説明

光電センサ

【課題】目視により容易に光軸調整できる光電センサを提供する。
【解決手段】第1の投光素子による投光と第2の投光素子による投光を切り替えて、投光部と受光部の光軸調整をする場合に第1の投光素子から投光させ、検出領域における検出対象物の有無を判定する場合に第2の投光素子から投光させる切り替え部とを備える。人間の目の比視感度特性より、暗所での比視感度のピーク(507nm)から明所での比視感度のピーク(555nm)までの範囲に波長のピークを持つ第1の投光素子を投光部の光源に用いるようにして、光軸調整時に光芒の視認性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検出領域に投光した光を受光して、物体の有無を判定する光電センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光電センサは、透過型、反射型、リフレクタ型などの種類を問わず、適切な検出を行うために投光部と受光部の光軸を調整する必要がある。光軸調整を目視で行う場合、人間の目では投光部が投光する光の光芒が見えにくく、光軸調整が難しい場合があった。そこで、例えば特許文献1に係る光電センサは、光軸調整の際に投光部の光量を増大させ、光芒の視認性を向上させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−225056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の光電センサは、一般的に赤色(波長620〜750nm)の光源を用いて構成されているので、人間の目の比視感度特性に合致していなかった。そのため、人間の目には投光の光芒が見えにくく、目視による光軸調整が難しいという課題があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、人間の目の比視感度特性に合う光源を用いて、目視により容易に光軸調整できる光電センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の請求項1に係る光電センサは、507〜555nmの範囲内に波長のピークがある光を投光する投光部と、投光部が検出領域へ投光した光を受光する受光部と、受光部の受光レベルを所定の閾値と比較して、検出領域における検出対象物の有無を判定する信号処理部とを備えるものである。
【0007】
この発明の請求項2に係る光電センサは、507〜555nmの範囲内に波長のピークがある光を投光する第1の投光素子、および任意の波長の光を投光すると共に当該投光の光軸が第1の投光素子の投光の光軸と略重なる位置に設置された第2の投光素子を有する投光部と、投光部が検出領域へ投光した光を受光する受光部と、受光部の受光レベルを所定の閾値と比較して、検出領域における検出対象物の有無を判定する信号処理部と、第1の投光素子による投光と第2の投光素子による投光を切り替えて、投光部と受光部の光軸調整をする場合に第1の投光素子から投光させ、検出領域における検出対象物の有無を判定する場合に第2の投光素子から投光させる切り替え部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の請求項1,2によれば、507〜555nmの範囲内に波長のピークがある光を投光する投光部を用いて、換言すれば、投光部が投光する光に含まれる波長のうち、最も発光強度が強い波長が507〜555nmの範囲に含まれるという条件を満たす投光部を用いて光軸調整するようにしたので、光源が人間の目の比視感度特性に合うものとなり、目視により容易に光軸調整できる光電センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る光電センサの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る光電センサの構成例の図であり、透過型光電センサを示す。
【図3】人間の目の比視感度特性を示すグラフである。
【図4】実施の形態1に係る光電センサの変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は本実施の形態1に係る光電センサの構成を示すブロック図であり、構成例を図2に示す。この光電センサは、507〜555nmの範囲内に波長のピーク値がある光を検出領域5に投光する投光部1と、投光部1が投光した光を受光する受光部2と、受光部2の受光レベルと所定の閾値とを比較して、検出領域5における検出対象物6の有無を判定する信号処理部3と、信号処理部3の出力を表示する表示部4とを備える。
【0011】
投光部1の光源として、人間の目の比視感度特性に合わせた光源を用いる。
図3は、人間の目の比視感度特性を示すグラフであり、「CIE 2−deg Photopic Luminosity Curve(1924)」および「CIE Scotopic Luminosity Curve(1951)」に基づいて作成した。グラフの縦軸は比視感度の相対値、横軸は波長[nm]を示し、太線は明所視、細線は暗所視の比視感度曲線である。上記文献の比視感度特性より、比視感度のピークは明所では555nm、暗所では507nmである。
【0012】
一般的に、光電センサの光軸調整現場は、明暗環境が暗所から明所の範囲にある。そこで、暗所での比視感度ピーク値507nm(青緑色)から明所での比視感度ピーク値555nm(黄緑色)までの範囲に投光波長のピークを持つ投光素子を投光部1の光源として用いる。投光素子としては、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)、レーザーダイオードなどがある。
【0013】
受光部2は、フォトダイオードなどの受光素子を有する構成である。図2に示す透過型光電センサでは、投光部1と受光部2とが検出領域5を間に挟んで対向するように配置される。投光部1から投光された光は検出領域5を通過して受光部2で受光される。
なお、投光部1の投光素子および受光部2の受光素子に光ファイバを接続して、ファイバ型光電センサにしてもよい。
【0014】
信号処理部3は、受光部2が受光した受光量(または、受光量の変化量など)を所定の閾値と比較して、検出領域5における検出対象物6の有無を判定する。光電センサが透過型の場合、信号処理部3は例えば、受光量が閾値より小さければ、検出領域5を通過する投光が検出対象物6に遮蔽されていないと判断して、検出対象物6が存在しないと判定する。一方、受光量が閾値以上になれば、検出領域5を通過する投光が検出対象物6に遮蔽されていると判断して、検出対象物6が存在すると判定する。
なお、信号処理部3は光電センサの種類に応じた公知の検出動作を行えばよく、上記以外の動作であってもよい。
【0015】
表示部4は、信号処理部3の出力を表示する表示灯を備え、検出対象物6の有無の判定結果、受光部2の受光量、閾値などを表示する。図示例の表示部4は受光部2の筐体に一体的に設けられ、検出対象物6を検出すると点灯するランプと、受光量および閾値を表示する7セグメント表示器とを有する構成である。
【0016】
次に、ユーザによる光電センサの光軸調整方法を説明する。ここでは図2に示す透過型光電センサを例に用いる。
手順1.投光部1と受光部2とを一直線上に対向させて配置する。
手順2.投光部1を左右方向に振り、表示部4に表示される受光量などの表示を見ながら、受光部2が受光動作をする範囲を確認し、その受光範囲の略中央になるよう投光部1の左右方向の向きを仮固定する。
手順3.投光部1を上下方向に振り、上記手順2と同様に投光部1の上下方向の向きを仮固定する。なお、手順2と手順3は順不同でよい。
手順4.上記手順1〜3の調整を受光部2について実施する。
【0017】
以上の光軸調整方法を実施する際、ユーザは手順2および手順3のときに、投光部1から投光される光(光芒)の位置を目視により確認することが望ましい。
【0018】
次に、本実施の形態1に係る光電センサの光軸調整と従来の光電センサの光軸調整とを比較する。
ここでは一例として、本実施の形態1に係る光電センサでは投光部1の投光素子に緑色光源を用い、波長ピークを555nmとする。一方、従来の光電センサでは投光部の投光素子に赤色光源を用い、波長ピークを660nmとする。
【0019】
投光の出力値[mW]がそれぞれの投光部で同等になるよう設定した場合、図3のグラフより、555nmの比視感度が1のとき、660nmの比視感度は0.061である。即ち、本実施の形態1の555nmの投光のほうが、従来の660nmの投光に比べて16.4倍視認しやすいことが分かる。
従って、上述した光軸調整方法の手順2および手順3のときにユーザの作業効率が向上し、光電センサ設置現場での作業工数を低減できる。
【0020】
特に従来のような、ピーク波長が660nmの透過型光電センサを用いてフィルムなどを検出する場合には、光がフィルムを貫通するのを防ぐために投光を低出力値[mW]にして光量を下げる必要がある。しかし、光量を下げると人間の目で光芒が見えにくくなり、目視による光軸調整が困難になる。これに対し、555nmのピーク波長であれば、光がフィルムを貫通しないよう投光を低出力値[mW]にしても、比視感度が16.4倍大きいので視認性がよく、光軸調整が容易である。
【0021】
以上より、実施の形態1に係る光電センサは、507〜555nmの範囲内に波長のピーク値がある光を投光する投光部1と、投光部1が検出領域5へ投光した光を受光する受光部2と、受光部2の受光レベルと所定の閾値とを比較して、検出領域5における検出対象物6の有無を判定する信号処理部3とを備えるように構成した。このため、光源が人間の目の比視感度特性に合致するようになるので投光の光芒の視認性が向上し、目視により容易に光軸調整できる。
【0022】
なお、図2の例では、投光部1と受光部2とを対向配置する透過型光電センサを例示しているが、これに限定されるものではなく、例えば投光部1と受光部2とを同じ側に配置し、対向位置に反射部材(コーナーキューブミラーなど)を配置して投光を反射するリフレクタ型光電センサでもよい。また例えば、投光部1と受光部2とを同じ側に配置し、対向位置にある検出対象物6が投光を反射する反射型光電センサでもよい。リフレクタ型および反射型の光電センサであっても上記説明と同様に507〜555nmの範囲内に波長のピークを持つ投光素子を用いることにより、投光の光芒の視認性が向上し、目視により容易に光軸調整できる。
【0023】
また、上記実施の形態1では投光部1が507〜555nmの範囲内に波長のピーク値がある光を投光する投光素子を有し、単一の投光素子を用いて光軸調整および検出動作を行う構成にしたが、これに限定されるものではない。
【0024】
図4に、実施の形態1に係る光電センサの変形例を示す。図4に示す光電センサにおいて、投光部1は、507〜555nmの範囲内に波長のピークがある光を投光する第1の投光素子10と、任意の波長の光(例えば従来のような660nmに波長のピーク値がある光)を投光する第2の投光素子11とを有する。これら第1の投光素子10と第2の投光素子11を、同じ回路基板上に並設するなどして、第1の投光素子10の光軸と第2の投光素子11の光軸とが略重なるようにする。なお、両光軸のずれの許容範囲は投光部1から受光部2までの距離に応じて異なるので、適宜配置を工夫すればよい。
【0025】
また、図4の光電センサは、第1の投光素子10による投光と第2の投光素子11による投光とを切り替える切り替え部12を備える。その他の各構成要素は、図1と同一であるため同一の符号を付し説明を省略する。
切り替え部12は、投光部1と受光部2の光軸調整をする場合に第1の投光素子10から投光させ、一方、検出領域5における検出対象物6の有無を判定する場合には第2の投光素子11から投光させる。切り替え部12と連動する切り替えスイッチなどを筐体表面に設け、ユーザがその切り替えスイッチなどを操作することで光軸調整と検出動作とを切り替えればよい。
【0026】
図4に示す構成の光電センサによれば、光軸調整時に人間の目の比視感度特性に合致した507〜555nm波長の第1の投光素子10を用い、投光の光芒の視認性を向上させることができるので、目視により容易に光軸調整できる。
【0027】
また、例えば第1の投光素子10を、507nm付近に波長のピークがある光を投光する構成にして、専ら暗所での光軸調整に用いるようにし、第2の投光素子11を、555nm付近に波長のピークがある光を投光する構成にして、専ら明所での光軸調整に用いるようにして、切り替え部12が明所と暗所とで光軸調整用の投光素子を切り替える構成にしてもよい。
【0028】
以上、本発明の実施の形態1を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、上述した実施の形態の構成に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても本発明に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1 投光部
2 受光部
3 信号処理部
4 表示部
5 検出領域
6 検出対象物
10 第1の投光素子
11 第2の投光素子
12 切り替え部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
507〜555nmの範囲内に波長のピークがある光を投光する投光部と、
前記投光部が検出領域へ投光した光を受光する受光部と、
前記受光部の受光レベルを所定の閾値と比較して、前記検出領域における検出対象物の有無を判定する信号処理部とを備える光電センサ。
【請求項2】
507〜555nmの範囲内に波長のピークがある光を投光する第1の投光素子、および任意の波長の光を投光すると共に当該投光の光軸が前記第1の投光素子の投光の光軸と略重なる位置に設置された第2の投光素子を有する投光部と、
前記投光部が検出領域へ投光した光を受光する受光部と、
前記受光部の受光レベルを所定の閾値と比較して、前記検出領域における検出対象物の有無を判定する信号処理部と、
前記第1の投光素子による投光と前記第2の投光素子による投光を切り替えて、前記投光部と前記受光部の光軸調整をする場合に前記第1の投光素子から投光させ、前記検出領域における検出対象物の有無を判定する場合に前記第2の投光素子から投光させる切り替え部とを備える光電センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−108079(P2012−108079A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258980(P2010−258980)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】