説明

共有結合粒子を有する研磨パッドおよび研磨パッドの製造方法

【課題】研磨中に研磨パッドからの研磨粒子の離脱に起因するスクラッチの発生がない半導体ウエハの化学的−機械的研磨用研磨パッドを提供する。
【解決手段】研磨パッド10は、本体11、分子結合リンク30、および本体全体に実質的に均一に分散した研磨粒子20を有する。本体11はポリマー性マトリクス材料12から作製され、分子結合リンク30はマトリクス材料12に共有結合される。実質的に全ての研磨粒子20は、少なくとも1つの分子結合リンク30に共有結合される。分子結合リンク30は、研磨粒子20をマトリクス材料12に確実に固定し、パッド全体への研磨粒子20の分布の均一性を増強し、実質的に研磨粒子20がパッドから脱離するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハの化学的−機械的平坦化において使用される研磨パッド、より詳細には、パッドの本体に包埋した研磨粒子を有する研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
化学的−機械的平坦化(「CMP」)プロセスは、超高密度集積回路の製造において、ウエハの表層から材料を除去する。典型的なCMPプロセスにおいて、ウエハは、スラリーの存在下、制御された化学的条件、圧力条件、速度条件、および
温度条件のもとで研磨パッドを圧する。スラリー溶液は、ウエハ表面をすり減らす研磨粒子、およびウエハ表面を酸化および/またはエッチングする化学薬品を有する。従って、相対運動がウエハとパッドとの間に与えられる場合、材料は、研磨粒子(機械的除去)およびスラリー中の化学薬品(化学的除去)によって、ウエハ表面から除去される。
【0003】
CMPプロセスは、均一かつ平坦な表面をウエハ上に一貫して、かつ正確に生成しなけれならない。なぜなら、ウエハ表面上に光学的または電磁気学的集積回路のパターンを正確に集中させることが重要であるからである。集積回路の密度が増加するにつれて、約0.5μmの許容範囲内にフォトパターンの厳密な寸法を正確に集中させることがしばしば必要となる。しかし、このような小さい許容範囲にフォトパターンを集中させることは、放射源とウエハ表面との間の距離が変動する場合、ウエハ表面は均一な平面ではないので、非常に困難である。実際に、いくつかのデバイスは、非均一の平坦な表面を有するウエハ上に欠陥があり得る。従って、CMPプロセスは、高度に均一で平坦な表面を作製しなければならない。
【0004】
競合的な半導体産業において、完成したウエハのスループット(throughput)を最大限にし、そして各ウエハ上の欠陥デバイスまたは損傷したデバイスの数を最小限にすることがまた、所望されている。CMPプロセスのスループットは、いくつかの要因の作用であり、要因の1つは、ウエハ表面の平坦性の均一性を犠牲にせずに、ウエハが平坦化されるにつれてウエハの厚さが減少する速度(「研磨速度」)である。従って、制御された限定の範囲内で研磨速度を最大限にすることが所望されている。
【0005】
CMPプロセスの研磨速度は、スラリー溶液中の研磨粒子の割合を増加させることにより、増加され得る。なお、コロイド状スラリー溶液中の研磨粒子の割合を増加させることに関する問題の1つは、研磨粒子は、それらがいくつかの所望の酸化用化学薬品およびエッチング用化学薬品と混合される場合に、フロック化する(flocculate)傾向があることである。安定化用化学薬品は、研磨粒子のフロック化(flocculation)を防止し得るが、一般に、安定化用化学薬品は、酸化用化学薬品およびエッチング用化学薬品とは適合し得ない。従って、スラリー溶液中の研磨粒子の割合を限定することが所望されている。
【0006】
スラリー中の研磨粒子の割合を限定するための所望の解決法の1つは、パッド中に研磨粒子を懸濁することである。従来の懸濁粒子パッド(suspended particle pad)は、研磨粒子を、モノマー鎖から作製されたマトリクス材料に混合することにより作製される。イオン性接着触媒(例えば、ヘキサメチルジサリザン(hexamethyldisalizane))が、粒子とモノマー鎖との間の接着を増強するために使用され得る。研磨粒子がマトリクス材料に混合された後に、マトリクス材料が硬化されてパッドは固くなり、そしてマトリクス材料の全体に研磨粒子が懸濁される。操作において、パッド中に懸濁した研磨粒子は、ウエハ表面を研磨して、ウエハから材料を機械的に除去する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の懸濁粒子研磨パッドに関する問題1つのは、パッドの平坦化表面の研磨性、従って、ウエハの研磨速度が、パッド表面にわたって1つの領域から別の領域まで変動することである。マトリクス材料が硬化される前に、研磨粒子は、通常、集塊して高密度クラスタ(cluster)となり、パッド全体に研磨粒子の非均一な分布をもたらす。従って、パッド全体に研磨粒子が均一に分布した懸濁粒子研磨パッドの開発が所望される。
【0008】
従来の懸濁粒子研磨パッドに関する別の問題は、それらがウエハ表面をスクラッチする(scratch)傾向があることである。パッドがウエハを平坦化する際に、研磨パッドの平坦化表面上で研磨粒子と隣接するマトリクス材料は、すり減る;結果として、研磨粒子のいくつかは、パッドから脱離してスラリー中に移動する。粒子はまた、イオン性接着触媒と共にパッドから脱離する。なぜなら、静電溶媒(electrostatic solvent)は、マトリクス材料と粒子との間のイオン結合を弱めるからである。懸濁した粒子の大きな集塊が、パッドから脱離する場合、それは、ウエハ表面をスクラッチし得、ウエハ上のいくつかのデバイスに重大な損傷を与える。従って、研磨粒子がパッドから脱離することを実質的に防止するパッドの開発が所望されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本発明の研磨パッドは、CMPプロセスによって半導体ウエハを平坦化するために使用される;研磨パッドは、本体、分子結合リンク、および本体全体に実質的に均一に分散した研磨粒子を有する。本体は、ポリマー性マトリクス材料から作製され、そして分子結合リンクは、マトリクス材料に共有結合する。実質的に全ての研磨粒子はまた、少なくとも1つの分子結合リンクに共有結合する。分子結合リンクは、研磨粒子をマトリクス材料に確実に固定して、パッド全体の研磨粒子の分布の均一性を増強し、そして研磨粒子がパッドから脱離することを実質的に防止する。
【0010】
本発明の結合粒子研磨パッドの製造方法において、分子結合リンクは、研磨粒子に共有結合する。分子結合リンクが研磨粒子に共有結合された後に、結合した分子結合リンクおよび研磨粒子は、鋳型中でマトリクス材料と共に混合される。混合工程の間、分子結合リンクの反応性末端基は、マトリクス材料に結合し、研磨粒子をマトリクス材料に確実に固定する。次いで、マトリクス材料は重合され、本体全体に実質的に均一に懸濁される結合した研磨粒子を有するパッド本体を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明の研磨パッドは、パッド全体に研磨粒子の均一な分布を有し、そして研磨粒子はパッドに共有結合し、研磨粒子がパッドから脱離することを実質的に防止する。本発明の重要な局面は、研磨パッドのマトリクス材料および研磨粒子の両方に共有結合する分子結合リンクを提供することである。分子結合リンクは、以下の有利な作用を行う:(1)研磨粒子がマトリクス材料が硬化される前に集塊することを実質的に防止する;そして(2)マトリクス材料に研磨粒子を確保する。従って、分子結合リンクは、マトリクス材料全体の研磨粒子の分布の均一性を増強し、そして研磨粒子が研磨パッドから脱離することを実質的に防止する。
【0012】
図1は、マトリクス材料12および多くの研磨粒子20から形成された従来の研磨パッドPを示す。研磨粒子20は、マトリクス材料12が液体状態である間にマトリクス材料12中に懸濁される。マトリクス材料12が硬化する前に、研磨粒子20は、マトリクス材料12全体の研磨粒子20の分布の均一性を低減させるクラスタ22へと集塊し得る。従って、パッドPの平坦化表面Sが、新規な平坦化表面Scに条件付けられる(condition)場合、研磨粒子20のクラスタ22上の研磨速度は、パッド上の他の領域のものとは異なる。さらに、マトリクス材料12が平坦化または条件付けの間にすり減るにつれて、平坦化表面の付近の研磨粒子20は、パッドPから脱離し、そしてウエハをスクラッチする傾向がある(図示せず)。従って、従来の懸濁粒子研磨パッドは、一定しない研磨速度を提供し得、そしてウエハを損傷をし得る。
【0013】
図2は、本発明による研磨パッド10を示す。研磨パッド10は、マトリクス材料12から作製された本体11を有する。マトリクス材料12は、一般にポリウレタンまたはナイロンである。上記に挙げたポリマー材料は、単なる例示であり、従って、他のポリマー性マトリクス材料は本発明の範囲内である。分子結合リンク30は、マトリクス材料12および研磨粒子20に共有結合する。従って、分子結合リンク30は、研磨粒子20をマトリクス材料12に確保する。研磨粒子20は、好ましくは、二酸化ケイ素または酸化アルミニウムから作製されるが、他のタイプの研磨粒子は本発明の範囲内である。
【0014】
図3は、マトリクス材料12のストランド(strand)と、結合リンク30と、研磨粒子20との間の結合をさらに示す。分子結合リンク30は、アルキル鎖32、反応性末端基34、および粒子固定基36を有する。反応性末端基34は、結合リンク30をマトリクス材料12のストランドに結合させる分子セグメントである。反応性末端基34の特定の構造が選択され、マトリクス材料12が液体のモノマー相である場合に、マトリクス材料12の特定のタイプと反応して結合する。粒子固定基36は、結合リンク30を研磨粒子20に共有結合させる別の分子セグメントである。粒子固定基36の特定の構造が同様に選択され、研磨粒子20が作製される材料と共有結合する。従って、分子結合リンク30は、確実に研磨粒子20をマトリクス材料12に結合させる。
【0015】
図4Aは、分子結合リンク30の特定の実施態様を示す。アルキル鎖32は、(CH2)n(ここで、n=1〜30)からなり、反応性末端基は、COOHからなり、そして粒子固定基は、トリクロロシランからなる。図4Bを参照すると、トリクロロシラン分子は、粒子20の表面上のO−H鎖と反応し、研磨粒子20を分子結合リンク30の粒子固定基36に共有結合させる。同様に、 COOHの反応性末端基34は、ウレタンモノマー鎖12と反応し、結合リンク30をマトリクス材料12に結合させる。反応の副生成物は、水および塩酸である。
【0016】
本発明は、二酸化ケイ素から作製される研磨粒子またはポリウレタンから作製されるマトリクス材料に限定されない。研磨粒子およびマトリクス材料が作製される材料は変動し得、所望の特徴をパッドに与え得る。本発明の中心の局面は、研磨粒子およびマトリクス材料と共有結合して、マトリクス材料と、分子結合リンクと、研磨粒子との間の結合が静電溶媒の存在下で弱まることを実質的に防止する、分子結合リンクを選択することである。さらに、分子結合リンク30のアルキル鎖32の長さは変動し得、異なる大きさの研磨粒子20に適応し得る。例えば、15〜20Åの長さのアルキル鎖(約12個の炭素原子(CH2)12)は、1,500Åの直径の粒子で使用され得る。より長いアルキル鎖32は、好ましくはより大きい研磨粒子20で使用され、そしてより短いアルキル鎖32は、好ましくはより小さい研磨粒子20で使用される。
【0017】
図5は、本発明による半導体ウエハの化学的−機械的平坦化における使用のための結合粒子研磨パッドの製造方法を図示する。方法の最初の工程200は、液体モノマー相のマトリクス材料で鋳型を満たすことである。第2の工程202は、研磨粒子を分子結合リンクに共有結合させることである。分子結合リンクの所望の長さに依存して、分子結合リンクは、蒸気蒸着(短めの長さ)か、または液体沈着(長めの長さ)のいずれかにより、研磨粒子上へと堆積される。第3の工程204は、結合した分子結合リンクおよび研磨粒子をマトリクス材料と混合することである。パッドは、約10重量%〜約50重量%の研磨粒子および結合リンクと、約50重量%〜約90重量%のマトリクス材料12とからなる。好ましい実施態様において、パッドは、約15重量%〜約25重量%の結合した研磨粒子および結合リンクからなる。結合した研磨粒子および分子結合リンクがマトリクス材料全体に実質的に均一に分散された(disbursed)後に、第4の工程206は、マトリクス材料を硬化することである。
【0018】
本発明の利点の1つは、本発明の研磨パッドが、スラリー中の酸化用化学薬品またはエッチング用化学薬品を限定することなく、高い研磨速度をもたらすことである。研磨粒子20をパッド10に入れることにより、安定化剤は、スラリー溶液中に必要とされない。従って、広範囲のエッチング用化学薬品および酸化用化学薬品がスラリー溶液中で使用され得る。
【0019】
本発明の別の利点は、研磨パッド10は、その平坦化表面をわたって均一な研磨速度を有することである。研磨粒子20をマトリクス材料12に結合させることによって、研磨粒子20は、図1に示すように、大きなクラスタ22へと集塊しない。従って、研磨パッド10は、マトリクス材料全体に実質的に均一な研磨粒子20の分布を有する。従って、研磨速度は、ウエハ表面にわたって実質的に均一である。
【0020】
本発明のさらに別の利点は、研磨パッド10は、ウエハ表面上に大きなスクラッチを生成しないことである。研磨粒子20をマトリクス材料12に共有結合させることによって、研磨粒子20は、静電溶媒の存在下でパッド10から容易に脱離しない。従って、従来のパッドと比較して、研磨粒子20の大きなクラスタ22は、パッド10から脱離し、そして平坦化の間にウエハをスクラッチする可能性は低い。
【0021】
上記から、本発明の特定の実施態様は、例示の目的のために本明細書中に記載しているが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、種々の改変がなされ得ることが理解される。従って、本発明は、添付した請求の範囲により限定される以外は、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、先行技術による懸濁した研磨粒子を有する従来の研磨パッドの部分断面図である。
【図2】図2は、本発明による結合して懸濁した粒子を有する研磨パッドの部分略断面図である。
【図3】図3は、本発明による分子結合リンクおよび研磨粒子の略図である。
【図4】図4Aは、本発明による分子結合リンクおよび研磨粒子の化学的模式図である。図4Bは、本発明による分子結合リンクと研磨粒子との反応の化学的模式図である。
【図5】図5は、本発明による結合して懸濁した粒子を有する研磨パッドの製造方法を示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハ研磨パッドであって、
ポリマー性マトリクス材料から作製される本体と、
該マトリクス材料に共有結合した結合分子と、
該本体全体に実質的に均一な分布で該結合分子に共有結合した研磨粒子と
を有し、
該結合分子は、該研磨粒子を該マトリクス材料に固定し、該研磨粒子と該マトリクス材料との間の該固定は、静電的化学的−機械的平坦化スラリーの存在下で維持される、研磨パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−13523(P2006−13523A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195615(P2005−195615)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【分割の表示】特願平9−526256の分割
【原出願日】平成9年1月21日(1997.1.21)
【出願人】(503066790)マイクロン テクノロジー インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】