説明

内燃機関のEGRシステム、及びその制御方法

【課題】高圧段過給器4と低圧段過給器3を備えた2段過給式の内燃機関2のEGRシステムにおいて、始動時、低速低負荷運転状態、高速高負荷運転状態を含む、内燃機関2の全運転状態で、高効率なEGRシステム及びその制御方法を提供する。
【解決手段】高圧段過給器4と低圧段過給器3を備えた2段過給式の内燃機関2のEGRシステムであって、前記EGRシステム1が、前記高圧段タービン4Tと前記低圧段タービン3Tとの間の排気通路から、前記低圧段コンプレッサ3Cと前記高圧段コンプレッサ4Cとの間の吸気通路へ、第1EGR弁6を経由してEGRガスEを導入する第1EGR通路5と、前記内燃機関2の排気マニホールド12から吸気マニホールド11へ、第2EGR弁8を経由してEGRガスEを導入する第2EGR通路7と、前記低圧段過給器3に前記低圧段タービン3Tの回転軸に負荷をかける負荷制御装置13を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧段過給器と低圧段過給器を備えた2段過給式の内燃機関のEGRシステムに関し、より詳細には、内燃機関の全運転状態において高い割合でEGRを行うEGRシステム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン(内燃機関)の排気ガス中のNOx低減のために、排気ガスを吸気側に還流するEGR(Exhaust Gas Recirculation、排気ガス再循環)を行っている。EGRシステムは、エンジンで発生した排気ガスを、吸入空気と混合し、燃焼室に再度送り込むシステムである。
【0003】
また、他方でエンジンのNOx―PM(微粒子状物質)の排ガス性能及び燃費性能を向上するために、エンジンに複数の過給器を設置した多段過給ステムを採用している。この多段過給システムには、例えば2つの過給器を利用した2ステージターボシステムがあり、大容量の低圧段ターボチャージャ(低圧段過給器)と、小容量の高圧段ターボターボチャージャ(高圧段過給器)を直列に連結して構成している。この2ステージターボシステムにおいて、エンジンの低速低負荷運転状態では高圧段ターボチャージャで立ち上がりの早い過給を行い、高速高負荷運転状態では低圧段ターボチャージャで大流量の過給を行うように制御している。
【0004】
この2ステージターボシステムでは、エンジン回転、負荷の多様な運転状態において、容量の異なる複数のターボチャージャを並列もしくは直列、または単独で使用することにより、エンジンの各運転状態においてターボチャージャを最適な効率で利用することができる。このため、このシステムの採用により燃費を向上し、排気ガスを低減することができる。
【0005】
この多段過給システムに前述のEGRシステムを適用したエンジンが提案されている(例えば特許文献1参照)。図5に、この従来のEGRシステム1Xの概略を示し、以下に、多段過給システムである2ステージターボシステムに適用したEGRシステムの制御に関して説明する。
【0006】
まず、2ステージターボシステムの構成及び制御に関して説明する。エンジン2の低速低負荷運転状態では、高圧段コンプレッサ4C及び高圧段タービン4Tを有する高圧段ターボチャージャ4による過給を行い、このとき、吸入空気Aは、エアーフィルター14から、低圧段コンプレッサ3C、高圧段コンプレッサ4C、インタークーラ15a、吸気マニホールド11で構成する吸気系を経てエンジン2に供給する。エンジン2から排出された排気ガスGは、排気マニホールド12から、高圧段タービン4T、低圧段タービン3Tで構成する排気系を経て外界に排出する。
【0007】
エンジン2の高速高負荷運転状態では、低圧段コンプレッサ3C及び低圧段タービン3Tを有する低圧段ターボチャージャ3により過給を行い、このとき、吸入空気Aは、吸気切替えバルブ16の作動により、低圧段コンプレッサ3Cからインタークーラ15a、吸気マニホールド11を経てエンジン2に供給する。排気ガスGは、排気切替えバルブ17の開放により、エンジン2から排気マニホールド12、低圧段タービン3Tを経て排出する。つまり、高圧段ターボチャージャ4をバイパスするように制御している。
【0008】
次に、EGRシステムの構成及び制御に関して説明する。EGRシステムは一般的には
、EGRガスを冷却するためのEGRクーラ15cと、EGRガスの流量をコントロールする第2EGR弁8を介して、排気マニホールド12と吸気マニホールド11とを連結した第2EGR通路7により構成する。このEGRシステムをここでは、ハイプレッシャEGR(以下、HP−EGRという)と呼ぶ。
【0009】
また、異なるEGRシステムとして、EGRガスを冷却するためのEGRクーラ15bと、EGRガスの流量をコントロールする第1EGR弁6を介して、高圧段タービン4Tと低圧段タービン3Tの間の排気通路と、低圧段コンプレッサ3Cと高圧段コンプレッサ4Cの間の吸気通路とを連結した第1EGR通路5により構成するものもある。このEGRシステムをここでは、ロープレッシャEGR(以下、LP−EGRという)と呼ぶ。
【0010】
なお、EGRシステム1Xの制御は、第1EGR弁6、第2EGR弁8及び各種センサ(圧力センサ、温度センサ)18と、信号線で接続したECU(Engine Control Unit)と呼ばれる制御装置19で行う。
【0011】
2ステージターボシステムに、HP−EGRとLP−EGRの両方を適用したEGRシステム1Xによると、これらの2種類のEGRを、エンジンの運転状態により選択的に制御することで、排ガス中のNOx及びPM等を低減することができる。
【0012】
しかしながら、上記のHP−EGR及びLP−EGRは、それぞれ固有の問題点を有している。まず、例えばエンジン2を低速低負荷で運転する運転状態で、高圧段ターボチャージャ4を過給装置として使用して高過給を行い、燃費性能を向上させつつ、EGRを行って排気ガスの低減を行う場合の問題点を説明する。
【0013】
エンジン2の低速低負荷運転状態において、HP−EGRでは、EGRガスを高圧段タービン4T上流の排気マニホールド12内から取り込み、第2EGR通路7へ供給するため、高圧段タービン4Tに供給する排気ガスGの流量が減少する。このため、高圧段ターボチャージャ4の仕事量が減り、過給量が減るので、エンジン2に供給する吸入空気Aの量が減少する。このため、エンジン2に供給する空気量が不足して、スモークが発生すると共に、NOxの低減を行うことができなくなるという問題を有している。また、高圧段ターボチャージャ4が十分に仕事をしないため、効率の低い領域でターボチャージャを使用しなくてはならないという問題もある。
【0014】
また、エンジン2の低速低負荷運転状態において、LP−EGRでは、EGRガスを高圧段タービン4Tの下流のエキゾーストパイプから取り込み、第1EGR通路5へ供給するため、排気ガスGの全量を排気マニホールド12から高圧段タービン4Tに供給できる。この排気ガスGにより高圧段ターボチャージャ4が十分に仕事を行うため、LP−EGRの利用に関係なく、ターボチャージャを効率の高い領域で使用することができる。
【0015】
しかし、第1EGR通路5を流れる排気ガスGは、第1EGR通路5の入口部と出口部の圧力差、すなわち高圧段タービン4Tの下流領域と、高圧段コンプレッサ4Cの下流領域との圧力差により流れる構成となる。このEGRガスを流すための圧力差を作る必要があり、低圧段タービン3Tから下流の排気通路に排気絞り弁22を設置したり、エアークリーナ14から高圧段コンプレッサ4Cの間の吸気通路に吸気絞り弁を設置したりする必要がある。この排気絞り弁又は吸気絞り弁を使用した場合には、エンジン2が空気を吸い込むときの抵抗であるポンピングロスの増加を招き、エンジン出力性能に悪影響を与えるという問題を有している。
【0016】
また、吸気負圧の低いエンジン2の運転状態、すなわちターボチャージャによる過給が十分に行われていない状態では、第1EGR通路5の入口部と出口部の間で圧力差が得ら
れず、十分なEGRガスを流すことが不可能となるという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2007−100628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、高圧段過給器と低圧段過給器を備えた2段過給式の内燃機関のEGRシステムにおいて、始動時、低速低負荷運転状態、高速高負荷運転状態を含む、内燃機関の全運転状態で、高効率なEGRシステム及びその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するための本発明に係るEGRシステムは、吸気通路の上流側から順に低圧段過給器の低圧段コンプレッサと高圧段過給器の高圧段コンプレッサを設けるとともに、排気通路の上流側から順に高圧段過給器の高圧段タービンと低圧段過給器の低圧段タービンを設けた内燃機関のEGRシステムであって、前記EGRシステムが、前記高圧段タービンと前記低圧段タービンとの間の排気通路から、前記低圧段コンプレッサと前記高圧段コンプレッサとの間の吸気通路へ、第1EGR弁を経由してEGRガスを導入する第1EGR通路と、前記内燃機関の排気マニホールドから吸気マニホールドへ、第2EGR弁を経由してEGRガスを導入する第2EGR通路と、前記低圧段過給器に前記低圧段タービンの回転軸に負荷をかける負荷制御装置を有することを特徴とする。
【0020】
この構成により、低圧段タービンの回転軸に負荷をかけ、低圧段タービンの上流側の圧力を上昇させ、ここに連結した第1EGR通路の入口側圧力を上昇することができるため、排気ガスを効率的に第1EGR通路を通過させ、吸気側へ循環することができる。また、内燃機関から排出される排気ガスの全量を、高圧段タービンに供給し、高圧段過給器が効率的に仕事を行い、内燃機関への吸気量が増加するため、効率的にEGRを行うことができる。
【0021】
さらに、第1EGR通路を流れるEGRガスの流量を負荷制御装置により制御する構成により、排気通路上の排気絞り弁、及び、吸気通路上の吸気絞り弁を設置する必要がなくなり、ポンピングロス発生を抑制することができる。
【0022】
上記のEGRシステムにおいて、前記負荷制御装置が発電装置であることを特徴とする。この構成により、負荷制御装置から電気をエネルギーとして取り出すことができるため、エネルギー効率を向上することができる。
【0023】
上記の目的を達成するための本発明に係るEGRシステムの制御方法は、吸気通路の上流側から順に低圧段過給器の低圧段コンプレッサと高圧段過給器の高圧段コンプレッサを設けるとともに、排気通路の上流側から順に高圧段過給器の高圧段タービンと低圧段過給器の低圧段タービンを設け、前記高圧段タービンと前記低圧段タービンとの間の排気通路から、前記低圧段コンプレッサと前記高圧段コンプレッサとの間の吸気通路へ、第1EGR弁を経由してEGRガスを導入する第1EGR通路と、前記内燃機関の排気マニホールドから吸気マニホールドへ、第2EGR弁を経由してEGRガスを導入する第2EGR通路と、前記低圧段過給器に前記低圧段タービンの回転軸に負荷をかける負荷制御装置を有したEGRシステムの制御方法であって、前記内燃機関が第1の運転状態である際に、前記内燃機関に対して、前記高圧段過給器で過給を行い、前記負荷制御装置により前記低圧段タービンの回転軸に負荷をかけ、前記第1EGR弁を開として前記第1EGR通路でE
GRを行う第1制御を行うことを特徴とする。
【0024】
この構成により、例えば内燃機関の始動時、又は低速低負荷運転状態等の第1の運転状態において、排気ガスの全量を高圧段タービンに流して高圧段過給器の立ち上がりを迅速にし、かつ、負荷制御装置で負荷を加えることにより第1EGR通路の入口側の圧力を高めることができる。つまり、EGRの利用に関係なく高圧段過給器は仕事を行うことができ、かつ、第1EGR通路を介して十分な排気ガスを吸気側に供給することができる。
【0025】
上記のEGRシステムの制御方法において、前記負荷制御装置を発電装置として、前記内燃機関が第1の運転状態である際に、前記内燃機関に対して、前記高圧段過給器で過給を行い、前記発電装置により前記低圧段タービンの回転軸に負荷をかけ、前記発電装置で発生したエネルギーを蓄電装置に蓄電し、かつ、前記第1EGR弁を開として第1EGR通路でEGRを行う第1制御を行うことを特徴とする。この構成により、発電装置で発生した電気をエネルギーとして回収できるため、エネルギー効率を向上することができる。
【0026】
上記のEGRシステムの制御方法において、前記内燃機関が第2の運転状態である際に、前記内燃機関に対して、前記高圧段過給器で過給を行い、前記第2EGR通路でEGRを行う第2制御を行うことを特徴とする。この構成により、例えば、高圧段過給器が十分に回転している状態等の第2の運転状態においては、高圧段過給器に排気ガスを供給するよりも、第2EGR通路を使用したEGRを優先することができるため、EGRの効果を十分に得ることができる。さらに、負荷制御装置の作動を解除して、低圧段タービンの回転を加速させる構成により、高圧段過給器から低圧段過給器への切替えを円滑に行うための準備を同時に行うことができる。
【0027】
上記のEGRシステムの制御方法において、前記内燃機関が第3の運転状態である際に、前記内燃機関に対して、前記低圧段過給器で過給を行い、前記第2EGR通路でEGRを行う第3制御を行うことを特徴とする。この構成により、例えば、内燃機関の高速高負荷運転状態等の第3の運転状態において、低圧段過給器が十分に仕事を行い、大容量の過給を実現しながら、第2EGR通路を利用したEGRにより、排気ガスを効率的に内燃機関に再循環することができるため、高効率なEGRを実現することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る内燃機関のEGRシステム及びその制御方法によれば、低圧段過給器と高圧段過給器を有する2ステージターボシステムに、第1EGR通路と第2EGR通路を有するEGRシステムを導入し、かつ、低圧段タービンの回転軸に負荷をかける負荷制御装置を設置する構成により、始動時、低速低負荷運転状態、高速高負荷運転状態等を含む内燃機関の全運転状態で、高効率にEGRできるEGRシステム及びその制御方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る実施の形態のEGRシステムの構成を示した図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のEGRシステムの構成を示した図である。
【図3】本発明に係る実施の形態のEGRシステムの構成を示した図である。
【図4】本発明に係る実施の形態のEGRシステムの制御フローを示した図である。
【図5】従来の2ステージターボのEGRシステムの構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る実施の形態のEGRシステム及びその制御方法について、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明に係る実施の形態のEGRシステム1の構成を示しており、2ステージターボシステムに、第1EGR通路5及び第2EGR通路7を設置し
、低圧段タービン3Tの回転軸に負荷制御装置13を設置している。
【0031】
なお、第1EGR通路5は、入口部を、高圧段タービン4Tの下流で、かつ、低圧段タービン3Tの上流の排気通路に設け、出口部を低圧段コンプレッサ3Cの上流で、かつ、高圧段コンプレッサ4Cの下流の吸気通路に設けている。
【0032】
また、図1には吸入空気A、排気ガスG、及びEGRガスEの流れをそれぞれ矢印で示しており、各気体の流れは、エンジン(内燃機関)2が始動時又は低速低負荷運転状態等の第1の運転状態であり、過給を高圧段ターボチャージャ(高圧段過給器)4で行い、EGRを第1EGR通路5で行う第1制御の様子を示している。
【0033】
まず、各気体の流れに関して説明する。白抜き矢印で示す吸入空気Aは、エアークリーナ14から導入し、低圧段コンプレッサ3C、高圧段コンプレッサ4C、インタークーラ15a、吸気マニホールド11を介してエンジン2に供給する。
【0034】
黒塗り矢印で示す排気ガスGは、エンジン2から、排気マニホールド12、高圧段タービン4T、低圧段タービン3Tからマフラー(図示しない)を介して外界に排出する。線状の矢印で示すEGRガスEは、高圧段タービン4Tの下流で、かつ、低圧段タービン3Tの上流の排気通路から分岐した第1EGR通路5、EGRクーラ15b、第1EGR弁6を介して、低圧段コンプレッサ3Cの下流で、かつ、高圧段コンプレッサ4Cの上流の吸気通路に供給する。このEGRガスEは、吸入空気Aと共に高圧段コンプレッサ4Cに送る。
【0035】
ここで、第1EGR通路5の入口部から出口部に、EGRガスEを効率的に流すために、負荷制御装置13により低圧段タービン3Tの回転に負荷をかける。これは、低圧段タービン3Tの回転翼に負荷をかけることで行い、これにより排気ガスGが低圧段タービン3Tを通過する際の抵抗が増加する。このため、低圧段タービン3Tの上流、すなわち、第1EGR通路5の入口部の圧力が上昇する。この第1EGR通路5の入口部の圧力上昇により、第1EGR通路5の出口部との圧力差が大きくなるため、EGRガスEを効率的に流すことができるようになる。
【0036】
また、排気ガスGの全量が高圧段タービン4Tを通過するため、高圧段ターボチャージャ4が十分に働き、過給効率を向上することができる。さらに、負荷制御装置13を発電装置として、低圧段タービン3Tの回転エネルギーを回収する構成とすることにより、エネルギー効率を向上することができる。
【0037】
なお、負荷制御装置13及び第1EGR弁6等の制御や、エンジン2の運転状態の判断等は、図1に示す制御装置(ECU等)19や適宜設置した各種センサ18によって行うことができる。
【0038】
図2に、第2制御の様子を示す。この第2制御は、エンジン2が、低速低負荷運転状態から高速高負荷運転状態等の第2の運転状態に移行する過程の制御であり、過給を高圧段ターボチャージャ4で行うと共に、EGRを第2EGR通路7で行う制御である。この第2制御は、高圧段ターボチャージャ4が十分に働いている状態、すなわち、高圧段コンプレッサ3Cが十分に回転して過給を行っている状態(第2の運転状態)における制御である。
【0039】
このとき、吸入空気A及び排気ガスGは第1制御の場合と同様の通路を流れている。EGRガスEは、排気マニホールド12から、EGRクーラ15c、第2EGR弁8を介して吸気マニホールド11に供給する。つまり、この第2制御では、入口部を排気マニホー
ルド12に、出口部を吸気マニホールド11に設けた第2EGR通路7を介してEGRを行っている。
【0040】
ここで、この第2制御では、負荷制御装置13の動作を停止し、低圧段タービン3Tが、排気ガスGの通過により回転を加速していくように制御している。第2制御を行う状態では、高圧段ターボチャージャ4は十分に働くので、吸気負圧が上昇し、EGRガスEを吸気マニホールド11に効率的に導入することができるため、EGRの効率が向上する。
【0041】
なお、負荷制御装置13をモータ等の発電装置とした場合、この第2制御において、低圧段タービン3Tにこのモータで回転力を加えて、低圧段ターボチャージャ(低圧段過給器)3の立ち上がり時間を短縮する制御を加えてもよい。
【0042】
図3に、第3制御の様子を示す。この第3制御は、エンジン2が、高速高負荷運転状態等の第3の運転状態であり、過給を低圧段ターボチャージャ(低圧段過給器)3で行うと共に、EGRを第2EGR通路7で行う制御である。
【0043】
このとき、吸入空気Aを、エアークリーナ14から導入し、低圧段コンプレッサ3C、インタークーラ15a、及び吸気マニホールド11を介してエンジン2に供給する。つまり、吸入空気Aは、吸気切替えバルブ16の制御により、高圧段コンプレッサ4Cをバイパスしてエンジン2に供給する。排気ガスGは、排気マニホールド12から低圧段タービン3Tを介して外界に排出する。つまり、排気切替えバルブ17を開放する制御により、排気ガスGは、高圧段タービン4Tをバイパスして外界に排出する。EGRガスEは第2EGR通路7を介して、吸気マニホールド11に供給する。ここで、吸気切替えバルブ16及び排気切替えバルブ17は、図示しない制御装置により制御している。
【0044】
この第3制御では、負荷制御装置13の動作を停止しており、低圧段ターボチャージャが十分に仕事を行うので、大容量の過給を実現しながら、第2EGR通路7を利用したEGRにより、排気ガスGを効率的にエンジン2に再循環できるため、高効率なEGRを実現することができる。
【0045】
図4に、EGRシステム1の制御フローを示す。EGRシステム1は、S2で高圧段ターボチャージャ4を使用していると判断し、かつ、S3でエンジン2が始動状態又は低速低負荷運転状態であると判断した場合(第1の運転状態)は第1制御を行う(S10〜S13、及びS41〜S42)。つまり、S10で第1EGR通路5を使用する第1制御を開始し、まず、負荷制御装置13を作動し(S11)、第1EGR通路5の入口部の圧力を上昇させ(S12)、第1EGR弁6を開放して(S13)、EGRガスEを吸気側に供給する(S4)制御を行う。また、負荷制御装置13を発電装置とした場合は、負荷制御装置13により発電を行ない(S41)、バッテリー等の蓄電装置へ蓄電する(S42)制御を行う。
【0046】
なお、負荷制御装置13及び第1EGR弁6等の制御や、エンジン2の運転状態の判断及び排気通路内の圧力上昇等の判断は、図1に示す制御装置(ECU等)19や適宜設置した各種センサ18によって行うことができる。
【0047】
また、EGRシステム1は、S2で高圧段ターボチャージャ4を使用していると判断し、かつ、S3でエンジン2が始動状態、又は低速低負荷運転状態でないと判断した場合(第2の運転状態)は第2制御を行う(S20〜S23)。つまり、S20で第2EGR通路7を使用する第2制御を開始し、まず、負荷制御装置13を停止し(S21)、第2EGR弁8を開放して(S23)、EGRガスEを吸気側に供給する(S4)制御を行う。
【0048】
また、負荷制御装置13をモータ等の発電装置とした場合に、バッテリー等の蓄電装置からモータに給電し、低圧段タービン3Tに回転力を付加する構成としてもよい。この構成により、低圧段ターボチャージャ3の立ち上がり時間が短縮され、過給効率を向上することができる。
【0049】
また、EGRシステム1は、S2で高圧段ターボチャージャ4を使用していない、すなわち、低圧段ターボチャージャ3により過給が行われている状態と判断した場合(第3の運転状態)は、第3制御を行う(S30〜S33)。つまり、S30で第3制御を開始し、まず、負荷制御装置13の停止を確認し(S31)、第2EGR弁8を開放して(S33)、EGRガスEを吸気側に供給する(S4)制御を行う。
【0050】
次に、制御の具体例として、例えば、エンジン2が停止状態から加速し、高速高負荷運転状態に至る場合の制御を説明する。まず、エンジン始動時には、第1制御を選択し(S10)、エンジン2は第1EGR通路5でEGRを行いながら加速していく。エンジン2の加速に伴い、高圧段ターボチャージャ4の回転数が上昇し、十分な回転数と判断した場合(S3)、第2制御への移行(S20)を開始する。すなわち、負荷制御装置13を停止し、第1EGR弁6を閉止し、第2EGR弁8を開放する。ここで、高圧段ターボチャージャ4の回転数の判断(S3)は、例えば高圧段コンプレッサ4Cの上流の吸気通路に設置した圧力センサ18等で、吸気負圧を計測して行うことができる。
【0051】
エンジン2の更なる加速に伴い、高圧段ターボチャージャ4から低圧段ターボチャージャ3による過給に切替えた場合、第3制御への移行(S30)を開始する。この高圧段ターボチャージャ4から低圧段ターボチャージャ3への切り替えは、従来の2ステージターボシステムの制御を利用することができる。つまり、EGRシステム1は、EGRの制御と、2ステージターボの制御を同時に行う構成とする。
【0052】
以上のように、エンジン2の運転状態に合わせて、第1制御、第2制御及び第3制御を選択して、EGRを行う構成により、エンジン2の全運転状態において、効率的にEGRを行うことが可能となる。特に、エンジン2の始動時又は低速低負荷時におけるEGRの効率を向上し、NOxの削減を実現したEGRシステムを提供することが可能となる。
【0053】
なお、他の運転状態では、基本的に第2EGR通路7を使用し、ターボチャージャ3、4の運転領域については、この第2EGR通路7の利用を前提として作成した運転マップにより制御する。
【符号の説明】
【0054】
1 EGRシステム
2 エンジン(内燃機関)
3 低圧段ターボチャージャ(低圧段過給器)
3C 低圧段コンプレッサ
3T 低圧段タービン
4 高圧段ターボチャージャ(高圧段過給器)
4C 高圧段コンプレッサ
4T 高圧段タービン
5 第1EGR通路
6 第1EGR弁
7 第2EGR通路
8 第2EGR弁
11 吸気マニホールド
12 排気マニホールド
13 負荷制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路の上流側から順に低圧段過給器の低圧段コンプレッサと高圧段過給器の高圧段コンプレッサを設けるとともに、排気通路の上流側から順に高圧段過給器の高圧段タービンと低圧段過給器の低圧段タービンを設けた内燃機関のEGRシステムであって、
前記EGRシステムが、前記高圧段タービンと前記低圧段タービンとの間の排気通路から、前記低圧段コンプレッサと前記高圧段コンプレッサとの間の吸気通路へ、第1EGR弁を経由してEGRガスを導入する第1EGR通路と、
前記内燃機関の排気マニホールドから吸気マニホールドへ、第2EGR弁を経由してEGRガスを導入する第2EGR通路と、
前記低圧段過給器に前記低圧段タービンの回転軸に負荷をかける負荷制御装置を有することを特徴とするEGRシステム。
【請求項2】
前記負荷制御装置が発電装置であることを特徴とする請求項1に記載のEGRシステム。
【請求項3】
吸気通路の上流側から順に低圧段過給器の低圧段コンプレッサと高圧段過給器の高圧段コンプレッサを設けるとともに、排気通路の上流側から順に高圧段過給器の高圧段タービンと低圧段過給器の低圧段タービンを設け、
前記高圧段タービンと前記低圧段タービンとの間の排気通路から、前記低圧段コンプレッサと前記高圧段コンプレッサとの間の吸気通路へ、第1EGR弁を経由してEGRガスを導入する第1EGR通路と、
前記内燃機関の排気マニホールドから吸気マニホールドへ、第2EGR弁を経由してEGRガスを導入する第2EGR通路と、
前記低圧段過給器に前記低圧段タービンの回転軸に負荷をかける負荷制御装置を有したEGRシステムの制御方法であって、
前記内燃機関が第1の運転状態である際に、前記内燃機関に対して、前記高圧段過給器で過給を行い、前記負荷制御装置により前記低圧段タービンの回転軸に負荷をかけ、前記第1EGR弁を開として前記第1EGR通路でEGRを行う第1制御を行うことを特徴とするEGRシステムの制御方法。
【請求項4】
前記負荷制御装置を発電装置とした前記EGRシステムの制御方法であって、
前記内燃機関が第1の運転状態である際に、前記内燃機関に対して、前記高圧段過給器で過給を行い、前記発電装置により前記低圧段タービンの回転軸に負荷をかけ、前記発電装置で発生したエネルギーを蓄電装置に蓄電し、かつ、前記第1EGR弁を開として第1EGR通路でEGRを行う第1制御を行うことを特徴とするEGRシステムの制御方法。
【請求項5】
前記内燃機関が第2の運転状態である際に、前記内燃機関に対して、前記高圧段過給器で過給を行い、前記第2EGR通路でEGRを行う第2制御を行うことを特徴とする請求項3又は4に記載のEGRシステムの制御方法。
【請求項6】
前記内燃機関が第3の運転状態である際に、前記内燃機関に対して、前記低圧段過給器で過給を行い、前記第2EGR通路でEGRを行う第3制御を行うことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1つに記載のEGRシステムの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−249022(P2010−249022A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99279(P2009−99279)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】