説明

内燃機関の絞り弁制御装置

【課題】絞り弁のフェールセーフ時の運転性の悪化を軽減する内燃機関の絞り弁制御装置及び制御方法を提供する。
【解決手段】電気式アクチュエータによって開閉駆動され、目標開度に電気的に制御される内燃機関の絞り弁の制御装置であって、絞り弁の異常時には前記電気式アクチュエータによる前記絞り弁の駆動を停止して絞り弁開度をデフォルト機構によるデフォルト開度にするフェールセーフ機能を有し、前記フェールセーフ機能によりフェールセーフ状態に移行した後、前記絞り弁の目標開度が前記デフォルト開度以下で、且つ前記目標開度が現在の絞り弁開度より閉じ側である場合には、前記電気式アクチュエータによる前記絞り弁の制御を一時的に復帰させる一時的復帰制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの内燃機関(エンジン)の出力を電気的に制御する絞り弁制御装置及び制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの出力を電気的に制御する絞り弁制御装置は、ドライバのアクセル操作量をもとに求まる絞り弁の目標開度をもとに、変速時のショック低減や、加速時のスリップ防止などのためのトルクの補正を行うことにより、車両の運転性を改善の手段の一つとして、重要な位置を占めてきている。
【0003】
こうした中、絞り弁の異常を検出し、フェールセーフ状態に移行する技術も一般的な技術となっており、絞り弁の異常時には電動モータと絞り弁との間のクラッチを切って絞り弁をフェールセーフの開度(デフォルト開度)に固定にする機能と、リターンスプリング機能が異常の時にはクラッチを切らないで制御的にフェールセーフを行うもの(例えば、特許文献1)、リターンスプリングの故障を特定した診断機能およびそのフェールセーフを行うものがある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−72230号公報
【特許文献2】特開平11−190230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
絞り弁制御装置のフェールセーフの一般的な機能は、絞り弁の開度をデフォルト開度に固定する。このため、フェールセーフ時には、吸入空気量が固定された状態でエンジンを制御する必要があり、運転性の悪化を避けられない。
【0006】
本発明は、前記解決しようとする課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、絞り弁のフェールセーフ時の運転性の悪化を軽減する内燃機関の絞り弁制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明による内燃機関の絞り弁制御装置は、電気式アクチュエータによって開閉駆動され、目標開度に電気的に制御される内燃機関の絞り弁の制御装置であって、絞り弁の異常時には前記電気式アクチュエータによる前記絞り弁の駆動を停止して絞り弁開度をデフォルト機構によるデフォルト開度にするフェールセーフ機能を有し、前記フェールセーフ機能によりフェールセーフ状態に移行した後、前記絞り弁の目標開度が前記デフォルト開度以下で、且つ前記目標開度が現在の絞り弁開度より閉じ側である場合には、前記電気式アクチュエータによる前記絞り弁の制御を一時的に復帰させる一時的復帰制御を行う。
【0008】
本発明による内燃機関の絞り弁制御装置は、好ましくは、前記一時的復帰制御は、前記絞り弁の開度を前記デフォルト開度より閉じ側に限定して行う。
【0009】
本発明による内燃機関の絞り弁制御装置は、好ましくは、前記一時的復帰制御は、更に燃料カット時に限定して行う。
【0010】
本発明による内燃機関の絞り弁制御装置は、好ましくは、前記一時的復帰制御は、更にエンジン暖機完了後に限定して行う。
【0011】
本発明による内燃機関の絞り弁制御装置は、好ましくは、前記一時的復帰制御における絞り弁開度の上限値を当該一時的復帰制御状態下の時間経過に伴って前記デフォルト開度から徐々に大きくする。
【0012】
本発明による内燃機関の絞り弁制御装置は、好ましくは、現在の絞り弁開度が前記目標開度より低い状態が、一定時間経過すれば、絞り弁低開度閉じ側異常と診断し、前記フェールセーフ機能によるフェールセーフ状態に移行する。
【0013】
本発明による内燃機関の絞り弁制御方法は、電気式アクチュエータによって開閉駆動され、目標開度に電気的に制御される内燃機関の絞り弁の制御方法であって、絞り弁の異常時には前記電気式アクチュエータによる前記絞り弁の駆動を停止して絞り弁開度をデフォルト機構によるデフォルト開度にするフェールセーフを行い、フェールセーフ状態に移行した後、絞り弁の目標開度が前記デフォルト開度以下で、且つ前記目標開度が現在の絞り弁開度より閉じ側である場合には、前記電気式アクチュエータによる絞り弁の制御を一時的に復帰させる一時的復帰制御を行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、フェールセーフ機能によりフェールセーフ状態に移行した後、絞り弁の目標開度がデフォルト開度以下で、且つ目標開度が現在の絞り弁開度より閉じ側である場合には、電気式アクチュエータによる絞り弁の制御を一時的に復帰させる一時的復帰制御が行われることにより、フェールセーフ性を維持しながら最小限の運転性悪化に留めることができる。
【0015】
特に、本発明は、絞り弁の異常がデフォルト開度以下の低い開度であれば、フェールセーフ性を考慮したデフォルト開度以下の低い開度の異常であり、復帰した際に再度同じ異常が発生してもフェールセーフ性を阻害することなく再びフェールセーフに移行することができる。したがって、このような場合には、部分的なフェールセーフ解除を行っても、フェールセーフに支障を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による一実施形態の絞り弁制御装置が適用されるエンジンシステムの一例を示す全体構成図。
【図2】図1の実施形態の絞り弁制御装置が適用される絞り弁の駆動系の一例を示す構成図。
【図3】図1の実施形態の絞り弁制御装置における絞り弁制御の処理フローを示すフローチャート。
【図4】図1の実施形態の絞り弁制御装置における絞り弁低開度閉じ側異常診断ルーチンを示すフローチャート。
【図5】図1の実施形態の絞り弁制御装置における絞り弁一時復帰判定ルーチンを示すフローチャート。
【図6】他の実施形態の絞り弁制御装置における絞り弁一時復帰判定ルーチンを示すフローチャート。
【図7】他の実施形態の絞り弁制御装置における絞り弁一時復帰処理ルーチンを示すフローチャート。
【図8】他の実施形態本発明による絞り弁制御装置における目標開度上限値拡大制御ルーチンを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による内燃機関の絞り弁制御装置の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態による絞り弁制御装置が適用されるエンジンシステムの一例を示している。
【0018】
エンジン1は、シリンダブロック1a、ピストン1b等によって形成された気筒数の燃焼室2を有する。
【0019】
燃焼室2には、吸入すべき空気が、エアクリーナ3の入口部4から取り入れられ、絞り弁6を具備した絞り弁装置7を通り、コレクタ8に入り、吸入空気管19によって分配供給される。絞り弁6は、電気式アクチュエータである電動モータ10と駆動連結されており、電動モータ10によって開閉駆動され、吸入空気量を制御する。
【0020】
ガソリンなどの燃料は、燃料タンク11から燃料ポンプ12により吸引、加圧され、燃料噴射弁13、可変燃圧プレッシャレギュレータ14が配管されている燃料系21に供給される。燃料系21に供給された燃料は、可変燃圧プレッシャレギュレータ14により所定の圧力に調整され、各燃焼室2毎に設けられている燃料噴射弁13から燃焼室2内に直接噴射される。シリンダブロック1aには各燃焼室2毎に点火プラグ22が取り付けられている。
【0021】
燃焼室2内に噴射された燃料は、吸入空気とで混合気を形成し、点火コイル17で高電圧化された電圧を印加される点火プラグ22によって着火される。
【0022】
絞り弁装置7の上流側には吸気流量を計測する空気流量計5が取り付けられている。空気流量計5は吸気流量を表す信号をコントロールユニット15に出力する。絞り弁装置7には絞り弁6の開度を検出するスロットルセンサ18が取り付けられている。スロットルセンサ18は絞り弁6の開度を表す信号をコントロールユニット15に出力する。絞り弁装置7にはアクセルセンサ9が取り付けられている。アクセルセンサ9は、アクセルペダル24と連結されており、ドライバがアクセルペダル24を操作する量を検出し、アクセルペダル24の操作量(踏込量)を表す信号をコントロールユニット15に出力する。
【0023】
シリンダブロック1aには冷却水温を検出する水温センサ23が取り付けられている。水温センサ23はエンジン1の冷却水温を表す信号をコントロールユニット15に出力する。エンジン1にはクランク角センサ(カム角センサ)16が取り付けられている。クランク角センサ16は、カム軸27によって回転駆動され、クランク軸の回転位置を表す信号をコントロールユニット15に出力する。
【0024】
排気管28にはA/F(空燃比)センサ20が取り付けられている。A/Fセンサ20は、排気ガスの成分から実運転空燃比を検出し、それを表す信号をコントロールユニット15に出力する。
【0025】
コントロールユニット15は、マイクロコンピュータ式のものであり、ROM、RAM等による記憶手段25と、MPU等による演算処理手段26を有し、前述したクランク角センサ16、アクセルセンサ9、スロットルセンサ18など、エンジン1の運転状態を検出する各種のセンサからの信号を入力信号として取り込み、所定の演算を実行し、演算結果として算定された各種の制御信号を、燃料噴射弁13、点火コイル17、絞り弁操作のための電動モータ10に出力し、燃料供給制御、点火時期制御、吸入空気量制御を行う。コントロールユニット15の出力側には警告器35が接続されている。
【0026】
コントロールユニット15と電源(バッテリ)30との間には、モータドライバリレー31、コントロールユニットリレー32、イグニッションスイッチ33が設けられる。
【0027】
図2は、本発明による絞り弁制御装置が適用される絞り弁6の駆動系を示している。
絞り弁6は弁軸40に固定装着され、弁軸40によってスロットルボディ本体(図示せず)より回転自在に支持されている。弁軸40には駆動部材41が連結されており、絞り弁6は駆動部材41を介して電動モータ10により開閉駆動される。電動モータ10の駆動制御信号は、コントロールユニット15のモータドライバ36から与えられる。
【0028】
駆動部材41が絞り弁閉じ方向に回動した際に、駆動部材41と係合する金属の薄板レバーからなる係合部材43が配置され、これらには係合部材43と駆動部材41とを互いに反対方向に回動させる方向の付勢力を与えるリターンスプリング44が取り付けられている。また、係合部材43とスロットルボディ本体(図示省略)との間には、絞り弁6を開き方向に回動させる付勢力を与えるデフォルトスプリング45が張架されている。更に、スロットルボディ本体には、絞り弁6の全閉位置を規定する全閉ストッパ46と、絞り弁6の全開位置を規定する全開ストッパ52と、電動モータ10の駆動制御信号が停止したときに絞り弁6の位置を所定絞り弁開度(デフォルト開度)に規定するデフォルトストッパ47が設けられている。ここに、係合部材43と、デフォルトスプリング45と、デフォルトストッパ47によりデフォルト機構が構成される。
【0029】
上述の構成により、通常運転中は、電動モータ10によって絞り弁6および駆動部材41は、全閉ストッパ46の位置と全開ストッパ52の位置との間で開閉駆動される。エンジン停止時に(電動モータ10の駆動制御信号停止時)には、係合部材43、デフォルトスプリング45、デフォルトストッパ47によるデフォルト機構によって、絞り弁6は、全閉位置より開き状態(デフォルト状態)のデフォルト開度になる。これにより、エンジン1の再始動性の向上、絞り弁6の貼り付き防止が図られる。
【0030】
アクセルペダル24の動きは、リンプホーム用リンク50に伝えられる。スロットルボディ本体とリンプホーム用リンク50との間にはアクセルリターンスプリング51が設けている。
【0031】
つぎに、図3のフローチャートを参照して、絞り弁制御の一つの実施形態を説明する。
絞り弁制御は、まず、アクセルセンサ9の信号と、スロットルセンサ18の信号を読み込み(ステップS100、ステップS101)、アクセルセンサ信号をアクセル開度APOに換算し(ステップS102)、スロットルセンサ信号を絞り弁開度(実開度TVO)に換算する(ステップS103)。そして、アクセル開度APOから絞り弁目標開度(通常絞り弁目標開度)を算出する(ステップS104)。
【0032】
つぎに、絞り弁6を動かす電動モータ10の制御の許可条件を確認する(ステップS105)、モータ制御許可があれば、通常絞り弁目標開度と絞り弁6の実開度TVOとに基づいてフィードバック制御用目標絞り弁開度を算出する(ステップS106)。
【0033】
つぎに、目標開度に応じたフィードバック制御定数を決定し(ステップS114)、絞り弁開度が目標値に合うように電動モータ10に通電するDUTY値を算出し(ステップS115)、算出したDUTY値のDUTY信号(ETC駆動DUTY信号)を出力する。
【0034】
これに対し、モータ制御の許可がない場合には、モータ駆動DUTYを0%にセットする(ステップS110)。これにより、絞り弁6はデフォルト開度になる。
【0035】
本発明による絞り弁制御装置は、コントロールユニット15のソフトウェア処理により具現化され、絞り弁低開度閉じ側異常診断を行う。絞り弁低開度閉じ側異常診断は、絞り弁6が閉じようとしても閉じられない状態を検出する異常診断である。
【0036】
絞り弁低開度閉じ側異常診断ルーチンを、図4のフローチャートを参照して説明する。
まず、アクセル開度APOからトラクションコントロールからのトルクダウン要求VSPTVOを減算して目標開度TGTVOを算出する(ステップS120)。
【0037】
つぎに、ETC駆動DUTY(ETCDUTY)が上限(100%)に貼り付いていないかを判定する(ステップS121)。
【0038】
つぎに、絞り弁6の実開度TVOが目標開度TGTVOより低いかを判定する(ステップS122)。実開度TVOと目標開度TGTVOとを比較し、固着等によって絞り弁6の実開度TVOが目標開度TGTVOより低い状態が、一定時間経過すれば(ステップS123)、ETC低開度閉じ側異常診断成立(診断1)とする(ステップS124)。
【0039】
異常診断成立時には、フェールセーフ機能として、ETCフェールセーフのフラッグETCFALEを1とし、モータ制御の許可を取り消す。これにより、異常診断成立時には、ETCフェールセーフ処理としてモータ駆動DUTY=0%になり、絞り弁6はデフォルト開度TVODEFになる。
【0040】
ETCフェールセーフ中の絞り弁一時復帰判定の制御ルーチンを、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0041】
まず、ETCフェールセーフ中であるす否かを判定する(ステップS131)。フェールセーフ中であれば、目標開度TGTVOがデフォルト開度TVODEFより低いかを判定する(ステップS132)。目標開度TGTVOがデフォルト開度TVODEFより低くければ、目標開度TGTVOが実開度TVOより低いかを判定する(ステップS133)。目標開度TGTVOが実開度TVOより低くければ、全気筒燃料カット中であるかを判定する(ステップS134)。全気筒燃料カット中であれば、ETC一時復帰処理判定ETCTMPON=1とし、ETC一時復帰処理を実行する。
【0042】
なお、ステップS131、ステップS132、ステップS133、ステップS134の判定のいずれか一つでも成立しない場合には、ETC一時復帰処理判定ETCTMPON=0とする(ステップS136)、この場合は、ETC一時復帰処理は行われず、絞り弁6は引き続きデフォルト開度TVODEFを維持する。
【0043】
絞り弁6の異常がデフォルト開度以下の低い開度であれば、フェールセーフ性を考慮したデフォルト開度以下の低い開度の異常であり、復帰した際に再度同じ異常が発生した場合には再びフェールセーフに移行することができる。
【0044】
したがって、上述したように、目標開度TGTVOがデフォルト開度TVODEF以下で、且つ目標開度TGTVOが実開度TVO以下であれば、低い部分的なフェールセーフ解除、つまり、絞り弁一時復帰を行う(ステップS135)ことにより、フェールセーフ性を阻害することなくフェールセーフ時の運転性の悪化を軽減することができる。
【0045】
暖機後のETCフェールセーフ中における絞り弁一時復帰判定の条件として、図6に示されているように、暖機終了後である条件を追加してもよい。なお、図6において、図5のものと同じことを行うステップには、図5に付したステップ番号と同じステップ番号を付けて、その説明を省略する。
【0046】
この絞り弁一時復帰判定の制御ルーチンでは、水温センサ23によって検出されたエンジン1の冷却水温度TWNが暖機完了温度、例えば、80℃以上であるかを判定し(ステップS137)、冷却水温度TWNが80℃以上であれば、ETC一時復帰処理判定ETCTMPON=1とする。
【0047】
この復帰判定ルーチンでは、アイシングが発生しやすい低温時には一時復帰しないようにし、暖機後に限って一時復帰させることが行われる。これにより、アイシングなどによって発生した一時的な絞り弁6の異常であった場合には、暖機後の制御復帰を可能とし、フェールセーフ性を維持しながら最小限の運転性悪化に留めることを実現できる。
【0048】
図7は、絞り弁一時復帰処理ルーチンを示している。
絞り弁一時復帰処理ルーチンでは、まず、ETC一時復帰処理判定中か(ETCTMPON=1?)を判断する(ステップS151)。ETC一時復帰処理判定中であれば、つぎに、目標開度TGTVOが実開度TVOより低いか否かを判定する(ステップS152)。目標開度TGTVOが実開度TVOより低ければ、復帰しても安全方向である。
【0049】
つぎに、目標開度TGTVOの上限値TGTVOMXをデフォルト開度TVODEFにセットする(ステップS153)。これにより、絞り弁一時復帰時の絞り弁6の開度がデフォルト開度TVODEFより閉じ側に限定される。そして、フェールセーフとしてのETCモータ駆動DUTY=0%を解除し、電動モータ10による絞り弁6のフィードバック制御を開始する(ステップS154)。
【0050】
一時復帰処理判定中における目標開度TGTVOの上限値TGTVOMXはデフォルト開度TVODEFに固定でなくて、一時的復帰制御状態下の時間経過に伴ってデフォルト開度TVODEFから徐々に大きくしていき、絞り弁6の作動範囲を広げて行く制御を行ってもよい。
【0051】
図8は、一時的復帰制御状態下の時間経過に伴って目標開度上限値を大きくしていく制御ルーチンを示している。この制御ルーチンは、所定時間毎に繰り返し実行される。まず、ETC一時復帰処理判定中か(ETCTMPON=1?)を判断し(ステップS161)、一時復帰処理中である場合には、現在の目標開度上限値TGTVOMXに加算分DTVOMXを加算し、目標開度上限値TGTVOMXを更新する(ステップS162)。
【0052】
この処理は一定時間間隔で実行されるから、目標開度上限値TGTVOMXは時間経過に伴って一定の増加量で増えていき、時間経過に伴って絞り弁6の動作範囲が増加していく。これにより、フェールセーフ中の運転性の悪化が、より一層、軽減される。
【0053】
以上に説明した実施形態の効果を要約すると、以下の通りになる。
(1)フェールセーフ機能によりフェールセーフ状態に移行した後、絞り弁の目標開度がデフォルト開度以下で、且つ目標開度が現在の絞り弁開度より閉じ側である場合には、電気式アクチュエータ(電動モータ)による絞り弁の制御を一時的に復帰させる一時的復帰制御を行うことにより、フェールセーフ中の運転性の悪化を軽減できる。
(2)一時的復帰制御時の絞り弁の開度をデフォルト開度より閉じ側に限定して行うことにより、フェールセーフ性を阻害することがない。
(3)一時的復帰制御を燃料カット時に限定して行うことにより、ETC一時復帰処理を実行できる。
(4)一時的復帰制御をエンジン暖機完了後に限定して行うことにより、アイシングなどによって発生した一時的な絞り弁の異常であった場合には、暖機後の制御復帰を可能とし、フェールセーフ性を維持しながら最小限の運転性悪化に留めることを実現できる。
(5)一時的復帰制御における絞り弁開度の上限値を当該一時的復帰制御状態下の時間経過に伴ってデフォルト開度から徐々に大きくすることにより、時間経過に伴って絞り弁の動作範囲が増加し、フェールセーフ中の運転性の悪化を、より一層、軽減できる。
(6)現在の絞り弁開度が前記目標開度より低い状態が、一定時間経過すれば、絞り弁低開度閉じ側異常と診断し、フェールセーフ機能によるフェールセーフ状態に移行するから、このフェールセーフ状態時に一時的復帰制御した際に再度同じ異常が発生してもフェールセーフ性を阻害することなく再びフェールセーフに移行することができる。つまり、絞り弁の異常がデフォルト開度以下の低い開度であれば、フェールセーフ性を考慮したデフォルト開度以下の低い開度の異常であり、一時的復帰制御した際に再度同じ異常が発生してもフェールセーフ性を阻害することなく再びフェールセーフに移行することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 エンジン
2 燃焼室
3 エアクリーナ
4 入口部
5 空気流量計
6 絞り弁
7 絞り弁装置
8 コレクタ
9 アクセルセンサ
10 電動モータ
11 燃料タンク
12 燃料ポンプ
13 燃料噴射弁
14 可変燃圧プレッシャレギュレータ
15 コントロールユニット
16 クランク角センサ
17 点火コイル
18 スロットルセンサ
19 吸入空気管
20 A/Fセンサ
21 燃料系
22 点火プラグ
23 水温センサ
24 アクセルペダル
25 記憶手段
26 演算処理手段
27 カム軸
28 排気管
30 電源
31 モータドライバリレー
32 コントロールユニットリレー
33 イグニッションスイッチ
35 警告器
36 モータドライバ
40 弁軸
41 駆動部材
43 係合部材
44 リターンスプリング
45 デフォルトスプリング
46 全閉ストッパ
47 デフォルトストッパ
50 リンプホーム用リンク
51 アクセルリターンスプリング
52 全開ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気式アクチュエータによって開閉駆動され、目標開度に電気的に制御される内燃機関の絞り弁の制御装置であって、
絞り弁の異常時には、前記電気式アクチュエータによる前記絞り弁の駆動を停止して絞り弁開度をデフォルト機構によるデフォルト開度にするフェールセーフ機能を有し、
前記フェールセーフ機能によりフェールセーフ状態に移行した後、前記絞り弁の目標開度が前記デフォルト開度以下で、且つ前記目標開度が現在の絞り弁開度より閉じ側である場合には、前記電気式アクチュエータによる前記絞り弁の制御を一時的に復帰させる一時的復帰制御を行うことを特徴とする内燃機関の絞り弁制御装置。
【請求項2】
前記一時的復帰制御は、前記絞り弁の開度を前記デフォルト開度より閉じ側に限定して行うことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の絞り弁制御装置。
【請求項3】
前記一時的復帰制御は、更に燃料カット時に限定して行うことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の絞り弁制御装置。
【請求項4】
前記一時的復帰制御は、更にエンジン暖機完了後に限定して行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の内燃機関の絞り弁制御装置。
【請求項5】
前記一時的復帰制御における絞り弁開度の上限値を当該一時的復帰制御状態下の時間経過に伴って前記デフォルト開度から徐々に大きくすること特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の内燃機関の絞り弁制御装置。
【請求項6】
現在の絞り弁開度が前記目標開度より低い状態が、一定時間経過すれば、絞り弁低開度閉じ側異常と診断し、前記フェールセーフ機能によるフェールセーフ状態に移行することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の内燃機関の絞り弁制御装置。
【請求項7】
電気式アクチュエータによって開閉駆動され、目標開度に電気的に制御される内燃機関の絞り弁の制御方法であって、
絞り弁の異常時には前記電気式アクチュエータによる前記絞り弁の駆動を停止して絞り弁開度をデフォルト機構によるデフォルト開度にするフェールセーフを行い、フェールセーフ状態に移行した後、絞り弁の目標開度が前記デフォルト開度以下で、且つ前記目標開度が現在の絞り弁開度より閉じ側である場合には、前記電気式アクチュエータによる絞り弁の制御を一時的に復帰させる一時的復帰制御を行うことを特徴とする内燃機関の絞り弁制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−138917(P2010−138917A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66278(P2010−66278)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【分割の表示】特願2006−230323(P2006−230323)の分割
【原出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】