説明

内燃機関用潤滑剤システムの燃焼副生成物を減少するための原料およびその方法

【解決手段】潤滑剤の性能を増すために、内燃機関内で使用可能な潤滑剤添加物の性能を置換または補完するよう調整されたオイルフィルターを有する潤滑システムについて説明する。前記潤滑剤の調製は、前記オイルフィルターに置かれる化学物質に従って変更される。例えば、前記オイルフィルターが強塩基を含む場合、前記潤滑剤の洗浄剤濃度は減少し、場合によってはゼロになるが、前記潤滑剤の分散剤濃度は増す。前記分散剤は、ピストンリング域で燃焼生成酸を中和するのに理想的な弱塩基であり、結果的に生成される弱塩基−燃焼生成酸複合体を前記オイルフィルター内の強塩基まで運び、前記強塩基とイオン交換をし、前記オイルフィルター内の酸を固定化し、前記分散剤を酸中和剤として再利用するために前記ピストンリング域に再び戻す。前記潤滑剤の洗浄剤の低減または除去は排ガスフィルターの汚染を削減し、ピストンのようなエンジン部品のデポジット生成を低減する。前記オイルフィルターは、前記潤滑剤に徐放される添加物も含む場合がある。たとえば、ZnDDP耐摩耗剤を前記オイルフィルターから徐放して前記潤滑剤に導入することができる。ZnDDPは低分子量のアルキル基を有するので、前記潤滑剤における溶解性が限られている。その徐放速度は前記潤滑剤内の添加物の平衡濃度によって制限される。結果として、前記潤滑剤の添加物濃度を比較的一定に維持することができる。その結果得られる閉鎖されたシステムは、オイルドレン間隔を有意に延長することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2005年5月20日付で出願された米国特許出願第11/133,530号明細書からの優先権を主張し、この特許出願の一部継続出願である2005年11月18日付で出願された米国特許出願第11/283,435号明細書に対する優先権を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、内燃機関と共に使用するための潤滑システムに関し、より具体的には、前記内燃機関を潤滑する潤滑剤の性能を低減することなく燃焼副生成物の生成を減少する潤滑システムに関する。
【背景技術】
【0003】
内燃機関の稼働中、炭化水素燃料および酸素は窒素の存在下で燃焼する。前記燃料は主に二酸化炭素と水に変換され、非常に高い気圧を生成してピストンを移動し、エンジン出力を生成する。この燃焼によって、有機酸、硫酸、および窒素系の酸を含む汚染物質、および不完全燃焼により生成される煤も生成される。シリンダー内径との接触若しくは吹き抜けガスによってこれらの汚染物質が潤滑油に混入すると、好ましくないエンジン磨耗、腐食、オイル粘度の増加、および不要なデポジットが発生する。腐食、磨耗、および粘度の増加はエンジン性能を低下させる。ピストン上若しくはピストン近くのデポジットにより潤滑剤がピストンリングを通過すると、この潤滑剤は燃焼チャンバ内で燃焼し、前記燃焼に比例した経済的損失を引き起こす。ピストンデポジットにより燃焼ガスもピストンリングを吹き抜け、前記潤滑剤にさらに多くの酸と煤が混入する。
【0004】
これらの問題に対処するために、潤滑剤添加物(主に洗浄剤および分散剤)が使用される。洗浄剤はピストンデポジットの制御に効果があり、分散剤は煤とスラッジの生成による粘度の増加を制御する効果がある。洗浄剤および分散剤は両方とも、燃焼生成酸を中和する効果がある。しかし、これらの添加物には限界がある。第1に、洗浄剤および分散剤が燃焼生成酸を中和するにつれ、前記洗浄剤および分散剤は溶解性または分散性の種の酸アルカリ複合体若しくは塩としてエンジン潤滑剤に蓄積される。これらの種の溶解性は、前記潤滑剤がそのような比較的極性の生成物を蓄える能力を制限する。溶解性上限を超えると、これら極性副生成物の一部は沈降し、ピストンに沈着してデポジットとなる。例えば、SAE論文第861517号(International Fuel & Lubricants Meeting、10月6日〜9日でAlan SchetelichおよびPat Fettermanは、ディーゼル機関で洗浄剤レベルが高い場合、ピストンデポジットの最高35%が前記洗浄剤から生成されると報告している。明らかに、洗浄剤濃度の増加は好ましくない結果を招く。第2に、分散剤濃度が高いと、特に低温で潤滑剤の粘度が増し、高粘度は潤滑剤およびエンジンの効率を低減させる。通常、分散剤は洗浄剤より高い溶解限度を有し、より高価である。よって、前記潤滑剤に追加可能な分散剤の量は粘度および経済性によって制限される。第3に、洗浄剤および分散剤はどちらも化学当量の添加物である。触媒活性材料と異なり、各分子は前記機能を一度果たすのみであり、各分子の能力は限定されている。
【0005】
より清浄で効率的なエンジンを目指しエンジン技術が進歩するにつれ、潤滑剤および添加物は追加的な制限に直面している。そのようなエンジン改良の1つは排ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation:EGR)であるが、これは煤および酸のレベルを増し(特にディーゼル機関の場合)、潤滑剤および添加物に負担をかけるものである。EGRは望ましくない種の排気ガスの環境放出を低減するが、より高温で稼動するため、前記潤滑剤および添加物の劣化を速める。ガソリンエンジンの改良では、より良い燃料経済性を求めて燃焼温度を上げることにより、より多くの酸が生成される。
【0006】
さらに、潤滑剤添加物に含まれる特定の成分は排ガス後処理システムを汚染し、前記システムの効果を制限する。これらの成分(硫酸塩灰分、リン、および硫黄(sulfated ash,phosphorus and sulfur:SAPS))は、前記潤滑剤の燃焼によって前記システムに混入される。そのような後処理システムの1つであるディーゼル粒子フィルター(Diesel Particulate Filter:DPF)は、ディーゼル機関の排ガスから固形物を除去するものである。これら粒子フィルターは微粒子を捉え、捉えた物質を燃焼することによって再生する。しかし、サイクルを重ねるにつれ、前記潤滑剤からの不燃性物質(洗浄剤および耐磨耗性金属性添加物)が蓄積し、前記フィルターを汚染する。このような汚染の問題に前記潤滑剤がどの程度貢献するかは、前記潤滑剤のSAPSを分析することにより正確に予測される。もう1つの排ガス後処理システムは、ディーゼル機関から窒素酸化物(NO)を除去するものである。潤滑剤から派生するSAPSはこのシステムを部分的に汚染し、前記システムの効果を低減する。
【0007】
そのような後処理機構は、国が定める排出量制限を満たす必要があり、特定の性能要件を有する。例えば、米国環境保護局は、全ての高負荷DPFは洗浄または交換前に150,000マイル稼動しなければならないと義務付けている。結果的に、潤滑剤基準を設定する機関は、商業用潤滑剤のSAPSにかかる制限を設けた。
【0008】
上述の問題を回避するには、性能を維持するよう慎重なバランスでいくつかの添加物を低減若しくは交換する必要がある。例えば、亜鉛ジアルキルジチオリン酸(zinc dialkyldithio phosphate:ZnDDP)は、潤滑剤添加物として用いると耐磨耗剤および酸化防止剤という2つの働きをし、前記濃度はそれら両方の役割によって決定される。しかし、ZnDDPに含まれるリンは排ガス触媒を汚染するものでもある。よって、排ガス後処理システムへの影響を避けるためにZnDDP濃度を減らすには、SAPSを含有しない酸化防止剤または耐磨耗剤の増強が必要となる場合がある。潤滑剤から派生するSAPSの出所となる添加物はその他にもあり、後処理システムの汚染を防ぐためにこれらを低減若しくは排除しなくてはならない場合がある。例えば、洗浄剤は硫酸塩灰分を増加する硫黄および金属を含有する。
【0009】
したがって、EGRから派生する煤および酸、および高温によって潤滑剤の汚染は進み、その他の排出ガス低減技術はこれらの副生成物を軽減するための添加物の一部の濃度を低下することを必要とする。現在の模範的な潤滑剤調製では、前記潤滑剤の洗浄剤レベルを低減しつつ、前記潤滑剤に混入する酸が増加してもそれを十分に中和する唯一の方法は、オイルドレン間隔を短くすることである。しかし、このやり方には厳しい経済的不利益が伴う。頻繁なオイルドレンは好ましいものではなく、直接および間接的に消費者にコスト負担をかけるものであり、環境に与える影響もある。オイルドレンの度に消費者は新しいフィルター、潤滑剤、および機械工賃というコストを負担することになり、商業用トラックの場合はこれに配送時間の損失が加わる。消費者はフィルターおよび潤滑剤のリサイクルまたは廃棄という非間接的なコストも負担する。また、消費者は使用済みエンジンオイルの不適切な廃棄に伴う環境への被害も被る。これに対し、オイルドレン間隔が延びることは貴重な資源を保存することになる。一般に潤滑剤添加物のレベルによってオイルドレン間隔が定まるので、潤滑剤産業は性能仕様における添加物濃度の上限できるだけ維持しようとする。加えて、潤滑剤産業は、旧式のエンジンでも新調製が十分に性能を発揮するよう、旧式のものに対しても適合性を維持しなければならない。
【0010】
Brownawellらに与えられた先行技術特許(米国特許第4,906,389号明細書、米国特許第5,068044号明細書、米国特許第5,069,799号明細書、米国特許第5,164,101号明細書、および米国特許第5,478,463号明細書)は、オイルフィルターに強塩基を固定化することによってピストンデポジットを低減することを教示しており、係属中の米国特許出願第11/133,530号明細書は酸の保持能力を最大にするために前記強塩基を最適化する方法を教示している。これらの開示はデポジットに対処する可能性のある1つの方法であるが、従来の潤滑剤と併用した場合、より広範な上述の問題を解決することにならない。エンジン潤滑技術はよりよい方法を明らかに必要としている。
【0011】
燃焼副生成物を制御する別の方法は、オイルがフィルターを通って循環するにつれ副生成物を捕えることができるオイルフィルターおよび/または潤滑油添加物を補給することができるオイルフィルターを化学濾過媒体に含めることである。例えば、Brownawellらは上述の特許の中で、オイルフィルターに強塩基材料を含めることによって、前記オイルフィルターに運ばれる燃焼生成酸を燃焼生成酸−弱塩基複合体という形に固定化することを教示している。通常、商業用潤滑剤は、一般に分散剤と称される溶解性弱塩基を使用することによって燃焼生成酸を中和し、粘度の増加を制御する。前記弱塩基と燃焼生成酸の相互作用によって溶解性中性塩が作られ、この中性塩は内燃機関のピストンリングからの潤滑油と共に前記オイルフィルターに運ばれる。前記オイルフィルターで固定化された強塩基材料が前記複合体からの弱塩基を置換することによって前記オイルフィルターの燃焼生成酸が固定化され前記弱塩基がリサイクルされることにより、後に生成される燃焼生成酸が中和される。実際、これはイオン交換であって、前記オイルフィルターに含まれる強塩基を前記燃焼生成酸−弱塩基複合体の弱塩基と交換するのである。結果として、前記弱塩基が再生され前記潤滑剤と共にリサイクルされることにより、さらに多くの酸が中和される。前記燃焼生成酸の固定化、および洗浄剤および分散剤の再利用によって、オイルドレン間隔を延ばすことができる。
【0012】
上述の特許の発明者らは、特定の強塩基材料を1つだけ特定している(ICI/Katalco製Catalyst 75−1)。以下の詳細な説明において述べるように、この材料は、燃焼生成酸−弱塩基複合体を受容するために使用可能な表面積が限られている。
【0013】
上記を鑑み、エンジン性能に悪影響を与えずに潤滑剤のSAPSレベルを有意に低減する潤滑システムが今なお必要である。具体的には、排ガス後処理システムを汚染する汚染物質を燃焼生成するSAPS含有添加物の使用を最低限に留める潤滑システムが望まれる。本発明は本技術におけるこれらのニーズに対処するものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ガソリンまたはディーゼルを燃料とする内燃機関用の新しい潤滑パラダイムを包含するものであり、本発明の潤滑システム(化学オイルフィルターのような装置を有する)、特殊潤滑剤、および/または補充オイルを統合された装置として協調動作することにより、前記エンジンおよびその付属品の性能を維持する。言い換えれば本発明は、これまでの前記エンジンを保護する潤滑剤というものから、化学オイルフィルター、潤滑剤、および/または補充オイルを有する潤滑システムへと焦点を移すものである。本発明の潤滑システムはエンジンデポジットを最低限に減らし、効率的なエンジン潤滑を維持し、効果的な排ガス低減を可能にし、不要な経済的不利益を防ぐ。前記化学フィルターはオイルドレン間隔全体を通して前記エンジン外部で酸を固定化し、分散剤を再生し、前記オイルフィルターおよび前記潤滑剤の酸化防止性を高め、潤滑剤に含まれる、リンおよび硫黄を含有する耐磨耗添加物の濃度を管理するほか、その他の役割も果たすものである。前記化学フィルターと協調し、前記特別調製潤滑剤はエンジン潤滑を維持すると同時に排ガス後処理システムを適正に機能させることができ、補充オイルはエンジン稼働中に消費された重要な添加物およびオイルの交換を可能にする。前記潤滑剤および補充オイルの調製は、前記化学オイルフィルターに使用される材料によって異なる場合がある。
【0015】
本発明は、内燃機関潤滑システムを含むものであり、このシステムは、例えば通常のエンジン稼働中に時間が経つにつれて潤滑システムの潤滑剤の容量が減るなどして失われる添加物を置換する特別調製の補充オイルを用いることにより低レベルの潤滑剤添加物の燃焼副生成物を生成するよう適応される。前記システムは前記潤滑剤と液体伝達する装置を有し、前記装置は潤滑剤添加物の機能を補完若しくは置換するための手段と、硫酸塩灰分、リン、および硫黄(SAPS)のレベルが低減された特殊潤滑剤と、稼働中に失われた一部の潤滑剤の容量とほぼ同等の容量の補充オイルとを有するものであり、前記補充オイルが有する1若しくはそれ以上の潤滑剤添加物は実質的に増量されている。本発明のシステムは前記3つのSAPSレベルの少なくとも1つを、高性能を維持しつつ現在のSAPS要件を満たすよう調製された従来の潤滑剤に比べ最低10%から最高90%削減することを可能にする。
【0016】
本発明の潤滑剤システムは一体化されており、前記構成要素は相互関連している。例えば、前記システムのオイルフィルターが強塩基を含む場合、前記潤滑剤の洗浄剤濃度は減少し、場合によってはゼロになる。しかし、前記潤滑剤の分散剤濃度は同一のままであるか、若しくは増加する。前記分散剤は適切な弱塩基としてピストンリング周辺で燃焼生成酸を中和し、その結果得られる弱塩基−燃焼生成酸複合体を前記オイルフィルターの強塩基まで運ぶので、その濃度は重要である。前記強塩基に運ばれた前記分散剤は前記強塩基とのイオン交換を経て、固定化された酸を前記化学オイルフィルターに残し、前記ピストンリング周辺にリサイクルされ、酸中和剤として再利用される。よって、前記化学オイルフィルターの強塩基の量および洗浄剤濃度は洗浄剤濃度の決定に役立つ。前記潤滑剤から洗浄剤を低減若しくは除去することでSAPSが減り排ガス後処理システムの汚染が減少し、ピストンのようなエンジン部品のデポジット生成が減少する。
【0017】
本発明の別の実施形態において、前記化学オイルフィルターは、制御された方法で前記潤滑剤に徐々に添加される添加物も含む場合がある。1例において、前記オイルフィルターから放出されるZnDDP耐摩耗性添加物によって前記潤滑剤を補完する。1つの具体的な実施形態において、ZnDDPの低分子量のアルキル基または低溶解性のアリール基は前記潤滑剤におけるZnDDPの溶解性を制限する。この材料の平衡での溶解性により、前記潤滑剤の添加物の濃度が制限される。結果として、前記潤滑剤の添加物濃度は一定に維持される。別の実施形態では、拡散制御によって前記潤滑剤に前記添加物を徐放する。さらに別の実施形態では、前記添加物を前記潤滑剤に計量添加する。
【0018】
ZnDDPの徐放は、この低く一定した濃度を実現し、強化された酸化防止性と相まって前記潤滑システムに必要なこの耐磨耗/酸化防止添加物の全体量および燃焼生成物であるSAPSを低減する。本発明にしたがった計量、溶解性、または拡散制御による耐磨耗添加物の徐放速度は、この目的を達成するものである。
【0019】
ZnDDP添加物が強力な酸化防止剤および耐磨耗添加物として機能することはよく知られている。Willermetは、酸化防止剤として機能しているZnDDPの分子は耐磨耗性を発揮することができないことを示した(P.A.Willermet、P.A.Mahoney、およびC.M.Haas、ASLF Trans 22(1979)301)。よって、溶解性無灰酸化防止剤および/または固定化された酸化防止剤によってZnDDPの効果を伸ばすことができる。本発明の1実施形態において、固定化されたヒドロペルオキシド分解剤および/または遊離基捕捉剤を本発明のシステムのオイルフィルターに組み込むことができる。前記に固定化することができる適切なヒドロペルオキシド分解剤は前述のBrownawellらの特許(米国特許第4,997,546号明細書、第5,112,482号明細書および第5,209,839号明細書)に教示されている。前記ヒドロペルオキシド分解剤を前記オイルフィルターに組み込むことにより、通常よりも高い割合のZnDDP分子が耐磨耗性を発揮できるので、前記潤滑剤のZnDDP濃度がさらに低減される。別の実施形態において、前記潤滑剤はより高い濃度の溶解性酸化防止剤(特に無灰酸化防止剤)も含む場合がある。
【0020】
従来の潤滑システムでは、ZnDDPは比較的速い速度で分解する。耐磨耗性をオイルドレン間隔全体を通し維持するには、初期充填される潤滑剤に十分なZnDDPが含まれている必要がある。新しいオイルに含まれるリンのレベルが高いと、リンに対する反応性の高い触媒のリン汚染が高まる。オイルドレン間隔全体を通してリンのレベルを一定の低めの濃度に維持することができれば有益であろう。したがって、本発明の実施形態はZnDDPを通常の濃度より低い濃度で含む潤滑剤若しくはZnDDPを含まない潤滑剤を用いる。
【0021】
前記潤滑剤の調製が変われば補充オイルの調製も変更される。前記補充オイルは、消費される潤滑剤に含まれる添加物を置換することによってオイルドレン間隔を延ばすことを目的として調製される。前記潤滑剤では異なる添加物が異なる速度で消費されるので、前記補充オイルの組成は前記潤滑剤と異なる場合があるものと理解される。また、しばしば補充オイルは前記潤滑剤が10%消費されたときに追加されるものと理解される。よって、様々な添加物の濃度を初期充填時の新しい潤滑剤とほぼ同等に戻すために、前記補充オイルには前記潤滑剤とは異なる割合で添加物が含まれることになる。本システムの分散剤はリサイクルされ、例えば煤およびスラッジの分散若しくは酸化による分解によって、常にゆっくりと消費される。無灰酸化防止剤はその機能を発揮しつつ消費され、粘度調整剤は、せん断安定性のある粘度調整剤を使用するかどうかによって異なる速度で機能劣化する。よって、ほとんどの場合、前記補充オイルは潤滑剤としてではなく、前記潤滑剤を補完するものとして調製される。しかし、貯蔵や使用を容易にするためなど、場合によっては前記補充オイルに前記潤滑剤と同一の組成を持たせることが経済的である。
【0022】
本発明の実施形態は内燃機関潤滑システムに関するものであり、この潤滑システムは、化学オイルフィルターによる助けのない任意の潤滑剤調製に起こり得るSAPSレベルより低いSAPSレベルに下げる潤滑システムを提供することによって、潤滑剤添加物の燃焼副生成物を低レベルにするよう適応されたものである。そのように低減されたSAPSレベルは、高性能で現在のSAPS要件を満たす従来の潤滑剤調製のSAPSレベルを最低10%から最高90%削減することができる。このシステムは、前記潤滑剤と液体伝達する装置を含み、この装置は潤滑剤添加物の機能を補完若しくは置換する。1実施例において、前記装置は強塩基または酸化防止剤のような物質を含み、この物質は、潤滑剤の潤滑剤添加物の必要性を減らすよう前記潤滑剤添加物の機能を補完若しくは置換するよう適応される化学と組み合わされた基質である場合がある。
【0023】
別の観点において、本発明が提供する内燃機関潤滑システムは、低レベルの潤滑剤添加物の燃焼副生成物を生成するよう適応され、任意の最大レベルのSAPSに相当する潤滑剤添加物レベルより低いレベルの潤滑剤添加物と、前記潤滑剤と流体接触しており少なくとも1つの潤滑剤添加物を前記潤滑剤に徐放する装置を有する。この装置として化学フィルター若しくは計量装置が可能である。前記潤滑剤添加物を耐磨耗剤、洗浄剤、極圧添加剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、有機酸中和剤、腐食抑制剤、分散剤、粘度指数改良剤、流動点降下剤、流れ改良剤、制泡剤、霧抑制剤、曇り点降下剤、または腐食抑制剤から選択すること、若しくはそれらの組み合わせとすることが可能である。そのように作られた潤滑システムは、本発明のシステムなしに高性能レベルにある従来の潤滑剤のSAPSレベルより最低10%から最高64%低いSAPSレベルを維持する。
【0024】
本発明のその他の観点は、低レベルの潤滑剤添加物の燃焼副生成物を生成するよう適応された内燃機関潤滑システムを含み、この潤滑システムは任意の最大SAPSレベルに相当する前記潤滑剤添加物のレベルより低いレベルの潤滑剤添加物と、前記潤滑剤と流体接触した装置とを有し、この装置は、前記燃焼副生成物と相互作用する添加物の機能を補完若しくは置換する能力のある固定化された化学種を有する。そのような潤滑剤との組み合わせにより前記装置は、本発明の前記装置なしに高性能レベルにある従来の潤滑剤のSAPSレベルより最低10%から最高70%低いSAPSレベルを可能にする。
【0025】
追加的観点において、本発明は低レベルの潤滑剤添加物の燃焼副生成物を生成するよう適応された内燃機関潤滑システムを提供し、このシステムは、固定化された強塩基を有する装置と、前記装置なしに同等の高レベルの性能を実行するように調製された潤滑剤に含まれる洗浄剤のレベルより低いレベルの洗浄剤を有する潤滑剤とを有する。
【0026】
その他の観点において、本発明は低レベルの潤滑剤添加物の燃焼副生成物を生成するよう適応された内燃機関潤滑システムを提供し、このシステムは、固定化された酸化防止剤を有する装置と、前記装置なしに同等の高レベルの性能を実行するように調製された潤滑剤に含まれるZnDDPのレベルより低いレベルのZnDDPを有する潤滑剤とを有する。
【0027】
本発明の一部の観点は、低レベルの潤滑剤添加物の燃焼副生成物を生成するよう適応された内燃機関潤滑システムを含み、このシステムは、耐磨耗剤を潤滑剤に徐放する能力のある装置と、前記装置なしに同等の高レベルの性能を実行するように調製された潤滑剤に含まれる耐磨耗剤のレベルより低いレベルの耐磨耗剤を有する潤滑剤とを有する。
【0028】
その他の観点において、本発明は、低レベルの潤滑剤添加物の燃焼副生成物を生成するよう適応された内燃機関潤滑システムを提供し、このシステムは、摩擦調整剤を潤滑剤に徐放する能力のある装置と、前記装置なしに同等の高レベルの性能を実行するように調製された潤滑剤に含まれる摩擦調整剤のレベルより低いレベルの摩擦調整剤を有する潤滑剤とを有する。
【0029】
さらにその他の観点において、本発明は、低レベルの潤滑剤添加物の燃焼副生成物を生成するよう適応された内燃機関潤滑システムを提供し、このシステムは、約0.9重量%以下の硫酸塩灰分含有量および/または約0.1重量%以下のリン含有量を生成する潤滑剤添加物を有する潤滑剤と、前記潤滑剤と流体接触しており前記潤滑剤との相互作用により前記潤滑剤添加物の少なくとも1つの機能を実行若しくは補完する装置とを有する。
【0030】
本発明は、低レベルの潤滑剤添加物の燃焼副生成物を生成するよう適応された内燃機関潤滑システムをさらに提供し、このシステムは、約0.9重量%以下の硫酸塩灰分含有量および/または約0.1重量%以下のリン含有量を生成する潤滑剤添加物を有する潤滑剤と、前記潤滑剤と流体接触した装置とを有し、前記装置には、前記燃焼副生成物と相互作用する添加物の機能を補完若しくは置換する能力を持つ化学種が固定化されている。
【0031】
本発明は、内燃機関潤滑システム内で使用するための装置をさらに含み、前記装置は潤滑剤と流体接触しており、潤滑剤添加物を含む濾過媒体(または多孔性支持体)を有し、前記潤滑剤添加物の平衡溶解性を制御することによって前記潤滑剤添加物は時間をかけて前記潤滑剤に徐放される。
【0032】
本発明のその他の観点は内燃機関を潤滑する方法を提供し、この方法は、潤滑を必要とする前記内燃機関と部分的に流体接触した潤滑システム内を循環する潤滑剤を提供する工程と、潤滑剤添加物の機能を実行若しくは補完する、前記潤滑剤と流体接触した装置を提供する工程とを有し、前記潤滑剤は任意の最大SAPSレベルに相当する前記潤滑剤添加物のレベルより低いレベルの前記潤滑剤添加物を有する。
【0033】
新規発明のこれらおよび他の様々な特徴、およびそれらの各々が持つ利点は、本明細書の付属であり本明細書に含まれる請求項に記述されている。しかし、本発明の観点をよりよく理解するには、本明細書の追加的部分であり好ましい実施形態を図示する図およびそれらに付随する説明を参照すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明は、本発明の開示の一部を成す付属の図1〜29と共に、図の実施形態および好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明を参照することにより、よりよく理解することができる。本明細書の請求項の範囲は本明細書が説明および/または図示する特定の装置、方法、条件、またはパラメータに限定されることはなく、本明細書に用いられる用語はあくまで例示として具体的な実施形態を説明する目的でのみ用いられており、本明細書が主張する発明を限定することを意図したものではないことを理解すべきである。また、付属の前記請求項を含む明細書に用いられる単数形である「a」、「an」、および「the」は複数形も包含し、特定の数値を参照する場合は、文面で明確に否定しない限り、少なくともその特定の値を含む。値の範囲が記述されている場合は、別の実施形態は1つの特定の値からもう1つの特定の値までの範囲若しくはどちらか一方の値を含む。同様に、「約」という表現を伴い概数として値が記述されている場合は、その特定の値は別の実施形態を形成するものと理解される。あらゆる範囲は包含的且つ組み合わせ可能である。
【0035】
定義
本明細書で用いられる「酸化防止剤(anti−oxidant)」という用語は、ヒドロペルオキシド分解剤または遊離基捕捉剤、或いはそれらの組み合わせを表す。
【0036】
本明細書で用いられる「耐磨耗剤(anti−wear agent)」という用語は、すり合う金属面間の磨耗を低減するよう設計された化学薬品を表す。
【0037】
本明細書で用いられる「化学フィルター(chemical filter)」とは、潤滑剤と相互作用して前記潤滑剤に含まれる添加物を化学的に強化若しくは補完するフィルターを表す。1例において、前記化学フィルターは、強塩基材料と接触する燃焼生成酸−弱塩基混合体からの弱塩基を置換可能な強塩基を採用した多孔性支持媒体である場合がある。別の実施形態において、前記化学フィルターは、本発明の技術を用いた潤滑剤に潤滑剤添加物を導入する方法を提供するよう化学的に強化または調整された従来のフィルターである場合がある。
【0038】
本明細書で用いられる「潤滑剤に含まれる添加物を化学的に強化若しくは補完する工程」の結果、前記潤滑剤の性能が強化される結果としてピストンデポジットの減少、若しくはTBN(全塩基価)により測定されるオイルドレン間隔の増加、若しくは排ガス後処理装置への悪影響の低下に伴うSAPSの減少が起きる。
【0039】
本明細書で用いられる「溶解性の制御」とは、潤滑剤に含まれる潤滑剤添加物の溶解性が低レベルであるといったようなメカニズムを表し、潤滑剤添加物が前記潤滑剤と分離した状態から前記潤滑剤に溶解可能な状態になる速度を制御する働きをする。
【0040】
本明細書に用いられる「拡散制御速度」とは、化学薬品(通常、活性化学薬品である)が別の化学薬品(通常、不活性化学薬品である)を通って拡散または移動する速度が、その用途に適した拡散速度で制御されている速度を表す。
【0041】
本明細書に用いられる「計量制御速度」とは、ポンプのような計量機構によって添加物を潤滑剤に放出する速度を表す。
【0042】
本明細書に用いられる「腐食抑制剤」という用語は、表面の腐食(例えば酸の攻撃による金属面の腐食)を低減する化学薬品を表す。
【0043】
本明細書に用いられる「分散剤」という用語は、煤および/またはスラッジを分散し酸性化学物質を中和する化学薬品を表す。
【0044】
本明細書に用いられる「極圧添加剤」という用語は、しばしば高圧で接触する金属面間の磨耗を低減するよう設計された化学薬品を表す。
【0045】
本明細書に用いられる「流れ改良剤」という用語は、液体の流れ特性を変える薬品を表す。
【0046】
本明細書に用いられる「摩擦調整剤」という用語は、液体の潤滑性を変える薬品を表す。
【0047】
本明細書に用いられる「潤滑剤添加物の機能」とは、潤滑剤添加物がエンジンを保護するために発揮する少なくとも1つのエンジン保護的役割を表す。以下は、機能若しくはエンジン保護的役割にしたがって分類した潤滑剤添加物のカテゴリーである。燃焼生成酸を(除去または)中和する働きをする洗浄剤、過酸化物および/または遊離基を中和する働きをする酸化防止剤、エンジン部品の表面を保護する耐磨耗剤、潤滑剤の高温および低温粘度を調整する粘度調整剤。本発明において、例えば化学フィルター内などにあり潤滑剤の外に存在する化学物質は、潤滑剤添加物の機能を補完できる場合および置換できる場合があり、さらに場合によっては前記潤滑剤内で機能する添加物を放出することができる。
【0048】
本明細書で用いられる「高負荷ディーゼル機関潤滑剤」という用語は、総車両重量係数が8600ポンド(3900キログラム)以上の車両に用いられるディーゼル燃料エンジン用に調製されたエンジンオイルと定義される。
【0049】
本明細書に用いられる「ライフサイクル」という用語は、潤滑剤の交換が必要となるまでのエンジン時間または車両走行距離のような単位で表される潤滑剤消費を表し、通常、前記潤滑剤が臨界TBN(Total Base Number:全塩基価)に達することで示される。
【0050】
本明細書に用いられる「後処理装置のライフサイクル」とは、後処理装置の耐用寿命を表し、通常、前記後処理装置の洗浄、再生、または交換が必要になるまでのエンジン走行距離を尺度とする。
【0051】
本明細書に用いられる「潤滑システム」または「内燃機関潤滑システム」とは、潤滑剤が全循環する、実質的に閉鎖されたシステムを表す。前記潤滑システムは燃焼機関と流体接触しているので、前記潤滑剤が前記潤滑システムを循環するにつれ、前記潤滑システムのいくつかの部分で前記潤滑剤はピストンおよびピストンチャンバの表面を含む内燃機関と接触する。
【0052】
本明細書に用いられる「最大SAPS」または「最大SAPSレベル」とは、オイルに含まれる硫酸塩灰分、リン、および硫黄の合計濃度(%)を表し、ppmまたは重量%のような単位で表される。例えばZnDDPなど特定の潤滑剤添加物は、前記硫酸塩灰分、リン、および硫黄のレベルの1つまたはすべてにさえ貢献する。前記最大レベルは、潤滑剤基準指定機関にしたがい前記潤滑剤に許容される硫酸塩灰分、リン、および硫黄の最大レベルである。ここで言う「潤滑剤基準指定機関」とは、米国石油協会(AmericanPetroleumInstitute:API)、潤滑油国際基準化認定委員会(International Lubricant Standardization and Approval Committee:ILSAC)、欧州自動車工業会(Association des Constructeurs Europeens de l’Automobile:ACEA)、または日本自動車規格会(JapaneseAutomobileStandardsOrganization:JASO)のようなオイルまたは潤滑剤規格団体を表す。前記API(所在地:1220 L Street,Northwest,Washington,D.C.20005、ウェブサイト:http://www.api.org)は、世界各地のエンジンオイル販売業者にAPIサービスシンボルおよびAPI認可マークの使用許可を与える機関である。エンジンオイルにこれらのマークを表示するには、そのエンジンオイルが最低限の性能基準を満たすことをエンジンテストおよびベンチテストで示す必要がある。乗用車用オイルの最新のAPIサービスカテゴリーはSMである。最新の高負荷サービスカテゴリーはCI−4Plusである。加えて、燃料経済性の優れたオイルはエネルギー節約型(Energy Conserving)という指定を受けることができる。ILSAC規格は米国自動車工業会(American Automobile Manufacturers Association:AAMA)(所在地:7430 Second Avenue,Suite 300,Detroit,Michigan 48202、ウェブサイト:http://www.aama.com)および日本自動車工業会(Japan Automobile Manufacturers Association:JAMA)(所在地:東京都千代田区大手町1丁目6−1 大手町ビル)の協力により設けられたものである。ILSACの「Starburst」認可マークは、ILSACが定める乗用車エンジンオイル最低性能規格(Minimum Performance Standard for Passenger Car Engine Oils)を満たすオイルであることを示す。GF−4規格はAPI SMカテゴリーに相当する。欧州でこれに相当する規格機関は欧州自動車工業会(Association des Constructeurs Europeens de l’Automobile:ACEA)(所在地:Rue du Noyer 211,B−1000 Brussels,Belgium)である。乗用車およびライトバン用オイルの最新のACEAサービスカテゴリーはA1/B1−04、A3/B3−04、A3/B4−04、およびA5/B5−04である。最新の高負荷ディーゼル機関オイルのサービスカテゴリーはE6−04およびE7−04である。E6−04のSAPS制限は硫酸塩灰分1.0%m/m未満、リン0.08%m/m未満、硫黄0.3%m/m未満である。特定のフィルターが装備されたエンジンについてはE6−04の質が強く推奨されている。高性能車およびライトバンのディーゼルおよびガソリンエンジンには、C1、C2、およびC3の指定を受けたオイルが使用される。
【0053】
日本で前述の規格機関に相当するのは日本自動車規格会(Japanese Automobile Standards Organization:JASO)である。JASOは日本自動車技術会(the Society of Automotive Engineers of Japan:JSAE)(所在地:郵便番号102−0076東京都千代田区五番町10−2)の系列機関である。ディーゼル機関オイルの国際的な性能仕様は、ACEA、JAMA、およびエンジン工業会(Engine Manufacturers Association:EMA)によって共同開発された。EMA(所在地:2 North LaSalle Street,Suite 2200,Chicago,IL 60602 USA)は、エンジン性能および試験の向上を目指す科学的研究を後援しており、エンジン排ガスを低減するための規制、手順、および制度の開発、および燃料および潤滑剤の質の改善に尽力している。最近の仕様として、低負荷ディーゼル機関オイル用DLD−1、DLD−2、およびDLD−3、および高負荷ディーゼル機関オイル用DHD−1がある。
【0054】
下表(表1)は、選ばれたエンジンオイルの現在のSAPSレベルを示す。
【0055】
【表1】

【0056】
本明細書に用いられる「中和剤」という用語は、酸性化学物質を中和する塩基性化学薬品を表す。
【0057】
本明細書に用いられる「オイルフィルター」、「標準オイルフィルター」、または「従来のオイルフィルター」という用語は、ほとんどのトラックに一般に使用されている、サイズによって粒子を潤滑システムから除去するオイルフィルターを表す。
【0058】
本明細書に用いられる「流動点降下剤」という用語は、液体の流動点を下げる化学薬品を表す。
【0059】
本明細書に用いられる「強塩基」という用語は、弱塩基−燃焼生成酸混合体に含まれる弱塩基(例えば分散剤)を置換し、前記強塩基で前記燃焼生成酸を固定化することができる塩基性物質を表す。
【0060】
本明細書に用いられる「補充オイル」という用語は、前記燃焼型エンジンの稼働中に失われる燃焼機関潤滑剤を補給する少量の未使用オイルを表し、実質的に増量された少なくとも1つの潤滑剤添加物を有する場合もあれば、そうでない場合もある。
【0061】
本明細書に用いられる「ZnDDP」という用語は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛またはジアリールジチオリン酸亜鉛を表す。
【0062】
本明細書に用いられる「0W−XX、5W−XX、または10W−XX」とは、マルチグレード潤滑剤を表す。
【0063】
概要
健康上の理由のためにディーゼルの粒子状物質および内燃機関からの排ガスに含まれる燃焼生成酸を低減する必要性から、ディーゼル排ガス新規制が提案された。ほとんどのディーゼル機関製造業者は、これらの提案規制を満たす最も効率的な方法は排ガス流に後処理装置を取り付けることだと決定した。フィルターは、煤粒子を主とする粒子状物質を捕える。触媒は窒素酸化物を分解する。燃料中の硫黄の強制制限および潤滑剤によって硫黄系の酸を低減する。前記フィルターは周期的に焼却形態になり、前記煤粒子を二酸化炭素と水に転化する。燃焼チャンバで焼却された潤滑剤には粒子状物質の別の出所もある。これら粒子状物質の2つの最大の出所は、金属含有洗浄剤およびZnDDP耐磨耗剤である。第3の出所は磨耗破片である。前記耐磨耗剤からのリンは、窒素酸化物を除去する触媒の汚染源でもある。排ガスフィルターおよび窒素酸化物触媒のライフサイクルを延ばすために、硫酸塩灰分、リン、および硫黄(SAPS)に制限を設けることが提案されている。本発明のシステムは前述の潤滑剤の機能性を維持しつつ、これまで以上にSAPS濃度を低減することを可能にする解決策を提供する。
【0064】
本発明は内燃機関の潤滑剤による保護、および前記エンジンに付属する排ガス制御装置の動作を改善するための潤滑システムに関係する。この潤滑システムは、前記3つのSAPSレベルの少なくとも1つに関係する潤滑剤添加物が低レベルで、且つ化学フィルターを使用せず同等の高性能レベルを実現するよう調製された潤滑剤のSAPSレベルより有意に低い(少なくとも10%、最高90%低い)潤滑剤と、前記潤滑剤添加物の1機能を実行または補完するための手段を有する、前記潤滑剤と液体を相互伝達する装置とを有する。前記潤滑剤は前記潤滑システム全体を流体として流れるので、前記装置および前記内燃機関と流体接触する。一部の実施形態において、前記装置は、化学物質粒子または化学物質との組み合わせである基質粒子を採用することができ、潤滑剤添加物の機能を実行または補完するための手段を有する。
【0065】
これまで、前記エンジンの潤滑保護、すなわち腐食、ピストンデポジット、磨耗、スラッジなどの制御は、調製により潤滑剤添加物を含む潤滑剤の機能であった。サイズにより除去を行うオイルフィルターで前記潤滑剤から研磨粒子を除去する。排ガス制御装置で燃焼生成排ガスの有害な影響を低減および制御する。しかし、前記潤滑剤添加物が前記排ガス制御装置の寿命に与える影響を考慮する必要がある。本発明では、前記潤滑剤添加物が与えるいくつかのエンジン保護機能は、前記潤滑システムに組み込まれた装置(例えば化学フィルターおよび/または計量装置)によって実行または補完される。いくつかの例において、前記化学フィルターは強塩基を含み、この強塩基は前記潤滑剤に含まれる洗浄剤/分散剤の活性を補完するものであり、いくつかの特許(米国特許第4,906,389号、米国特許第5,068,044号、米国特許第5,069,799号、米国特許第5,164,101号、および米国特許出願第11/133,530号明細書)に記述されており、前記特許の全文はここに組み込まれる。
【0066】
ほとんどの潤滑システムにおいて、前記潤滑システムの潤滑剤は前記燃焼機関の通常の運転を経て、時間が経つにつれ失われる。このため本発明の潤滑システムは、運転中に失われる潤滑剤の容量とほぼ同等の容量の補充オイルをさらに有し、この補充オイルは実質的に増量されたいくつかの潤滑剤添加物を有する。
【0067】
前記装置によって実行または補完される潤滑剤添加物の機能としては、強塩基、酸化防止剤、耐磨耗剤、極圧添加剤、酸中和剤、腐食抑制剤、またはそれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、前記装置には強塩基、洗浄剤、酸化防止剤、耐磨耗剤、極圧添加剤、有機酸中和剤、分散剤、摩擦調整剤、粘度指数改良剤、流動点降下剤、流れ改良剤、制泡剤、霧抑制剤、曇り点降下剤、または腐食抑制剤、または同様のエンジン保護性を有する化合物が組み込まれている。例えば、化学フィルターのような装置に強塩基を関連付けることができ、その結果得られる装置は前記潤滑剤に含まれる分散剤が持つようなエンジン保護性を補完する。いくつかの実施形態において、前記装置に潤滑剤添加物を関連付け、前記潤滑剤に前記潤滑剤添加物を徐放することによって前記潤滑剤における濃度の削減を可能にする。
【0068】
酸化防止剤としては、例えばヒドロペルオキシド分解剤または遊離基捕捉剤、或いはそれらの組み合わせが可能である。前記ヒドロペルオキシド分解剤は好ましくはZnDDPである。いくつかの実施形態において、前記酸化防止剤はMoS化合物、MoS化合物、Mo(C17OCS化合物、ヒンダードフェノール、芳香族アミン、二価硫黄、二硫化物、リン酸塩、三価リン、ヒドロキノン、ジヒドロキノリン、金属不活性化剤、またはNaOH、或いはそれらの組み合わせから選択することができる。
【0069】
耐磨耗剤は、例えば、ZnDDP、脂肪酸エステル、ジチオリン酸塩、ジチオ炭酸塩、チオカルバミン酸塩(チオカルバミン酸エステル、チオカルバミン酸アミド、チオカルバミン酸エーテル、アルケン結合チオカルバミン酸塩)、またはビス(S−アルキルジチオカルバミル)スルフィドでよい。
【0070】
極圧添加剤は、硫化脂肪、硫化脂肪酸エステル、硫化オレフィン、硫化ポリオレフィン、ジスルフィド、ジアルキルジスルフィド、リン酸トリブチル、リン酸トリクレシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル、リン添加脂肪、ZnDDP、ジチオリン酸アミン、リン添加オレフィン、またはリン硫化オレフィン、或いはそれらの組み合わせから選択することができる。
【0071】
酸中和剤は、以下の1つでよい。油溶解性アミン、油溶解性アミン塩、分散剤、トリアルキルアミン、トリオクタデシルアミン、または水酸化アンモニウムテトラオクタデシル、或いはそれらの組み合わせ。
【0072】
腐食抑制剤としては、ZnDDP、イミダゾリン、アルキルピリジン、エトキシ化フェノール、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、チオジアゾール、ベンゾトリアゾール、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0073】
システムの説明
本発明の潤滑システムは、低レベルの潤滑剤添加物の燃焼副生成物を生成するよう、特別調製された潤滑剤と、特別調製された補充オイルと、特定の潤滑剤添加物の機能を補完または置換する装置とによって特徴付けられる。本発明の前記各要素について以下に説明する。
【0074】
潤滑剤添加物の機能を補完または置換するための装置
徐放装置
本発明の1実施例は、低レベルの潤滑剤添加物の燃焼副生成物を生成するよう適応された内燃機関潤滑システムを提供するものであり、この潤滑システムは、燃焼副生成物の3つのSAPSレベルのうち少なくとも1つが、前述の装置(例えば化学フィルター)を使用せずに前記システムの潤滑剤と同等の高レベルの性能を実行するように調製された潤滑剤のSAPSレベルより有意に低い(少なくとも10%〜最高100%低い)潤滑剤と、前記潤滑剤と流体接触を持ち、少なくとも1つの潤滑剤添加物を前記潤滑剤に徐放する装置とを有する。この装置として化学フィルターおよび/または計量装置が可能である。前記潤滑剤添加物を洗浄剤、酸化防止剤、耐磨耗剤、極圧添加剤、有機酸中和剤、分散剤、摩擦調整剤、粘度指数改良剤、流動点降下剤、流れ改良剤、制泡剤、霧抑制剤、曇り点降下剤、または腐食抑制剤、若しくはそれらの組み合わせから選択することが可能である。
【0075】
前記潤滑剤添加物の徐放は、前記潤滑剤に対する前記潤滑剤添加物の溶解性を調整することにより達成することができる。この調整は、前記潤滑剤添加物に存在するアルキル鎖のメチレン単位数の減少によって達成できる。通常、前記アルキル鎖は前記潤滑剤添加物の溶解性を増す。例えば、一般に使用される潤滑剤添加物であるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDDP)は4つのアルキル部分(1つのチオリン酸塩基につき2つのアルキル部分)を有する。前記アルキル部分は、ZnDDPの溶解性を増すために必要である。前記アルキル鎖の長さまたはメチレン単位数を減らすことにより、ZnDDPの溶解性ははるかに減少する。しかし、前記アルキル鎖を、前記潤滑剤の望ましい溶解性レベルを前記添加物に与えるアリールまたは他の化学部分で置換することも可能である。ここでの目的は前記潤滑剤の活性種の溶解性を高めることだが、SAPSレベルを高めるおよび/または溶解した添加物が熱および/または酸による劣化を受けるほど濃度を高めることなく、前記潤滑剤が十分に機能を発揮するのに十分な程度にそれを高めることである(例えばZnDDP。保護膜を形成する)。例えば、わずか約15ug/cmの反応膜厚で完全な磨耗保護を達成できるが、Palaciosは、ZnDDPが最高約40ug/cmの厚さの膜を形成可能であることを示している。膜厚はZnDDP濃度に直接関係する(J.M.Palacios、Wear114(1987)577)。前記添加物の溶解性の制御すなわちこれらの種が前記潤滑剤に混入する速度の制御を行うためのその他の機構または方法が可能であり、考えられる。例えば、米国特許出願第2005/0085399号明細書および第2005/0137097号明細書に記述されているように、2若しくはそれ以上の添加物をゲル化することによって前記添加物の溶解性を制御することができる。あるいは、特許第4,075,098号に記述されているように、熱可塑性ポリマーのように徐々に解けて前記潤滑剤に放出される材料に添加物を組み込むことができる。
【0076】
潤滑剤添加物を有する濾過媒体(または多孔性支持体)を用いて添加物を徐放することも可能であり、この場合、前記潤滑剤添加物の溶解性を制御することによって時間をかけて前記潤滑剤に前記添加物を徐放する。
【0077】
固定化された装置
本発明の他の実施例は、低レベルの潤滑剤添加物の燃焼副生成物を生成するよう適応された内燃機関潤滑システムを含むものであり、この潤滑システムは、燃焼副生成物の3つのSAPSレベルのうち少なくとも1つが、前述の装置(例えば化学フィルター)を使用せずに前記システムの潤滑剤と同等の高レベルの性能を実行するように調製された潤滑剤のSAPSレベルより有意に低い(少なくとも10%〜最高90%低い)潤滑剤と、前記潤滑剤と流体接触を持ち、前記燃焼副生成物と相互作用する添加物の機能を果たす能力のある化学種が固定された装置とを有する。潤滑剤添加物の機能を補完する1つの化学種は強塩基を含み、前記機能を果たす別の化学種は固定化された酸化防止剤を含む。
【0078】
ヒドロペルオキシド除去化学フィルター
潤滑油からヒドロペルオキシド分解剤を除去するために使用可能なヒドロペルオキシド分解剤は多い。本発明の装置に組み込み可能ないくつかのヒドロペルオキシド分解剤は、MoS、Mo(ROCS、NaOH、またはそれらの混合物を含む。Mo(ROCS、NaOH、またはそれらの混合物が好ましい。一部の実施形態では、好ましいヒドロペルオキシド除去剤はNaOHである。
【0079】
関連特許出願である米国特許出願第4,997,546号明細書に記述されているように、Mo(ROCSはMo(CO)(モリブデンヘキサカルボニル)を(ROCS(ジキサントゲン)と反応させることにより生成される。この反応は周囲温度程度(例えば室温)から約140℃までの範囲の温度(特に約80℃〜約120℃)で約2〜10時間かけて行われる。例えば、Mo(CO)とジキサントゲンをトルエンで約2〜約8時間還流することができる。前記反応の反応時間と温度は、選択されたジキサントゲンおよび前記反応に用いられる溶剤に依存する。しかし、前記反応は前記化合物を生成するために十分な時間をかけて行うべきである。前記反応に有用な溶剤としては芳香族炭化水素が含まれ、特にトルエンが有用である。
(ROCSとして表されるジキサントゲンは特に有用であり、このRは、生成された化合物が潤滑油に溶解するよう十分な炭素原子数を有するアルキル基、アリール基、およびアルコシキアルキル基から選択されたオルガノ基と同一または異なる基が可能である。好ましくは、Rは2〜20個の炭素原子を有する。より好ましくは、Rは2〜20個の炭素原子、特に4〜12個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0080】
Mo(ROCSを生成するに当たり、ジキサントゲン対モリブデンヘキサカルボニルのモル比は約1.5対1.0より大きいモル比とすべきである。例えば、この化合物を調製するに当たり、(ROCS対Mo(CO)のモル比は約1.6:1から約2:1の範囲であるのが好ましい。
(ROCSとMo(CO)の反応時間と温度に主に依存し、生成されるモリブデン硫黄含有添加物は茶色の化合物、紫色の化合物、またはそれら両方の混合物である。反応時間が短い(例えば4時間以下である)と、紫色の化合物になりやすい。それよりも反応時間が長い(例えば4時間以上である)と、茶色の化合物になりやすい。例えば、(C17OCSとMo(CO)をトルエン中で100℃〜110℃で4時間反応させると、出発材料のほとんどは前記紫色の化合物になり、前記茶色の化合物は実質的に存在しない。しかし、前記反応混合物を引き続き加熱すると、前記紫色の化合物は前記茶色の化合物に変わる。実際、約6〜7時間後には前記紫色の化合物のほとんどが前記茶色の化合物になる。
【0081】
Mo(CO)およびジキサントゲンを、反応が起きるのに十分な時間接触させることが可能であるが、通常、約7時間未満である。7時間を越すと、望ましくない固形物が生成し始める。前述の化合物の生成を最大限にし、望ましくない固形副生成物の生成を最小限に抑えるには、Mo(CO)とジキサントゲンを約100℃〜約120℃の温度で、約5〜6時間の範囲で反応させ、前述の茶色の化合物と紫色の化合物を両方とも含む反応混合物を生成するべきである。前記化合物は両方とも効果的な添加物であるので、これは不利なことではなく、前記2種(茶色および紫色)の混合物は、いずれか一方のみと同等に効果を発揮する。
【0082】
反応により得られた油性副生成物をアセトン、エチルアルコール、またはイソプロピルアルコールのような弱極性溶媒で抽出することによって、約C〜約C1429のR基で生成される化合物を、前記油性有機副生成物から容易に分離することができる。これらR基を有する化合物がそのような溶媒に実質的に非溶解性であるのに対し、前記油性副生成物は溶解性である。しかし、前記副生成物は前記化合物の有利な機能性を妨げるものではないので、前記副生成物から前記化合物を分離する必要はない。
【0083】
前記紫色および茶色の生成物の物性はR基によって異なる。例えば、前記化合物はRがCであれば結晶質固体であり、Rが約C15より大きければ非晶質固体である。
【0084】
Mo(CO)と(ROCSの反応で生成される前記紫色の化合物は、Mo(ROCSという組成式で表されるチオキュベンである。
【0085】
Mo(CO)と(ROCSの反応で生成される前記茶色の化合物も、前記紫色の化合物から容易に生成されるという事実および化学分析に基づき、前記紫色の化合物のチオキュベン構造と非常に類似していると考えられる。
【0086】
特定の理論に縛られることは望まないが、前記オイル中のヒドロペルオキシドは前記不均一ヒドロペルオキシド分解剤と接触して触媒活性により分解され、前記オイルに溶解可能な無害の種になると考えられる。
【0087】
使用されるヒドロペルオキシド分解剤の正確な量は、潤滑剤に含まれるヒドロペルオキシドの量によって大きく異なる場合がある。しかし、前記潤滑オイルのヒドロペルオキシド含有量を減らすために有効な量のみ(すなわち十分な量)を用いる必要があり、この量は通常、約0.05〜約2.0重量%の範囲であるが、それより多くの量を使用することもできる。好ましくは、約0.01〜約1.0重量%(前記潤滑剤の量に基づく)のヒドロペルオキシド分解剤を使うことができる。
【0088】
前記不均一ヒドロペルオキシド分解剤が前記オイルに接触したときに、何らかの方法で前記分解剤を固定化することができる。例えば、基材に固定化することができる。しかし、使用するヒドロペルオキシド分解剤が、RがCであるMo(ROCSの結晶形であれば、基材は必要ない。好ましくは、前記基材は潤滑システム内(例えばエンジンブロック上または槽の近く)に置き、前記基材は前記エンジンの潤滑オイルを濾過するフィルターシステムの一部とするが、別にしてもよい。適した基材としてはアルミナ、活性粘土、セルロース、セメント結合剤、シリカアルミナ、および活性炭が含まれる(限定せず)。好ましい基材はアルミナ、セメント結合剤、および活性炭であり、中でも特に活性炭が好ましい。前記基材は不活性でよく(ただし不活性である必要はない)、ペレットや球体など様々な形状にすることができる。
【0089】
前述のヒドロペルオキシド分解剤は、当業者に既知の方法で前記基材上または基材中に組み込むことができる。例えば、前記基材が活性炭である場合、前記ヒドロペルオキシド分解剤を以下の手法により沈着することができる。前記ヒドロペルオキシド分解剤を揮発性溶剤に溶解する。すると、このヒドロペルオキシド分解剤含有溶液が炭素を飽和し、前記溶剤が蒸発し、前記炭素基材上に前記ヒドロペルオキシド分解剤が残される。
【0090】
燃料燃焼プロセス中に生成された過酸化物に、潤滑油に含まれる炭化水素が接触すると、ヒドロペルオキシドが生成される。したがって、ヒドロペルオキシドは、自動車およびトラックのエンジン、2サイクルエンジン、航空機ピストンエンジン、海洋船および鉄道車両エンジン、ガス燃焼機関、アルコール(例えばメタノール)動力エンジン、静止動力エンジン、タービンなど基本的に全ての内燃機関の潤滑システムに使用される基本的に全ての潤滑油に存在することになる。前記潤滑油はヒドロペルオキシドのほかに多量の潤滑油基油(または潤滑基油)および少量の1若しくはそれ以上の添加物を有する。前記潤滑油基油は様々な天然潤滑油、合成潤滑油、またはそれらの混合物から生成される。一般に、前記潤滑油基油は40℃で約5〜約10,000cStの範囲の粘度を有するが、一部の実施形態では前記オイルは40℃で約10〜約1,000cStの範囲の粘度を有する場合がある。
【0091】
強塩基化学フィルター
米国特許出願第11/133,530号明細書に記述されているように、燃焼生成酸を固定化するために、本発明にしたがった化学フィルター内に強塩基を固定化することによって内燃機関の潤滑システム内に前記化学フィルターの別の実施形態を採用することができる。通常、溶解性弱塩基(「分散剤」)は、燃焼生成酸の中和を助け煤粒子の凝集を防ぐために商業用潤滑剤に採用される。前記燃焼生成酸および煤粒子は燃焼吹き抜けガスと共に、再循環された排ガスを含む場合もそうでない場合もある前記潤滑剤の境界層を通って前記潤滑剤に混入する。前記酸が金属面に到達して腐食またはピストンデポジットを起こし、前記煤粒子が3次元の増粘構造を形成する前に中和が起きることが好ましい。弱塩基と燃焼生成酸の相互作用によって、燃焼生成酸−弱塩基複合体(または塩)が生成され、前記潤滑油内を流れる。本発明の観点は強塩基材料を有するいくつかの媒体を採用する化学フィルターを提供する。これらのフィルターは、例えば従来のオイルフィルターがある場所など、前記潤滑システムの任意の場所に配置可能である。前記化学フィルターに含まれる強塩基材料は前記燃焼生成酸−弱塩基複合体からの弱塩基を置換する。この溶解性中性塩からの弱塩基が置換されると、その結果作られた燃焼生成酸と強塩基から成る塩のほとんどは、前記強塩基によって前記フィルターに(または基材が使用された場合は基材上に)不均一なデポジットとして固定化される。通常ならピストンリング域にデポジットを生成する、燃焼生成酸で中和された塩は、この溶解性の塩が前記強塩基に接触するとピストンリング域の外に生成される。したがって前記燃焼生成酸は前記化学フィルターで隔離され、置換された弱塩基物質は効果的にリサイクルされ、続いて生成される酸を中和する。この置換はイオン交換によって行われ、前記化学フィルターの強塩基は前記燃焼生成酸−弱塩基複合体の弱塩基と交換される。結果として、前記弱塩基が再生され前記潤滑剤と共にリサイクルされることにより、さらに多くの酸が中和される。このプロセスを図10の略図に示し、以下にさらに詳細に説明する。
【0092】
いくつかの実施形態において、前記化学フィルターは、燃焼生成酸の隔離と煤の分散を行う付加的機構を提供することによってオイルドレン間隔を延ばすことができる。加えて、前記オイルに含まれる燃焼生成酸−弱塩基複合体からの燃焼生成酸を移動させ、前述の強塩基で固定化することによって、ピストンデポジットおよび腐食を低減することができる。煤の分散に再利用するために分散剤弱塩基材料をリサイクルすることにより、煤の凝集による粘度の増加を最低限に抑えることができる。
【0093】
前記強塩基は、前述のエンジン潤滑システムの装置に固定化された基材上に(または基材と共に)、例えば含浸などにより組み込むことができる。前記装置は、好ましくはピストンリング域に連続して(またはピストンリング域の下流に)配置するのが好ましい。それにより、前記装置をエンジンブロック上または槽近くに配置することができる。好ましくは、前記装置はオイルを濾過するために前述のフィルターシステムに組み込まれた基材または従来のオイルフィルターを含む。その他の実施形態において、前記装置は従来のオイルフィルターと異なり、強塩基が組み込まれた基材である化学フィルターを含むことができる。
【0094】
適した基材としてはアルミナ、活性粘土、セルロース、セメント結合剤、シリカアルミナ、および活性炭が含まれる(限定せず)。好ましいのは前記アルミナ、セメント結合剤、および活性炭である。前記基材は不活性でもよいし、そうでなくてもよい。
【0095】
前述の強塩基は、当業者に既知の方法で前記基材上または基材と共に組み込むことができる。例えば、前記基材がアルミナである場合、前記強塩基を以下の手法により沈着することができる。高多孔性のアルミナを選択する。前記アルミナの多孔性は、乾燥アルミナを重量測定した後に水に含浸することによって決定される。前記アルミナを水から取り出し、乾燥した空気を吹きかけて表面の水を取り除く。前記アルミナの重量を再び測定し、前記乾燥アルミナの重量と比較する。この重量の差は、乾燥アルミナ1グラム当たりの水の重量(グラム)として表される。適切な極性溶媒で酸化マグネシウムの飽和溶液を調製する。湿潤アルミナと乾燥アルミナの重量の差と同量のこの溶液を前記乾燥アルミナに加える。生成物として前記アルミナに沈着したMgOから熱が出て行くにつれ、前記アルミナから前記極性溶媒が除去される。この調製は周辺条件で行うことができるが、前記溶媒除去工程はより高温で行うか低圧で行われる。
【0096】
必要な強塩基の量は、前記オイルに含まれる弱塩基の量およびエンジン運転中に生成された燃焼生成酸の量によって異なる。前述の化学オイルフィルターに含まれる強塩基は、どのような量でも有益となるが、前記弱塩基(すなわち分散剤)と異なり前記強塩基は継続的に再生使用されないので、前記強塩基の量は前記オイルに含まれる弱塩基の当量の少なくとも3分の1に相当する量とすべきである。よって、強塩基の量は前記オイルに含まれる弱塩基の当量の3分の1から約15倍、好ましくは3分の1から約5倍であるべきである。
【0097】
この溶解性中性塩からの弱塩基が置換されると、その結果生成された強塩基/強燃焼生成酸塩はピストンから離れた前記フィルター内に不均一デポジットとして固定化される。潤滑剤に残された燃焼生成酸塩だけが、前記ピストン上の極性デポジットとなり得る。よって、燃焼生成酸が前記化学オイルフィルターに固定化されるにつれ、ピストンデポジットは減少する。好ましくは、前記強塩基は、例えば従来のオイルフィルターの除去または変更と共に前記強塩基が除去されるように前記オイルフィルターシステムの一部として含めるなどして、潤滑システムから容易に除去可能なように配置される。
【0098】
補充オイル
本発明のいくつかの観点は、前述の燃焼型エンジンの運転中に失われる潤滑剤を補完する補充オイルを含む。潤滑剤添加物は同一の速度では使用されないので、通常、前記補充オイルは実質的に増加された量の潤滑剤添加物を少なくとも1つ含む。例えば、前記補充オイルは、初期オイル充填または潤滑剤に含まれるのと同一の濃度から約10倍の濃度で無灰酸化防止剤を含有すること、あるいは初期オイル充填に含まれるのと同一の濃度から約5倍の濃度で分散剤を含有すること、および初期オイル充填に含まれるのと同一の濃度から約4倍の濃度で粘度調整剤を含有することができる。
【0099】
通常は、初期に使用した潤滑剤と同じ未使用オイル潤滑剤を補充用に用いる。本発明によれば、前記補充オイルは初期に使用した潤滑剤から除去された成分を補うように特別に調製されるので、前記潤滑剤と同じである必要はない。よって、初期充填されるのは潤滑剤だが、前記補充オイルは潤滑剤ではない。これは、この補充オイルは均衡した潤滑調製ではなく、潤滑剤としては上手く機能しないからである。未使用潤滑剤と異なる補充オイルにすることには、健全な技術的理由がある。これらの理由は、前記未使用潤滑剤に含まれる異なる添加物の減少速度と関係する。酸化防止剤はその機能の一部として消費されるため、かなり速い速度で減少する。現在の技術による分散剤も、燃焼生成酸を中和するという機能の一部として消費される。しかし、本発明によれば、前記分散剤は再使用のためにリサイクルされ、分散する煤およびスラッジおよびゆっくりとした酸化−熱劣化によって消費されるので、その減少速度は前記酸化防止剤の減少速度よりも低い。粘度調整剤の分子量はせん断応力によって減少するため、その効果は徐々に低減するが、この減少速度も前記酸化防止剤のものより遅い。前記潤滑剤に含まれるこれら3つの添加物の相対濃度を前記未使用オイル充填での濃度に戻すことが目的であるので、前記補充オイルに含まれる前記3つの添加物の濃度は前記未使用オイルにおける濃度と異なるものでなくてはならない。
【0100】
前記潤滑システムは、より長いオイルドレン間隔を提供し、ドレンを要さないオイルの実現という可能性を与えることができる。補充オイルは燃焼機関および潤滑システムの通常の運転に伴って消費されるオイルを補う役割を果たす。前記オイルの多くはピストンリングとピストンチャンバ間を抜けて失われ、最終的には前記燃焼チャンバ内で焼却される。前記補充オイルは前記潤滑剤に含まれる潤滑剤添加物を補給する役割も果たす。これら潤滑剤添加物は、それぞれ異なる速度で消費される(または効力を失う)。したがって、前記補充オイルに含まれる潤滑剤添加物は、初期の未使用オイル充填における比率と異なる比率を有する。
【0101】
耐磨耗剤は、金属面に保護層を形成するにつれ消費される。通常の耐磨耗剤は金属およびリンを含有しているので、補充オイルと共に灰前駆体およびリンを急激に導入することは望ましくない。そのような灰前駆体の急激な増加は排ガス粒子フィルターを汚染し、前記リンは排ガス触媒を汚染する。よって、前記耐磨耗剤の補給は、前述の化学オイルフィルターのような装置からの徐放によって行われ、耐磨耗剤は低濃度でもよく、前記補充オイルに含まれなくてもよい。
【0102】
無灰酸化防止剤も通常のエンジン運転中に消費される。前述の潤滑システムは前記補充オイルに含まれる酸化防止剤を比較的高レベル(初期充填オイルでの濃度の2倍から10倍)に維持することによって、酸に対する優れた保護を提供することができる。
【0103】
分散剤の効力は通常のエンジン運転中に劣化する。ペンダントポリイソブチレン基は一般的な無灰分散剤を可溶化し、前記潤滑剤に優れた酸化防止性を与えるが、ポリイソブチレンはある程度劣化する。この劣化は前記ポリイソブチレンの分子量および前記分散剤の効果を低減する。このような分散剤効力の低下を補うために、前記補充オイルは初期充填オイルと同等から約5倍の濃度の分散剤を含有することができる。
【0104】
粘度調整剤の効力は徐々に衰え、例えば高分子量ポリマーの分子量を下げるために生じるせん断によって粘度調整効力が劣化する場合がある。このような粘度調整剤の能力の低下を補い適正な粘度を維持するために、前記補充オイルは初期充填オイルと同等から4倍の濃度の粘度調整剤を含有することができる。
【0105】
前記補充オイルはSAPSレベルに実質的に寄与しない潤滑剤添加物(例えば酸化防止剤、分散剤、および粘度調整剤)を好ましくは有する。分散剤、酸化防止剤、および粘度調整剤のレベルは、未使用潤滑剤に比べ大幅に増加される。いくつかの実施形態において、前記補充オイルは洗浄剤レベルが大幅に低減されており、好ましくは洗浄剤を含まない。
【0106】
潤滑剤
通常の内燃機関の潤滑システムを循環する潤滑(またはクランクケース)オイルは、多量の潤滑油基油と少量の1若しくはそれ以上の添加物とを有する。前記潤滑油基油は天然潤滑油、合成潤滑油、またはそれらの混合物から生成される。一般に、前記潤滑油基油は40℃で約5〜約10,000cStの範囲の粘度を有するが、通常の用途では40℃で約10〜約1,000cStの範囲の粘度を有するオイルが要求される。
【0107】
天然潤滑油としては、動物性油、植物性油(例えばヒマシ油やラード油)、石油、または鉱油が含まれる。
【0108】
合成潤滑油としては、酸化アルキレンポリマー、インターポリマー、およびそれらの誘導体が含まれ、これらのヒドロキシル末端基はエルテル化、エーテル化などによって修飾されている。このクラスの合成油の例として、酸化エチレンまたは酸化プロピレンの重合によって作られるポリオキシアルキレンポリマー、これらポリオキシアルキレンポリマーのアルキルおよびアリールエーテル(例:平均分子量が1000のメチルポリ・イソプロピレン・グリコール・エーテル、分子量が500〜1000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量が1000〜1500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテル)、およびそれらのモノカルボン酸およびポリカルボン酸エステル(例:酢酸エステル、C−C脂肪酸エステル混合物、およびテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステル)が挙げられる。
【0109】
別の適切な合成潤滑油のクラスは、様々なアルコール(例:ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレン・グリコール・モノエーテル、プロピレングリコール)を有するジカルボン酸エステル(例:フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アレニルマロン酸)を有する。これらエステルの具体例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、およびセバシン酸1モルとテトラエチレングリコール2モルと2−ヘキサノン酸エチル2モルとから反応生成した複合エステルが含まれる。
【0110】
合成オイルとして有用なエステルとしては、C〜C12モノカルボン酸とネオペンチルグリコール、トリメチルオルプロオパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリペンタエリスリトールのような、ポリオールやポリオールエーテルから生成されるものも含まれる
ポリアキル油、ポリアリール油、ポリアルコキシ油、またはポリアリールオキシシロキサン油のようなシリコンベースの油およびケイ酸油は、合成潤滑油として有用な別のクラスを成すものであり、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ‐(2‐エチルヘキシル)シリケート、テトラ‐(4‐メチル‐2‐エチルヘキシル)シリケート、テトラ(p−tert−ブチルフェニル)シリケート、ヘキサ−(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン、およびポリ(メチルフェニル)シロキサンが含まれる。その他の合成潤滑油としては、リン含有酸(例:リン酸トリクレシル、リン酸トリオクチル、デシルホスホン酸)、高分子テトラヒドロフラン、およびポリアルファオレフィンが含まれる。
【0111】
前記潤滑油または潤滑剤は未精製油、精油、および再精製油から生成することができる。未精製油は天然資源または合成資源(例:石炭、頁岩、またはタール砂ビチューメン)から直接に入手し、追加的な精製または処理は行わない。未精製油の例としては、乾留により直接入手されるシェール油、蒸留により直接入手される石油、またはエステル化プロセスにより直接入手されるエステル油が含まれ、いずれも追加的な処理なしに使用される。1若しくはそれ以上の特性を向上するために1若しくはそれ以上の精製工程で処理済みである点を除き、精油は未精製油と同様である。適切な精製法としては、蒸留、水素処理、脱ろう、溶媒抽出、酸または塩基抽出、濾過、およびパーコレーションが含まれ、いずれも当業者に既知のものである。再精製油は、精油を得るために用いられるプロセスと同様のプロセスによって精油を処理することによって得られる。これら再精製油は、再生油または再処理油としても知られており、使用済み添加物および油分解生成物を除去するための追加的処理が行われることが多い。
【0112】
潤滑剤添加物
潤滑剤の弱塩基
前記潤滑油は弱塩基を含むことができ、この弱塩基は通常、前記潤滑油の調製または製造中に前記潤滑油に添加される。前記弱塩基は塩基性有機リン化合物、塩基性有機窒素化合物、またはそれらの混合物でよいが、塩基性有機窒素化合物の方が好ましい。塩基性有機リン化合物および有機窒素化合物群としては、芳香族化合物、脂肪族化合物、脂環式化合物、またはそれらの混合物が含まれる。塩基性有機窒素化合物の例としては、ピリミジン、アニリン、ピペラジン、モルホリン、アルキル、ジアルキル、およびトリアルキルアミン、アルキルポリアミン、アルキルグアニジン、およびアリールグアニジンが含まれる(限定せず)。アルキルホスフィン、ジアルキルホスフィン、およびトリアルキルホスフィンは、塩基性有機リン化合物の例である。
【0113】
特に効果的な弱塩基の例としては、ジアルキルアミン(RHN)、トリアルキルアミン(RN)、ジアルキルホスフィン(RHP)、およびトリアルキルホスフィン(RP)が挙げられ、これら組成式においてRはアルキル基、Hは水素、Nは窒素、およびPはリンである。前記アミンまたはホスフィンの全てのアルキル基が同じ長さの鎖を有する必要はない。前記アルキル基は実質的に飽和で、炭素の長さは1〜22であるべきである。ジアルキルおよびトリアルキルホスフィン、およびジアルキルおよびトリアルキルアミンについては、そのアルキル基の炭素原子の総数は12〜66であるべきである。好ましくは、個々のアルキル基の炭素原子の長さは6〜18、より好ましくは10〜18である。
【0114】
前記ジアルキルアミンおよびジアルキルホスフィンよりもトリアルキルアミンおよびトリアルキルホスフィンの方が好ましい。適したジアルキルおよびトリアルキルアミン(またはホスフィン)の例としては、トリブチルアミン(またはホスフィン)、ジヘキシルアミン(またはホスフィン)、デシルエチルアミン(またはホスフィン)、トリヘキシルアミン(またはホスフィン)、トリオクチルアミン(またはホスフィン)、トリオクチルデシルアミン(またはホスフィン)、トリデシルアミン(またはホスフィン)、ジオクチルアミン(またはホスフィン)、トリエイコシルアミン(またはホスフィン)、トリドコシルアミン(またはホスフィン)、またはそれらの混合物が含まれる。好ましいトリアルキルアミンはトリヘキシルアミン、トリオクタデシルアミン、またはそれらの混合物であり、トリオクタデシルアミンが特に好ましい。好ましいトリアルキルホスフィンはトリヘキシルホスフィン、トリオクチルデシルホスフィン、またはそれらの混合物であり、トリオクタデシルホスフィンが特に好ましい。適した弱塩基のさらに別の例としては、ボリブテニル基に60より多くの炭素を有するポリブテニル無水コハク酸のポリエチレンアミンイミドが挙げられる。
【0115】
前記弱塩基は燃焼生成酸を中和する(すなわち塩、または溶解性または分散性複合体を生成する)ために十分な強さである必要がある。好ましくは、適した弱塩基は約4〜約12のpKaを有する。しかし、(有機グアニジンのような)有機強塩基でさえ、適切な酸化物または水酸化物であり弱塩基−燃焼生成酸複合体から前記弱塩基を放出することができるものであれば、前記弱塩基として利用可能である。
【0116】
前記弱塩基の分子量は、前記弱塩基−燃焼生成酸複合体の油溶解性が維持される分子量とすべきである。そのように前記弱塩基が十分な溶解性を有すれば、生成された塩は油から分離されない。前記弱塩基にアルキル基を加えることは、溶解性を確保するための好ましい方法である。
【0117】
ピストンリング域で接触する、潤滑油に含まれる弱塩基の量は、存在する燃焼生成酸の量、望まれる中和度、および前記潤滑油の特定の用途によって異なる。一般に、前記潤滑剤に入る実質的にすべての酸を中和するために有効または十分な量だけが必要とされる。通常、その量は分散剤ポリマーの約0.01〜約6重量%あるいはそれ以上であり、好ましくは分散剤ポリマーの約0.1〜約4重量%である。分散剤は通常、少なくとも一部の場合、50重量%の分散剤ポリマーと50重量%の油とを含む濃縮物として販売および使用される。高濃度では、弱塩基分散剤は粘度を増す。EGRの使用により前記潤滑剤に対する酸負荷が増したため、粘度の要求を満たすために前記潤滑剤中の分散剤は最大限に増した。
【0118】
潤滑システム
本発明の潤滑システムは、任意の内燃機関で機能可能な潤滑システムとなるように、上記構成成分を組み合わせたものである。図1において、前記潤滑システム210はディーゼル機関215と流体接続している。前記ディーゼル機関215は、NOx除去システム217および粒子フィルター219である後処理装置を含む。図示するように、排ガス再循環システムも提供される。図2は、ガソリンエンジン225と流体接続した潤滑システム220を示す。前記ガソリンエンジン225には、触媒コンバータ228のような従来の方法による後処理機構が装備されている。
【0119】
前記NOx除去システム217、粒子フィルター219、および触媒コンバータ228は、エンジンからの排ガスを捉え、環境放出される汚染物質のレベルを低減するために使用可能な処理装置である。多くの国で、すべての燃焼機関排ガスに後処理機構を組み入れることを要求する排ガス基準が採用されている。さらに、産業または政府の基準によって、後処理機構または後処理装置に一定のライフサイクルを与えることが要求される可能性があることも認識されている。つまり、ある期間にかけて前記後処理機構が運転することが要求され、前記期間は、それら機構を使用するエンジンの運転期間を尺度として測定される。しばしば、前記ライフサイクルは前記エンジンが運転されるマイル数として測定される。さらに、SAPSの増加によってそのような後処理装置のライフサイクルが大幅に低下する可能性があることも認識されており、したがって、前記潤滑剤の性能を有意に低下させずにSAPSレベルを低減することができれば、前記後処理装置のライフサイクルを大幅に向上させることができる。
【0120】
図3は、本発明にしたがった、燃焼機関と流体伝達をする潤滑システムの1実施形態を示す。潤滑剤230は、図3のピストンシリンダー236の分解図が示すように、潤滑剤供給ライン232を通り、内燃機関234と相互作用し、前記ピストンシリンダー236は、燃焼ゾーン242内にピストンリング240を有するピストン238を含む。前記燃焼ゾーン242での燃焼による副生成物は、排ガス243を介して前記後処理装置へ排出される。前記潤滑剤230も、化学フィルターまたは計量装置のいずれかである場合がある装置244と流体伝達をする。前記装置244が化学フィルターである場合、従来のオイルフィルターを前記潤滑剤供給ライン232に位置づけ、前記潤滑剤230と流体伝達させることもできる。当然、関連する米国特許出願第11/133,530号明細書に記述されているように、従来のオイルフィルターおよび化学フィルターを組み合わせて同じ要素にしてもよい。前記潤滑剤230は、潤滑剤返還248を介して潤滑剤槽246に戻され、潤滑剤ポンプ250を介して潤滑剤供給ライン230から燃焼機関234へと全体に再循環される。さらに、潤滑剤槽244に入り潤滑剤230のレベルを増す補充オイル252が図示されている。
【0121】
図4が示すように、化学オイルフィルター244は、前記化学フィルター244への潤滑剤の流入フロー260と流出フロー262を表す矢印とともに図示されている。前記化学フィルター244は、固形潤滑剤添加物266が付着された基質(または基材)264を含む。前記潤滑剤添加物266の拡大図は、流体の流れの中にある潤滑剤内に前記添加物が包み込まれている様子を示し、この流れは、前記固形潤滑剤添加物266を囲む複数の矢印268によって示されている。前記潤滑剤が前記固形潤滑剤添加物266の周囲を流れるに伴い前記添加物が標準的な溶解速度動力学に基づき前記潤滑剤内に溶け込むことにより、前記潤滑剤に対する前記固形潤滑剤添加物の濃度は増す。好ましくは、溶解速度によって前記潤滑剤内の前記潤滑剤添加物の濃度は一定に保たれ、燃焼チャンバにおける燃焼または消費により失われる量と等しくなる。
【0122】
図5は、装置内に固定された位置から潤滑剤添加物を前記潤滑剤に徐放する例を図示する。図示するように、固形添加物と、溶解した添加物と、消費された添加物とは、濃度平衡関係にある。平衡定数Kは前記固形潤滑剤添加物と前記溶解した添加物間に存在し、この定数Kには、前記固形物が溶解する速度(k)が関係し、この速度kは、溶解した潤滑剤添加物が再沈着または沈殿する速度(k)によって相殺される。加えて、一部の潤滑剤添加物はやがて分解または消費されるか、エンジンの燃焼チャンバへの放出によって失われるため、潤滑剤添加物が消費される速度(k)がある。この定数k3がKを調整することにより、実際の平衡定数が得られる。この平衡定数は、従来のZnDDPまたは市販のZnDDPのように溶解性の高い物質では大きいが、アルキル長鎖部分の長さを減らすこと、若しくは当業者に既知の他の化学変化によって、このような溶解性の高い材料の平衡溶解性を有意に下げることが可能である。
【0123】
図6は、前記化学フィルター270への潤滑剤の流入フロー260と流出フロー262を表す矢印とともに化学オイルフィルター270を図示する。前記化学フィルター270は、固形潤滑剤添加物274が付着された基質(または基材)272を含む。前記潤滑剤添加物274の拡大図において、前記添加物は半透過性の膜276に包囲されている。前記固形潤滑剤添加物274は、流体の流れの中にある潤滑剤内にも包み込まれており、この流れは、前記固形潤滑剤添加物274を囲む複数の矢印278によって示されている。前記潤滑剤が前記潤滑剤添加物274の周囲を流れるに伴い、潤滑剤添加物が標準的な溶解性および拡散速度動力学に基づき拡散することにより、前記潤滑剤に含まれる前記潤滑剤添加物274の濃度は時間経過に伴い着実に増す。好ましくは、前記溶解速度によって前記潤滑剤の潤滑剤添加物の濃度は一定に保たれ、たとえば擦り合う金属部品間で消費される耐磨耗剤など、燃焼チャンバにおける燃焼または消費により失われる量と等しくなる。拡散に関係する機構によって前記潤滑剤に添加物を導入する速度を制御するための他の装置または技術も可能であり、考慮される。そのような可能性の1つは、添加物を拡散するための小さな開口部を有する密閉容器であり、別の可能性は、管状コイルから添加物を発散することである。例として、米国特許第5,718,258号明細書を参照。さらに、より高い温度で油透過性となるポリマーあるいは油に不溶性だが油で湿潤可能な粒子に添加物を組み込むこともできる。例として、米国特許第4,066,559号明細書または5,478,463号明細書を参照。別の方法として、粘度調整剤として機能可能で、内部に添加物を包含可能な固形油溶解性ポリマーを用いて徐放を実現することもできる。例として、米国特許第4,014,794号明細書を参照。
【0124】
図7は、本発明の別の実施形態を示す略図であり、潤滑剤添加物は計量装置を介して循環潤滑剤に放出される。潤滑システム280は従来の潤滑システム285を含む潤滑剤であり、このシステムは内燃機関290と流体伝達をする。図示するように、固形または液体潤滑剤添加物濃縮物を入れた貯留器292は、ポンプ295のような計量装置を介して前記潤滑システム285と流体伝達をすることにより、前記貯留器292と前記潤滑システム285間の流体接続を制御する。前記計量装置295を制御することにより、前記貯留器292に保管されている前記潤滑剤添加物を前記潤滑剤285に徐放することができる。好ましくは、この放出の速度は、本明細書の記述にもあり一般に当業者に既知のように、前記潤滑剤添加物を一定な濃度に保つことによりエンジンまたは後処理機構に悪影響を及ぼさずに効果的なエンジン保護を提供する速度である。
【0125】
図8は、本発明のさらに別の実施形態の略図を示し、補充オイルは潤滑システムに含まれている。図示するように、潤滑システム300は、内燃機関310と流体伝達をする潤滑剤305を含む。また、補充オイル315は、たとえば潤滑剤槽に混入した流体によって前記潤滑システム300に添加される。補充オイル315の添加により、前記補充オイル315によって潤滑剤添加物の濃度が増すので、前記潤滑剤305のライフサイクルを増すことができる。これにより最終的にオイル交換が削減することにより、廃油およびオイル交換頻度の削減という付加価値を社会に提供する。
【0126】
図9は、リングの滑りによる潤滑剤の損失を分かりやすく図示するための、図3に示すタイプの内燃機関のピストンチャンバの縦断面の拡大図である。図のピストンチャンバ236は、ピストンチャンバ236の壁に隣接するピストンリング240を有するピストン238を含む。前記ピストン238は潤滑剤232によって取り囲まれている。図示するように、前記潤滑剤232の一部は前記ピストン238が前記ピストンチャンバ236内で往復するにつれて前記ピストンリング240を滑って通過する。やがて、前記潤滑剤232の量の一部は前記ピストンリング240を滑り抜けて燃焼チャンバ242に入り、燃焼−損失される。この拡大図は潤滑剤232のリング滑動を示す。そのような滑動は、上述のような潤滑剤の損失および補充オイルの必要につながる。
【0127】
以下の図10〜27は、上述のシステムに使用する化学フィルターに関するものである。そのような図に関する説明は、上述の同時係属の米国親特許出願第11/133,530号明細書に記述されており、この特許は参照によりここに組み込まれる。上述のように、前記の化学フィルター内の強塩基を、たとえばヒドロペルオキシド分解剤または遊離基捕捉剤またはそれらの組み合わせのような適切な酸化防止剤で置換することができる。
【0128】
図10は、本発明の化学フィルターに組み込まれた強塩基によって燃焼生成酸のイオン交換が提供されるにつれて弱塩基がリサイクルする様子を示す図である。前記燃焼生成酸の生成が行われる場所すなわちピストンリング域にある弱塩基は前記燃焼生成酸と合成する。この合成によってできた混合体は循環される潤滑剤と共に流れ、前記フィルター内の強塩基に達し、イオン交換が行われる。このイオン交換は、前記燃焼生成酸が前記強塩基と合成するにつれて前記弱塩基を放出する。
【0129】
図11は、従来のオイルフィルターを改良して創出された、実施例の化学フィルター10である。潤滑油12は、1若しくはそれ以上の流入口16およびオイル出口18を有するフィルターハウジング14に流入する。フィルターハウジング14の中には化学活性フィルター部材20があり、この部材はサイズ除去フィルター部材22を囲んでいる。化学活性フィルター部材20は、強塩基材料を含有する濾過媒体24を含むが、この強塩基材料については後により詳細に説明する。図12がより明確に示すように、化学活性フィルター部材20は円筒状のフィルター挿入物であり、図11が示す位置(すなわち非活性のサイズ除去フィルター部材22から外側径方向)を含めた様々な位置(限定せず)に配置するためのサイズおよび構成にすることができる。以下に、より詳細に説明するように、化学活性フィルター部材または挿入物20は、粒子状物質を結合するための結合剤および既知のプロセスによって固形の多孔性構造に形成可能である。
【0130】
同じく図11が示すように、油を含有する燃焼生成酸−弱塩基複合体は流入口16を通過してフィルターハウジング14に入り、環状空間26を下がって移動する。次にこの油は、径方向に内側に流れ、化学活性フィルター部材20を通り、続いて不活性サイズ除去フィルター部材22を通過する。化学活性フィルター部材20を通過する際、濾過媒体24に付随する強塩基材料は、前記複合体からの弱塩基を置換し、化学フィルター10の燃焼生成酸を固定化する。次に、リサイクルされた弱塩基材料を含有する油が出口18を通過してフィルター10から出ると、このリサイクルされた弱塩基材料は、燃焼に伴う酸をさらに中和するために使用可能となる。化学フィルター10の特徴および構成はあくまでも例として記述しているのであって、付属請求項の正しい解釈という目的のみに限定されるものではない。さらに、化学活性フィルター部材20および濾過媒体24は、油の通過を可能にする粒子状物質の集合が化学活性フィルター部材20に含まれることを図示するために描かれているに過ぎない。この図は、本発明が提供する濾過媒体の実際のサイズを表すことを意図したものではない。前記粒子状物質の特定のサイズおよび分布を有するいくつかの実施形態、および隣接粒子間に定義される間隙細孔のサイズおよび分布について、以下により詳細に説明する。
【0131】
濾過媒体24は、近接する粒子の集合を含むものである。図13は、一次粒子30を含む濾過媒体24を例示する略図であり、内部細孔32と、隣接する粒子30間に定義される間隙細孔34とを含むものであり、これによって拡散が可能となる。内部細孔34の大半の細孔径は、好ましくは約1ミリメートル未満であり、より好ましくは約500マイクロメートル未満である。好ましい実施形態において、間隙細孔34は実質的に均質に分布されるので、過度のチャネリング、または前記濾過媒体のいくつかの部分のみの通過を引き起こすことはない。前記間隙細孔は、好ましくは、潤滑システムで発生する可能性がある破片が閉塞または過度の増圧を起こさずに前記濾過媒体24を通過するために十分な大きさである。前記間隙細孔34のサイズおよび分布は、前述の好ましい特徴とある程度異なる場合があるが、本発明にしたがった有用性は維持する。本明細書で用いられる用語「濾過媒体細孔」は、内部細孔および間隙細孔の両方を含む。
【0132】
前記粒子は、好ましくは結合剤材料で結合される。あるいは、たとえば繊維状ウェブの表面に捕えるまたは配置すること、あるいは1若しくはそれ以上の濾過紙またはそれに類似したものに配置することによって、前記粒子を(結合剤を使うとは限らない)物理的拘束によって緊密に集合させることができる。前記繊維状ウェブは、天然繊維(たとえばセルロース繊維を含む)、合成繊維(たとえばポリエチレン繊維)、または天然繊維と合成繊維の混合物で作成することができる。繊維状ウェブとしては、典型的な繊維および/または米国特許第6,127,036号明細書および第5,759,394号明細書に記述されているような「人工繊維」を採用することができる。これらウィッキング繊維は、その物理的濾過繊維に人工的に織り込まれた微細なチャネル内に汚れを捕える。化学活性フィルター挿入物を本発明の化学フィルターに組み込むために、本明細書に記述する濾過媒体粒子を含む繊維状ウェブ、濾過紙、または他の任意の比較的柔軟な基材を折り畳むこと、プリーツ状にすること、巻くこと、あるいは他の任意の方法で操作することが可能である。
【0133】
前記粒子は、主に強塩基そのものから形成することができる。「強塩基」とは、前述の弱塩基−燃焼生成酸複合体からの弱塩基を置換し、その弱塩基を潤滑油に再び戻す塩基であり、それによって前記弱塩基はピストンリング域に再循環し、さらに多くの酸を中和するために再利用される。適切な強塩基の例としては、酸化バリウム(BaO)、炭酸カルシウム(CaCO),酸化カルシウム(CaO),水酸化カルシウム(Ca(OH))、炭酸マグネシウム(MgCO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、酸化マグネシウム(MgO)、アルミン酸ナトリウム(NaAlO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)、酸化亜鉛(ZnO)、炭酸亜鉛(ZnCO)、および水酸化亜鉛Zn(OH)H)、またはそれらの混合物が含まれる。好ましい強塩基材料は酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛であり、好ましい強塩基材料混合物は酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛を含む。
【0134】
あるいは上述のように、前記粒子を基材から形成し、その上に強塩基材料を配置することもできる。当業者に既知の方法によって、前記強塩基を前記基材上あるいは前記基材に組み込むことができる。たとえば、基材粒子を、強塩基材料と溶媒の溶液に暴露することによって、前記溶液で前記粒子の外側および内側の面を被覆することができる。次に前記溶媒を除去し、前記基材粒子に強塩基材料の薄層を残す。請求項14はこのプロセスを図示する略図であり、基材粒子40は強塩基材料42の薄層で被覆される。適した基材40としては、活性炭、カーボンブラック、活性アルミナまたは遷移アルミナ、シリカゲル、アルミノケイ酸塩、層状複水酸化物、ミセル鋳型ケイ酸塩およびミセル鋳型アルミノケイ酸塩、酸化マンガン、メゾ多孔性モレキュラーシーブ、MCMタイプの物質、珪藻土またはシリカ、生砂、活性マグネサイト、樹脂系吸着剤、多孔性粘土、モンモリロナイト、ベントナイト、マグネシウムケイ酸塩、酸化ジルコニウム、フラー土、セメント結合剤、エアロゲル、キセロゲル、クリオゲル、金属有機物構成体、等細網状金属有機物構成体、およびそれらの混合物が含まれる(限定せず)。活性炭は、非常に薄い層または単分子層の強塩基材料を配置するのに好ましい基材であることが分かった。このため、炭素表面が酸性であることは有用である(ただし必要ではない)。前記の好ましい実施形態にしたがい、粒子濾過媒体に強塩基材料を「付随させる」ことは、前記粒子を主に前記強塩基材料そのものから作成する実施形態、および前記強塩基材料を基材粒子(この材料そのものが前記強塩基の機能に寄与するとは限らない)に配置する実施形態を含む。
【0135】
上記の基材の多くは物理的に活性な材料であり、本発明の代替化学フィルターおよび/または挿入物の実施形態は、化学活性および物理活性濾過媒体の両方の濾過媒体を採用するものであることに注意すべきである。たとえば、ある容量の活性炭を化学フィルターに採用し、炭素粒子の一部のみを強塩基材料で被覆することができる。被覆されない炭素粒子は、任意の数のオイル汚染物質を吸着可能な物理活性濾過媒体としての役割を果たし、被覆される粒子は本発明にしたがった燃焼生成酸の固定化および潤滑剤分散剤のリサイクルが可能な化学活性濾過媒体としての役割を果たす。結合剤材料を使い、この混合濾過媒体を単一の固体構造に形成することができる。あるいは、前記物理活性粒子を第1の挿入物または構成成分に結合し、前記化学活性粒子を第2の挿入物または構成成分に結合し、前記2つの構成成分を化学フィルターハウジング内で組み立てることができる。
【0136】
必要な強塩基材料の量は、オイルに含まれる弱塩基の量およびエンジン運転中に生成される酸の量によって異なる。しかし、前記強塩基材料は前記弱塩基材料と異なり再使用のために連続再生されないので、前記強塩基材料の量は、好ましくは前記オイル中の弱塩基の当量の少なくとも3分の1に等しく、より好ましくは、前記オイルに使用される弱塩基の重量の2倍以上である。
【0137】
強塩基と弱塩基間の交換は表面現象である。したがって、到達可能な表面にない強塩基の分子が弱塩基と交換されることはない。多孔性でない強塩基粒子すなわち外面のみを有する強塩基粒子は表面積をほとんど持たず、弱塩基との交換にはおそらく非効率的である。前記表面にある分子だけが交換の対象となり、強塩基の表面外にあるすべての分子は利用不可能である。したがって、内部細孔を有する多孔性濾過媒体粒子が好ましい。粒子の多孔性が増すにつれ、総表面積すなわち外面積および(内部細孔によって定義される)内面積は大きく増す。多孔性の一部の尺度では、前記外面積は重要ではなくなる。最適な多孔性の粒子でありその外面積は重要ではない場合、前記フィルターを通し圧力降下を最小限にすることおよび前記フィルター床の構造上の完全性を確保することを考慮して粒子のサイズを選択するのが最良である。前記粒子は、好ましくは約50ナノメートル〜約25ナノメートルの範囲である。前記粒子の有効径が約5マイクロメートル未満である場合は、より小さい粒子を固定化するために必要な不活性サイズ除去フィルター部材によってより大きい圧力降下が前記フィルター全体にかかるため、前記粒子を凝集粒子または固体構造に結合するのが好ましく、前記粒子を本発明の化学フィルター内に含めることが望ましい。
【0138】
燃焼生成酸の固定化に、すべての内部表面積を利用できるのではない。前記燃焼生成酸−弱塩基複合体は、強塩基材料を含む内部表面積に到達するには内部細孔に入り込む必要がある。前記強塩基との接触があると、前記燃焼生成酸−弱塩基複合体は前記強塩基とイオン交換を行い、前記燃焼生成酸は前記表面に固定化されたままとなり、再生された弱塩基は溶液へ戻る。使用可能な表面積を最大限にすることは、前記強塩基材料の能力を最大限にする。よって、表面の完全な活用は、小細孔(または小細孔への進入)によって前記弱塩基−燃焼生成酸複合体がサイズ除去されることによって制限される。すなわち、前記弱塩基が前記細孔内に入ることまたはサイズ制限のある孔入り口を通って入ることが必要である。結果として、前記弱塩基−燃焼生成酸複合体溶液相旋回直径によって、機能的な最小細孔が決定される。物体の旋回半径(または直径の2分の1)は、問題の物体と同じ質量および慣性モーメントを有する、薄壁で囲まれた円筒の半径である。
【0139】
広く使用されている分散剤(弱塩基)の1つは、ポリイソブチレン無水コハク酸および分岐ポリ(アルキレンアミン)(「PAM」)の縮合によって提供される。この分散剤は、両端に親油性のPIB鎖を有し、その中間に極性PAM部分を有する短ブロック共重合体と考えることができる。この物質のランダムウォーク構造における旋回の溶液相直径は、62オングストロームと推定された(Langmuir 2005,21,924−32,"Effect of Temperature on Carbon−Black Agglomerates in Hydrocarbon Liquid With Adsorbed Dispersant",You−Yeon Won,Steve P.Meeker,Veronique Trappe,and David Weitz,Department of Physics and DEAS,Harvard University;Nancy Z.Diggs and Jacob I.Emert,Infineum USA LP)。通常は市販の調製に存在しないが、トリオクタデシルアミンも弱塩基として機能する。弱塩基として機能させるために、潤滑剤にトリオクタデシルアミンを添加することができる。この分子の旋回の溶液相直径は、55オングストロームと推定されるが、これはC−CおよびC−Nの結合長を合計し、以下の情報および計算を用いて得た推定である。

C−C結合長=1.54オングストローム
C−N結合長=1.47オングストローム
2x(17x1.54Å+1.47Å)=55Å

これら2つの弱塩基は例として挙げているのであって、より小さい旋回直径の適切な弱塩基でもよく、これらその他の弱塩基を受け入れるよう適応された内部細孔を有する濾過媒体は本発明の範囲に含まれる。これらの計算は前記弱塩基の回転の平均半径または直径に基づくものだが、前記弱塩基−燃焼生成酸複合体の平均半径または直径は若干大きいものと認められる。しかし、前記燃焼生成酸は前記弱塩基の中心近くで主に複合体となるため、前記弱塩基の回転の平均半径と前記弱塩基燃焼生成酸複合体の平均半径の違いは少ない。
【0140】
内部細孔直径が60オングストローム未満であると、サイズ除去によってほとんどの従来の弱塩基は孔表面に到達することができないという理論がある(ただしこの理論に束縛されず)。図15はこのシナリオを図示するものであり、多孔性粒子50は、大きい弱塩基分子54を受容するにははるかに小さ過ぎる(<60オングストローム)直径PDを有する内部細孔52を有する。80オングストローム以上の内部細孔径であれば、前記燃焼生成酸−弱塩基複合体の多くが孔の内面に到達できると考えられる。200オングストローム以上の内部細孔径であれば、弱塩基−燃焼生成酸複合体のほとんどが孔の内面に到達できると考えられる。しかし、内部細孔がそのように大きくなると、前記濾過媒体粒子の構造完全性が損なわれる。内部細孔径の上限は製造手法および用途によって異なる。いくつかの実施形態において、前記濾過媒体粒子は、約60オングストローム〜約3,000オングストロームの中位細孔径を有する濾過媒体細孔(内部細孔と隣接粒子間に形成される間隙細孔)を定義する。構造完全性が維持される限り、本発明には3,000オングストロームより大きい細孔径が適していることに注意すべきである。
【0141】
本発明の濾過媒体粒子は、弱塩基と強塩基の交換のために利用可能な表面すなわち燃焼生成酸−弱塩基複合体を受容するために十分な大きさの細孔(粒子内に定義される内部細孔と隣接粒子間に定義される間隙細孔)から実質的に作られる表面を比較的多く提供する。いくつかの実施形態において、前記濾過媒体は、燃焼生成酸−弱塩基複合体を受容することができる内部細孔および間隙細孔から作られる約25m/gm以上の表面積を有する(例として、図27に示すMagchem30(商標)の特徴を有する酸化マグネシウムを参照)。別の実施形態において、前記濾過媒体は、燃焼生成酸−弱塩基複合体を受け入れることができる内部細孔および間隙細孔から作られる約30m/gm以上の表面積を有する(例として、図27に示すPremium(商標)の特徴を有する酸化マグネシウムを参照)。さらに別の実施形態において、前記濾過媒体は、燃焼生成酸−弱塩基複合体を受け入れることができる内部細孔および間隙細孔から作られる約50m/gm以上の表面積を有する(例として、図27に示すMagchem40(商標)の特徴を有する酸化マグネシウムを参照)。上述の実施形態にしたがった表面の測定方法は、水銀圧入式ポロシメータによる測定である。水銀ポロシメータは、ウォッシュバーンの式を用いて測定圧から孔のサイズを計算する。容量は、測定したキャパシタンスを容量に変換して求める。報告されるデータは、一般に、孔総面積、かさ密度、骨格密度、多孔性、平均細孔径、中位細孔径、および合計圧入容積を含む。
【0142】
いくつかの実施形態において、本発明の化学フィルターに採用される濾過媒体の形態は重要である。たとえば石灰、およびいくつかの形の酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛のような一部の強塩基は非常に少ない内部細孔を有するため、非常に低い表面積を有する(図24〜27を参照)。
【0143】
図16が示すように、濾過媒体粒子は好ましくは結合剤材料で結合される。1実施形態において、前記濾過粒子および結合剤材料はモノリシック構造に形成される。このようにする1つの理由は、前記濾過媒体を流れる潤滑剤のチャネリングを引き起こす可能性のある濾過媒体一次粒子の沈降を防ぐことである。粒子を結合するもう1つの理由は、粒子のサイズである。多くの強塩基粒子は(有効径)5ミクロン未満であり、従来のバイパス不活性サイズ除去フィルター部材でさえ約5ミクロンという制限を有するため、前記粒子は潤滑剤の流れに入り込む可能性がある。図16は、結合剤62で結合した一次粒子60を示す。重要なのは、結合剤62は隣接粒子60間に作られる空間を完全には埋めないということであり、これは、オイルが拡散して前記濾過媒体を通るには間隙細孔64が必要だからである。結合剤材料62は、隣接する化学フィルター粒子60を取り巻き結合する、または隣接する化学フィルター粒子60を囲み結合する実質的に連続な多孔性結合基質を形成する、ディスクリートなストランドまたは粒子でよい。
【0144】
有用な結合剤は、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリビニルエステル、ポリビニル硫酸、ポリビニルリン酸、ポリビニルアミン、ポリオキシジアゾール、ポリトリアゾール、ポリカルボジイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリアリレンオキシド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリホスファゼン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリ−p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール、ポリ−2,6−ジイミダゾピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ポリビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルプロプリオネート、ポリビニルピロリドン、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンオキシド、ポリメチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリパラ−フェニレンテレフタルアミド、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリイミド、ポリベンズアゾル、パラ−アラミドファイバー、ポリマーコロイド、ラテックス、およびそれらの混合物を含む(限定せず)。好ましい結合剤は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ナイロン、およびそれらの混合物を有する群から選択される。結合剤としてナイロンは特に好ましく、ナイロン11(Rilsan(商標)ポリアミド11としてArkemaから入手可能)が最も好ましい。
【0145】
前記結合剤は熱硬化性材料でもよい。好ましい熱硬化性材料は、フェノールホルムアルデヒド樹脂およびメラミン樹脂を含む。無機結合剤も本発明に考慮される。代表的な無機結合剤は、シリカ、アルミナ、アルミネート、シリケート、反応性酸化物、アルミノシリケート、金属粉、火山ガラス、粘土を含む(限定せず)。特に好ましい粘土は、カオリン粘土、メタカオリン粘土、アタパルガス粘土、およびドロミテ粘土である。1実施形態において、濾過媒体粒子は、高分子有機結合剤および無機結合剤の追加によって生成されるモノリシック構造内で固定化される。
【0146】
前記結合剤材料および前記濾過媒体粒子(強塩基材料が配置された強塩基粉または基材粉)は、当業者に既知の様々な手法を用いて組み合わせることができる。前記結合剤材料と前記濾過媒体粒子を組み合わせるために適した2つの手法が、米国特許第5,019,311号および5,928,588号に開示されており、いずれもその全文は参照により本明細書に組み込まれる。これらの特許は、本発明の濾過媒体粒子と共に採用可能な他の適切な結合剤材料も開示している。
【0147】
結合濾過媒体を作成するための2つの好ましい方法を図17および図18に示す。図17が示す第1の方法は、濾過媒体と結合剤材料を組み合わせて混合物を形成する工程を含む。前記混合物を、前記結合剤材料の軟化温度より高く前記濾過媒体の軟化温度より低い温度になるまで加熱する。加熱されたこの混合物にせん断および圧力を適用する。1実施形態において、前記結合剤材料の少なくとも一部を実質的に連続なウェブ状構造に転換するために十分なせん断および圧力を適用する。前記濾過媒体粒子および結合剤材料は、上述の適した材料から選択することができる。
【0148】
図18に示す方法は、濾過媒体結合剤材料と生強度剤を組み合わせて実質的に均質な混合物を作成する工程を含む。次に、前記混合物を圧縮して多孔性構造物にする。この多孔性構造物を熱して前記結合剤材料の融点より高い温度まで熱すると前記結合剤材料は流れ、隣接する濾過媒体粒子に接触する。次に、この多孔性構造物を急速に冷却して前記結合剤材料の融点より低い温度にする。前記濾過媒体粒子および結合剤材料は、上述の適した材料から選択することができる。生強度剤は粉末、繊維、液体、またはそれらの混合物の場合がある。適した繊維の代表的なリストは、ポリオレフィン繊維、ポリエステル、ナイロン、アラミド、およびレーヨンから成る群から選択される繊維状またはマイクロ繊維を含む。適した液体はラテックスおよび樹脂溶液を含む(限定せず)。
【0149】
一次粒子と結合剤材料の集塊(たとえば「ペレット」)を作成することができ、メッシュケージまたは液体透過性繊維マット(たとえば濾過紙、繊維織物、または不織ウェブ)のような様々な手段で化学フィルター内に前記集塊を含めることができる。化学フィルターに挿入される化学活性フィルター部材は、図17および18を参照して図示および説明した方法および前述の特許第5,019,311号および第5,928,588号に開示されている方法を含む様々な手法を用いて固体の多孔性構造物に形成することができる。
【0150】
前記の開示された方法を用いて作成することができる1つの好ましい多孔性構造物は、上記の濾過媒体粒子(ただし限定せず)を含む濾過媒体粒子、および前記濾過媒体粒子を支持して捕える熱可塑性結合剤の基質を含む。この熱可塑性結合剤の基質は、好ましくは実質的に連続な熱可塑性結合剤相であり、前記濾過媒体粒子を支持して捕えるものである。前記実質的に連続な熱可塑性結合相は、実質的に通常の条件(すなわち当業者に既知の周辺条件)でフィブリル化(小繊維化)して約10マイクロメートル未満の直径を有するマイクロファイバーになることが実質的にあり得ず且つ前記濾過媒体粒子の軟化温度より実質的に低い軟化温度を有する結合剤材料から好ましくは形成される。前記濾過媒体粒子は、前記濾過媒体粒子間の間隙細孔内の希釈材料として存在する前記の実質的に連続した熱可塑性結合剤相内で均一な基質に固めることができる。残りの細孔容積は空隙の連続容積を有し、前記結合剤材料は強制的にマクロ孔および個々の濾過媒体粒子の外部空隙になる。
【0151】
前記の開示された方法を用いて作成することができる別の好ましい多孔性構造物は、上記の濾過媒体粒子(ただし限定せず)を含む濾過媒体粒子と、結合能力を提供する構成成分と、生強度剤の能力を提供する構成成分とを含む。結合能力を提供する構成成分は、本明細書に記述したあらゆる結合剤材料を含むことができ、熱可塑性材料、熱硬化性ポリマー、無機結合剤、およびそれらの混合物を有する群から好ましくは選択される。1実施例は、濾過媒体粒子を約70〜約90重量パーセント、結合能力を提供する前記構成成分を約3〜約20重量パーセント、および生強度能力を提供する前記構成成分を約1〜約15重量パーセント含む。前記多孔性構造物は、カチオン樹脂、イオン交換材料、パーライト、珪藻土、活性アルミナ、ゼオライト、樹脂溶液、ラテックス、金属材料および繊維、セルロース、炭素粒子、炭素繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維、スチール繊維、グラファイト繊維、およびそれらの混合物を有する群から選択される構成成分を選択的に含むことができる。
【0152】
この固形で多孔性の構造物は様々な形状およびサイズを有することができ、1つの好ましい形状は、フィルターキャニスター内に入れられた不活性サイズ除去フィルター部材から内側または外側に径方向に配置可能な円筒であり、結果として本発明の化学フィルターとなる。これらの構造物を第1の形状に形成し、次にそれを化学フィルターキャニスターまたは他のハウジングの中に組み入れる前に第2の形状にすることができる。たとえば、粒子および結合剤材料を含む固形の多孔性シートを形成し、それを円筒またはらせん巻きにして径方向に配置される複数の層を形成することができる。
【0153】
本発明の化学フィルターの好ましい配置は、内燃機関潤滑システムの従来の(フルフローおよび/またはバイパス)オイルフィルターの場所である。潤滑システム内の他の位置も、本発明は考慮する。前記の好ましい配置で、従来のフィルターを本発明の化学フィルターと交換または組み合わせる。当然、前記好ましい配置で、上述のような強塩基材料を有する化学活性濾過媒体と共に不活性サイズ除去フィルター部材が必要である。前記化学活性濾過媒体を化学フィルターキャニスターまたは他のハウジングに数通りの方法で配置することができる。前記化学活性濾過媒体を前記不活性サイズ除去フィルター部材の上流に置くことができ、この場合、前記化学活性濾過媒体が放出するあらゆる微粒子はサイズ除去濾過によって隔離されることになる。前記化学活性濾過媒体を前記不活性サイズ除去フィルター部材の下流に置くことができ、この場合、粒子は、前記化学活性濾過媒体のあらゆる細孔が浮遊粒子によって塞がれる前に、前記サイズ除去フィルターでまず除去される。また、前記不活性サイズ除去フィルターの前および後に配置することもできる。単一のフィルター部材を、サイズ除去フィルターおよび化学活性フィルターの両方の働きをするものとして定義することも可能である。たとえば、米国特許第5,792,513号明細書、第6,077,588号明細書、第6,355,330号明細書、第6,485,813明細書、および第6,719,869号明細書に記述されているように、化学活性濾過媒体をフィルター紙シートと連結させ、このシートを中心マンドレルに巻き付け、化学フィルターとサイズ除去フィルターの交互の層を作成することができる。バックシートに加え、カバーシートを使用することもできる。本発明の化学フィルターを通る潤滑剤の流れは、径方向および軸方向を含む様々なパターンを有することができる。
【0154】
前記潤滑剤の流れを2つに分岐させることもできる。この形状では、前記流れの一部は化学フィルター要素を流れてエンジン潤滑剤槽に戻る。当業者であれば、そのような方向にすれば、前記フィルター要素全体ではるかに大きい圧力降下が可能であることを理解するであろう。この設計は、低多孔性を有する要素を流れるフィルターの流れ速度を維持すること、または潤滑剤が前記化学フィルターを通過した後にエンジンに流れて行くフロースキームである場合に、同等の多孔性を有する要素を通る流れ速度を高めることを可能にする。この2分岐に流れる形状では、前記化学フィルターを他のフィルター要素に対し上述のように位置づけ、流れの一部がエンジン潤滑剤槽に戻るという付加的特徴を与えることができる。
【0155】
上述のように、図11は本発明が提供する1実施例の化学フィルターである。当業者であれば、化学フィルター10を化学単一段階フィルターと特徴付けるであろう。本発明の代替化学フィルターを多段階濾過と定義する若しくは多段階濾過に組み込むことができる。例として図19を参照し、化学2段階フィルターの形状である別の実施例の化学フィルター70を示す。オイルは、まずカバー76に配置された開口部74を通して第1の段階72に流入する。次に、オイルは流入口80を通り濾過媒体78に流通する。オイルは出口82を通って第1の段階72を出て、流入口86を通って第2の段階84に入る。第2の段階84は、不活性サイズ除去フィルター部材90を取り巻く環状濾過媒体88を含む。濾過媒体88は強塩基材料を好ましくは含み、濾過媒体78と物理的および化学的に類似していてもしていなくてもよい。あくまで例として、濾過媒体78は酸化亜鉛を含むことができ、濾過媒体88は酸化マグネシウムを含むことができる。オイルは濾過媒体88を通って径方向に内側に流れ、不活性サイズ除去フィルター部材90を通り、中央の出口91を通って第2の段階から出る。
【0156】
図20が示すように、化学フィルター100を内燃機関の潤滑システムに配置することができ、オイルは、たとえばフィルター110のような不活性サイズ除去フィルターおよび化学フィルター100の両方を通って連続循環する。オイルは、どちらのフィルターを先に通ることもできる。化学フィルター100は、本明細書の説明に従い強塩基材料を含む化学活性濾過媒体102を含む。
【0157】
本発明の化学フィルターの代替実施形態において、化学活性フィルター部材を、図11が示す径方向の配置ではなく、不活性サイズ除去フィルター部材と実質的に端と端でつながれる配置にすることができる。図21を参照し、実施例の化学フィルター120は、ハウジング122と、ハウジング122に配置された不活性サイズ除去フィルター部材124と、不活性サイズ除去フィルター部材124の一端に配置された化学フィルター部材126とを含む。化学フィルター部材126は、強塩基材料を有する濾過媒体128を含む。この実施形態はベンチュリーノズルを含んでも含まなくてもよい。
【0158】
端と端をつなぐ配置では、完全な流れが得られ、すべてのオイルは前記サイズ除去フィルター部材124および前記化学活性フィルター部材126を通って流れる。その他の実施形態において、流入オイルの第1の部分は前記化学活性フィルター部材のみを流れ、流入オイルの第2の部分は前記不活性サイズ除去フィルター部材のみを流れ、流入オイルの第3の部分は両方のフィルター部材を流れる。前記化学フィルターおよびその全体的形状は、本発明にとって重要ではない。
【0159】
図28に示すように、潤滑剤の流れが2分岐するように化学フィルターを内燃機関の潤滑システムに配置することができる。この形状では、前記流れの一部は化学フィルター246を通り、潤滑剤槽返送ライン245を通ってエンジン潤滑剤槽230に戻る。残りの流れはフィルター244を通り、潤滑剤供給ライン232を通ってエンジンへ送られる。上述したように、前記化学フィルターを他のフィルター要素に対し様々な方向で位置づけることができる。たとえば、図29が示すように前記化学フィルターを図のフィルター内の中央に位置づけることができる。
【0160】
これは、高表面積を作り出すことが望まれる実施形態では、非常に小さい実質的に固体の非多孔性粒子の強塩基材料を生成するために有効な場合がある。前記粒子は好ましくはナノメートルサイズの範囲である。これらナノメートルサイズの粒子を結合剤で凝集し、(隣接粒子間の間隙細孔によって定義される)多孔性固体を形成することができる。この構造は高表面積の濾過構成成分を提供する。前記構造は、前記粒子が合体するまでは内部表面積をほとんどまたは全く持たないが、合体した後には、本明細書に説明および開示される用途に適したものとなる。これらナノメートルサイズの強塩基粒子を(上述のように)適した多孔性基材に分散することおよび/または吸着させることも可能である。
【0161】
たとえば、直径1ナノメートルの酸化マグネシウム球状粒子の外部表面積は約280m/gmとなる。直径5ナノメートルのものは、約56m/gmの外部表面積を有することになる。形状が球体ではなく不規則な場合、前記表面積ははるかに大きくなる。直径1ナノメートルの酸化亜鉛球状粒子は約178m/gmの外部表面積を有することになり、直系5ナノメートルのものは約36m/gmの外部表面積を有することになる。この場合も、形状が球体ではなく不規則な場合、前記表面積ははるかに大きくなる。
【0162】
排ガスを削減するために、エンジン製造業者は排ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation:EGR)と呼ばれる技術の採用を始めた。この技術は排ガスを再循環して燃焼チャンバに戻すものである。図22は、先行技術の図に描かれたEGRシステムの主要構成成分の略図である。排ガスの一部130は通常のように車両の外に排出されるが、前記排ガスの別の部分132はEGR弁134へ送られ、この弁を通る。次に、回収された排ガス132は、たとえば、空気/燃料混合物取り込み口140で導入される清浄な空気と混ざり合う前にオイル冷却器136で冷却される。この空気/燃料混合物は燃焼チャンバ142へ送られる。
【0163】
本発明の化学フィルターは、EGR技術が組み込まれた車両に特に有用である。したがって、本発明は燃焼副生成物を制御するためのシステムを提供する。図23は1つの好ましいシステム実施形態を示す。回収された排ガスを燃焼チャンバに導入するための手段は当業者に既知の任意のものでよく、図22が示す導管、EGR弁、およびオイル冷却構成成分を含む。この実施形態に含まれる化学活性濾過部材は少なくとも約60オングストロームの中位細孔径を有する内部細孔および約25m/gm以上の表面積を有する。
【0164】
化学フィルターの実施例
本発明の化学フィルターに適切な強塩基材料を求め、いくつかの強塩基材料候補を調べた。これら候補材料の多孔性および表面積の特性を明らかにするために、以下に説明するようにガス吸着法および水銀ポロシメータ法を用いた。
【0165】
サンプルの準備
すべての孔を正確に捉えて測定するには、生成、結合、または固形材料を粉砕し、一次粒子と同じ粒子サイズの微粉末にしてから孔分析を行う必要がある。多孔性を評価する前に、前記材料が十分に粉砕されたかどうかを決定するために、前記粉砕後の材料の電子マイクログラフの結果をポロシメータの結果と比較することができる。電子マイクログラフの結果の孔のサイズがポロシメータ法で計測して得た孔のサイズと実質的に同等であれば、前記粉砕後の材料は十分に粉砕されている。このようにサンプルを準備するのは、そのような材料の間隙細孔に一般的に伴うインクビン、遮へい、およびスキン効果を防ぐためである。分析は、結合剤を添加する前の化学濾過材料(すなわち製造業者が供給した化学濾過材料)に対して行うのが好ましい。
【0166】
水銀侵入ポロシメータ
孔サイズ分布は、ジョージア州NorcrossのMicromeritics Analytical Servicesが水銀圧入式ポロシメータを用いて決定した。空隙容積およびそれに対応する圧力(または孔サイズ)は、Micromeritics Autopore IV9520計器を用いて記録した。次に、水銀圧入データを解析し、直径330〜0.003マイクロメートルの細孔の細孔容積分布を決定した。水銀ポロシメータは、ウォッシュバーンの式を用いて測定圧から孔のサイズを計算する。容積は、測定したキャパシタンスを容積に変換して求める。報告されるデータは、孔総面積、かさ密度、骨格密度、多孔性、平均細孔径、中位細孔径、および合計圧入容積を含む。
【0167】
前記強塩基材料候補の多孔性および表面積の特徴を図24〜27に示す。図24は上述の先行技術材料であるCatalyst75−1の多孔性計算を含む。図25は、不適切な酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛の候補材料を含み、図26はこの用途に不適切と考えられる石灰材料を含む。報告データでは、図25および26の強塩基材料はあまりに低い総表面積であるため、燃焼生成酸−弱塩基複合体を受け入れるために十分なサイズの孔からその表面積のすべてを得たとしても、前記強塩基材料はオイルドレン間隔の増加に効果的ではないだろう。
【0168】
図27は、本発明にしたがった適切および好ましい強塩基材料の代表的なリストである(限定せず)。図27に含まれる材料の(本用途での)有効表面積は、約25m/gm(Magchem30の場合は26〜27m/gm)以上の値から約50m/gm(MagOx98HRの場合は50〜61m/gm)以上の値である。いくつかの候補材料は30m/gm台の値の有効表面積を有する。Martin Mariettaから入手可能なMagchem50(MgO)は、特に好ましい強塩基材料である。
【0169】
発明の背景で述べたCatalyst 75−1に関する説明に加え、図27の表は、供給業者が一般に報告する表面積であるBET表面積が、必ずしも、特定の強塩基材料が提供する(本用途での)有効表面積を示すものではないことを示している。たとえば、Magchem HSA30の製造業者の報告では、前記材料のBET表面積は160m/gmである。しかし、前記BET表面積の半分よりはるかに少ない面積が、燃焼生成酸−弱塩基複合体を受け入れるために十分に大きい細孔(細孔1066〜60Åから得られる62m/gmの有効表面積)から得られ、これは燃焼生成酸を固定化するために必要なおよその表面積範囲である。さらに、HSA30の残りの有効表面積(62m/gm)のほぼ半分はサイズ範囲が60〜80Åという比較的小さい開口部の細孔にある。通常、弱塩基の分子量には変化がある(よって溶液相旋回直径にも変化がある)ため、分布の大きい方に属する分子は80Åより大きい細孔のみに適合することができる。よって、HSA30のように一見非常に効果的な材料の機能表面積は、実際は32m/gm程度にすぎない。これは、この材料が55Åという中位細孔径を有するからである。これに対し、Magchem50のような材料ははるかに低いBET表面積(製造業者の報告によると65m/gm)を有するが、大きい燃焼生成酸−弱塩基複合体でさえ入ることができる細孔にほぼすべての表面積がある(細孔1066〜80Åから得られる64m/gmの有効表面積)。これは、前記材料が141Åというはるかに大きい中位孔径を有するからである。加えて、これら大きい細孔は、燃焼生成酸の効率的な固定化に欠かせない、粒子を通した急速な拡散を助ける。
【0170】
図27が示す材料の細孔容積は0.8〜1.4ml/gmである。しかし、受け入れられる材料の値は、その材料の粒子サイズ分布によって大きく異なる場合があり、特に、この範囲の低い方よりもかなり小さい場合がある。これは、広範なサイズ分布の材料では、より大きい粒子が形成する間隙細孔をより小さい直径の粒子が占め、細孔容積がはるかに小さくなるためである。結合剤を添加する場合、この添加材料は間隙細孔を占有(および/または利用可能な孔を閉塞)し、合計細孔容積を低減する可能性がある。これに対し、エアロゲル、キセロゲル、およびクリオゲルのような低密度の強塩基材料は、この範囲よりはるかに高い細孔容積を有する場合がある。よって、候補材料は0.3ml/gmより大きい合計圧入容積を有することができる。図27を再び参照し、好ましい候補材料は約55オングストローム〜約350オングストロームの中位孔径を有する。
【0171】
酸化亜鉛吸着Catalyst 75−1が酸性ガス生成からの硫化水素(HS)を捕捉する高い能力は、この小さい分子を捕えるよう作られた高い表面積によって得られる。前記Catalyst75−1は前述のBrownawellらの特許に記述されている潤滑用途で機能するが、理想からはほど遠く、本発明と共に使うには、よりよい材料が望まれる。硫化水素は小さい断面直径(<5Å)を有し、その自由な拡散を可能にする細孔は、(約60Åの平均断面直径を有すると考えられる)燃焼生成酸−弱塩基複合体を吸着するにははるかに小さすぎる可能性がある。
【0172】
Catalyst75−1は製造中止されているが、公開文献から得られる情報を元にその有効表面積を計算することができる。公開されている細孔容積(例として米国特許第4,717,552号明細書を参照)、および水銀圧入式ポロシメータを用いた孔径("Application of Three−Dimensional Stochastic Pore Network to Zinc Oxide Particle"S.Javad−Mirrezaei Roudaki,Dissertation for the degree of Master of Science,Dept.of Chemical Engineering,University of Manchester Institute of Science and Technology,February 1989)の値を用いて計算した、この用途でのCatalyst 75−1の最初の総有効表面積は、約40 m/gmであった。しかし、Catalyst 75−1は球形粒子であり、よく記録されている遮へい、インクビン、およびスキン効果により(例として"Analytical Methods in Fine Particle Technology" Webb,P.A.,Orr,C.;Micromeritics Instrument Corp.;Norcross,Georgia;1997,pp 172−173;Catalysis Today,18(1993)509−528およびThe Canadian Journal of Chemical Engineering,83(2005),1−5を参照)、水銀ポロシメータはその表面積を実際より高く見積もる。低融点合金圧入によるサンプルの電子マイクログラフ("Application of Three−Dimensional Stochastic Pore Network to Zinc Oxide Particle"S.Javad−Mirrezaei Roudaki、Dissertation for the degree of Master of Science,Dept.of Chemical Engineering,University of Manchester Institute of Science and Technology,February 1989、および"Applications of Visualized Porosimetry for Pore Structure Characterization of Adsorbents and Catalysts"The 1994 ICHEME Research Event,J.Mirrezaei−Roudaki,A.Allamy,R.Mann,A.Holt,1994を参照)は、この材料に1〜7ミクロンの空隙が存在することを明らかに示している。これらの空隙は水銀圧入データには存在しないが、総圧入容積の最低限50%を占める可能性がある。加えて、巨視的な亀裂および空隙が、総圧入容積の最高15%をさらに占める。これら大きい空隙が総表面積に与える有効表面積は1m/gmに満たない。上記に基づく出願者の計算の要約を、下表1に示す。
【0173】
【表2】

【0174】
表の注記:
a.ウォッシュバーンの式A=4V/Dを用いて総表面積を計算。
b.Analytical Methods in Fine Particle Technology," Webb,P.A.,Orr,C.,Micromeritics Instrument Corp.,Norcross,GA,1997,pp 172−73
c.細孔容積=0.30cm3/gm(Catalyst75−1で典型的)(米国特許第4,717,552号明細書を参照)
d.平均孔径=300Å(Catalyst75−1で典型的)("Application of Three−Dimensional Stochastic Pore Network to Zinc Oxide Particle"S.Javad−Mirrezaei Roudaki,Dissertation for the degree of Master of Science,Dept.of Chemical Engineering,University of Manchester Institute of Science and Technology,February 1989を参照)
e.ミクロンサイズの孔、Catalyst 75−1の低融点合金圧入による電子マイクログラフを参照("Application of Three−Dimensional Stochastic Pore Network to Zinc Oxide Particle"S.Javad−Mirrezaei Roudaki、Dissertation for the degree of Master of Science,Dept.of Chemical Engineering,University of Manchester Institute of Science and Technology,February 1989、および"Applications of Visualized Porosimetry for Pore Structure Characterization of Adsorbents and Catalysts" The 1994 ICHEME Research Event,J.Mirrezaei−Roudaki,A.Allamy,R.Mann,A.Holt,1994を参照)
このように、巨視的空隙容積を正しく考慮すると、本用途でのCatalyst 75−1の有効表面積は十分に15〜21m/gmの範囲内となる。燃焼生成酸−弱塩基複合体を受容するために十分なサイズの細孔から得られる21m/gmより大きい表面積は、交換能力を最大限にし、オイルドレン間隔を延長する。
【0175】
フィルターの固定化強塩基、潤滑剤の洗浄剤濃度、およびオイルドレン間隔の関係
強塩基のおよその中和能力 化学オイルフィルターに含まれる強塩基が酸を固定化する能力は、前記酸が利用可能な強塩基表面積に直接関係する。米国特許出願第11/133,530号明細書に記述されているように、本発明で使用するのに適した強塩基は、分散剤−酸複合体が利用可能なMgOの表面積が68m/gmに等しいMagchem 50である。推定では、燃焼生成酸の1分子は約3Åx3Åの面積を占有する。よって、100グラムのMagchem 50は6.8x1023の利用可能な表面積を有する。この値を3Åx3Åおよびアボガドロ定数6.02x1023で割ることにより、100グラムのMagchem 50は化学オイルフィルターに含まれる酸を約0.13モル固定化することが示される。通常、分散剤は50重量パーセント濃縮物として販売される。この濃縮物は、濃縮物100グラム当たり約0.009モルの分散剤を含有し、一般的な分散剤処理速度は3.5〜5.0%である。処理速度を4.5%と仮定すると、ディーゼル機関に充填される10ガロンのオイルは0.14モルの分散剤を含有することになる。したがって、100グラムのMgOは0.13モルの酸を固定化し、通常の分散剤処理は0.14モルの酸を中和する。つまり、Magchem50は、1モルの分散剤が1モルの酸を中和すると仮定し、通常の分散剤処理とほぼ同等の量の酸を固定化することができる。
【0176】
さらに、400グラムのMgOは通常の1回の分散剤処理の4倍の酸を固定化し、1,000グラムのMgOは通常の1回のオイル処理の9倍の固定化を行う。よって、400グラムのMagchem50を含有する化学オイルフィルターは分散剤を4回再循環し、前記分散剤が通常中和する量の5倍の酸を固定化する。すなわち、いったんMgOの表面を酸が満たすと、前記分散剤はさらに1酸等価量を中和する。事実上、フィルターが400グラムのMagchem50を有し、通常の1分散剤処理がある潤滑システムは、通常の1分散剤処理のみで可能な量の5倍の酸を中和することができる。その違いは、酸の80%が潤滑剤から離れて固定化されることであり、それが金属面に付着すること、およびワニスおよびピストンデポジットに付加されることは不可能である。
【0177】
オイルドレン間隔、TBN(全塩基価)および洗浄剤濃度 一般に、全塩基価(TotalBaseNumber:TBN)の下限はエンジンオイルのドレン間隔を決定する。運転者はオイル分析を行い、TBNレベルが下限より低い場合(通常、2〜5)にオイル交換を行う。上述のように、化学オイルフィルターに含まれる強塩基は分散剤を再循環することにより酸を中和し、潤滑剤のTBNを維持する。よって、前記強塩基の能力を、オイルドレン間隔の延長または改良潤滑剤の洗浄剤レベルの低減またはそれら両方のために活用することができる。前記潤滑剤の洗浄剤レベルの低減は、ピストンデポジットの削減およびエンジンの後処理システムで使用される粒子フィルターのデポジットの削減につながるという利点を有する。
【0178】
上記の推定は化学オイルフィルターに含まれるMgOのレベルを3つ(100、400、および1,000グラム)考慮しているが、実用可能な限りできるだけ多くの強塩基を前記フィルターに含める方がよいことは明らかである。フィルターに配置可能な強塩基の量に影響を与えるものとして考慮されるのは、フィルターの最大許容容積および前記フィルターでの圧力降下である。これらの制限を鑑み、前記フィルターに配置されるその他の化学薬品(耐磨耗剤または酸化防止剤)によって、MgOの量を削減せざるを得ない場合がある。以下の例はこれらの関係を示す。
【0179】
潤滑システムの例
システム1
強塩基化学フィルター、特殊潤滑剤、および補充オイルを有する潤滑システム
比較的一定した長期オイルドレン間隔で使用される潤滑剤のTBNを十分なレベルに維持し、且つピストンデポジット(その一部は洗浄剤に含まれる灰分から生成される)を低減するよう設計された潤滑剤システムであり、化学フィルターと、潤滑剤と、前記潤滑剤と同じ若しくは異なる潤滑剤とを有する。
【0180】
前記化学フィルター部分は、約100〜約1,000グラムの強塩基を含有する。
【0181】
前記潤滑剤は、0〜約0.8重量パーセントの範囲の硫酸塩灰分含有量を生成する金属系洗浄剤と、バランスのよい潤滑剤を調製するために必要な、当業者に既知の他の添加物とを含有する。
【0182】
前記補充オイルは、0〜約0.8重量パーセントの範囲の硫酸塩灰分含有量を生成する洗浄剤レベルと、前記潤滑剤に含まれる分散剤レベルと同等から約3倍の分散剤レベルと、前記潤滑剤の性状を維持するために必要な他の添加物とを含有する。このシステムについて、以下の例を挙げて説明する。
【0183】
【表3】

【0184】
【表4】

【0185】
a=現在市販されている潤滑剤での測定結果
b=このシステムのCa、Zn、N、およびP値およびそれ以降の項目は、本発明の実施形態を表す。硫酸塩灰分の重量パーセントは、CaをCaSO、ZnをZnSOとして計算。
c=オイルドレン間隔に応じてフィルターを選択。
d=目標とする粘度を実現するための必要に応じて。
e,g=目標とする酸化防止(通常、0.5〜2.0重量パーセント)を実現するための必要に応じて。
f=潤滑剤における濃度の1〜3倍だが、せん断安定性のある粘度調整剤を使用する場合はより少なく、高分子量の粘度調整剤を使用する場合はより多い。

1.潤滑剤例1および2は現在市販されている潤滑剤を表す。
2.潤滑剤例3〜7および補充オイル例1〜4は、現行および将来のエンジンのピストンデポジットを削減するよう設計されている。
3.潤滑剤例4〜7および補充オイル例2〜4は、0.12重量%のPおよび1.00重量%の硫酸塩灰分という提案されている「PC−10」の制限を満たすか、若しくは前記制限以上となるように設計されている。
4.潤滑剤例5〜7および補充オイル例2〜4は、0.12重量%のPおよび1.00重量%の硫酸塩灰分という提案されている「PC−10」制限をちょうど満たす潤滑剤より少ない排ガスフィルターデポジットを生成する。
5.補充オイル例1は潤滑剤例3と、補充オイル例3は潤滑剤例7とそれぞれ同じである。
6.この補充オイルはこの潤滑剤と同じまたは異なる調製の場合がある。
7.潤滑剤例4と7の比較は、洗浄剤の除去によって硫酸塩灰分を70%削減すると同時にリンのレベルを維持することができることを示す。
8.硫酸塩灰分レベルはASTMのD874の方法で決定され、元素濃度はASTMのD5185の方法で決定される。
【0186】
システム2
強塩基化学フィルター、ZnDDPの徐放、特殊潤滑剤、および補充オイルを有する、排ガス制御後処理装置と共に使用する潤滑システム
長期オイルドレン間隔で使用される潤滑剤のTBNを十分なレベルに維持し、ピストンデポジット(その一部は洗浄剤に含まれる灰分から生成される)を低減し、排ガスフィルターの灰分含有デポジットを低減し、排ガス触媒の汚染を削減するよう設計された潤滑剤システムであり、化学フィルターと、潤滑剤と、前記潤滑剤と同じ若しくは異なる潤滑剤とを有する。
【0187】
前記化学フィルター部分は約100〜約950グラムの強塩基と、放出速度が制御された約50〜約600グラムの耐磨耗剤とを含有する。
【0188】
前記潤滑剤部分は、0〜約0.8重量パーセントの範囲の硫酸塩灰分含有量を生成する金属系洗浄剤レベルと、約0.04〜約0.11重量パーセントの範囲のP含有量と、バランスのよい潤滑剤を調製するために必要な、当業者に既知の他の添加物とを含有する。
【0189】
前記補充オイル部分は、0〜約0.8重量パーセントの範囲の硫酸塩灰分含有量を生成する洗浄剤レベルと、約0.04〜約0.11重量パーセントの範囲のP含有量と、前記潤滑剤の分散剤レベルと同等から3倍の分散剤レベルと、前記潤滑剤が正しく機能するために必要な、当業者に既知の他の添加物とを含有する。このシステムについて、以下の例を挙げて説明する。
【0190】
【表5】

【0191】
【表6】

【0192】
【表7】

【0193】
a=目標とする粘度を実現するための必要に応じて。
b、d=目標とする酸化防止(通常、0.5〜2.0重量パーセント)を実現するための必要に応じて。
c=潤滑剤における濃度の1〜3倍だが、せん断安定性のある粘度調整剤を使用する場合はより少なく、高分子量の粘度調整剤を使用する場合はより多い。

1.潤滑剤例1〜5および補充オイル例1〜5は、現行および将来のエンジンのピストンデポジットを削減し、長期オイルドレン間隔にわたりTBNを維持し、排ガスフィルター汚染を削減し、排ガス後処理装置のあるエンジンの触媒汚染を削減するために設計されている。
2.補充オイル例4および5は潤滑剤例2および5と同じ調製である。
3.補充オイルは潤滑剤と同じまたは異なる調製を有する場合がある。
【0194】
システム3
排ガス制御後処理装置と共に使用するために設計された、強塩基化学フィルター、徐放性ZnDDP、酸化防止剤、特殊潤滑剤、および補充オイルを有する潤滑システム
長期オイルドレン間隔で使用される潤滑剤のTBNを十分なレベルに維持し、ピストンデポジット(その一部は洗浄剤に含まれる灰分から生成される)を低減し、排ガスフィルターの灰分含有デポジットを低減し、排ガス触媒の汚染を削減するよう設計された潤滑剤システムであり、化学フィルターと、潤滑剤と、前記潤滑剤と同じ若しくは異なる潤滑剤とを有する。
【0195】
前記化学フィルター部分は約100〜約900グラムの強塩基と、放出速度が制御された約50〜約200グラムの耐磨耗剤と、約50〜約300グラムの固定化された酸化防止剤とを含有する。
【0196】
前記潤滑剤部分は、0〜約0.8重量パーセントの範囲の硫酸塩灰分含有量を生成する金属系洗浄剤レベルと、約0.04〜約0.11重量パーセントの範囲のP含有量と、バランスのよい潤滑剤を調製するために必要な、当業者に既知の他の添加物とを含有する。
【0197】
前記補充オイル部分は、0〜約0.8重量パーセントの範囲の硫酸塩灰分含有量を生成する洗浄剤レベルと、約0.04〜約0.11重量パーセントの範囲のP含有量と、前記潤滑剤の分散剤レベルと同等から3倍の分散剤レベルと、前記潤滑剤が正しく機能するために必要な、当業者に既知の他の添加物とを含有する。このシステムについて、以下の例を挙げて説明する。
【0198】
【表8】

【0199】
【表9】

【0200】
【表10】

【0201】
a=酸化防止剤はMo(C17OCS、リン酸モリブデン、MoS、NaOHなどを含む。限定例については米国特許第4,997546号明細書を参照。
b=目標とする粘度を実現するための必要に応じて。
c,e=目標とする酸化防止(通常、0.5〜2.0重量パーセント)を実現するための必要に応じて。
d=潤滑剤における濃度の1〜3倍だが、せん断安定性のある粘度調整剤を使用する場合はより少なく、高分子量の粘度調整剤を使用する場合はより多い。

1.潤滑剤例1〜5および補充オイル例1〜4は、現行および将来のエンジンのピストンデポジットを削減し、長期オイルドレン間隔にわたりTBNを維持し、排ガス後処理装置のあるエンジンの触媒汚染およびDPF詰まりを削減するために設計されている。
2.補充オイル例2および4は潤滑剤例5および4と同じ調製である。
3.補充オイルは潤滑剤と同じまたは異なる調製を有する場合がある。
4.潤滑剤例4と例5の比較は、洗浄剤の除去によりリンを64%削減できることを示す。
【0202】
システム4
ガソリン燃料車用に設計された化学フィルターを有する潤滑システム
長期オイルドレン間隔で使用される潤滑剤のTBNを十分なレベルに維持し、且つピストンデポジット(その一部は洗浄剤に含まれる灰分から生成される)を低減するよう設計された潤滑剤システムであり、化学フィルターと、潤滑剤と、前記潤滑剤と同じ若しくは異なる潤滑剤とを有する。
【0203】
前記化学フィルター部分は約100〜約1,000グラムの強塩基と、溶解性により放出速度が制御される約0〜約400グラムの耐磨耗剤と、約0〜約200グラムの固定化された酸化防止剤とを含有する。
【0204】
前記潤滑剤部分は、約0.1〜約0.8重量パーセントの範囲の硫酸塩灰分含有量を生成する金属系洗浄剤レベルと、約0.04〜約0.08重量パーセントの範囲のP含有量と、バランスのよい潤滑剤を調製するために必要な、当業者に既知の他の添加物とを含有する。
【0205】
前記補充オイル部分は、0〜0.4重量パーセントの範囲の硫酸塩灰分含有量を生成する洗浄剤レベルと、約0.04〜約0.08重量パーセントの範囲のP含有量と、前記潤滑剤の分散剤レベルと同等から3倍の分散剤レベルと、前記潤滑剤が正しく機能するために必要な、当業者に既知の他の添加物とを含有する。このシステムについて、以下の例を挙げて説明する。
【0206】
【表11】

【0207】
【表12】

【0208】
【表13】

【0209】
a=酸化防止剤はMo(C17OCS、リン酸モリブデン、MoS、NaOHなどを含む。限定例については米国特許第4,997546号明細書を参照。
b=現在市販されている潤滑剤での測定結果
c=Ca、Zn、P、およびNの結果は本発明の実施形態の結果である。硫酸塩灰分の重量パーセントは、CaをCaSO、ZnをZnSOとして計算された。
d=目標とする粘度を実現するための必要に応じて。
e,g=目標とする酸化防止(通常、0.5〜2.0重量パーセント)を実現するための必要に応じて。
f=潤滑剤における濃度の1〜3倍だが、せん断安定性のある粘度調整剤を使用する場合はより少なく、高分子量の粘度調整剤を使用する場合はより多い。

1.この補充オイルはこの潤滑剤と同じまたは異なる調製の場合がある。
【0210】
本発明に関し、好ましい実施形態を示す様々な図と共に説明したが、本発明から逸脱せずに本発明と同じ機能を実行するために他の類似した実施形態を用いること、または本発明の実施形態に改良および追加を行うことが可能なものと理解されるべきである。よって、本発明を単一の実施形態に限定すべきではなく、むしろ、付属の請求項の記述にしたがった範囲において本発明を解釈すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】図1は、ディーゼル機関用の本発明の潤滑システムの1実施形態を示す略図である。
【図2】図2は、ガソリン機関用の本発明の潤滑システムの1実施形態を示す略図である。
【図3】図3は、化学潤滑フィルターを有する本発明の潤滑システムを示す略図である。
【図4】図4は本発明の化学フィルターの縦断面図であり、化学フィルターの潤滑剤添加物は、各添加物の平衡溶解性によって制御される濃度になるよう潤滑剤に放出される。
【図5】図5は、本発明の図4の実施形態の基礎となる反応速度および平衡を図示するものであり、平衡により溶解性が制御される潤滑剤添加物を含む。
【図6】図6は本発明の化学潤滑剤フィルターの縦断面図であり、前記化学潤滑フィルターの潤滑剤添加物は、膜または多孔性固体を通して徐々に拡散することにより前記潤滑剤に放出される。
【図7】図7は、貯蔵容器から前記潤滑剤に投入する潤滑剤添加物を計量するポンプを含む本発明の1実施形態の略図である。
【図8】図8は、補充オイルを含む本発明の1実施形態の略図である。
【図9】図9は、ピストンチャンバ内のエンジンピストンを図示し、ピストンリングとチャンバ間で失われる潤滑剤損失を示す。
【図10】図10は、本発明の化学フィルターが内燃機関の潤滑システム内で機能する1つの方法を示す略図である。
【図11】図11は、本発明の化学フィルター実施形態の透視図である。
【図12】図12は、本発明の1実施形態に従って提供される化学活性フィルター部材の透視図である。
【図13】図13は、本発明の化学フィルターで使用するのに適した濾過媒体粒子の略図である。
【図14】図14は、基材粒子と、前記基材粒子に乗せられた強塩基材料の層とを含む濾過媒体粒子の略図である。
【図15】図15は、典型的な弱塩基分子と弱塩基を受容するには不十分な径の細孔を有する多孔性粒子の相対的サイズ比較を示す。
【図16】図16は、(付随する強塩基材料を有する)粒子を含む濾過媒体の一部、および実質的に連続した結合基質を形成可能であり隣接粒子を取り込み結合する結合剤材料を示す略図である。
【図17】図17は、本発明に従った結合濾過媒体を作成するための第1の方法を示す図である。
【図18】図18は、本発明に従った結合濾過媒体を作成するための第2の方法を示す図である。
【図19】図19は、本発明に従った2段階の化学フィルターを示す透視図である。
【図20】図20は、内燃機関潤滑システムの一部を示す断面図であり、潤滑システムは化学フィルターと、この化学フィルターから間隔を空けて置かれた従来の非活性サイズ除去フィルター部材とを含む。
【図21】図21は、本発明の実施形態の化学フィルターの断面図であり、化学フィルターは、化学活性フィルター部材と端同士で配列された非活性サイズ除去フィルター部材またはバイパス形態で動作する挿入部を含む。
【図22】図22は、本技術で既知の排ガス再循環システムの略図である。
【図23】図23は、本発明にしたがった燃焼副生成物制御システム実施形態を示す図である。
【図24】図24は、強塩基材料Catalyst 75−1の細孔特性を示す表である。
【図25】図25は、その他の強塩基材料の細孔特性を示す表である。
【図26】図26は、その他の強塩基材料の細孔特性を示す第2の表である。
【図27】図27は、候補となる強塩基材料の細孔特性を示す第3の表である。
【図28】図28は、潤滑剤の流れを2分岐し、前記流れの一部が化学フィルターを通過して前記エンジン潤滑剤槽に戻るよう、内燃機関用潤滑システムに化学フィルターを配置した実施形態を図示する。
【図29】図29は、図28の実施形態の化学フィルターを前記フィルターの中心に位置づけることができることを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関潤滑システム内で使用する化学フィルターであって、この化学フィルターは濾過媒体を含み、
この濾過媒体は
(a)個々の粒子内に形成される内部細孔と隣接し合う粒子間に形成される間隙細孔とを含む粒子であって、当該内部細孔および当該間隙細孔は集合的に濾過媒体の細孔を定義するものである、前記粒子と、
(b)前記内部細孔の少なくともいくつかに付随する強塩基材料と
を含み、
前記濾過媒体は、前記化学フィルターを流れるオイルに含まれる燃焼生成酸−弱塩基複合体を受容するのに十分な大きさの濾過媒体細孔から作られる25m/gm以上の表面積を有するものである
化学フィルター。
【請求項2】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記濾過媒体は、前記化学フィルターを流れるオイルに含まれる燃焼生成酸−弱塩基複合体を受容するのに十分な大きさの濾過媒体細孔から作られる、約30m/gm以上の表面積を有するものである。
【請求項3】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記濾過媒体は、前記化学フィルターを流れるオイルに含まれる燃焼生成酸−弱塩基複合体を受け入れるのに十分な大きさの濾過媒体細孔から作られ、る50m/gm以上の表面積を有するものである。
【請求項4】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記内部細孔は、水銀圧入式ポロシメータを用いた測定で約60オングストローム以上の中位細孔径を有するものである。
【請求項5】
請求項4記載の化学フィルターにおいて、Micromeritics Autopore IV9250計器を用いて濾過媒体表面積および濾過媒体細孔径を測定するものである。
【請求項6】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記濾過媒体細孔は0.3ml/gmより大きい細孔容積を有するものである。
【請求項7】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記間隙細孔の大半は約1ミリメートル未満の細孔径を有するものである。
【請求項8】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記粒子は酸化マグネシウム粒子を含むものである。
【請求項9】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記粒子は酸化亜鉛粒子を含むものである。
【請求項10】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記粒子は酸化マグネシウム粒子と酸化亜鉛粒子の混合物を含むものである。
【請求項11】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記粒子は、活性炭、カーボンブラック、活性アルミナまたは遷移アルミナ、シリカゲル、アルミノケイ酸塩、層状複水酸化物、ミセル鋳型ケイ酸塩およびミセル鋳型アルミノケイ酸塩、酸化マンガン、メゾ多孔性モレキュラーシーブ、MCMタイプの物質、珪藻土またはシリカ、樹脂系吸着剤、多孔性粘土、モンモリロナイト、ベントナイト、マグネシウムケイ酸塩、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フラー土、セメント結合剤、エアロゲル、キセロゲル、クリオゲル、金属有機物構成体、等細網状金属有機物構成体、およびそれらの混合物を有する群から選択される材料から作成されるものである。
【請求項12】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記粒子は基材から作成され、この基材上に前記塩基材料が配置されるものである。
【請求項13】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記粒子は基材から作られ、前記基材粒子のいくつかにのみ前記塩基材料が配置されるものである
【請求項14】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、この化学フィルターは、さらに、
物理活性濾過媒体を有するものである。
【請求項15】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記粒子の少なくともいくつかは結合剤材料で相互に結合されており、この結合剤材料は、(1)ポリオレフィン、ポリビニル、ポリビニルエステル、ポリビニル硫酸、ポリビニルリン酸、ポリビニルアミン、ポリオキシジアゾール、ポリトリアゾール、ポリカルボジイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリアリレンオキシド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリホスファゼン、ポリウレタン、およびそれらの混合物を有する群から選択される熱可塑性材料、(2)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリ−p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール、ポリ−2,6−ジイミダゾピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ポリビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルプロプリオネート、ポリビニルピロリドン、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンオキシド、ポリメチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリパラ−フェニレンテレフタルアミド、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリイミド、ポリベンザゾール、パラ−アラミドファイバー、およびそれらの混合物を有する群から選択される材料、(3)低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、およびそれらの混合物を有する群から選択される材料、(4)ナイロン、(5)フェノールホルムアルデヒド樹脂および/またはメラミン樹脂を含む熱硬化性材料、および/または(6)ポリマーコロイドおよび/またはラテックスを含むものである。
【請求項16】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記粒子は、前記粒子への結合剤材料の追加によって生成されるモノリシック構造内で固定化されるものであり、前記結合剤材料は無機結合剤材料を含み、この無機結合剤材料は、シリカ、アルミナ、アルミネート、シリケート、反応性酸化物、アルミノシリケート、金属粉、火山ガラス、カオリン粘土、メタカオリン粘土、アタパルガス粘土、および/またはドロミテ粘土を含むものである。
【請求項17】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記粒子は、高分子有機結合剤および無機結合剤の追加によって生成されるモノリシック構造内で固定化されるものである。
【請求項18】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記粒子は、セルロース系繊維および/または合成繊維を含む繊維状ウェブ内に配置され、前記繊維状ウェブはらせん状に巻かれ径方向に配置された複数の層を定義し、このような層はディファレンシャルパッキングを有し得るものである。
【請求項19】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記化学フィルターは、内燃機関潤滑システム内のオイルフィルターの1若しくはそれ以上のハウジング内に使用されるものである。
【請求項20】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記化学フィルターは、内燃機関潤滑システム内のオイルフィルターのバイパス部分に使用されるものである。
【請求項21】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記内部細孔の少なくともいくつかは約60オングストローム以上の細孔径を有し、前記濾過媒体細孔に伴う細孔容積は0.3ml/gmより大きいものである。
【請求項22】
請求項21記載の化学フィルターにおいて、約60オングストローム以上の細孔径を有する前記細孔は、約25m/gm以上の表面積を有するものである。
【請求項23】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記濾過媒体細孔は、約60オングストローム〜約3,000オングストロームの中位細孔径を有するものである。
【請求項24】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記濾過媒体細孔の少なくとも約50%は、約60オングストローム以上の細孔径を有するものである。
【請求項25】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記濾過媒体のより大きい割合を占める表面積は、約80オングストローム未満の細孔径を有する濾過媒体細孔より約80オングストローム以上の細孔径を有する濾過媒体細孔から作られるものである。
【請求項26】
請求項25記載の化学フィルターにおいて、約80オングストローム以上の細孔径を有する前記細孔は、約25m/gm以上の表面積を有するものである。
【請求項27】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記間隙細孔の大多数は約500マイクロメートル未満の直径を有し、当該間隙細孔は前記濾過媒体において実質的に均質に分布しているものである。
【請求項28】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、前記濾過媒体は、前記濾過媒体粒子を支持し捕える熱可塑性結合剤の基質をさらに有するものである。
【請求項29】
請求項28記載の化学フィルターにおいて、前記熱可塑性結合剤の基質は、前記濾過媒体粒子を支持し捕える実質的に連続した熱可塑性結合剤相であって、この実質的に連続した熱可塑性結合剤相は、通常の条件下でフィブリル化(小繊維化)して、約10マイクロメートル未満の直径を有し且つ前記濾過媒体粒子の軟化温度より実質的に低い軟化温度を有する超極細繊維になることが実質的に不可能な結合剤材料から形成されるものである。
【請求項30】
請求項29の化学フィルターにおいて、前記濾過媒体粒子は、前記濾過媒体粒子間の間隙細孔内の希釈材料として存在する前記実質的に連続した熱可塑性結合剤相またはウェブ状構造内の均質な基質で固められ、前記細孔容積の残りは空隙の連続容積を有し、前記結合剤材料は強制的にマクロ孔および個々の濾過媒体粒子の外部空隙になるものである。
【請求項31】
請求項1記載の化学フィルターにおいて、この化学フィルターは、さらに、
熱可塑性物質、熱硬化性ポリマー、無機結合剤、およびそれらの混合物を有する群から選択される結合能力を提供する構成成分と、生強度強化能力を提供する構成成分とを有するものである。
【請求項32】
請求項31記載の化学フィルターにおいて、この化学フィルターは、
約70〜約90重量パーセントの濾過媒体粒子と、約8〜約20重量パーセントの結合能力を提供する前記構成成分と、約1〜約15重量パーセントの生強度強化能力を提供する前記構成成分とを有するものである。
【請求項33】
請求項31記載の化学フィルターにおいて、この化学フィルターは、さらに、
カチオン樹脂、イオン交換材料、パーライト、珪藻土、活性アルミナ、ゼオライト、樹脂溶液、ラテックス、金属材料および繊維、セルロース、炭素粒子、炭素繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維、スチール繊維、グラファイト繊維、およびそれらの混合物を有する群から選択される構成成分を有するものである。
【請求項34】
低レベルの潤滑剤添加物の燃焼副生成物を生成するように構成された内燃機関潤滑システムであって、
潤滑剤添加物の少なくとも1つの機能を実行または補完するための手段、または潤滑剤添加物の少なくとも1つの機能を実行または補完するための手段を有する、潤滑剤と液体連通する装置を有する請求項1記載の化学フィルターと、
硫酸塩灰分、リン、および硫黄(sulfated ash,phosphorus,and sulfur:SAPS)レベルのうち少なくとも1つのレベルが、前記化学フィルターまたは前記装置なしで同等の高いレベルを実行するように調製された潤滑剤のSAPSレベルより有意に低い潤滑剤と
を有する内燃機関潤滑システム。
【請求項35】
請求項34記載の潤滑システムにおいて、前記SAPSレベルの少なくとも1つは、前記化学フィルターまたは前記装置なしで同等の高いレベルを実行するように調製された前記潤滑剤のSAPSレベルより最低10%から最高90%低いものである。
【請求項36】
請求項35記載の潤滑システムにおいて、前記SAPSレベルのリン成分は、前記化学フィルターまたは前記装置なしで同等の高いレベルを実行するように調製された前記潤滑剤のリンのレベルより約64%低いものである。
【請求項37】
請求項34記載の潤滑システムにおいて、前記装置は、前記潤滑剤に加えられる少なくとも1つの潤滑剤添加物を計量する計量装置である。
【請求項38】
請求項34記載の潤滑システムにおいて、潤滑剤添加物の機能を実行または補完するための手段は、前記化学フィルターまたは装置により前記潤滑剤に提供される強塩基、洗浄剤、酸化防止剤、耐磨耗剤、極圧添加剤、有機酸中和剤、分散剤、摩擦調整剤、粘土指数改良剤、流動点降下剤、流れ改良剤、制泡剤、霧抑制剤、曇り点降下剤、または腐食抑制剤、或いはそれらの組み合わせを有するものである。
【請求項39】
請求項34の潤滑システムにおいて、前記潤滑システムは前記燃焼機関の通常の運転中、時間経過に伴い潤滑剤容量を損失するものであり、前記潤滑システムは、さらに、前記燃焼型エンジンの通常の運転中に失われる潤滑剤容量とほぼ同等の容量の補充オイルを有するものであり、この補充オイルは実質的に増量された少なくとも1つの潤滑剤添加物を有するものである。
【請求項40】
請求項39記載の潤滑システムにおいて、前記補充オイルは、硫酸塩灰分、リン、および硫黄(SAPS)レベルに実質的に貢献しない潤滑剤添加物を有するものである。
【請求項41】
請求項39記載の潤滑システムにおいて、前記補充オイルは、前記潤滑剤に対し実質的に低減された洗浄剤レベルを有するか、または実質的に洗浄剤を有さないオイルを有するものである。
【請求項42】
請求項39記載の潤滑システムにおいて、実質的に増量された少なくとも1つの潤滑剤添加物は、増量された粘度調整剤、分散剤、または酸化防止剤、或いはそれらの組み合わせを有するものである。
【請求項43】
請求項34記載の潤滑システムにおいて、前記潤滑剤は、与えられた最大SAPSレベルに相当する前記潤滑剤添加物のレベルより低いレベルの潤滑剤添加物を有し、前記化学フィルターまたは装置には、燃焼副生成物と相互作用する潤滑剤添加物の機能を実行または補完することが可能な化学種が固定化されているものである。
【請求項44】
請求項43記載の潤滑システムにおいて、前記与えられた最大SAPSレベルは、潤滑剤基準指定機関が規定する最大濃度である。
【請求項45】
請求項43記載の潤滑システムにおいて、前記化学種は強塩基または酸化防止剤、或いはそれらの組み合わせを有するものである。
【請求項46】
請求項34記載の潤滑システムにおいて、前記化学フィルターまたは装置は固定化された強塩基を有し、前記潤滑剤は、前記化学フィルターまたは装置なしに同等の高レベルの性能を実行するように調製された潤滑剤の洗浄剤レベルに対し、洗浄剤レベルが低減されているか若しくは実質的に洗浄剤を有さないものである。
【請求項47】
請求項38、45、または46記載の潤滑システムにおいて、前記強塩基は酸化マグネシウムまたは酸化亜鉛、或いはそれらの組み合わせを有するものである。
【請求項48】
請求項34記載の潤滑システムにおいて、前記化学フィルターまたは装置は固定化された酸化防止剤を有し、前記潤滑剤は、前記化学フィルターまたは装置なしに同等の高レベルの性能を実行するように調製された潤滑剤のZnDDPレベルに対し、ZnDDPレベルが低減されているものである。
【請求項49】
請求項38または48記載の潤滑システムにおいて、前記酸化防止剤はヒドロペルオキシド分解剤または遊離基捕捉剤、或いはそれらの組み合わせを有するか、若しくは前記酸化防止剤はMoS化合物、ZnDDP、MoS化合物、Mo(C17OCS化合物、ヒンダードフェノール、芳香族アミン、二価硫黄、二硫化物、リン酸塩、三価リン、ヒドロキノン、ジヒドロキノリン、金属不活性化剤、またはNaOH、或いはそれらの組み合わせを有するものである。
【請求項50】
請求項37記載の潤滑システムにおいて、前記化学フィルターまたは装置は、前記潤滑剤添加物を徐放(持続放出)することができ、前記潤滑剤は、前記化学フィルターまたは装置なしに同等の高レベルの性能を実行するように調製された潤滑剤の潤滑剤添加物レベルに対し、潤滑剤添加物レベルが低減されているものである。
【請求項51】
請求項50記載の潤滑システムにおいて、前記潤滑剤添加物は、ZnDDP、ジチオリン酸塩、ジチオ炭酸塩、チオカルバミン酸塩、またはビス(S−アルキルジチオカルバミル)スルフィド、或いはそれらの組み合わせを有する耐磨耗剤である。
【請求項52】
請求項50記載の潤滑システムにおいて、前記潤滑剤は、硫化オレフィン、硫化イソブチレン、硫化ポリイソブチレン、モリブデン含有チオカルバミン酸塩、オルガノ・モリブデン・スルフィド、油溶解性オルガノモリブデン混合体、ZnDDP、またはそれらの組み合わせを有するものである。
【請求項53】
請求項50記載の潤滑システムにおいて、前記化学フィルターまたは装置は、拡散速度、溶解性、または計量速度を制御することによって、前記潤滑剤添加物を徐放するものである。
【請求項54】
請求項53記載の潤滑システムにおいて、潤滑剤添加物のアルキルまたは低溶解性アリール部分の長さは、平衡溶解性を制御するために調整され、前記潤滑剤添加物は酸化防止剤、ZnDDP、摩擦調整剤、極圧添加剤、有機酸中和剤、分散剤、粘土指数改良剤、流動点降下剤、流れ改良剤、制泡剤、霧抑制剤、曇り点降下剤、または腐食抑制剤、或いはそれらの組み合わせを有するものである。
【請求項55】
請求項50記載の潤滑システムにおいて、前記潤滑剤添加物は耐磨耗剤、洗浄剤、酸化防止剤、極圧添加剤、有機酸中和剤、分散剤、摩擦調整剤、粘度指数改良剤、流動点降下剤、流れ改良剤、制泡剤、霧抑制剤、曇り点降下剤、または腐食抑制剤、或いはそれらの組み合わせを有し、
前記耐磨耗剤はZnDDP、ジチオリン酸塩、ジチオ炭酸塩、またはビス(S−アルキルジチオカルバミル)スルフィド、或いはそれらの組み合わせを有し、
前記極圧添加剤は硫化脂肪、硫化脂肪酸エステル、硫化オレフィン、硫化ポリオレフィン、ジスルフィド、ジアルキルジスルフィド、リン酸トリブチル、リン酸トリクレシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル、リン添加脂肪、ZnDDP、ジチオリン酸アミン、リン添加オレフィン、またはリン硫化オレフィン、或いはそれらの組み合わせを有し、
前記有機酸中和剤は油溶解性アミン、油溶解性アミン塩、分散剤、トリアルキルアミン、トリオクタデシルアミン、または水酸化テトラオクタデシルアンモニウム、或いはそれらの組み合わせを有し、
前記腐食抑制剤はリン酸塩エステル、ホスホン酸塩、チオジアゾール、またはベンゾトリアゾール、或いはそれらの組み合わせを有するものである。
【請求項56】
請求項34記載の潤滑システムにおいて、前記潤滑剤は、約0.9重量%以下の硫酸塩灰分含有量および/または約0.07重量%以下のリン含有量を生成する潤滑剤添加物を有し、前記化学フィルター装置は潤滑剤添加物の少なくとも1つの機能を実行または補完するための手段を有するものである。
【請求項57】
請求項34記載の潤滑システムにおいて、前記潤滑剤は高負荷ディーゼル機関潤滑剤であって、約0.9重量%以下の硫酸塩灰分および/または約0.07重量%以下のリン含有量を生成する潤滑剤添加物を有するものである。
【請求項58】
請求項34記載の潤滑システムにおいて、前記潤滑剤は、約0.4重量%以下の硫酸塩灰分および/または約0.04重量%以下のリン含有量を生成する潤滑剤添加物を有するものである。
【請求項59】
低レベルの潤滑剤添加物の燃焼副生成物を生成するよう適応される内燃機関潤滑システムであって、
請求項1記載の化学フィルターと、
排ガスを大気中に放出しないように、前記排ガスを前記内部燃焼機関の燃焼チャンバに導入するための手段と、
弱塩基分散剤が流れる潤滑剤とを有し、
前記濾過媒体細孔は約55オングストローム〜約350オングストロームの中位細孔径を有するものである
内燃機関潤滑システム。
【請求項60】
エンジン潤滑剤を保持するエンジン潤滑剤槽を有する内燃機関潤滑システム内で使用するための流体管理システムであって、
潤滑剤添加物の少なくとも1つの機能を実行または補完するための手段か、または潤滑剤添加物の少なくとも1つの機能を実行または補完するための手段を有する、潤滑剤と液体連通する装置を有する請求項1記載の化学フィルターと、
少なくとも一部のエンジン潤滑剤が前記化学フィルターまたは前記装置を通過して前記エンジン潤滑剤槽に直接戻ることを可能にする潤滑剤流路と
を有する流体管理システム。
【請求項61】
内燃機関潤滑システム内で使用するのに適した結合多孔性濾過媒体を作成する方法であって、
一定量の結合剤材料を提供する工程と、
一定量の濾過媒体を提供する工程であって、この濾過媒体は内部細孔と当該内部細孔の少なくともいくつかに付随する強塩基材料を有する粒子を含み、前記内部細孔と隣接粒子間に形成される間隙細孔によって濾過媒体細孔は定義され、前記濾過媒体は燃焼弱酸基複合体を受容するのに十分な大きさの濾過媒体細孔から作られる約25m/gm以上の表面積を有するものである、前記一定量の濾過媒体を提供する工程と、
前記一定量の結合剤材料と前記一定量の濾過媒体を組み合わせて混合物を作成する工程と、
前記混合物を、前記結合剤材料の軟化温度より実質的に高い温度であるが前記濾過媒体の軟化温度より低い温度になるまで加熱する工程と、
前記加熱された混合物に圧力およびせん断を適用する工程と、
前記混合物を前記結合剤材料の軟化温度より低い温度に急速に冷却して前記結合多孔性濾過媒体を形成する工程と
を有する方法。
【請求項62】
請求項61記載の方法において、前記加熱された混合物に圧力およびせん断を適用する工程は、前記結合剤材料を実質的に連続したウェブ状構造に変化するものである。
【請求項63】
内燃機関潤滑システムで使用するのに適した結合濾過媒体を作成する方法であって、
一定量の結合剤材料を提供する工程と、
一定量の濾過媒体を提供する工程であって、この濾過媒体は内部細孔および前記内部細孔の少なくともいくつかに付随する強塩基材料を有する粒子を含み、前記内部細孔と隣接粒子間に形成される間隙細孔によって濾過媒体細孔は定義され、前記濾過媒体は燃焼弱酸基複合体を受容するのに十分な大きさの濾過媒体細孔から作られる約25m/gm以上の表面積を有するものである、前記一定量の濾過媒体を提供する工程と、
一定量の生強度剤を提供する工程と、
前記一定量の結合剤材料、前記一定量の濾過媒体、および前記一定量の生強度剤を組み合わせて混合物を作成する工程と、
前記混合物を圧縮して多孔性構造にする工程と、
前記多孔性構造を前記結合剤材料の融点より高い温度まで加熱することにより前記濾過媒体を結合する工程と、
前記多孔性構造を前記結合剤材料の融点より低い温度に冷却して前記結合濾過媒体を形成する工程と
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公表番号】特表2008−540123(P2008−540123A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512605(P2008−512605)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/019824
【国際公開番号】WO2006/127652
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(507383116)ルーテック、エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】