説明

冷却ファン用の協働的ブレード・ハブ構造体

冷却ファン用の協働的ブレード・ハブ構造体である。1つのブレード部材に隣接する中心ハブ部材から、隣接するブレード部材の後縁まで進む、螺旋状ガセットが設けられる。螺旋状ガセットは、構造的荷重経路とともに、空力的フローガイドを提供する。螺旋状ガセットは、先行するブレード部材の後縁まで軸方向に後方に延在し、隣接するブレード部材の前縁と後縁との間の構造的取付部を提供する。ファン構造体の後部に、中空三角形構造も設けられ、三角領域が優れた剛性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン、特に、自動車および他の車両用の冷却ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、トラックまたは他の車両用のエンジンは、高い動作温度で動作し、したがって、冷却を提供するためにさまざまな機構を必要とする。一般に、こうしたエンジンに対して冷却を提供するために、従来から、エンジンならびにその構成部品および付属品を通過する冷却流体の循環および/または空気の強制循環が用いられている。
【0003】
水または流体冷却式エンジンは、入ってくる空気流内に配置されエンジンによって加熱された後の水または他の流体を冷却する、ラジエータを利用する。空気流をラジエータに強制的にまたは引き込んで通過させるため、かつ、それにより水または他の流体を冷却するために、ラジエータに隣接して冷却ファンが配置されている。
【0004】
当初、冷却ファンは、実質的にすべて、金属材料から作製されていた。今日ではより一般的に、冷却ファンは、プラスチック材料から作製されている。ファンは、中心ハブと複数の外側に延在するインペラブレードとを有する従来タイプの部材である場合があり、またはブレードの端部または先端に円周方向のリングが配置されているリングタイプファンである場合もある。
【0005】
また、通常、車両のエンジンコンパートメントに所望の方法で空気流を向けるのに役立つように、ファン部材の周囲に管路またはシュラウド部材が配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トラック、自動車または他の車両で使用される改良された冷却ファンが必要とされている。剛性および耐久性が向上し、かつより容易に製造することが可能な、プラスチック材料からなる改良された冷却ファンが特に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特に、トラック、自動車および他の車両における冷却ファンとして使用される、改良されたファン部材を提供する。本発明は、重量が最小であり剛性が最大であるプラスチック材料からなるファンを提供する。1つのブレード部材のハブ径から隣接するブレード部材の後縁まで進む螺旋状ガセットが提供される。湾曲したガセットが、2つの隣接するブレードの間に、ファン部材の剛性および耐久性を向上させる三角構造を実現する。螺旋状ガセットは、構造的荷重経路とともに、空気を前方ファンハブ領域からブレード流路領域まで移動させる空力的フローガイドを提供する。
【発明の効果】
【0008】
ガセットは、その関連するブレード部材の前縁に向かって湾曲した螺旋方向に進む際に、先行するブレード部材の後縁まで軸方向に後方に延在する。これにより、隣接するブレード部材の前縁と後縁との間に構造的取付が提供される。またこれにより、ブレード部材間の構造的曲げ剛性も提供される。
【0009】
ブレード前縁はまた、螺旋状ガセットに従ってハブ領域内に入るように延在する。ハブ領域における螺旋状ガセットの下方のファンの後部は、軸方向に前方に空洞化しており、好ましくは三角形状である。これにより、最小材料構造体であるが、優れた構造的剛性および強度を有する構造体が提供される。
【0010】
本発明の他の利益、特徴および利点は、本発明の以下の説明を、添付図面および添付の特許請求の範囲とともに見ることによって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による冷却ファン部材の一実施形態の正面斜視図である。
【図2】図1に示す冷却ファンの背面図である。
【図3】図1および図2に示す冷却ファン実施形態の別の図であり、隠れ線は螺旋状ガセットを示す。
【図4】図1〜図3に示す冷却ファンの後部の拡大図であり、本発明の一実施形態において、形成されることが好ましい三角形状中空領域を示す。
【図5】図1に示すファン実施形態の断面図であり、図3の線5−5に沿って取り出された図である。
【図6】図1に示すファン実施形態の断面図であり、図3の線6−6に沿って取り出された図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、冷却ファン用の協働的ブレード・ハブ構造体を提供する。この冷却ファンは、特に、トラックおよび自動車等の車両で使用される。しかしながら、本発明は、車両用の冷却ファンには限定されず、産業用用途を含む、多くのさまざまな用途で使用される一意のファン構造体も包含する。
【0013】
本発明による冷却ファン部材は、ナイロン、または車両のボンネット下の環境に好適な別のポリマー等のプラスチック材料からなり、射出成形工程によって作製されることが好ましい。本発明は、ブレード部材およびハブを含むファン設計がすべて実質的に均一な厚さであるため、改良された製造工程および最終製品を提供する。これにより、射出成形工程に対するサイクル時間が最小限になり、また、熱ひけ(heat sink)および他の成形欠陥が防止される。
【0014】
図1〜図6に示すように、本発明による冷却ファン実施形態を、全体として参照数字10で参照する。冷却ファン部材は、中心ハブ部材15および複数のインペラまたはブレード部材20を有している。図面では、冷却ファン部材10を、9つのブレード部材20を有するものとして示している。しかしながら、本発明による冷却ファンは、いかなる所望の数のブレード部材をも有することができる、ということが理解されるべきである。また、ブレード部材の数は、各ファン部材に対して7、9、11、13等、素数であることが好ましい。
【0015】
また、図1〜図3に示すように、ファン部材をシャフト部材等に取り付けるのに役立つように、ファン部材のハブ部材内に配置されかつそこに固定される金属挿入部材18を利用することも好ましい。この目的で、挿入部材18に複数の開口16が設けられている。開口を用いて、ファンをシャフトまたは他の構造体に取り付けるための締結具が位置決めされる。
【0016】
ファン部材10は、ハブ部材15からブレード部材20の各々の表面にわたって延在する複数の螺旋状ガセット25を有している。螺旋状ガセットは、放射状に外側に湾曲しており、ハブ部材の1つのブレード部材の実質的に中間部22から隣接するブレードの後縁24まで進む。
【0017】
螺旋状ガセット25の幅は、1つのブレード部材の前縁から隣接するブレード部材の後縁までブレードの結合を提供するための必要に応じて、増大または低減される。螺旋状ガセットの幅はまた、ファンの所望の剛性を提供するために必要な材料の量に基づいても増大または低減される。ガセットの正確なサイズおよび幅は、出荷および輸送に対してファンの積重ねを可能にするために選択されることが好ましい。
【0018】
螺旋状ガセット25は、構造的荷重経路とともに、前方ファンハブ領域からブレード流路領域内へ空気流を移動させる空力的フローガイドを提供する。ガセット構造体は、関連するブレード部材の前縁に向かって螺旋方向に進む際、先行するブレードの後縁まで軸方向に後方にも延在する。これを、特に図2に示す。これに関して、螺旋状ガセットの後面または縁を、図2では参照数字26で参照する。螺旋状ガセットは、隣接するブレード部材の前縁と後縁との間の構造的取付部を提供する。これにより、ブレード間の構造的曲げ剛性が提供される。螺旋状ガセットをその関連するブレード部材の後縁まで延在させることは、フローガイドを延長し、さらなる構造的曲げ剛性を提供する役割を果たし、ブレード部材の後縁を安定させる。後縁角度を安定させることにより、荷重下での性能の最適化が保証される。
【0019】
螺旋状ガセット部材によって構造的な強度が追加されるため、ブレード荷重を支持するために必要なブレードの断面厚さが最小限となる。さらに、ハブ部材と螺旋状ガセットと螺旋状ガセット内側のブレード部分との間で荷重が分散されることにより、ハブの幾何学的な厚さを低減することができる。これにより、図2および図4によりよく示すように、三角構造30が提供される。
【0020】
三角構造30は、先のファン設計に比較して優れた剛性を提供する。図3において、ブレード部材20の後面の上に延在する螺旋状ガセットの方向および形状を、点線26で示す。図4には、三角形状中空部30もまた示す。
【0021】
螺旋状ガセット25は、本質的に、ブレード部材の前縁をハブ領域内まで延長する。これにより、フローガイドとブレード部表面との間に平滑な空気力学的遷移が提供される。またそれによって、ハブ領域において、金属挿入部材18が配置される領域の上方においてさらに材料を除去することも可能となる。ファンブレード部材が挿入部材18を斜めに横切るため、ハブ領域においてブレードが幾分かでも前方に突出することによって、厚い部分が形成される。厚い部分により、成形工程における空隙形成の可能性が提供され、かつ薄い部分と接した場合に差応力がもたらされるため、そうした厚い断面は望ましくない。
【0022】
ハブ領域における螺旋状ガセットの下方のファンの後部に形成される中空部30により、ファン構造体を通してブレードの断面厚さを最小限にすることができる。
【0023】
ファン部材10の後部にはまた、複数の支持・補強リブ35が設けられている。これらを図2に示す。リブ33は、ファン構造体に対し、特に金属挿入部材18の周囲にさらなる剛性および支持を提供する。
【0024】
本明細書では、本発明の好ましい実施形態を示し説明したが、当業者には、多数の変形および代替実施形態が思いつくであろう。したがって、本発明は、本明細書に記載されている好ましい実施形態に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲の用語に限定されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン構造体であって、
ハブ部材と、
前記ハブ部材から略放射状に外側に延在する複数のブレード部材と、
前記複数のブレード部材に対応する、複数の螺旋状のガセット部材と、
を具備し、
前記ガセット部材の各々が、1つのブレード部材に隣接する前記ハブ部材から、隣接するブレード部材の後縁まで延在する、ファン構造体。
【請求項2】
前記ガセット部材が、前記1つのブレード部材の実質的に中間点から延在する、請求項1に記載のファン構造体。
【請求項3】
前記ガセット部材が、隣接するブレード部材の前記後縁まで軸方向後方に延在する、請求項1に記載のファン構造体。
【請求項4】
前記後方に延在するガセット部材が、前記ハブ部材と三角形構造を形成する、請求項3に記載のファン構造体。
【請求項5】
前記ハブ部材、前記ブレード部材および前記ガセット部材が、合せて一体的に成形される、請求項1に記載のファン構造体。
【請求項6】
プラスチック材料からなり、射出成形工程によって作製される、請求項5に記載のファン構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−526960(P2010−526960A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507717(P2010−507717)
【出願日】平成20年5月10日(2008.5.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/063352
【国際公開番号】WO2008/141253
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(500124378)ボーグワーナー・インコーポレーテッド (302)
【Fターム(参考)】