説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】内燃機関の燃費悪化を抑制することができる内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】排気浄化装置26は、排気通路11A,11Bを通る排気ガス中に含まれるPMを捕集して除去するDPF19A,19Bと、排気通路11A,11B内に燃料を添加する燃料添加弁20A,20Bと、ECU25とを有している。ECU25は、目標再生温度補正係数に応じた燃料を添加するように燃料添加弁20A,20Bを制御した後、DPF19A,19B双方のPM堆積量が再生終了閾値を下回ると、燃料の添加を終了するように燃料添加弁20A,20Bを制御する。また、ECU25は、DPF19A,19BのPM堆積量が再生終了閾値を下回ったときは、目標再生温度補正係数を1とし、DPF19A,19BのPM堆積量が再生終了閾値を下回っていないときは、DPF19A,19BのPM堆積量に応じた目標再生温度補正係数を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の気筒群を有する内燃機関の排気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における内燃機関の排気浄化装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、2系統のDPNR(PMフィルタ)のPM堆積量を算出し、PM堆積量が所定量以上になったときに、PM再生に係る再生制御を実行し、PM再生が終了すると、そのPM再生が終了したバンクに対する再生制御を終了するというものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−249961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような内燃機関の排気浄化装置では、内燃機関の燃費悪化を抑制することが望まれている。しかし、上記従来技術においては、PM再生を同時に終了する再生制御を行うものがあるが、早く再生が終了したバンクのDPNRに対しても通常の再生制御を実行しているので、かかる燃費悪化の抑制効果を十分に満足するものではなかった。
【0005】
本発明の目的は、内燃機関の燃費悪化を抑制することができる内燃機関の排気浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の気筒群が異なる排気通路に接続されてなる内燃機関の排気浄化装置において、各排気通路にそれぞれ設けられ、内燃機関から排出される粒子状物質を捕集する複数の排気浄化ユニットと、各排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量をそれぞれ検出する複数の堆積量検出手段と、各堆積量検出手段により各排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量が再生開始閾値に達したことが検出された場合に、各排気浄化ユニットに燃料を供給して、各排気浄化ユニットに堆積した粒子状物質を燃焼させることにより、各排気浄化ユニットをそれぞれ再生する複数の再生手段と、各再生手段による各排気浄化ユニットの再生中に、各堆積量検出手段により検出された各排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量に基づいて各排気浄化ユニットの目標再生温度を個別に決定する再生温度決定手段と、再生温度決定手段により決定された各排気浄化ユニットの目標再生温度に応じて各再生手段を制御する制御手段と、各堆積量検出手段により検出された各排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量が所定量よりも少ないかどうかを判断する判断手段とを備え、再生温度決定手段は、判断手段によって排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量が所定量よりも少ないと判断されたときに、当該排気浄化ユニットの目標再生温度を排気浄化ユニットの再生が可能な温度範囲内で強制的に下げる温度変更手段を有することを特徴とするものである。
【0007】
このような本発明の排気浄化装置においては、複数の排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量に基づいて各排気浄化ユニットの目標再生温度を個別に決定し、各排気浄化ユニットの目標再生温度に応じた量の燃料を各排気浄化ユニットにそれぞれ供給することで、各排気浄化ユニットの再生処理が開始される。すると、各排気浄化ユニットに堆積した粒子状物質が燃焼され、各排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量が減少していく。そして、何れかの排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量が所定量よりも少なくなると、当該排気浄化ユニットの目標再生温度を排気浄化ユニットの再生が可能な温度範囲内で強制的に下げ、その状態で当該排気浄化ユニットの再生処理を継続する。このように排気浄化ユニットの目標再生温度を強制的に下げることにより、当該排気浄化ユニットに供給される燃料量が低減される。これにより、内燃機関の燃費悪化を抑制することができる。
【0008】
好ましくは、制御手段は、判断手段によって各排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量が何れも所定量よりも少ないと判断されたときに、各排気浄化ユニットへの燃料の供給を同時に終了させるように各再生手段を制御する手段を有する。
【0009】
複数の排気浄化ユニットの再生終了タイミングが異なる場合には、最初に再生が終了した排気浄化ユニットに粒子状物質が早く堆積し始めるため、当該排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量に応じて次回の再生開始タイミングが決定されることとなる。この場合には、全ての排気浄化ユニットの再生終了タイミングから次回の再生開始タイミングまでのインターバルが短くなるため、排気浄化ユニットの再生頻度が増加する。そこで、各排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量が何れも所定量よりも少ないと判断されたときに、各排気浄化ユニットへの燃料の供給を同時に終了させることにより、各排気浄化ユニットの再生が同時に終了することとなる。このため、各排気浄化ユニットに再び粒子状物質が堆積し始めるのが同じタイミングとなるため、その分だけ次回の再生開始タイミングが遅くなる。従って、全ての排気浄化ユニットの再生終了タイミングから次回の再生開始タイミングまでのインターバルが長くなるため、排気浄化ユニットの再生頻度が少なくなり、排気浄化ユニットに供給される全体的な燃料量が抑えられる。これにより、内燃機関の燃費悪化を更に抑制することができる。
【0010】
また、好ましくは、再生温度決定手段は、判断手段によって排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量が所定量よりも多いと判断されたときは、当該排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量に応じて当該排気浄化ユニットの目標再生温度を設定する。
【0011】
この場合には、排気浄化ユニットの目標再生温度を排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量に応じた最適な温度に設定することができる。このとき、例えば排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量が少ないほど、排気浄化ユニットの目標再生温度を高く設定することにより、粒子状物質の堆積量が多いときの熱暴走を防ぐことができると共に、粒子状物質の堆積量が少ないときに排気浄化ユニットが早く再生されるため、内燃機関の燃費悪化の抑制に寄与することができる。
【0012】
さらに、好ましくは、温度変更手段は、判断手段によって排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量が所定量よりも少ないと判断されたときに、当該排気浄化ユニットの目標再生温度を粒子状物質が燃焼する最低温度まで強制的に下げる。
【0013】
この場合には、排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量が所定量よりも少ないと判断されたときに、排気浄化ユニットに供給される燃料量が必要最小限に抑えられるため、内燃機関の燃費悪化を一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、排気浄化ユニットへの無駄な燃料の供給を抑え、内燃機関の燃費悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る排気浄化装置の一実施形態を備えた内燃機関を示す概略構成図である。
【図2】図1に示したECUにより実行される処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図2に示した処理で使用される再生温度設定マップの一例を示すグラフである。
【図4】本実施形態における時間とDPFのPM堆積量及び目標再生温度補正係数との関係の一例を示すグラフである。
【図5】比較例における時間とDPFのPM堆積量及び目標再生温度補正係数との関係の一例を示すグラフである。
【図6】他の比較例及び本実施形態における時間とDPFのPM堆積量との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係わる内燃機関の排気浄化装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る排気浄化装置の一実施形態を備えた内燃機関を示す概略構成図である。同図において、本実施形態に係る内燃機関1は、V型8気筒のディーゼルエンジンとして構成されている。
【0018】
ディーゼルエンジン1は左右のバンク2A,2Bを備え、このバンク2A,2Bには、気筒(シリンダ)3が4つずつ設けられている。バンク2Aの4つの気筒3は一つの気筒群を構成し、バンク2Bの4つの気筒3は他の一つの気筒群を構成している。各気筒3には、燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁4がそれぞれ設けられている。
【0019】
また、ディーゼルエンジン1は、各気筒3に空気を供給するための吸気通路5を備えている。吸気通路5は、エアクリーナ6の下流において吸気分岐路5A,5Bに分かれている。吸気分岐路5A,5Bには、ターボチャージャ7A,7Bのコンプレッサ8A,8Bがそれぞれ設けられている。吸気分岐路5A,5Bは、インタークーラ9を介してインテークマニホールド10に接続されている。インテークマニホールド10は、バンク2A,2Bと連結されている。
【0020】
バンク2A,2Bには、各気筒3から燃焼後の排気ガスを排出するための排気通路11A,11Bがエキゾーストマニホールド12A,12Bを介してそれぞれ接続されている。排気通路11A,11Bには、ターボチャージャ7A,7Bのタービン13A,13Bがそれぞれ設けられている。
【0021】
エキゾーストマニホールド12A,12Bは、排気再循環(EGR)通路14A,14Bを介してインテークマニホールド10とそれぞれ接続されている。EGR通路14A,14Bは、燃焼後の排気ガスの一部をEGRガスとして各気筒3に還流するための通路である。EGR通路14A,14Bには、EGRガスを冷却するためのEGRクーラ15A,15Bと、EGRガスの還流量を調整するEGRバルブ16A,16Bとがそれぞれ設けられている。
【0022】
排気通路11A,11Bにおけるターボチャージャ7A,7Bの下流側には、排気浄化ユニット17A,17Bがそれぞれ設けられている。排気浄化ユニット17A,17Bは、排気ガス中に含まれる粒子状物質(PM)を触媒作用(酸化作用)で除去するディーゼル用酸化触媒(DOC)18A,18Bと、排気ガス中に含まれるPMを捕集して除去するディーゼル用排気微粒子除去フィルタ(DPF)19A,19Bとをそれぞれ有している。
【0023】
タービン13A,13Bと排気浄化ユニット17A,17Bとの間には、排気通路11A,11B内に燃料を添加する燃料添加弁20A,20Bがそれぞれ設けられている。燃料添加弁20A,20Bから添加される燃料は、主としてDPF19A,19Bの再生制御を行う際に還元剤として用いられる。DPF19A,19Bの再生とは、DPF19A,19Bに堆積したPMを高温の燃料により酸化(燃焼)させることである。燃料添加弁20A,20Bは、DOC18A,18Bに燃料を供給して、DOC18A,18Bを活性化させることで排気ガスの温度を上昇させ、DPF19A,19Bに堆積した粒子状物質を燃焼させることにより、DPF19A,19Bをそれぞれ再生する複数の再生手段を構成している。
【0024】
排気通路11A,11Bには、排気浄化ユニット17A,17Bの前後差圧を検出する差圧センサ21A,21Bがそれぞれ接続されている。排気浄化ユニット17A,17BにおけるDOC18A,18BとDPF19A,19Bとの間には、排気ガスの温度を検出する排気温度センサ22A,22Bがそれぞれ設けられている。排気通路11A,11Bにおける排気浄化ユニット17A,17Bの下流側には、排気ガスの温度を検出する排気温度センサ23A,23Bと、排気ガスの空燃比(A/F)を検出する空燃比センサ24A,24Bとがそれぞれ設けられている。
【0025】
また、ディーゼルエンジン1は、電子制御ユニット(ECU)25を備えている。ECU25は、差圧センサ21A,21B、排気温度センサ22A〜23B及び空燃比センサ24A,24Bの検出信号を入力し、所定の処理を行い、各燃料噴射弁4、EGRバルブ16A,16B及び燃料添加弁20A,20Bを制御する。
【0026】
ここで、排気浄化ユニット17A,17B、燃料添加弁20A,20B、差圧センサ21A,21B、排気温度センサ22A〜23B、空燃比センサ24A,24B及びECU25は、本実施形態の排気浄化装置26を構成している。
【0027】
図2は、ECU25により実行される処理手順を示すフローチャートである。本処理は、DPF19A,19Bに堆積するPMの量(PM堆積量)に基づいてDPF19A,19Bの目標再生温度を個別に設定し、その目標再生温度に従って燃料添加弁20A,20Bをそれぞれ制御するような処理である。なお、再生温度とは、DPF19A,19Bを再生するときのDPF19A,19Bの床温のことである。
【0028】
同図において、まずDPF19A,19BのPM堆積量が再生開始閾値に達したかどうかを判断する(手順S101)。DPF19A,19BのPM堆積量は、差圧センサ21A,21Bにより検出されたDPF19A,19Bの前後差圧から算出可能である。再生開始閾値は、DPF19A,19Bの再生を開始するための閾値であり、DPF19A,19BにおけるPMの許容堆積量によって決まる。再生開始の判断は、DPF19A,19Bの少なくとも一方のPM堆積量が再生開始閾値に達したかどうかにより行う。
【0029】
DPF19A,19BのPM堆積量が再生開始閾値に達したと判断されたときは、DPF19A,19Bの再生を開始すべく、DPF19A,19BのPM堆積量に応じた目標再生温度補正係数をそれぞれ算出する(手順S102)。PM堆積量に応じた目標再生温度補正係数の算出は、図3に示すような再生温度設定マップを用いて行う。再生温度設定マップは、PM堆積量と目標再生温度補正係数との関係を表したマップである。再生温度設定マップは、PM堆積量が少なくなるほど目標再生温度補正係数が大きくなるように設定されている。
【0030】
目標再生温度補正係数は、目標再生温度に対応している。例えば、目標再生温度補正係数が1のときは、目標再生温度は550℃である。その温度は、DPF19A,19Bに堆積したPMが確実に酸化(燃焼)して、DPF19A,19Bが再生される最低温度である。
【0031】
続いて、手順S102で得られた目標再生温度補正係数に対応する燃料添加指令値を算出する(手順S103)。この燃料添加指令値の算出は、図示しない専用のマップを用いて行う。そして、その燃料添加指令値に応じた量の燃料を添加するように燃料添加弁20A,20Bを制御する(手順S104)。このとき、排気温度センサ22A〜23Bにより検出された排気ガスの温度や空燃比センサ24A,24Bにより検出された排気ガスの空燃比も考慮して、燃料添加弁20A,20Bを制御しても良い。
【0032】
続いて、DPF19A,19B双方のPM堆積量が再生終了閾値を下回ったかどうかを判断する(手順S105)。再生終了閾値は、DPF19A,19Bの再生を終了するためのPM堆積量の所定値であり、例えばゼロまたはゼロに近い値αである。DPF19A,19B双方のPM堆積量が再生終了閾値を下回ったと判断されたときは、燃料の添加を終了するように燃料添加弁20A,20Bを制御し(手順S106)、本処理を終了する。
【0033】
手順S105を満足していないときは、DPF19A,19BのPM堆積量が再生終了閾値を下回ったかどうかを判断する(手順S107)。DPF19A,19BのPM堆積量が再生終了閾値を下回ったと判断されたときは、目標再生温度補正係数を1に設定し(手順S108)、手順S103に戻る。
【0034】
一方、DPF19A,19BのPM堆積量が再生終了閾値を下回っていないと判断されたときは、上記の手順S102と同様に、図3に示す再生温度設定マップを用いて、DPF19A,19BのPM堆積量に応じた目標再生温度補正係数を算出し(手順S109)、手順S103に戻る。
【0035】
次に、本実施形態の排気浄化装置26の動作を図4により説明する。図4(a)中、太実線Pは、DPF19AのPM堆積量を表し、細実線Qは、DPF19BのPM堆積量を表している。図4(b)中、太実線Pは、DPF19Aの目標再生温度補正係数を表し、細実線Qは、DPF19Bの再生温度補正係数を表している。
【0036】
図4において、DPF19A,19BのPM堆積量が再生開始閾値に達すると、DPF19A,19Bの再生制御が開始される。具体的には、図3に示す再生温度設定マップを用いて、DPF19A,19BのPM堆積量に応じた目標再生温度(目標再生温度補正係数に相当)が個別に設定され、その目標再生温度に応じた量の燃料が燃料添加弁20A,20Bより添加される。これにより、DPF19A,19Bの再生温度が目標再生温度に相当する温度となり、DPF19A,19Bに堆積しているPMが燃焼されるため、DPF19A,19BのPM堆積量が徐々に減少していく。
【0037】
ここで、再生温度設定マップは、PM堆積量が少なくなるほど目標再生温度が高くなるように設定されている。このため、DPF19A,19BのPM堆積量が減少するにつれて、DPF19A,19Bの再生温度が上昇する。
【0038】
DPF19A,19BのPM堆積量が多いときに、DPF19A,19Bの再生温度が高くなると、熱暴走が発生しやすくなるが、DPF19A,19BのPM堆積量が少なくなるほどDPF19A,19Bの再生温度が高くなることにより、熱暴走を防ぐことができる。また、DPF19A,19BのPM堆積量が少なくなると、DPF19A,19Bが早く再生されるため、燃費悪化の抑制に寄与することができる。
【0039】
図4に示すものでは、DPF19AのPM堆積量がDPF19BのPM堆積量よりも少なくなっている。このため、DPF19AのPM堆積量がDPF19BのPM堆積量よりも早く再生終了閾値αを下回る。DPF19AのPM堆積量が再生終了閾値を下回る(太実線P参照)と、DPF19Aの目標再生温度が目標再生温度補正係数1に相当する温度、つまりPMが燃焼する最低温度まで強制的に下がるようになる(太実線P参照)。そして、その状態で、DPF19Aの再生制御が継続される。このため、DPF19AのPM堆積量が増えることは無い。
【0040】
その後、DPF19BのPM堆積量が再生終了閾値αを下回ると、DPF19A,19Bの再生制御が同時に終了する。具体的には、燃料添加弁20A,20Bからの燃料の添加が同時に停止する。
【0041】
以上において、差圧センサ21A,21Bは、各排気浄化ユニット17A,17Bへの粒子状物質の堆積量をそれぞれ検出する複数の堆積量検出手段を構成する。ECU25は、各再生手段20A,20Bによる各排気浄化ユニット17A,17Bの再生中に、堆積量検出手段21A,21Bにより検出された各排気浄化ユニット17A,17Bへの粒子状物質の堆積量に基づいて各排気浄化ユニット17A,17Bの目標再生温度を個別に決定する再生温度決定手段と、再生温度決定手段により決定された各排気浄化ユニット17A,17Bの目標再生温度に応じて各再生手段20A,20Bを制御する制御手段と、各堆積量検出手段21A,21Bにより検出された各排気浄化ユニット17A,17Bへの粒子状物質の堆積量が所定量よりも少ないかどうかを判断する判断手段とを構成する。このとき、図2に示す手順S102,S108,S109の処理が再生温度決定手段として機能し、同手順S103,S104,S106の処理が制御手段として機能し、同手順S105,S107の処理が判断手段として機能する。
【0042】
また、図2に示すS108の処理は、判断手段によって排気浄化ユニット17A,17Bへの粒子状物質の堆積量が所定量よりも少ないと判断されたときに、当該排気浄化ユニット17A,17Bの目標再生温度を排気浄化ユニット17A,17Bの再生が可能な温度範囲内で強制的に下げる温度変更手段として機能する。同S109の処理は、判断手段によって排気浄化ユニット17A,17Bへの粒子状物質の堆積量が所定量よりも多いと判断されたときは、当該排気浄化ユニット17A,17Bへの粒子状物質の堆積量に応じて当該排気浄化ユニット17A,17Bの目標再生温度を設定する手段として機能する。同S106の処理は、判断手段によって各排気浄化ユニット17A,17Bへの粒子状物質の堆積量が何れも所定量よりも少ないと判断されたときに、各排気浄化ユニット17A,17Bへの燃料の供給を同時に終了させるように各再生手段20A,20Bを制御する手段として機能する。
【0043】
DPF19A,19Bの再生制御の比較例として、DPF19A,19Bの目標再生温度を個別に設定するのではなく、DPF19A,19Bの目標再生温度を等しくする場合を図5に示す。図5(a)中、太実線Pは、DPF19AのPM堆積量を表し、細実線Qは、DPF19BのPM堆積量を表している。図5(b)中、実線Rは、DPF19A,19Bの目標再生温度補正係数を表している。ここでは、DPF19A,19BのうちPM堆積量が多いほうに応じた目標再生温度補正係数を採用する。
【0044】
図5において、DPF19BのPM堆積量がDPF19AのPM堆積量よりも多いため、DPF19BのPM堆積量に応じた目標再生温度が設定され、その目標再生温度に応じた量の燃料が燃料添加弁20A,20Bより添加されることで、DPF19A,19Bの再生制御が実行される。
【0045】
この場合には、PM堆積量が少ないほうのDPF19Aの目標再生温度を高くしないので、DPF19Aの再生に時間がかかる。また、DPF19AのPM堆積量が再生終了閾値を下回ったためにDPF19Aの再生制御を終了しても良いにもかかわらず、DPF19BのPM堆積量に応じた高い目標再生温度に従って燃料の添加が継続される。よって、燃料が無駄に添加されることになるため、燃費の悪化が増大する。
【0046】
これに対し本実施形態では、図4に示すように、PM堆積量が少ないDPF19Aの目標再生温度をPM堆積量が多いDPF19Bの目標再生温度よりも高くするので、DPF19Aの再生に要する時間が短縮され、DPF19AのPM堆積量が早く再生終了閾値を下回るようになる。そして、DPF19AのPM堆積量がDPF19BのPM堆積量よりも早く再生終了閾値を下回ると、DPF19Aの目標再生温度を強制的にPMが燃焼する最低温度まで下げるので、高い目標再生温度に従った燃料の添加が継続されることが無く、無駄な燃料添加を抑えることができる。
【0047】
また、DPF19A,19Bの再生制御の他の比較例として、DPF19A,19BのPM堆積量が再生終了閾値を下回ると、DPF19A,19Bの再生制御を直ちに終了させるようにした場合には、DPF19A,19Bの再生が終了すると、DPF19A,19BのPM堆積量が再び増えていくため、以下の不具合が生じる。
【0048】
即ち、例えば図6(a)に示すように、DPF19AのPM堆積量(太実線P参照)がDPF19BのPM堆積量(細実線Q参照)よりも早く再生終了閾値を下回る場合には、DPF19AへのPMの堆積がDPF19BへのPMの堆積よりも早く開始される。このため、DPF19AのPM堆積量が次の再生開始閾値に達するタイミングが、DPF19BのPM堆積量が次の再生開始閾値に達するタイミングよりも早くなるため、次回の再生開始要求タイミングとしては、DPF19AのPM堆積量が再生開始閾値に達するタイミングとなる。この場合には、DPF19A,19B双方の再生終了時点tから次回のDPF19A,19Bの再生開始時点tまでのインターバルTが短いため、DPF19A,19Bの再生頻度が多くなることになる。従って、DPF19A,19Bに対する燃料の添加時間及び添加量が増えてしまう。これにより、燃料が無駄に添加されるため、燃費の悪化が増大する。
【0049】
これに対し本実施形態では、図6(b)に示すように、DPF19AのPM堆積量(太実線P参照)がDPF19BのPM堆積量(細実線Q参照)よりも早く再生終了閾値を下回ると、DPF19Aの目標再生温度を強制的にPMが燃焼する最低温度まで下げて、DPF19Aの再生制御を継続する。そして、DPF19BのPM堆積量が再生終了閾値を下回ると、DPF19A,19Bの再生制御が同時に終了するので、その後にDPF19A,19Bに同時にPMが堆積し始める。このため、DPF19AのPM堆積量が次に再生開始閾値に達するタイミングが遅くなるため、その分だけ次回の再生開始要求タイミングが遅くなる。この場合には、DPF19A,19Bの再生終了時点tから次回のDPF19A,19Bの再生開始時点tまでのインターバルTが長くなるため、DPF19A,19Bの再生頻度が少なくなる。従って、DPF19A,19Bに対する燃料の添加時間及び添加量が少なくなるため、無駄な燃料添加を抑えることができる。
【0050】
以上のように本実施形態によれば、燃料添加弁20A,20BによるDPF19A,19Bに対する無駄な燃料添加を低減することができるので、ディーゼルエンジン1の燃費悪化を抑制することが可能となる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、DPF19A,19Bの一方のPM堆積量が再生終了閾値を下回ったときは、当該DPFの目標再生温度をPMが酸化(燃焼)する最低温度まで強制的に下げるようにしたが、特にそれには限られず、DPF19A,19Bの一方の目標再生温度をDPF19A,19Bの再生が可能な温度範囲内で強制的に下げるようにすれば良い。
【0052】
また、上記実施形態では、DPF19A,19Bの一方の目標再生温度を強制的に下げた後、DPF19A,19Bの他方のPM堆積量が再生終了閾値を下回ったときに、DPF19A,19Bの再生制御を同時に終了させるようにしたが、特にそれには限られず、例えばDPF19A,19Bのうち目標再生温度を強制的に下げたほうの再生制御を先に終了させても良い。
【0053】
さらに、上記実施形態では、DPF19A,19BのPM堆積量が再生終了閾値を下回っていないときは、DPF19A,19BのPM堆積量に応じて目標再生温度を変化させるようにしたが、特にそれには限られず、DPF19A,19BのPM堆積量が再生終了閾値を下回っていない時のDPF19A,19Bの目標再生温度を一定値としても良い。
【0054】
また、上記実施形態では、燃料添加弁20A,20Bより燃料を添加し、DOC18A,18Bを活性化させることで、DPF19A,19Bの再生制御を実施するようにしたが、DPF19A,19Bの再生制御手法としては、特にそのような燃料添加に限られず、燃料噴射弁4による燃料のポスト噴射等を利用しても良い。また、DOCではなくバーナあるいはグロープラグ等を用いて、排気ガス温度を上昇させても良い。
【0055】
さらに、上記実施形態の内燃機関1はV型8気筒のディーゼルエンジンであるが、本発明は、複数の気筒群を有する内燃機関であれば、適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…ディーゼルエンジン(内燃機関)、2A,2B…バンク、3…気筒、4…燃料噴射弁(再生手段)、11A,11B…排気通路、17A,17B…排気浄化ユニット、20A,20B…燃料添加弁(再生手段)、21A,21B…差圧センサ(堆積量検出手段)、25…ECU(判断手段、再生温度決定手段、制御手段、温度変更手段)、26…排気浄化装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒群が異なる排気通路に接続されてなる内燃機関の排気浄化装置において、
前記各排気通路にそれぞれ設けられ、前記内燃機関から排出される粒子状物質を捕集する複数の排気浄化ユニットと、
前記各排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量をそれぞれ検出する複数の堆積量検出手段と、
前記各堆積量検出手段により前記各排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量が再生開始閾値に達したことが検出された場合に、前記各排気浄化ユニットに燃料を供給して、前記各排気浄化ユニットに堆積した粒子状物質を燃焼させることにより、前記各排気浄化ユニットをそれぞれ再生する複数の再生手段と、
前記各再生手段による前記各排気浄化ユニットの再生中に、前記各堆積量検出手段により検出された前記各排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量に基づいて前記各排気浄化ユニットの目標再生温度を個別に決定する再生温度決定手段と、
前記再生温度決定手段により決定された前記各排気浄化ユニットの目標再生温度に応じて前記各再生手段を制御する制御手段と、
前記各堆積量検出手段により検出された前記各排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量が所定量よりも少ないかどうかを判断する判断手段とを備え、
前記再生温度決定手段は、前記判断手段によって前記排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量が前記所定量よりも少ないと判断されたときに、当該排気浄化ユニットの目標再生温度を前記排気浄化ユニットの再生が可能な温度範囲内で強制的に下げる温度変更手段を有することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記判断手段によって前記各排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量が何れも前記所定量よりも少ないと判断されたときに、前記各排気浄化ユニットへの燃料の供給を同時に終了させるように前記各再生手段を制御する手段を有することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記再生温度決定手段は、前記判断手段によって前記排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量が前記所定量よりも多いと判断されたときは、当該排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量に応じて当該排気浄化ユニットの目標再生温度を設定することを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記温度変更手段は、前記判断手段によって前記排気浄化ユニットへの粒子状物質の堆積量が前記所定量よりも少ないと判断されたときに、当該排気浄化ユニットの目標再生温度を前記粒子状物質が燃焼する最低温度まで強制的に下げることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−87734(P2013−87734A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230980(P2011−230980)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】