説明

冷却機構体

【課題】小型、薄型であり、かつ、それぞれ異なる発熱量を有す少なくとも2つの発熱体が同一モジュールに搭載されているにも関わらず、除熱流体による冷却を効率よく行うことができる冷却機構体を提供するにある。
【解決手段】発熱体201,202と熱的に接続される柱状及び板状のヒートシンクを備え、これらヒートシンクがそれぞれ除熱流体の流通方向上流側及び下流側に相対的に配置され、除熱流体に柱状ヒートシンクの高さ方向に対し傾斜する速度ベクトルを付与して、柱状ヒートシンクを衝突噴流冷却する第一のダクト10と、除熱流体に板状ヒートシンクの長手方向と該平行の速度ベクトルを付与して、板状ヒートシンクを層流あるいは乱流冷却する第二のダクト20とを備え、これらダクトを連結して、第一のダクトから排出された除熱流体を、層流あるいは乱流冷却する除熱流体へと引き込み合流させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却機構体に関し、より詳細には、同一モジュールの内部に配置されそれぞれ異なる発熱量を有す少なくとも2つの発熱体(熱源)を冷却する冷却機構体に関する。
【背景技術】
【0002】
モジュール内部に配置された発熱体の冷却機構については、ヒートシンク形状、ヒートシンクのフィン表面への加工、フィンのピッチ間隔の最適化手法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。また、除熱流体の流速制御を可能にしたダクトを備えた冷却機構も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−228888号公報
【特許文献2】特開2007−013052号公報
【特許文献3】特開2002−299871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1には、異なる発熱領域に対しての素子冷却用ヒートシンクが記載されている。素子冷却用ヒートシンクでは、異なる発熱領域ごとに、ヒートシンクフィン表面に異なる凹凸加工、あるいは貫通穴加工を施している。さらに、特に後段の圧力損失低減のために、フィンピッチの調整を含めて言及している。しかしながら、前記素子冷却用ヒートシンクが適用可能なのは、フィンの面積が広い場合に限られており、冷却対象となる構造物が小さく熱密度が高い場合は、フィンそのものの物理的な加工が困難となってしまう。
【0005】
上記の特許文献2には、貫流型強制空冷ヒートシンクが記載されている。貫流型強制空冷ヒートシンクは、複数のフィン形状を備える。貫流型強制空冷ヒートシンクの冷却対象となる部品は1種類である。この特定の部品の冷却に三角柱のヒートシンクが使用されているが、その他のフィンは冷却用空気(除熱流体)の最適流路の確保を主な目的としている。よって、それぞれ異なる発熱量を有す複数の部品を最適に冷却することについては、一切言及されていない。
【0006】
ゆえに、小型、薄型であり、かつ、それぞれ異なる発熱量を有す複数の部品を内部に備えるモジュールの冷却については、衝突噴流冷却と層流あるいは乱流冷却の最適な組み合わせ、さらに、それぞれの冷却で使用される除熱流体の流速の相互作用による最適化が望ましく、その手法が求められている。
【0007】
上記の特許文献3には、所望の複数の貫通孔を備えた板金をヒートシンクのフィンとして用い、貫通孔に冷却風の気流(除熱流体)を通すことで冷却を可能にした噴流上流式手法を用いたヒートシンク装置が記載されている。しかしながら、前記ヒートシンク装置では、ヒートシンクのフィンは、冷却風を生成する送風装置(ファン)を取り囲む柵形状に配置するのが好適であり、外部から一方向に冷却風が流れる場合では制限が加わる。よって、送風装置を発熱体上部に備えることが困難である場合は、ヒートシンクを発熱体上部に備えることも同時に困難となる。
【0008】
典型的な従来例による冷却機構体と、部品温度および筐体天板温度について図9(a),(b),(c)を参照して説明する。従来例の冷却機構体は、図9(a),(b)に示すように、発熱量の大きい部品201と発熱量の小さい部品202とを同一モジュール203の内部に備え、モジュール203の筐体天板203aに板状ヒートシンク210を設けた構成となっている。部品201,202としては、例えば、電気・電子部品や光部品などが挙げられる。板状ヒートシンク210は、所定のピッチで隣接して配置される複数の板フィン211で構成される。モジュール203はプリント基板204に実装される。モジュール203を実装したプリント基板204はケース205で覆われる。ケース205には、除熱流体の流入側および排出側のそれぞれにグリル206,207が取り付けられる。なお、発熱量の大きい部品201は、発熱量の小さい部品202よりも除熱流体の流通方向上流側に配置される。
【0009】
外部から流入する除熱流体101は、一方のグリル206を通じてケース205内に流入する。ケース205内の除熱流体131,132,133が板状ヒートシンク210の板フィン211に沿って流通する。板フィン211の外側に流通した除熱流体134は、他方のグリル207へ流通する。そして、他方のグリル207の外側へ流通した除熱流体102は外部へ排出される。このように、除熱流体によって冷却を行っている。
【0010】
上述した構成の冷却機構体において、外部から流入する除熱流体の流速を毎秒1.5mとし、部品201、部品202の発熱量をそれぞれ50W、10Wとした。図9(c)に示すように、温度特性グラフでは、右下がりの特性を示しており、発熱量の大きい部品201が効率よく冷却されておらず、モジュール203の筐体天板203aの温度も100℃に近くなり、実際の使用に適していないことが分かった。これは、板状ヒートシンク210を構成する板フィン211の表面近傍に出現する速度境界層によって、冷却が妨げられているのが主な要因であると考えられる。
【0011】
以上のことから、本発明は上述したような課題を解決するために為されたものであって、小型、薄型であり、かつ、それぞれ異なる発熱量を有す少なくとも2つの発熱体が同一モジュールに搭載されているにも関わらず、除熱流体による冷却を効果的に行うことができる冷却機構体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した課題を解決する本発明に係る冷却機構体は、それぞれ異なる発熱量を有す少なくとも2つの発熱体を備えるモジュールを除熱流体により冷却する冷却機構体であって、前記2つの発熱体における大きい発熱量を有す一方の前記発熱体と熱的に接続される柱状ヒートシンクと、前記2つの発熱体における小さい発熱量を有す他方の前記発熱体と熱的に接続される板状ヒートシンクとを備え、前記柱状ヒートシンクおよび前記板状ヒートシンクは、それぞれ前記除熱流体の流通方向上流側および下流側に相対的に配置され、前記除熱流体に前記柱状ヒートシンクの高さ方向に対し傾斜する速度ベクトルを付与した状態で当該除熱流体を前記柱状ヒートシンクに案内して、前記柱状ヒートシンクを衝突噴流冷却する第一のダクトと、前記除熱流体に前記板状ヒートシンクの長手方向と該平行の速度ベクトルを付与した状態で当該除熱流体を前記板状ヒートシンクに案内して、前記板状ヒートシンクを層流あるいは乱流冷却する第二のダクトとをさらに備え、前記第一のダクトと前記第二のダクトを連結して、前記第一のダクトから排出された前記除熱流体を、前記層流あるいは乱流冷却する前記除熱流体へと引き込み合流させたことを特徴とする。
【0013】
また、前述した課題を解決する本発明に係る冷却機構体は、上述した冷却機構体において、前記モジュールは、自らのフットプリントよりも大きなプリント基板の表面に配置され、前記プリント基板は外部から供給される前記除熱流体の流入口、排出口をそれぞれ両端に具備するケースの内部に配置され、前記ケースの前記除熱流体の流入口側には、前記第一のダクト、前記第二のダクトそれぞれの除熱流体の流入口が配置され、前記第一のダクトの除熱流体の排出口が前記第二のダクトの途中に接続されることを特徴とする。
【0014】
また、前述した課題を解決する本発明に係る冷却機構体は、上述した冷却機構体において、前記第一のダクト、前記第二のダクトそれぞれの除熱流体の流入口は、前記プリント基板上にて隣接して配置されることを特徴とする。
【0015】
また、前述した課題を解決する本発明に係る冷却機構体は、上述した冷却機構体において、前記第一のダクトの除熱流体の流入口の上部に前記第二のダクトの除熱流体の流入口が配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る冷却機構体によれば、それぞれ異なる発熱量を有す少なくとも2つ以上の発熱体となる電気・電子部品や光部品が内部に配置されたモジュールにおいて、発熱量が異なる発熱体毎に異なる手法によって除熱流体による熱輸送を行う冷却機構を提供することができる。これにより、小型、薄型であり、かつ、それぞれ異なる発熱量を有す少なくとも2つの発熱体が同一モジュールに搭載されているにも関わらず、除熱流体による冷却を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1,第2の実施例に係る冷却機構体を説明するための図であって、図1(a)にそのモジュールの平面を示し、図1(b)にその概略側面を示す。
【図2】本発明の第1の実施例に係る冷却機構体が具備する衝突噴流冷却ダクトを説明するための図であって、図2(a)にケースを除いた平面を示し、図2(b)にその概略側面を示す。
【図3】本発明の第1の実施例に係る冷却機構体が具備する層流・乱流ダクトを説明するための図であって、図3(a)にケースを除いた平面を示し、図3(b)にその概略側面を示す。
【図4】本発明の第1の実施例に係る冷却機構体の上方から見た斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施例に係る冷却機構体の下方から見た斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施例に係る冷却機構体を説明するための図であって、図6(a)にその概略側面を示し、図6(b)にその温度分布を示す。
【図7】本発明の第2の実施例に係る冷却機構体が具備する衝突噴流冷却ダクトを説明するための図であって、図7(a)にケースを除いた平面を示し、図7(b)にその概略側面を示す。
【図8】本発明の第2の実施例に係る冷却機構体が具備する層流・乱流ダクトを説明するための図であって、図8(a)にケースを除いた平面を示し、図8(b)にその概略側面を示す。
【図9】従来例による冷却機構体を説明するための図であって、図9(a)にケースを除いた平面を示し、図9(b)にその概略側面を示し、図9(c)にその温度分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る冷却機構体を実施するための形態について、各実施例にて具体的に説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の第1の実施例に係る冷却機構体について、図1〜図6を参照して具体的に説明する。本実施例は、例えば、ラインカードのプリント基板の面積が比較的広く、ラインカードの厚みが薄い場合などを想定したものである。
【0020】
本実施例に係る冷却機構体は、図1〜図4に示すように、それぞれ異なる発熱量を有す2つの部品、すなわち、発熱量の大きい部品201と発熱量の小さい部品202とを内部に備えたモジュール203に適用される。モジュール203の筐体天板203aにおける部品201および部品202に対向する箇所には、アルミニウム製の柱状ヒートシンク1およびアルミニウム製の板状ヒートシンク3がそれぞれ接着、あるいは一体成型されている。つまり、発熱量の大きい部品201は、モジュール203の筐体天板203aを介して、柱状ヒートシンク1と熱的に接続されている。発熱量の小さい部品202は、モジュール203の筐体天板203aを介して、板状ヒートシンク3と熱的に接続されている。なお、柱状ヒートシンク1は、所定のピッチで配置される複数の四角柱フィン2で構成される。板状ヒートシンク3は、モジュール203の幅方向にて所定のピッチで配置される複数の平板フィン4で構成される。部品201は、部品202よりも後述する除熱流体の流通方向上流側に配置される。
【0021】
モジュール203は、自らのフットプリントよりも十分大きなプリント基板204の表面上に実装される。プリント基板204はケース205で覆われる。ケース205はモジュール203の幅方向外側に配置される2枚の側壁板(図示省略)を備える。ケース205には、除熱流体の流入口および排出口の機能を備えたグリル板206,207が取り付けられる。これらによって、プリント基板204自体の機械的強度が確保されたうえで、底面をプリント基板204とすると共に、上面をケース205とし、2枚のグリル板206,207、前記2枚の側壁板によって、内部にモジュール203を備えた閉空間を構成している。閉空間の外部から供給される除熱流体101は、一方のグリル板206で構成される流入口を通り内部に流れ込み、他方のグリル板207で構成される排出口を通じて排出される。内部から排出された除熱流体102は、外部へ排出される。
【0022】
さらに、本実施例に係る冷却機構体は、グリル206近傍の除熱流体101を柱状ヒートシンク1に案内する第一のダクト(衝突噴流冷却ダクト)10と、グリル206近傍の除熱流体101を板状ヒートシンク3に案内する第二のダクト(層流・乱流ダクト)20とを備える。第一のダクト10および第二のダクト20としては、例えば、それぞれ樹脂製のものが挙げられる。
【0023】
第一のダクト10は、図2(a),(b)、図4、および図5に示すように、筒状であって、両端に除熱流体の流入口10aおよび排出口10bを備える。第一のダクト10は、天井板11、天井板11の側部に接続する側板12,13、側板12,13の下端部に接続する底板14を備える。天井板11は、平面部11aと、平面部11aの後端部に接続する傾斜部11bとを備える。平面部11aと傾斜部11bとの接続箇所が屈曲部11cをなしている。底板14は、第一の傾斜部14aと、第一の傾斜部14aの後端部に接続する第二の傾斜部14bとを備える。第一の傾斜部14aと第二の傾斜部14bとの接続箇所が屈曲部14cをなしている。第一のダクト10を所定の位置、すなわち、底板14の第二の傾斜部14bの後端部をモジュール203の筐体天板203aの前端部203b付近に取り付けると共に、天井板11の平面部11aを略水平に配置したときに、傾斜部11bは平面部11aの延在方向に対し傾斜しモジュール203の筐体天板203a側へ延在する。第一の傾斜部14aは第一のダクト10の長さ方向に対し傾斜し天井板11の平面部11a側へ向けて延在し、第二の傾斜部11bは第一のダクト10の長さ方向に対し傾斜しモジュール203の筐体天板203a側へ延在する。また、天井板11の傾斜部11bは、柱状ヒートシンク1の四角柱フィン2の上方を覆うことになる。
【0024】
天井板11の屈曲部11cと底板14の屈曲部14cとの間の領域は、前記領域以外の箇所、例えば流入口10aおよび排出口10bと比べて小径であってウエスト部15をなしている。
【0025】
このように第一のダクト10がウエスト部15を備え、第一のダクト10の排出口10b側の天井板11に傾斜部11bを設けたことにより、除熱流体には、四角柱フィン2の長手方向に対して傾斜する方向へ流通する速度ベクトルが付与されることになる。つまり、除熱流体の速度ベクトルが第一のダクト10により変化することになる。よって、四角柱フィン2を冷却する除熱流体は、四角柱フィン2の長手方向に対し角度を有す速度ベクトル104,105を有すことになり、第一のダクト10内に流通した除熱流体103が四角柱フィン2の長手方向に対して傾斜角を有して衝突することになる。前記傾斜角としては、例えば、10度以上であれば良い。これにより、第一のダクト10内に流入した除熱流体103はそれぞれの四角柱フィン2に対し衝突噴流することになる。この傾斜角が10度よりも小さいと、第一のダクト10に流入した除熱流体103がそれぞれの四角柱フィン2と衝突噴流しないことが起こり得るためである。よって、第一のダクト10を設けたことにより、衝突噴流冷却を実現し、高効率な冷却を実現している。
【0026】
第二のダクト20は、図3(a),(b)、図4、および図5に示すように、筒状であって、グリル206近傍の除熱流体101が流入する2つの流入口20a,20bと、第一のダクト10から排出された除熱流体106が流入する流入口(開口部)20cと、内部を流通した除熱流体を排出する排出口20dとを備える。第二のダクト20は、第一の通路21と、第二の通路26と、第一のダクト10、第一,第二の通路21,26の後端部に接続する連結部31と、連結部31の後端部に接続する第三の通路40とを備える。第一の通路21および第二の通路26は、それぞれ第一のダクト10の側方側に隣接して配置される。第一の通路21および第二の通路26は、第二のダクト20の長さ方向にてほぼ直線状に延在する。
【0027】
第一の通路21は、天井板22、天井板22の側部に接続する側板23,24、側板23,24の下端部に接続する底板25を備える。天井板22は、平面部22aと、平面部22aの後端部に接続する傾斜部22bとを備える。底板25は、平面部25aと、平面部25aの後端部に接続する傾斜部25bとを備える。第二の通路26は、第一の通路21と同形状であって、天井板27、天井板27の側部に接続する側板28,29、側板28,29の下端部に接続する底板30を備える。天井板27は、平面部27aと、平面部27aの後端部に接続する傾斜部27bとを備える。底板30は、平面部30aと、平面部30aの後端部に接続する傾斜部30bとを備える。
【0028】
連結部31は、天井板32、天井板32の側部に接続する側板34,35、側板34,35のそれぞれの下端部に接続する底板37,38、天井板32の前端部に接続する前縦板33を備える。天井板32は、第一の通路21の天井板22の後端部および第二の通路26の天井板27の後端部に接続している。第一の通路21の天井板22は、平面部22aと、平面部22aの後端部に接続する傾斜部22bを備える。第二の通路26の天井板27も、平面部27aと、平面部27aの後端部に接続する傾斜部27bを備える。側板34および側板35は、それぞれ第一の通路21の側板23および第二の通路26の側板28に接続している。側板34は、第二のダクト20の幅方向中心部に向けて延在する傾斜部34aと、傾斜部34aの後端部に接続し第二のダクト20の幅方向に延在する平面部34bとを備える。側板35も、第二のダクト20の幅方向中心部に向けて延在する傾斜部35aと、傾斜部35aの後端部に接続し第二のダクト20の幅方向に延在する平面部35bとを備える。前縦板33は、第一のダクト10の天井板11の後端部、第一の通路21の側板24、第二の通路26の側板29に接続している。連結部31において、第一のダクト10、第一の通路21、第二の通路26に連結すると共に、後述する第三の通路40に連結する箇所が、流体加速流入口39をなしている。これにより、第一のダクト10内で柱状ヒートシンク1を冷却した後の除熱流体106は、第二のダクト20の下流で合流し、加速されることになる。
【0029】
第三の通路40は、連結部31の天井板32の後端部に接続する天井板41、連結部31の側板34,35の後端部に接続すると共に、天井板41の側部に接続する側板42,43を備える。つまり、第三の通路40により、板状ヒートシンク3の上方および側方が覆われることになる。これにより、第三の通路40内に流入した除熱流体121,122,123に板状ヒートシンク3の平板フィン4の長手方向と該平行の速度ベクトルが付与した状態で当該除熱流体を板状ヒートシンク3に案内して、前記除熱流体により板状ヒートシンク3を層流あるいは乱流冷却することになる。
【0030】
上述したように、第二のダクト20はその両端に除熱流体の流入口20a,20bと排出口20dを備え、さらに、本体の長手方向の途中にウエスト構造を備えると同時に、流体加速流入口39を備え、前記流体加速流入口39が第一のダクト10の排出口10bと物理的に接続されることから、第一のダクト10の排出口10bから排出される除熱流体106は第二のダクト20の第一,第二の通路21,26を通過する除熱流体108の引き込みを加速させ、除熱流体の流速加速が行われた上で、平板フィン4を冷却する除熱流体121,122,123を形成する。つまり、除熱流体の引き込み合流が行われる。このように除熱流体121,122,123の流速が増したことにより、平板フィン4表面近傍に出現する速度境界層の低減が行われ、発熱量の小さい部品202を高効率に冷却する。
【0031】
なお、第1の実施例では、第二のダクト20の流入口20a,20bは第一のダクト10の流入口10aとプリント基板204表面の同一面に配置される。
【0032】
ここで、上述した構成の冷却機構体を用い、部品温度および筐体天板温度を測定した結果について、図6(a),(b)を参照して説明する。なお、外部から流入する除熱流体の流速は毎秒1.5m、発熱量の大きい部品201、小さい部品202の発熱量はそれぞれ50W、10Wとし、先の従来例での図9に示したパラメータと同一条件とした。図6(b)に示されるように、モジュール203の筐体天板203aの温度は右上がりの特性を示すが、発熱量の大きい部品201が約80℃に収まることが明らかとなった。これは、第一のダクト10による除熱流体の衝突噴流によって四角柱フィン2表面に速度境界層が原理的に形成されず、除熱流体が効率よく冷却していることの現れである。さらに、発熱量の小さな部品202も良好に冷却されており、平板フィン4間を流れる除熱流体が本冷却機構体によって加速されていることの現れである。
【0033】
したがって、本実施例に係る冷却機構体によれば、除熱流体の引き込み合流によって、衝突噴流に用いる除熱流体の排気抵抗を低下させると共に、層流あるいは乱流冷却に用いる除熱流体の流速を増加させ、板状ヒートシンク3表面に出現する除熱流体の速度境界層を薄くすることができ、柱状ヒートシンク1と板状ヒートシンク3の双方の冷却効率を向上させることが可能である。よって、架内のラインカードの品種ごとに最適な除熱流体(冷却風)取り入れ口となるようにすることが可能である。これにより、小型、薄型であり、かつ、それぞれ異なる発熱量を有す少なくとも2つの発熱体が同一モジュールに搭載されているにも関わらず、除熱流体による冷却を効果的に行うことができる。
【実施例2】
【0034】
本発明の第2の実施例に係る冷却機構体について、図1および図7ならびに図8を参照して説明する。本実施例は、例えば、プリント基板の面積が比較的狭く、ラインカードの厚みが厚い場合などを想定したものである。本実施例は、上述した第1の実施例に係る冷却機構体と同様、それぞれ異なる発熱量を有す2つの部品、すなわち、発熱量の大きい部品と発熱量の小さい部品とを内部に備えたモジュールに適用される。また、モジュールの筐体天板には、発熱量の大きい部品と熱的に接続して柱状ヒートシンクが設けられると共に、発熱量の小さい部品と熱的に接続して板状ヒートシンクが設けられる。本実施例では、上述した第1の実施例に係る冷却機構体と同じ部品には同一の符号を付記しその説明を省略する。
【0035】
本実施例に係る冷却機構体は、図1、図7、図8に示すように、グリル206近傍の除熱流体101を複数の四角柱フィン2で構成される柱状ヒートシンクに案内する第一のダクト(衝突噴流冷却ダクト)50と、グリル206近傍の除熱流体101を複数の平板フィン4で構成される板状ヒートシンクに案内する第二のダクト(層流・乱流ダクト)60とを備える。第一のダクト50および第二のダクト60をケース205内の所定の位置に配置したときに、第一のダクト50の除熱流体の流入口50aと、第二のダクト60の除熱流体の流入口60aが上下方向にて隣接する。
【0036】
第一のダクト50は、図7に示すように、筒状であって、両端に除熱流体の流入口50aおよび排出口50bを備える。第一のダクト50は、天井板51と、天井板51の側部に接続する側板52,53と、側板52,53の下端部に接続する底板54とを備える。天井板51は、第一の傾斜部51aと、第一の傾斜部51aの後端部に接続する第二の傾斜部51bとを備える。第一の傾斜部51aと第二の傾斜部51bとの接続箇所が屈曲部51cをなしている。底板54は、第一の傾斜部54aと、第一の傾斜部54aの後端部に接続する第二の傾斜部54bとを備える。第一の傾斜部54aと第二の傾斜部54bとの接続箇所が屈曲部54cをなしている。第一のダクト50を所定の位置、底板54の第二の傾斜部54bの後端部をモジュール203の筐体天板203aの前端部203b付近に取り付けたときに、第一の傾斜部51aは第一のダクト50の長さ方向に対し傾斜しケース205側へ延在し、第二の傾斜部51bは第一のダクト50の長さ方向に対し傾斜しモジュール203の筐体天板203a側へ延在する。第一の傾斜部54aは第一のダクト50の長さ方向に対し傾斜し天井板51の第二の傾斜部51b側へ向けて延在し、第二の傾斜部54bは第一のダクト50の長さ方向に対し傾斜しモジュール203の筐体天板203a側へ延在する。また、天井板51の第二の傾斜部51bは、柱状ヒートシンク1の四角柱フィン2の上方を覆うことになる。
【0037】
天井板51の屈曲部51cと底板54の屈曲部54cとの間の領域は、前記領域以外の箇所、例えば流入口50aおよび排出口50bと比べて小径であってウエスト部55をなしている。
【0038】
このように第一のダクト50がウエスト部55を備え、第一のダクト50の排出口50b側の天井板51に第二の傾斜部51bを設けたことにより、除熱流体には、四角柱フィン2の長手方向に対して傾斜する方向へ流通する速度ベクトルが付与されることになる。つまり、除熱流体の速度ベクトルが第一のダクト50により変化することになる。よって、四角柱フィン2を冷却する除熱流体は、四角柱フィン2の長手方向に対し角度を有す速度ベクトル112を有することになり、第一のダクト50内に流通した除熱流体111が四角柱フィン2の長手方向に対して傾斜角を有して衝突することになる。前記傾斜角としては、例えば10度以上であれば良い。これにより、第一のダクト50内に流入した除熱流体111がそれぞれの四角柱フィン2に対し衝突噴流することになる。この傾斜角が10度よりも小さいと、第一のダクト50に流入した除熱流体111がそれぞれの四角柱フィン2と衝突噴流しないことが起こり得るためである。よって、第一のダクト50を設けたことにより、衝突噴流冷却を実現し、高効率な冷却を実現している。
【0039】
第二のダクト60は、図8に示すように、筒状であって、グリル206近傍の除熱流体101が流入する1つの流入口60aと、第一のダクト50から排出された除熱流体113が流入する流入口(開口部)60bと、内部を流通した除熱流体を排出する排出口60cとを備える。第二のダクト60は、第一の通路61と、第一のダクト50、第一の通路の後端部に接続する連結部70と、連結部70の後端部に接続する第二の通路75とを備える。第一の通路61は、第一のダクト50の上方側に配置される。第一の通路61は、第二のダクト60の長さ方向にてほぼ直線状に延在する。
【0040】
第一の通路61は、天井板62、天井板62の側部に接続する側板63,64、側板63,64の下端部に接続する底板65を備える。底板65は、第一の傾斜部65aと、第一の傾斜部65aの後端部に接続する第二の傾斜部65bとを備える。第一の傾斜部65aと第二の傾斜部65bの接続箇所が屈曲部65cをなしている。第二のダクト60を所定の位置に配置したときに、第一の傾斜部65aは、第二のダクト60の長さ方向に対し傾斜し第二のダクト60の天井板62側へ向けて延在し、第二の傾斜部65bは第二のダクト60の長さ方向に対し傾斜しモジュール203の筐体天井板203a側へ延在する。第二の傾斜部65bの後端部が第一のダクト50の天井板51bの後端部に接続している。第一の通路61の側板63,64が第一のダクト50の側板52,53と接続している。
【0041】
連結部70は、第一の通路61の天井板62の後端部に接続する天井板71と、天井板71の側部に接続する側板72,73とを備える。天井板71は、第二のダクト60の長さ方向に対して傾斜しモジュール203の筐体天板203a側に延在する。天井板71の後端部は、後述する第二の通路75の天井板76の前端部に接続している。これにより、第一のダクト50内で柱状ヒートシンク1を冷却した後の除熱流体113は、第二のダクト60の下流で合流し、加速されることになる。
【0042】
第二の通路75は、連結部70の天井板71の後端部に接続する天井板76と、連結部70の側板72,73に接続すると共に、天井板76の側部に接続する側板77,78を備える。つまり、第二の通路75により、板状ヒートシンク3の上方および側方が覆われることになる。これにより、第二の通路75内に流入した除熱流体124,125に板状ヒートシンク3の平板フィン4の長手方向と該平行の速度ベクトルが付与した状態で当該除熱流体を板状ヒートシンク3に案内して、前記除熱流体により板状ヒートシンク3を層流あるいは乱流冷却することになる。
【0043】
上述したように、第二のダクト60はその両端に除熱流体の流入口60aと排出口60cを備え、さらに、本体の長手方向の途中にウエスト構造を備えると同時に、流体加速流入口をなす開口部60bを備え、前記開口部60bが第一のダクト50の排出口50bと物理的に接続されることから、第一のダクト50の排出口50bから排出される除熱流体113は第二のダクト60を通過する除熱流体114,115,116の引き込みを加速させ、除熱流体の流速加速が行われた上で、平板フィン4を冷却する除熱流体124,125,126を形成する。つまり、除熱流体の引き込み合流が行われる。このように除熱流体124,125,126の流速が増したことにより、平板フィン4表面近傍に出現する速度境界層の低減が行われ、発熱量の小さい部品202を高効率に冷却する。
【0044】
なお、第2の実施例では、第二のダクトの流入口60aは第一のダクト50の流入口50aとプリント基板204表面の上部に配置される。
【0045】
したがって、本実施例に係る冷却機構体によれば、第1の実施例に係る冷却機構体と同様、除熱流体の引き込み合流によって、衝突噴流に用いる除熱流体の排気抵抗を低下させると共に、層流あるいは乱流冷却に用いる除熱流体の流速を増加させ、板状ヒートシンク3表面に出現する除熱流体の速度境界層を薄くすることができ、柱状ヒートシンク1と板状ヒートシンク3の双方の冷却効率を向上させることが可能である。よって、架内のラインカードの品種ごとに最適な除熱流体(冷却風)取り入れ口となるようにすることが可能である。これにより、小型、薄型であり、かつ、それぞれ異なる発熱量を有す少なくとも2つの発熱体が同一モジュールに搭載されているにも関わらず、除熱流体による冷却を効果的に行うことができる。
【0046】
なお、上記実施例では、ヒートシンク1,3をアルミヒートシンク、ダクト10,20,50,60を樹脂ダクトとした冷却機構体について説明したが、それぞれの材料をこれに限ることなく、銅ヒートシンクと銅板金ダクト、アルミヒートシンクとSUS板金ダクトなどの組み合わせで適用した冷却機構体とすることも可能である。このような冷却機構体であっても、上記実施例と同様な作用効果を奏する。
【0047】
さらに、上記では、柱状ヒートシンク1を四角柱とし、板状ヒートシンク3を平板とした冷却機構体について説明したが、柱状ヒートシンクを三角柱や円柱とし、板状ヒートシンクを波板とした冷却機構体とすることも可能である。このような冷却機構体であっても、上記実施例と同様な作用効果を奏する。
【0048】
また、上記では、冷却対象となるモジュール内部に備える発熱体の数を2個とした冷却機構体について説明したが、3個以上の発熱体とした場合であっても、高発熱、低発熱のグループに分割整理し、高発熱のグループに対し柱状ヒートシンクを熱的に接続して設けると共に、第一のダクト(衝突噴流冷却ダクト)を設ける一方、低発熱のグループに対し板状ヒートシンクを熱的に接続して設けると共に、第二のダクト(層流・乱流ダクト)を設けた冷却機構体とすることも可能である。このような冷却機構体であっても、上記実施例と同様な作用効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る冷却装置は、小型、薄型であり、かつ、それぞれ発熱量の異なる少なくとも2つの部品が同一モジュールに搭載されているにも関わらず、除熱流体による冷却を効果的に行うことができるため、電子機器を製造する各種産業において、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 柱状ヒートシンク
2 四角柱フィン
3 板状ヒートシンク
4 平板フィン
10 第一のダクト(衝突噴流冷却ダクト)
10a 流入口
10b 排出口
11 天井板
12,13 側板
14 底板
15 ウエスト部
20 第二のダクト(層流・乱流ダクト)
21 第一の通路
26 第二の通路
31 連結部
40 第三の通路
39 流体加速流入口
50 第一のダクト(衝突噴流冷却ダクト)
55 ウエスト部
60 第二のダクト(層流・乱流ダクト)
60b 開口部(流体加速流入口)
101,102 除熱流体
103〜108 除熱流体
111〜116 除熱流体
121〜126 除熱流体
201 発熱量の大きい部品
202 発熱量の小さい部品
203 モジュール
203a 筐体天板
204 プリント基板
205 ケース
206,207 グリル板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる発熱量を有す少なくとも2つの発熱体を備えるモジュールを除熱流体により冷却する冷却機構体であって、
前記2つの発熱体における大きい発熱量を有す一方の前記発熱体と熱的に接続される柱状ヒートシンクと、
前記2つの発熱体における小さい発熱量を有す他方の前記発熱体と熱的に接続される板状ヒートシンクとを備え、
前記柱状ヒートシンクおよび前記板状ヒートシンクは、それぞれ前記除熱流体の流通方向上流側および下流側に相対的に配置され、
前記除熱流体に前記柱状ヒートシンクの高さ方向に対し傾斜する速度ベクトルを付与した状態で当該除熱流体を前記柱状ヒートシンクに案内して、前記柱状ヒートシンクを衝突噴流冷却する第一のダクトと、
前記除熱流体に前記板状ヒートシンクの長手方向と該平行の速度ベクトルを付与した状態で当該除熱流体を前記板状ヒートシンクに案内して、前記板状ヒートシンクを層流あるいは乱流冷却する第二のダクトとをさらに備え、
前記第一のダクトと前記第二のダクトを連結して、前記第一のダクトから排出された前記除熱流体を、前記層流あるいは乱流冷却する前記除熱流体へと引き込み合流させた
ことを特徴とする冷却機構体。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却機構体において、
前記モジュールは、自らのフットプリントよりも大きなプリント基板の表面に配置され、
前記プリント基板は外部から供給される前記除熱流体の流入口、排出口をそれぞれ両端に具備するケースの内部に配置され、
前記ケースの前記除熱流体の流入口側には、前記第一のダクト、前記第二のダクトそれぞれの除熱流体の流入口が配置され、
前記第一のダクトの除熱流体の排出口が前記第二のダクトの途中に接続される
ことを特徴とする冷却機構体。
【請求項3】
請求項2に記載の冷却機構体において、
前記第一のダクト、前記第二のダクトそれぞれの除熱流体の流入口は、前記プリント基板上にて隣接して配置される
ことを特徴とする冷却機構体。
【請求項4】
請求項2に記載の冷却機構体において、
前記第一のダクトの除熱流体の流入口の上部に前記第二のダクトの除熱流体の流入口が配置される
ことを特徴とする冷却機構体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−16569(P2013−16569A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146969(P2011−146969)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】