説明

冠動脈画像データの分類のための方法及び装置

【課題】冠動脈画像データの分類のための方法及び装置を提供する。
【解決手段】ボリュームデータセットに描写された動脈樹のポリラインツリー画像から、血管の相対的位置を示す位相幾何学的画像を与えるために位相幾何学的形状が抽出される。位相幾何学的画像は位相幾何学的規則のセットと比較され、可能な解剖学的分類の各組み合わせを示す標識をポリラインツリーに付けることで候補の標識が付けられたツリーが生成される。該ツリーは動脈樹内の血管の空間的特性に関する幾何学的規則によりフィルタ処理され、該規則を満たさないツリーが排除される。候補の標識化の正確さを判定するために、ポリラインツリーの血管の特徴を、別のデータセットで正しく分類された血管の特徴を有するボリュームデータセットの血管の特徴と比較することで、各残りの候補の性能指数が計算され、血管の適した分類を示す最良の性能指数を有する候補が選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に冠動脈における動脈樹の画像の自動分類及び標識化のための方法及び装置に関係する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴映像法(magnetic resonance imaging:MRI)及びコンピュータ断層撮影法(computerized tomography:CT)のような現代の医学の映像技術は、患者の内部組織の非常に詳細な画像を生成する。画像装置は、ボリュームエレメント(ボクセル(voxel))の3次元配列を含むいわゆるボリュームデータセットを生成し、ここで、各ボクセルは、対応する患者のわずかなボリュームのいくらかの物理的な特性の値を示す値を有すると共に、その特性は画像装置によって測定される。例えば、CTにおいて、これはハウンズフィールドユニット(Hounsfield unit)であり、それはX線照射に対する患者の組織の減衰能力を表す。
【0003】
ボリュームデータセットは、データを、有益で、かつ医療関係者に理解できるフォーマットに直すために、コンピュータによる処理及び操作を必要とする。例えば、データセットのボリュームを通じて組織薄片(slice)を示す2次元画像が生成され得る。更なる技術は、特別な臓器または解剖学的構造に対応するボクセルが、例えば特定の範囲内の値を有する連続的なボクセルを選択することによって、周囲のボクセルから区別されて分離されるセグメント化の技術である。独立した解剖学的構造の画像が、その場合に、表示され得る。
【0004】
冠動脈樹は、頻繁に医学的興味の例となるそのような構造の例である。しかしながら、動脈樹は複雑な構造であると共に、その個別の構成要素は、表示された画像に基づいて容易に識別可能ではない可能性がある。従って、もし画像描画プロセスが様々な構成要素を自動的に識別すると共に標識化することができる分類手続きを含むならば、それは便利である。それらの標識は、視覚型の診断、スクリーニング(screening)またはトレーニング(training)のような手続きにおいて支援するために、観察者に表示され得るか、及び/または、自動診断ソフトウェア等における使用のために、データセットに関連付けられ得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】N Ezquerra et al, "IEEE Transactions on Medical Imaging", vol. 17, pp 429-441,1998
【非特許文献2】E Bengoetxea, "Inexact graph matching using estimation of distribution algorithms", PhD thesis from Ecole Nationale Superieure des Telecommunications, 2002
【非特許文献3】S Bouix et al, "Medical Image Analysis", vol. 9, pp 209-221, 2005
【非特許文献4】Thomas H Cormen et al, "Introduction to Algorithms", second edition, MIT Press, ISBN 0262032937,2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、冠動脈の標識化のための技術は、グラフマッチング(graph matching)の技術に依存する(先行技術文献の非特許文献1、2を参照。)。しかしながら、このアプローチは、グラフマッチングが冠動脈の解剖学的構造に関する完全な情報を利用しないという問題に悩まされている。更に、以前に提案された標識化方法において使用される費用関数は、特徴空間の多変量の構造を考慮しない。従って、これに代る自動化された動脈の標識化のための技術の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明の第1の特徴は、医学画像のボリュームデータセットに示された解剖学的特徴を自動的に分類する方法を対象にすると共に、前記方法は、データセットに描写されると共に、ポリラインツリー内のセグメントによって表されている動脈樹における各血管の中心線に対応するデータセット内の複数の連結点を含むポリラインツリーを獲得する段階と、ポリラインツリーの中のセグメントの相対的な世代の位置を示すポリラインツリーの位相幾何学的画像を形成する段階と、ポリラインツリー内の各セグメントで表された血管に関する実現可能な解剖学的分類を特定するために、位相幾何学的画像を、全ての動脈樹における血管の解剖学的に許容される相対的な世代の位置を指定する位相幾何学的規則のセットと比較する段階と、確認されている解剖学的分類を表す標識をポリラインツリー内の対応するセグメントと関連付けることによって、候補の標識が付けられたポリラインツリーのセットを生成する段階と、各候補の標識が付けられたポリラインツリーを、ポリラインの画像から判定され得る動脈樹における血管の解剖学的に許容される空間的な特性を指定する幾何学的規則のセットと比較すると共に、幾何学的規則に従わない血管を表す1つ以上の標識を有するあらゆる候補を排除する段階と、各候補における標識の正当性の確率を判定するために、ポリラインツリー内に表された血管の特徴を、血管を表すセグメントに関連付けられた標識によって示された解剖学的分類内の血管の既知の特徴と比較することによって、各残りの候補の標識が付けられたポリラインツリーに関して確率を反映する性能指数を計算する段階と、最も良い性能指数を有する候補の標識が付けられたポリラインツリーを特定する段階とを含み、各候補の標識が付けられたポリラインツリーが、確認されている実現可能な解剖学的分類の1つの組み合わせであることを特徴とする。
【0008】
この方法は、冠動脈の画像データを自動的に分類すると共に標識化するための正確で、かつ計算効率の良い技術を提供する。正しく標識化された画像が、それによって利用者に提示され得るか、もしくは正しく分類されたデータセットが、ほとんど臨床医もしくは他の医療職員による介在なしに、診断ソフトウェアに出力され得る。一般的に、標識の正確さの迅速な立証だけが必要とされると共に、ほとんどの場合、変更は、全く必要とされないか、もしくはほとんど必要とされない。これは、もし数多くの患者の画像が処理されることを必要とするならば、処理の速度を増加し得る。
【0009】
冠動脈樹において異なって分類されるか、もしくは命名された血管の数は、十分に多く、標識の莫大な数の考えられる可能な組み合わせが存在する。これらの内の1つだけが正しいが、しかし血管タイプを特定する異なる方法に従って、多数のその他の組み合わせが実現可能である。正しい分類を特定するために全ての実現可能な分類を詳細に考察することは、多くの計算時間と電力を必要とするであろう。本発明は、より厳密な考察のための最も実現可能なわずかな組み合わせを残すために、異なる規則セットによるフィルタ処理を用いて、考えられる可能な標識の組み合わせの大部分を消去することによって、正しい分類を生み出すことを提案する。従って、描写された動脈樹は、考えられる可能な分類の量を削減する際の第1の段階として、位相幾何学的規則のセットに制約され、そして、更なる候補の分類を削除するために、幾何学的規則のセットに制約される。これらの最終的に残る候補は、描写された動脈樹の特徴を既知の正しく分類された動脈樹の特徴と比較することにより得られる性能指数の計算によって、最も良い性能指数を有するそのような正しい分類を特定するように処理される。
【0010】
候補の削減のために位相幾何学的規則及び幾何学的規則を使用することの利点は、これらの規則のセットによって定義された関連した特徴が、完全な三次元の動脈樹の画像の簡単なポリラインツリー画像から特定され得るということである。従って、分類処理は、完全な画像のボリュームデータセットの処理の代替手段か、または更に動脈樹の画像のセグメント化されたバージョンより、はるかに少ない量のデータを用いて実施され得る。従って、計算のコストは、更に削減される。
【0011】
便利であるので、位相幾何学的画像の形式が選択され得る。1つのオプションは、祖先の配列(predecessor array)である。
【0012】
この方法によって特定される、最終の標識化されたポリラインツリーによって示された血管分類は、必要に応じて使用され得る。分類されたポリラインツリー自体は、更に有用であり得るか、または、標識をオリジナルの画像データに変えることが好まれ得る。従って、方法は、血管の分類を示すために、特定された候補が提供する標識を、描写された動脈樹における対応する血管と関連付ける段階を更に含む。
【0013】
いくつかの実施例において、各残りの候補の標識が付けられたポリラインツリーに関して性能指数を計算する段階は、ポリラインツリー内に表された各血管の事前に選択された特徴のセットを測定する段階と、各血管に関する特徴ベクトルを計算するために、各血管に関する測定値を結合する段階と、各候補の標識が付けられたポリラインツリーに関して、各標識が正しい確率を判定するために、各血管に関する計算された特徴ベクトルを、その血管を表すセグメントに関連付けられた標識によって示された血管の解剖学的分類の特徴から抽出された1つ以上の所定のパラメータと比較する段階と、各候補に関する性能指数を生成するために各候補の標識が付けられたポリラインツリーの中の確率を結合する段階とを含み得る。
【0014】
例えば、所定のパラメータは、血管の解剖学的分類に関する平均的な特徴ベクトル及び分散−共分散行列を含み得る。
【0015】
確率のあらゆる適当な評価基準が使用され得るが、しかし、対数尤度が良い結果を与えるということが発見された。従って、いくつかの実施例において、確率を判定するために各血管に関する計算された特徴ベクトルを所定の平均的な特徴ベクトル及び分散−共分散行列と比較する段階は、対数尤度を計算する段階を含む。
【0016】
その場合に、性能指数を生成するために確率を結合する段階は、候補の標識が付けられたポリラインツリー内の全ての標識が付けられたセグメントに関する対数尤度を合計する段階を含み得る。
【0017】
所定の平均的な特徴ベクトルは、別のデータセットに描写された動脈樹において正しく分類された血管に関して計算された複数の特徴ベクトルの平均値であり得ると共に、分散−共分散行列は、別のデータセットに描写された動脈樹において正しく分類された血管に関して計算され得る。これは、他の場合は特徴比較に悪影響を及ぼすであろう画像におけるあらゆる解剖学的特性またはエラーの影響を緩和する。複数の有効なデータセットから獲得された平均値の使用は、“平均的な”動脈の血管構造を反映する標準化された特徴ベクトルを生み出す。
【0018】
代替実施例において、各血管に関する計算された特徴ベクトルを、血管を表すセグメントに関連付けられた標識によって示された血管の解剖学的分類の特徴から抽出された1つ以上の所定のパラメータと比較する段階は、K近傍法の使用、またはベイジアンヒストグラムの使用を含み得る。
【0019】
特徴ベクトルに関連する多くの血管の特徴が直接ポリラインツリーから獲得され得ると同時に、血管径のような、オリジナルの画像データから入手できる特徴を同様に検討することによって、更なる機能強化が獲得され得る。従って、一実施例において、各血管に関する事前に選択された特徴を測定する段階は、ポリラインツリーが提供する特徴及びデータセットが提供する特徴を測定する段階を含む。
【0020】
本発明の第2の特徴は、医学画像のボリュームデータセットに示された解剖学的特徴を自動的に分類するためのシステムを対象にすると共に、前記システムは、データセットに描写されると共に、ポリラインツリー内のセグメントによって表されている動脈樹における各血管の中心線に対応するデータセット内の複数の連結点を含むポリラインツリーを受け取ると共に、ポリラインツリーの中のセグメントの相対的な世代の位置を示すポリラインツリーの位相幾何学的画像を形成するように動作可能な位相幾何学的形状抽出器モジュールと、動脈樹における血管の解剖学的に許容される相対的な世代の位置を指定する位相幾何学的規則のセットと、動脈血管の解剖学的分類を表す標識のセットと、ポリラインツリー内の各セグメントによって表された血管に関する実現可能な解剖学的分類を特定するために、位相幾何学的画像を、位相幾何学的規則のセットと比較すると共に、標識のセットが提供する確認されている解剖学的分類を表す標識をポリラインツリー内の対応するセグメントと関連付けることによって、候補の標識が付けられたポリラインツリーのセットを生成するように動作可能な位相幾何学的形状検査器モジュールと、ポリラインの画像から判定され得る動脈樹における血管の解剖学的に許容される空間的な特性を指定する幾何学的規則のセットと、各候補の標識が付けられたポリラインツリーを、幾何学的規則のセットと比較すると共に、幾何学的規則に従わない血管を表す1つ以上の標識を有するあらゆる候補を排除する幾何学的形状検査器モジュールと、各候補における標識の正当性の確率を判定するために、ポリラインツリー内に表された血管の特徴を、血管を表すセグメントに関連付けられた標識によって示された解剖学的分類内の血管の既知の特徴と比較することによって、各残りの候補の標識が付けられたポリラインツリーに関して確率を反映する性能指数を計算すると共に、最も良い性能指数を有する候補の標識が付けられたポリラインツリーを特定するように動作可能な性能計算モジュールとを備え、各候補の標識が付けられたポリラインツリーが、確認されている実現可能な解剖学的分類の1つの組み合わせであることを特徴とする。
【0021】
性能計算モジュールは、ポリラインツリー内に表された血管に関する特徴ベクトルを、候補のツリーの標識によって示された解剖学的分類の血管に関する所定の平均的な特徴ベクトル及び分散−共分散行列と比較することによって、比較段階を実行し得る。このために、システムは、更に、既知の正しく分類された動脈樹の画像、もしくはポリラインツリーを使用する“トレーニング”によって、平均的な特徴ベクトル及び分散−共分散行列を獲得するように構成され得る。従って、システムは、複数の描写された動脈樹を表す複数のポリラインツリー内の正しく分類された血管の事前に選択された特徴のセットを測定し、各血管に関する特徴ベクトルを計算するために、各血管に関する測定値を結合すると共に、計算された特徴ベクトルから、各血管の解剖学的分類に関する平均的な特徴ベクトル及び分散−共分散行列を計算するように動作可能な特徴抽出及び分類器モジュールと、性能指数を計算する際の性能計算モジュールによる検索のために平均的な特徴ベクトル及び分散−共分散行列を記憶するように動作可能なメモリとを更に備え得る。
【0022】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1の特徴による方法をコンピュータに実行させるように動作可能なコンピュータプログラム製品を格納する媒体を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による方法の実施例における各段階を表すフローチャートを示す図である。
【図2】本発明による方法を実現するためのシステムの実施例の略図を示す図である。
【図3】冠動脈樹を表すポリラインツリーの一例を示す図である。
【図4】ポリラインツリーから冠動脈樹の位相幾何学的画像の一例として得られた祖先の配列の一例を示す図である。
【図5】ツリー内の血管の分類を示す解剖学的標識を有するポリラインツリーの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の更に良い理解のために、そして、どのように本発明が実施されるかを示すために、一例として添付の図面を参照する。
【0025】
本発明は、様々な修正及び代替形式に影響を受けやすい一方、特定の実施例が図面において一例として示されると共に、ここで詳細に説明される。しかしながら図面及び詳細な説明は、本発明を開示された特定の形式に制限することを意図していないが、しかしこれに反して、本発明は、添付された請求項において定義されたように、本発明の精神及び範囲の中に入る全ての修正物、等価物、及び代替物をカバーすることであるということが理解されるべきである。
【0026】
人間の冠動脈樹は、上行大動脈から分岐する左右の主冠動脈、及び大動脈から分岐する複数の連続する小さな血管からなる。本発明は、動脈構造の3次元画像に含まれる様々な血管を、自動的に分類及び標識化するための技術を提供しようと試みる。本技術は、描写された動脈樹に関して潜在的に正しく標識化された候補のセットを獲得するために、位相幾何学的パラメータ及び幾何学的パラメータに基づいたフィルタ処理を使用する。性能指数は、セットの各要素に関して計算されると共に、最も良い性能指数を有する候補が、最終的な標識化されたツリー(木構造)として出力される。
【0027】
図1は、本技術の一例の実施例における各段階を表すフローチャートを示す。
【0028】
ステップS1は、興味のある動脈樹を含むボリュームデータセットが獲得されることを定める。データは、あらゆる適当な映像化技術を用いて記録され得る。次に、ステップS2において、動脈樹のデータは、ボリュームデータセットからセグメント化されると共に、その結果、興味のあるデータのみが保持される。
【0029】
一度動脈樹のデータが獲得されれば、ステップS3において、動脈構造のポリラインツリーが、セグメント化された画像データから生成される。図1において示された方法が、ただの一例である点に注意が必要である。この方法は、関連する画像データが前の機会に測定されたと共に、セグメント化されて、またはセグメント化されずに、そしてポリラインツリーの生成を伴い、またはポリラインツリーの生成を伴わずに、後の使用のために記憶されたかどうかに基づいて、ステップS1、ステップS2、またはステップS3のいずれにおいても開始し得る。その代りに、セグメント化の必要性なしに、直接ボリュームデータセットからポリラインツリーを生成することが可能であり得る。
【0030】
次に、ステップS4において、動脈樹の位相幾何学的形状(topology)が、ポリラインツリーから抽出される。その位相幾何学的形状は、特に血管の間の世代的な関係の観点から、動脈樹の中の様々な血管の相対的位置を示す。
【0031】
動脈樹の中に含まれた各々の血管を表す標識のプールが、異なる血管及び血管タイプ(分類)の間の位相幾何学的な関係を制御する規則と共に提供される。ステップS5において、このデータは、抽出された位相幾何学的形状に従って動脈樹に標識を割り当てるために使用される。ポリラインツリーには多くの血管があると共に、各血管が1を超える規則に適合し得るので、この処理は、一般的に、候補の標識が付けられたツリーのセットを生成すると共に、それらの各々は、標準の動脈構造の位相幾何学的形状に関して、潜在的に正しいか、または“正当(legal)”である。
【0032】
ステップS6において、候補のセットは、ポリラインツリーの幾何学的特徴を考察すると共に、標準の動脈構造の幾何学的形状(geometry)と矛盾する方法で標識化されたあらゆる候補を排除することによって、サイズが縮小される。標準の幾何学的形状は、幾何学的規則のセットによって定義され得る。
【0033】
ステップS7において、性能指数が、残っている候補のそれぞれに関して計算される。性能指数は、候補のポリラインツリー内の各標識化された血管の特徴と、前もって正しく分類されると共に標識化された動脈樹画像内の既知の血管タイプの特徴を有するオリジナルの動脈樹のデータの特徴との比較によって決定される。高いレベルの一致は、良い性能指数を生み出す。
【0034】
最終的に、ステップS8において、最も良い性能指数を有する候補が選択されると共に、その標識は、動脈樹の画像データに関する標識として割り当てられ得る。
【0035】
興味のあるツリー内の血管に関する適切な標識を決定するために、ステップS7の比較を直接使用することが可能であろう。しかしながら、一般的に、ツリーは多くの血管を含むと共に、最も良い一致を決定するために、全ての血管の特徴を、血管に関する各考えられる可能な分類の特徴と比較することは、計算的にとても集中的であろう。従って、本発明は、特徴を既知の特徴と比較する前に、(その中であらゆる個々の血管が理論上あらゆる血管タイプとして分類されて標識化されるであろう)考えられる可能な標識化されたツリーの総数を、位相幾何学的な特性及び幾何学的な特性に従ってフィルタ処理して選別することによって、処理を削減することを提案する。あらゆる個々の血管に関して、そのフィルタ処理は、考えられる可能な正しい標識を、多くても2、3に削減すると共に、その結果、各血管に関する特徴比較は、それらの標識で表されたわずかの血管タイプに対してだけ実行される必要がある。動脈樹を分類して標識化するための合計時間及び計算コストは、それによって削減される。
【0036】
図1において示されたステップは、図1の方法を実現するためのシステムの実施例を示す図2を参照して、更に詳細に説明されることになる。
【0037】
図2の下半分が、最初に説明されることになる。システムのこの部分は、入力として標識化されていないポリラインツリー1を受け取ると共に、出力としてそのツリーの位相幾何学的形状を生成する位相幾何学的形状抽出器10を備える。位相幾何学的形状は、位相幾何学的に実現可能な方法で標識化された候補のツリー2を生成するために、標識プール22が提供するデータを同様に受け取り、位相幾何学的形状検査器24と共に動作する標識生成器20に対して提供される。この候補のセット2は、幾何学的な規則に従って候補をフィルタ処理して選別し、サイズにおいて位相幾何学的に実現可能な標識化されたツリー2のセットより小さい幾何学的に実現可能な標識化された候補のツリー3のセットを生成する幾何学的形状検査器30に対して提供される。この削減されたセット3は、各候補のツリーに関する性能指数を計算し、最も良い性能指数を有する候補を選択すると共に、システムが総合的に単一の標識化されたツリー4を生成するように、この候補を出力するメリット関数モジュール40に対して渡される。
【0038】
その入力として、システムは、標識化されていないポリラインツリー1を取得する。ポリラインは、三次元空間内の直線または曲線を表すために使用されるデータ構造である。ポリラインは、それぞれ、空間内のその位置(この場合、ボリュームデータセット内のその位置)を示す“x”座標、“y”座標、“z”座標によって表された点のセットを含むと共に、それは、直線、曲線、または閉曲線(closed curve)を集合的に作り上げる。現在の状況において、ポリラインは、動脈樹内の血管または動脈の中心線に沿った点の集合であると共に、ポリラインツリーは、冠動脈ツリーまたは冠血管系を構成する個々の動脈または血管のポリライン(または中心線)の集合である。ポリラインツリーは、従って、動脈樹の全体を表すために使用されるデータ構造であると共に、ポリラインツリーの各セグメントは、血管を表す。ポリラインツリーは、ツリー内の血管の長さ、分岐している角度、湾曲、及び接続性を表しているが、しかしツリー内の血管の幅は表していない、冠動脈樹の“骨組”と考えられ得る。
【0039】
興味のある動脈樹のポリラインツリーを生成するためのあらゆる技術が使用され得る。血管の中心線は、(ベルギーの“Barco NV”によって製造される)“VesselMetrix”のようなソフトウェアシステムを使用して、表示された画像において手動で追跡され得る。その代りに、(多くが知られている)自動中心線追跡アルゴリズム(automatic centreline tracking algorithm)(先行技術文献の非特許文献3を参照)が、ボリュームデータセットから、またはセグメント化された動脈樹データから、中心線を自動的に抽出するために使用され得る。
【0040】
良い分類結果のために、ポリラインツリーは、血管の各分類に関して、血管がその開始点から見えない状態になるまで単一の血管として(全ての枝(branch)を無視する)中央線に沿って追跡されると共に、分岐している血管の開始点が親の血管の中央線上の点と一致するように生成されるプロトコルに従って、画像データから抽出され得る。
【0041】
図3は、典型的な左の大動脈、及びその枝を表す標識化されていないポリラインツリー1の例を示す。
【0042】
興味のある冠動脈樹を表すポリラインツリー1は、図2において示される位相幾何学的形状抽出器10に入力される。位相幾何学的形状抽出器10は、位相幾何学的データを抽出するために、ポリラインツリーを分析する。これの目的は、生体構造を分類することに関連する標識化されていないツリーの構造に関して情報を獲得することである。位相幾何学的データは、血管の位相幾何学的形状であると共に、冠血管系のツリー構造に基づいた血管の異なる解剖学的分類の配列(ordering)のことを指す。長さ、湾曲、直径等のような血管系の物理的特性は、この目的のために無視され得る。その代りに、位相幾何学的データは、ツリーにおける各セグメントの相対的位置を表す。
【0043】
必要とされる位相幾何学的データを決定するためのあらゆる手法が使用され得る。1つの例において、位相幾何学的形状抽出器は、入力された標識化されていないポリラインツリーを取得し、縦型探索(depth-first search)を実行すると共に、ポリラインツリーの位相幾何学的形状を描写する祖先の配列(predecessor array)(先行技術文献の非特許文献4を参照)を組み立てる。祖先の配列(predecessor array)は、オリジナルのポリラインツリー内のセグメントの相対的位置を含む長さNのベクトル(N-length vector)である。その配列は、基礎部分(root)から分岐している分岐したツリー構造の形式を有していると共に、各基礎部分(root)/枝(branch)は、ポリラインツリーにおける血管/セグメントに対応する。その配列は、ツリーの中の各血管のレベルに関するポリラインツリーの位相幾何学的な情報、及びどのくらいの血管が基礎部分(root)及び各血管から分岐するかを保存し、すなわち、あらゆる物理的構造を示さずに、それは、他の血管と比較した各血管の位置を示す。祖先の配列を使用して、ポリラインツリーは、単に血管セグメントの位置のリストとして表され得る。
【0044】
図4は、7つの血管またはセグメントを備える単純なツリーの祖先の配列の位相幾何学的画像の例を示す。7つのセグメントは、“0”(基礎部分)から“6”まで番号をつけられる。祖先の配列は、{0,1,2,2,1,5,5,1}のように数字で表され得る。
【0045】
好みによって、ツリーの位相幾何学的形状の他の表現が使用され得る。
【0046】
位相幾何学的形状抽出器10によって生成されたツリーの位相幾何学的形状は、候補の標識が付けられたツリーのセットを生成するように動作する標識生成器20及び位相幾何学的形状検査器24に提供される。
【0047】
それらの標識は、標識生成器20によってアクセス可能である標識プール22の中から選択される。標識プールは、冠動脈樹の中の血管に関する名前を表す標識を含む標識のセットを記憶すると共に、標識は、興味のある動脈樹において識別することができるか、または分類することができることを要求される各解剖学的構造に対して提供される。それらの標識は、最終的に標識化されたツリーの意図されたアプリケーションにとって有益であるあらゆる形式を取り得る。例えば、様々な動脈血管に関する従来の解剖学的な名前及び省略形を示す標識のプールが提供され得ると共に、これは、意味があるように標識化さされた動脈樹の画像が観察者に提示されるアプリケーションにとって有益であろう。そのようなプールは、典型的に以下の標識を含むことになる。
【0048】
・左冠動脈主幹部(Left main:LM)
・左冠動脈前下行枝(Left anterior descending:LAD)
・左冠動脈回旋枝(Left circumflex:LCX)
・左冠動脈辺縁枝(Left marginal:LMG)
・左冠動脈中間枝(Left Ramus-intermedius:LRI)
・左冠動脈対角枝(Left diagonal:LD)
・左側/右側の重要でない血管(Left/Right insignificant:LINSIG,RINSIG)−分類において必要とされない全ての血管
・右冠動脈(Right coronary artery:RCA)
・右冠動脈後下降枝(Right posterior descending artery:RPD)−常に存在するものではない。
【0049】
システムの拡張された汎用性に関して、標識プールは、標識のいくつかのセットを含み得ると共に、各セットは、名前の異なるフォーマットを表す標識を有する。この方法において、標識化されたツリーの意図されたアプリケーションに最も適した標識フォーマットが使用され得る。
【0050】
標識生成器20及び位相幾何学的形状検査器24は、祖先の配列により示されるようなオリジナルの標識化されていないポリラインツリーの位相幾何学的形状を考察すると共に、冠動脈樹の標準の生体構造を支配する位相幾何学的規則に従って、ツリー内のセグメントに対して標識を割り当てることによって、標識化されたツリーのセットを生成する。位相幾何学的規則は、冠動脈の統語構造(syntactic structure)に関係がある。それらの規則は、ツリー内の血管のレベルまたは世代の観点から、そしてどの血管が前の世代または後の世代か(どの血管またはどの血管のタイプがその親であり得るか、どの血管またはどの血管のタイプがその子供であり得るか、どの血管またはどの血管のタイプがその兄弟(姉妹)であり得るか、特定のタイプの血管が親、兄弟、または子供を持つことができるか否か、特定のタイプの血管にどのくらいの兄弟または子供が許されるか等。)、動脈樹における血管の各タイプまたは各分類が解剖学的に他の血管に接続される方法を定義する。
【0051】
ツリー内の各セグメントに関して、その位相幾何学的データが考察されると共に、そのデータによって満たされる位相幾何学的規則に適合する標識プール内の全ての標識は、そのセグメントに関する潜在的に正しいか、または正当な(legal)標識であると考えられる。多くのセグメントに関して、そのセグメントが位相幾何学的規則を破らずに分類され得るいくつかの血管タイプが存在する可能性があるので、従って、いくつかの標識は、これらのセグメントに関して潜在的に正しい。この方法では、各セグメントに関して確認された正当な標識の全ての組み合わせをカバーする、複数の標識化されたポリラインツリーが生成される。
【0052】
位相幾何学的規則のセットの例は、下記の内のいくつか、または下記の全てを含み得る。
【0053】
・左冠動脈に関して:
○左冠動脈の基礎部分(root)のセグメントは、左冠動脈主幹部(LM)である。
○左冠動脈主幹部(LM)は、兄弟を持つことができない。
○右冠動脈(RCA)、右冠動脈後下降枝(RPD)、及び右側の重要でない血管(RINSIG)は、左側のツリーにおいて許可されていない。
○左冠動脈前下行枝(LAD)は、左冠動脈主幹部(LM)の子供だけになり得るか、または自身の拡張だけになり得る。
○左冠動脈回旋枝(LCX)は、左冠動脈主幹部(LM)の子供だけになり得るか、または自身の拡張だけになり得る。
○左冠動脈対角枝(LD)は、左冠動脈前下行枝(LAD)の子供だけになり得るか、または自身の拡張だけになり得る。
○左冠動脈辺縁枝(LMG)は、左冠動脈回旋枝(LCX)の子供だけになり得るか、または自身の拡張だけになり得る。
○左冠動脈中間枝(LRI)は、左冠動脈主幹部(LM)の子供だけになり得るか、または自身の拡張だけになり得る。
○左冠動脈中間枝(LRI)は、三分岐の中間にだけ発生し得る。
【0054】
・右冠動脈に関して:
○右側のツリーにおいては、右冠動脈(RCA)、右冠動脈後下降枝(RPD)、及び右側の重要でない血管(RINSIG)だけが許可されている。
○基礎部分(root)のセグメントは、右冠動脈(RCA)でなければならない。
○右冠動脈(RCA)は、右冠動脈(RCA)の子供だけになり得るか、または自身の拡張だけになり得る。
○右冠動脈後下降枝(RPD)は、右冠動脈(RCA)の子供だけになり得るか、または自身の拡張だけになり得る。
【0055】
・左冠動脈と右冠動脈の両方に関して:
○兄弟の枝(branch)は、同じ分類に存在することができない。
○右冠動脈(RCA)、右冠動脈後下降枝(RPD)、左冠動脈前下行枝(LAD)、左冠動脈回旋枝(LCX)、及び左冠動脈主幹部(LM)のセグメントの全ては、連続的でなければならない。
○重要でない(INSIGNIFICANT)セグメントのあらゆる子供の枝は、重要でない(INSIGNIFICANT)セグメントでなければならない。
【0056】
位相幾何学的規則は、位相幾何学的形状検査器によりアクセス可能な記憶装置に格納されると共に、それは、システムを実現するために使用されるハードウェア構成及び/またはソフトウェア構成に応じて、外部記憶装置か、または位相幾何学的形状検査器内に配置された記憶装置であり得る。
【0057】
位相幾何学的形状検査器24は、位相幾何学的形状抽出器10から抽出されたツリーの位相幾何学的形状に従って、標識化されていないツリーの位相幾何学的形状を分析すると共に、位相幾何学的形状に従って、位相幾何学的規則を適用する。標識生成器20は、規則に従うことが発見された血管の分類に従って、標識を割り当てる。それらの規則は、標識生成器20が、あらゆる違反した(解剖学的に誤った)標識の割り当てを無視すると共に、それによって、あらゆるセグメントに正当に割り当てられ得る標識の数を削減することにより、標識の割り当てを最適化することを可能にする。図4に示される単純な7セグメントのツリー及び上述の標識プールの例に関して、標識とセグメントには、2,079,152個(8)の組み合わせがある。位相幾何学的規則の適用は、この数を、ちょうど511個の正当に標識化されたポリラインツリーに削減する。これらは、興味のある動脈樹の物理的構造に関するあらゆる情報を使用することなしに、オリジナルのツリーの位相幾何学的形状を考察することによって生成される。
【0058】
従って、標識生成器20は、標識化された候補のポリラインツリーのセット2を生成すると共に、その各々は、オリジナルの標識化されていないポリラインツリー1の位相幾何学的形状に従い、解剖学的に実現可能な標識によって標識化される。
【0059】
図5は、標識化されたポリラインツリーの例を示す。
【0060】
標識生成器20及び位相幾何学的形状検査器24により生成されたセットにおいて、候補の標識が付けられたツリーの数を削減するために、検討中の動脈樹の物理的構造、及び空間的な特性に従って、候補をフィルタ処理して選別することが提案される。これを達成するために、候補の位相幾何学的に実現可能な標識化されたツリーが、幾何学的形状検査器30に対して提供される。幾何学的形状検査器30は、各標識化されたツリーにおける各血管/各セグメントの分類を考察し、この分類が幾何学的規則のセットに従って有効であるかどうかを判定することによって動作すると共に、ここで、前記幾何学的規則は、冠動脈樹の既知の物理的特徴及び空間的な特徴に従って決定される。あらゆる妥当でない分類は、その標識化されたツリーの候補のセットからの除去をもたらす。
【0061】
特にこの実施例においては、血管の中心線と関係があると共に、従ってポリラインツリーから獲得され得る物理的特性のみが考察される。従って、血管径のような特性は無視される。これは候補のセットのサイズを縮小することに適切であることがわかった。しかしながら、必要に応じて、血管径のような、オリジナルの画像データから入手できる物理的な特性が考察され得る。
【0062】
ポリラインツリーから導き出せる物理的特性は、セグメントの長さ寸法(linear dimension)及び(位相幾何学的形状によって示されたツリーの中の相対的な世代的な位置と対比した)セグメントの絶対的な空間的位置のことを指す。従って、血管の長さ、他の血管及び分岐点からの距離が考察されると共に、血管の空間的な位置が、左側か、右側か、前側か、または後側か、ということが考察される。
【0063】
幾何学的形状検査器30は、完全に標識化された各候補のツリーを受け取り、様々な分類の血管に特有であると共に、完全に標識化されたツリー関連する幾何学的規則(“もしセグメントがXと標識化されるならば、Yと標識化されたあらゆる関連するセグメントが特定の特性を有していなければならない”というカテゴリにおける規則)を適用し、その標識が規則に従わないならば、候補を排除する。
【0064】
この実施例において、幾何学的規則は以下のようである。
【0065】
・左冠動脈前下行枝(LAD)に関して:
○血管の下方に行く方向の中をのぞいて、全ての左冠動脈対角枝(LD)は血管の右側に存在しなければならず、そして左側の重要でない血管(LINSIG)は、右になければならない。
【0066】
・左冠動脈回旋枝(LCX)に関して:
○その血管は、その最初の兄弟(通常は左冠動脈前下行枝(LAD))より後の方向を横切らなければならない。
○全ての存在している左冠動脈辺縁枝(LMG)に関して、兄弟として左冠動脈回旋枝(LCX)のセグメントが存在しなければならない。
○左冠動脈回旋枝(LCX)を見下ろして、全ての左冠動脈辺縁枝(LMG)血管は、左側に存在しなければならず、そして、右側から離れ落ちるあらゆる管は、左側の重要でない血管(LINSIG)でなければならない。
○左冠動脈回旋枝(LCX)は、左冠動脈樹の基礎部分(root)から特定の距離の中で常に始まる。
【0067】
・左冠動脈中間枝(LRI)に関して:
○左冠動脈前下行枝(LAD)及び左冠動脈回旋枝(LCX)が存在する場合にだけ、左冠動脈中間枝(LRI)血管は存在し得る。
○左冠動脈中間枝(LRI)血管は、左冠動脈前下行枝(LAD)及び左冠動脈回旋枝(LCX)の最も近いセグメントの間に存在しなければならない。
【0068】
・右冠動脈(RCA)に関して:
○右冠動脈(RCA)セグメントは、右冠動脈の基礎部分(root)から特定の距離の中でだけ始まることができる。
【0069】
・右冠動脈後下降枝(RPD)に関して:
○右冠動脈後下降枝(RPD)は、兄弟として右側の重要でない血管(RINSIG)だけを有することができる。
【0070】
幾何学的規則は、幾何学的形状検査器によりアクセス可能な記憶装置に格納されると共に、それは、システムを実現するために使用されるハードウェア構成及び/またはソフトウェア構成に応じて、外部記憶装置か、または幾何学的形状検査器内に配置された記憶装置であり得る。
【0071】
そのような幾何学的規則の適用は、候補のセットのサイズを非常に縮小し得る。例えば、図4における7セグメントのツリーに関して、標識生成器20によって出力された511個の位相幾何学的に実現可能な候補の標識が付けられたツリーは、幾何学的形状検査器30によって、約71個の幾何学的に実現可能な候補の標識が付けられたツリーにまで削減され得る。幾何学的形状検査器30によって排除されなかった全ての標識化された候補は、幾何学的に実現可能な標識化された候補のツリー3のセットとして出力される。
【0072】
幾何学的形状検査器30の動作と標識生成器20/位相幾何学的形状検査器24の動作との間の重要な相違点は、幾何学的形状検査器は、完全に標識化されたポリラインツリーを入力として取り込むが、一方、位相幾何学的形状検査器は、標識化されていない祖先の配列(predecessor array)または他の位相幾何学的画像を入力として取り込むこと、そして、幾何学的形状検査器は、空間的な規則を用いてフィルタ処理を実行するが、一方、位相幾何学的形状検査器は、位置的な規則に基づいてフィルタ処理を実行することである。
【0073】
幾何学的形状検査器30によって出力される幾何学的に実現可能な標識化されたツリー3のセットは、メリット関数モジュール40に対して渡される。このモジュールは、セット3における各候補の標識が付けられたツリーに関する性能指数を計算すると共に、最も良い性能指数を有する、標識化されたツリー4を出力するように動作する。
【0074】
実施例において、性能指数は、標識化されたツリーにおける各セグメントに関するいわゆる“特徴ベクトル”を最初に決定することによって計算される。特徴ベクトルは、セグメント及びその対応する血管の特性または特徴の前もって選ばれたセットの測定値から計算される血管の数値記述子(numerical descriptor)であり、いくつかの測定値はポリラインツリーから決定され、いくつかの測定値はオリジナルの画像データから決定される。従って、ポリラインツリーの各セグメントはここでは特徴ベクトルを有する。候補のツリー内の各標識化されたセグメントに関して、そのセグメントに関する特徴ベクトルが、セグメントの標識によって示された解剖学的分類の血管に関して前もって決定された平均的な特徴ベクトル及び分散−共分散行列(更に以下で論じられる)と比較される。この実施例において、その比較は、標識化されたセグメントに関する対数尤度を決定するために実行される。対数尤度は、分散−共分散行列を考察することによって、既知のデータの分布に対するテストデータ(この場合は、候補の標識が付けられたセグメント)の密接度を評価する。標識化されたツリー内の全てのセグメントに関して対数尤度が決定された場合、対数尤度は一緒に結合されると共に、その結果生じる値は、その標識化されたツリーの性能指数として取得される。単純な実施例において、対数尤度は、性能指数を生成するために合計され得る。その代りに、加重和が使用され得るか、または、対数尤度は、各血管の比例する長さとの乗算によって、正規化され得る。
【0075】
これは、セット3における全ての候補の標識が付けられたツリーに関して繰り返される。そして、性能指数が比較されると共に、最も良い性能指数を有する標識化されたツリーが特定される。特徴ベクトルの数値、対数尤度、及び性能指数がどのように定義されて扱われるかに応じて、最も良い性能指数は、最も高い数字か、または最も低い数字であり得る。
【0076】
この特定されたツリー4は、メリット関数モジュールにより、その割り当てられた標識によって示される解剖学的分類に分類されたツリーの各セグメントと一緒に、最終の標識化されたツリーとして出力されると共に、ここで、解剖学的分類は、最初に描写された冠動脈樹内の対応する血管の分類である。例えば、オリジナルの画像データの表示された画像上のテキスト標識の表示を可能にするために、もしくは画像データと一緒に、1つの診断ソフトウェアまたはトレーニングソフトウェアに対する入力として、必要に応じて標識が使用され得る。
【0077】
対数尤度の目的は、いかに良く、問題の血管の特徴が、問題の血管が分類された血管タイプのものであることが知られている血管の特徴に一致するかを示すことである。それは、問題の血管が本当にその割り当てられた標識によって示されたタイプの血管であることが、どのくらい起こりそうか、またはどのくらいあり得るかの指示である。従って、必要に応じて、対数尤度の代わりに他の確率関数を使用することが可能である。
【0078】
更に、性能指数は、候補の標識が付けられたツリー内の各標識が正しいという全体の確率を示すことを目標としているので、候補のツリーと既知の正しく標識化されたツリーとの間の比較の他の測定値が、“正確さ”の適当なレベルを決定するために使用され得ると共に、このレベルは性能指数として使用される。標識化されたツリーに関する尤度または確率測度を獲得するための他の適当な技術は、K近傍法、ベイジアンヒストグラム、及び分散−共分散行列を含む。技術に適しているように、上述の平均的な特徴ベクトル、及び分散−共分散行列は、血管の各解剖学的分類の選択された特徴から得られた他の適当なパラメータと交換される。
【0079】
現在の実施例において、メリット関数モジュールは、動脈樹における血管の各解剖学的分類に関する平均的な特徴ベクトル、及び分散−共分散行列を提供されることによって動作することを可能にされる。平均的な特徴ベクトル、及び分散−共分散行列は、平均的な特徴ベクトル、及び分散−共分散行列のセットを与えて、標識プールに含まれる各解剖学的分類もしくは血管タイプに関して提供される。平均的な特徴ベクトル、及び分散−共分散行列は、正しく分類されているか、もしくは特定されているということが知られている血管を含む画像データを使用してトレーニング段階を実行することによって獲得される。トレーニング段階は、標識化されていないツリーを自動的に標識化するために使用されるシステムから分離して実行され得ると共に、従って獲得された平均的な特徴ベクトル、及び分散−共分散行列のセットは、データ記憶領域でメリット関数モジュールに対して提供される。その代りに、標識化するシステムがトレーニング段階を実行するように動作可能であるように実施され得ると共に、平均的な特徴ベクトル、及び分散−共分散行列は、メリット関数モジュールによる次の使用のために記憶される。そのような装置において、トレーニング段階は、システムが標識化を実行するために使用される前に、分離したプロセスとして実行され得る。その代りに、平均的な特徴ベクトル、及び分散−共分散行列が更新されることを可能にするために、新しく獲得された正しく標識化された画像データのセットが、それらが利用可能になるようにシステムに対して入力されることによって、トレーニング段階は進行し得る。これらの新しく獲得された標識化されたデータのセットは、外部的に獲得され得る。その代りに、メリット関数モジュールによって出力されたいくつか、または全ての標識化されたツリーは、平均的な特徴ベクトル、及び分散−共分散行列の更新のために、システムに対してフィードバックされ得る。
【0080】
図2において示されたシステムの上側部分を参照して、ここでトレーニング段階の動作が説明されることになる。
【0081】
図2において示されたように、この実施例において、トレーニング段階は、特徴抽出器50、及び多変量のガウス分類器(multi-variate Gaussian classifier)60を用いて実行される。正しく標識化された冠動脈画像データがトレーニングのために使用されると共に、特徴抽出器50は、入力として、正しく標識化されたポリラインツリー5と、その対応する動脈樹画像データ6(それは、オリジナルのボリュームデータセットからセグメント化されるかもしれないし、セグメント化されないかもしれない)を受け取る。ポリラインツリー5は、位相幾何学的形状抽出器10に対する入力である標識化されていないポリラインツリー1に関して上述されたように、画像データ6から獲得される。
【0082】
特徴抽出器50は、ポリライン5及び画像データ6から、特定の血管測定値及びパラメータを抽出するように動作する。血管の分類に要求された正確さのレベル、及び実行することが望まれるかまたは適切な処理の量に基づいて、多くの血管の特徴か、またはわずかな血管の特徴が、必要に応じてこの目的のために使用され得る。一実施例によれば、以下の特徴が測定される。
【0083】
・血管のセグメントの長さ。
・血管のセグメントの最も近い直径(これは、ポリラインツリーから測定されることができず、従って画像データの使用を必要とする唯一の特徴である)。
・親の血管のセグメントに対する相対的な角度。
・血管のセグメントのねじれ。
・ツリーの基礎部分(root)からの血管のセグメントの開始点の距離。
・各血管のセグメントの端点のx−方向、y−方向、及びz−方向。
・血管のセグメントの長さのランク。
【0084】
特定の血管に関して、特徴測定値は、その血管に関する特徴ベクトルを獲得するために結合される。特徴ベクトルは、その場合に、血管の解剖学的分類(標識)と共に記憶される。これは、ポリラインツリー5内の血管/セグメントのいくつか、または全てに関する特徴ベクトルを獲得するために繰り返される。
【0085】
1度必要とされる特徴データの全てが画像データから抽出されたならば、再び既知の正しい標識を有する新しい画像データセット6及びポリラインツリー5が、特徴抽出器50に対して入力されると共に、新しい特徴ベクトルが計算されると共に、保存される。
【0086】
この処理は、従って各解剖学的分類または標識(血管タイプ)に関する多数の特徴ベクトル値を含むトレーニングデータのセットを生成する。このトレーニングデータ7は、分類器60に提供される。
【0087】
トレーニング段階が実行されているとき、分類器60は、トレーニングモードで動作する。それは、入力トレーニングデータを取得すると共に、各解剖学的分類に関して、それは、トレーニングのために使用される様々な標識化された画像データセットから得られた複数の特徴ベクトル値を使用して、その分類に関する特徴ベクトル及び分散−共分散行列を計算する。これらは、各解剖学的分類あたりに1つの平均的な特徴ベクトル及び分散−共分散行列のセットとして記憶される。(分類器の正確度を向上させることを意図した分散−共分散行列の他の操作がその代りに使用され得るが、)更に、分類器60は、全ての分類に関してプール(pool)された分散−共分散行列を判定することを選択し得る。(分類毎の共分散行列よりむしろ)プールされた共分散行列の使用は、評価されるべきパラメータの数を削減し、それによって必要とされるトレーニングセットの数を削減すると同時に、線形の識別面(linear discriminate surface)をもたらす。
【0088】
候補の標識が付けられたツリー3のメリット関数の決定のために、それがメリット関数モジュール40と共に動作するとき、分類器60は、同様に、分類モードにおいて動作することができる。分類モードにおいて、それは、入力として、候補のツリーに関する計算された特徴ベクトル(もし必要ならば、それは、上記で提案されたようにメリット関数モジュールの中で決定されるよりも特徴抽出器50を使用して決定される)を取得すると共に、候補のツリーにおける各セグメントに関する対数尤度を計算するために、このデータを記憶されている平均的な特徴ベクトル及び分散−共分散行列と一緒に使用すると共に、候補のツリーにおける各セグメントに関する対数尤度から、そのツリーに関する性能指数が計算される。性能指数は、分類器60によって、もしくはメリット関数モジュール40によって計算され得る。更に詳細には、分類モードの実施例における分類器60の動作は、以下のステップを含む。
【0089】
・分類器は、入力として、各血管に関する測定された特徴ベクトル“z”を取得すると共に、各分類に関する対数尤度を計算するために、血管の各分類に関する平均的な特徴ベクトル及び分散−共分散行列を使用する。
・対数尤度は、(尤度として知られている)分類“w”を前提として、測定された特徴ベクトル“z”を順守する確率に比例する。
【0090】
【数1】

【0091】
・ベイズの定理(Bayes' theorem)を適用することによって、事後確率、すなわち分類“w”に属する血管の確率は、その測定ベクトル“z”を前提として、以下によって与えられる。
【0092】
【数2】

【0093】
ここで、P(w)は、分類“w”を順守する事前確率である。
【0094】
・等しい事前確率がこの場合仮定され、従って、事後確率は尤度に同等になる。
・対数尤度は、メリット(merit:性能)の尺度として使用される。
【0095】
これまで示されたように、冠動脈画像データの自動標識化のための方法は、ポリラインツリーに変換された後、その結果生じる候補の標識化されたポリラインツリーのそれぞれに関する性能指数の決定の前に、データが、最初にその位相幾何学的特徴に従ってフィルタ処理により選別されると共に、次にその物理学的な特徴に従ってフィルタ処理により選別されるということを提案する。このアプローチは、候補の総数を削減することで、効率的であると考えられたと共に、正しく標識化されたツリーを特定する際に正確であると考えられた。しかしながら、その技術は、幾何学的フィルタ処理が最初に実行され、続いて位相幾何学的フィルタ処理が実行されるように、適合させられ得る。その代りに、もし更に簡単なシステムが、潜在的に長い処理時間及び可能な縮小された正確度を費やして望まれるならば、位相幾何学的フィルタ処理及び幾何学的フィルタ処理の1つまたは他方は、他方なしで使用され得る。
【0096】
図2において示されたシステムは、ハードウェアまたはソフトウェアのあらゆる組み合わせを用いて実現され得る。そのシステムが複数のモジュールに関して例証されたと共に説明された一方、各モジュールの機能性は、ソフトウェアまたはハードウェアを用いて実現され得ると共に、2つ以上のモジュールの機能性は、結合されて1つのモジュールになるか、または図2において例証された組み合わせにおけるモジュール以外のモジュールの間で分割され得る。
【0097】
更に、そのシステムは、必要であれば、病院PACSネットワーク(hospital PACS network)に統合され得る。このように、未加工の画像データは、ネットワークと接続された適切な三次元の画像装置によって記録され、(例えば、DICOM標準ファイルフォーマットを使用して)患者データ等のような関連するデータと共に画像データベースに記憶され得ると共に、それは、本発明の実施例による処理を含む臨床医学者による処理及び観察のために、画像データベースから取り出されると共に、PACSネットワーク上のワークステーションに供給される。必要であれば、その結果生じる分類されると共に標識化された画像データは、次の使用のために、データベースに戻されて記憶され得る。
【0098】
本発明は、特に冠動脈樹画像データの自動分類及び標識化に関連して説明されたが、それは、定義可能な位相幾何学的特性及び幾何学的特性を有するツリーのような解剖学的構造の他の画像データの処理用に適合させられ得る。適切な規則のセット及び標識プールが、そのようなアプリケーションのために定義され得る。
【符号の説明】
【0099】
1 標識化されていないポリラインツリー
2 位相幾何学的に実現可能な標識化されたツリー
3 幾何学的に実現可能な標識化された候補のツリー
4 標識化されたツリー
5 正しく標識化されたポリラインツリー
6 動脈樹画像データ
7 トレーニングデータ
10 位相幾何学的形状抽出器
20 標識生成器
22 標識プール
24 位相幾何学的形状検査器
30 幾何学的形状検査器
40 メリット関数モジュール
50 特徴抽出器
60 多変量のガウス分類器(multi-variate Gaussian classifier)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医学画像のボリュームデータセットに示された解剖学的特徴を自動的に分類する方法であって、前記方法は、
データセットに描写されると共に、ポリラインツリー内のセグメントによって表されている動脈樹における各血管の中心線に対応するデータセット内の複数の連結点を含むポリラインツリーを獲得する段階と、
ポリラインツリーの中のセグメントの相対的な世代の位置を示すポリラインツリーの位相幾何学的画像を形成する段階と、
ポリラインツリー内の各セグメントで表された血管に関する適した解剖学的分類を特定するために、位相幾何学的画像を、動脈樹における血管の解剖学的に許容される相対的な世代の位置を指定する位相幾何学的規則のセットと比較する段階と、
確認されている解剖学的分類を表す標識をポリラインツリー内の対応するセグメントと関連付けることによって、候補の標識が付けられたポリラインツリーのセットを生成する段階と、
各候補の標識が付けられたポリラインツリーを、ポリラインの画像から判定され得る動脈樹における血管の解剖学的に許容される空間的な特性を指定する幾何学的規則のセットと比較すると共に、幾何学的規則に従わない血管を表す1つ以上の標識を有するあらゆる候補を排除する段階と、
各候補における標識の正当性の確率を判定するために、ポリラインツリー内に表された血管の特徴を、血管を表すセグメントに関連付けられた標識によって示された解剖学的分類内の血管の既知の特徴と比較することによって、各残りの候補の標識が付けられたポリラインツリーに関して確率を反映する性能指数を計算する段階と、
最も良い性能指数を有する候補の標識が付けられたポリラインツリーを特定する段階とを含み、
各候補の標識が付けられたポリラインツリーが、確認されている適した解剖学的分類の1つの組み合わせである
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記位相幾何学的画像が、祖先の配列を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
血管の分類を示すために、特定された候補が提供する標識を、描写された動脈樹における対応する血管と関連付ける段階を更に含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各残りの候補の標識が付けられたポリラインツリーに関して性能指数を計算する段階が、
ポリラインツリー内に表された各血管の事前に選択された特徴のセットを測定する段階と、
各血管に関する特徴ベクトルを計算するために、各血管に関する測定値を結合する段階と、
各候補の標識が付けられたポリラインツリーに関して、各標識が正しい確率を判定するために、各血管に関する計算された特徴ベクトルを、その血管を表すセグメントに関連付けられた標識によって示された血管の解剖学的分類の特徴から抽出された1つ以上の所定のパラメータと比較する段階と、
各候補に関する性能指数を生成するために各候補の標識が付けられたポリラインツリーの中の確率を結合する段階と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
所定のパラメータが、血管の解剖学的分類に関する平均的な特徴ベクトル及び分散−共分散行列を含む
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
確率を判定するために各血管に関する計算された特徴ベクトルを所定の平均的な特徴ベクトル及び分散−共分散行列と比較する段階が、対数尤度を計算する段階を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
性能指数を生成するために確率を結合する段階が、候補の標識が付けられたポリラインツリー内の全ての標識が付けられたセグメントに関する対数尤度を合計する段階を含む
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
所定の平均的な特徴ベクトルが、別のデータセットに描写された動脈樹において正しく分類された血管に関して計算された複数の特徴ベクトルの平均値であると共に、
分散−共分散行列が、別のデータセットに描写された動脈樹において正しく分類された血管に関して計算される
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
各血管に関する計算された特徴ベクトルを、血管を表すセグメントに関連付けられた標識によって示された血管の解剖学的分類の特徴から抽出された1つ以上の所定のパラメータと比較する段階が、K近傍法の使用を含む
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項10】
各血管に関する計算された特徴ベクトルを、血管を表すセグメントに関連付けられた標識によって示された血管の解剖学的分類の特徴から抽出された1つ以上の所定のパラメータと比較する段階が、ベイジアンヒストグラムの使用を含む
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項11】
各血管に関する事前に選択された特徴を測定する段階が、ポリラインツリーが提供する特徴及びデータセットが提供する特徴を測定する段階を含む
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項12】
医学画像のボリュームデータセットに示された解剖学的特徴を自動的に分類するためのシステムであって、前記システムは、
データセットに描写されると共に、ポリラインツリー内のセグメントによって表されている動脈樹における各血管の中心線に対応するデータセット内の複数の連結点を含むポリラインツリーを受け取ると共に、ポリラインツリーの中のセグメントの相対的な世代の位置を示すポリラインツリーの位相幾何学的画像を形成するように動作可能な位相幾何学的形状抽出器モジュールと、
動脈樹における血管の解剖学的に許容される相対的な世代の位置を指定する位相幾何学的規則のセットと、
動脈血管の解剖学的分類を表す標識のセットと、
ポリラインツリー内の各セグメントによって表された血管に関する適した解剖学的分類を特定するために、位相幾何学的画像を、位相幾何学的規則のセットと比較すると共に、標識のセットが提供する確認されている解剖学的分類を表す標識をポリラインツリー内の対応するセグメントと関連付けることによって、候補の標識が付けられたポリラインツリーのセットを生成するように動作可能な位相幾何学的形状検査器モジュールと、
ポリラインの画像から判定され得る動脈樹における血管の解剖学的に許容される空間的な特性を指定する幾何学的規則のセットと、
各候補の標識が付けられたポリラインツリーを、幾何学的規則のセットと比較すると共に、幾何学的規則に従わない血管を表す1つ以上の標識を有するあらゆる候補を排除する幾何学的形状検査器モジュールと、
各候補における標識の正当性の確率を判定するために、ポリラインツリー内に表された血管の特徴を、血管を表すセグメントに関連付けられた標識によって示された解剖学的分類内の血管の既知の特徴と比較することによって、各残りの候補の標識が付けられたポリラインツリーに関して確率を反映する性能指数を計算すると共に、最も良い性能指数を有する候補の標識が付けられたポリラインツリーを特定するように動作可能な性能計算モジュールとを備え、
各候補の標識が付けられたポリラインツリーが、確認されている適した解剖学的分類の1つの組み合わせである
ことを特徴とするシステム。
【請求項13】
前記位相幾何学的画像が、祖先の配列を含む
ことを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記性能計算モジュールが、更に、血管の分類を示すために、特定された候補が提供する標識を、描写された動脈樹における対応する血管と関連付けるように動作可能である
ことを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
画像のボリュームデータセット内の動脈樹において正しく分類された血管の特徴の測定値から計算された血管の解剖学的分類に関する特徴から抽出された所定のパラメータのセットを更に備え、
前記性能計算モジュールが、
ポリラインツリー内に表された各血管の事前に選択された特徴のセットを測定し、
各血管に関する特徴ベクトルを計算するために、各血管に関する測定値を結合し、
各候補の標識が付けられたポリラインツリーに関して、各血管が正しい確率を判定するために、各血管に関する計算された特徴ベクトルを、その血管を表すセグメントに関連付けられた標識によって示された血管の解剖学的分類に関する1つ以上のパラメータと比較すると共に、
各候補に関する性能指数を生成するために各候補の標識が付けられたポリラインツリーの中の確率を結合する
ことによって、各残りの候補の標識が付けられたポリラインツリーに関して性能指数を計算するように動作可能である
ことを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
所定のパラメータが、血管の解剖学的分類に関する平均的な特徴ベクトル及び分散−共分散行列を含む
ことを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記性能計算モジュールが、確率を判定するために、対数尤度を計算することによって、各血管に関する計算された特徴ベクトルを平均的な特徴ベクトル及び分散−共分散行列と比較するように動作可能である
ことを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記性能計算モジュールが、性能指数を生成するために、候補の標識が付けられたポリラインツリー内の全ての標識が付けられたセグメントに関する対数尤度を合計することによって、確率を結合するように動作可能である
ことを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
平均的な特徴ベクトルが、複数のボリュームデータセットに描写された動脈樹において正しく分類された血管に関して計算された複数の特徴ベクトルの平均値であると共に、
分散−共分散行列が、複数のボリュームデータセットに描写された動脈樹において正しく分類された血管に関して計算される
ことを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記性能計算モジュールが、K近傍法の使用によって、各血管に関する計算された特徴ベクトルを、示された血管の解剖学的分類に関する1つ以上のパラメータと比較する
ことを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
前記性能計算モジュールが、ベイジアンヒストグラムの使用によって、各血管に関する計算された特徴ベクトルを、示された血管の解剖学的分類に関する1つ以上のパラメータと比較する
ことを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項22】
各血管に関する事前に選択された特徴が、ポリラインツリー及び/またはデータセットから測定される
ことを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項23】
複数の描写された動脈樹を表す複数のポリラインツリー内の正しく分類された血管の事前に選択された特徴のセットを測定し、
各血管に関する特徴ベクトルを計算するために、各血管に関する測定値を結合すると共に、
計算された特徴ベクトルから、各血管の解剖学的分類に関する平均的な特徴ベクトル及び分散−共分散行列を計算する
ように動作可能な特徴抽出及び分類器モジュールと、
性能指数を計算する際の性能計算モジュールによる検索のために平均的な特徴ベクトル及び分散−共分散行列を記憶するように動作可能なメモリと
を更に備えることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項24】
請求項1に記載の方法をコンピュータに実行させるように動作可能なコンピュータプログラム製品を格納する媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−75693(P2010−75693A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−215644(P2009−215644)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(509067186)トウシバメディカルビジュアライゼーションシステムズヨーロッパ・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】