説明

入力装置

【課題】主に各種電子機器の操作に使用される入力装置に関し、薄型化が図れ、多様で確実な操作の可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】基材21下面に発光部14Aを向けて配置された発光素子14を、受光素子15の側に傾斜させることによって、傾斜した発光素子14の光を直接基材21に入射させることができるため、発光素子14の光を反射するための導光体等の部品が不要になると共に、全体の高さを低いものに形成でき、薄型化が図れ、多様で確実な操作の可能な入力装置20を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の操作に用いられる入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器、特に携帯電話や音楽プレーヤ等の携帯端末機器の高機能化や小型化が進むに伴い、これらの操作に用いられる入力装置にも、多様で確実な操作を行えるものが求められている。
【0003】
このような従来の入力装置について、図4及び図5を用いて説明する。
【0004】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0005】
図5は従来の入力装置の断面図であり、同図において、1は絶縁樹脂製のケース、2は発光ダイオード等の発光素子、3はフォトトランジスタ等の受光素子で、ケース1内底面の右方に発光素子2が発光部2Aを上方に向けて配置されると共に、中間部には受光素子3が受光部を上方に向けて配置されている。
【0006】
そして、4は光透過性で絶縁樹脂製の導光体、5は明色の光透過性で絶縁樹脂製の基材で、発光素子2と受光素子3の上方に配置された、導光体4の中間部にはレンズ部4Aが形成されると共に、中間部に薄肉状の操作部5Aが形成された基材5が、ケース1や導光体4を覆っている。
【0007】
また、6は上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成されたフィルム状の配線基板で、発光素子2と受光素子3が半田付け等によって配線パターンに接続されると共に、配線基板6下面には略円形状の中央固定接点7Aと、これを囲む略馬蹄状または略リング状の外側固定接点7Bから形成された、固定接点7が設けられている。
【0008】
さらに、8は略ドーム状で導電金属薄板製の可動接点で、フィルム状のカバーシート9によって配線基板6下面に貼付されると共に、可動接点8の外周が外側固定接点7Bに載置され、可動接点8の上面中央が中央固定接点7Aと所定の間隙を空けて対向するようにして、入力装置10が構成されている。
【0009】
そして、このように構成された入力装置10が、図4の斜視図に示すように、携帯電話や音楽プレーヤ等の電子機器40の、液晶表示素子等の表示部40Aが形成された操作面に、基材5を上面にして装着されると共に、発光素子2や受光素子3、中央固定接点7Aや外側固定接点7Bが配線パターン等を介して、機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0010】
以上の構成において、表示部40Aに電話番号や曲名等の複数のメニュー41が表示された状態で、入力装置10の基材5上面に指を触れて、前後または左右方向に動かすと、電子回路が発光素子2を発光させ、基材5からの反射光によって受光素子3がこの指の動きを検出する。
【0011】
つまり、図5に示すように、基材5下面に発光部2Aを向けた発光素子2が発光すると、この光は先ず導光体4内に入射して、左上方向へ反射した後、基材5中間部の操作部5A内に入射する。
【0012】
そして、操作部5A上面に接触した指の指紋等の凹凸によって、この光が下方へ反射し、この導光体4中間部のレンズ部4Aを通った反射光を、受光素子3が受光して、指の移動方向と移動量、すなわち指がどの方向へどれだけ動いたかを検出する。
【0013】
また、この入力装置10から出力された指の移動に応じて、電子回路が表示部40Aに表示されたカーソル42を前後または左右方向に移動し、カーソル42がスクロール操作されて、所望のメニュー41の選択が行われる。
【0014】
さらに、このようにカーソル42が所望のメニュー41上に位置した状態で、基材5上面を押圧操作すると、入力装置10全体が下方へ移動し、配線基板6下面に貼付された略ドーム状の可動接点8の中央部が、機器の筐体(図示せず)等によって押圧され、所定の押圧力が加わると、可動接点8がクリック感を伴って上方へ弾性反転し、可動接点8の上面中央が中央固定接点7Aに接触することによって、中央固定接点7Aと外側固定接点7Bが、可動接点8を介して電気的に接続された状態となる。
【0015】
なお、基材5上面への押圧力を解除すると、弾性復帰力によって可動接点8が下方へ弾性反転し、可動接点8の上面中央が中央固定接点7Aから離れて、中央固定接点7Aと外側固定接点7Bが電気的に切断された状態になると共に、入力装置10も上方へ移動して元の状態に復帰する。
【0016】
そして、この固定接点7の電気的接離に応じて、電子回路が表示部40Aの表示を切換え、例えば、選択したメニュー41の確定や、あるいは次メニューの表示等が行われる。
【0017】
つまり、表示部40Aの表示を見ながら、基材5上面に指を触れ、これを前後左右方向に移動することによって、所望のメニュー41の選択が行えると共に、基材5上面を押圧操作することによって、選択したメニュー41の確定や次メニューの表示等が行えるように構成されているものであった。
【0018】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2007−115231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上記従来の入力装置においては、発光素子2の上方への光を導光体4内で反射させて、左上方向の操作部5A内に入射させているため、導光体4をある程度の高さ寸法を有するものに形成する必要があり、全体の薄型化を図ることが困難であるという課題があった。
【0021】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、薄型化が図れ、多様で確実な操作の可能な入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために本発明は、基材下面に発光部を向けて配置された発光素子を、受光素子の側に傾斜させて入力装置を構成したものであり、傾斜した発光素子の光を直接基材に入射させることができるため、発光素子の光を反射するための導光体等の部品が不要になると共に、全体の高さを低いものに形成でき、薄型化が図れ、多様で確実な操作の可能な入力装置を得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、薄型化が図れ、多様で確実な操作の可能な入力装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態による入力装置の断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同断面図
【図4】電子機器の斜視図
【図5】従来の入力装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を用いて説明する。
【0026】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0027】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による入力装置の断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、11はポリフタルアミド等の絶縁樹脂製のケースで、銅合金等の導電金属薄板をインサート成形、あるいはめっきやレーザカット、エッチング加工等によって、内底面の後右方には複数の電極12Aが、後左方には複数の電極12Bが形成されると共に、前方には略円形状の中央固定接点13Aと、これを囲む略馬蹄状または略リング状の外側固定接点13Bから形成された、固定接点13が設けられている。
【0028】
そして、これらの電極12Aや12B、固定接点13の端部がケース11内、あるいはケース11の側壁等を延出して、ケース11下面には、複数の端子部12Cや13Cが形成されている。
【0029】
また、14は発光ダイオード等の発光素子、15は数十個のフォトトランジスタ等が前後左右方向に配列された受光素子で、発光素子14が電極12Aに、受光素子15が電極12Bに各々半田付け等によって接続固着されると共に、発光素子14は受光素子15の側に傾斜して、発光部14Aを左上方に向けて配置されている。
【0030】
さらに、16はガラス板等に硬化性シリコーンによって凹凸部が形成されたレンズ体、17は鋼板等のカバーで、受光素子15の上方に配置されたレンズ体16の中間部には、レンズ部16Aが設けられると共に、カバー17がケース11にかしめ等によって固着されて、ケース11上面を覆っている。
【0031】
また、18は略ドーム状で銅合金や鋼等の導電金属薄板製の可動接点、19はポリイミド等のフィルム状のカバーシートで、図3の断面図に示すように、可動接点18の下面中央が中央固定接点13Aと所定の間隙を空けて対向するように、可動接点18の外周が外側固定接点13B上に載置されると共に、この上面を覆うようにカバーシート19がケース11に貼付されている。
【0032】
さらに、可動接点18上方のカバー17には、上下方向に弾性変形可能なアーム部17Aが設けられ、この先端下面に突出した押圧部17Bが、カバーシート19を介して可動接点18の中央部に当接すると共に、図2に示すように、発光素子14上方には角孔部17Cが、受光素子15上方には丸孔部17Dが各々形成されて、入力装置20が構成されている。
【0033】
そして、このように構成された入力装置20の上方に、前後左右が10mm前後の寸法で、明色の光透過性でポリカーボネート等の絶縁樹脂製の基材21が配置されると共に、この入力装置20が、図4の斜視図に示すように、携帯電話や音楽プレーヤ等の電子機器40の、液晶表示素子等の表示部40Aが形成された操作面に、基材21を上面にして装着される。
【0034】
さらに、ケース11下面の複数の端子部12Cや13Cが半田付け等によって、電子機器40内に収納された配線基板の配線パターン(図示せず)に実装装着され、発光素子14や受光素子15、中央固定接点13Aや外側固定接点13Bが配線パターン等を介して、機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0035】
以上の構成において、表示部40Aに電話番号や曲名等の複数のメニュー41が表示された状態で、入力装置20の基材21上面に指を触れて、前後または左右方向に動かすと、電子回路が発光素子14を発光させ、基材21からの反射光によって受光素子15がこの指の動きを検出する。
【0036】
つまり、図1に示すように、受光素子15の側に傾斜した発光素子14の発光部14Aが発光すると、この光が角孔部17Cを通って左上方の基材21内に直接入射した後、基材21上面に接触した指の指紋等の凹凸によって下方へ反射する。
【0037】
そして、この光が丸孔部17Dを通って、レンズ体16中間部のレンズ部16Aで集光され、この基材21からの反射光を受光素子15が受光して、指の移動方向と移動量、すなわち指がどの方向へどれだけ動いたかを検出する。
【0038】
また、この入力装置20から出力された指の移動に応じて、電子回路が表示部40Aに表示されたカーソル42を前後または左右方向に移動し、カーソル42がスクロール操作されて、所望のメニュー41の選択が行われる。
【0039】
さらに、このようにカーソル42が所望のメニュー41上に位置した状態で、図3に示すように、基材21上面を押圧操作すると、基材21下面の突起部21Aがカバー17の押圧部17Bを押圧してアーム部17Aが撓み、押圧部17Bがカバーシート19を介して可動接点18の中央部を押圧し、所定の押圧力が加わると、可動接点18がクリック感を伴って下方へ弾性反転し、可動接点18の下面中央が中央固定接点13Aに接触することによって、中央固定接点13Aと外側固定接点13Bが、可動接点18を介して電気的に接続された状態となる。
【0040】
なお、基材21上面への押圧力を解除すると、弾性復帰力によって可動接点18が上方へ弾性反転し、可動接点18の下面中央が中央固定接点13Aから離れて、中央固定接点13Aと外側固定接点13Bが電気的に切断された状態になると共に、基材21やアーム部17Aも上方へ移動して元の状態に復帰する。
【0041】
そして、この固定接点13の電気的接離に応じて、電子回路が表示部40Aの表示を切換え、例えば、選択したメニュー41の確定や、あるいは次メニューの表示等が行われる。
【0042】
つまり、表示部40Aの表示を見ながら、基材21上面に指を触れ、これを前後左右方向に移動することによって、所望のメニュー41の選択が行えると共に、基材21上面を押圧操作することによって、選択したメニュー41の確定や次メニューの表示等が行えるように構成されている。
【0043】
また、この時、基材21下面に配置された発光素子14が受光素子15の側に傾斜して設けられ、発光部14Aからの光が左上方の基材21内に直接入射した後、この基材21からの反射光を受光素子15が受光して指の移動を検出することによって、発光素子14の光を反射するための導光体等の部品が不要になると共に、全体の高さを低い寸法に形成できるようになっている。
【0044】
すなわち、発光素子14を受光素子15の側に傾斜し、発光部14Aを左上方に向けて配置することによって、導光体等の部品を用いることなく、受光素子15の光を直接基材21内に入射させることで全体を低背化し、入力装置20の薄型化を図った構成となっている。
【0045】
さらに、こうした指の移動を検出し、メニュー41等の選択を行うための発光素子14や受光素子15をケース11の後方に、押圧操作によって選択したメニュー41の確定等を行うための固定接点13や可動接点18を、ケース11の前方に配置することによって、より薄型化を図ると共に、多様な操作を確実に行うことが可能なように構成されている。
【0046】
つまり、発光素子14や受光素子15と、固定接点13や可動接点18をケース11の前後に並べて併設することで、ケース11下面に固定接点13や可動接点18を重ねて配置する必要がないため、全体の薄型化を図ることが可能になると共に、これらの上方の基材21上面に指を触れたまま、移動や押圧を行うことによって、メニュー41の選択や確定といった多様な操作を、容易で確実に行えるようになっている。
【0047】
なお、以上の説明では、電子機器40の表示部40Aが形成された上面の操作面に、入力装置20を装着した構成について説明したが、電子機器40の右側面や左側面、あるいは背面に入力装置20を装着し、この操作によってメニュー41の選択や確定等を行う構成としても、本発明の実施は可能である。
【0048】
また、入力装置20の操作によって、表示部40Aに表示されたカーソル42を移動して、メニュー41の選択等を行う構成について説明したが、表示部40Aに地図や写真等を表示すると共に、指の移動によって矢印状のポインタ等を移動し、押圧操作によってこれらの拡大や縮小を行う構成としてもよい。
【0049】
このように本実施の形態によれば、基材21下面に発光部14Aを向けて配置された発光素子14を、受光素子15の側に傾斜させることによって、傾斜した発光素子14の光を直接基材21に入射させることができるため、発光素子14の光を反射するための導光体等の部品が不要になると共に、全体の高さを低いものに形成でき、薄型化が図れ、多様で確実な操作の可能な入力装置20を得ることができるものである。
【0050】
また、発光素子14や受光素子15と、固定接点13や可動接点18をケース11の前後に並べて併設することによって、より全体の薄型化を図ることが可能になると共に、多様な操作を容易で確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明による入力装置は、薄型化が図れ、多様で確実な操作の可能なものを実現することができるという有利な効果を有し、主に各種電子機器の操作用として有用である。
【符号の説明】
【0052】
11 ケース
12A、12B 電極
12C、13C 端子部
13 固定接点
13A 中央固定接点
13B 外側固定接点
14 発光素子
14A 発光部
15 受光素子
16 レンズ体
16A レンズ部
17 カバー
17A アーム部
17B 押圧部
17C 角孔部
17D 丸孔部
18 可動接点
19 カバーシート
20 入力装置
21 基材
21A 突起部
40 電子機器
40A 表示部
41 メニュー
42 カーソル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性の基材下面に発光部を向けて配置された発光素子と、この発光素子の上記基材からの反射光を受光する受光素子からなり、上記発光素子を上記受光素子の側に傾斜させて設けると共に、上記反射光から受光素子が上記基材上面の指の移動を検出する入力装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−134099(P2012−134099A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287292(P2010−287292)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】