内燃機関の排気浄化装置
【課題】還元剤を排気ガス中に均一に分散させる内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】触媒6上流の排気通路5内に還元剤供給弁7を配置し、還元剤供給弁7から噴射された還元剤によって触媒6において排気を浄化する内燃機関の排気浄化装置において、還元剤供給弁7下流であって触媒6上流排気通路5内に偏向部材12を配置する。偏向部材12は、排気通路5の軸線方向に対するその傾斜角を制御することによって排気ガス流れ11を還元剤供給弁7が配置された壁面方向とその反対側の壁面方向との間で偏向可能であり、還元剤供給弁7からの還元剤の噴射時における排気通路5内の排気ガス流れ11の流量の増加に応じて、噴射された還元剤を含む排気ガス流れ11の偏向方向を還元剤供給弁7が配置された壁面方向からその反対側の壁面方向へ変化させるように偏向部材12の傾斜角を制御する。
【解決手段】触媒6上流の排気通路5内に還元剤供給弁7を配置し、還元剤供給弁7から噴射された還元剤によって触媒6において排気を浄化する内燃機関の排気浄化装置において、還元剤供給弁7下流であって触媒6上流排気通路5内に偏向部材12を配置する。偏向部材12は、排気通路5の軸線方向に対するその傾斜角を制御することによって排気ガス流れ11を還元剤供給弁7が配置された壁面方向とその反対側の壁面方向との間で偏向可能であり、還元剤供給弁7からの還元剤の噴射時における排気通路5内の排気ガス流れ11の流量の増加に応じて、噴射された還元剤を含む排気ガス流れ11の偏向方向を還元剤供給弁7が配置された壁面方向からその反対側の壁面方向へ変化させるように偏向部材12の傾斜角を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流入する排気ガスの空燃比がリーンのときには排気ガス中に含まれるNOxを吸蔵し流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比又はリッチになると吸蔵したNOxを放出するNOx吸蔵触媒を機関排気通路内に配置し、NOx吸蔵触媒の上流に還元剤供給弁を配置し、NOx吸蔵触媒からNOxを放出すべきときには還元剤供給弁から還元剤を供給し、NOx吸蔵触媒に流入する排気ガスの空燃比をリッチにする内燃機関が公知である。
【0003】
この内燃機関において、NOx吸蔵触媒から良好にNOxを放出させるためには、還元剤供給弁から噴射された還元剤をできる限り排気ガス内に分散させてNOx吸蔵触媒に流入させる必要がある。そのために、還元剤供給弁下流の排気管内に排気管の軸線方向に延びる並列配置の複数の排気流通路の集合体からなる通気性板状部材を配置し、還元剤供給弁から通気性板状部材の上流側端面に向けて噴射された還元剤を噴射する内燃機関が公知である(例えば特許文献1を参照)。この内燃機関では還元剤を通気性板状部材の各排気流通路内に分散して流入させ、それによって排気ガス中に還元剤を分散させている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−214100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら実際には還元剤は還元剤供給弁から通気性板状部材の上流側端面上に均一に分散して噴射されず、各排気流通路内には還元剤が均一に分散して流入しない。即ち、還元剤供給弁からの噴射圧は略一定であるが、排気管内を流れる排気ガスの流量又は流速は内燃機関の運転状態によって異なるので、例えば図13及び図14に示すような噴射された還元剤20に偏りが生じる。図13及び14は、還元剤供給弁7近傍の排気管5の縦断面図を示す。図13は、排気ガスが低流量時、即ち機関回転数が低い場合を示し、還元剤供給弁7から噴射された還元剤20は還元剤供給弁7が配置された壁面と反対側の壁面方向に偏る。他方、図14は、排気ガスが高流量時、即ち機関回転数が高い場合を示し、還元剤供給弁7から噴射された還元剤20は還元剤供給弁7が配置された側の壁面方向にに偏る。
【0006】
従って各排気流通路からは異なる量の還元剤が排出され、各排気流通路から流出した異なる量の還元剤は通気性板状部材の下流において十分に混合されず、還元剤を排気ガス中に均一に分散させることができないという問題がある。
【0007】
また、通気性板状部材を用いて還元剤を排気ガス中に均一に分散させることに関し、よりミクロな視点で見た場合に別の問題がある。即ち、還元剤の分散を促進するため、通気性板状部材の各排気流通路を隔てる隔壁表面に還元剤を一時的に付着保持し、保持されている間に還元剤を十分に気化させることが好ましい。しかしながら、図15に隔壁表面の拡大図に示すように、噴射された還元剤の液滴18は、付着保持されることなく、即ち十分気化することなく表面に弾かれ、十分気化しないという問題がある。
【0008】
これらの問題のため、還元剤の分散性が悪化し、不均一な還元剤が下流の触媒に流入することによって部分的な劣化が生じ、排気浄化率の低下を招く結果となる。
【0009】
そこで本発明は、還元剤を排気ガス中に均一に分散させる内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために請求項1に記載の発明によれば、触媒上流の排気通路内に還元剤供給弁を配置し、還元剤供給弁から噴射された還元剤によって触媒において排気を浄化する内燃機関の排気浄化装置において、還元剤供給弁下流であって触媒上流排気通路内に偏向部材を配置し、該偏向部材は、排気通路の軸線方向に対するその傾斜角を制御することによって排気ガス流れを還元剤供給弁が配置された壁面方向とその反対側の壁面方向との間で偏向可能であり、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時における排気通路内の排気ガス流れの流量の増加に応じて、噴射された還元剤を含む排気ガス流れの偏向方向を還元剤供給弁が配置された壁面方向からその反対側の壁面方向へ変化させるように偏向部材の傾斜角を制御する内燃機関の排気浄化装置が提供される。即ち、請求項1に記載の発明では、排気ガスの流量によって生じる還元剤供給弁から噴射された還元剤の偏りを、排気ガスの流量に応じて偏向部材を制御することによって、還元剤を排気ガス中に均一に分散させることが可能となる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明によれば請求項1に記載の発明において、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時以外は、偏向部材が受ける排気ガス流れに対する抵抗が最小限となる位置に偏向部材の傾斜角を制御する内燃機関の排気浄化装置が提供される。即ち、請求項2に記載の発明では、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時以外の時、偏向部材による排気通路内の圧力損失を抑制することが可能となる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明によれば請求項1又は2のいずれか一方に記載の発明において、少なくとも2つの偏向部材を排気ガス流れに対して並列配置した内燃機関の排気浄化装置が提供される。即ち、請求項3に記載の発明では、複数の偏向部材を用いることによって、還元剤の偏りをなくし、還元剤をより均一に分散させることが可能となる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明によれば請求項4に記載の発明において、偏向方向とは反対側の壁面近くに配置された偏向部材ほど噴射された還元剤を含む排気ガス流れを大きく偏向させる傾斜角に制御する内燃機関の排気浄化装置が提供される。即ち、請求項4に記載の発明では、各偏向部材が偏向させる排気ガスの偏向の度合を場所により変えることによって、還元剤をより均一に分散させることが可能となる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明によれば、触媒上流の排気通路内に還元剤供給弁を配置し、還元剤供給弁から噴射された還元剤によって触媒において排気を浄化する内燃機関の排気浄化装置において、還元剤供給弁下流であって触媒上流排気通路内に通気性のメッシュ面を備えたメッシュ部材を配置し、メッシュ面が還元剤供給弁から噴射された還元剤を一時的に付着保持し気化させ又は微粒化させ、メッシュ面と排気通路の軸線方向とがなす傾斜角を、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時はメッシュ面が還元剤を付着保持又は微粒化する角度に、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時以外はメッシュ面が受ける排気ガス流れに対する抵抗が最小限となる角度に制御する内燃機関の排気浄化装置が提供される。即ち、請求項5に記載の発明では、メッシュ部材を用いることによって簡単な構造で還元剤を均一に分散させることができ、また、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時以外の時、メッシュ部材による排気通路内の圧力損失を抑制することが可能となる。
【0015】
また、請求項6に記載の発明によれば、還元剤供給弁から噴射された還元剤によって触媒において排気を浄化する内燃機関の排気浄化装置において、還元剤供給弁下流であって触媒上流排気通路内に還元剤を一時的に付着保持し気化させる付着保持部を備えた還元剤保持部材を配置し、付着保持部に光触媒作用を有する光触媒物質を備えると共に排気通路内に光触媒物質に光を照射する光源を備え、付着保持部に付着したデポジットを光触媒作用により酸化除去する内燃機関の排気浄化装置が提供される。即ち、請求項6に記載の発明では、付着保持部に還元剤を一時的に付着保持し気化させることによって還元剤を排気ガス中に均一に分散させることができると共に、付着保持部に生じやすいデポジットを光触媒作用によって簡単に酸化除去することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
各請求項に記載の発明によれば、還元剤を排気ガス中に均一に分散させることができるという共通の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明による内燃機関の排気浄化装置について説明する。図1は本発明の排気浄化装置が搭載される内燃機関全体の図である。図1に示した実施形態では本発明の排気浄化装置が圧縮着火式内燃機関に用いられた場合を示しているが、火花点火式内燃機関等その他内燃機関にも用いることができる。
【0018】
図1に圧縮着火式内燃機関の全体図を示す。図1を参照すると、1は機関本体、2は吸気マニホルド、3は排気マニホルドをそれぞれ示す。排気マニホルド3の出口は酸化触媒4の入口に連結され、酸化触媒4の出口は排気管5を介して触媒6の入口に連結される。触媒6の上流の排気管5内には還元剤供給弁7が配置される。還元剤供給弁7は、還元剤供給管8を介して電気制御式の吐出量可変な供給ポンプ9に連結され、供給ポンプ9は例えば液体の還元剤を収容した還元剤タンク10に連結される。Aに示す還元剤供給弁7の下流であって触媒6の上流排気管5内には、いくつかの実施形態によって後述する、還元剤を分散させる還元剤分散器が配置されている。
【0019】
還元剤の種類は、触媒6の種類や浄化すべき排気ガス成分に応じて定めることができ、例えば軽油(燃料)のような炭化水素や、尿素、アンモニア等を還元剤として用いることができる。以下に示す実施形態においては、還元剤として尿素水を、触媒6としてNOx選択還元触媒を用いた場合について説明する。
【0020】
NOx選択還元触媒6は、例えばアンモニア吸着タイプのFeゼオライトから構成されている。尿素水を供給すべきときには還元剤タンク10内に貯蔵されている尿素水が供給ポンプ9によって還元剤供給弁7から排気管5内を流れる排気ガス中に噴射され、このとき尿素から発生したアンモニア((NH2)2CO+H2O→2NH3+CO2)によって排気ガス中に含まれるNOxがNOx選択還元触媒6において還元される。酸化触媒4は、例えば白金のような貴金属触媒を担持しており、この酸化触媒4は排気ガス中に含まれるHCを酸化させる作用をなす。
【0021】
電子制御ユニット(ECU)30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35及び出力ポート36を具備する。アクセルペダル39にはアクセルペダル39の踏み込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ40が接続され、負荷センサ40の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ41が接続される。CPU34ではクランク角センサ41からの出力パルスに基づいて機関回転数Nが算出される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して還元剤供給弁7及び供給ポンプ9に接続される。
【0022】
図2は、本発明による1番目の実施形態による還元剤分散器が配置された図1のA部の拡大断面図である。本実施形態による還元剤分散器は、1つ又は少なくとも2つの偏向板12を有する。偏向板12は、還元剤供給弁7の噴射軸線に対して垂直且つ排気管5の横断面に対して平行に配置された回転軸12aを有し、この回転軸12aを中心とした排気管5の中心軸線5a方向に対する傾斜角によってその位置を図示しないアクチュエータによって制御することができる。図2に示す偏向板12の配置は傾斜角0度の定常位置であり、還元剤の噴射時以外、偏向板12はこの定常位置に配置され、排気ガス流れ11に対する抵抗を最小限に抑えている。図3は、図2の線B−Bにおける断面を示している。
【0023】
図4は、排気ガスが低流量時に還元剤が噴射される場合の偏向板12の配置を示す図1のA部の拡大断面図である。排気ガスの流量が低い場合、図13を参照しながら前述したように、噴射された還元剤20は、還元剤供給弁7が配置された壁面とは反対側の壁面方向に偏る傾向にある。従って、図4に示すように、還元剤を含む排気ガス流れ11が、還元剤供給弁7が配置された側の壁面方向に向かうように偏向板12の傾斜角を制御する。それによって、還元剤の偏りはなくなり、還元剤を排気ガス中に均一に分散させることができる。なお、偏向板12の傾斜角がゼロではなく、排気ガス流れ11を偏向する位置を偏向位置と称す。
【0024】
なお、還元剤の偏りが大きい還元剤供給弁7が配置された壁面とは反対側の壁面に近い偏向板12ほど、偏向板12の傾斜角の変位量が大きくなるように制御することによって、還元剤の分散性をより向上させることができる。また還元剤の偏りは、流量が低ければ低いほど大きくなるため、流量が低いほど偏向板12の傾斜角の変位量を大きくするように制御することができる。
【0025】
図5は、排気ガスが高流量時に還元剤が噴射される場合の偏向板12の配置を示す図1のA部の拡大断面図である。排気ガスの流量が高い場合、図14を参照しながら前述したように、噴射された還元剤20は、還元剤供給弁7が配置された側の壁面方向に偏る傾向にある。従って、図5に示すように、還元剤を含む排気ガス流れ11が、還元剤供給弁7が配置された側とは反対側の壁面方向に向かうように偏向板12の傾斜角を制御する。それによって、還元剤の偏りはなくなり、還元剤を排気ガス中に均一に分散させることができる。
【0026】
なお、還元剤の偏りが大きい還元剤供給弁7が配置された側の壁面に近い偏向板12ほど、偏向板12の傾斜角の変位量が大きくなるように制御することによって、還元剤の分散性をより向上させることができる。また還元剤の偏りは、流量が高ければ高いほど大きくなるため、流量が高いほど偏向板12の傾斜角の変位量を大きくするように制御することができる。
【0027】
本実施形態において、偏向板12は、排気管5の同一の横断面内に配置したが、異なる横断面内に配置してもよい。また、偏向板12の形状も排気ガスの流れを偏向可能な範囲内で任意に取り得る。
【0028】
図6は、偏向板12の制御機構の一例を示す。図6(A)は、制御機構を排気管5の軸線方向から見た概略図であり、図6(B)は、その側面の概略図を示す。各偏向板12はアクチュエータ13によって往復動する駆動シャフト14に連結し、偏向板12の回転軸12aを中心に傾斜角を制御することができる。この制御機構によれば各偏向板12を一体的に制御することができ、構造が簡略化しコストを削減できる。また、各偏向板12の制御は、個々に独立に制御されるアクチュエータを用いてもよい。
【0029】
図7及び図8は、本発明による2番目の実施形態による還元剤分散器が配置されたA部の拡大断面図である。本実施形態による還元剤分散器は、1つのメッシュ部材15を有し、メッシュ部材15は、回転軸15a周りに図示しないアクチュエータによって回転角、即ち1番目の実施形態と同様に傾斜角を制御することが可能となっている。メッシュ部材15は、図9に示すように複数の微小な貫通孔16からなるメッシュ構造からなり、そのため還元剤が接触する表面積が大きくなっている。
【0030】
還元剤を含む排気ガス流れ11が貫通孔16を通過する際、還元剤の液滴がメッシュ部分に当たって分裂し微粒化が促進される。また、貫通孔16は微小であるため、還元剤の液滴がその表面張力によって貫通孔16を塞ぐ液膜を形成し一時的に付着保持される。その保持の間に十分気化させることが可能となる。それによって、還元剤を排気ガス中に均一に分散させることが可能になる。なお、メッシュ部材15を金属部材によって構成した場合には、より高い伝熱性を有し、蒸発性を向上させることができるため好ましい。また、メッシュ部材を複数枚重ねると、還元剤がより保持されやすくなる。
【0031】
図7は、還元剤の噴射時以外のメッシュ部材15の配置を示しており、還元剤の噴射時以外は排気ガス流れ11に対する抵抗を最小限に抑えるよう図に示すような傾斜角がゼロとなる配置に制御される。図8は、還元剤の噴射時のメッシュ部材15の配置を示している。還元剤の噴射時は、噴射された還元剤をより多くメッシュ部材15に通過させ、付着保持させるため、還元剤供給弁7の噴射軸線とメッシュ部材15平面とが垂直となるよう図に示す配置に制御される。なお、還元剤の噴射時の配置に関し、排気ガスの流量に応じて、噴射された還元剤が最も付着保持される配置となるよう傾斜角を制御してもよい。
【0032】
図10は、本発明による3番目の実施形態による還元剤分散器が配置されたA部の拡大断面図である。本実施形態による還元剤分散器は、通気性板状部材17を有し、通気性板状部材17は、隔壁17aにより細分割された並列配置の複数の排気流通路17bの集合体からなるハニカム構造体から形成される。
【0033】
図11は、隔壁17a表面の拡大図である。本実施形態は、隔壁17aに、還元剤との親和性が高くなるようなコーティング材19が塗布されていることを特徴とする。コーティング材19の効果により、噴射された還元剤の液滴18が液膜18aとなって付着保持され、還元剤を十分気化20させることが可能となり、排気ガス中に均一に分散させることが可能となる。これによって、図15を参照しながら前述したような問題が解消される。
【0034】
本実施形態において、還元剤として尿素水を用いているため、コーティング材として酸化チタン等親水性が高い物質が選択される。更に、親水性物質をコーティングすることにより、隔壁17a表面に主として固体炭素からなるデポジットが付着してしまっても、還元剤の液膜18aによって洗浄され、表面性状の維持を図ることができる。従って、デポジットによる圧力損失の増大が防止され、還元剤の分散性が改善される。
【0035】
図12は、本発明による4番目の実施形態による還元剤分散器が配置されたA部の拡大断面図である。本実施形態による還元剤分散器は、図10に示す3番目の実施形態と同じ通気性板状部材17を有し、更に通気性板状部材17の隔壁17a表面を照射するように紫外線ライト21が排気管5に配置されている。本実施形態において、コーティング材19として、還元剤との親和性を有し且つ紫外線の照射によって光触媒作用を有する物質が選択される。そのため、本実施形態においては、コーティング材19として酸化チタンを用いる。
【0036】
光触媒作用を有するコーティング材19に紫外線を照射することによって、隔壁17a表面に堆積した主として固体炭素からなるデポジットを酸化除去し、表面性状の維持を図ることができる。更に、酸化除去と共に還元剤の液膜18aによって表面が洗浄され、表面性状の維持が図れる。また、デポジットは、その酸化反応において排気ガス中のNOxとも反応するため、NOxの還元浄化にも利用可能である。それによって、排気性状の改善することができる。
【0037】
紫外線照射は、例えば前回の照射から所定運転時間経過後や、前回の照射から所定量の還元剤を噴射後等、予め定められた期間又は間隔毎に行われる。
【0038】
なお、隔壁17a表面に還元剤との親和性を高め、還元剤の液膜を形成するためのその他の実施形態として、表面粗さを粗くする方法や、また隔壁17a表面に金属メッシュを貼るか又は隔壁17a自体を金属メッシュで形成する方法等もある。
【0039】
第3、第4及びその他の実施形態は、第1及び第2の実施形態と組み合わせて使用することも可能である。即ち、還元剤との親和性の高いコーティング材19を第1の実施形態における偏向板12の表面や、第2の実施形態のメッシュ部材15に塗布してもよい。更に、コーティング材19として光触媒作用を有する物質を用い、紫外線ライト21を排気管5に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の排気浄化装置が搭載される内燃機関全体の図である。
【図2】本発明による1番目の実施形態による還元剤分散器が配置された図1のA部の拡大断面図である。
【図3】図2の線B−Bにおける断面である。
【図4】排気ガスが低流量時に還元剤が噴射される場合の本発明による1番目の実施形態による還元剤分散器が配置された図1のA部の拡大断面図である。
【図5】排気ガスが高流量時に還元剤が噴射される場合の本発明による1番目の実施形態による還元剤分散器が配置された図1のA部の拡大断面図である。
【図6】偏向板12の制御機構の一例を示す図である。
【図7】本発明による2番目の実施形態による還元剤分散器が配置されたA部の拡大断面図である。
【図8】本発明による2番目の実施形態による還元剤分散器が配置されたA部の拡大断面図である。
【図9】メッシュ構造を示す図である。
【図10】本発明による3番目の実施形態による還元剤分散器が配置されたA部の拡大断面図である。
【図11】隔壁表面の拡大図である。
【図12】本発明による4番目の実施形態による還元剤分散器が配置されたA部の拡大断面図である。
【図13】排気管内に噴射された還元剤の偏りを示す図である。
【図14】排気管内に噴射された還元剤の偏りを示す図である。
【図15】隔壁表面の拡大図である。
【符号の説明】
【0041】
5 排気管
7 還元剤供給弁
11 排気ガス流れ
12 偏向板
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流入する排気ガスの空燃比がリーンのときには排気ガス中に含まれるNOxを吸蔵し流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比又はリッチになると吸蔵したNOxを放出するNOx吸蔵触媒を機関排気通路内に配置し、NOx吸蔵触媒の上流に還元剤供給弁を配置し、NOx吸蔵触媒からNOxを放出すべきときには還元剤供給弁から還元剤を供給し、NOx吸蔵触媒に流入する排気ガスの空燃比をリッチにする内燃機関が公知である。
【0003】
この内燃機関において、NOx吸蔵触媒から良好にNOxを放出させるためには、還元剤供給弁から噴射された還元剤をできる限り排気ガス内に分散させてNOx吸蔵触媒に流入させる必要がある。そのために、還元剤供給弁下流の排気管内に排気管の軸線方向に延びる並列配置の複数の排気流通路の集合体からなる通気性板状部材を配置し、還元剤供給弁から通気性板状部材の上流側端面に向けて噴射された還元剤を噴射する内燃機関が公知である(例えば特許文献1を参照)。この内燃機関では還元剤を通気性板状部材の各排気流通路内に分散して流入させ、それによって排気ガス中に還元剤を分散させている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−214100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら実際には還元剤は還元剤供給弁から通気性板状部材の上流側端面上に均一に分散して噴射されず、各排気流通路内には還元剤が均一に分散して流入しない。即ち、還元剤供給弁からの噴射圧は略一定であるが、排気管内を流れる排気ガスの流量又は流速は内燃機関の運転状態によって異なるので、例えば図13及び図14に示すような噴射された還元剤20に偏りが生じる。図13及び14は、還元剤供給弁7近傍の排気管5の縦断面図を示す。図13は、排気ガスが低流量時、即ち機関回転数が低い場合を示し、還元剤供給弁7から噴射された還元剤20は還元剤供給弁7が配置された壁面と反対側の壁面方向に偏る。他方、図14は、排気ガスが高流量時、即ち機関回転数が高い場合を示し、還元剤供給弁7から噴射された還元剤20は還元剤供給弁7が配置された側の壁面方向にに偏る。
【0006】
従って各排気流通路からは異なる量の還元剤が排出され、各排気流通路から流出した異なる量の還元剤は通気性板状部材の下流において十分に混合されず、還元剤を排気ガス中に均一に分散させることができないという問題がある。
【0007】
また、通気性板状部材を用いて還元剤を排気ガス中に均一に分散させることに関し、よりミクロな視点で見た場合に別の問題がある。即ち、還元剤の分散を促進するため、通気性板状部材の各排気流通路を隔てる隔壁表面に還元剤を一時的に付着保持し、保持されている間に還元剤を十分に気化させることが好ましい。しかしながら、図15に隔壁表面の拡大図に示すように、噴射された還元剤の液滴18は、付着保持されることなく、即ち十分気化することなく表面に弾かれ、十分気化しないという問題がある。
【0008】
これらの問題のため、還元剤の分散性が悪化し、不均一な還元剤が下流の触媒に流入することによって部分的な劣化が生じ、排気浄化率の低下を招く結果となる。
【0009】
そこで本発明は、還元剤を排気ガス中に均一に分散させる内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために請求項1に記載の発明によれば、触媒上流の排気通路内に還元剤供給弁を配置し、還元剤供給弁から噴射された還元剤によって触媒において排気を浄化する内燃機関の排気浄化装置において、還元剤供給弁下流であって触媒上流排気通路内に偏向部材を配置し、該偏向部材は、排気通路の軸線方向に対するその傾斜角を制御することによって排気ガス流れを還元剤供給弁が配置された壁面方向とその反対側の壁面方向との間で偏向可能であり、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時における排気通路内の排気ガス流れの流量の増加に応じて、噴射された還元剤を含む排気ガス流れの偏向方向を還元剤供給弁が配置された壁面方向からその反対側の壁面方向へ変化させるように偏向部材の傾斜角を制御する内燃機関の排気浄化装置が提供される。即ち、請求項1に記載の発明では、排気ガスの流量によって生じる還元剤供給弁から噴射された還元剤の偏りを、排気ガスの流量に応じて偏向部材を制御することによって、還元剤を排気ガス中に均一に分散させることが可能となる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明によれば請求項1に記載の発明において、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時以外は、偏向部材が受ける排気ガス流れに対する抵抗が最小限となる位置に偏向部材の傾斜角を制御する内燃機関の排気浄化装置が提供される。即ち、請求項2に記載の発明では、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時以外の時、偏向部材による排気通路内の圧力損失を抑制することが可能となる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明によれば請求項1又は2のいずれか一方に記載の発明において、少なくとも2つの偏向部材を排気ガス流れに対して並列配置した内燃機関の排気浄化装置が提供される。即ち、請求項3に記載の発明では、複数の偏向部材を用いることによって、還元剤の偏りをなくし、還元剤をより均一に分散させることが可能となる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明によれば請求項4に記載の発明において、偏向方向とは反対側の壁面近くに配置された偏向部材ほど噴射された還元剤を含む排気ガス流れを大きく偏向させる傾斜角に制御する内燃機関の排気浄化装置が提供される。即ち、請求項4に記載の発明では、各偏向部材が偏向させる排気ガスの偏向の度合を場所により変えることによって、還元剤をより均一に分散させることが可能となる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明によれば、触媒上流の排気通路内に還元剤供給弁を配置し、還元剤供給弁から噴射された還元剤によって触媒において排気を浄化する内燃機関の排気浄化装置において、還元剤供給弁下流であって触媒上流排気通路内に通気性のメッシュ面を備えたメッシュ部材を配置し、メッシュ面が還元剤供給弁から噴射された還元剤を一時的に付着保持し気化させ又は微粒化させ、メッシュ面と排気通路の軸線方向とがなす傾斜角を、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時はメッシュ面が還元剤を付着保持又は微粒化する角度に、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時以外はメッシュ面が受ける排気ガス流れに対する抵抗が最小限となる角度に制御する内燃機関の排気浄化装置が提供される。即ち、請求項5に記載の発明では、メッシュ部材を用いることによって簡単な構造で還元剤を均一に分散させることができ、また、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時以外の時、メッシュ部材による排気通路内の圧力損失を抑制することが可能となる。
【0015】
また、請求項6に記載の発明によれば、還元剤供給弁から噴射された還元剤によって触媒において排気を浄化する内燃機関の排気浄化装置において、還元剤供給弁下流であって触媒上流排気通路内に還元剤を一時的に付着保持し気化させる付着保持部を備えた還元剤保持部材を配置し、付着保持部に光触媒作用を有する光触媒物質を備えると共に排気通路内に光触媒物質に光を照射する光源を備え、付着保持部に付着したデポジットを光触媒作用により酸化除去する内燃機関の排気浄化装置が提供される。即ち、請求項6に記載の発明では、付着保持部に還元剤を一時的に付着保持し気化させることによって還元剤を排気ガス中に均一に分散させることができると共に、付着保持部に生じやすいデポジットを光触媒作用によって簡単に酸化除去することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
各請求項に記載の発明によれば、還元剤を排気ガス中に均一に分散させることができるという共通の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明による内燃機関の排気浄化装置について説明する。図1は本発明の排気浄化装置が搭載される内燃機関全体の図である。図1に示した実施形態では本発明の排気浄化装置が圧縮着火式内燃機関に用いられた場合を示しているが、火花点火式内燃機関等その他内燃機関にも用いることができる。
【0018】
図1に圧縮着火式内燃機関の全体図を示す。図1を参照すると、1は機関本体、2は吸気マニホルド、3は排気マニホルドをそれぞれ示す。排気マニホルド3の出口は酸化触媒4の入口に連結され、酸化触媒4の出口は排気管5を介して触媒6の入口に連結される。触媒6の上流の排気管5内には還元剤供給弁7が配置される。還元剤供給弁7は、還元剤供給管8を介して電気制御式の吐出量可変な供給ポンプ9に連結され、供給ポンプ9は例えば液体の還元剤を収容した還元剤タンク10に連結される。Aに示す還元剤供給弁7の下流であって触媒6の上流排気管5内には、いくつかの実施形態によって後述する、還元剤を分散させる還元剤分散器が配置されている。
【0019】
還元剤の種類は、触媒6の種類や浄化すべき排気ガス成分に応じて定めることができ、例えば軽油(燃料)のような炭化水素や、尿素、アンモニア等を還元剤として用いることができる。以下に示す実施形態においては、還元剤として尿素水を、触媒6としてNOx選択還元触媒を用いた場合について説明する。
【0020】
NOx選択還元触媒6は、例えばアンモニア吸着タイプのFeゼオライトから構成されている。尿素水を供給すべきときには還元剤タンク10内に貯蔵されている尿素水が供給ポンプ9によって還元剤供給弁7から排気管5内を流れる排気ガス中に噴射され、このとき尿素から発生したアンモニア((NH2)2CO+H2O→2NH3+CO2)によって排気ガス中に含まれるNOxがNOx選択還元触媒6において還元される。酸化触媒4は、例えば白金のような貴金属触媒を担持しており、この酸化触媒4は排気ガス中に含まれるHCを酸化させる作用をなす。
【0021】
電子制御ユニット(ECU)30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35及び出力ポート36を具備する。アクセルペダル39にはアクセルペダル39の踏み込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ40が接続され、負荷センサ40の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ41が接続される。CPU34ではクランク角センサ41からの出力パルスに基づいて機関回転数Nが算出される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して還元剤供給弁7及び供給ポンプ9に接続される。
【0022】
図2は、本発明による1番目の実施形態による還元剤分散器が配置された図1のA部の拡大断面図である。本実施形態による還元剤分散器は、1つ又は少なくとも2つの偏向板12を有する。偏向板12は、還元剤供給弁7の噴射軸線に対して垂直且つ排気管5の横断面に対して平行に配置された回転軸12aを有し、この回転軸12aを中心とした排気管5の中心軸線5a方向に対する傾斜角によってその位置を図示しないアクチュエータによって制御することができる。図2に示す偏向板12の配置は傾斜角0度の定常位置であり、還元剤の噴射時以外、偏向板12はこの定常位置に配置され、排気ガス流れ11に対する抵抗を最小限に抑えている。図3は、図2の線B−Bにおける断面を示している。
【0023】
図4は、排気ガスが低流量時に還元剤が噴射される場合の偏向板12の配置を示す図1のA部の拡大断面図である。排気ガスの流量が低い場合、図13を参照しながら前述したように、噴射された還元剤20は、還元剤供給弁7が配置された壁面とは反対側の壁面方向に偏る傾向にある。従って、図4に示すように、還元剤を含む排気ガス流れ11が、還元剤供給弁7が配置された側の壁面方向に向かうように偏向板12の傾斜角を制御する。それによって、還元剤の偏りはなくなり、還元剤を排気ガス中に均一に分散させることができる。なお、偏向板12の傾斜角がゼロではなく、排気ガス流れ11を偏向する位置を偏向位置と称す。
【0024】
なお、還元剤の偏りが大きい還元剤供給弁7が配置された壁面とは反対側の壁面に近い偏向板12ほど、偏向板12の傾斜角の変位量が大きくなるように制御することによって、還元剤の分散性をより向上させることができる。また還元剤の偏りは、流量が低ければ低いほど大きくなるため、流量が低いほど偏向板12の傾斜角の変位量を大きくするように制御することができる。
【0025】
図5は、排気ガスが高流量時に還元剤が噴射される場合の偏向板12の配置を示す図1のA部の拡大断面図である。排気ガスの流量が高い場合、図14を参照しながら前述したように、噴射された還元剤20は、還元剤供給弁7が配置された側の壁面方向に偏る傾向にある。従って、図5に示すように、還元剤を含む排気ガス流れ11が、還元剤供給弁7が配置された側とは反対側の壁面方向に向かうように偏向板12の傾斜角を制御する。それによって、還元剤の偏りはなくなり、還元剤を排気ガス中に均一に分散させることができる。
【0026】
なお、還元剤の偏りが大きい還元剤供給弁7が配置された側の壁面に近い偏向板12ほど、偏向板12の傾斜角の変位量が大きくなるように制御することによって、還元剤の分散性をより向上させることができる。また還元剤の偏りは、流量が高ければ高いほど大きくなるため、流量が高いほど偏向板12の傾斜角の変位量を大きくするように制御することができる。
【0027】
本実施形態において、偏向板12は、排気管5の同一の横断面内に配置したが、異なる横断面内に配置してもよい。また、偏向板12の形状も排気ガスの流れを偏向可能な範囲内で任意に取り得る。
【0028】
図6は、偏向板12の制御機構の一例を示す。図6(A)は、制御機構を排気管5の軸線方向から見た概略図であり、図6(B)は、その側面の概略図を示す。各偏向板12はアクチュエータ13によって往復動する駆動シャフト14に連結し、偏向板12の回転軸12aを中心に傾斜角を制御することができる。この制御機構によれば各偏向板12を一体的に制御することができ、構造が簡略化しコストを削減できる。また、各偏向板12の制御は、個々に独立に制御されるアクチュエータを用いてもよい。
【0029】
図7及び図8は、本発明による2番目の実施形態による還元剤分散器が配置されたA部の拡大断面図である。本実施形態による還元剤分散器は、1つのメッシュ部材15を有し、メッシュ部材15は、回転軸15a周りに図示しないアクチュエータによって回転角、即ち1番目の実施形態と同様に傾斜角を制御することが可能となっている。メッシュ部材15は、図9に示すように複数の微小な貫通孔16からなるメッシュ構造からなり、そのため還元剤が接触する表面積が大きくなっている。
【0030】
還元剤を含む排気ガス流れ11が貫通孔16を通過する際、還元剤の液滴がメッシュ部分に当たって分裂し微粒化が促進される。また、貫通孔16は微小であるため、還元剤の液滴がその表面張力によって貫通孔16を塞ぐ液膜を形成し一時的に付着保持される。その保持の間に十分気化させることが可能となる。それによって、還元剤を排気ガス中に均一に分散させることが可能になる。なお、メッシュ部材15を金属部材によって構成した場合には、より高い伝熱性を有し、蒸発性を向上させることができるため好ましい。また、メッシュ部材を複数枚重ねると、還元剤がより保持されやすくなる。
【0031】
図7は、還元剤の噴射時以外のメッシュ部材15の配置を示しており、還元剤の噴射時以外は排気ガス流れ11に対する抵抗を最小限に抑えるよう図に示すような傾斜角がゼロとなる配置に制御される。図8は、還元剤の噴射時のメッシュ部材15の配置を示している。還元剤の噴射時は、噴射された還元剤をより多くメッシュ部材15に通過させ、付着保持させるため、還元剤供給弁7の噴射軸線とメッシュ部材15平面とが垂直となるよう図に示す配置に制御される。なお、還元剤の噴射時の配置に関し、排気ガスの流量に応じて、噴射された還元剤が最も付着保持される配置となるよう傾斜角を制御してもよい。
【0032】
図10は、本発明による3番目の実施形態による還元剤分散器が配置されたA部の拡大断面図である。本実施形態による還元剤分散器は、通気性板状部材17を有し、通気性板状部材17は、隔壁17aにより細分割された並列配置の複数の排気流通路17bの集合体からなるハニカム構造体から形成される。
【0033】
図11は、隔壁17a表面の拡大図である。本実施形態は、隔壁17aに、還元剤との親和性が高くなるようなコーティング材19が塗布されていることを特徴とする。コーティング材19の効果により、噴射された還元剤の液滴18が液膜18aとなって付着保持され、還元剤を十分気化20させることが可能となり、排気ガス中に均一に分散させることが可能となる。これによって、図15を参照しながら前述したような問題が解消される。
【0034】
本実施形態において、還元剤として尿素水を用いているため、コーティング材として酸化チタン等親水性が高い物質が選択される。更に、親水性物質をコーティングすることにより、隔壁17a表面に主として固体炭素からなるデポジットが付着してしまっても、還元剤の液膜18aによって洗浄され、表面性状の維持を図ることができる。従って、デポジットによる圧力損失の増大が防止され、還元剤の分散性が改善される。
【0035】
図12は、本発明による4番目の実施形態による還元剤分散器が配置されたA部の拡大断面図である。本実施形態による還元剤分散器は、図10に示す3番目の実施形態と同じ通気性板状部材17を有し、更に通気性板状部材17の隔壁17a表面を照射するように紫外線ライト21が排気管5に配置されている。本実施形態において、コーティング材19として、還元剤との親和性を有し且つ紫外線の照射によって光触媒作用を有する物質が選択される。そのため、本実施形態においては、コーティング材19として酸化チタンを用いる。
【0036】
光触媒作用を有するコーティング材19に紫外線を照射することによって、隔壁17a表面に堆積した主として固体炭素からなるデポジットを酸化除去し、表面性状の維持を図ることができる。更に、酸化除去と共に還元剤の液膜18aによって表面が洗浄され、表面性状の維持が図れる。また、デポジットは、その酸化反応において排気ガス中のNOxとも反応するため、NOxの還元浄化にも利用可能である。それによって、排気性状の改善することができる。
【0037】
紫外線照射は、例えば前回の照射から所定運転時間経過後や、前回の照射から所定量の還元剤を噴射後等、予め定められた期間又は間隔毎に行われる。
【0038】
なお、隔壁17a表面に還元剤との親和性を高め、還元剤の液膜を形成するためのその他の実施形態として、表面粗さを粗くする方法や、また隔壁17a表面に金属メッシュを貼るか又は隔壁17a自体を金属メッシュで形成する方法等もある。
【0039】
第3、第4及びその他の実施形態は、第1及び第2の実施形態と組み合わせて使用することも可能である。即ち、還元剤との親和性の高いコーティング材19を第1の実施形態における偏向板12の表面や、第2の実施形態のメッシュ部材15に塗布してもよい。更に、コーティング材19として光触媒作用を有する物質を用い、紫外線ライト21を排気管5に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の排気浄化装置が搭載される内燃機関全体の図である。
【図2】本発明による1番目の実施形態による還元剤分散器が配置された図1のA部の拡大断面図である。
【図3】図2の線B−Bにおける断面である。
【図4】排気ガスが低流量時に還元剤が噴射される場合の本発明による1番目の実施形態による還元剤分散器が配置された図1のA部の拡大断面図である。
【図5】排気ガスが高流量時に還元剤が噴射される場合の本発明による1番目の実施形態による還元剤分散器が配置された図1のA部の拡大断面図である。
【図6】偏向板12の制御機構の一例を示す図である。
【図7】本発明による2番目の実施形態による還元剤分散器が配置されたA部の拡大断面図である。
【図8】本発明による2番目の実施形態による還元剤分散器が配置されたA部の拡大断面図である。
【図9】メッシュ構造を示す図である。
【図10】本発明による3番目の実施形態による還元剤分散器が配置されたA部の拡大断面図である。
【図11】隔壁表面の拡大図である。
【図12】本発明による4番目の実施形態による還元剤分散器が配置されたA部の拡大断面図である。
【図13】排気管内に噴射された還元剤の偏りを示す図である。
【図14】排気管内に噴射された還元剤の偏りを示す図である。
【図15】隔壁表面の拡大図である。
【符号の説明】
【0041】
5 排気管
7 還元剤供給弁
11 排気ガス流れ
12 偏向板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒上流の排気通路内に還元剤供給弁を配置し、還元剤供給弁から噴射された還元剤によって触媒において排気を浄化する内燃機関の排気浄化装置において、還元剤供給弁下流であって触媒上流排気通路内に偏向部材を配置し、該偏向部材は、排気通路の軸線方向に対するその傾斜角を制御することによって排気ガス流れを還元剤供給弁が配置された壁面方向とその反対側の壁面方向との間で偏向可能であり、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時における排気通路内の排気ガス流れの流量の増加に応じて、噴射された還元剤を含む排気ガス流れの偏向方向を還元剤供給弁が配置された壁面方向からその反対側の壁面方向へ変化させるように偏向部材の傾斜角を制御する内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
還元剤供給弁からの還元剤の噴射時以外は、偏向部材が受ける排気ガス流れに対する抵抗が最小限となる位置に偏向部材の傾斜角を制御する請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
少なくとも2つの偏向部材を排気ガス流れに対して並列配置した請求項1又は2のいずれか一方に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
偏向方向とは反対側の壁面近くに配置された偏向部材ほど噴射された還元剤を含む排気ガス流れを大きく偏向させる傾斜角に制御する請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
触媒上流の排気通路内に還元剤供給弁を配置し、還元剤供給弁から噴射された還元剤によって触媒において排気を浄化する内燃機関の排気浄化装置において、還元剤供給弁下流であって触媒上流排気通路内に通気性のメッシュ面を備えたメッシュ部材を配置し、メッシュ面が還元剤供給弁から噴射された還元剤を一時的に付着保持し気化させ又は微粒化させ、メッシュ面と排気通路の軸線方向とがなす傾斜角を、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時はメッシュ面が還元剤を付着保持又は微粒化する角度に、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時以外はメッシュ面が受ける排気ガス流れに対する抵抗が最小限となる角度に制御する内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
触媒上流の排気通路内に還元剤供給弁を配置し、還元剤供給弁から噴射された還元剤によって触媒において排気を浄化する内燃機関の排気浄化装置において、還元剤供給弁下流であって触媒上流排気通路内に還元剤を一時的に付着保持し気化させる付着保持部を備えた還元剤保持部材を配置し、付着保持部に光触媒作用を有する光触媒物質を備えると共に排気通路内に光触媒物質に光を照射する光源を備え、付着保持部に付着したデポジットを光触媒作用により酸化除去する内燃機関の排気浄化装置。
【請求項1】
触媒上流の排気通路内に還元剤供給弁を配置し、還元剤供給弁から噴射された還元剤によって触媒において排気を浄化する内燃機関の排気浄化装置において、還元剤供給弁下流であって触媒上流排気通路内に偏向部材を配置し、該偏向部材は、排気通路の軸線方向に対するその傾斜角を制御することによって排気ガス流れを還元剤供給弁が配置された壁面方向とその反対側の壁面方向との間で偏向可能であり、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時における排気通路内の排気ガス流れの流量の増加に応じて、噴射された還元剤を含む排気ガス流れの偏向方向を還元剤供給弁が配置された壁面方向からその反対側の壁面方向へ変化させるように偏向部材の傾斜角を制御する内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
還元剤供給弁からの還元剤の噴射時以外は、偏向部材が受ける排気ガス流れに対する抵抗が最小限となる位置に偏向部材の傾斜角を制御する請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
少なくとも2つの偏向部材を排気ガス流れに対して並列配置した請求項1又は2のいずれか一方に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
偏向方向とは反対側の壁面近くに配置された偏向部材ほど噴射された還元剤を含む排気ガス流れを大きく偏向させる傾斜角に制御する請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
触媒上流の排気通路内に還元剤供給弁を配置し、還元剤供給弁から噴射された還元剤によって触媒において排気を浄化する内燃機関の排気浄化装置において、還元剤供給弁下流であって触媒上流排気通路内に通気性のメッシュ面を備えたメッシュ部材を配置し、メッシュ面が還元剤供給弁から噴射された還元剤を一時的に付着保持し気化させ又は微粒化させ、メッシュ面と排気通路の軸線方向とがなす傾斜角を、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時はメッシュ面が還元剤を付着保持又は微粒化する角度に、還元剤供給弁からの還元剤の噴射時以外はメッシュ面が受ける排気ガス流れに対する抵抗が最小限となる角度に制御する内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
触媒上流の排気通路内に還元剤供給弁を配置し、還元剤供給弁から噴射された還元剤によって触媒において排気を浄化する内燃機関の排気浄化装置において、還元剤供給弁下流であって触媒上流排気通路内に還元剤を一時的に付着保持し気化させる付着保持部を備えた還元剤保持部材を配置し、付着保持部に光触媒作用を有する光触媒物質を備えると共に排気通路内に光触媒物質に光を照射する光源を備え、付着保持部に付着したデポジットを光触媒作用により酸化除去する内燃機関の排気浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−38020(P2010−38020A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201055(P2008−201055)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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