説明

内燃機関

【課題】排気温度の上昇抑制が必要となる場合に、効率よくEGRガスの導入を行うことができる内燃機関を提供することを課題とする。
【解決手段】内燃機関1は、排気ガスを貯留する蓄圧タンク13と、排気マニホールド4から蓄圧タンク13へ導入される排気ガスの流通を制御する第1の制御弁14と、蓄圧タンク13内の排気ガスを吸気マニホールド3へ導入する蓄圧排気ガス導入管20と、この蓄圧排気ガス導入管20に設けられた第2の制御弁15と、触媒温度を取得する温度センサ18を有する。ECU19は、温度センサにより取得された温度Teが予め定めた温度Toよりも高くなったときに前記蓄圧タンク13内の排気ガスを吸気マニホールド3へ導入するように第1の制御弁14及び第2の制御弁15を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス再循環を行う内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排気通路を流れる排気ガスの一部を該内燃機関の吸気通路へ再循環させる排気ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)装置が用いられることがある。
【0003】
排気ガス再循環装置については、従来、種々の提案がされている。排気の一部を予め蓄えておき、従来のEGR流路を還流して吸気系に供給されるEGR量では、目標のEGR量を達成できない場合に、予め蓄えた排気を吸気系に供給する手段を備える内燃機関が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−69143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の内燃機関において、触媒に導入される排気温度が高くなるOT(Overtemperature Protection)領域に入ったときに、空燃比A/Fを増量するいわゆるOT増量によって対応することがある。OT増量を行うことにより、触媒の加熱による溶損や破損等を抑制することができる。
しかしながら、OT増量を行うと、燃費の悪化を招く。また、領域によっては出力A/Fから外れ、出力低下を招くおそれもある。
図5は、従来の内燃機関における内燃機関負荷と燃料消費率、A/F増量値、排気温度との関係を示すグラフである。このグラフから明らかなように、内燃機関負荷が増大すると、触媒に導入される排気温度が上昇する。排気温度が上昇して、OT領域に達すると、A/F増量制御、すなわち、OT増量が行われる。この結果、排気温度の許容上限値の超越は回避されるが、その一方で、A/F増量制御が行われた後の燃料消費率が増加し、燃費が悪化する。
【0006】
排気温度の低減対策として、OT領域に入ったときにEGRを導入することによって温度の低下を図ることもある。しかしながら、従来のEGR装置では、例えば、吸気側と排気側の差圧が小さい領域では、EGRの導入が困難である。特に、高圧ループ(HPL)式のEGRでは、EGRガス取り出し側となる排気側と、EGRガス導入側となる吸気側の差圧を利用してEGR運転を行うため、過給エンジンなどの高負荷運転時やアトキンソンサイクルなどでは、吸気圧力≧排気圧力が成立する状態になり、EGRガスが導入できない。
図6は、内燃機関負荷と吸排気圧との関係を示すグラフである。内燃機関負荷が増大すると、吸気圧力≧排気圧力となる領域がみられ、このような領域では、EGRガスの導入ができないことになる。
【0007】
また、差圧のある状態であっても、過給域などではタービンの上流側からEGRガスを取り出すことでタービン上流側の圧力低下を引き起し、その結果、過給圧の低下、ひいては、機関出力の低下を引き起こす。
【0008】
前記従来の内燃機関のように、目標のEGR量を達成できない場合に、予め蓄えた排気を吸気系に供給するものであれば、吸気圧力と排気圧力との差圧が小さい場合であっても、EGRガスを導入することが可能であり、OT増量を抑制することができる。また、過給機の過給圧力の低下という問題も改善されることが期待される。
【0009】
しかしながら、前記従来の内燃機関では、OT領域を考慮した制御はなされておらず、この点において改善の余地を有していた。
【0010】
そこで、本発明は、排気温度の上昇抑制が必要となる場合に、効率よくEGRガスの導入を行うことができる内燃機関を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するための本発明の内燃機関は、内燃機関の排気ガスを貯留する蓄圧タンクと、排気マニホールドから前記蓄圧タンクへ導入される排気ガスの流通を制御する第1の制御弁と、前記蓄圧タンク内の排気ガスを吸気マニホールドへ導入する蓄圧排気ガス導入管と、当該蓄圧排気ガス導入管に設けられた第2の制御弁と、触媒温度を取得する触媒温度取得手段と、当該触媒温度取得手段により取得された温度が予め定めた温度よりも高くなったときに前記蓄圧タンク内の排気ガスを前記吸気マニホールドへ導入するように前記第1の制御弁及び前記第2の制御弁を制御する制御手段と、を、備えたことを特徴とする。
【0012】
このような内燃機関は、排気温度の上昇抑制が必要となる場合に、吸気圧と排気圧とがどのような関係になっているかにかかわらずEGRガスを吸気マニホールドへ導入することができる。この結果、従来、OT増量が必要となる状況において、OT増量を行うことなく触媒に導入される排気の排気温度の抑制を図ることができる。そして、燃費の悪化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、排気温度の上昇抑制が必要となる場合に、効率よくEGRガスの導入を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、実施例の内燃機関1の概略構成を模式的に示した説明図である。内燃機関1は、シリンダブロックとシリンダヘッドを有する本体2を備えている。本体2は、吸気マニホールド3と排気マニホールド4とを備えている。排気マニホールド4には、排気管6が接続されている。排気管6には、ターボチャージャー7のタービン7aが配置されている排気管6のタービン7aの下流側には、触媒16が配置されている。触媒16とタービン7aとの間には、排気遮断弁8が設置されている。この排気遮断弁8は、電磁弁であり、ECU(Electronic control unit)19に電気的に接続されている。このECU19は、本発明における制御手段の機能を有するものであり、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、中央演算装置(CPU)、入出力ポート、デジタルアナログコンバータ(DAコンバータ)、アナログデジタルコンバータ(ADコンバータ)等を双方向バスで接続した公知の構成のマイクロコンピュータとして構成されている。
【0016】
触媒16の上流側には、温度センサ18が装着されている。この温度センサ18は、本発明における触媒温度取得手段に相当するものである。なお、温度センサ18は、触媒温度を評価することができる値を取得することができれば、その装着位置は、限定されない。また、排気温度等、他の測定値やデータ等、触媒温度を評価することができる手段、触媒温度を推定することができる手段に置き換えることも可能である。
【0017】
吸気マニホールド3には、吸気管9が接続されている。吸気管9には、ターボチャージャー7のコンプレッサ7bが配置されている。また、コンプレッサ7bと吸気マニホールド3との間には、インタークーラー9aが装着されている。
【0018】
内燃機関1は、排気マニホールド4と吸気マニホールド3とを接続するEGR管10を備えている。EGR管10には、EGRクーラー10aが装着されており、また、EGRバルブ11が装着されている。EGRバルブ11は、ECU19と電気的に接続されおり、ECU19により、開閉制御がされている。
【0019】
内燃機関1は、排気ガスを貯留する蓄圧タンク13を有している。蓄圧タンク13は、排気マニホールド4と接続管12を介して接続されている。接続管12には、排気マニホールド4から蓄圧タンク13へ導入される排気ガスの流通を制御する第1の制御弁14が装着されている。この第1の制御弁は、電磁弁であり、ECU19に電気的に接続されている。蓄圧タンク13は、また、蓄圧排気ガス導入管20を介してEGR管10に接続されている。蓄圧排気ガス導入管20は、蓄圧タンク13内の排気ガスを吸気マニホールド3へ導入する。この蓄圧排気ガス導入管20には、第2の制御弁15が装着されている。この第2の制御弁15は、電磁弁であり、ECU19に電気的に接続されている。
【0020】
以上説明した内燃機関1は、ECU19により、温度センサ18により取得された温度Toが予め定めた温度Teよりも高くなったときに蓄圧タンク13内の排気ガスを吸気マニホールド3へ導入するように第1の制御弁14及び第2の制御弁15が制御される。
【0021】
なお、蓄圧タンク13内の高圧の排気ガスは、ターボチャージャー7のタービン7aの駆動に導入される。すなわち、蓄圧タンク13は、ターボチャージャー7とともに、AAT(Air Assist Turbo)を構成している。このような内燃機関1は、排気遮断弁8、第1の制御弁14、第2の制御弁15の開閉状態によって、蓄圧タンク13への蓄圧状態、AAT作動状態、EGR導入状態の3態様を実現している。
表1は、内燃機関1の状態別の排気遮断弁8、第1の制御弁14、第2の制御弁15の開閉状態を状態毎にまとめたものである。
表1

【0022】
すなわち、蓄圧タンク13に排気ガスを貯留する蓄圧状態のときは、排気遮断弁8を閉弁状態とし、第1の制御弁14を開弁状態とし、第2の制御弁15を閉弁状態とする。これにより、排気ガスは、蓄圧タンク13内に貯留される。ATT作動状態のときは、排気遮断弁8を開弁状態とし、第1の制御弁14を開弁状態とし、第2の制御弁15を閉弁状態とする。これにより、蓄圧タンク13内に蓄圧状態で貯留された排気ガスが、排気マニホールド4を経由してタービン7aに供給され、吸気が加給される。また、EGRガスを吸気マニホールド3へ導入するEGR導入状態のときは、排気遮断弁8を開弁状態とし、第1の制御弁14を閉弁状態とし、第2の制御弁15を開弁状態とする。これにより、蓄圧タンク13内に蓄圧状態で貯留された排気ガスが、蓄圧排気ガス導入管20、EGR管10を通じて吸気マニホールド3へ導入される。なお、EGRガスが導入されるときは、EGR弁11も開弁状態とされる。
【0023】
以上のような内燃機関1における制御の方針を、図2を参照しつつ説明する。図2は、従来行われているOT増量制御と比較しつつ本実施例の制御の方針を示している。
内燃機関1の出力が上昇し、OT温度、すなわち、予め設定した温度Toを越えるようになると、OT防止制御を開始する。本実施例では、表1における「EGR導入状態」となるように各弁の開閉状態が制御される。これにより、EGRガスが導入される。このとき、仮に、吸気圧力≧排気圧力の状態であっても、蓄圧タンク13内に貯留され、高圧となった排気ガスがEGR管10内に導入されるので、排気ガス、すなわち、EGRガスを吸気マニホールド3へ導入することができ、EGRガスを増量することができる。これにより、排気温度、触媒温度を低下させることができる。なお、EGRガス量を増加可能となったことにより、点火時期の進角も可能となる。
【0024】
一方、従来行われているOT増量制御を行うと、A/Fが増量されることになり、燃料消費率が増し、燃費が悪化する。これに対し、本実施例の制御によれば、燃料消費率を低下させ、燃費の向上を図ることができる。
【0025】
図3は、本実施例の内燃機関1における制御の一例を示すフロー図である。また、図4は、内燃機関負荷と、A/F増量値、燃料消費率、EGRガス量、排気温度との関係を示したグラフである。図4には、図3に示したフロー図に基づく制御を行った場合の結果が実線で示され、制御なしの場合の結果が破線で示されている。
【0026】
まず、ECU19は、ステップS1において、温度センサ18により取得した温度Teが予め定めたToよりも高いか否かを判断する。このToは、OT制御をそのまま温度上昇が継続すれば、排気温度許容上限を越えてしまうと予測される温度に設定されている。このステップS1でYesと判断した置きは、ステップS2へ進む。一方、ステップS1でNoと判断したときは、再び、ステップS1の処理を繰り返す。
【0027】
ステップS2では、蓄圧タンク13内の蓄圧された排気ガスを吸気マニホールド3へ導入するように各弁を制御する。すなわち、表1に示すように、排気遮断弁8を開弁状態とし、第1の制御弁14を閉弁状態とし、第2の制御弁15を開弁状態とする。これにより、高圧の排気ガスをEGRガスとして吸気マニホールド3へ導入し、燃焼温度を低下させることができる。この結果、排気温度がその上限温度を越えないようにすることができる。これにより、触媒16の溶損や破損を抑制することができる。
【0028】
なお、本実施例では、蓄圧EGRの導入とともにA/F増量制御も実施している。但し、蓄圧EGRの導入により、燃焼温度、排気温度を低下させることができるので、本実施例の制御を行わないときと比較してA/F増量値は少なくてよい。この結果、燃料消費率の上昇を抑制し、燃費を向上させることができる。
【0029】
以上説明したように、本実施例の内燃機関1によれば、EGRガスの導入により、A/F増量を抑制しても排気温度許容上限を越えることが回避される。また、EGRガスの導入に際し、高圧に蓄圧された蓄圧タンク13内の排気ガスが導入されるので、仮に、吸気圧力≧排気圧力の状態であっても、EGRガスの導入が効率よく行われる。
【0030】
上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、実施例の内燃機関1の概略構成を模式的に示した説明図である。
【図2】図2は、実施例の内燃機関において行われる制御の方針を示す説明図である。
【図3】図3は、本実施例の内燃機関において行われる制御の一例を示したフロー図である。
【図4】図4は、本実施例の内燃機関における内燃機関負荷とA/F増加値、燃料消費率、EGRガス量、排気温度との関係を示したグラフである。
【図5】図5は、従来の内燃機関における内燃機関負荷と燃料消費率、A/F増量値、排気温度との関係を示すグラフである。
【図6】図6は、内燃機関負荷と吸排気圧との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
1…内燃機関
2…本体
3…吸気マニホールド
4…排気マニホールド
6…排気管
7…ターボチャージャー
7a…タービン
7b…コンプレッサ
8…排気遮断弁
9…吸気管
10…EGR管
10a…EGRクーラー
11…EGRバルブ
12…接続管
13…蓄圧タンク
14…第1の制御弁
15…第2の制御弁
16…触媒
18…温度センサ
19…ECU
20…蓄圧排気ガス導入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガスを貯留する蓄圧タンクと、
排気マニホールドから前記蓄圧タンクへ導入される排気ガスの流通を制御する第1の制御弁と、
前記蓄圧タンク内の排気ガスを吸気マニホールドへ導入する蓄圧排気ガス導入管と、
当該蓄圧排気ガス導入管に設けられた第2の制御弁と、
触媒温度を取得する触媒温度取得手段と、
当該触媒温度取得手段により取得された温度が予め定めた温度よりも高くなったときに前記蓄圧タンク内の排気ガスを前記吸気マニホールドへ導入するように前記第1の制御弁及び前記第2の制御弁を制御する制御手段と、
を、備えたことを特徴とした内燃機関。
【請求項2】
前記蓄圧タンク内の排気ガスがターボチャージャーのタービンの駆動に導入されることを特徴とした請求項1記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−133286(P2010−133286A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307981(P2008−307981)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】