説明

光電変換モジュール及び光電変換モジュールの製造方法

【課題】簡単な構成の外部接続用の電極を有する光電変換モジュール及び光電変換モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】光電変換モジュール(24)は、基板(26)の実装面に実装された光電変換素子(30)及びICチップ(32)と、基板(26)の側面に設けられ、ICチップ(32)と電気的に接続される、基板(26)の側面の他の部分よりも凹んだ凹形状を有する電極(36)と備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電変換モジュール及び光電変換モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばデータセンターにおけるサーバとスイッチ間の接続や、デジタルAV(オーディオ・ビジュアル)機器間の接続では、伝送媒体として、メタル線の外に、光ファイバーも用いられている。また、近年、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の情報処理機器においても、伝送媒体として光ファイバーを用いること(光インターコネクト)が検討されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
光ファイバーを用いる場合、電気信号を光信号に、或いは、光信号を電気信号に変換する光電変換モジュールが必要になる。例えば、特許文献2が開示する光電変換モジュールは無機材料基板を備え、無機材料基板に光電変換素子及びICチップが実装されている。無機材料基板には、パッケージが気密を存して接合され、パッケージにはパッケージ側回路パターンが設けられている。ICチップは、パッケージ側回路パターン及びパッケージ側半田ボールを通じて、外部に電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−21459号公報
【特許文献2】特開2007−324303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2が開示する光電変換モジュールは、パッケージ側回路パターンの構成が複雑であり、低コスト化が困難であった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされ、その目的とするところは、簡単な構成の外部接続用の電極を有する光電変換モジュール及び光電変換モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、透光性を有するとともに実装面を有する基板と、前記基板の実装面に実装された光電変換素子及びICチップと、前記基板の側面に設けられ、前記ICチップと電気的に接続される、前記側面の他の部分よりも凹んだ凹形状を有する電極と、を備える光電変換モジュールが提供される。
【0007】
また、本発明の一態様によれば、透光性を有するとともに実装面を有する基板へと分割される第1ウエハを準備する準備工程と、前記第1ウエハに、前記基板の各々に対応して光電変換素子及びICチップを実装する実装工程と、前記第1ウエハが分割される位置に、前記第1ウエハを貫通するスルーホールを形成する穿孔工程と、前記スルーホールの壁面にめっきを施すめっき工程と、前記めっき工程の後に、前記第1ウエハを前記基板へと分割する分割工程と、を備える光電変換モジュールの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な構成の外部接続用の電極を有する光電変換モジュール及び光電変換モジュールの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態の光電変換モジュールを用いた光配線を備える携帯電話の概略的な構成を示す斜視図である。
【図2】図1の携帯電話に用いられる第1マザー基板及び第2マザー基板ととともに、光配線を示す概略的な斜視図である。
【図3】第1実施形態の光電変換モジュールの外観を概略的に示す斜視図である。
【図4】第2マザー基板に取り付けられた状態の光電変換モジュールの概略的な断面図である。
【図5】光電変換素子及びICチップを除いた状態にて、基板の実装面を概略的に示す平面図である。
【図6】図3の光電変換モジュールの製造方法における、保持溝及びミラーの形成工程を説明するための概略的な平面図である。
【図7】図3の光電変換モジュールの製造方法における、スルーホールの穿孔工程を説明するための概略的な平面図である。
【図8】図3の光電変換モジュールの製造方法における、導体パターンの形成工程を説明するための概略的な平面図である。
【図9】図3の光電変換モジュールの製造方法における、光電変換素子及びICチップの実装工程を説明するための概略的な平面図である。
【図10】第2実施形態の光電変換モジュールの外観を概略的に示す斜視図である。
【図11】第2マザー基板に取り付けられた状態の光電変換モジュールの概略的な断面図である。
【図12】図11中のXII−XII線に沿って光電変換モジュールを切断し、半田層、光電変換素子及びICチップを除いた状態にて、基板の実装面を概略的に示す平面図である。
【図13】図11中のXII−XII線に沿って光電変換モジュールを切断し、半田層を除いた状態にて、基板の実装面と対向するカバー部材の対向面を概略的に示す平面図である。
【図14】図10の光電変換モジュールにおける、半田吸着膜とグランド電極との接続構成を説明するための、基板とカバー部材との接合領域を拡大して概略的に示す断面図である。
【図15】図10の光電変換モジュールにおける、導体パターンの信号/電源線と信号/電源電極との接続構成を説明するための、基板とカバー部材との接合領域を拡大して概略的に示す断面図である。
【図16】図10の光電変換モジュールの製造方法における、導体パターンの形成工程を説明するための概略的な平面図である。
【図17】図10の光電変換モジュールの製造方法における、絶縁層及び基板側ベース膜の成膜工程を説明するための概略的な平面図である。
【図18】図10の光電変換モジュールの製造方法における、光電変換素子及びICチップの実装工程を説明するための概略的な平面図である。
【図19】図10の光電変換モジュールの製造方法における、カバー部材の突起部及び凹みの形成工程を説明するための概略的な平面図である。
【図20】図10の光電変換モジュールの製造方法における、カバー側ベース膜及び半田吸着膜の成膜工程を説明するための概略的な平面図である。
【図21】図10の光電変換モジュールの製造方法における、スルーホールの穿孔工程を説明するための概略的な平面図である。
【図22】第3実施形態として、図10の光電変換モジュールの第2マザー基板への他の実装方法を説明するための概略的な断面図である。
【図23】第4実施形態の光電変換モジュールの概略的な断面図である。
【図24】第5実施形態の光電変換モジュールの概略的な断面図である。
【図25】第6実施形態の光電変換モジュールの概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、携帯電話10の外観を概略的に示す斜視図である。携帯電話10は例えば折り畳み型であり、第1ケース11と第2ケース12がヒンジを介して連結されている。第1ケース11には液晶パネル14が設置され、第2ケース12にはボタン16が設置され、利用者は、液晶パネル14に表示される画像から情報を得ることが出来る。
【0011】
図2は、第1ケース11及び第2ケース12内にそれぞれ配置された第1マザー基板18及び第2マザー基板20を示している。図示しないけれども、第1マザー基板18には液晶パネル14のドライブ回路を構成する電気部品が実装され、第2マザー基板20には、ボタン16と接続される入力回路、通信回路及び画像処理回路を構成する電気部品が実装されている。
【0012】
第1マザー基板18のドライブ回路と第2マザー基板20の画像処理回路とは、光配線22によって相互に接続されている。即ち、ドライブ回路は、画像処理回路から光配線22を通じて画像データを受け取り、受け取った画像データに基づいて画像を液晶パネル14に表示させる。
【0013】
〔光電変換モジュール〕
〔第1実施形態〕
光配線22は、光ファイバー23と、光ファイバー23の両端に一体に設けられた第1実施形態の光電変換モジュール24,24とからなる。
図3は、光電変換モジュール24の外観を概略的に示す斜視図である。光電変換モジュール24は、透光性を有する基板26を備える。基板26は、例えば、樹脂、無機材料、又は、樹脂と無機材料の複合材料からなる。無機材料としては、ガラス、シリコン、及び、サファイアからなる群から選択される1種を用いることができる。
【0014】
本実施形態では、基板26は、例えばガラスからなり、20μm以上400μm以下の範囲の厚さと、1mm以上4mm以下の範囲の縦の長さと、1mm以上4mm以下の範囲の横の長さとを有する。
【0015】
基板26の一方の面(実装面)には、光電変換素子30及びIC(集積回路)チップ32が例えばフリップチップ実装されている。
より詳しくは、第2マザー基板20に接続される光電変換モジュール24では、光電変換素子30は、LD(レーザダイオード)等の発光素子であり、ICチップ32は、光電変換素子30を駆動するための駆動回路を構成している。
【0016】
また、第1マザー基板18に接続される光電変換モジュール24では、光電変換素子30は、PD(フォトダイオード)等の受光素子であり、ICチップ32は、受光素子が出力した電気信号を増幅するための増幅回路を構成している。
なお、光電変換素子30は、面発光型又は面受光型であり、出射部又は入射部が実装面と対向するように配置される。
【0017】
基板26の側面には、基板26の厚さ方向にて端から端まで延びる凹部が複数形成され、各凹部の表面の全域に導電性を有する膜状の導電部材(電極)36が形成されている。導電部材36は、導電部材36の両側に位置する基板26の側面の部分よりも凹んだ凹形状を有する。
導電部材36は、例えば、Au、Cu及びNiからなる群から選択される単一の金属若しくは合金の膜、又は、これらの膜の積層体からなる。好ましくは、導電部材36は、Cuめっき膜、Niめっき膜及びAuめっき膜がこの順で積層され、Auめっき膜が最表層に位置する積層体である。
【0018】
一方、基板26の実装面とは反対側の面(背面)には、保持溝38が設けられ、保持溝38に光ファイバー23の先端部が配置されている。そして、基板26の背面には、保持溝38を覆うように、板状の補強部材40が固定されている。補強部材40は、例えばガラスからなる。補強部材40の厚さは、例えば、100μm以上500μm以下の範囲にある。
【0019】
図4は、第2マザー基板20に実装された状態の光電変換モジュール24の概略的な断面図である。
保持溝38は、基板26に沿って、光電変換素子30及びICチップ32の配列方向(以下、単に配列方向Dという)に延びている。保持溝38の断面形状は四角形状、則ち角張ったU字形状であり、保持溝38はU溝である。
【0020】
本実施形態では、好ましい態様として、配列方向Dでみて、ICチップ32側に位置する保持溝38の一端は、基板26の側面にて開口し、保持溝38の他端は壁面によって構成されている。光ファイバー23の先端部は、保持溝38内に接着剤で固定され、光ファイバー23の先端面は、保持溝38の他端の壁面に当接している。
【0021】
また基板26の背面にはV溝が形成され、V溝の壁面には、例えばAu等の金属からなる蒸着膜が形成されている。蒸着膜はミラー42を構成し、ミラー42は、光電変換素子30と光ファイバー23の先端面とを、基板26を通して光学的に結合する光学要素を構成している。
なお、保持溝38及びV溝は、基板26とは別の部材で形成することもできる。例えば、樹脂材料を基板26の背面に塗布して樹脂層を形成し、この樹脂層に対して保持溝及びV溝を形成してもよい。
【0022】
補強部材40は接着剤からなる接着層44を介して、基板26の背面に固定されている。補強部材40は保持溝38を覆い、光ファイバー23の先端部を基板26とともに強固に保持する。補強部材40の基板26に接着される面の面積は、基板26の背面の面積よりも小さい。そして、基板26の背面の外縁近傍が一部露出するように、補強部材40は、基板26の背面に固定されている。
【0023】
第2マザー基板20は、例えばガラスエポキシ樹脂製のリジッドな基板本体46と、銅等の導体からなる導体パターン48とからなる。第2マザー基板20の基板本体46には、光電変換素子30及びICチップ32を受け入れる凹み49として、例えばU溝が設けられている。第2マザー基板20の導体パターン48は、例えば半田からなる接続部50によって、光電変換モジュール24の導電部材36に接続されている。
【0024】
基板26の実装面には、光電変換素子30とICチップ32とを電気的に接続し、ICチップ32と導電部材36とを電気的に接続するための導体パターン52が設けられている。導体パターン52は、例えば銅等からなる導電性を有する薄膜をエッチングすることによって形成される。
【0025】
光電変換素子30及びICチップ32は、入出力端子として、それぞれ複数の電極パッド54,56を有し、電極パッド54,56は、例えばAuからなるバンプ58,60を介して、基板26の導体パターン52に接続される。そして、導体パターン52は、基板26の側面の凹部まで延びており、導電部材36に接続されている。
【0026】
図5は、基板26の実装面を概略的に示す平面図である。図5に示したように、各導電部材36は、導体パターン52を介して、ICチップ32に電気的に接続されている。
【0027】
以下、上述した第1実施形態の光電変換モジュール24の好ましい製造方法について説明する。
まず、図6に示したように、基板26の材料として第1ウエハ61を用意する(準備工程)。第1ウエハ61は、最終的に、一点鎖線に沿って切断することによって、複数の基板26へと分割される。
用意した第1ウエハ61の一方の面(背面)に、分割後に得られる基板26の各々に対応して、V溝及び保持溝38を形成し、V溝に金属膜を蒸着してミラー42を形成する(保持溝・ミラー形成工程)。
なお、第1ウエハ61の一方の面に、樹脂材料を塗布して樹脂層を形成し、この樹脂層に対し、露光及び現像のプロセスで保持溝38を形成するととともに、ダイシング等によりV溝を形成してもよい。
【0028】
それから、例えばドリル、サンドブラスト又はエッチング等によって、好ましくはドリルによって、図7に示すように、第1ウエハ61を貫通するスルーホール62を形成する(穿孔工程)。スルーホール62は、基板26同士の境界上の所定位置に形成される。
穿孔工程の後、スルーホール62の壁面に、無電解めっき又は電解めっきを施し、めっき膜(導電性膜)を形成する(めっき工程)。めっき膜は、Cu、Ni、Auの順に施され、金めっきがめっき膜の表層であるのが好ましい。
【0029】
それから、図8に示したように、第1ウエハ61の他方の面(実装面)に、導体パターン52を形成する。例えば、第1ウエハ61の他方の面の全域に、金属膜をめっきしてから、金属膜をエッチングすることによって、導体パターン52が形成される。
この後、図9に示したように、第1ウエハ61の他方の面に、光電変換素子30及びICチップ32を例えばフリップチップ実装によって実装する(実装工程)。
なお、穿孔工程及びスルーホール62のめっき工程は、実装工程の後に行ってもよい。
【0030】
それから、ダイシング装置を用いて、1点鎖線にて示した切断線にて、第1ウエハ61を切断する(分割工程)。この切断の際、めっき膜が導電性部材36へと分割される。かくして、分割工程が終了すると、複数の光電変換モジュール24の半完成品が得られる。
最後に、得られた半完成品の保持溝38に光ファイバー23の先端部を配置してから、半完成品の基板38に接着剤を用いて補強部材40を接着し、光電変換モジュール24が完成する。
なお、補強部材40の側面にも、基板26の導電部材(電極)36と同様の電極を設けてもよい。この場合、補強部材40の電極は、基板26の電極36と電気的に接続されるように形成するのが好ましい。
【0031】
上述した第1実施形態の光電変換モジュール24では、基板26の側面に凹部が形成され、導体パターン52が、凹部の表面に設けられた導電部材36によって第2マザー基板20に電気的に接続されている。つまり、光電変換モジュール24では、導電部材36が、外部接続用の電極として機能しており、複雑な形状の回路パターンを形成する必要がない。
【0032】
そして、導電部材36は、基板26の側面から凹んでいるため、半田からなる接続部50を設けたときに、第2マザー基板20における光電変換モジュール24の実装面積が縮小される。
また、導電部材36が凹んでいるため、導電部材36と接続部50との接触面積が大きく、接続強度が大きい。このため、この光電変換モジュール24は第2マザー基板20に強固に固定され、携帯電話10は高い信頼性を有する。
【0033】
また、上述した第1実施形態の光電変換モジュール24の製造方法によれば、穿孔工程及びめっき工程が、第1ウエハ61に対して行われるので、光電変換モジュール24の大量生産が可能である。このため、光電変換モジュール24は安価にて提供される。
特に、上述した一実施形態の光電変換モジュール24の製造方法によれば、スルーホール62に対しめっきを行うことで、導電部材36が容易に形成される。
【0034】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態の光電変換モジュール64について説明する。なお、第2実施形態以下の説明では、前述の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
図10は、第2実施形態の光電変換モジュール64を概略的に示す斜視図である。基板26の実装面には、光電変換素子30及びICチップ32を覆うように、カバー部材65が気密を存して固定されている。
【0036】
カバー部材65は、例えば、ガラス、シリコン、及び、サファイアからなる群から選択される1種によって構成される。好ましくは、カバー部材65の線膨張係数は、基板26の線膨張係数と同じであり、そのために、カバー部材65及び基板26は同一の材料によって構成される。
本実施形態では、例えば、カバー部材65はガラスからなり、カバー部材65の厚さは400μm以上1500μm以下の範囲にあり、基板26の実装面と対向するカバー部材65の面の広さは、基板26の実装面に略等しい。
【0037】
カバー部材65の側面には、カバー部材65の厚さ方向にて端から端まで延びる凹部が複数形成され、各凹部の表面の全域に導電性を有する膜状の導電部材(第2電極)66が形成されている。導電部材66は、導電部材66の両側に位置するカバー部材65の側面の部分よりも凹んだ凹形状を有する。そして、基板26の凹部とカバー部材65の凹部は相互に連なっており、導電部材66は、導電部材36と一体に連なっている。
なお、導電部材36,66には、グランド電極36g,66gと、信号又は電源用の電極(信号/電源電極)36s,66sとがある。
【0038】
図11は、第2マザー基板20に実装された状態の光電変換モジュール64の概略的な断面図である。
る。
光電変換モジュール64は、第2マザー基板20に対して、カバー部材65が対向するように配置され、接続部50は、導電部材66に接続されている。第2実施形態の場合、第2マザー基板20には、凹み49が形成されていなくてもよい。
【0039】
基板26の実装面上には、外縁に沿って絶縁層67が設けられている。絶縁層67は枠形状を有し、光電変換素子30及びICチップ32を囲んでいる。絶縁層67は、自身と交差する導体パターン52の部分を覆っている。例えば、絶縁層67は、0.1μm以上100μm以下の範囲の厚さと、50μm以上300μm以下の範囲の幅を有する。
絶縁層67は、例えば、酸化シリコンや酸化アルミニウム等の非導電性物質からなり、物理蒸着や化学蒸着によって形成される。
【0040】
絶縁層67上には、基板側ベース膜68が形成されている。基板側ベース膜68は枠形状を有し、半田に対する親和性若しくは濡れ性を有する。換言すれば、半田は、基板側ベース膜68に対し付着性を有する。基板側ベース膜68は、例えば、Au、Cu及びCrからなる群から選択される単一の金属若しくは合金の膜、又は、これらの膜の積層体からなる。
【0041】
カバー部材65は、基板26の実装面と対向する面(対向面)の中央に凹み69を有する。好ましくは、凹み69の壁面において、開口縁近傍の領域は実装面に対して傾斜している。具体的には、凹み69の壁面は、曲面によって構成され、ボウル形状若しくはすり鉢形状有する。
【0042】
凹み69の壁面は、実装面と協働して、光電変換素子30及びICチップ32を収容するための室(収容室)70を規定する。凹み69は、例えば、サンドブラストによって形成される。
【0043】
凹み69は、カバー部材65の対向面にて開口しており、対向面は、凹み69の開口の周りに、枠形状の接合領域を有する。カバー部材65の接合領域上には、カバー側ベース膜71が形成されている。カバー側ベース膜71は枠形状を有し、半田に対する親和性若しくは濡れ性を有する。カバー側ベース膜71は、例えば、Au、Cu及びCrからなる群から選択される単一の金属若しくは合金の膜、又は、これらの膜の積層体からなる。
【0044】
また、凹み69の壁面には、好ましい態様として、カバー側ベース膜71の内縁に一体に連なる半田吸着膜72が形成されている。より好ましくは、半田吸着膜72は、凹み69の壁面全域に渡って形成されている。半田吸着膜72は、半田に対する親和性若しくは濡れ性を有し、好ましくは、導電性を有する。半田吸着膜72は、例えば、Au、Cu及びCrからなる群から選択される単一の金属若しくは合金の膜、又は、これらの膜の積層体からなる。半田吸着膜72は、例えば、カバー側ベース膜71と同時に、物理蒸着又は化学蒸着によって形成することができる。
【0045】
基板側ベース膜68は、カバー側ベース膜71と対向するように配置される。好ましくは、基板側ベース膜68は、カバー側ベース膜71よりも収容室70の内側に向けて延びている。基板側ベース膜68とカバー側ベース膜71は、半田からなる半田層74によって相互に気密に接続される。半田は、例えば、Au−Sn合金又はSn−Ag合金である。
従って、収容室70は気密室であり、収容室70には、乾燥ガスが充填され、好ましくは不活性ガスが充填されている。不活性ガスは、例えば、He等の希ガスや窒素ガスである。あるいは、収容室70は真空状態若しくは減圧状態であってもよい。
【0046】
図12は、図11中のXII−XII線に沿って光電変換モジュール64を切断し、半田層74、光電変換素子30及びICチップ32を除いた状態にて、基板26の実装面を概略的に示す平面図である。図12に示したように、基板側ベース膜68の外縁は、絶縁層67の外縁よりも内側に位置している。
なお、実装面に設けられた導体パターン52には、グランド電極36g,66gに接続されたグランド線52gと、信号/電源電極36s,66sに接続された信号/電源線52sとがある。グランド線52g及び信号/電源線52sは、いずれも絶縁層67を跨ぐように延びている。
【0047】
図13は、図11中のXII−XII線に沿って光電変換モジュール64を切断し、半田層74を除いた状態にて、基板26の実装面と対向するカバー部材34の対向面を概略的に示す平面図である。
カバー側ベース膜71は、基板側ベース膜64と対向する領域に設けられ、絶縁層67の外縁よりも内側に位置している。なお、カバー部材34は、カバー側ベース膜71を囲むように、対向面の外縁から基板26に向けて突出する、枠形状の突起部34aを有する。このため、カバー部材34においては、突起部34aと凹み69の間に存在する平坦な枠形状の領域に、カバー側ベース膜71が設けられている。
【0048】
本実施形態では、好ましい態様として、半田吸着膜72が、凹み69の壁面の全域に形成され、且つ、接地される。そのために、突起部34aは、グランド電極66g近傍には設けられていない。
【0049】
図14は、グランド電極36g,66gとカバー側ベース膜71との接続構成を説明するために、基板26とカバー部材34との接合領域を拡大して概略的に示す断面図である。図14に示したように、グランド電極36g,66gは、カバー側ベース膜71、半田層74、及び、基板側ベース膜68の端に接続される。
【0050】
図15は、信号/電源電極36s,66sと信号/電源線52sとの接続構成を説明するために、基板26とカバー部材34との接合領域を拡大して概略的に示す断面図である。図15に示したように、信号/電源電極36s,66sは、絶縁層67から延出した信号/電源線52sの端部に接続されている。一方、信号/電源電極36s,66sと、カバー側ベース膜71、半田層74、及び、基板側ベース膜68との間には、突起部34a及び絶縁層67が存在し、これらの間の直接的な接触が阻止されている。
【0051】
以下、上述した光電変換モジュール64の好ましい製造方法について説明する。
第1ウエハ61の一方の面に、保持溝38及びミラー42を形成するところまでは、第1実施形態の場合と同じであるが(図6参照)、第2実施形態では、保持溝・ミラー形成工程の後、図16に示したように、第1ウエハ61の他方の面に、導体パターン52を形成する。
【0052】
次に、図17に示したように、第1ウエハ61の他方の面に、絶縁層67を形成し、更に、絶縁層67の上に基板側ベース膜68を形成する。絶縁層67は、例えば、形成すべき領域以外をマスクにて覆ってから、物理蒸着又は化学蒸着を行うことによって形成することができる。
【0053】
また、基板側ベース膜68は、形成すべき領域以外をマスクにて覆ってから、無電解めっき又は電解めっきを行うことによって、又は、物理蒸着や化学蒸着を行うことによって形成することができる。
この後、図18に示したように、第1ウエハ61の他方の面に、光電変換素子30及びICチップ32を例えばフリップチップ実装によって実装する(実装工程)。
【0054】
この一方で、図19に示すように、カバー部材65の材料として、第2ウエハ76を用意する。そして、第2ウエハ76の一方の面に、例えばサンドブラストによって、突起部34a及び凹み69を形成する。
次に、図20に示すように、第2ウエハ76の一方の面に、カバー側ベース膜71及び半田吸着膜72を形成する(成膜工程)。カバー側ベース膜71及び半田吸着膜72は、例えば、形成すべき領域以外をマスクにて覆ってから、無電解めっき及び電解めっきを行うことによって、又は、物理蒸着や化学蒸着を行うことによって形成することができる。
【0055】
それから、半田層74となる半田を、カバー側ベース膜71上に付与する。この際、付与される半田は線状であってもよいし、ボール状であってもよい。
この後、不活性ガス雰囲気下にて、光電変換素子30及びICチップ32が実装された第1ウエハ61に、半田が付与された第2ウエハ76を重ねて加熱し、第1ウエハ61と第2ウエハ76を半田によって接合する(接合工程)。この接合の際、半田が半田層74を形成する。
【0056】
次に、例えばドリル、サンドブラスト又はエッチング等によって、好ましくはドリルによって、図21に示すように、第1ウエハ61及び第2ウエハ76を貫通するスルーホール78を形成する(穿孔工程)。それから、スルーホール78の壁面に、無電解めっき又は電解めっきを施し、めっき膜を形成する(めっき工程)。
【0057】
この後、ダイシング装置を用いて、1点鎖線にて示した切断線にて、相互に接合された第1ウエハ61及び第2ウエハ76を切断する(分割工程)。これによって、めっき膜が切断されて導電部材36,66を形成し、複数の光電変換モジュール64の半完成品が得られる。
最後に、得られた半完成品の保持溝38に光ファイバー23の先端部を配置してから、半完成品の基板38に接着剤を用いて補強部材40を接着し、光電変換モジュール64が完成する。
【0058】
上述した第2実施形態の光電変換モジュール64では、カバー部材65が基板26に固定され、基板26及びカバー部材65が気密な収容室70を形成している。収容室70には乾燥ガスが充填されており、光電変換素子30は、湿気から保護されている。このため、この光電変換素子30は長寿命であり、光電変換モジュール64は、高い信頼性を有する。
【0059】
一方、上述した第2実施形態の光電変換モジュール64では、基板26及びカバー部材65の側面に凹部が形成され、導体パターン52が、凹部の表面に設けられた導電部材66によって第2マザー基板20に電気的に接続されている。つまり、光電変換モジュール64では、導電部材66が、外部接続用の電極として機能しており、カバー部材65に複雑な形状の回路パターンを形成する必要がない。
【0060】
そして、導電部材66は、基板26及びカバー部材65の側面から凹んでいるため、半田からなる接続部50を設けたときに、第2マザー基板20における光電変換モジュール64の実装面積が縮小される。
また、導電部材66が凹んでいるため、導電部材66と接続部50との接触面積が大きく、接続強度が大きい。このため、この光電変換モジュール64は第2マザー基板20に強固に固定され、携帯電話10は高い信頼性を有する。
【0061】
また、上述した第2実施形態の光電変換モジュール64の製造方法によれば、穿孔工程及びめっき工程が、第1ウエハ61及び第2ウエハ76に対して行われるので、光電変換モジュール64の大量生産が可能である。このため、光電変換モジュール64は安価にて提供される。
特に、上述した一実施形態の光電変換モジュール64の製造方法によれば、スルーホール78に対しめっきを行うことで、導電部材36,66が容易に形成される。
【0062】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態について、図22を参照して説明する。
第3実施形態は、光電変換モジュール64の基板26側が、第2マザー基板20に固定されている点においてのみ第2実施形態と異なる。この場合、第2マザー基板20には、補強部材40を受け入れる凹み80として、孔、切欠又はU溝等が設けられる。
第3実施形態の場合、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態の光電変換モジュール82について、図23を参照して説明する。
上述した第2実施形態の光電変換モジュール64では、実装面の端において、導体パターン52が導電部材36に接続されていたが、光電変換モジュール82のように、導体パターン52が、他の経路にて導電部材36に接続されていてもよい。具体的には、他の経路として、基板26にスルーホールを設け、スルーホールに充填されたスルーホール導体84と、基板26の背面に設けられた他の導体パターン86とを設けてもよい。このスルーホール、スルーホール導体84及び導体パターン86は、実装工程の前に形成される。
第4実施形態の場合、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
〔第5実施形態〕
以下、第5実施形態の光電変換モジュール88について、図24を参照して説明する。
上述した第2実施形態の光電変換モジュール64では、好ましい態様として、光ファイバー23の先端部が基板26の背面の保持溝38に固定されていたが、他の固定手段によって固定されていてもよい。
例えば、光電変換モジュール88のように、光電変換素子30の光軸と光ファイバー23の光軸とが一致するように、基板26の背面に対し垂直に光ファイバー23の先端部を固定してもよい。
【0065】
この場合、光ファイバー23の先端部を固定するフェルール90が、基板26の背面に対し接着層44によって固定される。そして、必要に応じて、光電変換素子30と光ファイバー23との間にはレンズ92が設けられる。好ましくは、レンズ92は、基板26の背面に一体に形成される。レンズ92の形成工程は、例えば、ミラー42を形成する工程に代えて行うことができる。
第5実施形態の場合、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
〔第6実施形態〕
以下、第6実施形態の光電変換モジュール94について、図25を参照して説明する。
上述した第2実施形態の光電変換モジュール64では、好ましい態様として、カバー部材65の側面にも凹部が形成され、導電部材66がカバー部材65の凹部を覆っていたが、光電変換モジュール94のように、カバー部材65側の凹部を省略し、基板26の側面の凹部の表面にのみ、導電部材36を設けてもよい。
【0067】
この場合、第1ウエハ61と第2ウエハ62の接合工程の前に、穿孔工程及びめっき工程が行われる。
第6実施形態の場合、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
更に、本発明は、上述した第1乃至第6実施形態に限定されることはなく、第1乃至第6実施形態のうち2つ以上を適宜組み合わせた形態や、これらの形態に変更を加えた形態も含む。
最後に、本発明の光電変換モジュールを備える光配線は、携帯電話以外の情報処理機器、ネットワーク機器、デジタルAV機器、及び、家電製品に適用可能である。より詳しくは、光電変換モジュールは、例えば、パーソナルコンピュータ、スイッチングハブ、及び、HDMIケーブル等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
20 第2マザー基板
22 光配線
23 光ファイバー
24 光電変換モジュール
26 基板
30 光電変換素子
32 ICチップ
36 導電部材(電極)
38 保持溝
40 補強部材
52 導体パターン
65 カバー部材
66 導電部材(第2電極)
67 絶縁層
70 収容室(気密室)
72 半田吸着膜
74 半田層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有するとともに実装面を有する基板と、
前記基板の実装面に実装された光電変換素子及びICチップと、
前記基板の側面に設けられ、前記ICチップと電気的に接続される、前記側面の他の部分よりも凹んだ凹形状を有する電極と、
を備える光電変換モジュール。
【請求項2】
前記電極は、前記基板へと分割される第1ウエハに形成されたスルーホールの壁面に導電性膜を付与した後、前記スルーホールを通る位置にて前記第1ウエハを分割し、前記導電性膜を分割することにより形成された、
請求項1に記載の光電変換モジュール。
【請求項3】
前記導電性膜は、金めっき膜を表層に含む、
請求項2に記載の光電変換モジュール。
【請求項4】
前記基板に固定され、前記基板と協働して前記光電変換素子を収容する気密室を形成するカバー部材と、
前記カバー部材の側面に設けられ、前記電極に連なるとともに前記カバー部材の側面の他の部分よりも凹んだ凹形状を有する第2電極と、
を更に備える請求項1乃至3の何れか一項に記載の光電変換モジュール。
【請求項5】
前記基板は、前記実装面とは反対側の背面に保持溝を有し、
前記保持溝に光ファイバーの先端部が固定され、
前記光ファイバーと前記光学変換素子とを光学的に結合するミラーと、
前記基板の背面に固定され、前記基板とともに前記光ファイバーの先端部を保持する補強部材とを更に備える、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の光電変換モジュール。
【請求項6】
前記補強部材は、前記基板に固定される面の面積が前記基板の背面の面積よりも小さい、
請求項5に記載の光電変換モジュール。
【請求項7】
透光性を有するとともに実装面を有する基板へと分割される第1ウエハを準備する準備工程と、
前記第1ウエハに、前記基板の各々に対応して光電変換素子及びICチップを実装する実装工程と、
前記第1ウエハが分割される位置に、前記第1ウエハを貫通するスルーホールを形成する穿孔工程と、
前記スルーホールの壁面にめっきを施すめっき工程と、
前記めっき工程の後に、前記第1ウエハを前記基板へと分割する分割工程と、
を備える光電変換モジュールの製造方法。
【請求項8】
半田からなる半田層を介して前記基板に固定され、前記基板と協働して前記光電変換素子及び前記ICチップを収容する気密室を形成するカバー部材へと分割される第2ウエハを準備する第2準備工程と、
前記実装工程の後であって前記穿孔工程の前に、前記第1ウエハに、前記半田層を介して、前記第2ウエハを固定する接合工程とを更に備え、
前記穿孔工程において、前記スルーホールとして、前記第1ウエハ及び前記第2ウエハが分割される位置に、前記第1ウエハ及び前記第2ウエハを貫通するスルーホールを形成し、
前記分割工程において、前記第1ウエハ及び前記第2ウエハを前記基板及び前記カバー部材へと分割する、
請求項7に記載の光電変換モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−160527(P2012−160527A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18141(P2011−18141)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】