規制するストッパ手段とを備え、
上記基板の光路開口周縁に形成された等間隔の支軸にそれぞれ回動自在に支持した3枚以上の羽根で構成され、
上記ストッパ手段は、上記羽根部材に形成した開閉方向の長孔と、
この長孔に嵌合したストッパーピンとで構成され、
上記駆動手段は、マグネットロータを有する複数の電磁駆動装置で構成され、
この電磁駆動装置は上記基板に取り付けられ、上記複数の羽根に対応して個別に設けられていることを特徴とする光量調節装置。
【請求項4】
被写体からの光を結像するレンズと、
このレンズからの光を撮影する撮像手段と、
上記被写体から撮像手段に至る光路中に配置され光路開口を有する基板と、
この基板に取り付けられ上記光路開口を開閉する羽根部材と、
この羽根部材を開閉駆動する駆動手段と、
上記羽根部材を開位置及び閉位置で運動規制するストッパ手段とを備え、
上記ストッパ手段は、上記羽根部材に形成した開閉方向の長孔と、この長孔に嵌合したストッパーピンとで構成され、
上記長孔は上記羽根部材の開閉全域で上記光路開口から退避した位置に形成されていることを特徴とする撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−53410(P2006−53410A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235752(P2004−235752)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】
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