内燃機関の排気浄化装置
【課題】DPFの過昇温の可能性があると判定されたら過昇温抑制制御を実行する排気浄化装置において、エンジン始動時にも適切に過昇温抑制制御の要否判定ができる内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】前回エンジン停止時において過昇温抑制制御を実行中だった場合(S10:YES)、あるいは前回エンジン停止時において吸気量が小さければ過昇温が発生した状態であった場合(S20:YES)には、今回のエンジン再始動時の冷却水の水温が所定値以上であれば(S30:YES)、エンジン再始動時において、過昇温抑制制御を実行する(S100)。
【解決手段】前回エンジン停止時において過昇温抑制制御を実行中だった場合(S10:YES)、あるいは前回エンジン停止時において吸気量が小さければ過昇温が発生した状態であった場合(S20:YES)には、今回のエンジン再始動時の冷却水の水温が所定値以上であれば(S30:YES)、エンジン再始動時において、過昇温抑制制御を実行する(S100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、環境保護意識の高まりのなかで内燃機関に対してすぐれた排気浄化性能が求められている。特にディーゼルエンジンにおいては、エンジンから排出される黒煙などのいわゆる排気微粒子(粒子状物質、PM:Particulate Matter)の除去が重要である。この目的のために排気管の途中にディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)が装備されることが多い。
【0003】
DPFがPMを捕集することにより排気中のPMは大部分が除去されるが、DPF内にPMが堆積し続ける一方では、DPFは目詰まりを起こしてしまうので、堆積されたPMを燃焼して除去することで、DPFを再生する必要がある。DPF内に堆積したPMを燃焼するためにシリンダ内でメイン噴射後に燃料を噴射するポスト噴射などの手法が用いられる。
【0004】
しかしDPF再生時(あるいはDPFでPMが自然に燃焼した場合)に温度が上がり過ぎると、DPFが溶損したり割れたりするなどの不具合が生じてしまう。例えば、DPFの再生中でDPFの温度が高く、かつDPFにおけるPMの堆積量が多い状況下で、エンジンを減速状態にすると、吸気量が急速に低減するので、DPF内部の熱が排ガスによって下流に移動されなくなる。したがってDPF内部に熱がこもってしまうこととなり、DPFの過昇温の可能性が高くなる。
【0005】
例えば下記特許文献1では、DPF過昇温の可能性がある場合(排気温度が高く、減速運転状態)に、吸気絞り弁を絞るとともにEGR弁を全開にすることで排気中の酸素濃度を低減してDPFにおけるPMの燃焼を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−188493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、過昇温抑制制御の要否判定条件として、DPFの内部温度が所定値以上で、DPFにおけるPMの堆積量が所定値以上であるとの条件を用いることが一般的であった。しかし一般にエンジンの始動時にはDPFの内部温度の推定精度が高くない。したがって上記判定条件を用いる場合、エンジンの始動時には要否判定の精度が低くなり、それによりエンジン始動直後に過昇温を発生させてしまう可能性がある。このようにエンジン始動時の過昇温抑制は、それ以外のときの過昇温抑制とは異なる注意を要するが、従来技術ではこの点が考慮されていない。
【0008】
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、DPFの過昇温の可能性があると判定されたら過昇温抑制制御を実行する排気浄化装置において、エンジン始動時にも適切に過昇温抑制制御の要否判定ができる内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関の排気通路に配置されて粒子状物質を捕集するフィルタと、そのフィルタの過昇温を抑制する抑制制御を実行する制御手段と、その制御手段による前記抑制制御を実行するか否かを判定する判定手段と、を備え、前記判定手段は、前記内燃機関の再始動時に前記抑制制御を実行するか否かを判定する再始動時判定手段を備え、その再始動時判定手段が前記再始動時に前記抑制制御を実行すべきであると判定する判定条件には、前記内燃機関の前回作動停止時において過昇温の発生可能性があったとの第1の条件が含まれることを特徴とする。
【0010】
これにより本発明に係る内燃機関の排気浄化装置では、粒子状物質を捕集するフィルタの過昇温を抑制する抑制制御を実行するか否かを判定する判定手段として、内燃機関の再始動時の判定手段を特に備えて、内燃機関の前回作動停止時において過昇温の発生可能性があったとの条件が、再始動時の過昇温抑制制御実行の判定条件に含まれるとするので、内燃機関の再始動時における過昇温の発生に特に留意して、前回作動停止時において過昇温の発生可能性があったとの情報を適切に利用して今回の始動時の過昇温発生を判定する。したがって適切に内燃機関再始動時の過昇温が抑制できる。
【0011】
また前記第1の条件には、前記内燃機関の前回作動停止時において前記制御手段による過昇温抑制制御を実行していたことが含まれるとしてもよい。
【0012】
これにより内燃機関の前回作動停止時において前記制御手段による過昇温抑制制御を実行していたとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に前回作動停止時に過昇温抑制制御を実行していたことは、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0013】
また前記第1の条件には、前記内燃機関の前回作動停止時において前記フィルタの流入するガス量が所定値よりも小さい場合には過昇温が発生する状態にあったことが含まれるとしてもよい。
【0014】
これにより前記内燃機関の前回作動停止時においてフィルタの流入するガス量が所定値よりも小さい場合には過昇温が発生する状態にあったとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に前回作動停止時においてフィルタの流入するガス量が所定値よりも小さい場合には過昇温が発生する状態にあったことは、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0015】
また前記再始動時判定手段が前記再始動時に前記抑制制御を実行すべきであると判定する条件には、前記内燃機関の前回作動停止から再始動までにおける前記フィルタの内部温度の低減が小さいとの第2の条件が含まれるとしてもよい。
【0016】
これにより内燃機関の前回作動停止から再始動までにおける前記フィルタの内部温度の低減が小さいとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に内燃機関の前回作動停止から再始動までにおける前記フィルタの内部温度の低減が小さいことは、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0017】
また前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時における前記内燃機関の冷却水の水温が所定値よりも高いことが含まれるとしてもよい。
【0018】
これにより内燃機関の再始動時における前記内燃機関の冷却水の水温が所定値よりも高いとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定できる。一般に内燃機関の再始動時における内燃機関の冷却水の水温が所定値よりも高いことは、内燃機関停止時におけるフィルタの内部温度の低減が小さいことを意味するので、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0019】
また前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における前記内燃機関の冷却水の水温の差分値が所定値よりも小さいことが含まれるとしてもよい。
【0020】
これにより内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における前記内燃機関の冷却水の水温の差分値が所定値よりも小さいとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における前記内燃機関の冷却水の水温の差分値が所定値よりも小さいことは、内燃機関停止時におけるフィルタの内部温度の低減が小さいことを意味するので、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0021】
また前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時における前記フィルタの下流排気温度が所定値よりも高いことが含まれるとしてもよい。
【0022】
これにより内燃機関の再始動時におけるフィルタの下流排気温度が所定値よりも高いとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に内燃機関の再始動時におけるフィルタの下流排気温度が所定値よりも高いことは、内燃機関停止時におけるフィルタの内部温度の低減が小さいことを意味するので、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0023】
また前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における前記フィルタの下流排気温度の差分値が所定値よりも小さいことが含まれるとしてもよい。
【0024】
これにより内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における前記フィルタの下流排気温度の差分値が所定値よりも小さいとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における前記フィルタの下流排気温度の差分値が所定値よりも小さいことは、内燃機関停止時におけるフィルタの内部温度の低減が小さいことを意味するので、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0025】
また前記第2の条件には、前記内燃機関の作動停止期間が所定値よりも短いことが含まれるとしてもよい。
【0026】
これにより内燃機関の作動停止期間が所定値よりも短いとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に内燃機関の作動停止期間が所定値よりも短いことは、内燃機関停止時におけるフィルタの内部温度の低減が小さいことを意味するので、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0027】
また前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時における吸気温が所定値よりも高いことが含まれるとしてもよい。
【0028】
これにより内燃機関の再始動時における吸気温が所定値よりも高いとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に内燃機関の再始動時における吸気温が所定値よりも高いことは、内燃機関停止時におけるフィルタの内部温度の低減が小さいことを意味するので、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0029】
また前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における吸気温の差分値が所定値よりも小さいことが含まれるとしてもよい。
【0030】
これにより内燃機関の再始動時と、内燃機関の前回作動停止時と、における吸気温の差分値が所定値よりも小さいとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に内燃機関の再始動時と、内燃機関の前回作動停止時と、における吸気温の差分値が所定値よりも小さいことは、内燃機関停止時におけるフィルタの内部温度の低減が小さいことを意味するので、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0031】
また前記再始動時判定手段は、前記抑制制御を終了すべきか否かを判定する終了判定手段を備えたとしてもよい。
【0032】
これによりエンジン始動時における過昇温抑制制御の要否を判定する手段のみではなく、その抑制制御の終了を判定する手段も備えるので、エンジン始動時の過昇温抑制制御の開始と終了を適切に制御できる排気浄化装置が実現できる。
【0033】
また前記フィルタの内部温度を推定する第1推定手段を備え、前記終了判定手段が前記抑制制御を終了すべきと判定する判定条件には、前記第1推定手段による推定値が所定値よりも低いことが含まれるとしてもよい。
【0034】
これによりフィルタの内部温度の推定値が所定値よりも低いとの情報を利用して、過昇温抑制制御の終了を判定する。一般にフィルタの内部温度の推定値が所定値よりも低いことは、過昇温発生の可能性に影響を及ぼす情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に過昇温抑制制御を終了できる。
【0035】
また前記終了判定手段が前記抑制制御を終了すべきと判定する判定条件には、前記フィルタに流入するガス量が所定値よりも多いことが含まれるとしてもよい。
【0036】
これによりフィルタに流入するガス量が所定値よりも多いとの情報を利用して、過昇温抑制制御の終了を判定する。一般にフィルタに流入するガス量が所定値よりも多いことは、過昇温発生の可能性に影響を及ぼす情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に過昇温抑制制御を終了できる。
【0037】
また前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量を推定する第2推定手段を備え、前記終了判定手段が前記抑制制御を終了すべきと判定する判定条件には、前記第2推定手段による推定値が所定値よりも少ないことが含まれるとしてもよい。
【0038】
これによりフィルタにおける粒子状物質の堆積量の推定値が所定値よりも少ないとの情報を利用して、過昇温抑制制御の終了を判定する。一般にフィルタにおける粒子状物質の堆積量の推定値が所定値よりも少ないことは、過昇温発生の可能性に影響を及ぼす情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に過昇温抑制制御を終了できる。
【0039】
また前記フィルタに流入するガス量を検出する検出手段を備え、前記第2推定手段は、前記検出手段により検出されたガス量の内燃機関の再始動後の積算値が所定値よりも小さい場合は、前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量の推定値を減少させないとしてもよい。
【0040】
これにより、内燃機関再始動後におけるフィルタに流入するガス量の積算値が小さい期間は堆積量推定値を減少させないようにする。したがって、一般に内燃機関始動直後にはフィルタ内部温度の推定精度が低いが、そうした推定精度が低い期間に堆積量の減少量を多く見積もる誤差が入り込むことが抑制できる。
【0041】
また前記フィルタに流入するガス量を検出する検出手段を備え、前記終了判定手段は、前記検出手段により検出されたガス量の内燃機関の再始動後の積算値が所定値よりも小さい場合は、前記抑制制御の終了判定を行わないとしてもよい。
【0042】
これにより内燃機関再始動後におけるフィルタに流入するガス量の積算値が小さい期間は抑制制御の終了判定を行わないようにする。したがって、一般に内燃機関始動直後にはフィルタ内部温度の推定精度が低いが、そうした推定精度が低い期間に、誤差を含んだ推定値を用いて誤って抑制制御を終了させることが抑制できる。
【0043】
また前記制御手段による前記フィルタの過昇温抑制のための方法には、前記フィルタに流入するガス量を増加させる第1の方法と、前記フィルタに流入するガスの酸素濃度を低減させる第2の方法と、が含まれ、前記制御手段は、内燃機関の再始動後の過昇温抑制制御で用いる方法と、それ以外での過昇温抑制制御で用いる方法とで、一方が前記第1の方法であり他方が前記第2の方法であることを許容するとしてもよい。
【0044】
これにより内燃機関の再始動後の過昇温抑制制御で用いる方法と、それ以外での過昇温抑制制御で用いる方法とを、ガス量を増加させる方法と、ガスの酸素濃度を低減させる方法と、の間から自由に選択できるので、柔軟に選択して効果的に過昇温が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明における内燃機関の排気浄化装置の実施例における構成図。
【図2】第1の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図3】第2の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図4】第3の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図5】第4の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図6】第5の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図7】第6の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図8】第7の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図9】第8の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図10】第9の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図11】第10の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図12】第11の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図13】第1の抑制制御終了処理手順を示すフローチャート。
【図14】第2の抑制制御終了処理手順を示すフローチャート。
【図15】第3の抑制制御終了処理手順を示すフローチャート。
【図16】第4の抑制制御終了処理手順を示すフローチャート。
【図17】第5の抑制制御終了処理手順を示すフローチャート。
【図18】PM堆積量推定における減少停止手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。まず図1は、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置1の実施例における装置構成を示している。
【0047】
排気浄化装置1は、4気筒のディーゼルエンジン2(以下では単にエンジンと称する)に対して構成されている。エンジン2及び排気浄化装置1は、吸気管3、排気管4、EGR管5を備える。排気管4には上流側から酸化触媒8(DOC:Diesel Oxicidation Catalyst)、DPF6が配置されている。エンジン2及び排気浄化装置1は自動車に搭載されているとすればよい。
【0048】
吸気管3を通じてエンジン2に空気(吸気)が供給される。吸気管3にはエアフロメータ31、吸気スロットル32、吸気温度センサ33が配置されている。エアフロメータ31は吸気量を計測する。ここでの吸気量は例えば単位時間当たりの質量流量とすればよい。また吸気スロットル32の開度が調節されることによってエンジン2に供給される吸気量が増減する。吸気温度センサ33で吸気の温度が計測される。
【0049】
エンジン2にはインジェクタ21、エンジン回転数センサ22が装備されている。インジェクタ21からの噴射によってシリンダ内に燃料が供給される。エンジン回転数センサ22によってエンジン2の(単位時間あたりの)回転数が計測される。エンジン回転数センサ22は、例えばエンジン2から連結されたクランクの回転角度を計測するクランク角センサとして、その検出値がECU7へ送られてエンジンの回転数が算出されるとすればよい。また水温センサ23によってエンジン2の冷却水の温度が計測される。
【0050】
DPF6は、例えば代表的な構造として、いわゆるハニカム構造において入口側と出口側を交互に目詰めした構造とすればよい。エンジン2の運転中に排出される排気にはPM(粒子状物質)が含まれ、このPMはDPF6の上記構造のDPF壁を排気が通過するときに、このDPF壁の内部あるいは表面に捕集される。なおDPF6は酸化触媒が担持された酸化触媒付きDPFとすればよい。
【0051】
DOC6には酸化触媒が担持されている。排気管4には、DOC8とDPF6の間に、A/F値(空燃比)を計測するA/Fセンサ40、排気の温度を検出する排気温センサ41が装備されている。またDPF6の下流にも排気温センサ42が装備されている。
【0052】
EGR管5は、排気管4から吸気管3への排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)を行うために装備されている。EGR管5にはEGRバルブ51が装備されている。EGRバルブ51の開閉によって排気の還流量が調節される。なお本実施例ではEGR管5を装備しないとしてもよく、あるいはDPF6の過昇温抑制制御として排気中の酸素濃度を低減する場合に、EGR管5による排気還流量も増加させるとしてもよい。
【0053】
上で述べたエアフロメータ31、エンジン回転数センサ22、水温センサ23、A/Fセンサ40、排気温センサ41、42の計測値は電子制御装置7(ECU:Electronic Control Unit)へ送られる。以下の説明で登場する各種の数値は、明示がない場合上記説明のとおり、これらのセンサによって計測されるとすればよい。
【0054】
またECU7によって、インジェクタ21によるエンジン2への燃料噴射のタイミングや噴射量、吸気スロットル32とEGRバルブ51との開度が調節、制御される。ECU7は通常のコンピュータと同様の構造を有するとして、各種演算をおこなうCPUや各種情報の記憶を行うメモリ71を有するとすればよい。またECU7は計時機能を有するタイマ72を備えるとする。
【0055】
DPF6に堆積したPMの堆積量が十分大きくなった度ごとに、堆積したPMを燃焼することによって除去し、DPF6を再生する。PMの堆積量を推定する方法は例えば、エンジン2からの時々刻々の(単位時間あたりの)PM排出量と、DPF6における時々刻々のPM燃焼量との差分を積算していく履歴式の推定方法を用いればよい。
【0056】
その際、エンジン2からの時々刻々のPM排出量は、エンジン2の運転条件とPM排出量との関係を示すマップをメモリ71に記憶しておいて、それを用いればよい。エンジン2の運転条件、すなわちエンジン回転数と負荷とはそれぞれ、例えばエンジン回転数センサ22の計測値とインジェクタ21への噴射量指令値とすればよい。DPF6における時々刻々のPM燃焼量は、DPF内部温度とDPF6におけるPM燃焼量との関係を示すマップをメモリ71に記憶しておいて、それを用いればよい。DPF内部温度は、排気温センサ42の計測値で置き換えてもよく、排気温センサ42(あるいは41も)から内部温度推定モデルを用いて推定してもよい。
【0057】
DPF6の再生方法としては例えば、インジェクタ21からメイン噴射後のタイミングで燃料を噴射するポスト噴射を実行する。ポスト噴射により筒内に噴射されて未燃のまま排気管4に排出された未燃燃料が、DOC8あるいはDPF6に達して、DOC8あるいはDPF6に担持された触媒の作用で昇温して、DPF6に堆積したPMを燃焼させる。
【0058】
本実施例では、こうした装置構成のもとで、DPF6の過昇温抑制に関しては、基本的には、DPF6の内部温度が高く、かつDPF6におけるPM堆積量が多く、DPF6に流入するガス量が少ない場合に過昇温抑制制御が必要だと判定する。しかし上述のとおりエンジン2の始動直後はDPF6の内部温度の推定精度が低いので、別の判定条件を用いる。それを以下で説明する。
【0059】
図2から図18に本実施例におけるエンジン2の始動後の過昇温抑制処理の処理手順が示されている。以下でこれらを説明するが、図2から図18で同一内容の処理は同一符号を付すとし、同じ説明は繰り返さないとする。なお図2から図18の処理手順はプログラム化されてメモリ71に記憶しておき、ECU7が呼び出して自動的に実行するようにすればよい。
【0060】
図2から図12までは、エンジン2の始動時にどのような条件が満たされれば過昇温抑制制御を実行するかに関係するフローチャートである。図2から図12の処理は、エンジン2を始動すると自動的に実行開始されるとすればよい。
【0061】
図2の処理ではエンジン始動後に手順S10で、前回のエンジン停止時に過昇温抑制制御(抑制制御)を実行中であったか否かを判断する。前回エンジン停止時に抑制制御実行中であったか否かの情報は例えばメモリ71に記憶しておけばよい。前回エンジン停止時に過昇温抑制制御(抑制制御)を実行中であった場合(S10:YES)は、S100に進み、ただちに抑制制御を開始する。前回エンジン停止時に過昇温抑制制御(抑制制御)を実行中でなかった場合(S10:NO)は抑制制御を行わず図2の処理を終了する。
【0062】
S100における過昇温抑制制御は、具体的には以下の2手法のいずれかを採用すればよい。1つの手法は、DPF6に流入するガス量を増加させることである。これによってDPF6の熱を効率的に下流に持ち去って過昇温を抑制する。
【0063】
もう1つの手法は、DPF6に流入するガス中の酸素濃度を低減することである。これによりDPF6における燃焼反応を抑えることで過昇温を抑制する。前回エンジン停止時に抑制制御を実行中であった場合、今回のエンジン始動時にも過昇温発生の可能性があるとみなせるので、図2の処理を用いると、前回エンジン停止時の情報を用いて適切に今回のエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0064】
次に図3の処理では、エンジン始動後に手順S10で、前回のエンジン停止時に吸気量が少なければ過昇温が発生する状態にあったか否かを判断する。その状態にあったか否かの情報は例えばメモリ71に記憶しておけばよい。前回エンジン停止時に吸気量が少なければ過昇温が発生する状態にあった場合(S20:YES)は、S100に進み、ただちに抑制制御を開始する。
【0065】
前回エンジン停止時に吸気量が少なければ過昇温が発生する状態になかった場合(S20:NO)は抑制制御を行わず図3の処理を終了する。前回エンジン停止時に吸気量が少なければ過昇温が発生する状態にあった場合、今回のエンジン始動時にも過昇温発生の可能性があるとみなせるので、図3の処理を用いると、前回エンジン停止時の情報を用いて適切に今回のエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0066】
次に図4の処理では、図2と図3の処理を組み合わせる。すなわち前回エンジン停止時に過昇温抑制制御(抑制制御)を実行中であった場合(S10:YES)または前回エンジン停止時に吸気量が少なければ過昇温が発生する状態にあった場合(S20:YES)には、S100に進み、ただちに抑制制御を開始し、それ以外の場合では抑制制御を行わない。図4の処理を用いれば、図2と図3の処理を組み合わせることで、前回エンジン停止時の情報を用いてより適切に今回のエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0067】
次に図5から図12では図4のS10及びS20での前回エンジン停止時における過昇温発生可能性に関する判断処理の後に、エンジン(再)始動後の過昇温発生可能性に関する判断処理を組み合わせる。
【0068】
まず図5では、図4と同じS10及びS20の処理の後に、S30でエンジンの冷却水の水温が所定値A1以上であれば(S30:YES)、S100で抑制制御を開始する。所定値A1未満であれば(S30:NO)、抑制制御を行わず図5の処理を終了する。エンジンの冷却水の水温は水温センサ23で計測すればよい。エンジン始動時におけるエンジン2の冷却水の水温が高いことは、DPF6の内部温度がエンジン停止期間中にそれほど低減していないことを示す情報である。したがって図5の処理を用いれば、適切にエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0069】
図6では、図4と同じS10及びS20の処理の後に、S35でエンジンの冷却水の水温の前回エンジン停止時の値と今回始動時の値の差(の絶対値)が所定値A2以下であれば(S35:YES)、S100で抑制制御を開始する。所定値A2より大きければ(S35:NO)、抑制制御を行わず図6の処理を終了する。エンジン2の冷却水の水温の前回エンジン停止時の値と今回始動時の値の差(の絶対値)が小さいことは、DPF6の内部温度がエンジン停止期間中にそれほど低減していないことを示す情報である。したがって図6の処理を用いれば、適切にエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0070】
図7では、図4と同じS10及びS20の処理の後に、S40でDPF6下流の排気温度が所定値A3以上であれば(S40:YES)、S100で抑制制御を開始する。所定値A3未満であれば(S35:NO)、抑制制御を行わず図7の処理を終了する。エンジン始動時にDPF6下流の排気温度が高いことは、DPF6の内部温度がエンジン停止期間中にそれほど低減していないことを示す情報である。DPF6の内部温度が高ければ当然過昇温の可能性が高まる。したがって図7の処理を用いれば、適切にエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0071】
図8では、図4と同じS10及びS20の処理の後に、S45でDPF6下流の排気温度の前回エンジン停止時の値と今回始動時の値の差(の絶対値)が所定値A4以下であれば(S45:YES)、S100で抑制制御を開始する。所定値A4より大きければ(S45:NO)、抑制制御を行わず図8の処理を終了する。DPF6下流の排気温度の前回エンジン停止時の値と今回始動時の値の差(の絶対値)が小さいことは、DPF6の内部温度がエンジン停止期間中にそれほど低減していないことを示す情報である。したがって図8の処理を用いれば、適切にエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0072】
図9では、図4と同じS10及びS20の処理の後に、S50で、エンジン停止時間、すなわち前回エンジン停止時から今回始動時までの経過時間が所定値A5以下であれば(S50:YES)、S100で抑制制御を開始する。所定値A5より大きければ(S50:NO)、抑制制御を行わず図9の処理を終了する。エンジン停止時間はタイマ72で計測すればよい。エンジン停止時間が短いことは、DPF6の内部温度がエンジン停止期間中にそれほど低減していないことを示す情報である。したがって図9の処理を用いれば、適切にエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0073】
図10では、図4と同じS10及びS20の処理の後に、S55で、吸気温度が所定値A6以上であれば(S55:YES)、S100で抑制制御を開始する。所定値A6未満であれば(S55:NO)、抑制制御を行わず図10の処理を終了する。吸気温度は吸気温度センサ33で計測すればよい。エンジン始動時に吸気温度が高いことは、DPF6の内部温度がエンジン停止期間中にそれほど低減していないことを示す情報である。したがって図10の処理を用いれば、適切にエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0074】
図11では、図4と同じS10及びS20の処理の後に、S60で吸気温度の前回エンジン停止時の値と今回始動時の値の差(の絶対値)が所定値A7以下であれば(S60:YES)、S100で抑制制御を開始する。所定値A7より大きければ(S60:NO)、抑制制御を行わず図11の処理を終了する。吸気温度の前回エンジン停止時の値と今回始動時の値の差(の絶対値)が小さいことは、DPF6の内部温度がエンジン停止期間中にそれほど低減していないことを示す情報である。したがって図11の処理を用いれば、適切にエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0075】
本実施例では上記図5から図11の処理を組み合わせてもよい。その一例が図12に示されている。図12の例では、点線で囲まれた処理群B1において、上記S30、S40、S50、S55が組み合わされている。具体的には、S30、S40、S50、S55のうちいずれかが肯定判断の場合はS100で抑制制御を開始する。S30、S40、S50、S55の全てが否定判断の場合は抑制制御を行わず図12の処理を終了する。
【0076】
図12の例に限らず、S30、S35、S40、S45、S50、S55、S60のうちから選択された複数個(2個、3個、4個、5個、6個、7個)の判定条件に対して、そのうち所定数(1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個)が肯定判断となった場合に抑制制御を開始するとしてもよい。こうした処理を用いることによって、適切に組み合わされた判定条件によりエンジン始動時の過昇温を効果的に抑制できる。
【0077】
従来技術においてはエンジン始動直後であるか否かに関係なく、DPF内部温度が高くPM堆積量が多くガス量が少ない場合はDPF6の過昇温抑制制御が必要と判定していたが、本実施例ではエンジン始動直後には上記のとおり別の判定条件を用いるので、エンジン始動後にはDPF6の内部温度推定精度が低いとの不具合に影響されずに、適切に過昇温を抑制できる。
【0078】
次に図13から図17には、エンジン2の始動時に過昇温抑制制御(抑制制御)を開始した場合に、どのような条件下で抑制制御を終了するかの処理が示されている。以下でこれらを説明する。図13から図17の処理は、抑制制御を開始すると自動的に実行されるとすればよい。
【0079】
図13の処理では、S110でDPF6下流の排気温度が所定値A8以下であれば(S110:YES)、S200で抑制制御を終了する。所定値A8より大きければ(S110:NO)、抑制制御を終了せず図13の処理を終了する。DPF6下流の排気温度が低いことは、DPF6の過昇温発生の可能性が低減したことを示す情報である。したがって図13の処理を用いれば、適切に抑制制御を終了できる。
【0080】
図14の処理では、S120で吸気量が所定値A9以上であれば(S120:YES)、S200で抑制制御を終了する。所定値A9未満であれば(S120:NO)、抑制制御を終了せず図14の処理を終了する。吸気量が大きいことは、DPF6の過昇温発生の可能性が低減したことを示す情報である。したがって図14の処理を用いれば、適切に抑制制御を終了できる。
【0081】
図15の処理では、S130でDPF6におけるPM堆積量推定値が所定値A10以下であれば(S130:YES)、S200で抑制制御を終了する。所定値A10より大きければ(S130:NO)、抑制制御を終了せず図15の処理を終了する。DPF6におけるPM堆積量が小さいことは、DPF6の過昇温発生の可能性が低減したことを示す情報である。したがって図15の処理を用いれば、適切に抑制制御を終了できる。
【0082】
本実施例では上記図13から図15の処理を組み合わせてもよい。その一例が図16に示されている。図16の例では、点線で囲まれた処理群B2において、上記S110、S120、S130が組み合わされている。具体的には、S110、S120、S130の全てが肯定判断の場合はS200で抑制制御を終了する。S110、S120、S130のうちのいずれか1つが否定判断の場合は抑制制御を終了せず図16の処理を終了する。こうした処理を用いることによって、適切に組み合わされた判定条件により抑制制御を終了できる。
【0083】
図17では、図16のB2部分に先立って手順S105で、総吸気量、すなわち今回エンジン始動後の吸気量の積算値が所定値A11以上であれば(S105:YES)、S110へ進む。所定値A11未満であれば(S105:NO)、総吸気量がA11以上になるまでS105を繰り返す。一般に総吸気量が小さい期間中は、DPF6におけるPM堆積量の推定精度や、DPF6の内部温度の推定精度が低い。したがって図17の処理を用いれば、推定精度が低い期間は終了判定を行わないので、適切に抑制制御を終了できる。
【0084】
本実施例では上記図16、17のB2部分を変更してもよい。すなわちB2部分では、S110、S120、S130のうちから選択された複数個(2個、3個)の判定条件に対して、そのうち所定数(1個、2個、3個)が肯定判断となった場合に抑制制御を終了するとしてもよい。こうした処理を用いることによって、適切に組み合わされた判定条件により抑制制御を終了できる。
【0085】
上記S130で用いるPM堆積量を推定する際には、図18に従って推定する。図18の処理は、抑制制御を開始すると自動的に実行されるとすればよい。図18では、まずS300でPM堆積量の推定値の減少を停止する。すなわち算出の結果今回の推定値が前回の推定値よりも減少していたら、今回の推定値を前回の推定値のまま据え置くように処理する。
【0086】
次にS310で、総吸気量(上述)が所定値A11以上であるか否かを判断する。所定値A11以上の場合(S310:YES)、S320に進み、所定値A11未満であれば(S310:NO)、総吸気量がA11以上になるまでS310を繰り返す。S320では、S310で設定した減少停止を解除する。図18の処理は図15から17の処理と平行して実行すればよい。上述のとおり、総吸気量が小さい期間中は、DPF6における内部温度の推定精度が低い。したがって図18の処理を用いれば、推定精度が低い期間に推定して、誤ってPM堆積量を真値よりも低く推定する可能性が低減するので、高精度な推定値を用いて適切に抑制制御を終了できる。
【0087】
以上のとおり本実施例では図13から図18に示された処理手順によってエンジン始動後における抑制制御の終了判定を行う。従来技術では、抑制制御の終了判定においても、単に、DPF6の内部温度が低い、あるいはDPF6におけるPM堆積量が少ない、といった判定条件を用いていたが、その場合、エンジン始動後にはDPF6の内部温度やPM堆積量の推定精度が低いことの影響で終了判定の精度が低かった。しかし本実施例では上記のとおりこうした不具合が回避されている。
【0088】
上記実施例におけるS100の手順とECU7とが制御手段を構成する。S10からS60の各手順とECU7とが判定手段、再始動時判定手段を構成する。S105からS130の各手順とECU7とが終了判定手段を構成する。なお上記実施例ではエンジン2をディーゼルエンジンとしたが、これを例えばリーンバーンガソリンエンジンに変更しても上記と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0089】
1 排気浄化装置
2 ディーゼルエンジン(内燃機関)
4 排気管(排気通路)
6 ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF、フィルタ)
7 電子制御装置(ECU)
23 水温センサ
41、42 酸素温度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、環境保護意識の高まりのなかで内燃機関に対してすぐれた排気浄化性能が求められている。特にディーゼルエンジンにおいては、エンジンから排出される黒煙などのいわゆる排気微粒子(粒子状物質、PM:Particulate Matter)の除去が重要である。この目的のために排気管の途中にディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)が装備されることが多い。
【0003】
DPFがPMを捕集することにより排気中のPMは大部分が除去されるが、DPF内にPMが堆積し続ける一方では、DPFは目詰まりを起こしてしまうので、堆積されたPMを燃焼して除去することで、DPFを再生する必要がある。DPF内に堆積したPMを燃焼するためにシリンダ内でメイン噴射後に燃料を噴射するポスト噴射などの手法が用いられる。
【0004】
しかしDPF再生時(あるいはDPFでPMが自然に燃焼した場合)に温度が上がり過ぎると、DPFが溶損したり割れたりするなどの不具合が生じてしまう。例えば、DPFの再生中でDPFの温度が高く、かつDPFにおけるPMの堆積量が多い状況下で、エンジンを減速状態にすると、吸気量が急速に低減するので、DPF内部の熱が排ガスによって下流に移動されなくなる。したがってDPF内部に熱がこもってしまうこととなり、DPFの過昇温の可能性が高くなる。
【0005】
例えば下記特許文献1では、DPF過昇温の可能性がある場合(排気温度が高く、減速運転状態)に、吸気絞り弁を絞るとともにEGR弁を全開にすることで排気中の酸素濃度を低減してDPFにおけるPMの燃焼を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−188493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、過昇温抑制制御の要否判定条件として、DPFの内部温度が所定値以上で、DPFにおけるPMの堆積量が所定値以上であるとの条件を用いることが一般的であった。しかし一般にエンジンの始動時にはDPFの内部温度の推定精度が高くない。したがって上記判定条件を用いる場合、エンジンの始動時には要否判定の精度が低くなり、それによりエンジン始動直後に過昇温を発生させてしまう可能性がある。このようにエンジン始動時の過昇温抑制は、それ以外のときの過昇温抑制とは異なる注意を要するが、従来技術ではこの点が考慮されていない。
【0008】
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、DPFの過昇温の可能性があると判定されたら過昇温抑制制御を実行する排気浄化装置において、エンジン始動時にも適切に過昇温抑制制御の要否判定ができる内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関の排気通路に配置されて粒子状物質を捕集するフィルタと、そのフィルタの過昇温を抑制する抑制制御を実行する制御手段と、その制御手段による前記抑制制御を実行するか否かを判定する判定手段と、を備え、前記判定手段は、前記内燃機関の再始動時に前記抑制制御を実行するか否かを判定する再始動時判定手段を備え、その再始動時判定手段が前記再始動時に前記抑制制御を実行すべきであると判定する判定条件には、前記内燃機関の前回作動停止時において過昇温の発生可能性があったとの第1の条件が含まれることを特徴とする。
【0010】
これにより本発明に係る内燃機関の排気浄化装置では、粒子状物質を捕集するフィルタの過昇温を抑制する抑制制御を実行するか否かを判定する判定手段として、内燃機関の再始動時の判定手段を特に備えて、内燃機関の前回作動停止時において過昇温の発生可能性があったとの条件が、再始動時の過昇温抑制制御実行の判定条件に含まれるとするので、内燃機関の再始動時における過昇温の発生に特に留意して、前回作動停止時において過昇温の発生可能性があったとの情報を適切に利用して今回の始動時の過昇温発生を判定する。したがって適切に内燃機関再始動時の過昇温が抑制できる。
【0011】
また前記第1の条件には、前記内燃機関の前回作動停止時において前記制御手段による過昇温抑制制御を実行していたことが含まれるとしてもよい。
【0012】
これにより内燃機関の前回作動停止時において前記制御手段による過昇温抑制制御を実行していたとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に前回作動停止時に過昇温抑制制御を実行していたことは、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0013】
また前記第1の条件には、前記内燃機関の前回作動停止時において前記フィルタの流入するガス量が所定値よりも小さい場合には過昇温が発生する状態にあったことが含まれるとしてもよい。
【0014】
これにより前記内燃機関の前回作動停止時においてフィルタの流入するガス量が所定値よりも小さい場合には過昇温が発生する状態にあったとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に前回作動停止時においてフィルタの流入するガス量が所定値よりも小さい場合には過昇温が発生する状態にあったことは、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0015】
また前記再始動時判定手段が前記再始動時に前記抑制制御を実行すべきであると判定する条件には、前記内燃機関の前回作動停止から再始動までにおける前記フィルタの内部温度の低減が小さいとの第2の条件が含まれるとしてもよい。
【0016】
これにより内燃機関の前回作動停止から再始動までにおける前記フィルタの内部温度の低減が小さいとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に内燃機関の前回作動停止から再始動までにおける前記フィルタの内部温度の低減が小さいことは、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0017】
また前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時における前記内燃機関の冷却水の水温が所定値よりも高いことが含まれるとしてもよい。
【0018】
これにより内燃機関の再始動時における前記内燃機関の冷却水の水温が所定値よりも高いとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定できる。一般に内燃機関の再始動時における内燃機関の冷却水の水温が所定値よりも高いことは、内燃機関停止時におけるフィルタの内部温度の低減が小さいことを意味するので、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0019】
また前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における前記内燃機関の冷却水の水温の差分値が所定値よりも小さいことが含まれるとしてもよい。
【0020】
これにより内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における前記内燃機関の冷却水の水温の差分値が所定値よりも小さいとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における前記内燃機関の冷却水の水温の差分値が所定値よりも小さいことは、内燃機関停止時におけるフィルタの内部温度の低減が小さいことを意味するので、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0021】
また前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時における前記フィルタの下流排気温度が所定値よりも高いことが含まれるとしてもよい。
【0022】
これにより内燃機関の再始動時におけるフィルタの下流排気温度が所定値よりも高いとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に内燃機関の再始動時におけるフィルタの下流排気温度が所定値よりも高いことは、内燃機関停止時におけるフィルタの内部温度の低減が小さいことを意味するので、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0023】
また前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における前記フィルタの下流排気温度の差分値が所定値よりも小さいことが含まれるとしてもよい。
【0024】
これにより内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における前記フィルタの下流排気温度の差分値が所定値よりも小さいとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における前記フィルタの下流排気温度の差分値が所定値よりも小さいことは、内燃機関停止時におけるフィルタの内部温度の低減が小さいことを意味するので、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0025】
また前記第2の条件には、前記内燃機関の作動停止期間が所定値よりも短いことが含まれるとしてもよい。
【0026】
これにより内燃機関の作動停止期間が所定値よりも短いとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に内燃機関の作動停止期間が所定値よりも短いことは、内燃機関停止時におけるフィルタの内部温度の低減が小さいことを意味するので、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0027】
また前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時における吸気温が所定値よりも高いことが含まれるとしてもよい。
【0028】
これにより内燃機関の再始動時における吸気温が所定値よりも高いとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に内燃機関の再始動時における吸気温が所定値よりも高いことは、内燃機関停止時におけるフィルタの内部温度の低減が小さいことを意味するので、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0029】
また前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における吸気温の差分値が所定値よりも小さいことが含まれるとしてもよい。
【0030】
これにより内燃機関の再始動時と、内燃機関の前回作動停止時と、における吸気温の差分値が所定値よりも小さいとの情報を利用して、今回の始動時の過昇温発生を判定する。一般に内燃機関の再始動時と、内燃機関の前回作動停止時と、における吸気温の差分値が所定値よりも小さいことは、内燃機関停止時におけるフィルタの内部温度の低減が小さいことを意味するので、今回始動時の過昇温発生の可能性を高める情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に始動時の過昇温発生を抑制できる。
【0031】
また前記再始動時判定手段は、前記抑制制御を終了すべきか否かを判定する終了判定手段を備えたとしてもよい。
【0032】
これによりエンジン始動時における過昇温抑制制御の要否を判定する手段のみではなく、その抑制制御の終了を判定する手段も備えるので、エンジン始動時の過昇温抑制制御の開始と終了を適切に制御できる排気浄化装置が実現できる。
【0033】
また前記フィルタの内部温度を推定する第1推定手段を備え、前記終了判定手段が前記抑制制御を終了すべきと判定する判定条件には、前記第1推定手段による推定値が所定値よりも低いことが含まれるとしてもよい。
【0034】
これによりフィルタの内部温度の推定値が所定値よりも低いとの情報を利用して、過昇温抑制制御の終了を判定する。一般にフィルタの内部温度の推定値が所定値よりも低いことは、過昇温発生の可能性に影響を及ぼす情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に過昇温抑制制御を終了できる。
【0035】
また前記終了判定手段が前記抑制制御を終了すべきと判定する判定条件には、前記フィルタに流入するガス量が所定値よりも多いことが含まれるとしてもよい。
【0036】
これによりフィルタに流入するガス量が所定値よりも多いとの情報を利用して、過昇温抑制制御の終了を判定する。一般にフィルタに流入するガス量が所定値よりも多いことは、過昇温発生の可能性に影響を及ぼす情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に過昇温抑制制御を終了できる。
【0037】
また前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量を推定する第2推定手段を備え、前記終了判定手段が前記抑制制御を終了すべきと判定する判定条件には、前記第2推定手段による推定値が所定値よりも少ないことが含まれるとしてもよい。
【0038】
これによりフィルタにおける粒子状物質の堆積量の推定値が所定値よりも少ないとの情報を利用して、過昇温抑制制御の終了を判定する。一般にフィルタにおける粒子状物質の堆積量の推定値が所定値よりも少ないことは、過昇温発生の可能性に影響を及ぼす情報である。したがって有用な情報を利用して、適切に過昇温抑制制御を終了できる。
【0039】
また前記フィルタに流入するガス量を検出する検出手段を備え、前記第2推定手段は、前記検出手段により検出されたガス量の内燃機関の再始動後の積算値が所定値よりも小さい場合は、前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量の推定値を減少させないとしてもよい。
【0040】
これにより、内燃機関再始動後におけるフィルタに流入するガス量の積算値が小さい期間は堆積量推定値を減少させないようにする。したがって、一般に内燃機関始動直後にはフィルタ内部温度の推定精度が低いが、そうした推定精度が低い期間に堆積量の減少量を多く見積もる誤差が入り込むことが抑制できる。
【0041】
また前記フィルタに流入するガス量を検出する検出手段を備え、前記終了判定手段は、前記検出手段により検出されたガス量の内燃機関の再始動後の積算値が所定値よりも小さい場合は、前記抑制制御の終了判定を行わないとしてもよい。
【0042】
これにより内燃機関再始動後におけるフィルタに流入するガス量の積算値が小さい期間は抑制制御の終了判定を行わないようにする。したがって、一般に内燃機関始動直後にはフィルタ内部温度の推定精度が低いが、そうした推定精度が低い期間に、誤差を含んだ推定値を用いて誤って抑制制御を終了させることが抑制できる。
【0043】
また前記制御手段による前記フィルタの過昇温抑制のための方法には、前記フィルタに流入するガス量を増加させる第1の方法と、前記フィルタに流入するガスの酸素濃度を低減させる第2の方法と、が含まれ、前記制御手段は、内燃機関の再始動後の過昇温抑制制御で用いる方法と、それ以外での過昇温抑制制御で用いる方法とで、一方が前記第1の方法であり他方が前記第2の方法であることを許容するとしてもよい。
【0044】
これにより内燃機関の再始動後の過昇温抑制制御で用いる方法と、それ以外での過昇温抑制制御で用いる方法とを、ガス量を増加させる方法と、ガスの酸素濃度を低減させる方法と、の間から自由に選択できるので、柔軟に選択して効果的に過昇温が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明における内燃機関の排気浄化装置の実施例における構成図。
【図2】第1の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図3】第2の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図4】第3の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図5】第4の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図6】第5の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図7】第6の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図8】第7の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図9】第8の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図10】第9の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図11】第10の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図12】第11の過昇温抑制処理手順を示すフローチャート。
【図13】第1の抑制制御終了処理手順を示すフローチャート。
【図14】第2の抑制制御終了処理手順を示すフローチャート。
【図15】第3の抑制制御終了処理手順を示すフローチャート。
【図16】第4の抑制制御終了処理手順を示すフローチャート。
【図17】第5の抑制制御終了処理手順を示すフローチャート。
【図18】PM堆積量推定における減少停止手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。まず図1は、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置1の実施例における装置構成を示している。
【0047】
排気浄化装置1は、4気筒のディーゼルエンジン2(以下では単にエンジンと称する)に対して構成されている。エンジン2及び排気浄化装置1は、吸気管3、排気管4、EGR管5を備える。排気管4には上流側から酸化触媒8(DOC:Diesel Oxicidation Catalyst)、DPF6が配置されている。エンジン2及び排気浄化装置1は自動車に搭載されているとすればよい。
【0048】
吸気管3を通じてエンジン2に空気(吸気)が供給される。吸気管3にはエアフロメータ31、吸気スロットル32、吸気温度センサ33が配置されている。エアフロメータ31は吸気量を計測する。ここでの吸気量は例えば単位時間当たりの質量流量とすればよい。また吸気スロットル32の開度が調節されることによってエンジン2に供給される吸気量が増減する。吸気温度センサ33で吸気の温度が計測される。
【0049】
エンジン2にはインジェクタ21、エンジン回転数センサ22が装備されている。インジェクタ21からの噴射によってシリンダ内に燃料が供給される。エンジン回転数センサ22によってエンジン2の(単位時間あたりの)回転数が計測される。エンジン回転数センサ22は、例えばエンジン2から連結されたクランクの回転角度を計測するクランク角センサとして、その検出値がECU7へ送られてエンジンの回転数が算出されるとすればよい。また水温センサ23によってエンジン2の冷却水の温度が計測される。
【0050】
DPF6は、例えば代表的な構造として、いわゆるハニカム構造において入口側と出口側を交互に目詰めした構造とすればよい。エンジン2の運転中に排出される排気にはPM(粒子状物質)が含まれ、このPMはDPF6の上記構造のDPF壁を排気が通過するときに、このDPF壁の内部あるいは表面に捕集される。なおDPF6は酸化触媒が担持された酸化触媒付きDPFとすればよい。
【0051】
DOC6には酸化触媒が担持されている。排気管4には、DOC8とDPF6の間に、A/F値(空燃比)を計測するA/Fセンサ40、排気の温度を検出する排気温センサ41が装備されている。またDPF6の下流にも排気温センサ42が装備されている。
【0052】
EGR管5は、排気管4から吸気管3への排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)を行うために装備されている。EGR管5にはEGRバルブ51が装備されている。EGRバルブ51の開閉によって排気の還流量が調節される。なお本実施例ではEGR管5を装備しないとしてもよく、あるいはDPF6の過昇温抑制制御として排気中の酸素濃度を低減する場合に、EGR管5による排気還流量も増加させるとしてもよい。
【0053】
上で述べたエアフロメータ31、エンジン回転数センサ22、水温センサ23、A/Fセンサ40、排気温センサ41、42の計測値は電子制御装置7(ECU:Electronic Control Unit)へ送られる。以下の説明で登場する各種の数値は、明示がない場合上記説明のとおり、これらのセンサによって計測されるとすればよい。
【0054】
またECU7によって、インジェクタ21によるエンジン2への燃料噴射のタイミングや噴射量、吸気スロットル32とEGRバルブ51との開度が調節、制御される。ECU7は通常のコンピュータと同様の構造を有するとして、各種演算をおこなうCPUや各種情報の記憶を行うメモリ71を有するとすればよい。またECU7は計時機能を有するタイマ72を備えるとする。
【0055】
DPF6に堆積したPMの堆積量が十分大きくなった度ごとに、堆積したPMを燃焼することによって除去し、DPF6を再生する。PMの堆積量を推定する方法は例えば、エンジン2からの時々刻々の(単位時間あたりの)PM排出量と、DPF6における時々刻々のPM燃焼量との差分を積算していく履歴式の推定方法を用いればよい。
【0056】
その際、エンジン2からの時々刻々のPM排出量は、エンジン2の運転条件とPM排出量との関係を示すマップをメモリ71に記憶しておいて、それを用いればよい。エンジン2の運転条件、すなわちエンジン回転数と負荷とはそれぞれ、例えばエンジン回転数センサ22の計測値とインジェクタ21への噴射量指令値とすればよい。DPF6における時々刻々のPM燃焼量は、DPF内部温度とDPF6におけるPM燃焼量との関係を示すマップをメモリ71に記憶しておいて、それを用いればよい。DPF内部温度は、排気温センサ42の計測値で置き換えてもよく、排気温センサ42(あるいは41も)から内部温度推定モデルを用いて推定してもよい。
【0057】
DPF6の再生方法としては例えば、インジェクタ21からメイン噴射後のタイミングで燃料を噴射するポスト噴射を実行する。ポスト噴射により筒内に噴射されて未燃のまま排気管4に排出された未燃燃料が、DOC8あるいはDPF6に達して、DOC8あるいはDPF6に担持された触媒の作用で昇温して、DPF6に堆積したPMを燃焼させる。
【0058】
本実施例では、こうした装置構成のもとで、DPF6の過昇温抑制に関しては、基本的には、DPF6の内部温度が高く、かつDPF6におけるPM堆積量が多く、DPF6に流入するガス量が少ない場合に過昇温抑制制御が必要だと判定する。しかし上述のとおりエンジン2の始動直後はDPF6の内部温度の推定精度が低いので、別の判定条件を用いる。それを以下で説明する。
【0059】
図2から図18に本実施例におけるエンジン2の始動後の過昇温抑制処理の処理手順が示されている。以下でこれらを説明するが、図2から図18で同一内容の処理は同一符号を付すとし、同じ説明は繰り返さないとする。なお図2から図18の処理手順はプログラム化されてメモリ71に記憶しておき、ECU7が呼び出して自動的に実行するようにすればよい。
【0060】
図2から図12までは、エンジン2の始動時にどのような条件が満たされれば過昇温抑制制御を実行するかに関係するフローチャートである。図2から図12の処理は、エンジン2を始動すると自動的に実行開始されるとすればよい。
【0061】
図2の処理ではエンジン始動後に手順S10で、前回のエンジン停止時に過昇温抑制制御(抑制制御)を実行中であったか否かを判断する。前回エンジン停止時に抑制制御実行中であったか否かの情報は例えばメモリ71に記憶しておけばよい。前回エンジン停止時に過昇温抑制制御(抑制制御)を実行中であった場合(S10:YES)は、S100に進み、ただちに抑制制御を開始する。前回エンジン停止時に過昇温抑制制御(抑制制御)を実行中でなかった場合(S10:NO)は抑制制御を行わず図2の処理を終了する。
【0062】
S100における過昇温抑制制御は、具体的には以下の2手法のいずれかを採用すればよい。1つの手法は、DPF6に流入するガス量を増加させることである。これによってDPF6の熱を効率的に下流に持ち去って過昇温を抑制する。
【0063】
もう1つの手法は、DPF6に流入するガス中の酸素濃度を低減することである。これによりDPF6における燃焼反応を抑えることで過昇温を抑制する。前回エンジン停止時に抑制制御を実行中であった場合、今回のエンジン始動時にも過昇温発生の可能性があるとみなせるので、図2の処理を用いると、前回エンジン停止時の情報を用いて適切に今回のエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0064】
次に図3の処理では、エンジン始動後に手順S10で、前回のエンジン停止時に吸気量が少なければ過昇温が発生する状態にあったか否かを判断する。その状態にあったか否かの情報は例えばメモリ71に記憶しておけばよい。前回エンジン停止時に吸気量が少なければ過昇温が発生する状態にあった場合(S20:YES)は、S100に進み、ただちに抑制制御を開始する。
【0065】
前回エンジン停止時に吸気量が少なければ過昇温が発生する状態になかった場合(S20:NO)は抑制制御を行わず図3の処理を終了する。前回エンジン停止時に吸気量が少なければ過昇温が発生する状態にあった場合、今回のエンジン始動時にも過昇温発生の可能性があるとみなせるので、図3の処理を用いると、前回エンジン停止時の情報を用いて適切に今回のエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0066】
次に図4の処理では、図2と図3の処理を組み合わせる。すなわち前回エンジン停止時に過昇温抑制制御(抑制制御)を実行中であった場合(S10:YES)または前回エンジン停止時に吸気量が少なければ過昇温が発生する状態にあった場合(S20:YES)には、S100に進み、ただちに抑制制御を開始し、それ以外の場合では抑制制御を行わない。図4の処理を用いれば、図2と図3の処理を組み合わせることで、前回エンジン停止時の情報を用いてより適切に今回のエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0067】
次に図5から図12では図4のS10及びS20での前回エンジン停止時における過昇温発生可能性に関する判断処理の後に、エンジン(再)始動後の過昇温発生可能性に関する判断処理を組み合わせる。
【0068】
まず図5では、図4と同じS10及びS20の処理の後に、S30でエンジンの冷却水の水温が所定値A1以上であれば(S30:YES)、S100で抑制制御を開始する。所定値A1未満であれば(S30:NO)、抑制制御を行わず図5の処理を終了する。エンジンの冷却水の水温は水温センサ23で計測すればよい。エンジン始動時におけるエンジン2の冷却水の水温が高いことは、DPF6の内部温度がエンジン停止期間中にそれほど低減していないことを示す情報である。したがって図5の処理を用いれば、適切にエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0069】
図6では、図4と同じS10及びS20の処理の後に、S35でエンジンの冷却水の水温の前回エンジン停止時の値と今回始動時の値の差(の絶対値)が所定値A2以下であれば(S35:YES)、S100で抑制制御を開始する。所定値A2より大きければ(S35:NO)、抑制制御を行わず図6の処理を終了する。エンジン2の冷却水の水温の前回エンジン停止時の値と今回始動時の値の差(の絶対値)が小さいことは、DPF6の内部温度がエンジン停止期間中にそれほど低減していないことを示す情報である。したがって図6の処理を用いれば、適切にエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0070】
図7では、図4と同じS10及びS20の処理の後に、S40でDPF6下流の排気温度が所定値A3以上であれば(S40:YES)、S100で抑制制御を開始する。所定値A3未満であれば(S35:NO)、抑制制御を行わず図7の処理を終了する。エンジン始動時にDPF6下流の排気温度が高いことは、DPF6の内部温度がエンジン停止期間中にそれほど低減していないことを示す情報である。DPF6の内部温度が高ければ当然過昇温の可能性が高まる。したがって図7の処理を用いれば、適切にエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0071】
図8では、図4と同じS10及びS20の処理の後に、S45でDPF6下流の排気温度の前回エンジン停止時の値と今回始動時の値の差(の絶対値)が所定値A4以下であれば(S45:YES)、S100で抑制制御を開始する。所定値A4より大きければ(S45:NO)、抑制制御を行わず図8の処理を終了する。DPF6下流の排気温度の前回エンジン停止時の値と今回始動時の値の差(の絶対値)が小さいことは、DPF6の内部温度がエンジン停止期間中にそれほど低減していないことを示す情報である。したがって図8の処理を用いれば、適切にエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0072】
図9では、図4と同じS10及びS20の処理の後に、S50で、エンジン停止時間、すなわち前回エンジン停止時から今回始動時までの経過時間が所定値A5以下であれば(S50:YES)、S100で抑制制御を開始する。所定値A5より大きければ(S50:NO)、抑制制御を行わず図9の処理を終了する。エンジン停止時間はタイマ72で計測すればよい。エンジン停止時間が短いことは、DPF6の内部温度がエンジン停止期間中にそれほど低減していないことを示す情報である。したがって図9の処理を用いれば、適切にエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0073】
図10では、図4と同じS10及びS20の処理の後に、S55で、吸気温度が所定値A6以上であれば(S55:YES)、S100で抑制制御を開始する。所定値A6未満であれば(S55:NO)、抑制制御を行わず図10の処理を終了する。吸気温度は吸気温度センサ33で計測すればよい。エンジン始動時に吸気温度が高いことは、DPF6の内部温度がエンジン停止期間中にそれほど低減していないことを示す情報である。したがって図10の処理を用いれば、適切にエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0074】
図11では、図4と同じS10及びS20の処理の後に、S60で吸気温度の前回エンジン停止時の値と今回始動時の値の差(の絶対値)が所定値A7以下であれば(S60:YES)、S100で抑制制御を開始する。所定値A7より大きければ(S60:NO)、抑制制御を行わず図11の処理を終了する。吸気温度の前回エンジン停止時の値と今回始動時の値の差(の絶対値)が小さいことは、DPF6の内部温度がエンジン停止期間中にそれほど低減していないことを示す情報である。したがって図11の処理を用いれば、適切にエンジン始動時の過昇温が抑制できる。
【0075】
本実施例では上記図5から図11の処理を組み合わせてもよい。その一例が図12に示されている。図12の例では、点線で囲まれた処理群B1において、上記S30、S40、S50、S55が組み合わされている。具体的には、S30、S40、S50、S55のうちいずれかが肯定判断の場合はS100で抑制制御を開始する。S30、S40、S50、S55の全てが否定判断の場合は抑制制御を行わず図12の処理を終了する。
【0076】
図12の例に限らず、S30、S35、S40、S45、S50、S55、S60のうちから選択された複数個(2個、3個、4個、5個、6個、7個)の判定条件に対して、そのうち所定数(1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個)が肯定判断となった場合に抑制制御を開始するとしてもよい。こうした処理を用いることによって、適切に組み合わされた判定条件によりエンジン始動時の過昇温を効果的に抑制できる。
【0077】
従来技術においてはエンジン始動直後であるか否かに関係なく、DPF内部温度が高くPM堆積量が多くガス量が少ない場合はDPF6の過昇温抑制制御が必要と判定していたが、本実施例ではエンジン始動直後には上記のとおり別の判定条件を用いるので、エンジン始動後にはDPF6の内部温度推定精度が低いとの不具合に影響されずに、適切に過昇温を抑制できる。
【0078】
次に図13から図17には、エンジン2の始動時に過昇温抑制制御(抑制制御)を開始した場合に、どのような条件下で抑制制御を終了するかの処理が示されている。以下でこれらを説明する。図13から図17の処理は、抑制制御を開始すると自動的に実行されるとすればよい。
【0079】
図13の処理では、S110でDPF6下流の排気温度が所定値A8以下であれば(S110:YES)、S200で抑制制御を終了する。所定値A8より大きければ(S110:NO)、抑制制御を終了せず図13の処理を終了する。DPF6下流の排気温度が低いことは、DPF6の過昇温発生の可能性が低減したことを示す情報である。したがって図13の処理を用いれば、適切に抑制制御を終了できる。
【0080】
図14の処理では、S120で吸気量が所定値A9以上であれば(S120:YES)、S200で抑制制御を終了する。所定値A9未満であれば(S120:NO)、抑制制御を終了せず図14の処理を終了する。吸気量が大きいことは、DPF6の過昇温発生の可能性が低減したことを示す情報である。したがって図14の処理を用いれば、適切に抑制制御を終了できる。
【0081】
図15の処理では、S130でDPF6におけるPM堆積量推定値が所定値A10以下であれば(S130:YES)、S200で抑制制御を終了する。所定値A10より大きければ(S130:NO)、抑制制御を終了せず図15の処理を終了する。DPF6におけるPM堆積量が小さいことは、DPF6の過昇温発生の可能性が低減したことを示す情報である。したがって図15の処理を用いれば、適切に抑制制御を終了できる。
【0082】
本実施例では上記図13から図15の処理を組み合わせてもよい。その一例が図16に示されている。図16の例では、点線で囲まれた処理群B2において、上記S110、S120、S130が組み合わされている。具体的には、S110、S120、S130の全てが肯定判断の場合はS200で抑制制御を終了する。S110、S120、S130のうちのいずれか1つが否定判断の場合は抑制制御を終了せず図16の処理を終了する。こうした処理を用いることによって、適切に組み合わされた判定条件により抑制制御を終了できる。
【0083】
図17では、図16のB2部分に先立って手順S105で、総吸気量、すなわち今回エンジン始動後の吸気量の積算値が所定値A11以上であれば(S105:YES)、S110へ進む。所定値A11未満であれば(S105:NO)、総吸気量がA11以上になるまでS105を繰り返す。一般に総吸気量が小さい期間中は、DPF6におけるPM堆積量の推定精度や、DPF6の内部温度の推定精度が低い。したがって図17の処理を用いれば、推定精度が低い期間は終了判定を行わないので、適切に抑制制御を終了できる。
【0084】
本実施例では上記図16、17のB2部分を変更してもよい。すなわちB2部分では、S110、S120、S130のうちから選択された複数個(2個、3個)の判定条件に対して、そのうち所定数(1個、2個、3個)が肯定判断となった場合に抑制制御を終了するとしてもよい。こうした処理を用いることによって、適切に組み合わされた判定条件により抑制制御を終了できる。
【0085】
上記S130で用いるPM堆積量を推定する際には、図18に従って推定する。図18の処理は、抑制制御を開始すると自動的に実行されるとすればよい。図18では、まずS300でPM堆積量の推定値の減少を停止する。すなわち算出の結果今回の推定値が前回の推定値よりも減少していたら、今回の推定値を前回の推定値のまま据え置くように処理する。
【0086】
次にS310で、総吸気量(上述)が所定値A11以上であるか否かを判断する。所定値A11以上の場合(S310:YES)、S320に進み、所定値A11未満であれば(S310:NO)、総吸気量がA11以上になるまでS310を繰り返す。S320では、S310で設定した減少停止を解除する。図18の処理は図15から17の処理と平行して実行すればよい。上述のとおり、総吸気量が小さい期間中は、DPF6における内部温度の推定精度が低い。したがって図18の処理を用いれば、推定精度が低い期間に推定して、誤ってPM堆積量を真値よりも低く推定する可能性が低減するので、高精度な推定値を用いて適切に抑制制御を終了できる。
【0087】
以上のとおり本実施例では図13から図18に示された処理手順によってエンジン始動後における抑制制御の終了判定を行う。従来技術では、抑制制御の終了判定においても、単に、DPF6の内部温度が低い、あるいはDPF6におけるPM堆積量が少ない、といった判定条件を用いていたが、その場合、エンジン始動後にはDPF6の内部温度やPM堆積量の推定精度が低いことの影響で終了判定の精度が低かった。しかし本実施例では上記のとおりこうした不具合が回避されている。
【0088】
上記実施例におけるS100の手順とECU7とが制御手段を構成する。S10からS60の各手順とECU7とが判定手段、再始動時判定手段を構成する。S105からS130の各手順とECU7とが終了判定手段を構成する。なお上記実施例ではエンジン2をディーゼルエンジンとしたが、これを例えばリーンバーンガソリンエンジンに変更しても上記と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0089】
1 排気浄化装置
2 ディーゼルエンジン(内燃機関)
4 排気管(排気通路)
6 ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF、フィルタ)
7 電子制御装置(ECU)
23 水温センサ
41、42 酸素温度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配置されて粒子状物質を捕集するフィルタと、
そのフィルタの過昇温を抑制する抑制制御を実行する制御手段と、
その制御手段による前記抑制制御を実行するか否かを判定する判定手段と、を備え、
前記判定手段は、前記内燃機関の再始動時に前記抑制制御を実行するか否かを判定する再始動時判定手段を備え、
その再始動時判定手段が前記再始動時に前記抑制制御を実行すべきであると判定する判定条件には、前記内燃機関の前回作動停止時において過昇温の発生可能性があったとの第1の条件が含まれることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記第1の条件には、前記内燃機関の前回作動停止時において前記制御手段による過昇温抑制制御を実行していたことが含まれる請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記第1の条件には、前記内燃機関の前回作動停止時において前記フィルタの流入するガス量が所定値よりも小さい場合には過昇温が発生する状態にあったことが含まれる請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記再始動時判定手段が前記再始動時に前記抑制制御を実行すべきであると判定する条件には、前記内燃機関の前回作動停止から再始動までにおける前記フィルタの内部温度の低減が小さいとの第2の条件が含まれる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時における前記内燃機関の冷却水の水温が所定値よりも高いことが含まれる請求項4に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における前記内燃機関の冷却水の水温の差分値が所定値よりも小さいことが含まれる請求項4又は5に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時における前記フィルタの下流排気温度が所定値よりも高いことが含まれる請求項4ないし6のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における前記フィルタの下流排気温度の差分値が所定値よりも小さいことが含まれる請求項4ないし7のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項9】
前記第2の条件には、前記内燃機関の作動停止期間が所定値よりも短いことが含まれる請求項4ないし8のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項10】
前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時における吸気温が所定値よりも高いことが含まれる請求項4ないし9のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項11】
前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における吸気温の差分値が所定値よりも小さいことが含まれる請求項4ないし10のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項12】
前記再始動時判定手段は、前記抑制制御を終了すべきか否かを判定する終了判定手段を備えた請求項1ないし11のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項13】
前記フィルタの内部温度を推定する第1推定手段を備え、
前記終了判定手段が前記抑制制御を終了すべきと判定する判定条件には、前記第1推定手段による推定値が所定値よりも低いことが含まれる請求項12に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項14】
前記終了判定手段が前記抑制制御を終了すべきと判定する判定条件には、前記フィルタに流入するガス量が所定値よりも多いことが含まれる請求項12又は13に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項15】
前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量を推定する第2推定手段を備え、
前記終了判定手段が前記抑制制御を終了すべきと判定する判定条件には、前記第2推定手段による推定値が所定値よりも少ないことが含まれる請求項12ないし14のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項16】
前記フィルタに流入するガス量を検出する検出手段を備え、
前記第2推定手段は、前記検出手段により検出されたガス量の内燃機関の再始動後の積算値が所定値よりも小さい場合は、前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量の推定値を減少させない請求項15に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項17】
前記フィルタに流入するガス量を検出する検出手段を備え、
前記終了判定手段は、前記検出手段により検出されたガス量の内燃機関の再始動後の積算値が所定値よりも小さい場合は、前記抑制制御の終了判定を行わない請求項13乃至16のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項18】
前記制御手段による前記フィルタの過昇温抑制のための方法には、前記フィルタに流入するガス量を増加させる第1の方法と、前記フィルタに流入するガスの酸素濃度を低減させる第2の方法と、が含まれ、
前記制御手段は、内燃機関の再始動後の過昇温抑制制御で用いる方法と、それ以外での過昇温抑制制御で用いる方法とで、一方が前記第1の方法であり他方が前記第2の方法であることを許容する請求項1ないし17のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配置されて粒子状物質を捕集するフィルタと、
そのフィルタの過昇温を抑制する抑制制御を実行する制御手段と、
その制御手段による前記抑制制御を実行するか否かを判定する判定手段と、を備え、
前記判定手段は、前記内燃機関の再始動時に前記抑制制御を実行するか否かを判定する再始動時判定手段を備え、
その再始動時判定手段が前記再始動時に前記抑制制御を実行すべきであると判定する判定条件には、前記内燃機関の前回作動停止時において過昇温の発生可能性があったとの第1の条件が含まれることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記第1の条件には、前記内燃機関の前回作動停止時において前記制御手段による過昇温抑制制御を実行していたことが含まれる請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記第1の条件には、前記内燃機関の前回作動停止時において前記フィルタの流入するガス量が所定値よりも小さい場合には過昇温が発生する状態にあったことが含まれる請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記再始動時判定手段が前記再始動時に前記抑制制御を実行すべきであると判定する条件には、前記内燃機関の前回作動停止から再始動までにおける前記フィルタの内部温度の低減が小さいとの第2の条件が含まれる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時における前記内燃機関の冷却水の水温が所定値よりも高いことが含まれる請求項4に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における前記内燃機関の冷却水の水温の差分値が所定値よりも小さいことが含まれる請求項4又は5に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時における前記フィルタの下流排気温度が所定値よりも高いことが含まれる請求項4ないし6のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における前記フィルタの下流排気温度の差分値が所定値よりも小さいことが含まれる請求項4ないし7のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項9】
前記第2の条件には、前記内燃機関の作動停止期間が所定値よりも短いことが含まれる請求項4ないし8のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項10】
前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時における吸気温が所定値よりも高いことが含まれる請求項4ないし9のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項11】
前記第2の条件には、前記内燃機関の再始動時と、前記内燃機関の前回作動停止時と、における吸気温の差分値が所定値よりも小さいことが含まれる請求項4ないし10のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項12】
前記再始動時判定手段は、前記抑制制御を終了すべきか否かを判定する終了判定手段を備えた請求項1ないし11のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項13】
前記フィルタの内部温度を推定する第1推定手段を備え、
前記終了判定手段が前記抑制制御を終了すべきと判定する判定条件には、前記第1推定手段による推定値が所定値よりも低いことが含まれる請求項12に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項14】
前記終了判定手段が前記抑制制御を終了すべきと判定する判定条件には、前記フィルタに流入するガス量が所定値よりも多いことが含まれる請求項12又は13に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項15】
前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量を推定する第2推定手段を備え、
前記終了判定手段が前記抑制制御を終了すべきと判定する判定条件には、前記第2推定手段による推定値が所定値よりも少ないことが含まれる請求項12ないし14のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項16】
前記フィルタに流入するガス量を検出する検出手段を備え、
前記第2推定手段は、前記検出手段により検出されたガス量の内燃機関の再始動後の積算値が所定値よりも小さい場合は、前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量の推定値を減少させない請求項15に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項17】
前記フィルタに流入するガス量を検出する検出手段を備え、
前記終了判定手段は、前記検出手段により検出されたガス量の内燃機関の再始動後の積算値が所定値よりも小さい場合は、前記抑制制御の終了判定を行わない請求項13乃至16のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項18】
前記制御手段による前記フィルタの過昇温抑制のための方法には、前記フィルタに流入するガス量を増加させる第1の方法と、前記フィルタに流入するガスの酸素濃度を低減させる第2の方法と、が含まれ、
前記制御手段は、内燃機関の再始動後の過昇温抑制制御で用いる方法と、それ以外での過昇温抑制制御で用いる方法とで、一方が前記第1の方法であり他方が前記第2の方法であることを許容する請求項1ないし17のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−64098(P2011−64098A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214235(P2009−214235)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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