説明

光電変換素子およびその電極形成方法

【課題】接触領域の面積を低減することにより、半導体基板と受光面電極の間の界面におけるキャリア再結合速度を小さくし、Vocを向上させ、半導体基板上の受光面電極面積を低減することにより、受光面電極表面での反射損失を少なくして発電層にできるだけ多くの光を吸収させる。
【解決手段】半導体基板と電気的に接続された受光面電極を有する光電変換素子であって、半導体基板と受光面電極とが電気的に接触している領域が半導体基板上の受光面電極形成領域内の外周部にあり、前記受光面電極形成領域内の前記外周部より内部の領域において前記半導体基板と電気的に非接触な領域を有することを特徴とする光電変換素子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子およびその電極形成方法に関するものであり、さらに詳しくは、太陽電池などに用いられる光電変換素子およびその電極の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池製作工程の1つである電極形成の方法としては、蒸着法、メッキ法、印刷法、ノズル法等が挙げられる。現在では、太陽電池の低コスト化と大量生産性の観点から、スクリーン印刷法が多く用いられている。
【0003】
このスクリーン印刷法によれば、np型の太陽電池に対しては、受光面(n面)電極の形成時に、Ag粉末、ガラス粉末および有機樹脂を溶媒と共に混合して作製したAg導電性ペーストを用いて、その受光面に、幅1〜2mm程度のメイン電極とこれに垂直に接する幅50〜200μm程度のサブ電極(グリッド状電極)とからなるパターンでスクリーン印刷を行ない、その後、乾燥、焼成して受光面電極を形成する。従来、サブ電極横断面のアスペクト比(高さ/線幅)は0.1〜0.2程度であり、サブ電極の単位長さ当たりの抵抗値はおおよそ0.15〜0.70Ω/cmである。
【0004】
また、その裏面電極の形成時には、Al粉末、ガラス粉末および有機樹脂を溶媒と共に混合して作製したAl導電性ペーストを用いて、ほぼ裏面全面にスクリーン印刷を行ない、その後、乾燥、焼成して裏面電極を形成している。この裏面電極形成時には、開放電圧(Voc)を向上させかつ短絡電流(Isc)を向上させるための裏面電界層(BSF:Back Surface Field)も同時に形成している。
【0005】
特許文献1に示されるように、半導体基板とこの半導体基板上に形成された電極との接触抵抗を低減し、かつ接着強度を増大させる方法として、半導体基板上に点在状態に形成された第1電極と、第1電極と選択的に導通し、半導体基板とは電気的に絶縁された第2電極を形成する方法が知られている。
【0006】
微細電極形成方法としては例えば特許文献2のように、インジウム等の低融点金属を溶融状態でタンクに保持して、描画ヘッドより半導体基板の表面へ流し込む方法等がある。
【特許文献1】特開昭63−119273号公報
【特許文献2】特開平5−235388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
太陽電池を高効率化するためには、電極形成にあたって以下の2点に留意する必要がある。1点目は、半導体基板の表面に形成された表面パッシベーションを担う絶縁膜の効果を高めることである。半導体基板と受光面電極とが電気的に接触している領域ではこの絶縁膜が無いために表面パッシベーション効果が低下する。接触領域の面積を低減することにより、これらの間の界面におけるキャリア再結合速度を小さくし、Vocを向上させる必要があることである。
【0008】
2点目は、半導体基板上の受光面電極面積を低減することにより、受光面電極表面での反射損失を少なくして発電層にできるだけ多くの光を吸収させること、さらには、接触抵抗値や電極の長さ方向における線抵抗値などの電流導出方向の直列抵抗値を小さくして発生したキャリアを抵抗損失なく、取り出すことが必要とされていることである。
【0009】
このような観点からみた従来の受光面電極の問題点は、受光面電極全面が半導体基板と接触しているために、それらの間の界面におけるキャリア再結合速度が大きくなり、Vocを低下させていることである。また、多くの光を吸収させるために受光面電極線幅を微細化することが有効となるが、同時に電極自体の抵抗値の増大を防ぐために電極のアスペクト比を高くする必要が生じる。しかしながら、現状のスクリーン印刷技術では、受光面電極線幅パターンを微細化すると、印刷時のペースト吐出量が減少してしまうので、形成される電極高さが低くなってしまい、電極自体の抵抗値が増大することで曲線因子(FF:Fill Factor)値の大幅な低下を招くことも問題である。受光面電極を微細化すると、ペーストのダレによる電極線幅の増大の影響が従来の受光面電極よりも大きくなる。さらには、従来の受光面電極はガラス成分が多く含まれた材料を用いていることから電極自体の抵抗値が増し、FF低下の原因になっている。
【0010】
現在の電極形成法を用いての実用可能な電極線幅はおおよそ100μm程度である。
特許文献1によると、半導体基板上に点在状態に形成された第1電極と、第1電極と選択的に導通し、半導体基板とは電気的に絶縁された第2電極を形成する方法により、接触面積を低減しつつ電極の断面積を確保することで抵抗値の低下を抑制して開放電圧の改善を図っている。しかしながら、電極の接着強度が不十分であり、電極剥離の原因となるという問題がある。さらに、この方法によると受光面電極を形成させるためには2回の焼成が必要となってしまい、プロセスコストが増大してしまう。
【0011】
特許文献2によると、溶融状態の金属を描画ヘッドより半導体基板表面に流し込むことにより、100μm以下の電極線幅が形成可能であるが、電極高さが低いという問題がある。また、使用する金属が限られることや、溶融温度を保持するコストがかかってしまうという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、半導体基板と電気的に接続された受光面電極を有する光電変換素子であって、半導体基板と受光面電極とが電気的に接触している領域が半導体基板上の受光面電極形成領域内の外周部にあり、前記受光面電極形成領域内の前記外周部より内部の領域において前記半導体基板と電気的に非接触な領域を有する。
【0013】
また、本発明は、半導体基板と電気的に接続された受光面電極形成領域内の外周部に形成される電極である第1電極と、前記受光面電極形成領域内の前記外周部より内部の領域に形成される電極である第2電極とを有し、第1電極と第2電極とは電気的に接触しており、第2電極は、少なくともガラス成分が第1電極と異なるか、あるいはガラス成分の含有比率が第1電極より少ないことが好ましい。
【0014】
また、本発明は、サブ電極横断面のアスペクト比(高さ/線幅)が0.2以上であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、半導体基板上の受光面電極形成領域内の外周部に第1電極導電性ペーストを描画する工程と、前記受光面電極形成領域内の前記外周部より内部の領域に第2電極導電性ペーストを描画する工程を有する電極形成方法である。
【0016】
また、本発明は、前記第2電極導電性ペーストに占めるガラス粉末の割合が2wt%以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、前記第2電極導電性ペーストの25±1℃における粘度範囲が5〜600Pa・sであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に基づいた太陽電池では、受光面電極形成領域内の外周部に半導体基板との接着場所を設けることで、高い接着強度を維持したまま表面再結合速度や接触抵抗を低減でき、Vocを向上させることができる。また、受光面電極全体のガラス成分の量を必要最小限にすることで、受光面電極自体の抵抗値を低減させることができる。さらに、サブ電極の線幅を微細にする時には、第1電極導電性ペーストが第2電極導電性ペーストの広がりを抑制し、受光面電極の高さを高くすることができるので、実用可能な微細電極が形成可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<光電変換素子の特性>
請求項の順に従い、以下に本発明の工業的見地からの有効性について述べる。
【0020】
半導体基板と受光面電極とが電気的に接触している領域が半導体基板上の受光面電極形成領域内の外周部にあり、前記受光面電極形成領域内の前記外周部より内部の領域において、半導体基板と電気的に非接触な領域を設置させることにより、受光面電極形成領域全面で接触する場合に比べて、受光面電極形成領域の基板表面のパッシベーション膜が被覆する面積が大きくなり、パッシベーション効果を高めてVocを向上させることができる。
【0021】
第1電極と第2電極のガラス成分あるいは含有比率が異なることにより、高い接着強度を確保しつつ、受光面電極自体の抵抗値を低減させることができ、FF値の向上につながる。
【0022】
従来電極に使用される導電性ペーストは、導電性ペーストに占めるガラス粉末の割合が2wt%以下になると、ファイヤースルーが不十分となり、FFが低下する。また、十分な接着強度が得られずに電極剥離が発生してしまう。本発明の受光面電極は、第1電極導電性ペースト中のガラス粉末で焼成工程を経て半導体基板と接着され、また、第2電極導電性ペーストは第1電極導電性ペーストと焼成工程で焼結される。よって、第2電極導電性ペースト中のガラス粉末はファイヤースルーする必要が無く、ガラス粉末の割合を2wt%以下にすることができる。その結果、受光面電極の抵抗値を低減させることができる。また、今までファイヤースルーが不十分、または接着強度不足等の理由で使用できなかったガラス粉末成分、例えばZnO−SiO2−B23やSnO−P25、V25−MgO−TeO−P25等も第2電極導電性ペーストに使用可能になる。
【0023】
受光面電極は、メイン電極と、サブ電極を有するが、該サブ電極のアスペクト比が0.2以上であれば、電極の長さ方向における線抵抗値などの電流導出方向の直列抵抗を小さくでき、FF値が低下してしまうことがない。
【0024】
従来電極に使用される導電性ペーストの粘度は、半導体基板上に描画した後に導電性ペーストがダレない粘度を有している。本発明において、第2電極導電性ペーストを描画する際に、すでに半導体基板表面に描画した第1電極導電性ペーストが障壁となり第2電極導電性ペーストの広がりを防止する。よって、第2電極導電性ペーストは従来電極ペーストよりも低粘度にできる。第2電極導電性ペーストの25±1℃における粘度の範囲を5〜600Pa・sにすることにより描画時の断線の危険性がなく、印刷性も向上させることができる。より望ましくは25±1℃において70〜400Pa・sの範囲であり、このとき、印刷性を向上させたまま第2電極導電性ペーストの高さを高く描画できる。また、25±1℃におけるペーストの粘度を500Pa・sより高くすることで1.0を超えるアスペクト比を得ることができる。導電性ペーストには金属を含み、例えば600℃の高温で焼成する焼成型ペーストや、金属とエポキシ樹脂等を含み、例えば100℃の低温で焼成する熱硬化型ペースト等が使用できる。
<光電変換素子の構造>
本発明の光電変換素子である、太陽電池の構造について図1の断面図を用いて述べる。基板21は、キャスト法シリコンインゴットをマルチワイヤー法でスライスした第1導電層であるp型シリコン基板や、CZ法あるいはFZ法インゴットからスライスしたp型単結晶シリコン基板を用いることができる。受光面側には、n型の第2導電層22が形成される。その表面には反射防止効果のある絶縁膜23が形成される。受光面電極24は、スクリーン印刷法により形成される。受光面電極24は第1電極241と第2電極242から成る。
【0025】
焼成型ペーストを用いて形成する際の、焼成後の電極の単位長さ当たりの抵抗値は例えばサブ電極線幅が150μmの場合、0.10〜0.15Ω/cmである。一方、裏面側には、裏面p層25、裏面電極26が基板裏面の略全面にそれぞれ形成される。なお、裏面p層25は裏面電界効果(BSF)を得るように構成することもできる。さらには、裏面での内部反射を高める、いわゆる裏面反射層として裏面電極26を構成することも可能である。
<光電変換素子の作製工程>
次に、本発明を適用できる典型的な太陽電池作製プロセス全体のフローを図2に示す。最初に、シリコン塊(F−1)としては、FZ法、CZ法、キャスト法などで得られる半導体特性を有する塊を、マルチワイヤー法でスライス切断して第1導電層であるp型シリコン板を準備する(F−2)。次に、凹凸形成を少なくとも光入射側の片面に対して行なう(F−3)。引き続き、第2導電層(n型)の形成(F−4)、絶縁膜形成(F−5)、裏面電極・p層形成(F−6)、受光面電極形成(F−7)を行ない、太陽電池を完成する。以上で述べた太陽電池作製プロセスは、現在、多結晶シリコン太陽電池などで一般的に用いられるプロセスであるが、その順序を変えることや、真空を用いるプロセスを部分的に用いることも可能である。F−7に本発明の電極構造、電極並びに電極形成方法を適用できる。
【0026】
本発明は、上記説明のシリコン基板以外にも、シリコンゲルマニウム基板、ガリウム砒素基板等の化合物半導体基板などの公知材料を使用することもできる。例えば、基本的な構造としては、光入射側からn、p、あるいは光入射側からp、nでも可能である。さらには、光入射側をnでなく高濃度化したnに、あるいは光入射側をpでなく高濃度化したpとすることもできる。これらの第2導電層は従来から用いられる熱拡散法、イオンインプランテーション法などによっても形成できる。また、第2導電層の表面の絶縁膜上には別の反射防止膜を追加形成してもよい。
【0027】
一方、光入射と反対側の裏面には、上述BSF層の他に、裏面反射層(back surface reflector)を形成することや、表面再結合を防止するための酸化膜形成、窒化膜形成を行ってもよい。なお、絶縁膜や反射防止膜や裏面反射膜としては、各種酸化膜などを用いることができる。
<電極形成方法>
本発明による受光面電極の形成方法は、主にスクリーン印刷法であり、その印刷過程を図3に示す。
【0028】
図3(a)は、サブ電極形成領域311とメイン電極形成領域312から成る受光面電極形成領域31内の外周部を示す。
【0029】
図3(b)は、受光面電極形成領域31に沿って、ガラス粉末が質量比2〜5%含まれている第1電極導電性ペースト32を印刷した状態を示す。
【0030】
このとき、サブ電極形成領域の線幅(L2)が例えば150μmであったならば、第1電極導電性ペーストを描画する線幅(L1)は50μm程度である。また、サブ電極形成領域の線幅(L2)が例えば50μmであったならば、第1電極導電性ペーストを描画する線幅(L1)は10μm程度にすることも可能である。これによって形成される第1電極は微細電極となるために、電極の高さは5μm程度であり、第1電極のみでは実用的でない。第1電極導電性ペースト32は、微細電極描画時でも断線しない程度の25±1℃において200〜1000Pa・sの高粘度のペーストを使用するとよい。このとき、形成される電極の高さにはメッシュの跡と思われる数μm程度の凹凸が観察される場合がある。第1電極導電性ペースト32を印刷後、乾燥工程を経てもよい。
【0031】
次に、スクリーン印刷機に備え付けのCCDカメラ等で半導体基板を含む画像を用いて第1電極導電性ペーストの印刷位置を確認して、半導体基板の位置合わせを行なう。
【0032】
図3(c)は、受光面電極形成領域31の全面に第2電極導電性ペースト33を印刷した状態を示す。このとき、従来のスクリーン印刷法、例えば第1電極導電性ペースト32を使用して受光面電極形成領域31全面に印刷する方法で形成された受光面電極では、サブ電極形成領域の線幅(L2)が150μmに対して、導電性ペーストがダレてしまい、実際に形成される受光面サブ電極の線幅は例えば170μmと広がってしまう。しかし、本発明では、第2電極導電性ペースト33を描画時に、既に第1電極導電性ペースト32が半導体基板上に描画されており、この第1電極導電性ペースト32が障壁となり第2電極導電性ペースト33の広がり抑制効果を発揮するので、これらによって形成された受光面電極の線幅増加は見られなかった。
【0033】
さらにこのとき、サブ電極形成領域の線幅(L2)が50μmであったなら、通常のスクリーン印刷法で形成された受光面電極では電極高さが5μm程度であったのに対し、本発明では受光面電極の高さを10μm以上にすることが可能であった。これは第1電極導電性ペースト32の広がり抑制効果により、第2電極導電性ペースト33がダレないで高さを高くできたことや、第2電極導電性ペースト33に対する半導体基板と第1電極導電性ペースト32の濡れ性の違いにより印刷時の版離れ工程での導電性ペースト32の挙動が異なるからと考えられる。第2電極導電性ペースト33には、第1電極導電性ペースト32よりも粘度が低く、レベリング性のよい導電性ペーストを選択すると良い。レベリング性をよくすれば、第1電極導電性ペースト32の平坦性を向上することができ、かつ、第2電極導電性ペースト33の凹凸を抑制できる。
【0034】
第2電極導電性ペースト33を印刷後、低温、例えば100℃程度で導電性ペーストを乾燥させて、ついで高温、例えば700℃前後で焼成することにより受光面電極を形成する。この焼成工程において、受光面電極形成領域内の外周部に形成された第1電極中のガラス粉末が反射防止膜として使用されている絶縁膜をファイヤースルーすることにより半導体基板と第1電極が接触し、発生したキャリアを取り出す役割をする。さらにこのとき、第1電極の金属と第2電極の金属が焼結して第1電極と第2電極が導通する。
【0035】
本発明は、太陽電池の電極において、メイン電極とサブ電極の両方において適用可能である。
【0036】
なお、本発明では主にスクリーン印刷法を用いたが、ノズル法やインクジェット法等でも可能である。さらには、受光面電極のためのペーストは、導電性材料を含む限り、その材料は特に限定されない。例えば、金、白金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、タングステン、鉄、タンタル、チタン、モリブデン等の金属または合金、SnO2、In23、ZnO、ITO等の透明導電材等の単層または積層、さらには、上記金属、合金との併用により形成することができる。これらは、例えば、粉末状態として、ペーストを調製し、これを印刷、焼成することにより形成することができる。ペーストは、例えば、金属、ガラス粉末、有機樹脂、溶媒を混合して調製することができる。
【0037】
裏面電極は一般的に裏面の略全面に形成されるが、グリッド状の裏面電極とすることも可能である。この場合には、裏面のグリッド電極以外の部分にいわゆる裏面反射層を形成することも可能になる。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
実施例では、光電変換素子として太陽電池セルを示す。該太陽電池セルは、大略、図1のような断面構造を呈し、セル作製は図4に示す工程図に基づいて行なった。
【0039】
(a)先ず、スライスされた外形10cm×10cm、厚さ0.35mm、比抵抗約2Ωcmのp型多結晶シリコンの基板21を、5%NaOHアルカリ水溶液に対し7%アルコールを加えた溶液中で80℃で10分間、シリコン表面を深さ20μmまでエッチングを行ない、破砕層の除去と同時に表面凹凸の形成を行なった。
【0040】
(b)次に、POClを含む雰囲気の840℃電気炉中の治具に、上記エッチング後基板を載置して20分間のリン拡散を行なうことでn拡散層である第2導電層22がシリコン表面に形成された。HF水溶液中でPSG(リンガラス)層などを除去後、洗浄、乾燥して、拡散層のシート抵抗は60Ω/sq、接合深さ約0.3μm、表面付近のドーパント濃度1020cm-3程度の受光面側の第2導電層22を得た。
【0041】
(c)次に、この第2導電層22表面にプラズマCVD装置を用いて反射防止膜としても機能するSiN層を絶縁膜23として形成した。厚みは720Åであった。ガス種としてシランおよびアンモニアを用いた。
【0042】
(d)次に裏面のBSF層形成では、Al粉末を含む導電性ペーストを印刷、乾燥した。近赤外線炉中で焼成することによって裏面p層25および裏面電極26を得た。
【0043】
(e)受光面電極は、スクリーン印刷法を用いて、形成した。第1電極241となる第1電極導電性ペーストを描画する線幅(L1)は50μmとした。その後、約100℃で約5分間第1電極伝導性ペーストを乾燥させた。
【0044】
(f)第2電極242は、第2電極導電性ペーストをサブ電極では線幅150μm、メイン電極では線幅2.0mm印刷することで形成した。サブ電極の電極ピッチは2.0cmとした。その後、約100℃で約5分間乾燥させ、約600℃で約1分間焼成した。
【0045】
このとき使用した第1電極導電性ペーストの粘度は25±1℃においておおよそ500Pa・sであり、第2電極導電性ペーストの粘度は25±1℃においておおよそ100Pa・sであった。また、第1、2電極導電性ペーストは共に銀、ガラス粉末、有機樹脂、溶媒を適宜混合して調整した導電性ペーストであり、この導電性ペーストに含まれるガラス粉末は従来導電性ペーストに使用しているものと同一とした。特に第2電極導電性ペーストについては、ガラス粉末の含有比率を第1電極導電性ペーストの1/2とした。このときの受光面電極の抵抗値はおおよそ0.11Ω/cmであり、受光面サブ電極線幅はおおよそ154μmであった。
【0046】
その後、照射強度100mW/cm2の疑似太陽光下(JIS標準光AM1.5G)で、製作した太陽電池セルの電流電圧特性を測定し、その結果を表1、2に示す。
(比較例1)
第1電極導電性ペーストのみを使用して受光面電極形成領域全面に、サブ電極150μm、メイン電極2.0mmの線幅で受光面電極(従来電極)を形成した。このときの受光面電極の抵抗値はおおよそ0.14Ω/cmであった。これは、受光面電極全体に必要以上にガラス成分が含有されているために、電極自体の抵抗値が増加したものと考えられる。受光面電極線幅は第1電極導電性ペーストのダレの影響で、約165μmであった。その他の条件は上記実施例1と同じとし、太陽電池セルの電流電圧特性を測定し、その結果を表1に示す。
(比較例2)
第1電極導電性ペーストを受光面電極形成領域内の外周部にではなく、マトリクス状に描画し、焼成することにより第1電極を形成した。その後、第2電極導電性ペーストを描画してから再び焼成して、受光面電極を形成した(特許文献1参照)。第1電極導電性ペースト、第2電極導電性ペースト共にそれぞれ実施例1と同じ導電性ペーストを使用しており、使用した受光面電極パターンも上記実施例1および比較例1と同じである。半導体基板と電気的に接触する第1電極の面積は実施例1と同じとし、太陽電池セルの電流電圧特性を測定し、その結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1より、受光面電極中のガラス成分が少ない実施例1と比較例2の方が、比較例1の従来電極を用いた太陽電池セルよりも電流密度(Jsc)とFFが良いのがわかる。これは、電極自体の抵抗値を低減させたほか、接触抵抗を低減できたからである。比較例1よりもVocが向上しているのは、半導体基板と受光面電極との接触面積を減らすことにより表面再結合速度が低減したためと思われる。比較例2は半導体基板との接触面積は実施例1と同面積であるが、電極形成領域内の外周部が半導体基板としっかりと接着されていないので、半田ディップ工程で電極が剥離した。実施例1は、メイン電極、サブ電極共に電極形成領域内の外周部が半導体基板と接着されているので、従来電極と同等の接着強度を持っている。
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、受光面電極のサブ電極における第1電極線幅は約15μm、第2電極線幅は50μm、メイン電極では第1電極線幅は50μm、第2電極線幅は2.0mmで受光面電極形成した。このときのサブ電極線幅は約52μmであり、高さはおおよそ17μmであった。また、サブ電極線幅が細くなった分、サブ電極ピッチを狭くすることにより受光面電極面積を実施例1と同じにした。
【0049】
そして、照射強度100mW/cm2の疑似太陽光下(JIS標準光AM1.5G)で、製作した太陽電池セルの電流電圧特性を測定し、その結果を表2に示す。
(比較例3)
上記実施例2と同じ受光面電極パターンで、第1電極導電性ペーストのみを使用して受光面電極を形成した。このときの、サブ電極線幅は約56μm、高さはおおよそ6μmであった。また、実施例2と同様に太陽電池セルの電流電圧特性を測定し、その結果を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
表2より、本発明は実用可能な微細電極を形成でき、電極ピッチを狭めることにより実施例1よりも高いFF値を得ることができた。比較例3では、サブ電極線幅は微細であったが、サブ電極の高さが低かったために、受光面電極自体の抵抗値が高くなってしまいFF値が大幅に低下してしまった。
【0052】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に基づいた太陽電池セルでは、Vocを向上させることができる。また、受光面電極全体のガラス成分の量を必要最小限にすることで、受光面電極自体の抵抗値を低減させることができ、さらに、実用可能な微細電極が形成可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の太陽電池構造の断面図である。
【図2】太陽電池作製プロセス全体のフロー図である。
【図3】本発明の電極形成する印刷過程を示す電極の一部分の平面図である。
【図4】本発明の太陽電池セル作製工程過程を示す太陽電池の断面図である。
【符号の説明】
【0055】
21 基板、22 第2導電層、23 絶縁膜、24 受光面電極、241 第1電極、242 第2電極、25 裏面p層、26 裏面電極、31 受光面電極形成領域、311 サブ電極形成領域、312 メイン電極形成領域、32 第1電極導電性ペースト、33 第2電極導電性ペースト、L1 第1電極導電性ペーストを描画する線幅、L2 サブ電極形成領域の線幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と電気的に接続された受光面電極を有する光電変換素子であって、
半導体基板と受光面電極とが電気的に接触している領域が半導体基板上の受光面電極形成領域内の外周部にあり、前記受光面電極形成領域内の前記外周部より内部の領域において前記半導体基板と電気的に非接触な領域を有することを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
半導体基板と電気的に接続された受光面電極形成領域内の外周部に形成される電極である第1電極と、前記受光面電極形成領域内の前記外周部より内部の領域に形成される電極である第2電極とを有し、前記第1電極と前記第2電極は電気的に接触しており、前記第2電極とは、少なくともガラス成分が前記第1電極と異なるか、あるいはガラス成分の含有比率が前記第1電極より少ないことを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
受光面電極は、メイン電極とサブ電極を含み、前記サブ電極横断面のアスペクト比(高さ/線幅)が0.2以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
請求項2に記載の光電変換素子の電極形成方法であって、
半導体基板上の受光面電極形成領域内の外周部に第1電極導電性ペーストを描画する工程と、前記受光面電極形成領域内の前記外周部より内部の領域に第2電極導電性ペーストを描画する工程を有することを特徴とする電極形成方法。
【請求項5】
前記第2電極導電性ペーストに占めるガラス粉末の割合が2wt%以下であることを特徴とする請求項4に記載の電極形成方法。
【請求項6】
前記第2電極導電性ペーストの25±1℃における粘度範囲が5〜600Pa・sであることを特徴とする請求項4または5に記載の電極形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−134387(P2007−134387A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323486(P2005−323486)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】