説明

内燃機関用潤滑油組成物

【課題】排出ガス浄化装置を備えたガソリンエンジン搭載車の潤滑に特に適した省燃費タイプの潤滑油を提供する。
【解決手段】潤滑粘度の基油及び下記の添加剤成分を含む、硫酸灰分量が1.3質量%以下、硫黄含有量が0.4質量%以下、そしてリン含有量が0.09質量%以下である内燃機関の潤滑のための潤滑油組成物:(a)窒素含有無灰性分散剤0.01〜0.3質量%(N量)、(b)金属含有清浄剤、(c)モリブデンジチオカーバメート0.035〜0.075質量%(Mo量)、(d)リン含有耐摩耗剤0.05〜0.09質量%(P量)、(e)有機酸化防止剤0.1〜7質量%、そして(f)粘度指数向上剤0.5〜20質量%、ただし、(b)は、少なくとも過塩基性金属含有清浄剤b1(過塩基性Caサリシレート及び/又は過塩基性Caスルホネート)を0.08〜0.3質量%(Ca量)と低塩基性Caスルホネートb2を0.02〜0.12質量%(Ca量)含み、清浄剤b1と清浄剤b2のそれぞれの含有量は、清浄剤b1に起因するCa量(Ca1)と清浄剤b2に起因するCa量(Ca2)との比率Ca1/Ca2が1.0〜9.0となるように選ばれ、また、(c)の含有量は、モリブデンジチオカーバメートに起因するMo量(Mo)が、清浄剤b2に起因するCa量(Ca2)とのCa2/Moで表わされる比率が0.3〜2.3となるように選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の潤滑に用いる潤滑油組成物に関し、特に省燃費型のガソリンエンジンの潤滑油としての有用性が高い潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
以前では、自動車のエンジンから排出する排気ガスによる環境汚染(特に排気ガスに含まれる窒素酸化物による汚染)が問題となり、このため、近年では自動車には、排気ガスの浄化のための触媒が充填された排気ガス処理装置を搭載することが一般的となっている。しかしながら、排気ガス処理装置の使用に際して、排気ガス中の硫黄成分やリン成分などのような、排気ガス処理装置中の触媒の被毒を引き起こす汚染物質の存在が問題となり、このため、自動車エンジン潤滑油中の硫黄含有化合物、リン含有化合物、そして硫酸灰分生成物質の含有量の低減が必要となった。従って、近年用いられている自動車エンジン用潤滑油では、それらの触媒を被毒させる物質の生成源の含有量は厳しく制限されるようになっている。
上記の理由から、近年開発されている潤滑油組成物の多くは、そのような厳しい制限を考慮して、硫黄成分、リン成分、そして硫酸灰分のそれぞれの含有量を可能な限り低減させた配合となっている。
【0003】
一方、最近では、自動車の運転によるエネルギー損失および二酸化炭素の発生を低減させるために、自動車の省燃費性の向上が注目されるようになってきている。自動車の省燃費性を向上させる対策としては、自動車車体の軽量化の検討が進んでいるが、潤滑油についても省燃費性に寄与することが求められており、そのため、潤滑油開発に携わる研究者により、潤滑油の低粘度化や潤滑油による摩擦低減特性のさらなる向上が検討されている。
【0004】
潤滑油による摩擦低減特性のさらなる向上を実現するためには、摩擦低減剤の利用が一般的となっており、特にモリブデンジチオカーバメートに代表されるモリブデン系摩擦低減剤が注目されている。
【0005】
しかしながら、ターボチャージャーが付設された自動車エンジンの潤滑油として、モリブデンジチオカーバメートが添加された潤滑油を用いた場合に、ターボチャージャーの付設によるエンジン内の高温化に伴い、デポジット(堆積物)の増加が問題になっている。
【0006】
特許文献1には、基油にアルカリ土類金属清浄剤を金属分で0.12〜0.24質量%、少なくともジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)を含むP系添加剤をリン(P)分で0.005〜0.007質量%、そしてモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)をモリブデン(Mo)分で0.03〜0.075質量%配合してなり、上記P系添加剤のP分と前記MoDTCのMo分が下記の式(1):
0.5×P+Mo≦0.075 (1)
[式中、Pは潤滑油組成物中のP系添加剤のP分の割合(質量%)を示し、Moは潤滑油組成物中のMoDTCのMo分の割合(質量%)を示す]で表わす条件を満たすことを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−303241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、該文献に開示されている潤滑油組成物は、良好な摩耗防止性能を示し、また省燃費性も高いと記載されている。さらに、この潤滑油組成物は、ターボチャージャー付きエンジンでの使用を想定した高温下でのデポジットの堆積性を評価するために開発された試験法であるTEOST 33Cによる試験で、近年のエンジン油規格であるILSAC GF−2規格により規定された合格水準である生成デポジット量60mg以下を満足するとも記載されている。実際、特許文献1の実施例を見ると、開示された発明に従う潤滑油組成物は、TEOST 33C(ASTM D−6335)による試験におけるデポジット質量が41.1gあるいは41.2gであることが示されている。
【0009】
一方、内燃機関用潤滑油(エンジン油)の最新規格としてGF−5規格の検討が現在行なわれており、このGF−5規格では、最近の高性能化した自動車エンジンに適応する内燃機関用潤滑油(エンジン油)に対する規格のさらなる厳格化も考慮されている。たとえば、このGF−5規格では、上記のTEOST 33Cによる試験におけるデポジット質量を30mg以下とすることが検討されている。
【0010】
前記の特許文献1に記載の潤滑油組成物は、現行のTEOST 33Cによる試験におけるデポジット質量の規格(60mg以下)は満足するものの、近い時期に策定が予想される上記のデポジット質量の新規格(30mg以下)を満足することはできない。
【0011】
このため、摩擦低減添加剤として有効なモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)を配合した潤滑油組成物であって、上記のTEOST 33Cによる試験におけるデポジット質量を30mg以下とする新規格(ただし、未定である)を満足する潤滑油組成物の開発が必要となる可能性が高い。
【0012】
従って、本発明の目的は、摩擦低減添加剤として有効なモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)を配合した潤滑油組成物であって、上記のTEOST 33Cによる試験におけるデポジット質量を30mg以下とする新規格(ただし、未定である)を満足する潤滑油組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発明者は、上記の目的の開発研究を行なった結果、モリブデンジチオカーバメートを配合した潤滑油組成物に、金属含有清浄剤として過塩基性のカルシウムサリシレートあるいはカルシウムスルホネートと低塩基性のカルシウムスルホネートとを、特定のカルシウム量比率となるように配合し、また低塩基性カルシウムスルホネートに起因するカルシウム量とモリブデンジチオカーバメートに起因するモリブデン量との間の比率を特定範囲に調整することにより、TEOST 33Cによる試験におけるデポジット質量が30mg以下となる潤滑油組成物が得られることを見いだし、本発明に到達した。
【0014】
本発明は、下記の内燃機関用の潤滑油組成物にある。
【0015】
潤滑粘度の基油及び下記の添加剤成分を含む、硫酸灰分量が1.3質量%以下、硫黄含有量が0.4質量%以下、そしてリン含有量が0.09質量%以下である内燃機関の潤滑のための潤滑油組成物:
(a)窒素含有無灰性分散剤を窒素量換算値で0.01〜0.3質量%、
(b)金属含有清浄剤、
(c)モリブデンジチオカーバメートをモリブデン量換算値で0.035〜0.075質量%、
(d)リン含有耐摩耗剤をリン量換算値で0.05〜0.09質量%、
(e)有機酸化防止剤を0.1〜7質量%、そして
(f)粘度指数向上剤を0.5〜20質量%、
ただし、(b)の金属含有清浄剤は、少なくとも下記の過塩基性金属含有清浄剤b1と低塩基性金属含有清浄剤b2とを含み、
過塩基性清浄剤b1:全塩基価150〜500mgKOH/gの過塩基性カルシウムサリシレート及び全塩基価150〜500mgKOH/gの過塩基性カルシウムスルホネートからなる群から選ばれるカルシウム含有清浄剤を、カルシウム量換算値で0.08〜0.3質量%、
低塩基性清浄剤b2:全塩基価5〜60mgKOH/gの低塩基性カルシウムスルホネートを、カルシウム量換算値で0.02〜0.12質量%、
ただし、清浄剤b1と清浄剤b2のそれぞれの含有量は、清浄剤b1に起因するカルシウム含有量(Ca1)と清浄剤b2に起因するカルシウム含有量(Ca2)との比率Ca1/Ca2が1.0〜9.0の範囲の値となるように選ばれ、
また、(c)のモリブデンジチオカーバメートの含有量は、モリブデンジチオカーバメートに起因するモリブデン含有量(Mo)が、低塩基性清浄剤b2に起因するカルシウム含有量(Ca2)とのCa2/Moで表わされる比率が0.3〜2.3の範囲の値となるように選ばれる。
なお、本発明における各添加成分の含有量は、いずれも潤滑油組成物の全量に対する質量%である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の潤滑油組成物は、硫酸灰分、硫黄含有量そしてリン含有量のいずれもが低い値に設定されているため、近年必要とされる触媒被毒性を抑制した潤滑油組成物として有効であって、さらに摩擦低減添加剤として有効なモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)そして摩耗防止性能や酸化防止性能などを示す多機能添加剤であるリン含有耐摩耗剤を配合したため、充分な省燃費性と摩耗防止性能を示す。さらに、本発明の潤滑油組成物は、前記のTEOST 33Cによる試験におけるデポジット質量を30mg以下とする新規格(ただし、未定である)を満足する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の潤滑油組成物の好ましい態様を次に記載する。
【0018】
(1)過塩基性清浄剤b1が全塩基価150〜500mgKOH/gの過塩基性カルシウムサリシレートである。
(2)過塩基性カルシウムサリシレートが炭素原子数10〜30のアルキル基を一個有するモノアルキルサリチル酸カルシウム塩の過塩基化物である。
(3)過塩基性清浄剤b1が全塩基価150〜500mgKOH/gの過塩基性カルシウムスルホネートである。
(4)過塩基性カルシウムスルホネートが炭素原子数10〜30のアルキル基を有するアルキル化トルエンスルホン酸カルシウム塩の過塩基化物である。
(5)低塩基性清浄剤b2の低塩基性カルシウムスルホネートが0.1〜1.5の範囲の過塩基化度を持つ。
(6)低塩基性清浄剤b2の低塩基性カルシウムスルホネートの含有量がカルシウム量換算値で0.025〜0.08質量%の範囲にある。
【0019】
(7)清浄剤b1に起因するカルシウム含有量(Ca1)と清浄剤b2に起因するカルシウム含有量(Ca2)との比率Ca1/Ca2が1.5以上、そして6.1以下の値となるように選ばれる。
(8)モリブデンジチオカーバメートに起因するモリブデン含有量(Mo)が、低塩基性清浄剤b2に起因するカルシウム含有量(Ca2)とのCa2/Moで表わされる比率が0.4以上、そして1.5以下の値となるように選ばれる。
【0020】
(9)(d)のリン含有耐摩耗剤がジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛及び/又はジヒドロカルビルリン酸亜鉛である。
(10)(e)の有機酸化防止剤がフェノール化合物及び/又はアミン化合物である。
(11)(f)の粘度指数向上剤が質量平均分子量が100000(10万)〜1000000(100万)のポリメタクリレート系化合物である。
(12)潤滑粘度の基油が、100℃における動粘度が2.5〜6mm2/sの範囲にあり、飽和成分が90質量%以上で、粘度指数が120〜160の範囲にあり、そして硫黄含有量が0.01質量%以下である。
(13)SAE粘度グレードが0W20である。
(14)ターボチャージャー付き内燃機関の潤滑用である。
【0021】
次に、本発明の潤滑油組成物に用いる基油および添加剤成分について詳しく説明する。
【0022】
[基油]
本発明の潤滑油組成物における基油については特に限定はなく、これまでに自動車用内燃機関(特にガソリンエンジン)用の潤滑油組成物の基油として用いられてきた種々の特性の潤滑油基油を用いることができる。たとえば、ASTMに規定されているグループ1から3までの鉱油、グループ4の合成油、そしてグループ5の基油(グループ1〜4に包含されない基油)が使用できる。好ましいのは、飽和成分が85質量%以上(好ましくは、90質量%以上)、粘度指数が110以上(好ましくは、120以上、さらに好ましくは130以上)、そして硫黄含有量が0.01質量%以下(特に、0.001質量%以下)の鉱油及び/又は合成油である。
【0023】
鉱油系基油は、鉱油系潤滑油留分を溶剤精製あるいは水素化処理などの処理方法を適宜組み合わせて処理したものであることが望ましく、特に高度水素化精製油(水素化分解油とも云い、代表的には、粘度指数が120以上、蒸発損失(ASTM D5800)が15質量%以下、硫黄含有量が0.001質量%以下、芳香族含有量が10質量%以下である油)が好ましく用いられる。あるいは、このような水素化分解油を10質量%以上含有する混合油を用いることもできる。この水素化分解油には、鉱油系スラックワックス(粗ろう)あるいは天然ガスから合成された合成ワックスを原料として異性化および水素化分解のプロセスで作られる高粘度指数(例えば、粘度指数が140以上、特に140〜150、もしくは150以上)の油およびガスツーリキッド(GTL)基油も包含される。水素化分解油は、低硫黄分、低蒸発性、残留炭素分が少ないなどの点から、本発明の目的において好ましいものである。
【0024】
合成油(合成潤滑油基油)としては、例えば炭素原子数3〜12のα−オレフィンの重合体であるポリ−α−オレフィン、ジオクチルセバケートに代表されるセバシン酸、アゼライン酸、アジピン酸などの二塩基酸と炭素原子数4〜18のアルコールとのエステルであるジアルキルジエステル、1−トリメチロールプロパンやペンタエリスリトールと炭素原子数3〜18の一塩基酸とのエステルであるポリオールエステル、炭素原子数9〜40のアルキル基を有するアルキルベンゼンなどを挙げることができる。合成油は一般的に、実質的に硫黄分を含まず、酸化安定性、耐熱性に優れ、燃焼した場合に残留炭素や煤の生成が少ないので、本発明の潤滑油組成物には好ましい。特に、ポリ−α−オレフィンは、本発明の目的を考慮すると、好ましい。
【0025】
鉱油系基油および合成系基油は、それぞれ単独で使用することができるが、所望により、二種以上の鉱油系基油、あるいは二種以上の合成系基油を組み合わせて使用することもできる。また、所望により、鉱油系基油と合成系基油とを任意の割合で組み合わせて用いることもできる。
【0026】
[窒素含有無灰分散剤]
窒素含有無灰分散剤の代表例としては、ポリオレフィンから誘導されるアルケニルもしくはアルキルコハク酸イミドあるいはその誘導体を挙げることができる。代表的なコハク酸イミドは、高分子量のアルケニルもしくはアルキル基で置換されたコハク酸無水物と、1分子当り平均3〜10個(好ましくは4〜7個)の窒素原子を含むポリアルキレンポリアミンとの反応により得ることができる。高分子量のアルケニルもしくはアルキル基は、数平均分子量が約900〜5000のポリオレフィンであることが好ましく、特にポリブテンであることが好ましい。
【0027】
ポリブテンと無水マレインとの反応によりポリブテニルコハク酸無水物を得る工程では、多くの場合、塩素を用いる塩素化法が用いられている。しかし、この方法では、反応率は良いものの、コハク酸イミド最終生成物中に多量の塩素(例えば約2000ppm)が残留する結果となる。一方、塩素を用いない熱反応法を利用すれば、最終生成物中に残る塩素を極めて低いレベル(例えば40ppm以下)に抑えることができる。また、従来のポリブテン(β−オレフィン構造が主体である)に比べて、高反応性ポリブテン(少なくとも約50%がメチルビニリデン構造を有するもの)を用いると、熱反応法でも反応率が向上して有利である。反応率が高ければ、分散剤中の未反応のポリブテンが減るため、有効分(コハク酸イミド)濃度の高い分散剤を得ることができる。従って、高反応性ポリブテンを用いて熱反応法によりポリブテニルコハク酸無水物を得た後、このポリブテニルコハク酸無水物を、平均窒素原子数3〜10個(1分子当たり)のポリアルキレンポリアミンと反応させてコハク酸イミドを製造することが好ましい。コハク酸イミドは、更にホウ酸、アルコール、アルデヒド、ケトン、アルキルフェノール、環状カーボネート、有機酸等と反応させて、いわゆる変性コハク酸イミドにして用いることができる。特に、ホウ酸あるいはホウ素化合物との反応で得られるホウ素含有アルケニル(もしくはアルキル)コハク酸イミドは、熱・酸化安定性の面で有利である。コハク酸イミドとしては、1分子中のイミド構造の数に応じて、モノタイプ、ビスタイプ、およびポリタイプがあるが、本発明の目的で使用するコハク酸イミドとしては、ビスタイプ及びポリタイプのものが好ましい。
【0028】
窒素含有無灰分散剤の別の例としては、エチレン−α−オレフィンコポリマ−(例えば、分子量1000〜15000)から誘導されるポリマー性コハク酸イミド分散剤、およびアルケニルベンジルアミン系の無灰分散剤を挙げることができる。
【0029】
[金属含有清浄剤]
本発明の潤滑油組成物は、少なくともいずれも過塩基性であるカルシウムサリシレートもしくはカルシウムスルホネートそして低塩基性のカルシウムスルホネートを含む。過塩基性のカルシウムサリシレートとカルシウムスルホネートとは、それぞれ単独で用いることができ、また組合わせて用いることもできる。
【0030】
本発明の潤滑油組成物において用いる過塩基性のカルシウムサリシレートもしくはカルシウムスルホネートは、いずれも全塩基価(TBN)が150〜500mgKOH/gの範囲にあり、この過塩基性のカルシウム含有清浄剤は、潤滑油組成物中にカルシウム量換算値で0.08〜0.3質量%(好ましくは、0.09〜0.2質量%)の範囲の量で含有される。
【0031】
また、本発明の潤滑油組成物において用いる低塩基性のカルシウムスルホネートは、いずれも全塩基価(TBN)が5〜60mgKOH/gの範囲にあり、この低塩基性のカルシウム含有清浄剤は、潤滑油組成物中にカルシウム量換算値で0.02〜0.12質量%(好ましくは0.025〜0.08質量%、さらに好ましくは0.03〜0.08質量%)の範囲の量で含有される。
【0032】
なお、カルシウムスルホネートは、過塩基性および低塩基性のいずれの場合も、アルキル化ベンゼンスルホン酸カルシウム塩、あるいはアルキル化トルエンスルホン酸カルシウム塩のような合成系スルホネートが一般的であるが、鉱油の潤滑油留分をスルホン化してカルシウム塩にした石油系スルホネートなどの他の種類のスルホネートが知られており、これらの各種のスルホネートを用いることができる。
【0033】
本発明の潤滑油組成物では、過塩基性清浄剤b1と低塩基性清浄剤b2のそれぞれの含有量は、清浄剤b1に起因するカルシウム含有量(Ca1)と清浄剤b2に起因するカルシウム含有量(Ca2)との比率Ca1/Ca2が1.0〜9.0(好ましくは、1.5以上、そして6.1以下)の範囲の値となるように選ばれる。
【0034】
なお、本発明の潤滑油組成物は、金属含有清浄剤として、上記の過塩基性のカルシウムサリシレートやカルシウムスルホネート、そして低塩基性のカルシウムスルホネート以外にも、さらに各種の公知の金属含有清浄剤(例、中塩基性のカルシウムサリシレート、カルシウムスルホネート、過塩基性、中塩基性あるい低塩基性のカルシウムカルボキシレートおよびカルシウムフェネート)を追加成分として配合することができる。ただし、それらの追加的に配合されてもよい金属含有清浄剤の配合量は、本発明の潤滑油組成物における必須成分の金属含有清浄剤よりも少ないことが好ましい。また、追加的に配合されてもよい金属含有清浄剤は、カルシウム塩以外にも、他のアルカリ土類金属塩、そしてアルカリ金属塩であってもよい。
【0035】
[モリブデンジチオカーバメート]
本発明の潤滑油組成物にはモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)はモリブデン量換算値で0.035〜0.075質量%(好ましくは、0.04〜0.07質量%)が含有される。ただし、モリブデンジチオカーバメートの含有量は、モリブデンジチオカーバメートに起因するモリブデン含有量(Mo)が、前記の低塩基性清浄剤b2に起因するカルシウム含有量(Ca2)とのCa2/Moで表わされる比率が0.3〜2.3(好ましくは、0.4〜1.5)の範囲の値となるように選ばれる。
【0036】
モリブデンジチオカーバメートとしては、硫化オキシモリブデンジヒドロカルビルジチオカーバメートを用いることが好ましい。ここで、ヒドロカルビル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基などの炭素原子数が4〜13のアルキル基を挙げることができる。これらのアルキル基は、1級アルキル基、2級アルキル基、あるいは3級アルキル基のいずれであってもよい。ヒドロカルビル基は、ブチルフェニル基やノニルフェニル基などのアルキルアリール基であってもよい。なお、1分子中に異なるヒドロカルビル基が混在していてもよい。
【0037】
[リン含有耐摩耗剤]
本発明の潤滑油組成物において、リン含有耐摩耗剤は、リン量換算値で0.05〜0.09質量%(好ましくは、0.05〜0.08質量%)の範囲の量にて用いられる。
【0038】
リン含有耐摩耗剤の例としては、多機能添加剤として知られているジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛(Zn−DTP)、ジヒドロカルビルチオリン酸亜鉛、あるいはジヒドロカルビルリン酸亜鉛などのリン含有亜鉛塩添加剤が利用されるが、リン酸エステルやチオリン酸エステルなどの亜鉛を含有しないリン化合物も用いることができる。
【0039】
[有機酸化防止剤]
酸化防止剤としては、従来より知られているフェノール酸化防止剤およびアミン酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化防止剤を用いることが好ましい。これらの酸化防止剤は、単独で用いることができるが、組合わせて用いることが好ましい。酸化防止剤は、潤滑油組成物中に0.1〜7質量%(特に、0.5〜3質量%)の範囲の量で含有させることが好ましい。なお、複数の酸化防止剤を組合わせて用いる場合には、その複数の酸化防止剤の含有量の合計量が上記の含有量範囲内とされる。
【0040】
フェノール酸化防止剤としては一般的にヒンダードフェノール化合物が用いられ、アミン酸化防止剤としては一般的にジアリールアミン化合物が用いられる。
【0041】
ヒンダードフェノール酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、そして3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクチル、3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル、3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸オクチルを挙げることができる。
【0042】
ジアリールアミン酸化防止剤の具体例としては、炭素原子数が4〜9の混合アルキルジフェニルアミン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、アルキル化−α−ナフチルアミン、そしてアルキル化−フェニル−α−ナフチルアミンを挙げることができる。
【0043】
ヒンダードフェノール酸化防止剤とジアリールアミン酸化防止剤とは、それぞれ単独で使用することができるが、所望により組合せて使用することもできる。また、これら以外の油溶性酸化防止剤を併用してもよい。
【0044】
[粘度指数向上剤]
本発明の潤滑油組成物には、粘度指数向上剤が0.5〜20質量%の範囲の量で含有される。公知の各種の粘度指数向上剤を用いることができるが、省燃費特性を考慮すると、粘度・温度特性に優れる重量平均分子量が約10万〜100万のポリメタクリレート系粘度指数向上剤を用いることが好ましい。ポリメタクリレート系粘度指数向上剤は分散型であっても、非分散型であってもよい。なお、分散型のポリメタクリレート系粘度指数向上剤は、窒素含有極性基を有するものが一般的であり、窒素原子は、アミン、アミド、イミド、あるいはビニルピロリドンなどの構造単位中に含まれる。
なお、粘度指数向上剤としては、熱安定性の高いオレフィンコポリマー系粘度指数向上剤、あるいはエチレン・プロピレン共重合体、ポリイソプレンなどの高分子化合物、またこれらの高分子化合物に分散性を付与した分散型粘度指数向上剤や多機能型粘度指数向上剤も知られており、これらも単独あるいは併用して用いることができる。
【0045】
本発明の潤滑油組成物は、さらに各種の公知の潤滑油添加剤を含むことができる。そのような公知の潤滑油添加剤の例としては、前記のモリブデンジチオカーバメート以外の摩擦調整剤(例、各種アミド、アミン、あるいは多価アルコールの脂肪酸エステル、またはそれらの誘導体)、腐食防止剤(例、チアゾール化合物、トリアゾール化合物、およびチアジアゾール化合物などの銅腐食防止剤)、シール膨潤剤(例、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、あるいはフタル酸などの二塩基酸の油溶性ジアルキルエステル)、染料(例、赤色染料)、消泡剤、そして流動点降下剤(例、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド)を挙げることができる。
【実施例】
【0046】
[実施例1〜7]および[比較例1〜5]
<潤滑油組成物の製造>
所定の基油に、下記の窒素含有無灰分散剤、金属含有清浄剤、モリブデンジチオカーバメート、リン含有耐摩耗剤、有機酸化防止剤、および粘度指数向上剤を表1および表2の配合量により配合して、粘度グレード0W20の潤滑油組成物を調製した。
【0047】
(1)窒素含有無灰分散剤
コハク酸イミド分散剤:数平均分子量が約2300のポリイソブテンから誘導されたビス型コハク酸イミドをエチレンカーボネートで反応処理したもの(N:1.0質量%)
(2)金属含有清浄剤
1)過塩基性Caサリシレート:炭素原子数14〜18のアルキル基を有するモノアルキルサリシレート(Ca:6.1質量%、S:0.1質量%、TBN:170mg・KOH/g、過塩基度:2.3)
2)過塩基性Caスルホネート:炭素原子数20〜24のアルキル基を有するアルキルトルエンスルホネート(Ca:16.0質量%、S:1.6質量%、TBN:425mg・KOH/g、過塩基度:19)
3)低塩基性Caスルホネート:炭素原子数14〜24のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホネート(Ca:2.4質量%、S:2.9質量%、TBN:17mg・KOH/g、過塩基度:0.34)
(3)モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)
硫化オキシモリブデンジチオカーバメート(Mo:10質量%、S:11質量%)
(4)リン含有耐摩耗剤
1)ZnDTP−1:ジ(第二アルキル)ジチオリン酸亜鉛(P:7.2質量%、Zn:7.8質量%、S:14質量%)
2)ZnDTP−2:ジ(第一アルキル)ジチオリン酸亜鉛(P:7.3質量%、Zn:8.4質量%、S:14質量%)
(5)有機酸化防止剤
1)酸化防止剤−1:アミン系酸化防止剤(ジアルキルジフェニルアミン)
2)酸化防止剤−2:フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール置換プロピオン酸エステル)
(6)粘度指数向上剤(VII)
1)VII−1:ポリメタクリレート系粘度指数向上剤
2)VII−2:オレフィンコポリマー系粘度指数向上剤
(7)基油
水素化分解基油(100℃の動粘度:4.3mm2/s、飽和成分:99質量%、粘度指数:127、硫黄含有量:0.001以下)
【0048】
<潤滑油組成物の評価方法>
TEOST 33C(Thermo-oxidation Engine Oil Simulation Test,ASTM D−6335)に規定された試験を行なった。具体的には、試験片(デポジタロッド)を200〜480℃に加温しながら試験油を114分間通過させ、試験片に付着したデポジット(堆積物)の重量を測定した。
【0049】
<潤滑油組成物の試験結果>
下記の表1と表2に記載する。
【0050】
表1
────────────────────────────────────
実施例 1 2 3 4 5 6 7
────────────────────────────────────
無灰分散剤 0.04 0.04 0.04 0.04 0.04 0.04 0.04
────────────────────────────────────
過塩基性Ca 0.16 0.13 - - - - -
サリシレート
────────────────────────────────────
過塩基性Ca - - 0.17 0.16 0.16 0.13 0.13
スルホネート
────────────────────────────────────
低塩基性Ca
スルホネート 0.038 0.068 0.028 0.038 0.038 0.068 0.068
────────────────────────────────────
MoDTC 0.04 0.05 0.04 0.04 0.05 0.06 0.07

────────────────────────────────────
ZnDTP−1 0.08 0.05 0.08 0.08 0.08 - 0.05
ZnDTP−2 - 0.03 - - - 0.08 0.03
────────────────────────────────────
酸化防止剤−1 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2
酸化防止剤−2 0.3 - 0.3 0.3 0.3 0.3 -
────────────────────────────────────
VII−1 4.8 4.5 4.8 4.8 4.8 - 4.5
VII−2 - - - - - 6.5 -
────────────────────────────────────
基油 残部 残部 残部 残部 残部 残部 残部
────────────────────────────────────
硫酸灰分 0.9 0.9 0.9 0.9 0.9 0.9 0.9
リン含有量 0.08 0.08 0.08 0.08 0.08 0.08 0.08
硫黄含有量 0.26 0.30 0.26 0.27 0.28 0.29 0.30
────────────────────────────────────
Ca1/Ca2 4.2 1.9 6.1 4.2 4.2 1.9 1.9
Ca2/Mo 1.0 1.4 0.7 1.0 0.8 1.1 1.0
────────────────────────────────────
試験結果
デポジット量 24 21 23 16 25 29 20
────────────────────────────────────
【0051】
表2
────────────────────────────────────
比較例 1 2 3 4 5
────────────────────────────────────
無灰分散剤 0.04 0.04 0.04 0.04 0.04
────────────────────────────────────
過塩基性Ca 0.19 0.02 - - -
サリシレート
────────────────────────────────────
過塩基性Ca - - 0.18 0.02 0.16
スルホネート
────────────────────────────────────
低塩基性Ca
スルホネート 0.008 0.178 0.018 0.178 0.038
────────────────────────────────────
MoDTC 0.04 0.04 0.04 0.04 0.08

────────────────────────────────────
ZnDTP−1 0.08 0.08 0.08 0.08 0.08
ZnDTP−2 - - - - -
────────────────────────────────────
酸化防止剤−1 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2
酸化防止剤−2 0.3 0.3 0.3 0.3 0.3
────────────────────────────────────
VII−1 4.8 4.8 4.8 4.8 4.8
VII−2 - - - - -
────────────────────────────────────
基油 残部 残部 残部 残部 残部
────────────────────────────────────
硫酸灰分 0.9 0.9 0.9 0.9 0.9
リン含有量 0.08 0.08 0.08 0.08 0.08
硫黄含有量 0.23 0.41 0.25 0.41 0.31
───────────────────────────────────
Ca1/Ca2 23.8 0.1 10.0 0.1 4.2
Ca2/Mo 0.2 4.5 0.5 4.5 0.5
────────────────────────────────────
試験結果
デポジット量 70 41 40 36 67
────────────────────────────────────
【0052】
注:無灰分散剤の配合量はN量換算質量%である。
金属系清浄剤(過塩基性Caサリシレート、過塩基性Caスルホネート、低塩基性Caスルホネート)の配合量は、いずれもCa量換算質量%である。
MoDTCの配合量はMo量換算質量%である。
ZnDTP−1およびZnDTP−2の配合量は、いずれもP量換算質量%である。
酸化防止剤−1および酸化防止剤−2の配合量は、添加剤としての質量%である。
粘度指数向上剤(VII−1およびVII−2)の配合量は、いずれも有効成分の質量%である。
硫酸灰分、リン含有量、および硫黄含有量はいずれも質量%である。
試験結果のデポジット量の単位はmgである。
【0053】
<評価結果の説明>
比較例1の結果から、Ca1/Ca2が本願発明で規定した範囲の比率より高く、一方Ca2/Moが本願発明で規定した範囲の比率よりも低い場合には、デポジット量が多くなることが分る。
比較例2と4の結果から、Ca1/Ca2が本願発明で規定した範囲の比率より低く、一方Ca2/Moが本願発明で規定した範囲の比率よりも高い場合には、デポジット量が多くなることが分る。
比較例3の結果から、Ca1/Ca2が本願発明で規定した範囲の比率より高い場合には、Ca2/Moが本願発明で規定した範囲内であっても、デポジット量が多くなることが分る。
比較例5の結果から、MoDTCの配合量が本願発明で規定した範囲を超える場合には、Ca1/Ca2およびCa2/Moのいずれもが本願発明で規定した範囲内であっても、デポジット量が多くなることが分る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑粘度の基油及び下記の添加剤成分を含む、硫酸灰分量が1.3質量%以下、硫黄含有量が0.4質量%以下、そしてリン含有量が0.09質量%以下である内燃機関の潤滑のための潤滑油組成物:
(a)窒素含有無灰性分散剤を窒素量換算値で0.01〜0.3質量%、
(b)金属含有清浄剤、
(c)モリブデンジチオカーバメートをモリブデン量換算値で0.035〜0.075質量%、
(d)リン含有耐摩耗剤をリン量換算値で0.05〜0.09質量%、
(e)有機酸化防止剤を0.1〜7質量%、そして
(f)粘度指数向上剤を0.5〜20質量%、
ただし、(b)の金属含有清浄剤は、少なくとも下記の過塩基性金属含有清浄剤b1と低塩基性金属含有清浄剤b2とを含み、
過塩基性清浄剤b1:全塩基価150〜500mgKOH/gの過塩基性カルシウムサリシレート及び全塩基価150〜500mgKOH/gの過塩基性カルシウムスルホネートからなる群から選ばれるカルシウム含有清浄剤を、カルシウム量換算値で0.08〜0.3質量%、
低塩基性清浄剤b2:全塩基価5〜60mgKOH/gの低塩基性カルシウムスルホネートを、カルシウム量換算値で0.02〜0.12質量%、
ただし、清浄剤b1と清浄剤b2のそれぞれの含有量は、清浄剤b1に起因するカルシウム含有量(Ca1)と清浄剤b2に起因するカルシウム含有量(Ca2)との比率Ca1/Ca2が1.0〜9.0の範囲の値となるように選ばれ、
また、(c)のモリブデンジチオカーバメートの含有量は、モリブデンジチオカーバメートに起因するモリブデン含有量(Mo)が、低塩基性清浄剤b2に起因するカルシウム含有量(Ca2)とのCa2/Moで表わされる比率が0.3〜2.3の範囲の値となるように選ばれる。
【請求項2】
過塩基性清浄剤b1が全塩基価150〜500mgKOH/gの過塩基性カルシウムサリシレートである請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
過塩基性カルシウムサリシレートが炭素原子数10〜30のアルキル基を一個有するモノアルキルサリチル酸カルシウム塩の過塩基化物である請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
過塩基性清浄剤b1が全塩基価150〜500mgKOH/gの過塩基性カルシウムスルホネートである請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
過塩基性カルシウムスルホネートが炭素原子数10〜30のアルキル基を有するアルキル化トルエンスルホン酸カルシウム塩の過塩基化物である請求項4に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
低塩基性清浄剤b2の低塩基性カルシウムスルホネートが0.1〜1.5の範囲の過塩基化度を持つ請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
低塩基性清浄剤b2の低塩基性カルシウムスルホネートの含有量がカルシウム量換算値で0.025〜0.08質量%の範囲にある請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
清浄剤b1に起因するカルシウム含有量(Ca1)と清浄剤b2に起因するカルシウム含有量(Ca2)との比率Ca1/Ca2が1.5〜6.1の範囲の値となるように選ばれる請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
モリブデンジチオカーバメートに起因するモリブデン含有量(Mo)が、低塩基性清浄剤b2に起因するカルシウム含有量(Ca2)とのCa2/Moで表わされる比率が0.4〜1.5の範囲の値となるように選ばれる請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
(d)のリン含有耐摩耗剤がジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛及び/又はジヒドロカルビルリン酸亜鉛である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
(e)の有機酸化防止剤がフェノール化合物及び/又はアミン化合物である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
(f)の粘度指数向上剤が質量平均分子量が100000〜1000000のポリメタクリレート系化合物である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
潤滑粘度の基油が、100℃における動粘度が2.5〜6mm2/sの範囲にあり、飽和成分が90質量%以上で、粘度指数が120〜160の範囲にあり、そして硫黄含有量が0.01質量%以下である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
SAE粘度グレードが0W20である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項15】
ターボチャージャー付き内燃機関の潤滑用である請求項1に記載の潤滑油組成物。

【公開番号】特開2011−12213(P2011−12213A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159111(P2009−159111)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(391050525)シェブロンジャパン株式会社 (26)
【Fターム(参考)】