説明

再生装置、システムおよび制御方法

【課題】プログラムのデータ単位で表示して、シミュレーションを行うことの可能な再生装置、システムおよび制御方法を提供する。
【解決手段】スクリプトを含むデジタルコンテンツを再生し、Markupツリー表示機能21によって、スクリプトの箇々のノードをツリー状に表示させ、イベント表示機能22によって、デジタルコンテンツの再生に伴うスクリプトの処理状況を表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶メディアに格納されたデジタルコンテンツを再生する再生装置、システム、および再生装置を制御する再生制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、動画像のデジタル圧縮符号化技術の進展に伴い、HD(High Definition)規格の高精細映像を扱うことが可能な再生装置(プレーヤ)の開発が進められている。
【0003】
このようなプレーヤにおいては、例えばHD DVD(High Definition Digital Versatile Disk)のような記憶メディアが用いられる。HD DVD(High Definition Digital Versatile Disk)のような記憶メディアを用いることにより、HD映像データと高品質のサラウンドオーディオデータとを一枚の記憶メディアにパッケージ化することができる。
【0004】
ところで、HD DVD形式のデジタルコンテンツは、スクリプト言語で記載されたスクリプトを含むことができる。このようなスクリプトの実行は、ユーザ操作などによって駆動されるイベントを起点としており、実際の再生装置の動作はスクリプト実行時に決定される。このため、再生装置で規定されているリソース量の上限を超えたデジタルコンテンツが作成される可能性があるが、このようなデジタルコンテンツを再生装置が再生するとフリーズする等の不具合を生じることがある。よってこのような不具合を避けるため、記憶メディアに格納されたデジタルコンテンツを作成する際、正常に再生されるかどうかのシミュレーションを行う必要がある。
【0005】
特許文献1には、ブロック単位でシミュレーションを実行するプログラム開発支援装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−76545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した技術であると、記憶メディアに格納されたデジタルコンテンツを作成する際、正常に再生されるかどうかのシミュレーションを行う場合、プログラムのブロック単位でしか表示することができない。
【0007】
本発明は上述の事情を考慮してなされたものであり、プログラムのデータ単位で表示して、シミュレーションを行うことの可能な再生装置、システムおよび制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、記憶メディアに格納されたデジタルコンテンツを再生する再生装置であって、スクリプトを含む前記デジタルコンテンツを再生する再生手段と、前記スクリプトの箇々のノードをツリー状に表示させる手段と、前記再生手段による前記デジタルコンテンツの再生に伴う前記スクリプトの処理状況を表示させる手段とを具備することを特徴とする再生装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プログラムのデータ単位で表示して、シミュレーションを行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0011】
図1には、本発明の一実施形態の係る再生装置の構成例が示されている。この再生装置はオーディオビジュアルデータのようなデータストリームから構成されるデジタルコンテンツを再生するプレーヤである。この再生装置は、例えばHD DVD(High Definition Digital Versatile Disk)のような記憶メディア(図示せず)に予め記録されたデジタルコンテンツを再生するHD DVDプレーヤ100として実現されている。
【0012】
また、HD DVD形式のデジタルコンテンツは、スクリプト言語で記載されたスクリプトを含むことができる。このようなスクリプトの実行は、ユーザ操作などによって駆動されるイベントを起点としており、実際の再生装置の動作はスクリプト実行時に決定される。このため、再生装置で規定されているリソース量の上限を超えたデジタルコンテンツが作成される可能性があるため、HD DVDプレーヤ100は、後述するコンピュータ120からデバッグできるようになっている。尚ここで、デバッグとはスクリプト(プログラム)の誤りを探し、取り除く処理のことをいうものとする。
【0013】
このHD DVDプレーヤ100は、例えばイーサネット(登録商標)(ETHERNET(登録商標))ケーブル110を介してコンピュータ120と接続可能である。コンピュータ120は、HD DVDプレーヤ100に対してデバッグ命令を送ることができる。HD DVDプレーヤ100は、HD DVD等の記憶メディアに予め記録されたデジタルコンテンツを再生する場合、リソース使用量が所定の値を超えると再生を一時中断する。コンピュータ120は、HD DVDプレーヤ100が再生の一時停止を行った場合、この旨の通知を受けて、HD DVDプレーヤ100が再生の一時停止を行ったことを示す表示を行うことができる。
【0014】
HD DVDプレーヤ100は、図2に示されているように、プレゼンテーションエンジン11、ナビゲーションマネージャ12、データアクセスマネージャ13、HTTPサーバ14、プラグインファイル15を備えている。
【0015】
プレゼンテーションエンジン11は、映像、音声、グラフィックス等の再生を行う。ナビゲーションマネージャ12は、プレーヤ全体の制御、並びにユーザ操作による制御を行い、HD DVDプレーヤ100全体を監視する。データアクセスマネージャ13は、HD DVDディスクの読み取り管理を行う他、データキャッシュ、パーシステントストレージ、ピクセルバッファ等のプレーヤのリソース管理も行う。HTTPサーバ14およびプラグインファイル15は、HD DVDエミュレータ部20として機能する。
【0016】
一般的に、HD DVDプレーヤ100はプレゼンテーションエンジン11とナビゲーションマネージャ12とデータアクセスマネージャ13から構成され、HD DVDエミュレータ部20として機能するためにこれらにHTTPサーバ14およびプラグインファイル15を追加している。
【0017】
プラグインファイル15は、プログラムとして読み込まれるHD DVDエミュレータ部の振る舞いを記述したスクリプトであり、HTTPサーバ14にロードされる。HTTPサーバ14はプラグインファイル15をロードし、デバッグ端末120による操作によってHD DVDプレーヤ100を制御し、動作結果をデバッグ端末120に伝える。なお、プラグインファイル15には、例えば、HD DVDプレーヤ100の制御並びに状態監視を行うスクリプトファイル、HTTPブラウザ17に配信される表示用のGUI画面ファイルおよび操作用のスクリプトファイルがある。
【0018】
デバッグ端末120は例えばパーソナルコンピュータ120として実現され、イーサネット等のネットワーク手段を用いてHD DVDプレーヤ100に接続されてデータの送受信を行う。コンピュータ120に搭載されたHTTPブラウザ17はHD DVDエミュレータ部20のコンソールであり、ユーザ操作による指示をHTTPサーバ14を介してHD DVDプレーヤ100に伝え、またHD DVDプレーヤ100の情報および結果をHTTPサーバ14を介して受信してユーザに表示させる。
【0019】
デバッグ端末120ではHTTPブラウザ17を介してデジタルコンテンツの再生・停止・ステップ動作、リソース使用量監視、状態や結果の表示などのデバッグ機能をユーザに提供し、HTTPサーバ14との間で通信を行う。HD DVDプレーヤ100ではHTTPサーバ14がプラグインファイル15においてスクリプト記述されているデバッグ機能をロードし、ナビゲーションマネージャ12を制御してHTTPブラウザ17から送信される命令を実行し、その結果を送信する。
【0020】
HD DVDエミュレータ部20は、図3に示すように、Markupツリー表示機能21、イベント表示機能22、ブレークポイント設定機能23を備えている。また、デバッグ端末120は、Markupツリー表示機能121、イベント表示機能122を備えている。
【0021】
Markupツリー表示機能21は、例えば、図4に示すように、上述したスクリプトであるXML(Extensible Markup Language)データの箇々のノードを、図5に示すようなツリー状に変換し、表示させる機能である。イベント表示機能22、122は、スクリプトの処理状況を表示させる機能である。例えば、図6に示すように、Markup表示部2−2に表示されたスクリプトの箇々のデータごとに、イベント表示部2−3にイベントを表示させる。例えば、イベント表示部2−3には、イベントの処理が済むと(キャプチャフレーズにおいてイベントが通過したことを示す)、矢印200が表示され、処理中のイベントには、丸印201が表示される。これからの処理および表示がリアルタイムの変化する。これにより、現在、どのイベントまで処理が行われたかを容易に把握することができる。また、イベントを一時停止するブレークポイントを設定することができる。ブレークポイントは、黒い四角202で表示され、ブレークポイントまでイベントの処理が来ると処理が一時停止される。また、例えば、ブレークポイントでのイベントの処理の停止中に黒い四角202等をクリックすると、イベントの処理が再開される。なお、マウスのクリック操作以外にもリモコン操作、キーボード操作等が考えられ、これらに限定されるものでない。
【0022】
次に、本発明に係る再生装置を適用した再生制御方法およびプログラムの動作について図7のフローチャートを参照して説明する。
【0023】
HD DVDエミュレータ部20は、デバッグ端末120からの表示要求がないかを判別する(ステップS101)。HD DVDエミュレータ部20によって、デバッグ端末120からの表示要求があったと判別されると(ステップS101のYES)、表示要求が、ツリー表示要求であるかを判別する(ステップS102)。HD DVDエミュレータ部20によって、表示要求がツリー表示要求であると判別されると(ステップS102のYES)、HD DVDエミュレータ部20のMarkupツリー表示機能21は、図5に示すように、ツリー表示を行い、デバッグ端末120へ出力する(ステップS103)。
【0024】
一方、ステップS102で、HD DVDエミュレータ部20によって、表示要求がツリー表示要求でないと判別されると(ステップS102のNO)、図6に示すように、HD DVDエミュレータ部20のイベント表示機能22によって、スクリプトの処理状況を表示させる(ステップS104)。
【0025】
以上、本実施形態を用いることにより、プログラムのデータ単位で表示して、処理状況を把握し、シミュレーションを行うことが可能となる。また、任意のイベントの処理を停止させるプレークポイントを設定することができるので、各イベントの処理を確認しながらシミュレーションを行い、こう散る良くコンテンツのデバッグ操作を行うことができる。
【0026】
なお、図2のHD DVDプレーヤ100の機能はすべてコンピュータプログラムによって実現することができるので、このコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を通じて通常のコンピュータに導入するだけで、通常のコンピュータをHD DVDプレーヤ100として機能させることができる。この場合、機能全てをソフトウェアによって実行してもよいが、デコード処理の一部または全てをハードウェアによって実行することもできる。
【0027】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る再生装置およびデバッグ装置の構成例を示す模式図。
【図2】本発明の一実施形態に係る再生装置およびデバッグの構成例を示すブロック図。
【図3】本発明の一実施形態に係る再生装置およびデバッグの構成例を示すブロック図。
【図4】スクリプトの一例を示す模式図。
【図5】ツリー表示の一例を示す模式図。
【図6】スクリプトの処理状況を表示させた一例を示す模式図。
【図7】本発明に係る再生装置を適用した制御方法の動作について説明したフローチャート。
【符号の説明】
【0029】
11…プレゼンテーションエンジン、12…ナビゲーションマネージャ、13…データアクセスマネージャ、14…HTTPサーバ、15…プラグインファイル、17…HTTPブラウザ、20…HD DVDエミュレータ部、21、121…Markupツリー表示機能、22、121…イベント表示機能、23…ブレークポイント設定機能、100…HD DVDプレーヤ、110…イーサーネットケーブル、120…デバッグ端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶メディアに格納されたデジタルコンテンツを再生する再生装置であって、
スクリプトを含む前記デジタルコンテンツを再生する再生手段と、
前記スクリプトの箇々のノードをツリー状に表示させる手段と、
前記再生手段による前記デジタルコンテンツの再生に伴う前記スクリプトの処理状況を表示させる手段とを具備することを特徴とする再生装置。
【請求項2】
請求項1記載の再生装置において、
前記デジタルコンテンツは、HD DVD形式であることを特徴とする再生装置。
【請求項3】
請求項1記載の再生装置において、
前記処理状況を外部制御装置に出力し表示させる手段は、前記スクリプトの処理を一端止めるポイントを設定可能であることを特徴とする再生装置。
【請求項4】
請求項1記載の再生装置において、
前記処理状況を外部制御装置に出力し表示させる手段は、前記スクリプトの処理を一端止めるポイントを表示させることを特徴とする再生装置。
【請求項5】
記憶メディアに格納されたデジタルコンテンツを再生する再生装置と、この再生装置を制御する外部制御装置とから構成されるシステムであって、
前記再生装置は、
スクリプトを含む前記デジタルコンテンツを再生する再生手段と、
前記スクリプトの箇々のノードをツリー状に表示させる手段と、
前記再生手段による前記デジタルコンテンツの再生に伴う前記スクリプトの処理状況を表示させる手段とを備え、
前記外部制御装置は、
前記再生装置に前記スクリプトの箇々のノードをツリー状に表示させる要求を行う手段と、
前記再生装置に前記デジタルコンテンツの再生に伴う前記スクリプトの処理状況を表示させる要求を行う手段と、
具備することを特徴とするシステム。
【請求項6】
記憶メディアに格納されたデジタルコンテンツを再生する再生装置の制御方法であって、
スクリプトを含む前記デジタルコンテンツを再生する再生ステップと、
前記スクリプトの箇々のノードをツリー状に表示させるステップと、
前記再生ステップによる前記デジタルコンテンツの再生に伴う前記スクリプトの処理状況を表示させるステップとを有することを特徴とする制御方法。
【請求項7】
請求項7記載の制御方法において、
前記デジタルコンテンツは、HD DVD形式であることを特徴とする制御方法。
【請求項8】
請求項7記載の制御方法において、
前記処理状況を外部制御装置に出力し表示させるステップは、前記スクリプトの処理を一端止めるポイントを設定可能であることを特徴とする制御方法。
【請求項9】
請求項7記載の制御方法において、
前記処理状況を外部制御装置に出力し表示させるステップは、前記スクリプトの処理を一端止めるポイントを表示させることを特徴とする制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−117438(P2008−117438A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297148(P2006−297148)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】