説明

入力装置およびその製造方法

【課題】 指が接触したときの静電容量の変化の検出と、指で押圧されたときのスイッチ入力の検出が可能であり、且つ操作指示部を照光できる入力装置を提供する。
【解決手段】 基板1に、外側接点3と内側接点4および可動接点5を有するスイッチ機構2が設けられ、スイッチ機構2がカバーシート11で覆われている。カバーシート11には堰体12と押圧体13が固着されている。堰体12で囲まれた領域でカバーシート11の上に液状の樹脂が供給され光のエネルギーで硬化されて、透光性で軟質な導光層15が形成され、導光層15の上に操作シート21が設置される。可動接点5が、指30との間の静電容量の変化を検出するための電極として兼用される、可動接点5と指30との間の距離が短く、空気層を薄くできるため、高い感度で静電容量の変化を検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指が操作面に接触したことを静電容量の変化で検出できるとともに、指で操作面を押したときにスイッチ入力が可能とされ、さらに静電容量の変化の検出に支障をきたすことなく操作面を照光できる入力装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用などの小型機器として、導電体である指が操作部に触れたことを静電容量の変化で検出するタッチパッドを備えたものが現れている。
【0003】
以下の特許文献1に記載された携帯用電子機器は、キーマットの下に静電容量の変化を検出する可撓性のタッチパッドが設けられ、タッチパッドのさらに下側にドーム状の可動接点を有するスイッチ機構が配置されている。この携帯用電子機器は、導電体である指がキーマットの表面に触れると、タッチパッド内の電極と指との間に容量が形成されてタッチパッドの電極で検出される静電容量が変化し、これにより、キーマットに指が触れたことが検出される。また、指でキーマットを押すと、キーマットとともにタッチパッドが変形してスイッチ機構が押圧されて接点が接触し、これによりスイッチ入力が可能となる。
【0004】
特許文献1に記載された携帯用電子機器は、タッチパッドとスイッチ機構とが重ねられた構造であるため、薄型化を実現しづらい。また、操作部を照光する照光手段が設けられていないために暗所で操作しづらい。
【0005】
特許文献1に示す構造にさらに操作面を照光する機能を付加しようとすると、キーパッドの下側に、光源からの光を導く導光シートを配置することが必要となる。しかし、キーマットとスイッチ機構との間に、タッチパッドと導光シートを重ねて配置すると、キーマットを指で押したときに、キーマットとタッチパッドとさらに導光シートを変形させてスイッチ機構を動作させることが必要になり、指で押圧する際の負荷が大きくなって操作しづらいものとなる。
【0006】
次に、以下の特許文献2に記載された通信端末機は、本体のカバーに導光性のタッチキーが形成されているとともに、前記カバーの下に静電容量の変化を検出するタッチパッドが設けられ、さらにタッチパッドの下側に、光源からの光を導く光ガイド部が設けられている。タッチパッドには、タッチキーの下に対向する部分に穴が貫通して形成されており、光ガイド部内を伝播された光が前記穴を通過して導光性のタッチキーを照光する構造である。
【0007】
特許文献2に記載された携帯用電子機器は、操作部分を照光する機能を有してはいるが、静電容量の変化によってタッチキーに指が触れたことを検出できるだけであり、指でタッチキーを押圧してもその押圧操作を検出することはできない。また、タッチキーの真下においてタッチパッドに穴が形成されているため、タッチキーに指を触れたときのタッチパッドの検出精度が著しく低下するおそれがある。
【特許文献1】特表2004−535712号公報
【特許文献2】特開2007−68173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1と特許文献2に記載のように、従来は、指の接触を静電容量の変化で検出するとともに指による押圧操作でスイッチ入力を可能とし、さらに操作部を照光できる機能を備えた入力装置は存在していなかった。その理由は、操作部に、タッチパッドと導光シートおよびスイッチ機構を重ねて配置すると厚さ寸法が大きくなって、スイッチ機構の操作性が劣ること、またはタッチパッドの検出感度が低下すること、あるいは、タッチパッドを透明に構成することが困難であるため、操作部を照光しようとするとタッチパッドに穴を開けることが必要となったり、またはタッチパッドの上に導光シートを配置することが必要となり、結果的にスイッチ機構を配置するスペースが無くなることなどに起因する。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、静電容量の変化による入力と、指で押したときのスイッチ入力の双方の操作を可能とし、さらに操作部の照光も可能とした入力装置およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基板と、前記基板の表面に互いに分離して形成された外側接点および内側接点と、前記外側接点と導通するとともに前記内側接点に対向する弾性変形可能な可動接点と、前記基板の表面から離れた位置に配置された可撓性の操作シートとを有する入力装置において、
前記基板と前記操作シートとの間に光を透過させる導光層が設けられており、前記操作シートの表面に指が触れると、いずれも誘電体である前記操作シートおよび前記導光層を挟んで対向する前記指と前記可動接点との間の静電容量の変化が検出可能とされ、
前記操作シートが指で押されると、前記可動接点が前記内側接点に接触してスイッチ入力が可能とされることを特徴とするものである。
【0011】
例えば、前記操作シートが指で押されたときに、前記可動接点の上を覆う前記導光層が前記可動接点と共に変形して、前記可動接点が前記内側接点に接触するものである。
【0012】
本発明は、固定接点である外側接点と内側接点および可動接点を有して押圧操作によるスイッチ入力を可能としたスイッチ機構が設けられ、さらに、前記可動接点が、静電容量の変化を検出するための電極として兼用されている。そのため、可動接点と操作シートとの間に導光層を設けたとしても、操作シートの表面に触れた指と前記可動接点との間の距離を短くでき、さらに操作シートと導光層を誘電体として機能させることができるため、指と可動接点との間の静電容量を大きくでき、指が触れたときの静電容量の変化の検出感度を高めることができる。しかも、可動接点と操作シートとの間の層の数が少ないため、操作シートを押圧したときに可動接点を小さい力で変形させることができ、スイッチ入力の操作性が良好になる。
【0013】
本発明は、前記可動接点と前記操作シートとの間に、前記可動接点を押圧する押圧体が設けられており、前記押圧体の少なくとも一部が前記導光層の中に埋まっていることが好ましい。
【0014】
前記押圧体を設けると、操作シートを指で押したときに押圧体を介して可動接点を変形させることができ、スイッチ入力の操作性が良好になる。また、押圧体の少なくとも一部が導光層に埋まっているため、押圧体を設けても可動接点と操作シートとの距離が長くなることがなく、また可動接点と操作シートとの間に過大な空気層が形成されにくくなる。よって、指が触れたときの静電容量の変化も高感度に検出できる。
【0015】
本発明は、前記基板の上に発光素子が設けられており、前記発光素子の少なくとも一部が前記導光層の中に埋まっていることが好ましい。
【0016】
発光素子を導光層の内部に埋設すると、発光素子から発せられた光を導光層内へ効率良く導くことができる。
【0017】
また、本発明は、前記基板の上に前記可動接点を囲む堰体が形成されて、前記堰体で囲まれた領域に前記導光層が形成されているものである。
【0018】
前記堰体を形成することで、基板と操作シートとの間に比較的軟質な導光層を形成しやすくなる。軟質な導光層を形成することで、操作シートを指で押したときに、導光層が容易に変形して可動接点を動作させやすくなる。
【0019】
さらに、本発明は、前記基板上の凹凸部が前記導光層で覆われており、前記導光層の前記操作シートに対面する表面が平滑であるものとして構成できる。
【0020】
前記のように堰体で区画された領域に軟質な導光層を形成すると、その表面を平滑できるようになるため、導光層の表面と操作シートの裏面との隙間を小さくでき、または導光層の表面と操作シートの裏面とを密着させることが可能になる。その結果、導光層と操作シートとの間の空気層を薄く、または空気層を無くすことができるようになり、指が触れたときに指と可動接点との間に形成される静電容量を大きくでき、検出感度を高めることが可能である。
【0021】
なお、前記平滑とは、可動接点などを設けることで基板の表面に現れている凹凸よりも、操作シートの表面の凹凸の方がその平均高さが低いことを意味しており、いわゆる鏡面状態に限定されるものではない。
【0022】
また、本発明は、前記基板の表面および前記可動接点の表面を覆う可撓性のカバーシートが設けられ、前記カバーシートの上に前記導光層が形成されているものである。
【0023】
本発明は、前記押圧体が前記カバーシートに固着されている構成にでき、または、前記堰体が前記カバーシートに固着されている構成にできる。
【0024】
上記のように、予め押圧体や堰体が固着されたカバーシートを使用し、このカバーシートで基板の表面を覆うことで、組み立て工数を少なくすることが可能となる。
【0025】
次に本発明の入力装置の製造方法は、表面に互いに分離して形成された外側接点および内側接点と、前記外側接点に導通するとともに前記内側接点に対向する弾性変形可能な可動接点とを有する基板を使用し、
(a)前記基板の表面で前記可動接点を囲む領域に堰体を形成する工程と、
(b)前記堰体で囲まれた領域内に液体状の樹脂を供給し且つ硬化させて光を透過させる導光層を形成する工程と、
(c)前記導光層の上に可撓性の操作シートを設置する工程とを有し、
前記操作シートの表面に指が触れると、いずれも誘電体である前記操作シートおよび前記導光層を挟んで対向する前記指と前記可動接点との間の静電容量の変化が検出可能とされ、前記操作シートが指で押されると、前記可動接点が前記内側接点に接触してスイッチ入力が可能とされた入力装置を得ることができる。
【0026】
前記(b)の工程を経ることにより、可動接点を設けたことによる基板の表面の凹凸を導光層で埋めることができ、導光層の表面を平滑にできて操作シートとの間の空気層を狭くできる。その結果、操作シートに触れた指と可動接点との間の静電容量を大きく設定しやすくなる。
【0027】
本発明の製造方法は、前記基板に発光素子を実装し、前記(b)の工程で、前記発光素子の少なくとも一部を前記導光層内に埋め込むことが可能である。
【0028】
また本発明の製造方法は、前記基板の表面に、前記可動接点を覆う可撓性のカバーシートを設置し、このカバーシートの上に前記導光層を形成するものである。そして、前記カバーシートの表面に、前記可動接点と前記操作シートとの間に位置する押圧体を固着し、前記(b)の工程で、前記押圧体の少なくとも一部を前記導光層に埋め込むことが可能であり、さらに予め前記堰体が固着された前記カバーシートを使用することも可能である。
【発明の効果】
【0029】
本発明の入力装置は、可動接点と操作シートとの間の距離を短くでき、また過大な空気層が介在しない構造にできるため、前記可動接点を使用して、指が接触したときの静電容量の変化を感度良く検出でき、さらに比較的小さい負荷でスイッチ入力の押圧操作が可能となる。そして、可動接点と操作シートとの間に介在する導光層を用いて操作部の照光が可能となる。
【0030】
また本発明の入力装置の製造方法は、軟質で表面が平滑な導光層を備えた入力装置を効率良く製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は本発明の第1の実施の形態の入力装置を示す断面図である。
この入力装置は、携帯電話などの携帯用の小型電子機器や小型のパーソナルコンピュータまたはゲーム装置などの操作盤に実装される。
【0032】
図1に示す入力装置は、基板1を有しており、基板1の表面1aにスイッチ機構2が設けられている。スイッチ機構2は、固定接点である外側接点3と内側接点4、および可動接点5で構成されている。外側接点3と内側接点4は、基板1の表面1aに形成された導電層であり、銅、金、銀、ニッケルなどの単層または多層の金属層で形成されている。前記表面1aでは、外側接点3と内側接点4とが互いに分離されて形成されており、基板1に形成されたスルーホールまたは基板1の表面1aに形成された配線パターンを介して、外側接点3と内側接点4が図4に示す検出回路40に接続されている。
【0033】
外側接点3は、360度連続するリング形状パターン、または一部が欠損したリング形状パターンで形成されている。内側接点4は円形パターンであり、リング状の外側接点3の中心部に形成されている。可動接点5は、中央部分が基板1の表面1aから離れるように凸状に湾曲形成されたドーム状接点であり、導電性の板ばね材料で形成されている。可動接点5は、その周縁部5aが外側接点3の上に設置され、中央部5bが内側接点4と離れて対向している。
【0034】
可動接点5の中央部5bを基板1の表面1aに向けて押すと、可動接点5が変形してその中央部5bが内側接点4に接触する。その押圧力を解除すると、可動接点5は図1に示すドーム形状に復元される。可動接点5に押圧力が作用していないときに、可動接点5の内面と基板1の表面1aとの間に空気層6が形成されている。
【0035】
図1に示すように、外側接点3は、可動接点5の周縁部5aとの接触部からさらに半径方向の外側へ広がっており、外側接点3の外周縁3aの直径は、可動接点5の周縁部5aの直径の1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上となっている。可動接点5の周囲に外側接点3が広げて形成されているため、指30で操作されたときに、指30と可動接点5との間の容量が大きくなるのみならず、指と外側接点3との間の容量も大きくなり、静電容量の変化を高感度で検出できるようになる。
【0036】
基板1の表面1aにカバーシート11が設置されており、このカバーシート11で、外側接点3と可動接点5が覆われている。カバーシート11は可撓性で透光性の樹脂シートであり、ウレタンゴムや軟質のポリエチレンテレフタレート(PET)などで形成されている。ここで、本明細書での透光性または光が透過する性質とは、光の透過率が95%のいわゆる透明であることが好ましいが、それのみならず、内部に白色のフィラーなどが混入されて内部で光の乱反射が可能であり、光の透過率が30%以上のものなどを含む概念である。
【0037】
なお、カバーシート11は、後に説明する導光層15の下に敷かれるものであるため、必ずしも透光性である必要はなく、表面11aまたは裏面11cに白色の塗装を施し、あるいはカバーシート11自体を白色で着色された樹脂で形成することもできる。または、カバーシート11の表面11aまたは裏面11cに金属膜が形成されて反射機能を発揮できるものであってもよい。
【0038】
可動接点5の表面はカバーシート11の裏面11cに接着剤で固定されており、また基板1の表面1aとカバーシート11の裏面11c、ならびに外側接点3とカバーシート11の裏面11cも接着剤で固定されている。
【0039】
カバーシート11の表面11aには堰体12が設けられている。堰体12は、可動接点5が設けられている領域の外側を囲むように形成されており、好ましくはその下に外側接点3が存在しておらずにカバーシート11の表面11aが平坦となっている部分に設けられている。堰体12は合成樹脂材料で形成されており、カバーシート11の表面に固着されている。
【0040】
前記堰体12で囲まれている領域の内部において、カバーシート11の表面11aに押圧体13が設けられている。押圧体13は、可動接点5の中央部5bの上方に位置し、すなわちドーム状の可動接点の頂部に対向する部分に位置している。押圧体13は、合成樹脂で形成されており、カバーシート11の表面11aに固着されている。
【0041】
押圧体13は、ウレタンなどの透光性の樹脂で形成されており、導光層の一部として機能できるようになっている。堰体12は、光を透過しないものであってもよいが、押圧体13と堰体12とを同じ工程で一緒にカバーシート11に固着させることができるためには、堰体12も透光性であることが好ましい。
【0042】
堰体12で囲まれた領域内においてカバーシート11の上に導光層15が形成されている。導光層15は透光性で且つ軟質な合成樹脂材料で形成されている。導光層15は、シリコーンやウレタンなどを主体とし、UV(紫外線)などの光のエネルギーで硬化するタイプの合成樹脂材料で形成されている。
【0043】
導光層15は、液体状の前記樹脂材料をカバーシート11の上に供給し、UVなどを照射して硬化させたものである。そのため、可動接点5および外側接点3が設けられことによって基板1の表側に形成された凹凸形状が、導光層15で埋められており、導光層15の表面15aは平滑である。すなわち、導光層15の表面15aには、基板1の表側の前記凹凸形状が現れていない。
【0044】
前記導光層15を形成する過程で、押圧体13は、少なくとも基部が導光層15内に埋め込まれるが、押圧体13の先端13aは、導光層15の表面15aに現れており、好ましくは表面15aからわずかに突出している。押圧体13は、導光層15よりも剛性が高くまたヤング率が高く、押圧体13が基板1に向けて押されたときに、押圧体13が大きく圧縮することなく、押圧体13を介して可動接点5を内側接点4と接触する状態まで変形させることが可能であり、このとき可動接点5の変形に追従して、カバーシート11と共に導光層15が比較的自由に変形することが可能となっている。
【0045】
図1に示すように、堰体12で囲まれている領域の内部において、基板1の表面1aに発光素子8が実装されている。発光素子8は、透光性のケース内に発光ダイオードの収納された発光ダイオードパッケージである。発光素子8は、基板1の表面1aに接着などの手段で固定されており、且つ発光素子8の導通端子が、基板1に設けられた導電層に半田付けされている。または、発光素子8は、基板1の表面にベアチップが実装され且つ導光層で覆われた表面実装型であってもよい。
【0046】
カバーシート11には穴11bが形成されており、発光素子8は前記穴11b内を通過してカバーシート11よりも表側に突出している。その結果、導光層15が形成される過程において、発光素子8は少なくともその上方部分が導光層15内に埋め込まれる。
【0047】
導光層15の表側が操作シート21で覆われている。操作シート21はウレタンなどの可撓性で軟質な合成樹脂材料(合成ゴム材料)で形成されている。操作シート21は、前記堰体12の表面に設置されて位置決めされ、または前記堰体12のさらに外側に設けられた他の支持体に設置されて位置決めされ、操作シート21は堰体12の表面に接着され、または前記他の支持体に接着されている。
【0048】
前記導光層15の表面15aが平滑であるため、導光層15の表面15aと操作シート21の裏面21aとの間の空気層22の厚さをわずかなものにでき、また操作シート21を導光層15の表面15aに密着させて、前記空気層22を無くすことも可能である。
【0049】
操作シート21は透光性であり、その表面21bがマスク層23で覆われている。マスク層23は光を透過しない塗装膜などである。操作シート21の表面21bでは、可動接点5が設けられている領域の真上に、前記マスク層23が部分的に除去されて操作指示部25が形成されている。例えば操作指示部25で、マスク層23の一部が数字や記号のパターンで除去されており、指30で操作すべき部分を認識しやすくしている。
【0050】
前記入力装置の操作方法および動作について説明する。
図1に示す発光素子8が点灯すると、発光素子8から発せられる光が導光層15内を伝播する。カバーシート11が透光性である場合は、光が、カバーシート11を透過して金属である可動接点5の表面や外側接点3の表面で乱反射し、カバーシート11の表面11aまたは裏面11cに反射膜が形成されているときは、光が前記表面11aまたは裏面11cで反射される。反射された光は、透光性の導光層15の内部または透光性の押圧体13の内部を伝播し、透光性の操作シート21を透過して操作指示部25に与えられる。操作指示部25において、マスク層23が文字や記号のパターンで除去された領域内を光が透過して、操作者が暗所でも操作すべき場所を認識できるようになる。
【0051】
図4に示す検出回路40の動作は、スイッチS1が(i)側に切換えられているときが静電容量の検出モードである。静電容量の検出モードでは、スイッチS2が一定時間(iii)側に切換えられて、電源41から外側接点3および可動接点5に電荷がチャージされる。スイッチS2は、一定時間だけ(iii)側に切換えられた後に(iv)側に切換えられる。(iv)側に切換えられたときに、比較器42によって、電源41から与えられる比較電圧と、外側接点3および可動接点5の電位とが比較される。指30が操作シート21の操作指示部25に触れると、図4に示すように、可動接点5と内側接点4との間の容量C2や他の結合容量に加えて、可動接点5と指30との間に容量C1が形成されるために、外側接点3と可動接点5の電位が変化する。比較器42での比較結果が出力端子(Out1)から得られ、この出力から指が操作指示部25に触れたか否か検出される。
【0052】
あるいは、スイッチS2を比較的短いサイクルで(iii)側と(iv)側に切り替え、外側接点3と可動接点5がある一定の電位まで充電される時間または切り替え回数を監視する。指が操作指示部25に触れて前記容量C1が形成される際の充電時間の変化を検出することで、指30が触れたか否かを検出することも可能である。
【0053】
また、スイッチS1が(ii)側に切換えられているときがスイッチ入力の検出モードである。指30で操作指示部25が押されると、操作シート21を介して押圧体13が基板1に向けて押され、押圧体13によって可動接点5が押し潰されるように変形し、可動接点5が内側接点4に接触する。このとき、図4に示す検出回路40の出力端子(Out2)に電流が流れ、スイッチ機構2がONに切換えられたことを検出できる。
【0054】
スイッチS1は、(i)側と(ii)に交互に切換えられて、静電容量の検出モードとスイッチ入力の検出モードとが交互に設定される。この場合、スイッチS1の切換え周期は、静電容量の検出モードにおけるスイッチS2の切換え周期よりも十分に長く設定される。または、通常は静電容量の検出モードに設定されており、指30が操作指示部25に触れたことが静電容量の変化で検出されたら、スイッチS1が(ii)側に切換えられて、スイッチ入力の検出モードが設定されてもよい。
【0055】
図1に示す入力装置は、静電容量の検出電極として機能する可動接点5の表面と、操作シート21の表面21bとの間に、カバーシート11と導光層15および操作シート21が介在しているのみであり、または、操作シート21の表面21bとの間に、カバーシート11と押圧体13および操作シート21が介在しているのみである。また、導光層15の表面15aが平坦な面であるため、導光層15と操作シート21との間に空気層22が形成されたとしてもその厚さはきわめて小さい。そして、導光層15と操作シート21の比誘電率が空気層よりも高く、例えば比誘電率を3以上に設定することが可能である。そのため、操作指示部25に指30が触れたときの指30と可動接点5との間の容量C1を大きくでき、静電容量の検出モードでの検出感度を高くできる。
【0056】
図1に示す入力装置は、外側接点3が、可動接点5の周縁部5aよりも外側に広くはみ出しているため、操作指示部25に指30が触れたときに、指30と外側接点3との間の容量も大きくでき、さらに検出感度を高めることができる。
【0057】
前記押圧体13は導光層15よりも剛性が高くヤング率も高いために、指30の押圧力によって、押圧体13を介して可動接点5を変形させるときに、導光層15がカバーシート11とともに可動接点5の変形に追従して容易に変形できるようになる。したがって、指30で操作指示部25を押圧する際の負荷が小さく、押圧操作感触が良好になる。
【0058】
次に、前記入力装置の製造方法の一例を説明する。
まず、基板1の表面1aに外側接点3と内側接点4を形成する。可動接点5は、予めカバーシート11の裏面11cに接着しておき、このカバーシート11で基板1の表面1aを覆う。このとき、可動接点5の周縁部5aが外側接点3の上に乗るように、カバーシート11を位置決めし、基板1の表面1aとカバーシート11とを接着層を介して固定する。
【0059】
図1に示すように、カバーシート11の表面11aに堰体12と押圧体13が固着されている。この堰体12と押圧体13は、基板1の表面1aにカバーシート11を設置した後に、カバーシート11の表面11aに固着させることも可能であるが、基板1の表面1aに設置する前のカバーシート11に予め堰体12と押圧体13とを固着させておくことが好ましい。
【0060】
図2は、堰体12と押圧体13をカバーシート11に固着する工程の一例としてインプリント法を示している。この方法は、型基板50の表面に、堰体12を形成するための凹部51と押圧体13を形成するために凹部52を形成しておき、凹部51と凹部52内に、シリコーンやウレタンを主体とした光硬化性の液状の合成樹脂を充填する。そして、型基板50の表面にカバーシート11を設置し、凹部51,52内の樹脂にUVなどの光エネルギーを与えて樹脂を硬化させて、堰体12および押圧体13をカバーシート11に固着させて形成する。カバーシート11を堰体12および押圧体13と共に型基板50から剥離した後に、基板1の表面1aに設置する。
【0061】
または、カバーシート11の表面に印刷工程によって、樹脂層を形成し、この樹脂層で堰体12および押圧体13を形成することも可能である。
【0062】
基板1の表面1aに、堰体12と押圧体13を有するカバーシート11が設置された後に、堰体12で囲まれた領域内に液体状の光効果型樹脂が供給され、UVが照射されるなどして前記樹脂が硬化させられて、導光層15が形成される。さらに導光層15の上に操作シート21が設置されて、入力装置が完成する。
【0063】
図3は本発明の第2の実施の形態の入力装置を示す断面図である。
図3に示す入力装置は、導光層115の構成が図1に示す第1の実施の形態の入力装置と相違しており、それ以外の構成は第1の実施の形態と同じである。
【0064】
図3に示す入力装置は、導光層115が三層構造であり、下側に低屈折率層115bが上側に低屈折率層115cが形成され、中間部分に高屈折率層115aが形成されている。発光素子8は、その一部が高屈折率層115aの内部に埋め込まれている。そして、操作指示部25の下側には高屈折率層115aが存在していない。
【0065】
発光素子8から発せられて高屈折率層115aに与えられた光は、高屈折率層115aと低屈折率層115bとの境界面、および高屈折率層115aと低屈折率層115cとの境界面で反射される確率が高くなるために、高屈折率層115a内を伝播する光の効率を高くできる。その結果、操作指示部25を照光する光の光量を多くでき、明瞭な照光表示が可能になる。
【0066】
図3に示す入力装置は、堰体12で囲まれた領域内に低屈折率の液状のシリコーンやウレタン樹脂を供給し、UVを照射して硬化させた後に、高屈折率のシリコーンやウレタン樹脂を供給して硬化させ、さらに低樹脂屈折率のシリコーンやウレタン樹脂を供給して硬化させることで、導光層115を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態の入力装置を示す断面図、
【図2】入力装置の製造方法の一例を示す説明図、
【図3】本発明の第2の実施の形態の入力装置を示す断面図、
【図4】検出回路の回路図、
【符号の説明】
【0068】
1 基板
2 スイッチ機構
3 外側接点
4 内側接点
5 可動接点
8 発光素子
11 カバーシート
12 堰体
13 押圧体
15 導光層
21 操作シート
25 操作指示部
30 指
40 検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の表面に互いに分離して形成された外側接点および内側接点と、前記外側接点と導通するとともに前記内側接点に対向する弾性変形可能な可動接点と、前記基板の表面から離れた位置に配置された可撓性の操作シートとを有する入力装置において、
前記基板と前記操作シートとの間に光を透過させる導光層が設けられており、前記操作シートの表面に指が触れると、いずれも誘電体である前記操作シートおよび前記導光層を挟んで対向する前記指と前記可動接点との間の静電容量の変化が検出可能とされ、
前記操作シートが指で押されると、前記可動接点が前記内側接点に接触してスイッチ入力が可能とされることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記操作シートが指で押されたときに、前記可動接点の上を覆う前記導光層が前記可動接点と共に変形して、前記可動接点が前記内側接点に接触する請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記可動接点と前記操作シートとの間に、前記可動接点を押圧する押圧体が設けられており、前記押圧体の少なくとも一部が前記導光層の中に埋まっている請求項1または2記載の入力装置。
【請求項4】
前記基板の上に発光素子が設けられており、前記発光素子の少なくとも一部が前記導光層の中に埋まっている請求項1ないし3のいずれかに記載の入力装置。
【請求項5】
前記基板の上に前記可動接点を囲む堰体が形成されて、前記堰体で囲まれた領域に前記導光層が形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の入力装置。
【請求項6】
前記基板上の凹凸部が前記導光層で覆われており、前記導光層の前記操作シートに対面する表面が平滑である請求項5記載の入力装置。
【請求項7】
前記基板の表面および前記可動接点の表面を覆う可撓性のカバーシートが設けられ、前記カバーシートの上に前記導光層が形成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の入力装置。
【請求項8】
前記基板の表面および前記可動接点の表面を覆う可撓性のカバーシートが設けられ、前記カバーシートの上に前記導光層が形成されており、前記押圧体が前記カバーシートに固着されている請求項4記載の入力装置。
【請求項9】
前記基板の表面および前記可動接点の表面を覆う可撓性のカバーシートが設けられ、前記カバーシートの上に前記導光層が形成されており、前記堰体が前記カバーシートに固着されている請求項5または6記載の入力装置。
【請求項10】
表面に互いに分離して形成された外側接点および内側接点と、前記外側接点に導通するとともに前記内側接点に対向する弾性変形可能な可動接点とを有する基板を使用し、
(a)前記基板の表面で前記可動接点を囲む領域に堰体を形成する工程と、
(b)前記堰体で囲まれた領域内に液体状の樹脂を供給し且つ硬化させて光を透過させる導光層を形成する工程と、
(c)前記導光層の上に可撓性の操作シートを設置する工程とを有し、
前記操作シートの表面に指が触れると、いずれも誘電体である前記操作シートおよび前記導光層を挟んで対向する前記指と前記可動接点との間の静電容量の変化が検出可能とされ、前記操作シートが指で押されると、前記可動接点が前記内側接点に接触してスイッチ入力が可能とされることを特徴とする入力装置の製造方法。
【請求項11】
前記基板に発光素子を実装し、前記(b)の工程で、前記発光素子の少なくとも一部を前記導光層内に埋め込む請求項10記載の入力装置の製造方法。
【請求項12】
前記基板の表面に、前記可動接点を覆う可撓性のカバーシートを設置し、このカバーシートの上に前記導光層を形成する請求項10または11記載の入力装置の製造方法。
【請求項13】
前記カバーシートの表面に、前記可動接点と前記操作シートとの間に位置する押圧体を固着し、前記(b)の工程で、前記押圧体の少なくとも一部を前記導光層に埋め込む請求項12記載の入力装置の製造方法。
【請求項14】
予め前記堰体が固着された前記カバーシートを使用する請求項12または13記載の入力装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−123367(P2010−123367A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295253(P2008−295253)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】