説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】リッチスパイク制御、及びNOx吸蔵還元触媒内にアンモニアを存在させておくための制御を適切に実行することによって、NOxの漏れ出しを抑制することが可能な内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の排気浄化装置は、三元触媒及びNOx吸蔵還元触媒を用いて排気ガスの浄化を行うために好適に利用される。具体的には、リッチ化制御手段は、NOx還元を行うために空燃比をリッチ化する制御を行う。また、制御手段は、NOx還元を行う際に、NOx浄化成分をNOx吸蔵還元触媒内に存在させておくための制御を行う。例えば、アンモニアをNOx吸蔵還元触媒内に存在させておくために、排気通路中に尿素を噴射する。これにより、リッチ化する制御の初期において生じ得るNOxの漏れ出しを効果的に抑制しつつ、NOx吸蔵還元触媒に対するNOx還元を適切に行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOx吸蔵還元触媒を用いて排気浄化を行う内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排気通路上にNOx吸蔵還元触媒を設け、この触媒を用いてNOxを浄化する排気浄化装置が提案されている。例えば、特許文献1には、NOx吸蔵還元触媒に吸蔵されたNOxを還元するために、空燃比をリッチにするリッチスパイク制御(以下、「RS制御」、又は単に「リッチ化」とも呼ぶ。)を実行する技術が記載されている。
【0003】
その他に、アンモニア(NH)を用いて、排気ガス中のNOxを浄化する技術が提案されている。特許文献2では、NOx吸蔵還元触媒を一部の排気ポートに配設し、その上流の気筒をリッチにすることでNHを生成させ、下流の排気浄化触媒において他気筒から排出されたNOxを浄化する技術が記載されている。特許文献3には、NOx吸蔵還元触媒の上流にNOx選択還元触媒を備え、排気通路中に尿素を添加することにより、低温域と高温域でのNOx浄化性能を両立させる技術が記載されている。また、特許文献4には、NOx触媒部分においてリッチ化してNHを生成させ、リーン燃焼時にそのNHによってNOxを浄化する技術が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−84617号公報
【特許文献2】特開平10−47041号公報
【特許文献3】特開2004−218475号公報
【特許文献4】特開2005−214098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に記載された技術では、RS制御の初期において、NOx吸蔵還元触媒からNOx成分が漏れ出してしまう場合があった(以下、単に「NOxの漏れ出し」とも呼ぶ。)。このようなNOxの漏れ出しは、上流側の触媒においてHC、CO、H等の還元剤成分が酸素等に消費されて、還元剤が不足した排気ガスがNOx吸蔵還元触媒に供給された場合に生じると考えられる。また、特許文献2乃至4に記載された技術でも、NOx吸蔵還元触媒に対するNOx還元時において、上記のようなNOxの漏れ出しを適切に抑制することが困難であった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、リッチスパイク制御、及びNOx吸蔵還元触媒内にアンモニアを存在させておくための制御を適切に実行することによって、NOx還元時に生じ得るNOxの漏れ出しを抑制することが可能な内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの観点では、排気通路上に、三元触媒及び前記三元触媒の下流側にNOx吸蔵還元触媒を有する内燃機関の排気浄化装置は、前記NOx吸蔵還元触媒に吸蔵されたNOxを還元するために、燃焼室からの排気ガスの空燃比をリッチ化する制御を行うリッチ化制御手段と、前記NOxを還元する際に、当該NOxを浄化可能なNOx浄化成分を前記NOx吸蔵還元触媒内に存在させておくための制御を行う制御手段と、を備える。
【0008】
上記の内燃機関の排気浄化装置は、三元触媒及びNOx吸蔵還元触媒を用いて排気ガスの浄化を行うために好適に利用される。具体的には、リッチ化制御手段は、NOx吸蔵還元触媒に吸蔵されたNOxを還元するために、排気ガスの空燃比をリッチ化する制御を行う。また、制御手段は、上記したNOxの還元を行う際に、NOx浄化成分をNOx吸蔵還元触媒内に存在させておくための制御を行う。これにより、リッチ化する制御の初期において生じ得るNOxの漏れ出しを効果的に抑制しつつ、NOx吸蔵還元触媒に対するNOx還元を適切に行うことが可能となる。
【0009】
好ましくは、前記NOx浄化成分は、アンモニアとすることができる。この場合、アンモニアによってNOやNOなどを無害な窒素に還元することによって、これらの排出を抑制することができる。また、前記制御手段は、前記NOx浄化成分を前記NOx吸蔵還元触媒内に存在させておくために、尿素、アンモニア、及び燃料のいずれか1つ以上を、前記排気通路中に噴射する噴射制御手段を備える。なお、好適には、噴射制御手段は、三元触媒とNOx吸蔵還元触媒との間の排気通路に噴射を行う。
【0010】
上記の内燃機関の排気浄化装置の一態様では、前記噴射制御手段は、前記リッチ化によって発生した還元剤が前記NOx吸蔵還元触媒に到達するより第1所定時間前から、前記噴射の実行を開始する。これにより、NOx吸蔵還元触媒からのNOxの漏れ出しを確実に抑制することが可能となる。
【0011】
上記の内燃機関の排気浄化装置において好適には、前記第1所定時間は、前記還元剤が前記NOx吸蔵還元触媒に到達するよりも前に、前記NOx吸蔵還元触媒内に前記NOx浄化成分を存在させるために、前記噴射の実行を開始すべきタイミングに基づいて設定することができる。
【0012】
上記の内燃機関の排気浄化装置の他の一態様では、前記噴射制御手段は、前記リッチ化制御手段による制御の終了より第2所定時間前に、前記噴射を終了する。
【0013】
この態様では、噴射制御手段は、リッチ化制御手段による制御の終了よりも早いタイミングで噴射する制御を終了する。こうするのは、リッチ化制御手段による制御がある程度の時間行われた場合には、NOx吸蔵還元触媒に還元剤が十分に供給されるからである。上記したように噴射を終了させることにより、NOx吸蔵還元触媒からのNOx浄化成分のリークを防止することができる。
【0014】
上記の内燃機関の排気浄化装置において好適には、前記第2所定時間は、前記NOxを還元するのに十分な量の前記リッチ化による還元剤が前記NOx吸蔵還元触媒に供給されるタイミングに基づいて設定することができる。
【0015】
上記の内燃機関の排気浄化装置の他の一態様では、前記NOx吸蔵還元触媒の下流側における排気ガス中の前記NOx浄化成分の濃度を取得するNOx浄化成分濃度取得手段を備え、前記噴射制御手段は、前記NOx浄化成分の濃度が上昇し始めた際に、前記噴射を終了する。
【0016】
この態様では、噴射制御手段は、NOx吸蔵還元触媒の下流側においてNOx浄化成分の濃度が上昇し始めたら、噴射を終了する。これにより、NOx吸蔵還元触媒からのNOx浄化成分のリークをより確実に防止することができる。
【0017】
好適には、前記リッチ化制御手段は、前記噴射制御手段が前記噴射を終了する際に、前記排気ガスの空燃比をリッチ化する制御を終了する。この場合、NOx浄化成分の濃度が上昇し始めた場合には、NOx吸蔵還元触媒のNOx還元が概ね終了していると考えることができるため、噴射する制御を終了すると共に、リッチ化する制御も終了する。これにより、リッチ化する制御によって発生し得る燃費の悪化などを抑制することが可能となる。
【0018】
上記の内燃機関の排気浄化装置の他の一態様では、前記噴射制御手段は、噴射初期よりも噴射後期のほうが、噴射量が少なくなるように前記噴射を実行する。つまり、噴射後期よりも噴射初期のほうが、噴射量が多くなるように噴射を実行する。こうする理由は、以下の通りである。リッチ化する制御の初期においてはNOx吸蔵還元触媒に吸蔵されていたNOxが一気に脱離(放出)されるが、他方、還元剤がNOx吸蔵還元触媒にほとんど供給されないため、噴射量を比較的多くする。一方、リッチ化する制御の開始からある程度の時間が経過したときには、還元剤がNOx吸蔵還元触媒に供給されるため、噴射量を比較的少なくする。これにより、NOxの漏れ出し及びNOx浄化成分のリークを適切に抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0020】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
【0021】
(全体構成)
図1は、第1実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置が適用された車両100の概略構成を示す。なお、図1では、実線矢印がガスの流れを示し、破線矢印が信号の入出力を示している。
【0022】
車両100は、主に、吸気通路3と、スロットルバルブ6と、サージタンク7と、エンジン(内燃機関)8と、燃料噴射弁9と、排気通路18と、三元触媒21と、NOx吸蔵還元触媒22と、尿素噴射弁24と、Oセンサ25と、燃料タンク30と、尿素水タンク31と、ECU(Engine Control Unit)50と、を備える。
【0023】
吸気通路3は、エンジン8に供給するための吸気が流通する。吸気通路3上には、エンジン8に供給する吸気量を調整するスロットルバルブ6、及びエンジン8に供給する吸気を貯蔵するサージタンク7が設けられている。エンジン8は、吸気通路3より吸気が供給されると共に、燃料噴射弁9によって噴射された燃料が供給される。具体的には、吸気及び燃料は、気筒8aの燃焼室8bに供給される。詳しくは、燃料は、燃料タンク30に貯蔵されており、燃料供給通路30aを介して燃料噴射弁9によって燃焼室8bに供給される。燃料噴射弁9は、ECU50から供給される制御信号によって制御される。
【0024】
燃焼室8b内では、点火プラグ12の点火により着火されることによって、供給された吸気(空気)と燃料との混合気が燃焼される。この場合、燃焼によってピストン8cが往復運動し、この往復運動がコンロッド8dを介してクランク軸(不図示)に伝達され、クランク軸が回転する。なお、図1では、説明の便宜上、1つの気筒8aのみを示しているが、実際には2以上の気筒によってエンジンを構成することができる。また、エンジン8を燃焼室8bに直接燃料を噴射する直噴型(筒内噴射型)で構成することに限定はされず、吸気通路に燃料を噴射するポート噴射型で構成しても良い。
【0025】
更に、エンジン8の燃焼室8bには、吸気弁10と排気弁11が設けられている。吸気弁10は、開閉することによって、吸気通路3と燃焼室8bとの導通/遮断を制御する。また、排気弁11は、開閉することによって、排気通路18と燃焼室8bとの導通/遮断を制御する。
【0026】
エンジン8内の燃焼によった発生した排気ガスは、排気通路18に排出される。排気通路18上には、上流側から下流側に順に、三元触媒21、尿素噴射弁24、NOx吸蔵還元触媒22、及びOセンサ25が設けられている。三元触媒21は、白金やロジウムなどの貴金属を活性成分とした触媒であり、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)などを除去する機能を有する。三元触媒21は、所謂スタート触媒(Start Catalyst)として機能する。尿素噴射弁24は、三元触媒21とNOx吸蔵還元触媒22との間の排気通路18中に尿素を噴射する弁である。尿素は、尿素水タンク31に貯蔵されており、尿素供給通路31aを介して尿素噴射弁24によって排気通路18中に供給される。尿素噴射弁24は、ECU50から供給される制御信号によって制御される。
【0027】
NOx吸蔵還元触媒22は、排気ガス中のNOxを吸蔵すると共に、吸蔵しているNOxを還元する機能を有する触媒である。具体的には、NOx吸蔵還元触媒22は、基本的には、空燃比がリーンである際にNOxを吸蔵し、空燃比がリッチ又はストイキである際に還元剤(H、CO、HCなど)を用いて吸蔵しているNOxを還元する。例えば、NOx吸蔵還元触媒22が限界までNOxを吸蔵した際に、ECU50によって空燃比を強制的にリッチ化するリッチスパイク制御(RS制御)が実行されることにより、吸蔵しているNOxの還元が行われる。NOx吸蔵還元触媒22は、所謂NSR(NOx Storage Reduction)触媒として機能する。Oセンサ25は、NOx吸蔵還元触媒22の下流側の酸素濃度を検出するセンサである。Oセンサ25が検出した酸素濃度は、ECU50に供給されて、例えば空燃比の制御などに用いられる。
【0028】
ECU50は、図示しないCPU、ROM、RAM、及びA/D変換器などを含んで構成される。ECU50は、車両内の各種センサから供給される出力に基づいて、車両内の制御を行う。第1実施形態では、ECU50は、NOx吸蔵還元触媒22に対するNOx還元を行うためにRS制御を実行すると共に、このようなRS制御を行う際に、NOxを浄化可能なNOx浄化成分をNOx吸蔵還元触媒22内に存在させておくための制御を行う。より具体的には、ECU50は、NOx浄化成分であるアンモニア(NH)をNOx吸蔵還元触媒22内に存在させておくために、尿素噴射弁24から尿素を排気通路18中に噴射させる制御(以下、「尿素噴射制御」とも呼ぶ。)を行う。このように、ECU50は、本発明におけるリッチ化制御手段、及び制御手段(噴射制御手段)として機能する。
【0029】
(制御方法)
ここでは、ECU50が行う制御方法について、図2乃至図4を参照して具体的に説明する。前述したように、第1実施形態では、ECU50は、RS制御を実行すると共に、尿素噴射制御を実行する。詳しくは、ECU50は、RS制御の開始より早いタイミングで尿素噴射制御の実行を開始する。こうするのは、RS制御の初期において生じ得るNOxの漏れ出しを抑制するためである。つまり、RS制御の前に尿素噴射制御を実行することで、尿素から発生されるアンモニアによってNOxを浄化する(即ち、無害な窒素に還元する)。
【0030】
図2は、RS制御の初期において生じ得るNOxの漏れ出しを説明するための図である。図2(a)はRS制御のオン/オフを示し、図2(b)は空燃比を示し、図2(c)は還元剤量を示し、図2(d)はNOx吸蔵還元触媒22から排出されるNOxの量(以下、単に「NOx排出量」と呼ぶ。)を示している。また、図2(a)〜(d)は、それぞれ横軸に時間を示している。なお、図2(c)では、実線A1がエンジン8から排出される排気ガス中の還元剤量(三元触媒21に供給される還元剤の量)を概ね示しており、破線A2が三元触媒21から排出される排気ガス中の還元剤量を示しており、一点鎖線A3がNOx吸蔵還元触媒22の後端部(下流側の部分)に供給される還元剤量を示している。
【0031】
この場合、図2(a)に示すように、時刻t1においてRS制御要求が出て、RS制御が開始される。これにより、図2(b)に示すように、空燃比がリーンからリッチにされる。また、図2(c)中の実線A1で示すように、エンジン8から排出される排気ガス中の還元剤量が増加する。なお、RS制御は、時刻t1から時刻t2までの期間、実行される。上記のようなRS制御を実行した場合、図2(d)に示すように、RS制御の初期において、NOxが漏れ出していることがわかる。
【0032】
ここで、NOxの漏れ出しが生じる原因について簡単に説明する。RS制御の開始によって空燃比がリッチ化されることにより、NOx吸蔵還元触媒22に吸蔵されていたNOxは触媒表面から放出される傾向にある。この時に、エンジン8の出ガスには還元剤が多量に含まれるが(図2(c)中の実線A1参照)、これらの還元剤はRS制御の初期においては、三元触媒21で消費され、NOx吸蔵還元触媒22にはほとんど供給されない(図2(c)中の破線A2、一点鎖線A3参照)。そのため、上記のようにNOx吸蔵還元触媒22から放出されたNOxは、そのまま排出されることとなる(図2(d)参照)。つまり、NOxの漏れ出しが発生する。その後、三元触媒21の酸素などが無くなると、還元剤がNOx吸蔵還元触媒22に供給され、還元剤はNOx吸蔵還元触媒22の酸素、NOx還元に用いられる。
【0033】
第1実施形態では、RS制御の初期において発生し得るNOxの漏れ出しを適切に抑制できるように、RS制御と尿素噴射制御の両方を実行する。この場合、尿素の噴射により発生したアンモニアによって、RS制御の初期に漏れ出したNOxの浄化を行う。詳しくは、RS制御によって発生した還元剤がNOx吸蔵還元触媒22に到達するより第1所定時間前から、尿素噴射制御の実行を開始する。具体的には、第1実施形態では、RS制御の開始より早いタイミングで尿素噴射制御を開始する。なお、上記した第1所定時間は、還元剤がNOx吸蔵還元触媒22に到達するよりも前に、NOx吸蔵還元触媒22内にアンモニアを確実に存在させるために、尿素噴射制御の実行を開始すべきタイミングに基づいて設定される。
【0034】
また、第1実施形態では、NOx吸蔵還元触媒22からのアンモニアの漏れ(リーク)を防止するために、RS制御の終了よりも早いタイミングで尿素噴射制御を終了する。具体的には、RS制御の終了より第2所定時間前に、尿素噴射制御を終了する。この第2所定時間は、NOxを還元するのに十分な量の還元剤がNOx吸蔵還元触媒22に供給されるタイミングに基づいて設定される。即ち、尿素噴射制御は、NOx吸蔵還元触媒22におけるNOxを還元するのに十分な量の還元剤がNOx吸蔵還元触媒22に供給された際に終了される。
【0035】
更に、第1実施形態では、前述したようなRS制御時におけるNOxの放出特性を考慮に入れて、噴射初期よりも噴射後期のほうが、尿素の噴射量が少なくなるように尿素噴射制御を実行する。つまり、RS制御の初期においてはNOx吸蔵還元触媒22に吸蔵されていたNOxが一気に脱離(放出)されるが、他方、還元剤がNOx吸蔵還元触媒22にほとんど供給されないため、尿素の噴射量を比較的多くし、RS制御の開始からある程度の時間が経過したときには還元剤がNOx吸蔵還元触媒22に供給されるため、尿素の噴射量を比較的少なくする。
【0036】
ここで、アンモニアによってNOxが浄化される方法について説明する。まず、例えば反応式(1)などによって、尿素((NHCO)からアンモニア(NH)が発生する。なお、反応式(1)の反応は、一般的なガソリンエンジンの排気ガスの温度によって適切に進行するものである。つまり、一般的なガソリンエンジンにおいてアンモニアを十分に生成することができると言える。
【0037】
(NHCO+HO→2NH+CO 反応式(1)
そして、反応式(1)により発生したアンモニアにより、排気ガス中のNOやNOが浄化される。具体的には、以下の反応式(2)〜(4)により、NOやNOは窒素(N)に還元される。
【0038】
4NH+4NO+O→4N+6HO 反応式(2)
2NH+NO+NO→2N+3HO 反応式(3)
4NH+2NO+O→3N+6HO 反応式(4)
なお、上記の反応式の温度範囲は、NOx吸蔵還元触媒22におけるNOx浄化温度範囲に概ね一致している。そのため、アンモニアを用いたNOxの還元は、NOx吸蔵還元触媒22に適していると言える。また、反応式(2)〜(4)において、反応式(3)における反応速度が最も速い。つまり、効率的にNOxを還元するためには、「NO:NO=1:1」であることが望ましいと言える。この点、一般的なガソリンエンジンではエンジンの出ガスにおけるNOx中の約95%はNOであるが、本実施形態におけるシステム構成では、NOx吸蔵還元触媒22の上流の三元触媒21でNOの生成を促進しているため、反応式(3)の反応が実行される可能性がかなり高いと言える。つまり、本実施形態におけるシステム構成によれば、アンモニアによって効率的にNOxを還元することができる。
【0039】
次に、図3を参照して、第1実施形態に係る制御方法について具体的に説明する。図3(a)はRS制御のオン/オフを示し、図3(b)は空燃比を示し、図3(c)は還元剤量を示し、図3(d)は尿素噴射制御のオン/オフを示し、図3(e)はNOx排出量を示している。また、図3(a)〜(e)は、それぞれ横軸に時間を示している。なお、図3(c)では、実線B1がエンジン8から排出される排気ガス中の還元剤量を概ね示しており、破線B2が三元触媒21から排出される排気ガス中の還元剤量を示しており、一点鎖線B3がNOx吸蔵還元触媒22の後端部(下流側の部分)に供給される還元剤量を示している。
【0040】
この場合、RS制御を開始する時刻t12以前における時刻t11において、尿素噴射制御を開始する(図3(d)参照)。つまり、RS制御の開始より早いタイミングで尿素噴射制御を開始する。そして、尿素噴射制御を開始してからある程度の時間が経過した時刻t12において、RS制御を開始する(図3(a)、(b)参照)。このような尿素噴射制御を実行した場合のNOx排出量は、図3(e)中の実線B5で示すものとなる。これに対して、図3(e)中の破線B6は、尿素噴射制御を実行せずにRS制御のみを実行した場合に得られたNOx排出量であり(図2(d)と同様のグラフである)、NOxの漏れ出しが生じていることがわかる。これらの実線B5と破線B6とを比較すると、第1実施形態に係る尿素噴射制御の実行により、NOxの漏れ出しが大きく抑制されていることがわかる。このようにNOxの漏れ出しが大きく抑制されているのは、尿素から発生されるアンモニアによってNOxが浄化されたためであると考えられる。
【0041】
この後、時刻t13において、尿素噴射制御を終了する(図3(d)参照)。つまり、RS制御の終了よりも早いタイミングで尿素噴射制御を終了する。こうするのは、時刻t13においては、図3(c)中の一点鎖線B3で示すように、NOx吸蔵還元触媒22の後端部にまで還元剤が十分に供給されているからである。このように尿素噴射制御を終了することにより、アンモニアのリークを防止することが可能となる。そして、時刻t13以後の時刻t14において、RS制御を終了する(図3(a)、(b)参照)。
【0042】
次に、尿素噴射制御において噴射する尿素の量(尿素噴射量)の一例について、図4を用いて説明する。図4は、横軸に時間を示し、縦軸に尿素噴射量を示している。この場合、時刻T1で尿素噴射制御を開始し、時刻T2で尿素噴射制御を終了している。第1実施形態では、図4中の実線C1に示すように、噴射初期よりも噴射後期のほうが、尿素噴射量が少なくなるように尿素噴射制御を実行する。言い換えると、噴射後期よりも噴射初期のほうが、尿素噴射量が多くなるように尿素噴射制御を実行する。こうする理由は、以下の通りである。RS制御の初期においては還元剤がNOx吸蔵還元触媒22にほとんど供給されないため、尿素の噴射量を比較的多くする。一方、RS制御の開始からある程度の時間が経過したときには、還元剤がNOx吸蔵還元触媒22に供給されるため、尿素の噴射量を比較的少なくする。これにより、尿素噴射制御及びRS制御によって、NOxの漏れ出しやアンモニアのリークを適切に抑制しつつ、NOx吸蔵還元触媒22に対するNOx還元を効果的に行うことが可能となる。尚、図4中の破線C2で示す噴射特性によって尿素噴射制御を実行した場合にも、上記と概ね同様の効果を得ることができる。
【0043】
(第1実施形態に係る処理)
次に、第1実施形態に係る処理について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。この処理は、前述したECU50によって、所定の周期で繰り返し実行される。
【0044】
まず、ステップS101では、ECU50は、エンジン8における運転条件を取得する。そして、処理はステップS102に進む。ステップS102では、ECU50は、エンジン8がリーン運転中であるか否かを判定する。リーン運転中である場合(ステップS102;Yes)、処理はステップS103に進み、リーン運転中でない場合(ステップS102;No)、処理は当該フローを抜ける。
【0045】
ステップS103では、運転条件からRS制御を実行する時間(以下、「RS時間」と呼ぶ。)、及びRS制御を実行する間隔(以下、「RS間隔」と呼ぶ。)を求める。そして、処理はステップS104に進む。ステップS104では、ECU50は、RS制御の要求があるか否かを判定する。例えば、ECU50は、前回RS制御を実行してからの経過時間や、入りガス中のNOx量などに基づいて、RS制御を実行すべきか否かを判定する。RS制御の要求がある場合(ステップS104;Yes)、処理はステップS105に進み、RS制御の要求がない場合(ステップS104;No)、処理は当該フローを抜ける。
【0046】
ステップS105では、ECU50は、RS制御を実行中であるか否かを判定する。RS制御を実行中である場合(ステップS105;Yes)、処理はステップS111に進み、RS制御を実行中でない場合(ステップS105;No)、処理はステップS106に進む。ステップS106では、ECU50は、尿素噴射制御を実行中であるか否かを判定する。尿素噴射制御を実行中である場合(ステップS106;Yes)、処理はステップS108に進み、尿素噴射制御を実行中でない場合(ステップS106;No)、処理はステップS107に進む。
【0047】
ステップS107では、ECU50は、尿素噴射制御の実行を開始する。この場合には、RS制御の要求があり、且つ尿素噴射制御が未だ実行されていないため、ECU50は、尿素噴射制御の実行を開始する。そして、処理はステップS108に進む。ステップS108では、ECU50は、尿素噴射制御を実行している時間(以下、「尿素噴射時間」と呼ぶ。)を計測する。そして、処理はステップS109に進む。
【0048】
ステップS109では、ECU50は、RS制御を実行しても良い状況にあるか否かを判定する。具体的には、ECU50は、ステップS108で得られた尿素噴射時間が所定時間αを経過したか否かを判定する。この所定時間αは、RS制御による還元剤がNOx吸蔵還元触媒22に到達するよりも前に、NOx吸蔵還元触媒22内にNOx浄化成分を確実に存在させるために、尿素噴射制御を開始してからRS制御を開始するまでに待機すべき時間に対応する。所定時間αは、運転条件に基づいて規定されたマップや、運転条件に基づいた演算式などによって得られる。なお、前述した第1所定時間は、所定時間αに対して、RS制御を開始してから還元剤がNOx吸蔵還元触媒22に到達するまでに要する時間を加算した時間に相当する。
【0049】
尿素噴射時間が所定時間αを経過している場合(ステップS109;Yes)、処理はステップS110に進む。この場合には、RS制御を実行しても良い状況にあると言える。よって、ステップS110では、ECU50は、RS制御の実行を開始する。そして、処理はステップS111に進む。これに対して、尿素噴射時間が所定時間αを経過していない場合(ステップS109;No)、処理は当該フローを抜ける。この場合には、RS制御を開始せず、尿素噴射制御のみを実行する。
【0050】
ステップS111では、ECU50は、尿素噴射時間を読み込む。そして、処理はステップS112に進む。ステップS112では、ECU50は、尿素噴射制御を終了する要求があるか否かを判定する。この場合、ECU50は、ステップS111で得られた尿素噴射時間が所定時間βを経過したか否かを判定する。所定時間βは、NOxを還元するのに十分な量の還元剤がNOx吸蔵還元触媒22に供給されるタイミングに基づいて設定される。具体的には、所定時間βは、運転条件に基づいて規定されたマップや、運転条件に基づいた演算式などによって求められる。なお、前述した第2所定時間は、尿素噴射制御の開始時刻とRS制御の終了時刻との間の時間から、所定時間βを減算した時間に対応する。
【0051】
尿素噴射時間が所定時間βを経過している場合(ステップS112;Yes)、処理はステップS113に進む。この場合には、NOxを還元するのに十分な量の還元剤がNOx吸蔵還元触媒22に供給されていると言える。よって、ステップS113では、ECU50は、尿素噴射制御の実行を終了する。そして、処理はステップS114に進む。これに対して、尿素噴射時間が所定時間βを経過していない場合(ステップS112;No)、処理は当該フローを抜ける。この場合には、尿素噴射制御を継続する。
【0052】
ステップS114では、ECU50は、RS制御を実行している時間(以下、「RS制御時間」と呼ぶ。)を読み込む。そして、処理はステップS115に進む。ステップS115では、ECU50は、ステップS114で得られたRS制御時間に基づいて、RS制御を終了すべき時間であるか否かを判定する。具体的には、ECU50は、RS制御時間がステップS103で求められたRS時間を超えたか否かを判定する。
【0053】
RS制御を終了すべき時間である場合(ステップS115;Yes)、処理はステップS116に進む。ステップS116では、ECU50は、RS制御の実行を終了する。そして、処理は当該フローを抜ける。これに対して、RS制御を終了すべき時間でない場合(ステップS115;No)、処理は当該フローを抜ける。この場合には、RS制御を継続する。
【0054】
以上の処理によれば、RS制御及び尿素噴射制御を実行することにより、NOxの漏れ出しを効果的に抑制しつつ、NOx吸蔵還元触媒22に対するNOx還元を適切に行うことができる。また、尿素の噴射に起因するアンモニアのリークも適切に防止することができる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。前述した第1実施形態では、RS制御の終了より第2所定時間前に尿素噴射制御を終了したが(即ちNOxを還元するのに十分な量の還元剤がNOx吸蔵還元触媒22に供給された際に終了したが)、第2実施形態では、NOx吸蔵還元触媒22の下流側におけるアンモニア濃度(NOx浄化成分濃度に対応する)が上昇し始めた際に、尿素噴射制御を終了する。言い換えると、第2実施形態では、尿素噴射時間だけでなくアンモニア濃度も考慮に入れて、尿素噴射制御を終了させる。こうするのは、NOx吸蔵還元触媒22からのアンモニアのリークをより確実に防止するためである。
【0056】
ここで、図6を参照して、NOx吸蔵還元触媒22からのアンモニアのリークについて説明する。図6(a)はRS制御のオン/オフを示し、図6(b)は空燃比を示し、図6(c)は尿素噴射制御のオン/オフを示し、図6(d)はNOx吸蔵還元触媒22から漏れ出したアンモニア量(以下、「触媒出アンモニア量」とも呼ぶ。)を示している。
【0057】
この場合、尿素噴射制御を時刻t3から時刻t6まで実行し(図6(c)参照)、RS制御を時刻t4から時刻t6まで実行している(図6(a)、(b)参照)。図6(c)に示すような尿素噴射制御を実行した場合、図6(d)に示すように、時刻t5から触媒出アンモニア量が増加していることがわかる。つまり、アンモニアのリークが生じていることがわかる。このような現象は、NOx吸蔵還元触媒22のNOx還元が概ね終了しているにもかかわらず、継続して尿素噴射制御を実行したために生じたと考えることができる。つまり、アンモニアを用いて還元させるべきNOやNOなどがほとんど存在しないにもかかわらず、継続して尿素を噴射したために、アンモニアが還元に用いられずに排出されたと考えられる。したがって、第2実施形態では、NOx吸蔵還元触媒22の下流側におけるアンモニア濃度が上昇し始めた際に、尿素噴射制御を終了する。
【0058】
以下で、図7乃至図9を参照して、本発明の第2実施形態について具体的に説明する。
【0059】
図7は、第2実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置が適用された車両101の概略構成を示す。ここでは、前述した車両100(図1参照)と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、図7では、実線矢印がガスの流れを示し、破線矢印が信号の入出力を示している。
【0060】
車両101は、NOx吸蔵還元触媒22の下流側の排気通路18上に、NHセンサ28を有する。NHセンサ28は、アンモニア濃度を検出するセンサであり、検出したアンモニア濃度に対応する検出信号をECU51に供給する。なお、NHセンサ28の代わりに、NOxセンサを用いても良い。NOxセンサもアンモニア濃度を検出することができるからである。
【0061】
ECU51は、図示しないCPU、ROM、RAM、及びA/D変換器などを含んで構成される。ECU51は、前述したECU50と同様に、リッチ化制御手段及び制御手段(噴射制御手段)として機能し、RS制御及び尿素噴射制御を実行する。詳しくは、ECU51は、NHセンサ28から取得されるアンモニア濃度に基づいて、尿素噴射制御の実行を終了させる。具体的には、ECU51は、アンモニア濃度が上昇し始めた際に、尿素噴射制御の実行を終了させる。
【0062】
次に、図8を参照して、第2実施形態に係る制御方法について具体的に説明する。図8(a)はRS制御のオン/オフを示し、図8(b)は空燃比を示し、図8(c)は尿素噴射制御のオン/オフを示し、図8(d)は触媒出アンモニア量を示している。
【0063】
この場合、尿素噴射制御を時刻t21から開始し(図8(c)参照)、RS制御を時刻t22から開始している(図8(a)、(b)参照)。図8(c)に示すような尿素噴射制御を実行した場合、図8(d)に示すように、時刻t23において触媒出アンモニア量が上昇し始めていることがわかる。第2実施形態では、このように触媒出アンモニア量が上昇し始めた際に、図8(c)に示すように、尿素噴射制御の実行を終了する。これにより、図8(d)に示すように、時刻t23以降、触媒出アンモニア量が概ね「0」となることがわかる。つまり、NOx吸蔵還元触媒22からのアンモニアのリークが抑制されていることがわかる。
【0064】
次に、第2実施形態に係る処理について、図9に示すフローチャートを用いて説明する。この処理は、前述したECU51によって、所定の周期で繰り返し実行される。なお、ステップS201〜S211の処理は、図6に示したステップS101〜S111の処理と同様であるため、その説明を省略する。ここでは、ステップS212以降の処理について説明する。
【0065】
ステップS212では、ECU51は、NHセンサ28の出力(以下、「VNH3」と呼ぶ。)を読み込む。「VNH3」は、NOx吸蔵還元触媒22の下流側の排気通路18中のアンモニア濃度に対応する。以上の処理が終了すると、処理はステップS213に進む。
【0066】
ステップS213では、ECU51は、尿素噴射制御を終了する要求があるか否かを判定する。この場合、ECU51は、VNH3が所定値γより大きいか否か、又は尿素噴射時間が所定時間βを経過したか否かを判定する。つまり、ECU51は、アンモニア濃度が上昇し始めているか否か、及びNOxを還元するのに十分な量の還元剤がNOx吸蔵還元触媒22に供給されているか否かを判定することによって、尿素噴射制御を終了すべきか否かを判定する。なお、所定時間βは、前述した方法によって設定される。
【0067】
NH3が所定値γより大きいか、又は尿素噴射時間が所定時間βを経過している場合には(ステップS213;Yes)、処理はステップS214に進む。この場合には、アンモニアが漏れ出し始めているか、又はNOxを還元するのに十分な量の還元剤がNOx吸蔵還元触媒22に供給されている状況にあると言える。よって、ステップS214では、ECU51は、尿素噴射制御の実行を終了する。そして、処理はステップS215に進む。一方、VNH3が所定値γ以下であり、且つ尿素噴射時間が所定時間βを経過していない場合には(ステップS213;No)、処理は当該フローを抜ける。この場合には、尿素噴射制御を継続する。
【0068】
ステップS215では、ECU51は、RS制御時間を読み込む。そして、処理はステップS216に進む。ステップS216では、ECU51は、ステップS215で得られたRS制御時間に基づいて、RS制御を終了すべき時間であるか否かを判定する。具体的には、ECU51は、RS制御時間がステップS203で求められたRS時間を超えたか否かを判定する。
【0069】
RS制御を終了すべき時間である場合(ステップS216;Yes)、処理はステップS217に進む。ステップS217では、ECU51は、RS制御の実行を終了する。そして、処理は当該フローを抜ける。これに対して、RS制御を終了すべき時間でない場合(ステップS216;No)、処理は当該フローを抜ける。この場合には、RS制御を継続する。
【0070】
以上の第2実施形態に係る処理によれば、アンモニア濃度が上昇し始めた際に尿素噴射制御を終了するため、NOx吸蔵還元触媒22からのアンモニアのリークをより確実に防止することができる。
【0071】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。前述した第2実施形態では、NOx吸蔵還元触媒22の下流側におけるアンモニア濃度が上昇し始めた際に、尿素噴射制御のみを終了したが、第3実施形態では、アンモニア濃度が上昇し始めた際に、尿素噴射制御だけでなくRS制御も終了する。こうするのは、アンモニア濃度が上昇し始めた場合には、NOx吸蔵還元触媒22のNOx還元が概ね終了していると考えることができるため、尿素噴射制御だけでなくRS制御も実行する必要がないからである。つまり、RS制御によって還元剤を供給し続ける必要がないからである。
【0072】
ここで、図10を参照して、第3実施形態に係る制御方法について具体的に説明する。図10(a)はRS制御のオン/オフを示し、図10(b)は空燃比を示し、図10(c)は燃料噴射量を示し、図10(d)は尿素噴射制御のオン/オフを示し、図10(e)は触媒出アンモニア量を示している。
【0073】
この場合、尿素噴射制御を時刻t31から開始し(図10(d)参照)、RS制御を時刻t32から開始している(図10(a)〜(c)参照)。図10(d)に示すような尿素噴射制御を実行した場合、図10(e)に示すように、時刻t33において触媒出アンモニア量が上昇し始めていることがわかる。第3実施形態では、このように触媒出アンモニア量が上昇し始めた際に、図10(d)に示すように、尿素噴射制御の実行を終了する。これにより、図10(e)に示すように、時刻t33以降、触媒出アンモニア量が概ね「0」となることがわかる。更に、第3実施形態では、触媒出アンモニア量が上昇し始めた際に(時刻t33)、図10(a)〜(c)に示すように、RS制御の実行を終了する。この場合には、NOx吸蔵還元触媒22のNOx還元が概ね終了しているため、RS制御によって還元剤を供給する必要がないので、RS制御の実行を終了する。
【0074】
次に、第3実施形態に係る処理について、図11に示すフローチャートを用いて説明する。この処理は、前述したECU51によって(図7参照)、所定の周期で繰り返し実行される。なお、ステップS301〜S313の処理は、図9に示したステップS201〜S213の処理と同様であるため、その説明を省略する。ここでは、ステップS314以降の処理について説明する。
【0075】
ステップS314の処理は、VNH3が所定値γより大きいか、又は尿素噴射時間が所定時間βを経過している場合(ステップS313;Yes)に実行される。この場合には、尿素噴射制御の実行を終了すべき状況であると言える。したがって、ステップS314では、ECU51は、尿素噴射制御の実行を終了する。そして、処理はステップS315に進む。
【0076】
ステップS315では、ECU51は、RS制御の実行を終了する。この場合には、NOx吸蔵還元触媒22のNOx還元が概ね終了していると考えることができるため、RS制御を実行する必要はないと言える。したがって、ECU51は、尿素噴射制御の実行を終了した直後に、RS制御の実行も終了する。以上の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
【0077】
以上の第3実施形態に係る処理によれば、アンモニア濃度が上昇し始めた際にRS制御を終了させるため、RS制御に起因する燃費の悪化などを抑制することが可能となる。
【0078】
[変形例]
上記では、NOxを浄化可能なNOx浄化成分(アンモニア)をNOx吸蔵還元触媒22内に存在させておくために、尿素を噴射する制御(尿素噴射制御)を行う実施形態を示したが、これに限定はされない。他の例では、尿素のみを噴射する代わりに、尿素、アンモニア、及び燃料(HC)のいずれか1つ以上を噴射する制御を行うことができる。これによっても、NOx吸蔵還元触媒22内にNOx浄化成分であるアンモニアを適切に存在させることが可能となる。
【0079】
また、上記では、NOx吸蔵還元触媒22のNOx還元を行うために、尿素噴射制御とRS制御の両方を実行する実施形態を示したが、これに限定はされない。他の例では、NOx吸蔵還元触媒22のNOx還元を行うために、RS制御を実行せずに、尿素噴射制御のみを実行することができる。この場合には、RS制御に起因するトルクショック(詳しくは、空燃比がリーンからリッチ、或いはリッチからリーンに変化する際に、リーンとリッチとの出力の違いに起因するトルク段差によって生じ得るショック)などの発生を抑制することが可能となる。
【0080】
更に、上記では、RS制御の開始よりも早いタイミングで尿素噴射制御を開始する実施形態を示したが、これに限定はされない。つまり、還元剤がNOx吸蔵還元触媒22に到達するよりも前に、NOx吸蔵還元触媒22内にアンモニアを存在させることができれば、RS制御の開始よりも早いタイミングで尿素噴射制御を開始しなくても良い。例えば排気通路18内における輸送遅れにより、RS制御の開始と同時に又はRS制御の開始後に尿素噴射制御を実行しても、NOx吸蔵還元触媒22において先にアンモニアが生成される場合には、RS制御の開始と同時に又はRS制御の開始後に、尿素噴射制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】第1実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置が適用された車両の構成を示す概略図である。
【図2】RS制御の初期において生じ得るNOxの漏れ出しを説明するための図である。
【図3】第1実施形態に係る制御方法について説明するための図である。
【図4】尿素噴射制御において噴射する尿素の量の一例を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る処理を示すフローチャートである。
【図6】NOx吸蔵還元触媒からのアンモニアのリークについて説明するための図である。
【図7】第2実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置が適用された車両の構成を示す概略図である。
【図8】第2実施形態に係る制御方法について説明するための図である。
【図9】第2実施形態に係る処理を示すフローチャートである。
【図10】第3実施形態に係る制御方法について説明するための図である。
【図11】第3実施形態に係る処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
3 吸気通路
6 スロットルバルブ
8 エンジン
9 燃料噴射弁
18 排気通路
21 三元触媒
22 NOx吸蔵還元触媒
24 尿素噴射弁
28 NHセンサ
31 尿素水タンク
50、51 ECU
100、101 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路上に、三元触媒及び前記三元触媒の下流側にNOx吸蔵還元触媒を有する内燃機関の排気浄化装置において、
前記NOx吸蔵還元触媒に吸蔵されたNOxを還元するために、燃焼室からの排気ガスの空燃比をリッチ化する制御を行うリッチ化制御手段と、
前記NOxを還元する際に、当該NOxを浄化可能なNOx浄化成分を前記NOx吸蔵還元触媒内に存在させておくための制御を行う制御手段と、を備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記NOx浄化成分は、アンモニアであることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記NOx浄化成分を前記NOx吸蔵還元触媒内に存在させておくために、尿素、アンモニア、及び燃料のいずれか1つ以上を、前記排気通路中に噴射する噴射制御手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記噴射制御手段は、前記リッチ化によって発生した還元剤が前記NOx吸蔵還元触媒に到達するより第1所定時間前から、前記噴射の実行を開始することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記第1所定時間は、前記還元剤が前記NOx吸蔵還元触媒に到達するよりも前に、前記NOx吸蔵還元触媒内に前記NOx浄化成分を存在させるために、前記噴射の実行を開始すべきタイミングに基づいて設定されることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記噴射制御手段は、前記リッチ化制御手段による制御の終了より第2所定時間前に、前記噴射を終了することを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記第2所定時間は、前記NOxを還元するのに十分な量の前記リッチ化による還元剤が前記NOx吸蔵還元触媒に供給されるタイミングに基づいて設定されることを特徴とする請求項6に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
前記NOx吸蔵還元触媒の下流側における排気ガス中の前記NOx浄化成分の濃度を取得するNOx浄化成分濃度取得手段を備え、
前記噴射制御手段は、前記NOx浄化成分の濃度が上昇し始めた際に、前記噴射を終了することを特徴とする請求項3乃至7のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項9】
前記リッチ化制御手段は、前記噴射制御手段が前記噴射を終了する際に、前記排気ガスの空燃比をリッチ化する制御を終了することを特徴とする請求項8に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項10】
前記噴射制御手段は、噴射初期よりも噴射後期のほうが、噴射量が少なくなるように前記噴射を実行することを特徴とする請求項3乃至9のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−157054(P2008−157054A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344231(P2006−344231)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】