説明

入力装置

【課題】 照明光を、キートップなどに形成された照光指示部に集中的に与えて、照光指示部を均一な明るさで照光できる入力装置を提供する。
【解決手段】 表側基材21と裏側基材22との間にスペーサ23が挟まれたメンブレン積層体20が設けられ、裏側基材22に固定電極26が設けられ、表側基材21の裏面21bに、可動電極27a,27bと配線層28が設けられている。表側基材21の表面21aに遮光層31が印刷で形成され、遮光層31に開口部32bが開口し、この開口部32bがキートップの照光指示部に対向している。メンブレン積層体20の裏側に導光層3が設けられ、導光層3に開口部32bに対向する乱反射部35bが形成されている。遮光層31がメンブレン積層体20の表面に形成されているために、カバー層を別個に設ける必要がなく、開口部32bを介して照光指示部に照明光を集中して与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性で可撓性の表側基材を押圧することで電極が接触状態となる入力装置に係り、特に背部から照明光が与えられる入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ用のキーボード装置、携帯用機器やその他の電子機器の操作装置、遠隔操作装置、自動車に搭載された操作装置などには、背部から照明光で照光される押圧操作式の入力装置が設けられている。
【0003】
特許文献1に記載されたキーボード装置は、第1のシートと第2のシートとが絶縁スペーサを挟んで積層されたメンブレンシートが設けられ、第1のシートと第2のシートの対向部にそれぞれ接点が設けられている。メンブレンシートの前方にキートップが位置し、キートップで第1のシートが押されると、接点どうしが導通する。このキーボード装置は、メンブレンシートが透光性であり、背部に設けられた導光板からメンブレンシートに照明光が与えられる。キートップには文字を表わす透光性の表示部が形成されており、照明光によって表示部が照らされる。
【0004】
特許文献1に記載されたキーボード装置は、メンブレンシートの表側に保護シートが積層され、保護シートに遮光層が形成されている。この遮光層はキートップの外周縁部に沿う四角の枠状に形成されて、隣り合うキートップの間の隙間の下側に位置している。
【0005】
特許文献2に記載されたキー入力装置は、光透過性のフレキシブルなフィルムで構成されたプリント配線基板が二つ折りとなって互いに対向し、その対向面に導電体とスイッチパターンが対向して形成されている。プリント配線基板の前方に透明なフィルムで形成されたキー入力部材が設けられており、このキー入力部材の表面に、キー操作部を除いて遮光膜が形成されている。フレキシブル配線部材の裏側にELパネルが配置され、ELパネルから発せられた光が、プリント配線基板を透過して、キー入力部材のキー操作部を照光する。
【0006】
特許文献3には、照光式パネルスイッチが開示されている。この照光式パネルスイッチは、透光性を有するプリント基板の前方にスペーサを挟んで可動接点シートが設けられ、プリント基板と可動接点シートの対向面にそれぞれ接点が設けられている。可動接点シートの前方に操作パネルが設けられ、操作パネルに形成されたエンボス加工部が押されると、可動接点シートが変形して接点どうしが接触する。
【0007】
この照光式パネルスイッチは、透光性を有するプリント基板の裏側に発光ダイオードが実装されている。プリント基板の表側には、接点が配置された円形領域を除いてシルク印刷が施されて遮光層が形成されている。発光ダイオードから発せられた光は、円形領域を通過して前方へ与えられ、可動接点シートを透過して、操作パネルのエンボス加工部に形成された表示部が照らされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−129374号公報
【特許文献2】特開2000−243177号公報
【特許文献3】特開平7−282677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されたキーボード装置は、第1のシートと第2のシートが積層されたメンブレンシートとは別に、遮光層を有する保護シートが設けられているため、積層するシート数が多くなり、薄型化を阻害している。
【0010】
また、保護シートに形成された遮光層は、キートップの外周縁部に沿う四角い枠状であるため、照明光がキートップの内面の全面に与えられる。そのため光の利用効率が悪く、キートップの外周縁部から光が漏れ出やすくなって、キートップに形成された表示部に光を集中して与えることが難しい。
【0011】
特許文献2に記載されたキー入力装置は、操作部の最表部に位置するキー入力部材の表面に遮光膜が形成され、ELパネルからの光がキー入力部材の背面の全面に与えられるため、キー入力部材に形成されたキー操作部以外の部分から前方へ光が漏れ出やすい欠点がある。
【0012】
特許文献3に記載された照光式パネルスイッチは、透光性のプリント基板の表面にシルク印刷による遮光層が形成されているが、それよりも前方に透光性のスペーサと可動接点シートが設けられているため、遮光層が存在しない円形領域を透過した光が、スペーサや可動接点シートで乱反射しやすい。そのため、前方に位置する操作パネルのエンボス加工部のみならず、その周囲にも光が及ぶことになり、エンボス加工部の表示のみを効果的に照光することが難しい。
【0013】
また、透光性のプリント基板の表面に、接点に導通する配線層とシルク印刷による遮光層の双方が形成されている。配線層と遮光層が同じ面に形成されているため、遮光層によって配線層のパターン形状を完全に覆い隠すことが難しい。
【0014】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、背部から与えられる照明光を、照光が必要な箇所に向けて部分的に集中して与えやすくなり、照明が必要な箇所を効果的に照光でき、且つ不要な漏れ光を抑制しやすい入力装置を提供することを目的としている。
【0015】
また本発明は、複数の動作部と複数の押圧操作部が設けられているものにおいて、多数形成されている配線層を効果的に覆い隠すことができる入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、透光性で可撓性の表側基材と、前記表側基材よりも裏側に配置された透光性の裏側基材と、前記表側基材と前記裏側基材との間隔を保つスペーサと、前記表側基材の裏面と前記裏側基材の表面のそれぞれに設けられて空隙部を介して互いに対向する電極と、前記表側基材の裏面と前記裏側基材の表面の少なくとも一方に形成されて前記電極に導通する配線層と、前記裏側基材および前記表側基材へ裏側から照明光を与える照光部材とが設けられ、
前記表側基材の表面に、前記照明光を遮る遮光層が形成されており、前記遮光層で前記配線層が覆われているとともに、前記遮光層に、前記照明光を前方へ通過させる開口部が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の入力装置は、電極を有して変形する表側基材の表面に遮光層が形成されているため、遮光層を設けるための別のシートが不要になり、シートの枚数を減らして薄型化することが可能である。また、配線層は遮光層よりも裏側に位置する面に形成されているため、遮光層によって配線層を効果的に覆い隠すことができる。
【0018】
なお、本明細書での電極とは、表側基材に外力が作用していないときに互いに離れてOFFになり、表側基材が押されて電極どうしが接触したときにONとなる接点スイッチを構成するものである。または、電極どうしの接触面積の変化に応じて抵抗値が変化する可変出力を得るものであってもよい。
【0019】
本発明は、前記遮光層を、前記表側基材の表面に形成された印刷層とすることが可能である。
【0020】
本発明は、前記電極が対向する動作部の前方に、前記表側基材を押圧して前記電極どうしを接触させる押圧操作部が設けられ、前記押圧操作部に照光指示部が形成されており、前記遮光層の開口部が、前記照光指示部に対向する位置に形成されているものとして構成できる。
【0021】
本発明は、前記動作部が複数設けられ、前記押圧操作部はそれぞれの前記動作部に対向して複数設けられており、複数の前記押圧操作部は、それぞれ異なる箇所に前記照光指示部が形成されているものとすることが可能である。
【0022】
本発明は、異なる前記押圧操作部に対向している前記開口部の形状が互いに相違していてもよい。また、前記押圧操作部に対する前記開口部の対向箇所が、押圧操作部ごとに互いに相違していてもよい。
【0023】
すなわち、照明光を押圧操作部の全体領域に与えるのではなく、開口部で照明光を通過させて押圧操作部の一部である照光指示部に集中的に与えることにより、照光指示部を効果的に照光することが可能になる。また、光の透過領域を開口部で制限しているため、照光指示部以外の例えば押圧操作部の縁部などから前方へ光が漏れ出ることが生じにくい。
【0024】
本発明の入力装置は、1つの照光指示部に複数の表示部が形成されており、前記配線層が、隣り合う前記表示部の間を通過していることが好ましい。
【0025】
本発明は、前記押圧操作部が、前記照光指示部を有するキートップとこのキートップを昇降自在に支持する支持機構とを有し、前記表側基材の表側に重ねられた支持板に前記支持機構が支持されており、前記開口部が前記支持板に形成された穴部または切り欠き部を介して前記照光指示部に対向しているものとして構成できる。
【0026】
上記発明では、表側基材と裏側基材およびスペーサを有するメンブレン積層体が支持板の裏側に位置しているため、メンブレン積層体に、支持機構を設けるための挿通穴や切欠きを形成することが不要になり、表側基材の表面において遮光層で覆われる領域を広くでき、照明光が照光指示部以外の領域に漏れにくくなる。また、支持板には、支持機構を配置したり他の部材を取り付けるための穴部や切欠きが形成されるが、この穴部や切欠きを、表側基材の表面に設けられた遮光層で裏側から塞ぐことができ、照明光が支持板の前方へ漏れ出にくくなる。
【0027】
また、本発明は、前記配線層は、前記開口部を迂回する経路で形成されていることが好ましい。
【0028】
上記構成では、配線層が開口部を通過する照明光を遮ることがなく、照明指示部を明るく照らすことが可能になる。
【0029】
本発明は、前記配線層は、前記表側基材の裏面に形成されているものが好ましい。
1つの表側基材の裏面に配線層を形成し、表面に遮光層を設けることで、互いの位置ずれによって、配線層が開口部に露出することが生じにくく、配線層を遮光層の裏側に隠しやすくなる。
【0030】
本発明は、前記照光部材は、内部に光を導く導光層であり、それぞれの前記開口部に対向する部分に乱反射部が設けられているものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、背部から与えられる光を照明が必要な箇所に集中的に与えることができ、光を有効に利用して照光指示部を効果的に照らすことができ、不要な部分からの漏れ光を防止しやすくなる。
【0032】
また、所定パターンで形成された配線層を、遮光層によって効果的に覆って隠すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施の形態の入力装置の一部を示す断面図、
【図2】本発明の第1の実施の形態の入力装置の一部を示す分解斜視図、
【図3】複数の押圧操作部の配列を示す平面図、
【図4】表側基材の表面に形成された遮光層と開口部を示す平面図、
【図5】表側基材の裏面に形成された可動電極および配線層を示す平面図、
【図6】本発明の第2の実施の形態の入力装置の一部を示す断面図、
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1ないし5に、本発明の第1の実施の形態の入力装置1が示されている。入力装置1は、ブック型またはラップトップ型あるいはディスクトップ型のパーソナルコンピュータなどに装備されるキーボード装置である。
【0035】
入力装置1に、規則的に配列する複数の押圧操作部が設けられている。図3では、複数の押圧操作部の一部が符号10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h,10i,10j,10kで示されている。
【0036】
図1は、図3に示すI−I線の断面図であり、押圧操作部10bと押圧操作部10eが設けられた部分の断面図である。図2は、押圧操作部10bが設けられている部分での各層の積層構造を示す分解斜視図である。
【0037】
押圧操作部10a〜10kは、それぞれ、キートップ15a〜15kと、キートップ15a〜15kを昇降自在に支持する支持機構とで構成されている。キートップ15a〜15kには、大きさと形状の相違するものが含まれているが、基本的な構造は同じである。
【0038】
図1に示すように、入力装置1は、シャーシ2を有している。シャーシ2は、パーソナルコンピュータの本体ケースの一部である底板、または前記底板の上に設置される金属板で構成されている。
【0039】
図2にも示すように、シャーシ2の上に照光部材である導光層3が設けられている。導光層3はポリカーボネートなどの透光性の樹脂フィルムである。導光層3とシャーシ2との間に、反射シート4が設けられている。反射シート4は、導光層3との対面する境界面に金属蒸着膜や白色の塗装膜が形成されている。
【0040】
本明細書において、透光性とは、全光線透過率が90%以上のいわゆる透明であることが好ましいが、全光線透過率がそれよりも低くても内部で光を伝搬する機能を有するものであればいわゆる半透明であってもよい。例えば、全光線透過率は40%以上であればよい。
【0041】
図1と図2に示すように、導光層3の上に支持板5が設けられている。支持板5は金属板で形成されている。
【0042】
図2に示すように、押圧操作部10a〜10kが設けられる部分では、前記支持板5に穴部7が形成されている。穴部7の縁部から、一対の第1の支持片6aと一対の第2の支持片6bが上向きに折り曲げられている。あるいは、前記穴部7の代わりに、支持板5の縁部から凹状に切り込まれた切り欠き部が形成され、この切り欠き部の縁部に、第1の支持片6aや第2の支持片6bが形成されていてもよい。
【0043】
図1と図2に示すように、支持板5の上にメンブレン積層体20が設置されている。メンブレン積層体20は、表側基材21と裏側基材22、および表側基材21と裏側基材22の間に設けられたスペーサ23を有している。表側基材21は、透光性で且つ可撓性であり、PETなどの樹脂フィルムで形成されている。裏側基材22は透光性である。裏側基材22は可撓性である必要はないが、この実施の形態では、表側基材21と同じPETフィルムで形成されて、メンブレン積層体20が薄く構成されている。
【0044】
スペーサ23は、表側基材21と裏側基材22と同じPETフィルムで形成されている。ただし、スペーサ23は、表側基材21の裏面21bまたは裏側基材22の表面22aに印刷された有機絶縁層などであってもよい。
【0045】
表側基材21と裏側基材22およびスペーサ23が積層され互いに接着されてメンブレン積層体20が構成されている。メンブレン積層体20には上下に貫通する対を成す挿通穴20aおよび対を成す挿通穴20bが形成されている。図2に示すように、メンブレン積層体20が支持板5の上に設置されると、支持板5に形成された第1の支持片6a,6aが、挿通穴20a,20a内を通過して表側基材21の表面21aよりも上方へ突出し、第2の支持片6b,6bが挿通穴20b,20b内を通過して表側基材21の表面21aよりも上方へ突出する。
【0046】
挿通穴20a,20bは、押圧操作部10a〜10kが設けられているそれぞれの箇所に貫通して形成されている。ただし、図4と図5に示す表側基材21の平面図では、挿通穴20a,20bの図示を省略している。
【0047】
図1に示すように、押圧操作部10a〜10kでは、メンブレン積層体20の上に、キートップ15a〜15kを上下動自在に支える第1の可動支持部材16と第2の可動支持部材17が設けられている。
【0048】
第1の可動支持部材16は、その一端16aが支持板5に折り曲げられた第1の支持片6aに回動自在に支持され、他端16bがキートップ15a〜15kの下部に回動自在で且つ図1の図示左右方向へスライド自在に支持されている。第2の可動支持部材17は、一端17aがキートップ15a〜15kの下部に回動自在に支持され、他端17bが支持板5に折り曲げられた第2の支持片6bに回動自在で且つ図示左右方向へスライド自在に支持されている。第1の可動支持部材16と第2の可動支持部材17は、その中央部どうしが回動自在に連結されており、第1の可動支持部材16と第2の可動支持部材17とでX型の支持リンクが構成されている。このX型の支持リンクが、キートップ15a〜15kを昇降自在に支持する支持機構である。
【0049】
図1に示すように、それぞれの押圧操作部10a〜10kでは、メンブレン積層体20の表側基材21の表面21aとキートップ15a〜15kとの間に弾性部材18が設けられている。弾性部材18は合成ゴムで形成されており、弾性部材18によってそれぞれのキートップ15a〜15kがメンブレン積層体20から離れるように上向きに付勢されている。弾性部材18の下側の内部は空洞であり、この空洞内に下向きの押圧凸部18aが一体に形成されている。
【0050】
図1と図2に示すように、それぞれの押圧操作部10a〜10kでは、メンブレン積層体20に、前記押圧凸部18aと対向する動作部25が設けられている。動作部25では、スペーサ23に円形空間23aが形成されている。
【0051】
図2に示すように、円形空間23aの内部では、裏側基材22の表面22aに固定電極26が設けられている。また、円形空間23aの内部では、表側基材21の裏面21bに可動電極27a,27bが形成されている。表側基材21の裏面21bには、それぞれの可動電極27a,27bに個別に導通する複数の配線層28が形成されている。
【0052】
固定電極26と可動電極27a,27bは、カーボンを含む導電層、または、銀や銅などの低抵抗の金属材を含む導電層である。配線層28は、銀や銅などの低抵抗の金属材を含む導電層である。固定電極26は、裏側基材22の表面22aに、印刷工程によって形成されている。同様に、可動電極27a,27bと配線層28は、表側基材21の裏面21bに印刷工程で形成されている。図5には、表側基材21の裏面21bに形成された複数の可動電極27a,27b、およびそれぞれの可動電極27a,27bに導通する複数の配線層28の配線パターンが平面図で示されている。
【0053】
押圧操作部10a〜10kに設けられたキートップ15a〜15kは、透光性の合成樹脂材料によって形成されている。図1にはキートップ15b,15eの断面形状が示されている。他のキートップは、大きさや形状が相違しているが断面形状は図1に示すものに近似している。
【0054】
キートップ15a〜15kの前面15sには、白色の下地層の上に黒色または濃緑色などの表面層が形成されている。下地層と表面層は塗装やメッキなどで形成されている。キートップ15a〜15kの前面15sに照光指示部30a〜30kが設けられており、照光指示部30a〜30kでは、表面層の一部がレーザ加工などで除去され下地層が現れて、文字や記号を表示する表示部が形成されている。
【0055】
図3に示すように、それぞれのキートップ15a〜15kごとに、照光指示部30a〜30kの形成位置およびその表示内容が相違している。例えば、キートップ15bには、ほぼ中心部に照光指示部30bが設けられ、「↓」「▽」と光を意味する記号の表示部が設けられている。キートップ15dでは、照光指示部30dが左側の上部に部分的に設けられ、「Ctrl」の文字を表わした表示部が設けられている。キートップ15iには、左側に偏った位置に照光指示部30iが設けられ、「:」「;」「−」の記号を示す表示部が設けられている。
【0056】
図2と図4に示すように、メンブレン積層体20の表側基材21の表面21aに、遮光層31が形成されている。遮光層31は、光を遮蔽できる色彩の印刷層であり、例えば黒色や濃緑色などである。図4に示すように、表側基材21の表面21aには、遮光層31が部分的に存在しない複数の開口部32a〜32kが形成されている。
【0057】
図3に示すように、それぞれの開口部32a〜32kは、キートップ15a〜15kに設けられた照光指示部30a〜30kのそれぞれに下側から対向している。図2と図3に示すように、開口部32bは、キートップ15bに設けられた照光指示部30aの3つの表示部を囲む三角形状である。開口部32dは、キートップ15dに設けられた照光指示部30dの文字「Ctrl」の表示部に対向する長円形状である。押圧操作部10kに設けられたキートップ15kは左右に細長い形状であり、照光指示部30kが、左側で上方の縁部に位置している。開口部32kは、キートップ15kの左側で上方の縁部に部分的に対向するように形成されており、「Enter」と「←」の文字および記号の表示部を囲む四角形状である。
【0058】
図3と図4に示すように、遮光層31の開口部32a〜32kは、それぞれがキートップ15a〜15kに形成された照光指示部30a〜30kに対向している。そして、開口部32a〜32kとキートップ15a〜15kとの相対位置は、キートップ15a〜15kにおける照光指示部30a〜30kの形成位置に応じてそれぞれ相違している。開口部32a〜32kの形状と大きさは、これが対向する照光指示部30a〜30kにおける文字や記号の表示部の大きさとその表示部の配列に応じて互いに相違している。
【0059】
また、開口部32a〜32kの形状は、この開口部が対向しているキートップ15a〜15kの平面形状とは相違している。開口部32a,32b,32e,32f,32g,32h,32i,32jは、いずれも三角形であり、四角形のキートップの形状と相違している。開口部32c,32dはいずれも長円形であり、四角形のキートップと相違している。また、開口部32kはほぼ正方形であり、横に細長い長方形のキートップ15kの形状と相違している。
【0060】
開口部32a〜32kは、いずれもキートップ15a〜15k外周縁から外側にはみ出ることがなく、開口部32a〜32kのそれぞれの開口面積は、キートップ15a〜15kの平面での面積よりも十分に小さく、面積比が1/2以下となっている。ただし、本発明は、面積比が1/2以下に限定されるものではなく、キートップのデザインに応じて前記比率が設定可能である。
【0061】
遮光層31は、表側基材21の表面21aに印刷工程で形成されるため、印刷時のマスクなどを変えるだけで、入力装置1の多くの部品を変更することなく、開口部32a〜32kの位置と形状を容易に変更することができる。
【0062】
例えば、キーボード装置の機種によっては、キートップ15fに、記号の照光指示部30fの他に、ひらがなの「る」の文字の照光指示部30fが設けられ、キートップ15gに、記号の照光指示部30gの他に、ひらがなの「め」の文字の照光指示部30gが設けられることがある。この機種を製造するときは、遮光層31の印刷パターンを若干変更するだけで、「る」の照光指示部30fや「め」の照光指示部30gに対向する開口部を形成することが可能である。
【0063】
図5には、表側基材21の裏面21bに形成された可動電極27a,27bおよび配線層28のパターン形状と、遮光層31に形成された開口部32a〜32kとの位置関係が示されている。
【0064】
図5に示すように、可動電極27aから延びる配線層28aの一部と、可動電極27bから延びる配線層28bの一部が開口部32a〜32kの領域を通過することがあるが、これらの配線層28a,28bの一部以外の全ての配線層28は、開口部32a〜32kの領域を通過しないように、開口部32a〜32kを迂回して形成されている。すなわち、可動電極27a,27bから延びる配線層28a,28bの一部以外の全ての配線層28がその前方に位置する遮光層31で覆われて、入力装置1の前方から配線層28が見えないようになっている。また、配線層28が、照光指示部30aから30kを照光する光を遮ったり、光の強度を低下させないようになっている。
【0065】
上記のように、透光性材料で形成された表側基材21の表面21aに遮光層31が形成され、裏面21bに配線層28が形成されているため、複数の配線層28と複数の開口部32a〜32kとの相対位置を高精度に決めることができる。よって、配線層28を開口部32a〜32kの領域に接近させて形成しても、配線層28の一部が開口部の領域内にはみ出るような位置ずれが発生しにくい。
【0066】
図5に示すように、開口部32i,32jでは、可動電極27bから延びる配線層28cの一部が三角形の開口部の中心を横切っている。ただし、図3に示すように、開口部32i,32jが対向する照光指示部30i,30jでは、記号を表示する表示部が、三角形の開口部32i,32jの2つの角部に接近した位置に別れて形成されており、前記配線層28cが上下に配列された記号の表示部「:」と「;」との間、および表示部「゛」と「´」との間を通過するように形成されている。したがって、配線層28c,28cが開口部32i,32jの領域内を通過していても、この配線層28c,28cが、照光指示部30i,30jを照光する光を遮ることがなく、照光輝度に悪影響を及ぼしにくい。
【0067】
図2と図4に示すように、支持板5の裏側には導光層3が設けられ、導光層3の裏面3aの複数箇所に乱反射部35a〜35kが形成されている。乱反射部35a〜35kは、導光層3の裏面3aが部分的に細かな凹凸となるようにレーザ加工されたものである。図4に示すように乱反射部35a〜35kは、円形の領域に形成されており、それぞれが、遮光層31の開口部32a〜32kの真下に対向している。ただし、乱反射部35a〜35kは長円形状や楕円形状の領域に形成されていてもよい。
【0068】
図4に示すように、前方から見たときに、円形の乱反射部35a〜35kが、開口部32a〜32kの内部に収まり、乱反射部35a〜35kが、開口部32a〜32kの輪郭から外側へはみ出さないように配置されている。円形の乱反射部35a〜35kは、キートップ15a〜15kに形成された照光指示部30a〜30kのそれぞれの文字や記号の表示部に、1対1で対向するように配置されている。
【0069】
図3に示す照光指示部30i,30jでは、記号の表示部「:」と「;」、および「゛」と「´」が三角形の開口部32i,32jの領域内で上下に離れて配置されているために、円形の乱反射部35i,35jも、それぞれが記号の表示部に個別に対向できるように三角形の開口部32i,32jの領域内で上下に間隔を空けて配置されている。前述のように、可動電極27bから延びる配線層28c,28cが開口部32i,32jの領域内を通過しているが、配線層28c,28cは、乱反射部35iと35iとの間および乱反射部35jと35jとの間を通過している。したがって、照光指示部30i,30jを照光する光が、配線層28a,28aによって妨げられない。
【0070】
図4に示すように、照光部材である導光層3の縁部には、LEDなどの光源36が複数設けられている。入力装置1の照明が必要なときは、光源36から導光層3の内部へ照明光が与えられる。導光層3の内部を伝搬する照明光は、乱反射部35a〜35kのそれぞれによって乱反射し、反射光の一部が、支持板5の穴部7などを透過し、メンブレン積層体20に与えられる。
【0071】
メンブレン積層体20では、最表面に位置する表側基材21の表面21aに遮光層31が形成されて、この遮光層31で配線層28が覆われている。そのため、照明光の照射によってキートップ15a〜15kどうしの隙間から配線層28の影などが見えないようになっている。
【0072】
メンブレン積層体20の内部を透過する光は、遮光層31の開口部32a〜32kの内部を通過し、その前方に位置するキートップ15aから15kの照光指示部30a〜30kに与えられて、文字や記号の表示部が照光される。
【0073】
図3と図4に示すように、乱反射部35a〜35kが、開口部32a〜32kの領域内に配置され、さらに乱反射部35a〜35kが照光指示部30a〜30kの文字や記号の表示部に個別に対向している。そのため、照光指示部30a〜30kの文字や記号の表示部に照明光を集中させることができ、表示部を輝度むらがないように均一な明るさで照らすことができる。
【0074】
図3に示すように、開口部32a〜32kの面積は、キートップ15a〜15kの面積よりも小さく、照光指示部30a〜30kの文字や記号の表示部に対応した大きさおよび形状となっているため、文字や記号の表示部に照明光を集中させることができ、表示部以外に与えられる光量を低減できるため、キートップの縁部からの漏れ光が発生しにくい。
【0075】
入力装置1を使用するときは、キートップ15a〜15kのいずれかが押されると、メンブレン積層体20の動作部25において、弾性部材18の押圧凸部18aによって表側基材21の一部が押され、可動電極27a,27bが固定電極26に接触し、可動電極27a,27bどうしが導通してON入力となる。
【0076】
なお、可動電極と固定電極が、互いに抵抗値が相違する抵抗体で形成されており、キートップの押圧力を変化させると、可動電極と固定電極との接触面積が変化し、抵抗値が変化するものであってもよい。
【0077】
図6は本発明の第2の実施の形態の入力装置101を示しており、図1と同じ箇所の縦断面図である。
【0078】
図6に示す入力装置101は、シャーシ2の上に反射シート4と導光層3およびメンブレン積層体20が順に重ねられ、メンブレン積層体20の表側基材21の上に支持板5が重ねられている。反射シート4と導光層3およびメンブレン積層体20には、それぞれ複数箇所に支持穴が貫通して形成され、この支持穴を介して、シャーシ2と支持板5とが固定されている。なお、図4と図5には、メンブレン積層体20に形成された支持穴20cが示されている。
【0079】
支持板5の裏側に配置されたメンブレン積層体20の最上層である表側基材21の表面21aに遮光層31が形成され、この遮光層31に開口部32a〜32kが形成されている。
【0080】
図6に示す入力装置101は、支持板5がメンブレン積層体20の上に配置されているため、メンブレン積層体20に、図2に示したような第1の支持片6aと第2の支持片6bを挿通させるための挿通穴20a,20bを形成する必要がない。遮光層31に開口部32a〜32kや支持穴20c以外の余分な欠損部を設ける必要がないため、表側基材21の表面21aにおいて遮光層31を設ける領域の面積を広くできる。その結果、遮光層31により照明光を遮る効果を高めることができ、メンブレン積層体20の前方への漏れ光を抑制しやすくなる。
【0081】
図2に示すように、支持板5には、第1の支持片6aと第2の支持片6bを形成するための穴部7が形成され、この穴部7は照光指示部30a〜30kよりも大きな面積を有している。また、支持板5には機構上必要となる他の穴部や切り欠き部が開口している。
【0082】
図6に示す入力装置101は、支持板5の裏側に表側基材21が位置し、支持板5の裏側が遮光層31で覆われている。そのため、支持板5に大きな面積の穴部7が形成されていても、穴部7の内部では開口部32a〜32k以外の領域が遮光層31で塞がれることになり、不要な照明光が穴部7を通過することがない。また、支持板5に形成されたその他の穴部や切欠きも裏側から遮光層31で塞がれることになり、余分な照明光が照光指示部30a〜30k以外の部分に漏れ出るのを防止しやすくなる。
【0083】
なお、本発明の入力装置は、前記実施の形態のようなキーボード装置に係らず、携帯用機器やその他の電子機器の操作装置、遠隔操作装置、自動車に搭載された操作装置であってもよい。これら操作装置では、押圧操作部にキートップが設けられるではなく、通常の押釦や、金属が反転して表側基材21を押圧するドーム型の押圧部などが設けられる。
【符号の説明】
【0084】
1,101 入力装置
2 シャーシ
3 導光層
4 反射シート
5 支持板
6a 第1の支持片
6b 第2の支持片
7 穴部
10a〜10k 押圧操作部
15a〜15k キートップ
16 第1の可動支持部
17 第2の可動支持部
18 弾性部材
20 メンブレン積層体
21 表側基材
22 裏側基材
23 スペーサ
25 動作部
26 固定電極
27a,27b 可動電極
28 配線層
30a〜30k 照光指示部
31 遮光層
32a〜32k 開口部
35a〜35k 乱反射部
36 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性で可撓性の表側基材と、前記表側基材よりも裏側に配置された透光性の裏側基材と、前記表側基材と前記裏側基材との間隔を保つスペーサと、前記表側基材の裏面と前記裏側基材の表面のそれぞれに設けられて空隙部を介して互いに対向する電極と、前記表側基材の裏面と前記裏側基材の表面の少なくとも一方に形成されて前記電極に導通する配線層と、前記裏側基材および前記表側基材へ裏側から照明光を与える照光部材とが設けられ、
前記表側基材の表面に、前記照明光を遮る遮光層が形成されており、前記遮光層で前記配線層が覆われているとともに、前記遮光層に、前記照明光を前方へ通過させる開口部が設けられていることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記遮光層は、前記表側基材の表面に形成された印刷層である請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記電極が対向する動作部の前方に、前記表側基材を押圧して前記電極どうしを接触させる押圧操作部が設けられ、前記押圧操作部に照光指示部が形成されており、前記遮光層の開口部が、前記照光指示部に対向する位置に形成されている請求項1または2記載の入力装置。
【請求項4】
前記動作部が複数設けられ、前記押圧操作部はそれぞれの前記動作部に対向して複数設けられており、複数の前記押圧操作部は、それぞれ異なる箇所に前記照光指示部が形成されている請求項3記載の入力装置。
【請求項5】
異なる前記押圧操作部に対向している前記開口部の形状が互いに相違している請求項4記載の入力装置。
【請求項6】
前記押圧操作部に対する前記開口部の対向箇所が、押圧操作部ごとに互いに相違している請求項4または5記載の入力装置。
【請求項7】
1つの照光指示部に複数の表示部が形成されており、前記配線層が、隣り合う前記表示部の間を通過している請求項3ないし6のいずれかに記載の入力装置。
【請求項8】
前記押圧操作部は、前記照光指示部を有するキートップとこのキートップを昇降自在に支持する支持機構とを有し、前記表側基材の表側に重ねられた支持板に前記支持機構が支持されており、前記開口部が前記支持板に形成された穴部または切り欠き部を介して前記照光指示部に対向している請求項3ないし7のいずれかに記載の入力装置。
【請求項9】
前記配線層は、前記開口部を迂回する経路で形成されている請求項1ないし8のいずれかに記載の入力装置。
【請求項10】
前記配線層は、前記表側基材の裏面に形成されている請求項1ないし9のいずれかに記載の入力装置。
【請求項11】
前記照光部材は、内部に光を導く導光層であり、それぞれの前記開口部に対向する部分に乱反射部が設けられている請求項1ないし10のいずれかに記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−190735(P2012−190735A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55061(P2011−55061)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】