説明

全閉形電動機装置

【課題】負荷側の軸受を効率よく冷却する。
【解決手段】全閉形電動機装置は、軸受21、22に支持された回転軸10の周りを回転する回転子11と、軸受21、22を固定する軸受ハウジング23、24と、反負荷側空間41に配置された冷却ファン25と、固定子14を覆うように構成されて軸受ハウジング23、24が嵌合された主枠15と、回転子11の負荷側端部に固定された複数のエンドリングフィン12と、を有する。主枠15の負荷側空間42の内面には、凹凸部50が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反負荷側に冷却ファンを有する全閉形電動機装置に関する。
【背景技術】
【0002】
全閉形電動機装置は、一般に、回転軸周りを回転する回転子と、この回転子を取り囲む固定子と、固定子を外側から覆う主枠と、回転子や固定子から発生する熱を主枠の外部に放出するための複数の伝熱フィンと、を有している。回転軸の一方の端部は負荷と連結され、もう一方の端部近傍には、伝熱フィンを冷却するための空気を送風する冷却ファンが設けられている。
【0003】
回転子の回転などに伴い発生する熱は、一般的には主枠を介して伝熱フィンに伝わる。また、当該熱の一部は、主枠に嵌合された軸受ハウジングに伝わって、さらにその外面の伝熱フィンに伝わるものもある。当該熱によって軸受の温度が上昇すると、軸受内の潤滑用グリース等が劣化することがある。このため、軸受を冷却する必要がある。
【0004】
しかし、軸受ハウジングで固定されている軸受、特に負荷と連結する負荷側軸受は、冷却ファンから遠いため、冷却しにくい場合も多い。
【0005】
全閉形電動機装置の軸受を冷却する方法としては、例えば特許文献1に開示されているように、電動機内部に設置された冷却ファンにより送風された空気の一部が主枠内を循環するように主枠内にダクトが形成されて、このダクト内を流通する空気によって負荷側の軸受を冷却する方法や、回転子に循環空気を通すことで回転子自体を冷却する方法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−154254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記の例のように、主枠の内部を冷却用の空気が循環できる全閉形電動機装置は、比較的主枠が大きなものが多い。回転子に循環空気を通すためのダクトを設けるスペースが確保できない場合には、上記の方法を用いることは困難になる。
【0008】
冷却ファンから送風される空気のほとんどが伝熱フィンの周囲を流通するタイプの全閉形電動機装置は、伝熱フィンの周りを流通した冷却用の空気が、負荷側の軸受に吹き付けられるものもある。この構造では、冷却用の空気は伝熱フィン周辺を流れるときに熱交換される。このため、冷却ファンから送風された直後の空気に比べて温度が高くなった状態の空気が、負荷側の軸受ハウジングに吹き付けられる。この場合、軸受ハウジング内の軸受を効率よく冷却できないことがある。
【0009】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、全閉形電動機装置の負荷側の軸受を効率よく冷却することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る全閉形電動機装置は、軸方向の一端の負荷側端部が負荷に結合される全閉形電動機装置であって、互いに間隔をあけて配置された少なくとも2つの軸受に回転自在に支持されて、一方の端部が前記負荷に直接的または間接的に連結可能に構成された回転軸と、前記各軸受をそれぞれ固定する軸受ハウジングと、前記回転軸の周りを前記回転軸と共に回転する回転子と、前記回転軸の前記負荷側の反対側の回転軸端部近傍に配置されて、前記負荷側に向かって送風可能な冷却ファンと、前記回転子の負荷側端部に固定されて、前記回転子から発生する熱を空気と熱交換が可能なエンドリングフィンと、前記回転子を半径方向外側から取り囲むように構成された固定子と、前記各軸受ハウジングが固定されて、前記回転軸方向に延びて前記固定子を少なくとも半径方向外側から覆い且つ前記エンドリングフィンを覆うように構成された主枠であって、前記冷却ファンは当該主枠の外側に配置されるように構成された主枠と、前記主枠の外周表面にそれぞれが互いに間隙を保つように配置された複数の伝熱フィンを備え、前記間隙を前記冷却ファンにより送風された空気の一部が流通するように構成された伝熱フィン群と、を有し、前記回転子の前記負荷側端部よりも負荷側の前記主枠内に凹凸部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、全閉形電動機装置の負荷側の軸受を効率よく冷却することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る全閉形電動機装置の一実施形態の一部切欠の概略正面図である。
【図2】図1のII部のエンドリングフィン等を拡大した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る全閉形電動機装置の一実施形態について、図1および図2を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る全閉形電動機装置の一部切欠の概略正面図である。図2は、図1のII部のエンドリングフィン12等を拡大した概略斜視図である。
【0014】
先ず、本実施形態の全閉形電動機装置の構成について説明する。
【0015】
本実施形態の全閉形電動機装置は、水平に配置された回転軸10と、この回転軸10を回転自在に支持する2つの軸受、すなわち、反負荷側軸受21および負荷側軸受22と、これらの反負荷側および負荷側軸受21、22それぞれを固定するための2つの軸受ハウジング、すなわち、反負荷側軸受ハウジング23および負荷側軸受ハウジング24と、を有する。また、この全閉形電動機装置は、回転子11と、冷却ファン25と、複数のエンドリングフィン12と、固定子14と、これらを収容する主枠15と、主枠15の外側に配置された伝熱フィン群30と、を有する。
【0016】
反負荷側軸受21および負荷側軸受22は、互いに水平方向間隔をあけて配置されて、回転軸10を回転自在に支持する。回転軸10は、一方の端部が負荷に直接的または間接的に連結可能に構成される。負荷側軸受22は、負荷に連結される側(負荷側、図1の右方)で回転軸10を支持し、反負荷側軸受21は、回転軸10の負荷側の反対側(反負荷側、図1の左方)で支持している。
【0017】
回転子11は、回転軸10の外周面に固定されて、当該回転軸10の軸周りを回転軸10と共に回転する。各エンドリングフィン12は、それぞれ伝熱特性を備えた金属の板材である。各エンドリングフィン12の一方の端部は、回転子11の負荷側の端部に例えば放射状に固定される。回転子11が回転しているときに、各エンドリングフィン12は、それらの周辺の主枠15内の空間(負荷側空間42)の空気と熱交換させ強制的に対流させる。このときの負荷側空間42の空気の流れは乱流になる。負荷側軸受ハウジング24の表面の一部は、負荷側空間42に面している。
【0018】
冷却ファン25は、主枠15の反負荷側(図1の左方)の外側に配置される。この冷却ファン25は、回転軸10の反負荷側端部近傍の空間(反負荷側空間41)に隣接するように配置され、主枠15の外側を負荷側に向かって送風可能である。この冷却ファン25は、ファン用ケース26内に収容されている。
【0019】
冷却ファン25により送風される空気の一部は、反負荷側空間41外側の主枠15の外面に吹付け可能である。反負荷側軸受ハウジング23の表面の一部は、反負荷側空間41に面している。冷却ファン25により送風される空気の流れについては、後で説明する。
【0020】
固定子14は、回転子11の半径方向外側から、所定の半径方向空隙16をあけて取り囲む。
【0021】
主枠15は、反負荷側軸受ハウジング23および負荷側軸受ハウジング24が固定されて、回転軸10の長手方向に延びて固定子14を半径方向外側および軸方向外側から取り囲み、密閉されている。負荷側空間42の主枠15の内面には、らせん状に凹凸部50が形成されている。
【0022】
伝熱フィン群30は、複数の伝熱フィン31を有する。各伝熱フィン31は、例えば鋳造により主枠15と一体に形成される。例えば、主枠15の周方向に沿って複数の鋳型(図示せず)を配列して、これらの鋳型を半径方向外側に向かって抜くようにして主枠15および伝熱フィン31を一体形成している。各伝熱フィン31は、鋳型を抜きやすくするために、互いに平行に形成されている。各伝熱フィン31の間は、冷却ファン25により送風された空気の一部が流通可能に構成される。当該伝熱フィン31の間を流通する空気は、各伝熱フィン31と互いに熱交換しながら、負荷側に向かって流通する。
【0023】
続いて、本実施形態の作用について説明する。
【0024】
回転子11が回転しているときは、この回転に伴って回転子11および固定子14から熱が発生する。この熱は、主枠15の本体を介して主枠15の外側に形成された複数の伝熱フィン31に伝わる。また、当該熱の一部は、主枠15に固定(嵌合)された反負荷側軸受ハウジング23および負荷側軸受ハウジング24に伝わって、さらに、それらの外側の伝熱フィン31に伝わる。各伝熱フィン31は、各伝熱フィン31それぞれの周辺の外気と熱交換されて冷却される。
【0025】
冷却ファン25が回転することによって送風される空気の一部は、各伝熱フィン31の間を、図1の矢印X1に示すように、反負荷側から負荷側に向かって流れる。この空気は、各伝熱フィン31と熱交換して伝熱フィン31を冷却する。この空気により、外気と伝熱フィン31との熱交換の効率が向上する。
【0026】
また、当該送風される空気の一部は、反負荷側空間41の外側に吹き付けられ、反負荷側空間41が冷却される。これにより、反負荷側軸受ハウジング23の表面が冷却され、反負荷側軸受21の温度上昇を抑制できる。
【0027】
一方、回転子11が回転すると(図2)、エンドリングフィン12が回転軸10の軸周りを回転する。これにより、負荷側空間42の空気が強制的に対流する。回転子11が回転することにより回転子11から発生する熱の一部は、各エンドリングフィン12に伝わる。各エンドリングフィン12に伝わった熱により、負荷側空間42の温度が上昇する。また、回転軸10の回転により、負荷側軸受22の温度が上昇する。この温度上昇に伴い、負荷側空間42の温度が上昇する。
【0028】
負荷側空間42の熱は、その外側にある各伝熱フィン31に伝わる。その結果、各伝熱フィン31の温度が上昇する。温度が上昇した各伝熱フィン31は、上述した伝熱フィン31間を流れる空気によって冷却される。
【0029】
このとき、エンドリングフィン12の回転により対流する空気の流れ(乱流)は、負荷側空間42に係る主枠15の内面に形成された凹凸部50によって促進される。また、凹凸部50がらせん状であるため、エンドリングフィン12の回転によって、回転流れと共に軸方向に流れが生じるので乱流が促進される。当該乱流が促進されることにより、負荷側空間42に係る主枠15の内面付近の流速が大きくなる。これにより、当該内面付近の空気と、伝熱フィン31と、の熱交換がより効率よく行われる。
【0030】
さらに、当該凹凸部50により、負荷側空間42に係る主枠15の内面の表面積は、単なる円筒内面の場合に比べて大きくなる。これにより、負荷側空間42の空気との接触面積が大きくなるため、熱交換が促進される。
【0031】
以上の説明からわかるように、本実施形態によれば、負荷側空間42の内面に凹凸部50を形成することによって負荷側空間42の温度上昇を抑制可能となり、効率よく負荷側軸受22を冷却することができる。このため負荷側軸受22の潤滑用のグリース等の劣化を抑制することができ、負荷側軸受22の消耗速度を抑制することが可能となる。
【0032】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。又、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0033】
本実施形態では、凹凸部50はらせん状に、すなわち規則的に形成されているが、これに限らない。例えばエンボス状の不規則な凹凸でもよい。また、当該凹凸部50は、主枠15と同種の材質で、着脱可能に構成してもよい。
【0034】
また、回転子11および固定子14の間に形成される半径方向空隙16に、空気を流通可能に構成してもよい。この場合、当該空気により回転子11の外周面および固定子14の内周面を冷却できる。
【符号の説明】
【0035】
10…回転軸
11…回転子
12…エンドリングフィン
14…固定子
15…主枠
16…半径方向空隙
21…反負荷側軸受
22…負荷側軸受
23…反負荷側軸受ハウジング
24…負荷側軸受ハウジング
25…冷却ファン
26…ファン用ケース
30…伝熱フィン群
31…伝熱フィン
41…反負荷側空間
42…負荷側空間
50…凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端の負荷側端部が負荷に結合される全閉形電動機装置であって、
互いに間隔をあけて配置された少なくとも2つの軸受に回転自在に支持されて、一方の端部が前記負荷に直接的または間接的に連結可能に構成された回転軸と、
前記各軸受をそれぞれ固定する軸受ハウジングと、
前記回転軸の周りを前記回転軸と共に回転する回転子と、
前記回転軸の前記負荷側の反対側の回転軸端部近傍に配置されて、前記負荷側に向かって送風可能な冷却ファンと、
前記回転子の負荷側端部に固定されて、前記回転子から発生する熱を空気と熱交換が可能なエンドリングフィンと、
前記回転子を半径方向外側から取り囲むように構成された固定子と、
前記各軸受ハウジングが固定されて、前記回転軸方向に延びて前記固定子を少なくとも半径方向外側から覆い且つ前記エンドリングフィンを覆うように構成された主枠であって、前記冷却ファンは当該主枠の外側に配置されるように構成された主枠と、
前記主枠の外周表面にそれぞれが互いに間隙を保つように配置された複数の伝熱フィンを備え、前記間隙を前記冷却ファンにより送風された空気の一部が流通するように構成された伝熱フィン群と、
を有し、
前記回転子の前記負荷側端部よりも負荷側の前記主枠内に凹凸部を有することを特徴とする全閉形電動機装置。
【請求項2】
前記凹凸部は、らせん状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の全閉形電動機装置。
【請求項3】
前記凹凸部は、前記主枠内に一体に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の全閉形電動機装置。
【請求項4】
前記エンドリングフィンにより送風された空気は、前記凹凸部の表面で冷却可能に構成されていること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の全閉形電動機装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−70549(P2012−70549A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213674(P2010−213674)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】