円筒研削盤
【課題】円筒研削盤1の研削に伴い生じる工作物Wのビビリの低減。
【解決手段】研削加工中に、被加工部の測定点でのビビリの位相と工作物回転速度とビビリの周期を検出することにより、研削作用点での現在の砥石車7の研削作用面と工作物の相対変位の位相を演算する。
相対位置制御手段により前記工作物と前記砥石車の相対位置を、演算された相対変位の位相と逆位相に変位させることで、インプロセスで被加工部のビビリを低減する。
【解決手段】研削加工中に、被加工部の測定点でのビビリの位相と工作物回転速度とビビリの周期を検出することにより、研削作用点での現在の砥石車7の研削作用面と工作物の相対変位の位相を演算する。
相対位置制御手段により前記工作物と前記砥石車の相対位置を、演算された相対変位の位相と逆位相に変位させることで、インプロセスで被加工部のビビリを低減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒研削盤に関するものであり、詳しくは工作物の研削に伴い工作物の被加工部に生じる、円周方向に分布する理想形状に対する凹凸であるビビリの低減に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円筒研削盤においてはビビリと言われる加工精度不良が発生することがある。ビビリとは工作物の加工表面に生じる微小な凹凸で、工作物の1回転中に工作物と砥石研削作用面の相対位置が振動的に変動するときに生じる。砥石車の研削作用面の振れは、砥石車のアンバランスや砥石車回転軸の振動があると生じる。工作物の振動は、工作物の回転駆動部に振動を生じることや、工作物のセンター穴の真円度不良がある場合などに生じる。以上のような、砥石車の振れと工作物の振動が合成された砥石車の研削作用面と工作物の相対位置の変動によりビビリが発生する。
ビビリの特徴は、上記の発生原因から周期性を持つことであり、ほとんどの場合は砥石車の研削作用面の振れが主要因である。
【0003】
従来のビビリ防止技術としては、ビビリの原因である砥石車の振動を低減するために砥石のアンバランスを自動補正する従来技術1(例えば、特許文献1参照)や、工作物の加工面を基準として工具と工作物の相対変位を補正する従来技術2(例えば、非特許文献1参照)がある。
【0004】
砥石車にアンバランスがあり振れを発生している場合、その状態でツルーイングを行うとツルアに対してはほぼ振れの無い砥石車の研削作用面が得られる。そのためツルーイング装置を工作物と近い位置に配置することで、工作物に対する砥石車の研削作用面の振れを低減することが可能で、そのような機械構成が多い。しかし、砥石車に吸収されたクーラント液の偏在によるアンバランスのように、時間と共にアンバランス量が変動する場合は上記の構成だけでは対応ができない。この場合、特許文献1に示される従来技術1のような、砥石車のバランスを自動で補正するオートバランス装置が使用される。
【0005】
非特許文献1に記された旋盤加工における従来技術2の精度補正技術の概要を以下に説明する。
図12に示すように、回転する工作物Wの片側にバイト41を備え、反対側に工具保持台40と工作物Wの加工終了面の相対位置を計測する変位検出器42を備え、工具保持台40に対してバイト41を切込み方向に移動可能に保持した構造である。加工中に、変位検出器42により検出された工作物Wと工具保持台40の相対変位を打ち消すようにバイト41を切込み方向に移動させ、工作物Wと工具41の外乱による相対変位を低減することによりビビリなどの加工面の精度低下を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−125311号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「精密工学会誌 1993年59巻6号」、精密工学会、1993年、p.87〜p.91
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示す従来技術では砥石車の振れを低減してビビリを防止できるが、工作物の振動に起因するビビリは防止できない。また、オートバランス装置は振動検出装置、バランス駆動装置などを、砥石軸部に組込むため砥石軸部が大型となり、高価である。さらに、オートバランス中は研削を中断しなければならず稼働率が低下する。
非特許文献1に示す従来技術では砥石車保持部と工作物の相対変位による誤差は低減できるが、砥石車の振れに起因する誤差を検出することができない。結果として、砥石車の研削作用面の振れに起因するビビリをインプロセスで低減できない。
以上の他に、工作物の加工精度を加工完了後に計測して誤差を求め、誤差分の補正を加えて再加工して精度を向上することは一般的に実施されているが、この場合計測、再加工の余分な工程が必要となり、コストと加工時間が増加する。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、インプロセスでビビリを低減する円筒研削盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、円筒状の工作物を支持して回転駆動させる工作物支持手段と、
砥石車を支持し回転駆動させる砥石車支持手段と、
前記工作物支持手段と前記砥石車支持手段とを相対移動させ、前記砥石車で前記工作物を研削する駆動手段と、
前記工作物の研削に伴い前記工作物の被加工部に生じる円周方向に分布する理想形状に対する凹凸であるビビリの研削作用点での位相を検出する位相検出手段と、
前記工作物と前記砥石車の相対変位を、前記研削作用点での前記ビビリの位相から判定した前記工作物と前記砥石車の相対変位の位相と、逆位相に変位させる相対位置制御手段と、
を備えることである。
【0011】
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1に係る発明において、前記被加工部の前記ビビリの振幅を検出するビビリ振幅検出手段を備え、前記相対位置制御手段を前記ビビリの振幅に比例した作動量で作動させることである。
【0012】
請求項3に係る発明の特徴は、請求項2に係る発明において、前記被加工部の前記ビビリの振幅が所定の値より小さくなったときに研削を終了することである。
【0013】
請求項4に係る発明の特徴は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に係る発明において、前記位相検出手段を
被加工部の前記ビビリの周期を検出するビビリ周期検出手段と、
前記工作物の外周の所定の円周方向位置である測定点での前記ビビリの位相を検出する測定点位相検出手段と、
前記工作物の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記ビビリ周期検出手段により検出された前記ビビリの周期と前記測定点位相検出手段により検出されたビビリの位相と、前記回転速度検出手段にて検出された前記工作物の回転速度と、から前記工作物の前記研削作用点での前記ビビリの位相を算出するビビリ演算手段と、
で構成することである。
【0014】
請求項5に係る発明の特徴は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に係る発明において、前記位相検出手段を
前記砥石車の回転周期を検出する砥石車回転周期検出手段と、
前記工作物の外周の所定の円周方向位置である測定点での前記ビビリの位相を検出する前記測定点位相検出手段と、
前記工作物の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記砥石車回転周期検出手段により検出された前記砥石車の回転周期と、前記測定点位相検出手段により検出されたビビリの位相と、前記回転速度検出手段にて検出された前記工作物の回転速度と、から前記工作物の前記研削作用点での前記ビビリの位相を算出するビビリ演算手段と、
で構成することである。
【0015】
請求項6に係る発明の特徴は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に係る発明において、前記位相検出手段を
前記砥石車支持手段の振動周期を検出する砥石振動周期検出手段と、
前記工作物の外周の所定の円周方向位置である測定点での前記ビビリの位相を検出する測定点位相検出手段と、
前記工作物の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記砥石振動周期検出手段により検出された前記砥石車支持手段の振動周期と、前記測定点位相検出手段により検出されたビビリの位相と、前記回転速度検出手段にて検出された前記工作物の回転速度と、から前記工作物の前記研削作用点での前記ビビリの位相を算出するビビリ演算手段と、
で構成することである。
【0016】
請求項7に係る発明の特徴は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に係る発明において、前記位相検出手段を前記砥石車支持手段の前記砥石車の前記工作物切込み方向の振動位相を検出する砥石振動位相検出手段で構成することである。
【0017】
請求項8に係る発明の特徴は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に係る発明において、前記相対位置制御手段を前記工作物を変位させる工作物変位手段で構成することである。
【0018】
請求項9に係る発明の特徴は、請求項8に係る発明において、前記工作物変位手段を前記工作物の研削作用点と180度位相がずれた位置で前記工作物の被加工部に接触して押圧する工作物押付け装置で構成し、
前記工作物押付け装置を、前記研削作用点での前記ビビリの位相から判定した前記工作物と前記砥石車の相対変位の位相と逆位相に変位させるような変位量から、前記工作物押付け装置が接触する前記工作物の被加工部における前記ビビリの凹凸高さを差し引いた値で制御することである。
【0019】
請求項10に係る発明の特徴は、請求項9に係る発明において、前記相対位置制御手段の駆動に圧電素子を用いることである。
【0020】
請求項11に係る発明の特徴は、請求項4に係る発明において、前記ビビリ周期検出手段を前記被加工部の凹凸を検知する凹凸検知手段により前記凹凸の周期を検出することで構成することである。
【0021】
請求項12に係る発明の特徴は、請求項2〜請求項6のいずれか1項に係る発明において、前記ビビリ振幅検出手段を前記被加工部の凹凸を検知する凹凸検知手段により前記凹凸の振幅を検出することで構成することである。
【0022】
請求項13に係る発明の特徴は、請求項4〜請求項6のいずれか1項に係る発明において、前記測定点位相検出手段を前記被加工部の凹凸を検知する凹凸検知手段により前記凹凸の位相を検出することで構成することである。
【0023】
請求項14に係る発明の特徴は、請求項11〜請求項13のいずれか1項に係る発明において、前記凹凸検出手段と被加工部の下部が接触するように配置することである。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に係る発明によれば、研削中の研削作用点で砥石車の研削作用面と工作物の相対変位により発生するビビリの位相を位相検出手段により検出し、相対位置制御手段でビビリの相対変位と逆の位相で砥石車と工作物とを相対運動をさせることで、ビビリの振幅を低減できる。以上の作用をインプロセスで実施できるため、ビビリ低減のための余分な工程が不要であり、加工時間の増大が防止できる。
【0025】
請求項2に係る発明によれば、相対位置制御手段を現在発生中のビビリの振幅を打ち消す最適な振幅で作動させることができ、ビビリ低減効果を大きくできる。
【0026】
請求項3に係る発明によれば、被加工部のビビリの振幅が所定の値より小さくなったときに研削を終了することができ、所望の表面精度の工作物を最短時間で加工できる。
【0027】
請求項4に係る発明によれば、被加工部の実際のビビリに基づき相対位置制御手段を作動させるので、いかなる原因のビビリに対してもてビビリを低減できる。
【0028】
請求項5に係る発明によれば、位相検出手段の構成に必要なビビリ周期として、簡便な砥石車回転周期検出手段により検出できる砥石車の回転周期を代用するので、位相検出手段を低コストに構成できる。
【0029】
請求項6に係る発明によれば、位相検出手段の構成に必要なビビリ周期として、簡便な砥石台振動周期検出手段により検出できる砥石台の振動周期を代用するので、位相検出手段を低コストに構成できる。
【0030】
請求項7に係る発明によれば、位相検出手段として、簡便な砥石台振動位相検出手段を代用するので、位相検出手段を低コストに構成できる。
【0031】
請求項8に係る発明によれば、砥石車に対して質量の小さい工作物を変位させることにより相対位置制御手段を構成するができ、応答性の高いビビリ低減制御ができる。このため、砥石車が高速回転する高能率研削加工においてもビビリ低減が可能である。
【0032】
請求項9に係る発明によれば、被加工部に相対位置制御手段を接触させて工作物を変位させるので、工作物に相対位置制御手段の接触部位を特別に設けることなく本発明を実施できる。また、砥石車法線方向の研削抵抗を支えて工作物のたわみを防止する振れ止め機能を合わせて持つことができる。
【0033】
請求項10に係る発明によれば、相対位置制御手段の駆動に圧電素子を用いるので、高応答で高負荷の制御ができる相対位置制御手段をコンパクトに構成できる。
【0034】
請求項11に係る発明によれば、被加工部の凹凸を検知する凹凸検知手段によりビビリ周期を検出するので正確なビビリ周期の検出ができ、高精度なビビリ低減制御が可能である。
【0035】
請求項12に係る発明によれば、凹凸検知手段により被加工部の凹凸の振幅を検出することでビビリ振幅を正確に検出するので、最適な振幅の相対位置制御手段の作動が可能で、効果的にビビリ低減ができる。
【0036】
請求項13に係る発明によれば、凹凸検知手段により被加工部のビビリ位相を正確に検出するので、位相誤差の小さい逆位相の相対位置制御手段の作動が可能で、効果的にビビリを低減ができる。
【0037】
請求項14に係る発明によれば、前記凹凸検出手段と被加工部の下部が接触するように配置するので、工作物の自重と研削抵抗による工作物の下方向へのたわみを防止する振れ止め機能を合わせて持つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1の実施形態の円筒研削盤の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1の上面図である。
【図3】第1の実施形態の凹凸検出装置と工作物押付け装置を示す概略図である。
【図4】第1の実施形態の要素配置を示す概略図である。
【図5】第1の実施形態の研削作用点ビビリ検出手段と工作物押付け装置の関係を示すブロック図である。
【図6】第1の実施形態のビビリ位相検出原理を示す概念図である。
【図7】第1の実施形態のデータの関係を示す表である。
【図8】第1の実施形態のビビリ低減作動を示すフローチャート図である。
【図9】第2の実施形態の研削作用点ビビリ検出手段と工作物押付け装置の関係を示すブロック図である。
【図10】第3実施形態の研削作用点ビビリ検出手段と工作物押付け装置の関係を示すブロック図である。
【図11】第4実施形態の研削作用点ビビリ検出手段と工作物押付け装置の関係を示すブロック図である。
【図12】従来技術2の原理を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を円筒工作物を研削する円筒研削盤の実施事例に基づき、図1〜図6を参照しつつ説明する。
図2に示すように、研削盤1は、ベッド2とベッド2上にX軸方向に往復可能な砥石台3と、テーブル4を備えている。砥石台3は砥石軸8を回転自在に支持し、砥石軸8を回転させる砥石軸回転モータ(図示省略する)を備えており、砥石車7は砥石軸8に着脱自在に装着されて回転駆動される。テーブル4上には、工作物Wの一端を把持して回転自在に支持し主軸モータ(図示省略する)により回転駆動される主軸5と、工作物Wの他端を回転自在に支持する心押台6を備えており、工作物Wは主軸5と心押台6により支持されて、研削加工時に回転駆動される。
図1に示すように、テーブル4上には架台9が設置され、架台9により工作物Wの被加工部の下部に接触して被加工部の凹凸を検出する凹凸検出装置10と、被加工部外周の研削作用点と対向した位置で被加工部に接触して、工作物Wに変位を与え砥石車7と工作物Wの相対位置を制御する工作物押付け装置11が保持される。
【0040】
研削盤1は、所定のプログラムを実行することで自動化された研削加工を実行する制御装置30を備えている。制御装置30の機能的構成として、砥石台3の送りを制御するX軸制御手段31、主軸5の回転を制御する主軸制御手段32、研削作用点のビビリを検出する研削作用点ビビリ検出手段33、工作物押付装置11を制御する工作物押付け制御手段34などを具備している。また、主軸制御手段32の内部には主軸5の回転速度を検出する主軸回転速度検出手段321を備えている。
【0041】
図3に示すように、凹凸検出装置10は、架台9に底部を固定された圧電素子101と、圧電素子101の上部に接合され架台9に対して摺動自在に上下できるプランジャー102と、プランジャー102の先端に装着され工作物Wに接触する接触子103で構成される。圧電素子101は工作物の回転に伴うビビリの凹凸による接触力の変動に応じた電圧を発生し、電圧検出器12を介して制御装置30へ検出信号を送る。
工作物押付装置11は、架台9に一端を固定された圧電素子111と、圧電素子111の他端に接合され架台9に対して摺動自在に前後できるプランジャー112と、プランジャー112の先端に装着され工作物Wに接触する接触子113で構成される。圧電素子111は圧電素子ドライバ13を介して制御装置30により駆動される。
【0042】
上述のような円筒研削盤によりビビリが低減される作用を図4、5、6に基づき以下に説明する。
図4に示すように、凹凸検出装置10の接触子103は、研削作用点からの工作物回転方向への角度がα度の凹凸検出位置で、工作物Wの被加工部の下部に常に接触するように配置される。工作物押付け装置11の接触子113は、工作物回転方向で凹凸検出位置までの角度がβ度の工作物Wの研削作用点と対向する工作物押込み位置で、被加工部に常に接触するように配置される。
凹凸検出装置10は工作物回転によるビビリの凹凸変動に伴う荷重変動を圧電素子101で検出し、電圧として電圧検出器12に出力する。このとき、荷重変動はビビリの振幅に比例し凸部の頂点で最大となり凹部で最低となり、電圧出力も同様に変動する。
【0043】
ビビリを低減するには、現在の研削作用点でのビビリの位相と周期と振幅を検出する必要がある。
図5に示すように、本実施例では凹凸検出装置10による凹凸検出位置で検出した凹凸の周期と振幅を研削作用点でのビビリの周期と振幅とする。ビビリの周期Tは凹凸検出装置10が検出する電圧変動の1周期の時間(秒)として検出する。ビビリの振幅は電圧出力変動幅に比例するので、あらかじめ定められた換算比率より、電圧変動幅を振幅に換算することで検出する。
位相については凹凸検出位置での位相と周期と工作物の回転速度から以下の方式で演算する。工作物Wと砥石車7の研削作用面の相対変位により研削点で生じた工作物Wのビビリは、工作物Wの回転により工作物押込み位置を通過しさらに凹凸検出位置に到達する。 図6は、被加工部の円周面に生じたビビリの凸部を正、凹部を負として直線上に展開し、研削作用点、工作物押込み位置、凹凸検出位置の相対関係を表した図である。
図6において、研削作用点と凹凸検出位置の角度差αをビビリの周期を単位とする位相差Φ1で表し、工作物押込み位置と凹凸検出位置の角度差βをビビリの周期を単位とする位相差Φ2で表す。ビビリの周期をT(秒)、工作物の1秒当りの回転速度をN回転とすると、角度αの位相差Φ1はΦ1=2π・α/(360・N・T)と表され、角度βの位相差Φ2はΦ2=2π・β/(360・N・T)と表される。凹凸検出位置でのビビリの位相をω、振幅をaとすると、研削作用点でのビビリの位相はω−Φ1となり、工作物押込み位置でのビビリの位相はω−Φ2となる。研削作用点でのビビリの振幅変動はa・sin(ω−Φ1)で表され、工作物押込み位置ではa・sin(ω−Φ2)で表される。
【0044】
工作物押付け装置11の接触子113の工作物を砥石車7に近づける方向の作動を正とすると、ビビリを打ち消すために工作物に与える変位は、研削作用点での砥石車の研削作用面と工作物の相対変位と逆位相なので、ビビリと同位相であるa・sin(ω−Φ1)となる。しかし研削においては、砥石研削点と工作物加工点間の研削盤各部に弾性変形が生じるため工作物の押込み作動分がそのまま実研削除去深さ変動とはならず、弾性変形分だけ少ない除去深さ変動となる、その補正をするため補正係数K1を用いる。接触子113の補正作動量dはd=K1・a・sin(ω−Φ1)となる。
本実施例では研削作用点からの角度がα−βの位置で被加工部を押して工作物Wに変位を与える。この場合、被加工部が真円であれば前記の補正作動量dを工作物押付装置11の接触子113の変位として与えればよい。しかし、ビビリにより被加工部には凹凸が発生しているので、工作物押付装置11の接触子113を静止させている場合でも、工作物Wに凹凸の振幅に相当する変位が発生する。このため、工作物押込み位置のビビリの位相と逆位相の変位K1・a・sin(ω−Φ2+π)を工作物押付装置11の接触子113の作動量に加算して、被加工部のビビリの凹凸による押込み量の増減をキャンセルする必要がある。この加算は被加工部のビビリが大きいビビリ補正を開始してからα−βの角度工作物が回転するまで実施する。
【0045】
以上より、最初に検出・演算されたΦ1、Φ2、a、ωをΦ11、Φ21、a1、ω1、とすると、1回目の補正データ式d1は補正を開始してからα−βの角度工作物が回転するまでは、d1=K1・a1・(sin(ω1−Φ11)+sin(ω1−Φ21+π))である。α−βの角度工作物が回転し、ビビリの低減された被加工面が工作物押込み位置に到達した後の補正データ式d1は、d1=K1・a1・sin(ω1−Φ11)である。以上のデータ式d1により工作物の回転位置と対応したデータを作成し、このデータに基づき工作物押付け装置11を作動させる。
【0046】
ビビリの低減が十分でなく2回目の補正を加える場合の補正データd2は以下のように作成する。
被加工面のビビリは初回より小さくなっているので、被加工面のビビリの影響による押込み量の増減は無視して1回目の補正データd0=K1・a1・sin(ω1−Φ11)を工作物1回転分計算する。次に1回目の補正後に検出・演算したΦ1、a、ωをΦ12、a2、ω2、としds=K1・a2・sin(ω2−Φ12)を工作物1回転分計算する。d0、dsを工作物の回転位置と対応したデータとして保存し、工作物の回転位置毎にd0とdsを加算したデータをd2とする。工作物回転位置θとω1、ω2、d1、dsの関係を図7に示す。
【0047】
本発明のビビリ低減動作を作動させるのは、研削サイクルにおける工作物回転当りの砥石車の切込み量が小さいときが効果的で、特に砥石車の切込みが停止しているスパークアウト研削時に作動させると効果が著しい。図8のフローチャートに基づきスパークアウトサイクルにおけるビビリ低減動作を説明する。
初めに主軸回転速度を検出することにより、主軸5に保持され回転している工作物Wの回転速度を検出する(STP1)。
次に、凹凸検出装置10により工作物Wのビビリの周期T1と振幅a1を検出する(STP2)。周期T1はビビリの凹凸による電圧増減の1周期の時間とし、振幅a1は電圧変動幅と係数K2の積として算出する。係数K2は工作物回転速度や工作物の質量によりあらかじめ決定された値をデータとして入力しておく。
位相差Φ1とΦ2を、Φ11=2π・α/(360・N・T1)、Φ21=2π・β/(360・N・T1)として演算する(STP3)。
工作物押付け装置11の駆動データd1を作成する、ω1がΦ1−Φ2の間はd1=K1・a1・(sin(ω1−Φ11)+sin(ω1−Φ21+π))とし、ω1がΦ1−Φ2以降についてはd1=K1・a1・sin(ω1−Φ11)とする。ビビリの位相ω1を工作物回転角度θに換算し、d1と工作物回転角度θを対応させた駆動データ表に保存する(STP4)。ここで、スタート位置はω1=0、θ=0とする。
【0048】
凹凸検出装置10により位相ω1=0を検出する(STP5)。
ω1=n・2・π(nは整数)の工作物回転位置をスタート位置として駆動データ表の工作物回転に基づいた変位d1によって工作物押付け装置11を駆動しながら、工作物を1回転させる(STP6)。
ビビリ補正開始後に工作物がα以上回転した後の、ビビリ振幅a2を検出する(STP7)。
ビビリ振幅a2が目標値以下かを判定する(STP8)。
ビビリ振幅a2が目標値より大きければ、ビビリ周期T2とビビリ振幅a2とθ=0におけるω2の位相ω20を検出する(STP9)。
位相差Φ1をΦ12=2π・α/(360・N・T2)として演算する(STP10)。
d1=K1・a1・sin(ω1−Φ11)、ds=K1・a2・sin(ω2−Φ12)とする。ビビリの位相ω1、ω2を工作物回転角度θに換算し、同一の工作物回転角度θに対応したd1とdsの値を加算し補正データd2とし、駆動データ表に保存する(STP11)。
研削点の工作物回転角度θが0の位置で2回目の補正データd2に基づいた工作物押付け装置11の駆動をスタートし、工作物を1回転させる(STP6)。
以下(STP7)、(STP8)を実行し、ビビリ振幅が目標値以下となったら砥石台3を後退させて研削を終了する(STP12)。
【0049】
<第2の実施形態>
第1の実施形態ではビビリ周期を被加工部のビビリの凹凸の1周期を検出することで検出したが、ビビリ発生の大部分の原因は砥石車7の研削作用面の回転に伴う変位の変動なので、砥石回転周期をビビリ周期としてビビリの位相を算出してもよい。
図9に示すように、本実施例では凹凸検出装置10による凹凸検出位置で検出した凹凸の振幅を研削作用点でのビビリの振幅とする。ビビリの周期Tとして砥石車回転速度検出手段35にて砥石車7が1回転する時間(秒)を検出する。なお、砥石車回転速度検出手段35としては、砥石軸に回転速度センサを取り付けることにより実現することができるし、実測値によらず砥石軸回転モータへの指令値を用いることも可能である。
研削作用点での位相は、凹凸検出位置でのビビリの位相と砥石車7の回転周期と工作物の回転速度を用いて、第1の実施形態と同様に演算する。
ビビリ低減動作についても第1の実施形態と同様に実施する。
【0050】
<第3の実施形態>
砥石車7の研削作用面の回転に伴う半径位置が変動する場合は砥石台3を振動させるので、その振動周期をビビリ周期としてビビリの位相を算出してもよい。
図10に示すように、本実施例では凹凸検出装置10による凹凸検出位置で検出した凹凸の振幅を研削作用点でのビビリの振幅とする。ビビリの周期Tとして砥石台振動周期検出手段36にて砥石台3の砥石車7の切込み方向の振動の周期(秒)を検出する。なお、砥石台振動周期検出手段36としては、砥石台3に振動センサを取り付けることにより実現することができる。
研削作用点での位相は、凹凸検出位置でのビビリの位相と砥石台3の振動周期と工作物の回転速度を用いて、第1の実施形態と同様に演算する。
ビビリ低減動作についても第1の実施形態と同様に実施する。
【0051】
<第4の実施形態>
図11に示すように、本実施例では凹凸検出装置10による凹凸検出位置で検出した凹凸の振幅を研削作用点でのビビリの振幅とする。ビビリの周期Tとして砥石台振動周期検出手段36にて砥石台3の砥石車7の切込み方向の振動の周期(秒)を検出する。ビビリの研削作用点での位相は、砥石台振動位相検出手段37にて砥石台3の砥石車7の切込み方向の振動の砥石台後退方向を正とした位相で検出する。なお、砥石台振動位相検出手段37としては、砥石台3に振動センサを取り付けることにより実現することができ、砥石台振動周期検出手段36の振動センサと兼ねることも可能である。
ビビリ低減動作についても第1の実施形態と同様に実施する。
【0052】
<第1〜第4の実施形態の変形態様>
第1〜第4の実施形態では工作物Wの被加工部を押すことで工作物を変位させたが、工作物を保持する主軸台と心押し台に変位手段を備えても良い、この場合の補正変位dはd=K1・a・sin(ω−Φ1)とする。
第1〜第4の実施形態ではビビリの振幅aを圧電素子101の電圧変動で検出したが、変位計で被加工部の半径変動を検出してビビリ振幅aとしてもよい。
第1〜第4の実施形態では工作物Wと砥石車7の相対位置の制御に工作物Wを変位させたが、砥石車を変位させてもよい。砥石車を変位させるには、例えば、砥石車の静圧軸受けの砥石切込み方向の静圧ポケット部の圧力を変動させることで可能である。
【符号の説明】
【0053】
1:円筒研削盤 3:砥石台 W:工作物 5:主軸 6:心押台 7:砥石車 8:砥石軸 10:凹凸検出装置 11:工作物押付け装置 111:圧電素子 33:研削作用点ビビリ検出手段 35:砥石車回転速度検出手段 36:砥石台振動周期検出手段 37:砥石台振動位相検出手段 321:主軸速度検出手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒研削盤に関するものであり、詳しくは工作物の研削に伴い工作物の被加工部に生じる、円周方向に分布する理想形状に対する凹凸であるビビリの低減に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円筒研削盤においてはビビリと言われる加工精度不良が発生することがある。ビビリとは工作物の加工表面に生じる微小な凹凸で、工作物の1回転中に工作物と砥石研削作用面の相対位置が振動的に変動するときに生じる。砥石車の研削作用面の振れは、砥石車のアンバランスや砥石車回転軸の振動があると生じる。工作物の振動は、工作物の回転駆動部に振動を生じることや、工作物のセンター穴の真円度不良がある場合などに生じる。以上のような、砥石車の振れと工作物の振動が合成された砥石車の研削作用面と工作物の相対位置の変動によりビビリが発生する。
ビビリの特徴は、上記の発生原因から周期性を持つことであり、ほとんどの場合は砥石車の研削作用面の振れが主要因である。
【0003】
従来のビビリ防止技術としては、ビビリの原因である砥石車の振動を低減するために砥石のアンバランスを自動補正する従来技術1(例えば、特許文献1参照)や、工作物の加工面を基準として工具と工作物の相対変位を補正する従来技術2(例えば、非特許文献1参照)がある。
【0004】
砥石車にアンバランスがあり振れを発生している場合、その状態でツルーイングを行うとツルアに対してはほぼ振れの無い砥石車の研削作用面が得られる。そのためツルーイング装置を工作物と近い位置に配置することで、工作物に対する砥石車の研削作用面の振れを低減することが可能で、そのような機械構成が多い。しかし、砥石車に吸収されたクーラント液の偏在によるアンバランスのように、時間と共にアンバランス量が変動する場合は上記の構成だけでは対応ができない。この場合、特許文献1に示される従来技術1のような、砥石車のバランスを自動で補正するオートバランス装置が使用される。
【0005】
非特許文献1に記された旋盤加工における従来技術2の精度補正技術の概要を以下に説明する。
図12に示すように、回転する工作物Wの片側にバイト41を備え、反対側に工具保持台40と工作物Wの加工終了面の相対位置を計測する変位検出器42を備え、工具保持台40に対してバイト41を切込み方向に移動可能に保持した構造である。加工中に、変位検出器42により検出された工作物Wと工具保持台40の相対変位を打ち消すようにバイト41を切込み方向に移動させ、工作物Wと工具41の外乱による相対変位を低減することによりビビリなどの加工面の精度低下を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−125311号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「精密工学会誌 1993年59巻6号」、精密工学会、1993年、p.87〜p.91
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示す従来技術では砥石車の振れを低減してビビリを防止できるが、工作物の振動に起因するビビリは防止できない。また、オートバランス装置は振動検出装置、バランス駆動装置などを、砥石軸部に組込むため砥石軸部が大型となり、高価である。さらに、オートバランス中は研削を中断しなければならず稼働率が低下する。
非特許文献1に示す従来技術では砥石車保持部と工作物の相対変位による誤差は低減できるが、砥石車の振れに起因する誤差を検出することができない。結果として、砥石車の研削作用面の振れに起因するビビリをインプロセスで低減できない。
以上の他に、工作物の加工精度を加工完了後に計測して誤差を求め、誤差分の補正を加えて再加工して精度を向上することは一般的に実施されているが、この場合計測、再加工の余分な工程が必要となり、コストと加工時間が増加する。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、インプロセスでビビリを低減する円筒研削盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、円筒状の工作物を支持して回転駆動させる工作物支持手段と、
砥石車を支持し回転駆動させる砥石車支持手段と、
前記工作物支持手段と前記砥石車支持手段とを相対移動させ、前記砥石車で前記工作物を研削する駆動手段と、
前記工作物の研削に伴い前記工作物の被加工部に生じる円周方向に分布する理想形状に対する凹凸であるビビリの研削作用点での位相を検出する位相検出手段と、
前記工作物と前記砥石車の相対変位を、前記研削作用点での前記ビビリの位相から判定した前記工作物と前記砥石車の相対変位の位相と、逆位相に変位させる相対位置制御手段と、
を備えることである。
【0011】
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1に係る発明において、前記被加工部の前記ビビリの振幅を検出するビビリ振幅検出手段を備え、前記相対位置制御手段を前記ビビリの振幅に比例した作動量で作動させることである。
【0012】
請求項3に係る発明の特徴は、請求項2に係る発明において、前記被加工部の前記ビビリの振幅が所定の値より小さくなったときに研削を終了することである。
【0013】
請求項4に係る発明の特徴は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に係る発明において、前記位相検出手段を
被加工部の前記ビビリの周期を検出するビビリ周期検出手段と、
前記工作物の外周の所定の円周方向位置である測定点での前記ビビリの位相を検出する測定点位相検出手段と、
前記工作物の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記ビビリ周期検出手段により検出された前記ビビリの周期と前記測定点位相検出手段により検出されたビビリの位相と、前記回転速度検出手段にて検出された前記工作物の回転速度と、から前記工作物の前記研削作用点での前記ビビリの位相を算出するビビリ演算手段と、
で構成することである。
【0014】
請求項5に係る発明の特徴は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に係る発明において、前記位相検出手段を
前記砥石車の回転周期を検出する砥石車回転周期検出手段と、
前記工作物の外周の所定の円周方向位置である測定点での前記ビビリの位相を検出する前記測定点位相検出手段と、
前記工作物の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記砥石車回転周期検出手段により検出された前記砥石車の回転周期と、前記測定点位相検出手段により検出されたビビリの位相と、前記回転速度検出手段にて検出された前記工作物の回転速度と、から前記工作物の前記研削作用点での前記ビビリの位相を算出するビビリ演算手段と、
で構成することである。
【0015】
請求項6に係る発明の特徴は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に係る発明において、前記位相検出手段を
前記砥石車支持手段の振動周期を検出する砥石振動周期検出手段と、
前記工作物の外周の所定の円周方向位置である測定点での前記ビビリの位相を検出する測定点位相検出手段と、
前記工作物の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記砥石振動周期検出手段により検出された前記砥石車支持手段の振動周期と、前記測定点位相検出手段により検出されたビビリの位相と、前記回転速度検出手段にて検出された前記工作物の回転速度と、から前記工作物の前記研削作用点での前記ビビリの位相を算出するビビリ演算手段と、
で構成することである。
【0016】
請求項7に係る発明の特徴は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に係る発明において、前記位相検出手段を前記砥石車支持手段の前記砥石車の前記工作物切込み方向の振動位相を検出する砥石振動位相検出手段で構成することである。
【0017】
請求項8に係る発明の特徴は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に係る発明において、前記相対位置制御手段を前記工作物を変位させる工作物変位手段で構成することである。
【0018】
請求項9に係る発明の特徴は、請求項8に係る発明において、前記工作物変位手段を前記工作物の研削作用点と180度位相がずれた位置で前記工作物の被加工部に接触して押圧する工作物押付け装置で構成し、
前記工作物押付け装置を、前記研削作用点での前記ビビリの位相から判定した前記工作物と前記砥石車の相対変位の位相と逆位相に変位させるような変位量から、前記工作物押付け装置が接触する前記工作物の被加工部における前記ビビリの凹凸高さを差し引いた値で制御することである。
【0019】
請求項10に係る発明の特徴は、請求項9に係る発明において、前記相対位置制御手段の駆動に圧電素子を用いることである。
【0020】
請求項11に係る発明の特徴は、請求項4に係る発明において、前記ビビリ周期検出手段を前記被加工部の凹凸を検知する凹凸検知手段により前記凹凸の周期を検出することで構成することである。
【0021】
請求項12に係る発明の特徴は、請求項2〜請求項6のいずれか1項に係る発明において、前記ビビリ振幅検出手段を前記被加工部の凹凸を検知する凹凸検知手段により前記凹凸の振幅を検出することで構成することである。
【0022】
請求項13に係る発明の特徴は、請求項4〜請求項6のいずれか1項に係る発明において、前記測定点位相検出手段を前記被加工部の凹凸を検知する凹凸検知手段により前記凹凸の位相を検出することで構成することである。
【0023】
請求項14に係る発明の特徴は、請求項11〜請求項13のいずれか1項に係る発明において、前記凹凸検出手段と被加工部の下部が接触するように配置することである。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に係る発明によれば、研削中の研削作用点で砥石車の研削作用面と工作物の相対変位により発生するビビリの位相を位相検出手段により検出し、相対位置制御手段でビビリの相対変位と逆の位相で砥石車と工作物とを相対運動をさせることで、ビビリの振幅を低減できる。以上の作用をインプロセスで実施できるため、ビビリ低減のための余分な工程が不要であり、加工時間の増大が防止できる。
【0025】
請求項2に係る発明によれば、相対位置制御手段を現在発生中のビビリの振幅を打ち消す最適な振幅で作動させることができ、ビビリ低減効果を大きくできる。
【0026】
請求項3に係る発明によれば、被加工部のビビリの振幅が所定の値より小さくなったときに研削を終了することができ、所望の表面精度の工作物を最短時間で加工できる。
【0027】
請求項4に係る発明によれば、被加工部の実際のビビリに基づき相対位置制御手段を作動させるので、いかなる原因のビビリに対してもてビビリを低減できる。
【0028】
請求項5に係る発明によれば、位相検出手段の構成に必要なビビリ周期として、簡便な砥石車回転周期検出手段により検出できる砥石車の回転周期を代用するので、位相検出手段を低コストに構成できる。
【0029】
請求項6に係る発明によれば、位相検出手段の構成に必要なビビリ周期として、簡便な砥石台振動周期検出手段により検出できる砥石台の振動周期を代用するので、位相検出手段を低コストに構成できる。
【0030】
請求項7に係る発明によれば、位相検出手段として、簡便な砥石台振動位相検出手段を代用するので、位相検出手段を低コストに構成できる。
【0031】
請求項8に係る発明によれば、砥石車に対して質量の小さい工作物を変位させることにより相対位置制御手段を構成するができ、応答性の高いビビリ低減制御ができる。このため、砥石車が高速回転する高能率研削加工においてもビビリ低減が可能である。
【0032】
請求項9に係る発明によれば、被加工部に相対位置制御手段を接触させて工作物を変位させるので、工作物に相対位置制御手段の接触部位を特別に設けることなく本発明を実施できる。また、砥石車法線方向の研削抵抗を支えて工作物のたわみを防止する振れ止め機能を合わせて持つことができる。
【0033】
請求項10に係る発明によれば、相対位置制御手段の駆動に圧電素子を用いるので、高応答で高負荷の制御ができる相対位置制御手段をコンパクトに構成できる。
【0034】
請求項11に係る発明によれば、被加工部の凹凸を検知する凹凸検知手段によりビビリ周期を検出するので正確なビビリ周期の検出ができ、高精度なビビリ低減制御が可能である。
【0035】
請求項12に係る発明によれば、凹凸検知手段により被加工部の凹凸の振幅を検出することでビビリ振幅を正確に検出するので、最適な振幅の相対位置制御手段の作動が可能で、効果的にビビリ低減ができる。
【0036】
請求項13に係る発明によれば、凹凸検知手段により被加工部のビビリ位相を正確に検出するので、位相誤差の小さい逆位相の相対位置制御手段の作動が可能で、効果的にビビリを低減ができる。
【0037】
請求項14に係る発明によれば、前記凹凸検出手段と被加工部の下部が接触するように配置するので、工作物の自重と研削抵抗による工作物の下方向へのたわみを防止する振れ止め機能を合わせて持つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1の実施形態の円筒研削盤の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1の上面図である。
【図3】第1の実施形態の凹凸検出装置と工作物押付け装置を示す概略図である。
【図4】第1の実施形態の要素配置を示す概略図である。
【図5】第1の実施形態の研削作用点ビビリ検出手段と工作物押付け装置の関係を示すブロック図である。
【図6】第1の実施形態のビビリ位相検出原理を示す概念図である。
【図7】第1の実施形態のデータの関係を示す表である。
【図8】第1の実施形態のビビリ低減作動を示すフローチャート図である。
【図9】第2の実施形態の研削作用点ビビリ検出手段と工作物押付け装置の関係を示すブロック図である。
【図10】第3実施形態の研削作用点ビビリ検出手段と工作物押付け装置の関係を示すブロック図である。
【図11】第4実施形態の研削作用点ビビリ検出手段と工作物押付け装置の関係を示すブロック図である。
【図12】従来技術2の原理を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を円筒工作物を研削する円筒研削盤の実施事例に基づき、図1〜図6を参照しつつ説明する。
図2に示すように、研削盤1は、ベッド2とベッド2上にX軸方向に往復可能な砥石台3と、テーブル4を備えている。砥石台3は砥石軸8を回転自在に支持し、砥石軸8を回転させる砥石軸回転モータ(図示省略する)を備えており、砥石車7は砥石軸8に着脱自在に装着されて回転駆動される。テーブル4上には、工作物Wの一端を把持して回転自在に支持し主軸モータ(図示省略する)により回転駆動される主軸5と、工作物Wの他端を回転自在に支持する心押台6を備えており、工作物Wは主軸5と心押台6により支持されて、研削加工時に回転駆動される。
図1に示すように、テーブル4上には架台9が設置され、架台9により工作物Wの被加工部の下部に接触して被加工部の凹凸を検出する凹凸検出装置10と、被加工部外周の研削作用点と対向した位置で被加工部に接触して、工作物Wに変位を与え砥石車7と工作物Wの相対位置を制御する工作物押付け装置11が保持される。
【0040】
研削盤1は、所定のプログラムを実行することで自動化された研削加工を実行する制御装置30を備えている。制御装置30の機能的構成として、砥石台3の送りを制御するX軸制御手段31、主軸5の回転を制御する主軸制御手段32、研削作用点のビビリを検出する研削作用点ビビリ検出手段33、工作物押付装置11を制御する工作物押付け制御手段34などを具備している。また、主軸制御手段32の内部には主軸5の回転速度を検出する主軸回転速度検出手段321を備えている。
【0041】
図3に示すように、凹凸検出装置10は、架台9に底部を固定された圧電素子101と、圧電素子101の上部に接合され架台9に対して摺動自在に上下できるプランジャー102と、プランジャー102の先端に装着され工作物Wに接触する接触子103で構成される。圧電素子101は工作物の回転に伴うビビリの凹凸による接触力の変動に応じた電圧を発生し、電圧検出器12を介して制御装置30へ検出信号を送る。
工作物押付装置11は、架台9に一端を固定された圧電素子111と、圧電素子111の他端に接合され架台9に対して摺動自在に前後できるプランジャー112と、プランジャー112の先端に装着され工作物Wに接触する接触子113で構成される。圧電素子111は圧電素子ドライバ13を介して制御装置30により駆動される。
【0042】
上述のような円筒研削盤によりビビリが低減される作用を図4、5、6に基づき以下に説明する。
図4に示すように、凹凸検出装置10の接触子103は、研削作用点からの工作物回転方向への角度がα度の凹凸検出位置で、工作物Wの被加工部の下部に常に接触するように配置される。工作物押付け装置11の接触子113は、工作物回転方向で凹凸検出位置までの角度がβ度の工作物Wの研削作用点と対向する工作物押込み位置で、被加工部に常に接触するように配置される。
凹凸検出装置10は工作物回転によるビビリの凹凸変動に伴う荷重変動を圧電素子101で検出し、電圧として電圧検出器12に出力する。このとき、荷重変動はビビリの振幅に比例し凸部の頂点で最大となり凹部で最低となり、電圧出力も同様に変動する。
【0043】
ビビリを低減するには、現在の研削作用点でのビビリの位相と周期と振幅を検出する必要がある。
図5に示すように、本実施例では凹凸検出装置10による凹凸検出位置で検出した凹凸の周期と振幅を研削作用点でのビビリの周期と振幅とする。ビビリの周期Tは凹凸検出装置10が検出する電圧変動の1周期の時間(秒)として検出する。ビビリの振幅は電圧出力変動幅に比例するので、あらかじめ定められた換算比率より、電圧変動幅を振幅に換算することで検出する。
位相については凹凸検出位置での位相と周期と工作物の回転速度から以下の方式で演算する。工作物Wと砥石車7の研削作用面の相対変位により研削点で生じた工作物Wのビビリは、工作物Wの回転により工作物押込み位置を通過しさらに凹凸検出位置に到達する。 図6は、被加工部の円周面に生じたビビリの凸部を正、凹部を負として直線上に展開し、研削作用点、工作物押込み位置、凹凸検出位置の相対関係を表した図である。
図6において、研削作用点と凹凸検出位置の角度差αをビビリの周期を単位とする位相差Φ1で表し、工作物押込み位置と凹凸検出位置の角度差βをビビリの周期を単位とする位相差Φ2で表す。ビビリの周期をT(秒)、工作物の1秒当りの回転速度をN回転とすると、角度αの位相差Φ1はΦ1=2π・α/(360・N・T)と表され、角度βの位相差Φ2はΦ2=2π・β/(360・N・T)と表される。凹凸検出位置でのビビリの位相をω、振幅をaとすると、研削作用点でのビビリの位相はω−Φ1となり、工作物押込み位置でのビビリの位相はω−Φ2となる。研削作用点でのビビリの振幅変動はa・sin(ω−Φ1)で表され、工作物押込み位置ではa・sin(ω−Φ2)で表される。
【0044】
工作物押付け装置11の接触子113の工作物を砥石車7に近づける方向の作動を正とすると、ビビリを打ち消すために工作物に与える変位は、研削作用点での砥石車の研削作用面と工作物の相対変位と逆位相なので、ビビリと同位相であるa・sin(ω−Φ1)となる。しかし研削においては、砥石研削点と工作物加工点間の研削盤各部に弾性変形が生じるため工作物の押込み作動分がそのまま実研削除去深さ変動とはならず、弾性変形分だけ少ない除去深さ変動となる、その補正をするため補正係数K1を用いる。接触子113の補正作動量dはd=K1・a・sin(ω−Φ1)となる。
本実施例では研削作用点からの角度がα−βの位置で被加工部を押して工作物Wに変位を与える。この場合、被加工部が真円であれば前記の補正作動量dを工作物押付装置11の接触子113の変位として与えればよい。しかし、ビビリにより被加工部には凹凸が発生しているので、工作物押付装置11の接触子113を静止させている場合でも、工作物Wに凹凸の振幅に相当する変位が発生する。このため、工作物押込み位置のビビリの位相と逆位相の変位K1・a・sin(ω−Φ2+π)を工作物押付装置11の接触子113の作動量に加算して、被加工部のビビリの凹凸による押込み量の増減をキャンセルする必要がある。この加算は被加工部のビビリが大きいビビリ補正を開始してからα−βの角度工作物が回転するまで実施する。
【0045】
以上より、最初に検出・演算されたΦ1、Φ2、a、ωをΦ11、Φ21、a1、ω1、とすると、1回目の補正データ式d1は補正を開始してからα−βの角度工作物が回転するまでは、d1=K1・a1・(sin(ω1−Φ11)+sin(ω1−Φ21+π))である。α−βの角度工作物が回転し、ビビリの低減された被加工面が工作物押込み位置に到達した後の補正データ式d1は、d1=K1・a1・sin(ω1−Φ11)である。以上のデータ式d1により工作物の回転位置と対応したデータを作成し、このデータに基づき工作物押付け装置11を作動させる。
【0046】
ビビリの低減が十分でなく2回目の補正を加える場合の補正データd2は以下のように作成する。
被加工面のビビリは初回より小さくなっているので、被加工面のビビリの影響による押込み量の増減は無視して1回目の補正データd0=K1・a1・sin(ω1−Φ11)を工作物1回転分計算する。次に1回目の補正後に検出・演算したΦ1、a、ωをΦ12、a2、ω2、としds=K1・a2・sin(ω2−Φ12)を工作物1回転分計算する。d0、dsを工作物の回転位置と対応したデータとして保存し、工作物の回転位置毎にd0とdsを加算したデータをd2とする。工作物回転位置θとω1、ω2、d1、dsの関係を図7に示す。
【0047】
本発明のビビリ低減動作を作動させるのは、研削サイクルにおける工作物回転当りの砥石車の切込み量が小さいときが効果的で、特に砥石車の切込みが停止しているスパークアウト研削時に作動させると効果が著しい。図8のフローチャートに基づきスパークアウトサイクルにおけるビビリ低減動作を説明する。
初めに主軸回転速度を検出することにより、主軸5に保持され回転している工作物Wの回転速度を検出する(STP1)。
次に、凹凸検出装置10により工作物Wのビビリの周期T1と振幅a1を検出する(STP2)。周期T1はビビリの凹凸による電圧増減の1周期の時間とし、振幅a1は電圧変動幅と係数K2の積として算出する。係数K2は工作物回転速度や工作物の質量によりあらかじめ決定された値をデータとして入力しておく。
位相差Φ1とΦ2を、Φ11=2π・α/(360・N・T1)、Φ21=2π・β/(360・N・T1)として演算する(STP3)。
工作物押付け装置11の駆動データd1を作成する、ω1がΦ1−Φ2の間はd1=K1・a1・(sin(ω1−Φ11)+sin(ω1−Φ21+π))とし、ω1がΦ1−Φ2以降についてはd1=K1・a1・sin(ω1−Φ11)とする。ビビリの位相ω1を工作物回転角度θに換算し、d1と工作物回転角度θを対応させた駆動データ表に保存する(STP4)。ここで、スタート位置はω1=0、θ=0とする。
【0048】
凹凸検出装置10により位相ω1=0を検出する(STP5)。
ω1=n・2・π(nは整数)の工作物回転位置をスタート位置として駆動データ表の工作物回転に基づいた変位d1によって工作物押付け装置11を駆動しながら、工作物を1回転させる(STP6)。
ビビリ補正開始後に工作物がα以上回転した後の、ビビリ振幅a2を検出する(STP7)。
ビビリ振幅a2が目標値以下かを判定する(STP8)。
ビビリ振幅a2が目標値より大きければ、ビビリ周期T2とビビリ振幅a2とθ=0におけるω2の位相ω20を検出する(STP9)。
位相差Φ1をΦ12=2π・α/(360・N・T2)として演算する(STP10)。
d1=K1・a1・sin(ω1−Φ11)、ds=K1・a2・sin(ω2−Φ12)とする。ビビリの位相ω1、ω2を工作物回転角度θに換算し、同一の工作物回転角度θに対応したd1とdsの値を加算し補正データd2とし、駆動データ表に保存する(STP11)。
研削点の工作物回転角度θが0の位置で2回目の補正データd2に基づいた工作物押付け装置11の駆動をスタートし、工作物を1回転させる(STP6)。
以下(STP7)、(STP8)を実行し、ビビリ振幅が目標値以下となったら砥石台3を後退させて研削を終了する(STP12)。
【0049】
<第2の実施形態>
第1の実施形態ではビビリ周期を被加工部のビビリの凹凸の1周期を検出することで検出したが、ビビリ発生の大部分の原因は砥石車7の研削作用面の回転に伴う変位の変動なので、砥石回転周期をビビリ周期としてビビリの位相を算出してもよい。
図9に示すように、本実施例では凹凸検出装置10による凹凸検出位置で検出した凹凸の振幅を研削作用点でのビビリの振幅とする。ビビリの周期Tとして砥石車回転速度検出手段35にて砥石車7が1回転する時間(秒)を検出する。なお、砥石車回転速度検出手段35としては、砥石軸に回転速度センサを取り付けることにより実現することができるし、実測値によらず砥石軸回転モータへの指令値を用いることも可能である。
研削作用点での位相は、凹凸検出位置でのビビリの位相と砥石車7の回転周期と工作物の回転速度を用いて、第1の実施形態と同様に演算する。
ビビリ低減動作についても第1の実施形態と同様に実施する。
【0050】
<第3の実施形態>
砥石車7の研削作用面の回転に伴う半径位置が変動する場合は砥石台3を振動させるので、その振動周期をビビリ周期としてビビリの位相を算出してもよい。
図10に示すように、本実施例では凹凸検出装置10による凹凸検出位置で検出した凹凸の振幅を研削作用点でのビビリの振幅とする。ビビリの周期Tとして砥石台振動周期検出手段36にて砥石台3の砥石車7の切込み方向の振動の周期(秒)を検出する。なお、砥石台振動周期検出手段36としては、砥石台3に振動センサを取り付けることにより実現することができる。
研削作用点での位相は、凹凸検出位置でのビビリの位相と砥石台3の振動周期と工作物の回転速度を用いて、第1の実施形態と同様に演算する。
ビビリ低減動作についても第1の実施形態と同様に実施する。
【0051】
<第4の実施形態>
図11に示すように、本実施例では凹凸検出装置10による凹凸検出位置で検出した凹凸の振幅を研削作用点でのビビリの振幅とする。ビビリの周期Tとして砥石台振動周期検出手段36にて砥石台3の砥石車7の切込み方向の振動の周期(秒)を検出する。ビビリの研削作用点での位相は、砥石台振動位相検出手段37にて砥石台3の砥石車7の切込み方向の振動の砥石台後退方向を正とした位相で検出する。なお、砥石台振動位相検出手段37としては、砥石台3に振動センサを取り付けることにより実現することができ、砥石台振動周期検出手段36の振動センサと兼ねることも可能である。
ビビリ低減動作についても第1の実施形態と同様に実施する。
【0052】
<第1〜第4の実施形態の変形態様>
第1〜第4の実施形態では工作物Wの被加工部を押すことで工作物を変位させたが、工作物を保持する主軸台と心押し台に変位手段を備えても良い、この場合の補正変位dはd=K1・a・sin(ω−Φ1)とする。
第1〜第4の実施形態ではビビリの振幅aを圧電素子101の電圧変動で検出したが、変位計で被加工部の半径変動を検出してビビリ振幅aとしてもよい。
第1〜第4の実施形態では工作物Wと砥石車7の相対位置の制御に工作物Wを変位させたが、砥石車を変位させてもよい。砥石車を変位させるには、例えば、砥石車の静圧軸受けの砥石切込み方向の静圧ポケット部の圧力を変動させることで可能である。
【符号の説明】
【0053】
1:円筒研削盤 3:砥石台 W:工作物 5:主軸 6:心押台 7:砥石車 8:砥石軸 10:凹凸検出装置 11:工作物押付け装置 111:圧電素子 33:研削作用点ビビリ検出手段 35:砥石車回転速度検出手段 36:砥石台振動周期検出手段 37:砥石台振動位相検出手段 321:主軸速度検出手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の工作物を支持して回転駆動させる工作物支持手段と、
砥石車を支持し回転駆動させる砥石車支持手段と、
前記工作物支持手段と前記砥石車支持手段とを相対移動させ、前記砥石車で前記工作物を研削する駆動手段と、
前記工作物の研削に伴い前記工作物の被加工部に生じる円周方向に分布する理想形状に対する凹凸であるビビリの研削作用点での位相を検出する位相検出手段と、
前記工作物と前記砥石車の相対変位を、前記研削作用点での前記ビビリの位相から判定した前記工作物と前記砥石車の相対変位の位相と、逆位相に変位させる相対位置制御手段と、
を備える円筒研削盤。
【請求項2】
前記被加工部の前記ビビリの振幅を検出するビビリ振幅検出手段を備え、前記相対位置制御手段を前記ビビリの振幅に比例した作動量で作動させる請求項1記載の円筒研削盤。
【請求項3】
前記被加工部の前記ビビリの振幅が所定の値より小さくなったときに研削を終了する請求項2記載の円筒研削盤。
【請求項4】
前記位相検出手段を
被加工部の前記ビビリの周期を検出するビビリ周期検出手段と、
前記工作物の外周の所定の円周方向位置である測定点での前記ビビリの位相を検出する測定点位相検出手段と、
前記工作物の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記ビビリ周期検出手段により検出された前記ビビリの周期と前記測定点位相検出手段により検出されたビビリの位相と、前記回転速度検出手段にて検出された前記工作物の回転速度と、から前記工作物の前記研削作用点での前記ビビリの位相を算出するビビリ演算手段と、
で構成する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の円筒研削盤。
【請求項5】
前記位相検出手段を
前記砥石車の回転周期を検出する砥石車回転周期検出手段と、
前記工作物の外周の所定の円周方向位置である測定点での前記ビビリの位相を検出する前記測定点位相検出手段と、
前記工作物の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記砥石車回転周期検出手段により検出された前記砥石車の回転周期と、前記測定点位相検出手段により検出されたビビリの位相と、前記回転速度検出手段にて検出された前記工作物の回転速度と、から前記工作物の前記研削作用点での前記ビビリの位相を算出するビビリ演算手段と、
で構成する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の円筒研削盤。
【請求項6】
前記位相検出手段を
前記砥石車支持手段の振動周期を検出する砥石振動周期検出手段と、
前記工作物の外周の所定の円周方向位置である測定点での前記ビビリの位相を検出する測定点位相検出手段と、
前記工作物の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記砥石振動周期検出手段により検出された前記砥石車支持手段の振動周期と、前記測定点位相検出手段により検出されたビビリの位相と、前記回転速度検出手段にて検出された前記工作物の回転速度と、から前記工作物の前記研削作用点での前記ビビリの位相を算出するビビリ演算手段と、
で構成する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の円筒研削盤。
【請求項7】
前記位相検出手段を前記砥石車支持手段の前記砥石車の前記工作物切込み方向の振動位相を検出する砥石振動位相検出手段で構成する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の円筒研削盤。
【請求項8】
前記相対位置制御手段を前記工作物を変位させる工作物変位手段で構成する請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の円筒研削盤。
【請求項9】
前記工作物変位手段を前記工作物の研削作用点と180度位相がずれた位置で前記工作物の被加工部に接触して押圧する工作物押付け装置で構成し、
前記工作物押付け装置を、前記研削作用点での前記ビビリの位相から判定した前記工作物と前記砥石車の相対変位の位相と逆位相に変位させるような変位量から、前記工作物押付け装置が接触する前記工作物の被加工部における前記ビビリの凹凸高さを差し引いた値で制御する、請求項8記載の円筒研削盤。
【請求項10】
前記相対位置制御手段の駆動に圧電素子を用いる請求項9記載の円筒研削盤。
【請求項11】
前記ビビリ周期検出手段を前記被加工部の凹凸を検知する凹凸検知手段により前記凹凸の周期を検出することで構成する請求項4記載の円筒研削盤。
【請求項12】
前記ビビリ振幅検出手段を前記被加工部の凹凸を検知する凹凸検知手段により前記凹凸の振幅を検出することで構成する、請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載の円筒研削盤。
【請求項13】
前記測定点位相検出手段を前記被加工部の凹凸を検知する凹凸検知手段により前記凹凸の位相を検出することで構成する、請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の円筒研削盤。
【請求項14】
前記凹凸検出手段と被加工部の下部が接触するように配置する請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の円筒研削盤。
【請求項1】
円筒状の工作物を支持して回転駆動させる工作物支持手段と、
砥石車を支持し回転駆動させる砥石車支持手段と、
前記工作物支持手段と前記砥石車支持手段とを相対移動させ、前記砥石車で前記工作物を研削する駆動手段と、
前記工作物の研削に伴い前記工作物の被加工部に生じる円周方向に分布する理想形状に対する凹凸であるビビリの研削作用点での位相を検出する位相検出手段と、
前記工作物と前記砥石車の相対変位を、前記研削作用点での前記ビビリの位相から判定した前記工作物と前記砥石車の相対変位の位相と、逆位相に変位させる相対位置制御手段と、
を備える円筒研削盤。
【請求項2】
前記被加工部の前記ビビリの振幅を検出するビビリ振幅検出手段を備え、前記相対位置制御手段を前記ビビリの振幅に比例した作動量で作動させる請求項1記載の円筒研削盤。
【請求項3】
前記被加工部の前記ビビリの振幅が所定の値より小さくなったときに研削を終了する請求項2記載の円筒研削盤。
【請求項4】
前記位相検出手段を
被加工部の前記ビビリの周期を検出するビビリ周期検出手段と、
前記工作物の外周の所定の円周方向位置である測定点での前記ビビリの位相を検出する測定点位相検出手段と、
前記工作物の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記ビビリ周期検出手段により検出された前記ビビリの周期と前記測定点位相検出手段により検出されたビビリの位相と、前記回転速度検出手段にて検出された前記工作物の回転速度と、から前記工作物の前記研削作用点での前記ビビリの位相を算出するビビリ演算手段と、
で構成する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の円筒研削盤。
【請求項5】
前記位相検出手段を
前記砥石車の回転周期を検出する砥石車回転周期検出手段と、
前記工作物の外周の所定の円周方向位置である測定点での前記ビビリの位相を検出する前記測定点位相検出手段と、
前記工作物の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記砥石車回転周期検出手段により検出された前記砥石車の回転周期と、前記測定点位相検出手段により検出されたビビリの位相と、前記回転速度検出手段にて検出された前記工作物の回転速度と、から前記工作物の前記研削作用点での前記ビビリの位相を算出するビビリ演算手段と、
で構成する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の円筒研削盤。
【請求項6】
前記位相検出手段を
前記砥石車支持手段の振動周期を検出する砥石振動周期検出手段と、
前記工作物の外周の所定の円周方向位置である測定点での前記ビビリの位相を検出する測定点位相検出手段と、
前記工作物の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記砥石振動周期検出手段により検出された前記砥石車支持手段の振動周期と、前記測定点位相検出手段により検出されたビビリの位相と、前記回転速度検出手段にて検出された前記工作物の回転速度と、から前記工作物の前記研削作用点での前記ビビリの位相を算出するビビリ演算手段と、
で構成する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の円筒研削盤。
【請求項7】
前記位相検出手段を前記砥石車支持手段の前記砥石車の前記工作物切込み方向の振動位相を検出する砥石振動位相検出手段で構成する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の円筒研削盤。
【請求項8】
前記相対位置制御手段を前記工作物を変位させる工作物変位手段で構成する請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の円筒研削盤。
【請求項9】
前記工作物変位手段を前記工作物の研削作用点と180度位相がずれた位置で前記工作物の被加工部に接触して押圧する工作物押付け装置で構成し、
前記工作物押付け装置を、前記研削作用点での前記ビビリの位相から判定した前記工作物と前記砥石車の相対変位の位相と逆位相に変位させるような変位量から、前記工作物押付け装置が接触する前記工作物の被加工部における前記ビビリの凹凸高さを差し引いた値で制御する、請求項8記載の円筒研削盤。
【請求項10】
前記相対位置制御手段の駆動に圧電素子を用いる請求項9記載の円筒研削盤。
【請求項11】
前記ビビリ周期検出手段を前記被加工部の凹凸を検知する凹凸検知手段により前記凹凸の周期を検出することで構成する請求項4記載の円筒研削盤。
【請求項12】
前記ビビリ振幅検出手段を前記被加工部の凹凸を検知する凹凸検知手段により前記凹凸の振幅を検出することで構成する、請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載の円筒研削盤。
【請求項13】
前記測定点位相検出手段を前記被加工部の凹凸を検知する凹凸検知手段により前記凹凸の位相を検出することで構成する、請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の円筒研削盤。
【請求項14】
前記凹凸検出手段と被加工部の下部が接触するように配置する請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の円筒研削盤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−143503(P2011−143503A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5966(P2010−5966)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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