説明

内装材の製造方法および内装材

【課題】溝部における第1成形品と第2成形品の接合強度を向上させ、かつ、外観見栄えを向上させる。
【解決手段】本発明は、オーナメント基材28と、このオーナメント基材28とは異種の材質あるいは同種の材質で色が異なるものからなるドアトリム基材24とを備え、オーナメント基材28とドアトリム基材24との連結部40に沿って溝部22が形成されたドアトリム10の製造方法であって、オーナメント基材28を成形し、ドアトリム基材24を成形する成形型のうち下型52にオーナメント基材28を載置し、上型50に設けた押さえ部54をフランジ部32に押圧することで成形空間Sの内部をシールするとともに成形空間Sに延長部34を位置させて成形型を型閉じし、延長部34が第2成形品から離脱するとした場合における離脱経路上に樹脂を回り込ませて延長部34を覆い部38で覆うことにより連結部40を成形するところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装材の製造方法および内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1成形品と、この第1成形品とは異種の材質あるいは同種の材質で色が異なるものからなる第2成形品とを備えて構成された内装材として、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。この内装材では、第1成形品と第2成形品が溝部で接合されている。この溝部は、例えば内装材の表面に貼着された表皮材の端部を収容するなどして内装材の外観見栄えを向上させるための見切用溝部とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4107583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の内装材では、第1成形品と第2成形品が境界部分において面接触状態で接合しているに過ぎないため、この接合面では十分な接合強度を得ることができない。したがって、例えば内装材に曲げ応力が加わった場合に、脆弱部である溝部に応力が集中してしまい、第1成形品と第2成形品が接合面で破断するおそれがある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、溝部における第1成形品と第2成形品の接合強度を向上させ、かつ、外観見栄えを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1成形品と、この第1成形品とは異種の材質あるいは同種の材質で色が異なるものからなる第2成形品とを備え、第1成形品と第2成形品との連結部に沿って溝部が形成され、この溝部の側壁を構成する立壁部が第1成形品の周縁に連設され、溝部の奥壁を構成するフランジ部が立壁部に連設され、フランジ部の一部を延設してなる延長部が断続的に形成された内装材の製造方法であって、第1成形品を成形し、第2成形品を成形する成形型のうち一方の型に第1成形品を載置し、同他方の型に設けた押さえ部をフランジ部に押圧することで第2成形品の成形空間の内部をシールするとともに成形空間に延長部を位置させて成形型を型閉じし、延長部が第2成形品から離脱するとした場合における離脱経路上に樹脂を回り込ませて延長部を覆い部で覆うことにより連結部を成形するところに特徴を有する。
【0007】
このようにすると、延長部の離脱経路上に樹脂を回り込ませているため、溝部における第1成形品と第2成形品の接合強度を向上させることができる。また、第1成形品と第2成形品との接合部を溝部の奥方に位置させることで、内装材の外観見栄えを向上させることができる。このため、意匠性を損なうことなく第1成形品と第2成形品を強固に接合することができる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下のようにしてもよい。
延長部は貫通孔を有しており、この貫通孔の内部に樹脂を充填することにより離脱経路上に樹脂を回り込ませるようにしてもよい。
このようにすると、貫通孔の内部に充填された樹脂により延長部を引っ掛けて固定できるため、第1成形品と第2成形品の接合強度をさらに向上させることができる。
【0009】
また、本発明は、第1成形品と、この第1成形品とは異種の材質あるいは同種の材質で色が異なるものからなる第2成形品とを備え、第1成形品と第2成形品との連結部に沿って溝部が形成され、この溝部の側壁を構成する立壁部が第1成形品の周縁に連設され、溝部の奥壁を構成するフランジ部が立壁部に連設され、フランジ部の一部を延設してなる板状の延長部が断続的に形成された内装材であって、連結部は、延長部と、延長部が第2成形品から離脱するとした場合における離脱経路上に樹脂を回り込ませて延長部を覆う覆い部とからなる構成としてもよい。
【0010】
このような構成によると、例えば内装材に曲げ応力が加わるなどして溝部に応力が集中した場合であっても、延長部が覆い部に覆われて保持されているため、第1成形品と第2成形品が溝部で破断することを回避できる。また、第1成形品と第2成形品との接合部を溝部の奥方に位置させることができるため、内装材の外観見栄えを向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溝部における第1成形品と第2成形品の接合強度を向上させることができ、かつ、外観見栄えを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態1におけるドアトリムを示す斜視図
【図2】図1におけるA−A線断面図
【図3】延長部を斜め上方から見た斜視図
【図4】成形型を型閉じした状態を示した断面図
【図5】図4の状態から成形空間に樹脂を射出してドアトリム基材を成形した状態を示した断面図
【図6】図5の状態から成形型を型開きして内装材を脱型した状態を示した断面図
【図7】実施形態2におけるドアトリムの断面図であって、図2に対応する断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図6の図面を参照しながら説明する。本実施形態では、内装材として、車両ドアに取り付けられるドアトリム10を例示している。図1は、本実施形態のドアトリム10の斜視図である。図1に示すように、ドアトリム10は、合成樹脂等によって板状に形成されたドアトリム本体12、アームレスト20などを備えている。アームレスト20は、合成樹脂等によって形成され、ドアトリム本体12の車室内側に張り出す形で配されている。また、ドアトリム10は、オーナメント14、スピーカグリル16、ドアポケット18などを備えている。ドアトリム本体12とオーナメント14との境界には、溝部22が全周に亘って凹設されている。
【0014】
図2は、図1におけるA−A線断面図である。ドアトリム本体12は、ドアトリム基材24を備え、このドアトリム基材24の表面にはシボ模様が形成されている。一方、オーナメント14は、オーナメント基材28を備え、このオーナメント基材28の表面にもシボ模様が形成されている。
【0015】
ドアトリム基材24とオーナメント基材28は、それぞれ異なる材質あるいは同種の材質で色が異なるものからなる樹脂によって構成されている。したがって、ドアトリム基材24とオーナメント基材28を境界部分において面接触状態で接合しても、両基材24,28の接合面では十分な接合強度を確保することができない。この対策として、ドアトリム基材24とオーナメント基材28のつなぎ目に、これらを連結する連結部40が設けられている。
【0016】
連結部40は溝部22に隣り合って配置され、溝部22に沿ってオーナメント基材28の周方向に延出されている。また、連結部40は、オーナメント基材28に設けられた平板状の延長部34と、ドアトリム基材24に設けられたリブ状の覆い部38とによって構成されており、延長部34が覆い部38の内部に埋設されることで、延長部34が覆い部38の内部に抜け止め状態に保持されている。これにより、ドアトリム基材24とオーナメント基材28が連結部40において接合されている。
【0017】
溝部22の側壁は、オーナメント基材28側の側壁と、ドアトリム基材24側の側壁とからなる。オーナメント基材28の周縁には、立壁部30が連設されており、この立壁部30は、溝部22におけるオーナメント基材28側の側壁を構成している。この立壁部30は、オーナメント基材28の平面方向に対して略直角に配置されている。立壁部30の端縁(図示下端縁)には、フランジ部32が連設されている。このフランジ部32は、オーナメント基材28の平面方向に対して略平行に配置されている。また、フランジ部32は、溝部22の底部を構成している。
【0018】
図3に示すように、立壁部30およびフランジ部32は、いずれも溝部22の延出方向に沿ってオーナメント基材28の周方向に延出されている。前記した延長部34は、フランジ部32の端縁において、フランジ部32の一部をその平面方向に延設した形態とされている。このため、延長部34は、オーナメント基材28の平面方向に対して略平行に配置されている。また、延長部34には、貫通孔36が形成されている。延長部34の先端側の外形は円弧状をなしており、貫通孔36の孔形状に沿って形成されている。延長部34は、溝部22の延出方向に沿って等間隔で断続的に複数形成されている。
【0019】
延長部34を内部に埋設してなる覆い部38は、ドアトリム基材24の周縁に設けられている。つまり、覆い部38は、溝部22におけるドアトリム基材24側の側壁を構成している。したがって、延長部34と覆い部38からなる連結部40は、溝部22の一部を構成し、溝部22に沿ってオーナメント基材28の周方向に延出されている。
【0020】
延長部34の貫通孔36の内部には、覆い部38を構成する樹脂が充填されている。このため、延長部34が覆い部38から離脱する方向に引っ張られても、貫通孔36の内部に充填された樹脂が貫通孔36の内壁に係止することによって延長部34の離脱が規制される。このようにして、延長部34は、覆い部38によって抜け止め状態に保持されている。
【0021】
さらに、延長部34と覆い部38による接合部は、溝部22に沿ってオーナメント基材28の周方向に断続的に複数設けられている。したがって、ドアトリム基材24とオーナメント基材28は全周に亘って強固に固定され、ドアトリム基材24とオーナメント基材28との連結部40における接合強度を向上させることができる。これにより、ドアトリム10に曲げ応力が加わり、溝部22に応力が集中した場合であっても、溝部22でドアトリム10が破断することを防ぐことができる。
【0022】
次に、ドアトリム基材24とオーナメント基材28を一体に成形する成形型の構成およびその成形方法について図4ないし図6の図面を参照しながら説明する。溝部22を成形する成形型は、図4に示すように、上型50、この上型50の下方に対向して配置された下型52などを備えて構成されている。上型50には、フランジ部32に対して上方から押さえ付ける押さえ部54が設けられており、下型52には、押さえ部54によって下方に押さえ付けられたフランジ部32を下方から受ける受け部56が設けられている。これにより、フランジ部32は、上下方向において押さえ部54と受け部56の間に挟持される。
【0023】
オーナメント基材28の表面には、予めシボ加工が施されており、このオーナメント基材28のシボ形成面を上側に向けた状態で下型52に載置される。成形型を型閉じすると、シボが形成されたフランジ部32のうち押さえ部54で押圧された部分では、シボ模様が消失してしまうものの、押さえ部54と非接触の部分では、シボ模様が保持されるようになっている。また、押さえ部54がフランジ部32を押圧することによって、ドアトリム基材24を成形する成形空間Sの内部がシールされている。
【0024】
成形空間Sは、上型50と下型52によって上下方向に囲まれた領域に形成されている。また、成形空間Sの内壁のうち上型50によって構成される壁面は、シボ模様が形成されたシボ成形面とされている。成形型を型閉じした状態では、延長部34が成形空間Sの底面と天井面の双方から離間した中間位置に水平姿勢で保持されるようになっている。成形空間S内に連通して配置されたゲート(図示せず)から樹脂を射出することで、図5に示すように、成形空間S内に樹脂が充填され、この樹脂が冷え固まることでドアトリム基材24が形成されるとともに、ドアトリム基材24の表面にシボ模様が形成される。
【0025】
次に、上下両型50,52を上下方向に型開きし、図6に示すように、ドアトリム基材24とオーナメント基材28が一体に成形された一体成形品11を脱型する。このようにして形成された一体成形品11は、覆い部38に延長部34が埋設されているため、両基材24,28に曲げ応力が加わるなどして溝部22に応力が集中した場合であっても、両基材24,28が溝部22で破断することはなく、連結部40で両基材24,28を強固に接合することができる。
【0026】
以上のように本実施形態では、ドアトリム基材24とオーナメント基材28の連結部40に沿って溝部22を形成しているものの、連結部40において延長部34が覆い部38に埋設されているから、ドアトリム基材24とオーナメント基材28を強固に接合できる。また、延長部34に貫通孔36を形成し、この貫通孔36に樹脂が埋め込まれた状態で覆い部38を設けているから、ドアトリム基材24とオーナメント基材28をより強固に接合できる。さらに、延長部34と覆い部38との接合部を溝部22の奥方に配置したから、この接合部が溝部22の外部から視認されることはなく、外観見栄えを向上させることができる。
【0027】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2について図7の図面を参照しながら説明する。本実施形態では、オーナメント基材28の表面にシボ加工が施されておらず、その変わりにオーナメント基材28の表面にオーナメント表皮材26が貼着されている。オーナメント表皮材26としては、例えばクッション性を有し、予め表面にシボ加工が施されたものを使用することができる。また、オーナメント表皮材26の端部は、溝部22の内部に収容され、いわゆる木目込み状態としてオーナメント表皮材26の端末を処理し、外観見栄えを向上させている。さらに、オーナメント表皮材26は、オーナメント基材28に対して、例えばホットメルトテープ(図示せず)を介して貼着されている。
【0028】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態ではドアトリム本体12とオーナメント14との連結部40に沿って溝部22を形成しているものの、本発明によると、例えばドアトリム基材がメイン基材とアッパ基材からなる場合に、メイン基材とアッパ基材との連結部に沿って溝部を形成してもよい。
【0029】
(2)上記実施形態では延長部34に貫通孔36を設けているものの、本発明によると、延長部に貫通孔を設けることなく、例えば延長部をT字状に形成してこの延長部に樹脂を回り込ませることで延長部を覆い部に対して抜け止め状態に保持してもよい。
【0030】
(3)上記実施形態ではドアトリム基材24とオーナメント基材28を一体に成形してなる一体成形品11としているものの、本発明によると、材質の異なる3種類以上の基材、あるいは同材質で色の異なる3種類以上の基材を一体に成形してなる一体成形品としてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10…ドアトリム(内装材)
22…溝部
24…ドアトリム基材(第2成形品)
28…オーナメント基材(第1成形品)
30…立壁部
32…フランジ部
34…延長部
36…貫通孔
38…覆い部
40…連結部
50…上型(成形型の他方の型)
52…下型(成形型の一方の型)
54…押さえ部
56…受け部
S…成形空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成形品と、この第1成形品とは異種の材質あるいは同種の材質で色が異なるものからなる第2成形品とを備え、前記第1成形品と前記第2成形品との連結部に沿って溝部が形成され、この溝部の側壁を構成する立壁部が前記第1成形品の周縁に連設され、前記溝部の奥壁を構成するフランジ部が前記立壁部に連設され、前記フランジ部の一部を延設してなる延長部が断続的に形成された内装材の製造方法であって、
前記第1成形品を成形し、
前記第2成形品を成形する成形型のうち一方の型に前記第1成形品を載置し、同他方の型に設けた押さえ部を前記フランジ部に押圧することで前記第2成形品の成形空間の内部をシールするとともに前記成形空間に前記延長部を位置させて前記成形型を型閉じし、
前記延長部が前記第2成形品から離脱するとした場合における離脱経路上に樹脂を回り込ませて前記延長部を覆い部で覆うことにより前記連結部を成形することを特徴とする内装材の製造方法。
【請求項2】
前記延長部は貫通孔を有しており、この貫通孔の内部に前記樹脂を充填することにより前記離脱経路上に前記樹脂を回り込ませることを特徴とする請求項1に記載の内装材の製造方法。
【請求項3】
第1成形品と、
この第1成形品とは異種の材質あるいは同種の材質で色が異なるものからなる第2成形品とを備え、
前記第1成形品と前記第2成形品との連結部に沿って溝部が形成され、この溝部の側壁を構成する立壁部が前記第1成形品の周縁に連設され、前記溝部の奥壁を構成するフランジ部が前記立壁部に連設され、前記フランジ部の一部を延設してなる板状の延長部が断続的に形成された内装材であって、
前記連結部は、前記延長部と、前記延長部が前記第2成形品から離脱するとした場合における離脱経路上に樹脂を回り込ませて前記延長部を覆う覆い部とからなることを特徴とする内装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−66507(P2012−66507A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213869(P2010−213869)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】