説明

円盤状基板の製造方法および純水供給装置

【課題】円盤状基板の研磨を行なう研磨装置の洗浄を行なう場合でも、研磨装置に温度変化が生じにくく、研磨に要求される精度を維持しやすい円盤状基板の製造方法等を提供する。
【解決手段】ガラス基板を研削する研削工程と、研削工程を経たガラス基板の主表面を研磨機50により研磨剤を用いて研磨するとともに研磨に際して温度管理された処理水を用いる研磨工程と、研磨工程に用いられる処理水の温度管理と同様に温度管理された洗浄水を用いて研磨機50を洗浄する工程と、を有することを特徴とする円盤状基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば磁気記録媒体用ガラス基板などの円盤状基板の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録メディアとしての需要の高まりを受け、磁気ディスク等の情報記録媒体の製造が活発化している。ここで磁気ディスク用の基板として用いられる円盤状基板としては、アルミ基板とガラス基板とが広く用いられている。このアルミ基板は加工性も高く安価である点に特長があり、一方のガラス基板は強度、表面の平滑性、平坦性に優れている点に特長がある。特に最近ではディスク基板の小型化と高密度化の要求が著しく高くなり、基板の表面の粗さが小さく高密度化を図ることが可能なガラス基板の注目度が高まっている。
【0003】
特許文献1には、円盤状のガラスディスクの表面を研削した後に研磨砥粒を含む研磨液を用いてガラスディスクの表面を研磨する研磨工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製
造方法において、研磨液をガラスディスクの表面に供給するときの研磨液の温度を、雰囲気温度以下、または、20°C以下とし、あるいは、研磨工程を終了したときのガラスディスクの表面の温度を30°C以下とすることが開示されている。
また特許文献2には、円盤状のガラス基板を積層して円柱を構成し、ガラス基板の端面に回転ブラシを接触させ、研磨液を供給しながらガラス基板と回転ブラシを各々平行な軸心で同方向に回転させてガラス基板の端面の研磨を行う工程を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、研磨液温度制御手段を備え、研磨液の温度を調節しながら研磨を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−245265号公報
【特許文献2】特開2007−98484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここでガラス基板等の円盤状基板を製造する際に、円盤状基板の研磨を行なう研磨装置に温度変化が生じる場合がある。ところが、これにより研磨装置に熱膨張または熱収縮が生じ、研磨に要求される精度を維持できない場合があった。
本発明は、円盤状基板の研磨を行なう研磨装置に温度変化が生じにくく、研磨に要求される精度を維持しやすい円盤状基板の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の円盤状基板の製造方法は、円盤状基板を研削する研削工程と、研削工程を経た円盤状基板の主表面を研磨装置により研磨剤を用いて研磨するとともに、研磨に際して温度管理された処理水を用いる研磨工程と、研磨工程に用いられる処理水の温度管理と同様に温度管理された洗浄水を用いて研磨装置を洗浄する工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
ここで、研磨工程に用いられる処理水は、円盤状基板から研磨剤を除去するための仕上げ水であることが好ましく、研磨剤に含まれる砥粒の分散剤であることが好ましい。
また処理水および洗浄水は、逆浸透膜を通過させることにより製造されたものであることが更に好ましい。
更に純水を製造する純水製造工程と、純水製造工程により製造された純水の温度を調節する純水温度管理工程と、を更に有し、処理水および洗浄水は、純水温度管理工程により温度を調節された純水であることが好ましい。
【0008】
また、本発明の純水供給装置は、円盤状基板の製造において円盤状基板を研磨する研磨装置に使用する純水を供給する純水供給装置であって、純水を製造する純水製造手段と、純水製造手段により製造された純水の温度を調節する純水温度管理手段と、純水温度管理手段によって温度を調節された純水を、研磨に際して使用する処理水と研磨装置の洗浄の際に使用する洗浄水とに分岐する分岐手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、円盤状基板の研磨を行なう研磨装置に温度変化が生じにくく、研磨に要求される精度を維持しやすい円盤状基板の製造方法等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1−1】(a)〜(c)は、本実施の形態が適用される円盤状基板(ディスク基板)の製造工程を示した図である。
【図1−2】(d)〜(f)は、本実施の形態が適用される円盤状基板(ディスク基板)の製造工程を示した図である。
【図1−3】(g)〜(i)は、本実施の形態が適用される円盤状基板(ディスク基板)の製造工程を示した図である。
【図2】研削機の構造を説明した図である。
【図3】保持具を更に詳しく説明した図である。
【図4】内周研磨工程において使用するブラシの一例を示した図である。
【図5】本実施の形態における調製水、仕上げ水、および洗浄水を供給する純水供給装置について説明した図である。
【図6−1】本実施の形態における調製水、仕上げ水、および洗浄水を供給する純水供給装置の動作について説明したフローチャートである。
【図6−2】本実施の形態における調製水、仕上げ水、および洗浄水を供給する純水供給装置の動作について説明したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1−1(a)〜(c)、図1−2(d)〜(f)、図1−3(g)〜(i)は、本実施の形態が適用される円盤状基板の製造工程を示した図である。
【0012】
(1次ラップ工程)
図1−1(a)は1次ラップ工程を示している。この工程でまず、研削機(研削装置、ラッピングマシン)40により1回目の研削(ラッピング)を行い、円盤状基板の一例としてのガラス基板(ワーク)10の表面11を平滑に研削する。
ここで図2は、研削機40の構造を説明した図である。
図2に示した研削機40は、ガラス基板10を載置する下定盤21aと、ガラス基板10を上部から押えつけ研削を行うために必要な圧力を加えるための上定盤21bとを備えている。
ここで、下定盤21aの外周部には歯部42が設けられ、下定盤21aの中央部には太陽歯車44が設けられている。さらに下定盤21aには、研削が行われる際にガラス基板10を位置決めする円盤状の保持具(キャリア)30が設置されている。
保持具30は、図2に示す研削機40では、5個設置されている。保持具30の外周部には歯部32が備えられ、下定盤21aの歯部42および太陽歯車44の双方に噛合している。また下定盤21aおよび上定盤21bには、これらを回転させるための回転軸46a,46bがそれぞれ中心部に設置されている。
【0013】
この1次ラップ工程においては、まず研削機40の下定盤21aに保持具30を利用してガラス基板10の載置を行う。
図3は、保持具30を更に詳しく説明した図である。図3に示した保持具30には、上述の通り、外周部に歯部32が備えられている。また、研削を行う際にガラス基板10が内部に載置される円形形状の孔部34が複数開けられている。この孔部34の直径は、ガラス基板10の直径よりわずかに大きく開けられる。このようにすることで、研削を行う際にガラス基板10の外周端の一部に余分な応力がかかるのを抑制することができるため、ガラス基板10の外周端が損傷しにくくなる。本実施の形態において、孔部34の直径はガラス基板10の直径より、例えば、約1mm大きくなっている。また孔部34は、ほぼ等間隔で並んでおり、本実施の形態の場合、孔部34は、例えば、35個開けられている。
【0014】
保持具30の材料としては、例えば、アラミド繊維やガラス繊維を混入することで強化されたエポキシ樹脂を使用することができる。また保持具30の厚さは、本工程において、研削を行う際に、上定盤21bに接触し、研削を阻害しないために、本工程におけるガラス基板10の仕上げ厚さより薄く作成されている。例えば、ガラス基板10の仕上げ厚さが1mmであるとすると、保持具30の厚さは、それより0.2mm〜0.6mm薄くなっている。
【0015】
保持具30の孔部34にガラス基板10を載置した後は、上定盤21bをガラス基板10に接触するまで移動させ、研削機40を稼働させる。
この際の研削機40の動作を図2を用いて説明する。研削機40を稼働する際には、図の上方の回転軸46bを一方向に回転させ、上定盤21bを、同様な一方向に回転させる。また、図の下方の回転軸46aを、回転軸46bの回転とは逆方向に回転させ、下定盤21aを回転軸46aと同様な方向に回転させる。これにより下定盤21aの歯部42も回転軸46aと同様な方向に回転する。また中央部の太陽歯車44も、回転軸46aと同様な方向に回転する。
このように上定盤21b、下定盤21a、太陽歯車44を回転させることにより、これらの歯車に噛み合う保持具30は自転運動と、公転運動が組み合わされたいわゆる遊星運動を行う。同様に、保持具30にはめ込まれたガラス基板10も遊星運動を行う。このようにすることによりガラス基板10の研削をより精度よく、また迅速に行うことができる。
【0016】
本実施の形態において、研削は、研削剤を用いて行うことができる。研削剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミナやダイヤモンドからなる研削剤をスラリー化して使用することができる。または、上定盤21bや下定盤21aにこれらの研削剤が分散して含んだ砥石を使用してもよい。
【0017】
(内外周研削工程)
図1−1(b)は内外周研削工程を示している。この工程では、ガラス基板10の開孔12の内周面および外周13の外周面の荒削りである研削を行う。また本実施の形態では、内周面と外周面の研削を同時に行う。具体的には、ガラス基板10の中心に設けられた開孔12を内周砥石22によって研削し、ガラス基板10の外周13を外周砥石23によって研削する。このとき、内周砥石22と外周砥石23でガラス基板10の内周面と外周面を挟み込んで同時加工する。これにより内径と外径の同心度を確保し易くすることができる。
本実施の形態において、内周砥石22および外周砥石23は、波状の表面を有している。そのため、ガラス基板10の開孔12の内周面および外周13の外周面を研削することができるだけでなく、開孔12および外周13における縁部の面取りを併せて行うことが可能となる。
【0018】
(内周研磨工程)
図1−1(c)は内周研磨工程を示している。この工程では、図1−1(b)に示した内外周研削工程において、荒削りである研削を行ったガラス基板10の開孔12の内周面を更に平滑にする研磨を行う。
具体的には、まずガラス基板10を積層し、図示しないホルダにセットする。そして、このホルダにセットされたガラス基板10の開孔12の中心にブラシ24を挿入する。そして研磨液をガラス基板10の開孔12に流し込みながら、ブラシ24を高速で回転させることで、ガラス基板10の内周面を研磨する。本実施の形態では、研磨に際してブラシ24を使用しているので、ガラス基板10の内周面を研磨すると共に、上述した内外周研削工程において行った開孔12の縁部の面取りした部分も同様に研磨することができる。なお研磨液としては、例えば酸化セリウム砥粒を水に分散してスラリー化したものを用いることができる。
【0019】
図4は、内周研磨工程において使用するブラシ24の一例を示した図である。このブラシ24は、毛先が螺旋状に配列して形成されるブラシ部241と、このブラシ部241の両端部に連続して形成され、一端と他端とを形成する軸242とを備えている。ガラス基板10の開孔12として例えば0.85インチ等の小径ディスクの内周面を研磨するような場合は、ブラシ24の芯を細くする必要がある。その場合、本実施の形態では、例えば、複数本のワイヤ(材質:例えば、軟鋼線材(SWRM)、硬鋼線材(SWRH)、ステンレス線材(SUSW)、黄銅線(BSW)など、加工性、剛性などから適宜選定できる)の間に、ブラシの毛(材質:例えばナイロン(デュポン社の商品名))を挟み込み、この毛が挟み込まれたワイヤをねじることで、ブラシ部241を形成している。このワイヤをねじってブラシ部241を形成することで、ブラシ部241に形成されるブラシ毛先を螺旋状とすることができ、挿入されているガラス基板10の開孔12にて、研磨液を軸方向に流すことが可能となる。そのため研磨液の搬送を良好に行うことができる。
【0020】
(2次ラップ工程)
図1−2(d)は2次ラップ工程を示している。この工程では、図1−1(a)に示した1次ラップ工程において、研削を行ったガラス基板10の表面11を再度研削を行うことにより更に平滑に研削する。
2次ラップ工程において、研削を行う装置としては、図1−1(a)に示した研削機40を使用することができる。また研削の方法、条件等は、図1−1(a)で説明した場合と同様に行うことができる。なお本実施の形態において、1次ラップ工程および2次ラップ工程は、ガラス基板10を研削する研削工程として把握することができる。
【0021】
(外周研磨工程)
図1−2(e)は外周研磨工程を示している。この工程では、図1−1(b)に示した内外周研削工程において、荒削りである研削を行ったガラス基板10の外周13の外周面を更に平滑にする研磨を行う。
具体的には、まずガラス基板10の開孔12の部分に治具25を通して積層させ、ガラス基板10を治具25にセットする。そして研磨液をガラス基板10の外周13の箇所に流し込みながら、ブラシ26を積層したガラス基板10に接触させ、高速で回転させる。これにより、ガラス基板10の外周面を研磨することができる。本実施の形態では、研磨に際してブラシ26を使用しているので、ガラス基板10の外周面を研磨すると共に、上述した内外周研削工程において行った外周13の縁部の面取りした部分も同様に研磨することができる。なお研磨液としては、内周研磨工程の場合と同様に、例えば酸化セリウム砥粒を水に分散してスラリー化したものを用いることができる。
【0022】
(1次ポリッシュ工程)
図1−2(f)は1次ポリッシュ工程を示している。この工程では、図1−2(d)に示した2次ラップ工程において、研削を行ったガラス基板10の表面11を、研磨機(研磨装置、ポリッシングマシン)50を用いて研磨(ポリッシング)を行うことで研磨し、更に平滑度を上げていく。この研磨機50は、上述した研削機40とほぼ同様な構成を有する。即ち、ガラス基板10を載置する下定盤21aと、ガラス基板10を上部から押えつけ研磨を行うために必要な圧力を加えるための上定盤21bとを備えている。そして研磨機50の下定盤21aに保持具30を利用してガラス基板10を載置し、上定盤21b、下定盤21a、および太陽歯車44を回転させることによりガラス基板10の研磨を行なう。ただし、下記に示すように研磨に使用する材料等が一部異なる。
本実施の形態において、研磨を行うに際し、例えばウレタンにより形成された硬質研磨布を用い、酸化セリウム砥粒等を水に分散してスラリー化した研磨剤を使用して行なうことができる。詳しくは後述するが、本実施の形態において、この際に研磨剤を調製するための純水であって、研磨剤に含まれる砥粒の分散剤である調製水は、温度管理されたものを使用する。これにより、温度がより安定した研磨剤を使用することができ、そのためより精密な研磨を行なうことが可能となる。
またガラス基板10を研磨した後は、純水を使用してガラス基板10の表面に付着した研磨剤を除去する。そして本実施の形態において、このガラス基板10から研磨剤を除去するために使用する水である仕上げ水は、温度管理されたものを使用する。
上述した調製水および仕上げ水は、研磨に際して用いられ温度管理された処理水として把握することができる。
【0023】
(2次ポリッシュ工程)
図1−3(g)は2次ポリッシュ工程を示している。この工程では、図1−2(f)に示した1次ポリッシュ工程において、研磨を行ったガラス基板10の表面11を、精密研磨を行うことで更に研磨し、表面11の最終的な仕上げを行う。
本実施の形態において、この研磨を行うに際し、例えばスエード状の軟質研磨布を用い、酸化セリウム砥粒若しくはコロイダルシリカ等を水等の分散媒に分散してスラリー化した研磨剤を使用して行なうことができる。本実施の形態において、この2次ポリッシュ工程においても、1次ポリッシュ工程と同様に、温度管理された処理水である調製水および仕上げ水を使用して研磨や研磨剤の除去を行なう。なお本実施の形態において、1次ポリッシュ工程および2次ポリッシュ工程は、研削工程を経たガラス基板10の主表面を研磨機50により研磨剤を用いて研磨するとともに、研磨に際して温度管理された処理水を用いる研磨工程として把握することができる。
【0024】
(最終洗浄・検査工程)
図1−3(h)は最終洗浄・検査工程を示している。最終洗浄では、上述した一連の工程において、使用した研磨剤等の汚れの除去を行う。洗浄には超音波を併用した洗剤(薬品)による化学的洗浄などの方法を用いることができる。
また、検査工程においては、例えばレーザを用いた光学式検査器により、ガラス基板10の表面の傷やひずみの有無等の検査が行われる。
【0025】
(梱包工程)
図1−3(i)は梱包工程を示している。梱包工程では、上記の検査工程において予め定められた品質基準に合格したガラス基板10の梱包が行なわれ、ガラス基板10の梱包体90となる。そして梱包体90は、磁気記録媒体(磁気ディスク)を製造する箇所まで輸送される。この梱包は、輸送の際にガラス基板10への塵埃等の異物の付着や表面の状態変化を抑制するために行なわれる。
【0026】
ここで本実施の形態では、上述した研磨工程としての1次ポリッシュ工程および2次ポリッシュ工程の前後において、研磨機50の洗浄を行なう。このとき研磨機50の洗浄は、研磨工程に用いられる処理水の温度管理と同様に温度管理された洗浄水を用いて行なう。即ち、研磨工程である1次ポリッシュ工程および2次ポリッシュ工程は、研削工程である1次ラップ工程および2次ラップ工程よりもガラス基板10の表面をより精度よく研磨することが求められる。そのため研磨機50を構成する部品等の寸法精度は、より高いものが求められる。特に研磨機50の下定盤21aおよび上定盤21bに温度変化が生じると、下定盤21aおよび上定盤21bに熱膨張や熱収縮が生じる。そしてこれにより下定盤21aおよび上定盤21bに変形が生じ、研磨機50によって研磨を行なう際に、要求される精度を維持できない場合がある。
【0027】
本実施の形態では、研磨工程に用いられる処理水の温度管理と同様に温度管理された洗浄水を用いて研磨機50の洗浄を行なうことで、研磨機50に温度変化が生じにくくなる。そのため研磨に要求される精度をより維持しやすくなる。
【0028】
図5は、本実施の形態における調製水、仕上げ水、および洗浄水を供給する純水供給装置について説明した図である。また図6−1および図6−2は、本実施の形態における調製水、仕上げ水、および洗浄水を供給する純水供給装置の動作について説明したフローチャートである。以下、図5、図6−1、図6−2を使用して本装置の構成および動作について説明を行なう。
【0029】
図5に示した純水供給装置100は、原水から不純物を除去して純水を製造する純水製造ユニット110と、純水製造ユニット110により製造された純水を研磨機50に調製水、仕上げ水、および洗浄水として供給する純水供給ユニット120とを備える。
【0030】
純水製造ユニット110は、原水を供給するポンプ111と、原水から不純物の一例である固形物を除去するフィルタ112と、フィルタ112により固形物が除去された水から不純物の一例であるイオン類や塩類を更に除去する逆浸透膜装置113と、逆浸透膜装置113により純水となった水の温度を予め定められた範囲内に調節する純水温度管理手段の一例としての純水温度管理装置114とを備える。そしてポンプ111、フィルタ112、逆浸透膜装置113、および純水温度管理装置114は、配管115a,115b,115cにより直列に接続されている。
【0031】
ここで原水としては、水道水、地下水等を使用することができるが、回収水を使用することもできる。ここで回収水とは、ガラス基板10を製造する際に発生する排水から回収された水であり、予め定められた手順により排水から懸濁物等を除去することで再利用できる程度にまで処理された水である。
【0032】
フィルタ112は、原水に含まれる固形物を除去できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば限外濾過膜(UF膜)を使用することができる。限外濾過膜は、例えば、大きさが2nm〜200nmの孔を多数設けた酢酸セルロース膜であり、この膜を通過させることで、微粒子等の固形物を除去することができる。ただし、原水が地下水である場合は、地下水に含まれる砂等を除去するために限外濾過膜の前段に砂除去フィルタ等を併せて設け、いわゆる多段フィルタとすることが好ましい。この砂除去フィルタは、限外濾過膜より大きい孔が設けられたフィルタであり、これにより砂等の比較的大きい大きさを有する粒子を予め除去することができる。そしてこれにより限外濾過膜の目詰まりを抑制することができ、限外濾過膜の交換頻度を少なくすることができる。
【0033】
逆浸透膜装置113は、内部に逆浸透膜(RO膜)を備える装置である。逆浸透膜は、例えば、大きさが1nm〜2nmの孔を多数設けた酢酸セルロース膜であり、この膜を通過させることで、金属イオン等のイオン類や塩類を除去することができる。このように原水を、フィルタ112および逆浸透膜装置113に通過させることで純水を製造することができる。ここでフィルタ112および逆浸透膜装置113は、純水製造手段として、また、原水をフィルタ112および逆浸透膜装置113に通過させることで純水を製造する工程は、純水製造工程として把握することができる。
【0034】
純水温度管理装置114は、本実施の形態では、純水を貯留する純水槽114aと、純水槽114a内部の純水を攪拌する攪拌翼114bと、純水の温度を測定する温度センサ114cと、純水の温度を調節する温度調節手段114dと、温度センサ114cにより測定された温度に基づいて温度調節手段114dの制御を行なう温度制御部114eとからなる。
即ち、純水温度管理装置114は、純水槽114a内部の純水を攪拌翼114bにより撹拌することで温度分布を一様にしつつ、温度センサ114cにより純水の温度の測定を行なう。そして温度センサ114cにより測定された純水の温度に基づき、温度制御部114eが温度調節手段114dの制御を行なうことで純水槽114a内部の純水の温度を予め定められた範囲内に収まるようにする。ここで温度調節手段114dは、具体的には、純水の温度を上昇させるための加熱器(ヒータ)や純水の温度を下降させるための冷却器(クーラー)である。また温度制御部114eは、具体的には、例えばパーソナルコンピュータである。この場合、パーソナルコンピュータが、純水の温度調節を行なうためのプログラムを実行し、温度調節手段114dの制御を行なうための制御信号を温度調節手段114dに対し出力する。なお純水温度管理装置114により純水の温度を調節する工程は、純水温度管理工程として把握することができる。
【0035】
つまり純水製造ユニット110では、ポンプ111により供給された原水からフィルタ112により固形物を除去し(ステップ101)、更に逆浸透膜装置113によりイオン類等や塩類を除去することで純水とする(ステップ102)。そして製造された純水の温度を純水温度管理装置114により予め定められた範囲内になるように管理する(ステップ103)。
【0036】
純水供給ユニット120は、純水を分岐するための分岐手段の一例としての分岐部122と、研磨剤を貯留するための研磨剤調製槽123とから主要部が構成されている。
分岐部122は、純水温度管理装置114の純水槽114aと配管125aを介して接続されている。そして配管125aの途中には、純水を使用する箇所まで供給するための水圧を発生するポンプ121aを備える。また本実施の形態では、分岐部122からは、配管125b,125c,125dの3本の配管が分岐する。配管125bは、分岐部122と研磨剤調製槽123とを接続し純水を調製水として供給する。また配管125cは、純水を仕上げ水として供給し、配管125dは、純水を洗浄水として供給する。
【0037】
研磨剤調製槽123では、配管125bにより供給される調製水を使用して研磨剤が調製される。そして上述した研磨工程において、研磨剤は、研磨剤調製槽123から配管125eを介し、配管125eの出口側に設けられた研磨剤供給口(図示せず)より研磨機50に供給される。この際、ポンプ121bにより一定の量の研磨剤が研磨機50に供給されるように流量が調節される。また研磨機50から排出された研磨剤は、回収され、配管125fを介し研磨剤調製槽123に再び貯留される。即ち研磨剤は、研磨剤調製槽123と研磨機50との間で循環供給される。なおこの際に配管125fの途中に設けられたフィルタ124によって研磨により生じた研磨屑が除去される。また研磨剤調製槽123では、研磨機50の運転中、調製水を使用して研磨剤の濃度の調整が行なわれる。なお本実施の形態では、図示していないが、上述したような純水温度管理装置114と同様に、研磨剤の温度を調節する研磨剤温度管理装置を別途設けてもよい。この場合、研磨剤の温度を予め定められた範囲内になるように管理することができる。
【0038】
また研磨機50によりガラス基板10の研磨が終了すると、ガラス基板10表面に付着した研磨剤を除去する必要がある。本実施の形態では、研磨剤を除去するために配管125cを介して供給される仕上げ水を使用する。具体的には、配管125cの出口側に設けられる仕上げ水供給口(図示せず)より仕上げ水が供給され、これにより研磨剤を洗い流すことでガラス基板10表面から研磨剤を除去することができる。
【0039】
また研磨機50を洗浄する際には、配管125dを介して供給される洗浄水を使用する。具体的には、配管125dの出口側に設けられる洗浄水供給口(図示せず)より洗浄水が供給され、これにより研磨機50の洗浄を行なうことができる。
【0040】
つまり純水供給ユニット120では、ポンプ121aにより供給される温度管理された純水を分岐部122で調製水、仕上げ水、洗浄水の3系統に分岐し、そしてガラス基板10の研磨を行なう前に研磨機50の洗浄を行なうために洗浄水の供給を行なう(ステップ104)。また研磨工程において、調製水により研磨機50が研磨を行なうために必要な研磨剤の調製を研磨剤調製槽123で行ない(ステップ105)、研磨中は研磨機50に研磨剤の供給を行なう(ステップ106)。そしてガラス基板10の研磨後は、ガラス基板10表面の研磨剤を除去するために仕上げ水を供給する(ステップ107)。更に研磨工程終了後は研磨機50の洗浄を行なうために洗浄水の供給を行なう(ステップ108)。
【0041】
以上説明したように本実施の形態では、純水温度管理装置114により予め定められた範囲内で温度が管理された純水を、分岐部122により分岐し、調製水、仕上げ水、および洗浄水として使用する。そのため、研磨工程および研磨工程の前後で研磨機50を洗浄する場合において、研磨機50の下定盤21aおよび上定盤21bの温度を、一貫して予め定められた範囲内に維持することができる。そのため下定盤21aおよび上定盤21bの変形を抑制することができ、研磨工程において研磨を行なう際に高い精度を維持することができる。
【符号の説明】
【0042】
10…ガラス基板、40…研削機、50…研磨機、100…純水供給装置、110…純水製造ユニット、112…フィルタ、113…逆浸透膜装置、114…純水温度管理装置、120…純水供給ユニット、122…分岐部、123…研磨剤調製槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状基板を研削する研削工程と、
前記研削工程を経た円盤状基板の主表面を研磨装置により研磨剤を用いて研磨するとともに、研磨に際して温度管理された処理水を用いる研磨工程と、
前記研磨工程に用いられる前記処理水の温度管理と同様に温度管理された洗浄水を用いて前記研磨装置を洗浄する工程と、
を有することを特徴とする円盤状基板の製造方法。
【請求項2】
前記研磨工程に用いられる前記処理水は、前記円盤状基板から研磨剤を除去するための仕上げ水であることを特徴とする請求項1に記載の円盤状基板の製造方法。
【請求項3】
前記研磨工程に用いられる前記処理水は、前記研磨剤に含まれる砥粒の分散剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の円盤状基板の製造方法。
【請求項4】
前記処理水および前記洗浄水は、逆浸透膜を通過させることにより製造されたものであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の円盤状基板の製造方法。
【請求項5】
純水を製造する純水製造工程と、
前記純水製造工程により製造された純水の温度を調節する純水温度管理工程と、を更に有し、
前記処理水および前記洗浄水は、前記純水温度管理工程により温度を調節された純水であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の円盤状基板の製造方法。
【請求項6】
円盤状基板の製造において当該円盤状基板を研磨する研磨装置に使用する純水を供給する純水供給装置であって、
純水を製造する純水製造手段と、
前記純水製造手段により製造された純水の温度を調節する純水温度管理手段と、
前記純水温度管理手段によって温度を調節された純水を、研磨に際して使用する処理水と前記研磨装置の洗浄の際に使用する洗浄水とに分岐する分岐手段と、
を備えることを特徴とする純水供給装置。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【公開番号】特開2012−24898(P2012−24898A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167575(P2010−167575)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】