説明

冷却流体カップリング組立体

【課題】熱伝達を改善しかつホットスポットの発生を少なくしたカップリング組立体を提供する。
【解決手段】力を伝達するのに使用するカップリング組立体10は、回転ディスク18を少なくとも部分的に包囲し、回転ディスク18に係合する環状の力伝達表面を有するプレート部分60を含むハウジング32を有する。冷却流体通路64は、力伝達表面から反対側のプレート部分の側面によって少なくとも部分的に形成され、この力伝達表面の内側面60bに複数のくぼみ61が配置される。くぼみ61は、冷却流体通路64を通って冷却流体が流れる径路に乱流及び二次流を作り出す。冷却流体入口68は、冷却流体通路の径方向外側部分に流体連通する断面積の大きな部分を有する通路を含む。入口通路部分70は、小さい断面積を有し、冷却流体通路64の径方向内側部分に流体連通する。選択的にリブが、冷却流体通路の径方向内側及び外側部分を横切って伸びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチおよび/またはブレーキとなり得る新規かつ改良されたカップリング組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキとして利用されるカップリング組立体は、特許文献1に開示されている。このカップリング組立体は、ロータとハウジングの間の相対回転を遅らせるために、冷却流体(水)の流れを利用して、ロータに係合する銅製の摩擦プレートを冷却する。他のカップリング組立体は、特許文献2及び特許文献3に開示されている。
【0003】
これらのカップリング組立体を使用している間、カップリング組立体の離脱状態から係合状態への作動時に熱が発生する。カップリング組立体の構成部品は、冷却流体(水)の流れにさらされて、カップリング組立体の構成部品から熱を冷却流体に伝達するといわれている。カップリング組立体のこれらの構成部品は、冷却流体の流れにさらされるときでさえ、カップリング組立体の構成部品に熱を蓄積する傾向がある。非常に厳しい作動条件の下で熱の蓄積によって、カップリング組立体の構成部品上に過度のホットスポットを形成する傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,262,789号明細書
【特許文献2】米国特許第3,530,965号明細書
【特許文献3】米国特許第5,577,581号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、カップリング組立体の構成部品から熱の伝達を促進するために、冷却流体の改善された流れを有する、新規かつ改良された流体で冷却されるカップリング組立体を提供する。
【0006】
カップリング組立体の構成部品から冷却流体の流れへの対流による熱伝達は、銅製の摩擦プレートの表面にくぼみを設けることにより、冷却流体の乱流及び二次流を作り出すことによって促進され、その結果、熱伝達係数が改善する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
カップリング組立体は、ハウジングによって少なくとも部分的に包囲されている回転可能ディスクを含んでいる。ハウジングは、回転可能ディスクの側面領域に係合可能な力伝達表面を有するプレート部分を有し、ハウジングとディスクとの間の相対回転を遅らせる。ハウジングは、また、冷却流体通路を有しており、この冷却流体通路は、力伝達表面に対向するプレート部分の側面によって少なくとも部分的に形成される。
【0008】
熱伝達を改善しかつホットスポットの発生を少なくするために、プレート部分の内側表面に配置された複数のくぼみが、冷却流体通路内に乱流及び二次流を作り出す。冷却流体通路内に突出するリブを設けることにより、冷却流体の流れの中に付加的な乱流が導かれる。
【0009】
冷却流体通路への流体入口は、冷却流体通路の径方向外側部分に流体連通した比較的大きい断面積を有することが可能である。この流体入口は、冷却流体通路の径方向内側部分に流体連通した比較的小さい断面積を有することが可能である。
【0010】
本発明に従って構成されたカップリング組立体は、多くの異なる特徴を有しており、この特徴は、ここで開示されるように、一緒に使用されると有益である。しかし、これらの特徴は、他の特徴と分離してまたは組み合わせて利用することができる。例えば、冷却流体通路の径方向内側部分と径方向外側部分に対して、大きさが異なる冷却流体通路は、冷却流体通路内に複数の突起を有して使用することができる。他の例では、これらの突起は、リブを含んでも良いし含まなくても良い。
【0011】
ここで開示されたカップリング組立体は、ブレーキとして利用されるが、このカップリング組立体は、クラッチとしても利用することができることは理解されるべきである。カップリング組立体は、クラッチとブレーキの組立体とすることも考えられる。
【0012】
本主題の開示内容の上記及び他の特徴は、添付の図面と関連して記載たされた以下の記述を考慮するとき、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に従って構成されたカップリング組立体の前方正面面図である。
【図2】カップリング組立体の構成をさらに説明する、図1の線2−2に沿ってみた拡大断面図である。
【図3】カップリング組立体の摩擦プレートとハウジングの他の部分との関係を説明する、図2の線3−3に沿ってみた部分的に破断した斜視図である。
【図4】図1,2のカップリング組立体のハウジング部分に対する冷却流体入口と冷却出口の関係を説明する、図3の線4−4に沿ってみた断面図である。
【図5】本発明の実施形態における摩擦プレート部分の下側表面の構成を説明する平面図である。
【図6】摩擦プレートの部分を説明する断片的な拡大斜視図である。
【図7】本発明の実施形態におけるくぼみの一形式の構成を説明する断片的な拡大断面図である。
【図8】摩擦プレートの内側表面の断片的な拡大斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
カップリング組立体10(図1及び図2)は、回転可能な入力部材12と静止部材14(図2)の間に力を伝達するために用いられる。本実施形態では、カップリング組立体10は、ブレーキとして利用され、かつ力は、カップリング組立体10によって静止部材14と入力部材12の間に伝達されて、回転に対して入力部材を保持する。カップリング組立体10は、クラッチとして利用される場合、静止部材14は、カップリング組立体10を介して入力部材12から静止部材14に伝達された力の影響の下で回転可能になる。カップリング組立体10は、ブレーキ及びクラッチの組立体の組合せとなり得ることを理解すべきである。
【0015】
カップリング組立体10(図2)は、回転可能な環状ディスク18を含み、このディスクに入力部材12が連結される。本実施形態では、入力部材12は、回転可能な入力軸(図示略)に接続されるギアである。ギア12の周囲に設けた円形の歯列は、ディスク18の径方向内側部分20に形成された対応する歯とかみ合い状態で受け入れられる。環状の摩擦パッド又は部材24,26は、ディスク18の軸方向に対向する側面に取り付けられ、このディスクと入力部材12とは同軸関係にある。
【0016】
ディスク18は、ハウジング組立体32によって少なくとも部分的に包囲されている。このハウジングアセンブリ32は、静止部材14に固定される。上述したように、カップリング組立体10が、ブレーキとして利用されるとき、静止部材14は、静止状態である。しかし、カップリング組立体10がクラッチとして利用される場合、ハウジング組立体32と静止部材14は、回転可能である。
【0017】
ハウジング組立体32は、カバーまたはシリンダ38、移動可能な圧力プレート40(図2−図4)、及び取り付けフランジまたは静止圧力プレート42(図2)を含む。環状ピストン46(図2)は、カバーまたはシリンダ38内に形成された環状室48に取り付けられる。カバーまたはシリンダ38と取付フランジ42は、固定して相互に連結され、これらは、互いに対して軸方向に移動できない又は回転できない。しかし、圧力プレート40は、ピストン46から圧力プレート40に伝達される力の影響の下、軸方向に伸びる支持ポスト52に沿って移動することができる。
【0018】
環状室48が、空気等の適当な流体で加圧されると、ピストン46は、ディスク18の左側面(図2に見えるように)に配置された摩擦パッド24に対して圧力プレート40を確実に押圧する。この力により、ディスク18を入力部材12上の歯に沿って軸方向に移動させ、取付フランジ又は圧力プレート42に対して摩擦パッド26を(図2に見えるように)右側に押圧する。取付フランジ又は圧力プレート42は、静止部材14に固定して連結されるので、この結果、ディスク18が、圧力プレート40と、取付フランジ又は圧力プレート42との間に確実に把持され、ハウジング組立体32に対してディスクの回転を遅らせる。
【0019】
移動可能な環状の圧力プレート40は、ベース56(図3及び図4)とプレート部分60を含んでいる。この環状のプレート部分60は、環状のベース56に同軸でかつ固定して連結される。プレート部分60は、ベース56と協働して、環状の冷却流体通路64を形成する。
【0020】
環状の冷却流体通路64は、圧力プレート40のベース56内に形成した入口68(図2、図3、及び図4)を有する。入口68を通る流体の流れは、ベース56内の入口通路70(図4)に沿って導かれる。入口通路70は、冷却流体通路64(図2及び図3)と流体連通で連結される。本発明の本実施形態では、冷却流体通路64を通って導かれる冷却流体は、水である。しかし、所望であれば、異なる冷却流体を用いることができる。
【0021】
流体は、環状の冷却流体通路64から出口通路76(図2及び図4)を通って、冷却流体通路64に流体連通で接続された出口74に導かれる。流体は、冷却流体通路64から出口通路76及び出口74を通って流れる。出口通路76は、入口通路70から径方向に対向して配置されている。
【0022】
カップリング組立体10は、離脱状態(図2)にあるとき、入力部材12とディスク18は、入力部材に連結される駆動軸(図示略)によって回転される。このとき、摩擦パッド24は、圧力プレート40の摩擦プレート部分60から離間している。同様に、摩擦パッド26は、静止の取付フランジ又は圧力プレート42から離間している。
【0023】
カップリング組立体10が離脱状態から係合状態に向かって作動されるとき、ピストン64(図2)は、回転するディスク18に向けて軸方向に圧力プレート40を動かす。この結果、圧力プレート40の摩擦プレート部分60を、回転ディスク18上の摩擦パッドに対して摺動係合させる。圧力プレート40の摩擦プレート部分60と摩擦パッドとの係合により、摩擦パッドが、摩擦プレート部分の表面に沿って摺動するので、熱が発生する。この熱は、摩擦プレート部分60を介して冷却流体通路64内の冷却流体に伝達される。
【0024】
摩擦プレート部分60は、多くの異なる材料から作ることができるけれども、本実施形態では、摩擦プレート部分60は、銅または銅合金で作られる。摩擦プレート部分60の銅材料は、環状の冷却流体通路64内の冷却流体に熱を導くために有効である。冷却流体通路64内の冷却流体に伝達される熱は、カップリング組立体10から、出口74からの冷却流体の流れの中に導かれる。これにより、カップリング組立体10の摩擦プレート部分60及び他の構成部品の過度の熱を防止する。
【0025】
摩擦プレート部分60は、図3及び図4に見られるように、略平坦な環状の摩擦表面の外側面60aと、図5に示されるように環状の下側の内側面60bとを含む。この下側または内側面60bは、その表面上に複数のくぼみ61を有する。くぼみ61は、一実施形態における熱伝達を改善するための乱流及び二次流を作り出すために、下側表面60b全体をほぼ覆うように位置し、または、種々の配置で、1つの装置または列に位置している。
【0026】
くぼみ61(indentations)は、下側表面にディンプル加工、プレス、スタンプ、切断又は機械加工で作られ、どんな形または形状を有することもできる。1つの実施形態では、くぼみ61は、半円形状のディンプル、または半球形状のくぼみを形成する凹部形状である。この実施形態における複数のディンプルは、図7及び図8にできる限り見られるように、半球形状を有するディンプルに対して、直径(D)に対する深さ(d)の比率が、略0.06〜0.25の範囲にある。冷却通路64の高さ(H)に対するディンプル間のピッチ(p)の比率は、略2.5〜略4.5の範囲にある。ディンプル61の直径(D)に対する冷却流体通路64の高さ(H)は、略0.2〜略1の範囲にある。他の実施形態では、別の形状を含むことができ、四角形状、矩形状、三角形状、または多角形状に制限されない。
【0027】
冷却流体通路64は、複数のくぼみ61を用いて構成され、摩擦プレート部分60から冷却流体通路内の冷却流体の流れに熱の伝達を促進する。冷却流体通路64内の流体への熱伝達は、熱伝達効率を改良するための乱流及び二次流を作り出すくぼみ61によって促進される。別の実施形態では、改善された熱伝達は、冷却流体通路の径方向内側部分よりも冷却流体通路64の径方向外側部分における冷却流体のより大きな流れを供給することによって促進される。
【0028】
さらに別の実施形態では、冷却流体通路64の深さを減少させることによって改善された熱伝達を促進し、熱伝達は、くぼみ61を用いて作り出される乱流の増加した流れの選択領域を有することによって改善される。この増加した乱流の流れは、摩擦プレート部分60の内側面に沿って移動する冷却流体と、圧力プレート40のベース56の内側面に沿って移動する冷却流体との混合を促進する。冷却流体通路64の断面積が減少するけれども、冷却流体通路を介して冷却流体の流れの容積率は減少しない。もちろん、この結果、流体が冷却流体通路64を介して流れる速度は増加する。
【0029】
冷却流体通路64は、圧力プレート40のプレート部分60の環状形状に対応する環状形状を有する。冷却流体は、対向する方向に流れ、即ち、時計方向と反時計方向に、入口68(図2、図3及び図4)から出口74(図2及び図4)に流れる。冷却流体の流れは、冷却流体が入口通路70(図4)から冷却流体通路64に流れた後、直ちに、一方向の流体の流れと、反対方向の流体の流れに分割される。
【0030】
冷却流体通路64は、環状の壁部分またはリブ86を軸方向に突出させることにより、環状の径方向外側の冷却流体通路部分82(図6)と環状の径方向内側の冷却流体通路部分84に分割される。付加的なリブ86が、さらに支持体用として含まれる。代わりに、リブ86は、付加的な支持体を提供するためにより広く作ることができる。径方向外側通路部分82と径方向内側通路部分84は、略同一の径方向長さを有する。従って、環状壁部分又はリブ86の径方向外側面90(図6)から径方向外側通路部分82の円形状の径方向内側対向面92への距離は、前記環状壁又はリブ86の円形状の径方向内側面94から冷却流体通路64の円形状の径方向外側対向面96への距離と同一である。
【0031】
環状壁又はリブ86は、圧力プレート40における摩擦プレート部分60とベース56と協働して、径方向外側及び内側の冷却流体通路部分82,84(図5)を形成する。摩擦プレート部分60の内側面60bは、軸方向に突出する壁部分またはリブ86と係合し、1つの実施形態において、壁部分またはリブ86を横切る流体の流れを阻止する。
【0032】
径方向外側通路部分82(図6)は、環状の底部表面100を有する。この底部表面100は、環状壁部分またはリブ86の外側面90からベース56の内側対向面92に伸びている。同様に、径方向内側通路部分84は、ベース56上に形成される環状の底部表面102を有する。この環状底部表面102は、環状壁部分またはリブ86の径方向内側面94からベース56の径方向外側対向面96に伸びている。
【0033】
径方向外側通路部分82上の底部表面100は、径方向内側通路部分84上の底部表面102と同様に、摩擦プレート60の対向する内側面60bから同一の距離だけ離れている。径方向外側通路部分82上の底部表面100は、径方向内側通路部分84上の底部表面102と同一平面上に配置されている。それゆえ、径方向外側通路部分82と径方向内側通路部分84は、その長さにわたり同一の均一深さを有する。しかし、ある通路部分82または84は、所望であれば、他の通路部分よりもより深くすることができる。
【0034】
くぼみ(indentations)61は、径方向外側通路部分82と径方向内側通路部分84の上方にある摩擦プレート60の内側面60bにおける長さに沿って複数のグループに分割することができる。径方向外側通路部分82上方に位置するくぼみのグループ61は、径方向外側通路部分82の各サブ部分の上方にある他のグループのくぼみから径方向にオフセットされる。同様に、径方向内側通路部分84の上方にあるグループのくぼみ61は、径方向内側通路部分84のサブ部分122の上方にある他のグループのくぼみ61から径方向にオフセットされる。
【0035】
他の実施形態において、各サブ部分116の上方には、同一数のくぼみがあり、または異なる数のくぼみ61が、径方向外側通路部分82における、上記サブ部分116の上方または他のサブ部分118に設けられている。たとえば、サブ部分118の上方よりもサブ部分116の上方の方により多数のくぼみ61を設けることができる。同様に、径方向内側通路部分84における、他のサブ部分124よりもサブ部分122の方により多数のくぼみ61を設けることができる。
【0036】
互いに径方向にオフセットされたサブ部分116,118,122、及び124(図6)内にくぼみ61を設けることによって、径方向外側通路部分82及び径方向内側通路部分84を通る流体の流れが転換され、これにより、流体の流れに乱流を生じさせ、プレート部分60(図3,4)から径方向外側通路部分82及び径方向内側通路部分84に流れる冷却流体に熱の伝達を促進する。もちろん、サブ部分116内のくぼみ61は、所望であれば、サブ部分118内のくぼみ61と径方向に整列させることができる。同様に、サブ部分122内のくぼみ61も、所望であれば、サブ部分124内のくぼみ61と径方向に整列させることができる。
【0037】
カップリング組立体10が離脱状態にあるとき、摩擦プレート部分60の内側面60bは、壁部分またはリブ86の平坦な上部側面から離間している。カップリング組立体10が係合状態にあるとき、摩擦プレート部分60(図3)のくぼみ61を有する内側面60bの平坦な部分は、壁部分またはリブ86の平坦な上部側面と接触した係合状態に配置されている。それゆえ、カップリング組立体10が係合状態にあるとき、摩擦プレート部分60は、摩擦プレート60の内側面60bの平坦部分を壁部分またはリブ86に係合させることによって支持されている。これは、カップリング組立体10が係合状態で動作するとき、摩擦プレート部分60の外側または上部の側面(図3,4に見られるように)と摩擦パッド24(図2)との均一な摺動係合を促進させる。
【0038】
径方向外側通路部分82(図6)に沿って冷却流体が流れる間、くぼみ61の1つの特徴は、冷却流体の流れに対して有効な領域を減じることなく、また、より少ない圧力降下を有して、流れに突出しないで改良された熱伝達を与えることである。それゆえ、くぼみ61の互い違いの配列によって、潜在的に楕円フローフィールドを生じさせることができ、この1つのくぼみ61内の流れは、他の複数のくぼみ61における流れ事象に対して流体連通することができる。くぼみ61は、両方の熱伝達を増加させ、そして、冷却通路の周りに冷却流体の流れを加速させ、この流れに不安定性を導く。
【0039】
図1−図7に示された本発明の実施形態において、くぼみ61は、圧力プレート40の摩擦プレート部分60の内側面60b上の表面に半球状のくぼみとして形成される。摩擦プレート60の内側面60bは、冷却通路64を覆う。所望ならば、摩擦プレート部分60の内側面60b上のくぼみ61は、圧力プレート40のベース56上の突起112の組合せとして用いることもできる。突起112は、図6で見られるように、楕円形状を有している。
【0040】
くぼみ61は、ベース56内の冷却通路表面100、102の底部、または他の実施形態では、ベースと摩擦プレート部分60の両方に形成することもできる。くぼみ61は、銅材料で別個に作ることもでき、その後、ベースおよび/または摩擦プレート部分に取り付けることもできる。
【0041】
図1−図7に示された本発明の実施形態において、くぼみ61は、全て同一の一般形状を有する。くぼみ61は、互いに異なる形状を有しても良く、また、図示した形状と異なるものであっても良い。例えば、図7のくぼみ61は、内側面60bの表面に平行な面において多角形状を有しても良い。いくつかのくぼみ61は、1つの形状を有し、他のくぼみ61は、別の形状を有するものとすることも考えられる。
【0042】
圧力プレート40のベース56は、複数のリブ150(図6)を含むことができ、これらのリブは、冷却流体通路64内に突出している。その結果、リブ150は、冷却流体通路64の径方向内側に対面する外側面92(図6)と、リブ86上の壁部分の径方向外側に対面する内側面90との間に伸びている突起である。さらに、複数のリブ150は、壁部分またはリブ86の径方向内側の対向面94と冷却流体通路64の径方向外側対向面96との間に伸びている。複数のリブ150は、環状の冷却流体通路64の半径に沿って伸びているが、これらのリブ150は、所望であれば、冷却流体通路64の半径に対して湾曲させることもできる。
【0043】
リブ150の高さは、壁部分またはリブ86の高さよりも低く、リブ86は、冷却流体通路64を径方向外側通路部分82と径方向内側通路部分84に分割する。壁部分またはリブ86は、摩擦プレート部分に係合され、かつ摩擦プレート部分と協働して、径方向外側通路部分82と径方向内側通路部分84の間の流体の流れを阻止する。複数のリブ150は、摩擦プレート部分60から離間し、即ち、リブ150の上部側面が摩擦プレート60の下部すなわち内側面から離間している。
【0044】
径方向外側通路部分82内のリブ150は、径方向内側通路部分84内のリブ150と径方向に整列しているが、1つの通路部分内の複数のリブは、他の通路部分内の複数のリブからオフセットされている。所望であれば、複数のリブ150は、冷却流体通路64の曲率中心からほぼ同一の径方向距離に隣接するリブ間に、摩擦プレート60の内側面60b内の複数のくぼみ61を配置するのに十分な距離だけオフセットすることができる。
【0045】
径方向外側通路部分82と径方向内側通路部分84に沿う冷却流体の流れの間、冷却流体は、摩擦プレート部分60の内側面とリブ150の上部側面との間の制限された空間内を流れる。また、リブ150は、冷却流体の速度を増加させ、冷却流体内に乱流を生じさせる。複数のリブ150によって冷却流体の流れに導かれる乱流により、摩擦プレート部分60の内側面60bの平坦部分およびくぼみ61の空洞に、冷却流体を衝突させる。この乱流は、リブの領域内に流体を混合させ、そして、熱伝達を更に促進させる。
【0046】
さらに、複数のリブ150は、リブ150が位置する冷却流体通路64の断面積を減少させる。その結果、リブ150の位置での冷却流体の流量は、リブの上部側面(図6で見るように)と摩擦プレート部分60の内側面との間でその流量を減少させる。冷却流体の流れに利用できる流量を減少することにより、冷却流体がそのリブ150を横切って流れるとき、冷却流体の速度が増加する。冷却流体の速度が、更に増加すると、リブ150に隣接する流体の流れの中の乱流が促進される。
【0047】
リブ150をくぼみ61と組み合わせて用いる主題の開示についての実施形態を記載してきた。リブ150は、くぼみ61とともに用いると選択的な特徴となることが理解できるであろう。くぼみ61は、リブ150がある場合とない場合とで使用することができる。壁部分またはリブ86を用いて、冷却流体通路64を径方向外側通路部分82と径方向内側通路部分84に分割するのに利用することが望ましいが、壁部分またはリブ86は、また、省略して、摩擦プレート部分60の内側面60bにくぼみ61だけを用いることもできる。
【0048】
カップリング組立体10は、図1の離脱状態から係合状態で動作させるとき、圧力プレート40の摩擦プレート部分60は、ディスク18上の回転摩擦パッド24に対して押圧される。ディスク18の径方向外側部分は、ディスクの径方向内側部分よりもより早い速度で回転する。それゆえ、カップリング組立体10が離脱状態から係合状態に作動するとき、摩擦プレート部分の径方向内側に隣接して発生する熱よりも、摩擦プレート部分60の径方向外側部分に隣接してより熱が発生する。
【0049】
係合状態へのカップリングの動作中、最も大きい熱が発生する摩擦プレート部分60の径方向外側部分の冷却を促進するために、入口68(図4)は、冷却流体が、径方向内側通路部分84よりも径方向外側通路部分82(図5−6)に、より流れが多く向かうのに効果的である。径方向外側通路部分82を通る流体の流れをより多くするために、入口通路70の円筒状の径方向外側始端部分160(図4)は、入口通路70の円筒状の径方向内側第2部分よりもより大きな径を有する。
【0050】
入口通路70の比較的大きな直径始端部分160は、複数の連結通路166(図4)によって径方向外側通路部分82と流体連通される。同様に、入口通路の比較的小さい直径第2部分162は、複数の連結通路168によって径方向内側通路部分と流体連通される。冷却流体の流れは、入口68において、入口通路70(図4)に入る。比較的大きな量の冷却流体は、入口流体通路70の始端部分160から径方向外側通路部分82に導かれる。より小さい流量の冷却流体は、入口流体通路70の比較的小さい第2部分162から径方向内側通路部分84に導かれる。
【0051】
入口通路70の円筒状の始端部分160は、入口通路の円筒状の第2部分162と略軸方向に整列して配置されている。しかし、入口通路70の第2部分162の中心軸は、入口通路の始端部分160の中心軸からオフセットされている。所望であれば、入口通路70の始端部分160は、径方向外側通路部分82への流体流路と、第2の分離した、径方向内側通路部分84への流体流路を有するように、入口通路の第2部分の一面側に配置することができる。
【0052】
径方向外側通路部分82は、連結通路166(図4及び図6)から出口通路76に反対方向に伸びている。その結果、径方向外側通路部分82は、入口通路70から出口通路74に、時計方向及び反時計方向の両方に伸びている。同様に、径方向内側通路部分82は、入口通路70から出口通路76に、反対方向に伸びている。その結果、径方向内側通路部分84は、入口68から出口74(図4)に、時計方向及び反時計方向(図3に見るように)の両方に伸びている。径方向外側通路部分82において、流体の流れは、時計方向及び反時計方向の間で等しく分割され、径方向外側通路部分の各部分を流れる。同様に、径方向内側通路部分84において、流体の流れは、時計方向及び反時計方向の間で等しく分割され、径方向内側通路部分の各部分を流れる。
【0053】
出口通路76(図4)は、入口通路70と同一の構成を有している。その結果、円筒状の出口通路76は、径方向内側、即ち、入口部分よりも大きな径を備える径方向外側、即ち、出口部分174を有する。径方向内側通路部分84内を流れる流体は、連結通路180を通って入口部分176に導かれる。同様に、径方向外側通路部分82内を流れる流体は、連結通路180を通って出口通路76の出口部分174に導かれる。
【0054】
出口通路76の円筒状の出口部分174は、出口通路の円筒状入口部分176と軸方向にほぼ整列して配置されている。しかし、出口通路76の入口部分176の中心軸は、出口通路の出口部分174の中心軸からオフセットされている。所望であれば、出口通路76の入口部分176は、出口通路の出口部分174の一方側に配置することができ、径方向内側通路部分84からの1つの流体流路と、径方向外側通路部分82からの第2の、分離した流体流路を有する。
【0055】
入口通路70及び出口通路76は、径方向内側通路部分84より径方向外側通路部分82により多くの流量を供給でき、冷却流体通路64の構成と異なる構成を有する冷却流体通路に連通して利用することができる。
【0056】
カップリング組立体10は、図2の離脱状態にあるとき、ディスク18の摩擦パッド24,26は、軸方向に移動可能な圧力プレートと固定の取付けフランジまたは圧力プレート42から僅かに離間している。これは、ディスク18を静止部材14及びハウジング駆動体32に対して自由に回転することができる。
【0057】
カップリング組立体10が離脱状態から係合状態に作動されるとき、ピストン46は、取付けフランジ又は圧力プレート42に向けて軸方向に圧力プレート40を移動させ、圧力プレート40と取付けフランジ又は圧力プレート42の間にディスク18をしっかりと把持する。
【0058】
取付けフランジ又は圧力プレート42は、圧力プレート40の構成と同様の構成を有することができる。この場合、取付けフランジ又は圧力プレート42の部品は、圧力プレート40の部品と同一である。
【0059】
上述の記載から、本発明は、新規でかつ改良されたカップリング組立体を提供し、カップリング組立体の各部品からの熱伝達を促進するために、改良された冷却流体の流れを有する。冷却流体の流れに対するカップリング組立体の各部品からの対流的な熱伝達は、摩擦プレート部分60の内側面内にくぼみ61を設けること、また、冷却流体の流れを介して通路64に沿って離間した領域での冷却流体の速度を選択的に増加させることによって促進される。
【0060】
カップリング組立体10の係合時、より多くの熱が、回転ディスクの径方向内側部分よりも回転ディスク18の径方向外側部分で発生する傾向にある。この熱を取り除くために、回転ディスク18の径方向外側部分に隣接する冷却流体の流れは、回転ディスクの径方向内側部分よりもより多くなるかもしれない。
【0061】
カップリング組立体10は、ハウジング32によって少なくとも部分的に囲まれる回転可能なディスク18を含んでいる。このハウジング32は、ハウジングとディスクとの間の相対回転を遅らせるために、回転ディスク18上の側面領域に係合可能である力伝達表面を有するプレート部分を有することができる。ハウジング32は、また、力伝達表面から反対側のプレート部分60の内側面60bによって少なくとも部分的に形成される冷却流体通路64を有することもできる。
【0062】
熱伝達を改善しかつホットスポットが起こることを最小化するために、複数のくぼみ61が、内側面60b内に設けられ、冷却流体通路64を通って冷却流体の流れの通路において、より少ない圧力降下を有して乱流を促進させる。
【0063】
冷却流体通路64に対する流体入口68は、冷却流体通路の径方向外側部分82に流体連通して接続される比較大きな断面積部分160を有している。この入口68は、流体流体通路64の径方向内側部分84と流体連通して接続される比較小さな断面積部分160を有している。
【0064】
本発明に従って構成されるカップリング組立体10は、ここで開示されたように一緒に利用されることが有利なように、多くの異なる特徴を有している。しかし、これらの特徴は、ここに記載した他の種々の特徴と組合せ、または別々に利用することができる。例えば、冷却流体通路64の径方向内側部分82及び径方向外側部分84に対して異なる大きさを有する冷却流体入口68は、冷却流体通路内に複数のくぼみを用いることができる。別の例では、冷却流体通路64は、複数のリブを含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0065】
ここに開示したカップリング組立体10は、ブレーキとして利用することができるが、カップリング組立体10は、クラッチとしても利用することができることを理解すべきである。また、クラッチとブレーキの組立体の組合せとすることも考えられる。
【0066】
本発明の特定の実施形態を示し、かつ本発明の利用を詳細に説明してきたが、これらの開示は、このような原理から離れることなく具体化できることを理解してほしい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
力を伝達するのに使用するためのカップリング組立体であって、
回転可能ディスクと、
該回転可能ディスクを少なくとも部分的に包囲し、前記回転可能ディスクとの間の相対回転を遅らせるために、前記回転可能ディスク上に設けた円形状の側面によって係合可能になる力伝達表面を備えるプレート部分を有するハウジングと、
前記力伝達表面に対して反対側の前記プレート部分の側面に少なくとも部分的に形成される冷却流体通路と、
流体が前記冷却流体通路に導かれる入口と、
前記冷却流体通路から導かれる前記冷却流体が通る出口と、を含み、
前記プレート部分の力伝達表面の内側面が、冷却流体の流路内に乱流を作り出すための複数のくぼみを有し、前記ハウジングの前記プレート部分と前記冷却流体通路を通って流れる前記冷却流体との間の熱伝達を改善することを特徴とするカップリング組立体。
【請求項2】
前記冷却流体通路に沿って離間した位置に配置された複数のリブを含む複数の突起を更に含み、前記リブの各々は、前記冷却流体通路の径方向内側部分と前記冷却流体通路の径方向外側部分との間に伸びていることを特徴とする請求項1記載のカップリング組立体。
【請求項3】
前記冷却流体通路を通って冷却流体の流路内に伸びている前記プレート部分の底部表面上に複数の突起を更に含むことを特徴とする請求項1記載のカップリング組立体。
【請求項4】
前記冷却流体通路は、円形状を有し、前記複数のくぼみのいくつかは、前記冷却流体通路の径方向外側部分に配置され、補助的な前記複数のくぼみのいくつかは、前記冷却流体通路の径方向内側部分に配置されていることを特徴とする請求項1記載のカップリング組立体。
【請求項5】
前記複数のくぼみは、半球形状を有していることを特徴とする請求項1記載のカップリング組立体。
【請求項6】
前記冷却流体通路は、円形状を有し、前記入口を通る流体が前記冷却流体通路に導かれ、該冷却流体通路は、前記冷却流体通路の径方向外側部分と流体連通するように接続された第1部分と、前記冷却流体通路の径方向内側部分と流体連通するように接続された第2部分とを有する入口通路を含み、
前記入口通路の第1部分は、該入口通路の第1部分の長手方向中心軸に平行に伸びる第1平面内に第1の断面積を有し、前記入口通路の第2部分は、該入口通路の第2部分の長手方向中心軸に平行に伸びる第2平面内に第2の断面積を有しており、
前記第1の断面積は、前記第2の断面積よりも大きく、前記入口通路は、前記入口通路の第1部分から、前記入口通路の第2部分へ流体の流れを導くのに有効であることを特徴とする請求項1記載のカップリング組立体。
【請求項7】
前記複数のくぼみは、楕円形状を有していることを特徴とする請求項1記載のカップリング組立体。
【請求項8】
前記冷却流体通路は、円形状を有し、前記入口から前記出口の向かう第1方向に伸びる第1部分と、前記入口から前記出口の向かう第2方向に伸びる第2部分とを有することを特徴とする請求項1記載のカップリング組立体。
【請求項9】
前記冷却流体通路は、円形状を有し、かつ更に複数の突起を含んでおり、前記突起は、前記冷却流体通路の径方向内側エッジ部分と径方向外側エッジ部分との間に配置されかつ前記冷却流体通路の径方向内側エッジ部分と径方向外側エッジ部分から離間されている、複数の離間した突起を含んでいることを特徴とする請求項1記載のカップリング組立体。
【請求項10】
前記複数の突起は、冷却流体通路の径方向内側エッジ部分と径方向外側エッジ部分との間に伸びている複数のリブを含んでいることを特徴とする請求項2記載のカップリング組立体。
【請求項11】
前記くぼみの各々は、深さ(d)と直径(D)を有し、前記直径(D)に対する深さ(d)の比率が、概略0.06〜0.25の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のカップリング組立体。
【請求項12】
前記冷却流体通路は、高さ(H)を有し、前記くぼみの各々は、直径(D)を有しており、前記くぼみの直径(D)に対する前記冷却流体通路の高さ(H)の比率が、概略0.2〜1の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のカップリング組立体。
【請求項13】
前記くぼみの各々は、各くぼみに対する概略中心間のピッチとして特定される距離を有し、前記冷却流体通路は、高さ(H)を有しており、前記高さ(H)に対する前記ピッチ(p)の比率が、概略2.5〜4.5の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のカップリング組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−527579(P2012−527579A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506594(P2012−506594)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/IB2010/000916
【国際公開番号】WO2010/122417
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(390033020)イートン コーポレーション (290)
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
【Fターム(参考)】