説明

内燃機関の排気制御装置

【課題】水分吸収によってPMの堆積量が異常であると誤判定されることを防止する。
【解決手段】ECU100は、DPF22の上流側の圧力から下流側の圧力を減じた差の圧力であるフィルタ差圧ΔPAを検出する差圧検出部115と、フィルタ差圧ΔPAに基づいて、DPF22に捕集されたPMの堆積量QPを推定する堆積量推定部116と、堆積量推定部116によって推定されたPMの堆積量QPが、予め設定された過堆積判定値QPth以上である場合に、DPF22に捕集されたPMの堆積量が異常であると判定する過堆積判定部118と、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する蒸発判定部113と、蒸発判定部113によってDPF22に吸収されていた水分が蒸発していないと判定された場合に、堆積量推定部116による堆積量QPの推定を禁止する禁止部114と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(主に、ディーゼルエンジン)から排出される排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備える内燃機関の排気制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(主に、ディーゼルエンジン)から排出される排気ガスに含まれる粒子状物質は、DPF(Diesel Particulate Filter)等のフィルタに捕集される。また、従来、上記フィルタに堆積した粒子状物質の堆積量を、上記フィルタの上流側の圧力から下流側の圧力を減じた差の圧力であるフィルタ差圧に基づいて算出する技術が知られている。
【0003】
例えば、フィルタ差圧に基づいて第1の粒子状物質堆積量を推定するとともに、粒子状物質の排出量を積算して第2の粒子状物質堆積量を推定し、最終的に推定されるべき粒子状物質堆積量として、これら第1の粒子状物質堆積量及び第2の粒子状物質堆積量のうち大きい方の値を選択するエンジンの排気ガス浄化装置が開示されている(特許文献1参照)。このエンジンの排気ガス浄化装置によれば、フィルタを再生すべき時期をより的確に判定し、フィルタを保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−197722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のエンジンの排気ガス浄化装置では、排気通路内で結露した水がDPF等のフィルタに吸収されると、フィルタの圧損が大きくなり、上記フィルタ差圧が大きくなるため、結果的に求められる粒子状物質堆積量が過大な値となる虞がある。特に、外気温が低い環境において、エンジンの始動及び停止が繰り返し行われる場合には、排気通路内で結露する水の量が増大し、上記課題が顕在化する可能性が高くなる。
【0006】
また、上述のように粒子状物質堆積量が過大な値として求められると、「フィルタに堆積した粒子状物質の量が多すぎるため、堆積した粒子状物質を燃焼させるとフィルタ内の温度がフィルタ基材の耐熱温度を超える虞がある」と誤って判定されて、粒子状物質の堆積量が異常である(いわゆる、「過堆積」である)と誤判定される虞がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、水分吸収によって粒子状物質の堆積量が異常である(過堆積である)と誤判定されることを防止することが可能な内燃機関の排気制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る内燃機関の排気制御装置は、以下のように構成されている。
【0009】
すなわち、本発明に係る内燃機関の排気制御装置は、内燃機関から排出される排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備える内燃機関の排気制御装置であって、前記フィルタの上流側の圧力から下流側の圧力を減じた差の圧力であるフィルタ差圧を検出する差圧検出手段と、前記フィルタ差圧に基づいて、前記フィルタに捕集された粒子状物質の堆積量を推定する堆積量推定手段と、前記堆積量推定手段によって推定された粒子状物質の堆積量が、予め設定された過堆積判定値以上である場合に、前記フィルタに捕集された粒子状物質の堆積量が異常であると判定する過堆積判定手段と、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する蒸発判定手段と、前記蒸発判定手段によって前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発していないと判定された場合に、前記堆積量推定手段による堆積量の推定を禁止する禁止手段と、を備えることを特徴としている。
【0010】
かかる構成を備える内燃機関の排気制御装置によれば、前記フィルタの上流側の圧力から下流側の圧力を減じた差の圧力であるフィルタ差圧が検出され、検出されたフィルタ差圧に基づいて、前記フィルタに捕集された粒子状物質の堆積量が推定される。そして、推定された粒子状物質の堆積量が、予め設定された過堆積判定値以上である場合に、前記フィルタに捕集された粒子状物質の堆積量が異常であると判定される。また、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かが判定され、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発していないと判定された場合には、前記フィルタ差圧に基づく堆積量の推定が禁止されるため、水分吸収によって粒子状物質の堆積量が異常である(過堆積である)と誤判定されることを防止することができる。
【0011】
すなわち、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発していないと判定された場合には、前記フィルタ差圧に基づく堆積量の推定が禁止される。よって、前記フィルタに吸収されている水分によって、前記フィルタ差圧が過大に検出され、このフィルタ差圧に基づいて、前記フィルタに捕集された粒子状物質の堆積量が過大に推定されることが回避される。したがって、水分吸収によって前記フィルタに捕集された粒子状物質の堆積量が異常であると判定されることを防止することができるのである。
【0012】
また、本発明に係る内燃機関の排気制御装置は、前記内燃機関からの粒子状物質の排出量を求めると共に、求められた排出量を積算して積算排出量を求める排出量積算手段を更に備え、前記禁止手段によって前記堆積量推定手段による堆積量の推定が禁止された場合に、前記過堆積判定手段が、前記排出量積算手段によって求められた積算排出量に基づいて、前記フィルタに捕集された粒子状物質の堆積量が異常であるか否かを判定することが好ましい。
【0013】
かかる構成を備える内燃機関の排気制御装置によれば、前記内燃機関からの粒子状物質の排出量が求められると共に、求められた排出量が積算されて積算排出量が求められる。そして、前記フィルタ差圧に基づく堆積量の推定が禁止された場合に、前記積算排出量に基づいて、前記フィルタに捕集された粒子状物質の堆積量が異常であるか否かが判定されるため、前記フィルタ差圧に基づく堆積量の推定が禁止された場合であっても、前記フィルタに捕集された粒子状物質の堆積量が異常であるか否かを判定することができる。
【0014】
また、本発明に係る内燃機関の排気制御装置は、前記フィルタに流入する排気ガスの温度を認識する温度認識手段を更に備え、前記蒸発判定手段が、前記温度認識手段によって認識された排気ガスの温度に基づいて、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定することが好ましい。
【0015】
なお、「排気ガスの温度を認識する」とは、本明細書においては、「排気ガスの温度を検出する」、「排気ガスの温度を取得する」、及び、「排気ガスの温度を推定する」との意味を包含する上位概念の表現である。また、本明細書においては、「認識する」とは、「検出する」、「取得する」、及び、「推定する」との意味を包含する上位概念の表現である。
【0016】
かかる構成を備える内燃機関の排気制御装置によれば、前記フィルタに流入する排気ガスの温度が認識され、認識された排気ガスの温度に基づいて、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かが判定されるため、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを正確に判定することができる。
【0017】
すなわち、前記フィルタに流入する排気ガスの温度が高い程、前記フィルタに吸収されている水分は蒸発し易いため、短期間で前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発することになる。よって、認識された排気ガスの温度に基づいて、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定することによって、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを正確に判定することができるのである。
【0018】
また、本発明に係る内燃機関の排気制御装置は、前記フィルタに流入する排気ガスの温度を検出する温度センサを更に備え、前記温度認識手段が、前記温度センサによって検出された排気ガスの温度によって、前記フィルタに流入する排気ガスの温度を認識することが好ましい。
【0019】
かかる構成を備える内燃機関の排気制御装置によれば、温度センサによって前記フィルタに流入する排気ガスの温度が検出され、検出された排気ガスの温度によって、前記フィルタに流入する排気ガスの温度が認識されるため、前記フィルタに流入する排気ガスの温度を正確に認識することができる。
【0020】
また、本発明に係る内燃機関の排気制御装置は、前記温度認識手段によって認識された排気ガスの温度が、予め設定された判定温度以上である期間を求める期間算出手段を更に備え、前記蒸発判定手段が、前記期間算出手段によって求められた期間が、予め設定された判定期間以上である場合に、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したと判定することが好ましい。
【0021】
かかる構成を備える内燃機関の排気制御装置によれば、認識された排気ガスの温度が、予め設定された判定温度以上である期間が求められ、求められた期間が、予め設定された判定期間以上である場合に、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したと判定されるため、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを更に正確に判定することができる。
【0022】
また、本発明に係る内燃機関の排気制御装置は、前記フィルタに流入する排気ガスの流量を認識する流量認識手段を更に備え、前記蒸発判定手段が、前記流量認識手段によって認識された排気ガスの流量に基づいて、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定することが好ましい。
【0023】
かかる構成を備える内燃機関の排気制御装置によれば、前記フィルタに流入する排気ガスの流量が認識され、認識された排気ガスの流量に基づいて、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かが判定されるため、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを正確に判定することができる。
【0024】
すなわち、前記フィルタに流入する排気ガスの流量が多い程、前記フィルタに吸収されている水分は蒸発し易いため、短期間で前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発することになる。よって、認識された排気ガスの流量に基づいて、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定することによって、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを正確に判定することができるのである。
【0025】
また、本発明に係る内燃機関の排気制御装置は、前記フィルタに流入する排気ガスの流量を検出する流量センサを更に備え、前記温度認識手段が、前記流量センサによって検出された排気ガスの流量によって、前記フィルタに流入する排気ガスの流量を認識することが好ましい。
【0026】
かかる構成を備える内燃機関の排気制御装置によれば、流量センサによって、前記フィルタに流入する排気ガスの流量が検出され、検出された排気ガスの流量によって、前記フィルタに流入する排気ガスの流量が認識されるため、前記フィルタに流入する排気ガスの流量を正確に認識することができる。
【0027】
また、本発明に係る内燃機関の排気制御装置は、前記流量認識手段によって認識された排気ガスの流量が、予め設定された判定流量以上である期間を求める期間算出手段を更に備え、前記蒸発判定手段が、前記期間算出手段によって求められた期間が予め設定された判定期間以上である場合に、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したと判定することが好ましい。
【0028】
かかる構成を備える内燃機関の排気制御装置によれば、認識された排気ガスの流量が、予め設定された判定流量以上である期間が求められ、求められた期間が予め設定された判定期間以上である場合に、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したと判定されるため、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを更に正確に判定することができる。
【0029】
また、本発明に係る内燃機関の排気制御装置は、前記フィルタに流入する排気ガスの温度を認識する温度認識手段と、前記フィルタに流入する排気ガスの流量を認識する流量認識手段と、を更に備え、前記蒸発判定手段が、前記温度認識手段によって認識された排気ガスの温度、及び、前記流量認識手段によって認識された排気ガスの流量に基づいて、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定することが好ましい。
【0030】
かかる構成を備える内燃機関の排気制御装置によれば、前記フィルタに流入する排気ガスの温度が認識されると共に、前記フィルタに流入する排気ガスの流量が認識される。そして、認識された排気ガスの温度、及び、認識された排気ガスの流量に基づいて、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かが判定されるため、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを正確に判定することができる。
【0031】
すなわち、前記フィルタに流入する排気ガスの温度が高い程、前記フィルタに吸収されている水分は蒸発し易いため、短期間で前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発することになる。また、前記フィルタに流入する排気ガスの流量が多い程、前記フィルタに吸収されている水分は蒸発し易いため、短期間で前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発することになる。よって、認識された排気ガスの温度、及び、認識された排気ガスの流量、に基づいて、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定することによって、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを正確に判定することができるのである。
【0032】
また、本発明に係る内燃機関の排気制御装置は、前記温度認識手段によって認識された排気ガスの温度、及び、前記流量認識手段によって認識された排気ガスの流量に基づいて、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する期間である判定期間を設定する期間設定手段を更に備え、前記蒸発判定手段が、前記期間設定手段によって設定された判定期間が経過した場合に、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したと判定することが好ましい。
【0033】
かかる構成を備える内燃機関の排気制御装置によれば、認識された排気ガスの温度、及び、認識された排気ガスの流量に基づいて、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する期間である判定期間が設定される。そして、設定された判定期間が経過した場合に、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したと判定するため、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを更に正確に判定することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る内燃機関の排気制御装置によれば、前記フィルタの上流側の圧力から下流側の圧力を減じた差の圧力であるフィルタ差圧が検出され、検出されたフィルタ差圧に基づいて、前記フィルタに捕集された粒子状物質の堆積量が推定される。そして、推定された粒子状物質の堆積量が、予め設定された過堆積判定値以上である場合に、前記フィルタに捕集された粒子状物質の堆積量が異常であると判定される。また、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かが判定され、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発していないと判定された場合には、前記フィルタ差圧に基づく堆積量の推定が禁止されるため、水分吸収によって粒子状物質の堆積量が異常であると誤判定されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係るディーゼルエンジン及びその給排気系統の概略構成の一例を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るECU等の制御系統の一例を示す構成図である。
【図3】本発明に係る内燃機関の排気制御装置における主要部の構成の一例(第一実施形態)を示す機能構成図である。
【図4】エンジン始動後における排気ガス温度及び排気ガス流量の時間的変化の一例を示すグラフである。
【図5】エンジン始動後におけるフィルタ差圧の時間的変化の一例を示すグラフである。
【図6】図3に示す本発明の第一実施形態に係るECUの動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る内燃機関の排気制御装置における主要部の構成の他の一例(第二実施形態)を示す機能構成図である。
【図8】図7に示す本発明の第二実施形態に係るECUの動作の一例を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る内燃機関の排気制御装置における主要部の構成の更に他の一例(第三実施形態)を示す機能構成図である。
【図10】図9に示す本発明の第三実施形態に係るECUの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る「内燃機関の排気制御装置」の実施形態について図面を参照して説明する。
【0037】
−エンジン−
まず、本発明に係る「内燃機関の排気制御装置」が適用されるディーゼルエンジンの概略構成を、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係るディーゼルエンジン1及びその給排気系統の概略構成の一例を示す構成図である。
【0038】
ディーゼルエンジン1(以下、「エンジン1」という)は、例えば、コモンレール式筒内直噴4気筒エンジンであって、エンジン1の各気筒の燃焼室1aには、燃焼室1a内での燃焼に供される燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)2が、それぞれ配置されている。各気筒の添加用インジェクタ2は、それぞれコモンレール11に接続されている。また、コモンレール11には、サプライポンプ10が接続されている。
【0039】
サプライポンプ10は、燃料タンクから燃料を汲み上げ、汲み上げられた燃料を高圧にした後に、燃料通路10aを介して、コモンレール11に供給するポンプである。コモンレール11は、サプライポンプ10から供給された高圧燃料を、所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各添加用インジェクタ2に分配するものである。添加用インジェクタ2は、所定電圧が印加されたときに開弁して、燃焼室1a内に燃料を噴射供給する電磁駆動式の開閉弁である。添加用インジェクタ2の開閉(燃料噴射量及び噴射時期)はECU100によってデューティ制御される。
【0040】
また、エンジン1には、吸気通路3及び排気通路4が接続されている。吸気通路3には、吸入空気の流れの上流側から下流側に向けて順に、エアクリーナ9、エアフロー(Air Flow)メータ33、ターボチャージャ6のコンプレッサインペラ63、インタークーラ8、及び、スロットルバルブ5が配設されている。
【0041】
スロットルバルブ5は、吸気空気量を調整するバルブであって、スロットルモータ51によってスロットルバルブ5の開度であるスロットル開度が調整される。また、スロットルバルブ5のスロットル開度は、スロットル開度センサ41によって検出される。なお、吸気通路3は、スロットルバルブ5の下流側に配設された吸気マニホールド3aにおいて各気筒に対応して分岐されている。
【0042】
排気通路4は、エンジン1の各気筒の燃焼室1aと繋がる排気マニホールド4aにおいて各気筒に分岐した状態から1つに集合するべく構成されている。排気通路4には、排気ガスの流れの上流側から下流側に向けて順に、CCO21及びDPF22が配設されており、燃焼室1aにおける燃料の燃焼によって生じた排気ガスが送り込まれる。
【0043】
CCO(Catalytic Converter Oxidation:酸化触媒コンバータ)21は、排気ガス中に含まれるHC(炭化水素)及びCO(一酸化炭素)を酸化して浄化するものである。DPF22は、粒子状物質(Paticulate Matter:以下、「PM」ともいう)を捕集するフィルタである。なお、DPF22は、特許請求の範囲に記載の「フィルタ」に相当する。
【0044】
CCO21の上流側(排気ガス流れの上流側)の排気通路4には、第1排気温センサ36が配設されている。第1排気温センサ36は、CCO21に流入する排気ガスの温度を検出するセンサである。また、CCO21とDPF22との間の排気通路4には、第2排気温センサ37及び排気流量センサ38が配設されている。第2排気温センサ37は、DPF22に流入する排気ガスの温度を検出するセンサである。排気流量センサ38は、DPF22に流入する排気ガスの流量を検出するセンサである。また、DPF22の上流側圧力と下流側圧力との差圧を検出する差圧センサ39が配設されている。
【0045】
第1排気温センサ36、第2排気温センサ37、排気流量センサ38、及び、差圧センサ39の各出力信号はECU100(100A、100B)に入力される(図2参照)。なお、第2排気温センサ37は、特許請求の範囲に記載の「温度センサ」に相当する。また、排気流量センサ38は、特許請求の範囲に記載の「流量センサ」に相当する。
【0046】
また、エンジン1には、ターボチャージャ6が配設されている。ターボチャージャ6は、ロータシャフト61を介して連結されたタービンホイール62とコンプレッサインペラ63とを備えている。コンプレッサインペラ63は、吸気通路3に介設され、タービンホイール62は、排気通路4に介設されている。また、ターボチャージャ6は、タービンホイール62が受ける排気流(排気圧)を利用してコンプレッサインペラ63を回転させることによって吸入空気を過給するものである。ターボチャージャ6は、例えば、可変ノズル式ターボチャージャであって、タービンホイール62側に可変ノズルベーン機構64が設けられており、この可変ノズルベーン機構64の開度を調整することによって、エンジン1の過給圧を調整することができる。なお、ターボチャージャ6での過給によって昇温した吸入空気は、吸気通路3に配置したインタークーラ8によって強制冷却される。
【0047】
また、エンジン1にはEGR装置7が配設されている。EGR装置7は、排気通路4を流れる排気ガスの一部を吸気通路3に還流させて、各気筒の燃焼室1aへ再度供給することにより燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させる装置である。EGR装置7は、吸気マニホールド3aと排気マニホールド4aとを接続するEGR通路71を備えている。EGR通路71には、EGRガスの流れの上流側から下流側に向けて順に、EGRクーラ73及びEGRバルブ72が配設されている。EGRクーラ73は、EGR通路71を通過(還流)するEGRガスを冷却するクーラである。EGRバルブ72は、排気通路4(排気マニホールド4a)から吸気通路3(吸気マニホールド3a)に導入されるEGRガス量(排気還流量)を調整するバルブである。
【0048】
−ECU−
次に、図2を参照して、ECU100(100A、100B)の構成について説明する。図2は、本発明の実施形態に係るECU等の制御系統の一例を示す構成図である。図2に示すように、ECU(Electronic Control Unit)100(100A、100B)は、CPU101、ROM102、RAM103及びバックアップRAM104を備えている。
【0049】
ROM(Read Only Memory)102は、各種制御プログラム、及び、各種制御プログラムを実行する際に参照されるルックアップテーブル(LUT)、マップ等を記憶する不揮発性のメモリである。CPU(Central Processing Unit)101は、ROM102に記憶された各種制御プログラム、及び、ルックアップテーブル、マップ等に基づいて演算処理を実行するものである。また、RAM(Random Access Memory)103は、CPU101での演算結果、及び、各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリである。バックアップRAM104は、エンジン1の停止時、又は、イグニッションOFF時に、保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0050】
CPU101、ROM102、RAM103、及び、バックアップRAM104は、バス107を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース105及び出力インターフェース106と接続されている。
【0051】
入力インターフェース105は、各センサからの検出信号に対してA/D変換等の処理を行い、CPU101が処理可能な検出情報に変換するものであって、エンジン回転数センサ31、水温センサ32、エアフローメータ33、吸気温センサ34、吸気圧センサ35、第1排気温センサ36、第2排気温センサ37、排気流量センサ38、差圧センサ39、レール圧センサ40、スロットル開度センサ41、アクセル開度センサ42、及び、車速センサ43等が通信可能に接続されている。
【0052】
エンジン回転数センサ31は、エンジン1の出力軸であるクランクシャフトの回転数を検出するセンサである。水温センサ32は、エンジン水温(冷却水温)を検出するセンサである。エアフローメータ33は、吸入空気量を検出するセンサである。吸気温センサ34は、吸気マニホールド3aに配置され、吸入空気の温度を検出するセンサである。吸気圧センサ35は、吸入空気の圧力を検出するセンサである。レール圧センサ40は、コモンレール11内の高圧燃料の圧力を検出するセンサである。
【0053】
出力インターフェース106は、CPU101が出力する指示情報等の情報に対してD/A変換等の処理を行い、各装置(又は、機器)が受け付け可能な指示信号等に変換するものであって、添加用インジェクタ2、サプライポンプ10、スロットルバルブ5のスロットルモータ51、ターボチャージャ6の可変ノズルベーン機構64、及び、EGRバルブ72等が通信可能に接続されている。
【0054】
ECU100(100A、100B)は、上記各種センサの出力信号に基づいて、エンジン1のスロットルバルブ5の開度制御、燃料噴射量制御、噴射時期制御(添加用インジェクタ2の開閉制御)等を含むエンジン1の各種制御を実行する。また、ECU100(100A、100B)は、排気デバイス(排気流量センサ38、差圧センサ39など)の故障診断も実行する。
【0055】
−ECUの機能構成(第一実施形態)−
次に、図3を参照して本発明に係る「内燃機関の排気制御装置」の主要部の構成について説明する。図3は、本発明に係る内燃機関の排気制御装置における主要部の構成の一例(第一実施形態)を示す機能構成図である。
【0056】
図3に示すように、ECU100は、CPU101がROM102等に記憶された制御プログラムを読み出して実行することによって、機能的に、温度認識部111、期間算出部112、蒸発判定部113、禁止部114、差圧検出部115、堆積量推定部116、排出量積算部117、過堆積判定部118、及び、異常処理部119等の機能部として機能する。ここで、温度認識部111、期間算出部112、蒸発判定部113、禁止部114、差圧検出部115、堆積量推定部116、排出量積算部117、及び、過堆積判定部118は、本発明に係る「内燃機関の排気制御装置」を構成する。
【0057】
なお、第一実施形態では、「内燃機関の排気制御装置」を構成する温度認識部111、期間算出部112、蒸発判定部113、禁止部114、差圧検出部115、堆積量推定部116、排出量積算部117、及び、過堆積判定部118が機能部として構成されている場合について説明するが、温度認識部111、期間算出部112、蒸発判定部113、禁止部114、差圧検出部115、堆積量推定部116、排出量積算部117、及び、過堆積判定部118の少なくとも1つが電子回路等のハードウェアから構成されている形態でもよい。
【0058】
温度認識部111は、DPF22に流入する排気ガスの温度TEを認識する機能部である。なお、温度認識部111は、特許請求の範囲に記載の「温度認識手段」に相当する。具体的には、温度認識部111は、第2排気温センサ37(図1参照)によって検出されたDPF22に流入する排気ガスの温度TEによって、DPF22に流入する排気ガスの温度TEを認識する。
【0059】
このように、第2排気温センサ37によってDPF22に流入する排気ガスの温度TEが検出され、検出された排気ガスの温度TEによって、DPF22に流入する排気ガスの温度TEが認識されるため、DPF22に流入する排気ガスの温度TEを正確に認識することができる。
【0060】
第一実施形態では、DPF22に流入する排気ガスの温度TEが検出される場合について説明するが、温度認識部111が、DPF22に流入する排気ガスの温度TEを推定する形態でもよい。例えば、温度認識部111が、第1排気温センサ36によって検出されたCCO21に流入する排気ガスの温度に基づき、DPF22に流入する排気ガスの温度TEを推定する形態でもよい。この場合には、第2排気温センサ37を配設する必要がないため、製造コストを低減することができる。
【0061】
期間算出部112は、温度認識部111によって認識された排気ガスの温度TEが、予め設定された判定温度TE0(例えば、100℃)以上である期間を求める機能部である。なお、期間算出部112は、特許請求の範囲に記載の「期間算出手段」に相当する。
【0062】
具体的には、期間算出部112は、例えば、温度TEが、連続して判定温度TE0以上である期間を連続期間PTとして求める。ここで、図4を参照して、期間算出部112の機能について具体的に説明する。図4は、エンジン1の始動後における排気ガス温度TE及び排気ガス流量FEの時間的変化の一例をそれぞれ示すグラフG1及びグラフG2である。
【0063】
図4(a)の横軸は、エンジン1の始動後の経過時間であり、縦軸は、第2排気温センサ37によって検出された排気ガスの温度TEである。図4(a)に示すように、エンジン1の始動時には、排気ガスの温度TEが判定温度TE0未満であり、時点T11において、排気ガスの温度TEが判定温度TE0に到達している。そして、時点T11以降において、排気ガスの温度TEが判定温度TE0以上である状態であった後、時点T12において排気ガスの温度TEが判定温度TE0に到達している。すなわち、時点T11から時点T12までの期間P11の間は、排気ガスの温度TEが判定温度TE0以上である。よって、期間P11が連続期間PTとして求められる。
【0064】
次に、時点T12以降において、排気ガスの温度TEが判定温度TE0未満である状態であった後、時点T13において排気ガスの温度TEが判定温度TE0に到達している。よって、時点T12から時点T13までの期間は、連続期間PTが「0」として求められる。そして、時点T13以降において、排気ガスの温度TEが判定温度TE0以上である状態であった後、時点T14において排気ガスの温度TEが判定温度TE0に到達している。すなわち、時点T13から時点T14までの期間P12の間は、排気ガスの温度TEが判定温度TE0以上である。よって、期間P12が連続期間PTとして求められる。
【0065】
再び、図3に戻って、ECU100の機能構成について説明する。蒸発判定部113は、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する機能部である。なお、蒸発判定部113は、特許請求の範囲に記載の「蒸発判定手段」に相当する。具体的には、蒸発判定部113は、温度認識部111によって認識された排気ガスの温度TEに基づいて、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する。
【0066】
更に具体的には、蒸発判定部113は、期間算出部112によって求められた連続期間PTが、予め設定された判定期間PA(例えば、10分間)以上である場合に、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したと判定する。
【0067】
ここで、図5を参照して、排気ガスの温度TEと、水分が蒸発するために要する期間の関係について説明する。図5は、エンジン1の始動後におけるフィルタ差圧ΔPAの時間的変化の一例を示すグラフG3及びグラフG4である。グラフG3は、排気ガスの温度TEが100℃の場合であって、グラフG4は、排気ガスの温度TEが80℃の場合である。図5の横軸は、エンジン1の始動後の経過時間であって、縦軸は差圧センサ39によって検出されたフィルタ差圧ΔPAである。
【0068】
グラフG4に示すように、排気ガスの温度TEが100℃の場合には、DPF22に吸収されていた水分が沸騰して急激に蒸発し、これに伴って、フィルタ差圧ΔPAが急激に減少する。これに対して、グラフG3に示すように、排気ガスの温度TEが80℃の場合には、DPF22に吸収されていた水分の蒸発量が少なく、フィルタ差圧ΔPAの減少は緩やかである。
【0069】
図5に示すように、DPF22に流入する排気ガスの温度TEが高い程、DPF22に吸収されている水分は蒸発し易いため、短期間でDPF22に吸収されていた水分が蒸発することになる。よって、排気ガスの温度TEに基づいて、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定することによって、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを正確に判定することができる。
【0070】
また、上述のように、期間算出部112によって、排気ガスの温度TEが、予め設定された判定温度TE0以上である連続期間PTが求められ、蒸発判定部113によって、連続期間PTが、予め設定された判定期間PA以上である場合に、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したと判定されるため、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを更に正確に判定することができる。
【0071】
第一実施形態では、蒸発判定部113が、連続期間PTが判定期間PA以上であるときにDPF22に吸収されていた水分が蒸発したと判定する場合について説明したが、蒸発判定部113が、その他の方法でDPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する形態でもよい。例えば、蒸発判定部113が、排気ガスの温度TEが判定温度TE0以上である期間の累積値(以下、「累積期間」という)が判定期間PA以上継続したときに、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したと判定する形態でもよい。この形態では、上述した図4(a)の場合には、時点T14における「累積期間」は、期間P11と期間P12との和として求められる。
【0072】
再び、図3に戻って、ECU100の機能構成について説明する。禁止部114は、蒸発判定部113によってDPF22に吸収されていた水分が蒸発していないと判定された場合に、堆積量推定部116による堆積量QPの推定を禁止する機能部である。なお、禁止部114は、特許請求の範囲に記載の「禁止手段」に相当する。
【0073】
また、禁止部114は、エンジン1が始動されてから予め設定された期間P0が経過したか否かを判定し、期間P0が経過したと判定された場合には、蒸発判定部113によってDPF22に吸収されていた水分が蒸発していないと判定されたときであっても、堆積量推定部116による堆積量QPの推定処理を許可する。ここで、期間P0は、エンジン1が始動されてから期間P0以上経過すれば、経験的に、DPF22に吸収されていた水分が蒸発していると断定できる値(例えば、30分間)に設定される。なお、期間P0は外気温が低い程、長い時間(例えば、1時間)に設定される。これは、外気温が低い程、結露した水が蒸発する温度に上昇するまでに時間を要するからである。
【0074】
差圧検出部115は、DPF22の上流側の圧力から下流側の圧力を減じた差の圧力であるフィルタ差圧ΔPAを検出する機能部である。なお、差圧検出部115は、特許請求の範囲に記載の「差圧検出手段」に相当する。具体的には、差圧検出部115は、差圧センサ39によって検出されたフィルタ差圧ΔPAを取得することによって、フィルタ差圧ΔPAを検出する。
【0075】
堆積量推定部116は、差圧検出部115によって検出されたフィルタ差圧ΔPAに基づいて、DPF22に捕集されたPMの堆積量QPを推定する機能部である。なお、堆積量推定部116は、特許請求の範囲に記載の「堆積量推定手段」に相当する。具体的には、例えば、フィルタ差圧ΔPAとPMの堆積量QPとの関係を示すマップ(又は、LUT)をROM102等に記憶しておき、堆積量推定部116は、差圧検出部115によって検出されたフィルタ差圧ΔPAに対応するPMの堆積量QPを、ROM102等に記憶されたマップ(又は、LUT)から読み出すことによってPMの堆積量QPを推定する。また、堆積量推定部116は、禁止部114によって堆積量QPの推定が禁止された場合には、堆積量QPの推定処理を行わない。
【0076】
排出量積算部117は、エンジン1からのPMの排出量を求めると共に、求められた排出量を積算して積算排出量QEを求める機能部である。なお、排出量積算部117は、特許請求の範囲に記載の「排出量積算手段」に相当する。具体的には、例えば、エンジン1の運転状態(例えば、エンジン回転数及び燃料噴射量)に対応付けてPMの排出量をROM102等に記憶しておき、排出量積算部117は、エンジン1の運転状態に対応するPMの排出量をROM102等に記憶されたマップ(又は、LUT)から読み出すことによってPMの排出量を求める(詳細は、例えば、特開2010−196498号公報参照)。
【0077】
過堆積判定部118は、堆積量推定部116によって推定されたPMの堆積量QPが、予め設定された過堆積判定値QPth以上である場合に、DPF22に捕集されたPMの堆積量QPが異常であると判定する機能部である。なお、過堆積判定部118は、特許請求の範囲に記載の「過堆積判定手段」に相当する。また、禁止部114によって堆積量推定部116による堆積量QPの推定が禁止された場合に、過堆積判定部118は、排出量積算部117によって求められた積算排出量QEに基づいて、DPF22に捕集されたPMの堆積量QPを推定し、推定されたPMの堆積量QPが異常であるか否かを判定する。
【0078】
上述のように、排出量積算部117によって、エンジン1からのPMの排出量が求められると共に、求められた排出量が積算されて積算排出量QEが求められる。そして、堆積量推定部116によるフィルタ差圧ΔPAに基づく堆積量QPの推定処理が禁止部114によって禁止された場合に、積算排出量QEに基づいて、DPF22に捕集されたPMの堆積量QPが異常であるか否かが判定されるため、フィルタ差圧ΔPAに基づく堆積量QPの推定が禁止された場合であっても、DPF22に捕集されたPMの堆積量QPが異常であるか否かを判定することができる。
【0079】
第一実施形態では、堆積量推定部116による堆積量QPの推定処理が禁止部114によって禁止されたときに、過堆積判定部118が、排出量積算部117によって求められた積算排出量QEに基づいてDPF22に捕集されたPMの堆積量QPが異常であるか否かを判定する場合について説明したが、過堆積判定部118が、その他の方法でDPF22に捕集されたPMの堆積量QPが異常であるか否かを判定する形態でもよい。例えば、堆積量推定部116による堆積量QPの推定処理が禁止部114によって禁止される前に、堆積量推定部116によって求められた堆積量QPの履歴をバックアップRAM104等に記憶しておき、過堆積判定部118が、堆積量QPの履歴に基づいて堆積量QPを推定する形態でもよい。この場合には、排出量積算部117が不要となる。
【0080】
異常処理部119は、過堆積判定部118によってDPF22に捕集されたPMの堆積量QPが異常であると判定された場合に、予め設定された「異常処理」を実行する機能部である。具体的には、PMの堆積量QPが異常であると判定された場合に、例えば、異常処理部119は、PMの堆積量QPが異常であることを示す警報を報知して、堆積したPM(粒子状物質)を燃焼させる処理を禁止する。
【0081】
具体的には、PMの堆積量QPが異常であることを示す警報としては、例えば、PMの堆積量QPが異常であることを示すLED(Light Emitting Diode)を点灯すると共に、PMの堆積量QPが異常である旨のメッセージを音声出力する。また、異常処理部119は、堆積したPM(粒子状物質)を燃焼させるための添加用インジェクタ2からの燃料の噴射を停止して、堆積したPM(粒子状物質)を燃焼させる処理を停止する。
【0082】
−ECUの動作(第一実施形態)−
次に、図6を参照して、ECU100の動作を説明する。図6は、図3に示す本発明の第一実施形態に係るECU100の動作の一例を示すフローチャートである。図6に示すように、まず、禁止部114によって、エンジン1が始動した後、期間P0が経過したか否かの判定が行われる(S101)。ステップS101でYESの場合には、処理がステップS109へ進められる。ステップS101でNOの場合には、処理がステップS103へ進められる。
【0083】
次に、温度認識部111によって、第2排気温センサ37で検出された排気ガスの温度TEが取得される(ステップS103)。そして、期間算出部112によって、ステップS103で取得された温度TEが、連続して判定温度TE0以上の期間である連続期間PTが求められる(ステップS105)。次いで、蒸発判定部113によって、ステップS105で求められた連続期間PTが、判定期間PA以上であるか否かの判定が行われる(ステップS107)。ステップS107でNOの場合には、蒸発判定部113によって、DPF22に吸収されていた水分が蒸発していないと判定されて、禁止部114によって、フィルタ差圧ΔPAに基づく堆積量QPの推定が禁止され、処理がステップS113に進められる。
【0084】
ステップS107でYESの場合には、蒸発判定部113によって、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したと判定されて、処理がステップS109に進められる。次いで、差圧検出部115によって、フィルタ差圧ΔPAが検出される(ステップS109)。次に、堆積量推定部116によって、ステップS109で検出されたフィルタ差圧ΔPAに基づいて、DPF22に捕集されたPMの堆積量QPが推定される(ステップS111)。そして、処理がステップS117へ進められる。
【0085】
一方、ステップS107でNOの場合には、排出量積算部117によって、エンジン1から排出されるPM排出量の積算値である積算排出量QEが求められる(ステップS113)。次いで、過堆積判定部118によって、ステップS113において求められた積算排出量QEに基づいて堆積量QPが推定される(ステップS115)。そして、処理がステップS117へ進められる。
【0086】
ステップS111の処理が終了した場合、又はステップS115の処理が終了した場合には、過堆積判定部118によって、ステップS111又はステップS115で求められた堆積量QPが、過堆積判定値QPth以上であるか否かの判定が行われる(ステップS117)。ステップS117でNOの場合には、過堆積判定部118によって堆積量QPが異常ではないと判定されて、処理がステップS101に戻され、ステップS101以降の処理が繰り返し実行される。
【0087】
ステップS117でYESの場合には、処理がステップS119へ進められる。そして、過堆積判定部118によって堆積量QPが異常であると判定されて、異常処理部119によって、警報が報知されると共に添加用インジェクタ2からの燃料の噴射が停止されて処理が終了される。
【0088】
このようにして、DPF22に吸収されていた水分が蒸発していないと判定された場合には、フィルタ差圧ΔPAに基づく堆積量QPの推定が禁止される。よって、DPF22に吸収されている水分によって、フィルタ差圧ΔPAが過大に検出され、このフィルタ差圧ΔPAに基づいて、DPF22に捕集されたPMの堆積量QPが過大に推定されることが回避される。したがって、水分吸収によってDPF22に捕集されたPMの堆積量QPが異常である(過堆積である)と判定されることを防止することができる。
【0089】
−ECUの機能構成(第二実施形態)−
次に、図7を参照して本発明に係る「内燃機関の排気制御装置」の主要部の構成について説明する。図7は、本発明に係る内燃機関の排気制御装置における主要部の構成の一例(第二実施形態)を示す機能構成図である。
【0090】
図7に示すように、ECU100Aは、CPU101がROM102等に記憶された制御プログラムを読み出して実行することによって、機能的に、流量認識部121、期間算出部122、蒸発判定部123、禁止部124、差圧検出部125、堆積量推定部126、排出量積算部127、過堆積判定部128、及び、異常処理部129等の機能部として機能する。ここで、流量認識部121、期間算出部122、蒸発判定部123、禁止部124、差圧検出部125、堆積量推定部126、排出量積算部127、及び、過堆積判定部128は、本発明に係る「内燃機関の排気制御装置」を構成する。
【0091】
なお、第二実施形態では、「内燃機関の排気制御装置」を構成する流量認識部121、期間算出部122、蒸発判定部123、禁止部124、差圧検出部125、堆積量推定部126、排出量積算部127、及び、過堆積判定部128が機能部として構成されている場合について説明するが、流量認識部121、期間算出部122、蒸発判定部123、禁止部124、差圧検出部125、堆積量推定部126、排出量積算部127、及び、過堆積判定部128の少なくとも1つが電子回路等のハードウェアから構成されている形態でもよい。
【0092】
また、第二実施形態に係るECU100Aは、第一実施形態に係るECU100(図3参照)と比較して、温度認識部111、期間算出部112及び蒸発判定部113に換えて、流量認識部121、期間算出部122及び蒸発判定部123を備える点において相違する。よって、以下の説明では、第一実施形態に係るECU100と相違する構成(流量認識部121、期間算出部122及び蒸発判定部123)について主に説明する。
【0093】
また、ECU100Aの禁止部124、差圧検出部125、堆積量推定部126、排出量積算部127、過堆積判定部128、及び、異常処理部129は、それぞれ、第一実施形態に係るECU100(図3参照)の禁止部114、差圧検出部115、堆積量推定部116、排出量積算部117、過堆積判定部118、及び、異常処理部119と略同一の機能を有する機能部である。
【0094】
流量認識部121は、DPF22に流入する排気ガスの流量FEを認識する機能部である。なお、流量認識部121は、特許請求の範囲に記載の「流量認識手段」に相当する。具体的には、流量認識部121は、排気流量センサ38(図1参照)によって検出されたDPF22に流入する排気ガスの流量FEによって、DPF22に流入する排気ガスの流量FEを認識する。
【0095】
このように、排気流量センサ38によってDPF22に流入する排気ガスの流量FEが検出され、検出された排気ガスの流量FEによって、DPF22に流入する排気ガスの流量FEが認識されるため、DPF22に流入する排気ガスの流量FEを正確に認識することができる。
【0096】
第二実施形態では、DPF22に流入する排気ガスの流量FEが検出される場合について説明するが、流量認識部121が、DPF22に流入する排気ガスの流量FEを推定する形態でもよい。例えば、流量認識部121が、エアフローメータ33によって検出された吸入空気量に基づき、DPF22に流入する排気ガスの流量FEを推定する形態でもよい。この場合には、排気流量センサ38を配設する必要がないため、製造コストを低減することができる。また、例えば、CCO21の上流側の排気通路4にエアフローメータが配設されている場合には、流量認識部121が、このエアフローメータによって検出されたCCO21に流入する排気ガスの流量に基づき、DPF22に流入する排気ガスの流量FEを推定する形態でもよい。
【0097】
期間算出部122は、流量認識部121によって認識された排気ガスの流量FEが、予め設定された判定流量FE0(例えば、10g/秒)以上である期間を求める機能部である。なお、期間算出部112は、特許請求の範囲に記載の「期間算出手段」に相当する。
【0098】
具体的には、期間算出部112は、例えば、流量FEが、連続して判定流量FE0以上である期間を連続期間PFとして求める。ここで、図4を参照して、期間算出部122の機能について具体的に説明する。図4は、エンジン1の始動後における排気ガス温度TE及び排気ガス流量FEの時間的変化の一例をそれぞれ示すグラフG1及びグラフG2である。
【0099】
図4(b)の横軸は、エンジン1の始動後の経過時間であり、縦軸は、排気流量センサ38によって検出された排気ガスの流量FEである。図4(b)に示すように、エンジン1の始動時には、排気ガスの流量FEが判定流量FE0未満であり、時点T21において、排気ガスの流量FEが判定流量FE0に到達している。そして、時点T21以降において、排気ガスの流量FEが判定流量FE0以上である状態であった後、時点T22において排気ガスの流量FEが判定流量FE0に到達している。すなわち、時点T21から時点T22までの期間P21の間は、排気ガスの流量FEが判定流量FE0以上である。よって、期間P21が連続期間PFとして求められる。
【0100】
次に、時点T22以降において、排気ガスの流量FEが判定流量FE0未満である状態であった後、時点T23において排気ガスの流量FEが判定流量FE0に到達している。よって、時点T22から時点T23までの期間は、連続期間PFが「0」として求められる。そして、時点T23以降において、排気ガスの流量FEが判定流量FE0以上である状態であった後、時点T24において排気ガスの流量FEが判定流量FE0に到達している。すなわち、時点T23から時点T24までの期間P22の間は、排気ガスの流量FEが判定流量FE0以上である。よって、期間P22が連続期間PTとして求められる。
【0101】
再び、図7に戻って、ECU100Aの機能構成について説明する。蒸発判定部123は、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する機能部である。なお、蒸発判定部123は、特許請求の範囲に記載の「蒸発判定手段」に相当する。具体的には、蒸発判定部123は、流量認識部121によって認識された排気ガスの流量FEに基づいて、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する。
【0102】
更に具体的には、蒸発判定部123は、期間算出部122によって求められた連続期間PFが、予め設定された判定期間PB(例えば、20分間)以上である場合に、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したと判定する。
【0103】
また、DPF22に流入する排気ガスの流量FEが多い程、DPF22に吸収されている水分は蒸発し易いため、短期間でDPF22に吸収されていた水分が蒸発することになる。よって、排気ガスの流量FEに基づいて、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定することによって、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを正確に判定することができる。
【0104】
更に、上述のように、期間算出部122によって、排気ガスの流量FEが、予め設定された判定流量FE0以上である連続期間PFが求められ、蒸発判定部123によって、連続期間PFが、予め設定された判定期間PB以上である場合に、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したと判定されるため、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを更に正確に判定することができる。
【0105】
第二実施形態では、蒸発判定部123が、連続期間PFが判定期間PB以上であるときにDPF22に吸収されていた水分が蒸発したと判定する場合について説明したが、蒸発判定部123が、その他の方法でDPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する形態でもよい。例えば、蒸発判定部123が、排気ガスの流量FEが判定流量FE0以上である期間の累積値(以下、「累積期間」という)が判定期間PB以上継続したときに、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したと判定する形態でもよい。。この形態では、上述した図4(b)の場合には、時点T24における「累積期間」は、期間P21と期間P22との和として求められる。
【0106】
−ECUの動作(第二実施形態)−
次に、図8を参照して、ECU100Aの動作を説明する。図8は、図7に示す本発明の第二実施形態に係るECU100Aの動作の一例を示すフローチャートである。図8に示すように、まず、禁止部124によって、エンジン1が始動した後、期間P0が経過したか否かの判定が行われる(S201)。ステップS201でYESの場合には、処理がステップS209へ進められる。ステップS201でNOの場合には、処理がステップS203へ進められる。
【0107】
次に、流量認識部121によって、排気流量センサ38で検出された排気ガスの流量FEが取得される(ステップS203)。そして、期間算出部122によって、ステップS203で取得された流量FEが、連続して判定流量FE0以上の期間である連続期間PFが求められる(ステップS205)。次いで、蒸発判定部123によって、ステップS205で求められた連続期間PFが、判定期間PB以上であるか否かの判定が行われる(ステップS207)。ステップS207でYESの場合には、蒸発判定部123によって、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したと判定されて、処理がステップS209に進められる。ステップS207でNOの場合には、蒸発判定部123によって、DPF22に吸収されていた水分が蒸発していないと判定されて、禁止部124によって、フィルタ差圧ΔPAに基づく堆積量QPの推定が禁止され、処理がステップS213に進められる。
【0108】
ステップS209以降の処理、及び、ステップS213以降の処理は、それぞれ、図6に示すフローチャートのステップS109以降の処理、及び、ステップS113以降の処理と概ね同一であるため、ここでは、その説明を省略する。
【0109】
このようにして、DPF22に流入する排気ガスの流量FEが認識され、認識された排気ガスの流量FEに基づいて、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かが判定されるため、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを正確に判定することができる。
【0110】
すなわち、DPF22に流入する排気ガスの流量FEが多い程、DPF22に吸収されている水分は蒸発し易いため、短期間でDPF22に吸収されていた水分が蒸発することになる。したがって、流量認識部121で認識された排気ガスの流量FEに基づいて、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定することによって、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを正確に判定することができるのである。
【0111】
−ECUの機能構成(第三実施形態)−
次に、図9を参照して本発明に係る「内燃機関の排気制御装置」の主要部の構成について説明する。図9は、本発明に係る内燃機関の排気制御装置における主要部の構成の一例(第三実施形態)を示す機能構成図である。
【0112】
図9に示すように、ECU100Bは、CPU101がROM102等に記憶された制御プログラムを読み出して実行することによって、機能的に、流量認識部131a、温度認識部131b、期間記憶部131c、期間設定部132、蒸発判定部133、禁止部134、差圧検出部135、堆積量推定部136、排出量積算部137、過堆積判定部138、及び、異常処理部139等の機能部として機能する。ここで、流量認識部131a、温度認識部131b、期間記憶部131c、期間設定部132、蒸発判定部133、禁止部134、差圧検出部135、堆積量推定部136、排出量積算部137、及び、過堆積判定部138は、本発明に係る「内燃機関の排気制御装置」を構成する。
【0113】
なお、第三実施形態では、「内燃機関の排気制御装置」を構成する流量認識部131a、温度認識部131b、期間記憶部131c、期間設定部132、蒸発判定部133、禁止部134、差圧検出部135、堆積量推定部136、排出量積算部137、及び、過堆積判定部138が機能部として構成されている場合について説明するが、流量認識部131a、温度認識部131b、期間記憶部131c、期間設定部132、蒸発判定部133、禁止部134、差圧検出部135、堆積量推定部136、排出量積算部137、及び、過堆積判定部138の少なくとも1つが電子回路等のハードウェアから構成されている形態でもよい。
【0114】
また、第三実施形態に係るECU100Bは、第一実施形態に係るECU100(図3参照)と比較して、温度認識部111、期間算出部112及び蒸発判定部113に換えて、流量認識部131a、温度認識部131b、期間記憶部131c、期間設定部132及び蒸発判定部133を備える点において相違する。よって、以下の説明では、第一実施形態に係るECU100と相違する構成(流量認識部131a、温度認識部131b、期間記憶部131c、期間設定部132及び蒸発判定部133)について主に説明する。
【0115】
また、ECU100Bの禁止部134、差圧検出部135、堆積量推定部136、排出量積算部137、過堆積判定部138、及び、異常処理部139は、それぞれ、第一実施形態に係るECU100(図3参照)の禁止部114、差圧検出部115、堆積量推定部116、排出量積算部117、過堆積判定部118、及び、異常処理部119と略同一の機能を有する機能部である。
【0116】
流量認識部131aは、DPF22に流入する排気ガスの流量FEを認識する機能部である。なお、流量認識部131aは、特許請求の範囲に記載の「流量認識手段」に相当する。具体的には、流量認識部131aは、排気流量センサ38(図1参照)によって検出されたDPF22に流入する排気ガスの流量FEによって、DPF22に流入する排気ガスの流量FEを認識する。
【0117】
このように、排気流量センサ38によってDPF22に流入する排気ガスの流量FEが検出され、検出された排気ガスの流量FEによって、DPF22に流入する排気ガスの流量FEが認識されるため、DPF22に流入する排気ガスの流量FEを正確に認識することができる。
【0118】
第三実施形態では、DPF22に流入する排気ガスの流量FEが検出される場合について説明するが、流量認識部131aが、DPF22に流入する排気ガスの流量FEを推定する形態でもよい。例えば、流量認識部131aが、エアフローメータ33によって検出された吸入空気量に基づき、DPF22に流入する排気ガスの流量FEを推定する形態でもよい。この場合には、排気流量センサ38を配設する必要がないため、製造コストを低減することができる。また、例えば、CCO21の上流側の排気通路4に排気流量センサが配設されている場合には、流量認識部131aが、この排気流量センサによって検出されたCCO21に流入する排気ガスの流量に基づき、DPF22に流入する排気ガスの流量FEを推定する形態でもよい。
【0119】
温度認識部131bは、DPF22に流入する排気ガスの温度TEを認識する機能部である。なお、温度認識部131bは、特許請求の範囲に記載の「温度認識手段」に相当する。具体的には、温度認識部131bは、第2排気温センサ37(図1参照)によって検出されたDPF22に流入する排気ガスの温度TEによって、DPF22に流入する排気ガスの温度TEを認識する。
【0120】
このように、第2排気温センサ37によってDPF22に流入する排気ガスの温度TEが検出され、検出された排気ガスの温度TEによって、DPF22に流入する排気ガスの温度TEが認識されるため、DPF22に流入する排気ガスの温度TEを正確に認識することができる。
【0121】
第三実施形態では、DPF22に流入する排気ガスの温度TEが検出される場合について説明するが、温度認識部131bが、DPF22に流入する排気ガスの温度TEを推定する形態でもよい。例えば、温度認識部131bが、第1排気温センサ36によって検出されたCCO21に流入する排気ガスの温度に基づき、DPF22に流入する排気ガスの温度TEを推定する形態でもよい。この場合には、第2排気温センサ37を配設する必要がないため、製造コストを低減することができる。
【0122】
期間記憶部131cは、排気ガスの流量FE及び排気ガスの温度TEに対応付けて、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する期間である判定期間PC0を記憶する機能部である。なお、期間記憶部131cは、特許請求の範囲に記載の「期間設定手段」の一部に相当する。具体的には、期間記憶部131cは、例えば、ROM102にマップ又はLUTとして、排気ガスの流量FE及び排気ガスの温度TEに対応付けて、判定期間PC0が記憶されている。期間記憶部131cに記憶された判定期間PC0は、期間設定部132によって読み出される。
【0123】
期間設定部132は、温度認識部131bによって認識された排気ガスの温度TE、及び、流量認識部131aによって認識された排気ガスの流量FEに基づいて、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する期間である判定期間PCを設定する機能部である。なお、期間設定部132は、特許請求の範囲に記載の「期間設定手段」の一部に相当する。
【0124】
具体的には、期間設定部132は、例えば、温度認識部131bによって認識された排気ガスの温度TE、及び、流量認識部131aによって認識された排気ガスの流量FEに対応する判定期間PC0を期間記憶部131cから読み出して、読み出された判定期間PC0を用いて、期間設定部132によって前回に設定された判定期間PCを補正することによって、判定期間PCを設定する。
【0125】
更に具体的には、エンジン1が始動されてから、期間設定部132によって期間記憶部131cから読み出された判定期間PC0が、時系列に沿って、判定期間PC1、PC2、・・・、PCN(ここで、Nは、期間設定部132によって期間記憶部131cから判定期間PC0が読み出された回数である)とすると、期間設定部132は、例えば、次の(1)式によって、判定期間PCを求める。
【0126】
PC=(PC1+PC2+・・・+PCN)/N (1)
すなわち、期間設定部132は、期間記憶部131cから読み出された判定期間PC0を単純平均することによって判定期間PCを求める。上記(1)式による処理を、期間設定部132が、読み出された判定期間PC0を用いて、期間設定部132によって前回に設定された判定期間PCを補正する処理として表現すると次の(2)式で表される。
【0127】
PC←(PC×(N−1)+PC0)/N (2)
すなわち、前回の判定期間PCに前回までの期間記憶部131cから読み出された回数である(N−1)を乗じた積に、今回読み出された判定期間PC0を加算して、読み出された回数Nで除した商を今回の判定期間PCとすればよい。
【0128】
なお、第三実施形態では、期間設定部132が、期間記憶部131cから読み出された判定期間PC0を単純平均することによって判定期間PCを求める場合について説明するが、期間設定部132が、その他の方法で判定期間PCを求める形態でもよい。例えば、重み付き平均法で判定期間PCを求める形態でもよい。この場合には、重みを適正に設定することによって、より適正な判定期間PCを設定することができる。
【0129】
蒸発判定部133は、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する機能部である。なお、蒸発判定部133は、特許請求の範囲に記載の「蒸発判定手段」に相当する。具体的には、蒸発判定部133は、期間設定部132によって設定された判定期間PCに基づいて、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する。更に具体的には、蒸発判定部133は、期間設定部132によって設定された判定期間PCが経過した場合に、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したと判定する。
【0130】
このようにして、温度認識部131bによって認識された排気ガスの温度TE、及び、流量認識部131aによって認識された排気ガスの流量FEに基づいて、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する期間である判定期間PCが設定される。そして、設定された判定期間PCが経過した場合に、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したと判定するため、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを正確に判定することができる。
【0131】
−ECUの動作(第三実施形態)−
次に、図10を参照して、ECU100Bの動作を説明する。図10は、図9に示す本発明の第三実施形態に係るECU100Bの動作の一例を示すフローチャートである。図10に示すように、まず、禁止部134によって、エンジン1が始動した後、期間P0が経過したか否かの判定が行われる(S301)。ステップS301でYESの場合には、処理がステップS309へ進められる。ステップS301でNOの場合には、処理がステップS302へ進められる。
【0132】
次に、温度認識部131bによって、第2排気温センサ37で検出された排気ガスの温度TEが取得される(ステップS302)。そして、流量認識部131aによって、排気流量センサ38で検出された排気ガスの流量FEが取得される(ステップS303)。次いで、期間設定部132によって、ステップS302で取得された温度TE、及び、ステップS303で取得された流量FEに対応する判定期間PC0が期間記憶部131cから読み出されて、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する期間である判定期間PCが設定される(ステップS305)。次いで、蒸発判定部133によって、ステップS305で求められた判定期間PCが経過したか否かの判定が行われる(ステップS307)。ステップS307でYESの場合には、蒸発判定部133によって、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したと判定されて、処理がステップS309に進められる。ステップS307でNOの場合には、蒸発判定部133によって、DPF22に吸収されていた水分が蒸発していないと判定されて、禁止部134によって、フィルタ差圧ΔPAに基づく堆積量QPの推定が禁止され、処理がステップS313に進められる。
【0133】
ステップS309以降の処理、及び、ステップS313以降の処理は、それぞれ、図6に示すフローチャートのステップS109以降の処理、及び、ステップS113以降の処理と概ね同一であるため、ここでは、その説明を省略する。
【0134】
このようにして、DPF22に流入する排気ガスの温度TEが認識されると共に、DPF22に流入する排気ガスの流量FEが認識される。そして、認識された排気ガスの温度TE、及び、認識された排気ガスの流量FEに基づいて、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かが判定されるため、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを正確に判定することができる。
【0135】
すなわち、DPF22に流入する排気ガスの温度TEが高い程、DPF22に吸収されている水分は蒸発し易いため、短期間でDPF22に吸収されていた水分が蒸発することになる。また、DPF22に流入する排気ガスの流量FEが多い程、DPF22に吸収されている水分は蒸発し易いため、短期間でDPF22に吸収されていた水分が蒸発することになる。よって、認識された排気ガスの温度TE、及び、認識された排気ガスの流量FEに基づいて、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定することによって、DPF22に吸収されていた水分が蒸発したか否かを正確に判定することができるのである。
【0136】
−他の実施形態−
第一実施形態、第二実施形態、及び、第三実施形態(以下、まとめて「本実施形態」という)では、内燃機関がディーゼルエンジン1である場合について説明したが、内燃機関がガソリンエンジン等である形態でもよい。
【0137】
本実施形態では、排気ガスに含まれるPMを捕集するフィルタがDPF22である場合について説明したが、その他の種類のフィルタである形態でもよい。排気ガスに含まれるPMを捕集するフィルタが、酸化触媒とPMを捕集するためのDPFとを組み合わせた触媒付きフィルタであるDPR(Diesel Particulate active Reduction system)である形態でもよいし、NSR(NOx Storage Reduction)とDPR(Diesel Particulate active Reduction system)とを有するDPNR(Diesel Particulate−NOx Reduction system)である形態でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、内燃機関(主に、ディーゼルエンジン)から排出される排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備える内燃機関の排気制御装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0139】
1 ディーゼルエンジン(内燃機関)
2 インジェクタ
3 吸気通路
4 排気通路
10 サプライポンプ
21 CCO
22 DPF(フィルタ)
33 エアフローメータ
34 吸気温センサ
36 第1排気温センサ
37 第2排気温センサ(温度センサ)
38 排気流量センサ(流量センサ)
39 差圧センサ
100 ECU
111 温度認識部(温度認識手段)
112 期間算出部(期間算出手段)
113 蒸発判定部(蒸発判定手段)
114 禁止部(禁止手段)
115 差圧検出部(差圧検出手段)
116 堆積量推定部(堆積量推定手段)
117 排出量積算部(排出量積算手段)
118 過堆積判定部(過堆積判定手段)
119 異常処理部
100A ECU
121 流量認識部(流量認識手段)
122 期間算出部(期間算出手段)
123 蒸発判定部(蒸発判定手段)
124 禁止部(禁止手段)
125 差圧検出部(差圧検出手段)
126 堆積量推定部(堆積量推定手段)
127 排出量積算部(排出量積算手段)
128 過堆積判定部(過堆積判定手段)
129 異常処理部
100B ECU
131a 流量認識部(流量認識手段)
131b 温度認識部(温度認識手段)
131c 期間記憶部(期間設定手段の一部)
132 期間設定部(期間設定手段の一部)
133 蒸発判定部(蒸発判定手段)
134 禁止部(禁止手段)
135 差圧検出部(差圧検出手段)
136 堆積量推定部(堆積量推定手段)
137 排出量積算部(排出量積算手段)
138 過堆積判定部(過堆積判定手段)
139 異常処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備える内燃機関の排気制御装置であって、
前記フィルタの上流側の圧力から下流側の圧力を減じた差の圧力であるフィルタ差圧を検出する差圧検出手段と、
前記フィルタ差圧に基づいて、前記フィルタに捕集された粒子状物質の堆積量を推定する堆積量推定手段と、
前記堆積量推定手段によって推定された粒子状物質の堆積量が、予め設定された過堆積判定値以上である場合に、前記フィルタに捕集された粒子状物質の堆積量が異常であると判定する過堆積判定手段と、
前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する蒸発判定手段と、
前記蒸発判定手段によって前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発していないと判定された場合に、前記堆積量推定手段による堆積量の推定を禁止する禁止手段と、を備えることを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記内燃機関からの粒子状物質の排出量を求めると共に、求められた排出量を積算して積算排出量を求める排出量積算手段を更に備え、
前記禁止手段によって前記堆積量推定手段による堆積量の推定が禁止された場合に、前記過堆積判定手段は、前記排出量積算手段によって求められた積算排出量に基づいて、前記フィルタに捕集された粒子状物質の堆積量が異常であるか否かを判定することを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記フィルタに流入する排気ガスの温度を認識する温度認識手段を更に備え、
前記蒸発判定手段は、前記温度認識手段によって認識された排気ガスの温度に基づいて、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定することを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記フィルタに流入する排気ガスの温度を検出する温度センサを更に備え、
前記温度認識手段は、前記温度センサによって検出された排気ガスの温度によって、前記フィルタに流入する排気ガスの温度を認識することを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記温度認識手段によって認識された排気ガスの温度が、予め設定された判定温度以上である期間を求める期間算出手段を更に備え、
前記蒸発判定手段は、前記期間算出手段によって求められた期間が、予め設定された判定期間以上である場合に、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したと判定することを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記フィルタに流入する排気ガスの流量を認識する流量認識手段を更に備え、
前記蒸発判定手段は、前記流量認識手段によって認識された排気ガスの流量に基づいて、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定することを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記フィルタに流入する排気ガスの流量を検出する流量センサを更に備え、
前記温度認識手段は、前記流量センサによって検出された排気ガスの流量によって、前記フィルタに流入する排気ガスの流量を認識することを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記流量認識手段によって認識された排気ガスの流量が、予め設定された判定流量以上である期間を求める期間算出手段を更に備え、
前記蒸発判定手段は、前記期間算出手段によって求められた期間が、予め設定された判定期間以上である場合に、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したと判定することを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記フィルタに流入する排気ガスの温度を認識する温度認識手段と、
前記フィルタに流入する排気ガスの流量を認識する流量認識手段と、を更に備え、
前記蒸発判定手段は、前記温度認識手段によって認識された排気ガスの温度、及び、前記流量認識手段によって認識された排気ガスの流量に基づいて、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定することを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記温度認識手段によって認識された排気ガスの温度、及び、前記流量認識手段によって認識された排気ガスの流量に基づいて、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したか否かを判定する期間である判定期間を設定する期間設定手段を更に備え、
前記蒸発判定手段は、前記期間設定手段によって設定された判定期間が経過した場合に、前記フィルタに吸収されていた水分が蒸発したと判定することを特徴とする内燃機関の排気制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−87645(P2013−87645A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226621(P2011−226621)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】