説明

光電式生体測定装置

【課題】測定の際ユーザに光源からの熱を感じさせないだけでなく、測定の際のユーザの拘束を緩和して測定対象であるユーザの生体の状態を測定することができる光電式生体測定装置を提供する。
【解決手段】測定対象の生体の状態を測定する光電式測定装置であって、光を発する光源と、光源が発した光を通して散乱させ、散乱させた光を前記生体に照射する導光体と、生体内を反射した光を受光し、受光した光の強度信号を電気信号に変換して出力する2以上の検出部と、2以上の検出部から出力された電気信号を演算することにより、前記生体の状態を測定する演算部とを備え、導光体は、前記散乱させた光を前記導光体と接している前記生体に照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電式生体測定装置に関し、特に測定対象の生体の状態を測定する光電式生体測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療用途だけでなく、ヘルスケア用途で車やホームのリビング等において人の生体信号を測定し、その測定結果により人の状態を推定する技術について、様々な研究が行われている。その成果として、一部の研究者により人の状態と生体信号の間で相関性が見出され、学会などで生体信号による人の状態の評価手法が報告されている。
【0003】
そんな中、脈波が手軽に計測できる生体信号として昨今注目されている。脈波に様々な解析を行うことで、心拍数と同等である脈拍数、血圧または血管年齢など、人の状態を推定できる多くの指標を脈波から抽出することができる。そのため、脈波は、人々の健康状態の診断に活用されつつある。脈波は、基本的な測定原理に関しては既に公知の技術であり、その測定方法は大きくは圧電式と光電式とに大別されている。
【0004】
図15は、従来の光電式脈波測定装置の基本構成を示す図である。図15(a)は、反射型の構成を示しており、図15(b)は、透過型の構成を示している。
【0005】
図15(a)および図15(b)に示す従来の光電式脈波測定装置は、生体に対する光の入射方法が異なるだけで構成要素はほぼ同じであり、光源921、検出部922および演算部923を備える。図15(a)および図15(b)に示す924は生体接触面を示している。以下、公知である脈波測定の基本原理を簡単に示す。
【0006】
まず、光源921から生体へ入射された光は血中の酸化または還元ヘモグロビンに吸収される。次に、検出部922は、酸化または還元ヘモグロビンの吸収による反射光量(図15(a))、または透過光量(図15(b))の変化を検出し、光信号を電気信号へ変換する。そして、演算部923は、検出部922から出力された電気信号に基づいて脈波信号を抽出する。以上のようにして、従来の光電式脈波測定装置は、脈波を測定する。
【0007】
しかしながら、上述した従来の光電式脈波測定装置は、上記基本原理に基づいた図15(a)または図15(b)に示す形状であり、生体が直接光源に触れる構造となっている。そのために、ある一定時間脈波を測定した場合には、測定中、生体が熱を感じて不快感を生じさせるという課題があった。
【0008】
この課題に対し、ユーザが直接光源に触れない構造の光電式脈波測定装置として発光部と受光部とに加え反射部と光通路を備えた光プローブが提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に開示される光プローブでは、受光部は、発光部から発せられた光が光通路を通じて反射部で反射され、再び光通路と生体とを通過した光を受光する。このように、ユーザに対して発光部の発熱の影響を受けにくい構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−337605号公報(第5頁、図13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1の光電式脈波測定装置では、生体が熱を感じて不快感を生じさせることはないものの、依然、光源と検出部とを備えた約25平方ミリメートル程度の、ある特定の箇所に生体を適切に密着させる必要があり、ユーザを拘束するという大きな制約がある。そのため、ユーザに測定は煩わしいという印象を与えることになっていた。
【0011】
そこで、本発明は、上述の事情を鑑みてなされたもので、測定の際ユーザに光源からの熱を感じさせないだけでなく、測定の際のユーザの拘束を緩和して測定対象であるユーザの生体の状態を測定することができる光電式生体測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る光電式生体測定装置は、測定対象の生体の状態を測定する光電式生体測定装置であって、光を発する光源と、前記光源が発した光を通して散乱させ、散乱させた光を前記生体に照射する導光体と、前記生体内を反射した光を受光し、受光した光の強度信号を電気信号に変換して出力する2以上の検出部と、前記2以上の検出部から出力された電気信号を演算することにより、前記生体の状態を測定する演算部とを備え、前記導光体は、前記散乱させた光を前記導光体と接している前記生体に照射する。
【0013】
この構成によれば、ユーザに対して光源からの熱を感じさせることのない構造を実現し、ユーザに不快感を生じさせることなく測定を継続することができる。また、検出部を複数備えるため、生体の位置を固定する必要がなくなり、ユーザの拘束を緩和することができる。したがって、測定の際ユーザに光源からの熱を感じさせないだけでなく、測定の際のユーザの拘束を緩和して測定対象であるユーザの生体の状態を測定することができる光電式生体測定装置を実現することができる。
【0014】
また、この構成によれば、光源から導光体への入射光が導光体を通して散乱しながら伝わることで、導光体から生体へ照射される光量を増すことができる。
【0015】
また、前記導光体は、シート状であり、少なくとも一つの面に印刷もしくは成型加工により形成された拡散反射層を備え、前記拡散反射層は、前記導光体を通り散乱された光を拡散反射することで、前記導光体を通り散乱された光が前記少なくとも一つの平面から漏れ出すことを抑制してもよい。
【0016】
この構成によれば、光源からの導光体への入射光を拡散反射層において拡散反射させることで、拡散反射層側からその入射光が漏れ出すことがないので、より確実に導光体から生体へ光を照射することができる。
【0017】
また、好ましくは、前記導光体は、シリコンゴムまたはエラストマを含む弾性物質で構成されている。
【0018】
この構成によれば、導光体が変形可能となり設置性が向上するとともに、生体との密着性も向上することができる。さらに、その弾力のある触感からもユーザに不快感を感じさせることなく測定を継続することができる。
【0019】
また、好ましくは、前記2以上の検出部はそれぞれ、前記導光体に離間して設けられており、前記2以上の検出部それぞれの一端は、前記生体と相対するよう前記導光体の面に設けられている。
【0020】
この構成によれば、生体を通過した光を確実に受光することが可能となる。
また、前記2以上の検出部は、側面に設けられた光を反射する反射層を備え、前記反射層を介して前記導光体と接していてもよい。
【0021】
この構成によれば、導光体から検出部に漏れこむ光を極力抑え、すなわち検出部が受光する際、生体を介した光に絞りこむことができ、また、反射層で反射した光を生体への入射光として有効活用することで、さらに測定精度のS/N比を向上することができる。
【0022】
また、前記検出部は、受光した光を導く受光導光体と、入力された光の強度信号を電気信号に変換する光電気変換部とから少なくとも構成され、前記受光導光体は、受光した光を前記光電気変換部に導き、前記光電気変換部は、前記受光導光体により導かれた光の強度信号を電気信号に変換するとしてもよい。
【0023】
この構成によれば、検出部で受光した光を導光体により伝達することが可能となり、センサー部と電気回路部とを分離することが可能な構成となる。
【0024】
また、前記光源と前記光電気変換部とは同一回路基板上に実装されているとしてもよい。
【0025】
この構成によれば、光源側と検出側の回路基板を集約することができ、実装の際の軽装化を実現することができる。
【0026】
また、前記2以上の検出部の間隔は、5から20mmピッチであってもよい。
この構成によれば、生体の位置を固定することなく、生体を通過した光(反射光)を確実に受光することができる。
【0027】
また、前記演算部は、前記2以上の検出部から出力された電気信号の中から、信号の強さに基づいて電気信号を選択し、選択した電気信号を演算することにより、前記生体の状態を測定してもよい。
【0028】
この構成によれば、複数存在する検出部からの信号のうち、最大の信号強度である信号を採用して用いる構造とすることで、生体のぶれ(体動)や接触状態に影響されにくい測定装置を実現することができる。
【0029】
また、前記光源は、断続光を発するよう制御され、前記演算部は、前記断続光を発するタイミングに基づき前記2以上の検出部から出力された電気信号を同期検波して演算処理してもよい。
【0030】
この構成によれば、ノイズに紛れた微小な信号を捕らえることが可能となる。例えば、太陽光などの外乱要因をカットすることができ、さらに測定精度のS/N比を向上することができる。
【0031】
また、さらに、前記光源の駆動を制御する駆動部を備え、前記駆動部は、前記演算部により前記生体が前記2以上の検出部の少なくとも1つに近づいたことが検知された後に、前記光源の発光強度と前記光源の断続光を発する間隔であるパルス間隔とを制御してもよい。また、さらに、前記光源の駆動を制御する駆動部を備え、前記駆動部は、前記演算部により前記生体が前記2以上の検出部の少なくとも1つに近づいたことが検知された後に、前記光源の発光強度を制御するとしてもよい。
【0032】
この構成によれば、生体が接触している際にのみ、光源をパルス発光させることが可能となり、省エネ制御を強化させることができる。
【0033】
また、前記光電式生体測定装置は、前記光源を2以上備えてもよい。
この構成によれば、複数の光源を用いた生体測定が可能となる。
【0034】
また、前記2以上の光源は、2以上の異なる波長の光を発するとしてもよい。
この構成によれば、複数の光源による複数の波長の光を照射する生体測定が可能となる。
【0035】
また、前記演算部は、前記2以上の検出部から出力された電気信号に基づいて前記生体の状態として脈波を測定するとしてもよい。
【0036】
この構成によれば、ユーザに不快感を生じさせることなく、脈波を測定することが可能となる。
【0037】
また、前記演算部は、前記2以上の検出部から出力された電気信号に基づいて前記生体の状態として2以上の脈波を測定し、さらに、前記2以上の脈波から血中酸素飽和度(SPO2)を算出してもよい。
【0038】
この構成によれば、ユーザに不快感を生じさせることなく、血中酸素飽和度(SPO2)を測定することが可能となる。
【0039】
また、自動車のハンドル部分に前記光電式生体測定装置を搭載してもよい。
この構成によれば、自動車においても、ユーザがハンドルを握ることで、ユーザの拘束を緩和し、ユーザに不快感を生じさせることなく、生体測定を実施することができる。
【0040】
また、自動車のアームレストに前記光電式生体測定装置を搭載してもよい。
この構成によれば、自動車においても、ユーザがアームレストに手を置くことで、ユーザの拘束を緩和し、ユーザに不快感を生じさせることなく、生体測定を実施することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、測定の際ユーザに光源からの熱を感じさせないだけでなく、測定の際のユーザの拘束を緩和して測定対象であるユーザの生体の状態を測定することができる光電式生体測定装置を実現することができる。さらに、散乱光を生体へ入射することで測定精度が向上している。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態1における光電式生体測定装置の構成を示した概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1における光電式生体測定装置の動作を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態2における光電式生体測定装置の構成を示した概略図である。
【図4】本発明の実施の形態3における光電式生体測定装置の構成を示した概略図である。
【図5】本発明の実施の形態4における光電式生体測定装置の構成を示した概略図である。
【図6】本発明の実施の形態4における演算部15の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】検出部を2つ以上備える本発明の実施の形態4における光電式生体測定装置の構成を示した概略図である。
【図8】本発明の実施の形態5における光電式生体測定装置の構成を示した概略図および回路図である。
【図9】本発明の実施の形態6における光電式生体測定装置の構成を示した概略図である。
【図10】光電式生体測定装置が車載化された際の模擬図である。
【図11】車載化された場合の光電式生体測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】光電式生体測定装置がバスの運転席のハンドルに搭載された場合の模擬図である。
【図13】光電式生体測定装置が電車の客席に搭載された場合の模擬図である。
【図14】光電式生体測定装置が自動車の後部座席に搭載された場合の模擬図である。
【図15】従来の光電式脈波測定装置の基本構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における光電式生体測定装置の構成を示した概略図である。図1(a)は、斜視図を示しており、図1(b)は、図1(a)におけるA−A´における断面図を示している。
【0044】
図1(a)および図1(b)に示すように、本実施の形態の光電式生体測定装置は、光源11、導光体12、拡散・反射層13、検出部14および演算部15から構成されている。
【0045】
光源11は、測定対象である生体における成分(以下、測定成分と記載)の吸収波長の光を含む光を発し、生体に光を照射するために用いられる。光源11は、図1(a)および図1(b)に示すように、導光体12に接続され、導光体12に光を発する。
【0046】
光源11には、測定対象である測定成分が例えば脈波の場合、緑色から赤外までの領域に属する光源が用いられる。具体的には、脈波の測定に用いられる血液中の酸化ヘモグロビン(oxy−Hb)は、例えば、945[nm]の波長における光の吸光率が高いため、光源11には、赤外領域の光が用いられることが好ましい。また、血中酸素飽和度(SPO2)を求める際は、酸化ヘモグロビン(oxy−Hb)に加え、還元ヘモグロビン(deoxy−Hb)の吸光特性も用いる。この還元ヘモグロビン(deoxy−Hb)は、例えば、660[nm]の波長の光の吸光率が高いため、光源11には、赤外領域に加えて赤色領域における光の2種類の波長の光が用いられるのが好ましい。
【0047】
また、光源11は、例えば、ハロゲン光源、半導体レーザ、LED等を用いて構成される。
【0048】
導光体12は、生体との間に備えられ光源11と接続されている。導光体12は、光源11から発せられた光を内部に通して散乱または拡散させ、散乱または拡散させた光を導光体12に接(密着)する生体に照射する。
【0049】
また、導光体12は、例えばシート状の変形が可能な材料から構成され、屈折率が空気よりも大きく生体に近いものにより構成される。ここで、生体に近い屈折率とは、例えば2以下の屈折率である。このようにすることで、光源11から導光体12への入射された光を確実に導光体12内全体に伝えることができ、さらに生体まで到達させることができる。
【0050】
また、導光体12は、1つ以上の平面を備え、生体と接触する主面とは反対側の面に拡散・反射層13が形成されている。また、導光体12は、検出部14が取り付けられている。
【0051】
導光体12の材質は、例えば、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムまたはエラストマ(elastomer)等のゴム状弾性物質であるのが好ましい。ここで、ゴム状弾性とは、ある荷重を材料に与えて変形した後、荷重を取り去ると元の形に戻る性質である。また、導光体12の材質は、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムもしくはイソプレンゴム等の汎用ゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、またはブチルゴムでもかまわない。特に、シリコンゴムは、人工乳房、人工耳または人工鼻などの人工補填材として利用されており、生体に対してほとんど不活性であるために、有用である。また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールなどの医用エラストマも好ましい。ここで、エラストマとは、ゴム状弾性の性質を持ちながらも、射出成形などの溶融成形が可能な高分子材料である。また、導光体12の材質は、水溶性高分子に架橋構造、疎水性基あるいは結晶構造などを導入することにより不溶化し、これを水で膨潤させたハイドロゲルでもよい。ハイドロゲルは、柔らかくて組織に損傷を与えないだけでなく、物質透過性に富んでいるため、好ましい。例えば、ハイドロゲルには、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミドおよびポリビニルピロリドンがある。
【0052】
また、導光体12は、散乱体から構成されていてもよい。導光体12は、散乱体としては、例えば、高密度ポリエチレンまたはポリカーボネート等の樹脂により構成されているのが望ましい。特に、光拡散グレードのポリカーボネートは、拡散光線の透過率が高いため、有用である。
【0053】
拡散・反射層13は、導光体12の少なくとも1つ以上の平面に印刷もしくは成型加工により形成されている。典型的には、拡散・反射層13は、図1(a)および図1(b)に示すように、導光体12が生体と接触する主面とは逆の面に形成され、光源11から導光体12に照射される光が、導光体12から漏れ出すことを極力抑えるように拡散反射する。それにより、光源11から導光体12に照射された光が、高効率で導光体12から生体へ照射されるようになる。
【0054】
検出部14は、図1(a)および図1(b)に示すように、その一端が導光体12の面内に位置し、生体と相対するように導光体12に設けられる。検出部14は、導光体12より発せられて生体内を透過または反射した光を検出する。具体的には、導光体12より発せられて生体内を透過または反射した光を受光し、受光した光の強度信号を電気信号に変換する。そして、検出部14は、変換した電気信号を演算部15に出力する。
【0055】
検出部14は、当該分野で公知のものを用いればよく、例えば、近赤外領域の光を受光する場合には、InGaAs検出器、フォトダイオード、PbS検出器、InSb検出器、またはInAs検出器等である。
【0056】
なお、検出部14は、図1(a)および図1(b)では典型的な例として1つ設けられる例を示しているが、それに限らない。測定の際のユーザの拘束を緩和するために2以上設けられるのが好ましい。
【0057】
演算部15は、検出部14より入力された電気信号を演算する。演算部15は、例えば脈波などの測定成分を演算することで、生体の状態を測定することができる。
【0058】
以上のようにして、生体の状態を測定する光電式生体測定装置100は構成される。
図2は、本発明の実施の形態1における光電式生体測定装置の動作を説明するための図である。図2(a)は、斜視図を示しており、図2(b)は、図2(a)におけるB−B´における断面図を示している。以下、本実施の形態の光電式生体測定装置100の動作について、具体的に脈波を測定する方法を例にとり図2を用いて説明する。
【0059】
まず、光源11は、例えば、波長が945[nm]付近の赤外光を発光し、導光体12に向けて光を発する。
【0060】
次に、光源11から発せられた赤外光は、導光体12で散乱または拡散されながらすなわち導光体12内を通り導光体12と空気との界面で全反射されながら、導光体12に接する生体に伝達される。ここで、導光体12が生体と接触する面とは逆の平面に設けられた拡散・反射層13により、光源11から導光体12に照射された光が拡散反射され、効率よく生体へ照射される。
【0061】
次に、生体すなわち生体組織に照射され、その生体組織を通過した光の少なくとも一部は、検出部14に受光される。
【0062】
次に、受光された光は、検出部14により光電変換されて演算部15へ送られる。すなわち、検出部14は、受光された光の強度信号を電気信号に光電変換して、光電変換した電気信号を演算部15へ送る。
【0063】
次に、図示はしないが、演算部15において、検出部14から光の強度信号が電気信号に変換されて入力されると、まず演算部15が備える増幅器によりその電気信号が増幅され、フィルタ処理により、例えば、電源ノイズのようなノイズが除去される。そして、フィルタ処理された電気信号がアナログ・デジタル変換された後に、例えば、二階微分が行われて加速度脈波に変換され、生体の状態を示す脈拍数や血管年齢などのパラメータが算出される。または、フィルタ処理された電気信号がアナログ・デジタル変換された後に、a−a間隔変動解析が実施されて生体の状態を示す自律神経活動指標が算出される。
【0064】
以上のように、光電式生体測定装置100は生体の状態を測定する。
以上、実施の形態1における光電式生体測定装置100によれば、光源11と生体との間に設けられている導光体12を介して光源11の光を生体に照射し、また検出部14の一端を導光体12の面内に位置することにより、光源11からの熱が直接生体へ伝わることのない構造を実現することができる。それにより、ユーザに不快感を生じさせないので、ユーザに測定を継続させやすくすることができる。
【0065】
また、光電式生体測定装置100の導光体12がシート状で、なおかつ変形可能な材料であることから、例えば、ホームのリビング等の家具、リモコンまたはパソコン等の電気機器など、筐体を選ばず広く搭載することが可能となる。それにより、ユーザの日常の生体信号のモニタリング等に最適なセンサーとして用いることができる。さらに、導光体12にエラストマまたはシリコンゴム等の材料を用いることで、生体との密着性も向上することができ、その弾力のある触感からユーザに不快感を生じさせない。そのためユーザに測定を継続させやすくすることができる。
【0066】
また、光電式生体測定装置100は、拡散・反射層13を備えることで光源11から導光体12へ入射された光が効率よく生体へ照射される構造となるため、導光体12の領域を通過した光でも検出部14により受光しやすくすることができる。したがって、導光体12に面した広い範囲において、導光体12に接する生体の情報を取得することができる。それにより、例えば、局在するような脈波の変動を確実に捉えることができることとなり、測定精度を向上することができる。
【0067】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における光電式生体測定装置の構成を示した概略図である。図3(a)は、斜視図を示しており、図3(b)は、図3(a)におけるC−C´における断面図を示している。なお、図1(a)および図1(b)と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0068】
図3に示す光電式生体測定装置200は、実施の形態1における光電式生体測定装置100に対して、検出部14の周側面に反射層31が設けられている点で構成が異なる。
【0069】
反射層31は、検出部14の周側面に設けられ、検出部14から光が漏れることを極力防止して有効利用すると共に、検出部14に光が漏れこむことを極力防止する。
【0070】
以上のように、光電式生体測定装置200は構成される。
以上、実施の形態2における光電式生体測定装置200によれば、検出部14の周側面に反射層31を設けることで、導光体12から検出部14に漏れこむ光を極力抑えることができ、検出部14が受光する際、生体を介した光に絞りこむことができる。また、反射層31で反射した光を生体への入射光として有効活用することができるので、さらに測定精度のS/N比を向上することができる。
【0071】
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3における光電式生体測定装置の構成を示した概略図である。なお、図1(b)と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0072】
図4に示す光電式生体測定装置400は、実施の形態1における光電式生体測定装置100に対して、回路部43および検出部44の構成が異なる。
【0073】
図4に示すように、本実施の形態の光電式生体測定装置400は、光源11、導光体12、拡散・反射層13、検出部44、および回路部43から構成されている。
【0074】
検出部44は、光ファイバ41と光電気変換部42とから構成されおり、狭義には、光ファイバ41の導光体12に設けられている部分に相当する。
【0075】
光ファイバ41は、検出部44で受光する光を回路部43に導く。光ファイバ41は、光を受光する開口部が導光体12の面に位置するよう設置される。なお、光ファイバ41は、光ファイバから構成されることが好ましいが、これに限らない。検出部44で受光する光を回路部43に導けるもの(受光導光体)であればよい。
【0076】
光電気変換部42は、光ファイバ41により導かれ入力された光の強度信号を電気信号に変換する。
【0077】
回路部43は、演算部15と光電気変換部42とを含み、光源11、導光体12、拡散・反射層13および検出部44で構成されるセンサー部と電気的にも物理的にも分離されている。
【0078】
以上のように、光電式生体測定装置400は構成される。
光電式生体測定装置400では、実施の形態1と同様に、光源11から発せられた光(例えば、赤外光)が、導光体12で散乱または拡散されながらすなわち導光体12と空気との界面で全反射されながら導光体12に接する生体に伝達される。ここで、拡散・反射層13は、導光体12が生体と接触する面とは逆の平面に設けられており、この拡散・反射層13により光源11から導光体12に照射された光が拡散反射されることで、効率よく生体へ照射されることとなる。
【0079】
そして、生体すなわち生体組織に照射され、その生体組織を通過した光の少なくとも一部は、検出部44により受光されるが、このとき、その光は検出部44における光ファイバ41に入射されることになる。光ファイバ41に入射された光は、回路部43における光電気変換部42まで伝達され、光電気変換部42により光電変換されすなわち光の強度信号が電気信号に変換されて、演算部15へ送られる。
【0080】
以上のようにして、光電式生体測定装置400は生体の状態を測定する。
以上、実施の形態3における光電式生体測定装置400によれば、検出部44が光ファイバ41と光電気変換部42とで構成されることにより、光ファイバ41によりセンサー部から離れた箇所まで受光した光を送ることが可能となり、センサー部と電気回路部を分離することができる。それにより、光源側と検出側の回路基板を集約することができ、実装の際の軽装化を実現することができる。すなわち光電式生体測定装置400を薄型形状にすることができ、例えば折り曲げる等の変形させるものとすることも可能となるので、設置性を向上することができる。
【0081】
(実施の形態4)
図5は、本発明の実施の形態4における光電式生体測定装置の構成を示した概略図である。なお、図1(b)、図4と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0082】
図5に示す光電式生体測定装置500は、実施の形態3における光電式生体測定装置400に対して、検出部44および光ファイバ51の構成が異なる。具体的には、図5に示すように、本実施の形態の光電式生体測定装置500は、検出部44を2つ備え、それにともない、光ファイバ51を2つ備える点で実施の形態3における光電式生体測定装置400と異なっている。
【0083】
検出部44は、図5に示すように導光体12に2つそれぞれ離間されて設けられている。
【0084】
光ファイバ51は、2つからなり、2つの検出部44で受光する光をそれぞれ回路部43に導く。また、光ファイバ51は、光を受光する2つの開口部が導光体12の面に位置するよう設置される。
【0085】
光電気変換部42は、光ファイバ51により導かれ入力された光の強度信号をそれぞれ電気信号に変換する。
【0086】
以上のように、光電式生体測定装置500は構成される。
光電式生体測定装置500では、実施の形態3と同様にして、光源11から発せられた光(例えば、赤外光)が導光体12を介して生体へ照射される。
【0087】
そして、生体すなわち生体組織に照射されその生体組織を通過した光は、2つ存在する検出部44においてそれぞれ受光される。2つの検出部44が受光した光はそれぞれ光ファイバ51に入射され、回路部43における光電気変換部42まで伝達される。伝達された光はそれぞれ光電気変換部42により光電変換されすなわちそれら光の強度信号が電気信号に変換されて、演算部15へ送られる。
【0088】
以上のようにして、光電式生体測定装置400は生体の状態を測定する。
また、演算部15は、光電気変換部42から2つの検出部44が受光したそれぞれの光の電気信号(以下2つの信号と記載。)が入力される。このときの演算部15の動作の一例について、図6を用いて以下に説明する。なお、ここでの2つの検出部44の間隔は、生体として人の指先を想定し、例えば、5mmから20mmピッチとする。
【0089】
図6は、本発明の実施の形態4における演算部15の動作を説明するためのフローチャートである。
【0090】
図6に示すように、演算部15は、まず、光電気変換部42から2つの信号が入力されると(S1)、それら2つの信号における信号強度を比較する(S2)。
【0091】
次に、演算部15は、2つの信号において信号強度が最大(大きい方)の信号を選択し(S3)、最大の信号に基づいて、例えば、脈波信号であれば、脈拍数や血管年齢等のパラメータを算出する(S4)。
【0092】
以上のように、演算部15は2つの信号が入力されたときの動作を行う。
なお、光電式生体測定装置500は、上述したように2つの検出部44を備える場合に限定されず、2つ以上の検出部44を備えていてもよい。以下、それについて説明する。
【0093】
図7は、検出部を2つ以上備える本発明の実施の形態4における光電式生体測定装置の構成を示した概略図である。なお、図5と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0094】
図7に示す光電式生体測定装置700は、検出部44を2つ以上備え、上述した光電式生体測定装置500が検出部44を2つ備える場合と同様に、それぞれの検出部44において受光された光が、それぞれに対応する光ファイバ51を通じて回路部43へ送られる。そして、回路部43における演算部15では、図6で説明したように、最大の信号強度である信号が選択されて、最大の信号強度である信号に基づいてパラメータが算出される。
【0095】
なお、2つ以上の検出部44は、生体として人の指先を想定しており、例えば、5mmから20mmピッチで導光体12に設置されるのが好ましい。
【0096】
以上、実施の形態4における光電式生体測定装置500または700によれば、検出部44を複数設けることにより、センサー部において生体の位置制約がなくなる。それにより、ユーザを拘束することなく、より自然な姿勢を保持しながら生体信号を測定することが可能となり、姿勢の自由度を向上することができる。
【0097】
また、光電式生体測定装置500または700は、範囲が固定されず導光体12の主面の広い範囲で生体の情報を取得することができる構造であるため、測定精度を維持することができる。
【0098】
また、複数存在する検出部44からの信号のうち、最大の信号強度である信号を採用して用いる構造とすることで、生体のぶれ(体動)や接触状態に影響されにくい光電式生体測定装置500または700を実現することができる。
【0099】
なお、複数存在する検出部44からの信号のうち、最大の信号強度である信号を採用とせず、複数の信号が混合された信号を演算してもよい。その場合、生体が導光体12の面の検出部44に触れていない場合の太陽光などの光を検出した検出部44から信号はDC(Direct Current)成分で構成される。一方、生体が導光体12の面の検出部44に触れる場合の検出部44から信号はAC(Alternating Current)成分が含まれて検出される。そのため、混合された信号のAC成分に基づき演算することで、生体の情報を測定することができる。
【0100】
(実施の形態5)
図8は、本発明の実施の形態5における光電式生体測定装置の構成を示した概略図および回路図である。なお、図5と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0101】
図8に示すように、本実施の形態の光電式生体測定装置800は、光源11、導光体12、拡散・反射層13、2つの検出部44、演算部83および駆動部84を備える。そして、それぞれの検出部44は、光ファイバ51と光電気変換部42とから構成されている。
【0102】
図8に示す光電式生体測定装置800は、実施の形態4に係る光電式生体測定装置500に対して、光源11に、さらに、演算部83と駆動部84とを備えている点で構成が異なる。
【0103】
光源11は、駆動部84によりパルス駆動が実施されて断続光を発する。すなわち、光源11は、駆動部84によりパルス間隔で断続光を発するパルス光源に設定されることになる。
【0104】
駆動部84は、光源11に対して断続光を発するためのパルス駆動を実施する。そのパルス駆動のタイミングは、生体信号のサンプリング周波数に依存する。駆動部84は、例えば、脈波を1kHzサンプリングで測定する場合、少なくとも2kHzから3kHzの周期に設定されることで、確実に信号を取り込むことができる。
【0105】
演算部83は、パルス駆動と同期をかけたロックインアンプにより、光源11のパルス光源に同期の取れた信号のみを取り出す、同期検波が行われる。
【0106】
ここで、ロックインアンプとは、入力された交流信号に対して、指定した周波数・位相の成分だけを高感度で抽出し、その実効値に相当する直流信号として出力する、狭帯域・ハイゲインのAC−DC変換型増幅器である。また、同期検波とは、振幅変調やデジタル変調を復調する方法の一つであり、搬送波に同期した信号によって検波を行う方法である。
【0107】
以上、実施の形態5における光電式生体測定装置800によれば、駆動部84により光源11がパルス光源に設定され、演算部83により、同期検波が実行されることにより、ノイズに紛れた微小な信号を捕らえることが可能となる。それにより、太陽光などの外乱要因をカットすることができ、さらに測定精度のS/N比を向上することができる。
【0108】
なお、本実施の形態の構成に加え、検出部44上に、特定の波長の光を通過させる生体測定用光学素子(光学フィルタ)を貼付してもよい。その場合、太陽光などの外光に対しては、必要な波長の光のみを受光することが可能となるため、さらに測定精度を向上することができる。
【0109】
また、さらに、駆動部84におけるパルス駆動について、演算部83は、光電気変換部42の出力信号がDC成分だけでなくAC成分が含まれた場合に生体が近づいたと判断し、さらに、そこで、光源11の発光強度やパルス駆動の間隔を、あらかじめ設定された間隔(1kHzサンプリングなら2Hzから3Hz程度)に設定するようにして、省エネ制御を強化させてもよい。
【0110】
(実施の形態6)
図9は、本発明の実施の形態6における光電式生体測定装置の構成を示した概略図である。なお、図1(a)および図1(b)と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0111】
図9に示すように、本実施の形態の光電式生体測定装置900は、実施の形態1と同様に、導光体12、拡散・反射層13および検出部14から構成されているが、実施の形態1とは、光源として、光源91と光源92の2つを備え、さらに、駆動部93と演算部94とを備える点で構成が異なっている。
【0112】
光源91と光源92とは、実施の形態1と同様に、測定対象である測定成分の吸収波長の光を含む光を発光し、生体に光を照射するために用いられる。光源91と光源92は、図9に示すように、導光体12に接続されて導光体12に光を発する。
【0113】
光源91と光源92とは、例えば、測定対象である測定成分が例えば血中酸素飽和度(SPO2)である場合、一方が赤外領域の光を、他方が赤色領域の光を発する。これは、測定対象である測定成分が例えば血中酸素飽和度(SPO2)である場合、酸化ヘモグロビン(oxy−Hb)と還元ヘモグロビン(deoxy−Hb)の吸光特性を用いる。すなわち、酸化ヘモグロビン(oxy−Hb)に対しては、例えば、880[nm]の波長の光を、還元ヘモグロビン(deoxy−Hb)に対しては、例えば、660[nm]の波長と、つまり、赤外領域と赤色領域の光との2種類の波長の光を用いて血中酸素飽和度(SPO2)を測定する。
【0114】
また、光源91および光源92は、例えば、ハロゲン光源、半導体レーザ、LED等を用いて構成されることが好ましい。
【0115】
駆動部93は、演算部94からの電力を光源91および光源92に供給する。
演算部94は、駆動部93を介して電力を光源91および光源92に供給する。また、演算部94は、2種類の波長の光それぞれの強度信号における変動幅(直流成分をのぞいた変動量の幅)を求める。
【0116】
以上のように、生体の状態を測定する光電式生体測定装置900は構成される。
次に、本実施の形態の光電式生体測定装置900の動作の一例について説明する。
【0117】
まず、演算部94から駆動部93を介して光源91に電力が供給されると、光源91が発光する。光源91が発する例えば赤外光は、実施の形態1と同様にして導光体12で散乱または拡散されさらに拡散・反射層13で拡散反射されて、導光体12に接する生体へ照射される。
【0118】
次に、生体すなわち生体組織に照射され、その生体組織を通過した光は検出部14により受光され、光の強度信号が電気信号に変換されて演算部94へ送られる。
【0119】
次に、演算部94から駆動部93を介して光源92に電力が供給されると、光源92が発光する。光源92が発する例えば赤色光は、同様に、検出部14により受光され、光の強度信号が電気信号に変換されて演算部94へ送られる。
【0120】
そして、このような、光源91の発光と光源92の発光とすなわち赤外領域と赤色領域の光との2種類の波長の光の発光を、短い周期で繰り返す。ここで、発光周期は、脈波の周期よりも十分に短いことが好ましい。例えば、発光周期は、予想される脈波周期の1/10以下の値に設定される。このようにすれば、1つの検出部14を用いた場合でも、脈波の強度信号を2つの波長それぞれについて取得することができる。
【0121】
次に、演算部94は、2種類の波長の光それぞれの強度信号における変動幅(直流成分をのぞいた変動量の幅)を求める。具体的には、赤外光における変動幅をIRとし、赤色光をRとすると、変動幅の比R/IRを求める。この比が高ければ、血中酸素飽和度(SPO2)が低く、この比が低ければ血中酸素飽和度(SPO2)が高いことになる。このようなデータ処理方法は公知であるので、これ以上の説明は省略する。
【0122】
以上のようにして、光電式生体測定装置900は生体の状態を測定する。
以上、実施の形態6における光電式生体測定装置900によれば、演算部94が駆動部93を介して2種類の異なる波長をもつ光源91と光源92とを短期周期で交互に発光させることにより、広く病院や診療所等で測定される血中酸素飽和度(SPO2)を求めることが可能となる。それにより、光電式生体測定装置900を幅広い用途で用いることが可能となる。
【0123】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態1から6に示した光電式生体測定装置を実用化(ユースケース)する場合について例を挙げて具体的に説明する。
【0124】
まず、ユースケースの一つとして光電式生体測定装置が車載化される場合について説明する。
【0125】
図10は、光電式生体測定装置が車載化された際の模擬図である。図10(a)は、光電式生体測定装置がハンドル部に搭載された場合について示しており、図10(b)は、光電式生体測定装置がアームレストに搭載された場合について示している。
【0126】
図10(a)に示すように、ハンドル1000では、ハンドル部101の一部を覆う形で実施の形態1から6に示す光電式生体測定装置102に、ステアリングスイッチ部に搭載された実施の形態1から6に示す光電式生体測定装置103が搭載されている。光電式生体測定装置102は、少なくとも上述したセンサー部がハンドル部101の一部に搭載されていればよい。同様に光電式生体測定装置103は、少なくとも上述したセンサー部がステアリングスイッチ部に搭載されていればよい。
【0127】
また、図10(b)に示すように、アームレスト1001では、アームレスト本体105の一部に実施の形態1から6に示す光電式生体測定装置104が搭載されている。光電式生体測定装置104は、少なくとも上述したセンサー部センサー部がアームレスト本体105の一部に搭載されていればよい。
【0128】
図11は、車載化された場合の光電式生体測定装置の動作を示すフローチャートである。図11を用いて、以下、車載化における動作の一例を説明する。ここで、光電式生体測定装置は、実施の形態4と同様の構成であるとして説明する。
【0129】
まず、ユーザにより運転時、キーが挿入されると(S5)、実施の形態4と同様に、光電式生体測定装置102、103または104における光源11に電力が供給され、光源11が発光する(S6)。そして、光源11が発光した光は、導光体12で散乱または拡散されながらすなわち導光体12と空気との界面で全反射されながら導光体12に接する生体に伝達され、さらに拡散・反射層13により拡散反射されて、導光体12に接する生体へ照射される。
【0130】
次に、生体すなわち生体組織に照射され、その生体組織を通過した光の少なくとも一部は、例えば2つ以上ある検出部44においてそれぞれ受光される。検出部44において受光された光は、光ファイバ51を通じて光電気変換部42まで伝えられ、光電気変換部42により光の強度信号が電気信号に光電変換されて演算部15へ送られる(S7)。
【0131】
次に、演算部15は、光電気変換部42から2つ以上の検出部44に応じた2つ以上の信号(電気信号)が入力されると、2つ以上の信号における信号強度を比較し、2つ以上の信号において信号強度が最大の信号を選択する(S8)。
【0132】
次に、演算部15は、選択した最大の信号に基づいて、例えば、脈波信号であれば、脈拍数や血管年齢等のパラメータを算出する(S9)。
【0133】
以上のように、光電式生体測定装置102、103または104は動作を行う。
なお、光電式生体測定装置102、103または104は、算出したパラメータに基づいて、例えば、ドライバの疲労や乗員の体調など、人の状態を推定し、その結果をカーナビ画面または音声を利用して通知してもよい。通知の例として、例えば、カーナビ画面または音声により休息を促したり病院先を通知してもよいし、推定した人の状態に応じて、救急車を呼ぶなどの緊急通報を行ってもよい。
【0134】
また、光電式生体測定装置102、103または104は、その結果に応じては、車を停止させるように通知または連動制御を行ってもよい。
【0135】
このように、実施の形態1から6に示した光電式生体測定装置は、光源11からの熱が直接生体へ伝わることのない構造であるので、ユーザに不快感を感じさせない。さらに、生体と密着する(接する)導光体12は、変形可能な材料であることから、搭載される場所を選ばないため、上述で説明した車載化をユースケースとして挙げることができる。
【0136】
例えば、上述で示した車載化の具体的な例としては、バス、電車、車等の運転手の疲れ測定、電車や車の後部座席に座る例えばVIPの疲れ測定などが挙げられる。
【0137】
図12は、光電式生体測定装置がバスの運転席のハンドルに搭載された場合の模擬図である。図12に示すように、光電式生体測定装置202がバスのハンドル部203の一部に搭載されることで、バスの運転手の疲れ測定等の生体測定を行うことができる。
【0138】
また、図13は、光電式生体測定装置が電車の客席に搭載された場合の模擬図である。図13(a)は電車の外観概略図を示しており、図13(b)は客席に客が着席している様子を示している。図13に示すように、光電式生体測定装置204がアームレスト本体205の一部に搭載されることで、乗客の疲れ測定等の生体測定を行うことができる。
【0139】
また、図14は、光電式生体測定装置が自動車の後部座席に搭載された場合の模擬図である。図14(a)は自動車の外観図を示しており、図14(b)は後部座席に例えばVIPなどの人がリラックスして着席している様子を示している。図14に示すように、光電式生体測定装置304がアームレスト本体305の一部に搭載されることで、後部座席に着席する人の疲れ測定等の生体測定を行うことができる。
【0140】
以上のように、実施の形態7による光電式生体測定装置は、変形可能で薄型形状であるため、ハンドル部に巻きつけたりアームレスト本体に貼付したりと容易に機器に搭載することが可能となる。また、実施の形態7による光電式生体測定装置によれば従来の問題でもある、測定時に生体の位置を制約されることなく、自然な姿勢のまま測定を継続することが可能となる。このように、実用場面での生体測定の煩わしさを排除することができ、場所に限定されることなく、生体測定を実施することが可能となる。
【0141】
なお、光電式生体測定装置の搭載は、上述したバス、自動車および電車に限定されない。例えば、住宅設備である電気スイッチ、家電機器本体、そのリモコン等、リビングに設置しているテーブル、ノートパソコンまたはヘアドライヤもしくはスチーマ等の美容機器などに搭載してもよい。
【0142】
以上、本発明によれば、測定の際ユーザに光源からの熱を感じさせないだけでなく、測定の際のユーザの拘束を緩和して測定対象であるユーザの生体の状態を測定することができる光電式生体測定装置を実現することができる。それにより、ユーザに測定を継続させやすくすることができる。さらに、人が生活の中で触れる場所に手軽に搭載することができるので、実用場面での生体測定技術の普及に大きく貢献することができる。
【0143】
このように、本発明の光電式生体測定装置は、長時間測定しても負担がかからない構造と個人の体格差等に適応可能な形状だけでなくユーザを固定し負担を与えることなく生体信号を測定することができる。そのため、バス、自動車または電車の室内や、ホームにおけるリビング等で、リラックスした状態でもヘルスケア用途で用いることができる。
【0144】
以上、本発明の光電式生体測定装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、光電式生体測定装置に利用でき、特に、ユーザを固定し負担を与えることなく、バス、自動車もしくは電車等の室内またはホームにおけるリビング等で、リラックスした状態でもヘルスケア用途で生体信号の測定を行ったり、生体信号を検出して日常的な健康管理を行う健康管理サービスシステムを行ったり、生体信号を検出した結果に基づいて機器制御を行う家電機器や設備機器等、電気機器のコントロールシステムとして用いられたりする光電式生体測定装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0146】
11、91、92 光源
12 導光体
13 拡散・反射層
14、44 検出部
15 演算部
31 反射層
41、51 光ファイバ
42 光電気変換部
43 回路部
83 演算部
84、93 駆動部
94 演算部
100、102、103、104、200、202、204、304、400、500、700、800、900 光電式生体測定装置
101、203 ハンドル部
105、205、305 アームレスト本体
921 光源
922 検出部
923 演算部
924 生体接触面
1000 ハンドル
1001 アームレスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の生体の状態を測定する光電式生体測定装置であって、
光を発する光源と、
前記光源が発した光を通して散乱させ、散乱させた光を前記生体に照射する導光体と、
前記生体内を反射した光を受光し、受光した光の強度信号を電気信号に変換して出力する2以上の検出部と、
前記2以上の検出部から出力された電気信号を演算することにより、前記生体の状態を測定する演算部とを備え、
前記導光体は、前記散乱させた光を前記導光体と接している前記生体に照射する
光電式生体測定装置。
【請求項2】
前記導光体は、シート状であり、少なくとも一つの面に印刷もしくは成型加工により形成された拡散反射層を備え、
前記拡散反射層は、前記導光体を通り散乱された光を拡散反射することで、前記導光体を通り散乱された光が前記少なくとも一つの平面から漏れ出すことを抑制する
請求項1に記載の光電式生体測定装置。
【請求項3】
前記導光体は、シリコンゴムまたはエラストマを含む弾性物質で構成されている
請求項1または2に記載の光電式生体測定装置。
【請求項4】
前記2以上の検出部はそれぞれ、前記導光体に離間して設けられており、
前記2以上の検出部それぞれの一端は、前記生体と相対するよう前記導光体の面に設けられている
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電式生体測定装置。
【請求項5】
前記2以上の検出部は、側面に設けられた光を反射する反射層を備え、前記反射層を介して前記導光体と接している
請求項1または4に記載の光電式生体測定装置。
【請求項6】
前記検出部は、受光した光を導く受光導光体と、入力された光の強度信号を電気信号に変換する光電気変換部とから少なくとも構成され、
前記受光導光体は、受光した光を前記光電気変換部に導き、
前記光電気変換部は、前記受光導光体により導かれた光の強度信号を電気信号に変換する
請求項4または5に記載の光電式生体測定装置。
【請求項7】
前記光源と前記光電気変換部とは同一回路基板上に実装されている
請求項6に記載の光電式生体測定装置。
【請求項8】
前記2以上の検出部の間隔は、5から20mmピッチである
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光電式生体測定装置。
【請求項9】
前記演算部は、前記2以上の検出部から出力された電気信号の中から、信号の強さに基づいて電気信号を選択し、選択した電気信号を演算することにより、前記生体の状態を測定する
請求項7または8に記載の光電式生体測定装置。
【請求項10】
前記光源は、断続光を発するよう制御され、
前記演算部は、前記断続光を発するタイミングに基づき前記2以上の検出部から出力された電気信号を同期検波して演算処理する
請求項1〜9のいずれか1項に記載の光電式生体測定装置。
【請求項11】
さらに、前記光源の駆動を制御する駆動部を備え、
前記駆動部は、前記演算部により前記生体が前記2以上の検出部の少なくとも1つに近づいたことが検知された後に、前記光源の発光強度と前記光源の断続光を発する間隔であるパルス間隔とを制御する
請求項10に記載の光電式生体測定装置。
【請求項12】
さらに、前記光源の駆動を制御する駆動部を備え、
前記駆動部は、前記演算部により前記生体が前記2以上の検出部の少なくとも1つに近づいたことが検知された後に、前記光源の発光強度を制御する
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光電式生体測定装置。
【請求項13】
前記光電式生体測定装置は、前記光源を2以上備える
請求項1〜12のいずれか1項に記載の光電式生体測定装置。
【請求項14】
前記2以上の光源は、2以上の異なる波長の光を発する
請求項13に記載の光電式生体測定装置。
【請求項15】
前記演算部は、前記2以上の検出部から出力された電気信号に基づいて前記生体の状態として脈波を測定する
請求項1〜14のいずれか1項に記載の光電式生体測定装置。
【請求項16】
前記演算部は、前記2以上の検出部から出力された電気信号に基づいて前記生体の状態として2以上の脈波を測定し、さらに、前記2以上の脈波から血中酸素飽和度(SPO2)を算出する
請求項14に記載の光電式生体測定装置。
【請求項17】
自動車のハンドル部分に請求項1〜16のいずれか1項に記載の前記光電式生体測定装置を搭載する
自動車。
【請求項18】
自動車のアームレストに請求項1〜16のいずれか1項に記載の前記光電式生体測定装置を搭載する
自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−252875(P2010−252875A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103445(P2009−103445)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】