説明

内燃機関用過給システム

【課題】補助空気の供給を受けるターボチャージャーにおいて、適切に補助空気を供給する。
【解決手段】内燃機関用過給システムは、排出管(3)に排気ガスを排出する内燃機関(1)と、排出管から排出される排気ガスが噴き付けられる排気タービン(11)を備える過給器と、排気タービンに供給される補助空気が蓄圧される蓄圧タンク(21)とを備え、排出管の排気タービンよりも上流側に、(i)内燃機関より排出される排気ガスを補助空気として蓄圧タンクに蓄圧するように、排気ガスを排出管から取り出し、且つ(ii)蓄圧タンクに蓄圧される補助空気を、排出管を介して排気タービンに供給するための開口(27)が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエンジンに搭載されるターボチャージャー等の内燃機関用過給システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの出力向上を目的として、エンジンにターボチャージャー(過給器)を搭載する技術が知られている。更に、ターボジャージャーの応答性を改善するために、ターボチャージャーの排気タービンに、排気マニホールドから供給される排気ガスに加えて、蓄圧タンクに貯められた補助空気を供給することで、排気ガス中の未燃焼成分を燃焼させて排気ガス温度を上昇させると共に排気ガスの流量を増加させ、その結果、排気タービンの回転数を増大させる技術が知られている(特許文献1から3参照)。更には、制動エネルギーを用いて油圧ポンプを駆動することで高圧油を蓄積しておき、該高圧油でオイルタービンを回転させることで、過給特性を向上させる技術が知られている(特許文献4参照)。
【0003】
【特許文献1】実開昭63−60024号公報
【特許文献2】実開昭63−82631号公報
【特許文献3】実開昭63−156428号公報
【特許文献4】特開平9−125975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、補助空気は、排気タービンに直接噴き付けられるように、蓄圧タンクから排気タービンへ供給される。このとき、補助空気は一般的に高圧であることから、補助空気の噴き付けによって、排気タービンないしはタービンブレードが変形しかねない。
【0005】
本発明は、例えば上述した従来の問題点に鑑みなされたものであり、例えば補助空気の供給を受けるターボチャージャーにおいて、適切に補助空気を供給することを可能とならしめる内燃機関用過給システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内燃機関用過給システムは、排出管(例えば、エギゾーストポートやエギゾーストマニホールドやエギゾーストパイプ等)に排気ガスを排出する内燃機関と、前記排出管から排出される前記排気ガスが噴き付けられる排気タービンを備える過給器と、前記排気タービンに供給される補助空気が蓄圧される蓄圧タンクとを備え、前記排出管の前記排気タービンよりも上流側に、(i)前記内燃機関より排出される前記排気ガスを前記補助空気として前記蓄圧タンクに蓄圧するように、前記排気ガスを前記排出管から取り出し、且つ(ii)前記蓄圧タンクに蓄圧される前記補助空気を、前記排出管を介して前記排気タービンに供給するための開口が設けられる。
【0007】
本発明の内燃機関用過給システムによれば、内燃機関から排出される排気ガスが排気タービンを回転させ、それに伴って排気タービンに接続されたコンプレッサーが吸入空気を圧縮する。この圧縮された吸入空気が内燃機関に供給されることで、内燃機関の出力を向上させることができる。更に、排気ガスに加えて、蓄圧タンクから補助空気(例えば、圧縮空気)が排気タービンに供給され(言い換えれば、噴き付けられる)ることで、排気タービンの回転を更に助長させることができ、その結果、タービンのタイムラグ(つまり、ターボラグ)を改善することができ、吸気圧を高めることができる。
【0008】
本発明では特に、排出管のうちの排気タービンよりも上流側の部分に、排出管と蓄圧タンクとを接続するための配管が接続される開口が設けられる。開口は、内燃機関より排出される排気ガスを補助空気として蓄圧タンクに蓄圧するように、排気ガスを排出管から取り出すための開口である。更に、開口は、蓄圧タンクに蓄圧される補助空気を、排出管を介して排気タービンに供給するための開口である。つまり、本発明では、排気ガスを排出管から蓄圧タンクへ取り出すための開口と、蓄圧タンクに蓄圧される補助空気を、排出管を介して排気タービンに供給するための開口とが、単一の(言い換えれば、1つの共通の)開口として設けられている。
【0009】
これにより、内燃機関より排出される排気ガスを補助空気として蓄圧タンクに蓄圧することができるため、蓄圧タンクに補助空気を蓄圧するためのポンプ等を別途設ける必要がなくなる。
【0010】
更に、補助空気を排気タービンの上流側に供給することができるため、補助空気が排気タービンに直接噴き付けられることがなくなる。従って、高圧の補助空気が噴き付けられることによる排気タービンの変形等が生じ得る不都合を好適に防ぐことができる。加えて、補助空気が排気タービンの上流側の排気管に供給されるため、排気管中に付着するスス等の汚れを、排気管中の該補助空気の流れにより除去することができる。つまり、排気管のクリーン化をも図ることができる。
【0011】
更には、排気ガスを排出管から蓄圧タンクへ取り出すための開口と、蓄圧タンクに蓄圧される補助空気を、排出管を介して排気タービンに供給するための開口とが、単一の開口として設けられているため、構成の簡略化をも図ることができる。
【0012】
このように、本発明によれば、補助空気の供給を受ける内燃機関用過給システムにおいて、適切に補助空気を供給することができる。
【0013】
本発明の内燃機関用過給システムの一の態様は、前記開口と前記蓄圧タンクとを接続すると共に、(i)前記開口から取り出される前記排気ガスを前記蓄圧タンクに供給し、且つ(ii)前記蓄圧タンクに蓄圧される前記補助空気を、前記開口を介して前記排気タービンに供給するための配管を更に備える。
【0014】
この態様によれば、1つの開口には、1つの又は複数の配管が接続される。例えば、1つの開口に1つの配管が接続される場合には、該1つの配管を介して、内燃機関から排出される排気ガスが排気管から蓄圧タンクへ供給されると共に、蓄圧タンクに蓄圧された補助空気が蓄圧タンクから排気管へ供給される。例えば、1つの開口に2つの(或いは、3つ以上の複数の)配管が接続される場合には、内燃機関から排出される排気ガスが、第1の配管を介して排気管から蓄圧タンクへ供給されると共に、蓄圧タンクに蓄圧された補助空気が、第2の配管を介して蓄圧タンクから排気管へ供給される。
【0015】
上述の如く配管を備える内燃機関用過給システムの態様では、前記配管は、前記排気ガス及び前記補助空気の流量を調整する調整弁を備えるように構成してもよい。
【0016】
このように構成すれば、調整弁により、蓄圧タンクに蓄圧される排気ガスの流量や、排気管(言い換えれば、排気タービン)に供給される補助空気の流量を調整することができる。
【0017】
上述の如く配管を備える内燃機関用過給システムの態様では、前記配管の少なくとも一部は、前記開口から取り出される前記排気ガスを前記蓄圧タンクに供給する第1配管部分と、前記蓄圧タンクに蓄圧される前記補助空気を、前記開口を介して前記排気タービンに供給する第2配管部分とに分岐されているように構成してもよい。
【0018】
このように構成すれば、内燃機関から排出される排気ガスが、第1配管部分を介して排気管から蓄圧タンクへ供給されると共に、蓄圧タンクに蓄圧された補助空気が、第2配管部分を介して蓄圧タンクから排気管へ供給される。従って、排気ガスが蓄圧タンクへ供給される供給路と、補助空気が排気管へ供給される供給路とを分離することができる。
【0019】
上述の如く配管の少なくとも一部が第1配管部分と第2配管部分とに分岐されている内燃機関用過給システムの態様では、前記第1配管部分及び前記第2配管部分の夫々は、前記排気ガス及び前記補助空気の流量を調整する調整弁を備えるように構成してもよい。
【0020】
このように構成すれば、第1配管部分に備えられる調整弁により、第1配管部分を介して排気管から蓄圧タンクへ供給される排気ガスの流量を調整することができる。同様に、第2配管部分に備えられる調整弁により、第2配管部分を介して蓄圧タンクから排気管へ供給される補助空気の流量を調整することができる。このように、第1配管部分を介して排気管から蓄圧タンクへ供給される排気ガスの流量と、第2配管部分を介して蓄圧タンクから排気管へ供給される補助空気の流量とを別個独立に調整することができる。
【0021】
上述の如く配管の少なくとも一部が第1配管部分と第2配管部分とに分岐されている内燃機関用過給システムの態様では、前記第1配管部分は、前記蓄圧タンクから前記開口の側へ向かう方向への前記排気ガス及び前記補助空気の流出を阻止する第1逆止弁を備え、前記第2配管部分は、前記開口から前記蓄圧タンクの側へ向かう方向への前記排気ガス及び前記補助空気の流出を阻止する第2逆止弁を備えるように構成してもよい。
【0022】
このように構成すれば、第1逆止弁により、排気ガス及び補助空気が、第1配管部分中において、蓄圧タンクから開口の側へ流出することを阻止することができる。第2逆止弁により、排気ガス及び補助空気が、第2配管部分中において、開口から排気管の側へ流出することを阻止することができる。
【0023】
本発明の内燃機関用過給システムの他の態様は、前記排出管の前記排気タービンよりも下流側に、前記排気ガスの排出を遮断する遮断弁を更に備える。
【0024】
このように構成すれば、遮断弁を閉じることにより、排気ガスが開口を介して排気管から蓄圧タンクへ供給される。
【0025】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から更に明らかにされよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0027】
(1)第1実施形態
初めに、図1から図4を参照して、本発明の内燃機関用過給システムに係る第1実施形態について説明する。
【0028】
(1−1)基本構成
初めに、図1を参照して、第1実施形態に係る内燃機関用過給システムの基本構成について説明する。ここに、図1は、第1実施形態に係る内燃機関用過給システムに係る実施形態の基本構成を概念的に示すブロック図である。
【0029】
図1に示すように、第1実施形態に係る内燃機関用過給システムは、例えば、排気タービン11、コンプレッサー12、ローターシャフト13、エアクリーナー14、インタークーラー15、排気遮断弁16、蓄圧タンク21、流量調整電磁弁25、配管26、開口27及びECU(Electric Control Unit)30等を含んで構成される。
【0030】
排気タービン11には、エンジン1のシリンダ2から排出される高圧の排気ガスがエギゾーストマニホールド3を介して噴き付けられる。この排気ガスにより、排気タービン11が回転する。排気タービン11の回転に伴って、排気タービン11とローターシャフト13を介して接続されるコンプレッサー12も同様に回転する。このとき、エアクリーナー14を介してコンプレッサー12に供給される吸入空気は、コンプレッサー12の回転によって圧縮された後、インタークーラー15を通過してその温度が下げられる。その後、圧縮された吸入空気は、インテークマニホールド4を介してエンジン1のシリンダ2内に供給される。
【0031】
これにより、エンジン1のシリンダ2内に多量の空気を供給することができるため、エンジン1の出力を向上させることができる。
【0032】
排気タービン11に噴き付けられた排気ガスは、排気遮断弁16が開かれる(言い換えれば、全開状態になる)ことによって、エギゾーストパイプ5や不図示の触媒コンバータやマフラーを介して外部へ排出される。
【0033】
更に、本実施形態に係る内燃機関用過給システムでは、排気タービン11には、エンジン1のシリンダ2から排出される高圧の排気ガスに加えて、蓄圧タンク21に蓄圧されている補助圧縮エアー(補助圧縮空気)が噴き付けられる。
【0034】
具体的には、ECU30の制御の下に排気遮断弁16が閉じられる(言い換えれば、全閉状態になる)ことにより、排気ガスは、エギゾーストマニホールド3に開けられた開口27に接続される配管26を介して蓄圧タンク21へ供給される。これにより、排気ガスが、補助圧縮エアーとして、蓄圧タンク21内に蓄圧される。蓄圧タンク21内に十分な量の或いは十分な圧力の補助圧縮エアーが蓄圧された後には、ECU30の制御の下に流量調整電磁弁25が閉じられることで、蓄圧タンク21への排気ガスの供給が停止される。流量調整電磁弁25を閉じることに加えて又は代えて、ECU30の制御の下に排気遮断弁16が開かれることにより、排気ガスは外部へ排出される。つまり、ECU30の制御の下に排気遮断弁16が開かれることにより、流量調整電磁弁25の開閉状態にかかわらず、排気ガスは、外部へ排出される。
【0035】
蓄圧タンク21に蓄圧された補助圧縮エアーは、配管26を介して排気タービン11に噴き付けられる。特に、第1実施形態では、開口27が排気マニホールド3中に(言い換えれば、排気タービン11よりも上流側にある排気マニホールド3中に)設けられているため、蓄圧タンク21に蓄圧された補助圧縮エアーは、配管26及び排気マニホールド3を介して排気タービン11に噴き付けられる。
【0036】
つまり、第1実施形態においては、排気ガスを蓄圧タンク21へ蓄圧するためのエギゾーストマニホールド3における取り出し口と、補助圧縮エアーを排気タービン11へ供給するためのエギゾーストマニホールド3における開口とが共通である。
【0037】
このとき、流量調整電磁弁25は、ECU30の制御の下に、排気タービン11に噴き付けられる(つまり、供給される)補助圧縮エアーの流量を調整する。例えば、流量調整電磁弁25が閉じた状態にある場合には、排気タービン11には、補助圧縮エアーは噴き付けられない。他方、流量調整電磁弁25が開いた状態にある場合には、排気タービン11には、流量調整電磁弁25の開きの度合い(つまり、開口面積)に応じた流量の補助圧縮エアーが噴き付けられる。
【0038】
これにより、排気ガス中の未燃焼成分を燃焼させて排気ガス温度を上昇させると共に排気ガスの流量を増加させ、その結果、排気タービンの回転数を増大させることができる。特に、車両の加速初期等におけるエンジンの低速回転域のように排気ガスの排出量が少ない場合であっても、排気タービン11の回転数を好適に増加させることができ、結果としていわゆるターボラグを改善することができる。
【0039】
(1−2)動作原理
続いて、図2を参照して、第1実施形態に係る内燃機関用過給システムの動作原理について説明する。ここに、図2は、第1実施形態に係る内燃機関用過給システムの動作の流れを概念的に示すフローチャートである。
【0040】
図2に示すように、初めに車両が減速しているか否かが判定される(ステップS101)。例えば、アクセルが踏み込まれていない、ブレーキが踏み込まれている、又は燃料がエンジン1に供給されていない場合に、車両が減速していると判定されてもよい。或いは、前後加速度センサ等により、車両の前後加速度(言い換えれば、加減速度)を直接的に検出することで、車両が減速しているか否かが判定されてもよい。
【0041】
ステップS101における判定の結果、車両が減速していないと判定された場合には(ステップS101:No)、排気遮断弁16が開かれる(ステップS105)。このため、エンジン1のシリンダ2から排出される排気ガスは、外部へ排出される。
【0042】
他方、ステップS101における判定の結果、車両が減速していると判定された場合には(ステップS101:Yes)、続いて、ECU30の制御の下に、排気遮断弁16が閉じられ(ステップS102)、更に流量調整電磁弁25が開けられる(ステップS103)。このため、エンジン1のシリンダ2から排出される排気ガスは、外部へ排出されることなく、開口27に接続された配管26を介して、蓄圧タンク21へ蓄圧される(ステップS104)。
【0043】
ここで、図3を参照して、車両減速時における排気ガス及び補助圧縮エアーの流れについて説明する。ここに、図3は、車両減速時における排気ガス及び補助圧縮エアーの流れを概念的に示す第1実施形態に係る内燃機関用過給システムの断面図である。
【0044】
図3に示すように、車両が減速している時には、排気遮断弁16が閉じられるため、エンジン1のシリンダ2から排出される排気ガスは、エギゾーストパイプ5を介して外部へ排出されない。そして、流量調整電磁弁25が開けられるため、エンジン1のシリンダ2から排出される排気ガスは、開口27に接続された配管26を介して、蓄圧タンク21へ蓄圧される。
【0045】
再び図2において、続いて、車両が加速しているか否かが判定される(ステップS106)。例えば、アクセルが踏み込まれている場合に、車両が加速していると判定されてもよい。或いは、前後加速度センサ等により、車両の前後加速度(言い換えれば、加減速度)を直接的に検出することで、車両が加速しているか否かが判定されてもよい。
【0046】
ステップS106における判定の結果、車両が加速していないと判定された場合には(ステップS106:No)、ECU30の制御の下に、流量調整電磁弁25が開けられる(ステップS109)。
【0047】
他方、ステップS106における判定の結果、車両が加速していると判定された場合には(ステップS101:Yes)、続いて、ECU30の制御の下に、排気遮断弁16が開けられ、更に流量調整電磁弁25が開けられる(ステップS107)。このため、蓄圧タンク21に蓄圧された補助圧縮エアーは、開口27に接続された配管26を介して、絵ギゾーストマニホールド3へ供給される。その結果、補助圧縮エアーが排気タービン11に噴き付けられる。つまり、排気タービン11へのエアーアシストが行われる(ステップS108)。
【0048】
ここで、図4を参照して、車両加速時における排気ガス及び補助圧縮エアーの流れについて説明する。ここに、図4は、車両加速時における排気ガス及び補助圧縮エアーの流れを概念的に示す第1実施形態に係る内燃機関用過給システムの断面図である。
【0049】
図4に示すように、車両が加速している時には、排気遮断弁16が開けられているため、エンジン1のシリンダ2から排出される排気ガスは、エギゾーストマニホールド3を介して、排気タービン11に噴き付けられる。更に、流量調整電磁弁25が開けられているため、蓄圧タンク21に蓄圧された補助圧縮エアーは、配管26、開口27及びエギゾーストマニホールド3を介して排気タービン11に噴き付けられる。
【0050】
排気タービン11に噴き付けられた排気ガス及び補助圧縮エアーは、エギゾーストパイプ5を介して外部へ排出される。
【0051】
以上説明したように、第1実施形態によれば、補助圧縮エアーが排気タービン11の上流側に設けられる開口27を介して排気タービン11に供給される。言い換えれば、補助圧縮エアーを噴き出すためのノズルが排気タービン11に直接向けられておらず、排気タービン11の上流側に向けられている。このため、補助圧縮エアーが排気タービン11に直接噴き付けられることがなくなる。従って、高圧の補助圧縮エアーが噴き付けられることによる排気タービンの変形等が生じ得る不都合を好適に防ぐことができる。言い換えれば、補助圧縮エアーを排気タービン11に好適に供給することができる。
【0052】
加えて、補助圧縮エアーが排気タービン11の上流側のエギゾーストマニホールド3に供給されるため、エギゾーストマニホールド3中に付着するスス等の汚れを、エギゾーストマニホールド3中の補助圧縮エアーの流れにより除去することができる。つまり、エギゾーストマニホールド3のクリーン化をも図ることができる。
【0053】
更に、エンジン1のシリンダ2より排出される排気ガスを補助圧縮エアーとして蓄圧タンク21に蓄圧することができるため、蓄圧タンク21に補助圧縮エアーを蓄圧するためのポンプ等を別途設ける必要がなくなる。これにより、内燃機関用過給システムの構成の簡略化をも図ることができる。
【0054】
加えて、排気ガスをエギゾーストマニホールド3から蓄圧タンク21へ取り出すための開口と、蓄圧タンク21に蓄圧される補助圧縮エアーをエギゾーストマニホールド3に供給するための開口とが、単一の(つまり、共通の)開口27としてエギゾーストマニホールド3中に設けられている。更に、排気ガスをエギゾーストマニホールド3から蓄圧タンク21へ取り出すための開口と、蓄圧タンク21に蓄圧される補助圧縮エアーをエギゾーストマニホールド3に供給するための開口とが、共通の開口27であることに起因して、排気ガスをエギゾーストマニホールド3から蓄圧タンク21へ供給するための配管と、蓄圧タンク21に蓄圧される補助圧縮エアーをエギゾーストマニホールド3に供給するための配管とを、単一の(つまり、共通の)配管26とすることができる。つまり、配管26及び開口27の共通化を図ることができ、その結果、内燃機関用過給システムの構成の簡略化をも図ることができる。
【0055】
尚、上述の実施形態では、開口27をエギゾーストマニホールド3に設ける例について説明を進めた。しかしながら、開口27は、エギゾーストポート(図3及び図4参照)に設けられてもよい。言い換えれば、開口27は、排気タービン11よりも上流側であれば、エギゾーストマニホールド3及びエギゾーストポートのいずれの部分に設けられてもよい。この場合、補助圧縮エアーが排気タービン11に直接噴き付けられないことが好ましい。
【0056】
更に、上述の実施形態では、流量調整電磁弁25を用いて説明を進めたが、必ずしも電磁弁である必要はなく、補助圧縮エアーや排気ガスの流量を調整することができる弁であれば、流量調整電磁弁25の代わりに使用することができる。更には、弁でなくとも、配管26を流れる補助圧縮エアーや排気ガスの流量を調整できる構造物であれば、流量調整電磁弁25の代わりに使用することができる。
【0057】
(2)第2実施形態
続いて、図5から図7を参照して、本発明の内燃機関用過給システムに係る第2実施形態について説明する。尚、上述した第1実施形態に係る内燃機関用過給システムと同一の構成については、同一の参照符号を付して、その詳細な説明については省略する。
【0058】
(2−1)基本構成
初めに、図5を参照して、第2実施形態に係る内燃機関用過給システムの基本構成について説明する。ここに、図5は、第2実施形態に係る内燃機関用過給システムに係る実施形態の基本構成を概念的に示すブロック図である。
【0059】
図5に示すように、第2実施形態に係る内燃機関用過給システムは、第1実施形態に係る内燃機関用過給システムと同様に、例えば、排気タービン11、コンプレッサー12、ローターシャフト13、エアクリーナー14、インタークーラー15、排気遮断弁16、蓄圧タンク21、配管26、開口27及びECU(Electric Control Unit)30等を含んで構成される。
【0060】
第2実施形態に係る内燃機関用過給システムでは特に、配管26の一部が第1配管部分26aと、第2配管部分26bとに分岐している。
【0061】
より具体的には、第1配管部分26aには、流量調整電磁弁25aと、逆止弁22aとが設けられている。逆止弁22aは、蓄圧タンク21側からエギゾーストマニホールド3側への排気ガスないしは補助圧縮エアーの流れを阻止する。他方で、逆止弁22aは、エギゾーストマニホールド3側から蓄圧タンク21側への排気ガスないしは補助圧縮エアーの流れは阻止しない。つまり、逆止弁22aが設けられた第1配管部分26aは、排気ガスを蓄圧タンク21へ蓄圧するための配管として用いられる。そして、第1配管部分26aを流れる排気ガスの流量は、流量調整電磁弁25aにより調整される
同様に、第2配管部分26bには、流量調整電磁弁25bと、逆止弁22bとが設けられている。逆止弁22bは、エギゾーストマニホールド3側から蓄圧タンク21側への排気ガスないしは補助圧縮エアーの流れを阻止する。他方で、逆止弁22aは、蓄圧タンク21側からエギゾーストマニホールド3側への排気ガスないしは補助圧縮エアーの流れは阻止しない。つまり、逆止弁22bが設けられた第2配管部分26bは、補助圧縮エアーを蓄圧タンク21からエギゾーストマニホールド3へ供給するための配管として用いられる。そして、第2配管部分26bを流れる補助圧縮エアーの流量は、流量調整電磁弁25bにより調整される。
【0062】
尚、逆止弁22a及び22bは、必ずしも設けなくともよい。この場合、流量調整電磁弁25として、パイロット式の電磁弁を用いるように構成してもよい。
【0063】
(2−2)動作原理
続いて、図6及び図7を参照して、第2実施形態に係る内燃機関用過給システムの動作原理について説明する。ここに、図6は、車両減速時における排気ガス及び補助圧縮エアーの流れを概念的に示す第2実施形態に係る内燃機関用過給システムの断面図であり、図7は、車両加速時における排気ガス及び補助圧縮エアーの流れを概念的に示す第2実施形態に係る内燃機関用過給システムの断面図である。
【0064】
図6に示すように、車両が減速している時には、排気遮断弁16が閉じられるため、エンジン1のシリンダ2から排出される排気ガスは、エギゾーストパイプ5を介して外部へ排出されない。そして、流量調整電磁弁25aが開けられるため、エンジン1のシリンダ2から排出される排気ガスは、開口27に接続された配管26(より具体的には、第1配管部分26a)を介して、蓄圧タンク21へ蓄圧される。
【0065】
このとき、流量調整電磁弁25bは、閉じられていてもよいし或いは開かれていてもよい。但し、逆止弁22bが設けられない構成を採用する場合には、流量調整電磁弁25bが閉じられることが好ましい。
【0066】
他方、図7に示すように、車両が加速している時には、排気遮断弁16が開けられているため、エンジン1のシリンダ2から排出される排気ガスは、エギゾーストマニホールド3を介して、排気タービン11に噴き付けられる。更に、流量調整電磁弁25bが開けられているため、蓄圧タンク21に蓄圧された補助圧縮エアーは、配管26(より具体的には、第2配管部分26b)、開口27及びエギゾーストマニホールド3を介して排気タービン11に噴き付けられる。
【0067】
このとき、流量調整電磁弁25aは、閉じられていてもよいし或いは開かれていてもよい。但し、逆止弁22aが設けられない構成を採用する場合には、流量調整電磁弁25aが閉じられることが好ましい。
【0068】
これにより、上述した第1実施形態に係る実施形態と同様に、補助圧縮エアーが排気タービン11に直接噴き付けられることがなくなる。従って、高圧の補助圧縮エアーが噴き付けられることによる排気タービンの変形等が生じ得る不都合を好適に防ぐことができる。言い換えれば、補助圧縮エアーを排気タービン11に好適に供給することができる。
【0069】
加えて、エギゾーストマニホールド3中に付着するスス等の汚れを、エギゾーストマニホールド3中の補助圧縮エアーの流れにより除去することができる。つまり、エギゾーストマニホールド3のクリーン化をも図ることができる。
【0070】
更に、エンジン1のシリンダ2より排出される排気ガスを補助圧縮エアーとして蓄圧タンク21に蓄圧することができるため、蓄圧タンク21に補助圧縮エアーを蓄圧するためのポンプ等を別途設ける必要がなくなる。これにより、内燃機関用過給システムの構成の簡略化をも図ることができる。
【0071】
加えて、排気ガスをエギゾーストマニホールド3から蓄圧タンク21へ取り出すための開口と、蓄圧タンク21に蓄圧される補助圧縮エアーをエギゾーストマニホールド3に供給するための開口とが、単一の(つまり、共通の)開口27としてエギゾーストマニホールド3中に設けられている。更に、排気ガスをエギゾーストマニホールド3から蓄圧タンク21へ取り出すための開口と、蓄圧タンク21に蓄圧される補助圧縮エアーをエギゾーストマニホールド3に供給するための開口とが、共通の開口27であることに起因して、排気ガスをエギゾーストマニホールド3から蓄圧タンク21へ供給するための配管と、蓄圧タンク21に蓄圧される補助圧縮エアーをエギゾーストマニホールド3に供給するための配管とにおいて、それらの一部を単一の(つまり、共通の)配管とすることができる。つまり、配管26及び開口27の共通化を図ることができ、その結果、内燃機関用過給システムの構成の簡略化をも図ることができる。
【0072】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内燃機関用過給システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の内燃機関用過給システムに係る第1実施形態の基本構成を概念的に示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る内燃機関用過給システムの動作の流れを概念的に示すフローチャートである。
【図3】車両減速時における排気ガス及び補助圧縮エアーの流れを概念的に示す第1実施形態に係る内燃機関用過給システムの断面図である。
【図4】車両加速時における排気ガス及び補助圧縮エアーの流れを概念的に示す第1実施形態に係る内燃機関用過給システムの断面図である。
【図5】本発明の内燃機関用過給システムに係る第2実施形態の基本構成を概念的に示すブロック図である。
【図6】車両減速時における排気ガス及び補助圧縮エアーの流れを概念的に示す第2実施形態に係る内燃機関用過給システムの断面図である。
【図7】車両加速時における排気ガス及び補助圧縮エアーの流れを概念的に示す第2実施形態に係る内燃機関用過給システムの断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 エンジン
3 エギゾーストマニホールド
4 インテークマニホールド
5 エギゾーストパイプ
11 排気タービン
12 コンプレッサー
13 ロータリーシャフト
14 エアクリーナー
15 インタークーラー
16 排気遮断弁
21 蓄圧タンク
25 流量調整電磁弁
26 配管
27 開口
30 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出管に排気ガスを排出する内燃機関と、
前記排出管から排出される前記排気ガスが噴き付けられる排気タービンを備える過給器と、
前記排気タービンに供給される補助空気が蓄圧される蓄圧タンクと
を備え、
前記排出管の前記排気タービンよりも上流側に、(i)前記内燃機関より排出される前記排気ガスを前記補助空気として前記蓄圧タンクに蓄圧するように、前記排気ガスを前記排出管から取り出し、且つ(ii)前記蓄圧タンクに蓄圧される前記補助空気を、前記排出管を介して前記排気タービンに供給するための開口が設けられることを特徴とする内燃機関用過給システム。
【請求項2】
前記開口と前記蓄圧タンクとを接続すると共に、(i)前記開口から取り出される前記排気ガスを前記蓄圧タンクに供給し、且つ(ii)前記蓄圧タンクに蓄圧される前記補助空気を、前記開口を介して前記排気タービンに供給するための配管を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用過給システム。
【請求項3】
前記配管は、前記排気ガス及び前記補助空気の流量を調整する調整弁を備えることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関用過給システム。
【請求項4】
前記配管の少なくとも一部は、前記開口から取り出される前記排気ガスを前記蓄圧タンクに供給する第1配管部分と、前記蓄圧タンクに蓄圧される前記補助空気を、前記開口を介して前記排気タービンに供給する第2配管部分とに分岐されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の内燃機関用過給システム。
【請求項5】
前記第1配管部分及び前記第2配管部分の夫々は、前記排気ガス及び前記補助空気の流量を調整する調整弁を備えることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関用過給システム。
【請求項6】
前記第1配管部分は、前記蓄圧タンクから前記開口の側へ向かう方向への前記排気ガス及び前記補助空気の流出を阻止する第1逆止弁を備え、
前記第2配管部分は、前記開口から前記蓄圧タンクの側へ向かう方向への前記排気ガス及び前記補助空気の流出を阻止する第2逆止弁を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の内燃機関用過給システム。
【請求項7】
前記排出管の前記排気タービンよりも下流側に、前記排気ガスの排出を遮断する遮断弁を更に備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の内燃機関用過給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−2276(P2008−2276A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169829(P2006−169829)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】