説明

円筒状部材の接合構造及びその接合方法

【課題】アルミ系金属部材及び鉄系金属部材からなる各円筒状部材の摩擦圧接接合部における鉄系金属部材側の耐食性を向上させる。
【解決手段】プロペラシャフト1は、鉄系金属材料からなる中空円筒状に形成され、外周面に保護層13を有するスタブシャフト11と、アルミ系金属材料からなる中空円筒状の第1チューブ12と、を有しており、両者は摩擦圧接によって接合されている。両者の接合の際、スタブシャフトの接合端部から拡径してほぼ反り返り状に折曲したバリ16を形成すると共に、接合面側には非保護部14を形成し、最大拡径部16aを境界として、軸方向逆端側へ縮径する縮径部17には保護層を形成した。これにより、スタブシャフト単体の腐食が防止されることは勿論、露出面積の微小な非保護部の外周部14bは、電食しても酸化生成物の生成によって腐食の促進が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ系金属部材及び鉄系金属部材によって夫々形成された各円筒状部材同士を摩擦圧接により接合してなる円筒状部材の接合構造及びその接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の円筒状部材の接合構造としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが提案されている。
【0003】
この円筒状部材の接合構造は、異種金属部材同士を摩擦圧接して、この異種金属部材間において相対的に自然電位の卑な金属部材である第1部材の外周側から自然電位の貴な金属部材である第2部材の外周に沿った方向にバリを延在させて、このバリが接合界面の外周部に覆い被さった構造になっている。
【0004】
これにより、前記バリによって塩水などの電解液が接合界面に到達するのを防止するようになっている。また、前記電解液がバリの内側に入り込んだ場合には、該電解液により接合界面付近のバリや第2部材の一部が腐食されて酸化生成物が生成されて、該酸化生成物がバリと第2部材との隙間に堆積することによって、さらなる電解液の接合界面付近への供給を遮断して、接合界面の腐食を防止することができるようになっている。
【特許文献1】特開2003−48078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の円筒状部材の接合構造のように、前記バリを延在させただけでは、雨水などの電解液が接合界面に到達するのを完全に防止することはできない。
【0006】
すなわち、前述のように、接合界面付近のバリや第2部材の一部が電食することによって生成される酸化生成物がバリと第2部材との隙間に堆積して、接合界面の腐食進行速度が遅延しても、前記酸化生成物の周辺から腐食が進行すると共に、鋼材単体としても腐食が進行してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、このような技術的課題に着目して案出されたものであって、アルミ系金属部材及び鉄系金属部材からなる各円筒状部材の摩擦圧接接合部において、電解液の付着による鉄系金属部材側の耐食性を向上し得る円筒状部材の接合構造及びその接合方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、円筒状に形成されたアルミ系金属部材と鉄系金属部材とを摩擦圧接によって接合してなる円筒状部材の接合構造であって、前記鉄系金属部材の接合端に形成され、該接合端から外方へ拡径した非保護部と、該非保護部の最大拡径端縁から前記鉄系金属部材の外周面にわたって形成されて、電解液との接触を保護する保護層と、を有することを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、前記アルミ系金属部材と前記鉄系金属部材との接合部に形成された前記非保護部には、該非保護部が電食することによって酸化生成物が生成されて、この酸化生成物が前記非保護部周辺に堆積するために、前記非保護部の腐食の進行が防止されると共に、前記保護層によって前記鉄系金属部材単体の外周側の腐食も防止される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、円筒状に形成されたアルミ系金属部材と鉄系金属部材とを摩擦圧接によって接合してなる円筒状部材の接合方法であって、前記鉄系金属部材の外面に保護層を形成する工程と、前記鉄系金属部材の接合端側の端面を切削加工して、前記保護層を削り落とすと共に、外周側に拡径部を形成する工程と、前記アルミ系金属部材と前記鉄系金属部材とを摩擦圧接して、該両部材を接合する工程と、からなることを特徴としている。
【0011】
この発明によれば、この接合方法の発明にあっても、前記請求項1に記載の発明と同様な作用効果が得られる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、円筒状に形成されたアルミ系金属部材と鉄系金属部材とを接合してなる円筒状部材の接合構造であって、前記アルミ系金属部材と前記鉄系金属部材との接合部を除く前記鉄系金属部材の外周面のみに電解液との接触を保護する保護層を形成したことを特徴としている。
【0013】
この発明によれば、前記アルミ系金属部材と前記鉄系金属部材との接合部を除く前記鉄系金属部材の外周面のみに電解液との接触を保護する保護層を形成したため、前記保護層によって、特に、前記鉄系金属部材単体における外周側の腐食が確実に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る円筒状部材の接合構造の実施の形態を図面に基づいて詳述する。この実施形態では、円筒状部材の接合構造を車両用のプロペラシャフトに適用したものを示している。
【0015】
すなわち、プロペラシャフト1は、図6に示すように、四輪駆動車やフロントエンジン・リヤドライブの車両において、車体のほぼ中央部に車両前後方向に沿って配設されて、車両先端側の第1シャフト2と車両後端側の第2シャフト3とが、前記第2シャフトの前端部に設けられた等速ジョイント4を介して連結されている。
【0016】
また、前記プロペラシャフト1は、前記第1シャフト2の前端部が第1自在継手5を介して図外のトランスミッションの出力軸と連結されている一方、前記第2シャフト3の後端部が第2自在継手6を介して図外のリヤデファレンシャルの入力軸と連結されており、車体の上下及び左右方向へ揺動可能になっている。
【0017】
さらに、前記プロペラシャフト1は、前記第1シャフト2と等速ジョイント4との間に設けられたセンターベアリング7によって、支持部材8を介して車体のフロア下部に固定され、回転自在に支持されつつ、全体の撓みが防止されている。
【0018】
前記第1シャフト2は、前記第1自在継手5の第1ヨーク10と前記等速ジョイント4を介して第2シャフト3に連結するスタブシャフト11とが、前記第1チューブ12を介して連結されている。
【0019】
前記スタブシャフト11は、鉄系金属材料、例えば機械構造用炭素鋼であるS45Cからなる段差形状の円筒状に形成され、前記第1チューブ12の後端側に接合される基部11aと、この基部11aの後端に段差部を介して縮径して連続する主軸部11bと、この主軸部11bの後端に段差部を介してさらに縮径して連続する先端部11cと、を有している。
【0020】
また、前記スタブシャフト11は、図1及び図2に示すように、雨水などの電解液による該スタブシャフト11単体の腐食を防止するために、外周面に塗装やメッキなどの保護層13が施されている。
【0021】
さらに、前記スタブシャフト11は、前記第1チューブ12との接合力の低下を防止するために、該基部11aの開口端面が、後述する切削加工によって前記保護層13が削除された非保護部14となっている。
【0022】
また、前記第1ヨーク10は、前記スタブシャフト11と同様の鉄系金属材料からなり、外周面には前記保護層13が施されていると共に、前記第1チューブ12と接合する中空円筒状に形成された円筒部10aを有している。
【0023】
前記第1チューブ12は、アルミ系金属材料、例えば熱処理型合金である6000系のA6061や非熱処理型合金である5000系のA5154からなり、中間部が拡径した段差形状の中空円筒状に形成されている。なお、この第1チューブ12は、前記第1ヨーク10及びスタブシャフト11よりも、表面積が大きく設定されている。
【0024】
また、前記第1チューブ12は、前端部12aの径が第1ヨーク10の円筒部10aとほぼ同じ内径及び外径に設定されている一方、後端部12bの径がスタブシャフト11の基部11aとほぼ同じ内径及び外径に設定されている。
【0025】
そして、前記スタブシャフト11の基部11aと第1チューブ12の後端部12bとは、摩擦圧接によって一体に接合されている。
【0026】
この摩擦圧接接合は、後述するように、前記スタブシャフト11に対して第1チューブ12を回転させつつ加圧することによって行われ、前記第1チューブ12の後端部12bの開口周縁部には、図1〜図4に示すように、全周にわたってカール部15が形成されている。
【0027】
このカール部15は、前記スタブシャフト11の非保護部14に対する摩擦によって融点以下の摩擦熱が発生し、前記第1チューブ12の後端部12bにおいて、非保護部14の端面14aと当接する平坦面が形成される一方、圧接させるために軸方向に加圧されることによって、該後端部12bの肉が径方向に押し出されて、該第1チューブ12の外周面側へ折り返し状に折曲形成されている。そして、スタブシャフト11の基部11aと第1チューブ12の後端部12bとの接合部C1は、図5及び図8に示すように、基部11aにおける非保護部14の端面14aとカール部15の平坦面とが、突き合わせ状態に一体となっている。
【0028】
ここで、前記スタブシャフト11の基部11aと第1チューブ12の後端部12bとの接合方法について具体的に説明すると、図7(a)に示すように、まず、スタブシャフト11単体を塗装又はメッキの槽に浸すことによって、該スタブシャフト11全体に防食のための塗装又はメッキを施して、外面全体に前記保護層13を形成する。
【0029】
続いて、図7(b)及び(c)に示すように、摩擦圧接機において、前記スタブシャフト11を回転側チャック31にセットしてクランプする一方、前記第1チューブ12を固定側チャック32にセットしてクランプして、接合する各端面同士を軸方向から対峙状態に配置する。
【0030】
次に、図7(d)に示すように、固定側チャック32を、移動機構33を介して回転側チャック31側へ前進させて、スタブシャフト11の基部11aの開口端部と第1チューブ12の後端部12bとを突き合わせ状態に当接させる。
【0031】
その後、図7(e)に示すように、固定側チャック32のクランプを一時的に解放して、前記スタブシャフト11の基部11aと第1チューブ12の第1後端部12bとの接合面における軸心の位置決めを行い、図7(f)に示すように、再び第1チューブ12をクランプして、固定側チャック32を移動機構33によって後退させる。
【0032】
続いて、前記スタブシャフト11の基部11aの開口端部の端面を仕上げるために、図8(g)に示すように、回転側チャック31を回転させて、前記基部11aの開口端面にバイト34を当接させることによって、該基部11aの開口端面を切削加工する。
【0033】
なお、このスタブシャフト11の基部11aの端面仕上げ加工は、摩擦圧接機上で行わずに、前記塗装又はメッキ施工工程の後に、他の切削加工機によって行うことも可能である。
【0034】
また、前記スタブシャフト11の基部11aの開口端面を切削加工することによって、前記塗装又はメッキ施工工程において基部11aの開口端面に形成された保護層13を削り落とすことができる。
【0035】
そして、前記スタブシャフト11の基部11aの開口端面を切削加工する際に、該開口端面の所定の仕上げ寸法を満足できる程度にバイト34の送り速度を上げて、切削抵抗を大きくすることによって、図1、図2及び図4に示すように、基部11aの開口端部の外周縁に、拡径部であるバリ16を形成する。
【0036】
このバリ16は、図1及び図2に示すように、前記基部11aの開口端部から外周側へほぼ反り返り状に形成されており、該基部11aの開口端部の肉が外周側へ押しのけられた状態になっている。つまり、基部11aの開口端部は、該開口端面から外周側へフランジ状に徐々に拡径しており、したがって、バリ16が形成された該基部11aの開口端部の外径L1は、図2に示すように、バリ16が形成されていない基部11aの外径L2よりも大きくなるように設定されている。
【0037】
そして、この切削加工によって、前記基部11aの開口端面からバリ16の最大拡径部16aまで、前記端面14aと該端面14aの外周部14bとからなる接合面側全体に非保護部14が形成されるようになっている。
【0038】
さらに、前記バリ16は、前記第1チューブ12と反対側の背面側が、前記最大拡径部16aから徐々に縮径して、基部11aの外周面と連続する縦断面円弧凹状となる縮径部17が形成されている。
【0039】
ただし、前記基部11aの接合面側は、前記端面切削加工によって前記保護層13が削除されているが、該基部11aの切削加工面に対して背面側となる前記縮径部17の外面には保護層13が残存している。
【0040】
そして、前記スタブシャフト11の基部11aの端面仕上げ加工が完了した後、図8(h)に示すように、バイト34を後退させると共に、回転側チャック31の回転を停止させて、仕上げた開口端面の状態を確認後、再度回転側チャック31を回転させる。
【0041】
続いて、図8(i)に示すように、固定側チャック32を移動機構33によって前進させることにより、回転しているスタブシャフト11の非保護部14に対して第1チューブ12の後端部12bを当接させて、さらに軸方向に加圧すると共に、所定の時間その加圧状態を保持することによって、両者の端面の間に融点以下の摩擦熱を発生させる。
【0042】
その後、図8(j)に示すように、固定側チャック32を回転側チャック31側へ加圧状態に保持したまま、回転側チャック31の回転を停止させる。これにより、前記スタブシャフト11と第1チューブ12とが、摩擦圧接によって接合される。
【0043】
そして、前記回転側チャック31の回転を停止させた後、図8(k)に示すように、回転側チャック31のクランプを解放して、固定側チャック32を後退させ、図8(l)に示すように、該固定側チャック32のクランプを解放することによって、摩擦圧接により一体に接合されたスタブシャフト11と第1チューブ12の接合体を取り出す。
【0044】
なお、前記回転側チャック31側に移動機構33を設けて、該回転側チャック31を固定側チャック32に対して進退させることも可能であると共に、該回転側チャック31を固定側チャック32側へ加圧して、前記基部11aの開口端部を第1チューブ12の後端部12bに押し付けてもよい。
【0045】
一方、前記第2シャフト3は、図6に示すように、前端側に設けられた等速ジョイント4のアウターレース18と後端側に設けられた第2自在継手6の第2ヨーク19とが、第2チューブ20を介して連結されている。
【0046】
前記アウターレース18は、前記スタブシャフト11と同様の鉄系金属材料からなり、段差形状の中空円筒状に形成されていると共に、外周面には前記保護層13が施されており、前記第2チューブ20と接合される大径部18aと、該大径部18aの前端側に連続する小径部18bと、を有している。
【0047】
前記第2ヨーク19は、前記第ヨーク10と同様の鉄系金属材料からなり、外周面に前記保護部13が形成されており、前記第2チューブ20と接合される中空円筒状に形成された円筒部19aを有している。
【0048】
前記第2チューブ20は、前記第1チューブ12と同様のアルミ系金属材料からなる段差形状の中空円筒状に形成されており、前記アウターレース18の大径部18aと接合されて、該大径部18aの後端とほぼ同じ内径及び外径に設定された前端部20aと、前記第2ヨーク19の円筒部19aと接合されて、該円筒部19aとほぼ同じ内径及び外径に設定された後端部20bと、を有している。
【0049】
なお、前記第1ヨーク10の円筒部10aと第1チューブ12の前端部12aとの接合部C2、前記アウターレース18の大径部18aと第2チューブ20の前端部20aとの接合部C3及び第2ヨーク19の円筒部19aと第2チューブ20の後端部20bとの接合部C4は、いずれも前記スタブシャフト11と第1チューブ12との接合と同様に摩擦圧接によって接合されており、前記接合部C1とほぼ同様に形成されている。
【0050】
したがって、この実施形態によれば、前記スタブシャフト11と第1チューブ12との接合部C1おいて、前記スタブシャフト11の基部11aの開口端部にバリ16を形成したため、接合部C1の接合面から露出した非保護部14の外周部14bに雨水などの電解液が付着することによって、該外周部14bはカール部15との電位差により電食するものの、この電食によって酸化生成物が生成されると共に、この酸化生成物が外周部14bとカール部15との間に堆積する。
【0051】
これにより、露出面積の微小な非保護部14の外周部14bは腐食の進行が防止される一方、前記基部11aの外周面は保護層13によって防食されているために、該基部11a単体の外周面側の腐食も防止されることによって、前記スタブシャフトの基部11aの全体的な腐食を防止することが可能となる。
【0052】
また、前記バリ16を接合部C1に対して外側へほぼ反り返り状に拡径させた形状としたことによって、前記保護層13を基部11aの軸方向逆端側からバリ16の縮径部17までにとどめて、前記最大拡径部16aを境界に接合面側全体を非保護部14として形成したために、保護層13として施された塗装やメッキの成分が、基部11aの開口端面と第1チューブ12の後端部12bの端面とを摩擦圧接接合する際に、両者の接合面に混入することがなくなる。
【0053】
したがって、前記保護層13の成分が、基部11aの開口端面と第1チューブ12の後端部12bの端面との摩擦圧接接合において悪影響を及ぼすことがないために、両者のより強固な接合状態を得ることができ、充分な接合強度を確保することが可能となる。
【0054】
そして、自然電位の貴な鉄系金属材料からなるスタブシャフト11よりも自然電位の卑なアルミ系金属材料からなる第1チューブ12の表面積を大きく設定して、前記保護層13を、前記第1チューブ12には形成せず、該第1チューブ12よりも表面積の小さいスタブシャフト11の外面のみに形成したことによって、該保護層13を形成する面積を最小限にとどめることが可能となる。
【0055】
したがって、前記プロペラシャフト1全体の軽量化に貢献できると共に、コストの低廉化を図ることができる。
【0056】
また、摩擦圧接接合により前記第1チューブ12の後端部12bにカール部15が形成されることから、該カール部15と前記基部11aの開口端部に形成された非保護部14の外周部14bとが確実に当接して接合すると共に、両者の接触面積が拡大するため、前記接合部C1における外周部14bの露出を最小限に抑えることができ、さらなる電食防止効果が得られる。
【0057】
また、摩擦圧接接合により前記第1チューブ12の第1後端部12bに形成されたカール部15は外周面側に折り返し状に折曲形成されているため、該カール部15が基部11aの保護層13と干渉することがなく、該保護層13の剥離防止を図ることができる。
【0058】
さらに、アルミ系金属材料からなる第1チューブ12に比して電位の貴な鉄系金属材料からなるスタブシャフト11に対して、塗装やメッキといった防食効果を有する前記保護層13を施したことによって、スタブシャフト11単体の腐食が防止される。
【0059】
なお、本実施形態の作用効果は、前記接合部C1のみならず、前記各接合部C2,C3,C4についても同様の作用効果を奏することができる。
【0060】
図9は、前記第1、第2ヨーク10,19が第1、第2チューブ12,20と同様なアルミ系金属材料によって形成された他例を示している。
【0061】
すなわち、第1、第2ヨーク10,19及び第1、第2チューブ12,20はいずれも同材料のアルミ系金属材料となっていることから、各部材間の電位差が生じることはほとんどなく、単体での耐食性も高いために、第1、第2ヨーク10,19の外面には、第1、第2チューブ12,20と同様に、電食防止のための前記各保護層13,13は形成されていない。
【0062】
また、摩擦圧接接合によって、前記第1、第2ヨーク10,19の円筒部10a,19aの各接合端部にはカール部15,15が形成されるため、前記各バリ16,16も形成されていない。
【0063】
したがって、この実施形態によれば、前記第1ヨーク10と第1チューブ12及び第2ヨーク19と第2チューブ20は、いずれも各部材間に電位差が生じることがほとんどないため、前記各接合部C2,C4が電食することはほとんどなく、前記プロペラシャフト1の耐食性をさらに向上させることができる。
【0064】
また、前記各第1、第2ヨーク10,19に対して前記各保護部13,13や各バリ16,16を形成する必要がないために、作業性が向上して、製造コストの低廉化を図ることができる。
【0065】
さらに、前記第1、第2ヨーク10,19に対して前記各保護部13,13を形成する必要がないため、前記プロペラシャフト1全体のさらなる軽量化に貢献できると共に、製造コストのさらなる低廉化を図ることが可能となる。
【0066】
前記実施形態から把握される前記請求項に記載した発明以外の技術的思想について以下に説明する。
【0067】
請求項(1) アルミ系金属からなるチューブと鉄系材料からなるヨーク又はスタブシャフトとを摩擦圧接によって接合したプロペラシャフトであって、前記ヨーク又は前記スタブシャフトの外面に電解液の付着による腐食を防止するための保護部が形成され、前記チューブの外面には前記保護層が形成されていないことを特徴とするプロペラシャフト。
【0068】
この発明によれば、前記ヨークや前記スタブシャフトの外面の表面積は、前記チューブの外面の表面積よりも小さいため、前記ヨーク又は前記スタブシャフトのみに前記保護層を形成することによって、プロペラシャフトの軽量化に貢献できると共に、前記保護層を形成する面積を最小限にとどめることができ、コストの低廉化も図れる。
【0069】
請求項(2) 前記アルミ系金属部材の接合端の外周縁にはカール部を有していることを特徴とする請求項1に記載の円筒状部材の接合構造。
【0070】
この発明によれば、前記カール部と前記鉄系金属部材の接合端の外周縁に延在して拡径された非保護部とが確実に当接して接合するため、前記鉄系金属部材の非保護部の露出を最小限に抑えることができ、さらなる電食防止効果が得られる。
【0071】
請求項(3) 前記カール部は、前記アルミ系金属部材の接合端から外周面側に折り返し状に折曲形成されていることを特徴とする請求項(2)に記載のプロペラシャフト。
【0072】
この発明によれば、前記カール部は、前記アルミ系金属部材の接合端から外周面側に折り返し状に折曲形成されており、このカール部が前記鉄系金属部材の外周面に形成された前記保護層を剥離させることがないため、該保護層の剥離防止を図ることができる。
【0073】
請求項(4) 前記保護層は、塗装であることを特徴とする請求項1に記載の円筒状部材の接合構造。
【0074】
この発明によれば、前記鉄系金属部材の外周面に塗装を施すことにより、前記鉄系金属部材単体の腐食を防止することができる。
【0075】
請求項(5) 前記保護層は、メッキであることを特徴とする請求項1に記載の円筒状部材の接合構造。
【0076】
この発明によれば、前記鉄系金属部材の外周面にメッキを施すことにより、前記鉄系金属部材単体の腐食を防止することができる。
【0077】
請求項(6) 前記アルミ系金属からなる円筒状部材の外面の面積よりも前記鉄系金属からなる円筒状部材の外面の面積が小さいことを特徴とする請求項1に記載の円筒状部材の接合構造。
【0078】
この発明によれば、前記鉄系金属からなる円筒状部材の外面の表面積は、前記アルミ系金属からなる円筒状部材の外面の表面積よりも小さいために、前記鉄系金属からなる円筒状部材のみに前記保護層を形成することによって、該保護層を形成する面積を最小限にとどめることができ、コストの低廉化が図れる。
【0079】
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば前記第1、第2ヨーク10,19及びスタブシャフト11、第1、第2チューブ12,20及びアウターレース18の材質、形状及び大きさを、自動車の仕様や大きさなどによって自由に変更することができる。
【0080】
特に、鉄系金属材料に関しては、機械構造用炭素鋼又は合金の他に、鍛鋼材料、鋳鋼材料又は鋳鉄材料であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る実施の形態を示し、スタブシャフトと第1チューブとの接合状態を示す接合部C1の部分断面図であり、図5のC部の拡大図である。
【図2】図1のA部の拡大図である。
【図3】スタブシャフトと第1チューブとの実物における接合状態を示す接合部C1の接合断面写真であり、図1の図面代用写真である。
【図4】図3のB部の接合断面拡大写真であり、図2の図面代用写真である。
【図5】図6のD部の拡大断面図である。
【図6】本発明に係るプロペラシャフトの全体図である。
【図7】本発明に係るスタブシャフトと第1チューブとの摩擦圧接による接合工程の前半工程を示す断面図である。
【図8】本発明に係るスタブシャフトと第1チューブとの摩擦圧接による接合工程の後半工程を示す断面図である。
【図9】本発明に係る実施の形態の他例を示すプロペラシャフトの全体図である。
【符号の説明】
【0082】
1…プロペラシャフト
10…第1ヨーク(円筒状部材)
11…スタブシャフト(円筒状部材)
12…第1チューブ(円筒状部材)
13…保護部
14…非保護部
14a…端面(非保護部)
14b…外周部(非保護部)
15…カール部
16…バリ(拡径部)
16a…最大拡径部
17…縮径部
18…アウターレース(円筒状部材)
19…第2ヨーク(円筒状部材)
20…第2チューブ(円筒状部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成されたアルミ系金属部材と鉄系金属部材とを摩擦圧接によって接合してなる円筒状部材の接合構造であって、
前記鉄系金属部材の接合端に形成され、該接合端から外方へ拡径した非保護部と、
該非保護部の最大拡径端縁から前記鉄系金属部材の外周面にわたって形成されて、電解液との接触を保護する保護層と、
を有することを特徴とする円筒状部材の接合構造。
【請求項2】
円筒状に形成されたアルミ系金属部材と鉄系金属部材とを摩擦圧接によって接合してなる円筒状部材の接合方法であって、
前記鉄系金属部材の外面に保護層を形成する工程と、
前記鉄系金属部材の接合端側の端面を切削加工して、前記保護層を削り落とすと共に、外周側に拡径部を形成する工程と、
前記アルミ系金属部材と前記鉄系金属部材とを摩擦圧接して、該両部材を接合する工程と、
からなることを特徴とする円筒状部材の接合方法。
【請求項3】
円筒状に形成されたアルミ系金属部材と鉄系金属部材とを接合してなる円筒状部材の接合構造であって、
前記アルミ系金属部材と前記鉄系金属部材との接合部を除く前記鉄系金属部材の外周面のみに電解液との接触を保護する保護層を形成したことを特徴とする円筒状部材の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−90374(P2007−90374A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281159(P2005−281159)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】