説明

光電変換装置の製造法及び製造装置

【課題】高い光電変換効率の太陽電池、光センサーや撮像素子等の光電変換装置を提供すること。
【解決手段】高周波成分をカットした直流電力印加の下でのCu(Cu-Ga)ターゲットへのDC印加と導電性基板への高周波印加とによりCu(Cu-Ga)膜を成膜し、該Cu(Cu-Ga)膜上に、高周波成分をカットした直流電力印加の下でのInターゲットへのDC印加と導電性基板への高周波印加とによりIn膜をCu(Cu-Ga)膜上に積層成膜する工程を有する光電変換装置の製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルコパイライト半導体を用いた太陽電池、光センサーや撮像素子等の光電変換装置の製造法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、特許文献2及び特許文献3には、カルコパイライト半導体を用いた太陽電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4798660号公報
【特許文献2】特開平10−135495号公報
【特許文献3】特開平10−144946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
米国特許4798660号公報の記載によれば、インライン式配列のDCスパッタリング装置を用いて、Cu膜とIn膜との積層膜を作成する工程が用いられている。この工程中で、CuとInとの相互拡散によるCu−In合金層が形成され、この結果、改善されたCu−In合金構造へのセレン化ステップにより、変換効率が従来の2−3%から7%へと大幅に改善された、としている。
特に、量産効率を高めるインライン式配列、又はマルチチャンバ式配列のスパッタ装置において、カルコパイライト半導体膜用DC(直流)マグネトロンスパッタ装置とZnO等の透明導電膜用RF(ラジオ周波数)マグネトロンスパッタ装置が使用されている。
【0005】
本発明者の知見によれば、DCマグネトロンスパッタの際、時間的に、並列な関係において、使用されているRFマグネトロンスパッタ装置のRF電源から、RF波がDCマグネトロンスパッタ装置のDC電源に付加され、RF波が成膜中のCu−In合金構造に悪影響を与えていた、ことが判明した。この悪影響が原因となって、カルコパイライト半導体を用いた太陽電池は、十分に高い、例えば、15%以上の変換効率、特に、高いモジュール変換効率、例えば、10%以上のものが提供されていなかった。
更に、本発明者の知見によれば、上記背景技術で製造したカルコパイライト半導体膜は、SeやS原子等のVI族原子が十分なドープ量で半導体膜中に含有させることが困難で、十分に高い変換効率を達成で来ていない、ことが判明した。
【0006】
本発明の技術課題は、上記背景技術のカルコパイライト半導体を用いた太陽電池の変換効率、特にモジュール変換効率を十分に高い値に到達させることに有る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第一に、導電性基板、カルコパイライト半導体膜及び透明導電膜を有する光電変換装置の製造法において、前記カルコパイライト半導体膜の成膜工程は、
マグネトロンスパッタ用カソードを備え、且つ、真空排気の第一チャンバ内に、導電性基板をアノード側及びCuを含有した第一ターゲットをカソード側に位置させ、該導電性基板が高周波を受信するように、高周波電力を該第一チャンバ内に導入すること及び該第一チャンバ内でロウパスフィルターを用いて高周波成分をカットまたは抑制したDC電力を該第一ターゲットに印加することによって導電性基板上にCu膜を成膜する第一工程、
マグネトロンスパッタ用カソードを備え、且つ、真空排気の第二チャンバ内に、前記第一工程後の導電性基板をアノード側及びInを含有した第二ターゲットをカソード側に位置させ、該導電性基板が高周波を受信するように、高周波電力を該第二チャンバ内に導入すること及び該第二チャンバ内でロウパスフィルターを用いて高周波成分をカット又は抑制したDC電力を該第二ターゲットに印加することによってCu膜を設けた導電性基板上にIn膜を積層成膜する第二工程、並びに、
前記第二工程後のCu膜及びIn膜を有する積層膜にVI族原子をドープすることによってカルコパイライト半導体膜を得る第三工程
を有する光電変換装置の製造法である。
【0008】
本発明は、第二に、マグネトロンスパッタ用カソードを備え、且つ、真空排気の第一チャンバ内に、導電性基板をアノード側及びCuを含有した第一ターゲットをカソード側に位置させ、該導電性基板が高周波を受信するように、高周波電力を該第一チャンバ内に導入すること及び該第一チャンバ内でロウパスフィルターを用いて高周波成分をカット又は抑制したDC電力を該第一ターゲットに印加することによって導電性基板上にCu膜を成膜する第一工程、
マグネトロンスパッタ用カソードを備え、且つ、真空排気の第二チャンバ内に、前記第一工程後の導電性基板をアノード側及びInを含有した第二ターゲットをカソード側に位置させ、該導電性基板が高周波を受信するように、高周波電力を該第二チャンバ内に導入すること及び該第二チャンバ内でロウパスフィルターを用いて高周波成分をカット又は抑制したDC電力を該第二ターゲットに印加することによってCu膜を設けた導電性基板上にIn膜を積層成膜する第二工程、並びに、
前記第二工程後のCu膜及びIn膜を有する積層膜にVI族原子をドープすることによってカルコパイライト半導体膜を得る第三工程
を有するカルコパイライト半導体膜の成膜工程を実行する制御プログラムを記憶した記憶媒体を備えた光電変換装置の製造装置である。
【0009】
本発明の態様において、前記第三工程終了後、更に、前記透明導電膜を成膜する第四工程を有し、該第四工程は、マグネトロンスパッタ用カソードを備え、且つ、真空排気の第三チャンバ内に、透明導電膜形成のための透明導電材からなる第三ターゲットをカソード側及び前記積層膜を設けた導電性基板をアノード側に位置させ、該第三ターゲット及び該導電性基板が高周波を受信する様に、高周波を該第三チャンバ内に導入することによって該積層膜上に透明導電膜を成膜する工程を有する。
【0010】
本発明の別の態様において、前記第四工程中の第三ターゲットが受信する高周波と導電性基板が受信する高周波とは、互いに相違した周波数に設定される。
【0011】
本発明の別の態様において、前記第四工程中の第三ターゲットが受信する高周波の周波数は、第四工程中の導電性基板が受信する高周波より高い周波数に設定し、該第三ターゲットが受信する高周波電力は、該導電性基板が受信する高周波電力の導入に先立って導入される。
【0012】
本発明の別の態様において、前記第一ターゲットは、更に、Gaを含有したCu−Ga合金からなるターゲットである。
【0013】
本発明の別の態様において、前記ロウパスフィルターは、ラジオ周波数〜3GHzの範囲の周波数成分をカットする様に設定されている。
【0014】
本発明の別の態様において、前記透明導電材は、ZnOを含有した物質である。
【0015】
本発明の別の態様において、前記VI族原子は、Se及びSからなる群から選択された少なくとも一種である。
【0016】
本発明の別の態様において、前記ロウパスフィルターは、オペアンプ回路を有する回路で構成されている。
【0017】
本発明の別の態様において、前記制御プログラムは、第三工程で、前記カルコパイライト半導体膜を得た後、更に、該カルコパイライト半導体膜を所定温度まで加熱し、該加熱後、所定温度まで降温させるプログラムを有する。
【0018】
本発明の別の態様において、前記制御プログラムは、第二工程で前記積層膜を得た後、更に、前記第三工程に先立って、該積層膜を所定温度まで加熱し、該加熱後、所定温度まで降温させる制御プログラムを有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、カルコパイライト半導体を用いた太陽電池、光センサーや撮像素子等の光電変換装置は、十分に高い光電変換率を達成し、特に、太陽電池は、十分に高い変換効率を達成した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明の製造法又はその製造装置を用いて製造した太陽電池1の断面図である。図1において、10は、導電性基板である。導電性基板10は、その表面は導電性物質で覆われている。導電積基板10の具体例では、ガラス(例えば、青板ガラス、低Na含有ガラス等)、絶縁性プラスチックフィルム(PETフィルム、ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等)や絶縁性セラミックスなどの基板11の上にMo、Hf、Ra、W、LaB6などの低仕事関数金属(これらの合金であっても良い)又はグラファイトなどのカーボン材等からなる導電膜12が設けられ、裏面電極として使用される。導電膜12の膜厚は、0.2〜2.0μmに設定される。
導電膜12と基板11との間に、両者の接着性を高めるために、CrやAg等の下地金属膜(図示せず)を設けることができる。この下地金属膜は、10nm〜50nmの膜厚に設定する。
【0022】
また、本発明で用いる導電性基板10は、基板11がMo、Hf、Ra、W、LaB6などの低仕事関数金属(これらの合金であっても良い)又はグラファイトなどのカーボン材等からなる導電性物質であってもよい。この際、導電膜12の使用を省略することができる。
【0023】
図2は、カルコパイライト半導体膜13の拡大断面図である。21は、VI族原子(Se、S、Te等)がドープされたCu膜、又はCu−Ga合金膜である。23は、VI族原子(Se、S、Te等)がドープされたIn膜である。22は、VI族原子(Se、S、Te等)がドープされたCu又はCu−Ga合金とVI族原子(Se、S、Te等)がドープされたInとの相互拡散したCu−In拡散層、又はCu−Ga−In拡散層で、VI族原子(Se、S、Te等)がドープされている。
【0024】
拡散層22(この時点では、VI族原子ドープ前の前駆体に対応する)は、DCマグネトロンスパッタで成膜して得たCu膜、又はCu−Ga合金膜の上にIn膜をDCマグネトロンスパッタで成膜した際に、両者の金属の相互拡散によって生成される。前駆体状態で存在する拡散層22の拡散構造(この拡散構造の結晶構造等の詳細解析は、未解明である)がその後ドープされるVI族原子を確実に捕獲することができるものと、推察されている。この理由の一つには、In膜をRFスパッタによってCu膜の上に成膜した際には、明確な拡散層前駆体が得られなかった、ことが挙げられる。
【0025】
カルコパイライト半導体膜13の膜厚は、0.1〜5.0μm、好ましくは、0.2〜2μmに設定される。
【0026】
図3は、本発明の装置の模式断面図である。図3において、3は、チャンバである。チャンバ3は、耐真空構造を有し、ステンレス、アルミニウムやチタン等の金属や合金、又はガラス製品で作成され、チャンバ開口部は、Oリング等の真空シーリング材(図示せず)や溶接等を介して、支持台312によって封止されると共に、支持される。
チャンバ3内には、マグネトロンスパッタのためのマグネット301、カソード電極303及びアノードとなる基板ホールダ312が設置されている。カソード電極303は、高周波電源308及びDC電源309から電力の供給を受けることができる。この際、DC電源309による電力供給により、十分なプラズマ密度で、プラズマを発生させる場合には、高周波電源308からの電力供給は、省略しても良い。
【0027】
高周波電源308とカソード電極303との間には、ロウパスフィルター302及び307が設置されている。この際のロウパスフィルター307は、省略しても良いが、電源配線が長い距離に設置されている場合には、ロウパスフィルター307を設置するのが好ましい。
ロウパスフィルター302は、チャンバ3の内部に設置される。特に、カソード電極303裏面の上(カソード電極303を間に、ターゲット304に対し、対向する位置に設置)に設置するのが好ましい。チャンバ3は、高周波電波に対するシールド効果を得ることができる様に、設計される。
【0028】
本発明では、チャンバ3内に位置する高周波電源308からの配線材を例えば、アルミ箔、鉄箔、銅メッキ布、銀分散ナイロン繊維布等の高周波シールド材(図示せず)によって覆うことができる。
【0029】
本発明で用いるロウパスフィルター302及び307は、図4に図示したオペアンプ正帰還型ロウパスフィルターが高い光電変換効率を達成する上で、CR回路型ロウパスフィルターと比較し、好ましく選択される。図4において、抵抗R1及びR2、並びに容量C1及びC2は、適宜設定される。
本発明で用いるロウパスフィルター302及び307は、高周波電源308の高周波電力から低周波(5000KHz以下の範囲、好ましくは、10KHz〜3000KHzの範囲)の低周波数成分をカットすることができる。
【0030】
直流電源309の投入電力は、100ワット〜3000ワット、好ましくは200ワット〜2000ワットである。
又、本発明で用いる直流電力は、パルスDC電力であっても良い。この時のパルスの周波数は、1000Hz以下、好ましくは、10Hz〜200Hzの範囲に設定することができる。
高周波電力としては、1MHz〜3GHzの範囲、好ましくは、5MHz〜2GHzの範囲の周波数及び100W(ワット)〜3000W(ワット)の範囲、好ましくは、200W(ワット)〜2000W(ワット)の範囲の電力を用いることができる。
【0031】
本発明装置は、ガス導入管305からのスパッタガスとしてAr(アルゴンガス)、Kr(クリプトンガス)、Xe(キセノンガス)を用い、好適な範囲0.01〜0.4Paの圧力範囲のうち、10−2Pa〜10Pa好ましくは0.2Paの圧力を用いてマグネトロンスパッタリングを実施することができる。スパッタガスは、スパッタガスボンベ306に貯蔵される。
【0032】
本発明装置は、導電性基板310を誘電体層311を介して基板ホールダ312に載置される。基板ホールダ312は、周知の静電チャック機構及び加熱・冷却機構を備えている。
【0033】
本発明装置は、少なくとも、DC電源309及び高周波電源313からチャンバ3内に電力を投入すると共に、スパッタガス導入管305からチャンバ3内にスパッタガスを導入することで、ガスプラズマ315領域を発生させることができる。
【0034】
本発明は、図3に図示する装置をインライン形式又はクラスタ形式で配列させることによって、図1に図示した太陽電池のための導電層12、カルコパイライト半導体層13及び透明導電膜14を連続して成膜することができる。
【0035】
図5は、本発明装置のインライン形式製造装置のブロック図である。501は、ガラス等の基板を搬入するためのロードロックチャンバ(RR)である。508は、ロードロックチャンバ501に基板を搬入する際、ロードロックチャンバ501の真空気密状態を維持するため、閉じた状態を作り出し、次いで、ロードロックチャンバ501内の基板を次室である成膜スパッタチャンバ502への搬送する際、開いた状態で基板を成膜スパッタチャンバ502へと搬送できるように設計されている。
【0036】
成膜スパッタチャンバ502は、図3に図示した装置を用いることができる。成膜スパッタチャンバ502は、ガラス等の基板の表面を導電物質で被覆するために用いられ、図1の導電性基板10の導電膜12を作成する。導電膜12の成膜期間中、ゲート508と509とは、閉じられている。
成膜スパッタチャンバ503は、図3に図示した装置を用いることができる。成膜スパッタチャンバ503は、導電性基板の導電膜表面をCu又はCu−Gaで被覆するために用いられる。Cu又はCu−Gaの成膜期間中、ゲート509と510とは、閉じられている。
成膜スパッタチャンバ504は、図3に図示した装置を用いることができる。成膜スパッタチャンバ504は、Cu膜又はCu−Ga膜の表面をInで被覆するために用いられる。成膜スパッタチャンバ504の動作により成膜したCu(又はCu−Ga)膜とIn膜との積層膜は、図1又は図2のカルコパイライト半導体膜13の前駆体となる。又、このIn成膜期間中、ゲート510と511とは、閉じられている。
【0037】
ドーピングチャンバ505は、成膜スパッタチャンバ504から搬入されたCu(又はCu−Ga)膜とIn膜との積層膜の膜中にVI族原子をドープするために用いられる。ドーピングは、VI族原子ガス(例えば、セレンガス、硫黄ガスなど)を加熱化において、実施される。この結果、カルコパイライト半導体膜13として、CuInSe2
、CuInGaSe2 等のセレン系多元化合物半導体薄膜、CuInS2 、CuInGaS2 、CuGaS2等の硫化物系多元化合物半導体薄膜やCuInS2Se2 、CuInGaS2Se2 、CuGaS2Se2 等のセレン・硫黄系多元化合物半導体薄膜を得ることができる。このドーピング期間中、ゲート511と512とは、閉じられている。
【0038】
成膜スパッタチャンバ506は、図1又は図2に図示するカルコパイライト半導体膜13の表面を透明導電膜で覆うために動作する。この透明導電膜の成膜期間中、ゲート512と513とは、閉じられている。
【0039】
アンロードロックチャンバ(AR)507は、成膜スパッタチャンバ506での透明導電膜の被覆工程終了後、ゲート513を開き、ゲート514を遮蔽した状態において、真空を維持したまま、この透明導電膜付の導電性基板を搬入し、該基板搬入後、ゲート513を閉じた後、ゲート514を開放し、チャンバ507内の圧力を大気に戻す。
ロードロック室501、成膜スパッタチャンバ502、成膜スパッタチャンバ503、成膜スパッタチャンバ504、ドーピング室505、成膜スパッタチャンバ506及びアンロードロック507は、真空ポンプ(図示せず)に接続されている。
成膜スパッタチャンバ502、成膜スパッタチャンバ503、成膜スパッタチャンバ504、ドーピング室505及び成膜スパッタチャンバ506は、成膜のための材料ガスを導入するガス導入管(図示せず)が接続されている。
図5に図示した装置は、基板搬送駆動機構(図示せず)を備えている。基板搬送駆動機構は、基板を連続させて移動搬送させることができ、又基板の移動と停止を間断に繰り返し、移動搬送させることができる。
【0040】
中央制御装置(CPU)517は、成膜スパッタチャンバ502、503、504及び506での成膜工程、並びに、ドーピングチャンバ505でのドーピング工程の全工程期間中において、導電性基板が各チャンバ(502〜506)毎で滞在し、前記成膜工程及びドーピング工程が実行するように、基板搬送機構及びゲート508〜515の開閉動作を制御するプログラムを実行することができる。同時に、中央制御装置(CPU)517は、導入ガスの流量を制御するマスフロー制御器(図示せず)の動作を制御する。
中央制御装置(CPU)517は、各チャンバ(501〜507)及びゲート508〜515との間をバスライン516を通して通信することができる。
【0041】
図6は、中央制御装置517がマグネトロンスパッタ用カソードを備え、且つ、真空排気の第一チャンバ内に、導電性基板をアノード側及びCuを含有した第一ターゲットをカソード側に位置させ、該導電性基板が高周波を受信するように、高周波電力を該第一チャンバ内に導入すること及び該第一チャンバ内でロウパスフィルターを用いて高周波成分をカット又は抑制したDC電力を該第一ターゲットに印加することによって導電性基板上にCu膜を成膜する第一工程、マグネトロンスパッタ用カソードを備え、且つ、真空排気の第二チャンバ内に、前記第一工程後の導電性基板をアノード側及びInを含有した第二ターゲットをカソード側に位置させ、該導電性基板が高周波を受信するように、高周波電力を該第二チャンバ内に導入すること及び該第二チャンバ内でロウパスフィルターを用いて高周波成分をカット又は抑制したDC電力を該第二ターゲットに印加することによってCu膜を設けた導電性基板上にIn膜を積層成膜する第二工程、並びに、前記第二工程後のCu膜及びIn膜を有する積層膜にVI族原子をドープすることによってカルコパイライト半導体膜を得る第三工程を有するカルコパイライト半導体膜の成膜工程を実行する制御プログラムのフローチャート図である。
【0042】
ステップ1は、ゲート515を開放し、ロードロックチャンバ501の内部に、基板を搬入させるステップである。
ステップ2は、中央制御装置(CPU)517の制御により、基板搬入後、ゲート515を遮蔽し、ロードロックチャンバ501の内部を真空に排気するステップである。
ステップ3は、中央制御装置(CPU)517が閉状態のゲート508を開放状態のゲート508に動作させ、真空状態を維持したまま、基板を成膜スパッタチャンバ502に搬入させる様に、ゲート508の動作を制御するステップである。
ステップ4は、成膜スパッタチャンバ502内で、プラズマを発生させ、マグネトロンスパッタリングによって、基板の表面に導電膜が成膜するように、中央制御装置(CPU)517がマグネトロンスパッタ用カソード起動及び動作、導電物質のターゲットの装着、アノード起動及び動作、高周波電源起動及び動作、DC電源起動及び動作やスパッタガス(アルゴンガス等)導入機構等の起動及びガス流量を制御するステップである。
ステップ5は、中央制御装置(CPU)517の制御により、ゲート509を閉状態から開放状態に動作させ、基板を成膜スパッタチャンバ503に搬入させるステップである。
ステップ6は、成膜スパッタチャンバ503内で、プラズマを発生させ、マグネトロンスパッタリングによって、導電膜を有する基板の表面にCu膜(又はCu−Ga合金膜)が成膜するように、中央制御装置(CPU)517がマグネトロンスパッタ用カソードの起動及び動作、Cuターゲット(又はCu−Ga合金ターゲット)の装着、アノード起動及び動作、高周波電源起動及び動作、DC電源起動及び動作やスパッタガス(アルゴンガス等)導入機構等の起動及びガス流量を制御するステップである。
ステップ7は、中央制御装置(CPU)517が閉状態のゲート510を開放状態のゲート510に動作させ、真空状態を維持したまま、基板を成膜スパッタチャンバ504に搬入させる様に、ゲート510の動作を制御するステップである。
ステップ8は、成膜スパッタチャンバ504内で、プラズマを発生させ、マグネトロンスパッタリングによって、Cu膜(又はCu−Ga合金膜)を有する基板の表面にIn膜が成膜するように、中央制御装置(CPU)517がマグネトロンスパッタ用カソード起動及び動作、Inターゲットの装着、アノード起動及び動作、高周波電源起動及び動作、DC電源起動及び動作やスパッタガス(アルゴンガス等)導入機構等の起動及びガス流量を制御するステップである。
ステップ9は、中央制御装置(CPU)517が閉状態のゲート511を開放状態のゲート511に動作させ、真空状態を維持したまま、基板を成膜スパッタチャンバ505に搬入させる様に、ゲート511の動作を制御するステップである。
ステップ10は、カルコパイライト半導体膜を製造するステップである。ドーピングチャンバ505内で、Seガス雰囲気下において、Cu膜(Cu−Ga合金膜)とIn膜との積層膜からなる前駆体の積層膜中にSeがドーピングされるように、中央制御装置(CPU)517が基板ホールダに装着しているヒーターの温度やSeガス導入機構等の起動及びガス流量を制御するステップである。
ステップ11は、中央制御装置(CPU)517が閉状態のゲート512を開放状態のゲート512に動作させ、真空状態を維持したまま、基板を成膜スパッタチャンバ506に搬入させる様に、ゲート512の動作を制御するステップである。
ステップ12は、成膜スパッタチャンバ506内で、プラズマを発生させ、マグネトロンスパッタリングによって、カルコパイライト半導体膜を有する基板の表面に透明導電膜(ITO膜、ZnO膜、In膜等)が成膜するように、中央制御装置(CPU)517がマグネトロンスパッタ用カソード起動及び動作、透明導電膜用物質からなるターゲットの装着、アノード起動及び動作、高周波電源起動及び動作、DC電源起動及び動作やスパッタガス(アルゴンガス等)導入機構等の起動及びガス流量を制御するステップである。
ステップ13は、中央制御装置(CPU)517の制御により、ゲート513を閉状態から開放状態に動作させ、カルコパイライト半導体膜を設けている基板をアンロードロックチャンバに搬入させるステップである。
ステップ14は、中央制御装置(CPU)517の制御により、ゲート514を閉状態から開放状態に動作させ、アンロードロックチャンバの内部を大気状態に回復させるためのステップである。
【0043】
又、本発明装置は、クラスタ形式製造装置であってもよい。クラスタ形式製造装置では、ロボット搬送装置を備える搬送チャンバが中央位置に設置し、この搬送チャンバには、ロードロックとアンロードロックチャンバが設けられ、それぞれにより基板の搬入及び搬出が行われる。これらのロードロックとアンロードロックチャンバを交互に、基板の搬入搬出を実施することによって、タクトタイムを短縮させ、生産性よく太陽電池等の光電変換装置を作製できる構成となっている。
【0044】
このクラスタ形式製造装置では、上記搬送チャンバの周囲に、例えば、導電膜12を成膜するためのマグネトロンスパッタリングチャンバと、Cu(Cu−Ga合金)膜成膜(図2のSeドープ前状態の21の膜)のためのマグネトロンスパッタリングチャンバ、In膜成膜(図2のSeドープ前状態の23の膜)のためのマグネトロンスパッタリングチャンバ、前駆体膜にSeをドーピングするためのドーピングチャンバ及び透明導電膜14をカルコパイライト半導体膜の上に成膜するためのマグネトロンスパッタリングチャンバが配置される。各チャンバには、真
空排気機構、ガス導入機構、電力供給機構などが付設されている。
【0045】
本発明装置の中央制御装置(CPU)517は、記憶媒体ハードディスク媒体、光磁気ディスク媒体、フレキシブルディスク媒体、フラッシュメモリやMRAM等の不揮発性メモリ記憶媒体に記憶した制御プログラムによって、図6に図示したフローチャートを実行させることも可能である。
【0046】
図7は、本発明の別の装置である。図中の図5と同一符号は、同一部材である。図7に図示する装置は、図5に図示した装置に、更に、加熱冷却チャンバ71を追加した装置である。加熱冷却チャンバ71は、成膜スパッタチャンバ504での成膜ステップに続いて、該ステップで得た前駆体積層膜を所定の温度(100℃〜500℃、好ましくは250℃〜350℃)まで加熱し、10分〜60分の高温状態を維持させた後、毎分1℃〜10℃の速度で降温させる。この工程を用いることによって、前記積層膜からなる前駆体の結晶配向性が改善され、光電変換効率が改善された。
【0047】
更に、図7に図示する装置は、加熱冷却チャンバ72をドーピングチャンバ505の後続の位置に位置させることができる。加熱冷却チャンバ72は、図2に図示したカルコパイライト半導体膜13を所定の温度(100℃〜500℃、好ましくは250℃〜350℃)まで加熱し、10分〜60分の高温状態を維持させた後、毎分1℃〜10℃の速度で降温させる。この工程は、Se原子の配向秩序度が改善され、結果的に、大幅に、光電変換効率が改善された。
【0048】
中央制御装置517は、バスライン516を通して、加熱冷却チャンバ71及び72に装着されている各種機器(例えば、ヒータ、冷却装置や基板搬送機構)を制御すると共に、ゲート73及び74の動作を制御することができる。
【0049】
又、加熱冷却チャンバ71及び72は、該チャンバ内での加熱工程が真空状態(10Pa以下、好ましくは10−5Pa〜1Pa)、好ましくは、超高真空状態(10−3Pa〜10−1Pa)で実施できるように、構成されていることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、光電変換効率の改善を図り、更に、量産可能で実用性の高い太陽電池等の光電変換装置の製造装置又はその製造法として利用される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の製造法又はその装置を用いて製造した太陽電池の断面図である。
【図2】図1のカルコパイライト半導体膜の詳細断面図である。
【図3】本発明装置の模式断面図図である。
【図4】本発明で用いたロウパスフィルターの回路図である。
【図5】本発明装置のブロック図である。
【図6】本発明で用いた制御プログラムを示すフローチャート図である。
【図7】本発明の別の装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
1 太陽電池
10 導電性基板
11 基板
12 導電膜
13 カルコパイライト半導体膜
14 透明導電膜
15 集電電極
16 下部電極
21 VI族原子ドープCu膜(又はCu−Ga合金膜)
22 拡散層
23 VI族原子ドープIn膜
3 チャンバ
301 マグネット
302 ロウパスフィルター
303 カソード電極
304 ターゲット
305 スパッタガス導入管
306 スパッタガスボンベ
307 ロウパスフィルター
308 高周波電源
309 DC電源
310 導電性基板
311 誘電体層
312 基板ホールダ
313 高周波電源
314 真空排気ポンプ
315 ガスプラズマ
R1 R2 抵抗
C1 C2 容量
501 ロードロックチャンバ
502 成膜スパッタチャンバ
503 成膜スパッタチャンバ
504 成膜スパッタチャンバ
505 ドーピングチャンバ
506 成膜スパッタチャンバ
507 アンロードロックチャンバ
508乃至515 ゲート
516 バスライン
517 中央制御装置(CPU)
71 加熱及び冷却チャンバ
72 加熱及び冷却チャンバ
73 ゲート
74 ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基板、カルコパイライト半導体膜及び透明導電膜を有する光電変換装置の製造法において、
前記カルコパイライト半導体膜の成膜工程は、
マグネトロンスパッタ用カソードを備え、且つ、真空排気の第一チャンバ内に、導電性基板をアノード側及びCuを含有した第一ターゲットをカソード側に位置させ、該導電性基板が高周波を受信するように、高周波電力を該第一チャンバ内に導入すること及び該第一チャンバ内でロウパスフィルターを用いて高周波成分をカットまたは抑制したDC電力を該第一ターゲットに印加することによって導電性基板上にCu膜を成膜する第一工程、
マグネトロンスパッタ用カソードを備え、且つ、真空排気の第二チャンバ内に、前記第一工程後の導電性基板をアノード側及びInを含有した第二ターゲットをカソード側に位置させ、該導電性基板が高周波を受信するように、高周波電力を該第二チャンバ内に導入すること及び該第二チャンバ内でロウパスフィルターを用いて高周波成分をカット又は抑制したDC電力を該第二ターゲットに印加することによってCu膜を設けた導電性基板上にIn膜を積層成膜する第二工程、並びに、
前記第二工程後のCu膜及びIn膜を有する積層膜にVI族原子をドープすることによってカルコパイライト半導体膜を得る第三工程
を有することを特徴とする光電変換装置の製造法。
【請求項2】
前記第三工程終了後に、更に、前記透明導電膜を成膜する第四工程を有し、該第四工程は、マグネトロンスパッタ用カソードを備え、且つ、真空排気の第三チャンバ内に、透明導電膜形成のための透明導電材からなる第三ターゲットをカソード側及び前記積層膜を設けた導電性基板をアノード側に位置させ、該第三ターゲット及び該導電性基板が高周波を受信する様に、高周波を該第三チャンバ内に導入することによって該積層膜上に透明導電膜を成膜する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置の製造法。
【請求項3】
前記第四工程中の第三ターゲットが受信する高周波と導電性基板が受信する高周波とは、互いに相違した周波数に設定されることを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置の製造法。
【請求項4】
前記第四工程中の第三ターゲットが受信する高周波の周波数は、第四工程中の導電性基板が受信する高周波より高い周波数に設定し、該第三ターゲットが受信する高周波は、該導電性基板が受信する高周波の導入に先立って導入されることを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置の製造法。
【請求項5】
前記第一ターゲットは、更に、Gaを含有したCu−Ga合金からなるターゲットであることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置の製造法。
【請求項6】
前記ロウパスフィルターは、ラジオ周波数〜3GHzの範囲の周波数成分をカットする様に設定されている請求項1に記載の光電変換装置の製造法。
【請求項7】
前記透明導電材は、ZnOを含有した物質であることを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置の製造法。
【請求項8】
前記VI族原子は、Se及びSからなる群から選択された少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置の製造法。
【請求項9】
前記ロウパスフィルターは、オペアンプ回路を有する回路で構成したことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置の製造法。
【請求項10】
前記第三工程は、前記カルコパイライト半導体膜を得た後、更に、該カルコパイライト半導体膜を所定温度まで加熱し、該加熱後、所定温度まで降温させる工程を有することを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置の製造法。
【請求項11】
前記第二工程は、該第二工程で前記積層膜を得た後、更に、前記第三工程に先立って、該積層膜を所定温度まで加熱し、該加熱後、所定温度まで降温させる工程を有することを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置の製造法。
【請求項12】
マグネトロンスパッタ用カソードを備え、且つ、真空排気の第一チャンバ内に、導電性基板をアノード側及びCuを含有した第一ターゲットをカソード側に位置させ、該導電性基板が高周波を受信するように、高周波電力を該第一チャンバ内に導入すること及び該第一チャンバ内でロウパスフィルターを用いて高周波成分をカット又は抑制したDC電力を該第一ターゲットに印加することによって導電性基板上にCu膜を成膜する第一工程、
マグネトロンスパッタ用カソードを備え、且つ、真空排気の第二チャンバ内に、前記第一工程後の導電性基板をアノード側及びInを含有した第二ターゲットをカソード側に位置させ、該導電性基板が高周波を受信するように、高周波電力を該第二チャンバ内に導入すること及び該第二チャンバ内でロウパスフィルターを用いて高周波成分をカット又は抑制したDC電力を該第二ターゲットに印加することによってCu膜を設けた導電性基板上にIn膜を積層成膜する第二工程、並びに、
前記第二工程後のCu膜及びIn膜を有する積層膜にVI族原子をドープすることによってカルコパイライト半導体膜を得る第三工程
を有するカルコパイライト半導体膜の成膜工程を実行する制御プログラムを記憶した記憶媒体を備えたことを特徴とする光電変換装置の製造装置。
【請求項13】
更に、前記第三工程終了後、マグネトロンスパッタ用カソードを備え、且つ、真空排気の第三チャンバ内に、透明導電膜形成のための透明導電材からなる第三ターゲットをカソード側及び前記積層膜を設けた導電性基板をアノード側に位置させ、該第三ターゲット及び該導電性基板が高周波を受信する様に、高周波を該第三チャンバ内に導入することによって該積層膜上に透明導電膜を成膜する工程を実行する制御プログラムを記憶した記憶媒体を備えたことを特徴とする請求項12に記載の光電変換装置の製造装置。
【請求項14】
前記ロウパスフィルターは、オペアンプ回路を有する回路で構成したことを特徴とする請求項12に記載の光電変換装置の製造装置。
【請求項15】
前記制御プログラムは、第三工程で、前記カルコパイライト半導体膜を得た後、更に、該カルコパイライト半導体膜を所定温度まで加熱し、該加熱後、所定温度まで降温させるプログラムを有することを特徴とする請求項12に記載の光電変換装置の製造装置。
【請求項16】
前記制御プログラムは、第二工程で前記積層膜を得た後、更に、前記第三工程に先立って、該積層膜を所定温度まで加熱し、該加熱後、所定温度まで降温させる制御プログラムを有することを特徴とする請求項12に記載の光電変換装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−103331(P2011−103331A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257076(P2009−257076)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】