共凝集したラテックスポリマー分散液並びにその製造方法及びその使用
共凝集化した分散液及びその製造方法が本願明細書に記載されている。共凝集した分散液は、アニオン性ポリマー分散液と不活性粒子との共凝集によって製造される。共凝集化した分散液に使用するためのポリマーは、少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される。不活性粒子は2μm未満の粒径を有する。少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子を含む水性分散液も本願明細書に記載されている。更に、発泡ポリマー、ラテックスベースの接着剤、防水膜、吸音コーティング、並びにその製造方法及びその使用が本願明細書に記載されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
ラテックスポリマーは、紙のコーティング、カーペットの裏地、ペイント、泡及び接着剤における充填剤粒子のためのバインダーを含む、複数の生成物の製造に有用である。これらの生成物の機械的特性は、無機材料を分散液又は得られる生成物に添加することによって改善することができる。典型的には、これらの無機材料は、得られた生成物に使用される前に分散液に添加される。重合反応の間に無機材料を添加して、ポリマー・無機ハイブリッド粒子からなる分散液を形成することが試みられてきたが、これらのプロセスも重合プロセスの間に無機材料を使用するために困難で且つ時間のかかる処理プロセスを必要としてきた。
【0002】
例えば、クレー・ゴムナノ複合材は、ゴムラテックス及びクレーの水性分散液のインサイチュ溶液重合及び共凝集を含む、種々の方法で開発されてきた。溶液重合プロセスにおいて、ポリマーを有機溶媒、即ち、トルエン中に溶解させる。別個に、有機親和性に改質されたクレーを別の有機溶媒、即ち、アルコールに分散させる。所望量のクレー分散液を撹拌下でポリマー溶液中に注ぎ込む。次に、この溶液を真空下で乾燥させて有機溶媒を除去し、ポリマー/クレー複合材を製造する。
【0003】
共凝集法では、改質された有機親和性のクレーを水に分散させて、これをポリマー分散液(ラテックス)中に添加する。激しく撹拌した後、混合物は、電解質溶液(即ち、2%の硫酸溶液)の添加によって共凝集される。この得られた凝塊を水で洗浄し且つ乾燥させる。
【0004】
これらのプロセスでは、ポリマー分散液の水相中に分散されたクレー粒子をバルクポリマー相に導入してクレー/ゴムポリマーナノ複合材を製造できるように、クレー表面を有機親和性に前処理する必要がある。これらのプロセスの欠点の1つは、天然の、親水性のクレー粒子が使用できないことである。例えば、共凝集プロセスでは、天然の親水性のクレー粒子はそれ自体で簡単に凝集し、凝集プロセスの間に巨視的な分離相を形成し得る。更に、これらのプロセスは、これらのナノ複合材を使用できる工業的用途を制限する乾燥したゴム固体を生成する。これらの固体は特に、接着剤、発泡体、アスファルト乳剤、及び他の用途に使用することが難しい。
【0005】
概要
共凝集した分散液及びその製造方法を記載する。共凝集した分散液は、アニオン性ポリマー分散液及び不活性粒子の共凝集によって製造される。共凝集した分散液に使用するためのポリマーは、少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される。不活性粒子は2μm未満の粒径を有してよい。複数の実施態様において、不活性粒子は50nm〜2μmの範囲の粒径を有する。不活性粒子は無機粒子であってよい。例えば、無機粒子は1種以上のクレーを含んでよい。無機粒子はプレートレット構造を有する1種以上の粒子(例えば、カオリン、マイカ、ベントナイト、天然及び合成のヘクトライト、エトリンジャイト、リン酸カルシウム、及びそれらの混合物)を含んでよい。幾つかの実施例において、無機粒子はカオリンを含む。不活性粒子をスラリーに与えることができる。
【0006】
共凝集工程は更に、ポリマーの乾燥質量を基準として1〜50質量%(例えば、ポリマーの乾燥質量を基準として10質量%)の量で無機粒子を提供することを含んでよい。この方法はまた、ポリマー分散液をカチオン性にするために共凝集した分散液にカチオン界面活性剤を添加する工程を含んでよい。
【0007】
本願明細書に記載された方法で使用されるポリマーは、少なくとも50%のモノマーが少なくとも1つの共役ジエンを含む、1種以上のモノマーから誘導される。幾つかの実施例において、少なくとも1種の共役ジエンモノマーはブタジエンを含む。1種以上のモノマーは少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)を含んでよい。1種以上のモノマーは少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル(例えば、メチルメタクリレート)を含んでよい。幾つかの実施例において、ポリマーはポリブタジエンである。
【0008】
本願明細書に記載された方法は更に、共凝集工程前にアニオン性ポリマー分散液を形成するために乳化重合を用いて1種以上のモノマーを重合する工程を含み得る。重合工程は室温よりも低い温度で起こり得る。本願明細書に記載された方法は、50%より高い(例えば、50%〜75%又は55%〜72.5%)又は60%より高い(例えば、60%〜70%)固体含有率を生成するために共凝集した分散液から水を除去する工程も含み得る。
【0009】
共凝集工程は、化学物質をアニオン性コポリマー分散液及びスラリーに添加することによる、凍結凝集、加圧凝集、機械的凝集を用いて、又はこれらの方法の組み合わせによって、アニオン性コポリマー分散液とスラリーとを共凝集することを含んでよい。幾つかの実施例では、共凝集工程によって、共凝集した粒子が100nm〜5μmの粒径を有するポリマー分散液が得られる。
【0010】
少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子を含む水性分散液も記載されている。共凝集した粒子は100nm〜5μmの粒径を有する。少なくとも1種のポリマーは少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される。幾つかの実施例では、水性分散液は45mN/m未満の表面張力を有する。幾つかの実施例では、本願明細書に記載された水性分散液の固体含有率は50%より高い又は60%より高い。幾つかの実施態様において、固体含有率は60%より高く、粘度は20℃で1Pa・s未満である。
【0011】
本願明細書に記載された水性分散液の不活性材料は、例えば、無機粒子の形の無機材料であってよい。無機材料は1種以上のクレーを含んでよい。無機材料はプレートレット構造を有する1種以上の粒子(例えば、カオリン、マイカ、ベントナイト、天然及び合成のヘクトライト、エトリンジャイト、リン酸カルシウム、及びそれらの混合物)を含んでよい。幾つかの実施例において、無機材料はカオリンを含む。不活性材料は、共凝集した粒子中のポリマーの乾燥質量を基準として、1〜50質量%の量で共凝集した粒子中に存在する。本願明細書に記載された水性のアニオン性分散液は、カチオン性界面活性剤の添加及び分散液のpH低下によって更にカチオン性分散液に変換できる。
【0012】
本願明細書に記載された水性分散液に使用されるポリマーは、少なくとも50%のモノマーが少なくとも1種の共役ジエンを含む、1種以上のモノマーから誘導されてよい。幾つかの実施例において、少なくとも1種の共役ジエンモノマーはブタジエンを含む。幾つかの実施例において、1種以上のモノマーは少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)を含む。幾つかの実施例において、その1種以上のモノマーは少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル(例えば、メチルメタクリレート)を含み得る。幾つかの実施例において、ポリマーはポリブタジエンである。
【0013】
本願明細書には更に、発泡ポリマー、ラテックスベースの接着剤、並びにその製造方法及びその使用が記載されている。本願明細書に含まれる発泡ポリマーは、少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子、100nm〜5μmの粒径を有する共凝集した粒子、及び少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導されるポリマーから製造される発泡フォームを含む発泡ポリマーである。発泡ポリマーは実質的に全体にわたって均一な不活性材料の分布を含む。
【0014】
発泡ポリマーの製造方法であって、2μm未満の粒径を有する不活性粒子の存在下で、そのポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される、アニオン性ポリマー分散液を共凝集してアニオン性ポリマー及び粒子を含む共凝集した分散液を形成する工程;空気又は他の気体をポリマー分散液中に導入して発泡分散液を形成する工程;前記発泡分散液を成形する工程;前記発泡分散液を凝固又は固化してポリマー発泡体を形成する工程;及び前記ポリマー発泡体中で共凝集した粒子を架橋する工程を含む、前記発泡ポリマーの製造方法も本願明細書に記載されている。
【0015】
更に本願明細書には、少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子、100nm〜5μmの粒径を有する共凝集した粒子及び少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導されるポリマーを含む、ラテックスベースの接着剤が記載されている。幾つかの実施例において、本願明細書に記載される接着剤は、織物接着剤(例えば、カーペット接着剤)として使用することができる。基材を表面に接着する方法であって、少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子を含む共凝集した分散液を表面に適用する工程、その際、前記共凝集した粒子は100nm〜5μmの粒径を有し且つ前記ポリマーは少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される;基材を前記分散液に適用する工程;及び前記分散液から水を除去する工程を含む、前記接着方法も記載されている。本方法は更に、共凝集した分散液を形成するために、アニオン性ポリマー分散液を共凝集する工程を含み、該ポリマーは、2μm未満の粒径を有する不活性粒子の存在下で、少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される。この方法はまた、これを表面に適用する前に、共凝集した分散液から水を除去する工程を含んでよい。
【0016】
更に別の態様では、アスファルトエマルション並びに少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子を含む共凝集した分散液を含む、改質アスファルト組成物であって、前記共凝集した粒子が100nm〜5μmの粒径を有し且つ前記ポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される、改質アスファルト組成物が記載されている。アスファルトエマルションは防水膜又は吸音コーティングとして使用できる。
【0017】
本発明の1つ以上の実施態様の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、対象、及び利点は、説明及び図面、及び特許請求の範囲から明らかになる。
【0018】
図面の簡単な説明
図1Aは、クレーが共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液及びクレーが凝集しないでラテックス分散液に後添加されたスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0019】
図1Bは、クレーのないスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液及びクレーが後添加されたスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0020】
図2は、クレーのないスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液及びクレーで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0021】
図3Aは、5%のクレーで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。この別々のトレースは独立した試験を示す。
【0022】
図3Bは、10%のクレーで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。この別々のトレースは独立した試験を示す。
【0023】
図4Aは、加熱老化後のクレーで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0024】
図4Bは、クレーのないスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液のラテックスフィルム及びクレーで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液のラテックスフィルムの写真である。
【0025】
図5は、クレーのないスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液及び加熱老化した後のクレーで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0026】
図6は、クレーが共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液及びクレーが後添加されたスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0027】
図7は、クレーのないスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液及びクレー又は炭酸カルシウムのいずれかで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0028】
図8は、クレーのないスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液、クレーで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液、クレーを後添加したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液、並びにクレーで共凝集し且つこれを後添加したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0029】
図9は、クレーで共凝集したスチレン−ブタジエンラテックス分散液、クレーを後添加したスチレン−ブタジエンラテックス分散液、並びに加熱老化後にクレーで共凝集し且つこれを後添加したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0030】
図10は、クレーのない接着剤、クレーを後添加した接着剤、及びクレーで共凝集した接着剤の重ね剪断を示すグラフである。
【0031】
図11は、クレーのない接着剤、クレーを後添加した接着剤、及び加熱老化した後にクレーで共凝集した接着剤の重ね剪断を示すグラフである。
【0032】
発明の詳細な説明
共凝集化したラテックスポリマー分散液及びその製造方法が本願明細書に記載されている。共凝集した分散液の製造方法は、アニオン性ポリマー及び粒子を含む共凝集した分散液を形成するために、2μm未満の粒径を有する不活性粒子の存在下でアニオン性ポリマー分散液を共凝集することを含む。
【0033】
本願明細書に記載された共凝集した分散液に有用な不活性粒子は、分散液中のポリマーと反応しない。例えば、本願明細書に記載された不活性粒子は、加硫反応において分散液中のポリマーと反応し得る硫黄を含まない。本願明細書に記載された共凝集した分散液に有用な不活性粒子は、無機粒子であり且つ1種以上のクレーを含み得る。その上、本願明細書に記載された無機粒子は、プレートレット構造を有する1種以上の粒子、例えば、カオリン、マイカ、ベントナイト、天然の及び合成のヘクトライト(例えば、LAPONITE(登録商標)、Rockwood Additives Limited, Cheshire, United Kingdomから市販されている合成ヘクトライト)、エトリンジャイト、リン酸カルシウム、及びそれらの混合物を含んでよい。酸化タングステン、カーボンブラック、カーボンナノ粒子、及び炭酸カルシウムなどの他の粒子も本発明に使用されてよい。不活性粒子は50nm〜2μmの範囲の粒径を有してよい。
【0034】
本願明細書に記載される不活性粒子は、固体の形で分散液に添加するか又はスラリーに与えることができる。幾つかの実施態様において、スラリーは40%より高い固体を有し得る。本願明細書に記載されるスラリー中に存在する不活性粒子の量の例は、45%より高い、50%より高い、55%より高い、60%より高い、65%より高い、70%より高い又は75%より高い量を含む。典型的なスラリーは、カオリンHT(固形分70%)及びBASF社、エンゲルハード部門から市販されているMIRAGLOSS91(登録商標)スラリーを含む。
【0035】
共凝集工程のための不活性粒子は、ポリマーの乾燥質量を基準として、約1〜約50質量%の量で与えることができる。更なる例は、ポリマーの乾燥質量を基準として、約1.2〜約40質量%、約1.4〜約35質量%、約1.6〜約30質量%、約1.8〜約25質量%、約2〜約20質量%、又は約3〜約15質量%、又は約4〜約12質量%(例えば、5質量%又は10質量%)を含む。
【0036】
本願明細書に記載された共凝集化した分散液に使用するためのアニオン性ポリマーは、少なくとも1種の共役ジエンモノマー(例えば、イソプレン又は1,3−ブタジエン)を含む1種以上のモノマーから誘導される。幾つかの実施例において、少なくとも50%のモノマーは少なくとも1種の共役ジエンを含む。例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%のモノマーは少なくとも1種の共役ジエンを含んでよい。幾つかの実施例において、少なくとも1種の共役ジエンモノマーはブタジエン(1,3−ブタジエン)を含む。本願明細書に記載されるポリマーは、1種以上の追加のモノマーから誘導されるブタジエンベースのコポリマー又はポリブタジエンであってよい。
【0037】
上記の通り、ポリマーは、共役ジエン(例えば、ブタジエン)に加えて1種以上のモノマーから誘導してよい。幾つかの実施態様において、1種以上のモノマーは少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレン、及びビニルトルエン(例えば、スチレン)を含む。例えば、ポリマーはスチレン、ブタジエン及び任意に他のモノマーから誘導されるスチレン−ブタジエンベースのコポリマーであってよい。スチレン−ブタジエンベースのコポリマーは、0質量%より高く50質量%未満のスチレン及び50質量%より高く100質量%未満のブタジエン(例えば、10〜45質量%のスチレン/55〜90質量%のブタジエン、15〜40質量%のスチレン/60〜85質量%のブタジエン、例えば、20〜35質量%のスチレン/65〜80質量%のブタジエン、又は約25質量%のスチレン/約75質量%のブタジエン)を含んでよい。スチレン−ブタジエンベースのコポリマーは、25%以下の追加のモノマー、例えば、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、及び(メタ)アクリルアミドを含んでよい。
【0038】
幾つかの実施態様において、1種以上の追加のモノマーは、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーに加えて又はそれの代わりに少なくとも1種の(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルを含んでよい。例えば、メチル、エチル、n−ブチル、イソブチル及び2−エチルヘキシルアクリレート及びメタクリレートを使用してよい。幾つかの実施態様において、ポリマーを形成するためにメチルメタクリレートが使用される。ポリマーは、前の段落で与えられたパーセンテージで、スチレンの全部又は一部に対する置換基としてのメチルメタクリレートを含んでよい。例えば、ポリマーは、50%より高く99%までのブタジエン及び1%〜50%未満のメチルメタクリレート又は1%〜50%未満のスチレンから誘導することができる。幾つかの実施態様において、ポリマーは50%より高く99%までのブタジエン、1%〜49%のメチルメタクリレート及び1%〜49%のスチレンから誘導することができる。幾つかの実施態様において、ポリマーのTgは−80℃より高く且つ−10℃未満である。
【0039】
その上、tert−ドデシルメルカプタンなどの分子量の調節剤は少量(例えば、全モノマーの質量を基準として0.01〜1質量%)である。かかる物質は好ましくは、重合されるべきモノマーとの混合物中で重合領域に添加されて、これはコポリマーで使用される不飽和モノマー全量の一部であると考えられる。
【0040】
本願明細書に記載された共凝集した分散液に使用するためのアニオン性ポリマー分散液を形成するために1種以上のモノマーが重合される。幾つかの実施例では、共凝集工程前にアニオン性ポリマー分散液を形成するために、乳化重合を用いて1種以上のモノマーが重合される。重合工程は室温よりも低い温度で起こり得る。ポリマー分散液は200nm以下又は100nm以下(例えば、20〜100nm)の平均粒径を有してよい。
【0041】
アニオン性ポリマー分散液及び不活性粒子の共凝集は、当業者に公知の多様な方法で実施できる。共凝集工程は、例えば、凍結凝集、加圧凝集、機械的撹拌、又は化学的凝集を使用して(即ち、化学物質をアニオン性コポリマー分散液及びスラリーに添加することによって)、アニオン性コポリマー分散液とスラリーとを共凝集することを含み得る。これらの方法は、D. C. Blackley, "Polymer Latices: Science and Technology, Chapter 10.4, Agglomeration and Concentration of Synthetic Latices," Chapman & Hall, London, 1997年及びD. C. Blackley, "High Polymer Latices, Chapter 3, Agglomeration and Concentration of Synthetic Latices," Maclaren, Palmerton, 1966年に詳細に記載されている。本願明細書で使用される「凝集」との用語は、より大きな平均粒径及び概してより広い粒径分布を有するラテックスを製造するための、部分的な粒子の凝集を含む、粒子の凝集方法を指す。「共凝集」との用語は、アニオン性分散液及び不活性粒子においてポリマー粒子を凝集するための上記の方法などの凝集方法を指す。共凝集方法は、使用にとって高い全固体含有率及び十分に低い粘度を有するラテックスを製造することができる。
【0042】
共凝集プロセスに使用されるポリマー分散液はアニオン型である。本願明細書に記載された共凝集した分散液の製造方法は、ポリマー分散液をカチオン性にするために、カチオン性界面活性剤を共凝集した分散液に添加する工程を更に含み得る。本願明細書に記載された方法に適したカチオン性界面活性剤は、例えば、REDICOTE(登録商標)E−5(Akzo Nobel,Chicago,IL)、REDICOTE(登録商標)E−11(Akzo Nobel,Chicago,IL)、REDICOTE(登録商標)E−53(Akzo Nobel,Chicago,IL)、REDICOTE(登録商標)E−606(Akzo Nobel,Chicago,IL)、REDICOTE(登録商標)E−5127(Akzo Nobel,Chicago,IL)、ADOGEN(登録商標)477HG(Chemtura Corp.,Greenwich,CT)、INDULIN(登録商標)W−1(MeadWestvaco,Charleston,SC)、INDULIN(登録商標)W−5(MeadWestvaco,Charleston,SC)、INDULIN(登録商標)SBT(MeadWestvaco,Charleston,SC)、及びINDULIN(登録商標)MQK(MeadWestvaco,Charleston,SC)を含む。
【0043】
共凝集した粒子は、より広い粒径分布を有するより大きな粒子のポリマー分散液をもたらす。本願明細書に記載された共凝集した粒子は100nm〜5μmの粒径を有する。例えば、粒径は100nm〜2μm又は200nm〜1μmの範囲であってよい。
【0044】
共凝集した分散液の形成方法は、固体含有率を高めるために、共凝集した分散液から水を除去する工程を含んでよい。例えば、50%より高い又は60%より高い固体含有率を生成するために、共凝集した分散液を濃縮してよい。例えば、共凝集した分散液の形成方法は、50%より高く75%まで、55%〜72.5%、又は60%〜70%の固体含有率を生成するために、共凝集した分散液から水を除去する工程を含んでよい。一旦濃縮された、共凝集した分散液でも、これを容易に流動させることが可能な粘度を有し得る(即ち、これはゲルではない)。例えば、60%を上回る固体含有率を有する水性分散液は、20℃で1Pa・s未満の粘度を有し得る。
【0045】
幾つかの実施態様では、無機材料、例えば、共凝集した粒子又は別の共無機材料を形成するためのポリマーと共に共凝集した無機材料は、共凝集した分散液に添加してよい。水を分散液から除去する場合、水を除去する前又は後に無機材料を添加してよい。共凝集した分散液に添加される無機材料の量は、一般に共凝集した粒子の形成に使用される量よりも少ない、例えば、ポリマーの乾燥質量を基準として、20質量%未満、10質量%未満、又は5質量%未満である。しかしながら、幾つかの実施態様では、無機材料は、ポリマーと無機材料との共凝集前にのみ添加されており、即ち、無機材料は全く後添加(共凝集後に添加)されていない。
【0046】
少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料で形成された共凝集した粒子を含む水性分散液も本願明細書に記載されている。共凝集した粒子は100nm〜5μmの粒径を有する。ポリマーは、上記のものなどの少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導されてよい。不活性粒子は、記載された量で上記の粒子を含んでよい。
【0047】
共凝集した粒子を含む水性分散液は、ASTM D 1417−03aに記載された方法に従って、du Nouy張力計を用いて測定して、45mN/m未満の表面張力を有してよく、参照によりその開示の全体が本願明細書に組み込まれる。例えば、水性分散液は45mN/m以下、40mN/m以下、又は35mN/m以下の表面張力を有してよい。水性分散液は、典型的には界面活性剤(即ち、ポリマー粒子と不活性粒子との共凝集の結果としての粒子表面積の低下のために共凝集した粒子と相互作用していない界面活性剤)を含んでいない。
【0048】
水性分散液は、任意に、上記に記載されたものなどの、水性分散液をカチオン性にするカチオン性界面活性剤を含んでよい。本願明細書に記載された水性不活性粒子の固体含有率は、上記に記載された通り50%より高くてよい。
【0049】
不活性粒子は、不活性粒子を化学修飾剤で前処理しないで又は積層法(例えば、インサイチュ重合、溶液インターカレーション、溶融インターカレーション、又は凝固)を用いて、本願明細書に記載された共凝集した分散液に使用してよい。更に、本願明細書に記載された共凝集した分散液は、安定した水性ポリマー分散液として維持することができ、従って多様な用途に適している。例えば、共凝集した分散液は、防水膜、ポリマーフィルム、吸音化合物及び織物(例えば、カーペット)裏地として使用されるものを含む、発泡ポリマー、ラテックスベースの接着剤、アスファルトエマルションを含む、複数の製品の製造に有用である。本願明細書に記載された方法に従って製造された製品は、共凝集した粒子を用いずに製造されたポリマー製品と比較して向上した表面張力、伸び率、及び耐熱性を有する(即ち、不活性材料又は粒子の共凝集しない最終分散液への不活性材料又は粒子の添加を除く)。本願明細書に記載された共凝集した粒子を用いて製造された製品は、表面張力の低下なしで有意に向上した伸び率を達成する。一般に、低い表面張力のポリマーは、高い伸び率を有するが、強化ポリマーは限定された伸び率を有する。本願明細書に記載された共凝集した粒子を含むポリマー製品は、粒子の共凝集なしで製造されたポリマー製品と比較して、有意に改善された伸び率と共に同じ又はわずかに高い表面張力を維持する。
【0050】
更に、共凝集した粒子の包含は、熱への長期暴露(即ち、加熱老化)時の特性の劣化をより受けにくい製品を製造する。加熱老化により、粉末形成の向上した脆さがもたらされるか又は色の暗色化から明らかな通り製品の色むらがもたらされる。しかしながら、本願明細書に記載された通りに製造された製品は、色、表面張力、及び伸び率の維持において明らかなように、このプロセスによる影響が少ない。幾つかの実施例では、本願明細書に記載された発泡体の表面張力及び伸び率は、製品が140℃で3時間加熱された後に10%を超えて変化しない。
【0051】
このプロセスによって製造されたポリマー製品は、従来法によって製造されたポリマー製品と比較して、特に無機材料の共凝集したポリマー分散液への後添加によって製造されたポリマー製品と比較して、より良好な不活性材料の製品全体への分布を有する。特に、不活性粒子がポリマー粒子で共凝集されるので、不活性粒子は更に均一にポリマー製品全体に分布されており、実質的に均一にポリマー製品全体に分布されている。ポリマー分散液を凝集して、不活性粒子を後で添加する従来法では、不活性粒子は、ポリマー製品全体への均一な分布とは対照的に、凝集したポリマー粒子の表面の周りに形成し易い。特定の理論により拘束されることは望まないが、不活性材料の実質的に均一な分布が、不活性粒子、特にプレートレット形態の不活性粒子の平行な配向をもたらすことも考えられる。これは、交差偏光光学顕微鏡の下で共凝集したポリマーを含む乾燥したラテックスフィルムを視検する時に均一な青色によって明らかである。
【0052】
本願明細書に記載された方法に従って製造された発泡ポリマー、例えば、少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成された共凝集した粒子を含む発泡フォームは、上記の改善された機械的特性を示す。特に、十分な量の、例えば、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、又は40質量%以上の不活性材料が分散液で共凝集される場合、発泡ポリマーは圧縮抵抗などの改善された機械的特性を有し得る。発泡ポリマーは、アニオン性ポリマー及び粒子を含む共凝集した分散液を形成するために、アニオン性ポリマー分散液を共凝集することによって製造できる。得られた分散液は、単独で又は1種以上の追加のラテックス分散液と共に使用できる。幾つかの実施態様では、発泡ポリマーはスチレンブタジエンベースのコポリマー分散液をベースにしており、スチレンブタジエンコポリマー粒子及び不活性粒子から形成された共凝集した粒子を含んでよい。
【0053】
発泡ポリマーは、最初に空気又は他の気体を、機械的な手段(例えば、空気のラテックス中へのホイッピング又はビーティング)又は化学的な手段によりラテックス中に導入することによって製造することができる。次に、この発泡体を、最終製品に求められる形状に成形又は拘束することができる。次いで発泡体を、発泡体から水を蒸発させるか又は発泡体をゲル化することによって、凝固するか又は固化することができる。そして発泡体を、共凝集した粒子の架橋によって加硫することができる。
【0054】
発泡ポリマーの製造方法は、発泡促進剤及び気泡安定剤を含む1種以上の発泡剤を、共凝集した分散液に添加する工程を含んでよい。発泡促進剤として、例えば、カルボキシレート石鹸(例えば、オレアート、リシノレエート、ヒマシ油石鹸及びレソナート)、硫酸塩、スルホン酸塩、エトキシレート(非イオノゲンエトキシレートを含む)、及びコハク酸塩が挙げられる。本願明細書に記載された発泡ポリマーの製造に有用な気泡安定剤として、第4級アンモニウム表面活性化合物及びベタイン、アミノ化合物及びアミン酸化物、有機ヒドロキシ化合物(例えば、フェノール)、水溶性の親水コロイド(例えば、タンパク質の物質)が挙げられる。アルカリ金属ケイフッ化物、亜鉛酸化物を含むゲル化剤もまた追加してよい。硬化プロセスにおいて補助する組成物、例えば、硬化又は加硫ペーストは、共凝集した分散液に添加することができる。加硫ペーストは、硫黄及び/又は亜鉛酸化物の分散液、促進剤(例えば、ジフェニルグアニジン、亜鉛2−メルカプトベンゾチアゾール及びジエチルジチオカルバミド酸亜鉛)、酸化防止剤、及び水から作ることができる。発泡体の形成を促進するために、他の添加剤、例えば、充填剤(例えば、スターチ及び樹脂)、軟化剤(例えば、鉱油)、難燃剤、増粘剤、及び酸化防止剤も含まれてよい。
【0055】
得られた発泡性ラテックス化合物は、発泡物品を作るために当業者に公知の方法によって製造することができる。好適な方法として、ダンロップ(Dunlop)法、タラレイ(Talalay)法、ダウ(Dow)法、クラウンラバー(Crown Rubber)法、及びリバルテックス(Revertex)法が挙げられる。発泡ポリマーは、自動車の用途(例えば、ダッシュボード、バンパー、及び座席)、家具用のクッション、寝具(例えば、マットレス及びまくら)、衣料(例えば、衣料品パッド)、履物(例えば、靴形部品又は靴内部底)、鋳物、ゴムシートなどに使用できる。
【0056】
本願明細書には、ラテックスベースの接着剤、並びにその使用及び製造方法も記載されている。ラテックスベースの接着剤は、金属、セラミック、プラスチック、紙、革、木材、織物、及びガラス表面を含む、結合表面に使用できる。ラテックスベースの接着剤は、少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料で形成された共凝集した粒子を含み且つ1種以上の追加のラテックス分散液をベースとし得る。幾つかの実施態様では、ラテックスベースの接着剤は、スチレンブタジエンベースのコポリマー分散液をベースとしており、スチレンブタジエンコポリマー粒子及び不活性粒子から形成された共凝集した粒子を含んでよい。本願明細書に記載された接着剤の機械的特性、例えば、引っ張り強さ、伸び率、及び耐熱性は、共凝集した粒子を用いずに製造された接着剤と比較して改善されており、従って、これら接着剤を、床用途を含む多様な用途に適したものにする。
【0057】
本願明細書に記載された少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成された共凝集した粒子を含む共凝集した分散液は、表面に適用することができ、該表面に結合されるべき基材を分散液に適用することができ;そして結合を促進するために水が分散液から除去される。水は、共凝集した分散液を表面に適用する前に該分散液から除去することができる。
【0058】
幾つかの実施態様では、ラテックスベースの接着剤は床接着剤であってよく、基材は下面に結合されるべき床材であってよい。例えば、本願明細書に記載された床接着剤は、カーペット、硬木材床、タイル、及び他の床材を下面に結合するために使用してよい。
【0059】
接着剤の製造方法は、接着剤を共凝集した分散液に添加する工程を含み得る。例えば、接着改質剤(例えば、粘着剤及び調理又は未調理のスターチ)、可塑剤、架橋剤、充填剤、増量材、バインダー、及び増粘剤を添加して当業者に公知の接着剤の粘着性を改善することができる。本願明細書に記載された接着剤中の包含物に適した他の接着剤として、例えば、酸化防止剤、界面活性剤、消泡剤、不凍剤、凍結融解安定剤、殺真菌剤、腐食防止剤、難燃剤、着色剤、消臭剤、及び付香剤が挙げられる。
【0060】
幾つかの実施態様では、改質アスファルトエマルションは、アスファルトエマルションと、少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成された共凝集した粒子の共凝集した分散液とを組み合わせることによって製造される。アスファルトエマルションは、防水膜として使用することができ、基材、特に建築材に使用されるもの、例えば、セメント、コンクリート、湿潤コンクリート、湿潤セメント、せっこう、プラスター、石積み、チップボール、ハードボード、ドライ壁、木材、セラミック、大理石、石、及びタイルを水分から保護するための膜として適用される。基材は、ポルトランドセメント、充填剤及び他の公知の成分などの種々の材料を含んでよく、且つ例えば、金属成分を用いて強化することができる。アスファルトエマルションも、自動車に使用されるものなどの吸音コーティングを製造するために使用できる。
【0061】
以下の実施例は、本発明の実施態様の幾つかを更に完全に説明するために提供されている。以下の実施例に開示された技術は、本発明の実施で良好に機能する、本発明者らによって発見された技術を表し、従ってその実施のために例示的な形態を構成すると考えられることが当業者によって理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示を考慮して、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示された特定の実施態様において多くの変更がなされ、なお同等又は同様の結果が得られることを理解するべきである。部及びパーセンテージは他に指示がない限り質量を基準として示される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、スチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフを示す。
【図2】図2は、スチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフを示す。
【図3】図3は、クレーで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフを示す。
【図4】図4は、共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフ及びラテックスフィルムの写真を示す。
【図5】図5は、スチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフを示す。
【図6】図6は、スチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフを示す。
【図7】図7は、スチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフを示す。
【図8】図8は、スチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフを示す。
【図9】図9は、スチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフを示す。
【図10】図10は、クレーのない接着剤、クレーを後添加した接着剤、及びクレーで共凝集した接着剤の重ね剪断を示すグラフを示す。
【図11】図11は、クレーのない接着剤、クレーを後添加した接着剤、及び加熱老化した後にクレーで共凝集した接着剤の重ね剪断を示すグラフを示す。
【0063】
実施例
実施例1及び比較例1〜3
BUTONAL(登録商標)NS103(BASF社、Florham Park、NJ)は、約25%のスチレン及び75%のブタジエン及び45〜47%の固体の冷却重合されたポリ(スチレン−ブタジエン)ラテックスである。このラテックスは100〜300mPa・sの粘度、50mN/mを上回る表面張力、及び100nm未満の粒径を有する。
【0064】
5%のカオリンクレー分散液(乾燥ポリマーの質量を基準として)を提供するために、BUTONAL(登録商標)NS103及びBASF社、エンゲルハード部門から市販されている十分な量のカオリンHTクレースラリー(70質量%のクレー)を−20℃で24時間冷凍し、この冷凍した試料を解凍すると、直径100nmから5μm未満の範囲の広いサイズ分布を有する共凝集したラテックス(実施例1)が生成し、凍結凝集した後のラテックス分散液の表面張力及び粘度は30〜35mN/m及び20mPa・s未満であった。BUTONAL(登録商標)NS103とカオリンクレースラリーとの凝集によって分散液中のラテックス粒子の全表面積の有意な減少が起こり、これによってラテックス粒子上への界面活性剤被覆が増加し、従って分散液の安定性が改善された。ラテックス表面積の減少によっても、ラテックス分散液の水相中に遊離の界面活性剤が増加し、従ってラテックス分散液の表面張力が低下した。
【0065】
比較例1は、適量の70質量%のカオリンHTスラリー(BASF社、エンゲルハード部門)をBUTONAL(登録商標)NS103中に後添加することによって調製して、5質量%のカオリンクレーを含有するラテックス試料を生成した。
【0066】
配合物をカオリンクレースラリーなしでBUTONAL(登録商標)NS103を加圧凝集することによって調製し、これによって直径100nmから5μm未満の範囲の広いサイズ分布を有するラテックスが得られた。凝集したラテックスは30〜35mN/mの低い表面張力を有し、この凝集したラテックスの広いサイズ分布は、水を除去して約70%の固形分まで濃縮した後に、2Pa・s未満の比較的低い粘度を維持することを可能にする。得られたラテックスは比較例2である。
【0067】
比較例3は、適量の70質量%のカオリンHTスラリー(BASF社、エンゲルハード部門)を比較例2中に後添加することによって調製して、5質量%のカオリンクレーを含有するラテックス試料を生成した。
【0068】
ラテックスフィルムの調製並びに引っ張り強さ及び伸び率の測定:
配合実施例1及び比較例1〜3のラテックスフィルムは、室温で3日間乾燥させて調製し、次いで更に1日間60℃で硬化した。得られたラテックスフィルムは約200〜300μmの厚さであり、これを切断して約1.2cmの幅及び2.5cmの長さの長方形の試験片を調製した。ラテックスフィルムの引っ張り強さ対伸び特性を、lnstron(Instron社、ノーウッド、MA)によって室温で測定した。ラテックスフィルムの引っ張り強さ対伸び特性は、図1A及び1Bにおいて比較した。これらの結果は、カオリンクレーを非凝集ラテックス中へ後添加することによって、最大引っ張り強さは改善されずにラテックスフィルムの伸び率が改善されることを示した。相対的に、5%のクレーの凍結凝集したBUTONAL(登録商標)NS103は、最大伸び率を下げることなく加圧凝集したラテックス(0及び5%のクレーが後添加される)に対して2x近くの最大引っ張り強さの増加を示した。BUTONAL(登録商標)NS103の機械的特性がクレースラリーの後添加によって改善されても、このラテックスは低い固体含有率及び限定された分散安定性を有する。対照的に、クレー冷凍共凝集したBUTONAL(登録商標)NS103を濃縮すると、その広いサイズ分布のために70%近くの固形分のラテックスが生成されて、比較例2と同等の分散安定性を与えることができる。
【0069】
実施例2及び比較例4
冷凍共凝集した分散液(実施例2)は、カオリンHTクレーを提供して2%のカオリンクレー分散液を生成することを除いて、実施例1と同じ方法で調製した。比較例4は、クレーを添加しないで、凍結凝集したBUTONAL(登録商標)NS103から単独で調製された。実施例2及び比較例4を含むラテックスフィルムは上記の通り調製した。実施例2に基づくラテックスフィルム及び比較例4に基づくラテックスフィルムを、室温で10日間乾燥させることによって調製し、引っ張り強さ及び伸び率は、60℃で24時間硬化しないで測定した。これらのラテックスフィルムの引っ張り強さ対伸び率の挙動を比較した。最大伸び率の低下なしで最大引っ張り強さの約2xの増加は、図2に示すような実施例2の2%のカオリンHT共凝集を用いて示された。
【0070】
実施例3〜4
BUTONAL(登録商標)NS103を、5質量%及び10質量%のMIRAGLOSS(登録商標)91(BASF社、エンゲルハード部門)の存在下であることを除いて、実施例1に記載された方法を用いて冷凍共凝集すると、実施例3及び4がそれぞれ得られた。ラテックスフィルムを、実施例1に記載されたように乾燥させ且つ硬化した。最大引っ張り強さ並びに最大伸び率の改善が、図3A及び3Bに示すように、これらのMIRAGLOSS(登録商標)91の共凝集したラテックスフィルムを用いて観察された。これらのラテックスフィルムの引っ張り強さ対伸び率測定の再現性も、2回以上実施例3及び4を試験することによってこれらの図に示された。
【0071】
配合実施例3及び4のラテックスフィルムは上記の通り調製した。60℃で24時間硬化した後、これらのラテックスフィルム及び比較例4を140℃で3時間加熱老化した。比較例4に基づくフィルムは、その高いブタジエン含有率のために非常に加熱老化を受けやすく、図4Bに示すような暗褐色の色になり且つ非常に脆く、従って、引っ張り強さ対伸び率測定を妨げた。実施例3より調製されたラテックスフィルムは、図4Bに示す通り、比較例4に基づくフィルムよりも明るい色であったが、図4Aに示した通り、限定された機械的強度のみ有していた。実施例4に従って調製されたラテックスフィルムは、図4Bに示した通り、加熱老化プロセス後に限定された程度のみの変色を示し、加熱老化前と同じか又は更に改善された引っ張り強さ対伸び率の挙動を維持した(図3B対図4A)。この結果は、クレー共凝集プロセスがBUTONAL(登録商標)NS103フィルムの機械的強度を改善し、更に加熱老化特性を低下させたことを示した。
【0072】
実施例5〜6及び比較例5
BUTONAL(登録商標)NS103は、参照によりその開示の全体が本願明細書に組み込まれている、米国特許第6,127,461号;同第6,300,392号;及び同第6,348,525号に記載された加硫反応促進剤の最適化された種類及び量を含有する元素の硫黄分散液で加圧共凝集された。共凝集したラテックスを更に70%の固形分まで濃縮し、得られたラテックスは比較例5である。
【0073】
BUTONAL(登録商標)NS103を、5質量%及び10質量%のMIRAGLOSS(登録商標)91の存在下で上記の元素の硫黄分散液と一緒に冷凍共凝集すると、実施例5及び6がそれぞれ得られた。実施例5、実施例6及び比較例5に基づくラテックスフィルムを、実施例1に記載された手順を用いて調製して100℃で3時間硬化した。これらのラテックスフィルムの引っ張り強さ対伸び率の挙動を図5において比較した。これらの結果は、クレー共凝集したラテックスフィルムの機械的特性が改善されたことを示した。
【0074】
比較例6
比較例6は、10%のMIRAGLOSS(登録商標)91が5%のカオリンHTの代わりに共凝集した分散液中に後添加され且つラテックスフィルムが実施例1に記載された通りに調製されたことを除いて、比較例3に記載された方法で調製された。実施例4に基づくフィルムも同じ手順を用いて製造した。60℃で24時間硬化した後、両方のフィルムを更に100℃で3時間硬化し、引っ張り対伸び挙動を図6に示す通りに試験した。図6に示した測定された引っ張り対伸びの関係は、冷凍共凝集したラテックスから調製されたラテックスフィルムの機械的特性が改善されたことを示す。
【0075】
実施例7
実施例7は、5%の粉砕した炭酸カルシウム(HYDROCARB(登録商標)90、Omya社、プロクター、バーモント州)をカオリンクレー(MIRAGLOSS(登録商標)91)の代わりに使用したことを除いて、実施例3及び4に使用された手順に従って調製した。ラテックスフィルムを、比較例4並びに実施例1に記載された手順に基づく実施例3、4及び7に基づいて調製した。60℃で24時間硬化した後、ラテックスフィルムの引っ張り対伸び挙動を測定した。図7に示した通り、実施例7は、最大強度に悪影響を与えずに最大の破断点伸びをほぼ2倍にした。実施例3〜4から調製されたラテックスフィルムは、最大引っ張り強さ並びに伸び率の両方の改善を示した。機械的強度の更なる改善を実施例4に示した。
【0076】
実施例8〜10及び比較例7
実施例8及び9を、それぞれ20質量%及び40質量%のMIRAGLOSS(登録商標)91の存在下であることを除いて、実施例3及び4に使用された手順に従って調製した。実施例10は、20質量%のMIRAGLOSS(登録商標)91を、20質量%の共凝集したクレーに加えてラテックス試料に後添加したことを除いて、実施例8と同様の手順に従って調製した。比較例7は、適量の70質量%のカオリンHTスラリーをBUTONAL(登録商標)NS103中に後添加することによって調製して、40質量%のカオリンクレーを含有するラテックス試料を生成した。ラテックスフィルムを、実施例8〜10並びに実施例1に記載された手順に基づいて比較例2及び7について調製した。60℃で24時間硬化した後、ラテックスフィルムの引っ張り対伸び挙動を測定した。これらのラテックスフィルムの引っ張り強さ対伸び率の挙動を図8において比較した。これらの結果は、後添加されたクレーラテックスフィルムと比較してクレー共凝集したラテックスフィルムの機械的特性が改善されたことを示した。
【0077】
実施例9、実施例10、及び比較例7から調製されたラテックスフィルムは更に130℃で30分間硬化されて、引っ張り対伸び挙動を図9に示す通りに試験した。図9に示した測定された引っ張り対伸びの関係は、共凝集したラテックス試料から調製されたラテックスフィルムの機械的特性が改善されたことを示す。
【0078】
実施例11並びに比較例8及び9
比較例2に記載されたラテックス試料を、以下のような手順に従って配合して接着剤試料を調製した。比較例2のpHを10%のKOHを用いて12.5〜13.0に上昇させた。混合物を次いで35℃まで温めて撹拌した。179gのTufflo1200(Citgo社;ヒューストン、TX)、146gのNeville LX−1200(Neville Chemical社;ピッツバーグ、PA)、及び33gのMelhi樹脂(Eastman Chemical社;キングズポート、TN)を含む溶融した樹脂−オイル混合物を、ゆっくりとラテックス混合物に添加した。Tufflo1200はナフテン系プロセス油から構成された可塑剤である。LX1200は増量剤として有用な石油炭化水素樹脂である。Melhiはバインダー又は粘着剤として作用する熱可塑性の酸性樹脂バインダーである。pHを10%のKOHで11.0〜12.0に調整した。2分間の撹拌後、混合物を冷却させた。冷却した後、淡褐色の均一な接着剤ラテックス混合物が、81.3%の固体含有率及び28Pa・sの粘度で得られた(比較例8)。
【0079】
比較例9は、適量のMIRAGLOSS(登録商標)91を比較例2中に予め添加することによって調製して、10質量%のクレーを含有するラテックス試料を生成した。得られた接着剤ラテックス混合物は、79.2%の固体含有率及び20Pa・sの粘度を有する淡褐色の均一な接着剤ラテックス混合物であった。
【0080】
BUTONAL(登録商標)NS103は、10質量%のMIRAGLOSS(登録商標)91クレーで加圧共凝集されて、水の除去によって70%の固形分まで濃縮された(実施例11)。実施例11を含む接着剤ラテックス混合物を、比較例8について記載された手順に従って調製した。得られた接着剤ラテックス混合物は、79.0%の固体含有率及び27Pa・sの粘度を有する淡褐色の均一な接着剤ラテックス混合物であった。
【0081】
接着剤ラテックス混合物をそれぞれ個別に合板に適用し、硬材片を接着剤ラテックス混合物の上に押圧して試験集合体を形成する。試験集合体の半分を室温で14日間乾燥させる一方、他の半分を50℃で14日間乾燥させた。実施例11及び比較例8及び9について接着剤ラテックス混合物の重ね剪断を、つり上げ試験(ASTM D 907−96a)によって測定した。つり上げ試験を、室温でインストロン装置(Instron社、ノーウッド、MA)を使用して硬材片を90°までの角度にすることによって行った。接着剤ラテックス混合物の重ね剪断特性を図10及び11において比較した。これらの結果は、共凝集した接着剤ラテックス(実施例11)が、共凝集していないクレーのない接着剤及びクレーが添加された接着剤よりも優れた接着特性を高温で有することを示した。
【0082】
添付の特許請求の範囲の複合材及び方法は、本願明細書に記載された特定の複合材及び方法によって範囲が限定されず、これは特許請求の範囲の少数の態様を例示するものとして意図され、機能的等価物である任意の複合材及び方法は特許請求の範囲内に入ることが意図されている。本願明細書に示され且つ記載されたものに加えて複合材及び方法の多様な改変は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。更に、本願明細書に開示された、ある代表的な複合材及び方法工程のみが明確に記載される一方、特に明確に記載されていない場合でも、他の組み合わせの複合材及び方法工程も添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。従って、工程、要素、成分、又は構成要素の組み合わせがここで明確に記載されているが、明確に記載されてなくても、他の組み合わせの工程、要素、成分、及び構成要素は包含されている。ここで使用される用語「含む」及びその変化形は、用語「包含する」及びその変化形と同義的に使用され、且つ、開かれた、限定されない用語である。用語「含む」及び「包含する」は多様な実施態様を記載するために本願明細書で使用されているが、用語「本質的に〜からなる」及び「からなる」は、更に詳細な本発明の実施態様を提供し、また開示されるために「含む」及び「包含する」の代わりに使用してよい。
【技術分野】
【0001】
背景
ラテックスポリマーは、紙のコーティング、カーペットの裏地、ペイント、泡及び接着剤における充填剤粒子のためのバインダーを含む、複数の生成物の製造に有用である。これらの生成物の機械的特性は、無機材料を分散液又は得られる生成物に添加することによって改善することができる。典型的には、これらの無機材料は、得られた生成物に使用される前に分散液に添加される。重合反応の間に無機材料を添加して、ポリマー・無機ハイブリッド粒子からなる分散液を形成することが試みられてきたが、これらのプロセスも重合プロセスの間に無機材料を使用するために困難で且つ時間のかかる処理プロセスを必要としてきた。
【0002】
例えば、クレー・ゴムナノ複合材は、ゴムラテックス及びクレーの水性分散液のインサイチュ溶液重合及び共凝集を含む、種々の方法で開発されてきた。溶液重合プロセスにおいて、ポリマーを有機溶媒、即ち、トルエン中に溶解させる。別個に、有機親和性に改質されたクレーを別の有機溶媒、即ち、アルコールに分散させる。所望量のクレー分散液を撹拌下でポリマー溶液中に注ぎ込む。次に、この溶液を真空下で乾燥させて有機溶媒を除去し、ポリマー/クレー複合材を製造する。
【0003】
共凝集法では、改質された有機親和性のクレーを水に分散させて、これをポリマー分散液(ラテックス)中に添加する。激しく撹拌した後、混合物は、電解質溶液(即ち、2%の硫酸溶液)の添加によって共凝集される。この得られた凝塊を水で洗浄し且つ乾燥させる。
【0004】
これらのプロセスでは、ポリマー分散液の水相中に分散されたクレー粒子をバルクポリマー相に導入してクレー/ゴムポリマーナノ複合材を製造できるように、クレー表面を有機親和性に前処理する必要がある。これらのプロセスの欠点の1つは、天然の、親水性のクレー粒子が使用できないことである。例えば、共凝集プロセスでは、天然の親水性のクレー粒子はそれ自体で簡単に凝集し、凝集プロセスの間に巨視的な分離相を形成し得る。更に、これらのプロセスは、これらのナノ複合材を使用できる工業的用途を制限する乾燥したゴム固体を生成する。これらの固体は特に、接着剤、発泡体、アスファルト乳剤、及び他の用途に使用することが難しい。
【0005】
概要
共凝集した分散液及びその製造方法を記載する。共凝集した分散液は、アニオン性ポリマー分散液及び不活性粒子の共凝集によって製造される。共凝集した分散液に使用するためのポリマーは、少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される。不活性粒子は2μm未満の粒径を有してよい。複数の実施態様において、不活性粒子は50nm〜2μmの範囲の粒径を有する。不活性粒子は無機粒子であってよい。例えば、無機粒子は1種以上のクレーを含んでよい。無機粒子はプレートレット構造を有する1種以上の粒子(例えば、カオリン、マイカ、ベントナイト、天然及び合成のヘクトライト、エトリンジャイト、リン酸カルシウム、及びそれらの混合物)を含んでよい。幾つかの実施例において、無機粒子はカオリンを含む。不活性粒子をスラリーに与えることができる。
【0006】
共凝集工程は更に、ポリマーの乾燥質量を基準として1〜50質量%(例えば、ポリマーの乾燥質量を基準として10質量%)の量で無機粒子を提供することを含んでよい。この方法はまた、ポリマー分散液をカチオン性にするために共凝集した分散液にカチオン界面活性剤を添加する工程を含んでよい。
【0007】
本願明細書に記載された方法で使用されるポリマーは、少なくとも50%のモノマーが少なくとも1つの共役ジエンを含む、1種以上のモノマーから誘導される。幾つかの実施例において、少なくとも1種の共役ジエンモノマーはブタジエンを含む。1種以上のモノマーは少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)を含んでよい。1種以上のモノマーは少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル(例えば、メチルメタクリレート)を含んでよい。幾つかの実施例において、ポリマーはポリブタジエンである。
【0008】
本願明細書に記載された方法は更に、共凝集工程前にアニオン性ポリマー分散液を形成するために乳化重合を用いて1種以上のモノマーを重合する工程を含み得る。重合工程は室温よりも低い温度で起こり得る。本願明細書に記載された方法は、50%より高い(例えば、50%〜75%又は55%〜72.5%)又は60%より高い(例えば、60%〜70%)固体含有率を生成するために共凝集した分散液から水を除去する工程も含み得る。
【0009】
共凝集工程は、化学物質をアニオン性コポリマー分散液及びスラリーに添加することによる、凍結凝集、加圧凝集、機械的凝集を用いて、又はこれらの方法の組み合わせによって、アニオン性コポリマー分散液とスラリーとを共凝集することを含んでよい。幾つかの実施例では、共凝集工程によって、共凝集した粒子が100nm〜5μmの粒径を有するポリマー分散液が得られる。
【0010】
少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子を含む水性分散液も記載されている。共凝集した粒子は100nm〜5μmの粒径を有する。少なくとも1種のポリマーは少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される。幾つかの実施例では、水性分散液は45mN/m未満の表面張力を有する。幾つかの実施例では、本願明細書に記載された水性分散液の固体含有率は50%より高い又は60%より高い。幾つかの実施態様において、固体含有率は60%より高く、粘度は20℃で1Pa・s未満である。
【0011】
本願明細書に記載された水性分散液の不活性材料は、例えば、無機粒子の形の無機材料であってよい。無機材料は1種以上のクレーを含んでよい。無機材料はプレートレット構造を有する1種以上の粒子(例えば、カオリン、マイカ、ベントナイト、天然及び合成のヘクトライト、エトリンジャイト、リン酸カルシウム、及びそれらの混合物)を含んでよい。幾つかの実施例において、無機材料はカオリンを含む。不活性材料は、共凝集した粒子中のポリマーの乾燥質量を基準として、1〜50質量%の量で共凝集した粒子中に存在する。本願明細書に記載された水性のアニオン性分散液は、カチオン性界面活性剤の添加及び分散液のpH低下によって更にカチオン性分散液に変換できる。
【0012】
本願明細書に記載された水性分散液に使用されるポリマーは、少なくとも50%のモノマーが少なくとも1種の共役ジエンを含む、1種以上のモノマーから誘導されてよい。幾つかの実施例において、少なくとも1種の共役ジエンモノマーはブタジエンを含む。幾つかの実施例において、1種以上のモノマーは少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)を含む。幾つかの実施例において、その1種以上のモノマーは少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル(例えば、メチルメタクリレート)を含み得る。幾つかの実施例において、ポリマーはポリブタジエンである。
【0013】
本願明細書には更に、発泡ポリマー、ラテックスベースの接着剤、並びにその製造方法及びその使用が記載されている。本願明細書に含まれる発泡ポリマーは、少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子、100nm〜5μmの粒径を有する共凝集した粒子、及び少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導されるポリマーから製造される発泡フォームを含む発泡ポリマーである。発泡ポリマーは実質的に全体にわたって均一な不活性材料の分布を含む。
【0014】
発泡ポリマーの製造方法であって、2μm未満の粒径を有する不活性粒子の存在下で、そのポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される、アニオン性ポリマー分散液を共凝集してアニオン性ポリマー及び粒子を含む共凝集した分散液を形成する工程;空気又は他の気体をポリマー分散液中に導入して発泡分散液を形成する工程;前記発泡分散液を成形する工程;前記発泡分散液を凝固又は固化してポリマー発泡体を形成する工程;及び前記ポリマー発泡体中で共凝集した粒子を架橋する工程を含む、前記発泡ポリマーの製造方法も本願明細書に記載されている。
【0015】
更に本願明細書には、少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子、100nm〜5μmの粒径を有する共凝集した粒子及び少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導されるポリマーを含む、ラテックスベースの接着剤が記載されている。幾つかの実施例において、本願明細書に記載される接着剤は、織物接着剤(例えば、カーペット接着剤)として使用することができる。基材を表面に接着する方法であって、少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子を含む共凝集した分散液を表面に適用する工程、その際、前記共凝集した粒子は100nm〜5μmの粒径を有し且つ前記ポリマーは少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される;基材を前記分散液に適用する工程;及び前記分散液から水を除去する工程を含む、前記接着方法も記載されている。本方法は更に、共凝集した分散液を形成するために、アニオン性ポリマー分散液を共凝集する工程を含み、該ポリマーは、2μm未満の粒径を有する不活性粒子の存在下で、少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される。この方法はまた、これを表面に適用する前に、共凝集した分散液から水を除去する工程を含んでよい。
【0016】
更に別の態様では、アスファルトエマルション並びに少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子を含む共凝集した分散液を含む、改質アスファルト組成物であって、前記共凝集した粒子が100nm〜5μmの粒径を有し且つ前記ポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される、改質アスファルト組成物が記載されている。アスファルトエマルションは防水膜又は吸音コーティングとして使用できる。
【0017】
本発明の1つ以上の実施態様の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、対象、及び利点は、説明及び図面、及び特許請求の範囲から明らかになる。
【0018】
図面の簡単な説明
図1Aは、クレーが共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液及びクレーが凝集しないでラテックス分散液に後添加されたスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0019】
図1Bは、クレーのないスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液及びクレーが後添加されたスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0020】
図2は、クレーのないスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液及びクレーで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0021】
図3Aは、5%のクレーで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。この別々のトレースは独立した試験を示す。
【0022】
図3Bは、10%のクレーで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。この別々のトレースは独立した試験を示す。
【0023】
図4Aは、加熱老化後のクレーで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0024】
図4Bは、クレーのないスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液のラテックスフィルム及びクレーで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液のラテックスフィルムの写真である。
【0025】
図5は、クレーのないスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液及び加熱老化した後のクレーで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0026】
図6は、クレーが共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液及びクレーが後添加されたスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0027】
図7は、クレーのないスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液及びクレー又は炭酸カルシウムのいずれかで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0028】
図8は、クレーのないスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液、クレーで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液、クレーを後添加したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液、並びにクレーで共凝集し且つこれを後添加したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0029】
図9は、クレーで共凝集したスチレン−ブタジエンラテックス分散液、クレーを後添加したスチレン−ブタジエンラテックス分散液、並びに加熱老化後にクレーで共凝集し且つこれを後添加したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフである。
【0030】
図10は、クレーのない接着剤、クレーを後添加した接着剤、及びクレーで共凝集した接着剤の重ね剪断を示すグラフである。
【0031】
図11は、クレーのない接着剤、クレーを後添加した接着剤、及び加熱老化した後にクレーで共凝集した接着剤の重ね剪断を示すグラフである。
【0032】
発明の詳細な説明
共凝集化したラテックスポリマー分散液及びその製造方法が本願明細書に記載されている。共凝集した分散液の製造方法は、アニオン性ポリマー及び粒子を含む共凝集した分散液を形成するために、2μm未満の粒径を有する不活性粒子の存在下でアニオン性ポリマー分散液を共凝集することを含む。
【0033】
本願明細書に記載された共凝集した分散液に有用な不活性粒子は、分散液中のポリマーと反応しない。例えば、本願明細書に記載された不活性粒子は、加硫反応において分散液中のポリマーと反応し得る硫黄を含まない。本願明細書に記載された共凝集した分散液に有用な不活性粒子は、無機粒子であり且つ1種以上のクレーを含み得る。その上、本願明細書に記載された無機粒子は、プレートレット構造を有する1種以上の粒子、例えば、カオリン、マイカ、ベントナイト、天然の及び合成のヘクトライト(例えば、LAPONITE(登録商標)、Rockwood Additives Limited, Cheshire, United Kingdomから市販されている合成ヘクトライト)、エトリンジャイト、リン酸カルシウム、及びそれらの混合物を含んでよい。酸化タングステン、カーボンブラック、カーボンナノ粒子、及び炭酸カルシウムなどの他の粒子も本発明に使用されてよい。不活性粒子は50nm〜2μmの範囲の粒径を有してよい。
【0034】
本願明細書に記載される不活性粒子は、固体の形で分散液に添加するか又はスラリーに与えることができる。幾つかの実施態様において、スラリーは40%より高い固体を有し得る。本願明細書に記載されるスラリー中に存在する不活性粒子の量の例は、45%より高い、50%より高い、55%より高い、60%より高い、65%より高い、70%より高い又は75%より高い量を含む。典型的なスラリーは、カオリンHT(固形分70%)及びBASF社、エンゲルハード部門から市販されているMIRAGLOSS91(登録商標)スラリーを含む。
【0035】
共凝集工程のための不活性粒子は、ポリマーの乾燥質量を基準として、約1〜約50質量%の量で与えることができる。更なる例は、ポリマーの乾燥質量を基準として、約1.2〜約40質量%、約1.4〜約35質量%、約1.6〜約30質量%、約1.8〜約25質量%、約2〜約20質量%、又は約3〜約15質量%、又は約4〜約12質量%(例えば、5質量%又は10質量%)を含む。
【0036】
本願明細書に記載された共凝集化した分散液に使用するためのアニオン性ポリマーは、少なくとも1種の共役ジエンモノマー(例えば、イソプレン又は1,3−ブタジエン)を含む1種以上のモノマーから誘導される。幾つかの実施例において、少なくとも50%のモノマーは少なくとも1種の共役ジエンを含む。例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%のモノマーは少なくとも1種の共役ジエンを含んでよい。幾つかの実施例において、少なくとも1種の共役ジエンモノマーはブタジエン(1,3−ブタジエン)を含む。本願明細書に記載されるポリマーは、1種以上の追加のモノマーから誘導されるブタジエンベースのコポリマー又はポリブタジエンであってよい。
【0037】
上記の通り、ポリマーは、共役ジエン(例えば、ブタジエン)に加えて1種以上のモノマーから誘導してよい。幾つかの実施態様において、1種以上のモノマーは少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレン、及びビニルトルエン(例えば、スチレン)を含む。例えば、ポリマーはスチレン、ブタジエン及び任意に他のモノマーから誘導されるスチレン−ブタジエンベースのコポリマーであってよい。スチレン−ブタジエンベースのコポリマーは、0質量%より高く50質量%未満のスチレン及び50質量%より高く100質量%未満のブタジエン(例えば、10〜45質量%のスチレン/55〜90質量%のブタジエン、15〜40質量%のスチレン/60〜85質量%のブタジエン、例えば、20〜35質量%のスチレン/65〜80質量%のブタジエン、又は約25質量%のスチレン/約75質量%のブタジエン)を含んでよい。スチレン−ブタジエンベースのコポリマーは、25%以下の追加のモノマー、例えば、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、及び(メタ)アクリルアミドを含んでよい。
【0038】
幾つかの実施態様において、1種以上の追加のモノマーは、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーに加えて又はそれの代わりに少なくとも1種の(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルを含んでよい。例えば、メチル、エチル、n−ブチル、イソブチル及び2−エチルヘキシルアクリレート及びメタクリレートを使用してよい。幾つかの実施態様において、ポリマーを形成するためにメチルメタクリレートが使用される。ポリマーは、前の段落で与えられたパーセンテージで、スチレンの全部又は一部に対する置換基としてのメチルメタクリレートを含んでよい。例えば、ポリマーは、50%より高く99%までのブタジエン及び1%〜50%未満のメチルメタクリレート又は1%〜50%未満のスチレンから誘導することができる。幾つかの実施態様において、ポリマーは50%より高く99%までのブタジエン、1%〜49%のメチルメタクリレート及び1%〜49%のスチレンから誘導することができる。幾つかの実施態様において、ポリマーのTgは−80℃より高く且つ−10℃未満である。
【0039】
その上、tert−ドデシルメルカプタンなどの分子量の調節剤は少量(例えば、全モノマーの質量を基準として0.01〜1質量%)である。かかる物質は好ましくは、重合されるべきモノマーとの混合物中で重合領域に添加されて、これはコポリマーで使用される不飽和モノマー全量の一部であると考えられる。
【0040】
本願明細書に記載された共凝集した分散液に使用するためのアニオン性ポリマー分散液を形成するために1種以上のモノマーが重合される。幾つかの実施例では、共凝集工程前にアニオン性ポリマー分散液を形成するために、乳化重合を用いて1種以上のモノマーが重合される。重合工程は室温よりも低い温度で起こり得る。ポリマー分散液は200nm以下又は100nm以下(例えば、20〜100nm)の平均粒径を有してよい。
【0041】
アニオン性ポリマー分散液及び不活性粒子の共凝集は、当業者に公知の多様な方法で実施できる。共凝集工程は、例えば、凍結凝集、加圧凝集、機械的撹拌、又は化学的凝集を使用して(即ち、化学物質をアニオン性コポリマー分散液及びスラリーに添加することによって)、アニオン性コポリマー分散液とスラリーとを共凝集することを含み得る。これらの方法は、D. C. Blackley, "Polymer Latices: Science and Technology, Chapter 10.4, Agglomeration and Concentration of Synthetic Latices," Chapman & Hall, London, 1997年及びD. C. Blackley, "High Polymer Latices, Chapter 3, Agglomeration and Concentration of Synthetic Latices," Maclaren, Palmerton, 1966年に詳細に記載されている。本願明細書で使用される「凝集」との用語は、より大きな平均粒径及び概してより広い粒径分布を有するラテックスを製造するための、部分的な粒子の凝集を含む、粒子の凝集方法を指す。「共凝集」との用語は、アニオン性分散液及び不活性粒子においてポリマー粒子を凝集するための上記の方法などの凝集方法を指す。共凝集方法は、使用にとって高い全固体含有率及び十分に低い粘度を有するラテックスを製造することができる。
【0042】
共凝集プロセスに使用されるポリマー分散液はアニオン型である。本願明細書に記載された共凝集した分散液の製造方法は、ポリマー分散液をカチオン性にするために、カチオン性界面活性剤を共凝集した分散液に添加する工程を更に含み得る。本願明細書に記載された方法に適したカチオン性界面活性剤は、例えば、REDICOTE(登録商標)E−5(Akzo Nobel,Chicago,IL)、REDICOTE(登録商標)E−11(Akzo Nobel,Chicago,IL)、REDICOTE(登録商標)E−53(Akzo Nobel,Chicago,IL)、REDICOTE(登録商標)E−606(Akzo Nobel,Chicago,IL)、REDICOTE(登録商標)E−5127(Akzo Nobel,Chicago,IL)、ADOGEN(登録商標)477HG(Chemtura Corp.,Greenwich,CT)、INDULIN(登録商標)W−1(MeadWestvaco,Charleston,SC)、INDULIN(登録商標)W−5(MeadWestvaco,Charleston,SC)、INDULIN(登録商標)SBT(MeadWestvaco,Charleston,SC)、及びINDULIN(登録商標)MQK(MeadWestvaco,Charleston,SC)を含む。
【0043】
共凝集した粒子は、より広い粒径分布を有するより大きな粒子のポリマー分散液をもたらす。本願明細書に記載された共凝集した粒子は100nm〜5μmの粒径を有する。例えば、粒径は100nm〜2μm又は200nm〜1μmの範囲であってよい。
【0044】
共凝集した分散液の形成方法は、固体含有率を高めるために、共凝集した分散液から水を除去する工程を含んでよい。例えば、50%より高い又は60%より高い固体含有率を生成するために、共凝集した分散液を濃縮してよい。例えば、共凝集した分散液の形成方法は、50%より高く75%まで、55%〜72.5%、又は60%〜70%の固体含有率を生成するために、共凝集した分散液から水を除去する工程を含んでよい。一旦濃縮された、共凝集した分散液でも、これを容易に流動させることが可能な粘度を有し得る(即ち、これはゲルではない)。例えば、60%を上回る固体含有率を有する水性分散液は、20℃で1Pa・s未満の粘度を有し得る。
【0045】
幾つかの実施態様では、無機材料、例えば、共凝集した粒子又は別の共無機材料を形成するためのポリマーと共に共凝集した無機材料は、共凝集した分散液に添加してよい。水を分散液から除去する場合、水を除去する前又は後に無機材料を添加してよい。共凝集した分散液に添加される無機材料の量は、一般に共凝集した粒子の形成に使用される量よりも少ない、例えば、ポリマーの乾燥質量を基準として、20質量%未満、10質量%未満、又は5質量%未満である。しかしながら、幾つかの実施態様では、無機材料は、ポリマーと無機材料との共凝集前にのみ添加されており、即ち、無機材料は全く後添加(共凝集後に添加)されていない。
【0046】
少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料で形成された共凝集した粒子を含む水性分散液も本願明細書に記載されている。共凝集した粒子は100nm〜5μmの粒径を有する。ポリマーは、上記のものなどの少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導されてよい。不活性粒子は、記載された量で上記の粒子を含んでよい。
【0047】
共凝集した粒子を含む水性分散液は、ASTM D 1417−03aに記載された方法に従って、du Nouy張力計を用いて測定して、45mN/m未満の表面張力を有してよく、参照によりその開示の全体が本願明細書に組み込まれる。例えば、水性分散液は45mN/m以下、40mN/m以下、又は35mN/m以下の表面張力を有してよい。水性分散液は、典型的には界面活性剤(即ち、ポリマー粒子と不活性粒子との共凝集の結果としての粒子表面積の低下のために共凝集した粒子と相互作用していない界面活性剤)を含んでいない。
【0048】
水性分散液は、任意に、上記に記載されたものなどの、水性分散液をカチオン性にするカチオン性界面活性剤を含んでよい。本願明細書に記載された水性不活性粒子の固体含有率は、上記に記載された通り50%より高くてよい。
【0049】
不活性粒子は、不活性粒子を化学修飾剤で前処理しないで又は積層法(例えば、インサイチュ重合、溶液インターカレーション、溶融インターカレーション、又は凝固)を用いて、本願明細書に記載された共凝集した分散液に使用してよい。更に、本願明細書に記載された共凝集した分散液は、安定した水性ポリマー分散液として維持することができ、従って多様な用途に適している。例えば、共凝集した分散液は、防水膜、ポリマーフィルム、吸音化合物及び織物(例えば、カーペット)裏地として使用されるものを含む、発泡ポリマー、ラテックスベースの接着剤、アスファルトエマルションを含む、複数の製品の製造に有用である。本願明細書に記載された方法に従って製造された製品は、共凝集した粒子を用いずに製造されたポリマー製品と比較して向上した表面張力、伸び率、及び耐熱性を有する(即ち、不活性材料又は粒子の共凝集しない最終分散液への不活性材料又は粒子の添加を除く)。本願明細書に記載された共凝集した粒子を用いて製造された製品は、表面張力の低下なしで有意に向上した伸び率を達成する。一般に、低い表面張力のポリマーは、高い伸び率を有するが、強化ポリマーは限定された伸び率を有する。本願明細書に記載された共凝集した粒子を含むポリマー製品は、粒子の共凝集なしで製造されたポリマー製品と比較して、有意に改善された伸び率と共に同じ又はわずかに高い表面張力を維持する。
【0050】
更に、共凝集した粒子の包含は、熱への長期暴露(即ち、加熱老化)時の特性の劣化をより受けにくい製品を製造する。加熱老化により、粉末形成の向上した脆さがもたらされるか又は色の暗色化から明らかな通り製品の色むらがもたらされる。しかしながら、本願明細書に記載された通りに製造された製品は、色、表面張力、及び伸び率の維持において明らかなように、このプロセスによる影響が少ない。幾つかの実施例では、本願明細書に記載された発泡体の表面張力及び伸び率は、製品が140℃で3時間加熱された後に10%を超えて変化しない。
【0051】
このプロセスによって製造されたポリマー製品は、従来法によって製造されたポリマー製品と比較して、特に無機材料の共凝集したポリマー分散液への後添加によって製造されたポリマー製品と比較して、より良好な不活性材料の製品全体への分布を有する。特に、不活性粒子がポリマー粒子で共凝集されるので、不活性粒子は更に均一にポリマー製品全体に分布されており、実質的に均一にポリマー製品全体に分布されている。ポリマー分散液を凝集して、不活性粒子を後で添加する従来法では、不活性粒子は、ポリマー製品全体への均一な分布とは対照的に、凝集したポリマー粒子の表面の周りに形成し易い。特定の理論により拘束されることは望まないが、不活性材料の実質的に均一な分布が、不活性粒子、特にプレートレット形態の不活性粒子の平行な配向をもたらすことも考えられる。これは、交差偏光光学顕微鏡の下で共凝集したポリマーを含む乾燥したラテックスフィルムを視検する時に均一な青色によって明らかである。
【0052】
本願明細書に記載された方法に従って製造された発泡ポリマー、例えば、少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成された共凝集した粒子を含む発泡フォームは、上記の改善された機械的特性を示す。特に、十分な量の、例えば、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、又は40質量%以上の不活性材料が分散液で共凝集される場合、発泡ポリマーは圧縮抵抗などの改善された機械的特性を有し得る。発泡ポリマーは、アニオン性ポリマー及び粒子を含む共凝集した分散液を形成するために、アニオン性ポリマー分散液を共凝集することによって製造できる。得られた分散液は、単独で又は1種以上の追加のラテックス分散液と共に使用できる。幾つかの実施態様では、発泡ポリマーはスチレンブタジエンベースのコポリマー分散液をベースにしており、スチレンブタジエンコポリマー粒子及び不活性粒子から形成された共凝集した粒子を含んでよい。
【0053】
発泡ポリマーは、最初に空気又は他の気体を、機械的な手段(例えば、空気のラテックス中へのホイッピング又はビーティング)又は化学的な手段によりラテックス中に導入することによって製造することができる。次に、この発泡体を、最終製品に求められる形状に成形又は拘束することができる。次いで発泡体を、発泡体から水を蒸発させるか又は発泡体をゲル化することによって、凝固するか又は固化することができる。そして発泡体を、共凝集した粒子の架橋によって加硫することができる。
【0054】
発泡ポリマーの製造方法は、発泡促進剤及び気泡安定剤を含む1種以上の発泡剤を、共凝集した分散液に添加する工程を含んでよい。発泡促進剤として、例えば、カルボキシレート石鹸(例えば、オレアート、リシノレエート、ヒマシ油石鹸及びレソナート)、硫酸塩、スルホン酸塩、エトキシレート(非イオノゲンエトキシレートを含む)、及びコハク酸塩が挙げられる。本願明細書に記載された発泡ポリマーの製造に有用な気泡安定剤として、第4級アンモニウム表面活性化合物及びベタイン、アミノ化合物及びアミン酸化物、有機ヒドロキシ化合物(例えば、フェノール)、水溶性の親水コロイド(例えば、タンパク質の物質)が挙げられる。アルカリ金属ケイフッ化物、亜鉛酸化物を含むゲル化剤もまた追加してよい。硬化プロセスにおいて補助する組成物、例えば、硬化又は加硫ペーストは、共凝集した分散液に添加することができる。加硫ペーストは、硫黄及び/又は亜鉛酸化物の分散液、促進剤(例えば、ジフェニルグアニジン、亜鉛2−メルカプトベンゾチアゾール及びジエチルジチオカルバミド酸亜鉛)、酸化防止剤、及び水から作ることができる。発泡体の形成を促進するために、他の添加剤、例えば、充填剤(例えば、スターチ及び樹脂)、軟化剤(例えば、鉱油)、難燃剤、増粘剤、及び酸化防止剤も含まれてよい。
【0055】
得られた発泡性ラテックス化合物は、発泡物品を作るために当業者に公知の方法によって製造することができる。好適な方法として、ダンロップ(Dunlop)法、タラレイ(Talalay)法、ダウ(Dow)法、クラウンラバー(Crown Rubber)法、及びリバルテックス(Revertex)法が挙げられる。発泡ポリマーは、自動車の用途(例えば、ダッシュボード、バンパー、及び座席)、家具用のクッション、寝具(例えば、マットレス及びまくら)、衣料(例えば、衣料品パッド)、履物(例えば、靴形部品又は靴内部底)、鋳物、ゴムシートなどに使用できる。
【0056】
本願明細書には、ラテックスベースの接着剤、並びにその使用及び製造方法も記載されている。ラテックスベースの接着剤は、金属、セラミック、プラスチック、紙、革、木材、織物、及びガラス表面を含む、結合表面に使用できる。ラテックスベースの接着剤は、少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料で形成された共凝集した粒子を含み且つ1種以上の追加のラテックス分散液をベースとし得る。幾つかの実施態様では、ラテックスベースの接着剤は、スチレンブタジエンベースのコポリマー分散液をベースとしており、スチレンブタジエンコポリマー粒子及び不活性粒子から形成された共凝集した粒子を含んでよい。本願明細書に記載された接着剤の機械的特性、例えば、引っ張り強さ、伸び率、及び耐熱性は、共凝集した粒子を用いずに製造された接着剤と比較して改善されており、従って、これら接着剤を、床用途を含む多様な用途に適したものにする。
【0057】
本願明細書に記載された少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成された共凝集した粒子を含む共凝集した分散液は、表面に適用することができ、該表面に結合されるべき基材を分散液に適用することができ;そして結合を促進するために水が分散液から除去される。水は、共凝集した分散液を表面に適用する前に該分散液から除去することができる。
【0058】
幾つかの実施態様では、ラテックスベースの接着剤は床接着剤であってよく、基材は下面に結合されるべき床材であってよい。例えば、本願明細書に記載された床接着剤は、カーペット、硬木材床、タイル、及び他の床材を下面に結合するために使用してよい。
【0059】
接着剤の製造方法は、接着剤を共凝集した分散液に添加する工程を含み得る。例えば、接着改質剤(例えば、粘着剤及び調理又は未調理のスターチ)、可塑剤、架橋剤、充填剤、増量材、バインダー、及び増粘剤を添加して当業者に公知の接着剤の粘着性を改善することができる。本願明細書に記載された接着剤中の包含物に適した他の接着剤として、例えば、酸化防止剤、界面活性剤、消泡剤、不凍剤、凍結融解安定剤、殺真菌剤、腐食防止剤、難燃剤、着色剤、消臭剤、及び付香剤が挙げられる。
【0060】
幾つかの実施態様では、改質アスファルトエマルションは、アスファルトエマルションと、少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成された共凝集した粒子の共凝集した分散液とを組み合わせることによって製造される。アスファルトエマルションは、防水膜として使用することができ、基材、特に建築材に使用されるもの、例えば、セメント、コンクリート、湿潤コンクリート、湿潤セメント、せっこう、プラスター、石積み、チップボール、ハードボード、ドライ壁、木材、セラミック、大理石、石、及びタイルを水分から保護するための膜として適用される。基材は、ポルトランドセメント、充填剤及び他の公知の成分などの種々の材料を含んでよく、且つ例えば、金属成分を用いて強化することができる。アスファルトエマルションも、自動車に使用されるものなどの吸音コーティングを製造するために使用できる。
【0061】
以下の実施例は、本発明の実施態様の幾つかを更に完全に説明するために提供されている。以下の実施例に開示された技術は、本発明の実施で良好に機能する、本発明者らによって発見された技術を表し、従ってその実施のために例示的な形態を構成すると考えられることが当業者によって理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示を考慮して、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示された特定の実施態様において多くの変更がなされ、なお同等又は同様の結果が得られることを理解するべきである。部及びパーセンテージは他に指示がない限り質量を基準として示される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、スチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフを示す。
【図2】図2は、スチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフを示す。
【図3】図3は、クレーで共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフを示す。
【図4】図4は、共凝集したスチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフ及びラテックスフィルムの写真を示す。
【図5】図5は、スチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフを示す。
【図6】図6は、スチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフを示す。
【図7】図7は、スチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフを示す。
【図8】図8は、スチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフを示す。
【図9】図9は、スチレン−ブタジエンベースのラテックス分散液の伸び率に対する引っ張り強さを示すグラフを示す。
【図10】図10は、クレーのない接着剤、クレーを後添加した接着剤、及びクレーで共凝集した接着剤の重ね剪断を示すグラフを示す。
【図11】図11は、クレーのない接着剤、クレーを後添加した接着剤、及び加熱老化した後にクレーで共凝集した接着剤の重ね剪断を示すグラフを示す。
【0063】
実施例
実施例1及び比較例1〜3
BUTONAL(登録商標)NS103(BASF社、Florham Park、NJ)は、約25%のスチレン及び75%のブタジエン及び45〜47%の固体の冷却重合されたポリ(スチレン−ブタジエン)ラテックスである。このラテックスは100〜300mPa・sの粘度、50mN/mを上回る表面張力、及び100nm未満の粒径を有する。
【0064】
5%のカオリンクレー分散液(乾燥ポリマーの質量を基準として)を提供するために、BUTONAL(登録商標)NS103及びBASF社、エンゲルハード部門から市販されている十分な量のカオリンHTクレースラリー(70質量%のクレー)を−20℃で24時間冷凍し、この冷凍した試料を解凍すると、直径100nmから5μm未満の範囲の広いサイズ分布を有する共凝集したラテックス(実施例1)が生成し、凍結凝集した後のラテックス分散液の表面張力及び粘度は30〜35mN/m及び20mPa・s未満であった。BUTONAL(登録商標)NS103とカオリンクレースラリーとの凝集によって分散液中のラテックス粒子の全表面積の有意な減少が起こり、これによってラテックス粒子上への界面活性剤被覆が増加し、従って分散液の安定性が改善された。ラテックス表面積の減少によっても、ラテックス分散液の水相中に遊離の界面活性剤が増加し、従ってラテックス分散液の表面張力が低下した。
【0065】
比較例1は、適量の70質量%のカオリンHTスラリー(BASF社、エンゲルハード部門)をBUTONAL(登録商標)NS103中に後添加することによって調製して、5質量%のカオリンクレーを含有するラテックス試料を生成した。
【0066】
配合物をカオリンクレースラリーなしでBUTONAL(登録商標)NS103を加圧凝集することによって調製し、これによって直径100nmから5μm未満の範囲の広いサイズ分布を有するラテックスが得られた。凝集したラテックスは30〜35mN/mの低い表面張力を有し、この凝集したラテックスの広いサイズ分布は、水を除去して約70%の固形分まで濃縮した後に、2Pa・s未満の比較的低い粘度を維持することを可能にする。得られたラテックスは比較例2である。
【0067】
比較例3は、適量の70質量%のカオリンHTスラリー(BASF社、エンゲルハード部門)を比較例2中に後添加することによって調製して、5質量%のカオリンクレーを含有するラテックス試料を生成した。
【0068】
ラテックスフィルムの調製並びに引っ張り強さ及び伸び率の測定:
配合実施例1及び比較例1〜3のラテックスフィルムは、室温で3日間乾燥させて調製し、次いで更に1日間60℃で硬化した。得られたラテックスフィルムは約200〜300μmの厚さであり、これを切断して約1.2cmの幅及び2.5cmの長さの長方形の試験片を調製した。ラテックスフィルムの引っ張り強さ対伸び特性を、lnstron(Instron社、ノーウッド、MA)によって室温で測定した。ラテックスフィルムの引っ張り強さ対伸び特性は、図1A及び1Bにおいて比較した。これらの結果は、カオリンクレーを非凝集ラテックス中へ後添加することによって、最大引っ張り強さは改善されずにラテックスフィルムの伸び率が改善されることを示した。相対的に、5%のクレーの凍結凝集したBUTONAL(登録商標)NS103は、最大伸び率を下げることなく加圧凝集したラテックス(0及び5%のクレーが後添加される)に対して2x近くの最大引っ張り強さの増加を示した。BUTONAL(登録商標)NS103の機械的特性がクレースラリーの後添加によって改善されても、このラテックスは低い固体含有率及び限定された分散安定性を有する。対照的に、クレー冷凍共凝集したBUTONAL(登録商標)NS103を濃縮すると、その広いサイズ分布のために70%近くの固形分のラテックスが生成されて、比較例2と同等の分散安定性を与えることができる。
【0069】
実施例2及び比較例4
冷凍共凝集した分散液(実施例2)は、カオリンHTクレーを提供して2%のカオリンクレー分散液を生成することを除いて、実施例1と同じ方法で調製した。比較例4は、クレーを添加しないで、凍結凝集したBUTONAL(登録商標)NS103から単独で調製された。実施例2及び比較例4を含むラテックスフィルムは上記の通り調製した。実施例2に基づくラテックスフィルム及び比較例4に基づくラテックスフィルムを、室温で10日間乾燥させることによって調製し、引っ張り強さ及び伸び率は、60℃で24時間硬化しないで測定した。これらのラテックスフィルムの引っ張り強さ対伸び率の挙動を比較した。最大伸び率の低下なしで最大引っ張り強さの約2xの増加は、図2に示すような実施例2の2%のカオリンHT共凝集を用いて示された。
【0070】
実施例3〜4
BUTONAL(登録商標)NS103を、5質量%及び10質量%のMIRAGLOSS(登録商標)91(BASF社、エンゲルハード部門)の存在下であることを除いて、実施例1に記載された方法を用いて冷凍共凝集すると、実施例3及び4がそれぞれ得られた。ラテックスフィルムを、実施例1に記載されたように乾燥させ且つ硬化した。最大引っ張り強さ並びに最大伸び率の改善が、図3A及び3Bに示すように、これらのMIRAGLOSS(登録商標)91の共凝集したラテックスフィルムを用いて観察された。これらのラテックスフィルムの引っ張り強さ対伸び率測定の再現性も、2回以上実施例3及び4を試験することによってこれらの図に示された。
【0071】
配合実施例3及び4のラテックスフィルムは上記の通り調製した。60℃で24時間硬化した後、これらのラテックスフィルム及び比較例4を140℃で3時間加熱老化した。比較例4に基づくフィルムは、その高いブタジエン含有率のために非常に加熱老化を受けやすく、図4Bに示すような暗褐色の色になり且つ非常に脆く、従って、引っ張り強さ対伸び率測定を妨げた。実施例3より調製されたラテックスフィルムは、図4Bに示す通り、比較例4に基づくフィルムよりも明るい色であったが、図4Aに示した通り、限定された機械的強度のみ有していた。実施例4に従って調製されたラテックスフィルムは、図4Bに示した通り、加熱老化プロセス後に限定された程度のみの変色を示し、加熱老化前と同じか又は更に改善された引っ張り強さ対伸び率の挙動を維持した(図3B対図4A)。この結果は、クレー共凝集プロセスがBUTONAL(登録商標)NS103フィルムの機械的強度を改善し、更に加熱老化特性を低下させたことを示した。
【0072】
実施例5〜6及び比較例5
BUTONAL(登録商標)NS103は、参照によりその開示の全体が本願明細書に組み込まれている、米国特許第6,127,461号;同第6,300,392号;及び同第6,348,525号に記載された加硫反応促進剤の最適化された種類及び量を含有する元素の硫黄分散液で加圧共凝集された。共凝集したラテックスを更に70%の固形分まで濃縮し、得られたラテックスは比較例5である。
【0073】
BUTONAL(登録商標)NS103を、5質量%及び10質量%のMIRAGLOSS(登録商標)91の存在下で上記の元素の硫黄分散液と一緒に冷凍共凝集すると、実施例5及び6がそれぞれ得られた。実施例5、実施例6及び比較例5に基づくラテックスフィルムを、実施例1に記載された手順を用いて調製して100℃で3時間硬化した。これらのラテックスフィルムの引っ張り強さ対伸び率の挙動を図5において比較した。これらの結果は、クレー共凝集したラテックスフィルムの機械的特性が改善されたことを示した。
【0074】
比較例6
比較例6は、10%のMIRAGLOSS(登録商標)91が5%のカオリンHTの代わりに共凝集した分散液中に後添加され且つラテックスフィルムが実施例1に記載された通りに調製されたことを除いて、比較例3に記載された方法で調製された。実施例4に基づくフィルムも同じ手順を用いて製造した。60℃で24時間硬化した後、両方のフィルムを更に100℃で3時間硬化し、引っ張り対伸び挙動を図6に示す通りに試験した。図6に示した測定された引っ張り対伸びの関係は、冷凍共凝集したラテックスから調製されたラテックスフィルムの機械的特性が改善されたことを示す。
【0075】
実施例7
実施例7は、5%の粉砕した炭酸カルシウム(HYDROCARB(登録商標)90、Omya社、プロクター、バーモント州)をカオリンクレー(MIRAGLOSS(登録商標)91)の代わりに使用したことを除いて、実施例3及び4に使用された手順に従って調製した。ラテックスフィルムを、比較例4並びに実施例1に記載された手順に基づく実施例3、4及び7に基づいて調製した。60℃で24時間硬化した後、ラテックスフィルムの引っ張り対伸び挙動を測定した。図7に示した通り、実施例7は、最大強度に悪影響を与えずに最大の破断点伸びをほぼ2倍にした。実施例3〜4から調製されたラテックスフィルムは、最大引っ張り強さ並びに伸び率の両方の改善を示した。機械的強度の更なる改善を実施例4に示した。
【0076】
実施例8〜10及び比較例7
実施例8及び9を、それぞれ20質量%及び40質量%のMIRAGLOSS(登録商標)91の存在下であることを除いて、実施例3及び4に使用された手順に従って調製した。実施例10は、20質量%のMIRAGLOSS(登録商標)91を、20質量%の共凝集したクレーに加えてラテックス試料に後添加したことを除いて、実施例8と同様の手順に従って調製した。比較例7は、適量の70質量%のカオリンHTスラリーをBUTONAL(登録商標)NS103中に後添加することによって調製して、40質量%のカオリンクレーを含有するラテックス試料を生成した。ラテックスフィルムを、実施例8〜10並びに実施例1に記載された手順に基づいて比較例2及び7について調製した。60℃で24時間硬化した後、ラテックスフィルムの引っ張り対伸び挙動を測定した。これらのラテックスフィルムの引っ張り強さ対伸び率の挙動を図8において比較した。これらの結果は、後添加されたクレーラテックスフィルムと比較してクレー共凝集したラテックスフィルムの機械的特性が改善されたことを示した。
【0077】
実施例9、実施例10、及び比較例7から調製されたラテックスフィルムは更に130℃で30分間硬化されて、引っ張り対伸び挙動を図9に示す通りに試験した。図9に示した測定された引っ張り対伸びの関係は、共凝集したラテックス試料から調製されたラテックスフィルムの機械的特性が改善されたことを示す。
【0078】
実施例11並びに比較例8及び9
比較例2に記載されたラテックス試料を、以下のような手順に従って配合して接着剤試料を調製した。比較例2のpHを10%のKOHを用いて12.5〜13.0に上昇させた。混合物を次いで35℃まで温めて撹拌した。179gのTufflo1200(Citgo社;ヒューストン、TX)、146gのNeville LX−1200(Neville Chemical社;ピッツバーグ、PA)、及び33gのMelhi樹脂(Eastman Chemical社;キングズポート、TN)を含む溶融した樹脂−オイル混合物を、ゆっくりとラテックス混合物に添加した。Tufflo1200はナフテン系プロセス油から構成された可塑剤である。LX1200は増量剤として有用な石油炭化水素樹脂である。Melhiはバインダー又は粘着剤として作用する熱可塑性の酸性樹脂バインダーである。pHを10%のKOHで11.0〜12.0に調整した。2分間の撹拌後、混合物を冷却させた。冷却した後、淡褐色の均一な接着剤ラテックス混合物が、81.3%の固体含有率及び28Pa・sの粘度で得られた(比較例8)。
【0079】
比較例9は、適量のMIRAGLOSS(登録商標)91を比較例2中に予め添加することによって調製して、10質量%のクレーを含有するラテックス試料を生成した。得られた接着剤ラテックス混合物は、79.2%の固体含有率及び20Pa・sの粘度を有する淡褐色の均一な接着剤ラテックス混合物であった。
【0080】
BUTONAL(登録商標)NS103は、10質量%のMIRAGLOSS(登録商標)91クレーで加圧共凝集されて、水の除去によって70%の固形分まで濃縮された(実施例11)。実施例11を含む接着剤ラテックス混合物を、比較例8について記載された手順に従って調製した。得られた接着剤ラテックス混合物は、79.0%の固体含有率及び27Pa・sの粘度を有する淡褐色の均一な接着剤ラテックス混合物であった。
【0081】
接着剤ラテックス混合物をそれぞれ個別に合板に適用し、硬材片を接着剤ラテックス混合物の上に押圧して試験集合体を形成する。試験集合体の半分を室温で14日間乾燥させる一方、他の半分を50℃で14日間乾燥させた。実施例11及び比較例8及び9について接着剤ラテックス混合物の重ね剪断を、つり上げ試験(ASTM D 907−96a)によって測定した。つり上げ試験を、室温でインストロン装置(Instron社、ノーウッド、MA)を使用して硬材片を90°までの角度にすることによって行った。接着剤ラテックス混合物の重ね剪断特性を図10及び11において比較した。これらの結果は、共凝集した接着剤ラテックス(実施例11)が、共凝集していないクレーのない接着剤及びクレーが添加された接着剤よりも優れた接着特性を高温で有することを示した。
【0082】
添付の特許請求の範囲の複合材及び方法は、本願明細書に記載された特定の複合材及び方法によって範囲が限定されず、これは特許請求の範囲の少数の態様を例示するものとして意図され、機能的等価物である任意の複合材及び方法は特許請求の範囲内に入ることが意図されている。本願明細書に示され且つ記載されたものに加えて複合材及び方法の多様な改変は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。更に、本願明細書に開示された、ある代表的な複合材及び方法工程のみが明確に記載される一方、特に明確に記載されていない場合でも、他の組み合わせの複合材及び方法工程も添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。従って、工程、要素、成分、又は構成要素の組み合わせがここで明確に記載されているが、明確に記載されてなくても、他の組み合わせの工程、要素、成分、及び構成要素は包含されている。ここで使用される用語「含む」及びその変化形は、用語「包含する」及びその変化形と同義的に使用され、且つ、開かれた、限定されない用語である。用語「含む」及び「包含する」は多様な実施態様を記載するために本願明細書で使用されているが、用語「本質的に〜からなる」及び「からなる」は、更に詳細な本発明の実施態様を提供し、また開示されるために「含む」及び「包含する」の代わりに使用してよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性ポリマー分散液を共凝集することを含む、共凝集した分散液の製造方法であって、前記ポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導され、2μm未満の粒径を有する不活性粒子の存在下で、アニオン性ポリマー及び不活性粒子を含む共凝集した分散液を形成する、前記製造方法。
【請求項2】
前記不活性粒子が無機粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記無機粒子が1種以上のクレーを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記無機粒子がプレートレット構造を有する1種以上の粒子を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記無機粒子が、カオリン、マイカ、ベントナイト、天然及び合成のヘクトライト、エトリンジャイト、リン酸カルシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される無機粒子を含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記無機粒子がカオリンを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
不活性粒子がスラリーに提供される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記共凝集工程が、不活性粒子をポリマーの乾燥質量を基準として1〜50質量%の量で提供することを含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ポリマー分散液をカチオン性にするためにカチオン性界面活性剤を共凝集した分散液に添加する工程を更に含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ポリマーが1種以上のモノマーから誘導され、その際、少なくとも50%のモノマーが少なくとも1種の共役ジエンを含む、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1種の共役ジエンモノマーがブタジエンを含む、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
1種以上のモノマーが少なくとも1種のビニル芳香族モノマーを含む、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種のビニル芳香族モノマーがスチレンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーがスチレン−ブタジエンベースのコポリマーである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1種以上のモノマーが少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルを含む、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルがメチルメタクリレートを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーがポリブタジエンである、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記共凝集工程前にアニオン性ポリマー分散液を形成するために乳化重合を用いて1種以上のモノマーを重合する工程を更に含む、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記重合工程が室温よりも低い温度で起こる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
50%よりも高い固体含有率を生成するために共凝集した分散液から水を除去する工程を更に含む、請求項1から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
60%よりも高い固体含有率を生成するために共凝集した分散液から水を除去する工程を更に含む、請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記共凝集工程が、凍結凝集を用いてアニオン性コポリマー分散液とスラリーとを共凝集させることを含む、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記共凝集工程が、加圧凝集を用いてアニオン性コポリマー分散液とスラリーとを共凝集させることを含む、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記共凝集工程が、化学物質をアニオン性コポリマー分散液及びスラリーに添加することによってアニオン性コポリマー分散液とスラリーとを共凝集することを含む、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記共凝集工程によって、共凝集した粒子が100nm〜5μmの範囲の粒径を有するポリマー分散液が得られる、請求項1から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子を含む水性分散液であって、前記共凝集した粒子が100nm〜5μmの粒径を有し且つ前記ポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される、前記水性分散液。
【請求項27】
45mN/m未満の表面張力を有する、請求項26に記載の水性分散液。
【請求項28】
固体含有率が50%よりも高い、請求項26又は27に記載の水性分散液。
【請求項29】
固体含有率が60%よりも高い、請求項26又は27に記載の水性分散液。
【請求項30】
粘度が20℃で1Pa・s未満である、請求項29に記載の水性分散液。
【請求項31】
前記少なくとも1種の不活性材料が少なくとも1種の無機材料を含む、請求項26から30までのいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項32】
前記無機材料が1種以上のクレーを含む、請求項31に記載の水性分散液。
【請求項33】
前記無機材料がプレートレット構造を有する1種以上の粒子を含む、請求項31又は32に記載の水性分散液。
【請求項34】
前記無機材料が、カオリン、マイカ、ベントナイト、天然及び合成のヘクトライト、エトリンジャイト、リン酸カルシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される材料を含む、請求項31から33までのいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項35】
前記無機材料がカオリンを含む、請求項34に記載の水性分散液。
【請求項36】
不活性材料が、共凝集した粒子中のポリマーの乾燥質量を基準として、1〜20質量%の量で共凝集した粒子中に存在する、請求項26から35までのいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項37】
カチオン性界面活性剤を更に含む、請求項26から36までのいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項38】
ポリマーが1種以上のモノマーから誘導され、その際、少なくとも50%のモノマーが少なくとも1種の共役ジエンを含む、請求項26から37までのいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項39】
少なくとも1種の共役ジエンモノマーがブタジエンを含む、請求項38に記載の水性分散液。
【請求項40】
1種以上のモノマーが少なくとも1種のビニル芳香族モノマーを含む、請求項26から39までのいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項41】
前記少なくとも1種のビニル芳香族モノマーがスチレンを含む、請求項40に記載の水性分散液。
【請求項42】
前記ポリマーがスチレン−ブタジエンベースのコポリマーである、請求項41に記載の水性分散液。
【請求項43】
1種以上のモノマーが少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルを含む、請求項26から42までのいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項44】
前記少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルがメチルメタクリレートを含む、請求項43に記載の水性分散液。
【請求項45】
前記ポリマーがポリブタジエンである、請求項26から39までのいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項46】
少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料を含む発泡ポリマーであって、前記不活性材料が、少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される100nm〜5μmの粒径を有する共凝集した粒子から生成される発泡ポリマー全体に実質的に均一に分布し、前記少なくとも1種のポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される、前記発泡ポリマー。
【請求項47】
前記少なくとも1種の不活性材料が少なくとも1種の無機材料を含む、請求項46に記載の発泡ポリマー。
【請求項48】
発泡ポリマーの製造方法であって、
2μm未満の粒径を有する不活性粒子の存在下で、前記ポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される、アニオン性ポリマー分散液を共凝集して、アニオン性ポリマー及び粒子を含む共凝集した分散液を形成する工程;
空気又は他の気体をポリマー分散液中に導入して発泡分散液を形成する工程;
前記発泡分散液を成形する工程;
前記発泡分散液を凝固又は固化してポリマー発泡体を形成する工程;及び
前記ポリマー発泡体中で共凝集した粒子を架橋する工程
を含む、前記発泡ポリマーの製造方法。
【請求項49】
発泡剤を共凝集した分散液に添加する工程を更に含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ゲル化剤を共凝集した分散液に添加する工程を更に含む、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項51】
前記不活性粒子が無機粒子を含む、請求項48から50までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子を含む、ラテックスベースの接着剤であって、前記共凝集した粒子が100nm〜5μmの粒径を有し且つ前記ポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される、前記ラテックスベースの接着剤。
【請求項53】
基材を表面に接着する方法であって、
少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子を含む共凝集した分散液を表面に適用する工程、その際、前記共凝集した粒子が100nm〜5μmの粒径を有し且つ前記ポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される;
基材を前記分散液に適用する工程;及び
前記分散液から水を除去する工程
を含む、前記接着方法。
【請求項54】
2μm未満の粒径を有する不活性粒子の存在下で、前記ポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される、アニオン性ポリマー分散液を共凝集して共凝集した分散液を形成する工程を更に含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記基材を共凝集した分散液の表面に適用する前に、共凝集した分散液から水を除去する工程を更に含む、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項56】
アスファルトエマルション並びに少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子を含む共凝集した分散液を含む、改質アスファルト組成物であって、前記共凝集した粒子が100nm〜5μmの粒径を有し且つ前記ポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される、前記改質アスファルト組成物。
【請求項1】
アニオン性ポリマー分散液を共凝集することを含む、共凝集した分散液の製造方法であって、前記ポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導され、2μm未満の粒径を有する不活性粒子の存在下で、アニオン性ポリマー及び不活性粒子を含む共凝集した分散液を形成する、前記製造方法。
【請求項2】
前記不活性粒子が無機粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記無機粒子が1種以上のクレーを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記無機粒子がプレートレット構造を有する1種以上の粒子を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記無機粒子が、カオリン、マイカ、ベントナイト、天然及び合成のヘクトライト、エトリンジャイト、リン酸カルシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される無機粒子を含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記無機粒子がカオリンを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
不活性粒子がスラリーに提供される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記共凝集工程が、不活性粒子をポリマーの乾燥質量を基準として1〜50質量%の量で提供することを含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ポリマー分散液をカチオン性にするためにカチオン性界面活性剤を共凝集した分散液に添加する工程を更に含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ポリマーが1種以上のモノマーから誘導され、その際、少なくとも50%のモノマーが少なくとも1種の共役ジエンを含む、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1種の共役ジエンモノマーがブタジエンを含む、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
1種以上のモノマーが少なくとも1種のビニル芳香族モノマーを含む、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種のビニル芳香族モノマーがスチレンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーがスチレン−ブタジエンベースのコポリマーである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1種以上のモノマーが少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルを含む、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルがメチルメタクリレートを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーがポリブタジエンである、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記共凝集工程前にアニオン性ポリマー分散液を形成するために乳化重合を用いて1種以上のモノマーを重合する工程を更に含む、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記重合工程が室温よりも低い温度で起こる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
50%よりも高い固体含有率を生成するために共凝集した分散液から水を除去する工程を更に含む、請求項1から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
60%よりも高い固体含有率を生成するために共凝集した分散液から水を除去する工程を更に含む、請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記共凝集工程が、凍結凝集を用いてアニオン性コポリマー分散液とスラリーとを共凝集させることを含む、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記共凝集工程が、加圧凝集を用いてアニオン性コポリマー分散液とスラリーとを共凝集させることを含む、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記共凝集工程が、化学物質をアニオン性コポリマー分散液及びスラリーに添加することによってアニオン性コポリマー分散液とスラリーとを共凝集することを含む、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記共凝集工程によって、共凝集した粒子が100nm〜5μmの範囲の粒径を有するポリマー分散液が得られる、請求項1から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子を含む水性分散液であって、前記共凝集した粒子が100nm〜5μmの粒径を有し且つ前記ポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される、前記水性分散液。
【請求項27】
45mN/m未満の表面張力を有する、請求項26に記載の水性分散液。
【請求項28】
固体含有率が50%よりも高い、請求項26又は27に記載の水性分散液。
【請求項29】
固体含有率が60%よりも高い、請求項26又は27に記載の水性分散液。
【請求項30】
粘度が20℃で1Pa・s未満である、請求項29に記載の水性分散液。
【請求項31】
前記少なくとも1種の不活性材料が少なくとも1種の無機材料を含む、請求項26から30までのいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項32】
前記無機材料が1種以上のクレーを含む、請求項31に記載の水性分散液。
【請求項33】
前記無機材料がプレートレット構造を有する1種以上の粒子を含む、請求項31又は32に記載の水性分散液。
【請求項34】
前記無機材料が、カオリン、マイカ、ベントナイト、天然及び合成のヘクトライト、エトリンジャイト、リン酸カルシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される材料を含む、請求項31から33までのいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項35】
前記無機材料がカオリンを含む、請求項34に記載の水性分散液。
【請求項36】
不活性材料が、共凝集した粒子中のポリマーの乾燥質量を基準として、1〜20質量%の量で共凝集した粒子中に存在する、請求項26から35までのいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項37】
カチオン性界面活性剤を更に含む、請求項26から36までのいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項38】
ポリマーが1種以上のモノマーから誘導され、その際、少なくとも50%のモノマーが少なくとも1種の共役ジエンを含む、請求項26から37までのいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項39】
少なくとも1種の共役ジエンモノマーがブタジエンを含む、請求項38に記載の水性分散液。
【請求項40】
1種以上のモノマーが少なくとも1種のビニル芳香族モノマーを含む、請求項26から39までのいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項41】
前記少なくとも1種のビニル芳香族モノマーがスチレンを含む、請求項40に記載の水性分散液。
【請求項42】
前記ポリマーがスチレン−ブタジエンベースのコポリマーである、請求項41に記載の水性分散液。
【請求項43】
1種以上のモノマーが少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルを含む、請求項26から42までのいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項44】
前記少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルがメチルメタクリレートを含む、請求項43に記載の水性分散液。
【請求項45】
前記ポリマーがポリブタジエンである、請求項26から39までのいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項46】
少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料を含む発泡ポリマーであって、前記不活性材料が、少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される100nm〜5μmの粒径を有する共凝集した粒子から生成される発泡ポリマー全体に実質的に均一に分布し、前記少なくとも1種のポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される、前記発泡ポリマー。
【請求項47】
前記少なくとも1種の不活性材料が少なくとも1種の無機材料を含む、請求項46に記載の発泡ポリマー。
【請求項48】
発泡ポリマーの製造方法であって、
2μm未満の粒径を有する不活性粒子の存在下で、前記ポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される、アニオン性ポリマー分散液を共凝集して、アニオン性ポリマー及び粒子を含む共凝集した分散液を形成する工程;
空気又は他の気体をポリマー分散液中に導入して発泡分散液を形成する工程;
前記発泡分散液を成形する工程;
前記発泡分散液を凝固又は固化してポリマー発泡体を形成する工程;及び
前記ポリマー発泡体中で共凝集した粒子を架橋する工程
を含む、前記発泡ポリマーの製造方法。
【請求項49】
発泡剤を共凝集した分散液に添加する工程を更に含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ゲル化剤を共凝集した分散液に添加する工程を更に含む、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項51】
前記不活性粒子が無機粒子を含む、請求項48から50までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子を含む、ラテックスベースの接着剤であって、前記共凝集した粒子が100nm〜5μmの粒径を有し且つ前記ポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される、前記ラテックスベースの接着剤。
【請求項53】
基材を表面に接着する方法であって、
少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子を含む共凝集した分散液を表面に適用する工程、その際、前記共凝集した粒子が100nm〜5μmの粒径を有し且つ前記ポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される;
基材を前記分散液に適用する工程;及び
前記分散液から水を除去する工程
を含む、前記接着方法。
【請求項54】
2μm未満の粒径を有する不活性粒子の存在下で、前記ポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される、アニオン性ポリマー分散液を共凝集して共凝集した分散液を形成する工程を更に含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記基材を共凝集した分散液の表面に適用する前に、共凝集した分散液から水を除去する工程を更に含む、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項56】
アスファルトエマルション並びに少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の不活性材料から形成される共凝集した粒子を含む共凝集した分散液を含む、改質アスファルト組成物であって、前記共凝集した粒子が100nm〜5μmの粒径を有し且つ前記ポリマーが少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーから誘導される、前記改質アスファルト組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−531513(P2012−531513A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518901(P2012−518901)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059327
【国際公開番号】WO2011/000897
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059327
【国際公開番号】WO2011/000897
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】
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