説明

内燃機関の排気部構造

【課題】排気ポートから排出される排気ガスの圧力の脈動を増大させて、特に低中負荷域での過給性能の向上を図る。
【解決手段】排気ポート23を介して排出される排気ガスにより駆動される過給機を付帯させた内燃機関において、排気ポート23内で、かつ排気弁24より下流側の位置に、排気弁24を開いた直後から排気ポート23内圧力が最大となるまでの間に排気ポート23の断面積を縮小する絞り量が極大値となる絞り弁機構8を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスにより駆動される過給機を備えてなる内燃機関の排気部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に搭載される内燃機関において、排気ポートを介して排出される排気ガスのエネルギを利用してタービンを回転させ、その回転力によりコンプレッサを回転させて吸入空気を加圧して燃焼室に供給する排気ターボ過給機を備えるものが知られている。
【0003】
このような過給機を備える多気筒、例えば4気筒の内燃機関では、排気干渉を防止して性能を向上させるべく、2つの気筒毎に排気流路を集合させて構成した2つの排気出口を、1台の過給機に設けた2つの排気入口に接続するいわゆるツインスクロール式の排気マニホルドを採用することがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、低負荷ないし中負荷域では排出される排気ガス量が減少し、タービンに作用する排気ガスのエネルギが減少するため、コンプレッサの駆動力が不足する。この不具合に対し、点火時期が隣り合わない気筒群の排気マニホルドを互いに独立させた上、これらの排気マニホルドを連通する連通路を設けて、低負荷低回転時には連通路を閉塞し、高負荷高回転時にはこの連通路を開放するシステムが知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
ところが、ツインスクロール式の排気マニホルドは、3気筒の内燃機関には適用しがたい。さらに、特許文献2に開示されたシステムにおいては、連通路を開閉するバルブ装置を、タービンから出た排気ガス流量により駆動制御するので、高負荷高回転の運転領域から低負荷低回転の運転領域へと遷移する際に直ちに連通路を閉じることができない。これにより、過給圧の制御に応答遅れが生じ、内燃機関の運転状態に応じた最適な過給ができないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−47053号公報
【特許文献2】特開昭61−55317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、排気ポートから排出される排気ガスの圧力の脈動を増大させて、特に低中負荷域での過給性能の向上を図ることを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る内燃機関の排気部構造は、排気ポートを介して排出される排気ガスにより駆動される過給機を付帯させたものであって、排気ポート内で、かつ排気弁より下流側の位置に、排気弁を開いた直後から排気ポート内圧力が最大となるまでの間に排気ポート断面積を縮小する絞り量が極大値となる絞り弁機構を設けていることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、排気弁を開いた直後に気筒から流出(ブローダウン)する排気ガスが、絞り弁機構によって予め絞られた排気ポートを通過することとなるので、過給機に達する排気圧の脈動をより大きくすることができる。
【0010】
なお、本発明において、「排気ポート断面積を縮小する」とは、排気弁から過給機の駆動タービンまでの通路のうち少なくとも一部の断面積を縮小すること全般を含む概念である。
【0011】
同一の排気ポート上に存在する前記排気弁及び前記絞り弁機構が機械的に連動しており、両者の作動周期が一致しているものであれば、排気弁を開いた直後に流出する排気ガスのピークが絞り弁機構に到達する前に確実に排気ポートを絞る動作を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低負荷及び中負荷運転領域においても排気ポートから排出される排気ガスの圧力の脈動を増大させることができるので、特に低中負荷域での過給性能の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成を示す構成説明図。
【図2】同実施形態の要部を示す構成説明図。
【図3】同実施形態の作用説明図。
【図4】本発明の他の実施形態に係る絞り弁機構のカムを示す斜視図。
【図5】図4に係るカムの作動説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態の内燃機関100は自動車用のガソリンエンジンで、3つの気筒2を有する。図1には、1気筒の構成を概略的に示している。この内燃機関100は、各気筒2に吸気を供給するための吸気系3と、各気筒2から排気を排出するための排気系4と、排気系4上に配設された駆動タービン51及び吸気系3上に配設されたコンプレッサ52を備える排気ターボ過給機5とを少なくとも具備する。
【0016】
前記吸気系3には、エアクリーナ31、コンプレッサ52、インタークーラ32、スロットルバルブ33、サージタンク34及び吸気マニホルド35を上流からこの順で配設している。吸気マニホルド35は、吸気ポート21に接続しており、その吸気ポート21を開閉する吸気弁22近傍にインジェクタ36を設けている。
【0017】
前記排気系4には、排気マニホルド41、駆動タービン51及び図示しない三元触媒を上流からこの順で配設している。排気マニホルド41は、排気ポート23に接続している。
【0018】
また、このエンジンは、可変バルブタイミング機構6をも具備する。可変バルブタイミング機構6は、いわゆる揺動シリンダ機構を利用したもので、吸気カムシャフト61に固定した図示しないロータと、ロータの外側に嵌まったハウジング62と、ロータに対してハウジング62を相対的に回動させるための電磁式4方向切換制御弁であるオイルコントロールバルブ63と、ハウジング62に対して固定したギア64と、このギア64に噛合するとともに排気カムシャフト66に固定したギア65とを要素とする。
【0019】
ハウジング62に流出入する作動油の方向及び量をオイルコントロールバルブ63により制御すると、ロータに対するハウジング62の相対角度が変化し、排気カムシャフト66と吸気カムシャフト61との間に任意の回転位相差を生じさせることができる。本実施形態では、図示しないクランクシャフトの回転に対して吸気弁22を常に一定の開閉タイミングで開閉させつつ、排気弁24の開閉タイミングを変化させて、排気弁24の開閉タイミングと吸気弁22の開閉タイミングとの相対位相差を所定角度範囲内で自在に変化させる。
【0020】
このような内燃機関100について、その各種状況を検出するために、例えば、サージタンク34内の過給圧を検出する吸気圧センサ91、内燃機関100の冷却水温度を検出する水温センサ92、エンジン回転数を検出する回転数センサ93、排気ガスの空燃比を検出するO2センサ94、クランクシャフトの回転位相を検出するクランク角センサ95、排気カムシャフト66の回転位相を検出するカム角センサ96等を取り付けている。
【0021】
これら各センサからの信号を受信して処理し、内燃機関100の運転状態を制御する電子制御装置7は、中央演算処理装置71、記憶装置72、入力インターフェース73、出力インターフェース74等を具備してなるマイクロコンピュータシステムを主体とする。入力インターフェース73には、上述した各種センサから信号が入力され、一方、出力インターフェース74からは、インジェクタ36や点火プラグ90等に対して制御信号が出力される。
【0022】
電子制御装置7には、吸気圧センサ91から出力される過給圧信号aと回転数センサ93から出力されるエンジン回転数信号cとを主な情報とし、その他の環境条件に応じて決まる各種の補正係数で基本噴射時間すなわち基本噴射量を補正してインジェクタ36の開弁時間である燃料噴射量を決定し、その決定した時間インジェクタ36を開弁制御して、内燃機関100の運転状態に応じた燃料噴射量をインジェクタ36から噴射するためのプログラムが内蔵してある。また、電子制御装置7には、上述した各種センサから出力される信号により検出した運転状態に応じて、可変バルブタイミング機構6を制御し、適正なバルブオーバラップ量を維持することにより、燃料の気化を促進するためのプログラムも内蔵してある。
【0023】
しかして本実施形態では、図2に示すように、排気ポート23内で、かつ排気弁24より下流側の位置に、排気ポート23断面積を縮小する絞り量を最大とする絞り弁機構8を設けている。
【0024】
この絞り弁機構8は、各気筒2ごとに設けており、各気筒2の行程に同期している。絞り弁機構8は、図2に示すように、排気弁24と排気マニホルド41との間の通路内に突出し排気ポート断面積を縮小する最大絞り位置と通路内に突出しない最小絞り位置との間で移動可能な弁体81と、弁体81を駆動するカム82と、このカム82を軸支する絞りカムシャフト83と、弁体81を最小絞り位置に向け弾性付勢する弾性付勢部材84とを備えている。絞りカムシャフト83には、ギア85を固定して設けている。
【0025】
本実施形態では、各気筒2において排気弁24と絞り弁機構8とが機械的に連動しており、両者の動作が同期する。具体的には、図2に示すように、排気カムシャフト66のギア65と、絞りカムシャフト83のギア85とが噛合している。これら排気カムシャフト66のギア65と絞りカムシャフト83のギア85との歯数は等しく、変速比が1対1である。なお、図1では、絞り弁機構8の弾性付勢部材84及びギア85を省略して示している。また、図2では、吸気カムシャフト61のギア64を省略して示している。
【0026】
気筒2内で燃料を燃焼させた後排気弁24を開放すると、気筒2内の高温高圧な排気ガスが一気に膨張して排気ポート23に噴出するブローダウンが起こる。図3に示すように、排気ポート23内の排気ガス圧力は、ブローダウンによりピークが来て、その後、圧力波の反射に起因して振動する排気脈動がある。ここで、図3の(b)の実線a1及び同図の(d)の実線a2は、スロットルバルブ33が全開の場合の排気マニホルド41内部の圧力を示す。一方、同図の(b)の破線b1及び同図の(d)の破線b2は、スロットルバルブ33が全開でない場合の排気マニホルド41内部の圧力の一例を示す。
【0027】
本実施形態では、排気弁24が開き始めるよりも先に弁体81を最大絞り位置に向けて移動させ、排気ポート23を絞り始める。弁体81による排気ポート23の絞り量は、排気弁24が完全に開く前に極大値をとる。さらに、排気弁24が完全に開くよりも先に弁体81を最小絞り位置に向けて移動させ、排気ポート23を開き始める。その後、排気弁24が完全に閉じる以前に弁体81が最小絞り位置に退避する。このようにすることで、図3の(b)に示すように、ブローダウンによる排気脈動の最初のピークを、同図の(d)に示すような絞り弁機構8を設けない場合と比較して増大させることができる。
【0028】
本実施形態の構成では、上述したように、排気ポート23内で、かつ排気弁24より下流側の位置に絞り弁機構8を設けている。その上で、この絞り弁機構8の弁体81が排気弁24を開いた直後から排気ポート23内の圧力が最大となるまでの間に絞り量が最大となる最大絞り位置をとるようにすることで、上述したようにブローダウンによる排気脈動が大きくなる。そして、このように排気脈動を大きくすることで、排気ターボ過給機5の駆動タービン51の回転数を低負荷低回転においても上げることができ、過給圧を向上させることができる。従って、反応遅れなしにトルクを向上させることができる。
【0029】
また、排気弁24と絞り弁機構8とを機械的に連動させることにより両者の作動周期を一致させているので、排気弁24を開いた直後に流出する排気ガスのピークが絞り弁機構8に到達する前に確実に排気ポート23を絞る動作を行うことができる。さらに可変バルブタイミング機構6により排気弁24の開閉タイミングを可変にしているが、排気弁24の開閉タイミングに絞り弁の開閉タイミングを追随させることができる。
【0030】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。
【0031】
例えば、スロットルバルブを介して吸気マニホルドに流入する新気に排気ガスを混合するための排気ガス再循環制御装置を備える内燃機関に本発明を適用してもよい。このような内燃機関に本発明を適用した場合、上述したように、排気脈動を大きくすることで、排気ガスを再循環させる割合を大きくしながらも、過給圧を向上させることが可能である。排気ガスの再循環量を増やすことが容易となるので、点火時期を進角させて燃費の向上を図ることができる。
【0032】
また、排気カムシャフトのギアと、絞りカムシャフトのギアとを噛合させる代わりに、排気カムシャフトのギアと、絞りカムシャフトのギアとをスプロケットチェーン等を介して接続するようにしてもよい。また、排気カムシャフト及び絞りカムシャフトのギアに替えてプーリを設け、ベルトを介してこれらのプーリを接続してもよい。
【0033】
さらに、排気弁と絞り弁機構とを機械的に連動させる代わりに、絞り弁機構に電磁弁を採用し、電子制御装置からの信号により絞り弁機構の絞り弁を排気弁と一致させた作動周期で開閉させるようにしてもよい。
【0034】
加えて、高負荷高回転領域では多量の排気ガスが排気ポートを流れるので、絞り弁機構により排気ポートを絞らない方がよい場合があり得る。これに対応させるべく、例えば、図4に示すような三次元カムX82を絞り弁機構のカムとして採用してもよい。この三次元カムX82は、軸方向一端部の断面形状が真円形又はそれに近い形状であり、絞りカムシャフト83の中心軸がその中心を通過する。また、三次元カムX82の軸方向他端部の断面形状は真円の一部が一方向に張り出した偏心カム形状である。この場合、低負荷低回転領域では図5の(a)に示すように三次元カムX82の断面形状が偏心カム形状をなす領域をシム85を介して弁体81に衝き当てて弁体81を最大絞り位置と最小絞り位置との間で往復運動させる一方、高負荷高回転領域では同図の(b)に示すように三次元カムX82の断面形状が真円形又はそれに近い形状をなす領域をシム85を介して弁体81に衝き当てて弁体81を最小絞り位置に保持するようにするとよい。
【0035】
また、前段で述べたような三次元カムX82を採用する代わりに、上述した実施形態に係る絞り弁機構のカムと断面形状が真円形又はそれに近い形状をなすカムとを用意し、運転状態に応じてこれら2つのカムを切り替えて使用するようにしてもよい。
【0036】
一方、絞り弁機構に電磁弁を採用する場合、高負荷高回転領域では絞り弁機構の弁体を最小絞り位置に保持するよう制御を行うとよい。
【0037】
そして、3気筒の内燃機関に限らず、2気筒以下の内燃機関及び4気筒以上の内燃機関に本発明を適用してもよい。
【0038】
加えて、可変バルブタイミング機構を具備しない内燃機関に本発明を適用してもよい。
【0039】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0040】
100…内燃機関
23…排気ポート
24…排気弁
5…過給機
8…絞り弁機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ポートを介して排出される排気ガスにより駆動される過給機を付帯させた内燃機関の排気部構造であって、
排気ポート内で、かつ排気弁より下流側の位置に、排気弁を開いた直後から排気ポート内圧力が最大となるまでの間に排気ポート断面積を縮小する絞り量が極大値となる絞り弁機構を設けていることを特徴とする内燃機関の排気部構造。
【請求項2】
同一の排気ポート上に存在する前記排気弁及び前記絞り弁機構が機械的に連動しており、両者の作動周期が一致している請求項1記載の内燃機関の排気部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−163246(P2011−163246A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28363(P2010−28363)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】